国立西洋美術館は、館内に入る前に注目の彫刻がずらりと並ぶ前庭がある。
まず、左側に「カレーの市民」の群像が立つ。イギリスとフランスの百年戦争。イギリス軍に攻め入られたフランス西部の町カレーで、6人の市民が自らの命を差し出すことによって町の壊滅を救った歴史の物語が、ここに再現されている。
硬く唇を結び、苦悩の浮かぶ表情を見せながらも、差し出した右手にその決意を表す壮年、各人各様の姿を、豊かな感性表現で彫り上げた、ロダンの傑作だ。
その奥には、ご存じ「考える人」。深い思索に沈む人間の苦悩を体現した作品。
ただ、いつも思うのは、首を支える右手の肘が、なぜか左の膝に乗っかっている。自分でこの姿勢をしてみると、かなり無理な恰好なことがわかる。それが、思索の深さを物語っているのだろうか。
右側のスペースには、ロダンが生涯にわたって制作を続けていた「地獄の門」がある。当初の発注先であったパリ装飾美術館の建設中止で、ロダンの生前にはこの作品が日の目を見ることはなかった。そのプロンズ鋳造を最初に注文したのは、この美術館の生みの親、松方幸次郎だった。
実は、「考える人」はこの大彫刻の一部として制作されたものだ。門の中央上部にしっかりと収まっている。
ロダン作品だけではない。この「弓を弾くヘラクレス」は、ブールデルの作品。怪鳥を退治しようと弓を一杯に引き絞った躍動的な姿は、人間の肉体と意志の力の素晴らしさをはつらつと表現している。ブールデルは、師ロダンの亡き後、パリの彫刻界の第一人者として活躍した人だ。
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