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ナンシー美術館に入ったのは、実は絵画鑑賞よりも階段を見るため。収蔵作品への予備知識はゼロで、ただネットで見かけた美しい階段を見たいという目的だった。
入ってすぐの入口で、1階から2階に上る階段を発見。
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アール・ヌーヴォーの拠点の街だけに、手すりに施された曲線の美しさは格別だ。
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下から上へ。妖しいアールを描く空間がたまらない。
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もう1つ。2階と3階を結ぶ階段は、最初のものとは全く違った、柔らかく包み込まれるようなフォルムが何ともいえず優しい。
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階段の横から見える絵画とのバランスもなかなかで面白かった。
さて、作品に移ろう。
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最初に見つけたのが「ノミをとる女」。17世紀フランス古典主義の画家ラトゥールの作品だ。光と闇を巧みに表現し「夜の画家」とも呼ばれる。
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ろうそくの光を活かした明暗表現が深い闇を連想させる。似たような彼の作品はパリのオルセー美術館でも見た記憶がある。
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ルーベンスの絵も。彼の絵はいつもスペクタクルだ。
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壁に取り付けられた飛ぶ天使。ホッとさせる姿。
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ラウラ・ルボーという画家の作品。吸い込まれるような瞳の少女を見つめていると、ちょっと恐ろしさ感じてきた。
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モディリアニもあった。彼にしては珍しい金髪の女性像だ。
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こちらはセザンヌ。巨匠の作品もちゃんとそろえている。
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どこかで見たことがある、不思議な絵。これが第一印象。シャヴァンヌの「貧しい漁夫」。実はオルセーにも日本の国立西洋美術館にも別バージョンがあった。この青年はいつ見てもいつ会ってもひたすら祈り続けているーーという感情に襲われる。
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アリスティド・マイヨール「万聖節」。座る老女の姿が心に残る。
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エミール・フリアン「恋人たち」。タイトルはそうだが、何かこの2人幸せそうには見えず、危うさが漂っているような・・・。
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絵画の前で先生の話を聞く生徒たち。ヨーロッパの美術館ではよく見られる風景。日本でも積極的にこんな授業が取り入れられればいいのに、といつも思う。
こうして満足して美術館を出てから気付いた。アールヌーヴォーの作品群を全く見ずに出てしまったのだ。この美術館の地下には何千点ものアールヌーヴォー作品があることを前日にガイドブックで見ていたのに、それをすっかり忘れてしまっていた。
というのは、この美術館はロッカーがなかった。寒さに備えて完全防備の厚着をしたうえ、リュックを背負っていたので、それを預けようとしたのだが、それが出来ず、大汗を掻きながら歩いたため、つい外に出ることに気持ちが行ってしまっていた。
完全な失敗でした!
ナンシーは日帰りだったので、私の個人的趣味である階段(ナンシー美術館の)を見ることが第一目標でした。ナンシー派美術館は、地図で見るとちょっと離れたところにあったので、初めからあきらめていました。