新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ボローニャ② キリスト教の聖堂にマホメットが!そのために聖堂爆破の騒動に。

2018-08-11 | イタリア・ボローニャ

 聖ペトロニオ聖堂の中に入ってみよう。内部の写真撮影は有料で、支払うと腕章をつけて撮影OKとなる。

 首が痛くなるほどの高い天井を交差する仕切り線。柔らかなブラウンの色調でまとめられた空間だ。

 多くの礼拝堂が並んでいるが、最も注目されるのは左手4番目にあるボロニーニ礼拝堂だ。ここだけは入場制限がかけられていたので中には入れなかったが、遠くから眺めることはできた。

 その側面に天国と地獄のフレスコ画が描かれている。最後の晩餐の場面だ。

 望遠で少しアップしてみると、かなり細かな描写がなされている。

 その下半分をさらにアップすると・・・。

 人を貪り食う悪魔がおり、その右上にターバンを巻いた男が横たわっているのがわかる。この人物がイスラム教の創始者マホメットだ。

 2006年、この絵が、あるイスラム教信者の怒りを買い、この聖堂を爆破するという予告がなされるという騒ぎとなった。未遂に終わったものの、それ以降この礼拝堂に関しては厳重なチェック態勢が敷かれている。


 反対側の側壁にも東方3博士の礼拝など様々な物語が描かれる。

 側柱には聖クリストフォロスの立ち姿。

 この礼拝堂には聖ペトロオニオの頭骨が収められているという。

 別の礼拝堂には聖人列伝。

 主祭壇の前にあるのは4本の大理石の柱によるジャコモ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラ作の天蓋だ。

 こちらにも美しい装飾がなされている。十字架は15世紀のもの。

 ここに描かれた絵の左下にはボローニャの街の象徴ともいえる2本の塔が描かれているのを発見した。

 そして、この聖堂にも「ピエタ」の像があった。

 磔になったキリストの遺体に、聖母マリアを始めとした6人の人びとが駆け付けて、その死を悼む群像だ。

 向かって右の3人は驚き、悲しみ、嘆きなど表情を露わにしているが、

 左側の3人はそれほど表面に感情が現れていない。

 そんな対照的な群像に見守られて、真っ白に冷たい体を投げ出したキリスト像が印象的だ。 



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ボローニャ① 未完の聖堂のファザードにはミケランジェロを魅了した彫像がある

2018-08-07 | イタリア・ボローニャ
 ボローニャに到着した。ここには以前フィレンツェから日帰りで来たことはあるが、宿泊しての滞在は初めて。少しじっくりと見てみようと思っている。

 まずは聖ペトロニオ聖堂へ。この外観はどう見ても未完成のように見える。土台から3段目までは白大理石などで覆われているものの、その上は基礎部分がむき出しになったままだ。

 聖堂建設が始まったのは1388年。当初は幅137m、奥行き183mというキリスト教史上最大規模の教会が構想された。
 
 だが、、あまりにも大規模なことから、バチカンからのクレームがあったり、地元の財政難など様々な理由から、幅66m、奥行き132mという現在の大きさで中断され、1469年ころの祭壇修復以降は建設が進行することなく現在に至っている。

 そんなわけで一見不格好な外観だが、このファザードにも見逃せない彫像などが存在している。

 中央の扉上を見上げると、3つの彫像が並んでいる。

 中央に聖母子

 左に聖アンブロシウス

 右に聖ペトロニウスだ。 いずれもシエナの高名な彫刻家ヤコボ・デッラ・クエルチャの作品。

 実は聖ペトロニウスの、左足に重心を掛けた自然な形での立ち姿を熱心に研究し、同じボローニャの聖ドメニコ教会に研究成果としての像を残した若き天才がいた。ミケランジェロ。

 彼はフィレンツェの戦乱から逃れるために1494年ボローニャに避難したが、その時このクエルチャ作品に魅了されたという。 そんなエピソードを持つ像だ。

 また、中央扉の両側に建つ側柱には聖書の物語が彫られている。ちょっとアップしてみよう。

 アダムの創造。

 続いてアダムから分かれたイヴの創造。

 誘惑に負けて禁断の実に手を出してしまう2人。

 このように聖書の物語がイラストで描かれていて、中世の文字の読めない庶民たちにも、入口の絵を見るだけで聖書が理解できるように配慮されていた。


 この聖堂前には旅行者や市民たちがいつも大勢集まり、階段に腰掛けている。

 そして雑談に花を咲かせたり、道行く人たちを観察したりの風景が展開されている。



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モデナ③ サンフランシスコ教会で出会った、壮絶な「キリストの死」の場面を描いたテラコッタ

2018-08-03 | イタリア・モデナ

 モデナ訪問にはもう1つの目的があった。たまたま事前に見た本で、モデナの教会にはいくつものテラコッタがあることを知り、それを見たいと思っていた。
 ただ、お目当ての教会が果たして開いているのかは全くの不明。しかも午後から夕方までの短時間の滞在なので、期待三分不安七分といった心持だった。


 やはり、大聖堂近くの2つの教会は閉まっており、最も見たいと思っていたサンフランシスコ教会もまた扉は固く閉じたまま。あきらめきれず、教会前を通りかかった地元の主婦に尋ねると、「そう、今日はもう閉まってるわね。でもね、夕方にミサがあるからその時なら開くと思うわ」。

 確かに。それでいったんドゥオモに戻って中をもう1度見学してから午後6時前にもう1度訪ねてみた。

 でも、相変わらず扉は閉まったまま。あきらめきれずにちょっと扉を押してみた。

 と、あれ!扉が開いた!!


 まさにこれからのミサに備えて鍵が外されていたのだ。中には信者の人たちが数人。まだミサには時間がありそう。それで中に入りテラコッタの場所を探す。
 入ったのは右隅からだったが、反対の左奥に、暗い一角がありその辺にぼんやり像が見える。 あれだ。
小走りに向かってみると、まさにあった。死せるキリストへの哀悼「DEPOSIZIONE」。
 その群像は壮大なものだった。

 十字架に吊るされて非業の死を遂げたキリストが、弟子たちに抱かれて宙に浮いている。

 その下に絶望のあまり失神して倒れる聖母とそれを支える人たち。

 右に、驚き手を広げる者

 左には呆然とひざまずく者。

 このように、キリスト教史上最悪の悲劇が繰り広げられた現場の模様を、時を止めて切り取った群像図だ。
 
 作者はアントニオ・ベガレッリ。

 しばし言葉を失って見つめていた。


 帰り際、ようやく傾いた西日が教会に差し込み、ステンドグラスの色彩が柱を赤く染めていた。

 本当に駆け足のパルマ、モデナ見学だったが、結構楽しい時間を過ごすことが出来た。これからボローニャで数日を過ごすが、そこでもいくつもの印象的なテラコッタに出会うことになる。


 
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