彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる "招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦
国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編成のこ
と)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクター。愛称「ひこに
ゃん」
14 憲 問 けんもん
----------------------------------------------------------------
「士にして居を懐(お)うは、もって士となすに足らず」(3)
「貧にして怨むことなきは難く、富みて馴ることなきは易し」(11)
「古の学者はおのれのためにし、今の学者は人のためにす」(25)
「君子は、その言のその行ないに過ぐるを恥ず」(29)
「人のおのれを知らざるを患えず。おのれの能無きを患う」(32)
----------------------------------------------------------------
16 晋の文公は、臨機応変には長けていたが、日常政治の運営はまず
かった。反対に斉の桓公は、日常政治の運営は巧みだったが、機略には
乏しかった。(孔子)
〈晋の文公・斉の桓公〉 ともに春秋時代の覇者。
★通説は、文公を詐術の徒として否定し、桓公を正道の人として称揚し
たものとするが、ここでは劉宝楠の説に従って、いずれも一長一短ある
ものとして訳した。
子曰、晋文公譎而不正、齊桓公正而不譎。
Confucius said, "Marquis Wen of Jin used scheming and strayed
from the right path. Marquis Huan of Qi trod on the right path
and did not use scheming."
❐ ポストエネルギー革命序論 201:アフターコロナ時代⑮
♘ 現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散の時代」
【特集コロナ禍解析情報:①】
⛨ 進化する免疫偽計能力
6月4日、東京大学医科学研究所感染症国際研究センターシステムウイ
ルス学分野の佐藤佳准教授らは、大規模な遺伝子発現データの解析によ
り健常なヒト体内に存在するヴァイローム(ウイルス叢)の様相を網羅
的に解明している。7月4日には、NHKオンラインで「タモリ × 山中
伸弥 新型コロナウイルスの謎に迫る!! NHKスペシャル「タモリ×
山中伸弥 人体 VS ウルスス~驚異の免疫ネットワーク~」で、件の佐
藤准教授が出演している。放送はでは8Kで 新型コロナ 脅威的な能力
を最新科学で完全映像化----新型コロナウイルスは感染した人の口から
飛び散るごく小さな飛沫に潜んでいる。直径1mm程度の飛沫の中に700万
個のウイルスが含まれていることもある。空気を肺に吸い込む気道の電
子顕微鏡映像が映された。表面には線毛と呼ばれる毛のようなものがた
くさん生えていて、体に入ってきたウイルスなどを細かな動きで外に押
し戻す。ところが、新型コロナウイルスはこの線毛をすり抜けて肺の奥
深くまで到達する。細胞表面の本来必要な物質を取り込む際、鍵穴のよ
うな働きをする突起に合う偽の鍵をコロナウイルスが、細胞に侵入した
ウイルスあg1000倍にも増殖し再び外に飛び出し、新たに感染する細胞
を求めて散らばる。このままでは肺炎が進行して----いたではないか!
(信じられないが、ここまで、第4次産業(=図像形成産業革命)が進
化)。このように、新型コロナウイルスに感染した細胞は免疫細胞に危
険を伝える警報物質を放出する。血流に乗って全身に広がった警報物質
を食細胞と呼ばれる免疫細胞が受け取ると、血管から外に出て感染が起
きている場所に急行し異物を見つけると丸呑みにする。自然免疫と呼ば
れ、生まれたときから誰もが持っている免疫システムだ。新型コロナウ
イルスに感染して無症状で済む人は食細胞が活躍していると考えられて
いる。新型コロナウイルスは自然免疫をすり抜ける能力を持っている可
能性が最新の研究でわかってきた。
新型コロナ 脅威的な能力 突然重症化の謎を解く
新アイ新型コロナウイルスには自然免疫を欺く能力があることがわかっ
た。新型コロナウイルスが持つ特別な遺伝子が働くと警報物質が作られ
る量が10分の1に抑え込まれることがわかった。これが体の中で起きて
しまうと敵が侵入したという情報が伝わらないため食細胞が出動しなく
なる。警報物質が出ない場合、新型コロナウイルスは2日で1万倍に増え
てしまうことがわかった。警報物質を抑える能力がより強力になり始め
ている可能性があるという。新型コロナウイルスの遺伝子は様々なタイ
プに変化していて、最近エクアドルで警報物質を抑えると見られる遺伝
子に変化が見つかった。この変化によって警報物質が 20分の1に抑えら
れることが確かめられた。このタイプの新型コロナウイルスはまだエク
アドルでしか見つかっていないが。ウイルスは自分の設計図を書き換え
ることができ、新型コロナウイルスには警報物質を出さないようにする
仕組みがたくさんある。警報物質が出ないと感染しても熱も出ない見せ
かけの無症状というのが新型コロナウイルスの特徴のひとつである。日
本の最新報告によると、感染を広げた人の多くが無症状だといわれてい
るが、実は静かに体内に傷を残し、後遺症していることが昨今の臨床解
剖研究でわかってきている。
さて、6月4日に戻そう。
研究では、米国のゲノムプロジェクトであるGenotype-Tissue Expression
(GTEx)プロジェクトの提供する、547人の51種類の組織から取得され
た、計8,991サンプルのRNAシーケンスデータを対象に大規模なメタゲノ
ム解析を行い、米国国立生物工学情報センター(National Center for
Biotechnology Information)に登録された5,561種類の脊椎動物および
無脊椎動物に感染するウイルスゲノム情報を用いて、対象サンプル中に
含まれるさまざまなウイルスに由来すると考えられる配列を網羅的に検
出し、定量化した。その結果、健常人のさまざまな組織において、さま
ざまなウイルスが感染していることを見出す。さらに、ウイルスの有無
とヒトの遺伝子発現情報とを比較することで、いくつかのウイルスのウ
イルス陽性の検体・組織において、ウイルス感染に対する免疫応答因子
であるインターフェロンを含む自然免疫応答 B細胞の活性化が誘導され
ていることを見出した。さらに、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)が
胃に常在していること、および、胃におけるHHV-7 の有無がヒトの遺伝
子発現状態と強く関連していること、加えて、HHV-7 が胃の何らかの生
理的機能に影響を与えている可能性を解明した。
本研究結果は、ヒト体内に存在するウイルスが、ヒトの免疫状態や生理
的機能に関与していることを強く示唆するというもの。
脅威の免疫ネットワーク
人間にはウイルスなどの外敵が侵入した際に、警報物資であるインター
フェロンが血管内を通じて食細胞(好中球)に伝達され、その食細胞が
ウィルスの細胞まで移動し撃退する働きが、自然免疫作用として備わっ
ているが、新型コロナウイルスに感染し重篤化した患者には、そのイン
ターフェロンの産生量が極端に低いという現象が起きていることを突き
止める。新型コロナウイルスの中に存在する自然免疫を欺く特殊な遺伝
子は「ORF3b」 といい、この遺伝子が原因で自然免疫の役割を担ってい
る「インターフェロン」の産生が抑制される。
通常ウイルスに感染した細胞は、その細胞から警告物質であるインター
フェロンが放出されるが、この特殊な遺伝子はそのインターフェロンの
産生を通常時の10分の1にまで抑制することが分かってきた。それによ
り、ウィルスを撃退するはずの食細胞が反応せずに、肺の中で新型コロ
ナウイルスが大増殖し、ウイルスに侵されてしまう。また研究によると、
警報物質であるインターフェロンが放出されないと、わずか7日で1万
倍にまでウィルスが増殖することも分かっている。さらに新型コロナウ
イルスの遺伝子は世界中に広がる中で、より強力に変化し、最近エクア
ドルで見つかった遺伝子には、インターフェロンの産生を20分の1に
まで抑え込んでしまう恐ろしい作用があることも判明。この遺伝子を持
ったウイルスはまだエクアドルでしか発見されていないが、若い人でも
急速に悪化し、重篤化を招く恐れのある非常に危険なウイルスであると
いう。
❐ 論文:新型コロナのSARS-CoV-2 ORF3bは強力なインターフェ
ロン阻害剤、その活性は天然に存在する伸長バリアントで増加
doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.11.088179
【要約】
SARS-CoV-2をより病原性の高い対応するSARS-CoVと区別する機能の1つ
は、ORF3b遺伝子に早期停止コドンが存在する。ここでは、SARS-CoV-2
ORF3bが強力なインターフェロン拮抗薬あり、I型インターフェロンの誘
導をそのSARS-CoVオーソログよりも効率的に抑制することを示す。系統
解析と機能アッセイにより、コウモリとセンザンコウからのSARS-CoV-2
関連ウイルスも強力な抗インターフェロン活性を持つ切り詰められたOR
F3b遺伝子産物をコードすることが明らかになった。さらに、15,000を超
えるSARS-CoV-2配列の分析により、より長いORF3bリーディングフレー
ムが再構成された天然のバリアントが特定された。このバリアントは、
重症の2人の患者から分離され、ORF3b のインターフェロン誘導を抑制
する能力をさらに高めた。調査結果としてはCOVID-19患者のインターフ
ェロン反応の不良を説明するのに役立つだけでなくCOVID-19症状を悪化
させる拡張ORF3bを持つ自然のSARS-CoV-2 準種の出現の可能性にも触れ
ている。
【ハイライト】
①SARS-CoV-2および関連するコウモリとセンザンコウウイルスの ORF3b
は強力なIFNアンタゴニストである。
②•SARS-CoV-2 ORF3b は、SARS-CoVオーソログよりも効率的にIFN誘導を
抑制する。
③ORF3bの抗IFN活性は、そのC末端の長さに依存する。
④IFN拮抗作用が増加したORF3bは、2つの重度のCOVID-19症例から分離
された。
【結果】
SARS-CoV-2 ORF3bは強力なIFN-I拮抗薬
SARS-CoV-2とSARS-CoVのウイルス学的差異を決定するために、多様なサ
ルベコウイルスの配列を比較。最近の報告(Lam et al.2020; Zhou
et al.2020 )と一致して、サルベコウイルスは、SARS-CoV-2関連ウイ
ルスとSARS-CoV関連ウイルスの2つのグループにクラスター化された。
(図1A )。個々のウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)を
比較すると、ORF3b の長さがSARS-CoV-2とSARS-CoVの系統間で明らかに
異なる一方で、残りのすべてのORF3bの長さは サルベコウイルス間で比
較的一定であることが判明(図1B)。具体的には、コウモリとセンザン
コウにおけるSARS-CoV-2および関連ウイルスの ORF3b配列は、22アミノ
酸(66 bp)だけで、SARS-CoV オーソログよりもかなり短い (平均で
153.2±0.47アミノ酸)。
図1.SARSCoV-2 ORF3bは強力なIFN-Iアンタゴニスト
(A)完全長サルベコウイルス配列の最尤系統樹。 SARS-CoV-2(代表と
して武漢-Hu-1)、コウモリ(n = 4)およびセンザンコウ(n =4)から
のSARS-CoV-2関連ウイルスの全長配列(〜30,000 bp)、 SARS-CoV(n=
190)、ジャコウネコ(n = 3)及びコウモリ(n =54)からのSARS-CoV
関連ウイルス、およびアウトグループウイルス(n = 2; BM48-31および
BtKY72)を分析。系統ごとに、各ウイルスのアクセッション番号、株名、
宿主が記載されている。SARS-CoV(n =190)およびジャコウネコ(n =3)
からのSARS-CoV関連ウイルスを含むブランチは、より見やすくするため
に折りたたまれていることに注意。折りたたまれていないツリーを図S1
に示し、使用したシーケンスを表S1にまとめている。アスタリスクは、
95%を超えるブートストラップ値を示す。スケールバーはサイトあたり
0.1ヌクレオチドの置換を示す。NA、該当なし。(B)サルベコウイルス
ORFタンパク質長の比較。サルベコウイルスのORF1a、S(ORF2)、ORF3a、
ORF3b、E(ORF4)、M(ORF5)、ORF6、ORF7a、N(ORF9a)のアミノ酸番
号を示す。使用したウイルス配列は Aのウイルス配列に対応している。
バーは平均値を示し、各ドットは1つのウイルス株を表す。類似性の低
いORF(ORF8やORF9bなど)はこの分析から除外。(C)SARS-CoV-2ORF3b
の強力な抗IFN-I活性。 HEK293細胞は、HAタグ付きSARS-CoV-2 ORF3b、
SARS-CoV ORF3b、およびIAV NS1(50、100、200、300、および500 ng)
を発現する5つの異なる量のプラスミドと、ホタルルシフェラーゼをコ
ードするプラスミドp125LucでコトランスフェクトされましたヒトIFNB1
プロモータの制御下(500 ng)。トランスフェクションの24時間後、
MOV10にSeVを接種した。感染の24時間後、細胞をウエスタンブロッテ
ィング(上)とルシフェラーゼアッセイ(下)のために回収。ウエスタ
ンブロッティングでは、細胞ライセートの入力をTUBAに正規化し、 X回
の独立した実験から得られた1つの代表的な結果を示す。各ウイルスタ
ンパク質のバンドは白い矢印で示す。kDa、キロダルトン。ルシフェラー
ゼアッセイでは、SeV 感染した空のベクタートランスフェクト細胞の値
を100%に設定。SEMを使用した3つの独立した実験の平均が表示され、
SeVに感染した空のベクターでトランスフェクトされた細胞(#)と 同
じ量のSARS-CoV-2 ORF3b でトランスフェクトされた細胞(P <0.05)と
比較して統計的に有意な差(P <0.05) *) 示されている。 E、空のベ
クトル。図S1と表S1も願参照。
図2
SARS-CoVと関連ウイルスに関する以前の研究では 少なくとも2つのアク
セサリータンパク質ORF3bとORF6、およびヌクレオカプシド(N、ORF9aと
も呼ばれる)がIFN-I産生を阻害する能力を持っていることが示された。
(Frieman et al。、2007 ; Hu et al。、2017b; Kopecky-Bromberg et
al.、2007; Zhou et al.2012)。 ORF3bの長さがSARS-CoV-2とSARS-CoV
の間で著しく異なっていたため(図1B)、IFN-Iに対するORF3bの拮抗活
性がこれら2つのウイルス間で異なると仮定➲この仮説をテストに、
ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用し、SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1)
およびSARS-CoV(Tor2)のORF3bの存在下で、ヒトIFNB1プロモータ活性
を監視➲インフルエンザAウイルス(IAV)非構造タンパク質1(NS1)が
陽性対照として機能した(Garcia-Sastre et al.1998;Krug et al.2003
)。図1Cに示すように、3つすべてのウイルスタンパク質は、 センダイ
ウイルス(SeV)感染時にIFNB1プロモータの活性化を用量依存的に抑制。
特に、SARS-CoV-2ORF3bの拮抗活性は、SARS-CoVORF3bの拮抗活性よりも
わずかに高い(図1C、下)。なので データは 22アミノ酸しか含まない
にもかかわらず、SARS-CoV-2ORF3bがヒトIFN-I活性化の強力な阻害剤で
ある。コウモリとセンザンコウウイルスのSARS-CoV-2関連 ORF3bタンパ
ク質は平均して、SARS-CoV 対応物よりも効率的にIFN-I活性化を抑制。
コウモリとセンザンコウを含むSARS-CoV-2関連ウイルスの ORF3bタンパ
ク質の長さは、平均してSARS-CoV及び関連ウイルスよりも短く(図1B)、
次に、一般的に効率的を調査➲ IFN-Iに拮抗する、サルベコウイルス
ORF3b 遺伝子の系統学的分析より、サルベコウイルスORF3b 遺伝子の進
化的関係は、全長ウイルスゲノムと類似することが示された(図1Aおよ
び2A)。機能分析では、コウモリ(RmYN02、RaTG13、ZXC21)と センザ
ンコウ(P4L)からの SARS-CoV-2関連ウイルス、およびシベットからの
SARS-CoV関連ウイルス(civet007からORF3b の発現プラスミドを生成し
た)とコウモリ(Rs7327、Rs4231、YN2013、Rm1)は、このタンパク質
のさまざまな長さを表する(図2B)。図2Cに示すように、4つすべての
SARS-CoV-2関連ORF3bは、ヒトIFN-I活性化を有意に抑制した。対照的に
2つのSARS-CoV関連のORF3bタンパク質、Rs4231とRm1のみが、テストし
た濃度で抗IFN-I活性 を示した(図2C)。興味深いことに、これらの2
つのSARS-CoV関連の ORF3bタンパク質はC末端が切断されており、SARS-
CoVTor2のORF3bよりも短い(図2A)。これらの発見は C末端領域(残基
115〜154)がORF3bの抗IFN-I活性を減衰させる可能性を示唆。この仮説
の実証試験、位置135に時期尚早の停止コドンを保持するSARS-CoV(Tor2)
ORF3bの C末端切断型誘導体を生成した。K135*変異体は、Rs4231のORF3b
を 模倣(図2B)。レポータアッセイはこの誘導体が野生型(WT)SARS-
CoV ORF3b よりも高い 抗IFN-I活性 を示すことを明らかにし(図2D)、
SARS-CoV ORF3bのC末端領域が実際にその抗IFN-I活性を弱めることを示
す。
✔ なので、抗インターフェロン(IFN)因子・ORF3b は 僅か22アミノ
酸と随分短いにもかかわらず感染に応じた 1型IFN(IFN-I)発動の抑制
作用がより強力であるというはなんとなくわかった、それにしても20
億年前に遡り現在までの免疫ネットワーク形成史と新コロナパンデミッ
クを8Kで織りなすNHKの編集総合力のすごさに改めて感心しする。
📌 論文:新型コロナウイルスが細胞を乗っ取る方法:
https://doi.org/10.1101/2020.05.11.088179
⛨ 囮受容体ACE2抗体の開発
新型コロナウイルスのスパイク細胞の最適化設計
感染者が者数が2000万人を超える米国の研究チームは「SARS-CoV-2が結
合する受容体を模した囮をSARS-CoV-2の感染を防ぐ方法を模索している。
SARS-CoV-2はウイルスの表面に「スパイクタンパク質」と呼ばれる突起
が存在しており、このスパイクタンパク質がヒトの細胞にあるアンジオ
テンシン変換酵素2(ACE2) という受容体と結合することで ウイルスが
細胞に感染する。ヒトに感染する際に SARS-CoV-2が ターゲットとする
ACE2受容体は、鼻腔や肺といった呼吸器、そして腸などに多く存在する
ことがわかっている。米国イリノイ大学や米国陸軍感染症医学研究所、
医療系スタートアップのOrthog-onal Biologics社の 研究者らのチーム
は ACE2受容体を模した「囮」を作成し、SARS-CoV-2の感染を防ぐ試み
について研究している。同研究チームが新たに公開した論文では、ACE2
受容体のSARS-CoV-2が結合し、一度おとりと結合したSARS-CoV-2は霊長
類の細胞と結合しなかったと報告されているもし、ACE2受容体の囮が人
体の中で、実験皿で培養された細胞と同様に機能することが確認された
場合、おとりを使った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬や
ARS-CoV-2 の感染予防薬の開発につながる可能性がある。抗ウイルス薬
として囮受容体を開発する試みは以前より行われ、2008年の論文ではヒ
ト免疫不全ウイルス(HIV)の治療薬と免疫系細胞に発現するCD4の囮を作
り、HIVと結合させる試みについて報告されおとりは研究室内で増殖させ
たHIV株とは効果的に結合したものの、実際の患者から分離されたHIV株
とはうまく結合したライノウイルスや口蹄疫ウイルス、 A型肝炎ウイル
ス、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)を標的とした実験でも、おとり受容
体はうまく機能しなかった。免疫性疾患や炎症性疾患の治療薬として承
認された受容体の囮はいくつか存在するが、抗ウイルス薬として囮受容
体が承認されることはない。ACE2受容体の囮も依然として研究初期段階
であり、もしSARS-CoV-2の治療薬として承認されれば初の囮受容体とな
る。囮受容体が抗ウイルス薬として承認される上で2つの課題----1つ
目は、おとり受容体が天然の受容体の働きを妨げてはならない。ACE2受
容体は体内で血液量や血圧を制御する働きを持ち、動物実験や臨床試験
でおとり受容体の安全性の確認を必要とする。SARS-CoV-2はACE2受容体
と結合してACE2受容体の機能を阻害し、ACE2受容体の囮は、天然の受容
体をSARS-CoV-2から守り、機能維持効果も潜在的な2つ目は、囮受容体
は標的ウイルスと高い親和性有無が問われる----であり同チームはACE2
受容体囮開発する上で何千通りものアミノ酸やタンパク質を最適な組み
合わせが必要。「sACE2.v2.4」と呼ばれる囮受容体が最もSARS-CoV-2と
結合しやすいことを突き止める。「sACE2.v2.4」は天然のACE2受容体と
わずかにタンパク質の両者のタンパク質配列の違いは全体の1%未満。
囮受容体は異なる形でSARS-CoV-2と結合する複数の抗体と混ぜる形で注
射または噴霧吸入によって体内に送達させる。
ただ、SARS-CoV-2は突然変異を繰り返しているため、特定の抗体がSARS-
CoV-2に効かなくなる可能性があり、その一方で、細胞へ侵入する利用
する受容体が変異によって変わる可能性は低く、長期的にはACE2受容体
を模した囮受容体の信頼性が高くなると考えている。
また、Apeiron Biologics社という医療系企業も ACE2受容体の囮を使い
ARS-CoV-2の感染を防ぐ試みを模索している。AperionBiologics社が作
製した囮容体は、チームが開発したものよりも天然のACE2受容体に近く、
SARS-CoV-2と結合しやすくなるよう操作されていないが、ヒトに投与し
ても重大な副作用はないとの結果が公開されている。同チームが開発し
た囮受容体と Aperion Biologics社が開発したものは異なるが、後者の
初期結果は ACE2受容体の囮の安全性が担保されると考えており SARS-
CoV-2に感染したマウスでの動物実験を開始し、毒性の有無を確認中で
ある。
図1 SARS-CoV-2 SのRBDへの高結合に対するACE2残基の配列優先
(A)nCoV-S-HighソートからのLog2エンリッチメント比は、消耗/有害
(オレンジ)からエンリッチ(濃い青)にプロット。 ACE2一次構造は
縦軸にあり、アミノ酸置換は横軸にある。野生型アミノ酸は黒色。*、
停止コドン。(B)保存スコアは、RBD(緑のリボン)に結合したプロテ
アーゼドメイン(表面)の構造(PDB6M17)にマッピングされ、リーダ
に面した基質結合キャビティに向けられている。RBDバインディング用
に保存された残基はオレンジ色。変異耐性残基は淡い色。濃縮変異のホ
ットスポットである残基は青色。ACE2ライブラリで野生型として維持さ
れている残基は灰色。グリカンは濃い赤色の棒。(C)RBDインタラクシ
ョンサーフェスを見下ろして見た。(D)平均疎水性加重濃縮比は構造
にマッピングされ、疎水性を好む残基は黄色であるのに対し、極性置換
に耐性のある残基は青で表示す。(E)ACE2 / RBDインターフェースの
拡大図(BおよびCの色)。ヒートマップは、nCoV-S-Highソートからの
log2濃縮率をプロット。
✔ 人工的な遺伝子改変は簡単だろう。問題はそれによるリスク評価に
あることは言うまでもない。
📌 The sequence of human ACE2 is suboptimal for binding the S
spike protein of SARS coronavirus 2、Version 3 bioRxiv. Preprint.
2020 May 11 doi: 10.1101/2020.03.16.994236
図6.Sへの結合が強化された設計済みsACE2。
A)sACE2-sfGFP変異体の発現は、トランスフェクトされた細胞培養物の
蛍光によって定性的に評価(B)全長Sを発現する細胞をsACE2-sfGFP 含
有培地の希釈液で染色し、フローサイトメトリーで結合を分析。
♞ リチウム空気電池の実用化を阻む充電電圧上昇の原因を特定
物質・材料研究機構 (NIMS)リチウム空気電池の充電電圧が、放電時に生
成される過酸化リチウムの「結晶性」に強く依存し、過酸化リチウムの
結晶性が高いほど充電電圧も高くなることを初めて明らかにした。それ
によると、
図2
a–d)LiTFSI / TEGDME電解液(20 ppm H2O未満)で異なるj DCから
1mAhのQ DCまで放電した後のKB電極の走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
e–h)透過型電子顕微鏡(TEM)画像およびi)同じ電極のX線回折(XRD)
パターン。すべてのXRDデータは、2θ= 54.3でのKB + CPピークの強度
に正規化。j)Li2O2の(100)反射と(101)反射の両方に対するドメイ
ンサイズとj DCのプロット。ドメインサイズは、シェラーの式を使用し
て計算。 k)異なるj DCでのDC後のTiOSO4溶液での滴定によって測定さ
れたLi2O2収率のプロット。(i–iii)とマークされたTEM画像は、それ
ぞれのjDCにおける同じ電極の3つの異なる位置を表す。白い矢印は、
Li2O2で覆われていないカーボン表面の部分を示す。(e–h)の黄色の点
線は、Li2O2 /炭素界面を示しています。標準Li2O2サンプルのXRDピー
ク位置は、(i)の下部にある黒い縦線で示されている。(k)の縦線は、
3セットの実験の測定データの誤差範囲を表している。
①.NIMSは、 リチウム空気電池の充電電圧が、放電時に生成される過酸
化リチウム (Li2O2) の 「結晶性」に強く依存し、過酸化リチウムの結
晶性が高いほど充電電圧も高くなることを初めて明らかにした。充電電
圧の上昇はリチウム空気電池の実用化を阻んでいる大きな課題だが、今
回の成果は充電電圧を抑えるための重要な指針となる。
②リチウム空気電池は、圧倒的に大きな理論エネルギー密度を有するこ
とから、ドローンやIoT機器、さらには電気自動車や家庭用蓄電システ
ムなど、様々な応用が期待されている。リチウム空気電池の最大の課題
は、充電電圧 (過電圧) が上昇することにより副反応が誘発されサイク
ル寿命が劣化する。しかし、充電電圧上昇の原因についてはほとんど分
かっていない。
③今回、研究チームは、放電生成物である過酸化リチウム (Li2O2)の結
晶性に着目し、結晶構造の乱れが大きい (結晶性が低い)方がより低い
電圧で充電 (分解) できるということを初めて明らかにした。従来、過
酸化リチウムの生成 (放電反応) には、❶カーボン電極上での反応と、
❷電解液を介した反応 (不均化反応)の2種類の経路があることが知ら
れ、今回の研究によって、①によるLi2O2は3.5 V以下で充電 (分解) で
きるのに対し、②の場合は4 V以上の電圧が必要であること、さらには
①で生成されたLi2O2の方が、結晶性が低いことが判明。この結果は、
充電電圧の上昇が反応経路②による高結晶性のLi2O2に由来しており、
その生成を抑えることで充電電圧を下げることが出来ることを示す。
④今後はこの成果をもとに、低結晶性の過酸化リチウム (Li2O2)を優先
的に生成する手段を確立することで、リチウム空気電池のサイクル寿命
の大幅増加を図り、NIMS-SoftBank先端技術開発センタにおけるリチウ
ム空気電池の実用化研究の加速につなげる。
⑤本研究は、主にJST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発
特別重点技術領域「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING)の一環として、NIMS
エネルギー・環境材料研究拠点Arghya DUTTA (オルコ・ドット)、NIMS-
SoftBank先端技術開発センタの共同研究による。研究成果は中央ヨーロ
ッパ時間2020年8月11日に、Advanced Science誌にオンライン掲載。
📌 Lithium lanthanum titanate perovskite as an anode for lithium
ion batteries、Nature Communications、DOI: 10.1038/s41467-020-1
7233-1
☈次世代の高性能バッテリー用の非常に有望なアノード材料(ペロブス
カイト結晶構造(LLTO)を備えたチタン酸リチウムランタン)の開発。
エネルギー密度、電力密度、充電率、安全性を向上----粒子サイズをマ
イクロスケールからナノスケールにダウンサイズさせることなく----さ
せ、電池サイクルの長寿命化を実現。いずれこのダウンサイジングは
第5次産業の勃興の渦に飲ま込まれていくことがわたし(たち)の調査・
研究で予見している。
【今夜も技術がてんこ盛りシリーズ】
♘ 磁気を用いて音波を一方通行に 音響整流装置の基礎原理開拓
理化学研究所の量子ナノ磁性研究チームらの国際共同研究グループは、
固体表面に沿って伝わる音波が磁石の薄膜を通過する際に、片側から入
射する場合にのみ磁石に全く吸収されずに伝わることを発見。今回、国
際共同研究グループは、「レイリー波」と呼ばれる固体表面に沿って伝
わる音波が、面上に貼り付けた磁石の薄膜を通過する際に、磁石の片側
から入射する場合と反対側から入射する場合で、磁石への吸収量が大き
く異なることを発見。このような磁石によるレイリー波の「整流効果」
は以前より知られていましたが、吸収量の差が小さく、また磁石の膜が
薄いほど弱くなると考えられていたがし、今回の実験では1.6ナノメー
トル膜の磁石で、ある方向からの入射波については吸収が全くゼロとな
る100%の整流効果を実現。これにより、表面音波を用いた情報処理や、
絶縁体における熱の運び手である音波を制御することによる廃熱の有効
利用などに向けた音響整流装置の開発に貢献すると期待されている。
図2 測定に用いた素子の模式図(A)と音波吸収量(B)
(A)水色で示したニオブ酸リチウム基板上に、磁石であるCoFeB(緑)と
それを挟むように両側に電極(IDT1,2)を微細加工した素子を作成。電極
はニオブ酸リチウムの圧電効果によって、レイリー波の生成源としても
検知器としても使用できる。
(B)左に伝わる波(赤)と右に伝わる波(青)の吸収量が大きく異なる。
♞ 細身スタイラスペンに搭載できる小型フォースセンサ
実装面積は従来製品に比べ40%
アルプスアルパインは2020年7月、実装面積が従来の40%で済むフォー
スセンサ「HSFPAR007A」を開発、量産を始めた。細身のスマートフォン
用スタイラスペンなどの用途に向ける。フォルダブルスマートフォン
(折りたたみ型スマホ)などが登場し、ディスプレイの大画面化が進む。
入力操作もタッチ方式が定着する。こうした中、従来の指先による入力
に加え、スタイラスペンを用いた入力方式も、描画系アプリケーション
などでニーズが高まっている。 同社は2019年3月、タブレットPCのスタ
イラスペンに向けたフォースセンサー「HSFPAR004A」を発売。筆圧に応
じて描画の太さを正確に再現できることから、顧客から高い評価を受け
ているという。
HSFPAR007Aは、現行製品の基本性能を維持しつつ、外形寸法を0.85×1.50
mmとした。現行製品(1.6×2.0mm)に比べ、実装面積を40%まで削減し
た。このため、スマホに向けた細身のスタイラスペンなどにも容易に搭
載することが可能となった。主な仕様は、動作荷重範囲が8Nで、ゼロス
トローク(0.01N)レベルの応力も検出できる。感度は2.5mV/V/Nで、リ
ニアリティは2%フルスケールである。耐久性は100万回、電源電圧は1.5
~3.6Vとなっている。新製品は、同社生産本部長岡工場で量産を始めた。
2021年上期には月産10万個規模とする予定だ。スタイラスペンなどの入
力機器の他、ロボットアームへの応用やZ軸の荷重検知など幅広い用途
に提案していく。
●今夜の寸評:コロナ禍とお盆
みんなに会える夏
Though they may live far away, take time to visit people you
care about.
南無阿弥陀仏
今年は親父の23回忌、母親の7回忌、そして、施餓鬼供養は宗安寺は
オンライン法要となる。ここでもコロナ禍とデジタル革命渦が重なるの
だが妙な宿命が背中を突き抜けアップバーストする。