極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

狐火の燃へつくばかり枯尾花

2018年11月30日 | 時事書評




                                  
天   瑞 てんずい
ことば
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「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は来を知らず」
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三つの楽しみ
孔子が泰山を旅行したときヽ部の町はずれで栄作期と出会った・見ればヽ栄啓期は鹿の毛皮に繩の
帯という貧相ないでたちなのに、琴をひいては歌をうたっている。孔子はたずねた。
 「伺がそんなに楽しいのですか」
 「たくさんありますよ。天が作ったもののなかでも、人間は万物の霊長。わたしはその人間に生
まれ
ることができた。これが第一の楽しみ。その人間には男女の別があって、男の方が身分が商い。
わた
しは男に生まれた。これが第二の楽しみ。せっかく人間に生まれながら目も月も見られず、産
衣のま
ま死んでゆく者もいる。だのにわたしはもう九十歳だ。これが第三の楽しみ。
貧乏は士たるものの常、死は人の終わり。常のまま終わりを迎えるのだ。わたしにはなんの心残り
もない」
「立派だ! なんとこだわりのない自由な人だろう」
 孔子は感嘆した。

杞 憂 
Anxiety
杞の国のある男が、今に天と珀がくずれたらどうしようかと、心配で心配で夜もねむれず、食物も
のどを通らなかった。これを見かねた人が、教えてやった。
「天というものは気が積もっただけさ。気はどこにでもある。からだを曲げたりのぱしたり、息を
吸ったり吐いたりするのも、一日中この天の中でしているのだ。くずれる心配などいるものか」
 男がききかえした。
「天がそんなものだとしたら、日や月や星が落ちてこないだろうか」
「日も月も星も、みな気でできているのさ。ただ光っているだけのちがいだよ。たとえ落ちてきて
ぶつかっても、けがなどするものか」
「では、他がくずれたらどうする」
「地は土くれが積み重なったものさ。どこもかしこも土なのだ。一日中この他の上を踏みしめて歩
いているのだ。くずれる心配などいるものか」
 男は心配ごとがとけて、たいへん喜んだ。教えてやった人もたいへんよろこんだ。
 この話を長庶子という人がきいて笑った。

「雨、風、雲、霧、虹、それに四季の変化も、みな積もった気が天にあらわれたものだ。山、河、
水、火、草、石、これはみな積もった形が他にあらわれたものだ。積もった気であり、積もった土
くれならば、くずれないともいえないだろう。
 いったい、天と他は虚空の中の一つのちっぽけな物にすぎない。だが目にみえるものの中ではい
ちばん大きい。その果てをきわめることができないのは当然だ。おしはかることができないのも当
然だ。
天と他がくずれ落ちるのを心配するのはたいへんなとりこし苦労だ。が、くずれ落ちないとするの
もまた正しいとはいえない。いつか、くずれる時は必ずくるだろう。その時になったら心配せずに
はいられない」

 列子がこれをきいて笑っていった。

 「天と他がくずれるというのもまちがいなら、くずれないというのもまちがいだ。誰にもわかり
はしない。だが、いったい物事は、見方によって一つの考えが成りたてば、同時に反対の考えも成
りたつものだ。生きている時は死というものがわからないし、死んだ時には生というものがわから
ない。未来は過去がわからないし、過去は未来がわからない。くずれるとか、くずれないとか、そ
んなことに気を使うには及ばない」
       
長庶子〉『史記』にも『漢書』にもその名が見える。道家に属す人であろうが、今に伝わる書物
はない。
杞憂 心配しないでいい事を心配するのを「杞憂」というのは、この話からきている。

 Kitsunebi

【歳時記:俳句トレッキング】

狐火の燃へつくばかり枯尾花    与謝蕪村

Haiku poet Buson Yosano wrote a withered Susuki(silver grass) swaying in the wind in the
field of the night in analogy to the uncanny firefly(Kitsunebi as Kigo as season words).

 

  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.20    

    

第5章
兵隊と橋が見えなくなると、ウィスタンが足を止めた。また本道を離れ、森の中をトる細道を行こ
うと言った。

「わたしには本能的な選択で、森を通る道を見るとつい行きたくなるんです」と言った。
「それに、この道を行けばかなり近道になるはずなんです。少なくとも、兵隊も歩くが山賊も歩く
という、こうい
う広い道よりずっと安全ですよ」

その後しばらく戦士が一行の先頭に立ち、どこかで拾った棒切れで茨の藪を叩き、掻き分けながら
進んだ。エドウィンは馬の日輪をとり、ときどき話しかけて落ち着かせながら、戦士の
すぐ後ろに
つづいた。おかげで、二人の後から行くアクセルとベアトリスにとって、その近道――
なのかどう
か――はかなり歩きやすくなっていた。だが、それでも山道はやはり山道だ。
しだいに険しく、歩
きにくくなっていった。周囲の木が密になり、もつれた木の根やアザミが
顔を出して、一歩一歩に
注意が必要だった。道中の二人は、いつもどおりほとんど言葉を交わ
さなかったが、途中、前の二
人からかなり後れたとき、ベアトリスが「いるの、アクセル」と
後ろを呼んだ。

「いるよ、お姫様」と、実際には数歩後ろにいるだけのアクセルが笞えた。「心配いらない。こ
あたりの森にはとくに危険だという噂はないし、大平野からは遣いしな」

「いま考えていたの、アクセル。あの戦士は役者としてかなりのものですよ。あの演技ならわたし
だって喘されたかもしれない。あんなに髪の毛を引っ張られても地を出さなかったしね」

「確かによく演じていたな」
「いま考えていたの、アクセル。わたしたち、村をかなり留守にするわけでしょう?よく行かせて
くれたと思わない?だって、まだまだ種まきだってあるし、柵や門の修理だってあるし。手が必要なときにわ
たしたちがいないって、そのうち文句が出るんじやないかしら」
「それは確かにあるだろうな、お姫様、だが、長く留守をするわけではないよ。それに息子に会い
たいという気持ちは、司祭だって理解してくれているさ」

 「そうだといいけど、アクセル。ただね、一番忙しいときにいなくなって……なんて言われた
なくて」

「そういうことを言う人はいつだっているさ。だが、ましな人たちはわかってくれるし、同じ立場
だったら自分もそうすると思っているよ」

二人はしばらく黙って歩きつづけた。やがて、「いるの、アクセルーとベアトリスがまた呼んだ。

「いるよ、お姫様」
「あれは間違っていたわよね、わたしたちの蝋燭を取り上げるなんて」
「もうどうでもいいじやないか、お姫様。それに夏になるし」
「いま思い出していたの、アクセル。わたしのこの痛みって、蝋燭がなかったせいなんじやないか
しら」

「それはどういうことかな、お姫様。どうしてそうなる」
「暗さのせいで痛みが始まったんじやないかと思うの」
「おっと、そこに鯨の木があるよ、お姫様。そこで転んだらたいへんだ」
「気をつけます。あなたもね、アクセル」
「暗さのせいで痛くなったって、どういう意味かな、お姫様」
「この前の冬、村の近くに妖精が出るって聯が流れたのを覚えている、アクセル?自分では見てい
ないけ
ど、闇を好む妖精だっていう話だったわよね。わたしたちって、長い間ずっと闇の中で過ご
していたわけだし
その妖精が知らないうちにときどき来ていたんじやないかしら。寝室に入り込ん
で、いたずらをしたんじやな
いかと思うの」

「部屋に入られたら、いくら暗くてもわかったろうよ、お姫様。たとえ真っ暗闇でも、動き回る音
とか溜息とか、何か聞こえたはずだ」

「いま思うとね、アクセル、この前の冬は、夜中に目が覚めたことが何度かあったのよ。あなたは
横でぐっすり眠っていた。でも、わたしは何かの物音で目が覚めた、と確かに思ったの」

「鼠か何かの生き物じゃないのかな、お姫様」
「そういう音じゃなかったし、聞こえたと思ったのはI度きりじゃないのよ。それでね、いま思う
と、痛みが始まったのも同じころだったの」

「まあ、妖精のせいだとしても、それがどうだと言うんだ、お姫様。おまえの痛みはちょっと
気になる程度なんだろう?悪い妖精というよりいたずら好きのやつの仕栗だろうな。エニッドさん
の編み物隨に鼠の頭を入れた悪がきがいたろう。ただ、びっくりするのを見たかったっ
ていう、あ
れと同じだ」

「そうよね。そうだわ、アクセル。悪さというより遊び半分ね。そのとおりだと思う。それでもね、
あなた……」ベアトリスはしばらく口を閉じ、幹が触れ白っている二本の古木の隙間を
抜けること
に専念した。そしてつづけた。「それでも、村に帰ったら、やはり夜には蝋燭がほし
いわね。妖精
ならまだしも、もっとたちの悪い何かに変なことをされたくないもの」

「なんとかするさ。心配いらないよ、お姫様。村に炭ったら、すぐに司祭に話そう。それに、これ
から行く修道院で痛みの治し方を坊さんたちに教えてもらえるかもしれない。そうした
ら、これま
でのいたずらはもうなくなるも同然だI

「そうね、アクセル。もともとそんなに心配しているわけじゃないの」

                       

近道になるというウィスタンの言葉が正しかったのかどうか、判断は難しい。いずれにせよ、真昼
を少し過ぎたころ、四人は森を出て本道に戻った。そのあたりはいたるところ轍だら
けで、ぬかる
みも点在していたが、やはり本道だけあって、歩きやすさは段違いだ。しかも先
へ行くにつれて地
面は乾き、平らになっていった。頭上に差しかかる木々の枝の合間から心地
よい日の光が射し込み、
四人は上機嫌で旅をつづけた。


やがてウィスタンがまた停止の合図を出した。道の前方を指差し、「一騎、前に行っています
ね。
さほど遠くありません」と言った。さらに少し行くと、道の前方片側に空き地が見え、真
新しい足
跡がそこへ向かってつづいていた。四人は顔を見合わせ、慎重に前進した。

空き地に近づいた。かなりの大きさかおる。かつて繁栄していた時代に、ここに誰かが家を建てよ
うとしたのかもしれない。きっと果樹園で囲まれた家になるはずだったろう。本道から
分かれる脇
道は、いまでこそ雑草に覆われているが、よく見れば丁寧に掘られていて、その終
点に大きな円形
の空き地がある。上に天があるだけの空っぽの地面だが、中央に一本、オーク
の大木が立ち、大き
く枝を広げていた。一行がいまいる場所からも、その大木の下に一つの人
影が見えた。木の影に覆
われた地面にすわり、木の幹に背中を預けている。いまは横からの輪
郭しか見えないが、どうも甲
冑をまとっているようだ。金属に覆われた二本の脚をどすんと草
の上に投げ出しているところが、
なんだか子供を思わせる。幹から突き出している枝葉のせい
で顔がよく見えないが、兜はかぶって
いない。近くで、鞍を置いた馬がのんびり草を食んでい
た,

「名乗られよ」と男の声が木の下から呼んだ。「山賊や盗賊ならば、剣を手にお相手つかまつる」
「返事を、アクセル殿」とウィスタンがささやいた。「何のつもりか探りましょう」
「ただの旅人です、騎士殿」とアクセルが答えた。「どうぞこのままお通しください」
「総勢何人か。馬の足音も聞こえるようだが」
「蹄を傷めた馬一頭に人間四人です、騎士殿。わたしと妻は老いたブリトン人。迪れは、まだ髭も
ないサクソンの少年と、半白痴で唖者の兄です。兄弟の親類縁者からわたしどもに託されました」
「では、こちらへ参られよ、友よ。分かち合えるパンがある。休息をお望みであろう。わしも話し
相手がほしい」
「行くの、アクセル?」とベアトリスが言った。
アクセルが返事をするまえに、「行きましょう」とウィスタンが言った。「けっこうなお年のよう
だし、危険はないでしょう。ですが、お芝居はつづけましょう。わたしはまた例の口と目に戻りま
す」
「でも、甲胃姿で、武器を持っていますよ、ウィスタン様」とベアトリスが言った。「あなたの剣
は毛布や蜂蜜の壹と一緒に馬の背です。いざというとき間に合いますか」
「剣は、疑り深い目から隠しておくのが一番です、奥様。大丈夫、必要なときにはすぐに取り出せ
ます。エドウィンが手綱を持って、馬がわたしからあまり遠く離れないようにしていてくれますか
ら」
「友よ、こちらへ参られよ」見知らぬ男は強張った姿勢のまま、身じろぎ一つせずに言った。
「心配は無用。わしは騎士で、やはりブリトン入だ。確かに武装しておるが、近くに寄れば、ただ
の髭もじやの老いぼれにすぎぬことがわかる。身につけているこの剣と甲冑は、わが敬愛する王、
かの偉大なるアーサー王に命じられた任務を果たすためのもの。王が天国に旅立たれてから、はや
何年か。わしが怒りのうちにこの剣を抜いたのも、同様に昔のことよ。そこにおるわが軍馬ホレス
も老いた。哀れな。これだけの金物をずっと背負いつづけてきて、見よ、脚は曲がり、背中は垂れ
ておる。わしがまたがるたびに苦しむ。だが、わがホレスは大きな心の持ち主だ。この生き方以外
、断じて受け付けないことをわしは知っておる。だからこうして、偉大な王の名のもとに完全武装
で旅をつづけておる。わしかホレスがもうI歩たりと進めなくなるまで、旅はつづく。さあ、友よ。
恐れずともよい」

「一行は脇道から空き地に入り、オークの大木に向かった。近づくにつれ、騎士の言葉どおり、恐
れるには及ぼないことがアクセルにもわかってきた。とても背が高そうな騎士だが、甲冑の中身は
筋金入りというより、ただ痩せ緬っているだけに見える。甲冑はぼろぼろで、錆が目立つ。たぶん
、修繕に修繕を重ねてきたものだろう。本来は白かったと思われるチュニックにも、繕いの跡が歴
然としている。甲冑から突き出した顔はやさしそうで皺だらけだし、頭はほぼ禿げていて、白い長
い毛が数本飛び出し、風になびいている。両脚を大きく開いて投げ出し、地面にへたり込んでいる
姿は、普通なら哀れをもよおす光景だったろう。だが、ちょうど頭上の枝の合間から日の光が射し
、男の体に光と影のまだら模様を作っていた。男はまるで玉座にすわる入物のように見えた。
 
「あわれなホレスは、今朝、食事の機会を逸した。目覚めたのが、たまたま岩だらけの場所だった
のでな。しかも、わしが朝じゆう急がせた。さよう、不機嫌で、休みもやらず歩かせつづけたこと
を認めよう。ホレスの歩みはどんどん遅くなったが、わしもいまではこいつの芸を知りつくしてい
て、譲らなかった。疲れてなどおらんはず-そう言って、少し拍車をくれさえした。これは多芸な
馬でな、いろんな技を仕掛けてくるが、わしは間く耳持たんのが常だ。だが、今朝はなぜか足取り
が重くなる一方で……そこで非情になりきれんのがわしの悪い癖だ。
こいつがあざわらっているのを承知で、よしよしと言ってしまった。止まっていいぞ、ホレス。食
え、と。こうして、諸君の前に、馬にまでばかにされたじじいの身をさらしているというわけだ。
さあ、参られよ」騎士は、甲冑をがちやがちや言わせながら手を仲ばし、目の前の草の上に置いて
あった袋から一塊のパンを取り出した。「焼き立てだ。通りかかった粉屋でもらった。一時間も経
っておらん。さあ、友よ、すわれ。食おうではないか」

アクセルに腕を支えられ、ベアトリスがオークの節くれだった根に腰をおろした。アクセルも妻と
老騎士の間にすわった。すわってみて、背後の苔むした幹に背を預けられることをありかたいと思
った。頭上からは、樹冠を飛び回る鳥の歌声が聞こえる。回されてきたパンは焼き立てで柔らかか
った。ベアトリスはしばらくアクセルの肩に寄りかかり、荒い呼吸に胸を波打たせていたが、やが
ておいしそうに食べはじめた。
ウィスタンはすわらなかった。しばらくケタケタと笑い、愚かさのほどを騎士にたっぷり見せつけ
てから、ふらふらと去っていった。向かう先には、馬の手綱をもって丈高い草の中に立っているエ
ドウィンがいる。ベアトリスがパンを食べ終え、身を乗り出して老騎士に話しかけた。

「ご挨拶が遅くなって申し訳ありません、騎士様」と言った。「でも、本物の騎士様を見ることな
どめったにありませんから、畏れ多くて。お怒りでないといいのですけど……」
「怒ってなどおりませんよ、ご婦人。お会いできて嬉しいかぎりだ。先はまだ遠いのですかな」
 「息子の村に行きます。この山中にある修道院の賢者にお会いしたくて山道を来ましたから、
あと一日というところでしょうか」
「ああ、修道僧の面々か。あなた方なら親身にしてもらえよう。わしも昨春はホレスのことでずい
ぶん肋けてもらった。蹄に毒が入ってしまってな、もう生き延びられないかと心配した。わし自身
も何年か前、落馬の怪我から回復するとき、修道院の痛み止めにはたいへん世話になった。だが、
あの唖者の治療を求めておるのなら、あの唇に言葉を取り戻すのは神にしかできぬ業であろう」

騎士はそう言いながらウィスタンを見やったが、そのウィスタンは白痴の表情を顔から拭い去り、
まっすぐ騎士目かけて歩いてくるところだった。
「驚かせて申し訳ありません、騎士殿。言葉を取り戻しました」と言った。
老騎士はあっけにとられ、ついで甲冑をきしませながら身をよじって、問い質したそうにアクセル
を見た。
「友人を責めないでください、騎士殿」とウィスタンが言った。「わたしの頼みでしていたことで
す。あなたを恐れる理由がないとわかりましたので、偽りのしぐさをやめます。どうぞお許しを」
「気にはせんよ」と老騎士が言った。「この世では用心するに越したことはない。だが、今度はわ
しがそなたを恐れなくていいように、何者か教えてもらえるかな」 「東の沼沢地から来たウィスタンと言いま
す、騎士殿。王の用事で、このあたりを旅しています」
 「それはまた遠くからだ」
 「はい、遠くから。このあたりの道は見慣れていないはずなのですが、なぜか、角を一つ曲がるごとに遠い
昔の記憶が騒ぐような気がします」
 「では、いつか来たことがあるに違いない」
 「おそらく。わたしの生まれは沼沢地ではなく、ここよりもっと西の国だと聞かされています。ですから、お
目にかかれたのはますます幸運でした、騎士殿。あなたはガウェイン卿ではありませんか。西国のご出身
で、いまはこのあたりを巡っておられるという……?」
 「わしは確かにガウェインだ。かつて英知と正義でこの国を治めた偉大なるアーサー王の甥、ガウェイン
だ。数年前までは西国に腰を据えていたが、いまはホレスとともに気の向くまま旅をしておる」
 「好きに時間が使えるものなら、わたしも今日にも西に向かい、かの国の空気をこの胸に吸ってみたいも
のです。ですが、早く王の用事をすませ、知らせを持ち帰らねばなりません。偉大なアーサー王の甥、騎士
ガウェイン殿にお目にかかれたのはじつに光栄です。サクソン人のわたしでも、王の名には尊崇の念を抱
いています」
 「それを聞いて、わしも嬉しい」
 「ガウェイン卿、わたしの言葉が奇跡的に回復したところで、お尋ねしたいことがあります」
「なんでも」
「あなたの横にすわっているご老人は、アクセル殿と言います。ここから二日のところにあるキ
リスト教の
村に、農夫として暮らしておいでです。年齢的にはガウェイン卿ご自身と近いでしょ
う。そこで、このご老人
のお顔をご覧ください。かつてあなたが見知っていた誰かに似ていま
せんか」

「何をまた、ウィスタン様」眠っているとばかり思っていたベアトリスがそう言って、身を乗り
した。

「それ
はどういう意味ですの」
「悪気はありません、奥様。ガウェイン卿は西国の方です。昔、あなたのご主人を見かけたこと
がないか
なと思いまして。別に悪いことではないでしょう?」
「ウィスタン殿」とアクセルが呼んだ。「最初に出会ってから、ときどき不思議そうな顔でわた
しを見ておら
れるので、か理由を、と思っていました。わたしを誰だとお思いでしたか」

見下ろすように立っていたウィスタンが膝を折ってしやがみ、オークの下に並んですわる三人と
顔を突き
合わせた。威圧感を与えないようにという配慮からしたことかもしれないが、アクセル
には、三人の顔をも
っとよく見たくてしたことのように思えた。

「とりあえず、ガウェイン卿、お願いです」とウィスタンが言った。「頭を少し回すだけですか
ことです。子
供の遊びと思っていただきたい。どうでしょう。横のご老人を見て、過去に会っ
ことがあるかどうか教えてください、ガウェイン卿」


ガウェインはフフフと笑い、上体を前に動かした。まるで遊びへの参加を求められて、積極
に楽
しもうとしているかに見えた。だが、アクセルの顔を見つめているうち、表情が驚きの
れに変わ
った。衝撃を受けた人の表情と言ってもいいかもしれない。アクセルが本能的に顔
をそむけるの
と同時に、老騎士も上体を引き戻し、また木の幹に寄りかかった。

            
                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                    この項つづく

 
【エネルギー通貨制時代 22】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

【蓄電池篇:最新蓄電池技術事例】
●酸化ケイ素ナノ薄膜で容量5倍のリチウムイオン電池負極 高容量・小型化
11月21日、産業技術総合研究所は月、導電性基板上に蒸着でナノメートルスケールの一酸化
ケイ素(SiO)薄膜を形成し、その上に導電助剤を積層させた構造のリチウムイオン2次電池用負
極を開発したことを公表している。それによると、長寿命でありながら、現在主流である黒鉛負
極の約5倍に相当する容量を持ち、リチウムイオン2次電池の高容量化や小型化に貢献する。

リチウムイオン2次電池の高容量化には、負極の活性化物質に一酸化ケイ素を用いることが有望
としれてきた。ケイ素は充放電に伴うリチウムイオンの取り込みと放出で300%以上の体積変
化が生じ、活物質、導電助剤、結着剤からなる電極構造が維持できず劣化する。そこで、粒子径
300~500nm(ナノメートル)以下まで微細化すれば劣化の抑制効果が見られるという特性を生
かし、一酸化ケイ素の薄膜を作製。❶
まず、集電体であるステンレス上に一酸化ケイ素を蒸着。
❷導電性を付与に、導電助剤としてカーボンブラックに結着剤を加え分散させた混合液を、蒸着
した一酸化ケイ素膜の上から塗布・乾燥させて導電助剤層を作製、❸一酸化ケイ素薄膜に導電助
剤層を積層

この電極を負極とし、正極としてリチウム(Li)を用いた電池の充放電容量の、サイクルごとの
変化を調べる。ここで、以前からある粒径10μm(マイクロメートル)の一酸化ケイ素粉末で作
製した電極と、現行の材料である黒鉛を用いた電極を用いた2つの電池との比較を行う。
従来の
粉末を用いた電極ではサイクルに伴う容量劣化が顕著だったが、黒鉛電極ではサイクル劣化は見
られないが、容量は372mAh/gと小さい。これに対して、今回開発した電極は、1サイクル目から
大容量が得られ、その後の充放電でも安定した容量を保ち、200サイクルを経ても2000mAh/g以上
の容量を示す。2サイクルから200サイクル目まで容量維持率は97.8%を示し、200サイクルでの
クーロン効率は99.4%と、充放電におけるリチウムの取り込みと放出が可逆的に行われているこ
とが検証。
今回得られた2000mAh/gを超える容量は、一酸化ケイ素の理論容量2007mAh/gとほぼ一
致し、電極を構成する一酸化ケイ素のほぼ全てを電池の活物質として利用できていることが分か
る。

但し、この電極は初回充電時に大容量を必要とし、充放電に関与しないリチウムケイ素酸化物(
Li4SiO4)の生成反応に消費され、このまでは、正極リチウムの消費性能が低下。今後、あらかじ
めリチウムと反応させるプレドープ処理した電極を、既存正極と組み合わせ、性能実証試験を行
う方針。併せて、蒸着法やそれ以外の方法での拡大試験も実施する予定。

【関連最新特許】
❑ 特開2018-172244 リチウムスズ硫化物 国立研究開発法人産業技術 2018.11.08
リチウム、スズ及び硫黄を構成元素として含み、前記リチウムと前記スズとの組成比Li/Sn
モル比
で1.5~3.5であり、前記硫黄と前記スズとの組成比(S/Sn)がモル比で2.5~4.5であり、
立方晶岩塩型構造の結晶相を有する、リチウムスズ硫化物で、イオン伝導度が高く、リチウムイ
オン二次電池用の固体電解質又は電極活物質として使用することができる化合物の提供。

尚、紙面の都合上で記載漏れ記事は後日掲載。


 網膜裂孔は突然に
11月18日、15:00、左眼に異変が起きる。網膜裂孔(血液が眼球にリーク)。10年前
にもディスプレイでの仕事中に発生(異常結象)。翌日レーザー網膜光凝固術、3日間安静し、
10日後再検査、2月末要観察。『ラブ・ストーリーは突然に』は『愛と死をみつめて』に変わ
ってしまってか
?故石井智幸と誓い合った"革命”はここで潰えるというのか?

  今夜の一品

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妹を求めむ山道知らずも

2018年11月28日 | デジタル革命渦論




                                  
天   瑞 てんずい
ことば
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「いずくんぞわが今の死の、昔の生に愈らざることを知らんや」
「生は死を知らず、死は生を知らず、来は去を知らず、去は来を知らず」
----------------------------------------------------------------------------------------
人生の楽しみ
林類はもう百歳に近い老人である。春なのに、まだ冬の毛皮を着たまま、田のあぜで鼻歌まじりに
落ち穂をひろっている。
おりから衛の国へ行く孔子がこの姿をみかけ、弟子たちをふりむいた。

「ほう、ちょっとおもしろそうな老人だな。誰か声をかけてみないか」

子貢は田のはずれの小高いおかで待ちうけた。
「ご老人ヽ落ち狛ひろいなどしてるのに鼻歌ですか・ご自分をみじめだとは思いませんか」
林類は手をやすめるでもなく、歌をやめるでもない。子貢はくりかえしてきいた。ようやく林類は
顔をあげた゜
「なんでみじめなのかね」
「若いころ勉強しておけばよかった。出世の道を考えればよかった。妻子があればよかった。……
んなことは考えませんか。もう人生も終わりに近づいているのに何が楽しくて鼻歌ですか。十落
ち穂な
どひろっていて」

林類はわらった。

「ひとがみじめと思うことがわしには楽しみなのだ。お前のいうとおり、若いころ勉強しなかった。
おとなになっても出世など考えなかった。おかげで長生きもできたのだ。年とって妻子もなく、人
も終わりに近い。だから、こうして楽しいのだ」 
「誰でも長生きしたがって、死にたくないものです。だのにあなたは死ぬのが楽しいといわれる。
ういうわけですか」
「人間はこの世とあの世の問をいったりきたりしているのだ。今死んだ者が次の世に生まれかねる。
だから、どちらがいいかわからない。あくせく長生きしようとあがくのも、迷いというものだ。今
うして死ぬのが前世よりしあわせかもしれないでばないか」

子貢にはその草昧がわからず、かえってきて孔子に報告した。
「やっぱりおもしろい老人だったな。だが、まだ悟りきっているとはいえない」と孔子はいった。

 〈林類〉実在の人物ではあるまい。欲望を捨て去って、木や林の類に近い人物、という意味であ
ろう。『列子』は寓話的色彩が強く、登場人物の名も寓意的なものが多い。
〈子貢〉 孔子の年若い弟子。雄弁家だった。
『列子』の中の孔子 『列子』巾の孔子は、否定的に嘲笑されるか、または、孔子に名をかりて
『列子』福さん者の道家的思想を述べるかのどちらかである。この話は後者の場合である。実在
の孔子とは何の関係もない。
ここでの孔子は林類以上に悟っている。すなわち、林類はまだ「生と死」「この世とあの世」
を比較して、両者に大差はないといっている段階にとどまっている。だが、比較すること自体が
両者の区別を認めていることになる。だから悟りきっていない、というのである。
生と死の問題に対する『列子』書の解答は、かなり仏教に近いことがこの篇からもうかがえる
あろう。

 

中国,春秋時代の思想家。名は禦寇 (ぎょこう) 。虚心説を唱え,その著書に『列子』がある。
実際には,戦国時代末期に列子を祖師とする一派があり,同名の文献を伝えていたが,その後亡
びたものらしい。現存の『列子』8編は,道家の説をもととして敷延した魏晋頃の偽作と考えら
れる。 書物は8編で晋(しん)の張湛(ちょうたん)の注がついている。著作の時代ははっきりせず、
書中に戦国末の人名があったり、漢代に流行した緯書(いしょ)説と同じ生成論があったり、仏陀
(ぶっだ)を思わせるような「西方の聖人」を疑う説があったりするために、明(みん)のころから
疑われ、今日では魏(ぎ)・晋(しん)間(3世紀ごろ)の偽作とする説が有力である。

ただ、内容には、『荘子』と重なるところで『列子』のほうが古くみえるところもあり、古い資
料によりながら修飾を加え、また新しく書き加えたというのが真相であろう。したがって、純粋
な列子の思想は明らかにしがたいが、『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』で「虚を貴んだ」とい
われているのを根拠にすると、利害得失の念にとらわれない虚心の処世を善しとしたものである
らしい。『老子』のいう無為、無知、無欲などに通ずる思想であろう。『列子』では、天地の生
成変化を論じて形と気と質の三者が混じた「太易(たいえき)」をその始源に置き、死生の往反
説いて神仙的養生説にも及び、運命を説き夢を説き、激しい快楽説を唱えるなど、さまざまに特
色のある記事が少なくないが、また『荘子』をはじめとする他書との重複文も多い。
列子の像は、『荘子』のなかでも「風に御(ぎょ)して行く」などといわれて仙人めいた風貌(ふ
うぼう)もあるが、『列仙伝』や『神仙伝』ではまだ仙人として著録されない。しかし、唐代に
なると、道教の信仰に伴って荘子や尹文子(いんぶんし)とともに神格化され、冲虚真人(ちゅ
きょしんじん)と号して祀(まつ)られる。書物も『冲虚真経』とよばれ、宋(そう)代では
『冲虚
至徳真経』ともなって尊重された。(出典:『福永光司訳注『中国古典文学大系4 列子』
(19
73・平凡社)』)

 列子解題


【下の句トレッキング:妹を求めむ山道知らずも】

秋山の黄葉を茂み迷(まと)いぬる妹を求めむ山道(やまじ)知らずも / 柿本人麻呂

人麻呂は大和の軽(かる)の地にひそかに妻を持っていた。今の橿原市内。だが妻が死ぬ。かれ
は悲しみにくれた挽歌で、長歌とその反歌(かえしうた:長歌の内容をもう一度要約する)たる
挽歌。上はその短歌。「茂み」は茂っているので。歌はここで一旦切れる。「迷ひぬる」は山路
に迷った。実際は死んでしまったこと。秋の山の黄葉があまりに深く茂っているので、迷いこん
だ恋しい妻を探そうにも道が分らない。その時を、心情を重ね合わせてみる。

 

 
【エネルギー通貨制時代 21】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

今回は、先回の出力制御問題解決の残件――❶フライホイール技術、❷バイオマスウエットビー
ズミル処理及びバイオアルコール製造技術を掲載する。



【蓄電事業篇:最新フライホイール技術】


● 10万年間も磁場を発生し続けるNMRコイル
11月2日、化学研究所(理研)らによる研究グループは高温超電導線材を用いて超電導接合し
超電導コイルNMRコイル)を開発し、9.39テスラの磁場中で永久電流運転の成功を発表。現
行の核磁気共鳴(NMR)装置や核磁気共鳴画像(MRI)装置には、液体ヘリウム温度(-269℃)
レベルで超電導となる金属系低温超電導線材が用いられている。これだと冷却のために高いコス
トが必要となっていた。これに対し、レアアース系やビスマス系の高温超電導線材は、液体窒素
温度(-196℃)で超電導となる。このため冷却などのコストが安価で取り扱いも容易で実用化
に向けた研究が進められている。

今回、レアアース系高温超電導線材1本で巻いた小型のNMR用内層コイルを作製。❶コイルから引
き出した薄いテープ形状の線材を、構造物の障害にならないよう引き回し、さらに❷コイルから
漏れる磁場が接合部の電気抵抗ゼロ特性に影響を及ぼさないよう、最適な接合部の位置を割り出
した。その上で、線材と永久電流スイッチのそれぞれの両端部を熱処理し超電導接合し、このコ
イルを外層コイルの内側に設置する
これらのコイルにそれぞれ外部電源から電流を流した。高温超電導線材を用いた内層コイルの磁
場が4MHz、低温超電導線材の外層コイルが396MHzを発生し、合計400MHzの磁場を達成。その後、
永久電流スイッチを動作させ、外部電源を切り離したところ、永久電流運転を始めた。共同研究
グループは、2日間にわたり磁場の変動計測した結果、1時間当たり10億分の1レベルという高
い安定度を得ることができ、コイルを冷やし続けると外部電源なしで10万年間も磁場が発生し
続けることに相当。こうした安定磁場で、NMR信号の取得にも成功する。 
尚、この接合技術は超電導フライホイールに適用しフライホイールのコンパクト化に寄与する。


● 特許事例研究
❑ 特開2018-182865 電力平準化装置
【概要】
再生可能エネルギーによる発電技術の分野では、主に鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の蓄電装
置が用いられている。しかし、これらの化学作用による蓄電装置では、例えば環境温度、充放電
回数等の使用環境に起因した劣化が発生することから、定期的なメンテナンスが必要となる。
一方で、フライホイールを用いた蓄電装置が知られている。フライホイールを用いた蓄電装置は、
化学作用によるものではなく、メンテナンス性のよいことが知られており、劣化寿命を長くする
ことができ、メンテナンスの回数を減らすことができる。この蓄電装置は、フライホイールに蓄
積されたエネルギーにより、電源系統の瞬時停電時等の電力ロスを補償するUPS(無停電電源
装置)
として使用される。

しかし、フライホイールを用いた蓄電装置では、❶大気中で使用されるフライホイール自体に風
損があり、?フライホイールを駆動するモータの損失もあり改善すべき点がある。
フライホイール
を駆動するモータとしては、例えば誘導電動機が用いられる(例えば特許文献1)。この特許文
献1の技術は、誘導電動機及びフライホイールを用いた蓄電装置に対し、充放電電力を制御する
ことで、電源系統の電力を平準化する。
❷しかし、フライホイールにエネルギーの蓄積には、フ
ライホイールを継続的に高速で回転させる必要があり、誘導電動機では、モータの構造上、堅牢
性の面で不十分
であるという問題があった。例えば、誘導電動機には固定軸のジュール損があり、
発電効率を低下させる原因となっている。❸
また、フライホイールを駆動するモータとして、
ンクロナスリラクタンスモータ
が用いられる場合もある(例えば特許文献2、非特許文献1を参
照)。シンクロナスリラクタンスモータは固定子導体を有していないことから、誘導電動機を用
いた場合の問題を解決することができる。この特許文献2の技術は、フライホイールが連結され
たシンクロナスリラクタンスモータを制御することで、駆動モード時には、電源系統からエネル
ギーをフライホイールに蓄積し、回生モード時には、フライホイールに蓄積されたエネルギーを
電源系統へ供給するものである。
つまり、駆動モード時には、シンクロナスリラクタンスモータ
及びフライホイールが一定速度で回転し、電源系統の電力がフライホイールへ供給され、フライ
ホイールに機械エネルギーとして蓄積される。また、回生モード時には、フライホイールの回転
により蓄積された機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、電源系統へ供給される。

電源系統に接続された負荷が変動し、電源系統の電力が変動(脈動)した場合には、前述の蓄電
装置に蓄積されたエネルギーが電源系統へ供給されることで、負荷変動を補償することができる。

通常、電源系統に接続された負荷の変動には、?低速な負荷変動と?高速な負荷変動がある。低速
な負荷変動は、低速であるが大容量の電力変動をもたらすものであり、高速な負荷変動は、高速
であるが小容量の電力変動をもたらすものである。前述のフライホイールを用いた蓄電装置を用
いた場合、フライホイールには所定のイナーシャが存在することから、低速な負荷変動を補償に
対応させる。そこで、本件は、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動及び高速な負
荷変動を補償可能な電力平準化装置を提供
するものである。

下図2のように、電力平準化装置1のSynRM制御部21は、連系点電圧V、負荷電流IL等に
基づいてFW回転速度基本指令Wfw_refbを算出し、FW回転速度基本指令Wfw_refb及びFW回転
速度Wfwに基づいてエネルギー偏差を求め、エネルギー偏差を反映したFW回転速度指令Wfw_ref
を生成してSynRM駆動インバータ2へ出力する。キャパシタ制御部23は、制限後バス電流
指令Idc_Lmtに基づいて高周波成分が反映されたキャパシタ電流指令Icap_refを生成し、キャパ
シタ電流偏差が0となるようにキャパシタ指令を生成し、キャパシタ指令から、キャパシタ電圧
Vcapからバス電圧Vdcを減算した電圧差を減算し、キャパシタ電圧指令Vcap_refを生成してD
C/DCコンバータ4へ出力することで、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動及
び高速な負荷変動を補償――以上のように、電源系統の電力を平準化する際に、低速な負荷変動
はフライホイールにて対応し、高速な負荷変動はキャパシタにて対応することで、低速な負荷変
動及び高速な負荷変動を補償することが可能となる


【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による電力平準化装置を含む全体システムの構成例を示す概略図
【図2】電力平準化装置の構成例を示すブロック図
【図3】SynRM制御部、SynRM駆動インバータ及びSynRMの構成例を示すブロック図
【図4】連系インバータの構成例を示すブロック図
【図5】キャパシタ制御部、DC/DCコンバータ及びキャパシタの構成例を示すブロック図

 

【符号の説明】
1 電力平準化装置 2 SynRM(シンクロナスリラクタンスモータ)駆動インバータ 3 連
系インバータ 4 DC/DCコンバータ 5 SynRM 6 FW(フライホイール) 7 キ
ャパシタ 8 電源 9 負荷 11,13,15 電圧検出器 12,16 電流検出器 14
レゾルバ(回転角センサ) 21 SynRM制御部 22 バス電圧指令出力部 23 キャパ
シタ制御部 31 演算器 32 ランプ器 33,35 絶対値演算器 34,36 乗算器 
37,40,51,63,64,66,67 減算器 38 エネルギーレギュレータ 39 加
算器 41 速度制御器 52 電圧制御器 53,61 LPF(ローパスフィルタ) 54,
62 リミッタ 65 電流制御器 71 PWM(パルス幅変調)器 Vdc_ref バス電圧指令 
Wfw_ref FW回転速度指令 Idc_Lmt 制限後バス電流指令 Vcap_ref キャパシタ電圧指令 
Wfw_refb FW回転速度基本指令 W_ref ランプ後FW回転速度基本指令 W_ref2 FW回転
速度指令エネルギー Wfw2 FW回転速度フィードバックエネルギー Δω ドループ速度成分 
Idc バス電流指令 Icap_ref キャパシタ電流指令 V 連系点電圧 IL 負荷電流 Vdc バ
ス電圧 Wfw FW回転速度 Wfw_Hat FW回転速度推定値 Vcap キャパシタ電圧 Icap キ
ャパシタ電流



【オールバイオマスシステム事業篇:最新バイオマス粉砕技術】

 

❏ 特開2016-145716放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理方法
【概要】
下図1のごとく、放射性セシウムを含む植物バイオマスから、糖質を含み且つ放射性セシウムの
50%以上が移行した液相部と、固相部とを得る分解工程S1と、放射性セシウムを含む液相部
を発酵させて、放射性セシウムを含む液相部廃液と、放射性セシウムを含まない第1気相部とを
得る液相部発酵工程S2と、固相部を発酵させて固相部残渣と、固相部廃液と、放射性セシウム
を含まない第2気相部とを得る固相部発酵工程S3とを備えている。分解工程は、植物バイオマ
スに糖化酵素を添加して粉砕する湿式ミリング処理を含むことで、放射性セシウムを含む植物バ
イオマスを、有効活用しつつ減容化する処理方法を提供する。

❏ 特許4065960 エタノール及び乳酸の製造方法
【概要】
パーム油は、世界で約3,550万トン/年生産され、そのうちの約87%をマレーシアとイン
ドネシアの2カ国で半々を占める東南アジアの代表的な農産物である(2005年実績、アメリ
カ農務省統計資料)。パーム油は大豆油等と比較し安価であることから、マーガリンや揚げ物用
の油など食用に利用されるほか石鹸や化粧品など工業用途に多用る。

パーム油生産のために栽培されるオイルパーム(アブラヤシ)は、生産性を維持に、20~25
年の間隔で再植栽培が必要としマレーシアの場合、1980年からの本格的なプランテーション
に現在年間約4万ヘクタールの再植栽培、約3000万トンのパーム幹が伐採している。これま
でのプランテーション面積拡大結果として、毎年約20万~25万ヘクタールもの再植栽培を見
込む。再植栽培による伐採オイルパームは、幹に薬物を注入して立ち枯れさせるか、伐採後プラ
ンテーション内で放置、焼却処分、深刻な環境破壊につながるとが懸念され、環境負荷を掛けな
い活用法の開発が求められている。

オイルパーム幹は他の木質系バイオマスと異なり、幹の大部分が維管束や維管束を取り巻く繊維
質で構成され、木材としての耐久性が不十分で、利用方法としては比較的強固な外皮を合板等の
表面加工資材として利用する程度、その他の部分は未利用、廃棄し、特に幹の内側部分の有効利
用法開発が必要である。
一方、近年、石油資源の枯渇や地球温暖化問題の軽減方策として燃料用
エタノールなど石油代替エネルギーや乳酸などバイオプラスチック原料の製造技術の開発が活発
に行われ、燃料用エタノールは、自動車燃料であるガソリンの代替燃料として利用され、その需
要は非常に大きく
、現在、燃料用エタノールの多くはトウモロコシ澱粉やサトウキビ汁等の食用
農産物から製造され、将来の人口増に伴う食用農産物需要増大により、食用途とエネルギー用途
間での競合が生じると予想され、め農作物の未利用部分、即ち、農産廃棄物から燃料用エタノー
ルなどへの変換技術の開発が切望されているものの、未だ技術開発は困難を極めている。伐採さ
れるオイルパーム幹は、産出される量、持続的なオイルパーム産業の発展及び環境負荷低減の観
点からも非常に有望なバイオマス資源である。

下図1のごとく伐採されたオイルパーム幹10から採取した組成物である樹液を微生物で発酵し
てエタノールを製造する。また、オイルパーム幹から採取した樹液と樹液を採取した後のオイル
パーム幹の繊維を加水分解処理して得た単糖及びオリゴ糖の混合糖液とを混合し、微生物で発酵
してもよい。一方、伐採されたオイルパーム幹から採取した組成物である樹液を微生物で発酵し
て乳酸を製造する。このとき、オイルパーム幹から採取した樹液と樹液を採取した後のオイルパ
ーム幹の繊維を加水分解処理して得た単糖及びオリゴ糖の混合糖液とを混合し、微生物で発酵し
てもよい、効率よく安定して安価に得られるエタノール及び乳酸並びにこれらの製造方法を提供
する。

【符号の説明】
10:オイルパーム幹 11:中心領域 12:中間領域 13:外側領域 14:樹皮 15:グル
コースのピーク


❏ 特開2013-141415単糖の製造方法及び製造装置並びにエタノールの製造方法
  及び製造装置

【概要】
固体酸触媒による処理においては、完全混合流れ方式の連続槽型反応器(CSTR)で固体酸触
媒とオリゴ糖等とを攪拌して反応を行う場合、原料と生成物とが均一混合される混合流れ方式の
特性として、反応器から得られる生成物中に未反応原料が存在するため、高い単糖収率・転化率
を得ることは難しい。又、反応後に固体酸触媒を沈降分離して除去する操作が必要になるが、攪
拌中の衝突等によって固体酸触媒の微細な破砕粉が生じると、これを除去するには、固体酸触媒
の沈降分離に要する時間が非常に長くなり、沈降分離時間が不十分だと、得られる生成物に微細
粒子が含まれ、生成物を用いてエタノールや他の化学物質を生成すると、その際の発酵反応や化
学反応に対して影響を及ぼすなどの問題がある。
一方、触媒を充填した固定層式の管型反応器(PFR)の場合、原料と生成物とは混合されない
ので、高い収率・転化率を得ることはできるが、分解が不十分な低分子量セルロースやバイオマ
ス粒子が固体酸触媒間の目詰まりを起こし易く、反応器を閉塞させる可能性がある。
本発明は、
反応の収率・転化率を高めると共に、触媒反応後の固体酸触媒の分離時間及び閉塞に関する問題
を解消し、リグノセルロース系バイオマスから単糖を好ましい性状で効率的に供給可能な単糖の
製造方法及び製造装置を提供し、バイオエタノールの製造方法及び製造装置の向上を実現するこ
とである。

下図1のごとく、セルロース又はヘミセルロースの部分加水分解物を、固体酸触媒を用いた加水
分解によって糖化する。部分加水分解物を固体酸触媒と攪拌混合する工程と、この工程の生成物
を固体酸触媒を充填したカラムに通過させる工程とによって加水分解が進行する。カラムは濾過
装置の役割も果たす。バイオマスに加圧熱水を作用させてヘミセルロースを選択的に加水分解し
、反応後の固体残渣に糖化酵素を作用させることで、ヘミセルロース及びセルロースの部分加水
分解物が各々得られ、各糖化によりキシロース及びグルコースを得る。単糖の微生物発酵により
エタノールが得られ、フルフラール及びプラスチックの製造にも利用され、質材から、固体酸触
媒反応をカラムを用いて効率的に実施可能な単糖の製造技術を提供し、バイオマスエタノールや
他の有用物質の製造を促進する方法を提供する。

【符号の説明】 A:エタノール製造装置、 R:触媒反応装置、 1:加圧熱水反応装置、
1a,5e,7e,11,21,23,33:ポンプ、 1b:加熱器、 1c:水量調整弁、
1d:反応槽、 1e:制御装置、 2:固液分離器、 3:冷却器、 4:酵素反応装置、
5:第1触媒反応装置、 5a:第1混合装置、 5b:第1固液分離装置、5c:第1触媒カラ
ム、 5d,7d,32:加熱装置、 6:第1発酵装置、 7:第2触媒反応装置、 7a:第2
混合装置、 7b:第2固液分離装置、7c:第2触媒カラム, 8:第2発酵装置、 9:蒸留
装置、 10:排水処理装置、 12:流量計、 13:触媒反応装置、 14:攪拌装置、 15
,19:酸化還元電位計、 16,20:pH計、 17:触媒分離槽、 17a:管状部材、
17b:触媒排出口、 17c:排出口、 18:触媒返送装置、 22:触媒回収槽、 24:
フロートスイッチ、 25:排出弁、 26:ガスブロア、 27,28,29:開閉弁、 30:
カラム装置、 31:筒部材、 34:入り口、 35:出口、 B:バイオマス、 E:エタノー
ル、 W:水、 W':加圧熱水、 S:固体残渣、 Xa,Xb:固体酸触媒、 L1:原液、
L2:混合液、 L3:上澄み液、 L4:沈殿物、 H1,C1:一次糖化液、 H2,H2',
C2、C2':二次糖化液、 F1,F2:発酵生成物、 D:排水。
 

  ● 今夜の一曲

 『コジコジ銀座』 唄:ホフディラン Music Writer作詞 さくらももこ/作曲:ホフディラン
『コジコジ』(COJI-COJI)は、さくらももこによる日本の漫画作品。漫画は『きみとぼく』(
ソニー・マガジンズ)より1994年から1997年まで連載。アニメは1997年から1999年までTBSほか
で放送。主にメルヘンの国を舞台にコジコジと、そこの住人たちが繰り広げる日常生活を描くメ
ルヘンであると同時に、ナンセンスなギャグ漫画、という新しいジャンルの開拓に挑戦した作品。
さくらももこ独特のシュールさが濃厚に出た作風である。さくらももこ作品として『ちびまる子
ちゃん』の世界とリンクしている。同作中にまる子が出演していたりする描写もある。アニメ版
では該当部分は削除。また、キャラクターの多くは「神のちから」に登場したキャラクターのデザ
インを流用。
ソニー・マガジンズの月刊少女マンガ誌「きみとぼく」にて、1994年12月号(創刊号
)から1997年5月号にかけて連載された.。
ソニー・マガジンズコミックスから単行本3巻が発売。
連載終了後も、新潮社刊行のさくらももこ編集長による雑誌「富士山」(2000年)などに新作掲
載。
2001年にソニー・マガジンズが漫画事業から撤退しコミックスが絶版後、2002年に幻冬舎か
ら未収録作などを加えた完全版としてコミックス(全4
巻)が発売、



2004年には、2度目の新装版コミックスが発売。2009年には集英社から3度目の新装版コミックス
が発売
に加え、りぼん2009年5月号で『ちびまる子ちゃん』とのコラボ漫画が描かれ、2009年8月
号に不定期連載する旨を告知。実際に掲載されたのは2010年11月号、2013年1月号・6月号の3回
のみで2018年8月に作者のさくらの逝去により本作は未完絶筆となる(合掌)。

  ● 今夜の一品




                                                   

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紅葉や踏み入る山の大草鞋

2018年11月16日 | 滋賀のパワースポット




                                  
第81章 「俗言は美ならず、美言は信ならず」
真実を語ることぱは、飾り気がない。飾ったことばは、真実を語らない。行ないが正しい者の口は、
雄弁ではない。雄弁なものは、行ないが正しくない。真の知者は、もの知りではない。もの知りは、
真の知者ではない。
聖人は、自己のために徳を積むわけではない。ひとのためにすべてを捧げつくすが、そのことによ
ってかえって限りなく豊かな境地を得るのだ。天の道は、万物を利するばかりで、これをそこなう
ことがない。これと同じく、聖人の道は、ひとにつくすだけで、自己を主張することがないのであ
る。

〈聖人は、自己のために徳を積むわけではない〉 原文は「聖人は積まず」。通説は、聖人はなに
ものをも蓄積しない、と解釈するが、従わなかった。



【滋賀のパワースポット:百済寺】

百済寺(ひゃくさじ)は1400年以上前の推古14年、聖徳太子によって創建された近江国最古級の
寺院
。名だたる人物の歴史舞台として、また天台別院と称され、近江の人々の信仰を集めてき
また。
紅葉は暖かい秋の気配でこれから深まると言った案配。仁王門に飾られた大草鞋が、
8年ぶりに新
調され、参拝者は足をとめて、威厳の漂う風格に見入っている。大草鞋は仁王
像が履くとされ、寺
のシンボル。17世紀半ばごろから飾られるようになり、触れると無病長寿のご利益があるとされ、
10年前後で地元住民が作り直しているとか。そこでデジカメでワン・ショット。門前の屋台で蓬
餅(よもぎもち)を買い、車の中で蓬が口いっぱいに匂い立ち美味しく頂きました。帰宅後に早速、
彼女からメールが届き掲載した次第。
 

 Oct. 20, 2018



布引焼(窯元:八日市)

  No.22 
 iPSから対がん免疫細胞を作製
 11月16日、京都大の研究グループは、人のiPS細胞から、がんへの攻撃力を高めた免疫細胞「キラ
ーT細胞」を作製したことを公表(iPSから対がん免疫細胞を作製 京大などが発表(朝日新聞
デジタル
  2108.11.16)。免疫の力でがんを治療する「がん免疫療法」の新たな手法につながる可能性があ
る。京大iPS細胞研究所が保管するiPS細胞を使うことで、短期間で多くのキラーT細胞をつくることができ
る。今後、実際の患者に使う臨床試験の準備を進める。

 May 4, 2018

人の体内では、絶えずがんが生まれているが、キラーT細胞を含む免疫細胞が攻撃することで、健
康を保っている。だが、がんが免疫のしくみを回避したり、免疫細胞の攻撃力が弱まったりすると
がんが増殖し、発症すると考えられている。
チームは、第三者の血液由来のiPS細胞にがんを認
識する遺伝子を組み込んだ。その後、キラーT細胞のもととなる細胞の状態に変化させて増殖。ス
テロイドホルモンなどを加えて培養し、がんを攻撃する高品質のキラーT細胞をつくった。人のが
んを再現したマウスに注射したところ、何もしない場合に比べ、がんの増殖を3~4割に抑えられ
た。
がん治療薬「オプジーボ」は、がんが免疫のしくみを回避するのを防ぐ。一方、今回の方法は
免疫の攻撃力を上げることで、がんの治療をめざす。チームの金子新・京大iPS細胞研究所准教
授は、従来の免疫療法が効かない患者への治療法や、併用して使う選択肢にしたいと話す。尚、

学誌「セル・ステムセル」に掲載。

【バイオテクノロジーの標準化技術篇:核酸分子“絶対濃度”の精密定量】

Titol: Absolute Quantification of RNA Molecules Using Fluorescence Correlation Spectroscopy with Certifi
ed
Reference Materials

11月15日、産業技術総合研究所は、分子数をカウントすることでRNA濃度を絶対定量する方法
の開発ことを公表。この技術は、1分子イメージング法の一つである蛍光相関分光法(FCSで蛍
光染色したRNAの分子数を直接数えてRNAの濃度を定量化できる技術で、認証標準物質(SRMとCR
M
)を利用し、この定量分析法の妥当性評価を行った。この技術は、今まで重量ベースで行われて
いたRNA濃度の定量を、分子の配列や長さによらず直接定量できる画期的な分析技術であり、RNA
の定量分析法を高精度化させる。

遺伝子診断やオーダーメード医療が注目されてきている。遺伝子関連検査は急速に進歩しているが、
検査システムの品質保証やデータの標準化が未整備なままで、これらの標準化は遺伝子関連検査の
普及や信頼性保証の上で重要な課題となっている。標準化の課題の一つに、品質の保証された標準
試料が未整備という問題がある。現在用いられている遺伝子の定量法は、濃度既知の標準試料で検
量線を作成して、試料濃度を相対的に算出するものがほとんどである。
しかし、診断対象は多様化しており、全ての検査対象の標準試料を用意することは現実的ではない。
このような状況のため、検査機関や検査日によって定量値がばらばらになり、比較できないことが
遺伝子診断の信頼性確保の問題となっている。そのため、配列も長さも異なるターゲット核酸の数
を簡便に直接絶対定量する技術と、その技術を適用した核酸標準物質の開発が望まれていた。

上図:PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は核酸を増幅し、その増幅曲線から核酸の量を定量する方法。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)はカラムに液体を加圧して通過させて分離し検出する方法。

【概要】
FCSは、微小な測定領域にレーザーを照射し、その領域に蛍光分子が出入りすることで生じる『蛍
光強度のゆらぎ』を解析して分子の数や、分子の拡散速度を測定できる手法である。原理的には生
体分子の分子数を数えることが可能である。しかし、分子数を普遍的な単位である「濃度」に変換
するには、測定領域の正確な体積が必要である。これまで、レーザー照射領域の形状を仮定し、拡
散速度が既知の蛍光色素のFCS測定結果から測定領域の体積を推定していた。しかし、レーザー照射
領域の形状の仮定は装置の種類によってしばしば実際と異なることが報告されており、校正方法と
して十分ではなかった。今回、濃度の認証値をもつ認証標準物質(SRM、CRM)を利用して、正確
な測定領域を求めた(下図1)。
特開2016-217887

今回の技術では、認証標準物質(蛍光色素)で厳密に校正されたFCS測定装置を用い、蛍光染色した
RNA分子を水溶液内で直接カウントして分子数を絶対定量する。さらに、産総研で開発された核酸認
証標準物質を用いて、認証値とFCSによる実測値を比較したところ、絶対定量分析法が妥当であるこ
とが確認できた(下図2)。

 

  
【エネルギー通貨制時代 20】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 Mar. 3, 2017 

  Nov. 14, 2018

【環境・社会・ガバナンス事業戦略篇:NYK スーパーエコシップ2050

11月14日、日本郵船グループは、船舶の脱炭素化に向けた新コンセプトシップ「NYKスーパー
エコシップ2050」を考案したと発表した。太陽光パネルを搭載し、燃料には再生可能エネルギー由
来の水素を使用することで「CO2排出量ゼロ」を実現する。
自動車専用船をモデルにした2050年のコ
ンセプトシップ。再エネ由来の水素を燃料とし、排熱も利用する高効率な燃料電池システムを用い
て推進。太陽光パネルの設置により長距離の航海にも対応する。
空気を船底に送り込み泡を発生さ
せて海水の摩擦抵抗を減らす空気潤滑システムや、従来のプロペラの代わりに複数のフラップ状の
フィンをイルカの尾のように動かす高効率な推進装置などにより、現在運航される一般的な艦船と
比べて70%のエネルギー削減が可能。

船体構造には数学的・力学的に最適化された形状を採用し、軽量化のために素材には複合材などを
使用する。軽量になると、船体が不安定になるため、コンピューター制御のジャイロスタビライザ
ーなど、揺動を軽減する装置を導入し、安定性を維持。
このほかにも、船体の状況をデジタル上に
再現するデジタルツイン技術により、陸上専門家によるリアルタイムな分析、事故や不具合を未然
に防ぐ最適な整備計画を立案する。船体の大きさは、全長199.9m、全幅49.0m、計画喫水9.0m、エア
ードラフト31.0m。
 同社グループが2018年度からスタートした中期経営計画「Staying Ahead 2022
with Digitalization and Green
」の取り組みの一環。日本郵船の100%子会社であるMTIとフィンランド
の船舶技術コンサルタント会社Elomaticが2009年に共同発表した「NYKスーパーエコシップ2030」
の要素技術を見直している。

【省エネ送電事業:三菱電機「直流送電」本格展開】

11月15日、密菱電機は、直流送電システムの製品開発・検証を行うための検証施設「HVDC検証
棟」を建設し、26日から稼働開始する。直流送電は、交流送電より送電効率が高く、太陽光発電
や風力発電などとの連系が容易なため、再生可能エネルギーの利用拡大によるCO2削減に貢献する。
直流送電のなかでも、「自励式」を開発・検証する。直流送電システムには、交流・直流間の変換
に交流系統内に変換器容量に見合った発電機が必要になる「他励式」と、これらが不要な「自励式」
があり、接続する系統条件に制約の少ない自励式の需要が今後増加すると予想される。自励式は、
直流・交流間の電力変換を行う複数の変換所と、これらを接続するケーブルまたは送電線から構成
される。


HVDC検証棟では、交流送電線事故・直流事故発生時の動作検証を行う。主要設備として、設備容量
50MWのBTB(送電線を持たない直流送電設備)構成で、変換装置、制御・保護装置、受電設備などを
備える。なお、太陽光や風力などの再エネ発電設備は設置していない。鉄骨造で一部地上2階建て、
延床面積は1767.8m2
同社は、自励式直流送電システム事業に参入し、トータルブランド「HVDC-Dia-
mond
」をグローバルに展開する。HVDC-Diamondは、個々のシステム要件に最適な制御機能およびハ
ードウエア構成を採用し、運用時の安定運転と落雷など交流送電系統事故発生時の運転継続を実現。
高速応答の保護機能により、直流事故発生時の過電流による設備機器の損傷を防ぐ。
また、高耐圧・
大電流パワー半導体モジュール(HVIGBT)の採用で変換装置のモジュール数を削減して電力変換所を
小型化・低コスト化。HVIGBTを2列・並列構成にして幅広い送電容量帯に対応する。2020年度まで累
計受注高500億円以上を目指す。

 

CONTROL OF WIND TURBINES


【出力制限事業篇:デジタル&エネルギー貯蔵革命で対応】

11月16日、NHKの「おはよう日本」で九州電力の出力制限を受け、再エネ先進国のアイルラン
ドで電力の需給バランス実態を現地調査報告がされていった。それによると、❶まずアイルランド
は、
風力発電を主体としてタービンのウイング角度を自動制御することで周波数変換し出力制御で
対応できるていること、❷また、余剰の電力は真空中で回転するフライホイールに蓄電し対応して
いる。❸次に、これらの発電発電ポイント情報をネットワークで接続しリアルタイムで制御するこ
とで制御(デジタル)されている。これに対し九州電力では、情報のやりとりを電話とファックス
で交換(アナログ)していることから比べ、生産性・安全性・堅牢性において格段の差があること
など、出力問題は技術的には解決している。後は本腰を入れて投資すれば終わる問題であることが
了解できる、念のため、下記の1年前のNHKの映像を参考に掲載する。また、フライホール技術に
ついては残件扱いとする。

Power storage wiをth Flywheels
 

 Oct. 16, 2018



【水素直燃事業篇:トヨタが「水素バーナー」を新開発、工場二酸化炭素ゼロへ】

11月15日、トヨタが水素を燃料として利用できるバーナーを開発。自動車生産工場に導入し、
二酸化炭素排出量の削減に活用する。工業利用を目的とした汎用水素バーナーの実用化は、世界初。
これまで、水素バーナーは、水素が酸素と急速に反応し、激しく燃焼することで火炎温度が高温に
なり、環境負荷物質である窒素酸化物(NOx)が多く生成されるために、実用化は困難とされていた。
一方、今回開発した水素バーナーは、水素を緩やかに燃焼させる「水素と酸素が混ざらないように
する機構」と「酸素濃度を下げる機構」の2つの新機構を導入し、二酸化炭素排出ゼロに加えて、
同規模の都市ガスバーナーレベル以下まで窒素酸化物(NOx)排出を大幅に低減させるなど、高い環
境性能を両立したという。

1つ目の水素と酸素が混ざらないようにする機構は、水素と酸素をバーナー内で並行に流し、完全
に混合していない状態で緩慢に燃焼させることで、火炎温度を下げる。もう1つの酸素濃度を下げ
る機構は、水素をバーナー内に供給するパイプの中腹に小さな穴を空け、少量の水素と酸素をあら
かじめ燃焼させ、酸素濃度を適正値に下げた状態で主燃焼が始まるようにして火炎温度を下げると
いう仕組み。この技術によって、現在国内工場で1000台以上導入され、工場設備の中でも二酸化炭
素排出量が多い大型都市ガスバーナーを水素バーナーに置き換えることが可能となる。トヨタでは
中長期の環境目標の中で掲げる「工場CO2ゼロチャレンジ」実現に向けて、水素バーナーを他工場へ
順次展開していく予定で、同グループ会社内への導入も検討する方針。

 

  ● 今夜の一曲

" Beauty and the Beast"  (Movie of 2017)
Song Writer:Howard Ashman /Alan Merken
Singer: John Legend/Ariana Grande

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長汀に注ぐ鰯雲

2018年11月14日 | 時事書評




                                  
第79章 天道はつねに善人に与(くみ)す
天道のはたらきは、あたかも弓に弦を張る動作に似ている。弓に弦を張るには、上端を引き下げ、
いったん大きな恨みを結んでしまえば、どんなに和解しようと努めても、完全に和解できるもので
はない。はじめから恨みを結ばぬにこしたことはない。
聖人は、たとい相手を責める有利な立場にいたとしても、人を責めようとはしないものだ。徳ある
者は、たとい人を責める権利を握っている場合にも、その権利を行使することがない。厳しく
人を
責めるのは徳のない連中だけがすることだ。
天道にはえこひいきがない。つねに徳ある者にさいわ
いするのである。

<相手を責める有利な立場〉 原文は「左契(けい)を執る」。「契」とは目印を刻んだ割り符。
約を結ぶ原にはこれをふたつに割り、それぞれ一方を所持して約束の証とした。「契約」「契合」
などのことぱは、ここから出ている。

左契、右契のいずれが債権を示し、いずれが債務を示すかという点については、いろいろ論議もあ
るようだが、一定のきまりはなかったのが実態らしい。
〈厳しく責める〉原文は「徹を司る」。「徹」とは月代の税法の一種といわれる。直訳すれば「税
務署のようなやりかた」という意味。

第80章 わが桃源郷
国は小さく、人口は少ない。たとい人並すぐれた人材がいようとも、腕をふるう余地すらない。住
民はすべて生命を大切にして、遠くへ足を伸ばさない。舟にも車にも乗る必要がないし、武器も使
道がない。文字を書いたり読んだりするこざかしさを忘れて、ひたすら現在のままの衣食住に満
足し、生活を楽しんでいる。手の届きそうなすぐ隣の国とも、絶えて往来しない。これが、わたし
の理想郷である。

〈人並すぐれた人材〉原文は「什伯之器」。各種の便利な器具類(王弼:おうひつ)、十人頭、百
人頭となり得る才人(蘇轍)、兵器(兪樾:ゆえつ)など、解釈は多様にわかれている。
〈文字を……忘れて〉 原文は「縄を結ぴてこれを用いしむ」。【文字の使用される以前の時代で
は、縄にいろいろの結び目を作って記億のたすけとするのが、世界共通の現象であった。「約を結
ぶ」ということばも、この習慣から生じたものである(約とは、もともと結び目の意味)。

小国寡民 ここに現われた理想郷を、太古の部落国家の姿にほかならぬとし、老子を復古主義者と
見なす論者もある。だがこの章は、一種の象徴的表現ととることも可能であろう。たとえば陶淵明
は、この章を下敷きにして、桃源郷という成語で有名な「桃花源の記」を書いた。あらすじはこう
である。
晋の太元年問、武陵の漁師が、谷川を題って行くと、世の常ならず美しい桃花の林に出合った。不
思議に思って林の奥をつきとめようと進んで行くと、洞穴がある。洞穴は非常に狭かったが、どう
にかくぐって行くと、突然視界がひらけた。見ると、田畑はみごとに手入れされ、家はきちんと立
ち並んでいる。鶏や犬の鳴き声がのどかに聞こえる申を、往来する村人の服装は、見たこともない
種類のものだ。そして老人から子供に至るまで、じつにのぴのびと心楽しげである。村人は漁師を
歓待した。驚いたととに、村人たちは漢も魏も晋も知らない。先祖の時に奉の戦乱を避けてこの地
に往み、それきり外部との往来を絶ってしまったのだという。漁師は、もてなされるままに数日を
心楽しく村に過ごした。漁師が武陵に帰った後、話を聞いてこの村を訪ねようとする者が出たが、
ついに誰もたずね当てることはできなかったという。
 

長汀に一川注ぐ鰯雲   定梶じょう

 Iwashigumo is flowing in the long beach like a river.
※ Iwashigumo(=Mackerel sky):日本では鰯、英語圏では鯖というから面白い。

 
【エネルギー通貨制時代 19】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”  
  

  Nov.8, 2018

● 低コスト、コンパクト、軽量のバッテリの寿命を延ばすⅡ
11月8日 マサチューセッツ工科大学の研究グループは、安価でコンパクトで軽量の電気自動車用レンジ・
エクステンダーの金属空気電池を掲載したが、残件の関連する国際特許を下記に記載した。

WO2017176390A1 Corrosion mitigation in metal-air batteries
金属空気電池の腐食緩和
【概要】 
アルミニウム空気(Al-air)電池のような金属空気電池は、比較的高いパックレベルの重量エネルギ
ー密度を有するなどの有利な特性のために、電池電気自動車(BEV)他の電池(例えば、1キログ
ラムあたり約450ワット時間またはWh kg -1以上)と比較して、
相対的な豊富さ、リサイクル可
能性、
このような電池に使用することができる金属の低重量および低コストを可能にする。しかし、
多くの金属空気電池は、開回路陽極腐食の影響を受けやすく、金属空気電池が作動停止されたとき
に著しい容量低下を引き起こす可能性がある。
例えば、電解質が金属アノード電解液の一部は金属
アノードと接触したままであり、空気に曝されると金属アノードを腐食する可能性がある。

本件の装置、システム、および方法の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示さ
れるようなその特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、
ここで説明される装置、システム、および方法の原理を説明することに重点が置かれる。図面にお
いて、同様の参照番号は、対応する要素を識別することができる。
すなわち、金属空気電池における腐食軽減は、金属空気電池のギャップ内の電解液を液体で置換す
ることを含む。 液体は、電解質と実質的に非反応性であり得、金属空気電池のアノードは、電解質
よりも液体と反応しにくい。 ギャップから電解液を移動させると、液体が金属空気電池のギャップ
内に残って、アノードの腐食の可能性を低減し、そのような腐食に起因するバッテリーの電力排出
を低減することができる。電力を発生させるために金属空気電池を作動状態に戻すために、電解液
をギャップに戻して液体を移動させることができる。流体回路は、間隙と流体連通することができ、
間隙内の液体および電解質の一方を、流体回路からの液体および電解質の他方と変位させることが
できる(下図参照)。





図2は、図1の金属空気電池システムの概略図
図3は、第1の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図4は、第2の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図5は、第3の動作状態にある図1の金属空気電池システムの概略図
図9は、金属空気電池システムを動作させる例示的な方法のフローチャー

【特許請求範囲】

  1. 記載の方法。充電システムであって、電気負荷。そして.前記電気負荷と電気的に接続され
    た金属空気電池であって、前記金属空気電池は、金属アノード、前記金属アノードから離間
    した空気カソードと、前記金属アノードと前記空気カソードとの間の空間が隙間を画定し、
    ポンプと、流動可能な形態の電解質と、液体とを含み、前記液は、流動可能な形態の電解
    質と実質的に非反応性であり、前記金属アノードは、前記ギャップと流体連通する流体回路
    と、流動可能な形態の電解質よりも液体であり、作動状態と非作動状態との間で空気極を有
    する金属アノードの電気的およびイオン的な通信を制御するように動作可能なスイッチであ
    って、前記液体および電解質の流動可能な形態の一方を他方スイッチが活性化状態と非活性
    化状態との間で動かされるとき、電解質の液体および流動性形態のうちの1つが移動する。
  2. 前記電気負荷は、前記金属アノードと前記活性化状態で電気的に連通する前記空気極とを備
    えた前記金属空気電池によって再充電可能な電池を含む、請求項1に記載のシステム。
  3. 車両をさらに備え、前記充電式バッテリは、車両の駆動列に電気的に結合されたリチウムイ
    オンバッテリである、請求項2に記載のシステム。
  4. 金属アノードと、前記空気極と前記金属アノードとの間にギャップを画定するように前記金
    属アノードから離間された空気カソードと、そしてこのギャップと流体連通する流体回路で
    あって、流動可能な形態の電解質および液体を含み、液体が流動可能な形態の電解質と実質
    的に反応しない流体回路であって、金属アノードは、液体は流体回路内で移動可能であり
    流体回路内の流動可能な形態の電解質を移動させる。
  5. 前記流体回路は、前記流体のうちの1つと、前記流体回路の前記液体および前記流動可能な
    形態の他方と、前記間隙内の前記電解質の流動可能な形態とを移動させるように作動可能な
    ポンプを含む。
  6. 前記流体回路および前記ギャップは、前記液体および前記流動可能な形態の前記電解質が前
    記ギャップ内で前後に移動するとき、実質的に閉じたシステムを画定する、請求項4~5のいず
    れか1項に記載のシステム。
  7. 前記金属アノードおよび前記空気カソードを収容するハウジングをさらに備え、前記金属ア
    ノードと前記空気カソードとの間の前記隙間は、前記ハウジング内に配置される、請求項4
    ~6のいずれか一項に記載のシステム。
  8. 前記ハウジングが、水素ガスを透過させることができ、前記液体および前記流動可能な形態
    の電解質に対して実質的に不浸透性の膜を含む、請求項7に記載のシステム。
  9. 前記流体回路は、前記液体および前記流動可能な形態の電解質の一方を保持する第1のリザ
    ーバを含み、他方の前記液体および前記流動可能な形態の電解質は、前記電解質の中に配置
    されている、請求項4~8のいずれかに記載のシステム。ギャップ。
  10. 前記第1のリザーバは、水素ガスを透過させることができ、前記液体および前記流動性のあ
    る形態の電解質に対して実質的に不浸透性の膜を含む、請求項9に記載のシステム。
  11. キャリアを含む第2のリザーバをさらに備え、前記第2のリザーバは、前記第2のリザーバ
    から前記第1のリザーバに移動可能であり、担体と電解質の流動可能な形態との混合物は、
    流動可能な形態の電解質単独よりも大きな流動性を有する
  12. 前記担体が水を含み、前記担体および前記電解質の流動可能な形態の混合物が、前記流動可
    能な形態の電解質の水溶液である、請求項11に記載のシステム。
  13. 前記担体がゲルを含む、請求項11~12のいずれかに記載のシステム。
  14. 前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間に配置され、前記第2のリザーバから前記
    第1のリザーバに前記キャリアを供給するように作動可能な第2のポンプをさらに備える、
    請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
  15. 前記第2のリザーバが、空気に対して透過性で前記キャリアに対して実質的に不透過性の膜
    を含む、請求項11~14のいずれかに記載のシステム。
  16. 前記電解質の流動可能な形態は、前記電解質の水溶液を含む、請求項4~15のいずれか1
    項に記載のシステム。
  17. 前記電解質の前記流動可能な形態は、前記電解質を含むゲルを含む、請求項4~16のいず
    れか1項に記載のシステム。
  18. 前記電解質の前記流動可能な形態は、粉末を含む、請求項4~17のいずれかに記載のシス
    テム。
  19. 前記液体は、前記電解質よりも伝導性が低い、請求項4~18のいずれかに記載のシステム。
  20. 前記液体が油を含む、請求項4~19のいずれかに記載のシステム。
  21. 前記液体が、鉱油およびシリコーン油の1つまたは複数を含む、請求項20に記載のシステム。
  22. 前記液体が実質的に非粘性である、請求項4~21のいずれかに記載のシステム。
  23. 前記液体が、室温で前記電解質と異なる密度を有する、請求項4~222のいずれか1項に
    記載のシステム。
  24. 前記金属アノードがアルミニウムを含む、請求項4~23のいずれか1項に記載のシステム。
  25. 前記流動可能な形態の前記電解質が、結晶化した電解質を含む、請求項4~24のいずれか
    に記載のシステム。
  26. 流動可能な形態の電解質の所定の導電率を維持する1つ以上の結晶化装置をさらに含む、請
    求項25に記載のシステム。
  27. 前記電解質が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの1つ以上を含む、請求項4
    ~26のいずれかに記載のシステム。
  28. リチウムイオン電池をさらに備え、前記金属アノード、前記空気カソード、および前記電解
    質は、金属空気電池を形成し、前記金属空気電池は、前記金属空気電池に電気的に結合され
    ている、請求項4~27のいずれか1項に記載のシステム。金属空気電池によって生成され
    た電力を使用してリチウムイオン電池を充電するためのリチウムイオン電池とを含む。
  29. 金属空気電池を動作させる方法であって、流体回路から電解質の流動可能な形態を金属空気
    電池の金属アノードと空気カソードとの間に画定された間隙に供給し、金属アノードと空気
    極との間のギャップに配置された電解質の流動可能な形態で、金属空気電池で電力を発生さ
    せるステップと、液体を流体回路からギャップに選択的に移動させるステップと、ギャップ
    の中への液体の移動とギャップの流体回路への移動と、電解質の流動可能な形態の存在
  30. 前記金属アノードは、前記電解質の流動可能な形態よりも前記液体との反応性が低い、請求
    項29に記載の方法。
  31. 前記液体が、前記流動性形態の前記電解質と実質的に不混和性である、請求項29~30の
    いずれかに記載の方法。
  32. 流動可能な形態の電解質をギャップ内に選択的に移動させて、ギャップ内への電解質の流動
    可能な形態の移動がギャップから流体回路へ液体を移動させることをさらに含む、請求項2
    9~31のいずれかに記載の方法
  33. 前記金属空気電池が作動状態にあるとき、前記金属空気電池から電力を生成するために、前
    記間隙内に前記電解質の前記流動可能な形態を維持することをさらに含む、請求項29~3
    2のいずれか1項に記載の方法。
  34. 前記金属空気電池が非活性化状態にあるとき、前記ギャップ内に前記液体を維持することを
    さらに含む、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記流体回路と前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記流体回路から前記間隙内
    に前記液体を選択的に移動させることをさらに含む、請求項29~34のいずれか1項に記
    載の方法。
  36. 前記流体回路と前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記流体回路から前記間隙へ
    前記電解質の前記流動可能な形態を選択的に移動させることをさらに含む、請求項29~3
    5のいずれかに記載の方法。
  37. 前記移動した流動形態の前記電解質を前記間隙から第1のリザーバ内に移動させることをさ
    らに含み、前記流体回路が前記第1のリザーバを含む、請求項29~36のいずれか1項に
    記載の方法。
  38. 前記1のリザーバから前記ギャップに前記電解質の前記流動可能な形態を選択的に移動
    せることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
  39. 前記第1のリザーバおよび前記間隙と流体連通するポンプを作動させて、前記液体および前
    記流動可能な形態の前記電解質のうちの1つを前記第1のリザーバから前記間隙に選択的に
    移動させて変位させるステップをさらに含む、請求項37~38のいずれかに記載の方法。
    第1のリザーバによって置換された液体と流動可能な形態の電解液のうちの他方の液体と流
    動可能な形態の電解液とを含む
  40. 前記流動可能な形態の電解質が前記電解質の水溶液を含むように、前記流体回路に水を供給
    することをさらに含む、請求項29~39のいずれかに記載の方法。
  41. 水が、流動可能な形態の電解質を含む第1のリザーバと流体連通する第2のリザーバから供
    給される、請求項40に記載の方法。
  42. 前記液体が、前記流動性形態の電解質よりも伝導性が低い、請求項29~41のいずれかに
    記載の方法。
  43. 前記液体が液体油を含む、請求項29~42のいずれかに記載の方法。
  44. 前記液体油が、鉱油およびシリコーン油の1つまたは複数を含む、請求項43に記載の方法。
  45. 前記金属アノードがアルミニウムを含む、請求項29~44のいずれかに記載の方法。
  46. 前記流動可能な形態の前記電解質が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの1つまたは
    複数を含む、請求項29~45のいずれか1項に記載の方法。
  47. 前記金属空気電池で生成された電力を前記リチウムイオン電池を充電するためのリチウムイ
    オン電池に供給することをさらに含む、請求項29~46のいずれかに記載の方法
  48. 前記流動可能な形態の電解質は、前記電解質の水溶液を含む、請求項29~47のいずれか
    に記載の方法。
  49. 前記流動可能な形態の電解質が、前記電解質を含むゲルを含む、請求項29~48のいずれ
    かに記載の方法。
  50. 流動可能な形態の電解質が粉末を含む、請求項29~49のいずれかに記載の方法。

 Dec. 5, 2015
 【オールバイオマス事業篇:最新湿式ミリング技術の利用】

湿式ミリング処理技術とは、水中で木材を粉々に粉砕することで、木材の糖化・発酵を可能とする
技術のこと。従来はこれを、メタンガス燃料やバイオエタノールの製造の研究に利用していたが、
湿式ミリング処理した木材に食品用の酵素と酵母を加えたところ、アルコールを醸造できることが
が公表されており、福島第原発事故での放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理方法でも実証
実験でその成果が公表されているものであり、このブログでも「オールバイオマスシステム」のな
かで調査研究していたたものだが、得られたアルコールには、木材の種類により、例えばスギ材で
はスギの香りがし、シラカンバ材ではウィスキー樽のような香りがする特徴をもつ。つまり、長期
間の熟成を経ることなく、香りよい酒が造れるかもしれないというもの。当面、この技術で得られ
るアルコールの安全性を慎重に検討し、「樹木原料醸造酒事業」という新しい産業を産み出し、林
業の振興につなげればと期待されている。まず、その技術開発報告を俯瞰。

 Jun. 19, 2014

● 木を発酵して香り豊かなアルコール

4月26日、森林研究・整備機構森林総合研究所(以下、森林総研)の成果報告は次のようになる。
木材を原料とした燃料用のアルコール(バイオエタノール)の製造技術は、いくつかの手法がある
が、燃料用アルコールの製造は、効率追求のために原料を熱処理したり薬剤処理することが一般的
このため、生産されるアルコールを燃料用途以外に使用することは困難であった。森林総研で既に
開発していた湿式ミリング処理という技術を応用して、低温(80℃以下)で木材に食品用の酵素
と酵母を加えてアルコール発酵する技術を開発。試験的にスギ材(樹皮を剥いだ幹の部分)を原料
として製造したアルコールにはスギ特有の香りが含まれ、シラカンバ材(樹皮を剥いだ幹の部分)
を原料として製造したアルコールには、甘く熟した香りやウイスキー等で感じる熟成に使用した樽
の香りが含まれることが分かってきました。このことから、木を原料にして製造したアルコールに
は、長期間の熟成を経ずとも原料樹木特有の成分が豊富に含まれる。

 Apr. 26, 2018

伐採されたスギ材、および北海道内で伐採されたシラカンバ材の樹皮を除き、チッパーとハンマー
ミルによりそれぞれ粗粉砕→粗粉砕木粉とミネラルウォーターを混合→食品加工用ビーズミルで湿
式ミリング処理→クリーム状スラリー化→食品添加用酵素(セルラーゼ・ヘミセルラーゼ)と酵母
を混合→並行複発酵(木材の繊維(セルロース・ヘミセルロース)が酵素て糖に分解されることと、
酵母で糖のアルコール発酵が同時に行われこと)→遠心分離で上清を回→アルコール度数約2%の
発酵液を生成→発酵液の減圧蒸留法でアルコール度数28~300%の蒸留物を得る(図1参照)。

オールバイオマスシステムも事業化ができそうな段階にきているようだ。これは益々面白くなってきた(元会
員談)。
 

 ● 今夜の一曲

『風をみつめて』 唄:コブクロ  
Music Writete:小淵健太郎

9月8日に結成20周年を迎えるコブクロが、11月7日(水)に通算30枚目となるニューシングル
『風をみつめて』をリリースする。「風をみつめて」は、テレビ東京開局55周年特別企画 ドラマ
Biz『ハラスメントゲーム』の為に書き下ろした渾身のバラード。

Wikipedia

 ● 今夜の一品

 Nov. 9, 2018

オーディオテクニカ製完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW

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湖底よりひびく散紅葉

2018年11月12日 | 滋賀のパワースポット




                                  
第77章 「余りあるを損して、足らざるを補う」
天道のはたらきは、あたかも弓に弦を張る動作に似ている。弓に弦を張るには、上端を引き下げ、
下端を引き上げ、長い方(弓)をちぢめ、短い方(弦)をひっぱる。天道はこのように、あり余
るものを誠らし、足らぬものを補う。
だが、人の世の道は、まったく逆だ。足らぬ者からしぼり取っては、あり余る者に貢いでいる。
わが身にあり余るものを万民に座す。それは、「道」を体得した者でなくては、できないことだ。
聖人は、万民に施しながらも、そのはたらきを誇らず、その成果にも無心である。聖人には、能
力をひけらかす意志がないのである。

第78章 弱は強に勝つ
およそ何が柔らかい、弱いといっても、水ほど柔らかく弱いものはない。そのくせ、堅く強いも
のにうち勝つこと、水にまさるものはない。これは、水が弱さに徹底しているからだ。弱は強
に勝ち、柔は剛を制する。この道理はだれしも知っている。しかし実行できずにいる。聖人はい
った。「一国の恥をわが身に負う者が、一国の宗主である。天下の不幸をわが身に負う者が、天
下の王である」真理は往々にして、常識からは背理と見られるものだ。

湖底からひびく声あり散り紅葉  吉弘恭子

Voice floating from the bottom of the lake Scattered autumn leaves. 

● 大谷翔平 MLBで新人王の名誉

  Nov. 12, 2018

12日、エンゼルスの大谷翔平投手がア・リーグの最優秀新人(新人王)に選出され、日本選手では、野
茂英雄投手、佐々木主浩投手、イチロー外野手以来、17年ぶり4人目の名誉。

 天王のアカガシ

【樹木トレッキング:アカガシ】
アカガシ(赤樫、学名:Quercus acuta)はブナ科コナラ属の常緑広葉樹。シノニムCyclobalanopsis
acuta
。別名、オオガシ(大樫)、オオバガシ(大葉樫)。
葉は、楕円形で基部は広いくさび形、
鋭尖頭鈍端、鋸歯はなく、時に波状縁となる。葉は表は深緑、裏面はやや薄い色となる。他のカ
シ類に比べ、扁平で厚みがある葉が特徴。やや山地、暖帯上部に多い。森林内では大木になる。
雌雄同株で花期は5、6月頃、雄花序は垂れ下がった形で黄褐色の雄花を多数つけ、雌花序は葉
腋に直立し5、6個の雌花をつける。
材は堅くて器具、車輛、船舶、機械、枕木、木刀などに使
われ、1978年、古市古墳群の一つである三ツ塚古墳からは、アカガシを使った修羅が発掘され話
題となる。 和名は、材が赤いことから付けられた。(Wikipedia
このように、アカガシ、アラカシ、シラカシ、イチイガシ、ウラジロガシなどのブナ科ナラ属の
常緑高木の総称、。カシは堅から。関西ではアラカシが多いことから、歌に詠まれたのはアラカ
シと考えられている。

Quercus acuta
 赤樫
 

  ● 今夜の一品

☑ ワイヤレス骨伝導イヤホンスマートハット
ZEROiは、Bluetooth骨伝導イヤホンを内蔵した帽子。耳をオープンにすることにより、圧迫感
や閉鎖感を排除。周りの音を聞き取りながら、安全に野外活動ができるウェアラブルデバイス。
イヤホンを着用したまま道を歩いたり、ジョギングをしたり、自転車に乗ったりしていると、周
りの音を聞くことができないため危険です。一方、ZEROiは耳をふさがないので、周囲の音が聞
こえる状態で、安全に音楽を聴いたり通話したりすることがでる。また、イヤホンを耳に差込む
ことによる圧迫感や閉鎖感、夏場に>耳の中に汗が溜まることによって起こる不快感、痛みとい
ったトラブルもないため、
 イヤホンによって起こり得る耳の中の病気も予防可能。長時間のイ
ヤホンの使用による難聴のリスクを低減するだけでなく、中高年層の聴覚保護及び老化による聴
力の低下をZEROiによって補完する。また、市販されているものの多くは2つの骨伝導ドライバー
を採用していらが、ZEROiは、4つの骨伝導ドライバーを取り入れている。これによりクリアな
通話はもちろん、音楽鑑賞用としても通常のイヤホンと遜色のない音質を実現。


 


さらに、音漏れを防止するには、骨伝導ドライバーの周囲に空間が必要。帽子の内側に音を吸収
するためのスペースを確保。柔らかい特殊布素材を使用し、音が外に漏れるのを最大限に減らせ
るように設計。音漏れ防止は、骨伝導ドライバーの周囲に空間が必要。そこで帽子の内側に音を
吸収スペースを確保。柔らかい特殊布素材を使用し、音が外に漏れを最大限に減らすことができ
る。また、Bluetoothで接続で、有線ケーブルの煩わしさがなく、Bluetooth接続されるデバイスな
ら、スマートフォン(iPhone、Android)、タブレットなどいかなる機器とも接続。誤動作の予防
や、操作の手間をなくすボタンひとつでオン、オフ、電話の切り替えできる。ショッピングや読
書中、運動中などに電話が来ても、ボタンをワンプッシュでハンズフリー通話可能。また、高性
能マイクを内蔵し、クリアな音声で通話ができ、雨でも使用できるようにIP55レベルの防水機能
を備え、フル充電で、最大5時間の音楽視聴でき、スタンバイ状態であれば、バッテリーが8日
間も持続。さらに、バッテリー残量が10%になるとアラーム音が鳴り、充電するように知らせ、
着脱式磁気コネクタで充電、充電ポートを探す手間がかかなく、充電ポートをや湿気から保護、
充電用磁気コネクタが製品パッケージに同梱。また、帽子に生地は、光沢と高級感のある高品質
オイルコーティング生地を採用。強い耐摩耗性と耐水性を備えています。また、キャップ内側に
は、一般的な綿素材の20倍の速乾性を誇るクールマックス生地を使用し、汗が速く乾くため、清
潔で爽やか。寒い冬には保温効果も発揮する特徴をもつという(買う?いや、評判を聞いてから
判断したい)。


  ● 今夜のパワースポット

天台宗湖東三山釈迦山百済寺 誰が履くの?新調された大草鞋(京都新聞滋賀版 2018.11.11
 
 
【エネルギー通貨制時代 18】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”  
  

   Mar. 3, 2017 

 ● NEDO 未利用酸性熱水で地熱発電開発へ
 Nov. 6, 2018

11月6日、NEDOは、地熱発電で未利用だった酸性熱水の活用を目指した2件の技術開発テーマ
を新たに採択しとことを公表。世界第3位となる地熱資源ポテンシャルを有する日本では、太陽
光発電や風力発電とは異なり、安定した出力が得られることから、ベースロード電源として地熱
発電に大きな期待されている。今年7月に閣議決定された「第1次エネルギー基本計画」で30
年までに地熱発電の導入見込量(地熱発電容量)として最大で約1555万kWの導入拡大が掲げ
ているが、同寄稿は
小型バイナリー発電システム※2の開発や環境保全対策に関する技術を開発
していきた事業技術(Know-how,&Patents)、
具体的には、耐腐食性などを高めたタービンの開発
および酸性環境で使用可能な坑口装置の低コスト化に向けた技術開発に取り組む。本技術開発を
今年度から20年度にかけて実施、国内に存在する地熱資源量2,347万kWの最大30%程度と
推定される酸性熱水を地熱資源として活用実現を目標に地熱発電の導入拡大を目指す。

 Nov. 9, 2018
 
● ドローンソリューションの太陽光発電の増進の貢献を検証 
11月6日、ソーラーマガジン社は、「ドローンソリューションの太陽光発電の増進の貢献予測」
を特
集(上写真参照)。それによると、再生可能な資源が世界のエネルギー需要が主役になる日
は近い。人口増加とGDP消費増加に伴い、いまや世界は挑戦的なエネルギーミックスに直面して
いるが 開発と環境の均衡のとれた、太陽、水力、風力、地熱などの持続可能エネルギーの使用を
誰もが願っている
。とりわけ、風力と太陽エネルギーは、新時代の寵児となり、世界の未来とより安いエ
ネルギーへの道を照らす。

 
 
新興資源採用の主な推進要因の1つに、これらの資金を収益化する資本コストの低下があり、ド
ローンソリューションが、太陽エネルギーの計画、構築、維持により収益性が高く効率的である
ことで浮上。
ドローンは、17年の98.9GWから約113GWに約15%の増加、年間成長率は
6%で、100GWを突破すると予想される新規設備18年が加算される。特に、インドの総容量
は、16年の 9.5GWから21年には76GWに増加すると予想されている(上/下グラフ参照)
つまり、17~21年から66GW、年間平均13GW 1MWの太陽エネルギーに必要面積は、毎年
約65,000エーカーのソーラーパネルの設置と膨大である。



そこで、将来の太陽光発電所の予定地の地形情報収集には、2つの選択肢があり、1つはGoogle
Maps
などの公開データに頼るか、も1つは新たに独自で地上調査――無人機で等高線図や地形モ
デルを作成する方法があるが、後者は、太陽光発電所導入の設計工程を70%も短縮し生産性向
上する
。このように、ドローンソリューションは、現場エンジニアが手作業でからデジタル写真
に置き換わることで視覚化に役立ち、オルトモザイクとデジタル双子は、水文や日射量分析、正
確な物資量の推定、工数把握、安全性評価などに貢献し、従来法より90%も高速化できる。




適切なプロジェクトサイトが選択し建設すると、ドローンは現地の事業経営責任者者の「目」と
なり、輸送に多くの時間と費用を節約に貢献しまた
、太陽光発電所の業務の効率改善で、労務管
理と事業リスクの逓減――❶
時間を節約:ドローンソリューションは、設備が完全で安全に受け
入れられ、設置の堅牢性を遠隔で確認、建設現場の監視と報告(リグの数、設置台数など)を
収集でき、❷コスト削減
:無人機によるデジタル資産は、計画されたパネルのレイアウトと施工
条件との照合を行い、合格文書を作成・提出が可能となる。 ❸実積
保証のドローンソリューシン
指数関数的な進歩で、24時間体制で、具体的に、423,000のソーラーパネルで最大3,500の異
常が発見できる実績
が報告されている。



 Jun. 22, 2018

ドローンソリューションの使用で、太陽電池パネルの劣化の広がりを防止し、先取り予測し、ど
のパネルをクリーニングまたは修理できる。 ホットスポットを検出してエネルギー出力を低下さ
せるドローンソリューションは、太陽光発電所の効率を向上させ、問題領域を突き止め、修理を
迅速に対応し、太陽光発電をピーク効率で稼働させ、性能維持に必要なMWあたりの人件費を削
減する。このように
、持続可能なエネルギー源を計画、構築、維持を自動化し、より早く、安く、
より安全に任務を完了することができる。
太陽光発電の世界的発電量がいままで以上に。 熱画
像や3Dモデリングなどの技術で、主要な電力源を占めるようになるにつれて、ドローンベースの
実積による事業者が増えるにつれ、大きなパラダイムシフトを引き起こすだろう。と、このよう
に報告している。


 Oct. 25, 2018

● ナノチューブの高品位電池で世界に貢献するかもしれない

随分前の技術論文になるが、10月25日、ライス大学の研究グループ(Gladys Lopez-Silva)は、カーボン
ナノチューブ薄膜を含むリチウム金属アノード保護することに成功したことを公表。 電力を放電すると薄
膜リチウムイオンにより浸透、フィルムは蓄積されたイオンを放出し、その下のリチウムアノー
ド(正極)が
補充し、デンドライト成長を停止させ薄膜能力を保持する。絡み合ったナノチュー
ブ膜は、同グループが以前の実験で開発した硫化炭素陰極を用いて、試験電池の580回の充放
電リサイクルさせても、デンドライトを効果的に消滅させ、リチウム金属電池のクーロン効率が
99.8%を保持していた。これは、電子が電気化学システム内でうまく動くかの尺度とされる。

 


上写真:ライス大学の試験で500回の充放電サイクル後のリチウム金属アノードの顕微鏡画像は、
樹枝状結晶の成長がカーボンナノチューブの薄膜で保護された左のアノードで急冷されることを
示す。右側の保護されていないリチウム金属アノードは、デンドライト成長を示す。

薄いナノチューブフィルムが、電池の非保護リチウム金属アノードから自然成長する樹状突起(
デンドライト)を効果的に停止させることを示した。 時間の経過とともに、これらの触手のよう
な樹状突起は電池の電解質の芯を突き刺して陰極に達し電池を破損させる。
この問題は、商用ア
プリケーションでのリチウム金属の抑制解決が期待されている。
リチウム金属の充電は高速で、
携帯電話や電気自動車を含むほぼすべての電子機器に見られるリチウムイオン電極の約10倍の
エネルギーを蓄電できることは周知されている通り。
リチウムイオン電池のデンドライトを遅ら
せる方法の1つに充電速度の制限があるが、
シンプルで安価で、デンドライトの成長を止めるの
方法は、多層のカーボンナノチューブフィルムでリチウム金属箔をコーティングするだけで、リ
チウムは黒色から赤色に変わるナノチューブ薄膜をドープし、薄膜はリチウムイオンを拡散させ
る至極シンプル。
リチウム金属との物理的接触はナノチューブ膜を減少させるが、リチウムイオ
ンを添加しバランスをとることでイオンはナノチューブフィルム全体に分布する。 




上写真:ライス大学らのグループは、カーボンナノチューブ薄膜を含むリチウム金属アノードを
保持。薄膜付着すると、リチウムイオンで浸透され赤色に変わる。

上図:ライス大学で開発されたリチウム金属アノードが、カーボンナノチューブ薄膜によりデン
ドライト成長から保護されている様子を示す。

電池が使用されると、フィルムは蓄積されたイオンを放出し、その下のリチウムアノードはそれ
を補充し、デンドライトの成長を停止させ薄膜能力を維持。
絡み合ったナノチューブ膜は、以前
の実験で研究室が開発硫化炭素陰極を用いて、試験電池の580回の充放電サイクルで、デンド
ライトを効果的に消光させた 。 完全なリチウム金属電池がクーロン効率で99.8%を保持。これ
は、電子が電気化学システム内での良好な移動するかの尺度となる(下図参照)。 



上図:マルチウォールカーボンナノチューブ薄膜がリチウム金属ベースの電池の樹状突起の成長
を抑制
することを発見する。

以上、日本でも盛んに研究され特許出願されている研究であり、このブログでも『黒い革命』と
してナノカーボングラファイト、カーボンナノチューブの重要性を解説してきたが、面白い技術
論文なので再掲載した。

  Nov.8, 2018

● 低コスト、コンパクト、軽量のバッテリの寿命を延ばす 
11月8日 マサチューセッツ工科大学の研究グループは、安価でコンパクトで軽量の金属空気
電池の寿命を大幅に延ばすことに成功したことを公表している。それによると、
金属空気電池は、
入手可能な最も軽くてコンパクトなタイプの電池の1つだが、使用しないときは、腐食が金属電
極で腐食するので急速に劣化。その腐食を大幅に低減する方法を見出し、電池がより長い貯蔵寿
命を有することを可能にした。
典型的な充電式リチウムイオン電池は、1ヶ月の保管後に充電の
約5%しか失うことはないが、多くのアプリケーションは高価で、かさばり、または重い。1次
(非充電式)アルミニウム空気電池ははるかに安価でコンパクトで軽量だが月に充電の80%を
失う。同研究グループは、
アルミニウム電極と電解液(電池がスタンバイ状態のときにアルミニ
ウムを食べる2つの電池電極の間の流体)の間に油のバリアを導入することで、アルミニウム空
気電池の腐食の問題を克服。 電池を使用するとすぐに、オイルは急速に汲み出され、電解液と交
換される。その結果、エネルギー損失は1ヶ月に0.02%に削減され、1,000倍の改善を達成。

金属空気電池(ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などの他の金属も使用可能)の
有効期間を延ばすため、いくつかの方法を使用するが、パフォーマンスを犠牲とする。 他のアプ
ローチのほとんどは、電解液を異なる腐食性の低い化学組成物で置き換えを含むが、この選択肢
はでは電池の電力を大幅に減少させる。この方法では、
使用中に液体電解質を貯蔵中および取り
出し中に排出することを含む。これらの方法は依然として著しい腐食を可能にし、バッテリパッ
ク内の配管システムを詰まらせる可能性がある。電解液がパックから排出された後でさえも、ア
ルミニウムは親水性である(吸水性である)ので、残りの電解質はアルミニウム電極表面に粘着。 
「電池は複雑な構造をしているため電解液が溜まる角が多く、腐食継続する。

新しいシステムの鍵は、電池電極間に配置された薄い膜で、電池が使用されているときは、膜の
両面に液状電解液が充填されていますが、電池をスタンバイ状態にすると、アルミニウム電極に
最も近い側にオイルがポンプされ、アルミニウム表面が電解液から保護さる。
この新しいバッテ
リーシステムは、水中の疎油性と呼ばれるアルミの性質を利用、アルミニウムが水に浸されると、
表面から油をはじきます。その結果、電池が再活性化され、電解液がポンプで戻されると、電解
液はアルミニウム表面から油を容易に移動させ、電池の電力能力を回復させる。皮肉なことに、
腐食抑制のMIT方法は、従来のシステムでは腐食を促進するアルミニウムと同じ特性を利用する。

その結果、従来のアルミニウム空気電池よりもはるかに長い貯蔵寿命を備えたアルミニウム空気
プロトタイプが得られる。 研究者らは、バッテリを繰り返し使用してから1,2日間スタンバイ
した場合、この設計では24日間続き従来法ではわずか3回しか持続しない。 石油とポンプシス
テムが大型のアルミ一次電池パックに組み込まれているにもかかわらず、電気自動車用の充電式
リチウムイオンバッテリーパックの5倍軽くコンパクトである。
アルミニウムが非常に安価であ
ることに加えて、最高の化学エネルギー密度貯蔵材料の1つであることを説明、すなわち、臭素
だけで、ほとんどのものよりも多くのエネルギーを貯蔵し、高価で危険であり、匹敵するもので
多くの専門家は、アルミニウム空気電池が、リチウムイオン電池と自動車用ガソリンの唯一の代
替可能性があると考えている。
アルミ・エアー・バッテリーは、内蔵バッテリーを使い切って補
充するため、電気自動車用のレンジ・エクステンダーとして使用される。また、遠隔地や一部の
水中用の電源として使用されることもあるが、このような電池は、未使用であれば長期間保存で
きるが、初めて電池を入れると直ちに劣化しはじめる。

このようなアプリケーションは、新しいシステムが大きなメリットもたらし、既存のバージョン
ではシャットダウンしプロセスを遅らせることができるが、 新しいシステムは、例えば車内のレ
ンジエクステンダーとして使用された場合は、それを使用して1ヶ月間駐車した後、戻っても、
これらのバッテリー使用面で有効だと考えられ、
この新しいシステムで得られる可能性がある、
より長い貯蔵寿命で、アルミニウム空気電池の使用は現在のニッチアプリケーションを超えて広
がる可能性があると考えており既にこのプロセスに関する特許を申請中であるという。

※Massachusetts Institute of Technology. "Extending the life of low-cost, compact, lightweight batteries.
" ScienceDaily. ScienceDaily, 8 November 2018. www.sciencedaily.com/releases/2018/11/181108142402.htm.
誌面の都合で残件扱いとする。

● 今夜の寸評:拙速は大事故のもと

外国人の労働問題が急浮上している。考え方はすでにブログ掲載しているが、1つは就労ビザ制
度のスパイラルアップであり、期間中のフォロアップシステムの充実であり、2つはめは社会保
障条件の公平化である。この整備がない限り、国内の非正社員化と同じで、疎外感が蔓延しやが
て”大事故(喩え)"に繋がるだろう。


 
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真向ひに寒オリオン

2018年11月10日 | 時事書評


                                  

第75章 為政者の悪
人民の生活が苦しいのは、為政者が租税を取りすぎるからだ。これでは、生活できるはずがない。
人民が反抗するのは、為政者が強制手段に出るからだ。これでは、服従するはずがない。
人民が生命を大切にしないのは、為政者が欲望をそそりたてるからだ。これでは、長生きできるは
ずがない。
人民を愛する政治とは、作為せず自然にまかせる政治のことである。

民の死を軽んずるは、上の生を求むることの厚きゆえなり まさに現代の社会悪を射抜いたとも
いうべき痛烈な批判である。「人民を無欲ならしめよ」(3章)という主張は、一見愚民化政策
感をあたえるかも知れぬが、その実、人間の生命を愛惜してやまぬヒューマニティの発露だっ
たの
である


第76章 「兵強ければ滅び、木強ければ折る」
人の体は生きている問は柔らかい。だが、死ねば堅くこわばる。草本は生きている間は柔らかい。
だが、死ねば堅く・ひからびる。堅く強いものは、死のともがらだ。柔らかく弱いものは、生のと
もがらだ。武力を誇る者は滅び、堅い木は折れるではないか。
弱小は強大に勝つ。これが自然の法則である。
 

 Nov. 6, 2018 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 

【エネルギー通貨制時代 17】
  
  

   Mar. 3, 2017 



【蓄電池篇:40年のエネルギー貯蔵システム投資1兆2千ドル】
11月6日、Bloomberg New Energy Finance (BNEF)は、世界のエネルギー貯蔵市場が、40
年までに累積942GW / 2,857GWhに増加し、今後22年間に1兆2千億ドルの投資が見込まれると
報告した。それによると、❶40年には全世界の設置電力容量の7%に相当するところまでエネル
ギー貯蔵量が増加。❷
中国、米国、インド、日本、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、英
国が主要国
となり、❸これらの9つの市場は、40年までに設置容量の2/3に相当。近い将来、
国は市場を支配し、20年代初頭には米国が追い越されるが、20年代~40年代は中国支配する
と予測。残念ながら日本は停滞した格好に。

 【風力発電篇:極寒冷地仕様風力発電機実証運転スタート】
11月8日、NEDOは、ロシア極東に極寒冷地仕様の風力発電機3基を完成させ、風力発電システム
の実証運転を開始したことを公表。本実証事業は、北極圏に位置し、ロシア極東でも特に寒冷な地
域、サハ共和国内のティクシ市で実施する。それによると、今後、風力発電システムに加え、ディ
ーゼル発電機、蓄電池などを組み合わせて、極寒冷地に適応した電力系統の安定化を実現するエネ
ルギーマネジメントシステム「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」を
構築。その後19年12月から低コストで安定的なエネルギー供給の本格的な実証を行う予定。

ロシア極東地域は、大規模な電力系でなく、ディーゼル発電機依存する独立系統地域が多数存在。
これら地域では、燃料輸送コストのために、発電単価が極めて高い状況となっており。ロシア極東
地域の地方政府は、電力価格を電力系統に接続地域との同等補完措置のため財政負担を強いられ、
また、ディーゼル発電機の老朽化によるエネルギー安定供給が危ぶまれていた。このような背景の
もと、今年2月27日にモスクワ市で、サハ共和国政府およびロシア国営電力会社ルスギドロとの
間で、風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業に関する協力覚書(MOC)を締結。実
証地のサハ共和国のティクシ市は、北極圏に位置し、ロシア極東でも特に寒冷な地域であり、独立
系統地域。

尚、極寒冷な気候に適した運転制御システム仕様はは、マイナス30℃以下での運転を可能とし、
300キロワットの風力発電機3基をサハ共和国のティクシ市内に設置。それにしても、厳寒のロ
シアの風力発電のノウハウがどれほどのものか見届けたい思いが強くなる。


【オールバイオマスシステム事業:木質ペレットを貯蔵サイロに「空気」で搬送】

11月9日、特装車製造やリサイクル施設施工などを手掛ける極東開発工業は、空気を用いて木質
ペレットを搬送するエア搬送ユニット「JETCUBE(ジェットキューブ)」を開発したことを公表。
高所作業が不要になり作業者の負担を大幅に軽減できる(11月13日に発売)。それによると、
バイ
オマス燃料に利用される木質ペレットでの輸送および貯蔵用サイトへの搬送には、従来、木質ペレ
ットを詰めたフレキシブルコンテナバッグをクレーンでサイロ上部に運んで荷ほどき作業を行う必
要があり、危険な高所作業を伴うほか、非効率な点が課題になっていた。

 

今回開発したジェットキューブは、地上からサイロ上部の搬入口まで木質ペレットをエア搬送する。
粉粒体搬送車で培ったエア搬送のノウハウを活用した。木質ペレット1tあたり約11分で供給可能
で作業者の負担を大幅に軽減できる。
ユニットサイズは一般的なパレット1枚分の大きさで、トラ
ックのデッキに搭載しても木質ペレット配送用のフレキシブルコンテナバッグや資材を十分に積み
込めるほか、定置式としても利用できる。また、既存のトラッククレーンとフレキシブルコンテナ
バッグをそのまま利用できる。
ジェットキューブ本体の希望小売価格は300万円(税別)。ホース類
や排気ダクト、排気ブロワー、バグフィルターなどのシステム付属品は参考価格50万円。販売目標
は年間30台。

 

  ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.19    

    

第5章
一行は朝の多くをきつい上りに費やした。だが、流れの速い川に行く手をさえぎられ、しかたなく、
びっしりと木が生えそろった森の中を少し下って、本道を探すことにした。本道を行けば、きっと
橋があって、川を渡れるだろうと思った。
そのとおり橋はあったが、そこには兵隊がいた。ただ、一見したところ、橋の監視に遣わされた兵
隊ではなく、馬を休ませて、ついでに自分たちも滝の前でのんびりしているだけのように見えた。
これならきっとすぐに立ち去るだろうと予想し、一行は松林で一休みしながら待つことにした。だ
が、もうかなりの時間が経つのに、兵隊は一向に動く気配を見せない。代わりばんこに腹ばいにな
り、橋から手を伸ばして川の水をばしやばしやはね飛ばしてみたり、橋の上に腰をおろし、木の手
すりに背中をもたせかけて、さいころ遊びを始めたりした。そこへさらに四人目が馬でやってきた。

慌てて立ち上がった三人になにやら指示を与えて、また去っていった,

木の上のエドウィンほどではないにせよ、木の背後から様子をうかがうアクセルとベアトリスと戦
士にも、橋の上で起こっていることはよく見えた。馬で乗りつけた四人目がまた去っていくのを見
て、さてどうしたものかと顔を見合わせた。

「ずっといつづけるのかもしれませんね」とウィスタンが言った。「だが、お二人は修道院に急い
でおられる」
「できれば日暮れまでには」とアクセルが言った。「あのあたりには雌竜のクエリグが徘徊すると
聞きます。賠くなって出歩くのは愚か者だけだ、とも。あれはどんな兵士たちだとお考えになりま
すか、戦士殿」
「ここからではよくわかりません、ご老人。この上地の服装についてはまるで無知なもので。たぶ
んブリトン人だと思いますから、ブレヌス卿の兵隊でしょうか。むしろ、奥様の考えをお聞きした
い」

「老いた目には遠すぎて……」とベアトリスが片った。

「でも、たぶんそうでしょう、ウィスタン
様。ブレヌス聯の兵隊がああいう黒っぽい制服を着ているのをよく見かけましたから」
「とすると別に隠すようなこともないか」とアクセルが言った。一説明すれば、すぐ通してくれる
のではないかな」
「できれば日暮れまでには」とアクセルが言った。「あのあたりには雌竜のクエリグが徘徊すると
開きます。賠くなって出歩くのは愚か者だけだ、とも。あれはどんな兵士たちだとお考えになりま
すか、戦士殿」
「ここからではよくわかりません、ご老人。この上地の服装についてはまるで無知なもので。たぶ
んブリトン人だと思いますから、ブレヌス郷の兵隊でしょうか。むしろ、奥様の考えをお開きした
い」

「老いた目には遠すぎて……」とベアトリスが言った。

「でも、たぶんそうでしょう、ウィスタン様。ブレヌス卿の兵隊がああいう黒っぽい制服を着てい
るのをよく見かけましたから」
「とすると別に隠すようなこともないか」とアクセルが言った。

「説明すれば、すぐ通してくれるのではないかな」
「そうだとは思いますが……」

戦士はそう言って、橋を見下ろしながらしばらく考えていた。
橋の上では兵隊がまたすわり込み、さいころ遊びを再開していた。「そうではあっても、兵隊の目
の前を通って橋を渡るのであれぼ、せめてこうさせてください、アクセル殿」と戦士はつづけた。

「あなたと奥様が先に立って、男たちをうまく丸め込んでください。少年が馬を引いておニ人につ
づきます。わたしは少年の横を行きます-こうやって、口をだらしなく開け、目は落ち着きなくき
ょろきょろと。あれは唖者で白痴だ、と兵隊には言ってください。わたしと少年は兄弟で、借金の
かたにお二人に貸し与えられたということでどうでしょう。剣とベルトは馬の荷物の底に隠してお
きますが、もし見つかったら、あなたの剣だと言ってください」

「そのお芝居、ほんとうに必要でしょうか、ウィスタン様」とベアトリスが言った。

「兵隊ですから態度が荒っぽかったりしますけど、これまでは出くわしてもとくに何事もありませ
んでしたよ」
「なるほど、奥様。しかし、武器を持って、指揮官から遠く離れている兵隊というものは油断でき
ません。そのうえ、わたしは異国の人間ですから、からかうには恰好の相手に見えるかもしれませ
ん。少年を呼び下ろして、いまの方法でいきましょう」

                      

一行は、橋から少し離れたところで森から出た。兵士たちが目ざとく見つけ、立ち上がった。

「それではだめです、ウィスタン様」とベアトリスがそっと言った。「いくら間抜け面をよそおっ
ていても、いまのあなたは、一目見るだけでやはり戦士です」
「大根役者はわかっていましたが:・・:。奥様、ご助言を。何をどうすればもっとうまくできま
すか」
「まず歩き方です」とベアトリスが言った。「いまのままでは間違いなく戦士です。もっとちょ
こちょこと。そして、つまずいて転びそうになる感じで、ときどき大きな一歩を」
「ははあ、なるほど。いいご助言をどうも、奥様。では、唖者のわたしはもうしゃべりません。ア
クセル殿、あとはよろしく。うまく切り抜けてください」

水が岩を流れ落ち、一行を待ち受ける三人の兵士の下を流れていく。橋に近づくにつれ、その水音
が強くなってきて、アクセルはそこに何か不吉なものを感じた。苔むした地面に馬の足音が響く。
それを背後に聞きながら先頭を進み、兵士らまで声が届く距離に来たとき、足を止めた。

兵士たちけ鎖帷子も着ず、兜もかぶっていなかったが、全員が同じ黒っぼいチュニックを着て、右
肩から左の腰へ革綴を下げていた。そこに剣を吊るしていろとあれば、身分は疑いようがない。い
まのところ剣は鞘に収まったままだが、一行の前に立ちはだかる二人は柄に手を置いている。その
うちの一人は背が低く、大くて、筋肉質。もう一人は年齢がエドウィンとさほど変わらないような
若者で、やはり小柄だ。どちらも髪を短く刈り込んでいる。その二人とは対照的に、三人目の兵士
は背が高い。髪は灰色で、肩まで届く長さがあるが、頭にぐるりと巻いた綴で後ろにまとめられて
いて、手入れも行き届いている。ほかの二人とは外見が違うし、見るからに態度が違う。背の低い
二人人は橋の通行を止めようと身を硬くして立っているが、長身の兵士は数歩後ろにひかえ、のん
びりと柱に体を預けて、胸の前で腕を組んでいる。

まるで、夜、焚き大の前にすわって、そこで交わされる話を聞いている者の風情だ。
ずんぐりした兵士が一歩前に踏み出した。アクセルがその兵士に向かって話しかけた。

「ご苦労様です、兵隊さん。怪しい者ではありません。どうぞ通してください」

ずんぐりした兵士は何も答えなかったが、一瞬、顔に迷いの色が浮かんだ。パニックと侮蔑の混在
する表情でアクセルをにらみつけると、助けを求めるように後ろの若い兵士を見やった。だが、と
くにいい知恵がもらえそうにないと見て、視線をアクセルに戻した。
どうやら勘違いしているらしい、とアクセルは思った。この兵隊たちが待ち受けていたのは誰か別
人だ。だが、間違えていることにまだ気づいていない………そこで、「わたしたちはただの農夫で
す、兵隊さん」と言った。一息子の村へ向かう途中です」

ずんぐりした兵士は気を取り直し、むやみに大きな声でアクセルに言った。

「同行の者は何者だ、百姓。見たところ、サクソン人ではないのか」
「わたしたちが預かることになった兄弟です。これから仕事を仕込んで、役に立ってもらわねばな
りませんが、ご覧のとおり一人はまだ子供。もう一人はおつむに難のある唖者とあって、仕込み甲
斐となると、なんとも・・・・・・・・」

アクセルがそう言ったとき、長身で灰色の髪の兵士が、突然、寄りかかっていた柱から体を隨した。
何かを思い出したかのように、首をかしげてじっと考えている。一方、ずんぐりした兵士は、怒り
の表情でアクセルとベアトリスの背後を見ていたが、剣の柄に手を置いたまま二人のわきをすり抜
け、後ろの二人に近づいた。エドウィンは馬の手綱を持ち、近づいてくる兵士を無表情で見ていた。
ウィスタンは目をきょろつかせ、だらしなく口を開けて、けたけたと笑っていた。

兵士は何か手掛かりでも探すように、二人を交互に見ていた。そして、ついにいらいらに堪えきれ
なくなったのか、ウィスタンの髪をつかみ、怒りにまかせて引っ張った。

「髪も切ってもらえないのか、サクソン人」戦士の耳元でそう怒鳴ると、もうI度引っ張った。引
き倒すか、せめてひざまずかせたいという勢いだったが、ウィスタンはよろめきはしたものの倒れ
ず、代わりに哀れっぽい悲鳴をあげた。
「しやべれないんです、兵隊さん」とベアトリスが言った。「ご覧のとおりばかな子で、少しくら
い手荒く扱われても気にしませんけど、順順を起こすと手に負えなくなります」

ベアトリスがしやべっているとき、どこかで何かが動いたような気がした。アクセルは振り返り、
橋の上の兵士たちを見た。背の高い灰色の髪の男が腕を持ち上げていた。五本の指で何かを指し示
す形を作りかけ、寸前でその気をなくしたのか、結局は無意味な手の動きで終えて、最後には腕そ
のものを下ろした。だが、男の目は不承知の色をたたえ、同僚の兵士をじっと見ていた。アクセル
はその様子を見て、灰色の髪の男の気持ちがわかった。既視感があり、男の気持ちの動きが読めた
と思った。あの男は腹を立て、たしなめようとしたのだろう。言葉が口から出かかったが、直前、
ずんぐりした同原に指図する立場にないことを思い出した………かつてどこかで自分も同じような
経験をしている、とアクセルは思った。だが、その思いを強引に払いのけ、なだめる口調で言った。

「お仕事で忙しいみなさんをお騒がせして申し訳ありません。ここを通していただければ、すぐに
この目障りな姿を消しますので」

だが、ずんぐりした兵士はまだウィスタンを痛めつけていた。

「おれに向かって癩廂など起こしてみろ。どんなことになるか思い知らせてやる」と怒鳴った。

兵士はようやくウィスタンを放し、また橋の上の持ち場に戻っていった。何も言わず、怒りながら
も、その怒りの原因をすっかり忘れてしまったように見えた。 張り詰めた空気が、流れ落ちる水
の音でさらに張り詰めたものになった。ここで回れ右をし、全員で森の中に退散したら、丘ハ隊た
ちはどう反応するだろうか、とアクセルは思った。そのとき、灰色の髪の兵士が他の二人の横に並
んで、初めて口をきいた。

「この橋は板が何吹か壊れていてね、おじさん。おれたちがここに立っているのは、たぶん、あん
たら善良な通行人に注意するためだと思う。気をつけて渡らないと、流れに落ちて山腹をまっさか
さまだぞ、とねI
「どうもご親切に、兵隊さん。では、注意して渡ります」
「さっきから見ていると、あんたのその馬、歩き方がおかしいようだ、おじさん」
 蹄を一つ傷めておりまして、ひどくないことを願っています。ですから、ご覧のとおり、人は乗
せません」

「橋の板が水しぶきで腐っていて、危険だからここで見張っている。ただ、そこにいる同僚はもっ
と重大な任務でここにいるはずだと言ってきかない。そこでお尋ねするんだが、おじさんと奥さん、
ここへ来る途中で怪しい者を見かけなかったかい」
「わたしたちもこの辺は初めてなんですよ、兵隊さん」とベアトリスが言った。「ちょっと見ただ
けで怪しいかどうかなどわかりませんけど、この二日間、とくに変わったことはありませんてした」

ベアトリスを見て、灰色の髪の兵士の目が和み、笑ったように見えた。

「女の足で、しかもお年なのに、息子さんの付まで長い道のりを歩くのはたいへんだね、奥さん。
道中、どんな危険にさらされるかわかったもんじやないのに。いっそ息子さんと一緒に暮らして、
毎日、苦労がないように面倒を見てもらったほうがいいんじやないかな」
 一そうできれば、とは思いますよ、兵隊さん。自乙子に会ったら、夫とわたしで話してみます。
でもね、最後に会ってからずいぶん経ちますし、すんなり受け入れてもらえるものかどう
か……」

灰色の髪の兵士はベアトリスにやさしい目を向けつづけ、

「それは取り越し苦労かもしれないよ、奥さん」と言った。「おれも両親とは遠く離れていて、ず
いぶん長く会ってないな。一度や二度、激しい言葉のやり取りだってあったかもしれない。けど、
もし明日、両親がお二入みたいに長い道のりを歩いて訪ねてきたら、おれはきっと飛び上がるほど
に嬉しいと思うな。お二人の息子さんがどんな男か知らないが、奥さん、きっとおれと同じだと思
うよ。賭けてもいい。お二人を見た瞬間、喜びの涙を流すんじやないかな」
「兵隊さんは親切な方ですね一とベアトリスがI.一眉った。「きっとそうでしょう。夫ともいつ
もそう言っているんですけど、人様から、それもご自分でも家から遠く離れている方からそう言っ
ていただけると、安心します」
「よい旅を、奥さん。万一、反対方向からおれの両親が来るのに出会ったら、やさしく声をかけて
やってください。何も心配せずそのまま進め、と。がっかりする旅にはならないから、と」灰色の
髪の兵士はそう言って、わきによけ、一行に道をあけた。

「危ない板があることを忘れずに、おじさん。馬は自分で引いていったほうがいいよ。子供やその
男には無埋だと思うから」

ずんぐりした兵士は不満そうに見ていたが、仲間がかもす自然の威圧感には逆らえないようだった。
くるりと全員に背を向けると、ふてくされた様子で手すりから身を乗り出し、水面を見ていた。少
年のような兵士はしばらくためらっていたが、灰色の髪の男の横に立った。アクセルがもう一度礼
を言うと、二人して礼儀正しくうなずいた。アクセルは馬を引き、下が見えないようその目を覆い
ながら橋を渡った。

                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

黄色い太陽と深い霧の"古代イングランドに迷い込み言葉の迷路を彷徨っている。あきらめず彷徨す
るしかないか、ここは。
"
                                      この項つづく 

   Feb. 8, 2018

● バラの香り成分に抗うつ効果確認

バラの主要な香り成分「フェニルエタノール」に抗うつ効果があることを、川崎医療福祉大医療技
術学部の上野浩司講師(神経生理学)らの研究グループが突き止めた。フェニルエタノールを吸わ
せたマウスは、ストレス環境下でうつのような状態になりにくいことを確認。精神疾患の新しい薬
や治療法の開発につながる成果として期待される。
これまでにもバラの香りが人間のストレスホルモンの分泌を抑える働きを示す研究成果が報告され
ているが、上野講師によると、どの成分が作用しているかは明らかになっていないため、グループ
は香水や化粧品などに使われるフェニルエタノールに着目し効果を確かめた。
 
実験では、密閉空間で15分間フェニルエタノールを吸わせたマウスと、何もしていないマウスの
しっぽをそれぞれテープで固定し、逆さづりのような状態にして10分間放置。うつ傾向を示す行
動で、あがくのをやめて動かなくなる「無動時間」の長さを調べた。
10匹ずつ計20匹を比較し
たところ、通常のマウスは動かなくなる時間が平均して約8分間あったのに対し、フェニルエタノ
ールを吸わせたマウスは2分~1分半短かった。ループは「フェニルエタノールがストレスを緩和
させ、抗うつ作用を発揮することを示した実験結果」と分析している。

 Wikipedia

 研究は、川崎医科大精神科学教室などの協力を得て4月から実施。成果は8日、仏科学雑誌電子版
に掲載された。
 上野講師は「メントールやかんきつ類の果皮に含まれるリモネンなど、バラ以外
の香り成分についても、精神状態にどう影響を及ぼすか調べたい」と話している(山陽新聞 2018.
11.09)。

   真向ひに寒オリオンや湖の闇

 ● 今夜の一曲

『オリオンの炎』 唄 徳永英明 
Music Writer:徳永英明

 雄もが皆この地球に生まれて来て
 同じ道を歩仁ことが運命ならば

 君と僕は何故あんなに悲しんで

 違う道を選び別れたのだろう

 果てしないこの空に

 とうにもならない現実を叫んでも…
 あの才りオンに君と肩寄せ合い

 叶えると君に誓ったはずさ…あの日
 昔ならばもうこの場で諦めて
 逃げるように僕は帰っただろう

 枯れる程涙して

 

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千マイルを光速で

2018年11月09日 | 時事書評


                                  

第73章 天網恢恢(かいかい) 疏(そ)にして失わず
積極的にふるまうことを固執すれば、結局は身を滅ぼす。消極的に身を守ることを固執すれば、
危賜を冒さずにすむ。だがいずれにしてもひとつの立場に固執する限り、正しいとはいえない。
絶えざる変化は宇宙の本質である。天の真意がいずれにあるかは、聖人といえども察知すべくも
な天道は、自己を主張せずして万物を統括し、命ぜずして万物を適応せしめ、招かずして万物を
おの
ずと帰一せしめ、作為によらずして秩序を形成する。天の網は網目が荒いが、何ひとつ取り
おとしはない

天網恢恢 元来は本章に見るごとく、「自然の法則は万物に貫徹している」という意味だが、
般には、悪には早晩しかるべき報いがくるということのたとえとして用いられている。「天網

恢、疎にして漏らさず」ともいう。

第74章 刑罰無用のこと 
悪政のもとで、人民が生きることに絶望してしまえば、刑罰は何の効果も持だない。善政のもと
で、人民が生を楽しみ死を恐れているなら、たま仁ま秩序を乱す看が出ようとも、処刑して見せ
しめにする必要もない。いずれにせよ、刑罰は無用である。天道こそ、いっさいの秩序の根元で
ある。
「道」にはずれた行為には、かならず破局が待つ。天道に代わって人を罰するのは、大工
をまねて木を削
るに等しい、しろうとが大工をまねれば、けがをするのがおちだ。

天道〉 原文は「司役者」。死をつかさどる者の意味。

  Nov. 8, 2018

 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 16】
  

 

   Mar. 3, 2017 

ソーラータイル事業篇:水上太陽光は4年未満で百倍超拡大
世界銀行とシンガポール太陽光エネルギー研究所(SERIS)は10月30日、水上太陽光発電に関する
調査報告書を公表。2014年の末に世界中でわずか10MWの設備容量だった水上太陽光発電所が2018
年9月の時点では1.1GWと4年未満で100倍以上に拡大していることなどを明らかにした。水上太陽
光発電に関する市場調査は初めて
同報告書では、控えめな前提条件でも水上太陽光発電のポテ
ンシャルを世界全体で400GWと見積もる。この規模は、2017年末の時点におけるすべての太陽光
発電所の設備容量の総和に匹敵する。
例えば、大規模水力発電所で貯水池の表面積のわずか3~
4%に水上太陽光発電を設置するだけでも発電所全体の容量を倍増できる可能性があり、日中の
太陽光による出力を活用することで水資源のより戦略的な活用が可能になる。このブログでオー
ルソーラーシステムとして調査研究されてきた課題でもあるが、いよいよ世界的な展開といsて
認知されてことになる。

 

また、多くの国において水上太陽光は都市や需要の大きい地域の近くでの発電を可能で、初期投
資費用は多少増加するものの、水によりパネルを冷却する効果があり発電効率が向上し、長い目
で見れば水上太陽光の投資対効果は従来の地上設置型の太陽光発電と比較しても遜色ない。



さらに貯水池などでは、水上に並べた太陽光パネルが水の蒸発抑制や水質改善、ポンプの駆動
や灌漑用の電源などのために役立
現在、水上太陽光発電所の建設が相次いでいるのはアジア
であり、数十~数百MW級のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が中国、インド、東南アジア
などで建設または計画されつつあると同報告書では分析している。
 世銀でエネルギーおよびエ
クストラクティブズ担当上席ディレクター(Riccardo Puliti)は、水上太陽光発電技術は、土地資
源が貴重な地域や電力網インフラが弱い地域で絶大な威力を発揮する。各国の政府や投資家が水
上太陽光発電のメリットに気づき始めており、アジアに加え、アフリカや南米などのさまざまな
国々で関心が高まりつつあるようだと語る。


 

 No.21 
 世界初、iPS由来の細胞を脳移植 パーキンソン病治験
 11月9日、京都大の研究グループは、ヒトのiPS細胞からつくった神経細胞を、パーキンソン
病の患者の脳に移植したと発表した。iPS細胞からつくった細胞を実際の患者に移植したのは
、国内では目の難病に続く二つ目で、脳への移植は世界で初めてとなる。
移植手術は10月に実
施。患者は50代の男性で、術後の経過をみていたが、いまのところ手術による脳出血などの問
題は起きていないという。

今回は、公的医療保険を適用した治療にするための「治験」の手続きをふむ。理化学研究所など
が目の難病で進める臨床研究に比べ、より実用化に近い。治験として患者にiPS細胞からつく
った細胞が移植されたのも初めてとなる。
京大iPS細胞研究所が保管している第三者のiPS
細胞からつくった神経細胞約240万個を、患者の頭部に開けた直径約1・2センチの穴から、
注射針で移植した。計画では、薬物治療で症状を十分にコントロールできない50~60代の患
者7人が対象。第三者の細胞をもとにしているため、拒絶反応を抑える目的で、1年間は免疫抑
制剤を使う。2年間、経過を観察し、安全性や有効性を調べる。



尚、パーキンソン病はドーパミンという物質をつくる脳内の神経細胞が減少し、手足の震えや体
が動きにくくなるといった症状が出る。厚生労働省の調査で国内に16万人の患者がいるとされ
る。
 

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.18   

 

    

第4章
「さて、君は昨夜の約束を守ってくれたかな。その優についての約束を?」
「はい、言われたとおりにしました」
「誰にも言わなかったな。君のやさしい叔母さんにも?」
「言っていません。みんなこれが鬼の噛み傷だと注って、それでぼくを憎みますけど、誰にも
って
いません」
「勝手に思わせておけ、若き同志。どうしてその傷がついたか、ほんとうのことを知られるよ
十倍もいい」

「でも、一緒に来た叔父さん二人はどうなんですか。あの二人は却っていませんか」
「君の叔父さん二人は勇敢な人たちだが、気分が悪くなって鬼の巣には入らなかった。だから
密を守るのは、君とわたしのニ人だけだ。傷が治れば、もう妙なことを考える人もいなくな
るし
な。できるだけ清潔にして、絶対に引っ掻くな。昼も夜もだ。わかったか」

「はいI

さっき、谷の斜面を上ってくる途中、エドウィンは立ち止まってブリトン人の老夫婦を待ち
なが
ら、この優ができた前後のことを思い出そうとしてみた。点々と生えるヘザーの間に立
ち、ウィ
スタンの雌馬の手綱を引きながら一所懸命考えたが、そのときはすべてがまだ曖昧膜瑚としてい
て、よく思い出せなかった。だが、楡の本に登り、枝の間に立って橋の小さな人影を見下ろして
いるいま、いろいろなことが心によみがえりつつあった。あの湿った空気と暗さ、小さな本の慟
にかぶせられた熊の毛皮のきついにおい、檻が揺れたとき頭や肩に落ちてくる小さな甲虫の感触
………檻が地面を引きずられていたことも、檻が飛び跳ねるたび体があちこちへと投げ出されそ
うになって、慌てて姿勢を変え、目の前の格子にしがみついたことも、その格子がぐらぐらして
いたことも思い出した。檻が急停止し、すべてがまた静まったときは、これから何か起こるかわ
かっていたこともだ。これから熊の毛皮が取り除かれ、檻に冷たい空気が流れ込み、近くの火の
明かりで夜の様子がうかがえる………なぜわかったかと言えば、その夜、同じことがもう二度起
こっていたからだ。その繰り返しの中で恐怖の感覚も少し鈍っていた。もっと思い出したことも
ある。鬼の放つ悪臭とか、檻の格子に体当たりを繰り返してきた小さくて凶暴な生き物とか……
あれを避けるため、できるだけ檻の後ろ側に下がっていなければならなかったことも。その生き
物はじつに動きがすばやくて、姿をはっきりとらえるのが難しかった。エドウィンの印象では若
い雄飛くらいの大きさで、形もそれに似ていたが、嘴はなく、羽根もなかった。

歯と鈎爪で攻撃し、攻撃中ずっと甲高く耳障りな声で鳴きつづけた。歯と鈎爪の攻撃は本の格子
で食い止められていたが、ときおり、何かの拍子で尻尾が格子を強く叩くことがあって、そんな
とき、エドウィンの目には格子が突然ずっと頼りないものに見えた。幸い、まだ子供らしく-と
エドウィンには思えた-自分の尻尾の威力には気づいていないようだった。

攻撃されているときは永遠にも等しく思えたが、いま思い返してみると、攻撃時間はさほど長く
なかったような気もする。むしろ、つないである紐ですぐに引き戻されていたのではなかったか。
そして熊の毛皮がどさりとかぶせられ、また真っ暗になり、檻が別の場所に引かれていき、エド
ウィンは格子にしがみつきつづけた。

その繰り返しが何度あったのだろう。二、三回ですんだのか。それとも十回とか、いや十二回ほ
どもあったのか。いや、実際にあったのは一回だけで、あんな状況ながらぼくは眠ってしまい、
残りは夢で見たのではなかろうか………

最後のときは熊の毛皮がなかなか取り除かれなかった。エドウィンは耳を澄ませて待ちつづけた。
例の生き物の鳴き声がときには遠く、ときには近くから聞こえた。鬼どうしが話をするときの、
うなるようなゴロゴロという音が聞こえた。これまでとは違う何かが起ころうとしている、と思
った。恐れに満ちたその予感のなかで、エドウィンは救助者の出現を願った。自分という存在の
根底から願った。ほとんど祈りと言ってよいものだったろう。その願いが心の中で一つの形にな
っていったとき、この願いがかなえられることをエドウィンは確信した。



檻が振動した。見ると、檻の前面が-あの生き物から身を守ってくれていた格子ともども-横に
引かれていくではないか。エドウィンは気づくと同時に身を縮め、後ろに下がったが、下がりき
らないうちに早くも熊の毛皮が引き剥がされ、あの斧猛な生き物が一直徐に飛びかかってきた。
檻の中で尻をついた状態では、できることなどあまりない。本能的に両足を持ち土げて蹴ろうと
したが、相手の動きがあまりにも速く、結局、拳と腕で振り払うのが精一杯だった。一度など完
全にやられたと思い、目を閉じたが、思い直してまた聞くと、ちょうど相手が伸び切った紐で引
き戻され、鈎爪で虚空を掻きむしりながら宙に停ましているのが見えた。相手の速さに翻弄さ

つづけていたのに、この稀有の一瞬、エドウィンは相手の姿をはっきりと見た。そして、第一印
がさほど間違っていなかったことを知った。確かに羽根をむしられた鶏によく似ている。

ただ、頭が鶏ではなく蛇だ。紐で攻撃を邪魔されたその生き物は、
再度向かってきた。それをな
んとかしのいでいると、突然、檻の前面がまたもとに戻され、つ
づいて熊の毛皮がかぶせられて、
闇が戻った。小さな檻の中で丸まっているエドウィンが、左
の脇腹に-肋骨のすぐ下あたりに-
ちくちくする痛みを感じ、同時に枯りつくような湿り
気を感じたのは、そのあとのことだ。

エドウィンは楡の木のLで少し足の位置を変え、右手を下ろして、そっと傷口に触れてみた。も
う深い痛みはない。谷の斜面を上ってくるときは、シャツの粗い生地でこすれて、思わず顔をし
かめるようなときもあったが、こうやってじっとしていれば、ほとんど何も感じない。今朝、納
屋の戸口で戦士に見てもらったときでさえ、小さな穴がぽつぽつといくつかあいている程度の傷
になっていた。傷としてはごく浅い。これよりひどい怪我をしたことなど何度もある。なのに、
村人が鬼の噛み傷だと信じたぼかりに、こんな大騒ぎの原因になった。あの生き物にもっとうま
く立ち向かっていたら、怪我さえせずにすんだかもしれないのに、と思った。

だが、今回のことで自分に恥じることは何もないのをエドウィンは知っていた。恐ろしさのあま
り叫んだこ
ともないし、鬼に命乞いをしたこともない。あの小さな生き物の最初の突進には不意
をつかれたが、そのあとは真正面から立ち向かった。しかも、あの生き物がまだ子供だ
と気づく
だけの心の余裕があって、ならば人間が行儀の悪い犬にやるように、相手に恐怖心を
叩き込んで
士気をくじくこともできるはずだ、と判断した。だから、じっと目を見開き、相手
をにらみつけ、
恐れ入らせようとしながら、こういうぼくなら母もきっと自慢に思ってくれる
だろうと思いつづ
けた。しかも、あれは無駄な行為ではなかったはずだ。いま思うと、最初の
奇襲のあと、あの生
き物の攻撃には鋭さが欠けていたように思う。戦いの主導権はしだいにぼ
くの手に移りつつあっ
た………あの生き物が鈎爪で虚空をつかんでいる瞬間を、エドウィンは
また心に描いてみた。

あれは戦いつづけたいという闘争心の表れではなく、伸び切った紐に首
を絞められ、ただパニッ
クになっていただけではなかろうか。うん、ありうる。というより、
鬼はあの時点で戦いの勝者
をぼくと判定し、だから急いで終わらせたのではなかろうか………

「君を見ていたぞ、少年」と老ステッフアは言った。
君にはたぐいまれな何かがある。いずれ
誰かに出会い、戦士の魂にふさわしい技を敦えてもら
える日が来るだろう。そのとき、君は誰
もが恐れる男となる。狼が何匹か村に入ってきたくらい
で、納屋に隠れて好きなようにさせる男にはならん」


それがいま実現されつつある。戦士はエドウィンを選んだ。二人は一緒に使命を果たしに行く。
だが、そ
の使命とは何だろう。ウィスタンははっきり話してくれていない。ただ、遠い沼沢地に
いる王が、この瞬間
にも、その使の結末を待っているとしか言わない。それに、なぜブリトン人
の老夫婦と一緒に旅をするのだろう。道が曲がるたびに休みたがるような二人と………

エドウィンは老夫婦をじっと見下ろした。二人はいま戦士と何事か真剣な顔で話し合っている。さすがの
老婦人も、エドウィンを呼び下ろすことはあきらめたようだ。三人で二本の松の大木の後ろに隠れ、橋の
上の兵隊を見ている。本の上にいるエドウィンには、騎手がまた馬上に戻り、何やら身振り手振りを交え
て言っているのが見える。三人の兵隊は納得したのか、馬から離れていく。騎手が馬の鼻面の向きを変
え、橋を下りて、全速力で山を下っていく。

これまで山の本道を極力避け、谷の急斜面に聞かれた切通しばかりをたどってきたのが、エドウ
ィンには
不思議でしかたがなかった。だが、いまはわかる。ああいう騎手とできるだけ出会いた
くなかったからだ。でも、これからどうするのだろう。旅をつづけるには本道に出て、
滝の前を
通るあの橋を行くしか方法がない。なのに兵隊は橋から動いてくれない。下のウィス
タンの位置
からは、騎手がもう去ったことが見えただろうか………エドウィンはそのことをウ
ィスタンに伝
えたいと思った。だが、木の上から大声を出すのはまずい。兵隊が聞きつけない
ともかぎらない。

やはり木を下りて、ウィスタンのところまで行くしかない。仮に相手が四人
だと思って直接対決
をためらっていたのなら、橋に三人しかいなくなったいま、戦士の考えが
変わるかもしれない。
最初からエドウィンと戦士の二人だけなら、もうとうに兵隊のいる橋に
出て、なんとかしていた
ところだろうが、実際にはあの老夫婦がいる。ウィスタンはあの二人
のために慎重になっている
に違いない。ウィスタンなりの事情があって連れてきたのだろう
し、あの二人はエドウィンに親
切にしてくれている。だが、やはりいらいらする同行者ではあ
る。

エドウィンはまた叔母の醜く歪んだ顔を思い出した。叔母は金切り声をあげてエドウィンに毒づ
こうとした。だが、そんなことはもうどうでもいい。エドウィンは戦士と一緒にいて、母
と同じ
ように旅をしている。途中で母に出会うことだってないとは言えない。出会えたら、
士と並ん
でいるエドウィンを見て、母は自慢に思ってくれるだろう。そして、母と一緒にいる
男たちは震
え上がるだろう..
                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

次回は第5章へ

 
                                    この項つづく 

 ● 今夜の一枚

仏像の中からミニ仏像 彦根の宗安寺、伝承「本当だった」

11月9日、庚申尊の本体は、今回見つかった大日如来像。台座に丁寧な金箔(きんぱく)が施
され保存
状態は良好だった。寄木造の仏像の中に仏像や経典を入れる行為は、鎌倉時代から見ら
れるが、意味
や目的は詳しく分かっていない。もともと、庚申尊の背中部分に像と経典を奉納し
たことは記され、寺でも
胎内仏の存在は把握していたが、誰も中を見たことがなく、本当に入っ
ているかどうかは半信半疑だったという。
と竹内真道住職(64)。修復に伴い、檀家からも中
身を確かめてほしいと声が上がり、内部を確
認。庚申尊の背部には、縦二十センチ、横十二セン
チの長方形にくりぬき、のり付けしたような痕跡があ
った。その部分をはがすと、中に隙間を埋
める綿がぎっしりと詰められ、紙に何重にもくるまれた大日如来
像と経典が出てきた。竹内住職
は「本当に入ってたんや」と安心。経典には「天下泰平」や「万民豊楽」とい
った願いが書かれ
ていた。修復を終えた庚申尊が寺に戻ったのは十月中旬。そのまま、秘仏の姿を模し
て作られた
「前立仏」の背後の棚に収められ、現在は見ることができない。二十三日には、大日如来像
経典
とともに公開。竹内住職は、かつては民間で信仰されてきた仏様なので、広く市民にも手を合わ
せに
来てほしい。と語る(中日新聞滋賀版 2018.11.09)。
※ 菩提寺


 ● 今夜の一曲

"A Thousand Miles"   Song ; Venessa Carlton  Music Writer ; Venessa Carlton 

この曲はは、米国のポップ歌手、Vanessa Carlton(Born Aug. 16, 1960~)自身より書かれたデビュ
ーシングル。Curtis SchweitzerとRon Fairにより制作される。彼女のアルバム「Be Not Nobody
(2002年)」からシングルカット。彼女は米国ペンシルベニア州ミルフォード出身のピアニスト

でシンガーソングライタ。パイロットの父親とピアノ教師の母親との間に生まれ。ロシア系ユダ
ヤ人と北欧系のハーフ。幼い頃から音楽に興味を持ち、ディズニーランドから帰った時にわずか
2歳で「It's a Small World」をピアノで弾いたエピソードを持つ。14才でニューヨークのバレ
エ学校に入学、卒業後は音楽の世界へ飛び込んだ。コロンビア大学在学中はマンハッタンでウェ
イトレスをし、アヴリル・ラヴィーンらを手がける音楽プロデューサーPeter Zizzoと出会い、
A&Mレコードと契約。2002年にアルバム『Be Not Nobody』でデビュー。Billboard 200アルバム・
チャートで5位、アルバムからの最初のシングル「A Thousand Miles」も自身最高5位を記録。
他オーストラリアで1位、イギリスで6位、その他ヨーロッパ各国でトップ10入りしている。

Making my way downtown walking fast
Faces pass and I'm home bound
Staring blankly ahead just making my way
Making a way through the crowd

And I need you
And I miss you
And now I wonder

If I could fall into the sky
Do you think time would pass me by?
'Cause you know I'd walk a thousand miles
If I could just see you tonight

It's always times like these when I think of you
And I wonder if you ever think of me
'Cause everything's so wrong and I don't belong
Living in your precious memories ....

 

● 今夜の寸評:高齢で千マイルを光速で駈ける

光陰矢のごとし少年老いやすく学なり難し、あるいは加齢とともに時の移ろいは加速するとは聞き慣れ
た言葉だが、それを実感している。それに加え、彼女が体調不良を訴え、料理をつくってもうらおうか
と弱気だ。調査研究作業に加え、メトフルトリンによる白蟻もテスト中、マイホーム・マイカーのDI
Y課題も山積している中、男子厨房に入る準備が加わり
(これは自信があるが?)、想定以上に忙しい。

 

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#IHearYou それはそうだけれどⅢ

2018年11月08日 | デジタル革命渦論

  


                                  

第70身にはボロを、ふところには玉を
わたしは、だれにでも理解でき、実行できる説しかとなえていない。にもかか者もなく、実行できる者
もないのは、なぜか。およそ、いかなる意見にせよ行為にせよ、それぞれに基本原理を持つものだ。
ところが人々には、その原理をつかもうとする意志がない。わたしの説を理解できない唯一の理由は、
ここにある。
そもそも、理解する者がいないという事実が、わたしの説の貴重さを示している。身にはボロをまとい
、ふところには玉を抱く。聖人とは、そういうものである。

第71
章 迷  妄
知の限界を悟るのが、真の知である。知の限界を悟らぬのは、迷妄である。
迷妄を、迷妄であると自覚
できたとき、はじめて真の知に通ずる道がひらけるのである。
聖人は、迷妄に陥ることがない。なぜな
ら、知の限界を悟っているからだ。

第72章 抑圧なき政治
無為の政治を行なえば、人民はおのずと治まって、為政者の存在することさえ忘れる。これこそ為政者
たる者の最高の存在形態である。
人民の本性を軽視してはならぬ。人民の自然を抑圧してはならぬ。抑圧しさえしなければ、政治はおの
ずと成功する。 
聖人は、自己の責任を自覚し、自己の価値を自覚しながらも、それを他に誇示しようとしない。つまり、
私意を捨てて、無為自然の「道」にのっとるのである。

無為の政治を・・・・・・存在形態である〉原文は「民不良成、則大成至」。「大成」を天成ととるのが
通例で、「無為の治を失えば(または、天成を恐れなければ)、天罰がくだる」と解されていた。だが、
それではいかにも卑俗で、老子の本旨に沿っていないと思われる。
 

 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 15】
  

 

   Mar. 3, 2017

 

【エネルギー貯蔵技術事例研究 Ⅵ】
✪ エネルギータイリング事業篇:最新窓ガラスエネルギー変換技術
  

● 世界初!窓が基地局に、「ガラスアンテナ」を貼るだけ
11月7日、昨夜のViewInc.社で紹介したスマート。ウインドウ「ダイナミック・ガラス」
につづき、NTTドコモとAGCは窓ガラスの室内側に貼り付けられる電波の送受信が可能な
ガラスアンテナを共同開発に成功したことを公表。両社は「世界初」とする。2019年上期
より、LTE(Long Term Evolution:次世代高速携帯通信規格)の周波数帯の基地局に同ガラス
アンテナを展開していく予定ガラスアンテナ・
サイズは700×210mmで重さは1.9kg。対応
周波数は3.5GHz帯で、帯域幅は40MHz。4×4 MIMOに対応している。下り変調方式は256QAM
で、スループットは最大588Mビット/秒。

開発したガラスアンテナは、透明性の高い導電材料とガラスを組み合わせたも、既存の窓に貼り付けて
も、景観や室内デザインを損なわない。さらに、独自に開発した「Glass Interface Layer(グラスインタ
フェースレイヤー)」の効果で、窓ガラスを通過したときの電波の減衰および反射を抑える。Glass I
nterface Layer
は、ガラスに近づいたときにガラスアンテナの性質が変わる影響を抑え、
安定した高速通
信を実現には、スモールセルをいくつも設置して、トラフィック(通信回線上で一定時間内に転送され
るデータ量)を分散させることが重要になる。現在、スモールセルのアンテナは建物の屋上や中低層階
の壁面に設置されているが、このような場所では設置できるエリアが限られたり、景観を損ねたりする
ことから、設置が難しいケースがある。そこで、建物の中にアンテナを設置する方法を考えた。

ただ、建物の中にアンテナを設置する場合も、インテリアを損ねたり、電波が窓ガラスを通過した時に
減衰するといった課題があった。これを解決するために、AGCが保有する、既存窓の表面にガラスを貼
り付ける「アトッチ工法」を活用し、今回のガラスアンテナの開発を進めてきた。
 両社は、5G(第5
世代移動通信)に対応したガラスアンテナの開発も検討中(窓が基地局に、「ガラスアンテナ」を貼る
だけ - EE Times Japan 2018.11.08 15:30)。

関連特許






● 世界初!10万年間磁場を発生させる超電導接合NMRコイル装置
11月2日、理化学研究所らの研究グループは、高温超電導線材の超電導接合持つ永久電流核磁気共鳴
NMR)装置でのNMR信号取得に成功したことを公表。この
本成果で、医薬品検査に用いられる定量
NMRや、アルツハイマー病発症に関わるアミロイドβペプチドの構造が超微量試料で得られる次世代
高磁場NMRの実現など、小型化・高性能化を伴ったNMRの普及拡大が期待できる。この
超電導コイル
NMRコイル)は、線材同士を超電導接合でつなぎ永久電流運転。しかし、高温超電導線材の超電導接
合はまだ原理検証レベルであった。今回、このグループは、レアアース系高温超電導線材の実用レベル
の超電導接合技術(iGSe接合)を実装コイルを初めて開発、
939テスラの磁場中での永久電流運転を
実現。1時間あたりの磁場の変化率は10億分の1レベルと極めて安定で、これはコイルを冷やし続け
れば外部電源なしで10万年間も磁場が発生し続ける。この安定磁場の中でNMR信号の取得に成功す
る。これにより、定量NMRなどに応用で、小型で汎用性の高い永久電流のNMR装置の開発が可能にな
り、高磁場を保持した永久電流運転が可能となる。NM装置の磁場向上により、アルツハイマー病など
の神経変性疾患要因のアミロイドβペプチド構造情報解析術が飛躍的な進展など、創薬や医療応用へ期
待されている。

今回、共同研究グループは、レアアース系高温超電導線材1本で巻いた小型のNMR用内層コイルを製
作し、コイルから引き出した薄いテープ形状の線材を構造物の障害にならぬよう引き回し、コイルから
漏れる磁場が接合部の電気抵抗ゼロ特性に悪影響しない接合部の最適位置を導き出す。その上で、線材
の両端部を同じ線材で製作した永久電流スイッチの両端部と熱処理により超電導接合することで、永久
電流運転を可能となる。(上図参照)。


上図、2日間にわたるコイル中心磁場の時間変化を示す。計測時間全体にわたる磁場変化の平均値は、1時間
あたり10億分の1レベルである。

これらのコイルにそれぞれ外部電源から電流を流し、内層コイルの磁場が4メガヘルツ、外層コイルが
396メガヘルツを発生することで、合計400メガヘルツの磁場を達成しました。その後、永久電流
スイッチを動作させて、外部電源を切り離すことで、永久電流運転を開始しました。2日間にわたる磁
場の変動を計測したところ、1時間あたり10億分の1レベルという非常に高い安定度が得られ、磁場
の空間均一度を向上させNMR信号の取得に成功する。

Dec. 19, 2017

今回のNMR装置では、高温超電導線材の内層コイルの発生磁場は大きくないが、高温超電導線材の超
電導接合を用いたNMRの永久電流運転を初めて実証できた。
今後、この技術を生かし、1300メガ
ヘルツ(30.5テスラ)の次世代超高磁場NMR装置の実現に取り組む方針。

 Nov. 7, 2018
【バイオ発電事業篇:世界初!発電するキノコ作製】
 プリンタで「発電するキノコ」を作り出すことに研究者が成功
米国の研究者は、3Dプリンターを使ってマッシュルームとバクテリアを組み合わせ『発電するキノコ』
を作り出すことに成功したことを公表。
スティーブンス工科大学(Manu Mannoor教授)らの研究グルー
は、マッシュルームと光合成を行いエネルギーを作る細菌のシアノバクテリアを組み合わせ発電する機
構をアイデアで、
3Dプリンタで生きているマッシュルームのかさの部分にさまざまな加工→グラフェン
に電気的特製を付与したグラフェンナノリボンインクで、木の枝のように分岐したパターンを3Dプリン
タてマッシュルームのかさを作製→シアノバクテリアを含むバイオインクを用いて、複数の点でグラフ
ェンナノリボンのインクと交差するようならせん状のパターン作製→
その後マッシュルームに光を照ら
すとシアノバクテリアが光合成を始め→光化学的反応によって発生した「光電流」が細菌の表面から流
れ→グラフェンナノリボンの導電ネットワークを介して移動→マッシュルームのかさに付着したシアノ
バクテリアの光合成を促す→65ナノアンペアという微弱な電気を発生させることに成功する。

 Nov. 8, 2018

今回作ることができた電力はわずかなもので、実際に何かの電気機器を動かすようなことはできないが、
研究グループは大量の発電キノコを作り出して並べることで、やがてはLEDライトを点灯させることも
できる。
また、3Dプリンタを用いた組み合わせにより、生きた発電機構を作り出すことを実証。現実の
自然には存在しない生物種の組み合わせ、革新的なバイオ構造を生み出すことができ、今後さらに多く
の発見につながる。シアノバクテリアはへ光合成に必要な水分を供給し、一般的な細菌の6倍の光電流
を取り出せ、シアノバクテリアは数日間長生きするメリットを確認。
さまざまな微生物界を工学的に統
合することで合理的な生体共生の存在を探り、多くのメリットを得ることができるという。
 

 ● 今夜の一曲

Say Yes 唄 チャゲ&飛鳥 Music Writer:CHAGE 飛鳥涼 青木せい子  
SAY YES」(セイ・イエス)は、CHAGE&ASKAの27枚目のシングル。1991年7月24日に発
売。発売元はポニーキャニオン。デビュー12年目にして初のオリコンチャート1位とミリオンセラー
を達成、テレビドラマ『101回目のプロポーズ』と共に大ヒットする。
日本国内のみならず、アジアでも
広く流行。
デビューから12年11ヶ月で自身初の1位を獲得。発売10週目累計売上200万枚突破
13週連続でオリコン週間1位、この記録はオリコン歴代5位(平成に記録した中で最大)。
小田和正
の「Oh! Yeah! / ラブ・ストーリーは突然に」に阻まれ2位にとどまる。累計売上で累計282.2万枚
を記録、作品(シングル&アルバム)中では最大売上を記録。

 余計な物など無いよね
 すべてが君と僕との愛の構えさ
 少しくらいの嘘やワガママ
 まるで僕をためすような
 恋人のフレイズになる
 このままふたりで 夢をそろえて
 何げなく暮らさないか
 愛には愛で感じ合おうよ
 硝子ケースに並ばないように
 何度も言うよ 残さず言うよ
 君があふれてる

 言葉は心を越えない
 とても伝えたがるけど
 心に勝てない 君に逢いたくて
 逢えなくて寂しい夜
 星の屋根に守られて
 恋人の切なさ知った
 このままふたりで 朝を迎えて
 いつまでも暮らさないか…

 愛には愛で感じ合おうよ
 恋の手触り消えないように
 何度も言うよ 君は確かに
 僕を愛してる

 

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#IHearYou それはそうだけれどⅡ

2018年11月06日 | デジタル革命渦論

  


                                  

第68「不争の徳」
立派な武士は、強がらない。戦上手は、誘いに乗らない。勝つことの名人は、やたらと喧嘩腰にならな
い。人使いの巧者は、相手の下手に出る。これが不争の摺である。不争の徳は、人の力を最大限に利用
する。これが天道の極意である。

第69章 兵法の極意
戦は、仕掛けてはならぬ。相手の仕掛けを待て。進んで戦うより、退いて守れ」
このことばを守るなら、進んでも、進んだとは見えず、腕をふるっても、ふるったとは見えず、敵を草
っても、草ったとは見えず、武器を取っても、取ったとは見えない。これぞ、兵法の極意である。
敵を侮ること、これほど大きな過誤はない。敵を侮り、進んで戦を仕掛ける者は、すでに「道」を失っ
ている。
したがって、双方の戦力が伯仲するときは、牧草されてやむを得ず応戦する側が、つねに勝つ。

   Jun. 5, 2017

 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 14】
  

   Mar. 3, 2017 

  View Inc.

 ソフトバンク 「スマート・ウィンドウ」に11億ドル投資

11月2日、金融市場などの調査会社のブルームバーグによるとブルソフトバンクは、大規模な投資を
公表した。インターネット接続された窓ガラスを製造販売するシリコンバレーメーカーView Inc.社に、
11億ドルを投資する。View社の技術――IoT 適用の遠隔御できるのスマート・ウインドウ「ダイナミ
ックガラス」は、ブラインドやその他のアクセサリをなくし冷却コストを削減(デジタル革命基本第5
則 イレイジング)。10年を費やし開発したガラスは、空港、病院、オフィスビルを対象販売からと
入る。投資はView社の
ミシシッピ州にある製造工場規模を2倍にし、アプリケーション開発系継続に向
けられる。 View社の担当責任者(CEO、Rao Mulpuri)は、初めて窓をデジタル化するものだと語る。
ソフトバンク・グループのビジョン・ファンド社、Uber Technologies Inc.および  WeWork Cosが有望な
テクノロジーに約1千億ドルの資本調達を行うが、その資金に450億ドルを拠出したサウジアラビアと
の関係でここ数週間で厳しい監視を受けている。
ソフトバンクの孫正義CEOが、将来的にはより多くの
資金を調達できるか不明であるが、サウジアラビアの危機以来、ビジョン・ファンドが明らかにした最
大の案件。

 Nov. 2, 2018 

この投資の前には、コーニング、マドレーン・キャピタル・パートナーズ、TIAAインベストメンツ、ニ
ュージーランドのソブリン・ウェルス・ファンドなどの投資家から約8億ドルを調達。ソフトバンクは
新たに11億ドルを投じた唯一の投資となる。 両社は、この取引でView社評価開示否定している。前
出の担当責任者(Mulpuri) によればこの契約は数週間継続、サウジの事件は不安材料だが、今や長期
間に渡る
ソフトバンクとの信頼関係を築いており楽観していると語る。

半導体製造適用技術により、View社はガラス板上に金属酸化膜の堆積方法開発。これは薄膜に非常に小
さな電流を流し、様々な程度でガラスを遮光できる。ガラス周辺のフレームには、色合いを調整し、イ
ンターネットと接続する電子デバイスと、該当する建造物建物に配置した気象監視レーダや通信アンテ
ナが含まれる。ユーザーは、モバイルアプリケーションで、建物に当たる太陽光量に基づき着色プロセ
スを自動化、これを単一色調するか多色のタイプの色合いにあるか選択制御できる。
 

View製品価格は、通常のラスの約4倍だが、省エネ効果で約20%削減し、シャッター、シェード、ブ
ラインド購入価格はゼロとなるので問題ないとする。 同社はさらに、工場や病院などの施設のスマー
トグラス一体建造物の居住・就労空間の健康促進改善効果を検証する。
 Wikipedia

同社のユーザーの1つであるはダラス・フォートワース国際空港で、この窓がターミナルをより快適な
室温を維持していることを実証  また、Facebook Inc.、FedEx Corp.、JPMorgan Chase&Co.、USAA、
Texas A&M University
をユーザーに抱え、現在までに450件のプロジェクトを完了、250件のプロジェクト
が計画/実行中。  SageGlassとKinestral Technologies Inc.もこのタイプのダイナミックガラスを製造して
おり、主要なガラスメーカーの支援を受けている。
 
今後、同社はスマートグラスにさまざまな機能を追加する。 また、各色調は、ソフトバンク社のスマートフォンなど
の保有知財/企業技術を生かした電子チップと、ARM Holdings Plcの設計を基調とする。 直近に、View社は、
特定ガラス板にセキュリティ防犯機能を追加する。 また、長期的には、窓をホワイトボードやビデオディスプレイ
可能な機能を追加する予定。

   July 17, 2018

 

【関連特許:95件】 

US20120062975A Controlling transitions in optically switchable devices :
  光学的に切り替え可能なデバイスにおける遷移の制御


【要約】
コントローラまたは制御方法は、デバイスおよび/またはデバイスの環境の現在の温度に関する情報なし
で動作するように設計または構成されてもよい。 さらに、いくつかの場合において、コントローラまた
は制御方法は、2つの終了状態の間の中間状態への光学デバイスの移行を制御するように設計または構成
されている。 例えば、コントローラは、透過率の2つの終了状態の中間である透過率の状態への移行を
制御するように構成されてもよい。 このような場合には、3つ以上の安定した透過状態を有する。


 


【特許請求の範囲】

1.エレクトロクロミック素子の光学的遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック素子を駆動するための駆動電圧を、
前記駆動電圧は、前記エレクトロク
ロミック素子のバスバーに印加され、
(b)移行が完了する前に、バスバーに印加される電圧の大きさ
を駆動電圧未満の大きさに減少させるステップと、
(c)バスバーに印加される電圧の大きさを減少さ
せた後、エレクトロクロミック装置内の電流または開回路電圧を検出するステップと、
(d)(c)で検
出された電流または開放回路電圧が光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するかどうかを決定す
るステップと、
(e)(d)において、光学遷移がまだほぼ完了していないと判定された場合、バスバー
に印加される電圧の大きさを駆動電圧に増加させ、駆動電圧を追加の持続時間にわたって印加する。

2.(d)において、光学遷移がほぼ完了していると判定された場合、終了光学状態を保持するための保
持電圧を印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
3.前記電圧は、(b)において、前記駆動電圧から前記保持電圧まで低減される、請求項1に記載の方法。
4.(c)で検出された電流または開放回路電圧が、光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するか
どうかを判断することは、特定の方向の電流が閾値レベルを下回るかどうかを決定することを含む。
5.
前記閾値レベルが0アンペアである、請求項4に記載の方法。
6.b)~(d)が約5秒〜5分の頻度で繰り返される、請求項1に記載の方法。
7.(b)において、(a)において駆動電圧を印加した後の所定の時間に電圧が低下し、前記規定され
た時間は最大約30分である、請求項1に記載の方法。
8.エレクトロクロミック装置の光学遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック装置を駆動するための駆動電圧または駆動電流を前記開始光学状態駆
動電圧または駆動電流がエレクトロクロミック装置のバスバーに印加される終端光学状態に至り、
 (b)前記エレクトロクロミックデバイス内の電流または開回路電圧を検出するステップと、 (c)
(b)で検出された電流または開放回路電圧が目標遷移時間内に光学遷移が完了することを示す特性を有
するかどうかを判定するステップと、 (d)(c)において、光学遷移が目標時間枠内で完了しないと判
定された場合、修正駆動電圧または修正駆動電流を印加するステップとを含み、変更駆動電圧または修
正駆動電流の
大きさは、 (a)で印加された駆動電圧または駆動電流の大きさ。
9.(c)において、光学遷移が目標時間内に完了すると判定された場合に、駆動電圧または駆動電流を
印加するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
10.b)が、バスバーに印加される電圧または電流の大きさを、駆動電圧または駆動電流よりも小さい大
きさに低減することを含む、請求項8に記載の方法。
11.前記バスバーに印加される電圧または電流の大きさを減少させることは、(a)において前記駆動電
圧または駆動電流を印加した後の所定の時間に実行され、前記定義された時間は、約30分
12.(b)で検出された電流または開放回路電圧が、光学遷移が目標時間内に完了することを示す特性を
有するかどうかを判断することは、電流または開放回路電圧が所定の範囲内にあるかどうかを決定する
ことを含む。
13.(
b)~(c)を繰り返すことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
14.エレクトロクロミック装置の光学的遷移を開始光学状態から終了光学状態に制御する方法であって、
(a)前記エレクトロクロミック装置を駆動するための駆動電圧を、前記開始光学状態から前記終了前記
駆動電圧は、前記エレクトロクロミック素子のバスバーに印加され、 (b)遷移が完了する前に、バス
バーに印加される電圧の大きさを保持電圧まで減少させるステップと、 (c)バスバーに印加される電
圧の大きさを減少させた後、エレクトロクロミック装置内の電流または開回路電圧を検出するステップ
と、 (d)(c)で検出された電流または開放回路電圧が光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有す
るかどうかを決定するステップと、 (e)(d)において、光学遷移がほぼ完了していると判定された場
合、終了光学状態を保持するための保持電圧を印加する。保持電圧の大きさは、駆動電圧の大きさより
も小さい。
15.
(c)で検出された電流または開回路電圧が、光学遷移がほぼ完了したことを示す特性を有するかど
うかを判断することは、特定の方向の電流が閾値レベルを下回るか否かを判定する段階を含む。
16.前
記閾値レベルが0アンペアである、請求項15に記載の方法。
17.
(b)~(d)
が約5秒~5分の頻度で繰り返される、請求項14に記載の方法。
18.(b)において、(a)において駆動電圧を印加した後の所定の時間に電圧が低下し、前記規定され
た時間は最大約30分である、請求項14に記載の方法。

19.前記ステップ(d)の前に、前記検出された電流が前記(d)で決定された結果、前記バスバーに印
加される電圧の大きさを前記駆動電圧まで増加させるステップをさらに含む、 光学遷移がほぼ完了して
いることを示す特性を持たない。 (ii)(b)〜(d)を繰り返すことを含む。

※尚、上記特許の【請求範囲】は、同タイトルの再表示のものを翻訳(US10120258,Nov.6,2018)

1.10,120,258  Controlling transitions in optically switchable devices 
2 10,114,265  Thin-film devices and fabrication 
3 10,112,258  Coaxial distance measurement via folding of triangulation sensor optics path 
4 10,088,731  Multi-pane electrochromic windows 
5 10,088,729  Electrochromic devices 
6 10,054,833  Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
7 10,048,561  Control method for tintable windows 
8 10,001,691  Onboard controller for multistate windows 
9 9,995,985   Electrochromic window fabrication methods 
10 9,962,170 Method and devices for treating spinal stenosis 
11 9,958,750  Electrochromic window fabrication methods 
12 9,952,481  Obscuring bus bars in electrochromic glass structures 
13 9,946,138  Onboard controller for multistate windows 
14 9,921,450  Driving thin film switchable optical devices 
15 9,927,674  Multipurpose controller for multistate windows 
16 9,921,450 Driving thin film switchable optical devices 
17 9,910,336  Spacers and connectors for insulated glass units 
18 9,904,138 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
19 9,897,888 Spacers for insulated glass units 
20 9,885,935 Controlling transitions in optically switchable devices 
21 9,885,934  Portable defect mitigators for electrochromic windows 
22 9,831,072  Sputter target and sputtering methods 
23 9,829,763  Multi-pane electrochromic windows 
24 9,778,532  Controlling transitions in optically switchable devices 
25 9,759,975  Electrochromic devices 
26 9,728,920  Connectors for smart windows 
27 9,723,723  Temperable electrochromic devices 
28 9,720,298  Electrochromic devices 
29 9,703,167  Electrochromic window fabrication methods 
30 9,690,162  Connectors for smart windows 
31 9,671,665 Connectors for smart windows 
32 9,671,664  Electrochromic devices 
33 9,664,976  Wireless powered electrochromic windows 
34 9,664,974  Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
35 9,645,465  Controlling transitions in optically switchable devices 
36 9,638,978  Control method for tintable windows 
37 9,638,977  Pinhole mitigation for optical devices 
38 9,618,819  Multi-pane dynamic window and method for making same 
39 9,523,902 Mitigating thermal shock in tintable windows 
40 9,513,525 Electrochromic window fabrication methods 
41 9,507,232 Portable defect mitigator for electrochromic windows 
42 9,482,922  Multipurpose controller for multistate windows 
43 9,477,131  Driving thin film switchable optical devices 
44 9,477,129 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
45 9,454,056  Driving thin film switchable optical devices 
46 9,454,055  Multipurpose controller for multistate windows 
47 9,454,053  Thin-film devices and fabrication 
48 9,442,341  Onboard controller for multistate windows 
49 9,442,339  Spacers and connectors for insulated glass units 
50 9,436,055  Onboard controller for multistate windows 
51 9,436,054 Connectors for smart windows 
52 9,429,809 Fabrication of low defectivity electrochromic devices 
53 9,423,664 Controlling transitions in optically switchable devices 
54 9,412,290 Controlling transitions in optically switchable devices 
55 9,348,192 Controlling transitions in optically switchable devices 
56 9,341,912 Multi-zone EC windows 
57 9,341,909 Multi-pane dynamic window and method for making same 
58 9,320,535 Tissue removal system with retention mechanism 
59 9,261,751 Electrochromic devices 
60 9,229,291 Defect-mitigation layers in electrochromic devices 
61 9,164,346 Electrochromic devices 
62 9,158,173 Spacers for insulated glass units 
63 9,140,951 Electrochromic devices 
64 9,128,346 Onboard controller for multistate windows 
65 9,116,410 Multi-pane electrochromic windows 
66 9,110,345 Multi-pane dynamic window and method for making same 
67 9,102,124 Electrochromic window fabrication methods 
68 9,081,247 Driving thin film switchable optical devices 
69 9,081,246 Wireless powered electrochromic windows 
70 9,030,725 Driving thin film switchable optical devices 
71 9,019,588 Connectors for smart windows 
72~95は紙面の都合で割愛

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#IHearYou それはそうだけれどⅠ

2018年11月06日 | 省エネ実践記

  


                                  

第66章 統治者はへヽりくだらねばならぬ
百川の流れを集める大河と海洋、それは川の王者である。川より低く位置するから、川を集めて王者と
なる。
同様に、人民を統治しようとすれば、まず辞を卑くしてへりくだらねばならや。人民を指導しようとす
れば、まず退いて後に従わねばならぬ,聖人は、この道理をわきまえている。したがって、聖人の統冶
のもとでは、人民はいささかの抑圧をも感じないレ、聖人の指導のもとでは、人民はいささかの束縛を
も感じない。
その結果、万民ことごとく聖人を推戴して、だれひとり争いをしかけようとはしない。それというのも、
聖人の方で、ひとと争う心を捨てているからだ。

江海は百谷の王 韓非の同門李斯は、他国賓の故をもって追放されようとしたとき、始皇帝に上書した。
いわく、「泰山は土壌を譲らず、河海は細流を択ばず(泰山は土壌をえりごのみぜぬねために大となり、
利侮はすべての細流を合するために深くなる)」。上書の効能あらたかに、李斯は追放を免れ、後に宰
相にまで出世する。そして「利府は細流を択ばず」は、王者たる者の度量の広さを表わす名文句として、
後世に伝えられることになった。
老子も、王者の徳を河海にたとえる。だが、着眼点が李斯と異なる。どちらに軍配をあげるかは、各自
で考えていただきたい。

第67章 「われに三宝あり」 
 大きいことは大きいが、どことなくぬけているようだ」。わたしの説く「道」を、世間はこのように批評している。
「道」はたしかに大きい。大きいからこそまがぬけて見える。まがぬけて見えないくらいなら、大きいなどといえは
しない。
この「道」から、三つの宝が引き出せる。第一は、「人をいつくしひ」心である。第二は、「物事を控え目にする」態
度である。第三は、行動において「人の先に立だない」ことである。
人をいつくしむからこそ、勇気が生まれる。控え目だからこそ、窮まることがない。人の先に立たぬからこそ、人を
指導することができる。
もし、いつくしみの心も持たずに、ただ勇のみをこころがし、控え目な態度も知らずに、ただ無窮のみを願い、退く
ことも忘れて、ただ人に先立つことのみを考えるなら、結果は破滅あるのみだ。
いつくしみの心をもつ者は、戦えばかならず勝ち、守れば難攻不落である。いつくしみの心、それはまさしく、天が
万物を保護する心なのだ。
 
● 23年開園 北海道ボールパーク

 

 No.20

ヒトを含めたすべての動物の体は、無数の分化した細胞で構成されている。分化した細胞は通常、分化
前の未分化な状態に戻ることはないが、分化した細胞核を未受精卵子内に移植し、細胞核が初期化され、
未分化な状態に戻りる。この初期化技術を用いて、クローン動物が多くの動物種でつくられてきま。細
胞を初期化しつくる人工多能性細胞(iPS細胞)の発見により、再生医療は大幅な進展を遂げる。しかし、
卵子内で分化細胞核がどのように初期化されるかはわかっておらずその全容解明が望まれている・・・・・・



「遺伝子発現の初期化」に重要な要素を発見

7月11日、近畿大学らの研究グループは、分化※1 した細胞が卵子の中で初期化され、新たに遺伝子
の転写※2 を開始する際、遺伝子ごとに効率が大きく異なる原因を明らかにしたことを公表している。
それによると、初期化の本質解明にむけ重要な発見であり(7月11日(水)日本時間 AM1:00)に、米国
の学術雑誌「Cell Reports
オンライン版に掲載)、分化した成体の細胞を卵子の中に移植し分化前の状態
に戻せる
。この現象を「初期化」といい、初期化技術を用いてクローン動物がつくられ、再生医療が大
きな進展を遂げてきまたが、分化した細胞が卵子の中でどのように初期化されるのか解明されていなか
った。初期には、分化細胞で発現する遺伝子を抑制し、未分化細胞のみ発現する遺伝子を活性化する必
要があえう。この遺伝子発現――細胞内で遺伝子のスイッチが入りRNAやタンパク質が合成される過程
――の初期化は効率が悪く、多くの遺伝子で失敗してきった。


同研究グループは、各遺伝子は場所による構造がことなり、閉じた状態と開いた状態の遺伝子があり、
その開き
具合によりDNA結合因子――DNAに結合するタンパク質などの因子を示す。この研究における
DNAへのアクセスの違いの検討には、Tn5 transposomeを利用――のアクセスが変わることを発見。また、
このアクセスのしやすさ
の度合いが初期化に大きな影響を与え、悪いと遺伝子発現の初期化が始まらな
いことも明らかなった。




この研究成果によって、分化した細胞が未分化細胞で発現する遺伝子を活性化には、遺伝子構造が開き
アクセス
しやすい状態にすることが重要であることを明らかにする。初期化しやすい状態へと遺伝子構
造を人工的に変化できれば、初期化効率をあげられ、転写初期化の解明に向けて重要な知見を示した。

このように、細胞核内には遺伝情報を有するDNAが存在し、DNAはクロマチン構造を形成する。クロマ
チン構造による、DNAへの核内タンパク質のアクセスが制限され、これにより各遺伝子からの転写は大
きな影響を受ける。遺伝子発現の初期化前後で細胞核内のクロマチン状態を、ATAC-seq(Assay for Trans-
posase-
AccessibleChromatinSequencing)と呼ばれる手法で調べ、クロマチン構造を形成せず、容易にアクセ
ス可能なDNA領域を同定。遺伝子の転写状態との関係を調べると、分化細はアクセス可能なDNA領域が優
先的に遺伝子発現の初期化を受けることを明らかなる。


逆に、分化細胞ではてアクセス不可能となっている領域からも遺伝子発現の初期化は起こるが、その効
率は高くない。例えば、卵に細胞核を移植後も継続的にアクセス不可能な状態を維持している遺伝子も
多く見られ、遺伝子発現の初期化を成功させるには、アクセス不可能の状態からアクセス可能へとクロ
マチン状態を変化させる必要があります。研究グループは、転写因子※6 と呼ばれるDNAに直接結合する
タンパク質によりクロマチン状態の制御が行われることを示した。
以上の研究成果は、多くが謎とされ
てきた卵子内での分化細胞核の遺伝子発現初期化機構に迫るもので、初期化の解明に向けて重要な知見
となる。

この研究により、卵内での遺伝子発現の初期化には、クロマチン構造をアクセス可能な状態へと人工的に変化さ
せることが重要であることを明らかになったことで、アクセス状態を促進する因子を用いることで初期化効率の向
上が見込まれ、初期化技術の効率化により再生医療やクローン技術の更なる発展が期待されている。

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.17   

   

第4章
「あのマントはどうなったんだろう、おまえが人切にしていたマントけ」
「所詮はマントですよ、アクセル。どんなマントも、着ていれぼすり切れてきます」

うわI、と思った。こんなに遠くから、そしてこんなに高くから、自分の村を見だのは生まれて初めて
だ。小さくて、なんだかこの手でつまみ上げられそうに思える。ためしに、午後のかすみの中に浮か
ぶ村に手を重ね、ぐいと指で包み込んでみた。登るのを心配そうに見上げていた老婦人がまだ木の根元
にいて、それ以上登ってはだめよ、と呼びかけている。だが、エドウィンは無視した。だって
、ぼくほど木を知っている人はいないから………戦士から見張りを命じられたとき、エドウィンは慎重
に考えて楡の木を選んだ。外見は弱々しくても内にさりげない強さを秘めていて、ぼくを歓迎してくれ
る。それに、あの橋も、橋までつづく山道も、ここからなら一番よく見える。ほら、馬に乗った男に三
人の兵隊が話しかけている。あ、騎手がいま馬から下りた。落ち着かない様子の馬を手綱で押さえなが
ら、兵隊と激しく言い争っていエドウィンは木をよく知っている。たとえば、この楡の木はステッフア
みたいだと思う。年長の少年たちはステッフアのことを「あんなやつ、森に棄てられて腐ってしまえば
いいんだ」と言う。

「両脚ともきかなくて働けない年寄りなんて、そうなって当然だろう?」と。だが、エドウィンはステ
ッフアの何たるかを知っている。ステッフアは古強者だ。誰も知らないが強い。物事の理解では長老た
ちをも超える。村でただ一人、戦場を経験している人間でもある

両脚の働きを失ったのは、その戦場でのことだ。そういうステッフアだからこそ、エドウィンの何たる
かを見抜くことができた。腕力が強い少年なら何人もいる。おもしろがってエドウィンを地面に転がし、
馬乗りになって殴ったりもする。だが、その連中には戦士の魂がない。あるのはエドウィンだけだ。

「君を見ていたぞ、少年」と一度老ステッフアに言われたことがある。
「降ってくる拳骨の雨のなか、君の目は冷静だった。一撃一撃を頭に刻み込んでいたのか?あれこそ最
高の戦士の目、荒れ狂う戦いの嵐の中でも沈着に動ける戦士の目だ。連からず、君は誰もが恐れる男に
なる」

そして、いま始まった。ステッフアの予言どおり、それが現実になりつつある。
強い風で木が揺れた。エドウィンは支えにしている枝を持ち替えて、今朝の出来事をもう一度思い出そ
うとした。歪んだ叔母の顔が見える。誰なのかわからないほどに歪んだ顔が金切り声で毒づいている。
だが、アイバー長老が最後まで言わせず、叔母を納屋の戸口から押しした。長老の背中にさえぎられ、
押し出される叔母の姿が見えなくなった。いつもエドウィンに親切にしてくれていた叔母が、いまはエ
ドウィンを呪う。だが、そのこと自体はたいして気にならなかった。しばらくまえ、「母さん」と呼ん
でくれないかと言われていたが、エドウィンは決してそう呼ぼうとしなかった。だって、ほんとうの母
さんは旅に出ているもの。ほんとうの母さんは、あんなふうに金切り声で怒鳴って、アイバー長老に引
きずり出されたりしないもの………それに、今朝、納屋の中で、エドウィンはほんとうの母の声を聞い
た。

アイバー長老はエドウィンを納屋の暗闇に押し戻し、叔母の醜く歪んだ顔を――その他のすべての顔と
一緒に――連れ出して、ドアを閉めた。暗い納屋の真ん中に古い荷車があった。最初はおぼろな黒い影
でしかなかったが、やがて徐々に輪郭が見えてきた。手を仲ばすと、腐った木の湿っぽい感触があった。
外ではいくつもの声がまた叫んでいる。何かがぶつかるような音も始まった。ぱらぱらと散発的に始ま
り、やがていくつかがまとまって当たる音になり、ものが裂けるような音が加わった。その音がするた
び、納屋の中がわずかずつ明るくなるような気がした。

ぼろ壁に石が投げつけられる音であるのはわかっていたが、エドウィンはそれを無視し、目の前にある
荷車をじっと見つめた。どれほど昔に使われていたものだろう。なぜこんなによじれた形になっている
のだろう。もう使えないのに、なぜ納屋にしまい込まれているのだろうか。
母の声が聞こえたのはそのときだ。外の騒ぎや石のぶつかる音で最初は聞き取りにくかったが、だんだ
んとはっきりしてきた。

「こんなことは何でもないのよ、エドウィン」と母は言った。
「全然何でもない。簡単に堪えられる」 
「でも、長老たちだって、いつまでも抑えているのは無理じやないかな」とエドウィンは暗闇に向かっ
て小声で言った。言いながら、手で荷車の側面をなでた。
「何でもないのよ、エドウィン。何でもない」
「壁は薄いから、石を投げつづけたら壊れるよ」
「心配ないのよ、エドウィン。知らなかった?石はおまえの力でどうにでもなる。ご覧、目の前にある
のは何」
「壊れた古い荷車」
「そう。その荷車の周りを回りなさい、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。おまえは大きな輸につなが
れた駿馬よ。だから、ぐるぐる回りなさい、エドウィン。おまえが回らないと、大きな輪は回らない。
おまえが回らないと、石は飛んでこない。ぐるぐる、ぐるぐる、回りなさい、エドウィン。荷車の周り
をぐるぐる、ぐるぐる」
「なんで輪を回さないといけないの、母さん」とエドウィンは言った。言いながら、足はもう歩きはじ
めていた。

「お主えが駿馬だからだよ、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。石が壁を打つ音は、おまえが輪を回し
ていないとつづかない。輸を回して、エドウィン。ぐるぐる、ぐるぐる。荷車の周りを、ぐるぐる、ぐ
るぐる」

だから、エドウィンは母の言うとおり回った。荷台の板の縁に手を置き、回る勢いを削がないよう右手
と左手を置き替えながら回った。もう何度そうやって回ったろう。百回か。二百回か。回るたびに納屋
の隅に見えるものがあった。一つの隅には土饅頭か何かのように盛った上があり、別の隅――日光が緬
く射し込んで、納屋の床を照らしている隅――には、羽根も何もそのままで転がる烏の死骸があった。
薄暗がりの中を回るたび、その二つがエドウィンの目に飛び込んできた。一度「叔母さんはほんとうに
ぼくを呪ったのかな」と声に出してみた。返事はなく、母さんはもう行ってしまったのかと思った。だ
が、やがて声が戻ってきた。

「やるべきことをなさい、エドウィン」と言った。
「おまえは駿馬よ。まだ止まってはだめ。すべてはおまえしだいだからね。おまえが止まれば、あの騒
ぎも止まってしまう。だから、恐れてはだめ」

ときには、一度も石の当たる音を聞かないまま、荷車を三回も四回もめぐることがあったが、直後、今
度はその少なさを埋め合わせるように一度にいくつもの音がして、外の叫び声が一段と大きくなった。

「母さんはいまどこにいるの」とエドウィンは尋ねてみた。「まだ旅をしているの?」

答えはなかったが、さらに何回りかしたあとで母の声がした。

「弟や昧を生んであげられたのにね、エドウィン。それも、たくさん。でも、おまえ一人きりだ。だか
ら、わたしのために強くなっておくれ。十二歳なら、ほとんど大人だよ。一人で、四、五人ぶんの息子
になっておくれ。強くなって助けにきて」

また風が吹いて、楡の木が揺れた。あの納屋だろうか、とエドウィンは思った。狼が村に来た日、みん
なが隠れたというのはあの納屋だったのだろうか。そのときの話は、老ステッフアから何度も聞いてい
る。
 
君はまだ幼かった。だから覚えていないかもしれないな。昼日中に狼が三匹、のそのそと村に入り込ん
できたことがあった」

そしてステッフアの声には軽蔑がこもる。

「村中が震え上がって隠れた。畑に出ていたのも何人かいたが、それでも村には大勢残っていたんだ。
それがみんな脱穀小屋に隠れた。女子供だけじゃない。男たちもだ。狼の目つきがおかしい、と言った。
だから、へたにちょっかいをかけないほうがいい、とな。狼にとっちゃ楽なもんだ。やりたい放題さ。
雌鶏を皆殺しにし、山羊も食らった。それでも、村人はみんな隠れたままだ。自分の家に隠れたのもい
たが、ほとんどは脱穀小屋の中だ。おれはこの脚だから、いた場所にそのまま放っておかれた。つまり、
ミンドレッドさんの家の外、溝のわきで、動かないこの脚を突き出したまま手押し車の中よ。狼がおれ
のほうにとことこと歩いてきた。来て食らえ、と言ってやった。たかが簑ごときで、おれは納屋に隠れ
たりせんぞ・・・・・・。だが、狼はおれに目もくれず、目の前を通り過ぎていった。やつらの毛皮がこの役
立たずの足をこするかと思うほど近かった。簑はすっかり満足して出ていった。この村の勇敢な男たち
が、おっかなびっくり隠れ場所から這い出してきたのは、それからずいぶん経ってからだ。昼日中に狼
が三匹。立ち向かう男はI人もなしさ」

エドウィンはステッフアの話を思い出しながら、荷車をめぐりつづけた。

「母さんはまだ旅をしているの?」と、もう一度尋ねた。今度も返事はなかった。脚がだんだんくたび
れてきていた。土の山と烏の死骸を昆るのが、心底いやになってきていた。そのとき、ようやく母が言
った。

「もういいよ、エドウィン。よくがんばったね。さあ、もう戦士を呼んでもいいよ。終わりにしましょ
う」

エドウィンはこれを間いてほっとしたが、そのまま荷車の周りを回りつづけた。ウィスタンを呼ぶには
多少の努力では足りないとわかっていた。前の晩と同様、ウィスタンが来てくれることを、心の奥底か
ら強く願わなければならないと思った。
そして、そのために必要な強さをなんとか絞り出し、回りつづけた。戦士がこちらへ向かっているとい
う確信を得てから、ようやく足取りを緩めた。そう、いくら騏馬でも、一日の終わりが近くなれば多少
は鞭の手加減が必要になる。足取りを緩めたとたん、石の当たる音が間遠になり、それに気づいてエド
ウィンはにこりとした。だが、完全に足を止めたのは、投石がやみ、静けさが長くつづいたあとのこと
だ。荷車にもたれて息を整えていると、突然、納屋のドアが開き、目もくらむほどの光の中に戦士が立
っていた。

ウィスタンは、背後のドアを大きく開け放したまま入ってきた。それは、ついさっきまで外に集まって
いた悪意ある人々への、軽蔑の表明のように思えた。納屋の中に日の光の大きな四角形ができ、エドウ
ィンは周囲を見回した。暗闇の中ではあれほど存在感のあった荷車が、いまは見るも無残なぽんこつと
化していた。あのあとすぐ、ウィスタンはぼくを「若き同志」と呼んだんだっけ……?・よく思い出せ
なかったが、戦士に光の四角形の中へ導かれたことは覚えている。そこでシャツを引き上げられ、傷の
様子を調べられた。そのあと、ウィスタンはまっすぐに背を仲ばし、注意深く肩越しに後ろを振り返っ
てから、低く言った。

                            カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』
 
                                       この項つづく 



● TVドラマ『ドロ刑』に嵌る
「生涯ながら族」のわたしに、楽しみにするテレビ番組は年々少なくなり。釘づけにする「ドラマ性」
がない、というのがその理由。おとなのアニメだと思っている『フィニアスとファーブ』と最近までは
『ドクターX』がそれであった。情報過剰?で勝手気ままな現代社会では「視聴率主義は無意味」だ。
かといって重苦しいシリアスな番組でなく、軽薄で陳腐化しやすい企画もの(NHK的な偏執的な番組」?
は別にして、手などの身体をとめてまでして観るものは希少だ。

日本の刑法犯の7割以上を捜査し、検挙率第1位を誇る!それは、刑事部・捜査第三課。 窃盗、ひった
くりを捜査する彼らは、通称「ドロ刑」と呼ばれる。 「捜査の全てはドロ刑に始まり、ドロ刑に終わ
る――。」 憧れと希望に満ち溢れ、 警視庁"捜査三課"に配属された新米刑事・斑目勉(まだらめつと
む)が出逢ったのは、 稀代の大泥棒・煙鴉(けむりがらす)だった。 磨き抜かれた練達の職業泥棒た
ち、 煙のように捉えどころのない煙鴉、果たして彼らを捕まえることはできるのか……!!? 盗られた
モノは捕り戻す!YJ期待の新鋭が描く"泥棒×刑事盗物帖"明日から試せる防犯テクニックも充実!!
"ドロ刑"こそが、刑事の華だっ!!!――『ドロ刑』は、福田秀による漫画。『週刊ヤングジャンプ』
(集英社)2018年5・6合併号から連載中。話数カウントはEpisode;○○。2018年10月13日に『ドロ刑-
警視庁捜査三課-』のタイトルで日本テレビ系でテレビドラマ化。


  

  ● 今夜の一曲

『サボテンの花』 唄 財津和夫 
Music Writer 財津和夫

 

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雲の上がきかき絶えずして

2018年11月04日 | 時事書評

  


                                  

第64章 「千思の行は足下より始まる」
安定したものは、保存しやすく、形勢が固定する以前の問題は、処理しやすい。脆弱なものはたやすく
溶けるし、微細なものはたやすく散る。

事件は起こらぬ先に処理し、秩序は乱れぬ先に収拾することがかんじんだ。
ひと抱えある大木も、針先ほどの芽から生え、九階建ての高殿も、基礎がためから着工し、千里の長旅
も、踏み出しは一歩である。

この自然の道理に逆らい、作為と我執にとらわれる者は、かならず失敗する。
聖人は、作為もしなければ、我執も持だない。だから、失敗することがない。だが凡人は、完成まじか
にこぎつけながら、いつもそこで失敗する。最初のうちの慎重さを忘れてしまうのが、その原因である。
聖人は、欲望を捨て去っているから、目先の価値に誘惑されない。知の限界を心得ているから、忘れら
れがちな「道」に順応する。かくて
ある。

第65章 小知に頼れば国政は乱れる
人民を賢くさせず、愚かのままにする。これが昔の聖人のやり方だ。
人民のさかしらが過ぎるから、政治がやりにくくなる。したがって、さかしらに頼って政治をとれば、
国は乱れる。さかしらを捨て無為の政治を行なえば、国は栄える。これが政治の法則である。

この法則をわきまえること、それが底知れぬ徳である。この徳はいかにも深遠で、あたかも背理のごと
く見えるが、それでこそ、自然の大道に合致するのだ。

民の治め難きは、智多きをもってなり 知は両刃の剣である。それは人を生かしもすれば殺しもする。
そして、その知に正しく処することのできるのは、聖人のみであった。したがって、老
子の政治学説は、
必然的に愚民政治の形をとるに至る。ただこの場合、愚民政治とはいっても、
為政者のほしいままなふ
るまいを可能にするための愚民化ではないことを、承知しておく必要が
あるだろう。

【下の句トレッキング:雲の上がきかき絶えずして】 

  
北へゆく雁のつばさにことづてよ雲の上がきかき絶えずして  紫式部


11月3日、福井県越前市の第37回菊花マラソンが開催。満開を迎えている「たけふ菊人形」会場近
くの武生西小をスタート、武生三中をゴールとするコースで開かれた。抜けるような秋晴れの下、昨年
よりも244人多い県内外の3756人が歴史豊かな「式部のまち」を駆け抜けたというのだが、「式
部のまち」とあるのでどこのことなのかと調べると武生市のことで、『源氏物語』の作者の紫式部が、
都を離れて
越前の国に向かったのが、長徳2年(996年)の夏。父の藤原為時が、春の除目で帝に文
を奉り、大国である越前の国守に任じられ、式部はその父ととも に国府があった現在の福井県武生市に
やってくる。
式部が生まれたのは、天延元年(973年)とする説では23歳のころだとかす。 

上の一首は、『紫式部集』に収められ、当時たった一人の姉を失い、同様に妹を亡くした友人と「姉妹」
の約束をしてお互いを慰め合っていたところ、式部が越前へ向かうのと同じ時にその友も筑紫へ向かう
こととなり、近況を歌に託したという。情報量の少ない平安時代だからこそ、通う情感の質量の深さを
偲びながら立冬の夜をしばし物思いに耽り、こんな思いも自分にもあっただと遠くなった昭和を重ねる。
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 13】
  

   Mar. 3, 2017

【エネルギー貯蔵技術事例研究 Ⅴ】
✪ 蓄電池事業篇:最新全固体二次電池技術
先々回は出口戦略として「独立分散型固体蓄電池」の性能及びコストパラメター――❶エネルギー密度
:250Wkg/kg 超、❷ライフサイクル:5万回超、❸耐用年数:15年以上、
❹価格:5万円/kWh
以下と目標設定とした。今回は、国内特許からハイレート特性――高電圧、高容量、高エネルギー密度、
長寿命のレベルがどこにあるを調べた。今回も、電池の種類としてはリチウムイオン、水素ニッケル、
空気-
金属、リチウムハイブリッドを対象とし、製造方法から超音波溶着装置をピックアップし(いずれも11月1
日公開)し掲載する。 

 Nov. 1, 2018

● パトリック・スン・シオン、リチウムイオン蓄電池産業への参入を支援

  Patrick Soon-Shiong

亜鉛空気、フロー電池、塩水電池、小型圧縮空気電池の製造の企業技術をもつNantEnerg社を、Los Angeles
Times
を買収したPatrick Soon-Shiong氏が同社の未公開株を過半数獲得(同社は現在までに220百万ドルの
資金を調達していた)。来年度
NantEnergy社は、カルフォルニアに1ギガワット時程の生産能力を持つ
製造設備建設を予定、また、海外の製造共同者を探している。また、同社の話によると、
生産を百メガ
ワットに拡大すると、量産型リチウムイオン電池が現在達成している価格よりはるかに低い、1キロワ
ット時当たりの蓄電池価格を百ドルとし、
安全性と耐久性(高ライフサイクル性)の企業技術をベース
に量産効果で価格逓減を実現する。
問題は、リチウムイオンが既に大規模生産され、さらに拡大する傾
向にあるが、そのための資金不足がネックになる。

同社は過去6年間に、9か国に3,000の亜鉛空気電池システムを設置、累計120万サイクルの実績があり、
約56メガワット時の設備容量に相当。
遠距離流通信バックアップと遠隔マイクログリッドの海外市
場でコスト競争している。
インドネシア工場では国内供給し、マイクログリッドで再生可能ベースで百
%の再エネ電気を得る約110万のコミュニティは、合計20万人にのぼり、ラテンアメリカに約一千基の実
績があるが
アフリカと米国市場ではまだ初期段階で、グレート・スモーキー山脈国立公園の前哨場の遠
隔マイクログリッドへの電力供給するDuke Energy社は、同社と提携し、自身もカリフォルニア州で電気
通信アプリケーションを供給。
また、世界市場規模70億ドルになる遠距離通信バックアップ蓄電池用
途では、十分な成長が見込まれ、22年には110億ドルと予想されている。
また、亜鉛空気電池のマ
イクログリッドは、遠隔地に電力供給用ディーゼルや通信バックアップ用鉛蓄電池に対して優れており、
これらは大規模電力系統への参入とは別問題であると話す。


出典:With 3,000 Systems and Money to Scale, Will NantEnergy Make Long-Duration Storage Profitable? |
Greentech Media/Nov.1, 2018
※ それにしても、「❹価格:5万円/kWh」の1/5の約1万円相当/kWhとは恐れいりました。

 Oct. 31, 2018

● NEDOドイツで大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成、11月に実証運転開始

10月31日、
NEDOと日立化成(株)、(株)日立パワーソリューションズ、日本ガイシ(株)は、ド
イツのニーダーザクセン州ファーレル市で大規模ハイブリッド蓄電池システムを完成させ、2018年11月1
日より実証運転を開始。
特性の異なる2種類の蓄電池(リチウムイオン電池とナトリウム硫黄電池、合計
容量11.5MW/22.5MWh)から構成。高出力・大容量で充電・放電が可能なシステムとすることで、電力需
給バランスの調整をより経済的に実現し、再生可能エネルギーの大量導入が進んだ電力系統の安定化に
貢献することを目指す。

【関連特許事例:最新ハイレート特性とローコスト技術】
☑ 特開22018-133299 電極体の製造方法 トヨタ自動車株式会社
鍵語:電極体の製造方法
【概要】
二次電池その他の各種電池では一般的に,正負の電極体を積層した電極積層体を発電要素として使用す
る。電極積層体を構成する個々の電極体は,集電箔に電極合材層を積層したシート状のものである。ま
た電極積層体では,正極電極体と負極電極体との直接の接触を防ぐセパレータもともに積層される。
下図のように、集電箔上に電極合材層が形成されたものである電極板11における電極合材層上に 耐熱
層を形成する液状耐熱物を塗工する塗工工程(1)と,塗工工程(1)で塗工された液状耐熱物が乾燥
する前に,塗工された液状耐熱物上に多孔質のセパレータ層10を配置するセパレータ層配置工程(2)
とを行う。これにより,集電箔と電極合材層と耐熱層とセパレータ層とがこの順に積層されたものであ
る電極体6を製造する。耐熱層とセパレータ層とを一体的に含むとともに,これらの密着性に優れた電
極体を製造できる,電極体の製造方法を提供。
 

【符号の説明】
1  塗工部 2  貼り合わせ部 3  乾燥部 5 セパレータ供給部 6  電極体 7 集電箔 8 電
極合材
層 9  耐熱層 10 セパレータ層
【図1】実施の形態に係る電極体の製造方法の実施設備の概要を示す正面図
【図2】実施の形態の製造方法で製造される電極体の断面図

☑ 特開2018-107007 リチウム二次電池用正極電極
【概要】
5V級リチウムマンガン含有複合酸化物を正極活物質として使用した正極電極に関し、ガス発生を抑制
でき、且つ、サイクル特性を向上させることができ、ハイレート特性をも高めることができる、新たな
正極電極の提供。極活物質の比表面積に対する前記導電材の比表面積の比率が10以上150未満であ
り、且つ、正極電極合剤層の厚さ方向断面において、前記正極活物質の総面積に対する前記導電材の総
面積の比率が0.47以上0.66未満であることを特徴とする正極電極を提案する。


☑ 特開☑ 特開2018-167193 両面塗工装置および塗膜形成システム 
鍵語:化学電池製造/両面塗工/塗工ギャップ
【概要】
リチウムイオン電池などの化学電池の製造で、金属箔等の基材をロールトゥロール方式にて搬送し基材
表面に電極材料を塗工し、電極多層構造するための裏両面塗工装置は、片面づつ塗工/乾燥処理を行う
方法ではコストが増大する。このため、乾燥前に基材両面――基材を挟み表面側と裏面側とに相対向す
るようにダイを設け、双方のダイから均一に塗工液を同時に吐出吐出する両面塗工装置が提案されてい
るが、基材のくせ、基材搬送時の振動、搬送張力、吐出圧などの要因で塗工不良やムラが生じる。
このため、下図2のごとく、 基材の搬送方向に対して上流側に位置し、基材と対向する上流側対向面を
有する上流側リップと、基材の搬送方向に対して下流側に位置し、基材と対向する下流側対向面を有す
る下流側リップとを備える一対の塗工ノズルにおいて、それぞれの下流側リップは、下流側対向面から
塗工液流路に連通する切り欠き部を有し、切り欠き部が吐出口の一部を構成することを特徴とする基材
の両面に同時に塗工液を塗工する場合でも、塗工液を均一塗工できる両面塗工装置及び塗工成システム
の提供。

 Nov. 1, 2018
【符号の説明】
1    塗膜形成システム 5 基材 10 両面塗工装置 20 第1塗工ノズル 21、41  吐出口
22  第1上流側リップ 23  第1下流側リップ 24  第1塗工液流路 26、46    切り欠き部
30  第1送液機構 40  第2塗工ノズル 42  第2上流側リップ 43  第2下流側リップ
44  第2塗工液流路 50  第2送液機構 60  搬送機構 61  巻き出しローラ(第1ローラ)
62  巻き取りローラ(第2ローラ) 80  乾燥部

【図2】塗工ノズルの断面を示す模式図
【図6】基材の波板状変形を示す模式図
【図7】比較例に係る塗工ノズルを用いた場合の基材の波板状変形によって発生する筋状の塗工不良を
    示す模式図
【図8】比較例に係る塗工ノズルを用いた場合の筋状の塗工不良が発生するメカニズムを模式的に示す図
【図9】図2の吐出口近傍の拡大図である。
【図10】塗工ノズルを用いた場合の基材の波板状変形が押し戻されるメカニズムを模式的に示す図


鳥の目線で自然感じて 琵琶湖博物館の樹冠トレイル



 ●夜の一曲 

『若い頃の加藤和彦のように』 唄 坂崎幸之助 北山修 Music Writer:加藤和彦 北山修 

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大山を忽ち消して霧襖

2018年11月02日 | 時事書評

  


                                  

第62章 真理は善不善の彼岸にある
「道」は万物の内面に貫徹する。この道理をわきまえている者は、むろんこれを詐言する。たといこの
道理を自
覚せぬ者でも、内に「道」を抱いている。 人々は、すぐれた意見ばかりをもてはやし、善行
ばかりを受けいれる。
だが「道」だけは、善不善を超越して、すべての人を生かすのである。この「道」にのっとるなら、い
ながらにして
天下は治まる。にもかかわらず、世間では、天子を立て、大臣を置いてもまだ足りず、大
金を積み、眼の色かえ
て賢人を探し求めている。なんともむだな努力である。
昔の明君が、「道」を尊重したのはなぜか。「道」にのっとりさえすれば、あらゆる事が可能になり、
あやまちさえ
も許されると知っていたからではないか。

第63章 聖人は大をなさず
無為を守って「道」にのっとり、感性による判断を捨てて「道」を認識する。小と大、少と多、それぞ
れの対立と転化の法則を理解し、怨みといった小さな感情は、広い徳で包容する。難事は、もつれぬ先
理し、大事は、小事のうちに収拾する。

いかなる難事であろうとも、その発端はつねに単純な問題にすぎず、いかなる大事であろうとも、
その
発端はつねに些細な事件にすぎないからだ。
聖人は、終生、大事に直面することがない。だからこそ、
大事を成し遂げることができるのだ。

安請合いは不信を招き軽視は困難のもとである聖人は、たやすく見える物事さえ、困難視して対処
する。だからこそ、終生、困難に見舞われるこ
とがないのである。

〈無為を守って……のっとり〉 原文は「無為をなし、無事を事とす」。「無為」も「無事」も、同義
を反復したもの。

怨みに報ゆるに徳をもってす このことばは、よほど古くからあったらしい。『論語』慰問篇に、孔子
がある人から「徳をもって怨みに報いるという説をどう考えるか」と聞かれて、「怨み
には直をもって
報い、徳には徳をもって報いよ」と答えたと記されている。孔子は、正義の観点
に立ってこれを否定し
たのだが、にもかかわらずこのことばは、中国人の内面深く浸透し、国民
性の一端をなしている。第二
次大戦終結の直後、当時の元首蒋介石が対日政策の基調をこのこと
ばに置いたのも、いわば民族の総意
の表現だったと見られる。

 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
【エネルギー通貨制時代 12】
  

   Mar. 3, 2017



【エネルギー貯蔵技術事例研究 Ⅳ】
✪ 蓄電池事業篇:最新全固体二次電池技術

先回は、出口戦略として「独立分散型固体蓄電池」の性能及びコストパラメター――❶エネルギー密度
:250Wkg/kg 超、❷ライフサイクル:5万回超、❸耐用年数:15年以上、
❹価格:5万円/kWh
以下と目標設定とした。今回は、国内特許からハイレート特性――高電圧、高容量、高エネルギー密度、
長寿命のレベルがどこにあるを調べた。電池の種類としてはリチウムイオン、水素ニッケル、空気-

属、リチウムハイブリッドを対象とし、製造方法から超音波溶着装置をピックアップし(いずれも11月1日公開)
し掲載するが、それぞれ自律的にハイレート特性事業が包括的に全面的に実用化されている。

☑ 特開2018-170229 電素子 株式会社GSユアサ
鍵語:ニッケル水素電池/高温充電受入性能
【要約】
高温での充電受入性能が向上された蓄電素子を提供する。活物質粒子を含有する合剤を含み、活物質粒
子は
水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着し、該合剤は、
ホウ酸化合
物をさらに含む正極板を備える、ニッケル水素蓄電池などの蓄電素子。ホウ酸化合物は、ホ
ウ酸カルシウムである、蓄電素子de, 高温での充電受入性能が向上された蓄電素子を提供できる。

 
 【符号の説明】
1:蓄電素子(ニッケル水素蓄電池)、 2:電極群、 21:正極、 22:負極、 23:セパレータ、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋部。

表1
 

 表2

特許請求項目

    1. 活物質粒子を含有する合剤を含み、前記活物質粒子は、水酸化ニッケルを含有する粒子を含み、該粒子の表面には、コバルト化合物が付着し、前記合剤は、ホウ酸化合物をさらに含む、蓄電素子。
    2. 前記ホウ酸化合物は、ホウ酸カルシウムである、請求項1に記載の蓄電素子。

 ☑ 特開2018-170240 非水電解質二次電池 パナソニック株式会社 他 
鍵語:ハイレート特性
【要約】
正極と、負極活物質としてリチウムチタン複合酸化物を含む負極とを備え、ハイレート特性を向上しな
がら、耐久性に優れる非水電解質二次電池を提供する。正極12は、細孔径が100nm以下である細
孔の質量当たりの体積がそれぞれ特定されている第1正極活物質及び第2正極活物質を含む正極合剤層
を有する。第1正極活物質の含有量が第1正極活物質及び第2正極活物質の総量に対して30質量%以
下である。正極12が保持する非水電解質の保持量が、正極合剤層の単位体積当たりで0.49g/cm3
以上である。

 
【符号の説明】
10 非水電解質二次電池、12 正極、14 負極、16 セパレータ、18 正極端子、20 負極端子
、22 封口板、24 外装缶、26 電極体、28 底部、30 注液口、32 ガス排出弁。

特許請求範囲

    1. 第1正極活物質及び第2正極活物質を含む正極合剤層を有する正極と、極活物質としてリチウムチタン複合酸化物を含む負極合剤層を有する負極と、非水電解質と、を備え、前記第1正極活物質は、細孔径が100nm以下である細孔の質量当たりの体積が8mm3/g以上であり、前記第2正極活物質は、細孔径が100nm以下である細孔の質量当たりの体積が5mm3/g以下であり、前記第1正極活物質における細孔径が100nm以下である細孔の質量当たりの体積は、前記第2正極活物質における細孔径が100nm以下である細孔の質量当たりの体積に対して4倍以上であり、前記第1正極活物質の含有量が、前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質の総量に対して30質量%以下であり、前記正極が保持する前記非水電解質の保持量が、正極合剤層の単位体積当たりで0.49g/cm3以上である、非水電解質二次電池。
    2. 前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質の平均粒径がいずれも2μm以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
    3. 前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質がいずれも、一般式(1)Li1+xMaO2+b(一般式(1)中、x、a及びbは、x+a=1、-0.2≦x≦0.2、及び、-0.1≦b≦0.1の条件を満たし、Mは、Ni、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む金属元素である)で表される層状リチウム遷移金属酸化物である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。

 ☑ 特開2018-170234 リチウム空気二次電池 日本電信電話株式会社
鍵語:りチウム空気二次電池
【要約】
充電電圧と放電電圧の差が小さく、且つ充放電サイクル性能の良いリチウム空気二次電池を提供する。
正極活物質として空気中の酸素を用いる正極101と、負極活物質として金属リチウムまたはリチウム
含有材料を用いる負極102と、リチウム塩を含む有機電解液103とを有するリチウム空気二次電池
100において、正極101は、カーボンを主体とする空気極101であり、電極触媒として、金属、
リン、及び酸素を含む材料を添加すことで、充電電圧と放電電圧の差が小さく、且つ充放電サイクル性
能の良いリチウム空気二次電池を提供することができる。【選択図】図1

 

【符号の説明】
100:リチウム空気二次電池 101:正極(空気極) 102:負極 103:有機電解液 10
4:空気極固定用リング 105:セパレータ 107:負極固定用リング 108:負極固定用座金 
109:負極支持体 110:固定ねじ 111:Oリング 115:空気極支持体 121:空気極
端子 122:負極端子 151:仕切り

特許請求範囲

    1. 正極活物質として空気中の酸素を用いる正極と、負極活物質として金属リチウムまたはリチウム含有材料を用いる負極と、リチウム塩を含む有機電解液とを有するリチウム空気二次電池において、前記正極は、カーボンを主体とする空気極であり、電極触媒として、金属、リン、及び酸素を含む材料を添加することを特徴とするリチウム空気電池。
    2. 前記電極触媒は、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Ruの中の少なくとも1種の金属と、PO4基を含む材料を添加したことを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気電池。
    3. 前記電極触媒は、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Ruの中の少なくとも1種の金属と、P2O7基を含む材料を添加したことを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気電池。
    4. 前記電極触媒は、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Ruの中の少なくとも1種の金属と、P3O9基を含む材料を添加したことを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気電池。

 ☑ 特開2018-170112 電極の作製方法 国立研究開発法人産業技術
鍵語:超音波溶着
【要約】
簡単な操作で、金属または合金系電極を固体電解質に密着させる手法を提供すること。電極材料を固体
電解質上に熱融着させる際に、同時に超音波を照射する。これにより、固体電解質上に密着性の高い金
属または合金系電極を作製することができる。このようにして作製された電極-固体電解質構造体を用
いて構成した電気化学セルにおいては、電極-固体電解質界面の内部抵抗が小さく、また、良好な電気
化学特性が得られることで、熱融着の際に超音波を印可する方法(以下、超音波援用熱融着法という)
では、数秒という非常に短時間で、密着性の高い電極/固体電解質界面を形成することが可能である。
また、密着性の高い電極/固体電解質界面が形成され、当該界面の抵抗が低減されることによって、こ
れを用いて構成される電気化学セル全体としての抵抗を低減することが可能となり、レート特性を向上
することが可能となる。また、この方法で形成される電極/固体電解質界面は、電気化学的に安定であ
り、これを用いることにより、長期間安定な充放電特性を有する電池が得られる。

特許請求範囲

    1. 電極材料を固体電解質上に熱融着させ、固体電解質上に金属または合金系電極を形成させることで、電極/固体電解質構造体を製造する方法であって、電極材料を固体電解質上に熱融着させる際に、超音波を印可することを特徴とする方法。
    2. 請求項1に記載の方法により電極/固体電解質構造体を製造し、得られた電極/固体電解質構造体を他の構成要素と組み合わせて、電気化学セルを製造する方法。
    3. 電気化学セルが電池であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
    4. 電気化学セルが全固体電池であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
    5. 電気化学セルが金属-空気電池であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。

※ その他の特許事例
・特開2018-156941 全固体二次電池用電極活物質、及びその製造方法、並びに全固体二次電池 太平
洋セメン
ト株式会社
・特開2018-170518 セルロース微細繊維層を含む薄膜シート 旭化成株式会社

・特開2018-170247 リチウム二次電池用複合活物質およびその製造方法 東ソー株式会社
・特開2018-170246 リチウム二次電池用複合活物質およびその製造方法 東ソー株式会社

 特開2018-156941 

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.17   

   

第3章
「あのマントはどうなったんだろう、おまえが人切にしていたマントけ」
「所詮はマントですよ、アクセル。どんなマントも、着ていれぼすり切れてきます」
「どこかで失くさなかったろうか。日の当たる岩の上に、とか?」
「ああ、思い出しました。それで、あなたをずいぶん責めたんでした」
「確かに責められたっけな、お姫様。責められる理由があったかどうかはいまもってわからないが」
「でも、アクセル。霧がどうであれ、少しでもまだ思い出せることかおるのは牧いですよ。神様がもう
願いを聞いて、田乙い出す手助けをしてくださっているのかもしれない」
「思い出すと決めれば、もっといろいろと思い出せるんじやなかろうか。そうなれば、ずる賢い船頭の
口車に乗せられることもなくなる-仮にあんな戯言に耳を傾けねばならん日が来るとしてもな。だが、
いまは食べよう。もう日が高い。行く先は険しい山道だ。早く出かけねば」

                       ※

二人はアイバーの家に向かって歩いていた。前の夜に襲われそうになったあたりを過ぎたところで、ど
こかLのほうから呼ぶ声が聞こえた。見回すと、衝の高いところに見張り台が設けられていて、そこに
ウィスタンがいた。 

「まだおいででしたか、お二人さん」と戦士は下に向かって言った。
「はい、寝坊をして」とアクセルは柵に数歩近寄って笞えた。
「ですが、もう出かけるつもりです。あなたは、戦士殿?今日一曰くらいお休みになりますか」
 「わたしもすぐに発ちますよ。ですが、ご老人、少しお話ししたいことがあるので、お時間を割いていただけませ
んか。長くならないことはお約束します」

アクセルとベアトリスは顔を見合わせた。ベアトリスがそっと言った。

「いやでなければお話しなさいな、アクセル。わたしは先に戻って、旅の支度をしておきますから」
 アクセルはうなずき、ウィスタンに向き直って言った。「いいですよ、戦士殿。上がっていきましょうか」
 「よろしければ。わたしが下りていってもいいですが、今日はすばらしい朝で、気持ちが奮い立つような景色が
見られます。梯子がいやでなければ、ぜひ上へ。ここでお話ししましょう」
 「何の用事でしょうね、アクセル」とベアトリスがそっと言った。「気をつけて。梯子だけじゃなく、気をつけてね」

アクセルは用心しながら一段ずつ上り、戦士のいる台までたどり着いた。戦士が手を仲ばし、引き上げてくれた。
狭い台上で体を安定させて見下ろすと、ベアトリスが心配そうに見上げていた。元気よく手を振ってやると、まだ
心残りのようながら、後ろを向いて去っていった。その行く先にあるアイバーの家が、この見張り台からならはっ
きりと見える。しばらくベアトリスを見送ってから、振り向いて冊の外の世界に目を移した。

「嘘ではないでしょう、ご老人?」とウィスタンが言った。二人は顔に風を受けながら横に並んで立っていた。
「目の届くかぎり、すぼらしい眺望です」

その朝、二人の眼前に広がっていた風景は、現代イングランドの田舎家の高窓から見える風景とさほど違って
はいなかっただろう。右手には谷の斜面があり、規則正しい緑の尾根となって下ってきている。一方、左手には
反対側の斜面があるが、こちらは遠い。一面、松の木で覆われている山腹は遠いぶんだけかすんでいて、いつ
しかおぼろになり、地平線上に並ぶ山々の輪郭に混じり合っていった。前方には、まっすぐにつづく谷底の全景
がある。川は平らな地面を緩くうねりながらどこまでも延び、視界の外に消えていく。湿地帯の広がりは果てしな
くつづき、遠くで池や湖となる。水辺にはきっと楡や柳が生え、深い森もあっただろう。当時の森は、見る人々の
心に不吉な思いを呼び起こしたかもしれない。そして川の左岸、ちょうど日の光が影に変わるあたりには、放棄
されて久しい村落の残骸があった。 

「昨日、あの山腹を馬で下ってきました」とウィスタンが言った。「とくに急かしたわけではないのに、
馬め、よほど
気持ちがよかったのか襲歩で走りはじめました。野を越え、湖と川を越え、じつに爽快で
したよ。かつてここに来
たという記憶はないんですが、まるで子供時代を過ごした土地に戻ってきたよ
うでした。妙ですね。ごく幼いころ
に通り過ぎたことでもあったんでしょうか-場所はわからなくても、
景色だけは頭に残るというような年齢のとき?
ここの木々に湿地、ここの空。記憶のどこかがちくちく
と刺激されるような気がします」

「ありえますね」とアクセルが言った。

「この国と、あなたがお生まれになったもっと西の国とは、いろいろ似ているところがありますから」
「そうなんでしょうね、ご老人。東の沼沢地にはこれといった山はないし、木も草もこれほど色鮮やか
ではありま
せん。ま、昨日は馬が喜んで走りすぎて、蹄鉄を一つ壊してしまいました。今朝、親切な村
人が付け替えてくれま
したが、蹄を傷めてしまったし、これからはもっとゆっくり行かなければなりま
せんね。じつは、ご老人、ここに上っ
てきていただいたのは、風景を楽しむこともですが、内密の話を
聞いていただきたかったからです。エドウィンとい
う少年の身の上に起こったことは、もうご存じです
ね」

「アイバー殿からお間きしました。あなたが勇敢に牧出してくださったのに、なんということでしょう」
「では、少年をこの村に置いたらどうなるかを心配して、長老方からわたしに、今日この村から連れ出
してくれるよう依頼があったこともご存じですね。どこか遠くの村に連れていき、路
上で腹を減らして
いた迷子を見つけたとかなんとか言って、世話を頼むようにとのことでし
た。喜んでやってあげてもい
いんですが、ただ、それでは少年は助からないと思うんです。噂
は簡単に広がりますからね。来月か、
来年か、少年が結局いまと同じ状況になるのは目に見え
ています。いや、新参者で、周囲は知らない人
ばかりとくれば、状況はもっと悪いでしょう。
そう思いませんか、ご老人」
「そこまで見通されて、ウィスタン殿は賢いお方だ」

 Oct. 5, 2017

戦士は、眼前の風景をながめながらしゃべりつづけていた。髪が風に吹かれてもつれ、顔に
垂れかかっ
た。それを手で掻き上げながら、突然、アクセルの顔に何かを見たようにぎくりと
し、しばらく、しゃべっ
ていたことを忘れたかのように見えた。首をかしげ、アクセルをじっと見つめ、そして小さく笑って言った。

「申し訳ない、ご老人。ちょっと思い出したことがあって………話に戻りましょう。昨夜以前の少年の
ことは何も知
りません。ですが、つがからつぎへ襲ってくる恐怖を、この少年が取り乱さず乗り越えて
きたことには感銘してい
ます。昨夜わたしと同行した二人は、勇敢に出発したものの、悪鬼の巣に近づ
くにつれ、恐怖にわれを忘れてし
まいました。一方、あの少年は、悪鬼にどうされるかわからない状態
を何時間も強いられながら、静かに堪え抜
きました。咸t嘆するしかおりません。そんな少年の命運が
閉ざされようとしているのは、とても心が屈みます。そ
こで、肋ける道はないものかと考えました。も
しご老人と奥さんのお手が借りられるものであれば、まだ望みがあ
るように思います」

「一わたしたちにできることであれば、ぜひ。お考えを聞かせてください、戦士殿」

「少年を遠くの村へ連れていくようわたしに頼んだとき、長老たちの頭には当然サクソン人の村があ
ったと思いま
す。ですが、サクソン人の村でこそ少年の命は保証されません。なにしろ、体の噛み傷が
危険だというのはサク
ソン人の迷信ですからね。しかし、ブリトン人の村ならどうでしょう。ブリトン
人はそんな迷信を信じませんから、い
ずれ噂があとがら伝わってきたとしても平気です。エドウィンは
強い少年です。口数は少ない子ですが、さっき申
し上げたとおり驚くべき胆力の持ち主です。どの村に
住むことになっても、着いたその日からきっと役に立つでし
ょう..そこで相談です、ご老人。あなた
は東へ向かい、息子さんの村へ行くとおっしやった。きっとブリトン人のキ
リスト教徒の村でしょう。
それこそ、この少年には理想的な村です。あなたと奥さんが、息子さんの力も借りて頼
んでくだされば、
きっと引き取ってもらえるのではありませんか。もちろん、わたしが行って、わたしから頼んでも
、善
良な村人は受け入れてくれるでしょうが、やはり見知らぬ人間とあって、村人が恐れや疑念を抱くかも
しれ
ません。それに、わたしの都合として、用事のために来ていますので、あまり東まで旅をしたくあ
りません」


「すると、お話というのは、妻とわたしが少年をここから連れ出すと、そういうことですか」

「そのとおりです、ご老人。しかし、用事の途中ではありますが、わたしも途中まではご一緒できます。
山の道
を行くとおっしやっていましたよね。少なくとも山の向こう側に出るまでは、少年とお二人に喜
んで同道いたしまし
ょう。わたしなどいても退屈するばかりかもしれませんが、山には危険がつきもの
です。わたしの剣がお役に立
つこともないとは言えません。それに、お二人の荷物も馬に運ばせましょ
う。蹄を傷めていますが、そのくらいは
文句を言いますまい。いかがでしょう、ご老人」

 Feb. 25, 2015

「いい作戦です、戦士殿。妻とわたしも少年の窮状に心を痛めていました。尽力できるのであれば、喜
んでやら
せていただきましょう。おっしやりようを聞くにつけ、あなたはじつに賢い方だ、戦士殿。確
かに、少年の安住の地はブリトン人の村でしょう。息子の村ならきっと受け
入れてくれるでしょう。自
乙子も、そこではひとかどの男であることですしね。年は若くても、
実際には長老の一人のようなもの
です。きっと少年のためにできるだけのことをしてくれると
思います」

「ほっとしました。では、アイバー殿にも打ち明け、少年をこっそり納屋から連れ出す方法を考えるこ
とにしましょう。お二人はすぐにでも出られますか」
 「妻はもう旅支度にかかっています」
「では、南門のわきでお待ちください。わたしはすぐに馬とエドウィン少年を連れていきます。こんな
面倒を分かち合ってくださって、心から感謝します、ご老人。あと一、二日です
が、旅仲間でいられる
のもよかった」

 
                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

次回は第4章。


                                      この項つづく 

 ●夜の一曲

『家をつくるなら』 唄 坂崎幸之助 北山修 Music Writer:加藤和彦 松山猛

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