極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

続・オールバイオマスシステム完結論 ④

2023年07月29日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜
(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

続・オールバイオマスシステム完結論 ④

技術事業開発主要課題はスリークォータ可視化できた。今回は①過
酸化水素製造法と②燃料電池製造方法に関する最新特許技術をピッ
クアップする。

1.特願2021-142108 アバランシェ増幅機能を有する電池 クロス
 テクノロジーラボ株式会社
【概要】
アバランシェ増幅とは、強い電界をもつ半導体の受光部に光が入る
と、半導体原子への光子の衝突によって発生する電子が加速され、
他の半導体原子と衝突し、更に複数の電子を喚起し、このなだれの
ような連鎖によって、移動電子が爆発的に増える現象をいう。この
効果により、大きな電流変化を引き起こす。かかる現象は半導体又
は絶縁体において、起こる特異な現象である。

しかしながら、p型半導体とn型半導体とが空乏層を介して対向し
ている場合にその空乏層に電子が流れ込むと、起きるアバランシェ
増幅現象でもある。したがって、過酸化水素等の双極子を形成する
化合物を含む電解液中では一対の電池電極を接近させてその電極間
に双極子電気二重層を形成すると、短絡せず、発電機能を有するセ
パレータレス電池を形成する(特願2021-073490号)が、カソード
電極側からアノード電極側に局部的に双極子を介して接触する構成
にすると、マイクロキャパシタ(注:本明細書では少なくとも1双
極子のナノ領域の間隔で対向するカソードからアノードへの電極間
に介在する双極子層が形成するキャパシタに一定以上の電荷が蓄積
されるとトンネル現象により電子が流れ出す現象が生ずるキャパシ
タをいう)が形成され、ホトダイオードにおけるアバランシェ増幅
に似た現象が起こると考えられる。

すなわち、一対の電池電極間に双極子を介して1又は複数のマイク
ロキャパシタが形成されると、このマイクロキャパシタには、周囲
のカソード電極から電子が流れ込んで蓄電される。このカソード領
域から三角形の突起電極を介してカソード電極がアノード電極に接
近していると、トンネル現象によりアノード電極の局部に電子が流
れ始め、電極の他の原子に衝突して喚起すると、前記アバランシェ
増幅を起こすと考えられる。近年、過酸化水素燃料電池は、水素燃
料電池と違って、水溶液を用いる1コンパートメント構造は、燃料
の供給が容易で、しかもカソードとアノード室を区画する膜のない
動作ができるため、有望なエネルギー変換プラットフォームとして
期待されている。そこで、本発明は過酸化水素を用いる燃料電池に
おいて、アバランシェ増幅効果を採用して起電力の増大が図れる構
造を提供すべく、鋭意研究を重ねた。

しかしながら、過酸化水素は燃料と酸化剤の両方として機能する高
エネルギー密度液体であるので、ほとんどの金属電極はH2
O とOへの不均化反応を触媒する。その結果、過酸化物燃料
電池における著しい損失機構を示すので、金属をカソード電極とす
る過酸化水素燃料電池は存在し得ないとされた。そのため、カソー
ド電極として伝導性ポリマーであるポリ(3,4-エチレンジオキシチ
オフェン(PEDOT)を用いる一方、アノード電極としてニッケルメッ
シュを使用して、不均化反応による損失を発生させることのないよ
うに工夫し、0.20~0.30 mW cmの電力密度で0.5~0.6Vの範囲のオー
プン回路電位を示す過酸化水素燃料電池が発表されている(非特許
文献1Chemical Communications,2018, Vol.54, Pages 11873-11876)。
他方、カソード材料としてヘキサシアノ鉄酸銅(CuHCF)を使
用し、アノード材料としてNiグリッドを使用する過酸化水素燃料
電池も発表されている(非特許文献:ournal of HydrogenEnergy, ELS
EVIER, Vol.45, Issue 47, 25 September 2020, Pages
25708-25718)。

【発明が解決しようとする課題】 
 燃料電池の場合、起電力が1V前後で金属空気電池に比して低い
という問題もあり、アバランシェ増幅機能の導入は望まれるものの、
従来の過酸化水素燃料電池のカソード電極であるポリ( 3,4-エチレ
ンジオキシチオフェン(PEDOT)やヘキサシアノ鉄酸銅(CuH
CF)にアバランシェ増幅機能を持たせることは困難である。 本
発明者は銅又はその合金が過酸化水素燃料電池のカソード電極とし
て有効であることを見出している。そこで、カソード電極が銅又は
その合金からなる金属であることを利用して鋭意研究の結果、過酸
化水素燃料電池において、カソード電極面から突出する電極部を形
成し、アノード電極の局部に双極子を介して近接させると、周囲の
カソード電極から双極子電気二重層に蓄電されるが、カソード電極
がアノード電極に極めて接近していると、トンネル現象によりアノ
ード電極の局部に電子が流れ始め、アノード電極の他の原子に衝突
して喚起すると、電子の発生が雪崩的に増加し、発電量が増えるこ
とを見出した。本発明はこれを利用してアバランシェ増幅機能を有
する燃料電池を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
燃料電池の発電量をアバランシェ増幅機能により増大させる電池を
提供するものであって、電極面に双極子電気二重層を形成する双極
子能率の高い化合物を含む水溶性電解液と、銅、チタン、及び鉄か
らなる遷移金属製カソード電極と、カソード電極より卑なる金属で
あるマグネシウム、アルミニウム、亜鉛又はその合金からなるアノ
ード電極とを備え、前記カソード電極はその電極面からアノード電
極の対極面に対し突出する複数のスペーサとその先端とアノード電
極面とがその間に少なくとも1個の双極子が介在する間隔で対向し、
双極子電気二重層を挟持して、マイクロキャパシタを形成してなる、
ことを特徴とするカソードからの電子を蓄電しては所定の電荷が溜
まるまで蓄電し、トンネル効果によりアノード局部に集中して流れ
ることを特徴とする、アバランシェ増幅機能を有する電池にある。


図1.アバランシェ増幅機能を発揮するマイクロキャパシタ部の概
  念図
【発明の効果】
本発明によれば、電池(図1)を構成するカソード電極とアノード
電極との間に双極子電気二重層からなるマイクロキャパシタ(図2)
を有する。そのため、一旦所定量以上の荷電が蓄電されるとマイク
ロキャパシタからアノード電極へトンネル効果により電子が流れ、
それがアノード電極の周囲の原子に衝突し、更に複数の電子を喚起
し、このなだれのような連鎖によって、移動電子が爆発的に増える
ことになる。

図4.多数のマイクロキャパシタを形成した電池の概念図

複数の電極突起は、アノード電極との間に複数のマイクロキャパシ
タを形成し、集電して一定の電荷が溜まると、トンネル現象により
放電を繰り返すマイクロキャパシタを構成して点在し、等価な回路
構成の概念図は図4のように示され、図5に示す起電力変化を起こ
す。

図5.マイクロキャパシタをマグネシウム空気電池に適用した場合
 の発電状態を示すグラフで

カソード電極面から突出する鋭角三角形状の突起電極の先端とアノ
ード電極表面との間に挟持される少なくとも1個の双極子、例えば
過酸化水素分子のような双極子能率を有する分子で形成される双極
子電気二重層であるマイクロキャパシタが好ましい。過酸化水素の
双極子能率を参考にすると、2.0e.s.u.×10-15以上の双極子
能率を有する化合物が好ましい(非特許文献;水渡英二著:物理化
学の進歩(1936),10(3):154~165頁)

【発明の概要】
本発明によれば、電池(図1)を構成するカソード電極とアノード
電極との間に双極子電気二重層からなるマイクロキャパシタ(図2
)を有する。そのため、一旦所定量以上の荷電が蓄電されるとマイ
クロキャパシタからアノード電極へトンネル効果により電子が流れ、
それがアノード電極の周囲の原子に衝突し、更に複数の電子を喚起
し、このなだれのような連鎖によって、移動電子が爆発的に増える
ことになる。複数の電極突起は、アノード電極との間に複数のマイ
クロキャパシタを形成し、集電して一定の電荷が溜まると、トンネ
ル現象により放電を繰り返すマイクロキャパシタを構成して点在し
、等価な回路構成の概念図は図4のように示され、図5に示す起電
力変化を起こす。カソード電極面から突出する鋭角三角形状の突起
電極の先端とアノード電極表面との間に挟持される少なくとも1個
の双極子、例えば過酸化水素分子のような双極子能率を有する分子
で形成される双極子電気二重層であるマイクロキャパシタが好まし
い。過酸化水素の双極子能率を参考にすると、2.0e.s.u.×10
-15以上の双極子能率を有する化合物が好ましい(非特許文献:水
渡英二著:物理化学の進歩(1936), 10(3):154~165頁)。
【要約】
下図2のごとく、水溶性電解液が双極子能率の高い過酸化水素を含
み、双極子電気二重層を金属銅又はその合金からなるカソード電極
と、カソード電極より電極電位が卑である、電極電位差を形成する
金属又はその合金からなるアノード電極との間に、カソード電極か
らアノード電極に電子がトンネル現象で流れる構造を形成するマイ
クロキャパシタを有し、アバランシェ増幅に似た電流増幅現象を引
き起こす燃料電池で、アバランシェ増幅機能を有する燃料電池の提
供。

図2.発明のアバランシェ増幅機能を適用する燃料電池の概念図

【発明を実施するための形態】
本発明は、燃料電池の発電量をアバランシェ増幅機能により増大さ
せるものであって、本発明は双極子電気二重層でアバランシェ増幅
効果を達成するものであるから、電極面に双極子電気二重層を形成
する双極子能率の高い化合物を含む水溶性電解液を備える。双極子
二重層を形成する化合物としては典型的には各種電解液、過酸化水
素水溶液であるが、その双極子能率からすると、2.0e.s.u.×10-1
5
以上の双極子能率を有する化合物、過酸化水素が好ましい(非特
許文献3)。カソード電極としては銅又はその合金だけでなく、チ
タン、及び鉄からなる遷移金属及びその合金が有効である。アノー
ド電極としては、カソード電極より卑なる金属であるマグネシウム、
アルミニウム、亜鉛又はその合金からなるアノード電極が好ましい。
前記カソード電極はその電極面からアノード電極の対極面に対し突
出する複数のスペーサとその先端とアノード電極面とがその間に少
なくとも1個の双極子が介在する間隔で対向し、双極子電気二重層
を挟持して、マイクロキャパシタを形成してなる。

これにより、カソードからの電子を蓄電しては所定の電荷が溜まる
まで蓄電し、トンネル効果によりアノード局部に集中して流れるこ
とを特徴とする、アバランシェ増幅機能を有する。本発明では、図
2に示すように、Mgアノード電極板とCuカソード電極板とを、
過酸化水素を含むアルカリ性電解液に浸漬して対向配置してなる。
そして、図3(A)に示すように、銅電極10はその一部を三角形
に切り欠いて電極面に対し直角に立ち上げ、高さ5~15mmの鋭
角三角形の突起電極11を形成し、その先端をマグネシウム電極面
に柔らかく接するように、対向させる。少なくとも1分子の双極子
が介在する間隔が好ましい。突起電極は150mmから200mm
の間隔で形成し、周囲のカソード電極領域から電子が流れ込むよう
にするのがよい。 

本発明における起電力はアノード電極/過酸化水素を含むアルカリ
性電解液/カソード電極の構成における起電力であって、その金属
空気電池の反応は次の通りである。 アノード側の酸化反応を2Mg
→2Mg2+ + 4e-と、 他方、カソード側の還元反応をO+H
O+4e-→4OH- となる。
本発明では、金属空気電池のカソード側の還元反応を促進するため
に、電解液に過酸化水素を添加し、アノード側負極に比べてカソー
ド側正極のイオン化進行速度が劣る原因を改善した。
すなわち、金属銅は
Cu+H→Cu2++OHOH-及び Cu+OH→Cu2++OH-
と一部過酸化水素に溶けるが、
Cu2++2HO2- →Cu+2HOと、HO2基がHaber u. Willstatter
連鎖によって過酸化水素の分解を促進するからであると思われる(
(非特許文献3)。 しかも、本発明によると、カソード電極の表面
に形成される電気二重層は過酸化水素を含み、その双極子(ダイポ
ール)機能により形成される。そのため、対極のアノード電極はカ
ソード電極と接触しても短絡せず、対向するアノード電極とカソー
ド電極の接触を一定間隔で点状に配置される突起等で形成すると、
点状突起の先端に電気二重層キャパシタ構造を有することになり
(図1)、電極表面にマイクロコンデンサとして多数点在し(図
3)、電池起電力を集電してはトンネル効果により流れ、アバラン
シェ増幅を繰り返す(図5)ので、マクロコンデンサ機能を有しな
い同一電極構成の場合に比して2倍以上の発電能力を発揮すること
になる。 本発明においては、前記水溶性電解液に過酸化水素の一
部又は全部を過炭酸ナトリウムにより供給するのが好ましい。具体
的には、0.5から2.0モルのアルカリ金属又はアルカリ土類金
属ハロゲン化塩、特に塩化ナトリウムを含む中性又はアルカリ性水
溶液に対し数%から十数%の過酸化水素水(体積%)又は過炭酸ナト
リウム(重量%)を添加するのが好ましい。 アノード電極がマグネ
シウム又はその合金からなり、(-)Mg/NaCl+H/Cu
(+)の電池構成をとることにより、銅カソード電極との間に過酸
化水素又はそれが分解したヒドロキシラジカルを分解するに必要な
分解電圧を与える。マグネシウム合金電極としてMAZ61又はM
AZ31のマグネシウム/アルミ/亜鉛の合金電極が使用できる。
前記アノード電極とカソード電極とを交互にスペーサを介して一定
の間隔をもって対向配置し、アノード電極とカソード電極との接触
部に過酸化水素を含む水溶性電解液により電気二重層キャパシタを
形成するが、前記スペーサがカソード電極と同じ金属銅又は銅合金
からなり、対極表面に一定間隔を隔てる点状突起を有する(図2)
のが好ましい。マイクロキャパシタは2.0e.s.u.×10-15以上
の双極子能率を有する双極子、例えば過酸化水素の1分子のnmオ
ーダーの間隔をもってカソード電極とアノード電極を対向させるこ
とにより、構成できる。カソード電極からアノード電極局部にトン
ネル電流が集中して流れるように、カソード電極面から三角形状の
電極を突出させる。複数のカソード電極を対向させる場合は、各カ
ソード電極の突起電極の本数、配置位置を変え、アノード電極と接
近する場所を変えるのがよい。アノード電極はカソード電極からの
電子の衝突により溶解し、周囲原子に連鎖して衝突し、電子の発生
を喚起するので、カソード電極の突起が近接する部分は大きな貫通
孔(2.0mm~5.00mm)が形成され、電極全体には小さな
貫通するホール(0.5mm~1.0mm)が多数形成され、海綿
状となる。

図3.アバランシェ増幅機能を有する燃料電池を構成する銅電極の
構成の(A)は斜視図、(B)はマグネシウム電極と銅電極の組み
合わせ状態の端面図

【実施例】
図3に示す銅電極を使用して図4に示す概念の複数のマイクロキャ
パシタがある電池を構成した。容量3000mlの上方開放型直方
体プラスチック容器を用いる。 図3では、1mm厚み、縦横100
×100mmの銅カソード電極板10に上下左右に150mmない
し200mm間隔で多数の三角形の50mmの高さの突起11を切
り立て(図3A)、図3Bに示すように、両端は銅板10は突起
11を内向きに、真ん中は背中合わせに張り合わせた銅電極10で
2mm厚み、縦横100×100mmのマグネシウムアノード電極
板20を挟み込んで組み合わせる。この組み合わせ電極を使うと図
1に示すように、銅カソード電極の表面にマイクロコンデンサを形
成することができる。 他方、図6Aに示す、1mm厚み、縦横1
00×100mmの銅カソード電極板10に銅電極板をT字形に切
り出し、端部を折り曲げて形成したスペーサSを取り付ける。この
カソード電極板でスペーサSを介して2mm厚みの縦横100×
100mmのMgアノード電極板20の両側を挟みつける。3枚の
銅カソード電極板10で、2枚のMgアノード電極板20はスペー
サSを介して交互に挟みつけると、図6Bに示す上部端面図の状態
となる。この組み合わせ電極を使うと図1に示すマイクロコンデン
サを形成しない。 プラスチック容器にはおよそ1500mlの純水
に塩化ナトリウム0.5モル/l以上、好ましくは1.5モル/l以
上2モル/lの電解液を調整し、これに過炭酸ナトリウム50~10
0gと30%過酸化水素水50mlを加える。電池反応は一定時間
過ぎると、過酸化水素が消費され、電球が減少するので、2~3時
間ごとに10mlの30%過酸化水素水を添加する。 本件実施例に
おいては、図3AおよびBの電極構成と図6AおよびBの電極構成
の性能を比較してマイクロキャパシタを銅カソード電極表面に形成
する場合としない場合の性能比較を行った。


図4.多数のマイクロキャパシタを形成した電池の概念図

電極構成以外は同じ条件としたので、アルカリ電解水における過酸
化水素燃料電池反応に、マグネシウム空気電池反応が伴うものであ
る点は同じである。したがって、以下の反応式に基づき、過酸化水
素がH+2HO+2e-2HO+2OH-に分解する一方、カ
ソード電極側でH+2OH-→O+2HO+2e-の酸化反応
を起こすだけでなく、アルカリ性電解液での金属酸化反応がMg→
Mg2++2e-となり、カソード側での酸素を還元してイオン化す
る反応がO+2HO+4e-4OH-と典型的な金属空気電池反応
が起こる。但し、過酸化水素燃料電池及び金属空気電池反応では酸
素ガスは発生すると理解できるが、上記構成では酸素ガスだけでなく、
水素ガスも発生する。ということは、非特許文献3(水渡英二著、
物理化学の進歩(1936)、10(3):154~165頁)に
示唆されるように、銅カソード電極表面で触媒機能が働き、過酸化
水素の分解又はヒドロキシイオンの分解が起こり、発電反応に繋が
っていると思われる。
2H→4・OH→H+O+4e- 4OH-→H+O+4e-
以上の実験結果を考察すると、マイクロキャパシタを作る構成にも
よるが、図3に示すマイクロキャパシタを有する燃料電池は図6に
示すマイクロキャパシタを有しないものに比して2倍以上の電流値
の増加を見ることがわかった。マイクロキャパシタに伴う集電放電
効果が電池の発電量に大きな影響を与えることがわかる。そのため、
本発明の構成は1コンパートメント構造の過酸化水素燃料電池とし
て新規で有用な構成を提供することができるので、画期的である。


図1.実施例及び比較例で得られた電極触媒について、過酸化水素
  生成率(相対値)と耐久維持率との関係を表すグラフ

2.特開2023-61148 水素燃料電池アノード用電極触媒 株式会社
  キャタラー

【概要】
燃料電池は、例えば、イオン交換膜を介してアノード及びカソード
が対向配置された構造を有し、アノード側に燃料(例えば水素)を
供給し、カソード側に酸化剤(例えば空気)を供給すると、両極で
それぞれ所定の電気化学反応が起こり、発電が行われる。 燃料電
池に用いられる電極触媒としては、Pt粒子、Pt合金粒子等の貴
金属粒子が知られている。例えば、特許文献1には、炭素粉末担体
上にPtと補助金属との合金から成る触媒貴金属粒子が担持された、
高分子固体電解質型燃料電池の電極触媒が開示されているが、ダイ
レクトメタノール型燃料電池のアノード触媒として、Pt-Ruが
好適であることが示されている特許文献2もある。 しかしながら、
副反応によって過酸化水素が発生することがある。発生した過酸化
水素は、不純物(例えば鉄イオンFe2+)と接触すると、酸化力が
極めて高いヒドロキシラジカル(・OH)を発生し、電解質膜、電
極材料等を攻撃して劣化させ、燃料電池の耐久性が損なわれるが、
これに対し、この点、特許文献3には、燃料電池の電解質膜又は酸
化剤極(空気極)に、例えば、MnO2、RuO2、ZnO、WO3
MnO2、O2-Al2、RuO2-Al23、ZnO-Al23及び
WO-Al23から選ばれる酸化物触媒を添加することが提案され
ており、これにより、過酸化水素の発生が抑制されると説明されて
いる。
【特許文献1】 特開2003-142112号公報
【特許文献2】 特表2008-506513号公報
【特許文献3】 特開2000-106203号公報

【発明が解決しようとする課題】
特許文献3の技術は、過酸化水素の発生メカニズムとして、カソー
ド(空気極)において、上述の電気化学反応(2)で示される4電
子反応に加えて、下記の電気化学反応(3)で示される2電子反応
が起こることに着目した技術である。
空気極:O+2H+2e→H (3)
しかしながら、カソードに供給された酸素の一部は、電解質膜(固
体イオン交換膜)を透過してアノードに到達することがある。この
アノードに到達した酸素は、アノード(特に、触媒活性種であるPt
粒子)に吸着した水素原子(Had)と反応して、下記の電気化学
反応(4)によっても過酸化水素が発生する。
水素極:2Had+O→H (4)
また、空気極では、電気化学反応(2)で示される4電子反応の寄
与が優先的に進行し、電気化学反応(3)で示される2電子反応の
寄与率は低いと考えられる。これに対して、電解質膜(固体イオン
交換膜)を透過して水素極に到達した酸素は、高い確率で電気化学
反応(4)によって過酸化水素を発生させる。そのため、水素燃料
電池における過酸化水素の発生には、水素極における電気化学反応
(4)が大きく寄与していると考えられる。 本発明は 上記の考察
に基づいて成されたものであり、その目的は、水素を燃料として発
電を行う水素燃料電池において、過酸化水素の発生を抑制して、燃
料電池の長期耐久性の向上に寄与し得る、水素燃料電池用電極触媒
を提供することである。
【要約】
図1のごとく、導電性担体と、前記導電性担体に担持された貴金属
粒子と、を含む、燃料電池の電極触媒であって、前記貴金属粒子が、
ルテニウム及び白金を含み、前記ルテニウムの前記白金に対するモ
ル比Ru/Ptが、0.04mol/mol以上0.20mol/
mol以下である、水素燃料電池アノード用電極触媒にして、水素
燃料電池に用いたときに、過酸化水素の発生を抑制する効果を発現
しつつ、高い触媒活性が長期間維持される高度の耐久性を有する、
水素燃料電池用電極触媒を提供すること。

【発明の効果】
本発明によると、過酸化水素の発生を抑制する効果を発現しつつ、
高い触媒活性が長期間維持される高度の耐久性を有する、水素燃料
電池アノード用電極触媒が提供される。本発明の水素燃料電池アノー
ド用電極触媒は、特に、プロトン交換膜型燃料電池のアノード触媒
として好適である。

《実施例2~5及び比較例1~6》
「(1)電極触媒の調製」において、金属換算のモル比Ru/Pt
がそれぞれ表1の値となるように、Ru前駆体として使用する硝酸
ルテニウム(III)硝酸溶液の量を変更し、Pt-Ru担持カー
ボンの焼成条件を表1に記載の温度に変更した他は、実施例1と同
様にして、電極触媒を調製し、評価した。 評価結果を表1に示す。
また、過酸化水素生成率(相対値)と耐久維持率との関係を表すグ
ラフを、図1に示す。図1には、各触媒のPt:Ruモル比を付記
した。なお、図1では、グラフの右下方向に行くほど、電極触媒と
して好ましい。


表1及び図1に見られるとおり、貴金属粒子がRuを含まない比較
例1を基準として、貴金属粒子のRu/Pt比が0.04に満たな
い比較例2の電極触媒は、耐久維持率は高い値を示すものの、H
生成率の低減の程度は、低いものに留まっている。また、貴金
属粒子のRu/Pt比が0.20を超える比較例3~6の電極触媒
は、H生成率は低減されているものの、耐久維持率は低い値を
示している。 これらに対して、貴金属粒子のRu/Pt比が0.0
4以上0.20以下の実施例1~5の電極触媒は、比較例1を基準
として、H生成率が大きく低減されており、かつ、耐久維持率
も高い値を示している。
《電極触媒の初期活性》
実施例1及び比較例1でそれぞれ得られた電極触媒の初期ECSA
値を、過酸化水素生成率(相対値)及び耐久維持率とともに、表2
に示す。

更に、実施例2~5の電極触媒についても、貴金属粒子の平均粒径
が実施例1の電極触媒と同等であり、実施例1の電極触媒と同等の
初期ECSAを示すものである。実際、本発明者らは、貴金属粒子
のRu/Pt比が0.04以上0.20以下の電極触媒では、実施
例1と同等の初期ECSAを示すことを確認した。 以上のことから、
本発明の電極触媒が、本発明の所期の目的を達するものであること
が検証された。
3. 特開2023-19061 水素生成システム、および水素生成システム
 の
運用方法 日立造船株式会社
【概要】
下図1のごとく、水素生成システム(2)は、水電解により少なく
とも水素ガスを生成する電解装置(4)と、気体の除湿を行う除湿
装置(12)と、水素ガスを燃料として発電する燃料電池(20)
と、各部の動作を制御する制御部(72)とを備える。制御部は、
電解装置からの水素ガスの、除湿装置による除湿と、燃料電池の稼
働に伴い生じる、燃料電池からの排熱を少なくとも利用した除湿装
置の再生とを制御、水素ガスを発生させつつ、より効率的に除湿器
の再生を実施する。

図1.実施形態1に係る水素生成システムの模式図

【符号の説明】 2 水素生成システム 4 電解装置 12 除湿装置
14 第1除湿器 16 第2除湿器 18 熱交換器 20 燃料電池
26 水素ガス除湿ライン 32 第1水素ガス供給ライン 34 第
1燃料供給ライン 36 第1水素ガス貯留ライン 38 貯留水素ガ
ス供給ライン 40 第2水素ガス供給ライン 42 第2燃料供給ラ
イン 44 第2水素ガス貯留ライン 46 第1排熱供給ライン 58
酸素ガス供給ライン 60 第1電源線 62 第2電源線 72 制御
部 P 発電装置 R 水素ガス貯留装置

<水素生成システムが奏する効果>
本実施形態に係る水素生成システム2は、例えば、上述した第1運
用モードから第4運用モードまでの何れか運用モードに基づいて運
用される。水素生成システム2の運用モードの切り替えは、例えば、
制御部72による、電解装置4、除湿装置12、および燃料電池2
0の動作の制御と、各弁の開閉の制御とにより実行される。これに
より、本実施形態に係る水素生成システム2は、運用モードを上述
した第1運用モードから第4運用モードまでを切り替えつつ繰り返
し運用することにより、継続して運用が可能である。
特に、本実施形態に係る水素生成システム2は、水素ガスの生成、
除湿、および貯留と、生成した水素ガスを利用した発電と、生成し
た水素ガスの除湿に利用した除湿装置の再生とを、継続して実行で
きる。特に、制御部72は、電解装置4が生成した水素ガスを利用
した発電により燃料電池20から生じた排熱を利用した、除湿装置
12の再生の制御を行う。したがって、水素生成システム2は、除
湿装置12の再生に、別途ヒータ等を用いた吸湿剤の加熱等が不要
である。このため、水素生成システム2は、より効率よく除湿装置
12の再生が可能である。

また、本実施形態に係る水素生成システム2は、除湿装置12の再
生に利用する熱を生成するために、燃料電池20を稼働させる。こ
のため、当該燃料電池20の稼働により副次的に生成された電力を
、電解装置4の稼働に使用することができる。したがって、本実施
形態に係る水素生成システム2は、外部からの電力供給がない、あ
るいは少ない場合においても、継続した運用が可能であり、かつ、
より効率よく除湿装置12の再生が可能である。 
また、本実施形態に係る水素生成システム2は、除湿装置12の再
生を行わない場合、電解装置4が生成した水素ガスの貯留、および
燃料電池20が生成した電力または排熱の需要施設Cへの供給が
可能である。特に、制御部72は、電解装置4からの水素ガスの除
湿装置12による除湿を制御する。このため、本実施形態に係る水
素生成システム2は、電解装置4からの水素ガスを除湿し、乾燥し
た水素ガスを生成できる。したがって、本実施形態に係る水素生成
システム2は、より効率よく除湿装置12の再生を行いつつ、電力
または排熱の需要施設Cへの供給を、継続して実行できる。 
なお、水素生成システム2の各運用モードにおいて、電解装置4、
除湿装置12、および燃料電池20の稼働に必要な電力は、発電装
置Pまたは燃料電池20から得られる電力を使用する。また、燃料
電池20を使用した発電は、発電装置Pからの電力により稼働する
電解装置4が生成した水素ガスを燃料として実行される。 
したがって、発電装置Pが再生可能エネルギーを利用した発電を行
う場合、水素生成システム2は、環境への負荷を低減しつつ、各装
置の稼働、除湿装置12の再生、および電力または排熱の需要施設
Cへの供給を、継続して実行できる。ゆえに、水素生成システム2
は、二酸化炭素の排出量の低減を含む、地球環境の改善に貢献し、
持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに
そしてクリーンに」および目標13「気候変動に具体的な対策を」
の達成に貢献できる。

4.特開2022-159764 燃料電池システムの制御方法 トヨタ
 自動
車株式会社
【概要】
下図3のごとく、発明の燃料電池システムの制御方法は、燃料電池
システムの制御方法であって、燃料電池セルの所定の電流密度での
発電電圧を測定する測定工程と、上記燃料電池セルの上記所定の電
流密度での発電電圧及び電極触媒の被毒率の予め定められた関係か
ら、上記測定工程で測定した上記発電電圧での電極触媒の被毒率を
算出する第1算出工程と、上記燃料電池セルの電極触媒の被毒率及
び過酸化水素の発生率の予め定められた関係から、上記第1算出工
程で算出した上記電極触媒の被毒率での過酸化水素の発生率を算出
する第2算出工程と、を備えることを特徴とする、より簡便に過酸
化水素の発生率を推定できる燃料電池システムの制御方法を提供す
ることにある。

5.特開2023-43734 酸化炭素電解装置、二酸化炭素電解方法、及
び有価物製造システム 株式会社東芝
【概要】 下図1のごとく、実施形態の二酸化炭素電解装置1は、
二酸化炭素を収容するための第1の収容部と、水を含む電解液又は
水蒸気を収容するための第2の収容部と、第1の収容部と第2の収
容部との間に設けられた隔膜と、第1の収容部に配置された還元電
極と、第2の収容部に配置された酸化電極とを備える電解セル4と、
電解セル4に電力を供給する第1の電源5に接続可能な第1の電源
制御部6と、電解セル4に電力を供給する第2の電源7に接続可能
な第2の電源制御部8と、第1の電源制御部6及び第2の電源制御
部8を制御し、第1の電源又は第2の電源から電解セルに対する電
力の供給を切り替える統合制御部11とを具備する、電力の変動に
伴う動作の不安定化を抑制することを可能にした二酸化炭素電解装
置を提供することにある。(図示せず)

    

 
  

技術的特異点でエンドレス・サーフィング
   特異点真っ直中 ㊲

GAAトランジスタ構造を適用した3nmのファウンドリー用プラ
ットフォーム(SF3)




 VLSI2023➲ロジック半導体、DRAM、NANDのどの半導体も、新構造や
新プロセスなどが開発されつつある。新技術と、EUV、High NA、そして
Hyper NAが、相乗効果をもたらして行くと考えられるという。半導体の
進化は、今後もとどまることはないと。
via 湯之上隆のナノフォーカス(64)EETime.jps
 

John Lennon Imagine

【POPの系譜を探る:2023年代】

今夜の寸評:先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。



奈良・五條市にある全国でも珍しい“柿の専門”。古くから柿の名産地で
ある西吉野地区で、干し柿など伝統的なお菓子を守りながら、新しい価値
ある商品を次々と作り出している名店。夏に人気の「柿こーり」は、冷凍
で届くものを半解凍して“プルしゃり”食感を楽しむ甘味。渋柿を独自の
製法で完熟させた柿のシャーベットを吉野本葛のくず餅で包んだだけ、と
シンプルな製法ながら、シャーベット状の柿が口の中で溶け出すときの濃
密な甘さに目を開かれる。解凍時間によってさまざまな食感になるので、
お好みの加減を探してみて。透明感ある見た目も美しく、夏のギフトにも
喜ばれている。

 

 

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続・オールバイオマスシステム完結論 ③

2023年07月27日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。




画像:DMG MORI



彦根市松原町で開催されている「鳥人間コンテスト(読売テレビ)
」が今年で45回目を迎えるのを記念して、ひこにゃんとのコラボイ
ラストが完成。鳥人間コンテスト事務局を運営する読売テレビエン
タープライズが、ひこにゃんの作者「もへろん」さんにイラストの
作成を依頼し実現。飛行帽をかぶったひこにゃんが翼を装着して彦
根城や琵琶湖の上を飛んでいる様子や、鳥人間コンテストの部門ご
との滑空機や人力プロペラの飛行機を操縦している姿など計6パタ
ーンのイラストを展開。 彦根市は「ひこにゃん」の使用料につい
て無償化の実証実験中だが、今回の6点については商標使用料3%
かかる。イラストの有償使用許諾の手続きは6月15日から、彦根市
ホームページで受け付ける。





続・オールバイオマスシステム完結論 ③

今回は、オール再エネ由来とバイオマスの融合で残件課題の最新技
術を摘出し展望との関わりを明確にする作業に続ける。

1.特開2023-103557 メタネーション反応器、及び、メタン含有
  ガ
スを製造する方法 株式会社日立製作所
【概要】
エネルギーシステムにおいては、航空、船舶、長距離貨物、負荷調
整用発電、製鉄、セメント等、電化や二酸化炭素回収貯留(CCS)
による対応が困難な分野も存在しており、これらの対応には発電や
燃料の利用で排出される二酸化炭素を取り除く、いわゆる「脱炭素
」だけでなく、二酸化炭素を循環的に利用する「炭素循環」も求め
られている。この炭素循環の一つの手段として、二酸化炭素の資源
化がある。二酸化炭素の資源化とは、二酸化炭素を燃料や化成品に
変換し利用することである。二酸化炭素の循環利用を目的とした炭
化水素への変換技術は、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、
排出した二酸化炭素を大気中に拡散させないという点で非常に重要
な技術である。二酸化炭素の炭化水素への変換技術として、二酸化
炭素(CO2)と水素(H)からメタン(CH)を製造するサバ
ティエ反応は、すでに工業的に広く使われており、下記反応式(1)
で示される。メタン(CH)は、ガスパイプライン、貯留施設な
どの供給網が世界的に確立されていることから、炭素循環の観点か
ら非常に有望である。 二酸化炭素の炭化水素への変換技術として
、二酸化炭素(CO2)と水素(H)からメタン(CH)を製造
するサバティエ反応は、すでに工業的に広く使われており、下記反
応式(1)で示される。 メタン(CH)は、ガスパイプライン、
貯留施設などの供給網が世界的に確立されていることから、炭素循
環の観点から非常に有望である。

CO+4H -160kJ/mol→CH+2HO (1)

一方で、メタネーション反応器の触媒層のうち、反応ガス入口側の
部分では、急激な発熱反応により局所的に温度が上昇し、部分的に
触媒の凝集、粗大化等が進行し、劣化が速いという課題があり、さ
らに、その発熱による反応器全体の損傷劣化が進むことも大きな課
題である。 上記の課題に対して、例えば、特開平11-189552には,メ
タネーション反応器の上流部および下流部に加熱、冷却機構を配置
し、その稼働および停止により上記反応器の温度を制御する方法が
記載されている。しかし、加熱と冷却を頻繁、かつ煩雑に制御する
必要がある。また、特開2020-124665には、触媒活性の異なる触媒
を円筒状に成形し、上流側から下流側にかけて触媒活性を上げてい
くことで、反応による反応器内の温度を均一化する方法が記載され
ている。しかし、数種の触媒を円筒状に成形し、設置する煩雑さや、
触媒を円筒状に成形することで触媒の表面積を低下させ、より多く
の触媒が必要となり高コストになるという懸念がある。さらに、反
応器へ流入させるガス流量が変わった場合には、再度、触媒層の最
適化、再成形等が必要となる煩雑さがある。
 特許文献 特開2013-63406には、多孔質体に粉末状の触媒を複数積
層して、それを触媒反応器内に設置し、各々の触媒に加熱機構を設
け、個々に温度調節することにより、触媒反応器内の局所的な温度
のばらつきを抑制することが記載されている。しかし、個々の触媒
ごとに加熱機構を設けるため高コストになるおそれがあり、また煩
雑に温度制御する必要がある。 
 特開2013-136538には、触媒反応器を直列に設置し、水素を触媒反
応器に分割して供給し、1段目の触媒反応器に供給する水素量を調
節することで、その触媒反応器の温度を制御することが記載されて
いる。しかし、触媒反応器を複数用いるため高コストになるおそれ
があり、かつ、反応ガス流量を煩雑に制御する必要がある。
特開2017-132733には、触媒反応器内に粒子状の触媒と二酸化炭素
(CO2)を吸収・放出できる材料を設置することにより、反応ガ
ス導入部から導入された反応ガス中の二酸化炭素を、二酸化炭素
(CO)吸収・放出材料に吸収させてCOガス流量を制御する
ことで、メタン製造反応に伴う局所発熱を抑制することが記載され
ている。図1のごとく、メタネーション反応器は、水素及び二酸化
炭素を含む原料ガスを触媒に接触させてメタン含有ガスを製造する
メタネーション反応器であって、内管及び外管を有する二重管と、前
記内管の外周面と前記外管の内周面との間に配置される触媒と、を
備え、前記内管は、軸方向一方側の端部に配置された前記原料ガス
の供給口と、前記内管の軸方向に所定間隔をおいて複数個所に配置
され、前記内管の内周面と外周面との間を連通して前記外管内に開
口する複数の連通口と、を含み、前記メタネーション反応器は、前
記複数の連通口の開口度合いを調整する調整装置を備えることを特
徴とする。


図1.第1実施形態に係るメタネーション反応器の概略構成図

【符号の説明】 1、1a、1b、1c:メタネーション反応器、1
0: 内管、12:供給口、14:連通口、20:外管、30:触
媒、40: 原料ガス、42:メタン含有ガス、80:調整装置、7
2:予加熱炉( 加熱装置)、90:二重管
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な構成でメタネーション反応器内における反
応の均一化を図り、触媒劣化を抑制することができる。本発明に関
連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになる
ものである。また、以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、
及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らか
にされる。

<第1実施形態>
第1実施形態に係るメタネーション反応器1について説明する。図
1は、本発明の第1実施形態に係るメタネーション反応器1の概略
構成図である。図2は、図1のメタネーション反応器1における、
調整装置80を用いた連通口14の開口度合いの調整を説明する図
である。


図2.図1のメタネーション反応器における、調整装置を用いた連
  通口の開口度合いの調整を説明する図。

図3は、第1実施形態に係るメタネーション反応器1を用いたメタン
含有ガス42の製造方法を説明するフローチャートである。

図4.本発明の第1実施形態に係るメタネーション反応器を用いた
  メタン含有ガスの別の製造方法を説明するフローチャート

図4は、第1実施形態に係るメタネーション反応器1を用いたメタ
ン含有ガス42の別の製造方法を説明するフローチャートである。 
本実施形態に係るメタネーション反応器1は、二酸化炭素(CO2)
と水素(H2)とを含む原料ガス40を触媒30に接触させて反応
させることで、メタン(CH4)含有ガス42を製造する装置であ
る。メタネーション反応器1は、内管10とそれを囲む外管20か
ら成る二重管90を有する。
               -中 略-

図8は、実施例4および比較例1で得られたメタネーション反応器
の上流位置及び下流位置での発熱量を示したものであり、比較例1で
は反応ガス導入部近傍である測定位置1において約8.0Wの高い
発熱量を示し、局所的な発熱が顕著である。さらに下流側へ行くほ
ど発熱量が急激に低下し、最下流部近傍の測定位置5においてはほ
ぼ発熱しておらずメタネーション反応に寄与していない触媒層があ
ることが明らかとなった。この結果から、反応ガスを導入する内管
を備えない比較例1では触媒層の反応が不均一であり、反応ガス導入
部の局所的な発熱による触媒劣化の促進、およびメタネーションに
寄与していない触媒層の存在による温度不均一化によるメタン製造
効率の低下が生じている。
一方で、実施例4で示した反応ガス導入用の内管を備えたメタネー
ション反応器では、上流側から下流側までの発熱量がほぼ2.0Wに
均一化されており、局所的な発熱が抑えられることによる触媒劣化の
抑制、および温度均一化によるメタン製造効率の向上が可能なことが
明らかとなった。


図8.本発明の実施例4及び比較例1で得たメタネーション反応器
における発熱量と触媒の位置の関係を示すグラフ
以下割愛(後略)。

3.特開2023-103749 二酸化炭素回収システム 三菱重工業株式会社
概要】
下図1のごとく、二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を吸収し
た吸収液を加熱して吸収液から二酸化炭素を放散させる蒸留塔と、
蒸留塔から抜き出された吸収液と熱媒体とを熱交換する第1リボイ
ラと、二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを製造する反応器を
含むメタネーション装置と、反応器から流出した反応ガスを熱媒体
として第1リボイラに供給する反応ガス供給ラインと、第1リボイ
ラにおいて吸収液と熱交換した反応ガスをメタネーション装置に戻
す反応ガス戻りラインとを備える。酸化炭素を吸収した吸収液から
二酸化炭素を放散させる熱効率を向上させた二酸化炭素回収システ
ムを提供する。

図1.本開示の実施形態1に係る二酸化炭素回収システムの構成模
  式図
【発明の効果】
本開示の二酸化炭素回収システムによれば、化炭素と水素とを
反応させてメタンを製造する反応器から流出した反応ガスと二酸化
炭素を吸収した吸収液とを熱交換することにより吸収液を加熱する
ので、吸収液から二酸化炭素を放散させる熱効率を向上することで
別途の装置や工業用水を用いずに、燃料合成触媒の温度を制御でき
る。

4.特開2023-102711 燃料合成装置 本田技研工業株式会社
【概要】
下図1のごと、本発明に係る燃料合成装置1は、主通路10の上流
に配置され、二酸化炭素ガスおよび水素ガスを供給する供給手段2
と、前記供給手段2の下流に配置され、前記二酸化炭素ガスおよび
前記水素ガスを化学反応させて燃料を合成する燃料合成触媒3と、
前記燃料合成触媒3の下流に配置され、前記燃料を液体にして、前
記燃料合成触媒3で未反応であった前記二酸化炭素ガスおよび前記
水素ガスと分離する気液分離手段4と、前記気液分離手段4により
分離された前記液体を前記燃料合成触媒3の周囲に還流し、その後、
前記液体を前記気液分離手段4の下流に流すことで前記燃料合成触
媒3を冷却させる冷却手段5と、を備えることを特徴とすることで、
別途の装置や工業用水を用いずに、燃料合成触媒の温度を制御でき
る燃料合成装置を提供する。


図1.本実施形態に係る燃料合成装置の構成を示す概略図

【符号の説明】 1 燃料合成装置 2 供給手段 3 燃料合成触媒
4 気液分離手段 5 冷却手段 6 蒸留加熱手段 10 主通路 11
~17 配管 20 還流通路 21、22 タンク 30 圧縮機 31
反応筒 32 触媒温度測定手段 40 ヒータ 51 冷却通路 52
バイパス通路 60 ECU V1 第1制御弁 V2 第2制御弁 V
3 第3制御弁

【東レ株式会社】
5.特開2023-091964 布帛、触媒反応器、並びにメタノール又はメ
  タンの合成方法
6.特開2023-80453 気相反応用反応器、及びメタン又はメタノール
  の製造方法
7.特開2023-42719 ガス分離膜およびその製造方法、ガス濃縮方
  法
8.特開2023-42090 ガスセンサ
9.特開2023-38174 多孔質セラミックス管、ガス分離用複合膜、
 ガス分離用モジュール
                       この項つづく


   

 
  

技術的特異点でエンドレス・サーフィング
   特異点真っ直中 ㊱



韓国の研究チームが「室温かつ常圧での超電導」を実現したとする
研究論文をプレプリントサーバーのarXivで公開。特定の物質を一
定の温度まで冷やすと、電気抵抗がゼロの超電導状態となる。超電
導には「エネルギーを損失ゼロで伝送できる」「強い磁場を生成で
きる」といった特徴があり、リニアモーターカーやMRIなど多様な
分野で応用されるが、超電導状態を生み出すには物質を極低温状態
まで冷却する必要があるため、冷却コストを抑えるために比較的高
温でも超電導状態になる物質の開発が進められていた。これまでに
開発された物質では「比較的高温」と言ってもマイナス100度を大
きく下回る温度まで冷却する必要がある。韓国の研究機関「Quantum
Energy Research Centr
e」の研究チームが「室温かつ常圧での超電導」
を実現したとする論文を2023年7月22日に発表。 超電導体は外から
の磁場を打ち消すように逆向きに磁化する「完全反磁性(マイスナー
効果)」を備えている。研究チームは開発した超電導体「LK-99」に
マイスナー効果が生じていることを示すムービーを公開。
【関連論文】
1.The First Room-Temperature Ambient-Pressure Superconductor
 https://doi.org/10.48550/arXiv.2307.12008
2.The First Room-Temperature Ambient-Pressure Superconductor
  https://doi.org/10.48550/arXiv.2307.12008
via Gigazine 2023.7.26
-----------------------------------------------------------------------------------------


画像:連続光触媒反応によるリンイリドと二種類のアルケンの分子連結

連続光触媒反応による分子連結手法
7月27日、京都大学の研究グループは,リンイリドと二種類のアルケンを
炭素-炭素結合形成反応によって逐次的に連結し,医薬品などの合成に
有用な1,4-ジカルボニル化合物を迅速に供給する新しい手法を開発。
【概要】
同一分子内に複数の反応点を有する化合物は、別々の分子と炭素-炭
素結合を形成することでこれらを繋 ぎとめる役割を果たす。このような「
分子連結素子」は、単純な構造をもつ原料から複雑な骨格を迅速 に構築
する上で有用であり、これまで生物活性化合物の合成などに広く利用さ
れてきた。一方で、これ らの分子連結反応の多くは有機金属化学種を
用いる必要があり、その高い反応性や試薬の不安定性に起因す る問題
点があった。本研究では、穏和な条件での分子活性化を可能にする光レ
ドックス触媒※2 を用いる ことで、古くから利用されてきた合成試薬であ
るリンイリドが画期的な分子連結素子として機能することを 新たに見いだ
した。
【展望】
医薬品をはじめとする有用分子の迅速供給が見込まれるとともに、本研
究で明らかにしたリンイリドの反応性に基づく新たな有機合成反応の開
発が期待される。
【関連論文】
原 題:Bidirectional Elongation Strategy Using Ambiphilic Radical Linchpin
for Modular Access to 1,4-Dicarbonyls via Sequential Photocatalysis
(両性ラジカルリンチピンを用いた双方向伸長戦略にもとづく連続光触媒
反応による1,4-ジカルボニル化合物のモジュール合成)
掲載誌:Journal of the American Chemical Society DOI:10.1021/jacs.3c05337

風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【POPの系譜を探る:2022年代】
Mrs. GREEN APPLE



Soranji」(ソランジ)は日本のロックバンド・Mrs. GREEN APPLE
10作目のシングル。2022年11月9日にユニバーサルミュージック内のレー
ベル・EMI Recordsより発売。
➲作詞&作曲:大森元貴 唄:Mrs. GREEN APPLE
2022年8月17日、同年12月9日公開の二宮和也、北川景子主演の映画『ラ
ーゲリより愛を込めて』の主題歌として本楽曲が起用されることが発表
された。映画の主題歌を務めるのは2018年8月1日公開の映画『青夏 きみ
に恋した30日』の主題歌「青と夏」以来約4年ぶりとなる。

今夜の寸評:先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。


 

 

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続・オールバイオマスシステム完結論 ②

2023年07月25日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



超臨界二酸化炭素とは、温度が31℃以上、圧力が73気圧以上の二酸
化炭素のことで、気体並の高い流動性・浸透性と液体並の強い溶解
力を合わせ持っている。従って、木材のような材料に対して、気体
のように速やかに内部まで浸透し、液体に近い溶解力で成分を抽出
することができる。また、二酸化炭素は無毒・不燃性・不活性・安
価であり、使用後も回収して再利用できることから、環境や人体に
有害な有機溶媒に代わる環境低負荷型反応溶媒として注目されてお
り、食品や香料などの分野では超臨界二酸化炭素を利用した商用プ
ラントがすでに稼働している。
先回に続き、「バイオマス原料乾燥」と「オールバイオシステム」
のビシネス・マッチング基本構想」の「完結論」をファインル展開
する。
尚、短い期間だったわたしも半導体の「超臨界二酸化炭素洗浄装置」
の開発をしていた経験がある(選択と集中が要請される「資本の論
理」に事業開発を見通せずに離脱)ので、再度、「超臨界二酸化炭
素乾燥」をメイン・プロセスとして遡上する。ここまで、森林資源
現場での「原材粉砕・切断」、「樹木遺伝子編集」(ポフラの低リ
グニン含有化)、「超臨界二酸化炭素処理」の最新技術動向を調査。
因みに、森林資源の樹木は基本的には廃材(ウエイスト)はさせず
有効利用させる「ゼロ・ウエイスト」として構想する。

【超臨界二酸化炭素乾燥の特徴】
1.界面張力フリーで微細構造体を乾燥
2.乾燥中に働く応力(物資の密度や細孔構造を変化)による材料形
 状や物性への影響なしに乾燥を実現
 補足すると、溶液プロセスを用いる材料合成等により得られる生
成物(微細構造体、多孔体等)は、溶媒を含む湿潤状態のため、通常、
乾燥工程を不可欠とする。最初溶媒に完全に浸された状態にある微
細構造体等は、
1.柔軟性のある場合は、乾燥の初期段階では溶媒の蒸発の進行に
 より溶媒の減少分が補填されずに構造体が収縮する、
2.乾燥が進行し構造体の表面が露出すると構造体内部に気相と液
 相の界面が生じ、界面の接線方向に向かって界面張力に起因する
 毛管力が生じ、構造体を収縮させる方向に応力を与える。
等の現象が起こり、物質の密度や微細構造変化し、材料の形状や物
性に大きな影響を及ぼし、微細構造体の倒壊や亀裂/割れが発生し
やすくなるが、超臨界乾燥は、通常の乾燥法と異なり、微細構造体
内の液体溶媒(液相)が気相となる条件への移行過程(気液共存領域)
での毛管力を発生させ、液相から超臨界状態を経由して気相に移行
させる事により、毛管力や溶媒の減少による収縮等を起こさない特
異な乾燥方法。
 例えば、①半導体の微細レジストパターンの乾燥、②MEMS(Micro
Electro-Mechanical System)の 犠牲層除去後の乾燥、③シリカエアロ
ゲル等の多孔体材料の乾燥に適用ができる。

※万能ではないので要注意。
【参考情報】
1.超臨界二酸化炭素を用いた高含水率木材の高速脱水
【概要】
樹木から切り出されたばかりの木材(生材)は多量の水分を含んで
おり、住宅用材などに用いる前にあらかじめ木材を適切な水分量ま
で乾燥が必要。木材の乾燥法として古くから行われてきた天然乾燥
数ヶ月間程度の長期間を要するため、現在では蒸気式加熱乾燥機
等を用いて乾燥するのが一般的であるが、それでも7~9日程度の日
数を要し、乾燥過程における木材の熱変性など、改善すべき問題点
も多く抱える。
【実験方法】
生材のスギ心材試片で 試片寸法は、(1)木口面15×15mm、繊維方向
100mm、(2)木口面40×50 mm、繊維方向100 mmの2種類を用意。 試
片を容量900mL のバッチ容器に入れて密閉し、超臨界二酸化炭素中
で所定時間保持した後、容器のバルブを開放し常圧まで急速に減圧。
処理の温度/圧力/保持時間は、試片(1)で120℃/17MPa/20min、試片
(2)で40,90,120℃ /10,17,30 MPa/20min 。また、実験にかかる消費
電力量の測定。処理後の試片はすぐに取り出し質量を測定した後、
室内に放置して24時間後までの質量変化を測定した。その後、試片
を105℃で24時間乾燥して全乾質量を測定し、乾量基準で含水率を算
出した。
【実験成果】
試片(1)では、処理前含水率81.7~122.9%の生材が処理直後には52.
0~57.7%と約1/2 にまで減少し、ごく短時間の処理で木材からの脱
水が可能であることが示された。木口寸法を大きくし、複数の処理
条件で実験した試片(2)でも、処理前含水率71.3~125.3%が、処理
直後には47.0~84.4%に減少し、室内放置2 時間後には39.7~72.7
%まで減少(図1)。

また、40℃処理の試片では、処理後の数~十数分間、試片から水分
が気泡と共に放出する様子が見られた。含水率の減少幅は、高温・
高圧処理であるほど大きくなる傾向にあった。割れについては、40
℃処理ではほとんど確認されなかったが、120℃処理では 複数箇所
で発生する試片が多く存在した。ポンプよる昇圧。ヒータによる昇
温・温度保持にかかる消費電力量は、40℃処理は120℃処理の約1/4。


本処理では、超臨界二酸化炭素が生材内部に素早く浸透して材内部
の自由水(細胞内腔や細胞間隙などの空隙に毛管力によって保持さ
れている水)に一部溶解し、その後圧力を解放することで、気化し
た二酸化炭素が水分を強力に木材外へ押し出し、高速脱水の効果が
生じていると推察される(図2)。また、木材が高密度でより多く
自由水に溶解していたと予想されることや、割れの発生による試片
表面積の増加がなかったことなどから、圧力開放時に二酸化炭素が
排出しきれず、室内放置の間も材内の水分を押し出し続けていたと
推測される。



最新木質バイオマス直接メタン発酵技術開発 さて、わたし(たち
)は、使途選別した木質バイオマス(破砕機で乾燥処理したパウダ
ーをさらに選別処理)を原料とした高速・高品質直接メタン発酵技
術開発を構想している。



【木質(植物)バイオマスを直接メタン発酵の問題点】
木質バイオマス由来、メタン発酵ガス発電買い取り価格が非常に高
い問題に直面する。



木質バイオマス発電とメタン発酵ガス発電が大規模化できFIT価格
を削減できないかわらない。

1.特開2023-4656 廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法 新和
  産業株式会社
【概要】
下図1のごとく、廃棄物1Aの一部、即ち、高含水の被メタン発酵
処理物10Bをメタン発酵して熱や電気等のエネルギに変換できる
バイオガスGを生成すると共に、メタン発酵後のメタン発酵残渣物
110を、廃棄物1Aの残り、即ち、低含水の固形状の選別残留物
10Aと、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合してまとめて
被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させて乾燥させるこ
とにより、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を生成
することで、エネルギコストを抑え、廃棄物をバイオガス及び資源
化物に有効利用できる。

図1.実施の形態に係る廃棄物処理プラントにおける廃棄物処理工
程のフロー

図2.実施の形態に係る廃棄物処理プラントの前処理工程、メタン
 発酵工程の概念図

図3.実施の形態に係る廃棄物処理プラントの混合工程、好気発酵
 乾燥工程、排気調節工程、及び脱臭工程の概念図

図4.実施の形態に係る廃棄物処理プラントの後処理工程の概念図 
【符号の説明】 1A,1B 廃棄物 2 嵩密度調節材 3 微生物付
着体 21 メタン発酵槽 10A 選別残留物 10B 被メタン発酵
処理物 33 コジェネレーション設備 100 被好気発酵処理物 1
10 建屋 120 好気発酵乾燥装置 130 エアプレナム室 14
0 生物脱臭装置 142 バイオフィルタ 150 メタン発酵残渣
171 第1の循環水設備 181 第2の循環水設備 200 好気発
酵乾燥処理物 210 固形燃料原料
220 堆肥原料  Y3 混合
ヤード(混合作業部)  G  バイオガス

2.特開2011-115120 リグノセルロース系バイオマスからメタンガ
  スを生成するための微生物担持担体の作製方法 財団法人電力中
  央研究所
【概要】
一般に、微生物を利用して物質を変換(分解、酸化、還元等)によ
り処理する場合、高負荷条件、例えば微生物により処理される被処
理物の濃度が一定値以上の高濃度になると、微生物の機能が低下し、
処理能力が低下してしまうことが知られている。メタン発酵処理に
おいてもこのことは例外ではなく、有機物負荷速度や水理学的滞留
時間が高い高負荷条件下では、メタン発酵槽の酸敗等が生じて、メ
タン発酵処理能が著しく低下する場合がある。このような状況に陥
ると、メタン発酵槽を再生する必要が生じ、メタン発酵処理が滞る
ことになる。そこで、高負荷条件下においても処理能力を低下させ
ることなく、連続して処理を行うことのできる方法の確立が望まれ
る。有機性廃棄物を発酵液に投入してメタン発酵を行うメタン発酵
方法において、板状の炭素電極の片面に炭素繊維を備えた担体保持
電極を有機性廃棄物と共に発酵液に接触させ、担体保持電極の電位
を銀・塩化銀電極電位基準で-0.8V~-1.0Vに制御しなが
らメタン発酵を行うことで、高負荷運転条件下においても優れたメタ
ン発酵処理能力を発揮することを知見するに至った。 本願発明者等
は、これらの知見から、微生物を利用した物質処理方法や物質生産
方法などの生物学的処理全般について、担体保持電極の電位を、そ
の物質の処理や生産に有用な微生物群の至適範囲に制御することで、
高負荷条件下においても優れた処理能力を発揮させて、効率よく実
施することができる可能性が導かれることを知見し、本願発明を完
成するに至った。 即ち、本発明の生物学的処理方法は、電極表面の
少なくとも一部に微生物を担持し得る 担体を備えた担体保持電極と
担体への担持対象微生物群を少なくとも含む微生物群集と培養液と
を接触させ、担体保持電極の電位を担持対象微生物群の至適範囲に
制御しながら生物学的処理を行うようにしている。 次に、本発明の
メタン発酵方法は、電極表面の少なくとも一部に微生物を担持し得
る疎水性の担体を備えた担体保持電極と有機性基質を含むメタン発
酵液とを接触させ、担体保持電極の電位を担体保持電極にて還元反
応が生じ得る電位または銀・塩化銀電極電位基準で+0.3Vに制
御しながらメタン発酵処理を行うようにしている。 図3、7のごと、
電極表面の少なくとも一部に微生物を担持し得る担体を備えた担体
保持電極と担体への担持対象微生物群を少なくとも含む微生物群集
と培養液とを接触させ、担体保持電極の電位を担持対象微生物群の
至適範囲に制御しながら生物学的処理を行うようにした。また、電
極表面の少なくとも一部に微生物を担持し得る疎水性の担体を備え
た担体保持電極と有機性基質を含むメタン発酵液とを接触させ、担
体保持電極の電位を担体保持電極にて還元反応が生じ得る電位また
は銀・塩化銀電極電位基準で+0.3Vに制御しながらメタン発酵
処理を行うようにして、高負荷条件下においても優れた処理能力を
発揮して効率よく実施することのできる生物学的処理方法を確立す
る。

3.特開2016-145716 放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理
 方法 国立大学法人広島大学他
【概要】
下図1のごとく、放射性セシウムを含む植物バイオマスから、糖質
を含み且つ放射性セシウムの50%以上が移行した液相部と、固相
部とを得る分解工程S1と、放射性セシウムを含む液相部を発酵さ
せて、放射性セシウムを含む液相部廃液と、放射性セシウムを含ま
ない第1気相部とを得る液相部発酵工程S2と、固相部を発酵させ
て固相部残渣と、固相部廃液と、放射性セシウムを含まない第2気
相部とを得る固相部発酵工程S3とを備えている。分解工程は、植
物バイオマスに糖化酵素を添加して粉砕する湿式ミリング処理を含
む、放射性セシウムを含む植物バイオマスを、有効活用しつつ減容
化する処理方法を提供する。


図1.放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理工程の一例を示
 すフロー図


 図2.分解工程の一例を示すフロー図

植物バイオマスから糖化液と固形残渣とを得る分解工程は、図2に
示すように、糖化酵素を添加した湿式ミリング処理により行うこと
ができる。湿式ミリング処理は、植物バイオマスを媒体中に懸濁さ
せたスラリ状態として粉砕する。スラリの体積は、バイオマスの種
類及び処理装置の構成等の種々の要因によって変動するが、一例と
して元の植物バイオマスの体積の200%~300%程度となる。
処理装置には、例えばボールミル又はビーズミル等を用いることが
できる。効率良く粉砕するために、植物バイオマスは処理装置に投
入する前に5mm程度以下に粗粉砕しておくことが好ましい。 湿
式ミリング処理の際に添加する糖化酵素は、植物バイオマスの細胞
壁に含まれるセルロース及びヘミセルロース等を糖化する酵素であ
り、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼを挙げること
ができる。セルラーゼとは、β-1,4-グルカンのグルコシド結合を加
水分解する酵素である。セルラーゼには、セルロースの分子内部か
ら切断するエンドグルカナーゼ、セルロースの還元末端又は非還元
末端から分解しセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ、及び
セロビオースのグルコシド結合を切断しグルコースへと変換するβ
-グルコシダーゼ等が含まれる。ヘミセルラーゼとは、植物体の細
胞壁を構成する多糖類のうちセルロース、ペクチン以外の多糖類を
分解する酵素である。ペクチナーゼとは、ペクチンを分解する触媒
機能を持つ酵素であり、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、
ペクチンエステラーゼ、及びペクチンメチルエステラーゼ等が含ま
れる。これらの酵素は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
分解工程において、植物バイオマスに含まれる放射性セシウムをほ
ぼ完全に液相部に移行させ、固相部に含まれる放射性セシウムを既
定値以下とすれば、固相部は放射性セシウムを含まない通常のバイ
オマスとして処理することができる。この場合には、固相部廃液及
び固相部残渣は放射性セシウムを含まない通常の廃棄物として処理
することができる。 

植物バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含
む植物由来のバイオマスであり、主に樹木等から生じる木質バイオ
マス(ハードバイオマス)、及び主に農産物等から生じる草本系バ
イオマス(ソフトバイオマス)等が含まれる。木質系バイオマスの
具体例としては、杉及び檜等に代表される針葉樹に由来するもの、
ポプラ及び白樺等に代表される広葉樹に由来するものが含まれる。
草本系バイオマスの具体例としては、稲、麦及びトウモロコシ等に
由来するものが含まれる。また、植物バイオマスには、建築廃材及
び農産廃棄物等も含まれる。 

植物バイオマスに含まれる放射性セシウムは、セシウム137であ
っても、セシウム134であっても、その両方であってもよい。 
植物バイオマスから糖化液と固形残渣とを得る分解工程は、図2
示すように、糖化酵素を添加した湿式ミリング処理により行うこと
ができる。湿式ミリング処理は、植物バイオマスを媒体中に懸濁さ
せたスラリ状態として粉砕する。スラリの体積は、バイオマスの種
類及び処理装置の構成等の種々の要因によって変動するが、一例と
して元の植物バイオマスの体積の200%~300%程度となる。
処理装置には、例えばボールミル又はビーズミル等を用いることが
できる。効率良く粉砕するために、植物バイオマスは処理装置に投
入する前に5mm程度以下に粗粉砕しておくことが好ましい。 

湿式ミリング処理の際に添加する糖化酵素は、植物バイオマスの細
胞壁に含まれるセルロース及びヘミセルロース等を糖化する酵素で
あり、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼを挙げるこ
とができる。セルラーゼとは、β-1,4-グルカンのグルコシド結合
を加水分解する酵素である。セルラーゼには、セルロースの分子内
部から切断するエンドグルカナーゼ、セルロースの還元末端又は非
還元末端から分解しセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ、
及びセロビオースのグルコシド結合を切断しグルコースへと変換す
るβ-グルコシダーゼ等が含まれる。ヘミセルラーゼとは、植物体の
細胞壁を構成する多糖類のうちセルロース、ペクチン以外の多糖類
を分解する酵素である。ペクチナーゼとは、ペクチンを分解する触
媒機能を持つ酵素であり、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアー
ゼ、ペクチンエステラーゼ、及びペクチンメチルエステラーゼ等が
含まれる。これらの酵素は単独で用いても、組み合わせて用いても
よい。
 
糖化酵素の添加量は、処理する植物バイオマスの種類及び量、糖化
酵素の種類、装置の構造等により適宜決定すればよい。例えば、稲
わらの場合、植物バイオマス1g当たり200U~20000U程
度とすることができる。 
湿式ミリング処理に用いる媒体は、添加する酵素を失活させること
なく粉砕対象物をスラリ状態で保持できる液状のものであればよい。
例えば、水(塩等の添加物が含まれていても構わない)、有機溶媒、
及びイオン性液体などが挙げられる。pHを一定に保つために緩衝
液としてもよい。 湿式ミリング処理の実施条件は、粉砕対象物によ
り適宜選択すればよい。例えば、ビーズミルを用いる場合、媒体の
pHを2.0~11.0、媒体と粉砕対象物の重量比を1:1~
100:1、粉砕機のビーズ径を0.1mm~20mm、ビーズ周
速を0.3m/秒~50m/秒、スラリ流速を0.1L/分~10
L/分の範囲内で適宜選択すればよい。湿式ミリング処理の温度は、
酵素反応に適した温度とすればよく、10℃以上が好ましく20℃
以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。そして100
℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさら
に好ましい。 
湿式ミリング処理の時間は、経時的に粉砕物の粒度及びスラリ粘度
を測定しながら、任意の数値(平均粒度1μm以下が望ましい)と
なったところで終了すればよい。処理時間は、糖化率を高くする観
点から10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、60分
以上がさらに好ましく、100分以上がよりさらに好ましい。効率
の観点からは300分以下が好ましく、240分以下がより好ましく
180分以下がさらに好ましい。 

粉砕終了後、固液分離手段により液状の糖化液と固形残渣とに分離
する。固液分離手段として、遠心分離等を用いることができる。固
形残渣は洗浄してもよい。洗浄で生じた残渣洗浄液は糖化液と共に
液相部として次の液相部発酵工程に回すことができる。洗浄操作は
複数回行ってもよい。 
湿式ミリング処理により得られた固形残渣は、そのまま固相部とし
て固相部発酵工程に回すことができるが、再糖化処理することもで
きる。再糖化処理は、固形残渣にさらに糖化酵素を加えて行えばよ
い。再糖化処理の際に添加する糖化酵素は、湿式ミリング処理の際
と同じであっても、異なっていてもよい。糖化酵素の添加量は特に
限定されないが、元の植物バイオマス1g当たり、200U~20
000U程度とすることができる。処理温度は酵素反応に適した温
度とすればよく、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好まし
く、30℃以上がさらに好ましい。そして、100℃以下が好ましく、
80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。処理時
間は、必要とする糖化率に応じて選択すればよいが、糖化率を高く
する観点からは1時間以上が好ましく、10時間以上がより好まし
く、20時間以上がさらに好ましい。そして効率の観点からは50
時間以下が好ましく、40時間以下がより好ましく、30時間以下
がさらに好ましい。 

再糖化処理の後、固液分離手段により、再糖化液と固形残渣とに分
離する。固液分離手段として遠心分離等を用いることができる。再
糖化液は、湿式ミリング処理により得られた糖化液と共に液相部と
して次の液相部発酵工程に回すことができる。固形残渣に含まれる
放射性セシウムの量をさらに低減するために、再糖化処理した後の
固形残渣を洗浄してもよい。洗浄で生じた残渣洗浄液は糖化液と共
に液相部として次の液相部発酵工程に回すことができる。洗浄操作
は、複数回行ってもよい。再糖化処理した固形残渣は、固相部とし
て次の固相部発酵工程に回すことができる。 
再糖化処理は必要に応じて行えばよく、糖質の分離、及び固形残渣
側に残存する放射性セシウムの量の減量を湿式ミリング処理におい
て十分にすることができれば、行わなくてもよい。また、再糖化処
理は1回でもよく、2回以上行ってもよい。 

植物バイオマス中に含まれる放射性セシウムは、主に土壌中に含ま
れる放射性セシウム が植物の生長の際に植物の組織内に取り込まれ
たものである。従って、植物組織と結びついており、単に粉砕した
り、洗浄したりしただけでは植物バイオマスから取り除くことはで
きない。本実施形態においては、植物バイオマスを糖化酵素を添加
した状態で粉砕しており、植物組織を酵素により分解して糖化して
いる。このため、植物組織中の放射性セシウムを液相部側に移行さ
せることができる。放射性セシウムの除去処理を考えると、固形分
の中に含まれているよりも液状分に含まれている方が容易である。
従って、放射性セシウムをできるだけ液相部側に移行させることが
好ましく、放射性セシウムの50%以上を液相部側に移行させるこ
とが好ましく、70%以上移行させることがより好ましく、75%
以上移行させることがさらに好ましい。固相部側に含まれる放射性
セシウムを検出限界以下とすることが最も好ましい。 

分解工程により得られる液相部の体積は、バイオマスの種類及び処
理装置の構成等の種々の要因によって変動するが、一例として元の
バイオマスの体積の160%~260%程度となる。放射性セシウ
ムを含む液相部を発酵させる液相部において、液相部に含まれる糖
質等の有機物が微生物により分解され、メタンを含む気相部と、糖
質が消費された液相部廃液とが発生する。液相部発酵工程は、どの
ような方法としてもよいが、湿式のメタン発酵法が好ましく、例え
ば上向流式嫌気汚泥床(UASB)を用いて行うことができる。具
体的には、図3(掲載せず)に示すように、嫌気性微生物の集塊作
用を利用して活性の高い菌体をグラニュール(直径2mm~3mm
の粒状汚泥)として反応槽に大量に保持し、反応槽の下部から放射
性セシウムを含む液相部を注入し、嫌気状態で液相部中の有機物を
分解させればよい。液相部の供給量及び液相部中の有機物の濃度は
装置の処理能力に応じて適宜調整すればよい。 

反応槽内部に注入された液相部は、下部に沈殿しているグラニュー
ルの層に均一に拡散される。液相部中の有機物は分解され、メタン
ガス及び二酸化炭素等を含むバイオガスと、液相部廃液とが生成さ
れる。バイオガスが表面に付着したグラニュールはエアーリフト効
果で処理水と共に浮上するため、上部に設けられたセトラーにより
バイオガスを捕集することができる。液相部廃液とグラニュールと
を分離することにより、有機物をほとんど含まない液相部廃液を回
収できる。液相部廃液の体積は、処理装置の構成等の種々の要因に
よって変化するが、一例として元の植物バイオマスの150%~2
50%程度となる。液相部に含まれる放射性セシウムは、ほぼその
まま液相部廃液に移行する。有機物をほとんど含まない液相部廃液
は腐敗しにくいので所定の処理を行う前に長期保管することができ
る。

液相部中に含まれる放射性セシウムは、嫌気性微生物によるメタン
発酵にほとんど影響を与えず、放射性セシウムを含んでいても放射
性セシウムを含んでいない場合と同様にメタン発酵させることがで
きる。メタン発酵は、30℃~60℃程度の温度で行うことができ
る。このため、液相部に含まれる放射性セシウムが気化するおそれ
はほとんどなく、生成されるバイオガスに含まれる放射性セシウム
は検出限界以下となる。従って、得られたバイオガスは通常のプロ
セスにより得られるバイオガスと同様に、燃料等として用いること
ができる。

分解工程により得られる固相部の体積は、植物バイオマスの種類及
び処理装置の構成等の種々の要因により変動するが、一例として元
の植物バイオマスの30%~70%となる。糖化液である液相部を
分離した後の固相部は、まだ多量の有機成分を含んでいる。このた
め、次の工程である固相部発酵工程において,バイオガスを発生さ
せることができる。固相部発酵工程は、例えば乾式メタン発酵処理
とすることができる。乾式メタン発酵処理は水分含有率が80%以
下の条件で行うことができる。例えば、液相部を分離した後の固相
部を高温嫌気消化汚泥と混合し、嫌気性条件においてメタン発酵さ
せることができる。発酵温度は、45℃~60℃程度とすることが
できる。固相部の供給量及び発酵時間等は 、装置の構造及び処理能
力等に応じて適宜調整すればよい。例えば、固相部と汚泥とを1:
10~1:3程度の比率で混合することができる。発酵時間は20
日~50日程度とすることができる。 

固相部発酵工程においても液相部発酵工程と同様に、発生するバイ
オガスに含まれる放射性セシウムは検出限界以下となる。このため
通常のバイオガスと同様に燃料等として利用することができる。 
固相部発酵工程において発生する残渣は、固液分離により固形分で
ある固相部残渣と、固相部廃液とに分離できる。固相部に含まれる
放射性セシウムの5%~20%程度が固相部廃液に移行し、残りは
ほぼ全て固相部残渣に移行する。固相部廃液は有機物をほとんど含
まないため、腐敗しにくく長期に亘り保管することができる。また、
固相部残渣は腐敗しにくいリグニン等を主成分とするため、長期に
亘り保管することができる。固相部残渣を保管する場合は、水分量
が10%程度以下となるまで乾燥させることが好ましい。固相部廃
液及び最終的に乾燥した固相部残渣の体積は、元のバイオマスの種
類及び処理装置の構成等の種々の要因により変動するが、一例とし
て固相部廃液は元の植物バイオマスの20%~50%、固相部残渣
は乾燥状態で元の植物バイオマスの3%~10%程度となる。


液相部廃液及び固相部廃液に含まれる放射性セシウムは、物理化学
的な手法又は生物化学的な手法により除去することができる。例え
ば吸着剤を用いて除去することができる。放射性セシウムの吸着剤
として、ゼオライト、プルシアンブルー及びイオン交換樹脂等を挙
げることができる。メタン発酵により液相部廃液中の有機物は大幅に
低減されているため、吸着剤による放射性セシウムの除去を効率良
く行うことができる。また、重金属を吸着する光合成細菌等を用い
て放射性セシウムを除去することもできる。この場合、液相部廃液
に残存している有機成分を光合成細菌等の栄養源として用いること
ができる。放射性セシウムを検出限界以下又は規定値以下にまで除
去した後の液相部廃液は、通常の廃液として所定の処理をして廃棄
することができる。
液相部廃液と固相部廃液とを混合して放射性セシウムの除去を行う
ことができる。また、別々に放射性セシウムの除去を行うこともで
きる。また、液相部廃液及び固相部廃液の少なくとも一部を、分解
工程、液相部発酵工程又は固相部発酵工程にフィードバックしてリ
サイクル使用することもできる。

【実施例】
以下に実施例を用いて本開示の放射性物質を含む植物バイオマスの
処理方法をさらに具体的に説明する。以下の実施例は例示であり本
発明を何ら限定しない。

<放射性物質を含む植物バイオマス>
放射性物質を含む植物バイオマスとして、稲わら及び杉材チップを
用いた。稲わらに含まれる放射性セシウムの量は7000Bq/kg、
杉材チップに含まれる放射性セシウムの量は500Bq/Kgであ
った。
<分解工程>
粗粉砕した植物バイオマス50g、蒸留水445mL、及びpH
5.5のリン酸バッファー5mLを混合してスラリとした。これに、
糖化酵素としてセルラーゼであるOPTIMASH BG(GENENCOR社製)を
5mL(59225U)、ヘミセルラーゼであるOPTIMASH XL(GENENCOR
社製)を5mL(35650U)添加した。糖化酵素を添加したスラリー
を、ビーズミルを用いて所定の時間湿式ミリング処理した。ビーズ
ミルは、容量が0.15Lのセラミック製(アシザワファインテッ
ク社製、ラボミニスターLM2015)とし、直径0.5mmのジルコニ
ア製ビーズを用いた。湿式ミリングの処理温度は50℃とし、ミル
の周速は14m/sと した。
湿式ミリング処理の後、回収したスラリを固液分離し、1次糖化液
と固形残渣とを回収した。固形残渣に蒸留水を200mL~400
mLと、酵素液としてOPTIMASH BG(GENENCOR社製)を5mL(592
25U)及びOPTIMASH XL(GENENCOR社製)を5mL(35650U)とを添
加して50℃で保温しながらゆっくりと攪拌し、24時間糖化反応
を継続する2次糖化処理を行った。2次糖化処理の後、再び固液分
離し、2次糖化液を回収し固形残渣は蒸留水を加えて再懸濁し、再
度固液分離をした後に回収した。上清は残渣洗浄水として回収した。
稲わらについては1次糖化液、2次糖化液、洗浄水、固形残渣の計
4サンプル、杉チップについては1次糖化液、2次糖化液、固形残
渣の計3サンプルのそれぞれに含まれる放射能を計量し、湿式ミリ
ングによる放射性セシウムの移行性を調査した。放射能の計量は、
100mL容器に試料を充填し、ゲルマニウム半導体検出器により
行った。

植物バイオマスとして稲わらを用いた場合、120分の湿式ミリン
グ処理により、51%の放射性セシウムが1次糖化液に移行した。
120分間の湿式ミリング処理により得られた固形残渣をさらに2
次糖化することにより、放射性セシウムの18%が2次糖化液に移
行した。2次糖化後の固形残渣を洗浄した残渣洗浄水に放射性セシ
ウムの4%が移行し、最終的な固形残渣に含まれる放射性セシウム
は、元の稲わらの27%であった。
植物バイオマスとして杉チップを用いた場合、120分の湿式ミリ
ング処理により75%の放射性セシウムが1次糖化液に移行した。
120分間の湿式ミリング処理により得られた固形残渣をさらに2
次糖化することにより、放射性セシウムの25%が2次糖化液に移
行した。2次糖化後の固形残渣に含まれる放射性セシウムは検出限
界以下であった。

<液相部発酵工程>
放射性セシウムを含む稲わらから調製した液相部を図3に示すよう
な上向流式嫌気汚泥床(UASB)反応槽を用いてメタン発酵処理
した。液相部は、湿式ミリング処理により得た糖化液、2次糖化処
理により得た2次糖化液及び洗浄水の混合物とした。嫌気汚泥床は、
グラニュールを700mL~800mLとした。液相部は、化学的
酸素要求量(COD)が1200mg/Lとなるように希釈して嫌
気汚泥床に供給した。温度は35℃、滞留時間は6.0時間で運転
をした。

まず、放射性セシウムを含まない糖化液をUASB反応槽に供給し、
メタン発酵が正常に生じることを確認した。この場合のバイオガス
の生成量は約1400mL/L/日~1500mL/L/日であっ
た。放射性セシウムを含まない糖化液により約20日間運転をした後、
放射性セシウムを含む糖化液の供給を開始した。放射性セシウムを
含む糖化液(56Bq/L)の供給を開始した後も、バイオガスの
生成量に大きな変化は認められなかった。放射性セシウムを含む糖
化液の供給を開始して約24時間後に、UASB反応槽からの供給
液と廃水との放射能がほぼ同値になった。バイオガスに含まれる放
射性セシウムの量は、放射性セシウムを含む糖化液の供給を開始し
て24時間以上経過しても検出限界以下であった。廃水のCODは、
131mg/Lであった。

  <固相部発酵工程>
放射性セシウムを含む稲わらから調製した固相部を乾式メタン発酵
処理により安定化及び減容化した。固相部は、二次糖化処理を行っ
ていない湿式ミリング処理後の固形残渣とした。乾式発酵処理には
汚泥攪拌機能を有する実容量が約10Lの混合攪拌型攪拌槽を用い
た。汚泥には、広島県内の水処理センターから供試された余剰活性
汚泥の高温嫌気消化汚泥を使用した。本汚泥の含水率は78.5%、
強熱減量(volatile solids; VS)は0.857g/g-DWであった。
発酵温度は55℃とし、汚泥滞留時間は約30日とした。100g
の稲わら粉末から得られた固形残渣を1Lにメスアップして発酵槽
に投入し た。投入した試料の含水率は90%~95%、密度は
1050kg/m3、粘度は100000mPa・sであった。3
日毎に試料の投入と引き抜きとを行いながら85日間発酵処理を続
けた。
発酵処理後に引き抜いた試料を遠心分離により上清である固相部廃
液と、固形分である固相部残渣とに分離した。固相部廃液の質量は
600g、湿潤状態の固相部残渣の質量は390gであった。固相
部廃液及び固相部残渣について放射能量を測定した。放射能の計量
は、100mL容器に試料を充填し、ゲルマニウム半導体検出器に
より行った。
バイオガスの生成量は湿式ガスメータにより測定した。湿式ガスメ
ータは、液面上部から3~4室に別れた計量室と、スパイラルドラ
ムとを有し、入り口から入ったガスによるドラム軸の回転運動をメ
カカウンタにより積算して積算流量値を測定した。
処理期間中における稲わら1g当たりに換算したバイオガス生成量
は217mL/gであり、そのうちメタンの生成量は114mL/
gであった。湿式ガス流量計内の水について放射能量を測定するこ
とにより、バイオガス中の放射性セシウムの量を評価したが、検出
限界以下であった。100gの稲わらの体積は約800mLであっ
た。分解工程において、約1700mLの液相部と、約360mL
の固相部を得た。固相部を固相発酵処理することにより、約160
mLの固相部廃液と、約205mLの固相部残渣とが発生した。固
相部残渣を水分含有率が約10%となるまで乾燥したところ約48
mL(約36g)となった。元の稲わら100gの放射能量は70
0Bqであり、最終的な固相部残渣(36g)の放射能量は311
Bqであり、固相部廃液の放射能量は27Bqであった。従って、元
の稲わらに含まれる放射性セシウムの約44%(311Bq/70
0Bq)が固相部残渣に移行した。本実施例においては2次糖化処
理を行っていないが、2次糖化処理を行うことにより、固相部残渣
に移行する放射性セシウムの割合をさらに低減することができる。

 植物バイオマスの減容化率(%)は、以下の式により表すことがで
きる。
減容化率(%)=(バイオマス体積-固形廃棄物体積)/バイオマス
体積・・・式
本実施例の場合には固形廃棄物体積は、固相部残渣の体積となる。
厳密には、液相部廃液及び固相部廃液から放射性セシウムを除去す
る際に放射性セシウムを含む廃棄物が発生するが、固相部残渣と比
べて量が少なため、バッチが小さい場合には無視することができる。
従って、本実施例においては固形廃棄物体積は48mLとなり減容
化率は、94%となる。この結果を基に、1バッチ600kgのバ
イオマスを処理するプラントの収支をシミュレーションすると、植
物バイオマスの体積は約4800Lとなり、約290L(220kg、
水分含有率10%)の固相部残渣が発生する。液相部廃液及び固相
部廃液の体積は、約12000Lとなり、放射性セシウムを除去す
る際に発生する固体の廃棄物の割合を0.5%とすると約60Lと
なる。従って、固形廃棄物体積は、290L+60L=350Lと
なり、減容化率は、93%となる 

【産業上の利用可能性】
本開示の放射性セシウムを含む植物バイオマスの処理方法は、有効
活用しつつ減容化できるようにすると共に、その放射性セシウムを
容易に除去できるような形態にでき、放射性セシウムを含む植物バ
イオマスの処理方法等として有用である。

【まとめ】
室内でも30℃を超えるなか。気温が26℃を下回る深夜を含め3
日に渡る作業を終え、高速・高品質(コスト)木質(植物)バイオ
マスのメタン発酵を「ゼロカーボンシステム設計事業」(構想)の
基本骨子をまとめことができた。後は、①コスト収支、②物質収支、
③エネルギー収支、④カ-ボン収支への落とし込みとなる。課題とな
るのは、厳密な環境事前影響審査を担保とする木質(植物)遺伝子
編集開発の進捗が残件することとなる。
                        この項つづく

高濃度過酸化水素を合成する光触媒樹脂
7月25日、大阪大学の研究グループは,太陽光照射下,水とO2を原
料として非常に高いH2O2生成活性を示す,Nafion含有レゾルシノー
ル-ホル
ムアルデヒド(RF@Nf)光触媒樹脂を開発。 H2O2は漂白剤
や消毒剤として重要な化学物質であるほか,燃料電池発電の燃料と
して利用できるため,エネルギーキャリアとして注目されている。
そこで,太陽光エネルギーにより水とO2からH2O2を製造する(H2O+1
/2O2→H2O2, ΔG°=+117kJmol–1)光触媒反応が注目を集めている。
しかし,通常,光触媒として用いられる金属酸化物半導体では,水
の酸化(2H2O→O2+4H++4e–)とO2の二電子還元(O2+2H++2e–→H2O2)
を同時に進めることは困難だった。


図1. 本研究で開発したRF@Nf樹脂の生成メカニズム 
【概要】
研究グループは、汎用の合成高分子であるRF樹脂に着目した触媒開
発を進めてきた。本来絶縁体であるRF樹脂を高温水熱法で合成する
と半導体光触媒となることを初めて見出したほか,酸性水溶液中で
の合成により,太陽エネルギー変換効率0.7%という高い効率でH2O2を
生成することを見出した。 さらに,RF樹脂に導電性高分子(ポリチ
オフェン)を複合することにより,太陽エネルギー変換効率を0.9%
まで向上させた。
しかし,長時間の光触媒反応を行なった場合には,生成したH2O2が
光触媒上で酸化(H2O2→O2+2H++2e–)あるいは還元(H2O2+2H++2e–
→2H2O)されることにより分解されてしまうため,高濃度の溶液を
製造することは困難だった。したがって,効率よくH2O2を製造しな
がら,分解反応を抑制するための方法論が求められていた。 研究
グループは今回,汎用のイオン交換型高分子であるNafion(Nf)を
RF樹脂に複合したRF@Nf樹脂を合成した。樹脂が小粒子化されるこ
とにより,光触媒活性が向上して効率よくH2O2が生成するほか,樹
脂表面が疎水化されることによりH2O2の分解が抑制され,高濃度(
0.06wt%,16mM)のH2O2を製造できることを見出した。 これにより
水と空気を原料として,使いたい場所で使いたい量だけH2O2溶液を
オンデマンド合成する小型H2O2製造デバイスの実現が期待できる。
研究グループは,今回の光触媒設計を応用して,さらに高活性なH2
O2合成触媒の創製が期待できるとしている。


図2.(a)RFおよび(b)RF@Nf光触媒上での光触媒メカニズム
(a) RFではH2O2の生成および分解が進んでしまう。(b) 小粒子の形
成により比表面積が大きくなりH2O2生成が促進されることに加え、
疎水性表面へH2O2が接近しにくくなり分解が抑制される。

図2(a)に示すように、RF樹脂を水に懸濁させてO2存在下で光照射
を行うと水の酸化とO2還元によりH2O2が生成するが、同時にH2O2が酸
化あるいは還元されることにより分解されてしまいます。一方、図
(b)に示すように、RF@Nf樹脂の場合、樹脂が小粒子化されることに
より比表面積が大きくなるため、水の酸化およびO2の還元を進める
活性サイトが増加し、H2O2の生成が促進されます。一方、Nfの疎水
性部分を取り込むことにより樹脂表面は疎水化されているため、生
成したH2O2は樹脂表面に接近しにくくなり、分解されにくくなる。

図3. 疑似太陽光(300–2500 nm)を照射した場合のH2O2生成量
RF@Nf光触媒樹脂を用いると高濃度のH2O2溶液を得ることができる。 
図3に示すように、RF樹脂を水に懸濁させ、O2を流通させながら疑似
太陽光を照射すると、H2O2生成速度は次第に小さくなってしまう

一方、RF@Nf樹脂は高いH2O2生成速度を示すとともに、H2O2の分解が
抑制され、RFを用いた場合の1.5倍の濃度のH2O2溶液を合成すること
ができる。この濃度は、これまでに報告された粉末光触媒における
最大のH2O2濃度である。したがって、汎用のイオン交換型高分子を利
用して合成したメタルフリー触媒が、人工光合成型H2O2製造に有効で
あることが実験的に確認でき。
【成果インパクト】
すごい発明である。殺菌剤・漂白剤となるH2O2溶液を、使いたい場
所で使いたい量だけ簡便に合成するオンデマンド合成が可能となり、
小型H2O2製造デバイスなどに社会実装できそうである。
【関連論文】
タイトル:“Nafion-Integrated Resorcinol-Formaldehyde Resin Photocatalysts
for Solar Hydrogen-Peroxide Production”, 米国化学誌「JACS Au」

著者名:Yasuhiro Shiraishi, Masahiro Jio, Koki Yoshida, Yoshihiro Nishiy-
ama, Satoshi Ichikawa, Shunsuke Tanaka, and Takayuki Hirai

DOI: https://doi.org/10.1021/jacsau.3c00262 



世界初100MWフレキシブルペロブスカイトモジュールプロジェクト
7月14日午前、厦門市海滄区人民政府、福建自由貿易試験区廈門地域
管理委員会、大正(江蘇)マイクロ・ナノ技術有限公司は100メガ
ワットのフレキシブル(軽量)カルシウム チタン鉱石部品生産拠
点プロジェクトの調印・除幕式。 プロジェクトの第1段階では3億
元を投資する予定。

風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【POPの系譜を探る:2021年代】


今夜の寸評:先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。




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続・オールバイオマスシステム完結論 ①

2023年07月24日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。




続・オールバイオマスシステム完結論 ①

超臨界二酸化炭素はその臨界条件の到達のしやすから,現在最もよ
く使われている超臨界流体であり,様々な分野で研究,実用化が進
められている。
また,環境問題が人類にとって大きな課題となって
いる現在,超臨界二酸化炭素処理は脱有機溶媒,脱廃水のクリーン
な条件下で反応を行う,環境的に極めて有利な反応プロセスである。
しかも、処理で使用する工業用二酸化炭素は石油精製等の過程で大
気中に放出されるはずだった二酸化炭素を回収したものであり,ま
た,超磁界処理後の二酸化炭素再利用が何度も可能である点でも,
環境に配慮した処理技術であるといえる。

超臨界乾燥システムとは
エアロゲル製造工程

【参考技術情報】

.木質材料を対象とした超臨界二酸化炭素処理技術の研究動向,
 松永正弘, 木材工業 Vol.67. No. 4. 2012 
➲超臨界二酸化炭素の利用法
2.1 抽出・分離
超臨界二酸化炭素の溶解特性はヘキサンのよう な無極性溶媒に近
く,分子量が 500以下の比較的 小さい無極性の化合物であればほぼ
完全に溶解す る 2)。また,弱秘性の物質でもかなり高い飽和溶 解
度を有する O ただしその溶解特性は温度と圧力によって大きく変化
しさらにエントレーナ(供 溶媒)としてアルコールや水を少量加える
ことで 極性の高い物質も可溶となる。そのため,温度・圧力・エン
トレーナの組み合わせ次第で, 目的の物質のみを選択的に抽出する
ことが可能となる。この特徴を活用した超臨界二酸化炭素の抽出・
分離技術は,超臨界二酸化炭素処理が工業的に最も成功した利用法
であり,特に食品や香料等の分野 においては既に多数実毘化されて
いる。例えば,コーヒーの脱カフェイン処理や,ビールのホップエ
キス抽出などは. 1970年代末にドイツやアメリカで実用化さ
れ,現
在も 10.000~50.000 t/ year規模のプラントが稼働している。



これらのプラントを含め,第2表に示すように,超臨界二酸化炭素を
用いた大小様々なプラントが 国内外で稼働している。また,液体よ
りも高い拡 散係数と低い粘度を持つ超臨界二酸化炭素を移動 相と
して用いた超臨界流体クロマトグラムは既に商品化されており,高
速・高分離分析を可能にしている。


2.オールバイオマスシステム完結論, 2015.02.01 極東極楽



-------------------------------------------------------------
1.特開2015-123080 バイオマスを原料とする糖化液製造方法及
 び糖化液製造装置 川崎重工業株式会社
【概要】
超臨界水又は亜臨界水によってセルロース系バイオマスを加水分解
して糖類とする場合、熱水処理するセルロース系バイオマススラリ
ー中のバイオマス濃度(固形物濃度)が高い方が、同じエネルギー
によって加熱可能なバイオマス量が増加するため、エネルギー効率
が高い。また、バイオマス濃度が高い方がより高濃度の糖化液が得
られるため、発酵工程に供する糖化液を濃縮する際の濃縮負荷も軽
減し得る。通常、バイオマススラリーの固形物濃度は、5~10質量%
に調整される。ところが、エネルギー効率を向上させるためにセル
ロース系バイオマススラリーの固形物濃度を高めると、スラリーの
流動性が低下して、配管を用いてスラリーを輸送することが困難と
なる

このことは、連続式反応器を用いてバイオマススラリーを連続的に
加水分解する上で大きな障害となる。また、セルロース系バイオマ
ススラリーのバイオマス濃度を高めると、間接熱交換器における熱
伝導率が低下するという問題も生じる。連続式反応器を用いてバイ
オマススラリーを連続的に熱水処理する場合、高温蒸気と十分に撹
拌してバイオマススラリーを十分に加熱すると共に、熱水処理時間
を一定に維持するために、加熱されたスラリーを反応器内部でプラ
グフローとして移動させる必要がある。バイオマススラリーを高濃
度とする場合には、撹拌強度を従来よりも上げなければならないが、
単に撹拌強度を上げるだけではプラグフローが崩れてしまい、未反
応のバイオマススラリー又は糖類の過分解産物が連続式反応器の出
口へと排出されることになる。その結果、糖化率が低下することに
なる。

特開2006-68606に開示されている処理設備は、反応器出口のスラリ
ーに糖化液を混合するため、反応器出口の閉塞は防止できても、高
濃度のバイオマススラリーを反応器内でプラグフローさせるための
構成を備えていない。特開2012-22に開示されている処理装置も 高
濃度のバイオマススラリーを反応器内でプラグフローさせるための
構成を備えていない。ここで、反応器から取り出された高温高圧の
バイオマススラリーは、すぐに亜臨界状態以下の温度に冷却しなけ
れば、糖類が有機酸に過分解され、糖類の収率が低下してしまう。
国際公開第2008/50740の糖化分解方法及び糖化分解装置はバッチ式
であるが、本発明者等は、セルロース系バイオマススラリーの固形
物濃度を高めた場合、フラッシュタンク入口にある減圧弁が目詰ま
りしやすくなることを確認した。従ってセルロース系バイオマスス
ラリーの固形物濃度を高めることは高温高圧スラリーをフラッシュ
蒸発によって冷却する際にも問題を引き起こす。特開2006-68606及
び 特開2012-22には、フラッシュ蒸発による高温高圧スラリーの冷
却は、開示されていない。

本発明は、連続式反応器によってセルロース系バイオマスのスラリ
ーを超臨界状態又は亜臨界状態で熱水処理することにより糖化スラ
リーを得る糖化液製造方法であって、スラリーのプラグフローを維
持しつつ、熱水処理後に高温高圧スラリーをフラッシュ蒸発させる
際に減圧弁の目詰まりが起こりにくい製造方法の提供を目的とする。
本発明はまた、そのような製造方法の実施に適した糖化液製造装置
の提供も目的とする。

図2のごとく、セルロース系バイオマスのスラリーを連続式反応器
によって連続的に熱水処理する際に、連続式反応器の前段部では強
力に撹拌し、後段部分では推進力の弱い撹拌装置によって撹拌し、
プラグフローを維持する。糖化スラリーは、好ましくは糖化液を用
いて希釈した後、破砕装置によって固形物を破砕し、フラッシュ蒸
発させ、連続式反応器によってセルロース系バイオマスのスラリー
を超臨界状態又は亜臨界状態で熱水処理することにより糖化スラリ
ーを得る糖化液製造方法であって、スラリーのプラグフローを維持
しつつ、熱水処理後に高温高圧スラリーをフラッシュ蒸発させる際
に減圧弁の目詰まりが起こりにくい製造方法、また、そのような製
造方法の実施に適した糖化液製造装置を提供する。


図2.実施例の糖化液製造装置の模式図
【符号の説明】1,21:連続式反応器 2:連続式反応器の入口
(投入口) 3,33:回転軸 4:撹拌装置(スクリュー) 5:
連続式反応器の出口(取出口) 6,10,26:経路 7:減圧弁
8:フラッシュタンク 9:フラッシュ経路 11:固液分離装置
22:撹拌装置(ピン羽根) 23:破砕装置 24:スクリーン
25:破砕刃 27:糖化液供給配管 28:糖化スラリー供給配管
31:混合室 32:撹拌装置 34:糖化スラリー入口 35:糖化
液入口 36:破砕装置の出口 37:回転軸支持部材 41:間接加
熱型シェルアンドチューブ型反応器 42:原料スラリー加熱チュー
ブ 43:間接加熱型シェルアンドチューブ型反応器の入口(投入
口) 44:間接加熱型シェルアンドチューブ型反応器の出口(取
出口) 45:蒸気入口 46:凝縮水出口 51:前段部 52:前
段部の出口 53:移送経路 54:後段部の入口 55:後段部
56:連続式反応器 57:回転軸 M,M1,M1a,M1b,
M2:モータ

2.特開2021-169080 微細気泡生成方法及び装置、並びに試料の
 微
細化方法及び装置 株式会社HotJet
【概要】
下図3のごとく、水が亜臨界状態にあり、気体が超臨界状態にある
気液混合流体を冷却して気液混合流体の温度を前記気体の臨界温度
未満にすることによって、気液混合流体中に微細気泡を発生させる。
その後、気液混合流体を加熱して気液混合流体の温度を前記気体の
臨界温度以上にすることによって、気液混合流体中に微細気泡を溶
解させる。これらの処理を交互に繰り返すことにより、気液混合流
体中で微細気泡を繰り返し発生させ、臨界水を用いて微細気泡を発
生させる微細気泡生成方法及び装置、並びにその微細気泡を用いて
試料を微細化する試料の微細化方法及び装置を提供する。


図3.微細気泡の発生及び消滅を説明するための説明図

3.特許7179304 発泡樹脂成形体及びその製造方法 株式会社カミ
ーノ他 

【概要】
図1のごとく、発泡樹脂成形体が、バイオマス粒子と熱可塑性樹脂
を含み、この発泡樹脂成形体に対するこのバイオマス粒子の含有量
が1~70質量%の範囲であり、表面が波紋状又は樹木の年輪状の
外観を呈し、この発泡樹脂成形体の変形量が、発泡成形直後のこの
発泡樹脂成形体の5%以下である。バイオマス粒子と熱可塑性樹脂
を含む発泡樹脂成形体の製造方法が、バイオマス粒子を含有する熱
可塑性樹脂組成物を溶融混練する工程と、溶融混練された熱可塑性
樹脂組成物と超臨界流体を混合する工程と、射出成形工程を含み、
金型のゲートと発泡樹脂成形体の寸法が特定の条件を満たす、美麗
な外観を有し、成形後の変形が抑制されている熱可塑性樹脂発泡体
とその製造方法を提供する。

図1 発泡樹脂成形体の製造に用いる射出成形装置の一実施態様を
示す説明的断面図
【符号の説明】 11・射出成形装置、13・金型、29・キャビテ
ィ、32・スプルー、 33・ゲート、34・ランナー

特表2020-522590 ナノセルロース材料の製造プロセス エスエー
 ピーピーアイ バイオケムテック ビーヴィ
【概要】
セルロースは、植物材料などの再生可能な資源から広く入手できる
材料である。セルロースは、緑色植物の一次細胞壁において繊維と
して存在し、通常、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン及びその
の物質との混合物の形態で見られる。セルロース繊維自体は、
晶領域と非晶領域
のみからなり、結晶領域は、セルロースナノ繊維
(CNF)とナノ結晶性セルロース(NCC)として知られ、両方
とも非晶領域から分離でき、材料用途と、CNF又はNCCのゲル
が、例えば、ゲルとして化粧品などにおいて有用であるその他の用
途において、強化用に非常にふさわしくする機械的特性を発揮する。

しかしながら、木材パルプなどのセルロース系材料からセルロース
ナノ繊維(CNF)又はナノ結晶性セルロース(NCC)のいずれ
かの製造は、技術的に厳しく多大のエネルギーを要し、それが、セ
ルロースナノ繊維(CNF)又はナノ結晶性セルロース(NCC)
のいずれかを製造する分野において、最低限の有害化学物質を実際
に含む簡単かつエネルギー効率の良い両方法に絶え間ない要望があ
る理由である。

EP2712364には、モルホリン、ピペリジン又はこれらの混
合物の水溶液におけるセルロース系前駆体材料の膨潤により、水性
モルホリン及び/又はピペリジンの膨潤剤特性に応じて、セルロー
ス系前駆体からナノセルロース材料を剥離するのに必要な微細流動
化工程数を削減することにより、エネルギー消費量を削減できるこ
とが提案されている。しかしながら、得られたナノセルロースの水
性懸濁液は、再分散可能なナノセルロース粉末をもたらすために、
さらに処理しなければならず、技術的に困難を伴うことがある。例
えば、前記プロセスを介して得られたナノセルロースが超臨界流
を用いて乾燥すべき場合には、モルホリンとピペリジンとは事前
に除去されなければならないが、その理由は、それらが二酸化炭素
などの最もよく使われる超臨界流体と化学的に反応する傾向があり、
別の不活性処理流体と置換しなければならないからである。加えて
モルホリンとピペリジンとは、十分注意して取り扱わなければな
ない有害物質
であり、商品化前、特に、ナノセルロースの医薬品用
途又は食品用途向けの商品化前には、ナノセルロース材料から完全
に除去しなければならない。

Green Chem.,2015,17,3401-3406には
シルヴィオ(Silvioe)らにより、微細流動化前に、膨潤剤として、
塩化コリン/尿素による木材セルロースの前処理により、前処理さ
れた木材セルロースからナノ繊維化セルロース(NFC)を剥離す
ることが記載されている。しかしながら、微細流動化前に、前処理
された木材セルロースは、まず、前処理後に深共晶溶媒を除去する
ために、脱イオン水により洗浄し、その後にしか、このようにして
得られた前処理された木材セルロースの水性懸濁液を微細流動化で
きない。このようにして得られたナノ繊維化セルロース(NFC)
の水性懸濁液は、その後、凍結乾燥してさらなる分析用試料を調製
する。凍結乾燥によるナノセルロースからの水分の除去によって、
しかしながら、容易には再分散できないかつレオロジー特性が劣る
ナノセルロースをもたらすことになる。 このように、好ましくは、
害化学物質に頼らずに、全エネルギーを削減できるナノセルロー
スの簡易化された製造プロセスを提供
が望ましい。
下図1のごとく、原料としてセルロース系繊維状材料から非誘導体
化又は誘導体化ナノセルロース材料の全製造プロセスのエネルギー
消費を削減でき、かつ使用される処理液が原料のより安全な処理を
可能にし、さらにまた、超臨界流体と除去すべき液体との間の化学
反応なしに、よく使われる超臨界流体によるその後の噴霧乾燥を可
能にするプロセスを提供する。前記プロセスは、例えば、水性溶液
中に容易に再分散できる固体微粒子材料などの固体状のナノセルロ
ース材料をもたらし、ナノセルロース材料の均質分散液をもたらす
ことにより、例えば、液体又はゲルを形成し、その分散液は、レオ
ロジー特性の面から、新しく(つまり、未乾燥の)調製されたナノ
セルロース分散液とほとんど同一である。このことは、低転移温度
混合物(LTTM)である膨潤剤を用いて、例えば、処理溶媒に可
溶である深共晶溶媒を形成するようにし、処理溶媒が、原料として
使用するセルロース系繊維状材料と、誘導体化又は非誘導体化ナノ
セルロース材料の両方に非可溶性であることにより、達成できる。

------------------------------------------------------------

図1.パルプ濃度1重量%の再分散ナノセルロースの2つの試料に
 対するせん断速度に応じたせん断応力を示すグラフ
塗りつぶし記号が本発明による乳酸エチルにおいてナノセルロース
の懸濁液から噴霧乾燥された再分散ナノセルロースを示し、塗りつ
ぶしなしの記号がナノセルロースの水性懸濁液から噴霧乾燥された
際の再分散ナノセルロースを示す。
------------------------------------------------------------
本発明の目的は、セルロース系繊維状材料から非誘導体化又は誘導
体化ナノセルロース材料を製造するプロセスであって、
a)膨潤剤と処理溶媒とを含む非水処理液の連続相に、セルロース
系繊維状材料の懸濁液を供給する工程と、
b)セルロース系繊維状材料を膨潤させて、非水処理液の連続相に
おいて、膨潤セルロース系繊維状材料の懸濁液を形成するようにす
る工程と、
c)非水処理液の連続相において、前記膨潤セルロース系繊維状材
料の懸濁液を任意に精製して、膨潤セルロース系繊維状材料の純度
を高める工程と、
d)処理液から膨潤剤を除去して、処理溶媒の連続相において、セ
ルロース系繊維状材料の懸濁液を形成するようにする工程と、
e)膨潤かつ任意精製セルロース系繊維状材料に高せん断粉砕を施
して、膨潤かつ任意精製セルロース系繊維状材料から非誘導体化ナ
ノセルロース材料を剥離し、処理溶媒の連続相において、非誘導体
化ナノセルロース材料の分散液を形成するようにする工程と、
f)処理溶媒の連続相においての非誘導体化ナノセルロース材料の
分散液と、超臨界流体と、を接触させて、処理溶媒を除去し非誘導
体化ナノセルロース材料を単離するようする工程と、ここで、好ま
しくは、前記超臨界流体が、超臨界二酸化炭素又はアンモニアであ
る工程と、を含み、膨潤剤が、低転移温度混合物(LTTM)及び
特に深共晶溶媒であり、前記低転移温度混合物及び特に前記深共晶
溶媒が処理溶媒に可溶であり、処理溶媒がセルロース系繊維状材料
と非誘導体化ナノセルロース材料とに対して非可溶性であることを
特徴とする、プロセスを提供することである。

✔本件の特徴は「セルロースアスペクト比100」が鍵語になってい
 ることである。
------------------------------------------------------------
5.特表2017-517596 油成分を沈殿させることなくpHを調整す
 るプロトンポンプとして水と臨界未満/超臨界の二酸化炭素を
 用いた解乳化及び原料とその画分からの生化学物質の抽出 サウ
 ジ アラビアン オイル カンパニ

【概要】
原油とその画分は、様々な化学品を生産するための供給原料として
用いられている。将来、様々な高価値が付加された生化学物質も、
水の存在下での原油とその画分のバイオプロセスから商用的に生産
可能である。油田の原油は、多くの場合、水とエマルジョンを形成
する。

エマルジョンは、通常は混合することのできない2つ以上の液体の
混合物であって、一つの相が他の連続相中に不連続的に分散してい
る。油/水エマルジョンは様々なタイプがあり、油中水型(W/O)
エマルジョン(水が分散相で油が連続相)と、水中油型(O/W)
エマルジョン(油が分散相で水が連続相)や、水中油中水型(W/
O/W)エマルジョンと油中水中油型(O/W/O)エマルジョン
のようなより複雑なエマルジョンがある 。大抵、油田で生成する
エマルジョンはW/Oエマルジョンである。 

これらのエマルジョンの中に、粘性をもたらすいくつかの表面活性
物質が存在する。さらに、水中に存在するイオン(H+、OH-、
Cl-など)と相互作用する電荷を有する油相からの多くのタイプ
の界面活性成分(基、COOHなど)が存在することにより、耐久
性のあるフィルムが原油/水の界面において通常は形成される。
原油とその画分におけるエマルジョンは、固有の成分から形成され
る。
原油中に存在し或いは形成又は産出される、高価値の生化学物質は
多種多様の用途を有しており、それには制癌剤用途、掘削流体、美
容外科、飲用水からの重金属の除去がある。しかし、原油とその画
分などの基質で産出されるこれらの固有の生化学物質は、高度に界
面活性な化合物であり、それらは通常は、破壊(すなわち、解乳化
)が非常に困難な水-油系の頑強なエマルジョンを作り出す。した
がって、混合物から生化学物質を抽出するのは困難である。これら
の場合の多くにおいて、従来の抽出(解乳化)法は、系の高い粘性
と界面活性剤の強い両親媒性特性のために、役に立たない。 
さらに、原油の解乳化のためのいくつかの方法があるが、これらの
方法は通常はアスファルテン-油中の表面活性巨大分子の一種-の
沈殿を招き、設備の機能不全を招く。特に、アスファルテンの沈殿
は、パイプラインとポンプにアスファルテンの沈着を引き起こし、パ
イプラインを減らして無価値にし、ポンプを損傷させる。したがっ
て、アスファルテンの沈殿を避けることが望まれる。 
それゆえに、高価値の生化学物質の抽出と、さらにアスファルテン
の沈殿を避けるという両者に効果的な解乳化法が必要とされている。

本発明は、原油とその画分での生化学反応の結果として生じる場合
に、原油とその画分の界面活性な生化学製品(例えば、ラムノリピ
ド)を抽出するための方法を対象とする。より詳細には、本発明は、
pHを調整するプロトンポンプとして臨界未満/超臨界のCO2を
用い、アスファルテンの沈殿も避ける、解乳化法に関する。 
本発明において、臨界未満から超臨界のCO2は、油-水相の界面
と、最終的には水相の中に容易に拡散するように、原油エマルジョ
ン(例えば、水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油
型エマルジョン)の中に導入され、それによって、系の温度と圧力
に応じた大きなpHの低下を引き起こす。注入されたCO2は、つ
ぎにエマルジョンのフィルムの界面を含む水相の至るところで水分
子と相互作用することにより水相で炭酸を形成する。系のエマルジ
ョンの界面でのpHの低下は、エマルジョンの界面における界面活
性分子(例えば、アスファルテン、レジン酸、ナフテン酸、ラムノ
リピド)と水の間の電荷分布のバランスを変化させ、分子の表面活
性が非活性化する。この非活性化は、界面活性成分が水分子への親
和性を失うため、エマルジョンの界面膜を弱くすることになる。

図1のごとく、プロトンポンプとして臨界前/超臨界のCO2を
用いた生化学品の生産時に供給原料として用いられるときの、原油
とその画分から界面活性生化学物質を抽出するための解乳化方法。
方法はpH調整ステップも含み、それによって、解乳化と生化学物
質の水相への沈殿を生じさせ、しかし、原油又は生物資源を由来と
するレジン様溶媒の先天的な添加によって、アスファルテンの析出
を防ぐ。生化学物質は、つぎに水相から温度変化又はいくつかのそ
の他の技術を経由して抽出される。
原油は、つぎに穏やかに撹拌又は混合され、それによりエマルジョ
ンが凝集する。エマルジョンが凝集すると、それらのサイズは、重
力が油と水(水性)の画分を分離する臨界点に達する。このシナリ
オにおいて、ラムノリピド分子は、水相に移動し、プロトンポンプ
として作用する水系における加圧されたCO2の存在が維持される。
凝集によって油と水相が分離されると、ラムノリピドは、温度変化
や水の蒸発によって水相から集めることができる。アスファルテン
の沈殿は、混合物中のアスファルテンに対する芳香族レジンの比を
臨界値よりも高い値に維持することでこの方法においては避けられ
、それは、解乳化工程の前か最中に原油のエマルジョンに油レジン
の補給剤(アスファルテン巨大分子の溶解剤として配備される)を
導入することで達成される。

□.特表2017-503651 二酸化炭素抽出法による抽出補助材を含むグ
リース基材からのパーフルオロ化ポリエーテル油の回収 ザ ケマー
ズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
【概要】
本開示は、パーフルオロポリエーテルの抽出方法に関する。この方
法は、(a)抽出ゾーンで、液体又は超臨界の二酸化炭素を含む溶
媒を増粘剤、抽出補助材、及びパーフルオロポリエーテルを含む潤
滑グリースと接触させ、抽出されたパーフルオロポリエーテルを含
む抽出液を生成する工程と、(b)抽出されたパーフルオロポリエ
ーテルを抽出液から回収する工程とを伴い、回収後の抽出されたパ
ーフルオロポリエーテルは、約2重量%以下の増粘剤を含む。

6.特開2020-189947 セルロース多孔質体の製造方法 本田技研工
 業株式会社他
【概要】
セルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略記することもあ
る)は、セルロース系原料であるパルプから、化学処理、粉砕処理
等により製造される繊維である。セルロースナノファイバーは、植
物由来の材料であるため、廃棄時等の環境負荷が小さく、また、軽
量、高強度、透明性、チクソ性、ガスバリア性、熱安定性等に優れ
ていることから、各種用途への活用が期待されている。一般にセル
ロースナノファイバーを含む多孔質体は、セルロースナノファイバ
ーを分散した水分散体を乾燥することで得られる。しかしながら、
蒸発乾燥では、乾燥時に働く表面張力により、セルロースナノファ
イバー同士が凝集するため、得られる材料は非多孔質の高密度材料
となっていた。そこで、乾燥時の凝集を抑制する方法として、セル
ロース微細繊維を含む水分散体を急速凍結させた後に乾燥させて、
セルロース微細繊維の多孔質体を作製する方法が提案されている(
特開2003-082535)。また、セルロース微細繊維を有機溶媒に膨潤
または分散させた状態で乾燥させる方法も提案されている(特開201
2-001626)。また、カルボン酸塩型の基を有するセルロースナノフ
ァイバーの水分散液に酸を添加することで物理ゲルを調製し、得ら
れた物理ゲルから水を乾燥除去することで、流体として空気を含む
エアロゲルを得る方法も提案されている(特開2012-001626参照)。
この方法によれば、高比表面積のセルロース多孔質体が得られる。
特開2012-001626文献においては、まず物理ゲル中の水を、水より
も低沸点の有機溶媒に置換し、その後、置換した有機溶媒を除去す
る。置換に用いる溶媒としては、水と相溶可能なアルコール類であ
る、メタノール、エタノール、1-プロパノール、iso-プロパ
ノール、tert-ブタノールが挙げられている。
【課題】
しかしながら、特許文献1に記載された、水分散体を急速凍結乾燥
させる方法においては、セルロース微細繊維を含む水分散体を金属
板に噴霧してから乾燥させるため、得られる多孔質体の形態は粒子
状となり、用途が限られていた。また、特許文献1に記載された、
有機溶媒に膨潤または分散させた状態で乾燥させる方法においては、
分散媒である水を一度エタノールに置換して、その後にさらにt‐
ブチルアルコールに置換するため、分散媒の置換操作が煩雑となっ
ていた。また、特許文献2に記載された、物理ゲル中の水を有機溶
媒に置換した後に有機溶媒を除去する方法では、溶媒を置換する工
程を複数回実施する必要があった。そして、全ての置換工程を完了
させるまでには、何日も必要となっていた。このため、製造コスト
と製造時間が莫大となることが予想され、産業レベルで実施するこ
とは難しい状況と思われる。本発明は上記の背景技術に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、より簡易な方法によって、短時間で
セルロースナノファイバーを含む多孔質体を製造する方法を提供す
ることにある。

図1のごとく、特定の有機溶媒を含むセルロースナノファイバーゲ
ルを作製し、当該ゲルから有機溶媒を除去する。具体的には、常温
常圧で液体であり、臨界温度が200℃以下である超臨界乾燥溶媒
とセルロースナノファイバーとを含む、常温常圧で存在可能なゲル
体を、超臨界状態にして、超臨界乾燥溶媒を除去してセルロース多
孔質体を得る、より簡易な方法によって、短時間で、セルロースナ
ノファイバーを含む多孔質体を製造する方法を提供する。

図1.実施例1で得られたセルロース多孔質体の写真
------------------------------------------------------------
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るセルロース多孔質体の製造方法
について説明する。第1実施形態に係るセルロース多孔質体の製造
方法は、セルロースナノファイバーと超臨界乾燥溶媒とを含むゲル
体を、超臨界状態にして、超臨界乾燥溶媒を除去してセルロース多
孔質体を得る、超臨界乾燥工程を有する。このとき、超臨界乾燥溶
媒は、常温常圧で液体であり、臨界温度が、セルロースナノファイ
バーの耐熱温度である200℃以下であり、ゲル体は、常温常圧で
存在可能であることを特徴とする。第1実施形態に係るセルロース
多孔質体の製造方法によれば、より容易に、かつ短時間で、セルロ
ースナノファイバーを含む多孔質体を得ることができる。また、超
臨界乾燥溶媒を除去する前のゲル体の取り扱いが容易であることか
ら、作業性も良好となる。 
[超臨界乾燥工程]
本発明のセルロース多孔質体の製造方法は、超臨界乾燥工程を有す
る。超臨界乾燥工程では、セルロースナノファイバーと超臨界乾燥
溶媒とを含むゲル体を、超臨界状態にして、超臨界乾燥溶媒を除去
することにより、セルロース多孔質体を得る。 さらに具体的には、
超臨界乾燥工程においては、セルロースナノファイバーと超臨界乾
燥溶媒とを含むゲル体を、超臨界乾燥溶媒の臨界点以上の温度、圧
力に上昇させることで超臨界乾燥溶媒を除去し、これにより、セル
ロース多孔質体を形成する。 
[セルロースナノファイバー]
本発明で用いるセルロースナノファイバーは、主として植物の細胞
壁に由来するセルロースからなる繊維である。パルプ等の木材のみ
ならず、各種バイオマスから作製することができる。例えば、針葉
樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンターやコットンリント
等の綿系パルプ、麦わらパルプやバガスパルプ等の非木材系パルプ、
バクテリアセルロース、ホヤから単離されるセルロース、海草から
単離されるセルロース等を例示することができる。 
なお、本発明で用いるセルロースナノファイバーは、化学処理(改
質)したセルロースナノファイバーを含む。また、1種単独のみな
らず、2種類以上の異なるタイプのセルロースナノファイバーを併
用してもよい。
本発明で用いセルロースナノファイバーの数平均繊維径は、1~1
00nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、1.5
~50nmであり、特に好ましくは、2~10nmである。数平均
繊維径が1nm未満では、ナノファイバーの単繊維強度が弱いため
網目状構造体を形成することが困難となる。100nmを超える場
合には、得られる多孔質体の透明度や断熱性能が低いものとなる。

[超臨界乾燥溶媒]
本発明に用いられる超臨界乾燥溶媒は、常温常圧で液体であり、臨
界温度が200℃以下のものである。本発明においては、このよう
な超臨界乾燥溶媒を用いることにより、より容易に、かつ短時間で、
セルロースナノファイバーを含む多孔質体を得ることができる。 
このような超臨界乾燥溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、
ハイドロフルオロカーボン(HFC)等が挙げられる。本発明に用
いられる超臨界乾燥溶媒は、中でも、無色透明な液体であることが
好ましい。無色透明な超臨界乾燥溶媒であれば、得られるセルロー
ス多孔質体が無色透明となる。このため、適用できる製品が拡大し、
様々な分野に展開可能となる。 

さらに、本発明に用いられる超臨界乾燥溶媒は、中でも、フッ素系
溶媒であることが好ましい。フッ素系溶媒のハイドロフルオロカー
ボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等は臨界圧
力が低い溶媒であるため、超臨界乾燥に必要なエネルギーを小さく
することができ、また、乾燥時間をより短くすることができる。 
さらには、本発明に用いられる超臨界乾燥溶媒は、ハイドロフルオ
ロエーテルであることが好ましい。ハイドロフルオロエーテルは、
常温常圧で液体であり、臨界温度が200℃以下であり、無色透明
であり、臨界圧力が低く、また、安全性も高い。ハイドロフルオロ
エーテルとしては、例えば、スリーエム社製ノベック(登録商標)
AGC社製アサヒ クリン(登録商標)等が挙げられる。

[ゲル体]
本発明のセルロース多孔質体の製造方法に適用されるゲル体は、セ
ルロースナノファイバーと超臨界乾燥溶媒とを含むゲル状の物質で
あり、常温常圧で存在可能なものである。常温常圧で存在可能であ
ることにより、取り扱いが容易となり、生産性向上に起因する。
なお、本発明のセルロース多孔質体の製造方法においては、ゲル体
は、主としてセルロースナノファイバーを含んでいればよく、その
他の繊維等を含んでいてもよい。また、セルロースナノファイバー
は、1種単独のみならず、2種類以上の異なるタイプのセルロース
ナノファイバーを含んでいてもよい。

ゲル体は、セルロースナノファイバーが形成する三次元的な網目構
造の間に、流体として超臨界乾燥溶媒が存在する「オルガノゲル」
となっている。本発明のセルロース多孔質体の製造方法においては、
ゲル体を超臨界状態にして、超臨界乾燥溶媒を除去する。このため、
得られるセルロース多孔質体は、セルロースナノファイバーが形成
する三次元的な網目構造の間に、流体として空気が存在する「エア
ロゲル」となる。
ゲル体の製造方法は、セルロースナノファイバーと超臨界乾燥溶媒
とを含むゲルとなれば、特に限定されるものではない。例えば、カ
ルボン酸塩型の基を有するセルロースナノファイバーを水系溶媒に
分散させてセルロースナノファイバー水分散液を調製し、得られた
セルロースナノファイバー水分散液に酸を加えることで、基をカル
ボン酸塩型の基をカルボン酸型の基に置換することで、セルロース
ナノファイバーと水とを含む水ゲル体を作製し、その後に、水ゲル
体に含まれる水を超臨界乾燥溶媒に置換する方法が挙げられる。 

[セルロース多孔質体]
本発明のセルロース多孔質体の製造方法によって得られるセルロー
ス多孔質体は、上記の通り、セルロースナノファイバーが形成する
三次元的な網目構造の間に、流体として空気が存在する「エアロゲ
ル」である。本発明において、超臨界乾燥溶媒として無色透明の液
体を用いた場合には、得られるセルロース多孔質体も無色透明とな
る。このため、適用用途が拡大する。 
なお、セルロース多孔質体の物性は、超臨界状態とする条件や、用
いる超臨界乾燥溶媒の種類に影響を受ける。セルロース多孔質体の
用途等に応じて、適宜、所望の物性を発現させればよい。 
(用途)
本発明によって得られるセルロースナノファイバーを含む多孔質体
の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、断熱材、吸音材、
吸着剤、機能性フィルター、電子デバイス材料、再生医療材料等、
様々な分野に展開することができる。
以下、割愛(後略)。
                        この項つづく

  

 
  

技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中 ㉞
2028年ディスプレーデバイス市場,16.6兆円
7月19日、富士キメラ総研は,TFT LCD,OLED,マイクロLEDといっ
たディスプレーデバイスの世界市場について調査し,その結果を「
2023ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」にまとめた。2022年
はTVやPCモニター,ノートPCなどの販売が低迷したことから,市場
は前年比減少。2023年はTV向けが回復しているほか,HMD向け,車載
向けなどは堅調に伸びている一方で,IT機器向けパネルは需要縮小
が続いているとして,市場は15兆5,838億円を見込む。タイプ別では
TVやPCモニターなど大型用途において主力であるa-Si TFT LCDのウ
ェイトが高いが,前年に続き減少するとみるほか,ハイエンドTV,
ハイエンドノートPCで採用が多いW-OLEDやOxide TFT LCDの落ち込み
が大きいとみるものの,ハイエンドスマートフォンにおけるRGB蒸着
プラスチックOLEDの採用増加により,市場は前年比微増に留まると
みる。今後はハイエンドTVで採用されるQD-OLEDやスマートフォンの
最上位機種で採用が進むRGB蒸着フォルダブルOLED,スマートグラス
での採用増加が期待されるマイクロOLED,次世代ディスプレーとし
て注目されるマイクロLEDなどの増加を予想する。


図1.電解発生酸(EGA)がアミンモノマーとアルデヒドモノマーの縮
合反応を促進し、電極表面において共有結合性有機構造体(COF)の
膜が形成される。

共有結合性有機構造体を温和に合成・薄膜化
7月21日、東京工業大学は,多孔質材料である共有結合性有機構造
体(Covalent Organic Framework:COF)を電気化学的に合成すると
同時に電極表面に固定化する手法を開発。COFは,有機分子からなる
モノマー同士の共有結合により形成される二次元もしくは三次元状
の結晶性材料。軽元素で構成されるため軽量であることに加え,規
則的に分子が配列した多孔質構造由来の大きな表面積を有している。
【要点】
1.多孔質有機材料の合成と、電極上での薄膜化を一段階で達成 
2.温和な条件下、酸触媒の発生と有機モノマーの重合の時空間制御
 に成功
3.電極材料やデバイス応用のプロセス技術としても期待 
【概要】
COFは、熱的・化学的安定性に優れるため、ガスの吸着・分離材料や
触媒、電極材料などへの応用が期待されている。しかしながら、従
来の合成法では、生成したCOFが不溶・不融なバルク状粉末として得
られるため、成型・加工性が乏しいという課題があった。
常温・常圧の温和な条件で電気化学的に酸を発生させ、この電解発
生酸(Electrogenerated Acid: EGA)[用語2]
を触媒としてモノマー[用
語3]
の縮合反応を行うことにより、電極近傍でCOFを合成することを
着想した。実際に、1,2-diphenylhydrazine由来の酸を発生させ、その
発生量や場所を簡便に制御することが可能であることを実証した。
さらに、アミンモノマーおよびアルデヒドモノマーを原料としたCOF
合成実験を行ったところ、電極近傍で形成したCOFが電極表面に析出
し、薄膜状の多孔質材料を一段階で得ることに成功した。本研究手
法は、COFの薄膜合成やその形態制御といった研究展開を可能にする
特に、COF膜を電極上に直接固定化できることは、電極材料やセンシ
ング材料等のデバイスに応用する際のプロセス技術としても有望で
あると期待されている。
【展望】
常温・常圧の温和な条件下、DPH由来の電解発生酸がアミンモノマ
ーとアルデヒドモノマーの縮合反応によるイミン結合形成を促進し
、対応するCOF膜を電極上に直接的に作製し、固定化できることを実
証した。本手法は、電解発生酸の生成を時空間的に制御することが
可能であることから、従来法では不可能とされてきた、COFの電極上
での薄膜合成やその形態制御といった、研究展開が可能である。特
に、COF膜を電極上に直接固定化できることは、電極材料やセンシン
グ材料等のデバイスに応用する際のプロセス技術としても有望であ
ると期待される。


風蕭々と碧いの時


John Lennon Imagine

【POPの系譜を探る:2021年代】


今夜の寸評:
先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。

 

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暑中お見舞い申し上げます。

2023年07月22日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。




夏ばてでサプリメント服用対応
夜の睡眠が安定せず、熟睡できていない。この暑さだから朝のスト
レッチとウォーキングをすまし、掃除などササット済ませ、マイピ
ーシに向かうと冷房効果もあり無性に眠く、<レム状態>に嵌る日
が続いている。これって夏の寒暖差疲れじゃない?と想い近くのド
ラック・ストアにマイバイクをとばし「キューピーコーワの新製品
購入、まず、「キューピーコーワi プラス」を半量テスト服用を昨
日からはじめる。効果・効用については後日、逐次掲載。成分は、
次のように記載されている。
------------------------------------------------------------
ヘプロニカート: 血行改善剤
一般名: ヘプロニカート(JAN)、Hepronicate(JAN、INN);化学名
2-Hydroxymethyl-2-hexyl-1, 3-propandiol trinicotinate:分子式:C28
H31N3O6

ベンフォチアミン:筋肉・神経の働きを円滑/活性ビタミンB1 
オキソアミヂン末:血流やビタミンの吸収を促進
L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム:眼精疲労、肩こり
ガンマ-オリザノール・シアノコバラミン・トコフェロールコハク
エステルカルシウム:
有効成分が協調して働くことで、筋肉・神経の働きを円滑にし、肩
こり、腰痛などを改善
添加物:ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、クロスポビ
ドン、ステアリン酸Mg、ヒプロメロース、白糖、アクリル酸エチル
・メタクリル酸メチル共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニ
ルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
、タルク、アラビアゴム、炭酸Ca、ゼラチン、酸化チタン、カルナ
ウバロウ 
-----------------------------------------------------------


人間が耐えられる暑さは何度


カリフォルニア州にあるデスヴァレーでは、7月16日に53.3℃を記
録。アリゾナ州のフェニックスでは19日連続で43.3
℃以上を記録
しており、32.2℃を下回らない夜が連日続く。そんな猛暑日が続く
中で思い浮かぶ疑問が、「若くて健康な成人であっても通常の日
常生活ができなくなるほど暑くなるのは、何度からなのか?」と
いう素朴な疑問。
その答えは温度だけでなく湿度も関係する。湿度と温度の組み合
わせが人間へ及ぼすリスクを測定しているが、湿度と温度の組み
合わせは、これまで考えてきたよりも低いレベルであってもかな
り危険なことが明らかになりつつる。 ペンシルビア州大学の実験
によると人体が過熱すると、熱を体内から放出するために皮膚に
血流を送り出そうするとき、心臓はより激しく動かし、放熱のた
めに発汗すると体液が減少する。このような状態が続くと熱中症
になり、生命を脅かす危険性が生じる。この臨界環境限界が先行
研究の「湿球温度35℃」よりもさらに低いことが明らかにする。
研究チームによると、臨界環境限界は「湿球温度31℃湿度100%で
31℃)」である。 以下、同研究チームが割り出した臨界環境限界
を示すグラフを参考にすると、横軸が温度、縦軸が湿度で、緑色
のエリアが臨界環境限界を下回る「安全な湿球温度」、赤色のエ
リアが熱中症などの危険性が高まる「危険な湿球温度」を表す。
ただし、これはあくまで体温の過度の上昇を防ぐことだけに基づ
いた条件であることに注意が必要。温度や湿度がさらに低くても、
心臓やその他の体のシステムにストレスがかかる可能性は十分に
るという。別の研究では、皮膚に血液を送り出す時、深部体温が
上昇するよりかなり前のタイミングで心拍数が上昇し始めること
が明らかになっている。これらの制限を超えることが必ずしも最
悪のケースにつながるわけではないが、長期にわたる曝露は高齢
者や慢性疾患を持つ人などにとっては危険な結果につながる可能
性があると注意を呼びかけている。

湿球温度セ氏35度は「湿度100%で35℃」あるいは「湿度50%
で46℃」に相当する。
【関連技術情報】
原 題:Evaluating the 35°C wet-bulb temperature adaptability threshold
      for young, healthy subjects (PSU HEAT Project)
掲載機: Journal of Applied PhysiologyVol. 132, No. 2  28 Jan  2022
               //
https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00738.2021





  

 
  

● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
特異点真っ直中 ㉝


AIでイネの収量を推定する技術
7月21日、岡山大学らの共同研究グループは、AIを用いた画像解析
によって,イネの収量を高い精度で推定する技術を開発。
【概要】
イネは,わが国を含む多くの国の主食として欠かせない作物。今後
予想される食料需要の増大や気候変動を踏まえると,イネを安定的
に増産していくことが,ますます重要になってくると考えられる。
そのための基本データとして,生産現場において土地面積あたりの
イネの収穫量(収量)を正確に把握することが求められる。
これまでイネの収量を測定するためには,一部のイネを刈取り,乾
燥させたのち可食部(籾や玄米)の重量を実際に測定する方法が主
流。これには多大な時間と労力が必要であり,様々な理由により刈
取り調査自体が不可能な場合もある。そのため,イネの生産現場に
おいて収穫前に収量を把握することは容易ではなかった。研究グル
ープは,AIを用いた画像解析によって,イネの収量を高い精度で推
定する技術を開発した。高性能のAIを構築するためには,良質かつ
大量のデータを収集し,AIに学習させる必要がある。この研究では
まず,イネ研究者の国際的なコンソーシアムを構築し,様々な品種,
地域,栽培環境でのイネの画像と,その画像に写った範囲のイネ収
量データを世界各地で収集した。 その結果,400以上の品種,日本
やアフリカなど7か国・20の地域,20,000点以上のイネ画像からなる
膨大なイネ収量-画像データベースを構築することができた。この大
規模データベースをAIに学習させることで,イネの画像のみから収
量を推定するモデルを開発することに成功した。完成したモデルは
日本やアフリカなど多様な環境で栽培されたイネ収量を,R2=0.69
という高い精度で推定できることが分かった。
【成果/展望】
この技術を用いれば,可視画像,すなわち市販のデジタルカメラや
スマートフォンで撮影する「写真」のみからイネ収量の推定が可能。
その際,他の高価な機材や専門知識は一切必要ない。そのため誰に
とっても非常に使いやすい,汎用的な技術だとする。
この技術を基盤としたイネ生育収量推定用スマートフォンアプリケ
ーション「HOJO」が,iOSおよびAndroidにおいて公開されており,
今後の利用拡大が期待されている。
関連論文】
論 文 名:Deep learning enables instant and versatile estimation of rice
       yield using ground-based RGB
images
掲 載 紙:PlantPhenomics
D O I:10.34133/plantphenomics.0073
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電気光学変調ベース光周波数コムを安定化
~高速・大容量な光通信への応用やマイクロ波発生・評価装置の精
度向上に貢献~
7月21日、日本電信電話株式会社らの研究グループは、電気信号で
レーザー光の強度や位相を変調することで発生させる光周波数の物
差しにおいて、その目盛りとなる周波数のさらなる安定化に成功。

【概要】光周波数コム(光コム)※1は、周波数軸上でくし(コム)
状の輝線スペクトルを持つ光信号であり、光の周波数計測や光から
マイクロ波への精密な周波数変換などに利用。光コムの周波数間隔
をfrep、光コムの周波数間隔を仮想的に0まで掃引したときに0から
もっとも近い周波数(キャリアエンベロープオフセット周波数、以
下CEO周波数)をfceoと定義すると、光コムの周波数fnは自然数nを用
いて、fn=fceo + n × frepと記述できる(下図2)。

周波数が安定化された光コムは、ファイバーコム※2やチタンサファ
イアレーザー※3を用いて実現されてきたが、これらの光コムの典型
的な周波数間隔(frep)は数十~数百MHzであり、コムモード一本一
本を個別に分離・制御できず、光通信への応用※4は困難であった。
 この問題に対して同グループは、電気光学変調器(EO変調器)※5
に種光源となるCWレーザー※6を入力して発生させる光コム(EOコム
※7の研究を行う。EOコムは周波数間隔が数十GHz程度と大きく、コ
ムモードの分離・制御が可能なことから、光通信への応用に適して
いる。また、EO変調器に印加するマイクロ波周波数を選ぶことで周
波数間隔が容易に変えられるため、応用範囲を広げられる。一方で
EOコムは周波数軸上で種光源から離れるにつれてマイクロ波のノイ
ズが重畳し、周波数が不安定になるため、周波数を安定化する必要
がある(図3)。

NTTと東京電機大学はこれまでもEOコムの周波数を安定化する技術に
ついて研究してきました。※8従来の方法では周波数の異なる2つの
レーザーを用いているが、レーザー間での周波数ドリフト※9があり
EOコムの安定性に対して改善の余地があった。(図4)
今回、研究グループはレーザー1台を種光源として利用しEOコムで
はこれまで難しかったCEO周波数を検出し、その値が一定となるよ
うにEO変調器に印加するマイクロ波周波数へフィードバックするこ
とによって、EOコムのさらなる安定化に成功した(図4)。
【要点】
(1)多段のEO変調によるSN比の高いEOコムの生成(図5)

EOコムでは1パルスあたりのエネルギーが小さいため、通常長い高非
線形性ファイバーを用いて広帯域な光コムを発生させます。一方で
この方法を使用すると光コムのSN比が小さくなり、CEO周波数の検出
が難しくなります(検出方法については技術の詳細1を参照)。今
回、7台の位相変調器※10を用いてサイドバンドを広げた後に、短い
高非線形性ファイバーを用いることで、広帯域でSN比の高いEOコム
を生成した。
(2)2/3オクターブ帯域の光コムでCEO周波数が検出可能な2f-3f自
己参照干渉法の適用(NTT)(図6)


図6. 自己参照干渉法

従来のf-2f自己参照干渉法では、光コムを周波数fから2fまで広帯域
化し、周波数fの2倍波を生成し、周波数が2f付近での干渉信号を取る。
今回の2f-3f自己参照干渉法では、光コムを周波数fから3f/2広帯域化
し、周波数fの3倍波と周波数3f/2の2倍波を生成し、周波数が3f付近
での干渉信号を取る。これにより、CEO周波数を検出するために必要
な光コムの帯域幅を低減できる。研究グループでは、NTT独自の技術
であるデュアルピッチPPLN導波路を用いた2f-3f自己参照干渉法を利
用しました(図7、技術の詳細2を参照)。


図7.デュアルピッチPPLN導波路



CEO周波数の揺らぎを周波数カウンタ※11で見積もる(図8)。
実験の結果、CEO周波数の揺らぎが測定時間に反比例した。これはE
OコムでCEO周波数が安定化できている直接的な証拠である。また、
フィードバックされたマイクロ波の位相ノイズ※13を測定することで
、EOコムの安定度を評価しました(図9)。実験の結果、マイクロ波
(周波数:frep=25GHz)の位相ノイズが高精度な位相雑音測定器※14
の測定限界以下まで低減した。特に、2016年の報道発表時と比べる
と、ノイズレベルが10分の1以下に低減した。これら一連の測定結果
から、マイクロ波の安定度が市販の高精度水素メーザー※15に匹敵す
ると見積もられた。


さらに、波長1397nmにおける狭線幅レーザーと周波数安定化されたE
Oコムとの干渉信号を取ることによって、EOコムの線幅を評価した。
実験の結果、種光源(周波数:fs)から数えて811本目のEOコムの線
幅が300Hzであり、デジタルコヒーレント通信で必要なレーザー線幅
よりも3ケタ程度小さい値が得られた。本結果により、通信のさらな
る高速化に対しても十分対応可能な光通信用の光源が得られたと考
えられた。
【展望】
今回、周波数間隔が大きいEOコムでもCEO周波数の安定化が可能なこ
とを実証した(表1)。また、EOコムの線幅がデジタルコヒーレン
ト通信で必要なレーザー線幅よりも十分に狭いことを示した。通信
のさらなる高速化に伴い、より緻密なレーザー線幅の制御が求めら
れている。本研究では複数台の光通信用光源を1台の実験系で提供す
ることが可能となり、EOコムを活用した高速・大容量な光通信への
応用が期待される。
さらに、マイクロ波の位相ノイズを高精度な位相雑音測定器の測定
限界以下まで低減化することに成功した。これにより、マイクロ波
発生・評価装置の精度向上やGPS信号が届きにくい場所でのタイムキ
ーピング※16への活用が期待される。
今後、NTTではEOコムのさらなる周波数安定性や利便性の向上をめざ
します。また将来的には、高精度なマイクロ波信号を配信する技術
を開拓し、位置測定やタイムスタンプの誤差を減らすことで、リア
ルタイムで正確なデータが求められる分野(例:交通制御・航空管
制や金融取引など)に資するテクノロジーの実現をめざす。


【用語】
※1光周波数コム(光コム);周波数軸上では、くし(コム)状のス
ペクトルを持つ光信号だが、時間軸上では、繰り返し周波数frepの
パルスレーザーです。パルスの中では、電場は高周波で振動してい
る。パルスごとの電場の位相のずれがキャリアエンベロープオフセ
ット位相であり、CEO周波数と線形の関係にある。周波数(fceoと
frep)が安定化された光コムは、2005年にノーベル物理学賞を受賞
した革新的な光技術。 ※2ファイバーコム;共振器がすべて光ファ
イバーで構成されている光コム。 ※3チタンサファイアレーザー;
共振器内のレーザー媒質に人工的に造られたチタンサファイア結晶
を使用した光コム。 ※4光通信への応用:ここでは、高密度に波長
多重な光伝送用の光源としての利用を想定しています。EOコムは国
際電気通信連合が勧告している25GHzなどの周波数間隔に合わせる
ことができる。 ※5電気光学変調器(EO変調器)電気(マイクロ波
)によって、光の強度や位相などを変調するために使われる光学デ
バイス。
※6CWレーザー:レーザーの出力が時間で変化せずに一定の値のまま
出力されるタイプのレーザーで、単一の周波数をもつレーザー。
※7EOコム:EO変調器を用いて発生される光コム。
EO変調器にCWレーザーを入力すると、EO変調器の電気光学効果によ
りCWレーザーに強度変調や位相変調を加えることができるす。これ
らの変調により、CWレーザーを中心としてサイドバンドが生成され、
光コムが生成されます。 ※82016年の報道発表 周波数の異なる2つ
のレーザー(種光源と参照用光源)を用い、マイクロ波のノイズが
重畳したコムモードと参照用光源との周波数差(fbeat)が一定値に
なるようにマイクロ波へフィードバックすることで、frepの周波数
安定化を実現しました。詳細は以下参照。https://www.brl.ntt.co.jp/J/
2016/05/latest_topics_201605171837.html
当該ページを別ウィンドウで
開く。
※9周波数ドリフト一定時間内における周波数の緩やかなシフトま
たは変化のこと。
※10位相変調器:マイクロ波によって光の位相を変調させるEO変調
器です。なお、図5の強度変調器はマイクロ波によって光の強度を変
調させるEO変調器。
※11周波数カウンタ:マイクロ波の中心周波数を計測する測定器。
※12アラン偏差:中心周波数の揺らぎを光の周波数で規格化した
値です。 ※13位相ノイズ:マイクロ波の純度を表す尺度です。中
心周波数から一定値離れた位置(オフセット周波数)における周波
数成分で表現し、値が小さいほどノイズ成分の少ない優れた信号と
いえる。
※14位相雑音測定器:マイクロ波の位相ノイズを測定する測定器。
※15高精度水素メーザー;中性の水素原子の原子線を用いたメーザ
ーです。スペクトルの線幅が狭いので10-13程度の周波数安定度が
得られ、周波数標準として使われている。
※16タイムキーピング;GPS信号がない状態で時刻を正確に保持す
ること。 ※17波長計:光の波長(または周波数)を計測する装置。

【関連論文】
掲載誌:Scientific Reports
論文タイトル:"Optical-referenceless optical frequency counter with twelve-
 digit absolute accuracy"

著者:Atsushi Ishizawa, Tadashi Nishikawa, Kenichi Hitachi, Tomoya
 Akatsuka & Katsuya Oguri


図1.測定対象とした全固体電池の模式図(左上)とその充放電曲線(右
上)、CT-XAFS法により可視化した、充放電サイクル時の充電・放電後
における3次元充電量マップ(下)。図中の赤い/青い領域はそれぞれ、充
電量が高い/低い領域を表す。充放電曲線では読み取れなかった劣化
の空間分布およびその経時的進行を、3次元的に可視化することが可能
となった。
東北大,放射光で蓄電池劣化過程を非破壊追跡
7月19日、東北大学らの共同研究グループは、コンピュータ断層撮影―
X線吸収微細構造法を用いて,充放電サイクル中の蓄電池電極内の容
量劣化の3次元的な空間分布およびその時間進展を非破壊かつ定量的
に追跡できる手法を開発。
【要点】
1.蓄電池の電極は極めて複雑な微細構造を有しており、その中で生じ
 る劣化も空間的・時間的に不均一なため、その挙動を正確に計測する
 ことは極めて困難。
2.本研究では、放射光を利用した最先端の化学イメージング技術を駆
 使し、充放電による蓄電池電極劣化の経時的進行を3次元でとらえる
 新技術を開発した。
3.本技術は、劣化が、電極内のどこで、いつ、どのように起こるかを詳
 細に理解することを可能にするため、全固体電池など次世代型蓄電池
 の長寿命化に貢献することが期待されている。
【概要】
 スマートフォンなどの携帯電子機器の充放電を繰り返すと、次第に電
池残量の減りが速くなります。この大きな原因の一つとして、これらの機
器に搭載されている蓄電池の蓄電容量などの性能が、繰り返し充放電
に伴い、次第に劣化していくことが挙げられる。このような性能劣化のメ
カニズムを理解することは、リチウムイオン電池や、全固体電池をはじ
めとする次世代型蓄電池の長寿命化を実現する上で重要な課題となっ
ている。
【成果】
本研究では、大型型放射光施設SPring-8のBL37XUで得られる高輝度
なX線を活用し、最先端の化学イメージング技術であるCT-XAFS法を駆
使することで、充放電サイクル時に、蓄電池電極内の数百µm3~数mm
3ほどの同一観察領域における活物質の充電状態(Li量)の3次元的な空
間分布およびその時間進展を、数µm、数十分の空間・時間分解能で非
破壊かつ定量的に追跡できる手法を開発した(図1)。

これにより、蓄電池の劣化に関する5次元的な情報を非破壊で取得す
ることが初めて可能となりました。本手法により得た一連のデータに対し
差分画像解析を行うことで、各充放電過程において、どこでどの程度
劣化が生じたかを3次元的に可視化できます(図2(a))。さらに、例えば
充放電サイクル初期にどのような反応履歴を辿った箇所が、後のサイク
ルでより劣化しやすいか、といった、電極劣化と過去の反応履歴との関
係も調べることができます。それに加え本手法では、電極の微細構造の
情報も同時に取得できるため、電極のどこでどのような劣化が起こりや
すいかといった、劣化と電極の微細構造との関係も分析できます(図2(b))。
このように電極内の同一観察領域における反応の進展を、蓄電池充放
電時に非破壊で追跡できるという本手法の特長により、電極の劣化が、
いつどこでどのように生じたかを電極微細構造や過去の反応履歴と絡
めて詳細に分析することが初めて可能となりました。これにより既存の
手法では得られなかった蓄電池の劣化メカニズムに関する重要な情報
が得られる。

図2.図2. (a)3次元充電量マップの差分解析の模式図、(b)電極の劣化
 と、電極微細構造および反応履歴との相関分析の一例。


本成果は、2023年7月14日(ドイツ時間)に、マイクロからナノメートルス
ケールの解析技術専門誌Small Methods誌に掲載した。
【展望】
今回開発した手法で蓄電池の劣化要因を特定することにより、従来のト
ライ&エラーに頼ってきた蓄電池開発から脱却し、迅速かつ効率的に蓄
電池の蓄電容量の向上および長寿命化が可能になると期待される。ま
た、本技術は、高い拡張性・汎用性を有しており、蓄電池のみならず燃
料電池や触媒など、様々なデバイス・材料の長寿命化への貢献も期待
できる。
 

風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【POPの系譜を探る:2021年代】



月明かり昇る刻
灯る赤提灯
祭囃子の合図
ふわり蝶が誘い出す
(ちょいと覗いて見てごらん)
迷い込めば抜け出せない
(楽しいことがしたいなら)
おいでませ極楽浄土
歌えや歌え心のままに
アナタの声をさあ聞かせて
踊れや踊れ時を忘れ
今宵共にあゝ狂い咲き



『 I Left My Heart in San Francisco 』
作曲: ジョージ・コウリー(George Cory
作詞:ダグラス・クロス(Douglass Cross
-----------------------------------------------------------------------------------------
素敵なパリも
どこか悲しげな灰色に見える
ローマの栄光も遠い昔の話
マンハッタンは
ひどく孤独で居場所がなかった
帰ろう 入り江の我が街へ
僕の心はサンフランシスコに残したまま
丘高く 僕を呼んでいる
そこでは小さなケーブルカーが
星空へ向かって昇っていく
朝霧で空気が冷えても
気にしない
愛する人が待つサンフランシスコ
青く風吹く海の上
黄金の太陽が僕に輝く....
The loveliness of Paris
S
eems somehow sadly gay
The glory that was Rome is of another day
l've been terribly alone and forgotten in
Manhattan
l’m goin' home to my city by the bay l
left my heart in San francisco
High on a hill tcalls to me
To be where little cable cars
Climb halfway to the stars
The moming fog may chill the air
l don't care
Mylove waits there
ln San Francisco
Above the blue and windy sea
When l come home to you
San Francisco
Your golden sun will shine for me。

1962年、ニューヨーク生まれ。51年に「ビコーズ・オブ・ユー」
が大ヒットし、62年には「霧(思い出)のサンフランシスコ」で
世界的に不動の名声を得る。カントリーやブルースなど幅広いジ
ャンルの音楽を取り入れ、イタリア系らしい豊かな声量と華麗なス
テージで聴衆を魅了。98年に82歳で死去した同じイタリア系のフラ
ンク・シナトラと一時代を築いた。来日経験も多い。米音楽界最高
の栄誉であるグラミー賞の受賞は19回に上り、生涯業績賞も獲得。
2014年にレディー・ガガさんとの共作アルバムを発表。近年までコ
ンサートを行うなど、精力的に活動した。 霧のサンフランシスコ
」など数々の名曲で知られ、米音楽界の「レジェンド(伝説)」と
も称された歌手トニー・ベネットさんが21日、ニューヨーク市内
で死去した。96歳だった。米メディアが報じた。死因は明らか
になっていないが、アルツハイマー病を患っていたという。本名は
アントニー・ドミニク・ベネデット(Anthony Dominick Benedetto)。

 18歳の時に徴兵され、第二次世界大戦の最後の2年間を過酷な戦況
と気候のドイツ戦線で過ごす。20歳で退役後ニューヨークに戻り、
演劇関係の教育機関、アメリカン・シアター・ウィングに入学、今
に至るオペラ風の歌唱法(ベルカント唱法)を身に付け、その頃当
時の大スター・シンガー、パール・ベイリーに見出され、1950年に
コロムビア・レコードと契約。1951年に「ビコーズ・オブ・ユー」
がいきなり全米チャートで10週連続1位を記録、スターダムに駆け
あがる。 全米アルバム・チャート1位の最年長記録保持者であり、
アルバムをリリースした史上最高齢の人物として
ギネス世界記録を
もつ。
しかし、1960年代半ばに登場したビートルズの流行と、それに続く
70年代の大衆音楽リスナー層のロックへの大きな傾斜によるスタン
ダード・ポップやジャズの人気凋落の影響を受け、ベネットの人気
は低迷。その後、流行最先端のTVナイト・ショーに出演するなどし
て大々的な露出を図り、若年層へのアピールをはじめた。
これが功を奏し、1994年には、MTVアンプラグドに出演し、その模
様のライヴ・アルバムがヒットを記録、グラミー最優秀アルバム賞
を受賞し、第一線へのカムバックを果たす。プロの歌手になる前に
は商業イラストレーターとして生計を立てていたこともあって画才
に優れ、余技ながら画家としてもたびたび個展を開いている。その
腕前は彼のCDのブックレットにも活かされており、アルバムで共演
経験もあるピアニスト、ビル・エヴァンスのライブアルバムのジャ
ケットにもベネットのペンによる肖像画が使われているから驚く。
「想い出のサンフランシスコ」(原題:I Left My Heart in San Fran-
cisco
)は、1953年にニューヨーク市ブルックリンでジョージ・コウ
リーとダグラス・クロスによって書かれたポップス曲である。ト
ニー・ベネットのトレードマークとなった歌として知られている。
この曲は、ベネットのシングル曲『Once Upon A Time(昔々)』の
B面に収録されたものだった。『想い出のサンフランシスコ』はビ
ルボード・ホット100で19位まで上昇している。
Golden 50's, Beatles Feaver と続く、小中高生時代の梅田界隈は洋楽で
溢れたわたしの黄金時代にあり、フランク・シナトラ、コニーフラ
ンシスなどのイタリア移民系シンがをはじめジャズ、カントリーウ
エスタン、カンッオーネ、フレンチポフス、坂本九。ミュジカル
ソングが懐かしく情緒豊かに存在し深みを刻む。

長きに渡り有り難うございました。
                      南無阿弥陀仏


今夜の寸評:
先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。

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最新二酸化炭素メタネーション技術 ⑤

2023年07月21日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



     つりしのぶ越して來くるなりもらひけり

久保万太郎の後半生は、震災、戦災による転居、やっと落ち着いた
湯島で貰ったつりしのぶに涼を得、安堵の様子、句中の「なり」の
二文字に喜びと癒しの余情が残象すると菅澤陽子にこう評されてい
る、時に六十六歳の句であると。



若き勇者天をも貫き舞いあがる


  

 
  

● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
特異点真っ直中 ㉜
最新二酸化炭素メタネーション技術

特開2019-47816 バイオマス処理 ザイレコ,インコーポレイテッド

【概要】
セルロース及びリグノセルロース材料は、多数の用途で、大量に製
造され、処理され、且つ、使用される。多くの場合そのような材料
は、一度使用された後、廃棄物として廃棄されるか、又は単に、例
えば、バガス、おがくず、及び茎葉などの廃棄物であると考えられ
ている。いくつかの場合において、セルロース及びリグノセルロー
ス材料は、植物を成長させ収穫することによって得られる。

 いくつかの実施態様は、以下の特徴のうちの一つ以上を含む。供
給原料は、組換えDNA及び/又は組み換え遺伝子を有する植物を
含み得る。組換えされた植物は、例えば、タンパク質、ポリマー及
び/又は巨大分子を表し得る。方法は更に、医薬品、栄養補助食品、
タンパク質、脂肪、ビタミン類、油類、遷移、ミネラル類、糖類、
炭水化物及びアルコールなどの供給原料材料を得ることを含む。供
給原料材料は、例えば、トウモロコシの穂軸及び/又はトウモロコ
シ茎葉、麦わら、又は、遺伝子組換えされたトウモロコシ、小麦又
は大豆植物などの作物残渣を含むことができる。方法は更に、有機
体及び/又は酵素を用いて供給原料を処理すること、場合によって
は、例えば溶液又は懸濁液の形態で、糖を製造することを含む。任
意に、糖は、発酵させることができる。物理的処理は、供給原料の
照射を含むことができる。いくつかの実施態様において、照射され
た原料は、例えば、動物飼料などとして、食用材料として利用する
ことができる。所望の場合、セルラーゼなどの酵素は、例えば、栄
養価の放出を増加させるために、可食性材料へ添加することができ
る。
下図1.2のごとく、植物の野生型について改変された前記植物か
ら少なくとも部分的に得られた供給原料の物理的処理を含む、生成
物の製造方法。前記供給原料は、リグノセルロース又はセルロース
材料を含み、前記植物は、遺伝子組換えされており組換えDNAを
含む、遺伝子組み換え植物などの野生型について組換えされた植物
を含むセルロース及び/又はリグノセルロースなど供給原料材料の
使用、並びに、そこから作られる中間体及び生成物の提供。

図1.供給原料、特に、組換え植物材料から少なくとも部分的に得
られた供給原料を、有用な中間物質及び生成物へ変換するための、
一つの特定のプロセス

図2.供給原料を処理し、次に、処理した供給原料を、アルコール
を生成するために発酵工程で使用するために、上述の工程を利用す
る一つの特定のシステム

特開2023-100906 新規CRISPR酵素及び系 ザ・ブロード・
イン
スティテュート・インコーポレイテッド他
【概要】
推定V型CRISPR-Cas遺伝子座エフェクタータンパク質と
1つ以上の核酸成分とを含む天然に存在しない又はエンジニアリン
グされた組成物を前記遺伝子座に送達するステップを含み、ここで
エフェクタータンパク質は1つ以上の核酸成分と複合体を形成し、
及び前記複合体が目的の遺伝子座に結合すると、エフェクタータン
パク質が目的の標的遺伝子座に関連する又はそこにある配列の改変
を誘導する方法である。核酸又はポリヌクレオチド(例えばDNA
又はRNA又はこれらの任意のハイブリッド又は誘導体)を標的化
する代替的且つロバストなシステム及び技法を提供する。

特開2023-100703 植物の形質の改良を目的とした窒素固定のため
遺伝子標的 ピボット バイオ, インコーポレイテッド
【概要】
図21のごとく、遺伝子操作された細菌は、glnDの修飾を含み、
前記修飾が、遺伝子全体の欠失、実質的に遺伝子全体の欠失、AC
Tドメインの欠失、ACTドメインの50%を超える欠失、ACT
ドメインの非活性化、およびUTaseドメインの非活性化からな
る群から選択される、glnDの修飾を含む遺伝子操作された細菌
を提供し、さらに該細菌を利用するための方法およびシステムを提
供する。

WO2021/204877 改善された部位特異的改変のための組成物及び方
アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【概要】
CRISPR/Cas9などのプログラム可能なヌクレアーゼは、
標的部位で挿入及び欠失(インデル)の混合物を誘導することによ
って遺伝子を破壊できる部位特異的二本鎖切断(DSB)を生成す
ることができる。しかしながら、鋳型依存相同性配向型修復(HD
R)に依存するDSB修復は、低い頻度を有し得るが、高効率の鋳
型非依存非相同末端結合(NHEJ)はエラーが発生しやすく、所
望の挿入を優先しない場合がある。 図1A~1Dは、本明細書の実
施形態で記載される例示的な方法を示す。図1A及び1Bは、「N
HEJ促進ドメイン」、例えば、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、
又はDNAリガーゼに融合されたCas9、PRimed INS
ertion(PRINS)と呼ばれる融合タンパク質を示す。図
1Aでは、「SPRINgRNA」(シングルプライム化挿入ガイ
ドRNA)は対象とする配列(「ins」)及びプライマー結合部
位(PBS)を含む。図1Bでは、融合タンパク質は、DNA又は
RNA結合ドメイン(例えば、MCP2、ZF、TALE、FBP
、Pumilio、HUH、又はSNAP)を更に含み、PBSを
伴う対象とする配列は分離ポリヌクレオチドとして提供される。図1
Cは、図1Aに示されるPRINS複合体の作用メカニズムを示す。
Cas9ヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチドにて二本鎖開裂を
生成する。PBS及び対象とする配列を含有するCas9複合体中
の鋳型配列を使用して、対象とする配列の複製を含む二本鎖挿入配
列を生成する。次いで、生成された二本鎖挿入配列を、NHEJに
より開裂された標的ポリヌクレオチドにライゲートすることができ
る。図1Dは、挿入及び欠失を組み合わせるための更なる実施形態
を示す。Cas9ヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチドに二本鎖
切断を生成する。PBS及び対象とする配列を含有するCas9複
合体中の鋳型配列を使用して、対象とする配列の複製を含む二本鎖
挿入配列を生成する。次いで、生成された二本鎖挿入配列は、NH
EJによって、第2のCRISPR/Cas複合体によって下流で
生成された別の切断にライゲートすることができる。2つのCRI
SPR/Cas複合体の間の配列は、対象となる配列に置換される。

いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞であ
る。例えば、植物細胞は、作物植物、例えばキャッサバ、トウモロ
コシ、モロコシ、コムギ又はイネのものであり得る。植物細胞は、
藻類、樹木又は野菜のものであり得る。植物細胞は、単子葉若しく
は双子葉植物のもの又は作物若しくは穀類植物、生産植物、果実若
しくは野菜のものであり得る。例えば、植物細胞は、樹木、例えば
柑橘樹木、例えばオレンジ、グレープフルーツ又はレモン樹木;モ
モ又はネクタリン樹木;リンゴ又はナシ樹木;堅果樹木、例えばア
ーモンド又はクルミ又はピスタチオ樹木;ナス属の植物、例えばジ
ャガイモ、トマト、ナス、コショウ、パプリカ;ブラシカ属(Br
assica)の植物、ラクツカ属(Lactuca)の植物、ス
ピナシア属(Spinacia)の植物;カプシカム属(Capsi
cum)の植物;綿、タバコ、アスパラガス、ニンジン、キャベツ
、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ホウレンソウ、イチゴ、
ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブドウ、コーヒー、
ココアなどのものであり得る。 下図1のごとく、改善された遺伝
子編集効率のためのタンパク質、組成物、方法、及びキットを提供
する。いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼと
逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、又はそれらの
組み合わせと、を含む融合タンパク質を提供する。

特開2023-23727 遺伝子組み換え植物の生産方法 国立大学法人東
国立大学機構
【概要】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、植物の品種改良を行う
際に植物に感染させたアグロバクテリウムを高効率で殺菌すること
のできる遺伝子組み換え植物の生産方法を提供することである。
下図8のごとく、この植物の生産方法は、第1の培養液に大気圧プ
ラズマを照射してプラズマ活性化培養液を生産する工程と、植物の
種子を第2の培養液または固形培地で培養してカルスを生じさせる
工程と、カルスにアグロバクテリウムを感染させて感染体を生産す
る工程と、感染体を含有する第2の培養液または固形培地にプラズ
マ活性化培養液を混合して、アグロバクテリウムを殺菌する工程と、
を有する、植物の品種改良を行う際に植物に感染させたアグロバク
テリウムを高効率で殺菌することのできる遺伝子組み換え植物の生
産方法を提供である。
------------------------------------------------------------
生物多様性影響評価情報についての検討の概要(環境省 2010年)
 生物・環境影響調査審査の厳重化は、未来へのダメージ(庵殿保
 障政策)を防ぐ意味で重要と考えている。
※メタン発酵に係わる遺伝子編集によるアーミング発酵促進の他に
 糖を使い分けることで微生物の増殖と物質生産を独立制御する
Parallel Metabolic Pathway Engineering(PMPE)」技術( ➲
 Metabolic engineering of Escherichia coli for shikimate pathway deri
v-
 ative production from glucose–xylose co-substrate” (DO I:10.1038/s414
   67-019-14024-1 2020.1.14) が提案されている。(参考)
※とはいえ、遺伝子編集/改変技術は大変魅力的なカーボンニュートラ
 ルで、強靱で繊細な資材商品として、既存産業をボーダーレスに革新し
 ていくだろう。
                                       この項了



8月19日、米国ヒュ-スヒンを拠点とするの地熱発電スタートアップ
のフェルボエナジー社は、次世代地熱発電技術の大規模なデモンス
トレーションの成功を公表。商業規模で強化地熱システムを運用で
きることが実証されたことを受け、同社は2023年中にGoogleのデー
タセンターやインフラストラクチャーに電力供給を開始する模様。
地熱は風力や太陽光などと同様にカーボンフリーのエネルギー源と
して知られているが、発電に必要なほどの地熱を得るのは火山活動
が活発でない地域では困難。そのような地熱発電の課題を解決する
ために考案された強化地熱システムは地中深くまで掘った穴に水な
どを注入し、地熱を取り出す方式。強化地熱システムの実験は1970
年代から始まったものの、掘削の難しさやコスト面での課題が浮上
したため、20世紀末頃には実験や研究が尻すぼみになっていたとのこ
と。しかし、アメリカでは21世紀のシェールガス革命に伴って大幅
に掘削技術が進歩し、掘削コストが大幅に低下したため、かつては
困難だった「地中深くでの水平方向への掘削」が可能になる。そこ
で、当時、石油・ガス業界で掘削エンジニアのラティマー氏が大き
く進歩した現代の掘削テクノロジーを強化地熱システムに利用でき
るのではとひらめく。 2018年にはビル・ゲイツが率いるエネルギー
題専門のファンド「Breakthrough Energy Ventures(BEV)」の支援を受
けている。
ネバダ州北部にある「Project Red」という実験区域で30日間の本格的
な試
験を実施し、3.5MW(メガワット)の発電に成功。1MW当たり750
世帯に電
力供給でき、Project Redで生成された電力は商業規模のも
ので、同社は、石油・ガス産業の掘削技術を適用することで、これ
まで地熱発電が行わ
れていなかった世界中の地域で、週7日24時間
体制でカーボンフリーエネ
ルギー資源を生産できることを証明でき
たと話す。また、Fervo Energy
は、2021年にGoogleと次世代地熱発
電システムの開発に向けた企業間
契約を締結しており、今回のブレ
イクスルーにもGoogleの後押しがあった。


【展望】
今後、Fervo Energyはユタ州南西部に建設中の発電区域でもデモン
ストレーションを行う予定。期待通りに電力出力が最大化されれば
ユタ州のサイトでは2028年までに約400MWを供給できる。

【懸念】
EGSは井戸に水と化学物質を高圧で注入し、深層にある高温岩体に切
れ目をつくりそこから出た蒸気を発電に使います。この発電方法に
似ているものとして、シェールガスの採掘が挙げられる。シェール
ガスは、シェールロック層に井戸を打ち込み、そこから水圧破砕に
よって地下のシェール層に亀裂を生じさせることで取り出す。 こ
のような採掘方法をフラッキングというが、欧州や米国で「環境破
壊だ」との批判がでる。メリットのあるEGSですが、いずれはシェー
ルガスの採掘方法のようにその発電方法に物議を醸すことになるか
もしれない。


ステップアンバンチング現象の発見
半導体表面を原子レベルで平坦にする新技術
【要約】
1.従来の半導体製造技術では、SiCウェハ表面を非常に平坦にで
 きるも
 のの加工によるダメージ層が残ったり、ダメージ層はな
 いものの表面が
荒くなったりしてデバイス特性に悪影響を及ぼす
 という課題があった。

2.SiCウェハ表面を単一のシンプルなプロセスで、ダメージ層も
 なく原子
 レベルで平坦にする新技術として応用可能なステップ
 アンバンチン グ現
を発見した。

3.半導体製造工程において、化学機械研磨を含むプロセスが不要
 にな
り、コストと時間を大幅に削減できる可能性があると期待さ
 れる。

【概要】
早稲田大学らの研究グループは、半導体表面を原子レベルで平坦に
る新技術として応用可能な、ステップアンバンチング現象を発見。
パワー
デバイス材料として使われる半導体であるSiCにおいて、ウ
ェハの表面を原子レベルで平坦にすることは、デバイス特性や新材
料作製に関して極めて重要です。SiCウェハ表面は、ステップと呼ば
れる原子1個程度の高さ(約0.25 nm)の段差を持っています。SiCを
加熱すると、表面の原子が移動することでステップが集まり、はじ
めに1~1.5 nmの高さステップを形成し、さらに高温で加熱すると数
nm~数十nmのステップになります。これはステップバンチングと呼
ばれ、ステップが次第に高くなっていくことはあっても、低くなる
ことはないと旧来考えられてきた。このたび本研究グループは、あ
る特定の条件下に置くと、一旦高くなったステップが低くなること
を見出した。これをステップアンバンチング現象と名付けました。

従来の半導体製造技術には、表面は非常に平坦にできるものの加工
によるダメージ層が残る手法や、ダメージ層はないものの表面が少
し荒くなる手法はあった。それに対して本研究の手法では、単一の
シンプルなプロセスで、ダメージ層もなく原子レベルで平坦な表面
を得ることができる。従って、半導体製造工程のコストと時間を大
幅に削減できる可能性があると期待されている。

ステップバンチング現象は、高さ0.25 nmのステップが集まって1~
1.5 nmのステップになるミニマムステップバンチング(MSB)と、
MSB後のステップがさらに集まって数nm以上の高さになるラージス
テップバンチング(LSB)に分けられます。一般的には、MSBが生じ
た後にLSBが生じるので、これらは不可逆な現象だと考えられてき
た。それに対して、本研究で明らかになったのは、LSBが生じて5~
10 nmの高さになった後、ある特定の条件下に置くと、1~1.5 nmの
低い高さに戻るという現象であり、これを本研究グループはステッ
プアンバンチング現象と名付けた。

新しく開発した手法
SiC熱分解グラフェンの研究においてSiC表面形態を制御している過
程で偶然、ステップアンバンチング現象を発見しました。4%程度
の水素を含むアルゴンガス(Ar/4%H2)雰囲気中でSiCを加熱すると
1600℃では 図3(a)のようにLSBが起こります。LSBが生じたSiCを
1400℃で保持すると、5~10 nmの高さであったステップが、図3(b)
→(c)→(d)のように次第に1~1.5 nmの低いステップの集合に分か
れていく。この一連の現象が、ステップアンバンチングです。原子
レベルで模式的に表すと、(e)の状態から(f)のように変化していく
ことに対応します。すなわち、Ar/4%H2雰囲気中で、はじめに高温
で保持した後に低温で保持することで、LSBの後にMSBが生じること
がわかった。なお、水素を含まないアルゴンガス雰囲気中で同じ実
験を行っても、ステップアンバンチング現象は起こらない。 従来
不可逆だと思われていた現象が、特定の雰囲気では可逆現象である
ことを見出したと言うことができる。これにより、1~1.5 nm程度
のステップのみからなる、原子レベルで平坦な表面を得ることを可
能になる。



図3:ステップアンバンチング現象。Ar/4%H2雰囲気中で、(a) 1600℃で10
分加熱、(b) その後1400℃で10分保持、(c) 20分保持、(d) 60分保持した試
料の表面形態。(e, f) (a)から(d)の変化の模式図。

(4)研究の波及効果や社会的影響
SiCのステップバンチング現象に関して、MSB、LSB共にこれまで多
くの議論が行われ、様々なメカニズムが提案されてきました。それ
らのメカニズムに基づくと、LSBが生じた後にMSBが生じる現象を単
純に説明することはできません。そのため、本成果は表面科学理論
に一石を投じるものと考えられます。また、一般的な半導体製造プ
ロセスにおいて、インゴットを切断してウェハとし、その表面を機
械研磨した後で、CMPと水素エッチング処理が施されます。CMPだけ
では加工ダメージ層が残り、単純な水素エッチングだけではLSBが
生じてしまう。それに対して、研磨痕の残るSiC表面に対し
て、Ar/
4%H2雰囲気中でまず高温で処理することで研磨痕を除去し、その後
低温で保持すれば、原子レベルで平坦な表面を得ることができる。
すなわち、本技術によって、加工ダメージ層もなく原子レベルで平
坦な表面を得られる上に、CMPを含むプロセスを削減できる可能性が
ある。これは、半導体製造工程をシンプルにすることができるため
大幅なコスト・時間の削減が可能になることも期待される。

【展望】
今後の課題 本研究では、半導体としてSiCのみを対象とした。
一方で、半導体としては窒化ガリウム(GaN)やヒ化ガリウム(Ga
As)など、他にも様々な物質があります。これらに関しても、結晶
構造が類似していることからステップアンバンチングが生じる可能
性がある。他の半導体物質への本技術の適用が今後の課題である。

【関連論文】
雑誌名:Applied Physics Letters
論文名:Step unbunching phenomenon on 4H-SiC (0001) surface during
hydrogen etching

掲載日(現地時間):2023年7月19日(水)
掲載URL:https://pubs.aip.org/aip/apl/issue/123/3
DOI:https://doi.org/10.1063/5.0153565


図: CdSe ナノ結晶表面/内部への白金イオンの選択的担持と、その光
水素発生触媒性能変化

白金単原子触媒を担体表面/内部に選択的担持
―錯体化学を用いた新しい合成戦略および触媒性能への効果―

【概要】
京都大学化学研究所の研究グループは、白金単原子触媒を担体表面
/内部に選択的に担持する方法の開発に成功。 貴金属触媒粒子を極
限まで小さくした単原子触媒は次世代の触媒として期待されていま
すが、その土台となる担体との位置関係がどう触媒性能に影響する
か、またどのような手法でその位置関係を制御できるかは知られて
いなかった。今回研究グループは、白金イオンをCdSe ナノ結晶に
担持した単原子触媒において、錯体化学を利用した白金イオンの位
置制御法を開発しました。原料となる白金錯体および溶媒を使い分
けることによって、白金イオンがCdSe ナノ結晶の表面に吸着された
状態と、結晶内部に取り込まれた状態の2 種類の担持構造を選択的
に作り分けることができることを明らかにした。さらに、白金イオ
ンがCdSe ナノ結晶表面に存在する構造の方が、光触媒水素発反応
において高い活性と安定性を示すことを明らかにした。単原子触媒
の担体に対する位置関係が触媒性能に重要であることを示すととも
に、担体内外における単原子触媒の位置を自在に制御する新しい手
法を与える。この知見をもとに、高性能な単原子触媒の設計・合成
が進展することが期待されている。本研究成果は、2023年7 月15日
(現地時刻)に国際学術誌「Nature cmmunications」にオンライン
掲載された。
【展望】
単原子触媒は、貴金属の使用量を削減し効率のよい化学反応を実現
する上で有望な物質です。本研究の結果は、単原子触媒の設計・合
成において、担体との位置関係が触媒性能に影響する重要な要素で
あることを示した。同時に、本研究では錯体化学を利用し、単原子
触媒を担体内外に自在に配置する手法を新たに開発した。これらの
知見は様々な化学反応に対する単原子触媒の理解・合成に活用され
ることが期待される。

【関連論文】
タイトル:Location-selective immobilization of single-atom catalysts
on the surface or within the interior of ionic nanocrystals using coordination
chemistry(
錯体化学を利用したイオン性ナノ結晶表面ま たは内部へ
の位置選択的な単原子触媒の固定化)
掲 載 誌:Nature Communications DOI:10.1038/s41467-023-40003-8



光オン・デマンド界面重合法でポリカーボネート合成
 ポリカーボネート(PC)は、高い透明度と耐衝撃性を持つエンジ
ニアリング
プラスチックとして、眼鏡レンズ、カメラレンズ、DVD、
車のヘッドライトや、
防弾ガラスなどに使用されている。その工業
生産は主として、反応性の
高いホスゲンとアルコールを、水と有機
溶媒の界面で反応させる界面重
合によって行われています。しかし、
ホスゲンは極めて高い毒性を持つた
め、安全性の理由から、それを
用いない合成方法が活発に研究されてき
た。近年では分子量の比較
的小さなPCであれば、ホスゲン代替物質(ジ
フェニルカーボネート
など)を使って合成されるようになったが、分子量の
大きなハイグ
レードタイプの合成には依然、それよりも反応性の高いホス
ゲンが
必要。安全・安価・簡単・低環境負荷でカーボネート類の合成を可

能にする新しい化学反応の開発を目指して、神戸大学の研究グルー
プは、
同グループオリジナルの光オン・デマンド有機合成法による
界面重合反応
の開発に取り組んできた。水酸化ナトリウム水溶液、
クロロホルム、およ
びアルコールの混合溶液(気相・水相・有機相
の3相分離状態)に、酸素
ガスを吹き込みながら紫外光を照射すると
界面で反応が起こり、目的と
するカーボネートが高収率で得られる
ことを発見した。この新たな方法は、
小規模多品種の幅広いライン
ナップのカーボネート合成に適している。

【展望】
光オン・デマンド有機合成法は、ホスゲンを用いるカーボネート合
成のほとんどに利用することが可能。また、これまで毒性の高い試
薬を用いなければならなかったために躊躇されてきた、
特殊なカーボネートや機能性ポリカーボネートなどの合成を可能に
します。これによって、様々な元素や機能性官能基を、カーボネー
ト化合物へ自在に導入でき、医薬品やポリマー材料の分子レベルで
の高性能・高機能化が達成され、より独創性および新規性の高い高
付加価値製品の開発に結びつくことが期待されます。ホスゲンを直
接用いる現行法は、大規模少品種の工業生産に適しているが、本法
は小規模多品種の化学品生産に適しており、小中規模の化学薬品製
造メーカーに大きな恩恵があると期待されます。当グループでは、
神戸大学発ベンチャー企業を立ち上げ、オリジナル化学品の生産、
受託合成、ライセンス事業の展開を予定している。
【論文情報】
タイトル“Photo-on-Demand in situ Phosgenation Reactions that Cross
Three Phases of a Heterogeneous Solution of Chloroform and Aqueous
NaOH

DOI:10.1021/acsomega.3c04290

人工照明によるウナギの摂餌活性低下を発見

7月19日、九州大学の研究グループは,水産重要種かつ絶滅危惧種
であるニホンウナギについて,水辺の人工照明が日没直後における
本種の摂餌活性
の上昇を妨げることを発見。
【要点】
1.夜間の人工光による生態への影響(光害)は、世界中の動植物
 において問題となっている。
2.水辺の人工照明によって、日没直後のウナギの摂餌活性が低下
 することを発見した。
3.ウナギをはじめとした河川・農業用水路に生息する生物の保全
 に役立つと期待される。



図.水辺の人工照明の有無による釣獲頻度の変化(左図)と照明やウ
 ナギ筒の有無による行動の違い(右図)
【展望】
ウナギが受け取っていた光の明るさ、昼間の隠れ家から餌場までの
距離、餌場における隠れ家の量、餌⽣物の量や⾏動などを定量する
ことができなかった。今後、より厳密に環境を制御した野外調査や
⾏動実験を⾏い、⽔辺の⼈⼯照明によるウナギへの影響や、⼈⼯光
による餌⽣物とウナギとの相互作⽤への影響をさらに詳しく調べる。
ニホンウナギの生活史 西マリアナ海嶺付近で生まれたウナギの
子どもは、2000キロメートル以上を旅して我々の生活圏にたどり着
き、沿岸や河川・農業用水路などで数年から十数年かけて大きく成
長する。その後、再び海を渡り、産卵場で一生を終える。
【関連論文】
掲載誌:Environmental Biology of Fishes
タイトル:The effects of artificial light at night on the foraging activity of
Japanese eels: implications of recreational fishing data(ニホンウナギの
摂餌活性に与える夜間の人工光の影響:遊漁記録からの示唆)

DOI: 10.1007/s10641-023-01450-w
※以上、今週は盛りだくさんの論文を取り上げてみた。どれ1つと
  っても
興味深いものであり、この暑さは堪える。まぁ~何とかす
 るさと開き直る。



風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2020年代



今夜の寸評:先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。

  

 

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最新二酸化炭素メタネーション技術 ④

2023年07月19日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

-----------------------------------------------------------
二酸化炭素除去 (CDR) には、大気から二酸化炭素 (CO₂) を捕捉し、
陸上、海洋、地層、または製品中に数十年から数千年にわたって貯
蔵することが含まれる。CDR におけるイノベーションは、R&D、特
許、設備投資に代表されるように大幅に拡大。CDRは社会の注目を
集めており、査読済みの科学文献は現在 28,000 件を超える研究
で構成されており、気候変動全体よりも速いペースで増加。
-----------------------------------------------------------

 

現在のほぼすべての CDR (99.9% または年間 2 GtCO₂) は、主に植
林と再植林による従来の土地管理に由来する。捕捉された炭素リソ
スフェア、海洋、または製品に貯蔵することを含む新しい CDR方法
から生じるのは、ごく一部 (0.1% または年間 0.002 GtCO₂) だけ
である。これを下に図示する。新しいCDRの例には、炭素回収およ
び貯蔵によるバイオエネルギー (BECCS)、バイオ炭、および炭素回
収および貯蔵による直接空気回収 (DACCS) が含まれる。CO2除去量
は2050年までに1,300倍に増加する必要がある 現在の開発状況と予
想される将来の傾向の両方を含む、


図.現在のすべての二酸化炭素除去のうち、新しい方法によるもの
 はごく一部のみ
-----------------------------------------------------------
 二酸化炭素除去 (CDR) に関する初の包括的かつ世界的な評価が、
オックスフォード大学から公表された。分析の結果、自然手法(樹
木や土壌の修復など)は2倍にする必要がある一方、直接空気捕捉
などの新技術では2050年までに生産能力を1,300倍に高める必要が
ある。 再生可能エネルギーの近年目覚ましい進歩もあり、太陽光
発電と風力発電は業界アナリスト予測を上回ることがあるが、これ
らおよびその他のクリーン技術の急速成長を考慮しても、現在の排
出削減目標を達成できないと考えている。持続可能な未来担保には、
追加の長期戦略を必要とし、二酸化炭素の回収と貯留の劇的な拡大
が前提となる。



1月20日、最初の「二酸化炭素除去の状況」が報告された。オック
スフォード大学は、CDR 分野の 20 人以上の専門家を招集し、最新
の進歩の全体像と、使用される手法および企業や政府の取り組みレ
ベルに応じた 21世紀の潜在的なシナリオを作成。

温暖化を2℃以下に抑えるには、排出削減を加速する必要があるが、
報告書結果は明らか。①生態系の回復と強化、②新しいCDR手法の
急速な拡大によって、炭素除去も増やす必要もあるとオックスフォ
ード大学スティーブ・スミス博士はいう。多くの新しい手法が可能
性を秘めて登場している、1つまたは2つの選択肢に焦点を当てる
のではなく、ポートフォリオを奨励する必要がある。そうすること
で、1つの手法に過度に依存するのではなく、ネット ゼロを迅速
に達成できるようになる。能力への投資、公的資金による研究、お
よび特許によって測定されるように、CDR におけるイノベーション
は過去2年間で劇的に拡大している温暖化を抑えるためには今世紀
半ばまでにCDR産業が桁違いに成長する必要があることを考えると、
成長を促進するための包括的な政策支援が緊急に必要とされている。
 現在 CDR テクノロジーを開発している2つのClimeworks と Bril-
liant Planet社----前者は、年間 4,000 トンのCO2除去能力を備え
た DAC施設を開発し、自然の鉱化プロセスを通じてガスを永久に貯
蔵する。後者は、沿岸の砂漠地帯に屋外の藻類の池をベースにした
システムを開発し、宇宙からも時々見える季節の海のブルームを再
現できる可能性がある。

これらのプロジェクトは試験段階にあり、人類の年間生産量と比較
してほんのわずかな CO2 削減に過ぎないが、Climeworks と Brill-
iant Planetのどちらも、自社のコンセプトにはスケールアップす
る可能性がある。以下の図に示すように、オックスフォード大学の
レポートには、DACCS、Biochar、BECCS に投資しているさまざまな
企業の合計が含まれており、構築された能力 (四角) と将来の拡張
計画 (丸) が示されている。



 「各手法の網掛け部分は、過去1年間の企業の生産能力発表が今世
紀半ばまでにCDR の社会技術的可能性を満たすまでにどのように成
長するかを示す」と報告書の著者らは話す。
2050年の低値と高値のデータポイントは、生物物理学的限界、経済
的コスト、導入による副作用に依存する最大除去可能範囲を表して
いる。」これらのグラフは対数スケールで、すべてが計画通りに進
めば、今後数十年で指数関数的な進歩が期待できる。
DACCS と BECCS はそれぞれ、2050 年までに年間最大 5GtCO2のCO2
除去の可能性を秘めているが、最良のシナリオでは、バイオ炭は年
間 2 GtCO2に達す。この合計 12 GtCO2は、現在年間 37GtCO2である
人類の年間排出量を大幅に削減することになる。排出削減と森林再
生などの自然な方法を組み合わせることで、何世紀にもわたって蓄
積された二酸化炭素の蓄積をついに逆転させることができる可能性
があり、その蓄積は現在、産業革命以来の累計でほぼ 2,000 GtCO2
に近づいている。

 しかし、これらの予測の下限ははるかに低く、DACCS、バイオ炭、
BECCS のそれぞれで年間わずか 0.5 GtCO2 除去です。 CDR 業界の
成長軌道は多くの要因によって決まりますが、成功は決して保証さ
ない。著者(ドイツ国際安全保障問題研究所)のオリバー・ゲーデ
ン博士は、CDRは私たちにできることではないが、パリ協定の気温
目標を達成に絶対にやらなければならないことだと述べる。 120以
上の国政府がネットゼロ排出目標を掲げており、これはCDRの使用
を意味するが、CDRを開発するための実行可能な計画を持っている
政府はほとんどない。これは大きな不足を示し、現在、CDRに関す
る重要な情報は広範囲に分散しており、アクセスが困難。これが進
歩の妨げとなっていると、ベルリンのメルカトル・グローバル・コ
モンズ・気候変動研究所の応用持続可能性科学部門責任者ヤン・ミ
ンクス氏が言う。CDRの研究、開発、政策の状況は25年前の再生可
能エネルギーと同様に遅れている。この分野での適切な決定と加速
させた進歩には適切なデータが欠かせない。この報告書は、より広
範なCDRコミュニティとともにこの状況を段階的改善に役立つ。 欧
州委員会気候行動総局元所長のアルトゥール・ルンゲ=メッツガー
氏は、今後数年間、この世界的なCDR報告書は、世界各地の膨大な量
のデータと開発状況を系統的に収集・分析することで、政策立案者
に進捗状況を定期的に知らせ続けることになるだろう」と述べる。


図1.1 二酸化炭素除去 (CDR) として定義されるためには、その方
法は大気から CO2 を回収する必要がある (原則 1)、永続的に保管
する (原則 2)。 両方の原則を満たす方法の例、したがって CDR と
して認定されるのは、植林/再植林 (左) 。 これらのうちの1つだ
けを満たすアプローチがいくつかある。したがって、CDRではないが、
二酸化炭素の回収と利用としてカウントされる (例: 炭素への直接
空気回収)。 燃料(中央)または化石としての炭素回収および貯蔵
(右)。 出典: ゼロエミッション プラットフォーム (2020)

※ボリュムが大きく今回はここまで、俯瞰でき、理解しやすいもの
を記載転記する。残件は適宜掲載する。
                        この項つづく


画像:温室で成長するCRISPR編集ポプラと野生型コントロール

遺伝子編集された樹木はより持続可能であり、
繊維の生産量を増や
すことができる

7 月17日、ノースカロライナ州立大学の研究グループは、CRISPR遺伝
子編集を使
用してポプラの木のリグニン含有量を50%も削減しより
持続可能できる、効率的な繊維生産方法を提供できる可能性をもた
らしした。同大学の温室で栽培されている、CRISPR で改変された
ポプラの木 (左) と野生のポプラの木 (右)。
ノースカロライナ州立大学(NCSU)の科学者らは今回、CRISPR遺伝
子編集システムを利用して、木材の特性を改善しながら、木質繊維
の持続可能な生産の大きな障壁となるリグニンのレベルを低下させ
たポプラの木を品種改良した。 Science誌に掲載された彼らの研究
は、繊維生産をより環境に優しく、より安く、より効率的にする可
能性がある。 これにより、紙、ボール紙、繊維、衛生用品などを
含む幅広い消費者向けアイテムや材料が改善される。

研究チームは予測モデリングを使用して、ポプラの木におけるリグ
ニンレベルの低下、炭水化物とリグニン(C/L)の比率の増加、2
つの重要なリグニン構成要素であるシリンギルとグアヤシル(S/G
)の比率の増加という目標を設定した。 研究者らによると、これ
らの化学的特性の組み合わせが繊維生産のスイートスポット
を表し
ているという。 私たちはCRISPRを利用して、より持続可能な森林
を構築していますとNCSUの食品・生物処理・栄養科学の特別教授で
論文の共同執筆者であるロドルフ・バラングー氏は話す。 CRISPR
システムは、単一の遺伝子や遺伝子ファミリー以上の編集を行う柔
軟性を提供し、木材の特性を大幅に改善することができる。このア
ルゴリズムは、リグニン生産に関連する 21 の重要な遺伝子を対象
とした、約 70,000 の異なる遺伝子編集戦略を予測および分類し、
時には一度に複数の遺伝子を変更して、347 の戦略に到達しました。
これらの戦略の 99% 以上は、少なくとも 3 つの遺伝子をターゲッ
トにしていました。そこから、研究者らはモデリングが示唆する、
化学的スイートスポットを達成する樹木につながると示唆される7
つの最良の戦略を選択しました。つまり、野生の樹木や未加工の樹
木よりもリグニンが 35% 少ないという。野生の木よりも 200% 以上
高い C/L 比。 S/G 比も野生の木より 200% 以上高かった。 木の成
長速度は野生の木と同様でした。 リグニンは、多くの種類の植物、
特に木材や樹皮の細胞壁の構造に不可欠な複雑な有機ポリマー。
これはこれらの壁の一種の結合剤として機能し、木材に硬度と耐腐
朽性を与えます。リグニンはセルロースに次いで世界で2番目に豊
富な天然ポリマーであり、木材の組成の15% ~ 25%を占める。パル
プおよび製紙産業では、望ましいセルロース繊維を抽出するために
リグニンを木材パルプから広範囲に除去する必要があるため、リグ
ニンが大きな課題となっている。このプロセスは、リグニンの分解
と除去に伴う過酷な化学処理と高エネルギーの使用により、費用が
かかり、環境に悪影響を及ぼします。 世界の紙の消費量は過去 40
年間で2倍以上に増加した。

リグニンの除去には、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸
などの化学薬品が使用される場合がある。これらは廃棄物の流れか
ら漏洩し、生態系や食物連鎖を汚染する可能性がある。国際エネル
ギー機関(IEA)によれば、この部門は産業からの温室効果ガス排
出量のほぼ2%を占めており、IEAの2050年のネットゼロシナリオに
は届かないと予測されている。これら7つの戦略から、チームは
CRISPR 遺伝子編集を使用して 174 系統のポプラの木を生産した。
温室で6か月間保管した後、それらの木を詳しく調べたところ、い
くつかの品種ではリグニン含有量が最大50%減少し、他の品種では
C-L比が228%増加していることがわかった。


画像:温室栽培のポプラの木[Creidt:Ilona Peszlen]の幹材の横断面

興味深いことに、研究者らによると、最も顕著なリグニンの減少は
4~6個の遺伝子編集を施した樹木で示されたという。単一遺伝子編
集ではリグニンを大幅に減らすことができず、CRISPRを使用して複
数遺伝子を変更すると繊維生産に利点がもたらされる可能性がある
ことが示された。この研究にはパルプ生産工場のモデルも含まれて
おり、樹木のリグニンが減少するとパルプ収量が増加し、パルプ化
の主な副産物であるいわゆる黒液が減少する可能性があり、これに
より工場での持続可能な繊維の生産が最大 40% 増加する可能性が
あることが示唆された。工業規模でリグニンの削減とC/LおよびS/G
比の増加が達成されれば、生産効率の向上により温室効果ガス排出
量も最大20%削減されることになる。 この研究に続いて、研究チー
ムは野外試験を利用して、遺伝子編集された樹木が、管理された温
室環境の外で屋外の生命体によってもたらされるストレスに耐えら
れるかどうかを評価したいと考えている。遺伝学、計算生物学、CR
ISPRツール、生物経済学を組み合わせた樹木育種への学際的なアプ
ローチにより、樹木の成長、発達、森林利用に関する知識が大幅に
拡大した、とノースカロライナ州立大学博士研究員(ダニエル・ス
リス氏)は話す。この強力なアプローチにより、樹木の遺伝学の複
雑さを解明し、繊維生産による二酸化炭素排出量を削減しながら、
生態学的および経済的に重要な木材の特性を改善できる統合ソリュ
ーションを導き出す能力が変わった。
多重ゲノム編集は、気候変動やより少ない土地でより持続可能な生
体材料を生産する必要性によって私たちの天然資源がますます困難
になっている現在、森林の回復力、生産性、利用率を向上させる素
晴らしい機会を提供すると ノースカロライナ州森林バイオテクノロ
ジーグループの責任者は語る。
【関連情報】
1.CRISPR ( clustered regularly interspaced short palindromic repeat;
クリスパー)とは、数十塩基対の短い反復配列を含み、原核生物に
おける一種の獲得免疫系として働く座位である。配列決定された原
核生物のうち真正細菌の4割と古細菌の 9割に見出されており、プ
ラスミドやファージといった外来の遺伝性因子に対する抵抗性に寄
与している。
経緯:CRISPRと呼ばれている反復クラスターは、石野良純らによっ
て1987年に大腸菌で初めて記載された2000年になって、類似の反復
クラスターがその他の真正細菌や古細菌で見つけられ、この時はshort
regularly spaced repeats (SRSR
)と名付けられたが、2002年にCRISPRと
命名された。またCRISPRリピート近傍にはヌクレアーゼやヘリカー
ゼをコードするCRISPR-associated (cas)遺伝子群が存在することが
示された[7]。この段階においてはCRISPRの機能や役割は不明であっ
たが、その後の2005年に複数のグループが、CRISPRのスペーサー配
列がファージに由来するものであることを見いだす。最終的に
Barrangouらによって、CRISPRの役割として知られるバクテリオフ
ァージへの耐性獲得機能が実験的に証明されたのが2007年である。

Cas9を応用したゲノム編集技術の開発
一方、CRISPRのDNA切断機構は遺伝子工学的応用にも用いられるよ
うになる。2012年にJinekらがII型CRISPR-Casシステムを構成するC
as9がRNA依存性のDNAエンドヌクレアーゼであることを見出し、生
化学的にCas9による標的DNAの切断が可能であることを示すと、翌
年には同グループを含めた複数のグループが哺乳類細胞のCRISPR-
Cas9システムによるゲノム編集に成功する。また、このゲノム編集
技術に関する特許申請はその後の係争へ繋がる。今日ではゲノム編
集技術の他にも転写制御、イメージング、核酸検出法など、様々な
応用法が検討ないし実用されている。 CRISPR-Cas9システムを発表
したエマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナは
従来より精度が高く使いやすいゲノム編集手法の開発を評価され、
2020年のノーベル化学賞を受賞した。 via Wikipedia

  

 
  

【再エネ革命渦論 150: アフターコロナ時代 151】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
特異点真っ直中  ㉛ 

最新二酸化炭素メタネーション技術



経済産業省が支援する研究プロジェクトが2012年度から始まってお
り、2014年度以降は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合
開発機構(NEDO)へと引き継がれ、日本を代表する企業、大学、国
立研究機関等、産学官の連携により研究が進められており、特にポ
イントとなるのは、太陽エネルギーによって水から水素と酸素を作
り出す時、どのくらいの効率で作ることができるかという「太陽エ
ネルギー変換効率」。この人工光合成を工業プロセスの一部として
成り立たせるためには、低コストで効率的で大量生産が可能な技術
であることが求められ、植物の光合成における太陽エネルギー変換
効率(一般的に0.2~0.3%と言われる)を大幅に上回る太陽エネル
ギー変換効率を実現する必要がある。このため、光触媒については
太陽エネルギー変換効率の向上に向けて新しい光触媒を探したり、
実際に触媒を使うための形態にする成型加工技術の研究を進めてい
る。水素と酸素を別々の光触媒で生成する「タンデムセル型光触媒
」では、2016年度に植物の光合成の約10倍となる世界最高の太陽エ
ネルギー変換効率3.0%の光触媒を開発。さらに2017年度には、そ
の効率が3.7%に向上しました。今後もさらなる高精度化を進め、最
終的には太陽エネルギー変換効率10%を目指す。また、人工光合成
の低コスト化に向け、世界初の技術である「混合粉末型光触媒シー
ト」の開発も同時に進行。混合粉末型光触媒シートとは、水に沈め
て太陽光をあてると、1枚のシートで水から水素と酸素を生成するこ
とができるというもの。人工光合成の実用化に不可欠な大面積化、
低コスト化に適している。
【関連最新特許技術】
1.特開2021-127521 粉末光電極、半透明粉末光電極並びにその製
  造方法、及び光電気化学セル 国立大学法人信州大学
2.WO2016/136374 光触媒構造体および光電池 国立研究開発法人
 科学技術振興機構


さて、前出のノースカロライナ州立大学の研究グループのポプラを
遺伝子編集しリグニンの木質比率を低下(炭水化物とリグニン(C/L
)の比率の増加、重要なリグニン構成要素であるシリンギルとグア
ヤシル(S/G )の比率の増加させ持続可能な木質資材を提案してい
るが、その他に応用が可能であると考える。例えば。①バイオマス
燃料としてのメタンをメタン発酵させることで良質で持続可能な廉
価な製造方法の実現が可能であろう。②また、遺伝子編集で適用可
能な樹木の種類増やし、燃料だけでなく、メタンと再エネ電解水素
からら炭化水素化合物、合成プラスチック及び樹脂、各種化学薬品
、新しい土木建築資材の製造、③さらには、パルプのみならずカー
ボンナノフイバー、新しい木質由来繊維などの製造も可能だろう。
参考に最新のメタン発酵技術事例を掲載する。

【最新メタン発酵特許事例】
※特開2023-85043 メタン発酵方法、メタン発酵促進剤およびその
造 バイオ燃料技研工業株式会社
【概要】
下図3のごとく、メタン発酵系に有機性廃棄物を投入し、メタンを
含むバイオガスを製造するメタン発酵方法において、メタン発酵促
進剤を、有機性廃棄物と組み合わせて用い、メタン発酵促進剤は、
グリセリンを含有し、n-ヘキサン抽出物質が10,000mg/kg以
下であることを特徴とするメタン発酵方法。本発明によれば、メタ
ン発酵促進剤およびその製造方法もさらに提供され、グリセリンを
活用しつつ、有機性廃棄物から、メタンを含むバイオガスを効率よ
く製造することのできるメタン発酵方法、およびメタン発酵を促進
することのできるメタン発酵促進剤を提供する。

図3.実施例で用いた実験装置を示す模式図

風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2019年代



今夜の寸評:先端技術で世界一をめざし、世界に貢献。

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最新二酸化炭素メタネーション技術 ③

2023年07月18日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



         百日紅 きみの一言 断末魔
                       

やっぱり、そうなんですね。あなたが言うカオスって、断末魔って。
海洋中のメタンハイゾレードが一斉に吹き出せば不可逆になるとき
にはね。こんな会話が交わされていた今朝、百日紅の剪定を済ませ
た。 
                     

 

     

 
  

【再エネ革命渦論 149: アフターコロナ時代 150】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉛ 

最新二酸化炭素メタネーション技術 ③
最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ⑤ 」の「メタン酸化光触媒
反応を分子レベルで解明」で掲載したように分子化学研究所の論文
から「金属助触媒が光誘起正孔を蓄積して酸化反応も誘起可能であ
る」➲「金属助触媒は光誘起電子を捕捉・蓄積して専ら還元反応
のみを誘起する」➲「非熱的反応の酸化選択性を制御できる可能
性が示された」➲「非熱的な触媒反応系の高度化・高機能化への
貢献」

時代背景
メタン(CH4)は天然ガスやバイオガスに含まれ,持続可能社会にお
ける炭化水素資源として期待され、また,メタンの温室効果は二酸

化炭素(CO2)の約25倍であるため,温室効果ガスの低減という観点
からもメタンの有効利用は重要であるが,メタンは化学的に安定で
で,従来の触媒反応では700 ℃以上,20気圧以上といったエネルギ
>ー多消費な反応プロセスが必要
➲光や電気を駆動力とする非熱的
な触媒・化学技術によって持続可能かつ常温常圧でメタンを有効利
用する手法が求められている。

選択的化学反応促進のための酸化物半導体などの光触媒が製造開発
が喫緊課題。
触媒表面において非熱的に生じる光誘起正孔がメタン酸化反応を誘
起する事象は、①触媒表面でのメタン酸化反応のメカニズムは分子
ベルでは未解明な点が多く,②触媒材料に応じた酸化反応の選択
性の違いの起源は不明。③実用的な光触媒を戦略的に設計に,この
反応メカニズムを微視的に解明することが材料設計・反応制御の指
針が求められている。
------------------------------------------------------------
研究成果➲論文情報参照
水を酸化剤として用いたメタン酸化光触媒反応において,白金(Pt)
とパラジウム(Pd)の微粒子を助触媒として担持した酸化ガリウム(G
a2O3)光触媒が完全酸化反応(CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2)と部分酸化反
応(2CH4 → C2H6 + H2)に対して異なる選択性を示すことに注目(図
1a)。これらの触媒系に対して,反応ガスであるメタンの圧力を系
統的に変化させて二酸化炭素(CO2)とエタン(C2H6)の生成速度を測定
(図1b, 1c)。その結果,特にエタン生成速度のメタン圧力依存性
においてPtとPdで顕著な違いを確認。得られた生成速度のメタン圧
力プロファイルを反応速度論)に基づき解析した結果,
①CO2生成は助触媒元素によらず表面反応で進行する(図1d, 1e)
②一方で,C2H6についてはPtでは表面(図1d),Pdでは気相(図1e)
で反応中間体のメチルラジカル(CH3)がカップリング(2CH3 → C2H6
)して生成するされた。
③このことは,担持する金属微粒子(PtとPd)に応じて反応中間体
のダイナミクスが変化することでメタン酸化反応の選択性に顕著な
違いが現れていることを意味する。

図1:(a) メタンと水蒸気の混合ガス雰囲気下で各メタン圧力におい
てPtとPd助触媒を担持したGa2O3光触媒によって生じたC2H6とCO2の比。
水蒸気の圧力は2000 Paで固定し,触媒全体の表面が1層の水分子で
覆われている状況を保持。C2H6/CO2比から,Pt担持系では完全酸化
(CO2生成)が優勢であるのに対し,Pd担持系では部分酸化(C2H6生成)
もCO2生成と同程度に促進されていることが分かる。(b) Pt助触媒と
(c) Pd助触媒を担持したGa2O3光触媒におけるCO2とC2H6の生成速度の
メタン圧力依存性。光触媒の表面が1層の水分子に覆われた環境下に
おける(d) Pt/Ga2O3と(e) Pd/Ga2O3触媒表面でのメタン酸化反応メカ
ニズムの模式図。
➲
続いて,上述の反応メカニズムの妥当性をオペランド赤外吸収分光
による反応中間体の観測によって検討。その結果,①Pt助触媒では
メタン酸化によって生じた炭化水素中間体種に由来する3つのC–H伸
縮振動ピークが観測された一方で,Pd助触媒ではこのようなピーク
は観測されなかった(図2)。②これは,Pt助触媒においてCO2とC2H6
生成が触媒表面で進行する反応モデル(図1d)を支持する結果であ
り、③また,Pd助触媒の場合にC–H伸縮振動のピークが観測されなか
ったことは,吸着している炭化水素種が少ないことを意味しており,
C2H6生成の中間体であるCH3の一部が気相に脱離する描像(図1e)
に対応する。
これらの炭化水素系の中間体種とは異なり完全酸化反応の中間体
種である一酸化炭素(CO)についてはPt助触媒とPd助触媒のそれぞ
れの表面に存在していることを確認,CO2生成はGa2O3表面ではなく,
金属助触媒の表面で起こる描像(図1d, 1e)として裏付ける。

図2.(a) Pt助触媒と(b) Pd助触媒を担持したGa2O3光触媒における
炭化水素中間体種のオペランド赤外吸収スペクトル。反応ガスのメ
タンと水蒸気の圧力がそれぞれ30 kPaと2 kPaでの測定。

これまで光触媒分野では,光誘起正孔によって引き起こされる酸化
反応は半導体(今回の試料の場合ではGa2O3)の表面で起こるものと
長年考えられてきたが,本研究での系統的な反応活性評価と触媒反
応場のその場分光観測により,「酸化反応サイトは半導体表面では
なくむしろ金属助触媒表面が担って
いる」という実像を捉えること
に世界に先駆けて成功する。上記の結果に加え,同グループでは反
応実験中に金属助触媒そのものが光誘起正孔によって酸化されてい
る様子を観測することにも成功。
これらの実験事実は,金属助触媒がGa2O3の光励起で生じた正孔を捕
捉・蓄積して酸化反応場として積極的機能を意味する(図1d, 1e)。
従来,PtやPdに代表される金属助触媒は光誘起電子を補足し蓄積し
専ら還元反応(今回では水素発生: 2H+ + 2e → H2)のサイトとし
て寄与するとされてきたが、今回、酸化反応場としても機能する金
属助触媒の新たな役割を発見した。
以上のような酸化反応の結果に加え、
同グループでは金属助触媒の担持により光誘起電子の還元反応(2H+
+ 2e → H2)の効率も顕著に増大している。一般に,半導体表面に
担持した金属助触媒が光誘起電子と正孔のそれぞれを同時に捕捉・
蓄積する場合は、電子と正孔の再結合が促進され光触媒としての機
能が失活するものと想定される。これに対し、金属助触媒の担持に
よって再結合の促進が誘起されず酸化反応と還元反応の両方が顕著
に促進されていることを突き止める。これらの実験事実は,同じ金
属種の助触媒であっても、担持されているサイトの違いなどから、
電子を主に捕捉する還元助触媒と、正孔を主に捕捉する酸化助触媒
に役割分担されている可能性を示唆する。
------------------------------------------------------------
【関係論文】
掲載誌(英) Angewandte Chemie International Edition, (独) Angewandte
Chemie
 
論文タイトル“Beyond Reduction Cocatalysts: Critical Role of Metal Co-
catalysts in Photocatalytic Oxidation of Methane with Water”(「
還元助触
媒を超えて:水による光触媒メタン酸化における金属助触媒の重要
な役割」)
著者:Hikaru Saito, Hiromasa Sato, Taisuke Higashi, and Toshiki Sugimoto
掲載日:2023年6月27日(オンライン公開)
DOI:(英) 10.1002/anie.202306058, (独) 10.1002/ange.202306058

補足説明
PCH4に依存したCO2 CC2H6への酸化の詳細な反応速度解析
rCO2 および rC2H6 の観察された PCH4プロファイルは メタン酸化
反応の速度論に対する顕微鏡的な洞察を提供。
特に、Pt/Ga2O3 と
Pd/Ga2O3 の rC2H6 の PCH4 プロファイルの異なる特徴はPtと Pd
助触媒の間の C2H6 形成の機構の違いを表している。光触媒表面
でのメタン酸化の反応速度を解明するために、PCH4プロファイルの
反応速度解析を実施しました。7b スキーム 1a に示すように、光
触媒表面での メタン酸化プロセスは、大きく次の3つのステップ
に分けることができます。 (i) 吸着と脱着 (ⅱ) 表面中間体の逐
次反応、および (ⅲ) 表面からの最終生成物の脱着。
CO2 への全酸化は 8 時間以上のプロセス 11 を経て進行し吸着さ
れたメタンからいくつかの中間体を経由して CO2 への詳細な反応経
路をスキーム 1b に示します。一方、C2H6への部分酸化は 2時間以
上のプロセスを経て進行し、単にカップリングとしてみなされる。
解離的に吸着されたメタン種、つまりメチルラジカルの量を調べま
す12 (Scheme 1c)。 スキーム 1 はメタン酸化の考えられる反応経
路を示しているだけであり、表面反応サイトについては次のセクシ
ョンで説明する。  -中 略-

スキーム 1
吸着水の一層で覆われた触媒表面上のメタンおよびメタン由来の表
面中間体の動的酸化モデル。水によるメタンの光触媒酸化では水の
酸化プロセスが律速されないため、図からは省略されている。
7b a) 反応速度論モデルおよび b) メタンからCO2 への全酸化の考
えられる 8 段階の反応経路および中間体 (スキーム 1a に示される
Xi、i=1 ~ 8; 例: X1=CH3,ad および X8=CO2,ad) 。 c)、 d) 光触
媒表面 (c)および気相 (d)における⋅CH3のカップリングによるエ
タンへの部分酸化の反応速度論モデル。
              -中 略-
CO2 および C2H6 形成の速度論的分析から計算された U 値は、表
S4 にも示されているようにエネルギー的に同等であったことは注
目に値する。 それにもかかわらず、CO2 生成に対する C2H6 生成
の比率 (図 1c)、および部分酸化プロセスの表面反応経路と気相反
応経路は、金属助触媒に応じて劇的に異なりました。 したがって、
我々の実験結果は、金属助触媒が酸化反応速度論 /ダイナミクスお
よび光触媒の選択性に根本的な影響を与えることを示しており、こ
れは明らかに金属助触媒の役割の従来の理解を超えている。

反応中間体の分光観察

反応中間体の分光観察 光触媒酸化反応に対する金属助触媒の影響に
関するさらなる証拠を得るために、オペランド拡散反射赤外フーリ
エ変換 (DRIFT) 分光法を実行しました。 反応条件下で記録された
炭化水素および CO 中間体のオペランド DRIFT スペクトル (図 2、
S10、および S11) は、Pt/Ga2O3 および Pd/Ga2O3 光触媒のこれら
の中間体の酸化速度論/動力学の違いを示しています。 Pt/Ga2O3
の C-H 伸縮スペクトル (図 2a) では、2975、2907、および 2818 c
m-1 に 3 つの吸収バンドが観察されました。これらは、吸着された
メタン種 13 と C の非対称および対称伸縮振動に起因すると考えら
れる。−メトキシ基のH対称伸縮振動14 メタン分子は、吸着エネル
ギーが極めて低いため(つまり、〜13 kJ/mol、表 S2)、UV光照射
がなければ周囲条件下では光触媒表面に吸着できないため、観察さ
れた炭化水素種は光触媒プロセスを通じて生成された中間体に由来
するものでした。 追加の実験 (図 S14) とサポート情報セクション
5 で説明されている議論により、 また、観察された表面の炭化水素
および CO 種は、不活性体ではなく、活性な中間体であると結論付
ける。

Pt/Ga2O3 とは対照的に、Pd/Ga2O3 では吸着された炭化水素中間体
に由来する吸収バンドは検出されませんでしたが (図 2b)、吸着さ
れた CO 中間体が観察されました (図 S11b)。 メタンのCO2 および
C2H6 への変換は CH3 種などの炭化水素中間体を介して進行するた
め (スキーム 1)、C-H 伸縮バンドが見かけ上存在しないのは、反応
速度が速いため、Pd/Ga2O3 表面上の炭化水素中間体の数が少ないこ
とに起因すると考えられます。 酸化ダイナミクス。 赤外吸光度 (
図 2) と rCO2 (図 1) の差から、Pd/Ga2O3 光触媒上の吸着された
炭化水素中間体の消費速度は、Pt/Ga2O3 光触媒よりも少なくとも 1
桁速いことが推定される。
さらに、Pd/Ga2O3 の C-H ピークの欠如は、⋅CH3 中間体の気相カッ
プリングによるエタン生成の反応スキーム (スキーム 1d) と一致す
る。 したがって、図 2に示すC-H伸縮スペクトルは、PtとPd助触媒
間の炭化水素中間体の酸化ダイナミクスの違いを裏付ける。Pt/Ga2O
3 光触媒と Pd/Ga2O3 光触媒の間の酸化ダイナミクスの違いは、全
酸化プロセスにおける吸着された CO 中間種のスペクトルでも明確
に観察されました (図 S11)。 吸着された CO 中間体のガス状生成
物としての気相への脱着は、Pt/Ga2O3 光触媒についてのみ検証され
たことに注意してください (図 S5)。 これらの結果は、CO 中間体
の挙動、つまり脱離とさらなる表面酸化が金属助触媒に応じて大幅
に調節されることを示唆しています。 Pd/Ga2O3 の場合、CO から C
O2 への酸化は CO 脱着よりもはるかに好ましいのに対し、Pt/Ga2O
3 の場合、CO 酸化は CO 脱着と競合。 中間ダイナミクスに対する
金属助触媒の影響は、裸の Ga2O3 のオペランド DRIFT 分光法によ
ってさらに裏付けられた。 図 S15に示すように、このサンプルでは
C-OおよびC-H伸縮モードの両方の吸収バンドは観察されず。 裸の
Ga2O3 は Pd/Ga2O3 に匹敵する活性と Pd/Ga2O3 よりも高い CO2
選択性を示したため (図 S4)、C-O 伸縮バンドの欠如は、金属助触
媒が CO を安定化する一方、Ga2O3 表面上では CO 中間体が不安定
であることを示す。 中間体を生成し、その寿命、つまり表面での滞
留時間を延長する。 裸の Ga2O3 光触媒の観察は、金属助触媒が光
生成された h+ によって駆動されるメタン酸化プロセス (スキーム
1b) に直接関与していることを強く示唆する。

Pt/Ga2O3 とは対照的に、Pd/Ga2O3 では吸着された炭化水素中間体
に由来する吸収バンドは検出されませんでしたが (図 2b)、吸着さ
れた CO 中間体が観察されました (図 S11b)。 メタンの CO2 およ
び C2H6 への変換は CH3 種などの炭化水素中間体を介して進行する
ため (スキーム 1)、C-H 伸縮バンドが見かけ上存在しないのは、反
応速度が速いため、Pd/Ga2O3 表面上の炭化水素中間体の数が少ない
ことに起因すると考えられる。
酸化ダイナミクス。 赤外吸光度 (図 2) と rCO2 (図 1) の差から、
Pd/Ga2O3 光触媒上の吸着された炭化水素中間体の消費速度は、Pt
/Ga2O3 光触媒よりも少なくとも 1 桁速いことが推定されます。 
さらに、Pd/Ga2O3 の C-H ピークの欠如は、⋅CH3 中間体の気相カ
ップリングによるエタン生成の反応スキーム (スキーム 1d) と一
致している。したがって図 2に示すC-H伸縮スペクトルは、PtとPd
助触媒間の炭化水素中間体の酸化ダイナミクスの違いを裏付ける。
Pt/Ga2O3 光触媒と Pd/Ga2O3 光触媒の間の酸化ダイナミクスの違
いは、全酸化プロセスにおける吸着された CO 中間種のスペクトル
でも明確に観察されました (図 S11)。 吸着された CO 中間体の
ガス状生成物としての気相への脱着は、Pt/Ga2O3 光触媒について
のみ検証されたことに注意してください (図S5)。これらの結果は
CO 中間体の挙動、つまり脱離とさらなる表面酸化が金属助触媒に
応じて大幅に調節されることを示唆。

Pd/Ga2O3 の場合、COから CO2への酸化は CO 脱着よりもはるかに
好ましいのに対し、Pt/Ga2O3の場合、CO酸化は CO脱着と競合する。
中間ダイナミクスに対する金属助触媒の影響は、裸の Ga2O3のオペ
ランドDRIFT分光法によってさらに裏付けられた。図 15に示すよ
うに、このサンプルではC-OおよびC-H伸縮モードの両方の吸収バン
ドは観察できなかった。裸の Ga2O3 は Pd/Ga2O3 に匹敵する活性
と Pd/Ga2O3 よりも高い CO2 選択性を示したため (図 S4)、C-O
伸縮バンドの欠如は、金属助触媒が CO を安定化する一方、Ga2O3
表面上では CO 中間体が不安定であることを示す。中間体を生成
し、その寿命、つまり表面での滞留時間を延長。 裸の Ga2O3 光
触媒の観察は、金属助触媒が光生成された h+ により駆動される
メタン酸化プロセス (スキーム 1b) に直接関与していることを強
く示唆。

金属助触媒サイトでの正孔の蓄積の発現
h+ による酸化挙動のさらなる違いは、Pt および Pd 助触媒の酸化
状態の観点から明確に検証された。表面金属原子の酸化状態と配位
環境は、CO 吸着物の伸縮周波数によって高感度に調査されること
がよく知られる
。この実験で、吸着された CO種は中間体として生
成される (図 3a および S11)。 したがって、吸着した CO 中間
体のオペランド DRIFT スペクトルに基づいて、使用した反応条件
下での金属助触媒の酸化状態を評価できる。このオペランド観察
では水由来の酸化中間体を追跡するために H218 O水同位体を使用。
この場合、C-18O 伸縮モードの波数は、標識されていない C16O 分
子と比較して約 50 cm-1 レッドシフトする。最近の研究7b は、酸
素の同位体標識が反応速度論/動力学に影響を与えない。



図3.a) 定常状態の反応条件下で、さまざまな値の PCH4 で Pt
/Ga2O3 表面に吸着した C18O のオペランド ドリフト スペクトル
。 スペクトルは、H218O 分圧 2 kPa で測定されました。 さまざ
まなメタン分圧における Pt2+ と b) O および c) CO2 の生成速
度の変化。 Pt2+ の割合は、C18O 吸収バンドのピークデコンボリ
ューションから計算されました (図 S12)。 d) Pt2+の割合とO2お
よびCO2の生成速度との間の線形関係。

図 3aは、Pt/Ga2O3に吸着されたC18O中間体のオペランドDRIFTスペ
クトルを示しています。広い非対称C-18O伸縮バンドには、~2015
と~1990 cm-1の2つの成分が含まれる。 これらのピークは、それ
ぞれ配位的に不飽和の Pt2+ および Pt0 サイトに吸着した C18O
分子に起因。15a-15c 対照的に、~2080 および~045 cm-1 の吸
収バンドは、配位的に飽和した Pt2+ および Pt0 テラスに吸着し
た C18O 分子に起因。 15a Pd/Ga2O3 の場合、?1880 cm-1 で広い
吸収バンドが観察された (図 S11d)。これは、低いカバレッジで
の C18O 種の架橋、または三重構造に吸着された C18O 分子に起因
すると考えられる。金属 Pd (つまり Pd0) の中空サイト。15d、
15e C-16O 伸縮バンドが存在しないことは、Ga2O3 の表面格子酸
素のほとんどがメタンの酸化に直接寄与していないことを示す。


Figure S16. SEM images of a) the bare Ga2O3, b) as-prepared Pt/Ga2O3,
and c) Pd/Ga2O3 surfaces. EDX mappings images of  
d) the as-prepared
Pt/Ga2O3 and e)Pd/Ga2O3. via Supporting Information

以下、時間の都合上割愛(後略)➲残件後日掲載。
                        この項つづく

【関連特許事例】
1.特開2023-98433 メタネーションシステム 株式会社日立製作所
【概要】
特表2015-513531号では、メタネーションの反応熱で水を加熱し 加
熱した水を水蒸気電解の供給原料として利用することが記載されて
いるが、特許文献1に記載の従来技術では、エネルギー効率が向上
するものの、下記式(1)に示す通り、反応熱だけでは電気分解へ
供給する蒸気に必要な蒸発熱をすべて賄うことはできない。
4H2O(l)→4H2O(g) ΔH=176kJ/mol (1)
そのため、2相流状態の制御や追加の加熱が必要となり、装置の複
雑化や電力消費によるエネルギー効率低下が起こる。また、メタネ
ーション反応器の温度制御のため、水の流量を変更した場合、電解
に必要な水蒸気が不足する。 上述の課題に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、固体酸化物形電解セルでの水蒸気電解に必要と
される水蒸気を効率的に生成するメタネーションシステムを提供す
ることである。
下図1のごとく、メタネーションシステムは、少なくとも水蒸気を
含有するガスから水素を生成する固体酸化物形電解セルと、前記水
素と二酸化炭素を含有するガスからメタンを生成する第1メタネー
ション反応器と、前記固体酸化物形電解セル及び前記第1メタネー
ション反応器を接続し、前記固体酸化物形電解セルで生成された水
素を含有するガスを前記第1メタネーション反応器へ供給する第1
供給配管と、前記第1メタネーション反応器で生成されたメタンを
含有するガスから少なくとも水蒸気を分離する分離装置と、前記分
離装置及び前記固体酸化物形電解セルを接続し、前記分離装置で分
離された水蒸気を前記固体酸化物形電解セルへ供給する第2供給配
管と、を備えることで、固体酸化物形電解セルでの水蒸気電解に必
要とされる水蒸気を効率的に生成するメタネーションシステムを提
供する。

図1 システムの概略構成を示すブロック図

【符号の説明】 1A、1B、1C、1D、1E メタネーションシ
ステム、10 固体酸化物形電解セル、20 第1メタネーション反
応器、25 第2メタネーション反応器、32 分離膜(分離装置)、
40 供給装置、50 圧縮機(昇圧装置)、60 凝縮器、70 冷
却装置、90 第1供給配管、92 第2供給配管、94 第3供給配
管、 96 第4供給配管、98 第5供給配管 

【発明の効果】
本発明のメタネーションシステムによれば、固体酸化物形電解セル
での水蒸気電解に必要とされる水蒸気を効率的に生成するメタネー
ションシステムを提供することができる。上記以外の課題、構成お
よび効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも水蒸気を含有するガスから水素を生成す
る固体酸化物形電解セルと、前記水素と二酸化炭素を含有するガス
からメタンを生成する第1メタネーション反応器と、前記固体酸化
物形電解セル及び前記第1メタネーション反応器を接続し、前記固
体酸化物形電解セルで生成された水素を含有するガスを前記第1メ
タネーション反応器へ供給する第1供給配管と、前記第1メタネー
ション反応器で生成されたメタンを含有するガスから少なくとも水
蒸気を分離する分離装置と、前記分離装置及び前記固体酸化物形電
解セルを接続し、前記分離装置で分離された水蒸気を前記固体酸化
物形電解セルへ供給する第2供給配管と、を備える、ことを特徴と
するメタネーションシステム。
【請求項2】 前記分離装置は、前記メタンを含有するガスから前
記水蒸気とともに水素を分離し、分離された前記水素は、前記第2
供給配管を通じて前記固体酸化物形電解セルへ供給される、ことを
特徴とする請求項1に記載のメタネーションシステム。
【請求項3】 前記第1メタネーション反応器へ供給される前記ガ
スにおけるH2/(4×CO2+3×CO)の値が1より大きくな
るように、前記固体酸化物形電解セルへ供給する電流値を制御する
制御装置を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のメタネーシ
ョンシステム。
【請求項4】 前記第1メタネーション反応器においてメタンが生
成される際の反応熱を利用して水から水蒸気を生成する熱交換器と、
前記第1メタネーション反応器及び前記第2供給配管を接続し、前
記熱交換器により生成された水蒸気を前記第2供給配管に供給する
第3供給配管と、を有する、ことを特徴とする請求項1から3のい
ずれか一項に記載のメタネーションシステム。
【請求項5】 前記分離装置において少なくとも水蒸気が分離され
たガスからメタンを生成する第2メタネーション反応器と、前記分
離装置及び前記第2メタネーション反応器を接続し、少なくとも水
蒸気が分離された前記ガスを前記第2メタネーション反応器に供給
する第4供給配管と、を有する、ことを特徴とする請求項1から4
のいずれか一項に記載のメタネーションシステム。
【請求項6】 前記分離装置は、前記第1メタネーション反応器で
生成された前記ガスから、少なくとも水蒸気を分離する分離膜であ
り、 前記第1供給配管に設けられ、前記固体酸化物形電解セルで生
成された前記ガスを所定の圧力まで昇圧する昇圧装置を有する、こ
とを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のメタネ
ーションシステム。
【請求項7】 前記第1供給配管において、前記固体酸化物形電解
セルと前記昇圧装置との間に設けられ、前記固体酸化物形電解セル
で生成された前記ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のメタネーションシステム。
【請求項8】 前記第1メタネーション反応器及び前記分離装置を
接続し、前記第1メタネーション反応器で生成された前記ガスを前
記分離装置に供給する第5供給配管と、 前記第5供給配管に設け
られ、前記第1メタネーション反応器で生成された前記ガスを、前
記分離膜の耐熱温度より低い温度、且つ、前記ガスに含まれる水蒸
気の凝縮温度より高い温度に冷却する冷却装置と、を有する、こと
を特徴とする請求項6又は7に記載のメタネーションシステム。


図1.細胞外小胞のマイクロフロー光濃縮の概念図 

光の力でナノ粒子の効率的な検出に成功 
7月11日、大阪公立大学の研究グループは,光の力でがん細胞由来
ナノ粒子の効率的な検出に成功。従来の光濃縮検出研究では,光の
力で捕捉した金属ナノ粒子集合体の発熱効果による対流でDNAの二
重鎖形成の光誘導加速に成功しており,さらに抗原抗体反応のマイ
クロフロー光誘導加速による微量検出にも成功しているが、エクソ
ソームなどのナノスケールの細胞外小胞(EV)は光の波長より小さ
く,光圧の作用も弱く,発熱効果による対流を用いた場合には熱的
ダメージも懸念され,微量検出にこれらの方法論が使えるかどうか
はこれまで不明だった。また,夾雑物を多く含む細胞上清に適用で
きるかどうかも未解決の重要課題だった。
【要点】
1.00 nLの微量サンプルに含まれる約1,000個~1万個のナノサイ
 ズ細胞外小胞を5分で計測
2.複雑な工程で検出に数時間を要していた超遠心分離機※1での
 工程を省略可能に
3.細胞間コミュニケーションの革新的な解析や、がんを含むさま
 ざまな疾患の早期診断に貢献
【概要】
大腸がん細胞株および肺がん細胞株から分泌されたEV を標的とし
て、それぞれのEV 表面の複数種類の膜タンパク質の各々と特異的
に結合する抗体を修飾した直径2 μm のビーズを幅100 μm 程度の
マイクロ流路中に一定流量で導入し、レーザー照射により生じる光
圧による濃縮・集積化を行いました(図1)。さらに、マイクロフ
ロー光濃縮により形成された抗体修飾ビーズとEV の集積構造の光学
透過像を観察し、全集合面積に対する多層部分(黒色部分)の面積
の割合を、レーザースポット位置を変えて測定し(図2(a))、ス
ポット位置65 μm 下方の時が最も高い直線性が得られることを確認
した(図2(b)はこの条件での透過像)。さらに、同じスポット位
置で共焦点光学システムを用いて3 次元解析を行ったところ、EV
量と立体的な集積構造の側面から見た場合の面積もEV 濃度と正の
相関を示すことを明らかにしました。これらの結果は、レーザース
ポット位置を変化させることで光誘起力の強さを変調し、検量線の
直線性と誤差を制御できる可能性も示す(図2(a))。

【展望】超高速・高感度・定量的な生体ナノ粒子計測の手法を提供
するものであり、将来的に細胞間コミュニケーションの革新的な解
析や、がん・炎症・免疫等を含むさまざまな疾患の早期診断の基盤
となる技術を提供する。また、光圧の作用範囲を変化させることで、
数多くの生物学的ナノ粒子の超高速・高感度な定量計測を可能にし
従来法の複雑さに伴う検出効率や操作時間のボトルネックを克服す
ることができる。
------------------------------------------------------------

図1.開発したデバイスとハイスループット細胞イメージング➲
本手法では、従来のハイスループットイメージング手法に使用され
るマイクロ流体デバイスのサイズを小型化し、試料添加や排出のた
めのチューブ接続を 流路と同一平面 にすることで、圧力よる損失
を低減し、試料の紛失やダメージを回避することができました。さ
らに、高い流速の絞り効果を活かして、試料の分布を画像取得領

へ細胞を誘導するとともに焦点ズレを抑えることで生体試料のイメ
ージングを実現。

数百万個の細胞画像を1秒で撮ることに成功
高速で流れる数百万個の細胞画像を1秒で撮ることが可能に超ハイ
スループットマイクロ流体デバイスの開発
~創薬、治療法の開発や生命科学研究の質向上に期待~

7月14日、奈良先端科学技術大学の研究グループは、マイクロ流体
デバイ スという微小な流路内に 細胞 を流し、 ハイスループット
(高処理能力)で イメージング (可視化する装置の 性能を飛躍
的に向上させることに成功し、世界で初めて毎秒40メートの超高速
で生体試料を流すことが可能となる。これまでの難点 であった 微
小流路内の流速 制限や画像取得時の焦点のズレ に加えて試料が受
けるダ メージ、画像取得領域での細胞捕捉率向上の問題について
デバイスの最適化設計により克服しました。さらに、超高速光タイ
ムストレッチ法 という画像取得の方法と組み合わせることで毎秒
270万-800万個の細胞のイメージが撮れる超 ハイスループットイメ
ージングを可能に した 従来の十数倍以上の効率。血液中のがん細
胞の早期発見など診断、治療法の開発や創薬への貢献が期待されて
いる。
【要約】まず、従来のハイスループットイメージング手法に使用さ
れるマイクロ流体デバイスのサイズを従来の1/4 サイズに小型化し
た(図2A)。この小型化により、デバイス全体のコストを75%削減
することができ、流路も短くなり、圧力損失も最大で70%減少した。
また、シリンジなどの送液系と接続するチュービングも、従来の垂
直接続方式から水平接続に変更することで(図2B)、圧力損失をさ
らに低減し、試料の紛失やダメージを回避することができた。さら
に、極めて高い流速の場合、微小チャネル内で生体試料の三次元フ
ォーカシング効果を発見した。従来の低流速時の試料分布と比較す
ると(図2C、毎秒1メートル)、高流速時では試料の分布がより小
さい領域に抑えられ(従来と比べ66%改善)(図2C、毎秒40 メー
ル)、イメージングの焦点ズレ現象と流路の詰まりを効率的に防ぐ
ことができた。
以上の改善により、本デバイスは従来のハイスループットイメージ
ング用のデバイスに比べて優れた性能を示し、従来の十数倍以上の
効率でイメージングが可能となった(図3)。

図2.超高流速への対応を可能にするマイクロ流体デバイス。マイ
 クロ流体デバイスの超小型化や垂直接続から水平接続への変更、
 高速液体の流れによる試料の三次元フォーカシング効果を活用す
 ることが、「超」ハイスループットイメージング手法の実現の鍵
 となる。
【本研究成果の掲載URL】
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2023/lc/d3lc00237c



 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2018年代

ゴンチチ(GONTITI)は、ゴンザレス三上(本名・三上雅彦、1953年
12月30日 - )とチチ松村(本名・松村正秀、1954年9月6日 - 共に
大阪府出身)の2人から構成されるアコースティック・ギターデュオ。
日本人によるポップなギターデュオの元祖で、自らの音楽性につい
て「地球一番快適音楽」を標榜。



日本人によるポップなギターデュオの元祖。三上と松村の二人がア
コースティック・ギターを演奏するのが基本スタイル、に加えて、
打ち込みによるデジタルサウンドを組み合わせることも大きな特徴。
自身の音楽性について「地球一番快適音楽」を標榜するように、純
粋に非日常的な楽しさのみを追求して作品を制作、イージーリスニ
ング的で、エキゾティックな雰囲気を持つインストゥルメンタル楽
曲が殆ど。 万人受けする作風と捉えられているが、実際の作風は
少しアートで、一般に知られている「放課後の音楽室」に代表され
るアコースティック作品もあれば、電子音楽的な尖った作品もある。
ギターと打ち込みは、予算が少なかった1983年のデビュー・アルバ
ム『ANOTHER MOOD』の制作で借りたスタジオに偶然置いてあったフ
ェアライトCMI(当時日本に2台しかなかったデジタル・オーディオ・
ワークステーション)を、豪華にするために松浦雅也の協力を得て
試験的に導入した頃から続く。jp.Wikipedia

● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす

 

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最新二酸化炭素メタネーション技術 ②

2023年07月16日 | 環境リスク本位制

 


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。


剪定する不要枝の概念
自然な枝の伸び方に逆らっているもの。樹形を乱す枝など。
•逆さ枝・・・木の内側に向かって伸びる枝/•立ち枝・・・極端に
立って伸びる枝/•平行枝・・・ほかの枝と平行に伸びる枝/•徒長
枝・・・勢いよく伸びている枝/•樹形を乱す枝/•胴吹き枝・・・
幹から飛び出して伸びる枝/•ひこばえ・・・根元から伸びる枝

1〜2年に一度、落葉後の休眠期に行う。百日紅の剪定は落葉期の
12月〜3月に行えるが、耐寒性の弱い種類もあるので、2月〜3
月中旬ごろがおすすめ。冬に強く剪定してもダメージは少ない。太
い枝なども休眠期に切ると良い。百日紅は不要な枝を整理すること
で、翌年の花付きが良くなる。花をたくさん咲かせるために上手に
剪定したい。百日紅の花は、春から伸び出す新梢だけにつくので、
細い枝やふところ枝は切り取る。また、太い枝で剪定すると、萌芽
枝に大きな花が咲き、細い枝で剪定すると、小さな花がたくさん咲
く。早く花が咲いた枝は、花が終わりかけた頃に早めに剪定するこ
とで、もう一度花を咲かせることができる。上手に剪定して2度咲
きを楽しむ。
また、「こぶをの下のところで切る」ことで見苦しくなったこぶを
剪定する。


        豪雨明け過去最高の日照りかな
                      

日中の室温が30℃を超えるなか、河川敷の法面の雑草を刈る。百
日紅などの苗木の剪定が気になり剪定のコツをネットサーフする。
剪定の本を図書館で閲覧しようとしたが海の日は休館日。

     

 

  

【再エネ革命渦論 148: アフターコロナ時代 149】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉚




出典:資源エネルギー庁 2022.4.14

最新二酸化炭素メタネーション技術 ②
今回は、二酸化炭素由来合成メタン製造技術の基本構想に触れてお
こう。再エネ(風力・水力・太陽光・バイオマス)による水電解水
素製造(基本反応➲4H2O + 20 kWh → 4H2 + 2O2)と二酸化炭素排
出減から回収した二酸化炭素からメタンを合成(CO2 + 4H2 → CH4
+ 2H2O + 7.4 MJ;発熱反応)する。
尚、水電解水素は固体高分子膜、メタネーションはニッケル系無機
触媒を熱交換器に充填した装置をイメージ。
ref:株式会社INPEX➲NEDO-CO2有効利用技術開発事業, 2021.6.28

以上のことを踏まえ関連する最新特許などの情報摘出しする。
表1.

出典:2021年12月23日産業構造審議会グリーンイノベーションプロ
ジェクト部会エネルギー構造転換分野ワーキンググループ資料5より
資源エネルギー庁作成

【最新関連技術情報】
1.特開2023-5065 リアクタ及びリアクタシステム 日本碍子株式
 会社
【概要】
メタネーション反応のような発熱反応によって所望物質を合成する
場合には、化学反応の場で発生した熱により触媒が過熱して失活す
ることを防止するために、熱を迅速に系外に除去する必要がある。
また、吸熱反応によって所望物質を合成する場合には、化学反応の
場に必要な熱を外部から迅速に供給する必要がある。

下図1のごとく、リアクタ10は、第1端面S1から第2端面S2
まで延びる複数のセル30を規定する隔壁20を備える。隔壁20
は、第1端面S1の平面視において第1方向に沿って延びる複数の
第1隔壁21と、第1端面S1の平面視において第2方向に沿って
延びる複数の第2隔壁22とを含む。各第1隔壁21は、熱伝導材
料が充填された細孔を含み、各第2隔壁は、空洞の細孔を含む。化
学反応の場で発生する熱を除去し、または、化学反応の場に必要と
される熱を供給する簡便な構造のリアクタ及びリアクタシステムを
提供する。

図1.実施形態に係るリアクタを第1端面側から見た斜視図
【符号の説明】10 リアクタ 20 隔壁 21第1隔壁 22
第2隔壁 23 外壁 30 セル 31 触媒セル 32 流入セル
33 流出セル 40 触媒含有材料 S1 第1端面 S2 第2端
面 S31 第1側面 S32 第2側面 S33 第3側面 S34
第4側面 CS セルセット
【発明の効果】
本発明によれば、化学反応の場で発生する熱を除去し、または化学
反応の場に必要とされる熱を供給する簡便な構造のリアクタ及びリ
アクタシステムを提供することができる。

2.特開2022-137626 可逆型燃料電池システム及びその運転方法
国立大学法人九州大学

【概要】
水素製造と発電とを可逆的にできるエネルギーシステムとして、
体酸化物形可逆燃料電池(Solid Oxide Reversible Cells、以下SOR
C)がある。SORCは、互いに逆反応である発電技術である固体
酸化物形燃料電池(SOFC)と水素製造技術である固体酸化物形
水蒸気電解装置(SOEC)を1つのデバイスで可逆に行うシステ
ムであり、近年特に注目されている。

数百度後半(例えば800℃)での水蒸気電解による水素製造と燃
料電池による可逆セル(SORC)である可逆型燃料電池システム
の開発に向けた最大のボトルネック課題は、水素ガスや水蒸気が反
応ガス(燃料または原料)として供給される電極(燃料極)で高水
蒸気濃度(分圧)下で安定な材料が無かったことであった。水蒸気
電解は高温型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電の逆作動と
言えるが、既存のSOFCの燃料極には金属Niと固体電解質成分
である安定化ジルコニア(ZrO2)の多孔複合体である「Niサ
ーメット」が広く使われてきた。しかし、金属Niは燃料電池シス
テムの下流域で水蒸気濃度が80%を超えるような条件下では(特
に電流密度が高くなると)金属Niが酸化され始める。酸化されて
NiOが生成すると金属Niと比べて体積が数割膨張する。逆にNi
Oが再度、金属Niにまで還元されると体積が大幅に収縮する。こ
の酸化還元サイクルを繰り返すと、燃料極の多孔構造が壊れていき、
Ni粒子の凝集などを起こし、性能劣化が加速するという課題があ
った。

また、固体酸化物形水蒸気電解セルは固体酸化物形燃料電池セル(
0.6V~1.0V程度)よりも更に高い電位下で使用される。水
蒸気電解セルを特に再生可能エネルギーの貯蔵を目的に利用する際
には高い電位(1.1V~1.6V程度)で電位変動の激しい状況
下で用いられるため、SOEC用電極には、SOFC用電極より高
電位における高い耐久性が求められる。 かかる状況下、本発明の目
的は、SOEC(水蒸気電解)とSOFC(発電)の切り替えを行
っても安定して運転を行うことができる燃料電池本体を有する可逆
型燃料電池システムを提供することにある。 すなわち、本発明は、
以下の発明に係るものである。

<1> 可逆型燃料電池システムであって、
固体電解質と、前記固体電解質の一方面側に配置された空気極と、
前記固体電解質の他方面に配置された燃料極とを有する燃料電池本
体と、少なくとも水素を含む燃料ガスを前記燃料極に供給する燃料
供給部と、少なくとも酸素を含む酸素含有ガスを前記空気極に供給
する酸素供給部と、前記燃料極または前記空気極に水を供給する水
供給部と、を備え、前記燃料極が、電子伝導性酸化物及びイオン伝
導性酸化物から構成される電極骨格と、当該電極骨格の表面に担持
された電極触媒金属及びイオン伝導性酸化物から構成される複合電
極触媒と、から構成される可逆型燃料電池システム。

<2> 前記燃料極における電子伝導性酸化物が、
組成式がABO3で表されるペロブスカイト型酸化物であって、Aサ
イトがCa、Sr、Ba、Laの群から選ばれる少なくとも1種で
あり、BサイトがTiである、Ti含有ペロブスカイト型酸化物で
ある<1>に記載の可逆型燃料電池システム。

<3> 前記燃料極の電極骨格におけるイオン伝導性酸化物が、Gd2
O3ドープCeO2又はSm22O3ドープCeO2である<1>または<
2>に記載の可逆型燃料電池システム。

<4> 前記燃料極における複合電極触媒におけるイオン伝導性酸化
物が、Gd2O3ドープCeO2又はSm23ドープCeO2である<1>
から<3>のいずれかに記載の可逆型燃料電池システム。

<5> 前記燃料極における複合電極触媒における電極触媒金属が、
ロジウムまたはロジウムを含む合金から構成される<1>から<4
>のいずれかに記載の可逆型燃料電池システム。

<6> 前記燃料極における複合電極触媒における電極触媒金属が、
ニッケルまたはニッケルを含む合金から構成される<1>から<4
>のいずれかに記載の可逆型燃料電池システム。

<7> <1>から<6>のいずれかに記載の可逆型燃料電池システ
ムを使用して、500℃以上1000℃以下の温度域で水蒸気電解
と発電を繰り返し行う可逆型燃料電池システムの運転方法。

図5のごとく、可逆型燃料電池システムであって、燃料極と、空気
極と、前記燃料極と前記空気極との間に設けられ、固体酸化物を含
む電解質部とを有する燃料電池本体と、少なくとも水素を含む燃料
ガスを前記燃料極に供給する燃料供給部と、少なくとも酸素を含む
酸素含有ガスを前記空気極に供給する酸素供給部と、前記燃料極ま
たは前記空気極に水を供給する水供給部と、を備え、前記燃料極が、
電子伝導性酸化物及びイオン伝導性酸化物から構成される電極骨格
と、当該電極骨格の表面に担持された電極触媒金属及びイオン伝導
性酸化物から構成される複合電極触媒と、から構成される可逆型燃
料電池システムである、SOEC(水蒸気電解)とSOFC(発電)
の切り替えを行っても安定して運転を行うことができる燃料電池本
体を有する可逆型燃料電池システムを提供する。また、固体酸化物
形水蒸気電解セルは固体酸化物形燃料電池セル(0.6V~1.0
V程度)よりも更に高い電位下で使用される。水蒸気電解セルを特
に再生可能エネルギーの貯蔵を目的に利用する際には高い電位(1.
1V~1.6V程度)で電位変動の激しい状況下で用いられるため
、SOEC用電極には、SOFC用電極より高電位における高い耐
久性が求められる。 かかる状況下、本発明の目的は、SOEC(水
蒸気電解)とSOFC(発電)の切り替えを行っても安定して運転
を行うことができる燃料電池本体を有する可逆型燃料電池システム
を提供することにある。


図5.実験例1、実験例2及び参考例のSOFC/SOEC可逆サイ
クル試験の評価結果である。
【発明の効果】
本発明によれば、SOEC(水蒸気電解)とSOFC(発電)の切
り替えを行っても安定して運転を行うことができる可逆型燃料電池
システムが提供される。
以下、割愛(後略)。

3.特開2022-94211 CO2メタネーション触媒及びその製造方法
  と
メタンの製造方法 日鉄エンジニアリング株式会社
【概要】
下図1のごとく、 本発明に係るCO2メタネーション触媒は、CO
2と水素を反応させてメタン化するメタネーション反応用触媒であ
って、アルミナを担体として、ニッケルを活性金属とし、且つ、塩
基性酸化物を助触媒として担持し、前記塩基性酸化物が、酸化ラン
タン、酸化イットリウム、及び、酸化プラセオジムの群から選ばれ
る1種又は2種以上であることを特徴とする、本発明は、高いガス
処理速度で反応させても、比較的低温で、従来よりも高いメタン収
率が得られるCO2メタネーション触媒及びその製造方法とメタン
の製造方法を提供することを目的とする。

図1.実施例及び比較例でのCO2メタネーション反応触媒の性能
  
を比較したグラフ

【発明を実施するための形態】
<CO2メタネーション触媒>
以下、具体例を示しつつ、本発明に係るCO2メタネーション触媒
について更に詳細に説明する。 本発明の第1の実施形態に係るCO
2メタネーション触媒は、アルミナを担体として、アルミナに担持
されたニッケルと、ニッケル及びアルミナとそれぞれ接して界面を
有する塩基性酸化物とを含んでなるものである。 ニッケルは、二酸
化炭素と水素とからメタンを生成するメタネーション反応において、
水素分子の解離吸着を進行させる主活性成分、及び、触媒表面水素
原子と担体上に吸着したCO2由来の表面吸着COとから、CH4
を生成するための主活性成分として機能する。 塩基性酸化物は、触
媒とCO2との親和性を向上させ、CO2の反応性を高めると共に、
活性金属であるニッケルに電子を供与することで、ニッケル表面で
の反応性を向上させることができる。塩基性酸化物としては、酸化
ランタン、酸化イットリウム、酸化プラセオジムが挙げられる。

アルミナは、反応場としての担体の役割を果たし、ニッケルや塩基
性酸化物を微粒子として高分散させることができる。ニッケルは、
触媒製造時に酸化ニッケルの状態で存在し、二酸化炭素と水素からメ
タンを製造する反応前に、触媒の前処理として水素還元処理によっ
て、酸化ニッケルを金属ニッケル微粒子に還元することができる。
この還元処理において、塩基性酸化物が酸化ニッケルとアルミナの
それぞれの界面に存在することによって、酸化ニッケルを金属ニッ
ケルに還元させやすい。ニッケルや塩基性酸化物はアルミナ上に微
粒子として存在するが、ニッケルあるいは塩基性酸化物を構成する
元素の一部がアルミナに固溶してもよい。 本実施形態に係るメタン
の製造方法で用いるCO2メタネーション触媒は、Ni/MOX/
Al2O3で表すことができる。主活性成分であるニッケル含有量
が金属換算で、触媒全体の質量に対し10質量%以上30質量%以
下が好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましい。

ニッケル含有量が10質量%未満では、CO2の水素化(メタネー
ション)反応性能が十分発揮されない。ニッケル含有量が30質量
%を超えると、ニッケルが粗大化しやすくなると共に、製造コスト
も高価になる
塩基性酸化物のうち、酸化ランタンや酸化イットリウムの含有量は、
触媒全体の重量に対し4質量%以上30質量%以下である。 酸化ラ
ンタンや酸化イットリウムの含有量が4質量%未満では、CO2の
水素化(メタネーション)反応性能が十分発揮されない。また、
化ランタンや酸化イットリウムの含有量が30質量%を超えると、
CO2の水素化(メタネーション)反応性能に与える効果が発揮し
にくくなること、高価であることから、使用量を抑えることが必要
である。 また、塩基性酸化物のうち、酸化プラセオジムの含有量は
触媒全体の重量に対し10質量%以上30質量%以下である。 酸化
プラセオジムの場合も、含有量が10質量%未満では、CO2の水
素化(メタネーション)反応性能が十分発揮されない。また、含有
量が30質量%を超えると、CO2の水素化(メタネーション)反
応性能に与える効果が発揮しにくくなること、高価であることから、
使用量を抑えることが必要である。 上記塩基性酸化物は、1種類
のみ含有でもよいが、2種類あるいは3種類が混合されていてもよ
い。 酸化ランタンと酸化イットリウムの混合の場合は、2種類の含
有量が触媒全体の重量に対し4質量%以上30質量%以下が好まし
い。また、酸化ランタンまたは酸化イットリウムと、酸化プラセオ
ジムの混合の場合は、2種類の含有量が触媒全体の重量に対し10
質量%以上30質量%以下が好ましい。さらに、3種類が混合の場
合は、3種類の含有量が触媒全体の重量に対し10質量%以上30
質量%以下が好ましい。 アルミナは、比表面積が比較的大きいγ-
アルミナを用いることが好ましいが、水酸化アルミニウムを焼成し
て得られるγ-アルミナを製造して使用してもよい。アルミナの含
有量は、触媒全体の質量に対し、ニッケル及び塩基性酸化物の質量
に応じてバランスされるものである。 また、上記方法で製造され
た触媒は、粉末であってもよいし、成形体であっても良い。粉末で
あれば粒径や表面積を、また、成形体であれば表面積と強度との兼
ね合いで細孔容積、細孔径、形状等を適宜調整することが好ましい
成形体は、球状、シリンダー状、リング状、ホイール状、粒状等い
ずれでもよく、さらに、金属またはセラミックスのハニカム状基材へ
触媒成分をコーティングしたもの等いずれでもよい。また、各金属
種の含有量を上記範囲になるように調製するためには、各出発原料
を予め計算の上、必要量準備しておくことが好ましい。尚、一度触
媒が狙いの成分組成となれば、それ以降はその時の配合で調製すれ
ばよい。 また、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避
的不純物や触媒性能が変わらない他成分を含んでも構わないが、で
きるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。

なお、上記触媒を構成する各金属種の含有量の測定方法は、任意の
方法が利用可能であるが、本実施形態を実施するうえで必要となる
精度で成分分析を行うにあたっては、蛍光X線分析を用いることが
簡便である。ただし、周期表の第二周期までの軽元素(水素、ヘリ
ウム、窒素、酸素を除く。)が含まれる場合には、蛍光X線分析で
は正確な成分分析が困難となる。
従って、より正確な濃度を知りたい場合には、高周波誘導結合プラ
ズマ法を用いてもよい。具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解
剤(例えば、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、等)を加えて白
金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させ
る。 その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内
の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基
底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、
その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することが
できる。 また、調製した触媒でニッケルや塩基性酸化物の結晶構造
を確認するために、触媒の広角X線回折法(XRD)による結晶構
造解析が行える。具体的には、粉末状態の試料をホルダーにセット
し、Rigaku製SmartLabを用い、40kV、30mA
の出力でCuKα線を発生させ、受光スリットを0.15mmとし
て、サンプリング幅0.02deg、スキャン速度を2deg/m
inの条件で測定し、ピーク位置、強度により結晶構造を評価でき
る。
<CO2メタネーション触媒の製造方法>
次に、本発明の第2の実施形態に係るCO2メタネーション触媒の
製造方法について説明する。 本実施形態のCO2メタネーション触
媒は、アルミナを担体として、アルミナに担持されたニッケルと、
ニッケル及びアルミナとそれぞれ接して界面を有する塩基性酸化物
とを含んでなるものである。 本実施形態に係るCO2メタネーショ
ン触媒の製造方法は、塩基性酸化物の塩を水溶液にして、アルミナ
に含浸する触媒担体製造工程と、前記触媒担体を乾燥、焼成する工程
と、前記乾燥、焼成した触媒担体に、ニッケルの塩を水溶液にして
、含浸する触媒混合物製造工程と、前記触媒混合物を乾燥、焼成す
る触媒化工程を有する。これらの工程を実施することによって、上
記能力を有するCO2メタネーション触媒を製造できる。 

一方、塩基性酸化物の塩とニッケルの塩を同時に水溶液にして、ア
ルミナに含浸する触媒混合物製造工程と、前記触媒混合物を乾燥、
焼成する触媒化工程とによって、上記能力を有するCO2メタネー
ション触媒を製造することもできる。上述の製造方法で製造された
触媒は、アルミナ上に塩基性酸化物及びニッケルを高分散させるこ
とができ、また、助触媒の塩基性酸化物がニッケル及びアルミナの
界面に接するように存在し、その機能を効率的に発揮できる。従っ
て、CO2のメタネーション反応の活性が高く、且つ長期間にわた
り、安定した活性を維持することができる。 

以下に、具体的な製造方法1について説明する。 塩基性酸化物の前
駆体に、ランタン、イットリウム、プラセオジムのいずれかの化合
物を水溶液にして、アルミナ担体に含浸する。含浸する方法は、
incipient wetnessでも蒸発乾固法でもよい。塩基性元素を含浸した
アルミナ担体を、乾燥、焼成することで塩基性酸化物が担持されたア
ルミナ担体を得る。ニッケル化合物の水溶液を、塩基性酸化物が担
持されたアルミナ担体に含浸する。ここで含浸する方法は、incipient
wetness
法でも蒸発乾固法でもよい。 ニッケルを含浸した塩基性酸
化物担持アルミナを、乾燥、焼成することで触媒酸化物を得ること
ができる。
次に、具体的な製造方法2について説明する。 塩基性酸化物の前駆
体に、ランタン、イットリウム、プラセオジムのいずれかの化合物
と、ニッケル化合物を水溶液にして、アルミナ担体に含浸する。含
浸する方法は、incipient wetness法でも蒸発乾固法でもよい。塩基性
元素及びニッケルを含浸したアルミナを、乾燥、焼成することで触
媒酸化物を得る。 ここで、製造方法1、2における混合物の乾燥は、
特に温度や乾燥方法を問わず、一般的な乾燥方法であればよい。乾
燥後の混合物は必要に応じて粗粉砕を行った後、焼成してもよい。
なお、流動層等の乾燥により乾燥後の混合物が粉状を保っている場
合は、粗粉砕は不要である。 また、上記混合物の焼成は、空気中
で行うことができ、温度は500~700℃(500℃以上700
℃以下)の範囲が好ましい。焼成温度が高いと混合物の焼結が進行
し、強度は上昇するが、一方で比表面積が小さくなるために触媒活
性は低下するため、そのバランスを考慮して決定するのが望ましい。
また、ニッケルや塩基性酸化物の前駆体化合物の分解温度を考慮し
て、550~650℃(550℃以上650℃以下)で焼成するこ
とがより好ましい。

焼成後の焼成物は、そのまま触媒として使用することもできるが、
プレス成形等で成形して成形物して使用してもよい。 より具体的に
は、塩基性酸化物の前駆体に、ランタン、イットリウム、プラセオ
ジムのいずれかの化合物の水溶液を作成する際、水に対して溶解度
の高い各金属化合物を用いることが適当である。例えば、硝酸塩、
炭酸塩、硫酸塩、塩化物等の無機塩のみならず、酢酸塩等の有機塩
も好適に用いられる。特に好ましくは、焼成後に触媒被毒になり得
る不純物が残り難いと考えられる硝酸塩又は炭酸塩又は酢酸塩、あ
るいは製造過程で廃液処理を行いやすい硫酸塩である。 また、ニッ
ケル化合物の水溶液を作成する際も、水に対して溶解度の高い各金
属化合物を用いることが適当である。例えば、硝酸塩、炭酸塩、硫
酸塩、塩化物等の無機塩のみならず、酢酸塩等の有機塩も好適に用
いられる。特に好ましくは、焼成後に触媒被毒になり得る不純物が
残り難いと考えられる硝酸塩又は炭酸塩又は酢酸塩、あるいは製造
過程で廃液処理を行いやすい硫酸塩である。
上記の方法で製造されたCO2メタネーション触媒を用いることに
より、二酸化炭素と水素を反応させるCO2メタネーション反応に
おいて、高いガス処理速度で反応させても、比較的低温で、高いメ
タン収率を得られることができる。

<メタンの製造方法>
次に、本発明の第3の実施形態に関わる、本発明の触媒を用いたメ
タンの製造方法について説明する。このメタンの製造方法では、上述
した触媒の存在下、二酸化炭素と水素を接触させて、メタンを製造
する。 上述した二酸化炭素として、製鉄所内の高炉ガス、熱風炉排
ガス、加熱炉排ガス、火力発電所の排ガス等から、化学吸収法、物理
吸着法、分離膜法等で分離回収した二酸化炭素を利用することがで
きる。 また、上述した水素は、大洋光、風力、水力などの再生可能
エネルギー由来の電力を用いた水電解、人工光合成技術を用いた水
の酸化、石油系資源の水蒸気改質、石炭やペトロコークスのガス化
などから得られる水素を利用することができる。CO2排出量削減
の観点からは、再生可能エネルギー由来の電力を用いた水電解、人
工光合成技術を用いた水の酸化による水素を用いることが好ましい。
二酸化炭素と水素との使用割合は、特に限定されないが、二酸化炭
素1モルに対し、水素を通常2~8モル(2モル以上8モル以下)
程度、好ましくは3~6モル(3モル以上6モル以下)程度、特に
好ましくは化学量論比である4モル程度とするのがよい。 ここで、
CO2メタネーション触媒は還元することが好ましいが、反応中に
還元が進行するため、還元しなくても良い。しかしながら、特に反
応前に還元処理を必要とする場合、還元条件として、本実施形態の
触媒から活性金属であるニッケル粒子が微細金属状に析出するため
に、比較的高温で且つ還元性雰囲気にするのであれば、特に還元条
件が制限されるものではない。例えば、水素を含むガス雰囲気下、
または水素に窒素等の不活性ガスを混合した雰囲気下であっても良
い。また、還元温度は、例えば500℃~650℃(500℃以上
650℃以下)が好適であり、還元時間は充填する触媒量にも依存
し、例えば、30分~2時間(30分以上2時間以下)が好適であ
るが、充填した触媒全体が還元するのに必要な時間であればよく、
特にこの条件に制限されるものではない。 

触媒反応器としては、触媒が粉末の場合には流動床形式や移動床形
式等が、触媒が成形体であれば固定床形式や移動床形式等が好適に
用いられる。また、その触媒層の入口ガス温度としては、200~
350℃(200℃以上350℃以下)であることが好ましい。触
媒層の入口ガス温度が200℃未満の場合は、二酸化炭素と水素と
がメタネーション反応する際の触媒活性がほとんど発揮されないた
め、好ましくない。 一方、触媒層の入口温度が350℃を超える場
合は、触媒層での発熱量も必然的に大きくなり、触媒での局所的な
温度が非常に高くなり、活性金属の凝集(シンタリング)が進行し、
活性劣化を引き起こす。また、触媒反応場が高温になると、CO2
転化率とメタン選択率が低下、COが副生し、メタンの収率が低下
してしまう上、その後のガス分離等にエネルギーを要することにな
る。
さらに、触媒層の入口ガス温度は250~300℃(250℃以上
300℃以下)であることがより好ましい。上記の触媒層入口ガス
温度とすることで、触媒での反応温度を200~500℃(200
℃以上500℃以下)程度、好ましくは220~400℃(220
℃以上400℃以下)程度、さらに好ましくは230~350℃(
230℃以上350℃以下)程度となるように、触媒反応器への加
熱または抜熱を制御する。反応圧力は0.1~1MPaA(0.1
MPaA以上1MPaA以下)程度、好ましくは0.1~0.6M
PaA(0.1MPaA以上0.6MPaA以下)程度、さらに好
ましくは0.1~0.5MPaA(0.1MPaA以上0.5MP
aA以下)程度とするのがよい。 
なお、これらの反応条件においては、平衡的に、反応圧力を高くす
る程、メタンの収率が高くなる。ただし、工業的に実施することを
考慮して、従来の方法と比較した場合の本発明の利点として、反応
温度及び反応圧力が比較的低い条件下でも、例えば反応温度250
~350℃(250℃以上350℃以下)程度、反応圧力0.1M
PaA程度でも、実用的に十分に高い収率でメタンを製造できる点
を挙げることができる。また、固定床流通方式でメタンを製造する
場合の原料ガスの流通速度は、特に限定されないが、反応装置への
触媒の充填重量(g-cat.)を考慮した空間速度(SV)で
10~1000L/(g-cat.・h)程度「10L/(g-c
at.・h以上1000L/(g-cat.・h)以下程度」、よ
り好ましくは150~900L/(g-cat.・h)程度「15
0L/(g-cat.・h以上900L/(g-cat.・h)以
下程度」とするのがよい。

具体的な触媒性能として、各条件での基準は、例えば以下のように
考える。 0.1MPaA、SV=850L/(g-cat.・h)、
300℃のとき:CO2転化率>63%、且つ、メタン収率>60
%、且つ、メタン生成速度>4.0mol/(g-cat.・h)
である。また、0.5MPaA、SV=850L/(g-cat.
・h)、300℃のとき:CO2転化率>75%、且つ、メタン収
率>75%、且つ、メタン生成速度>5.5mol/(g-cat
.・h)である。

【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、実施例での
条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一
条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。
本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り
において、種々の条件を採用し得るものである。
(比較例1) アルミナ(触媒学会配布、参照触媒JRC-ALO
-7、2~3mm球形)を粉砕して、100μm以下の粒度とした。
硝酸ニッケル・6水和物(関東化学、純度>98.0%)を所定の
触媒担持量になるように精秤して、純水3mlに溶解し、水溶液を
得た。 前述のように得られた水溶液をアルミナるつぼ上で、アルミ
ナ粉末に滴下し、incipient wetness法でも法によって、ニッケル成分
を含浸した。得られたニッケル担持アルミナ触媒粉末をアルミナる
つぼごと電気マッフル炉に入れ、空気雰囲気下で乾燥・焼成した。
室温から30分かけて110℃まで昇温して12時間乾燥させ、
100分かけて600℃まで昇温し、600℃にて5時間焼成処理
を行った。その後、室温まで冷却し、Ni/Al2O3触媒(Ni担
持率:10、20、30、50質量%)を約2g得た。得られた触
媒を加圧成形器を用いて直径20mmの錠剤状にプレス成型後粉砕
し、250~500μm(250μm以上500μm以下)の篩に
かけて、粒度調整した触媒を得た。また、得られた触媒成分を蛍光
X線分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。この
触媒を約30mg用い、触媒を希釈するために同じ粒度のSiO2
を約120mgと混合して、SUS(ステンレス鋼)製反応管の中
央に位置するよう石英ウールで固定し、触媒層入口近傍に熱電対を
挿入し、これら固定床反応管を所定の位置にセットした。 

メタネーション反応を始める前に、まず反応器を窒素雰囲気下で
500℃まで昇温した。その後、マスフローコントローラを用いて、
20%H2、N2バランス、計100mL/minとなるように、反
応管に導入して、触媒還元処理を30分間行った。 その後、反応
ガスに切り替えた。H2/CO2/N2=76/19/5の比率で、
計470mL/min導入して、空間速度(SV)=880L/(
g-cat。・h)、常圧下、300℃にて反応評価した。 出口か
ら排出された生成ガスを氷温トラップを経由させて、生成した水分
を除去した後、TCD付ガスクロマトグラフ(島津製作所、GC-
2014)に注入して分析を行った。CO2メタネーション反応の活性
は、CO2転化率、メタン収率、メタン生成速度で判断し、CO2転
化率、メタン収率、メタン生成速度は、各反応温度での平均値を用
いた。それらは出口ガス中の各成分濃度より、以下の式(2)~式
(4)で算出した。 CO2転化率(%)=(1-出口CO2体積量/
供給CO2体積量)×100 …式(2) メタン収率(%)=CO2
転化率/100×(出口メタン体積量/(出口メタン体積量+出口
CO体積量)…式(3) メタン生成速度(mol/(g-cat.
・h))=出口メタン体積量/22.4/触媒重量 …式(4) N
i担持率:10、20、30、50質量%の各試料について得られ
た結果を以下の表1に示す。 

表1の結果より、単にアルミナ担体にNiを担持した触媒において、
Ni担持率が10~30質量%では、反応活性が非常に低く、50
質量%まで担持すれば、CO2転化率は向上するものの、メタン収
率は60%に足らないことが判明した。 

(比較例2)
比較例1において、使用する触媒を変更した。 アルミナ(触媒学
会配布、参照触媒JRC-ALO-7、2~3mm球形)を粉砕し
て、100μm以下の粒度とした。硝酸イットリウム・6水和物(
関東化学、純度>99.9%)をイットリウム酸化物として2質量
%となるように精秤して純水3mlに溶解し水溶液を得た。この水
溶液をアルミナるつぼ上でアルミナ粉末に滴下しincipient wetness
によって、イットリウム成分を含浸した。得られたイットリウム担
持アルミナ触媒担体粉末をアルミナるつぼごと電気マッフル炉に入
れ、空気雰囲気下で乾燥・焼成した。室温から30分かけて110
℃まで昇温して12時間乾燥させ、100分かけて600℃まで昇
温し、600℃にて5時間焼成処理を行った。その後、室温まで冷
却し、3質量%Y2O3/Al2O3触媒担体を得た。次に、硝酸
ニッケル・6水和物(関東化学、純度>98.0%)をニッケルとし
て20質量%になるように精秤して、純水3mlに溶解し、水溶液
を得た。この水溶液をアルミナるつぼ上で、上記触媒担体に滴下し
incipient wetnessによって、ニッケル成分を含浸した。得られたニ
ッケル担持Y2O3/Al2O3触媒粉末をアルミナるつぼごと電
気マッフル炉に入れ、空気雰囲気下で乾燥・焼成した。室温から3
0分かけて110℃まで昇温して12時間乾燥させ、100分かけ
て600℃まで昇温し、600℃にて5時間焼成処理を行った。 【
その後、室温まで冷却し20質量%Ni/3質量%Y2O3/Al
2O3触媒を得た。得られた触媒を加圧成形器を用いて直径20mm
の錠剤状にプレス成型後粉砕して、250~500μmの篩にかけ
て、粒度調整した触媒を得た。また、得られた触媒成分を蛍光X線
分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。この触媒
を約30mg用い、触媒を希釈するために同じ粒度のSiO2を約
120mgと混合して、SUS製反応管の中央に位置するよう石英
ウールで固定し、触媒層入口近傍に熱電対を挿入し、これら固定床
反応管を所定の位置にセットした。 得られた触媒について比較例
1と同じ条件で触媒還元処理し、反応評価した。 Ni担持率、Y2
O3担持率、圧力、温度、CO3転化率、メタン収率、メタン生成速
度について後記する表2に示す。 表2No.1(比較例2)の結
果から、酸化イットリウム(Y2O3)が2質量%では触媒性能が不
十分であることがわかった。
以下割愛(後略)、
※「高温・高熱」と「触媒」による「コスト」と「持続可能な製造
」の二点に照準を合わし調査。「人造触媒の開発」の調査を残件と
する。もう一つ、「新しいバイオメタン発酵工学」を研究を追加す
る。
                       この項つづく



電気駆動温度スイング吸着肩直接空気捕捉用吸着剤被覆炭素繊維
【概要】
電気駆動温度スイング吸着 (ETSA) による直接空気回収 (DAC) は、
そのシンプルさと再生可能電力エネルギー源との組み合わせが容易
な新技術。ここでは、ロールツーロールプロセスによる、〜1.2 mmol g
fiber-1の400 ppm CO2吸着を示す吸着剤でコーティングされた炭素
繊維調製を概説。 繊維は電位を加えるとジュール加熱を示し、1分
以内に CO2再生温度に達する DACモジュールは、直接印加された電
位による高速電熱 CO2脱離を示し、外部駆動による熱脱離より 6倍
の速さで吸着したCO2を放出。 吸着剤でコーティングされた炭素繊
維のシンプルさとモジュール性、および ETSA による迅速な吸着/
脱着サイクルにより、DAC システムの生産性が向上できるだろう。
パイロット規模の ETSA-DACシステムの技術経済分析で、総コストが
約 160 $ tCO2−1 と予測、周囲への対流エネルギー損
失は脱離時のジュール加熱入力のわずか7% にすぎない。
via FoutuerTimeline.net July 2nd 2023


ARTICLE| VOLUME 7, ISSUE 6, P1241-1259, JUNE 21, 2023
Title:Sorbent-coated carbon fibers for direct air capture using electrically
driven temperature swing adsorption
Published:June 12, 2023
DOI:https://doi.org/10.1016/j.joule.2023.05.016


 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2017年代


● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす

 



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最新二酸化炭素メタネーション技術 ①

2023年07月15日 | 環境リスク本位制

 


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。




NHKの連続テレビの小説「らんまん」の主人公のモデル 牧野富
太郎が発見した彦根市指定天然記念物=固有種オオトックリイチゴ
の実が=の実が彦根城の天秤櫓前で見頃を迎えている。 オオトッ
クリイチゴはナワシロイチゴとトックリイチゴが自然交配して育っ
た雑種とされる。牧野が明治27年(1894年)11月に伊吹山の植物採
集の途中、彦根城に立ち寄って表御殿跡(現在の彦根城博物館)で
茎葉の形で発見。明治34年7月と翌年6月に、当時の彦根尋常中学
校(現在の彦根東高)に在職していた平瀬作五郎が、牧野の依頼を
受けて果実と花の標本を送り、受け取った牧野が新種と判断。学名
に平瀬の名を入れて、植物学雑誌に掲載した。 彦根城では平成元
年(1989年)に天秤櫓前に株分けされて以降、絶滅しないよう育成
管理されている。昨年度は実が育たなかったが、今年度は先月末か
ら赤い実ができ始め、今月7目前後に見頃を迎えた。
via しが彦根新聞 2023.7.15|オオトックリイチゴ見頃 牧野宿太
  郎が発見、天秤櫓前


via しが彦根新聞 2012.7.19
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【学名:Rubus Hiraseanus Makino】 オオトックリイチゴはバラ科
キイチゴ属の一種で、彦根城以外には知られていない彦根城に固有
の植物。春に直立する茎を出し茎の高さは2~2.5mにも達す。
------------------------------------------------------------



        コロナ明け レモンバジル 冷や素麺

                        

平年の1日の平均降雨量の2ヶ月分が一度に降る秋田県の集中豪雨被
害の生々しい画像を見ながら冷や素麺を戴くのは何とも残酷なシーン
だと想いを寄せつつ俳句を詠む。本当は、コロナも明け切れていな
いし、ウクライナの残酷さも明けそうもない。




「ゼロ・カ-ボンゼロ」を実現するためには、日本における消費エ
ネルギーの約6割を占める工場や家庭、業務などから排出される二
酸化炭素を抑える必要がある。工場などでは蒸気加熱、家庭や業務
などでは給湯や暖房による排出量が主ですが、これらの場面で多く
利用されているのは天然ガス。そして天然ガスは、石炭や石油に比
べて燃焼した際の二酸化炭素の排出量が少ないという特徴がある。

📚 石炭、石油、天然ガスが燃焼したときに排出する物質量の割合
  (石炭を100とした場合)




【最新メタネーション技術特許事例】
1.特開2022-76978 燃料電池から排出されるオフガスを処理する
 ための
システムおよび方法 三菱重工業株式会社
【概要】
下図1のごとく、燃料電池から排出される二酸化炭素10体積%以
上40体積%以下、水素5体積%以上20体積%以下および水40
体積%以上80体積%以下を含むオフガスから水を除去して低含水
CO2リッチガスを得、得られた低含水CO2リッチガスに水素を添
加して混合ガスを得、該混合ガスをCO2メタネーション触媒の存在
下で反応させてメタンリッチガスを得ることを含む、燃料電池から
排出されるオフガスの処理方法で、燃料電池から排出される特定割
合の二酸化炭素と水素と水とを含むオフガスからメタンを含むガス
に転化することができる、燃料電池から排出されるオフガスを処理
するためのシステムおよび方法を提供する。
------------------------------------------------------------

図1 本発明の処理システムの一例を図示。
【符号の説明】3:CO選択酸化反応器 16:伝熱媒体流入路 17:
伝熱媒体流出路 7:ガス混合器 10:制御システム s1、s2、s3、
s4、s5、s6、s7:センサ V1、V2、V3:流量調整弁 19:第一伝熱
媒体流入路 20:第一伝熱媒体流出路 29:第二伝熱媒体流入路 
30:第二伝熱媒体流出路 11:第一CO2メタネーション反応器 21:
第二CO2メタネーション反応器 12,22,32:熱交換器 9,15,
25,35:冷却器 8,18,28,38:ドレーンセパレータ(水分除去器
) 21:ドレーン水 40:コンプレッサ 41:水分除去器
------------------------------------------------------------
温室効果ガスの一つである二酸化炭素を水素で還元反応させてメタ
ンを製造する技術が知られている。しかし、二酸化炭素の回収法、
メタネーション反応で得られるメタンの活用法などに関して、電力
供給量、設備コスト、運転コスト、二酸化炭素の回収効率、熱効率
などの観点からの総合的な検討が要求される。

1.例えば、特開2008-204783は、燃料と酸化剤とが供給されて燃
料電池で発電を行う燃料電池発電システムで、燃料もしくは前記燃
料を改質して生成される改質ガスが供給される燃料極と、陰イオン
を透過させる電解質とを備える燃料電池と、燃料極から排出される
燃料極排出ガスが供給され、燃料極排出ガス中の一酸化炭素及び/
または二酸化炭素と水素とを反応させメタンに変換するメタン生成
手段を有する燃料電池発電システムを開示されている。
2.特開2019-8908は、化石燃料に含まれる水素と空気中の酸素と
を化学反応させて発電を行う燃料電池と、燃料電池から排出される
排出ガス中に含まれる二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離手段と、
二酸化炭素分離手段により分離された二酸化炭素と水素とを反応さ
せることにより炭化水素を生成する炭化水素生成手段と、炭化水素
生成手段に水素を供給する水素供給手段と、を備え、炭化水素生成
手段により生成された炭化水素を前記燃料電池に供給する燃料電池
発電システムを開示。
3.特許6615220は、カソード、アノード、及びカソードとアノード
との間に挿入された電解質でそれぞれが形成された少なくとも1
つの固体酸化物個別電気化学セルを含む燃料電池(SOFC)と、
燃料電池の出口に接続された気液相分離器と、メタン化反応を実施
するのに適したメタン化反応器であって、その入口が相分離器の出
口に接続され、その出口が燃料電池の入口に接続され、メタン化反
応器から生じる混合物が燃料電池内に導入される、メタン化反応器
と、水素を貯蔵するのに適した水素の可逆貯蔵用タンクであって、
その出口がメタン化反応器の入口に接続されている、水素の可逆貯
蔵用タンクと、を含む、固体酸化物燃料電池(SOFC)を用いて
発電する可逆システムを開示。
4.特開2009-77457は、系統電力以外の電源であり且つ都市ガスを
燃料とする負荷変動に制約がある分散型電源(例えば、燃料電池な
ど)の余剰エネルギーから得られる水素と、前記余剰エネルギーか
ら得られる水素と運転システム内および/または運転システム外か
ら得られる二酸化炭素とからメタン、エタン、プロパン、ブタン等
の炭化水素燃料を製造する炭化水素燃料製造手段と、前記炭化水素
燃料製造手段が製造した炭化水素燃料を都市ガス導管系に注入する
炭化水素燃料注入手段と、都市ガスを燃料とする負荷変動に制約が
ある分散型電源の運転時に発生する二酸化炭素を分離回収する二酸
化炭素分離回収装置とを、少なくとも備えることを特徴とする系統
電力の安定運用の目的で備えられる分散型電源の運転システムを開
示している。
5.特開2007-15231は、タンを主成分とする燃料ガス及び酸化性ガ
スが供給される燃料電池と、燃料電池から排出された排燃料ガスが
供給される燃焼器を備えたガスタービン装置と、該ガスタービン装
置によって駆動される発電機と、炭素含有ガスと水素含有ガスが供
給されて少なくとも一部をメタンへと生成するメタネーション装置
と、燃料電池に水素を供給する水素供給系統と、該水素供給系統か
ら燃料電池に水素を供給する際に、メタネーション装置にて生成さ
れたメタンを含むガスを燃焼器に供給する制御部と、を備えている
ことを特徴とする燃料電池複合発電システムを開示。
6.特開2003-109638は、素と一酸化炭素とを燃料としこれらの燃
料と酸化剤との電気化学的結合により電気と熱とを発生させるSO
FC(固体電解質型燃料電池)モジュールとこのSOFCモジュー
ルの燃料排ガス路に、排気中に含まれる二酸化炭素と水蒸気から水
素および一酸化炭素を生成させる第1の反応槽と、この第1の反応
槽で生成した前記水素および一酸化炭素をSOFCに戻す還流路と、
前記還流路途中に、水素と未反応二酸化炭素とからメタノールおよ
び/またはメタンを生成させる第2の反応槽を設けたことを特徴と
するSOFC燃料リサイクルシステムを開示。
7. 特表2019-5154422は、燃料電池電力生産システムにおいて、
二酸化炭素および酸素を含む煙道ガスを発生するように構成された
煙道ガス発生装置と、燃料供給部と、燃料電池アセンブリであって、
前記煙道ガス発生器により発生された前記煙道ガスを受取り、且つ
カソード排気を出力するように構成されたカソード部と、前記燃料
供給部から燃料を受け取り、水素および二酸化炭素を含むアノード
排気を出力するように構成されたアノード部と、アノード排気を受
け取り、該アノード排気中の水素の少なくとも一部をメタンに変換
し、メタン化されたアノード排気を排出するように構成されたメタ
ン化装置と、前記メタン化されたアノード排気を所定温度に冷却し
て、前記メタン化されたアノード排気中の二酸化炭素を液化させる
ように構成された冷却器アセンブリと、冷却された前記メタン化さ
れたアノード排気を受け取り、液化した二酸化炭素を残留燃料ガス
から分離するように構成されたガス分離アセンブリを含む前記燃料
電池アセンブリとを具備する、前記燃料電池電力生産システムを開
示している。特許文献7は、いくつかの実施形態において、アノー
ド排ガス中の二酸化炭素の濃度は、それらの間の全ての範囲および
値を含めて60~75モル%(乾燥基準)の範囲であると、メタン
化前のアノード排気は、乾燥基準で20~25モル%の水素および
65~75モル%の二酸化炭素を含み、メタン化されたアノード排
気は、乾燥基準で5~10モル%の水素および75~85モル%の
二酸化炭素を含むと、教示。
8 特開2015-107942は、タン製造装置として水素と二酸化炭素を原
料ガスとしてメタンを製造するメタン製造装置であって、原料ガス
からメタンへの反応であるメタネーション反応を促進する触媒が収
容された複数の反応器と、複数の反応器における隣り合う2つの反
応器をそれぞれ連通し、の反応器において生成された生成ガスを後
段の反応器に送出する複数の連通路と,複数の反応器のうち、最も前
段の反応器に前記原料ガスを導入する原料ガス導入部と、連通路に
おいて、前段の反応器で生成された生成ガスを、メタネーション反
応が開始する温度以上、該メタネーション反応が停止する温度未満
に冷却する冷却部と、少なくともいずれかの前記連通路のうち、冷
却部と前記後段の前記反応器との間において、該冷却部によって冷
却された生成ガスから水を除去する水除去部と、を備えたことを特
徴とするメタン製造装置を開示。
9. 特開2019-142807は、二酸化炭素と水素からメタンを製造する
メタン製造装置であって、メタンへの転化性能を有する触媒を収容
し、供給源から供給された二酸化炭素と水素とを含む原料ガスを用
いて、メタン化反応を生じさせる第1反応器と、前記第1反応器の
下流側に配置され、第1反応器で生成されたメタンを含む反応混合
ガスを用いて、メタン化反応を生じさせる第2反応器と、前記第1
反応器と第2反応器との間のガス流路上に配置され、第2反応器に
供給される前記反応混合ガスの圧力を、第1反応器に供給される原
料ガスの圧力よりも高くする反応混合ガス昇圧部と、を備える、メ
タン製造装置を開示している。

【発明が解決しようとする課題】
燃料電池から排出される特定割合の二酸化炭素と水素と水とを含む
オフガスからメタンを含むガスに転化することができる、燃料電池
から排出されるオフガスを処理するためのシステムおよび方法を提
供する。
〔1〕 二酸化炭素10体積%以上40体積%以下、水素5体積%
以上20体積%以下および水40体積%以上80体積%以下を含む
オフガスを排出する燃料電池、二酸化炭素をメタンに転化するため
のCO2メタネーション反応装置、 水素源からCO2メタネーショ
ン反応装置にガスを輸送するためのライン、および 燃料電池から
CO2メタネーション反応装置にガスを輸送するためのラインを具
備する、燃料電池から排出されるオフガスの処理システム。 
〔2〕 オフガスは、燃料電池の排出口における温度が115℃以
上185℃以下である、〔1〕に記載の処理システム。
〔3〕 燃料電池が、固体酸化物型燃料電池である、〔1〕または
〔2〕に記載の処理システム。
〔4〕 CO2メタネーション反応装置にガスを輸送するためのライ
ンの途中に、ガスから水を除去するための水分除去器、ガスの圧力
を高めるための加圧器若しくは圧縮器、および/もしくはガスの温
度を調節するための熱交換器若しくは加熱器をさらに具備する〔1〕
~〔3〕のいずれかひとつに記載の処理システム。
〔5〕 一酸化炭素を二酸化炭素に転化するためのCO選択酸化反
応装置、 酸素源からCO選択酸化反応装置にガスを輸送するため
のライン、および CO2メタネーション反応装置からCO選択酸化
反応装置にガスを輸送するためのラインをさらに具備する、〔1〕
~〔4〕のいずれかひとつに記載の処理システム。
〔6〕 CO2メタネーション反応装置からCO選択酸化反応装置に
ガスを輸送するためのラインの途中に、ガスから水を除去するため
の水分除去器をさらに具備する、〔1〕~〔5〕のいずれかひとつ
に記載の処理システム。
〔7〕 CO選択酸化反応装置で生成したガスを排出するためのラ
インをさらに具備し、 CO選択酸化反応装置で生成したガスを排
出するためのラインの途中に、ガスから水を除去するための水分除
去器をさらに具備する、〔1〕~〔6〕のいずれかひとつに記載の
処理システム。 
〔8〕 燃料電池から排出される二酸化炭素10体積%以上40体
積%以下、水素5体積%以上20体積%以下および水40体積%以
上80体積%以下を含むオフガスから水を除去して低含水CO2リ
ッチガスを得、 得られた低含水CO2リッチガスに水素を添加して
混合ガスを得、 該混合ガスをCO2メタネーション触媒の存在下で
反応させてメタンリッチガスを得ることを含む、燃料電池から排出
されるオフガスの処理方法。
〔9〕メタンリッチガスから水を除去して低含水メタンリッチガス
を得ることをさらに含む、〔8〕に記載の処理方法。
〔10〕 燃料電池から排出されるオフガスが、二酸化炭素10体
積%以上40体積%以下、水素5体積%以上20体積%以下および
水40体積%以上80体積%以下のうちの少なくともひとつを満た
さないときに、該オフガスを大気にそのまま放出することを含む、
〔9〕に記載の処理方法。

【発明の効果】
本発明のシステムおよび方法によると、燃料電池から排出される特
定割合の二酸化炭素と水素と水とを含むオフガスからメタンを含む
ガスに高効率で転化することができる。本発明によると、燃料電池
から排出される二酸化炭素の大気への放出を減らすことができ、生
成したメタンは、燃料、都市ガス原料などとして、利用できる。
本発明が規定する組成比のオフガスは、触媒を毒する物質をほとん
ど若しくは全く含まないので、CO2メタネーション反応装置もし
くはCO選択酸化反応装置の反応器に在る触媒の劣化が防止され、
触媒の交換無しで長期間の運転が可能である。また、本発明が規定
する組成比のオフガスを用いると、CO2メタネーション反応でまた
はCO2メタネーション反応とCO選択酸化反応とで得られるメタ
ンリッチガスを、ガスグリッドのスペックを満たすようにすること
が、容易である。なお、表1はガスグリッドの主要スペックの一例
である。


【発明を実施するための形態】
以下に本発明の実施形態を示し、本発明をより具体的に説明する。
なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明の技術的
範囲はこれら実施形態によって何等制限されるものでない。本発明
の処理システムは、オフガスを排出する燃料電池、CO2メタネーシ
ョン反応装置、CO2メタネーション反応装置にガスを輸送するため
のラインを具備する。
本発明の処理方法は、燃料電池から排出されるオフガスから水を除
去し低含水CO2リッチガスを得、得られた低含水CO2リッチガス
に水素を添加して混合ガスを得、該混合ガスをCO2メタネーション
触媒の存在下で反応させてメタンリッチガスを得ることを含む。 
本発明に用いられる、燃料電池から排出されるオフガスは、二酸化
炭素10体積%以上40体積%以下、好ましくは28体積%以上3
3体積%以下、水素5体積%以上20体積%以下、好ましくは8体
積%以上18.3体積%以下、および水40体積%以上80体積%
以下、好ましくは41体積%以上62体積%以下を含むものである
オフガスには、アンモニア、一酸化炭素、または窒素が含まれてい
てもよい。また、オフガスは、燃料電池の排出口における温度が
115℃以上185℃以下であることが好ましい。センサs1などで
オフガスの組成比、温度、流量などをインラインにて測定してもよ
いし、ガスクロマトグラフィなどでオフガスの組成比をオフライン
にて測定してもよい。オフガスの温度が極端に低い場合は、温度調
整のために余分な熱量が必要になる。また、温度調整のための熱量
が不足する場合はCO2メタネーション反応に適した温度に調整する
ことが難しい。 
                          -中 略-
(実施例)
前出図1に示す本発明の処理システムを用いて、表2に示す組成比
のSOFCオフガスをH2/CO2モル比4にてCO2メタネーション反応
させ、次いで得られたガスをCO選択酸化反応させて、メタンリッ
チガスを得た。センサs1、s4、s5、s6およびs7にてガスの温度、圧
力、組成比およびガス量を測定した。その結果を表2に示す。水分
除去器41から排出されるガスは、前出表1に示すスペックを満たし
ており、ガスグリッドに供給できることがわかる。
表2

                            以上

2.特開2023-50174 メタン生成装置及びこれを用いたメタンの
 製造
 方法 国立大学法人東海国立大学機構
【概要】
カーボンニュートラルの実現のために、例えば、太陽光、風力等の
再生可能エネルギーの利用を増やす必要がある。しかし、太陽光は
日中の日照時間に影響されたり、風力はある程度の風速が必要であ
ったりと、どちらも1日の変化又は1年の季節変動により、出力が
安定しない。また、太陽光、風力等による発電において、余剰電力
が出た場合に、電気を蓄電池に蓄積することができるが、蓄電池で
は電力の長期的な保存が出来ない。 そこで、近年、再生可能エネル
ギーの余剰電力を利用して、気体の燃料を製造するPower to
Gas(以下、「PtG」という)への取り組みが注目されている。
燃料としては、水を電気分解する事により、比較的容易に得られる
水素が想定されている。ただし、現状では、水素の利用は、自動車、
定置用の燃料電池等に限られている。特許5562873は、二酸化炭素と
水素を反応させて、一酸化炭素を主成分として含むガスを得る第一
反応工程と、第一反応工程により生成した一酸化炭素と水素を反応
させて、メタンを得る第二反応工程とを含む、二酸化炭素と水素か
らメタンを合成する方法が開示されている。これによって二酸化炭
素を活用できるだけでなく、水素の利用範囲を拡大することができ
るうえに、メタンを天然ガスの代替燃料として使用することができ
る等の利点がある。
しかしながら、特許5562873の技術では、水素と二酸化炭素とを反
させるには触媒が必要であるが 単に触媒を用いるだけでは触媒
が劣化する可能性がある。本発明は、触媒の非存在下でメタネー
ション反応を得ることができるメタン生成装置及びこれを用いた
メタンの製造方法を提供することを目的とする。
下図1のごとく、メタン生成装置1は、内部に反応空間7を有する
ハウジング2と、反応空間7に二酸化炭素と水素との予混合ガスを
供給可能な吸気部4と、ハウジング2内において移動可能に設けら
れ、反応空間7内に供給された予混合ガスを圧縮することで、予混
合ガスを反応させてメタンを生成する可動体3と、メタンを反応空
間7から排気する排気部5と、を備えることで触媒の非存在下
メタネーション反応を得ることができるメタン生成装置及びこれ
を用いたメタンの製造方法を提供する。


図1.(A)~(D)は、本発明の一実施形態に係るメタン生成装
 置を用いた製造方法を説明する断面図
【符号の説明】1 メタン生成装置 2 ハウジング 3 可動体 31
ピストン 4 吸気部 5 排気部 6 第二吸気部 7 反応空間

【発明を実施するための形態】  <実施形態>
以下、本発明について添付図面を用いて詳細に説明する。 
(1)メタネーション技術 本実施形態に係るメタンの製造方法は、二
酸化炭素と水素とからメタンを合成する合成メタン製造技術(メタ
ネーション技術)を用いた製造方法である。メタネーション技術
の化学反応式は次の通りである。 
CO+4H→CH+2H2
本明細書では、二酸化炭素と水素とを反応させることでメタンを生
成する化学反応を「メタネーション反応」という。 本実施形態に
係るメタンの製造方法では、メタネーション反応を、触媒の非存在
下(触媒を使用しなくてよいという条件下)で行う。また、メタネ
ーション技術では、メタネーション反応を、300℃以上600℃
以下の温度条件で行うことが好ましい。また、メタネーション技術
では、メタネーション反応の原料(二酸化炭素及び水素を含む原料)
は、気体であっても液体であってもよい。原料がガス(原料ガス)
の場合、反応前(圧縮前)の原料ガスの温度は、例えば、20℃か
ら30℃の常温以上が好ましい。原料ガスが常温以上であると、メ
タネーション反応が生じやすい。原料が液体の場合でも、原料を供
給した後、圧縮した際に気化するのであれば使用可能である。メタ
ネーション反応の化学量論としては、二酸化炭素(CO2)1モル
に対して、4モルの水素(H2)が反応する。言い換えると、水素
1モルに対して、0.25モルの二酸化炭素が反応する。また、水
素に対する二酸化炭素のモル比は、好ましくは、0.2以上0.5
以下であり、より好ましくは、0.2以上0.3以下である。水素
に対する二酸化炭素のモル比を、0.2以上0.3以下とすること
で、メタンへの転換率を高水準にすることができる。ここでいう「
転換率」とは、水素と二酸化炭素とが反応してメタンに変換される
割合を意味する。 また、本実施形態のメタンの製造方法では、触媒
を使用しないが、例えば、メタネーション反応前に、原料ガスに微
量の酸素を供給し、水素と燃焼させることにより、水素及び二酸化
炭素を含む混合気の反応を促進させることができる。これにより、
生成物であるメタンの転換率を向上することができる。メタネーシ
ョン反応では、上述した通り、二酸化炭素と水素が反応する。一般
に、水素は燃料であるため、酸素を供給することにより、メタネー
ション反応の原料ガスである一部の水素が酸素と反応(燃焼反応)
し、原料ガスの温度を上げることができる。この場合、水素と反応
するのは二酸化炭素と酸素なので、二酸化炭素と酸素の総モル量に
おける酸素の割合(モル濃度、O2/(CO2+O2))は、好ましく
は、0.02以上0.1以下である。 メタネーション反応で生成さ
れたメタンは、反応せずに残った酸素に対して反応する可能性が有
るが、メタンが燃焼するには多くの酸素が必要であり、残った酸素で
は不十分である。本実施形態に係るメタンの製造方法では酸素を供
給する場合、酸素の供給量として、化合物(反応物)のガス中の水
素と反応するがメタンとは反応しない程度の量に調整することによ
り、メタンが燃焼することを防ぐことができる。 本実施形態に係る
メタンの製造方法では、水素と二酸化炭素とから、80%程度の転
換率で、メタンを合成することができる。(2)メタン生成装置 本
実施形態に係るメタン生成装置1は、上述したメタネーション技術
を実現することでメタンを製造する製造装置である。本実施形態に
係るメタン生成装置1は、図1(A)に示すように、ハウジング2
と、吸気部4と、可動体3と、排気部5とを備える。メタン生成装
置1は、吸気行程(図1(A))、圧縮行程(図1(B))、反応
行程(図1(C))、及び排気行程(図1(D))を実行すること
でメタンを製造することができる。

以下では、説明の便宜上、可動体3の移動方向を「上下方向」とし
て定義し、上下方向のうち、可動体3から排気部5又は吸気部4に
向かう方向を「上方向」とし、その反対方向を「下方向」として定
義する。ただし、これらの方向の定義は、本発明に係るメタン生成
装置1の使用態様を特定する意図はない。 (2.1)ハウジング
ハウジング2は、内部に反応空間7を有するメタン生成装置1のケ
ースである。ハウジング2は、シリンダを有している。
シリンダの内部には、反応空間7が形成される。具体的に、反応空
間7は、シリンダの内周面と可動体3とで囲まれた空間を指す。シ
リンダは、シリンダライナ21と、シリンダヘッド22と、を備え
る。 シリンダライナ21は、円筒状に形成された部分である。
シリンダライナ21の内部には、後述の可動体3が移動可能に収容
されている。可動体3は、シリンダライナ21の中心軸に沿って移
動し得る。 シリンダヘッド22は、シリンダライナ21の中心軸方
向の一方の開口(ここでは上側の開口)を閉じる。シリンジヘッド
22は、反応空間7を形成する上底面を有する。上底面は、上方向
に行くほど小径となるような、断面略円錐状に形成されている。 シ
リンダヘッド22には、吸気ポート23と、排気ポート24と、が
形成されている。給気ポートは、吸気路41とシリンダ内とを接続
する開口である。排気ポート24は、シリンダ内と排気路51とを
接続する開口である。吸気ポート23及び排気ポート24は、シリ
ンダヘッド22を貫通している。
(2.2)可動体 可動体3は、ハウジング2内において移動可能に
設けられた部品である。可動体3は、反応空間7内の気体に対し、
圧縮と拡張とを繰り返すことができる。可動体3は、ピストン31
と、複数のピストンリング32と、を備える。 ピストン31は、シ
リンダに対して軸方向に往復動可能に構成されている。本実施形態
に係るメタン生成装置1では、シリンダの中心軸に沿ってピストン
31が移動することで、反応空間7内の気体を、圧縮又は拡張させ
ることができる。ピストン31には、ロッド33が連結されている。
ピストン31とロッド33は、ピンによって、回転可能に連結され
ている。ロッド33は、図示しないクランクシャフトに対して回転
可能に連結されている。ピストン31には、触媒が担持されている
ことが好ましい。ピストン31に担持される触媒は、例えば、Ni
/ZrO2が用いられることが好ましい。本実施形態に係るメタン
生成装置1では、触媒がなくても、水素と酸化炭素とを反応させる
ことができるが、触媒を使用することでより高い効率でメタンを得
ることができる。ただし、単に触媒が用いられるだけであると、触
媒が反応時の発熱によって劣化する可能性があるため、本実施形態
では、触媒をピストン31に担持して、300℃以上600℃以下
の温度条件よりも低い温度でメタネーション反応を生じさせる。こ
のようにすることで、熱による触媒の劣化が抑制できる。ピストン
リング32は、ピストン31とシリンダとの間の反応空間7を気密
に保つための部品である。ピストンリング32は、ピストン31の
外周面に取り付けられている。複数のピストンリング32は、上下
方向に間隔をおいて配置されている。
反応空間7内に水素と二酸化炭素が供給された状態で、ピストン3
1が移動し、反応空間7が圧縮されると(図1(B))、水素と二
酸化炭素が加圧されて高温状態となる。すると、反応空間7におい
て、メタネーション反応が生じ、メタンが生成される(図1(C)
)。 (2.3)吸気部 吸気部4は、反応空間7に対し原料ガスを
供給する。本実施形態に係るメタン生成装置1では、原料ガスとし
て、二酸化炭素と水素との予混合ガスを供給する。
予混合ガスは、二酸化炭素と水素とが含まれるが、上述したように
酸素が含まれてもよい。また、上述した通り、予混合ガスにおける
水素に対する二酸化炭素のモル比としては、好ましくは、0.2以
上0.5以下であり、より好ましくは0.2以上0.3以下である。
また、圧縮前の予混合ガスの温度としては、例えば、20℃から3
0℃程度の常温以上300℃以下の温度にすることが好ましい。 
吸気部4は、吸気路41と、吸気弁42と、を備える。吸気路41
は、ハウジング2の吸気ポート23に接続され、ガス供給源とハウ
ジング2内とをつなぐ流路である。吸気弁42は、吸気路41を開
閉可能に閉じることができる。吸気弁42は、圧縮行程、反応行程
及び排気行程において、吸気路41を閉じ、吸気行程において、吸
気路41を開く。ここでいう「吸気路41を閉じる」とは、吸気路
41内を閉じることのほか、吸気ポート23を閉じることを含む。
「吸気路41を開く」という表現についても同じである 吸気弁42
及び後述の排気弁52の動作は、例えば、クランクシャフトの回転
に連動して、開閉動作を行ってもよいし、各々が駆動機(例えば、
モータ)に連結されてもよい。 
(2.4)排気部 排気部5は、反応空間7内に生成されたメタンを、
反応空間7から排気する。排気部5は、排気路51と、排気弁52
と、を備える。排気路51は、ハウジング2の排気ポート24に接
続され、メタンの供給口(不図示)とハウジング2内とをつなぐ流
路である。排気弁52は、排気路51を開閉可能に閉じることがで
きる。排気弁52は、吸気行程、圧縮行程及び反応行程において排
気路51を閉じ、排気行程において、排気路51を開く。ここでい
う「排気路51を閉じる」とは、排気路51内を閉じることのほか、
排気ポート24を閉じることを含む。「排気路51を開く」という
表現についても同じである。

(3)製造方法 このような構成のメタン生成装置1を用いて、吸気
行程、圧縮行程、反応行程及び排気行程を経ることで、メタンを生
成することができる。吸気行程は、吸気部4から反応空間7内に原
料ガスを供給する行程である。本実施形態に係る吸気行程では、原
料ガスとして、二酸化炭素と水素との予混合ガスを供給する。吸気
行程では、図1(A)に示すように、ピストン31が上死点から下
死点へ移動するのと同時に、吸気弁42が吸気路41を開き、反応
空間7内に予混合ガスが供給される。これにより、反応空間7には
予混合ガスが充填される。圧縮行程は、吸気行程の後、反応空間7
内に供給された原料ガス(予混合ガス)を可動体3によって圧縮す
る行程である。圧縮行程では、図1(B)に示すように、ピストン
31が下死点から上死点へ移動するが、このとき、反応空間7の体
積が縮小する。このとき、反応空間7内
の予混合ガスが圧縮される。圧縮行程によって、予混合ガスの温度
は、例えば、300℃以上600℃以下に上昇する。反応行程は、
予混合ガスが反応し、メタンを生成する行程である。圧縮行程によ
って、高温になった予混合ガスは、反応空間7で、メタネーション
反応が起こる。これによって、反応空間7内にメタンが生成される。
反応後に高温になったガスは膨張し、図1(C)に示すように、ピ
ストン31が上死点から下死点へ移動する。 ここで、メタネーショ
ン反応は、発熱反応であるため、ピストン31に対し、下死点に向
かう力を加えることができる。したがって、ロッド33又はクラン
クシャフトから、外部に対する仕事を取り出すことも可能である。
また、反応行程を経て生成されたメタンの量について、例えば、セ
ンサ等を用いてモニタリングしたり、予め反応量を検証したりして、
一度の反応行程で得られるメタンの量を把握しておくことが好まし
い。これによって、反応行程の後、排気行程に移行することなく、
再び圧縮行程及び反応行程を実行する、という選択も行うことがで
きる。すなわち、圧縮行程と反応行程とを複数回繰り返した後、排
気行程を実行することで、所望のメタンの量を確保することができ
るため メタンの転換率を改善することもできる。 圧縮行程及び反
応行程を一度ずつ実行するか、これらを複数回繰り返すかの選択は
得ようとするメタンの量に応じて作業者が選択してもよいし、モニ
タリングにより得たメタンの生成量に応じて、制御プログラムが判
断してもよい。 排気行程は、反応行程の後、メタンを反応空間7か
ら排気部5を通して排気する行程である。排気行程では、図1(D
)に示すように、ピストン31が下死点から上死点へ移動するが、
このとき、排気弁52が排気路51を開き、反応空間7に充填され
ているメタンを排出する。 
排気行程の後、再び、吸気行程を実行することができる。したがっ
て、本実施形態に係るメタンの製造方法によれば、連続的にメタン
の生成を行うことができる。

(4)効果 以上説明したように、本実施形態に係るメタン生成装置
1は、内部に反応空間7を有するハウジング2と、反応空間7に二
酸化炭素と水素との予混合ガスを供給可能な吸気部4と、反応空間7
内に供給された前記予混合ガスを圧縮することで、予混合ガスを反
応させる可動部と、メタンを前記反応空間7から排気する排気部5
とを備える。このため、効率の良いメタンの生成を実現することが
できる。また、触媒の非存在下でメタネーション反応を得ることが
できるため、コストダウンを実現でき、また原料ガスの組成の制約
がないという利点がある。ここで、従来のメタネーション技術は、
例えば、メタンを合成する際に触媒が必要である点、反応温度まで
昇温させる必要がある点、メタネーション反応は発熱反応であり、
触媒層が熱によって劣化する点、二酸化炭素に硫黄等が含まれてい
る場合、触媒が被毒する(触媒被毒)点等の技術的な課題を有する。
これに対し、本実施形態に係るメタン生成装置1によれば、無触媒
でメタンを合成するため、水素
と二酸化炭素とを比較的低温で反応
させることができる。また、
触媒を使用しないため、触媒の劣化を
考慮する必要がないし、活
性が異なる触媒を傾斜配置する等の調整
を考慮する必要がない。

さらに、触媒は高価な貴金属からなるところ、無触媒でメタンを
成することで、コストダウンを実現
できるうえに、反応物のガス組
成の制約がないため、硫黄分を含有するバイオガスも使用すること
ができる。また、ハウジング2はシリンダを有し、可動体3は、シ
リンダに対して軸方向に往復動可能なピストン31を有するため、
レシプロエンジンのような機構を利用して、メタンを生成すること
ができ、連続的なメタンの生成を実現することができる。さらに、
単純な構造であるため、ハウジング2を小型化しやすく、小さな設
置スペースしか有さない業者でも所有できるという利点がある。ま
た、原料が二酸化炭素と水素であるため、輸送コストが削減できる。
また、本実施形態に係るメタンの製造方法では、吸気行程、圧縮行
程、反応行程及び排気行程を含むため、効率の良いメタンの生成を
実現することができ、また、連続的なメタンの生成を実現すること
ができる。また、圧縮行程と反応行程とを複数回繰り返した後、排
気行程を実行することができるため、転換率を向上させることがで
き、効率のよいメタンの生成を実現できる。以下、割愛(後略)。
                        この項つづく

※あっと時間がすぎていくという感覚にさいなまれている(理由は
わかっているのだが)。このメタネーションはもう一度掲載しつぎ
の課題に移る。


ブラウザ上で描いたスケッチをAIが画像に変換してくれる
サービス「Stable Doodle」とは?


via Gigazine

 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2017年代

● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす

 



 

 

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最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ⑤

2023年07月14日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



7月11日、セブン‐イレブン・ジャパンはプラントベースプロテイ
ン(植物由来のタンパク質)を使用したツナマヨおにぎりやナゲッ
トを全国のセブン‐イレブン約2万1400店舗で発売すると発表。環
境に配慮した商品を強化する

 

     

 

  

【再エネ革命渦論 147: アフターコロナ時代 146】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉚
ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。

ここでペロブスカイト化合物の鉛が鉛蓄電池と導尿にに問題にされ
ていたので、問題解決の手だて(工学)を考察する。貴金属や希少
金属のように全面リサイクルシステムの完備可能かと問えば、それ
は程度ものになる。使用されている製品にトレーサビリティ保証タ
グタ検出システムが作動する国内(あるいは国際)法整備を完備し
完全回収できれば問題ないはずではあるが、散弾銃の鉛の規制ある
いは回収は現実社会では実現できていないが、回収奨励金リベート
政策や環境付加価値奨励税金及び不法投棄罰則政策などの「反エン
トロピ-政策)を国内・国際整備すれば可能であり、「無鉛・鉛フ
リー」が絶対条件化は避けられると判断するが、ここからは、理想
的な手だて(工学的手段)の事例を俯瞰する。
【最新特許事例】
1.特開2023-66639 圧電素子、および圧電素子の製造方法 日本特
殊陶業株式会社
【概要】
従来、圧電性を示すセラミックスとして、PZT(チタン酸ジルコ
ン酸鉛)が広く利用されている。しかし、PZTは成分に鉛を含む
ために、環境負荷が問題視されており、鉛を含まない圧電セラミッ
クスの開発が求められている。 また、圧電セラミック電子部品は、
圧電セラミック層となるセラミックグリーンシートと電極となる導
電膜とを積層し、共焼成することで製造されることが一般的である。
電極材料としては、Pt、Ag-Pd合金などが広く用いられてい
る。しかし、これらの電極材料は高価であり、かつ、マイグレーシ
ョンが発生しやすいため、近年、代替品として、安価でマイグレー
ションの発生を抑制できるNi(ニッケル)が提案されている。N
iは、大気雰囲気中で焼成すると容易に酸化されてしまうことから、
還元雰囲気で焼成する必要がある。しかし、圧電セラミック材料と
して鉛を含有したチタン酸ジルコン酸系材料やチタン酸鉛系材料が
用いられている場合、これらの材料を還元雰囲気で焼成しようとす
ると鉛が還元されてしまい、所望の安定した圧電特性を得ることが
できない。 近年、鉛を含まず、還元雰囲気で焼成を行っても圧電
性が発現する無鉛圧電セラミック素材の有力候補の1つとして、ニ
オブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を主相とする無鉛圧電磁
器組成物が各種開発されている(特許文献1、2)。

【特許文献1】 特許第5862983号公報
【特許文献2】 特許第6489333号公報

(発明が解決しようとする課題)
上記のような無鉛圧電磁器組成物は、誘電損失(tanδ)が約5
%と比較的大きく、絶縁性などに懸念がある。このため、数十℃で
高電界が印加される分極処理時やデバイスとして駆動される際に、
リークや絶縁破壊が生じたり、温度が上昇しやすくなったりするお
それがある。
下図1のごとく、 圧電素子は、組成式(A1aM1b)c(NbdiM
nd2Tid3Zrd4Hfds)O3+e(但し、元素A1はアルカリ金属の
うちの少なくとも1種であり、元素M1はBa、Ca、Srのうち
少なくとも1種であり、0<a<1、0<b<1、a+b=1であ
り、cは0.80<c<1.10を満たし、0<d1<1、0<d2
<1、0<d3<1、0≦d4<1、0≦d5<1、d1+d2+d3
+d4+d5=1であり、eは酸素の欠損あるいは過剰を示す値)
で表されるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主
相を含み、b/(d3+d4+d5)≦1を満たす無鉛圧電磁気組
成物からなる圧電体と、卑金属を主成分とし、前記圧電体に接する
電極と、を備える誘電損失を低下させ、絶縁性を改善することがで
きる圧電素子を提供する。

図1.実施形態の圧電素子の断面図
【符号の説明】10:圧電素子 11:圧電層(圧電体) 12、
13:内部電極(電極)
以下、割愛(後略)

2.特開2021-52081 光電変換素子及び太陽電池、光吸収剤、並び
に、
発光素子 富士フイルム株式会社
【概要】
(発明が解決しようとする課題)
光電変換素子の感光層に含まれる光吸収剤には、光電変換素子の工
業的な生産効率を向上させる観点から、より少ない工程数で簡便に、
目的のペロブスカイト化合物の膜を形成できること(以下、「製膜
性」とも称す。)が求められてくる。また、ペロブスカイト化合物
の膜(以下、ペロブスカイト膜とも称す。)を光電変換素子に適用
する場合、使用環 境に依っては素子が高温(例えば、80℃以上)
にさらされることから、熱に対する安定性も求められる。これは、
鉛フリーのペロブスカイト化合物の膜についても同じである。 
しかし、本発明者が検討したところ、これまで知られている鉛フリ
ーのペロブスカイト化合物では、上記の特性を十分に満足するには
至っていないことがわかってきた。例えば、上記非特許文献1及び
2に記載のペロブスカイト化合物は、簡便な方法でペロブスカイト
型結晶構造を有する膜を作製できるものはほとんどなく、そもそも
、得られた膜は、加熱によって膜にクラックが生じてしまうことが
わかってきた。このクラックの発生は、ペロブスカイト膜を適用し
た光電変換素子の性能の低下に繋がる可能性がある。また、上記非
特許文献3に記載のペロブスカイト化合物の膜は、加熱により吸光
度そのものが低下してしまう問題があることがわかってきた。この
吸光度の低下は、例えば、ペロブスカイト膜を適用した光電変換素
子の光電変換効率の低下に繋がる。 これらの点に鑑み、簡便な方法
でペロブスカイト膜を構築でき、しかも、得られた膜は、加熱によ
るペロブスカイト膜のクラックの発生及び吸光度の低下のいずれも
が効果的に抑制された(以下、これらの特性を耐熱性と称す。)、
鉛フリーのペロブスカイト化合物の開発が求められている。 
本発明は、感光層の光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペロブ
スカイト膜を構築でき、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有する、
鉛フリーのペロブスカイト化合物を含む光電変換素子及びこの光電
変換素子を用いた太陽電池を提供することを課題とする。 また、本
発明は、簡便な塗布工程によりペロブスカイト膜を構築でき、しか
も得られた膜が優れた耐熱性を有する、鉛フリーのペロブスカイト
化合物を含む光吸収剤を提供することを課題とする。 さらに、本
発明は、上記優れた特性を有する光吸収剤を含む層を具備する、発
光素子を提供することを課題とする。

下図1のごとく、導電層11と導電層11上に設けられた光吸収剤
を含む感光層13Aとを有する第一電極1Aと、第一電極1Aに対
向する第二電極2とを有する光電変換素子10Aであって、光吸収
剤が特定の組成式で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する太
陽電池であって、感光層の光吸収剤として、簡便な塗布工程によりペ
ロブスカイト膜を構築でき、しかも得られた膜が優れた耐熱性を有
する、鉛フリーのペロブスカイト化合物を含む光電変換素子及び太
陽電池、光吸収剤、並びに、発光素子を提供する。


図1.光電変換素子の好ましい態様について、層中の円a部分の拡
 大図も含めて模式的に示した断面図

【符号の説明】1A~1F 第一電極 11 導電層 11a 支持体
11b 透明電極 12 多孔質層 13A~13C 感光層 14 ブロ
ッキング層2 第二電極3A、3B、16 正孔輸送層4、15 電子
輸送層6 外部回路(リード)10A~10F 光電変換素子100
A~100F 太陽電池を利用したシステムM 電動モータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電層と該導電層上に設けられた光吸収剤を含む感光
層とを有する第一電極と、前記第一電極に対向する第二電極とを有
する光電変換素子であって、 前記光吸収剤が下記組成式(I)で表
されるペロブスカイト型結晶構造を有する、光電変換素子。 組成式
(I):AaBbXc 上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及
びカチオン性有機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、
(ii)及び(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭
素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又
は原子団を示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有
量の合計は80mol%以上である。a~cは組成比を示し、a及
びbは0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含
まない。 (i)周期表の1族~15族に属する金属元素のうち、
セシウム及びルビジウムを除く2種以上の金属元素である。 (ii)
価数が1価の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。
(iii)価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価
の金属元素の割合が最も高い。ただし、前記の価数が2価の金属元
素の割合は、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じで
あってもよい。
【請求項2】 前記Bが、周期表の2族~15族に属する2種以上の
金属元素である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】 前記光吸収剤が3次元ペロブスカイト型結晶構造を有
する、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】 前記Xが臭素原子及びヨウ素原子の少なくとも1種を
含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】 前記X中のヨウ素原子の含有量が70mol%を越え
る、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】 前記Bが3種以上の金属元素を含む、請求項1~5の
いずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】 前記Bが、Ti、Zr、Nb、Ta、Cu、Ag、
Au、Zn、Ga、In、Ge、Sn、Sb及びBiのうち少なく
とも1種の金属元素を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の
光電変換素子。
【請求項8】 前記のa及びbが0.80≦a/b≦1.15を満た
す、請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】 請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換素子を
用いた太陽電池。 【請求項10】 下記組成式(I)で表されるペ
ロブスカイト型結晶構造を有する光吸収剤。 組成式(I):AaB
bXc 上記組成式中、Aはセシウム、ルビジウム及びカチオン性有
機基の少なくとも1種を示す。Bは下記(i)、(ii)及び
(iii)を満たす金属元素を示す。Xは塩素原子、臭素原子及び
ヨウ素原子の少なくとも1種を含むアニオン性の原子又は原子団を
示す。X中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量の合計は
80mol%以上である。a~ cは組成比を示し、a及びbは
0.50<a/b<1.50を満たす。ただし、Bは鉛を含まない。
(i)周期表の1族~15族に属する金属元素のうち、セシウム及び
ルビジウムを除く2種以上の金属元素である。 (ii)価数が1価
の金属元素及び価数が2価の金属元素を少なくとも含む。 (iii)
価数毎に算出される金属元素の割合のうち、価数が2価の金属元素
の割合が最も高い。ただし、前記の価数が2価の金属元素の割合は
、2価以外のいずれかの価数の金属元素の割合と同じであってもよい。
【請求項11】 請求項10に記載のペロブスカイト型結晶構造を有
する光吸収剤を含む層を具備する、発光素子。
以下割愛(後略)

3.特開2021-091599 短波IRデバイスのための鉛フリーペロブス
カイト材料 <ユタ ステート ユニバーシティ/strong>
【概要】
下図1のごとく、一般式A3+B+C+XYZ3を有する鉛フリー
ペロブスカイト材料であって、A3+Z3が、A3+、第1の三価
の金属カチオンと、Z3、3つの第1の一価のアニオンと、を含む
、第1の化合物であり、B+Yが、B+、第2の一価金属カチオン
と、Y、第2の一価のアニオンと、を含む、第2の化合物であり、
C+Xが、C+、第3の一価金属カチオンと、X、第3の一価のアニ
オンと、を含む、第3の化合物であり、前記第1の化合物と、前記
第2の化合物と、前記第3の化合物とのモル比が、約1:1:2で
ある、鉛フリーペロブスカイト材料とすることで、可視から短波I
R(SWIR)にわたる特有の吸光度を有する、より低コストで環
境に優しい鉛フリー短波IR材料、及び短波IRデバイスを作製す
るための方法を提供する。


図1.ガラス基板上のCs2BiAgBr6ペロブスカイト薄膜の
 XRDパターンの図示
以下割愛(後略)
以上、電子器機及び材料の鉛フリー(無鉛)化技術の事例を掲載。

【関連技術情報】
.鉛を含まないペロブスカイト太陽電池 電気通信大学 特認教
 授 早瀬修二 2021.5.28


2.ペロブスカイト太陽電池を鉛フリーで安定化させる新技術開発
 シンガポール|ASEAN科学技術ニュース、Science Portal ASEAN
 ASEANの科学技術の今を伝える 2023.4
 発表論文:Ye et al. (2023) Expanding the low-dimensional interface
 engineering toolbox for efficient perovskite solar cells
 .https://www.ntu.edu.sg/research/research-hub/news/detail/a-new-approa
 ch-for-stabilising-perovskite-solar-cells-without-lead
 
.ペロブスカイト太陽電池の欠陥発見へー豪、世界初の技術を用
 いた検査装置開発 《動画あり》2022.09
.キヤノン、高耐久の「ペロブスカイト量子ドットインク」を開
 発 2023.5.29

以上のように、鉛フリー(無鉛)化技術も着々進んでおり近〃高性
能・高品質・高機能なペロブスカイト型太陽電池及び電子器機・電
子材料の商用化が新興していくと確信している。さらに、中間総括
的に感想すれば、「再エネ百パーセントエネルギー社会」は早晩実
現する。現に、エネルギーの送電は宇宙空間(海中)を含め、光(
レ-ザ-)・電磁波送電できることもはっきりしており、デジタル
革命渦論の基本則の「イレージング」(➲ワイヤレス)で大がか
りな送電線がなくなる日がくるだろうと20年前に考えていたこと
が実現する。地下化石燃料本位制下で、石炭は石油に駆逐されつつ
あるが、米・中・ロなどの大国は未だに石炭火力を使用している。
既得権益にしがみつくのは早々に止め、昨今の気候変動禍を抑止す
べきである。
                         この項了

異方性ボンド磁石の製造技術を開発
レゾナック強度と磁気特性の両立を実現
7月12日、レゾナックは異方性ボンド磁石の製造に関し、高強度と磁
気特性を両立させるための新技術を開発し、特許を取得したと発表
した。開発したボンド磁石は、効率の良いEV(電気自動車)向けモ
ーターなどに提案する。
ボンド磁石は、樹脂と磁粉を組み合わせて作製し、加工性や寸法精
度に優れている。ボンド磁石には「等方性磁石」と「異方性磁石」
があり、異方性磁石は磁気特性に優れているという。また、「焼結
磁石に比べ軽量で熱損失も少なく、効率の良いモーターを作製でき
る」といった特長がある。一方で、高強度と磁気特性を両立させる
のが難しい。今回は、高密度成形技術と樹脂・潤滑剤を最適化する
技術を開発し、従来の課題を解決した。
【関連特許】
特許第7298804号 磁性成形体の製造方法、及び異方性ボンド磁石
株式会社レゾナック
【概要】
下図1のごとく、磁性成形体の製造方法は、磁石粉末と熱硬化性樹
脂とワックスとを含むコンパウンドを、型内に供給する供給工程と、
成型温度Tmで加熱された型内のコンパウンドへ磁場を印加しなが
ら、型内のコンパウンドを圧縮することにより、コンパウンドから
成形体を形成し、且つ成形体からワックスを除去する成型工程と、
成型工程後、成形体を脱磁する脱磁工程と、脱磁工程後、熱硬化性
樹脂の熱硬化温度以上である温度で成形体を加熱することにより、
磁性成形体を得る熱硬化工程と、を含む。磁石粉末は、Sm-Fe
-N系永久磁石を含む。成型温度Tmは、ワックスの滴点以上であ
り、且つ熱硬化性樹脂の熱硬化温度未満である。

図1.図1中の(a)及び図1中の(b)は、本発明の一実施形態
に係る磁性成形体の製造方法に用いる製造装置の模式的な断面図で
あり、図1中の(a)及び図1中の(b)に示される断面は、一対
のパンチ、ダイ、コンパウンド、及び一対のコイルの全てを横断し
一対のパンチがコンパウンドに及ぼす圧力の方向(加圧方向)に平
行である。
【符号の説明】 2…コンパウンド、2A…成形体、2B…異方性
ボンド磁石、3…磁石粒子(磁石粉末)、4…ワックス、5…熱硬
化性樹脂(樹脂組成物)、6…クリアランス、10…製造装置(成
型装置)、c1…第一コイル、c2…第二コイル、d1…ダイ、H
…磁場、m…磁石粒子の磁化方向、M…異方性ボンド磁石の磁化方
向、p1…第一パンチ、p2…第二パンチ、P1…第一圧力、P2
…第二圧力。
【発明の効果】 本発明の一側面によれば、残留磁束密度及び機械
的強度に優れた異方性ボンド磁石の製造に用いる磁性成形体の製造
方法、及び残留磁束密度及び機械的強度に優れた異方性ボンド磁石
の製造法が提供される。
(特許請求の範囲】
【請求項1】 磁石粉末と熱硬化性樹脂とワックスとを含むコンパ
ウンドを、型内に供給する供給工程と、成型温度Tmで加熱された
前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前
記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形
体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程
と、 前記成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程と、 前記脱
磁工程後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成
形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程と、 を
備え、 前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含み、 前記
成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり、且つ前記熱硬化
性樹脂の前記熱硬化温度未満である、 磁性成形体の製造方法。
【請求項2】 前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工
程に続く第二加圧工程と、を含み、 前記第一加圧工程において、
前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用
する圧力が、第一圧力P1に維持され、 前記第二加圧工程におい
て、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ
作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、 前記第二圧力P2が、
前記第一圧力P1よりも高く、 前記第二加圧工程において、前記
成形体から前記ワックスが除去される、 請求項1に記載の磁性成
形体の製造方法。
【請求項3】 前記成型工程において、前記成型温度Tmで加熱さ
れた前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力を、第二圧力P2
まで連続的に増加させることにより、前記成形体から前記ワックス
が除去される、 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法。
【請求項4】 前記成形体が収容された前記型を、前記成型温度T
mから前記滴点未満である温度まで冷却する冷却工程を更に備え、
前記冷却工程が、前記成型工程に続き、 前記脱磁工程が、前記冷
却工程後に実施される、 請求項1~3のいずれか一項に記載の磁
性成形体の製造方法。
【請求項5】 クリアランスが前記型に形成されており、 前記成型
温度Tmでの前記ワックスの粘度が、前記成型温度Tmでの前記熱
硬化性樹脂の粘度よりも低く、 前記成型工程では、前記成形体か
ら除去された前記ワックスが、前記クリアランスを通じて、前記型
外へ排出される、 請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性成形
体の製造方法。
【請求項6】 前記磁石粉末の質量及び前記熱硬化性樹脂の質量の
合計が、M1と表され、 前記コンパウンド中の前記ワックスの質
量が、M2と表され、 (M2/M1)×100が、2以上10以
下である、 請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性成形体の製
造方法。
【請求項7】 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、マレイミド化
合物、ポリイミド、ポリアミド、及びポリアミドイミドからなる群
より選ばれる少なくとも一つの樹脂を含む、 請求項1~3のいず
れか一項に記載の磁性成形体の製造方法。
【請求項8】 前記ワックスが、モンタン酸エステルを含む、 請求
項1~3のいずれか一項に記載の磁性成形体の製造方法。
【請求項9】 請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性成形体の
製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性
ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製
造方法。
【請求項10】 請求項4に記載の磁性成形体の製造方法を備え、
前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着
磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。
【請求項11】 請求項5に記載の磁性成形体の製造方法を備え、
前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着
磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。
【請求項12】 請求項6に記載の磁性成形体の製造方法を備え、
前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着
磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。
【請求項13】 請求項7に記載の磁性成形体の製造方法を備え、
前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着
磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。
【請求項14】 請求項8に記載の磁性成形体の製造方法を備え、
前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着
磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。



出所:NREL
「両面発電パネル」のシェア急拡大、
発電事業用の8割に 発電量が5~20%アップ
7月11日、米ファースト・ソーラー(First Solar)は、6月14日、
ドイツで開催されるヨーロッパ最大の太陽光発電業界の展示会「イ
ンターソーラー・ヨーロッパ(Intersolar Europe) 2023」で、世
界初となる両面発電型の薄膜太陽光パネルを限定的に生産すると発
表。結晶シリコン系の太陽電池では、n型セル(発電素子)の採用
により、早くから両面発電型太陽光パネルが製品化され、ここ数年、
中国メーカーも主要な製品ラインナップに加えている。一方で、ガ
ラス基板上に化合物半導体でセルを形成する薄膜太陽光パネルの場
合、両面発電タイプは製品化されていなかった。  
両面発電型太陽光パネルは、表面・裏面どちらでも発電が可能で、
地面などからの反射光が裏面に当たることによって発電量が上乗せ
される。この裏面の発電により従来の片面発電パネルと比べて5~
20%もの発電量の増加効果が期待できるといわれている。  
太陽光パネル当たりの発電量が多いことから、パネル価格の上昇を
ある程度、抑えられればLCOE(均等化発電原価)を引き下げ、太陽
光発電の経済性を大きく向上させる。そのため米国では発電事業用
の大規模な太陽光発電所で、結晶シリコン系の両面発電型パネルの
採用が拡大している。


図2.ニューヨーク州非住宅用太陽光発電市場の両面発電型パネル
の導入量推移
青棒=コミュニティソーラーを除いた非住宅用導入量、赤棒=コミ
ュニティソーラー導入量、折れ点線=コミュニティソーラーにおけ
る両面パネルの比率、折れ実線=コミュニティソーラーを除いた非
住宅用における両面パネルの比率、出所:NREL)
-----------------------------------------------------------

しかしながらカドミウム汚染が心配
薄膜系の革新で世界をリード ファースト・ソーラーは、カドミウ
ムテルル(CdTe) 型化合物系太陽電池を生産し、薄膜太陽光パネ
ルの製造・販売で世界トップのメーカーである。 太陽光発電市場
に関するリサーチ・コンサルティング会社である米SPVマーケット
リサーチ(SPV Market Research)によると、2022年の全世界にお
ける太陽光パネル出荷量は約283GWに達し、中国メーカーがシェア
上位を独占するなか、ファースト・ソーラーは10位に食い込んでい
る。中国を拠点としない、そして結晶シリコン系以外で唯一の太陽
電池メーカーである。  「シリーズ6 プラス(Series 6 Plus )
」と名付けられた、最初の両面発電型薄膜太陽光パネルは、同社の
研究開発(R&D)チームによって開発された革新的な透明バックコ
ンタクトの採用を特徴としている。これにより、両面からのエネル
ギー獲得が可能になるだけでなく、赤外波長の光が透過するため、
熱として吸収されず、パネルの動作温度が下がり、太陽光を電気に
変える変換効率の向上が期待できるという。現在、同社では、「シ
リーズ6 プラス」のラボテストとフィールドテストを行っている。  
同社は研究開発に力を入れており、先進的な薄膜太陽光パネルの開
発と生産を加速するために、2022年10月、約3億7000万ドルを投資
して、オハイオ州ペリズバーグに新しい研究開発イノベーションセ
ンターを建設すると発表した。  米国には、「テルル化カドミウ
ム技術加速コンソーシアム(CTAC)」という組織があり、カドミウ
ムテルル型化合物系太陽電池における米国の技術的リーダーシップ
と競争力を強化するために活動している。ファースト・ソーラーは
そのメンバーの一員だ。CTACは、国立再生可能エネルギー研究所(
NREL)が運営し、米エネルギー省(DOE)の太陽エネルギー技術局
から資金が出ている 。

発電事業用市場の約85%  
現在、両面発電型太陽光パネルの市場は、主に地上設置型に限られ
ているが、業界に詳しい専門家は、米国の発電事業用市場の約85%
、そして商業用市場の約半分は、両面発電型パネルが採用されてい
ると推定している。 実際、ニューヨーク州エネルギー研究開発局N
YSERDA)による太陽光発電普及プログラムのデータによると、同州
の分散発電市場における両面発電型パネルの設置が大きく拡大して
いる。2022年のデータをみると、住宅用市場全体で両面発電型パネ
ルの採用が3.8%に留まっているのに対し、非住宅用では54.8%が両
面発電型パネルを使用。非住宅用に含まれる「コミュニティソーラ
ー」に限定して集計すると、60%ものコミュニティソーラーは両面
発電型パネルを採用したことがわかった(図2)。ちなみに、2020
年時点では、この分野での両面発電型パネルのシェアはわずか5%
に過ぎなかった。

関税除外で採用広がる  
実は、近年の米国市場における両面発電型パネルのシェア急上昇に
は連邦政府の貿易政策も絡んでいる。
2018年に、国内製造業を保護するため、トランプ前政権は結晶シリ
コン太陽電池 (CSPV)の輸入製品に対して4 年間にわたり関税を
課すことを決定した。具体的に、最初の1年目にはCSPVのセル(発
電素子)と太陽光パネルの輸入価格に30%が課された。  
しかし、同年の6月に両面発電型太陽光パネルについては、関税免除
のリストに加えられた。その後、両面発電型パネルの関税除外は、
2020年10月にトランプ前政権によって取り消されたものの、2021年
11月に再び関税免除になった。  2022年、バイデン政権は、太陽光
パネルへの追加関税を4年間続けることを発表し、引き続き両面発
電型パネルは追加関税の対象外とした。これにより、太陽光発電設
置業者は両面発電型パネルを採用することで、関税関連のパネルコ
ストを回避できることになった。こうした政策が、両面発電パネル
の価格優位性を高めることになり米国内での普及を促すことになっ
たという。
※カドミなどのリサイクルはどうするのかな?
via 日経クロステック(xTECH)



TDK、国内全製造拠点の電力を100%再エネに
2050年までに国内外の全拠点に拡大

TDKは、国内の全ての製造拠点で、利用する電力を100%再生可能エ
ネルギー由来に転換したと発表した。同社は2050年までに国内外の
全拠点の電力を100%再生可能エネルギー由来にする方針。
同社は、2025年度までにグループ全体における総電力使用量に占め
る再生可能エネルギーの比率を50%以上とする目標を掲げている。
これまで国内電力会社から購入する電力を再生可能エネルギー由来
のものにする取り組みを進めていて、2023年7月1日から国内の全製
造拠点が再生可能エネルギー由来の電力100%で操業しているとい
う。 今回の取り組みによって、2023年7月時点でTDKの国内外にお
ける生産開発拠点81拠点のうち44拠点が再生可能エネルギー由来の
電力100%での操業となり、再生可能エネルギー導入率は約40%に
なった。なお、同社は国外の製造拠点においても、太陽光発電シス
テムの設置や再生可能エネルギー由来の電力購入を進めている。  
TDKは「今後も国内外の製造拠点において再生可能エネルギーのさ
らなる導入を進め、2050年までに使用電力の100%を再生可能エネ
ルギー由来に転換することを目指す」とコメント。


画像:光生成穴のアクセプター部位として作用し、酸化反応を支配
する金属コタリーズの機能は、CH4のH2Oとの光触媒酸化の文脈で調
査。金属コカタリストがほとんど光発生した電子を蓄積し、還元反
応を排他的に誘導するという光触媒の従来の仮定を超え、CH4の穴
駆動酸化のダイナミクスと選択性に影響を与える。

メタン酸化光触媒反応を分子レベルで解明 
分子科学研究所の研究グループは,リアルタイム質量分析とオペラ
ンド赤外吸収分光を組み合わせることで,非熱的なメタン酸化光触
媒反応のメカニズムを分子レベルで解明。
メタン(CH4)は天然ガスやバイオガスに含まれ,持続可能社会に
おける炭化水素資源として期待されている。また,メタンの温室効
果は二酸化炭素(CO2)の約25倍であるため,温室効果ガスの低減
という観点からもメタンの有効利用は重要な研究課題となっている。

しかし,メタンは化学的に安定であるため,従来の触媒反応では
700℃以上,20気圧以上といったエネルギー多消費な反応プロセス
が必要になる。そこで,光や電気を駆動力とする非熱的な触媒・化
学技術によって持続可能かつ常温常圧でメタンを有効利用する手法
が研究されている。メタンを化学資源として有効利用するためには
適切な触媒を用いることで目的の反応を選択的に促進することが求
められる。酸化物半導体に代表される光触媒では,触媒表面におい
て非熱的に生じる光誘起正孔がメタン酸化反応を誘起することが知
られている。 しかし,触媒表面でのメタン酸化反応のメカニズム
は分子レベルでは未解明な点が多く,触媒材料に応じた酸化反応の
選択性の違いの起源は明らかとなっていなかった。
今後,実用的な光触媒を戦略的に設計するために,この反応メカニ
ズムを微視的に解明することで適切な材料設計・反応制御の指針を
得ることが求められていた。 今回研究グループは,光を反応駆動
源とした非熱的反応系において,金属助触媒は光誘起電子を捕捉・
蓄積して専ら還元反応場として機能すると従来考えられてきたが,
実際は光誘起正孔を捕捉・蓄積する酸化反応場としても機能するこ
とを明らかにし,半世紀に渡る光触媒の常識を刷新した。
今回見出された「金属助触媒が光誘起正孔を蓄積して酸化反応も誘
起可能である」という知見は,「金属助触媒は光誘起電子を捕捉・
蓄積して専ら還元反応のみを誘起する」という半世紀に渡る光触媒
研究の常識にパラダイムシフトをもたらすものであり,金属助触媒
のエンジニアリングによって非熱的反応の酸化選択性を制御できる
可能性が示されたとする。 メタンと水というユビキタスで一般性
の高い分子において得られた今回の知見は,より複雑な反応分子系
のメカニズムを理解する際の基礎学理となることが期待され,持続
可能な物質変換・エネルギー変換を実現する重要な環境エネルギー
化学技術のプラットフォームである非熱的な触媒反応系の高度化・
高機能化に貢献することが期待されるとしている。
【関連論文】
掲載誌: Angewandte Chemie International Edition, 
論文タイトル: “Beyond Reduction Cocatalysts: Critical Role of Metal
Cocatalysts in Photocatalytic Oxidation of Methane with Water
”(「還元
助触媒を超えて:水による光触媒メタン酸化における金属助触媒の重
要な役割」)
著者: Hikaru Saito, Hiromasa Sato, Taisuke Higashi, and Toshiki Sugimoto
掲載日:2023年6月27日(オンライン公開)
DOI:(英) 10.1002/anie.202306058, (独) 10.1002/ange.202306058


 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2015年代



● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす

 

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最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ④

2023年07月12日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。




もう二十年程前になるか、仕事で仙台を訪れた時、韓国冷麺のルー
ツがこの盛岡冷麺に息づいていることを知った時の鮮やかな驚きを
盛夏になると、仙台駅の駅なかで出会った「牛タンサンド」の美味
さとこの思い出を彼女には迷惑なことだろうが、融和しこころ柔ら
ぐ語り草である。

 

     

 

  

【再エネ革命渦論 146: アフターコロナ時代 145】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉙
ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。

【最新ペロブスカイト材料応用技術情報】


1.効率的で安定した完全印刷された炭素電極ペロブスカイト
 太陽電池
実現に役立つ正孔輸送二重層で作製
7月3日、フリードリヒ・アレクサンダー・エアランゲン・ニュルン
ベルク大学の研究グループらは、炭素電極 PSC (c-PSC) の曲線因子
と開放電圧を改善する正孔輸送二重層(HTbL) 構成を提案。最先端
の炭素電極 PSC (c-PSC) の電力変換効率 (PCE) は、金属電極のPSC
に比べて著しく遅れていた。 印刷可能な平面カーボン電極は、ペロ
ブスカイト太陽電池 (PSC) の背面コンタクトとして、熱蒸着金属の
代替品として浮上。

【要点】
1.正孔輸送二重層は炭素電極用に設計
2.完全周囲環境で印刷可能なペロブスカイト太陽電池を製造
3.エネルギーカスケード(多段)形成で電力変換効率が向上
4.炭素電極ペロブスカイト太陽電池の優れた安定性を実証
【概要】
印刷可能な平面カーボン電極は、ペロブスカイト太陽電池 (PSC)
の背面コンタクトとして熱蒸着金属の有望な代替品として浮上して
いるが、最先端の炭素電極 PSC (c-PSC) の電力変換効率 (PCE) は、
対応する金属電極に比べて著しく遅れていた。ここでは、c-PSCの
曲線因子と開回路電圧を同時に改善するための正孔輸送二重層(HT
bL)構成を提案します。 HTbLはペロブスカイトと炭素の間に2つ
の有機半導体を逐次ブレードコーティング法で調製、外側HTLは炭
素への正孔抽出を強化し、内側HTLはペロブスカイト表面の再結合
を緩和たし結果、HTbL使用し完全印刷。c-PSC は、単一のHTLを使
用した c-PSC よりも優れたパフォーマンスを示し、17.3%と比較し
て19.2%という安定したチャンピオンPCEを達成。このプロトタイプ
のc-PSC は、1 太陽、65℃のエージング テスト (ISOS-L-2I)で
2,500 時間安定して動作し、PCEの低下は無視でき、費用対効果の
高い太陽光発電技術の可能性を検証できたことで、硝子基盤から可
撓性の優れた有機薄膜基盤への実用展開への道を切り開いた。

Efficient, stable, and fully printed carbon-electrode perovskite solar
    cellsenabled by hole-transporting bilayers,  Joule, 2023,
-----------------------------------------------------------------------------------------

2.山形大,安定な赤色量子ドットLEDの開発
量子ドットのサイズ制御とグアニジウム置換による赤色量子ドット
7月11日、山形大学は,ペロブスカイト量子ドットの精密なサイズ制御とグ
アニジウム置換により,CsPbI3 QDsの構造安定化を実現し,高効率かつ
長寿命な赤色量子ドットLEDの開発に成功。
【概要】
赤色発光のCsPbI3量子ドットは,優れた発光量子収率と電荷輸送特性を
示す一方で,イオンサイズの小さなCsカチオンにより,結晶格子の歪みや
非光活性相への構造相転移が課題となっている。また,バルク結晶に比
べ極めて高い表面積をもつ量子ドットは,イオン脱離やイオン赤色発光の
CsPbI3量子ドットは,優れた発光量子収率と電荷輸送特性を示す一方で
イオンサイズの小さなCsカチオンにより,結晶格子の歪みや非光活性相
への構造相転移が課題となっている。また,バルク結晶に比べ極めて高
い表面積をもつ量子ドットは,イオン脱離やイオン拡散により発光性能が
低下することが知られている。 この研究では,結晶格子歪みの緩和およ
び量子ドット表面の安定化に着目し,相安定性を有するCsPbI3量子ドット
を合成し,高性能赤色量子ドットLEDを開発した。

研究グループは,平均粒径6-12nmのCsPbI3量子ドットを合成し,結晶構
造および光学評価を実施した。小粒径化されたCsPbI3量子ドットにおいて
光活性相の立方晶構造を形成し,斜方晶への相転移が抑制されたこと
を確認した。 これは,小粒径化により増大した表面エネルギーが格子歪
みを緩和したことに起因する。また,遷移エネルギーと平均粒径の依存
性を検証したところ,平均粒径10nm以下において,量子閉じ込め効果が
発現していることを確認した。小粒径化されたCsPbI3量子ドットは,大粒径
CsPbI3量子ドットに比べ,相安定化と量子閉じ込め効果により,比較的高
い発光量子収率を示した。 さらに,量子ドット表面への高い吸着性を有す
るグアニジウムの導入により,大幅な材料安定性の向上に成功した。量
子ドット表面へのグアニジウムの吸着エネルギーを第一原理計算により
算出したところ,一般的な配位子のオレイルアンモニウムに比べ,高い吸
着エネルギーを示した。 3つの窒素を有するグアニジウムは,量子ドット
表面のハロゲンイオンと複数の水素結合を形成することから高い吸着性し,
大気下および光照射下におけるPLQYの安定化を達成した。さらに,高い
材料安定性を示したGAI-CsPbI3量子ドットを発光層に用いたLEDにおいて,
外部量子効率22.5%および輝度半減寿命10.5時間を示し,ペロブスカイト
量子ドットLEDの高効率かつ長寿命を達成した。
図1. 異なる温度で合成したCsPbI3 QDsのa-c透過型電子顕微鏡画像 (合
成温度は、a 210 ℃、b190 ℃、c140 ℃)およびd X線回折スペクトル。
e CsPbI3量子ドットの平均粒径と遷移エネルギーの依存性。
『関連論文』
雑誌名: Chemical Engineering Journal
論文タイトル: Guanidium Iodide Treatment of Size-controlled CsPbI3
Quantum Dots for Stable Crystal Phase and Highly Efficient Red LEDs
著者:Hinako Ebe*, Rikuo Suzuki, Shunsuke Sumikoshi, Mizuho Uwano,
Reine Moriyama, Daisuke Yokota, Mahiro Otaki, Kazushi Enomoto,
Takao Oto, Takayuki Chiba*, and Junji Kido*
DOI:https://doi.org/10.1016/j.cej.2023.144578

-----------------------------------------------------------------------------------------
【最新特許事例】
1.特開2021-48280 グラファイト集積膜、グラファイト集積膜の製
 造方法、並びに該グラファイト集積膜を用いた熱電変換層及び熱
 電対機能ないし熱発電機能つき放熱材
------------------------------------------------------------
➲先回のつづきからか

【発明を実施するための形態】
計測端子部における熱起電力ΔVは、 【数1】
に示すように、測温部と計測端子部の温度差ΔTと、一方の熱電変
換層のSeebeck係数(SP)及び他方の熱電変換層のSeebeck係数(S
N)にのみ依存するため、部材の形状に依存しない。 したがって、
下図5に示すように、計測端子部の温度T2が既知で一定、又はΔ
Tが同じ場所なら、どこにΔV計測端子をつないでも、同じΔVが
得られ、部品形状の自由度がある。

図5.本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の使
 用例を示す図

【符号の説明】1:グラファイト集積膜 2:酸化グラフェン集積
膜 3:放熱・測温対象物(発熱体又は熱源) 4:ヒートシンク 
5:熱電変換層 6:5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層 7:
接合部 8:測温部 9:計測端子部 10:負荷 11:放熱フ
ィン

下図6は、本発明のグラファイト集積膜を用いた熱電対機能付き放
熱材の、他の設計・使用例を断面図として示すものであり、前図3
及び前図4と同様に、図中、3は、放熱・測温対象物を示し、5は、
熱電変換層を、6は、5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層を、
7は、接合部を示し、矢印は、熱流を示している。(a)に示すよ
うに、放熱・測温対象物(3)から、1対の接合による熱起電力を
測定してもよいし、(b)に示すように、放熱・測温対象部品(3)
から、n対の接合を複数直列にして、合計の熱起電力(測温感度)
を向上させて測定してもよい。


図6 本発明のグラファイト集積膜を用いた熱電対機能付き放熱
材の使用例を示す図、

図6は、本発明のグラファイト集積膜を用いた熱電対機能付き放熱
材の、他の設計・使用例を断面図として示すものであり、
前図3及
び前図4と同様に、図中、3は、放熱・測温対象物を示し、5は、
熱電変換層を、6は、5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層を、
7は、接合部を示し、矢印は、熱流を示している。 (a)に示す
ように、放熱・測温対象物(3)から、1対の接合による熱起電力
を測定してもよいし、(b)に示すように、放熱・測温対象部品
(3)から、n対の接合を複数直列にして、合計の熱起電力(測温
感度)を向上させて測定してもよい。


7.発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の設計例を
 示す図

(熱発電する放熱材としての利用)
上図7は、本発明のグラファイト集積膜の熱発電する放熱材の設計
例を断面図として示す図であり、図中、2は、導電性を有しない酸
化グラフェン集積膜を、5は、熱電変換層を、6は、5とはSeebeck
係数の異なる熱電変換層を、7は、接合部、10は、負荷(抵抗R)
を、それぞれ示しており、熱電変換層(5)及び熱電変換層(6)
の少なくとも一方に、本発明のグラファイト集積膜を使用するもの
である。 この例では、熱電変換層(Seebeck係数SP)(5)と、
熱電変換層(Seebeck係数SN)(6)を用い、端部の接合部(7)
を除き、導電性のない酸化グラフェン集積膜(2)を介在させたも
のを用いている。(a)は、その1対の熱発電素子の例であり、最
大出力電力は、
【数2】

となる。
【式3】


図8は、前記図7に示した熱発電する放熱材の使用例を断面図とし
て示す図であり、放熱フィンを兼ねた熱発電素子を示すものであり、
図中、3は、熱源、4は、ヒートシンク、10は、負荷、11は、
放熱フィン、矢印は、熱流を、それぞれ示している。 この例では、
放熱フィン(11)を兼ねた熱発電素子を介して、熱源(放熱対象

物)(3)から放熱をしながら、発電も行うことが可能である。

図8.本発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の
 使用例を示す図

【実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定さ
れるものではない。 


図9.実施例における、本発明のグラファイト集積膜の製造工程を
模式的に示す図
(グラファイト集積膜の製造)
グラファイトを分散する前の界面活性剤水溶液のモル濃度は、水溶
液全体の容積に対し て所定のモル濃度になるように界面活性剤の量
を電子天秤(アズワン製IUZ-101型)で秤量したのち、それを100
mLビーカー内の精製水に投入し、スターラー(アズワン製RS-1AR
型)を用いて室温にて毎分1000回転で回転子を約3分間回して
溶解することで調節した。 図9に示すように、薄片化したグラフ
ァイト粉末(アイテック社製、iGrafen-a、粒子径最大100μm、
平均厚さ約10nm)180mgを前記の界面活性剤の水溶液40
mLに投入し、超音波洗浄器(アズワン製USK-1R型)で30分程度
超音波を印加して分散処理を行うことにより、グラファイト薄片の
表面を界面活性剤の水溶液で被覆した。 その後、このグラファイト
分散液を孔径10μmのPTFEメンブレン(Omnipore製JCWP04700)で
濾過し、メンブレンを除去した直径40mmの積層体を25~70
℃のホットプレート(アズワン製HI-1000型)上で2~6時間静置・
乾燥して水分を除去した。この積層体に、小型熱プレス機(アズワ
ン製AH-2003型)を用いて25~100℃で10トンのプレス処理
を施すことにより、直径40mm・厚さ約70~90μmのグラフ
ァイト集積膜を得た。(以下、得られたグラファイト集積膜を「D
BS添加グラファイト集積膜」ということもある。)
上記の例では、分散した界面活性剤を陰イオン系のDBS(ドデシ
ルベンゼンスルホン酸、関東化学製24023-32)の水溶液を用いてい
るが本実施例ではこの他に、陽イオン系のCTAB(臭化ヘキサデ
シルトリメチルアンモニウム、和光純薬工業製036-02102)の水溶液
を用いた集積膜、さらにはこれらの界面活性剤を用いずに成膜した
グラファイト集積膜を電気物性の比較のために作製した。
本実施例で用いた界面活性剤のモル濃度は、DBSで1×10-3
mol/L~500×10-3 mol/L、CTABで1×10-3
mol/L~10×10-3 mol/Lとしたが、これは導電体の
キャリア極性の制御や熱電特性の最適化を目的として選んだ濃度で
ある。他の界面活性剤では、溶媒の種類、溶解度によって適切な熱
電特性になる様に濃度を制御すればよい。


図10.ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)添加グラファイト
集積膜(実施例で得られたグラファイト集積膜)の表面及び断面の
走査型電子顕微鏡(SEM)写真

(走査型電子顕微鏡観察)
図10は、得られたDBS添加グラファイト集積膜を、走査型電子
顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製S-4800型)を用いて撮
影したSEM写真であり、(a)は、表面を撮影したもの、(b)
は、断面を撮影したものである。 SEM写真に示すように、DBS
添加グラファイト集積膜の表面及び断面はいずれも、グラファイト
薄片が隙間なく敷き詰められた積層体を形成している様子がわかる。
緻密な集積膜であることは、この膜の密度が1.95g/cm3で
グラファイト結晶の密度2.2g/cmの85%以上を有してい
ることからも示された。


図11 DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシートの
X線回折パターン

(X線回折パターン及びラマンスペクトル)
図11は、X線回折測定装置(Rigaku製UltimaIV/PSK型)を用いて
測定した、DBS添加グラファイト集積膜(a)及び市販のグラフ
ァイトシート(b)のX線回折パターンである。 また、図12は、
ラマン顕微鏡(Horiba製XploLA型)を用いて測定した、DBS添加
グラファイト集積膜(a)及び市販のグラファイトシート(b)の
ラマンスペクトルである。 いずれも、純粋な市販のグラファイトシ
ートと同様のパターン及びスペクトルを示した。これは、分散溶液
中で超音波印加しても、グラファイト薄片に大きな欠陥は生じてい
ないことを示している。


図12.DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシートの
 ラマンスペクトル

(界面活性剤の有無・極性と、得られた集積膜の電気物性との関係)
界面活性剤の有無及び界面活性剤分子の極性と、界面活性剤で被覆
したグラファイト集積膜の電気物性(Seebeck係数、導電率、パワー
ファクター、Hall係数、磁気抵抗)の関係を調べた。最初に、グラ
ファイト集積膜のSeebeck係数、導電率、Hall係数、磁気抵抗の測定
について説明する。Seebeck係数及び導電率の測定は次のように行な
った。幅約3mm長さ約20mmの短冊状に切り出した集積膜試料
を、試料の片側が加熱できるようにした試料ステージに設置し、試
料の長手方向の両端に電流供給用の端子2個、及び試料内2点間の
温度差及び電位差測定用のR型熱電対2本を、試料に電気的・熱的
に接触させた。その後、試料の片側をヒータで加熱した時の、試料
内2点間の温度差をデジタルマルチメータ(ケースレーインスツル
メンツ製2700型)で、R型熱電対の白金電極側での電位差をナノボ
ルトメータ(キーサイトテクノロジー製34420A型)で測定した。試
料内2点間の温度差を0~2Kの間で3点以上変えて与え、それら
の温度差に対する電位差の傾きを求めて熱起電力を算出し、その値
から白金電極のSeebeck係数を差し引くことで、試料のSeebeck係数
を算出した。 
導電率は、直流電流源(エーディーシー製6242型)を用いて電流供
給用端子を通じて試料に約100mA以下の電流を流しながら、試
料内2点間の電位差を同型のデジタルマルチメータで測定し、4端
子法によって求めた。
また、Hall係数、磁気抵抗は導電率と共に次のように行なった。1
辺約10mmの正方形に切り出した集積膜試料を、ホール計測シス
テム(東陽テクニカ製Resitest 8300型)にセットし、van der Pauw
法を用いて導電率、Hall係数、磁気抵抗測定した。この際に印加し
た磁場は最大0.55Tとした。Seebeck係数計測時及びHall係数計
測時の2つの導電率が互いに10%以内の精度で一致していること
を確認した。Seebeck係数、導電率、Hall係数、磁気抵抗の測定はい
ずれも室温でのみ測定した。

図13.界面活性剤の有無及び界面活性剤分子の極性と、界面活性
 剤で被覆したグラファイト集積膜の電気物性の関係を示す図

図13に、陰イオン系の界面活性剤DBS水溶液を用いた集積膜、
陽イオン系の界面活性剤CTAB水溶液を用いた集積膜、及び界面
活性剤を用いずに成膜した集積膜の、Seebeck係数、導電率、Hall
係数、磁気抵抗を測定した結果を示す。パワーファクターは、以下
のとおりSeebeck係数と導電率の値を用いて算出した。 パワーファ
クター=(Seebeck係数)2×導電率
図13に示す結果から、特筆すべき点として、
(1)陽イオン系界面活性剤→界面活性剤なし→陰イオン系界面活
  性剤の順に、Seebeck係数及びHall係数の符号が負から正の方
  向に変化していること、
(2)界面活性剤なしの場合にSeebeck係数とHall係数の符号が異な
  ること、
(3)すべての試料で磁気抵抗がゼロでないこと、 の3点が指摘
  できる。
(2)及び(3)は、グラファイト集積膜の電気伝導には正孔と電
子の両方が寄与している半金属的物性であることを意味する。加え
て(1)で示されたとおり、界面活性剤の極性を変えることで、界
面活性剤分子とグラファイト表面の間の電荷移動により、電気伝導
を担う正孔と電子の濃度のバランス(差)をわずかに変化させ、
Seebeck係数とHall係数の符号を変化させている。本実験で用いた
濃度範囲では、導電率に対する界面活性剤の有無や種類への依存性
は小さく、そのためにSeebeck係数の比較的大きなDBSを用いた
集積膜のパワーファクター(熱電発電性能)が、界面活性剤を用い
ない場合やCTABを用いた集積膜より数倍以上高い値を示した。

(DBS濃度と電気物性との関係)
DBS濃度(モル濃度)と、Seebeck係数、導電率、Hall係数、及
び磁気抵抗との関係を調べた。 高いパワーファクターを示したD
BSを用いた集積膜について、水溶液中のDBS濃度と、Seebeck
係数、導電率、Hall係数、及び磁気抵抗との関係を図14に示す。


図14.分散液中のDBS濃度と、電気物性の関係を示す図

図14に示すとおり、Seebeck係数は、DBS濃度に大きな依存性を
示さず、約+20V/K以上の値で符号が正であり、正孔の相対的寄
与が大きいP型導電体である。 導電率はDBS濃度が50×10
-3~100×10-3 mol/Lの範囲でピークを示しており、そ
のためにパワーファクター(熱電発電性能)は同じ濃度範囲におい
て0.17~0.18mW/m・Kの最大値を示した。DBS濃
度が100×10-3 mol/L以下の範囲では、DBS分子がグ
ラファイト表面を被覆することで、隣り合うグラファイト薄片間の
密着性(接触面積)を向上させる効果を示す一方、200×10-3
mol/L以上の範囲では過剰なDBS分子の凝集が起こり、グラ
ファイト同士の密着性を阻害していると推測される。 以上のよう
に、DBS濃度によって熱電発電性能が最適化できることが分かっ
た。

(熱電対の作製)
以上のとおり、DBS添加によって熱電発電性能を最大化した熱電
変換層である、P型導電体のグラファイト集積膜を作ることに成功
した。 そこで、本実施例では、N型で高い導電率を有することが既
に知られている、純粋な市販のグラファイトシート(パナソニック
製PGSグラファイトシートEYGS121803)とPN接合させることに
より、以下のようにして、グラファイト熱電対を作製した。 


図15.実施例で作製した、グラファイト集積膜を用いたグラファ
 イト熱電対を模式的に示す図

図15は、本実施例で製造したグラファイト熱電対を模式的に示す
図であり、前記の実施例で得られたDBSで被覆したグラファイト
集積膜(DBS添加グラファイト集積膜)(厚さ約70~90μm)
及び市販のグラファイトシート(厚さ約30μm)を、幅4mm、
長さ30mmの短冊状に加工し、いずれも片方の先端部分3~5m
mの長さの領域で互いに直接接合し、それ以外の部分は電気的絶縁
体である厚さ約10~30μm(プレス前)、幅10mm、長さ3
0mmの酸化グラフェン集積膜(GO膜)を挟んで接合した。 その
後、先述と同型の小型熱プレス機を用いて25~100℃で1~3
トンの荷重でプレス処理(熱圧着)をして、グラファイト熱電対を
得た。 酸化グラフェン集積膜は、濃度4mg/mLの酸化グラフェ
ン(Graphenea社製)水分散液20~30mLを、80℃で2時間
以上乾燥させて得た膜である。 
なお、上記実施例では、N型導電体として、グラファイトシートを
用いた例を示しているが、CTAB等の陽イオン系界面活性剤で被
覆したグラファイト集積膜(熱電変換層)を用いることもできるこ
とは言うまでもない。
このグラファイト熱電対では、直接PN接合された先端部分が測温
部となり、その測温部ともう片方の端との間(シートの面内方向)
で温度差を付与することにより、熱起電力を発生させて温度差を検
知することや、熱電発電を行うことができる。 
本実施例で用いたN型の市販グラファイトシート及びP型のDBS
添加グラファイト集積膜(熱電変換層)に対して、先述の方法によ
ってSeebeck係数、導電率、パワーファクターを評価した。その結
果を、表1に示す。

図16に、グラファイト集積膜を熱電対に用いた温度計測の結果を
示す。

図16.グラファイト集積膜を用いた熱電対による温度計測の結果
 を示す図

図中、ΔTは、熱電対測温の加熱用ヒータの温度と周囲温度の差、Δ
Vは、グラファイト熱電対から発生した熱起電力をそれぞれ表してい
る。 計測は次のように行った。グラファイト熱電対の測温部近傍に
局所加熱用ヒータとK型熱電対(以下、「ヒータ用熱電対」と呼ぶ)を
接触させてヒータで加熱し、その際のヒータ用熱電対の温度と室温
(周囲温度)の差ΔTをデジタルマルチメータ(ケースレーインス
ツルメンツ製2700型)で計測し、並行してグラファイト熱電対の熱
起電力ΔVをナノボルトメータ(ケースレーインスツルメンツ
製2182A型)で測定した。 その結果、図16(a)に示すように、
ΔTに応じてΔVが変化することが分かり、熱電対として機能して
いることを確認した。
さらに、図16(b)に示すように、本実施例のグラファイト熱電
対は、温度差ΔT=43.4Kでの応答性を規格化すると、K型薄
膜熱電対よりも早い応答性を示すことが分かった。
グラファイト熱発電素子は、図15と同様の構造として形成される。
図17に、幅4mm、長さ30mmの短冊状グラファイト熱発電素
子の測温部と周囲温度との間に温度差ΔT=43.4Kを与えた場
合の、電圧電流特性及び熱電発電出力Poutの値を示す。


図17.グラファイト集積膜を用いた熱電対による温度計測の結果
 を示す図

電圧電流特性はソースメータ(ケースレーインスツルメンツ製2400
型)を用いて、最大1mAの直流電流を供給して測定した。
この熱発電素子では、P型導電体をDBS濃度が100×10-3
mol/L、パワーファクター0.173mW/m・Kで最大化
したグラファイト集積膜(熱電変換層)を用いたところ、最大出力
0.135μWを生じ、グラファイト熱発電素子の断面積で割ると
31μW/cmの最大出力密度を生じていることが確認できた。

下表2に、市販のグラファイトシート、DBS添加グラファイト集
積膜、及びこれらを接合したグラファイト熱電対の3種類に対する、
膜面内方向の熱拡散率(ベテル製サーモウェーブアナライザTA33型
で測定)、密度(電子天秤、アズワン製IUZ-101型で測定)、比熱(
Netzch製示差走査熱量測定装置で測定)の測定結果をまとめた。測
定はいずれも室温のみで行った。 膜面内方向の熱伝導率は、上記
の熱拡散率、密度、比熱の3つの値の積で算出し、表2に記した。
------------------------------------------------------------
【符号の説明】1:グラファイト集積膜 2:酸化グラフェン集積
膜 3:放熱・測温対象物(発熱体又は熱源) 4:ヒートシンク 
5:熱電変換層 6:5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層 7:
接合部 8:測温部 9:計測端子部 10:負荷 11:放熱フ
ィン
------------------------------------------------------------


表で特筆すべき点は、DBS添加グラファイト集積膜が、アルミニ
ウムと同程度の高い熱伝導率(258W/m・K)を示す点と、優
れた放熱材として高い熱伝導率を示す市販のグラファイトシートと
接合した後も、 1000W/m・K以上の高い熱伝導率を維持し
ている点である。 グラファイト熱発電素子は、グラファイト熱電
対と同様の構造として形成されることから、本実施例で作製したグ
ラファイト熱電対及びグラファイト熱発電素子は、温度計測機能及び
熱電発電機能を有しながら、高い熱伝導率を伴い、放熱材の機能も
兼ね備える部材であることが示された。

【産業上の利用可能性】
本発明のグラファイト集積膜は、発熱部品の温度計測と放熱の2つ
の機能を1つの部材で兼ね備えることができ、温度測定部位に別途
、熱電対を設置する必要がないので、電気自動車や電子機器等に用
いられるパワー半導体や電池等、種々の分野においての利用が期待
できる。あるいは、発熱部品を冷却する放熱フィン自体が熱電発電
を行ない、電力を得てセンサーや通信を自立駆動できる孤立微小電
源、及びこれを利用するIoT分野にも応用できる。
                           以上
※矢継ぎ早に膨張する疑問・好奇心に手を焼いている昨今。”どう
する信長?!” とほほのホ・・・・・ ^^;。

 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2015年代

● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす




吳汝俊首張專集It's For You之楊貴妃

京胡という楽器は、胡弓の一種であり、同じ二弦の形をしているの
で、ともするとひたすらじょうじょうとした哀愁をおびた音色を求
められがちだが遠う。 実は私自身もそのあたりのことを誤解し、も
っと優婉な音を……などと要求したりもしたが、「ゆうえん」でも
女偏のついた「優婉」ではなく、「悠遠」な壮大さ持った「幽遠」
であり、「優艶」な艶っぽさがあると同時に、ダイナミックなエッ
ジを持つ男性的な楽器でもあるといえる。ここにご紹介する呉汝俊
(ウー・ルーチン)は、中国で文化大革命の嵐が吹き荒れる直前の
1963年に南京で誕生。21歳で中国戯曲学院を主席で卒業すると同時
に、中国京劇院に 所属して、男且(女形;おやま)歌手兼京胡奏
者となる。先頃来日した京劇団の京間奏者の、呉氏にとっては先輩
格にあたる方たちに、当時の 呉氏のことを聞くと、本当に練習熱
心な生徒で、すでにその頃から天才ぶりを発揮していたそうで、と
ても陽気でヤンチャなところもある愛すべき少年であったという。  
京胡という楽器は京劇の伴奏楽器だが、彼はは2年後に京胡をソロ
楽器として独立させ、自作の「京胡軽音楽」を創始して、政府直轄
の中国文化部の優秀作品奨を受賞。25歳だった1988年には、京胡と
いう占典楽器始まっていらいの初の独唱・独奏コンサートを北京で
開催し成功を収める。しかし文化大革命いらい、京劇の中で男且(
女形)は追放されており、女性に扮して女性の声で歌う呉さんの居
場所は中国に無く、「組曲/三国志」がアルバムとして完成し 東南
アジアと日本で同時に発売された1996年あたりから、呉さんと日本
との急激な交流が生まれる。その呉氏と私が出逢ったのは、呉さん
が芸能25周年を迎え、日本の文化庁主催の国際音楽祭として福岡の
サンパレスという大きなホールで記念コンサートを開いた1998年の
こと、そのコンサートの会場ではなく、九州のテレビに出演してい
た呉さんを見て感激して、「
ぜひ、あの人に逢いたい」と言って捜
していた鹿児島県串木野の、それは辺鄙な山の中のおかの和尚さん
のご祭事で、偶然そのお寺の信者さんに連れて来られた呉氏に引き
合わされ、その年から私がこれまた偶然のきっかけで毎年8月に奉
納することになった観月祭のステージで、呉氏の京胡を初めて聞い
た。
でも、実は、本当に衝撃を受けたのは、去年2001年の観月祭の夜に
、新京劇「東方オペラ」の女形として、揚貴妃に扮して歌う呉さん
の中国放送のビデオを見せられた時のこと。自ら脚本を書き、歌を
作り、演出して、華麗な衣装に身を包んで歌う女装の呉さんは、張
り上げた声と中国特有の抑揚で、異様ともいえるほとの強烈なイン
パクトを私に与えれ。
「え-?! こんな声がでるの?」と驚く私に、「中国では黄金の
声と呼ばれ、復活した男日.として、大変な評判を呼ぶ。でもこの
声が、幾つまで出せるか解らない。30代のうちに、「1本でも皆さ
んに聞いて欲しいです。」と、呉氏は流暢な日本語で話してくれた。
その新京劇「揚貴妃と阿倍仲麻呂」は、日中国交正常化30周年記念
事業として、すでに現在中国公演中であり、8月からは全国的な規
模での日本公演が決まっている。
その豪華絢爛な大輪の花のような呉さんも素敵だけれど、私はやっ
ぱり音楽家、類い稀な京胡奏者としての呉氏紹介したいと思った。
この壮大なスケールと、心をかきむしるような抒情、そして日本の
奏者には決して味わえないダイナミズム。そこには中国数千年の歴
史と古典のスピリットが、時空を越えて息づいているという気がす
る。
そしてその悠遠にして幽遠、また優艶なダイナミズムは、中国や「
]本という狭い国境や文化を越えて、地球規模に広がっていく可能
性をもっていることが、バット・メセ二ーやアントニオ・カルロス
・ジョピン、喜多郎といった大たちの作品を聞いていただくと、き
っと良くお解り頂けるでしょう。
最後に、井上鑑さんという、日本を代表する作曲家てあ(編曲家で
ある、とてもグローバルで豊かな感性を持った魂の盟友とめくう逢
えたことを、呉氏のために心から感謝したい。
                 2002年6月12日 湯川れい子

※筆者、一部意訳薬転載(2023年7月13日)
                         

 

 

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最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ③

2023年07月11日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



        夏燕 美味し拉麺 つたう汗 
                       



初夏の頃
words and music by 浜田省吾

蒼い雲が河を流れる此処は僕等の最後の世界
木立に透けて見える初夏の陽差しと甘い憂僻
押し寄せる何もかもまるで夏の雨のように
独り何処かに隠れて生きてゆけたかな
顔を背け何も信じなかった
昨日までのことがまるで夢のように遠い
きっと君も僕と同じように
ひとりぼっちの日を歩き続けてきたんだろう
行ってしまうよ僕が泣き出さないように
君の腕の中に強く抱きしめておくれ
行ってしまうよ僕が泣き出す前に
君の腕の中に強く抱きしめておくれ

 

   Part 1 Chapter 3
  ぽくもきみも、互いの家を訪問したりしない。相手の家族と
 顔を合わせることもないし、それぞれの友だちを紹介しあうこ
 ともない。ぽくらは要するに誰にもIこの世界中のいかなる人
 にも-邪魔をされたくないのだ。ぽくときみは、ニ人で時を過
 ごしているだけで十分満ち足りているし、他の何かを付け加え
 たいとは思わない。また、ただ物理的な観点から見ても、何か
 を付け加えるような余地はそこにはない。前にも述べたように、
 ぽくらの間には語り合うべきことが山ほどあるし、二人で一緒
 にいられる時間は限られているからだ。
  きみは自分の家族のことをほとんど語らない。ぽくがきみの
 家族について知っているのは、いくつかの細切れの事実だけだ。
 父親は地方公務員だったが、きみが十一歳のときに何か不手際、、、
 あって辞職を余儀なくされ、今は予備校の事務員をしていると
 いうことだ。どんな不手際だったかは知らない。でもどうやら、
 きみがその内容を口にしたくない類の出来事であったようだ。
  実の母親は、きみが三歳の時こ内蔵の願で亡くなった。だか
 ら記憶はほとんどない。顔も思い出せない。きみが五歳の時、
 父親は再婚し、翌年妹が生まれた。だから今の母親はきみにと
 って親しみをもてるわけだが、父親に対してよりはその母親の
 方に「まだ少しは親しみが持てるかもしれない」という意味の
 ことを、きみは一度だけ口にしたことがある。本のページの隅
 に小さな活字で記された、さりげない注釈みたいに。六歳年下
 の妹については、「妹には猫の毛アレルギーがあるので、うち
 では猫が飼えない」という以上の情報は得られなかった。
  きみが子供の頃、心から自然に親しみを抱くことができたの
 は、母方の祖母だけだ。きみは機会があれば一人で電車に乗っ
 て、隣の区にあるその祖母の家を訪れる。学校が休みの時期に
 は何日か泊めてもらうこともある。祖母は無条件にきみを可愛
 がってくれる。乏しい収入の中から細々したものを買い与えて
 もくれる。しかし祖母に会いに行くたびに、義母の顔に不服そ
 うな表情が浮かぶのを目にして、何かを言われたわけではない
 のだが、次第に祖母の家から足が遠のくようになる。その祖母
 も数年前に心臓病で急逝してしまった。
  きみはそんな事情を細切れにぽつぽつと話してくれる。古い
 コートのポケットからぼろぼろになった何かを、少しずつすく
 い出すみたいに。
  もうひとつ今でもよく覚えていること-きみはぼくに家族の
 話をするとき、なぜかいつも自分の手のひらをじっと見つめて
 いた。まるで話の筋を辿るためには、そこにある手相(か何か)
 を丹念に読み解くことが必要不可欠であるかのように。
  ぼくの方はといえば、自分の家族についてきみに語るべきこ
 となど、ほとんど見当たらなかった。両親はごくありきたりの
 普通の親だ。父親は製薬会社に勤めており、母親は専業主婦。
 ありきたりの普通の親のように行動し、ありきたりの普通の親
 のように語る。年老いた黒猫を一匹飼っている。学校での生活
 についても、とりたてて語るべきことはない。成績はそれほど
 悪くはないが、人目を引くほど優秀なわけでもない。学校でい
 ちばん落ち着ける場所は図書室だ。そこで、一人で本を読んで
 空想のうちに時間を潰すのが好きだ。読みたい本のおおかたは
 学校の図書室で読んでしまった。

  きみと初めて出会ったときのことはよく覚えている。場所は
 「高校生エッセイ・コンクール」の表形式の会場だった。五位
 までの入貧者がそこに呼ばれた。ぽくときみは三位と四位で、
 座っていた席が隣同士だった。季節は秋で、ぼくはそのとき高
 校二年生、きみはまだ一年生だった。
  式は退屈な代物だったので、ぽくらはその合間に小さな声で
 少しずつ短く話をした。きみは制服の紺のブレザーコートを着
 て、揃いの紺のプリーツスカートをはいていた。リボンのつい
 た白いブラウス、白いソックスに黒のスリップオン・シューズ。
 ソックスはあくまで白く、靴はしみひとつなくきれいに磨かれ
 ていた。親切なこびとたちが七人がかりで、夜明け前に丁寧に
 磨いてくれたみたいに。
  ぽくは文章を書くのがべつに得意なわけではない。本を読む
 のは小さな頃から大好きで、暇さえあれば本を手に取ってきた
 が、自分で文章を書く才能は持ち合わせていないと思っていた。
 でもクラスの全員が、コンクールのために国語の授業中に強制
 的にエッセイを書かされ、その中からぼくの書いたものが選ば
 れて選考委員会に送られ、最終選考に残り、そして思いもよら
 ず上位入賞してしまったのだ。正直言って自分の書いた文章の
 どこがそれほど優れているのか理解できなかった。読み返して
 みても、取り柄のない平凡な作文としか思えない。でもまあ何
 人かの審香具がそれを読んで、賞をやってもよいと思ったから
 には、何かしら見どころはあったのだろう。
                      この項つづく

※めっきり視力が低下し、一旦、スキャナに落とし込んで拡大読ん
でいるわたしに、"そんなに食らいついてまでして、文学したいの
か?”という自問に、"そうだ!
"と答えるわたしに、"やめちゃい
なよ!"と叱る彼女の声が頭を過ぎる。

 

     

 

  

【再エネ革命渦論 145: アフターコロナ時代 144】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉘
ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。

固体中の熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる熱電発電
は,持続可能な社会を実現有望技術の一つ。
広く用いられている熱
電発電の原理は,1821年にT. J. Seebeck博士によって発見された
ゼーベック効果であり,この現象を用いれば温度勾配に平行な方向
(以下,縦方向)に電圧や電流を発生させることができる.与えた
温度勾配と縦方向に発生した電場との比はゼーベック係数と呼ばれ,
ゼーベック効果に基づく熱電能を示す、ゼーベック効果を利用した
熱電変換素子は,p型導体とn型導体のペアを多数直列接続した構造
を有す.p型(n型)導体のゼーベック係数は正(負)であり,各導
体の熱起電力が加算され,素子全体の出力は導体ペア数に比例.導
体一つ一つからはmVオーダーの熱起電力しか発生しないが,集積化
で実用的な大きな電圧を得ることができる。

ここで、熱電発電の性能は無次元性能指数ZTで評価されるゼーベッ
ク効果の場合,ZTはゼーベック係数の2乗と電気伝導率に比例し,熱
伝導率に反比例する(Tは絶対温度).長らくZTが1を超えることが
熱電材料の実用化への指標とされてきが,ZT=1をはるかに超えるさ
まざまな材料が合成・発見されている。材料レベルでの革新的な進
展とは対照的に,熱電発電技術の応用対象は未だ限定的あり、この
状況の一端は,ゼーベック素子の複雑な構造にある.p型・n型導体
のペアあたり4つの接合があるこの素子構造では,①
接触電気抵抗と
接触熱抵抗が大幅に増大し,材料レベルで優れた特性が得られてい
ても素子化によりエネルギー変換効率が低下してしまう。②また,
素子の熱的・機械的耐久性や製造コストにも課題がある。これらの
問題を解決し得る一つの手段が,“横型”熱電変換といわれるのも
である。横型熱電効果を用いれば、温度勾配と垂直な方向(横方向)
に電圧や電流を発生させることがでる。

横型熱電効果のZTもゼーベック効果とほぼ同様の定義であり,横方
向に発生した電場を与えた温度勾配で規格化した値(横熱電能)の
2乗と電気伝導率に比例し,熱伝導率に反比例。横型熱電効果によっ
て誘起される電圧および電力はそれぞれ,横方向に材料の長さ・面
積を増やすことによって増強でき、多数の接合構造を形成する必要
はない。このため横型熱電効果は,広面積に分散した熱エネルギー
の再利用に適している.電圧・電流取り出し用の接点を除いて接合
の無い横型熱電変換素子においては、接触電気・熱抵抗の問題が存
-+在しないことから①材料のZTから期待される素子効率を得るこ
とができる。②さらには素子の耐久性向上・低コスト化にも効果的
だと期待されている.このように横型熱電変換は多くの利点を有す
る一方,横熱電能が実用レベルに達していないなどさまざまな課題
が残されており,未だ基礎研究フェーズに留まる。このように、横
型熱電変換はさまざまな物理現象によって駆動され,①均質材料に
おいて生じる現象と②複合材料において生じる現象に大別されてい
る。
via 横型熱電変換 接合の無い熱電変換素子の実現に向けて 内田 
  健一 物質・材料研究機構 – 応用物理学会、2023年4月3日公開。

【最新特許事例】
1.特開2021-48280 グラファイト集積膜、グラファイト集積膜の製
 造方法、並びに該グラファイト集積膜を用いた熱電変換層及び熱
 電対機能ないし熱発電機能つき放熱材
【概要】
グラファイト、およびそれを薄片化したグラフェンは、面内方向に
おいて非常に高い熱伝導率を持つ(非特許文献1)。この特長を活
かし、自動車の制御用電子部品や一般用電子機器の発熱部品からの
放熱を行う部材として、グラファイト放熱基板が開発されている(
特許文献1)。
一方、排熱をエネルギーとして有効利用するために、複数の熱電変
換素子を接続してなる熱電変換モジュール(発電装置)が用いられ
ており、熱電変換層に、グラフェン又はその炭素原子の一部がヘテ
ロ原子で置換されたグラフェン、或いは、グラフェン積層体(グラ
ファイト)又はグラファイトの層間にゲスト剤(挿入化合物)が挿
入されたグラファイト層間化合物を用いて、熱電変換素子を形成す
る技術がある(特許文献3)。
【特許文献1】 特開2016-153356号公報
【特許文献2】 特開2002-261218号公報
【特許文献3】 国際公開第2015/163178号
【非特許文献1】Alexander A.Balandin,Thermalproperties of graphene-
and nanostructured carbon materials,Nature Material
s,vol.10,pp.569-581
.(2011).

しかしながら、 特許文献1を例とした従来のグラファイト放熱基板
は、発熱部品からの放熱を行うことのみを目的としており、それ自
体で温度計測を行う機能や熱発電の機能は有していない。また、特
許文献2のように放熱時の発熱部品の温度計測を目的として放熱用
のヒートシンク内に熱電対を埋め込む技術の場合、ヒートシンクへ
の加工や熱電対の接合を要するだけでなく、接合した熱電対が熱伝
導を妨げて本来の放熱性能を低下させる他、発熱部品と熱電対との
間の熱抵抗を下げることが困難であり、発熱部品の正確な温度計測
を行うことを困難とする。 さらに特許文献3のようにグラファイト
やグラフェンを用いた熱電変換素子ではP型及びN型のキャリアド
ーピングを可能にし、熱電発電や熱電対としての機能を持たせるこ
とは可能であるが、ドーピングのために炭素原子の一部を他の原子
に置換したり、グラファイト原子層間に化合物を挿入したりすると、
それらがフォノン散乱を起こして熱伝導を妨げるため、従来の放熱
用に用いられるグラファイト基板に比べて熱伝導率及び熱拡散率が
数~数十分の一に低下し、放熱材としての利用は困難である。 さら
に、これらの化合物は真空や高温での化学反応を要するため製造時
の投入エネルギーが大きい他、グラファイト層間化合物は不安定で
脱離しやすいため封止剤が必要であり、これがさらに熱抵抗を生じ
て放熱性を低下させる。加えて、グラファイト層間化合物において
グラファイト層間に挿入される物質は、塩化銅や塩化鉄等の腐食性
の高い物質であり、周囲の金属部品や電子部品を腐食し損傷するお
それがある。 本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであ
りグラファイトやグラフェンを用いて、簡便な方法で、放熱用に充
分な熱伝導率及び熱拡散率を有するとともに熱電変換機能を有する
集積膜を得ることを目的とするものである。また、本発明は、得ら
れた集積膜を用いて、熱電変換素子、或いは熱電対機能ないし発電
機能付き放熱材を提供することをもう1つの目的とするものである。
------------------------------------------------------------
薄片化したグラファイト粉末を用い、これを界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物の水溶液中に分散してその表面を該水溶液で
被覆した後、得られたグラファイト分散液を濾過・成膜して得られ
たグラファイト集積膜を用いることにより上記課題を解決し、薄片
化したグラファイトを用いて、簡便な方法で、放熱用に充分な熱伝
導及び熱拡散率を有するとともに、熱電変換機能を有する集積膜を
提供し、また、得られた集積膜を用いて、熱電変換素子、或いは熱
電対機能ないし発電機能付き放熱材を提供する。
【選択図】図1

------------------------------------------------------------

前記目的を達成するために種々の検討を行った結果、従来の、グラ
ファイトまたはグラフェンの中の炭素原子の一部を他の原子に置換
したり、グラファイト原子層間に化合物を挿入したりする等の方法
に代えて、入手が容易な薄片化グラファイト粉末を用い、これを、
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物の水溶液中に分散して
その表面を該水溶液で被覆した後、得られた薄片化グラファイト粉
末の分散液を濾過・成膜する、という簡便な方法を用いることによ
り、上記目的を達成しうることを見いだした。 
すなわち、上記方法によれば、薄片化グラファイト粉末の表面に、
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物が吸着され、得られた
グラファイト集積膜は、荷電特性を制御可能な化合物とグラファイ
トの間の電荷移動により、所望する適切なキャリア濃度を持たせる
ことが可能となり、熱電変換機能を有するグラファイト集積膜を形
成しうること、及びこうして得られたグラファイト集積膜では、グ
ラファイト薄片表面に極微量存在する界面活性剤等の荷電特性制御
化合物によるフォノン散乱は小さいため、熱伝導率の低下は小さく、
市販のヒートシンクに利用されるアルミニウムの熱伝導率(室温で
236W/mK)以上の高い熱伝導率を有し、当該グラファイト集
積膜を市販のグラファイトシートと接合した場合においても、グラ
ファイトシートの80%以上の熱伝導率を有することが判明した。
また、界面活性剤等の荷電特性制御化合物の種類や濃度を変えるこ
とにより、P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御した2
種類のグラファイト集積膜を得ることができ、これらの一端を接合
し、その接合部分ともう片方の端との温度差をゼーベック(Seebeck
効果によって熱起電力に変換することにより、接合部分の温度を計
測することができることも判明した。 この放熱と温度計測の機能は
PN接合された1枚の膜で実現でき、接合部に発熱部品を設置する
だけで発熱部品の温度計測と放熱を同時に行うことができ、さらに、
放熱を行いながら、熱電変換により発電を行うことも可能であり、
1つの部材で発熱部を冷却しながら微小電源としても機能する。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下
のとおりである。

[1]薄片化グラファイト粉末が堆積されてなる膜であって、前記
薄片化グラファイト粉末の表面に、荷電特性を制御可能な化合物が
吸着されていることを特徴とするグラファイト集積膜。
[2]前記荷電特性を制御可能な化合物が、陽イオン系界面活性剤
又は陰イオン系界面活性剤であることを特徴とする[1]に記載の
グラファイト集積膜。
[3]薄片化したグラファイト粉末を、荷電特性を制御可能な化合
物の水溶液中に分散すること、及び 得られた薄片化グラファイト粉
末の分散液を濾過後、成膜すること を含むグラファイト集積膜の製
造方法。
[4]前記荷電特性を制御可能な化合物が、陽イオン系界面活性剤
又は陰イオン系界面活性剤であることを特徴とする[3]に記載の
グラファイト集積膜の製造方法。
[5]Seebeck係数及び導電率が調整された[1]又は[2]に記載
のグラファイト集積膜を用いたことを特徴とする熱電変換層。
[6]前記グラファイト集積膜の少なくとも一面に、酸化グラフェン
集積膜からなる絶縁層を有する[5]に記載の熱電変換層。
[7]グラファイトないしグラファイト集積膜から構成された導電
体とその導電体のSeebeck係数と異なるSeebeck係数を持つグラファ
イトないしグラファイト集積膜から構成された導電体の2種類の導
電体を接合させるとともに、両導電体の間に絶縁体を介在させてな
る熱電対であって、 これら2つの導電体の少なくとも一方が[5]
に記載の熱電変換層で構成され、 前記絶縁体が酸化グラフェン集積
膜で構成されていることを特徴とする熱電対。
[8]構成要素の少なくとも一部に、[7]に記載の熱電対を用い
た熱電対機能付き放熱材。
[9]グラファイトないしグラファイト集積膜から構成された導電
体と、その導電体のSeebeck係数と異なるSeebeck係数を持つグラフ
ァイトないしグラファイト集積膜から構成された導電体の2種類の
導電体を接合させるとともに、両導電体の間に絶縁体を介在させて
なる熱発電素子であって、 これら2つの導電体の少なくとも一方が
[5]に記載の熱電変換層で構成され、 前記絶縁体が酸化グラフェ
ン集積膜で構成されていることを特徴とする熱発電素子。
[10]構成要素の少なくとも一部に、[9]に記載の熱発電素子
を用いた熱発電機能付き放熱材。

【発明の効果】
本発明によれば、簡便で、しかも周囲の金属部品や電子部品を損傷
するおそれのない方法で、所望のキャリア濃度を持たせることが可
能となり、熱電変換機能を有するグラファイト集積膜を形成するこ
とができる。また、本発明によれば、グラファイト薄片表面に微量
存在する界面活性剤等の荷電特性制御化合物によるフォノン散乱は
小さいため、熱伝導率の低下が少ないグラファイト集積膜が得られ、
さらに、界面活性剤等の荷電特性制御化合物の種類や濃度を変えて
P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御した2種類のグラ
ファイト集積膜の一端を接合し、その接合部分ともう片方の端との
温度差をゼーベック(Seebeck)効果によって熱起電力に変換するこ
とにより、接合部分の温度を計測することができる。 したがって、
本発明のグラファイト集積膜を用いれば、電気自動車や電子機器等
に用いられるパワー半導体や、電池等の種々の発熱部品の温度計測
と放熱の2つの機能を1つの部材で兼ね備えることができるため、
温度測定部位に別途、熱電対を設置する必要がない。 また、本発
のグラファイト集積膜を用いれば、発熱試験時だけでなく、実際の
使用時における電気自動車や電子機器等のパワー半導体等の発熱状
態を監視できるという、これまでにない機能が実現でき、これによ
り、これらの機器の熱診断や熱マネージメントを可能にし、その長
寿命化に貢献する。 さらに、本発明のグラファイト集積膜を熱電変
換層として利用する場合も、従来よりも簡便な製造方法で発電性能
の高い部材を作ることができ、部材の温度差を適切に与えれば熱発
電も可能であり、放熱フィンやヒートシンクとして利用しながらそ
れ自体が発電するなど、種々の熱源から電力を得てセンサーや通信を
自立駆動できる孤立微小電源にも応用できる。

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグラファイト集積膜の構造を模式的に示す図
【図2】本発明のグラファイト集積膜の、電気絶縁性を持つ放熱材
としての利用について説明する図

【図3】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計例を示す図

【図4】図3に示した本発明のグラファイト集積膜の熱電対機能付
き放熱材を、放熱・測温対象部品に使用する例を示す図

【図5】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
使用例を示す図
【図6】本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計・使用例を示す図
【図7】本発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の設計
例を示す図
【図8】本発明のグラファイト集積膜の、熱発電する放熱材の使用
例を示す図
【図9】実施例における、本発明のグラファイト集積膜の製造工程
を模式的に示す図
【図10】ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)添加グラファイ
ト集積膜(実施例で得られたグラファイト集積膜)の表面及び断面
の走査型電子顕微鏡(SEM)写真
【図11】DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシート
のX線回折パターン
【図12】DBS添加グラファイト集積膜及びグラファイトシート
のラマンスペクトル
【図13】界面活性剤の有無及び界面活性剤分子の極性と、界面活
性剤で被覆したグラファイト集積膜の電気物性の関係を示す図
【図14】分散液中のDBS濃度と、電気物性の関係を示す図
【図15】実施例で作製した、グラファイト集積膜を用いたグラフ
ァイト熱電対を模式的に示す図
【図16】グラファイト集積膜を用いた熱電対による温度計測の結
果を示す図
【図17】グラファイト集積膜を用いた熱発電素子に、温度差ΔT
=43.4Kを付与した場合の熱発電の試験結果を示す図

【符号の説明】 1:グラファイト集積膜 2:酸化グラフェン集積
膜 3:放熱・測温対象物(発熱体又は熱源) 4:ヒートシンク 
5:熱電変換層 6:5とはSeebeck係数の異なる熱電変換層 7:
接合部 8:測温部 9:計測端子部 10:負荷 11:放熱フ
ィン
【発明を実施するための形態】
本発明のグラファイト集積膜は、薄片化グラファイトの粉末が堆積
されてなる膜であって、該薄片化グラファイトの粉末の表面に、荷
電特性を制御可能な化合物が吸着していることを特徴とする。 本
発明のグラファイト集積膜は、薄片化したグラファイト粉末を、荷
電特性を制御可能な化合物の水溶液中に分散してその表面を該水溶
液で被覆し、得られた薄片化グラファイト粉末の分散液を濾過後、
成膜することにより製造することができる。

以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれ
らの実施形態に限定されるものではない。なお、数値範囲の記載(
2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限と
して記載された数値をも含む意味である。 (薄片化グラファイト粉
末) 本発明における薄片化グラファイト粉末は、後述する方法で
も製造できるが、入手が容易である市販のものを用いることが好ま
しく、例えば、市販品として利用できる薄片化グラファイト粉末と
しては、アイテック社のiGrafen-aがある。 薄片化グラファイト粉
末の製造方法としては大きく分けて2種類の方法を選択することが
できる。 1つ目の製造方法は、原料となる黒鉛(グラファイト)の
層間に化合物を侵入又は挿入させた後、これを加熱することによって
当該化合物の気化又は膨張を生じさせ、グラファイト層間を剥離さ
せる工程を経て製造されるものである。グラファイト層間に侵入又
は挿入させる化合物としては、加熱処理によって気化又は膨張可能
なものであれば、酸、ハロゲン化合物、あるいは気体分子のいずれ
を用いてもよい。酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、塩化鉄、塩化銅等が挙げられる。気体分
子としては、二酸化炭素が挙げられる。化合物の気化又は膨張を生
じさせる手法としては、直接加熱又はマイクロ波照射等を用いるこ
とができる。 本発明においては、得られた薄片化グラファイトを、
必要に応じて、所望の大きさの粉末にして用いる。2つ目の製造方
法は、溶媒に分散したグラファイト粉末に高い応力、特に高いせん
断力を付加してグラファイト層間の剥離を生じさせる工程を経て製
造されるものであり、応力、特に高いせん断力を付加する方法とし
ては、グラファイト層間を剥離させるのに十分な せん断力を持つ方
法であれば、ミキサーを用いる方法、超音波を照射する方法、速度
の異なる2本のロールでグラファイト分散液を挟み込む方法、等を
用いることができる。 なお、この場合の溶媒としては、グラファイ
ト粉末の分散性を高めるためにN-メチル-2-ピロリドン等の有
溶媒や硫酸アンモニウム等の水溶液を用いてもよいし、分散性と荷
電特性の制御を兼ねて後述の各種界面活性剤を所定量混合した水溶
液を用いてもよい。 後者の場合には、該水溶液中にせん断力が付
与されて薄片化したグラファイト粉末が分散した分散液が得られる
ため、得られた分散液をそのまま用いて、濾過、成膜することによ
り、本発明のグラファイト集積膜が得られる。 薄片化したグラフ
ァイトの単片の大きさは、面内方向の大きさ(粒径)と厚さの2つ
の数値で規定できる。放熱材及び熱電対又は熱電素子として適度な
導電率と熱伝導率を備えるために、粒径としては、1μm以上であ
ることが望ましく、2μm以上であることがより望ましい。加えて、
グラファイトの荷電特性を適度に制御することが可能な厚さとして
は、50nm以下であることが望ましく、20nm以下であること
がより望ましい。さらには、粒径が前記のとおり1μm以上であっ
て、集積膜の放熱性及び導電性を、薄片化したグラファイトの集積
膜と同程度又はそれ以上にした場合において、厚さが約3nm以下
の範囲のグラフェン(単層グラフェン、2層グラフェン、及び複数
層グラフェン又は多層グラフェン)の集積膜を用いることもできる。

(薄片化グラファイト粉末の分散)
本発明においては、前記の薄片化したグラファイト粉末を、荷電特
性を制御可能な化合物の水溶液中に投入して分散処理を行うことに
より、薄片化グラファイト粉末の表面が、界面活性剤等の荷電特性
制御化合物の水溶液で均一に被覆されるようにするものであり、方
法は特に限定されないが、超音波を印加して分散処理を行うことや、
スターラーで撹拌することが好ましい。
(分散液の濾過・成膜)
次いで、得られた薄片化グラファイト粉末の分散液を濾過し、乾燥
して水分を除去することで、表面に界面活性剤等の荷電特性制御化
合物が吸着した薄片化グラファイト粉末の堆積物が得られる。その
後、この堆積物にプレス処理を施すことにより、本発明のグラファ
イト集積膜が得られる。 プレス処理は、グラファイト堆積物を2枚
の平面板で挟み、その上下面からの圧力でプレスするプレス機を用
いてもよいし、グラファイト堆積物を2本のロールで挟み、ロール
間の線圧でプレスするプレス機を用いてもよい。いずれのプレス機
を用いた場合でも、得られる集積膜において、熱電対機能や熱発電
機能に必要な導電率を持たせるため、プレスによる厚みの減少率、
すなわち厚みの減少分をプレス前の元の厚みで割った値が、0.9
以上に高いことが好ましい。集積膜の厚み自体は、放熱対象物の形
状や放熱量に応じて適切な熱抵抗となるように、プレス前の堆積物
の量を調整すればよい。

(荷電特性を制御可能な化合物)
荷電特性を制御可能な化合物として、好ましくは、界面活性剤が用
いられる。 用いられる界面活性剤はイオン系のものであれば特に限
定されないが、例えば、陰イオン系界面活性剤としては、ドデシル
ベンゼンスルホン酸(DBS)等の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
及びその塩、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム等が挙
げられ、また、陽イオン系界面活性剤としては、臭化ヘキサデシル
トリメチルアンモニウム(CTAB)等のアルキルトリメチルアン
モニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
また、界面活性剤以外では、ポリスチレンスルホン酸などのアニオン
性高分子を利用することも可能である。 本発明では、界面活性剤な
どの荷電特性を制御可能な化合物の種類を変えることにより、キャ
リアタイプがP型又はN型のグラファイト集積膜を得ることができ、
陰イオン系界面活性剤又はポリスチレンスルホン酸などのアニオン
性高分子を用いた場合には、P型のグラファイト集積膜が得られ、
陽イオン系界面活性剤を用いた場合には、N型のグラファイト集積
膜が得られる。 また、界面活性剤などの荷電特性を制御可能な化合
物の、水溶液中のモル濃度と、グラファイト集積膜に含まれる化合
物の量とは相関しており、その結果、用いる界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物の、水溶液中のモル濃度を変更することで、
得られる集積膜のキャリア極性や熱電特性を変更することができる。
(後述する図13、14参照) 後述する実施例では、用いる界面
活性剤の水溶液のモル濃度は、DBSで1×10-3~500×
10-3 mol/L、CTABで1×10-3~10×10-3 mol
/Lとしているが、これは導電体のキャリア極性の制御や熱電特性
の最適化を目的として選んだ濃度である。 他の界面活性剤又は荷
電特性制御化合物では、溶媒の種類、溶解度によって適切な熱電特
性になる様にモル濃度を制御すればよい。本発明では、適切な熱電
特性になる様にSeebeck係数と導電率を調整されたグラファイト集積
膜を熱電変換層と呼ぶことにする。 本発明のグラファイト集積膜は、
グラファイト薄片表面に微量存在する界面活性剤等の荷電特性を制
御可能な化合物によるフォノン散乱は小さく、市販のヒートシンク
に利用されるアルミニウムの熱伝導率(室温で236W/mK)以
上の高い熱伝導率を有し、当該グラファイト集積膜を市販のグラフ
ァイトシートと接合した場合においても、グラファイトシートの80
%以上の熱伝導率を有するため、放熱材として使用することができ
る。 また、本発明のグラファイト集積膜は、界面活性剤等の荷電特
性を制御可能な化合物とグラファイトの間の電荷移動により、適切
なキャリア濃度を持たせることが可能となる。 したがって、用いる
界面活性剤等の荷電特性を制御可能な化合物の種類や濃度を変えて
P型N型のキャリアタイプやキャリア濃度を制御してSeebeck係数
を制御した2種類のグラファイト集積膜の一端を接合し、その接合
部分ともう片方の端との温度差をSeebeck効果によって熱起電力に変
換することにより、接合部分の温度を計測することができ、熱電対
機能付放熱材として使用できる。 このように、本発明のグラファ
イト集積膜の放熱と温度計測の機能は、2種類の互いにSeebeck係数
の異なるグラファイト集積膜の1端を接合した1枚の膜で実現でき、
接合部に発熱部品を設置するだけで発熱部品の温度計測と放熱を同
時に行うことができ、さらに、放熱を行いながら、熱電変換により
発電を行うことも可能であり、1つの部材で発熱部を冷却しながら
微小電源としても機能する。 また、本発明のグラファイト集積膜に
おいては、別途、熱伝導性に優れた酸化グラフェン集積膜を、絶縁
膜又は絶縁層として併用することで、熱伝導率の低下を抑制しなが
ら、熱電対構造の作製や、吸熱対象物との電気的絶縁性を確保する
ことができる。酸化グラフェンは、グラフェンにエポキシ基、カル
ボキシル基、カルボニル基、水酸基など様々な酸素含有官能基が結
合したものである。本発明において十分な電気絶縁性及び熱伝導性
を示すための酸素濃度は20~40%の範囲が望ましく、その際の
酸化グラフェンの単片の面内方向の大きさ(粒径)としては、1μ
m以上であることが望ましく、2μm以上であることがより望まし
い。加えて、単片の厚さにして0.7~1.5nmのサイズを持つ
ものが望ましい。この単片を多数堆積し、1~40μmの範囲の厚
さを持つ集積膜にしたものを、酸化グラフェン集積膜として用いる
ことができる。 以下、図面を用いて、本発明のグラファイト集積
膜の、放熱材としての利用、熱電対機 能付放熱材としての利用、
及び熱発電する放熱材としての利用について、それぞれ例示するとと
もに、本発明のグラファイト集積膜を用いた効果について記載する。

(放熱材としての利用)
図2(a)は、本発明のグラファイト集積膜の、電気絶縁性を持つ
放熱材としての利用について説明する図であり、図中、1は、本発
明のグラファイト集積膜を示し、2は、導電性を有しない酸化グラ
フェン集積膜を示している。(a)に示すように、本発明のグラフ
ァイト集積膜の両表面に、酸化グラフェン集積膜(2)を被覆するこ
とにより電気絶縁性を付与したものは熱は伝えるが、電気は伝えな
いため、放熱材として、又は熱界面材料として利用することができ
、パワー半導体・電子部品・電池の冷却に好適である。 (b)及び
(c)は、それぞれ、放熱材及び熱界面材料(TIM)としての利
用例を示すものであり、図中、矢印は、熱流を示し、3は、放熱対
象物(発熱体又は熱源)を示し、4は、ヒートシンクを示している。

(熱電対機能付放熱材としての利用)
図3は、本発明のグラファイト集積膜の、熱電対機能付き放熱材の
設計例を示す図であり、図中、2は、導電性を有しない酸化グラフ
ェン集積膜を、5は、熱電変換層を、6は、5とはSeebeck係数の
異なる熱電変換層を、7は、5と6の接合部、8は、測温部、9は、
計測端子部を、それぞれ示しており、熱電変換層(5)及び熱電変
換層(6)の少なくとも一方に、本発明のグラファイト集積膜を使
用するものである。 熱電対機能付き放熱材の断面図として、(a)
に示すように、熱電変換層(5)及び熱電変換層(6)を、測温部
(8)である一部の接合部(7)を残して、導電性のない酸化グラ
フェン集積膜(2)を介して接合し、放熱材とする。 熱電対機能付
き放熱材の形状は、特に限定されないが、(b)に、円形放熱材の
例を、(c)に、長方形放熱材の例を、それぞれ示している。(b)
及び(c)はいずれも、熱電対機能付き放熱材の面に垂直な方向で
、熱電変換層5を上にした形で見た図を示している。

図4は、前記図3に示した熱電対機能付き放熱材を、放熱・測温対
象部品に使用する例を示すものであり、図中、2は、酸化グラフェ
ン集積膜を、3は、放熱・測温対象物を、7は、接合部、8は、測
温部、9は、端部に設けられた計測端子部を、矢印は、熱流を示し
ている。 (a)に示すように、本発明の熱電対機能付き放熱材の接
合部(7)の上部に、放熱・測温対象部品(3)を設置した場合も、
従来どおりの放熱機能を維持している。 (b)は、放熱しながら、
放熱対象物の温度を計測する例を示しており、計測端子部(9)に
おける熱起電力ΔVを計測することにより、接合部(7)(及び測
温部(8))の温度T1と計測端子部(9)の温度T2の温度差
ΔT=T1-T2を計測することができ、放熱対象物(3)から放
熱材を流れる熱流密度も計測可能である。 また、(c)に示す例
は、前記図3に記載した酸化グラフェン集積膜(2)などの電気絶
縁膜と組み合わせることで、放熱対象物が電子部品の場合の、電気
的な信号の干渉及びそれによる温度計測データへのノイズ混入を防
ぐことを可能にしたものである。 計測端子部における熱起電力ΔV
は、 【数1】  
                     
                        この項つづく

 風蕭々と碧いの時

John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2015年代

● 今夜の寸評:先端技術で世界一をめざす


 

 

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最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ②

2023年07月10日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

 効率32.0の屋内ペロブスカイト太陽電池


PVデバイスの概略図 画像:マヒドン大学、

7月7日、タイのマヒドン大学の研究グループは、低コストの炭素電
構造の屋内ペロブスカイト太陽電池を構築。製造プロセスは、貧溶
媒堆積と真空熱アニーリング(VTA)に基づき、ペロブスカイト膜の
品質が向上すると報告。使用して、低照度アプリケーション用のト
リプルカチオンペロブスカイト太陽電池を開発。 「VTAは、励起子
損失の主な原因である表面と粒界のトラップ状態を抑制しながら、
コンパクトで高密度で硬い形態をもつ、高品質のペロブスカイト層
を生成するための第300ステップが重要である。室内の光強度は太
陽光の300分の1と弱く、真空熱焼鈍によって誘導された緻密で均質
なペロブスカイト形成が貴重となる。同グループは、制御可能な圧
力(真空ポンプ)で、温度調整したホットプレートの上に配置した
真空フラスコで実装。臭化物と塩化物で処理したととし
て知られる
ペロブスカイト材料 FA0.45MA0.49Cs0.03Pb(I0.62Br0.32Cl0.06)3を使用。処
理後のエネルギーバンドギャップは 1.80 eVであった。

フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(IV)(SnO2)に基づく電子輸送
層(ETL)、ペロブスカイト吸収体、Spiro-OMeTADからなる正孔輸送
層(HTL)、カーボン上部電極、および別のFTO層でセルを構築。デバ
イスのアクティブエリアは0.04cm2
1, 000ルクスの室内光の下のテストでは、セルは27.7%の電力変換
効率、0.93Vの開回路電圧、および0.16mA /cm2の短絡電流を示した。
ピーク効率は最大32.0%に達す。VTA処理なしのリファレンスデバイ
スは、効率25.5%、開放電圧0.91V、短絡電流0.16mA/cm2cmを達成し
た。ピーク効率は30.7%に達す。VTAは、バルクと表面の両方で表面
粗さと電子トラップの減少につながる。VTAベースのセルの優れた性
能は、堅牢なペロブスカイト形成へ基礎となり、現代社会の望まし
いオプトエレクトロニクスアプリケーションに向けて、さまざまな
ペロブスカイト組成に実際に適合させることができる。
この太陽電池は、Scientific Reportsに掲載される研究「室内ペロブス
カイト太陽電池のための真空熱アニールによる堅牢なペロブスカイ
ト形成」で報告された。
【関連論文】
Penpong, K., Seriwatanachai, C., Naikaew, A. et al. Robust perovskite for-
mation via vacuum thermal annealing for indoor perovskite solar cells. ;
真空熱アニーリングによる屋内ペロブスカイト太陽電池用の堅牢なペロ
ブスカイト形成
Sci Rep 13, 10933 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-37155-4

【要約】
ペロブスカイト材料は、次世代ソーラーデバイスの魅力的な候補で
あり、電荷キャリアの寿命が長いメタルハライドペロブスカイトは
低照度収穫に適した候補であることが知られる。室内光の放射照
度スペクトルを一致させるために、臭化物と塩化物FA0.45MA0.49Cs0.03
Pb(I0.62Br0.32Cl0.06)
3を使用し、最適なバンドギャップ(Eg) の∼ 1.80 eV.
屋内条件での光子束が低いため、最小限の再結合が非常に望ましい。
そのために、初めて、対向積層防止と真空熱アニールの2つの用途、
すなわちVTAを組み合わせて、高品質のペロブスカイト膜を作製し
た。VTAは、励起子損失の主な原因である表面や粒界のトラップ状
態を抑制しながら、コンパクトで高密度の硬い形態をもたらす。低
コストの炭アーキテクチャでは、VTAデバイスは平均電力変換効率(
PCE)が27.7±2.7%、ピークPCEが0.50%(ショックレー・クイサー限
界が50〜60%)、平均開回路電圧(Vティッカー) 0.93 ± 0.02V、ピ
ーク Vティッカー0.96Vで、制御および加熱前の真空処理のものよ
りも大幅に多い。
【緒言】
 人口爆発と産業の拡大により、エネルギー需要は劇的に増加する。
メタルハライドペロブスカイトベースの材料は、次世代の太陽電池
デバイスの魅力的な候補。並外れた光から電気への変換特性と、時
間の経過とともにPCEが 25%以上に急速に増加するため、シリコン
太陽電池に匹敵する PCEを備えた将来の商業用途に非常に有望であ
る。さらに、ペロブスカイト太陽電池 (PSC) は、m範囲、および
1.47から3.06eV以上まで調整可能なエネルギーバンドギャップ(Eg)。
可視スペクトル 3 にわたる高い吸収、低い励起子結合エネルギー、
低い非放射再結合率 μ単位での長い電荷キャリア拡散長など、優
れた光電子特性を備える。興味深いことに、PSCの製造プロセスは、
100℃未満の温度での高い溶解性により、エネルギー消費が少なく、
容易かつ経済的である。ペロブスカイト材料は、スピンコーティン
グ、蒸気アシスト溶液堆積、熱蒸着、インクジェット印刷、スロッ
ト ダイ コーティング、スプレー コーティングなどのいくつかの
アプローチを使用して堆積できるが、スピンコーティング堆積は実
験室規模のペロブスカイト製造の簡単な方法であり、ワンステップ
スピンコーティングは、前駆体溶液を基板上に直接スピンコーティ
ングする技術。ワンステップの堆積で反溶媒を使用した、カチオン
ドーピングを繰り返したり、いくつかの添加剤を追加したりするこ
とで、均一で緻密なペロブスカイト膜とともに大きな粒径を得るこ
とができる。 興味深いことに、ABX3 構造を持つペロブスカイトベ
ースの材料などは、任意の部位 (A、B、および/または X) で置換
エンジニアリングによって調整できる。これはペロブスカイト技術
の利点であり、発光ダイオード (LED) などのいくつかのアプリケ
ーションが可能となる。
屋外と屋内の両方の条件に対応する光検出器 (PD)、および太陽電池。
これまで、同グループは、モノのインターネット(IoT)の台頭に
より、ポータブル電子機器や無線通信技術に適用できる低照度用の
太陽光発電に多くの注目を集めてきた。ペロブスカイトベースの材
料はエネルギーバンドギャップに関して幅広く調整可能であり、特
定の光条件下で最適なパフォーマンスを得るためにさまざまな Eg
値を使用できる。さらに、ペロブスカイト太陽電池 (PSC) は、m範
囲、および1.47から3.06 eV以上まで調整可能なエネルギーバンド
ギャップ(Eg可視スペクトル にわたる高い吸収、低い励起子結合
エネルギー、低い非放射再結合率 、μ単位での長い電荷キャリア
拡散長など、優れた光電子特性を備える。

爆発と産業拡大により、エネルギー需要は飛躍的に増加し。金属ハ
ロゲン化物ペロブスカイトベースの材料は、次世代ソーラーデバイ
スの魅力的な候補であり、並外れた光電変換特性と、時間の経過と
ともにPCEが25%以上に急速に増加するため、シリコン太陽電池に匹
敵するPCEを備えた将来の商用アプリケーションに非常に有望です。
さらに、ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、可視スペクトルにわた
って高い吸収などの優れた光電子特性を備えている。低励起子結合
エネルギー4、低い非放射再結合率5、長い電荷キャリア拡散長μ m
の範囲、および調整可能なエネルギーバンドギャップ(Eg) 1.47か
ら3.06 eV以上6.7.興味深いことに、PSCの製造プロセスは、100℃
未満の温度で高い溶解性のためにエネルギーの消費が少なく、簡単
で経済的。ペロブスカイト材料は、スピンコーティング、蒸気支援
溶液蒸着、熱蒸着、インクジェット印刷、スロットダイコーティン
グ、スプレーコーティングなど、いくつかのアプローチを使用して
堆積できる。しかし、スピンコーティング蒸着は、実験室規模のペ
ロブスカイト製造のための簡単な方法。ワンステップスピンコート
は、前駆体溶液を基板上に直接スピンコートする技術。ワンステッ
プ堆積で貧溶媒を使用したり、陽イオンドーピングを繰り返したり
添加剤を添加したりすることで、均一で緻密なペロブスカイトフィ
ルムとともに、大きな粒径を得ることができる。興味深いことに、
EgABXを用いたペロブスカイト系材料の3構造は、ペロブスカイト技
術の利点である任意のサイト(A、B、および/またはX)での置換エン
ジニアリングによって調整でき、屋外と屋内の両方の条件に対応す
る発光ダイオード(LED)、光検出器(PD)、太陽電池などのいくつか
のアプリケーションを可能にづる。これまで、研究者は、モノのイ
ンターネット(IoT)の台頭により、ポータブル電子機器や無線通信
技術に適用できる低照度用太陽光発電に多くの注意を払ってきた。
ペロブスカイトベースの材料は、エネルギーバンドギャップに関し
て広く調整可能であり、さまざまなEg特定の照明条件下で最適なパ
フォーマンスを得るためのそれぞれの値.屋内光源は太陽光の光源
とは異なるスペクトル出力を提供するため。計算計算による屋内ア
プリケーションに適したエネルギーバンドギャップは1.8〜1.9 eV
の範囲であり、これはAサイトをセシウム(Cs)、メチルアンモニウ
ム(MA)、および/またはホルムアミジニウム(FA)および/またはXサイ
トをヨウ素(I)、臭素(Br)、および/または塩素(Cl)で部分置換する
ことによって達成できる。
Cheng, R. et al. は、BrとClを手付かずのMAPbIに導入することによ
るエネルギーバンドギャップチューニングを報告した。ペロブスカ
イト。Eg1.61 eV~1.80 eVに拡大できます(MAPbI2−xBrClx)。
さらに、塩素を添加すると、トラップ状態密度、ハロゲン化物移動、
および非放射再結合が減少し、結晶化が改善され、高い開回路電圧
(Vティッカー)1.028VのPCEおよび36ルクス蛍光灯の下で2.1000%の
PCE.Cheng, R. et al. ペロブスカイト太陽電池の性能が、特に塩素添
加によって屋内照明用途において改善されることを実証。
塩素ドーピングは、ペロブスカイト/正孔輸送層界面でのより高い
抽出能力に寄与し、これは欠陥が少ないことに起因する。Brを適切
に添加することで、ペロブスカイトの結晶粒径が拡大し、非放射再
結合が抑制された。また、擬立方相の形成により安定性が向上し、3
4.5%のPCEを実現。.ペロブスカイト吸収層とは別に、電子輸送層(
ETL)も重要な役割を果た。Ann, M. H. et al. は、コンパクトなTiO2
(c-TiO2)層は、メソポーラスTiOよりも屋内光用途に効率的であっ
た(m-TiO2)層は、m-TiOの使用による界面トラップの高密度化によ
るものである。m-TiOですが1つの太陽の条件に適していた。Dagar
, J. et al.
も酸化スズ(SnO2)屋内照明下でテストされたペロブスカイ
ト太陽電池の電子輸送層として、ルクスで3.400%のPCEを示した.先
行研究から、界面および/または粒界のトラップ状態が非放射再結
合の主な原因である。特に低照度アプリケーションでは、屋内の光
環境下で光を生成する電荷が少ないため、トラップ状態密度が非常
に重要です。この問題を1つの太陽の下で回避するために、
結晶化
中の核生成を促進し、貧溶媒を使用せずに残留溶媒を除去するため
の真空処理の適用に注意を払った。Li, X. et al. は真空処理を適用し
てDMSO-GBL溶媒系でFA0.81MA0.15PbI2.51Br0.45を作製し、濡れたフィル
ムを真空環境下に数秒間置き、DMSO-PbI1.7Br0.3-(FAI)0.85(MABr)を促
進した。真空処理を適用してDMSO-GBL溶媒系FA0.81MA0.15PbI2.51Br0.45
を作製し、濡れたフィルムを真空環境下に数秒間置き、DMSO-PbI
1.7Br0.3-(FAI)0.85(MABr)を促進した。溶媒を除去することにより0.1
の中間相。中間相は結晶成長を遅らせる可能性があり、結晶粒径が
大きくなり、1太陽の下で20.5%
という高い PCE が得られる。真空
処理を適用してDMSO-GBL溶媒系でFA0.81MA0.15 PbI2.51Br0.45
を作製し、
濡れたフィルムを数秒間真空環境下に置いてDMSO-PbI1.7Br0.3 -(FAI
)0.85(MABr)を促進した。



図1.(A) 貧溶媒とその後の熱アニーリング (コントロール)、(B)
貧溶媒と真空とその後の熱アニーリング (VAC)、(C) 貧溶媒と真空
熱アニーリング (VTA)、および (D) デバイス全体のグラフィック
イメージ


図2.(A) コントロール、VAC、および VTA サンプルの XRD パター
ン。 (B–D) コントロール、VAC、および VTA サンプルを使用した S
EM 上面画像。 (E) コントロール、VAC、および VTA サンプルの平
均粒径。 (F–H) コントロール、VAC、および VTA サンプルの AFM
3D 画像。



【結論】
 貧溶媒蒸着と真空熱アニールを併用することにより、高品質なペロ
ブスカイト膜を作製できる新しいペロブスカイト処理法「VTA」を開
発。このアプローチは、真空処理によって誘発された二次核が同時
に成長して一次核から生じたペロブスカイト結晶によって残された
ギャップを埋めるため、堅牢なペロブスカイト形成につながる。そ
の結果、VTA を使用すると、従来の貧溶媒法に比べて、より緻密で
硬い薄膜を実現できる。さらに、VTA は表面粗さを低減し、バルク
と表面の両方で電子トラップをもたらす。 VTAプロセスでは、電極
として低コストのカーボンを使用することにより、1000ルクスの照
度下で27.7 ± 2.7%(ピークPCE32.0%)の平均PCEと0.93 ± 0.02
V(ピークVoc0.96V)のVocを取得した。 太陽光発電の性能は、制御
および VAC の性能よりも大幅に優れている。 VTA は堅牢なペロブ
スカイト形成への扉を開き、現代社会にとって望ましい光電子応用
に向けて、さまざまなペロブスカイト組成に実際に適応できる可能
性がある。

 

 風蕭々と碧いの時



John Lennon Imagine

【 J-POPの系譜を探る:2015年代

『ラブ ジェネレーション』(Love Generation)は、1997年
10月13日より12月22日まで毎週月曜日21:00 - 21:5 に、フ
ジテレビ系の「月9」枠で放送された日本のテレビドラマ。
主演木村拓哉と松たか子。松たか子は本作で月9初ヒロイン
を務めた。全11話の平均視聴率は30.8%。第3、5、8話以外は
30%以上で、放映当時月9の最高記録となる。大滝榮一
が12年
ぶりに新曲「幸せな結末」を発表し、主題歌に使用された。
大滝のシングルとしてはデビューから25年目で初トップ10入
り、初登場から2週連続で2位を獲得、累計売上枚数97.0万枚
となる。 

「幸せな結末」(しあわせなけつまつ)は、大滝詠一の通算
14枚目のシングル。1997年11月12日にSony Records(現:ソ
ニー・ミュージックレーベルズ)から発売された。
前作「フィヨルドの少女 / バチェラー・ガール」(1985年)
以来12年ぶりのシングル。フジテレビ系月9ドラマ『ラブジェ
ネレーション』主題歌として制作され、カップリングの
「Happy Endで始めよう」も同ドラマの挿入歌として使用され
た。 タイトルや自身のアルバム『大瀧詠一』のジャケットを
そのまま使用するなど、セルフパロディ的な作品で、ジャケ
ットを元にしたPVが制作された。 大滝は1980年代半ばから熱
狂的なファンであるフジテレビのプロデューサー(当時)、
亀山千広からドラマ主題歌のオファーを何度も受けた。亀山は
「ロングバケーション的な曲」を望んでおり、作詞の松本隆
と共同作業で作った世界観を一人で作ることは無理と考え、
「近鉄が優勝したら」「近鉄が連覇したら」等の適当な理由
をつけて、すべてやんわりと断った。 大滝は1994年から199
5年までの頃にようやくオファーを受諾したが、作曲が難航。
1996年頃に亀山は待ちきれなくなり、大滝へ正式に使用許可を
願い出て、大滝のアルバムタイトルを当時制作していたドラ
マ『ロングバケーション』に借用する。ドラマ主題歌の話は
一時期流れかけるが、翌年の『ラブジェネレーション』制作
時に曲が完成し、大滝がドラマ主題歌を担当することとなっ
た。『ロングバケーション』で監督を務めた永山耕三が参加
木村拓哉が主演、松たか子の事務所の社長がナイアガラ・レ
コードの元スタッフだったことなど不思議な縁があったとい
う。 この時期に旧友の上原裕が復帰するなど、歌手活動再開
に条件が整った。大滝は「幸せな結末」の録音開始数か月前
にスタジオへ入り、12年間離れていたスタジオで勘を取り戻
すため、通称“ナイアガラ・リハビリ・セッション”と呼ば
れるセッションを行った。 作詞を担当した多幸福は、大滝・
亀山・永山の共同ペンネームで、永山が提示する作品の世界
観に沿う歌詞が作られた。「幸せな結末」の歌い出しである
“髪をほどいた 君のしぐさが 泣いているようで胸が騒ぐよ
”の一節は、レコーディング時に永山から呼び出された脚本
家の坂元裕二が手伝った。 2023年7月7日の「短冊CDの日」に
合わせて「幸せな結末」と「Happy Endで始めよう」のカラ
オケを追加収録して26年振りに8㎝シングルで再発売された。
via Wikipedia

● 今夜の寸評:(いまを一声に託す) 先端技術で世界一をめざす

 

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最新熱触媒及び熱電変換素子工学論 ①

2023年07月06日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



図1. Circumglobalwave-7 および 5 パターンと関連する 2 気温
ERA-5 再解析データとバイアス調整された CMIP6 モデルの異常。
子午線風 (m/s 単位) (等高線、紫: 南風、オレンジ: 北風、単位:
(a ~ c、e ~ g) 等高線は絶対値 3m/s で始まり、3 ずつ増加/減
少します。それぞれ、(d, h) の等高線は絶対値 0.5 から始まり、
増加/減少します。1 段階ずつ)および表面付近の温度異常が等高線
で塗りつぶされます。(a – c) 第 7 波および (e – g) 第 5 波の
イベントを、それぞれの気候学に関連させて示す。
(a、e) ERA5 再分析 (1960 ~ 2014 年) に基づく北半球の夏 (JJA)、
(b、f) 過去 (1960 ~ 2014 年) および (c、g) バイアス調整後の
将来 (SSP5 ~ 8.5、2045 ~ 2099 年)CMIP6 シミュレーション (4
つのモデル) からの出力。 d、h) 内側の風の差過去と未来を比較し
た波浪イベント中の温度応答4つのバイアス調整された CMIP6 モデ
ルのパターン (12 の調整されていないモデルについては、を参照し
)図S6)。 ハッチングは 95% の信頼水準で統計的有意性を示す (a、
d、e、h)または、符号が 100% 一致するモデル (4 つのモデルのう
ち 4 つ、b、c、f、g)波形パターン(線の輪郭)の位置と強度がよ
く表現されている。モデルの表面痕跡は歴史的にかなり過小評価さ
れていますシミュレーション。 北上空で温度応答の変化が確認さ
れるアメリカ、ユーラシア、東アジア (d、h)。
------------------------------------------------------------
via https://doi.org/10.1038/s41467-023-38906-7
ネイチャーコミュニケーションズ (2023) 14:3528 2

異常気象の世界同時多発穀物不作リスク 
加齢の関係もあるかもしれないが、日差し強く、蒸し暑く、線状降
雨が多発し、これは長期にわたる干ばつや大雨、熱波などの異常気
象であると合点するように、そして、作物の不作につながるとの報
告もそれを押す。また、温暖化を含む地球の気候変動によって、異
常気象による作物の不作が世界中で増加しており、サプライチェー
ンの混乱に伴う価格の高騰や、食糧供給の滞りが発生する危険性を
指摘している。コロンビア大学の研究グループの研究チームが、世
界中の主要な食糧生産地域で収穫量の減少が同時多発的に発生する
可能性について調査し、世界中の「穀倉地帯」として知られるいく
つかの作物生産地域で、同時多発的に作物の不作が起こった場合、
輸出の制限に伴う価格の高騰によって、食料不安が高まり、食料安
全保障が困難になると予測。 先ず、下図は北アメリカ中央部や東西
ヨーロッパ、アジアなど、中緯度の温帯気候域に位置する穀倉地帯
の上空を通る「ジェット気流」と呼ばれる気流による不作の可能性
を調査しました。以下の図において、薄青で示された線がジェット
気流の経路、緑が主要な穀倉地帯、赤の斜線で示されたエリアが熱
波の影響を受ける地域、青の斜線のエリアが冷夏などの影響を受け
る地域を表す。 そこでは、「ロスビー波」と呼ばれる大気波の発
生が、世界中の穀倉地帯における異常気象を引き起こしており、作
物の不作につながっていることを突き止める。



1.そのロスビー波の発生により、ジェット気流が強く蛇行する主
 要な穀倉地帯において作物の収穫量が減少し、作物の不作が発生
 する確率は、地域によっては3倍に増加することを示唆する。
2.ロスビー波によるジェット気流の蛇行現象が作物の収穫量に与
 える影響を調べ、1960年から2014年までの観測データと気候モデ
 ルのデータ分析し、現在の気候モデルは蛇行するジェットの位置
 と強度を示しながら、一方で、局地的な異常気象の程度を正確に
 再現していないことを発見、ジェット気流の蛇行が異常気象に与
 える影響が過小評価されていた。
3.さらに、温暖化が抑制されない最悪のシナリオを想定して2045
 年から2099年にかけての「将来の作物状況の予測」を行った。シ
 ミュレーションの結果、北アメリカとシベリアでは、近年深刻な
 異常気象が何度も発生して、今後も作物の不作のリスクが高まっ
 ているとのこと。また、これらの地域は今後、ジェット気流の蛇
 行により、さらに熱波の影響が強まると予測する。
4.これらを踏まえ、①気候変動の作物生産への影響は不確実性が
 高い複雑な"気候変動リスク"に備える必要があるという。



図2.ロスビー波  via Wikipedia
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2021年8月10日 「地球温暖化は人間が原因」とIPCCが断定

     

 
 

【再エネ革命渦論 144: アフターコロナ時代 143】
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中  ㉗

ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。

酸化チタンに代表される光触媒(photocatalyst)は非常に強い酸化力を
もち、反応は室温で進行するが、反応速度が小さいため一時的な大
きな負荷に対して十分な触媒作用を示さなくなる。一方、通常、「
触媒」と呼ばれているものは「熱触媒(thermocatalyst)」のことを示
し、光触媒よりも大きい反応速度が得られるが、多くの場合、加熱
が必要である。本研究では、熱触媒および光触媒作用を併せもつ新
規ナノ材料を開発し、これを、印刷工場や塗装工場などで発生する
揮発性有機化合物(VOC)の効率的浄化へ応用する。
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1.特開2020-15020 触媒、触媒の製造方法、触媒担持担体、分解
 方
法、水素の製造方法、及び、担体 国立研究開発法人物質・材
 料研
究機構
【概要】 触媒の存在下、原料に熱エネルギーを付与して、選択的に
所望の反応を起こさせる技術が知られている。例えば、炭化水素を
改質して、水素を得る反応では、改質触媒の存在下で、改質反応を
行う技術が知られている。このような方法として、特許文献(特開
2002-12408 )には、「予熱温度まで加熱された炭化水素、酸素及び
水又は水蒸気からの出発混合物を触媒上に導通することによる炭化
水素の自熱式接触蒸気改質法において、この方法を断熱的に作動さ
せること、及び触媒は、支持体上に、酸化アルミニウム、二酸化珪
素、二酸化チタン又はこれらの混合酸化物及びゼオライトの群から
の酸化物担体物質上に少なくとも1種の白金族金属を含有する触媒
物質の被覆を有することを特徴とする、炭化水素の自熱式接触蒸気
改質法。」が記載されている。 図2のごとく、被処理物に由来し
て、少なくともその表面に吸着された化学種を、光照射によって還
元して生成物を得るための触媒であって、上記触媒は、第1金属原
子を含有する第1材料に、第2金属原子がドープされてなり、上記
第1金属原子を含有する第1材料の非占準位バンドAに対し、上記
第2金属原子由来の非占準位バンドB、及び、上記化学種の非占準
位バンドCの少なくとも一部が重複する領域を有する、触媒で大き
な熱エネルギーを付与せずとも、触媒表面に吸着された化学種を光照
射によって還元し、所望の生成物を選択的に得る反応を起こすこと
ができる触媒を提供する。また、触媒の製造方法、触媒担持担体、
分解方法、水素の製造方法、及び、担体も提供する。


図2.反応分子CH4とH2Oと(被処理物に該当する)が存在す
 る、Rh-Ti触媒とRh-Si触媒システムの、摂氏247℃
 における量子分子動力学シミュレーション

【課題を解決するための手段】 
上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課
題を達成することができることを見出す。
[1]
被処理物に由来して、少なくともその表面に吸着された化学
種を、光照射によって還元して生成物を得るための触媒であって、
上記触媒は、第1金属原子を含有する第1材料に、第2金属原子が
ドープされてなり、上記第1金属原子を含有する第1材料の非占準
位バンドAに対し、上記第2金属原子由来の非占準位バンドB、及
び、上記化学種の非占準位バンドCの少なくとも一部が重複する領
域を有する、触媒。
[2] 上記非占準位バンドBが、上記第2金属原子のd軌道成分、
及び、f軌道成分からなる群より選択される少なくとも一方を含む、
[1]に記載の触媒。
[3] 上記第1金属原子、及び、上記第2金属原子は、周期律表第
4~6周期の金属 からなる群より選択される少なくとも1種の金属
原子であり、上記非占準位バンドBが、上記第2金属のd軌道成分
を含み、Nが4~11の整数である時、上記第1金属原子が周期律
表の第N族の金属であり、かつ、上記第2金属原子が周期律表第3
~第(N-1)族の金属からなる群より選択される少なくとも1種
の金属である、[1]又は[2]に記載の触媒。
[4] 上記触媒中における、上記第2金属原子同士の平均距離が
0.4nm以上である[1]~[3]のいずれかに記載の触媒。 [
[5] 上記領域は、上記触媒の占有最高準位から、3.3eV高い
準位までの間に存在する、[1]~[4]のいずれかに記載の触媒。
[6] 上記第1金属原子がCu、Ni、及び、Coからなる群より
選択される少なくとも1種の金属原子であり、上記第2金属原子が
Tiである、[1]~[5]のいずれかに記載の触媒。
[7] 上記第1金属原子がRhであり、上記第2金属原子が、Ti
、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及び、Wからなる群
より選択される少なくとも1種の金属原子である、[1]~[5]
のいずれかに記載の触媒。
[8] 上記被処理物が有機化合物であり、上記生成物が、二酸化炭
素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種であ
る[1]~[7]のいずれかに記載の触媒。
[9] 上記化学種がプロトンであり、上記生成物が水素である、
[1]~[8]のいずれかに記載の触媒。
[10] 担体と、上記担体に担持された、[1]~[9]のいずれ
かに記載の触媒とを有する、触媒担持担体。
[11] 上記担体が、上記第2金属原子を含有する[10]に記載
の触媒担持担体。
[12] 上記担体が、半導体であって、上記触媒担持担体の電子構
造における占有最高準位Xが、上記担体における、上記半導体由来
の非占有最低準位から300meV低いエネルギー位置Yと同じエ
ネルギーに位置するか、又は、上記Yより高いエネルギーに位置す
る、[11]に記載の触媒担持担体。
[13] 上記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは
0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対応する数である
とき、MOpで表される最高酸化数の金属酸化物を含有する、[1
2]に記載の上記触媒担持担体。
[14] 上記金属酸化物が、MgO1、AlO3/2、TiO2、
TaO5/2、WO3、MoO3、SrTiO3、CuWO4、及
び、TiCa(PO4)2からなる群より選択される少なくとも1
種である、[13]に記載の触媒担持担体。
[15] 上記担体がn型半導体である、[10]~[14]のいず
れかに記載の上記触媒担持担体。
[16] 上記n型半導体がリン、ヒ素、及び、アンチモンからなる
群より選択される少なくとも1種がドープされたSiである、[1
5]に記載の上記触媒担持担体。
[17] 上記担体が、Mを1種又は2種以上の金属原子とし、pは
0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対応する数であり、
δは0より大きい数であって、上記p未満の数であるとき、MO(
p-δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物を含有する、[1
0]に記載の上記触媒担持担体。
[18] 上記金属酸化物が、δを0より大きく2未満の数とした時
TiO(2-δ)で表される化合物を含有する、[17]に記載の
触媒担持担体。
[19] [1]~[10]のいずれかに記載の触媒を製造する、触
媒の製造方法であって、第2金属原子を含有する基材に、第1金属
原子を含有する組成物を塗布し、上記基材上の少なくとも一部に組
成物層を有する、組成物層付き基材を得る工程aと、上記組成物層
付き基材を加熱した後、触媒前駆体を得る工程bと、 上記触媒前駆
体を還元雰囲気中で熱処理し、上記触媒を得る工程cと、を有する
触媒の製造方法。
[20] [1]~[10]のいずれかに記載の触媒と、被処理物と
を接触させ、上記触媒に光を照射して、被処理物を分解して、生成
物を得る、分解方法であって、上記被処 理物が、有機化合物を含有
する、分解方法。
[21] 上記被処理物が有機化合物であり、上記生成物が、二酸化
炭素、水素、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種で
ある[20]に記載の分解方法。
[22] [1]~[10]のいずれかに記載の触媒と、被処理物と
を接触させ、上記触媒に光を照射して、水素を得る、水素の製造方
法であって、上記被処理物が、有機化合物、及び、水からなる群よ
り選択される少なくとも1種を含有する、水素の製造方法。
[23] 上記被処理物が更に二酸化炭素を含有する、[22]に記
載の水素の製造方法。
[24] 更に、上記触媒を加熱する、[22]又は[23]に記載
の水素の製造方法。
[25] 上記有機化合物が、炭化水素である、[21]~[24]
のいずれかに記載の水素の製造方法。
[26] 上記炭化水素がメタンを含有する、[25]に記載の水素
の製造方法。
[27] 半導体である担体であって、Mを1種又は2種以上の金属
原子とし、pは0より大きい数であって、上記Mの最高酸化数に対
応する数であり、δは0より大きい数であって、上記p未満の数で
あるとき、MO(p-δ)で表される酸素欠損を有する金属酸化物
を含有する、担体。

【発明の効果】
大きな熱エネルギーを付与せずとも、触媒表面に吸着された化学種
を光照射によって還元し、所望の生成物を選択的に得る反応を起こ
すことができる触媒を提供することができる。 また、触媒の製造方
法、及び、水素の製造方法も提供できる。

【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施
例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の
趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本
発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきもの
ではない。
まず、典型例であるRh-Ti触媒に解離吸着したプロトンへの光
励起電子の結合性の良さを確認するため、反応条件を模した、Rh
-Ti触媒とRh-Si触媒システムの局所密度近似に基づく局所
密度汎関数理論による第一原理量子分子動力学と電子構造計算を行
い比較した。 
計算モデル: 比較を容易にするため、TiとSiが表面にドープさ
れたRh金属スラブ(190Rh,1Ti,1Si原子)で構成さ
れ、反応物質分子はメタン2分子と水4分子が用いられた(図2)。


詳細は以下のとおりである。 格子定数3.803Å(オングストロ
ーム、1オングストロームは0.1nm、以下同じ)の面心立方格
子のRh金属結晶(無機結晶構造データベース、ICSDcode-
650222)が、4a(15.212Å)×4a×3a(11.
409Å)のサイズで切り出され、4a×4a×24Åのサイズ
のシミュレーションセルの底部に設置された。その(001)表面
のRh原子の内二つのRh原子が、TiとSiに置換された。 そ
して、メタン2分子と水分子4個が、望まれない不均衡をさけるた
めそれぞれの分子同士の距離や、分子とRhスラブ表面の距離が適
度な距離を保つようにして、シミュレーションセルの空間(厚み約
14Å)に置かれた。結局、シミュレーションセル中に含まれるRh,
Ti,Si,C,O,そして,Hの原子数はそれぞれ、190,
1,1,2,4,16であった。
計算手法詳細: 第一原理量子分子動力学シミュレーションはスピ
ン自由度をもつカー・パリネロ法(CPMD)でなされ、Beck
e-Lee-Yang-Parr(BLYP)にちなむ一般化され
た勾配補正が施された交換相関ポテンシャルが用いられている。R
h、Ti、Si、C、O、及び、Hの価電子とコアの相互作用は、
ノルム保存型のTroullier-Martins(TM)擬ポ
テンシャルによってモデル化されている。Rhの5s、4d、Ti
の4s、3d、Siの3s、3p、Cの2s、2p、Oの2s、
2p、Hの1s電子が価電子として扱われ、Rhの5p、Siの3
dポテンシャルも計算に勘案されている。RhとTiについては非
線形コア補正された擬ポテンシャルが用いられている。計算では、
波動関数は、カットオフ値80Ryのエネルギーまでの平面波基底
セットで展開され、ブリルアンサンプリングはΓ点のみである。

仮想電子質量は1200原子ユニット、逐次計算ステップ幅は5.0
原子ユニット時間として計算し、各保存量は良好に制御された。 
247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを図3
と図4に示す。メタン分子は247℃で表面で自然解離した。電子
構造の性質では重要成分だけを表示している。実線で示されている
ように、-6.2eVまで電子が占有されている。占有状態と非占
有状態の両方が主にRh4d軌道成分で構成されている。 

非占有状態のTi3d成分と、この解離吸着による吸着物の非占有
状態のH1s成分について調べると、非占有Ti3dバンドは-5.
0eV~-3.0eVのエネルギー領域に位置しており、Rh基金
属スラブ上に吸着したH由来の非占有H1s成分はちょうどそのT
i3dバンドの付近に位置しているのである。したがって、Rh4
d軌道の電子は、可視光照射で、励起され非占有4d、5s、ある
いは、5p軌道に励起されることができ、同時に非占有Ti3dあ
るいは非占有H1s軌道にも励起されることを示している。このこ
とはTi3d軌道成分が光励起された電子を解離吸着したプロトン
に移動することに大きく寄与していることを意味する。

また、この計算結果は、触媒中のTiの濃度が大変小さい(原子数
比で1/192)にも関わらず、Ti3d成分が大きく(エネルギー
範囲-5EeVから-3eVまでで、最大約0.15)、エネルギ
ー軸におけるそのバンド位置はH1s非占有バンドの位置とよく合
っていることを示していて(図3、図中の黒く帯状に示され、バン
ドの表示が白く反転している部分)、少量でもその効果が高いこと
を示唆している。ところが、Si3sとSi3pの成分はそれぞれ
0.01、0.025より小さく、このことは光励起された電子が
Siを介して解離吸着したプロトンに移動することはほとんどでき
ないことを意味している(図4)。


したがって、Siをドープすることは、表面吸着プロトンの還元(
水素の生成)に対して効果は小さい。 【0063】 上記と同様の
方法により確かめた本発明の他の実施形態に係る触媒について説明
する。 図5は、Rhに対して、高濃度(具体的には原子%として
13%)でTiをドープした場合の247℃における平衡状態での
電子構造のスナップショットを示した。図中、破線は占有最高準位
を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、非占有H1s軌道バ
ンドとの重なり(図中、黒く帯状に示した部分)から、光による反
応促進効果がより増強されることがわかる。しかしながら、図3と
比較すると、図5はH1s成分が小さく、重なる領域がより狭い。
したがって、高濃度にドープすることは必ずしも好ましくないこと
が分かる。 

図6は、Rhに対して、Hfを0.5原子%の濃度でドープした場
合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを
示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Hf5d
軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なり(図中、黒く帯
状に示した部分)から、光による反応促進効果がより増強されるこ
とがわかる。
図7は、Rhに対して、Taを0.5原子%の濃度でドープした場
合の247℃におけ る平衡状態での電子構造のスナップショットを
示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ta5d
軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による
反応促進効果がより増強されることがわかる。 

図8は、Rhに対して、Moを0.5原子%の濃度でドープした場
合の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを
示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Mo4d
軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による
反応促進効果がより増強されることがわかる。 

図9は、Rhに対して、Wを0.5原子%の濃度でドープした場合
の247℃における平衡状態での電子構造のスナップショットを示
した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有W5d軌道
バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応
促進効果がより増強されることがわかる。 

図10は、Niに対して、Tiを0.8原子%の濃度でドープした
場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショット
を示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3
d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光によ
る反応促進効果がより増強されることがわかる。

図11は、Coに対して、Tiを0.8原子%の濃度でドープした
場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショット
を示した。図中、破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3
d軌道バンドと、非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光によ
る反応促進効果がより増強されることがわかる。 図12は、Cuに
対して、Tiを0.9原子%の濃度でドープした場合の400℃に
おける平衡状態での電子構造のスナップショットを示した。図中、
破線は占有最高準位を示している。非占有Ti3d軌道バンドと、
非占有H1s軌道バンドとの重なりから、光による反応促進効果が
より増強されることがわかる。

図13は、Rhに対して、Coを0.5原子%の濃度でドープした
場合の400℃における平衡状態での電子構造のスナップショット
を示した。図中、破線は占有最高準位を示している。バンドに重複
する領域がほとんどなく、所望の効果が得られないことがわかる

(比較例)
上記は、M2金属のd軌道の例を挙げたが、f軌道でも同様の効果
が期待できる。Rh-Ce触媒、Rh-Pr触媒、Rh-Tb触媒
、のそれぞれにプロトンが吸着した場合の概念図を図14に示す。
非占有準位のH1s軌道成分のバンドとの重なり(図中、黒く帯状
に示された部分)から、Rh-Pr触媒が可視域での活性が期待で
きる。上記のf電子をもつ希土類元素をドープされた金属触媒の電
子構造も第一原理で計算されているが、その具体的な手法は原子球
近似を用いたリニアマフィンティン軌道法(LMTO-ASA)に
よるものである。f電子軌道に関するバンドのエネルギー位置はま
ず、希土類元素をドープされた金属(例えばRh)のバルクにおけ
る電子構造を求め、そのf電子軌道の状態密度プロファイルとその
系の占有最高準位(Aとする)を得る。次に、CPMD法により求
めた原子配置状態(例えばRh金属スラブにプロトン等が吸着した
状態)のコーンシャム方程式を解いて得られた電子構造とその系の
占有最高準位(Bとする)を得る。AとBが一致するように両者の
電子構造を並べることで、近似的に各構成原子軌道由来のバンド位
置(4f軌道のエネルギー位置と吸着プロトン由来のバンド位置等
)を比較することが可能となり、好適な触媒を見つけることができ
る。 

図15は、Rh-Ho触媒、Rh-Yb触媒、のそれぞれにプロト
ンが吸着した場合の 電子構造の概念図である。いずれの場合も、
非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌道のバンドが重
ならないため、もともとのRhを大きく超える高活性は期待できな
いことがわかる。 

図16は、Cu-Ce触媒にプロトンが吸着した場合の電子構造の
概念図である。非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌
道のバンドに重なり(図中、黒く帯状に示した部分)があるため、
光による反応促進効果がより増強されることがわかる。

図17は、Ni-Ce触媒にプロトンが吸着した場合の電子構造の
概念図である。非占有準位のH1s軌道成分のバンドと4f電子軌
道のバンドに重なり(図中、黒く帯状に示した部分)があるため、
光による反応促進効果がより増強されることがわかる。
以上は、第2金属元素がドープされた第1材料による触媒単体に関
するもので、その反応促進効果は、第2金属元素の非占有d軌道あ
るいは非占有f軌道成分と触媒に解離吸着したプロトンの非占有H
1s軌道成分の重なり(カップリング、混成)に起因するものであ
った。別の形態として、触媒に加え、触媒とそれを担持する担体と
の協働作用(触媒担持担体を用いた形態)により更に反応促進効果
を高める例について説明する。 

図18は、最高酸化数の金属イオンで構成される酸化物でできた担
体に、第1材料に第2金属原子がドープされた触媒を担持させた場
合の、触媒と担体の複合体(触媒担持担体)の電子構造の概念図で
ある。破線は占有最高準位。担体の伝導帯の底(CBM)より少し
下に占有最高準位Xが位置する場合であってXが、CBMより下に
あり、かつ、CBMより300meV低い位置Yより高い位置にあ
る場合。熱励起により担体にもキャリアが現れる。VBMは担体の
占有準位(価電子帯)の最高値を表す。 なお、18-Aは、第1材
料の電子構造、18-Bはドープされた第2金属原子の電子構造成
分、18-Cは金属酸化物担体の電子構造を表し、CBMは、非占
有準位(伝導帯)最小値、VBMは占有準位(価電子帯)最高値を
表す。 

図19は、最高酸化数の金属酸化物の表面に酸素欠損を設けた担体
(最高酸化数未満の金属イオンを含む金属酸化物)に、第1材料に
第2金属原子がドープされた触媒を担持させた場合の触媒と担体の
複合体(触媒担持担体)の電子構造の概念図である。破線は占有最
高準位。酸素欠損量を調整し、占有最高準位Xを、担体の伝導帯の
底(CBM)より少し上に位置させた場合。熱励起なしでも担体に
もキャリアが存在する。そのため金属に似ているが、イオン結合物
質としての性質もあるため、担体表面では、極性分子を静電気的な
電界で引きつけることができる。なお、19-Aは第1金属原子を
含有する第1材料の電子構造、19-Bは第1材料にドープされた
第2金属原子の電子構造、19-Cは触媒に吸着したプロトンのH
1s成分、19-Dは最高酸化数の金属酸化物と酸素欠損を有する
金属酸化物とを含有する担体の電子構造を表す。CBMは、非占有
準位(伝導帯)最小値、VBMは占有準位(価電子帯)最高値を表
す。具体的に、酸素欠損のないTiO2担体にTiドープRh金属
触媒を担持している物質の電子構造を図20に示す。破線は占有最
高準位X。Xが、CBMより下にあり、かつ、CBMより300m
eV低い位置Yより高い位置にあることがわかる。熱励起により担
体にもキャリアが現れ、反応促進効果が期待できる。

(実施例) 
図20の計算は次のように行われた。まず、アナターゼ型TiO2
の(101)面にRh金属を接触させ全体の温度を数百度以上に設
定してTiとRhに拡散を起させ、TiO2担体表面にTiドープ
されたRh金属状態を作ることで、Rh-Ti触媒を担持したTi
O2担体のスラブモデルをシミュレーションセル内に作る。次に、
メタン分子、水分子 をそのスラブ上の少し離れた位置に配置し、実
際の反応温度に設定して暫く分子を運動させ、反応分子が一部吸着
した状態で、その温度における全系の平衡状態を得る。しかる後に、
その一コマの電子構造の詳細を計算し、図20を得た。 
更に、先に用いたシミュレーションモデルの酸化チタン表面の酸素
原子の一部を取り去り、TiO2-δ担体にTiドープのRh金属
触媒を担持させた複合体(触媒担持担体)に反応分子の一部が吸着
した熱平衡状態を得る。同様にその一コマの電子構造の詳細を計算
する。その複合体(触媒担持担体)の電子構造を図21に示す。

破線は占有最高準位。占有最高準位Xが、担体の伝導帯の底(CB
M)より少し上に位置しており、熱励起なしでも担体にもキャリア
が存在する。そのため金属に似ているが、イオン結合物質としての
性質もあるため、担体表面では、極性分子を静電気的な電界で引き
つけることができ、解離吸着を促進できる。つまりこの系では、光
励起された電子は、TiドープのRh金属触媒上に吸着したプロト
ンや、担体に吸着したプロトンの両方を還元し、その相乗効果のた
めに高い水素生成能力を有する触媒担持担体となる。

(実施例) 
一方、酸素欠損のないSiO2担体にSiドープRh金属触媒を担
持し、反応分子の一部が複合体に吸着した状態の電子構造ついても
前述同様の計算手続きで求められた。図22にその全系の電子構造
を示す。

破線は占有最高準位X。XがCBMよりずっと低い位置にあるため、
通常の熱励起では、担体にキャリアを存在させることができない。
担体物質がプロトンの還元に寄与することはできず、また、Siド
ープRh金属触媒におけるSiのプロトンの還元促進作用もほとん
どないため、SiドープRh金属触媒に解離吸着したプロトンのみ
をRh金属のみの触媒作用で還元することになり、その効率は低い
ものになるということが容易に推測される。

(比較例) 
図21と図22の理論予測は実験でも確認できる。有機化合物の分
解: 実施例 フルウチ化学市販品CuWO4粉末(CUC-262
22A、99.9%、-200mesh(粒径<75μm))をア
ルゴン希釈の水素雰囲気中で400℃1時間、還元処理して粒子表
面に酸素欠損を作ったCuWO4-δ担体自体を触媒として、有機
化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)と空気(酸素だけ
でもよい)の混合ガスを可視光照射(>420nm)で分解した。
IPA分解に関するCuWO4-δ担体自体の触媒活性に関する評
価は、可視光照射対応可能な手製の石英窓付反応容器(高さ約4cm、
直径約13cm)で常温常圧で測定された(図23)。

典型例では、3~4mgのCuWO4ーδ担体が反応容器内に設置
された試料用シャーレに均一に分散された。その後、反応容器は乾
燥空気で数分フラッシングし、容器内を乾燥空気で満たして密封し
た。続いて、IPAガスをシリンジを使って約190~200pp
m程度の濃度になるようにセルに注入し、その後、光を照射。光照
射による温度上昇をさけるため、反応容器の温度は水冷装置により
室温に保った。生成された炭酸ガスは、定期的にシリンジにてサン
プリングし、熱電動式検出器と火炎イオン化検出器を装備したガス
クロマトグラフで定量測定された。 なお、図23において、230
は反応容器、231は触媒、232は石英窓、233はIPA、及
び、乾燥空気を満たした空間、234はサンプリング用シリコンゴ
ム栓、235はサンプリング用シリンジを表す。 Xeランプが光
源として使用された。L42フィルタが紫外光(λ<420nm)
を取り除くために使用された。上記測定手法によるCO2生成量の
時間変化を図24に示す。この測定では、初期IPA濃度189p
pm、触媒量0.50g。1時間当たりのCO2生成量は約3.4
ppm/hであった。

比較例
同様に、フルウチ化学市販品CuWO4粉末を空気中で400℃、
1時間加熱した、特に酸素欠損を導入しないCuWO4 担体自体
を触媒として、有機化合物であるイソプロピルアルコール(IPA
)と乾燥空気の混合ガスに可視光(>420nm)を照射し、IP
Aを分解した。初期濃度198ppm、触媒量0.40gであった。
上記同様の測定方法によって得られたCO2生成速度を図25に示
す。

図24における測定条件との僅かな違いは補正してある。Ⅰ1
時間
あたりのCO2生成量は約0.46ppm/hであった。 酸素欠
損を導入した場合に比べ、CO2生成速度は数分の1以下であるこ
とが分かる。 

水素の生成: 材料:塩化ロジウム(III)水和物(RhCl3
・3H2O)はシグマアルドリッチ社から供給されている。TiO
2(AEROXIDE TiO2 P25, Lot No. 614
041498)はEvonik-Degussa社から購入した。 
触媒の調製:全ての触媒は、含浸法により調製された。 まず、1
gのTiO2がRhCl3・3H2O水溶液(2.43、4.86、
7.29、9.72、14.58、と、24.23mM)20mL
に加えられた。 次に、1時間の撹拌後、上記試料は60℃で乾燥
され、400℃で2時間焼成された。昇温速度は毎分5度であった。
その後、試料はすり潰され、水素雰囲気で400℃で1時間還元処
理された。昇温速度は毎分5度であった。上記の様にして、TiO
2-δを担体として、上記担体に担持されたTiがドープされたR
h粒子(本発明の実施形態に係る触媒に該当する。以下、「TiO
2-δ担体担持Rh-Ti触媒」ともいう。)が得られた。 得られ
たTiO2-δ担体担持Rh-Ti触媒は、製造工程におけるTi
O2原料重量に対するRh重量に応じて、x%Rh-Ti(x=0.
5~5重量%)と命名した。 また、2%Rh-M2という「2重量
%」という表現は、それぞれ相応する担体担持された、異種元素(
第2金属原子M2)ドープされたRh触媒、に対して上記同様の方
法で作成した触媒を意味する。すなわち、本明細書では、特に明言
しない限り、2%Rh-M2とは、原料の担体(TiO2等)の質
量に対してRhを原料重量比として2重量%添加して作製した触媒
であることを表す。 ここでは、TiO2を担体原料とし、それに
含まれるTiをRh金属にドープしているが、例えば、TiO2を
担体原料とし、Rh金属にTiの他更に別の金属(M3)をドープ
したい場合は、RhCl3・3H2O水溶液にM3を含む水溶液を
まぜ、同様に含浸法で製造することにより、M3もRh金属にドー
プさせることができる場合もある。 
なお、上記濃度の定義は、触媒の製造時に原料として投入したRh
の質量を原料である担体(酸化チタン等)の質量に対する割合で表
示したもので、ドープ量を示していない。すなわち、仕込み原料と
しての担体質量に対する、Rhの仕込み原料の質量の比を示してい
る。

触媒活性測定:水蒸気メタン改質による水素生成触媒活性に関する
評価は、可視光照射対応可能な手製の石英窓付底固定フロータイプ
の反応容器(高さ3cm、直径8.5cm)で常圧で測定された。
典型例では、20mgの触媒担持担体が反応セル内に均一に分散さ
れた。その後、反応セルは純水なArガスで2時間フラッシングし、
セル内の空気を取り除いた。 続いて、触媒はまず400℃で2時
間還元性のガス、CH4(10%)とH2O蒸気(3%)の混合ガ
スを毎分10mL流して活性化された。その後、活性化された触媒
は所望の反応温度まで冷却され、安定した触媒性能に到達した。全
ての生成物は、熱電動式検出器と火炎イオン化検出器を装備したガ
スクロマトグラフで定量測定された。 LA-251 Xeランプが
光源として使用された。HA30フィルタとL42フィルタが赤外
光と紫外光(λ<420nm)を取り除くためそれぞれ使用された。
温度は反応容器下の熱電対で検出され、光照射による加熱効果を軽
減するため、TC-1000温度制御装置(JASCO)で制御さ
れた。

触媒特性:TiO2担持x%Rh-Ti(xは触媒を製造過程にお
けるRhの重量%、x=0.5~5)触媒は含浸法により準備され、
400℃、1時間の水素還元処理が施された(この工程でTiO2
-δが形成されるが、触媒反応中も還元雰囲気にさらされるため、
δの値は製造直後の値と触媒反応中の値とが同じとは限らない。)。
X線回折(XRD)測定の結果、全ての試料が、担体であるTi
O2がアナターゼ相とルチル相でできていることを示していた。

2%Rh-Ti触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)像(図26)か
ら、触媒が、平均粒径約2.5nmの酸化チタン表面上に均一に分
散していることが判明した。なお、図26において、Aで示した領
域は、TiO2-δ担体粒子に対応しており、Bで示した領域は、
Rh-Ti触媒に対応している。 
触媒活性の光増強効果:水蒸気メタン改質による水素生成速度の測
定は、石英窓付の底部固定反応容器を使い、常圧下、可視光(42
0~800nm、580mW/cm-2)照射のもとで行われた(
図27)。 なお、図27中、271は反応容器を示し、272は石
英窓を示し、273は触媒担持担体を示す。 

図28は、TiO2-δ担体担持Rh-Ti触媒における、水素生
成速度のRh担持量の依存度を示す(260℃で観測)。黒が光照
射しない場合を示し、白が光照射した場合である。いずれも、Rh
仕込み量が、0.5重量%から2.0重量%に増えるにつれ、水素
生成速度は増加するが、2.0重量%から5.0重量%の範囲では
その増加は緩やかであった。上記の結果から、酸化チタン担体をRh
金属が活性化しているが、一定量以上のRhでその活性化は飽和す
ることが示唆される。一方Rh-Ti触媒はその量が増えるほど反
応は促進されるはずであるが、もともとTiO2-δ担体の活性が
高いため、Rh-Tiの増加の効果が見えにくく、飽和したように
見えるものと推測される。 
光照射時、水素生成量は、(光照射のない)純粋な熱触媒作用のそ
れの、およそ3倍に増加していることが分かる。この、Rh-Ti
触媒に関する水素生成速度の可視光照射増強効果は再現性があった。
測定温度範囲220℃から300℃でも同様の測定を行ったが、水
素生成速度は、暗反応条件のそれより常に高かった。この反応促進
効果は、CO2とCO生成でも観測された。(副反応としての水ガ
スシフト反応(CO+H2O->H2+CO2)が存在する。しか
しながら、CO2が主要生成物である。)また、反応ガス(CH4
)のガス流量を増やすと、それに応じて、反応速度もまた改善され
た。 一方、可視光照射のもとでの反応速度を達成しようとすると、
光なしの純粋な熱的反応条件では温度を20~30℃高める必要が
あることが分かった。つまり、同じ水素生成速度を得ようとする場
合、Rh-Ti触媒を利用して、可視光照射すれば、より低温で、
SMR反応が実現できることが分かった。また、Rh-Ti触媒は
暗反応と明反応の条件で優れた触媒安定性を示していた。 



同様の方法で、酸化ケイ素(SiO2、Wako Co.から購入し
た。)、酸化ジルコニウム(ZrO2、Wako Co.から購入し
た。)、酸化タンタル(Ta2O3、Wako Co.から購入した。
)を担体原料とした系についても検討を行った。Si、Zr、及び
TaがドープされたRh触媒(Rh仕込原料重量比として2%))、
すなわち、2%Rh-Si、2%Rh-Zr、2%Rh-Ta、を
それぞれ担持させ、同様の反応方法、同様の測定方法で水素生成速
度を観測した。その結果を表1に示す。2%Rh-Si、2%Rh
-Zrの粒子の平均サイズは、3~4nmである。 
                                              この項つづく
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2特開2022-165156 エンジン制御装置 トヨタ自動車株式会社
【概要】
エンジンの排気通路に設置される排気浄化装置として、電気加熱触
媒装置がある。以下の説明では、電気加熱触媒装置を、EHC(El
ectrically Heated Catalyst
)と記載する。EHCは、排気浄化用の触媒
を担持する基材として、導電材からなる基材を備えている。こうし
たEHCでは、通電に応じた基材の発熱により触媒を昇温すること
で、エンジンの冷間始動直後に触媒を早期に活性化している。
一方、エンジンの排気には、煤が含まれている。こうした煤がEH
Cの内部に排気中の煤が堆積すると、その煤を通じて基材と外部の
導電部品との間に導通経路が形成されてしまう。そして、その結果、
基材の絶縁性が低下することがある。足することがある。したがっ
て、空燃比パータベーション制御だけでは、EHC内に堆積した煤
の除去が不十分となる虞がある。

【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するエンジン制御装置は、エンジンの排気通路に設
置された電気加熱触媒装置の内部に堆積した煤を除去するための再
生制御を実行する。同エンジン制御装置は、空燃比パータベーショ
ン制御と、燃料カット制御と、の2種の制御を再生制御として有し
ている。空燃比パータベーション制御は、理論空燃比よりもリーン
側の空燃比で燃焼を行うリーン燃焼と理論空燃比よりもリッチ側の空
燃比で燃焼を行うリッチ燃焼とを周期的に切り替える制御である。
また、燃料カット制御は、エンジンが外部動力により回転駆動され
た状態で同エンジンの燃料供給を停止する制御である。そして、同
エンジン制御装置は、空燃比パータベーション制御、及び燃料カッ
ト制御のうちのいずれの制御を再生制御として実行するかを、排気
流量と電気加熱触媒装置の触媒床温とに基づき選択している。

下図1のごとく、エンジン制御装置21は、エンジン11の排気通
路19に設置された電気加熱触媒装置20の内部に堆積した煤を除
去するための再生制御を実行する。同エンジン制御装置は、空燃比
パータベーション制御と、燃料カット制御と、の2種の制御を再生
制御として有し、空燃比パータベーション制御、及び燃料カット制
御のうちのいずれの制御を再生制御として実行するかを、排気流量
と電気加熱触媒装置の触媒床温とに基づき選択することで、電気加
熱触媒装置の内部に堆積した煤の除去効率を高める。


図1.エンジン制御装置の一実施形態が適用されるエンジンを搭載
 するハイブリッド車両構成を模式図

続いて、図1を併せ参照して、エンジン11の構成を説明する。エ
ンジン11は、気筒別の燃焼室35と、各気筒の燃焼室35への吸
気の導入路である吸気通路36と、各気筒の燃焼室35からの排気
の排出路である排気通路19と、を備える。吸気通路36には、エ
アフローメータ37と、スロットルバルブ38と、が設けられてい
る。エアフローメータ37は、吸気通路36を流れる吸気の流量で
ある吸気流量GAを検出するセンサである。また、スロットルバル
ブ38は、吸気流量GAを調整するための吸気の絞り弁である。

一方、排気通路19には、EHC(Electrically Heated Catalyst:電気加
熱触媒装置)20が設置されている。EHC20は、触媒の電気加
熱が可能な排気浄化用の触媒装置である。EHC20の詳細な構成
については後述する。さらに、エンジン11には、インジェクタ3
9と点火装置40とが、気筒毎に設けられている。インジェクタ3
9は、燃焼室35に流入する吸気中に燃料を噴射する燃料噴射弁で
ある。点火装置40は、燃焼室35に導入された吸気と燃料との混
合気を火花放電により点火するための火花発生装置である。
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【符号の説明】 10…ハイブリッド車両 11…エンジン 12…
発電機 13…モータ 14…動力分割機構 15…減速機構 16…
車輪 17…インバータ 18…メインバッテリ 19…排気通路
20…EHC(電気加熱触媒装置) 21…電子制御ユニット 22
…アクセルペダルセンサ 23…車速センサ 24…外気温センサ
25…絶縁配管 26、27…金属配管 28…EHC基材 29…
後段基材 30…緩衝材 31…電極 32…電力制御回路 33…補
機バッテリ 34…排気温度センサ 35…吸気通路 36…燃焼室
37…エアフローメータ 38…スロットルバルブ 39…インジェ
クタ 40…点火装置
以下、エンジン制御装置の一実施形態を、図1~図5を参照して詳
細に説明する。本実施形態のエンジン制御装置は、ハイブリッド車
両に搭載されたエンジンに適用されているが図のみ転載、以下省略。


図1.エンジン制御装置が実行する再生制御の要否判定循環流れ図



図2.エンジンの排気通路に設置されたEHC構成模式図


図3.エンジン制御装置が実行再生制御要否判定循環流れ図


図4.同エンジン制御装置が実行する再生制御循環流れず

図5.FC禁止領域、FC許可領域、及び条件付き
                 FC許可領域設定態様図

※避けて通れない、オールバイオマスシステムでの新規人造触媒製
造及び応用工学。

● 今夜の寸評:(いまを一声に託す)
                明日も
先端技術で世界一をめざす

 

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