【薄膜離合工学】
薄くて柔らかいフィルムとガラスを簡単に接合し、剥離する技術を東大の須賀唯知教授とランテクニカ
ルサービスで開発。フィルム上に電子回路を作る際にガラスで支持して搬送できる。ウエアラブル端末
などのフレキシブル基板の製造プロセスに提案し、2―3年での実用化を目指す。フレキシブル基板の
製造方法をガラス基板上への樹脂の塗布から、ガラスと樹脂のフィルムの貼り合わせに変更でき、従来
は大面積を均一に塗布することが難しく歩留まりが低かったが、膜厚や表面粗度が均一なフィルムは量
産されており、貼り合わせで品質とコストを抑えられる。接合フィルムは薄膜トランジスタ(TFT)
などのプロセスで、従来と同じガラスの搬送系を使える。電子回路を形成した後は、簡単に剥がせ数百
℃の高温にも耐える特徴をもつ(2014.09.29 日刊工業新聞)。
これまでウェハー等の接合が常温で出来るが、硝子も常温で接合できる可能性は指摘されていた。ディ
スプレイに限らず、硝子を基板として使用するデバイスは多くあり、これらの接合は接着材等を使用し
て接合してきたが、近年、厳しい環境下での使用、水分の透過の抑制の要求が多くなり、無機物質同士
の常温での接合が求められてきた。硝子の常温接合の産業分野での応用に大きく寄与できる。硝子常温
接合の成功に続き、フィルムの常温接合にも成功しているが、同様に硝子とフィルムの異種素材同士の
常温接合にも成功。フィルムの常温接合の成功は、デイスプレー以外の多くの分野-例えば医療分野、
宇宙関係などの有機系接着剤が使用しにくい分野への応用が期待されている。
もともと、東大の須賀唯知教授らの常温接合技術は10年ほど前に提案されていたもの(参考「特開2003-
249620 半導体の接合方法およびその方法により作成された積層半導体」)。接合部の表面に、アルゴン
などのプラズマ照射し照射洗浄することで、大気中で接合する(上図の装置概説図をダブルクリック)。
以上の技術を踏まえ、上図のように、高さが異なる電子部品4の電極端子4aを基板1の複数の電極2
aに載置する部品載置工程と、複数の電子部品のうち高さが最も高い電子部品と高さが最も低い電子部
品との高さの差よりも厚い有機フィルム5を複数の電子部品に載置する有機フィルム載置工程と、所定
の温度に加熱された押さえ部材58の平面状の押さえ面58aを有機フィルムに押し当て電子部品側に
第1の圧力を付与し、有機フィルムの被押さえ面5aの高さを均一にする有機フィルム加圧工程と、加
圧部材58の平面状の加圧面58aを被押さえ面に押し当て加圧部材により、電子部品側に第2の圧力
を付与しながら、所定の時間加熱し複数の電子部品の各電極端子を基板の各電極に接合する接合工程と
を備えることで、複雑で精密な電子部品の電極端子と基板の電極との良好な接合状態を確保した上で生
産性の向上を図り基板の小型化を図る方法が提案されている。あとは、信頼性(堅牢性・耐久性)の品
質要求事項に合致するかどうかである。この技術は有機薄膜系太陽電池などの可撓性電子デバイスの製
造には欠かせないものとなる。
【遺伝子組み換え作物論 37】
遺伝子組み換え作物を拒否し、高い自給率を維持するEU
第二に、強固な市民社会の存在である。米国政府は「回転ドア」によって企業に半分乗っ取ら
れた状態にある。ベルギーの首都にあるEU議会も巨大企業のロビー団体に包囲されてはいるか、
市民のロビー団体も多数ある。2004年に現在の食品表示制度が実現したのも、「消費者連合
体、農協、消費生活協同組合、グリーンピース、地球の友」が連携してEU議会に対して働きか
けた成果だった。
第三に、モンサント杜との競合にEUのバイテク企業が勝てなかったためである。米国政府の
支援を受けたモンサント社は王のごとく振る舞える。自ら法令を制定し、対立者を粉砕するが、
消費者・農家が強く反対するEU諸国に本社を置くバイテク企業はそうはいかない。結局、年々、
EU域内における試験栽培の数も減り、アジア・アフリカに撤退している。
そして第四に、EUが食料生産・輸出国であることだ。フランスの食料自給率は120%、低
い英国でさえ65%ある。先に述べたように、多額の補助金を費やして農業を保護してきた成果
である(ただし、不足分はアフリカからの輸入で補っているため、アフリカもEU巾場を失って
までも米国から遺伝子組み換え作物を輸入はできないという板挟みにある、そのためこの点につ
いては、アフリカの農業にとって不公平であるとしてEUは批判を浴びてきた)。
こうして日本の表示がほとんど"ザル"であるのと対象的に、EUでは表示か徹底されてきた。
そしてさらに2013年1月23日に、欧州委員会は遺伝子組み換え作物の承認手続きを201
4年末まで凍結することを決定した(バイテク企業や米国からの反撃も予測されるため、今後の
展開は予断を許さない)。米国の政策をそのまま受け入れてきた日本と異なり、ヨーロッパでは
基本的に遺伝子組み換え拒否してきた。
いずれにせ「消費者と農民と政府」とがスクラムを組んで食の安全と自給を守ることこそが本
来の「国益]のはずである。
終わらぬ闘い
闘いは今も終わってはいない。バイテク産業は次から次へと新たな商品を繰り出しており、
2012年だけでも次のような事例が報告されている。(以F、出典『バイオジャーナル』市民
バイオテクノロジー情報室)
・米国では、初めての遺伝子組み換え動物食品となる「遺伝子組み換えサケ」の承認をめぐり
食品医薬品局(FDA)内での審議が続いている(2012年12月21日、食品医薬品局
は、「環境に重要な影響は与えない」とする環境影響評価濫案を公表した)。
・ブラジル市街地では、英国のバイテク企業「オキシテック杜」か開発したデング熱対策の遺
伝子組み換え蚊を1000万匹放出した。さらに今後、年間400万匹生産するため施設の
稼働を開始している。同じ蚊は、パナマとインドでも放出される予定である(熱帯・亜熱帯
地域に分布する『熱帯縞蚊」は、デング熱などの感染症を媒介する。そこで野生の雌と交配
しても蚊の幼虫が生きられないように遺伝子組み換えした雄を大量に放出して、蚊の数を減
らすことか目的と言われている)。
・遺伝子組み換え蚊を開発した英国「オキシテック杜」は、アブラナ科の害虫コナガを減少さ
せるため不妊化したコナガの雄を開発した。
・米国食品医薬品局(FDA)は、遺伝子組み換えニンジンから製造される治療薬を認可した。
・カナダのバイテク企業「オカナガン・スペシャリティフルーツ杜」は、茶色に変色しないよ
うに改変した遺伝子組み換えリンゴ「Arctic Apple」を開発し、米国に申請を行なった。
・ブラジルでは[スザノ製紙」傘下の企業が、バイオマスとパルプ生産のために成長を早めた
遺伝子組み換えユーカリ植林の承認を得た(ブラジルのバルプメーカー「スザノ製紙」は、
2010年に植林バイオテクノロジーで有名な英国資本「フューチャージーン社」を買収。
遺伝子組み換え技術で植林の生産を大幅に拡大する計画をもっている)。
・オーストラリアでは、モンサント社とバイエル・クロッブサイエンス杜による遺伝子組み換
え小麦の開発か進んでおり、早ければ2015年には商業栽培を開始することが予測されて
いる。
ちなみに本書は英国で活動するNGO団体「GMウオッチ」の元編集者の執筆によるため、遺
伝子祖み換え推進に積極的だったプレア首相(任期1997年~2007年)の労働党政権にお
ける様々な動向について詳細に説明している。ただし翻訳にあたってはその多くを省略した。遺
伝子組み換え問題に関しては、英国と日本との直接的な関わりは少ないためである。
しかもこの間、英国では市民による強力な反対運動に圧倒されて、バイテク企業が撤退を余儀
なくされ、商業栽培はおろか、試験栽培さえ困難な現状にあった。ところがその英国でも最近で
はローザムステッド研究所で遺伝子組み換え小麦の試験栽培が始まっている。英国では、試験栽
培が行なわれれば反対派の農民や環境保護運動家が、逮捕覚悟で遺伝子組み換え作物を引き抜く
活動を展開してきた。むろんこうした活動に対しては賛否両論あるが、「非暴力直接行動」の意
義か社会的に認知されている英国ならではの状況と言える。今後もバイテク企業と市民との闘い
は、世界中でもさらに激しさを増していくことだろう。
リーズ、アンディ 著 『遺伝子組み換え食品の真実』
以上、翻訳者の「解説」でこのテーマは終わとなるが、遺伝子組み換え作物が将来に与える悪影響と
は 例えてみてば、これが「毒リンゴ」かどうか試しに食べてみてもその答えが出るまでに、長時間
かかるというものばかりのような気がする。戦後の杉花粉症は、日本の植林政策の結果であり、高度
経済成長とともに大量消費されたディーゼル燃料などの地下化石燃料の燃焼ガスとの複合汚染と相ま
って進行してものであることに気付くのがずっと後のことであったように、食物アレルギーなど閾値
が下がって日本人の2人に1人から近似全員が何らかの食物アレルギーをもつようになる日がやがて
やってくるかもしれない。そのとき、原発事故は起こらないと言っていた為政者の多くがいなくなっ
ているように、関係者の誰もが無責任で終わってしまう可能性もある。そのようなことが起きぬよう、
賢明な選択と行動が取れるようにと、この書物は警告してくれている。
※日本では「天下り」や「天登り」という言葉があるが、米国では「回転ドアー」という言葉に該当
するという。しかし、"スピード感"という点でこちらの方が「貪欲さ」のスケールの大きさの違い
が伝わってくるようだった。 ^^;。
この項了
● 今日の名言
新世代自動車はエネルギーを持った 走るデバイスになる / 和田 憲一郎
※エレクトリフイケーシヨンコンサルティング代表