●「再稼働説を支える3つの神話と1つの真実」を読む
細川氏の原発ゼロは、小泉氏の「原発即ゼロ」が入っている。この「即ゼロ」は、原発を再稼働させない
という意味だ-とは同じく、ダイヤモンドオンラインの『高橋洋一の俗論を撃つ』での話。「希代のケン
カ師・小泉元総理の「原発即ゼロ」発言 原発ゼロ、電力自由化、東電解体の根は一つ 」の彼のこの主張
を踏まえ、同社のメルマガの記事『再稼働説を支える3つの神話と1つの真実-八田達夫・大阪大学招聘
教授』を考えてみる。
ここ半年で、7電力会社から9原発16基の再稼働申請が行われているが、これらは原子力規制委員会
が審査し、地元自治体の同意手続きがある。この中に東京電力の柏崎刈羽原発6号炉・7号炉が含ま
れているが、東京都知事の出る幕はない。ただし、泉田裕彦新潟県知事と共闘して、非同意に持って
行くことはあり得る。泉田氏は経産官僚OBだが、原発再稼働について厳しく、まっとうな意見を持
っている。ここで東京都知事に原発即ゼロの人が誕生すると、ひょっとしたらという期待が出てくる
可能性がある。ただし、「即ゼロ」では電力会社が大変になる。というのは、原発再稼働しなければ、
現在資産計上している原発資産はすべて「ゼロ」になる。東電でいえば、2013年3月31日時点で東電
の資産14兆6198億円のうち、原子力発電設備は7492億円あるが、これがゼロになるわけだ。これは、
原発を再稼働しなければ7492億円の償却損になって、東電がつぶれるかもしれないと大騒ぎになるだ
ろう。大震災直後の2011年5月12日、本コラム(「原発事故賠償金の国民負担を少なくし電力料金引
き下げも可能な処方箋を示そう」)で、東電はすでに債務超過状態にあって法的整理すべきという意
見を述べているくらいだから、別に驚くものではない。しかし実際の政策を行うにあたり、原発を放
置しておくこともできない。もし原発再稼働を認めないならば、その処理のために、原発を民間の電
力会社から分離して公的管理とすることも避けられない道だ。福島第一原発の事故からわかったこと
は、原発は民間会社では手に負えない存在ということだ。東電ですら破綻状態になるもので、民間会
社で扱うにはリスクが大きすぎるのは明らかだ。ちなみに、原発再稼働を認めないロジックとして、
安全規制基準を引き上げる方法もある。それは突き詰めれば、事故が起こらないようにするためには
安全コストが高すぎて、結果として原発を再稼働させないほうが経済的には合理的ということだ。ち
なみに、起こってはいけない事故に対する保険をかけようとすると、膨大なコストとなって、やはり
原発は動かさない方がいいという結論になるのも同じ考え方だ。であれば、原発に公的関与をするの
は公共経済学の初歩として正当化できる。小泉氏は郵政民営化で「民にできることは民に」と言った
が、裏を返せば「民にできないことはやめるか、それまでの間は、官で一時的に預かる」となるはず
だ。筆者(高橋洋一)は電力の自由化をきっちりやれば、エネルギーの最適な組み合わせは自ずと達
成できると考えている。原発事故が現実に起きて、そのコストが一企業でまかなえないほどに莫大に
なった以上、イデオロギーとは無関係に市場原理から考えると原発ゼロは自ずと出てくる最適解にな
る。だから電力自由化を全力で行えば、東電解体を経て、自ずとスムーズに脱原発も達成できる。こ
の意味で、原発ゼロへの責任ある具体的なプロセスとは、電力自由化、その結果としての東電解体に
他ならない。統制経済の考え方で、長期間の工程表を作ってみても、それはかえって無責任になって
しまう。長期にわたる変化をうまく行うのは市場原理しかありえない。原発ゼロへの具体的なプロセ
スは、電力自由化、東電解体を示せば、それが必要かつ十分な解答になる。こうした観点から、今話
題になっている小泉純一郎元総理大臣の意見をみてみよう。小泉氏は、12日、日本記者クラブで記者
会見し、今後のエネルギー政策について、原発は「即ゼロの方がよいと思う」と発言し、各方面に波
紋を広げている。朝日新聞が実施した世論調査では、小泉氏の原発ゼロの主張について、支持するが
60%、支持しないが25%となっている。小泉氏の脱原発論は、いわゆる「トイレのないマンション」
論だ。日本に最終処分場は作りようがないのだから原発ゼロというシンプルで説得的な考え方だ。こ
れに対して、「楽観的で無責任」とか反論しても、小泉氏の「最終処分場もないのに原発に依存する
ほうがよほど無責任」で一蹴されてしまう。自民党の石破幹事長は、11日の記者会見で「自民党の目
指す方向と違わない」とやや軌道修正してきている。ただし、「小泉氏は、いつまでに、どのように
して、誰の責任で『原発ゼロ』を実現するのかまでは踏み込んでいない。単に理想を掲げるだけでは
なく、答えを出すのが責任政党だ」と述べ、具体的なプロセスにこだわった。
これに対して、小泉氏は、しばしば自民党内で議論すればいいという。知恵者が必ず現れる、と。こ
れは、野党が小泉氏を利用して政治的な動きにしようとするが、野党と組むことはないと釘を刺して
いる。12日の記者会見でも、野党に対して「1人でもやるという気持ちでやらないと駄目だ」といっ
たという。と同時に、自民党が責任政党だということを逆手にとって、責任政党だからできるはずと
切り返している。しかも、石破氏の「方向は同じ」に対し、「即ゼロの方がよいと思う」と踏み込ん
でいる。このあたりが、希代のケンカ師との異名をとる小泉氏らしいところだ。具体的なプロセスに
ついては、小泉氏は、政治は決断だけすればいいと割り切る。たしかに、郵政民営化の時も、方向性
だけを言い、制度設計は竹中平蔵経済財政相に任せた。筆者はその下で詳細制度設計を任されたわけ
だ、小泉氏は、そうした制度設計にこだわらないが、原発ゼロに向けての制度設計となれば、冒頭に
述べた電力自由化さらに東電の解体なくしてできない。
●東電の対応は実質的な「債務不履行」
電力自由化はいざしらず、なぜ、東電の解体が関係してくるのか。それは、原発コストにも大いに関係
している。
最近の除染費用からはじめよう。
除染費用の支払いを拒んでいる東電が、改めて環境省から支払いを求められた。しかし、東電の石崎
副社長は「支払えない」と回答。東電は請求されているもののうち、未だ 300億円以上を支払ってい
ない。これは、通常でいう「債務不履行」ではないのか。除染費用は、放射性物質汚染対処特措法に
よって、東電負担と定めている。国がいったん肩代わりした上で東電に請求している。もちろん、東
電の言い分として、国がいったん肩代わりした分が本当に除染費用なのかどうかをチェックしなけれ
ばいけないから、少し待ってくれというものなら、まだ理解はできる。ところが、石崎副社長は「事
務作業に時間を要している上、経営状況が思わしくない」と、経営まで持ち出してくる。これではや
はり、東電は破綻ではないか。そもそも、除染費用は 300億円では済まない。今国や地方自治体が計
画している除染費用は3兆円。これももちろん東電負担になる。この費用を直ちに東電が負担すれば、
もちろん破綻だ。
というのは、東電の今年3月末連結決算で資産14兆9891億円、負債13兆8513億円、資産超過額1兆137
8億円なので、除染費用3兆円を直ちに負担すれば、即債務超過になるからだ。しかし、除染費用は今
後徐々に発生していくが、その間に電気料金値上げをしていくから、破綻しないというロジックのよ
うだ。いずれにしても、除染費用の負担に東電が悩んでいるのは明らかで、東電は放射性物質汚染対
処特措法を改正して全額国費での対応を自民党に要請している。自民党も、東電にこれまで世話にな
ってきたためか、法改正に前向きである。10月31日、自民党の東日本大震災復興加速化本部がまとめ
た方針では、これまでに計画された除染費用3兆円は東電負担とするが、中間貯蔵施設の建設1兆円
は 東電負担から国費投入に変更し、さらに生活再建に向けたインフラ整備も国費投入とする。この
自民 党方針が通れば、東電負担は3兆円になるが、それを電気料金値上げでカバーするから破綻で
ないというロジックはそもそもあやしい。東電が電力料金値上げで対処できるとは、競争がない独占
企業であ ることを宣言したものだ。逆に言えば、政府がいう電力自由化がまやかしになる。今国会
で、電気事業法改正案が成立するだろうが、そこでの電力改革で、大手電力による地域独占体制を見
直して新規事業者の参入を促し競争を通じて電気料金の値下げをもくろむが、東電を温存すれば、こ
れらは絵に描いた餅になってしまう。政策論としては、東電を解体し、発送電分離を先行させるほう
が、電力自 由化の早道になる。となれば、今の東電の持株会社による見かけ上の「発送電分離」よ
り、はるかにはやく電力自由化できることなる。なお、東電はすでに破綻しているのだから、法的整
理によって解体すべきという意見もある。たしかに法的整理は正論で、筆者も原発事故直後から主張
していた。ただし、今となっては、逆に不公平なるかもしれない。というのは、法的整理で損失負担
するのは金融機関であるが、すぐに法的整理されなかったために、債権保全という名目で借り入れを
社債化(法律で電力債は保護されている)するなど金融機関による悪辣な債権確保がすでに行われて
いるからだ。いずれにしても、早く東電を解体するほうがいいことはいうまでもない。
●電力自由化すれば自ずと原発はゼロに
電力自由化の流れさえできれば、後は自ずと原発ゼロになる。そのカギは原発コストの高さだ。原発
のコストであるが、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会が発表した各エネルギー源による発電コス
ト(円/kW時)はつぎのとおりとしている。
原子力発電 8.9 以上 (試算:17.5~20.5)
石炭火力発電 9.5
LNG火力発電 10.7
石油火力発電 38.9
陸上風力発電 9.9~17.3
洋上風力発電 9.4~23.1
地熱発電 8.3~10.4
太陽光発電 33.4~38.3(→2020年 14.0)
ガスコジェネ 10.6~19.7
コスト検証委は再処理・廃棄物処理費などの「バックエンド・コスト」を最終的に20兆円程度と見積
もり kW時1.0円程度のコストとはじいているが、かなり甘い計算だ。そのコストは3~4倍以上にな
るので、それだけで2.0~3.0円以上のアップとなる。次に、技術開発への補助金が含まれていない。
これは1.6円程度だが 国民にとっては立派なコスト。また、従来の政府の試算では、送電費用がコス
トに含まれていない。発送電分離をしていないのでドンブリ勘定だが、分離したらコストになる。こ
れが 2.0~4.0円程度。最後に、深刻な事故を起こしたので 事故のための保険に入る必要がある。政
府の保険があるが、これはワークしておらず、結局、電力料金値上げという形で国民負担にはね返っ
てくる。これは本来、負担を平準化する保険で対応すべきものだ。現段階でこうした保険を引き受け
てくれる再保険会社はないが 500年に1度の重大事故だとすれば、標準的な原子炉1機の被害額1兆
円に対して保険料は 0.3円程度と計算できる。今回のように福島原発事故で40兆円程度の被害額とす
れば、それをカバーするための保険料で 3.0円程度は必要だ。これらを全て合算すると、コスト検証
委員会の数字に8.6~11.6円を上乗せして 原発の真の発電コストは17.5~20.5円となる。石油火力や
太陽光を除くと、ほとんどの発電方式よりコスト高の数字だ。つまり、政府が出している資料には、
再処理・廃棄・保険・技術開発コストが書かれておらず、これらを含めて見ると、原発は、太陽光や
石油火力を除くと、コストの高いエネルギー源になる。このことは、市場原理(発送電分離)を使え
ば原子力は自ずと価格競争力がなくなり、次第にフェードアウトしていくはずだという意味になる。
また、単純な比較はできないが、米国エネルギー省資料でも同じような傾向になっている。このため、
あえて原発を続けようとすれば、政府からの特別な支援が必要になっている。はたして安倍政権はど
のように対応するのだろうか。自民党内で議論することさえ拒否し続けると、小泉氏はますます血気
盛んになる。来年4月からの消費税増税、それによる景気ダウンがある。それに、原発再稼働がから
み、汚染水管理もままならず、除染費用もまかなえない東電に対する国民の不満が、脱原発の動きと
結びついたら、安倍政権の致命傷になりかねない。はやく、原発について、ゼロと推進の両者の意見
を党内・政府内で議論したほうがいいのではないか。原発ゼロは電力自由化、東電解体と三位一体で
あるが、原発推進はなんちゃって電力自由化、東電温存なので、国民にわかりやすい対立軸になるは
ずだ。
※ オールソーラーシステムを推進する立場のわたし(たち)は、2020年の太陽光発電コストの、14.0円
/kWh は、高変換効率モジュールの普及によるコスト逓減が影響し、10円/kWh 程度まで可能だと考え
ている。一方、原発のリスクコスト試算については、福島原発の廃炉や周辺住民への被害、さらには、
産業被害の実績値が蓄積され、そこから現実的な被害想定が試算され、より確度の高いリスク想定が
可能となるだろう。
さて、 八田達夫・大阪大学招聘教授 は、冒頭「原発が再稼働されなければ、国益が損なわれると指摘さ
れてきた。この指摘は、多少安全を犠牲にしても、それらの国益を守る為に再稼働を認めるべきだという
無言の圧力を政治にかけてきた」と述べ、「しかし日本の原発の物理的安全性に関する規制水準は世界最
高水準だといわれながら、柏崎原発で設置されるフィルターベントは有機ヨウ素も希ガスも除去できない
(ただし大飯3号4号では有機ヨウ素は除去できる)。さらにはフランスで建設中の原発に設置されてい
るメルトダウン燃料の受け皿の設置義務は日本の原発にはない。一方、避難計画の策定は原発から30キロ
圏内の市町村に任されているが、一定時間内に全住民の避難を義務づける規制はない。このため、全電源
喪失した際には、放射能汚染が、30キロ地点に汚染が到達するのに数時間もかからない可能性があるにも
かかわらず、たとえば柏崎原発では、すべての道路が使えたとしても道路が混雑するため30キロ圏内全住
民の避難には30時間かかる」と矛盾を突いている。
原子力発電の識者は もし再稼働されなければ、以下のように国益が損なわれると指摘する。
① 夏の電力不足を招く
② 温暖化対策に十分に貢献が出来ない
③ 電力料金が法外にあがり、日本の産業がつぶれる
④ ホルムズ海峡封鎖のようなエネルギー安全保障の危機に対応ができない
これらを踏まえ論理展開される。
●停電対策としては、原発再稼働よりもインバランス清算制度の設立を
「夏の電力不足のために、原子力発電を再稼動すべきだ」に対し、ピーク時対策としては、不足するピーク時
だけ価格を大幅に上げ、需要を抑制する仕組みを作ることであると八田教授は主張し欧州での取り組みを次のよ
うに紹介する。
欧州では、時間帯ごとに販売電力量や購入量の計画値と価格を決めて契約する。その上で、実績値が
計画値からのずれ(インバランス)が生じた場合には、給電指令所がインバランスを精算する制度に
なっている。この精算では、その時点における電力システム全体での需給逼迫度に応じて、時々刻々
変化する価格を用いる。全体で電力が不足しているときには、精算価格は高騰するから、それに応え
て発電所は発電量を増やしたり、工場は需要量を計画値より削減したりする動機が生まれる。こうし
て、需給の過不足を市場が調整してくれる。
ところが、日本では、ところが日本の各地の発電指令所は、時々刻々の需給逼迫度を反映した価格による
インバランス精算メカニズムを持っていない。このため日本の新電力を含めた電力供給会社は、価格を固
定した上で需要家に好きなだけ使わせる契約をせざるを得ない。結果的に需要家の電力需要量の増大に追
従して、いくらでも発電してきた。このため、新電力を含めた電力供給会社は、電力需要が急増する夏の
一定時間だけのために、膨大な発電予備力を用意してきた。原発がすべて止まっている現在でも、既存の
発電の能力でまかなえているのは、このためであると指摘した上で、現行の固定価格の下での追従発電の
仕組みを業界が改めようとしない理由として2つの点を指摘する。
(1)この仕組みは、大量取引をすることによって取引量あたり必要な発電予備力を少なくできる電力会
社を競争上きわめて有利にしているからである。
(2)この仕組みは、毎夏に電力危機を作り出してくれる。電力危機がなくなれば原発関連産業の存在意
義が大きく失われるからである。
●二酸化炭素排出量対策は原発ではなく費用対効果の高い炭素税で
「原発は地球温暖化対策として不可欠だ。日本の温暖化対策公約を実現するためには、原発を再稼働しな
ければならない」と言われるが、国内で二酸化炭素排出量抑制の基本的な対策は、炭素税の導入によって、
発電が生み出す二酸化炭素がもたらす社会的コスト分を、その発電の追加費用として利用者に負担させる
ことことでもって、対策の柱とすることを提案する。ところが日本政府は、炭素税ではなく、原発や再生
エネルギーに対してさまざまな補助を与えるという手段を二酸化炭素排出量抑制策として用いてきた。こ
れらのゼロエミッション発電への補助金は、たしかに化石燃料による発電を一律に不利にし、再生エネル
ギー発電以外を有利にするが、炭素税は、それだけでなく、輸送用や産業用のエネルギー消費をも抑制し
石炭や石油から天然ガスへの転換をも促進し、火力発電における技術開発を促す。炭素税は、原発補助に
比べて費用対効果が高い地球温暖化対策であり、このようなメリットを持つ炭素税に対しては「炭素税の
導入がもたらす税負担の増加が、日本の産業を衰退させる」という炭素税批判も根強いが、炭素税率の引
き上げがもたらす税収を用いて法人税減税を行えばこの問題はなくなる。これまでCO2をあまり排出してこ
なかった企業に関しては、法人税減税がむしろ活性化のきっかけを与えるだろうと提案し、国内の特定業
界への利益供与でなく、日本で金を使うのではなくて、二酸化炭素排出抑制技術が進んでいない外国で使
うべきであり、今まで原子力産業への利益誘導という目的もあって 、国際的に異常に厳しい二酸化炭素削
減の目標は取り下げ、炭素税の税率を国際水準に引き上げる工程表を明らかにした上で、炭素税導入で得
られる税収は、法人税減税の財源に用いるべきだと提案する。
●上昇した電力価格に合った産業構造のシフトこそ課題
「原発が再稼働できないと、安い原発が使えなくなるから、電力価格が上がることが問題だ」と指摘され
ることが多い。原発が再稼働できないと、電力料金はどのくらい上がるのだろうか。原発がない沖縄電力
の価格は、原発が稼働していた時の本土より約2割高かった。これが一つの目処だといえよう。日本では
原発の真のコストを将来世代に先送りにしていたために、原発を安く見せかけてきた。もし、原発の事故
コストや使用済み燃料の処分費用を算定し、原発で発電された電力を使用した世代に負担させるように価
格付けをすると、日本の大半の原発で発電される電力は、化石燃料発電に電力価格競争で打ち勝てなくな
る。世界でもまれに地震が集中している日本では、保険コストがきわめて高い。その上、狭い国土で使用
済み燃料を処分することが難しいから、処分の費用も結果的には高く。安全基準を達成した原発に対して
も、相当な保険料と使用済み燃料処分料を課さなければならない。その上で、電力会社が再稼働するかど
うかを判断することになると指摘。これは前出した高橋洋一が保険料ホストが低いという指摘とも一致す
る。一方、原発が再稼働しない為に、化石燃料の輸入が貿易赤字を引き起こしていると言われているが、
全国の原発を再稼働しても貿易収支には、7~8兆円の赤字が残ると試算されているから、資本蓄積が進
めば対外貸し付けが増え、貿易は赤字になり、その代わりに外国からの知財収入や資本所得が増大してい
くのは必然であり、将来世代へのつけ回しにより、化石燃料の輸入量を人為的に下げるより、サービス輸
出や海外からの直接投資を妨げている要因を取り除くことの方がはるかに重要であると主張している。
●原発はエネルギー安保対策が万全になるまで限定的に使うべき
この議論は、わたし(たち)の縮原発派と立場は同じで、極めて常識的な考え方だ。「ホルムズ海峡封鎖
に備えるためには、原発が不可欠だ」との指摘には、ホルムズ封鎖などの危機のためにまず準備すべきは、
需要逼迫に対応して価格が上がるようにインバランスの採算メカニズムを確立すること、そして、長期に
わたる価格上昇は、低所得者にきつい。これを緩和するために、政府が金をかけてリスクヘッジをする必
要がある。まず石炭や石油の備蓄をすることが重要である。つぎに、アメリカやカナダから天然ガスを輸
入できる体制を作ったり、サハリンからのガスパイプラインを建設するなどして輸入元を多様化すること
も有用である。これらの体制が整えば、原発がなくてもホルムズ封鎖のような事態に対処できる。また、
これまでは、エネルギーセキュリティは原発依存であったから、直ちに原発をすべて廃炉にしてしまうと
危機に備える態勢は整っていない。したがって、石油や石炭の備蓄やガス輸入の多様化などのエネルギー
安保対策が万全になるまでの当分の間は、万が一の事態に備えて原発を稼働できる態勢を作っておく必要
があると述べているが、ここら辺の段階は具体的な運用レベルの議論を持つ他ない。
●国は原発国有化のオプションを電力会社に示すべき
この議論に関しては、このブログでも記載したことがあり、昨年4月において原発部門の」切り離し、国
有化かと電力制度や会計基準の見直しなど盛り込んだものを提案すべしと指摘していたが、なし崩し的と
いうか、先送りにしてきたのが現状だと考えていことでもあり割愛するろして、八田教授の問題提起を整
頓記載すると、次の5点となり、次のようにまとめるている。
1.インバランス精算制度の設立により徹底した停電対策をとる。
2.炭素税率の引き上げや途上国への技術援助によって費用対効果の高い地球温暖化対策を行う。
3.原発に対する事故保険料や使用済み燃料処分費用などを公害税として課金する。
4.自由貿易を推進し、比較優位の変化に伴う衰退産業の出現を受け入れる。
5.望する電力会社に対しては、エネルギー安保の目的で国が原発を購入することとし、その原資を環境
税、エネルギー税、譲渡益税の死亡時課税などでまかなう。
「停電対策も、温暖化対策も、経済対策もすべて原発再稼働で達成しよう」という識者は多い。しかし
政策目的のそれぞれに対して、ふさわしい政策手段を採用することによって、再稼働より的確にそれ
らの政策目的を達成できる。国は、原発を当分の間維持する目的をエネルギー安保に絞って、政策体
系を作る必要がある。我が国は、原発の真の費用の負担を将来世代に先送りすることによって、原発
を安く見せて、原発産業を含めた重厚長大産業を維持してきた。この政策は日本の真の比較優位に反
する産業を温存してきた。費用負担の先送りを続けるわけにはいかない。ただし、効率的資源配分の
ためには、今後の電力料金は、実際の発電に要する追加費用に見合った水準に抑える必要がある。そ
れを達成するためには、原発を国有化すべきだ。それには財源が要る。日本における原発関連の最大
の政治的課題は、電力料金を不必要に上げることなく過去の原発政策の後始末をするための財源を確
保するため新税を創設することである。
以上のように、わたし(たち)の縮原発派と八田教授あるいは、また高橋教授の提案は同調するものと
考える。
高糖分トマトのタルト?そんなもの昨年あったけ?そんな時空間にわたしたちは住んでいる。
なんとも奇妙でワクワクする時代にいるのだ。そんなこと想っていたら、頬っぺを抓ってしまっていた。