極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ビル・ゲイツのエネルギーファンド

2018年09月28日 | マネー行動学

  



                                             

第31章 軍隊の本質
「雄」の本質を把握し記うえで「雌」の立場に身を置くならば、万物の源泉となることができよう。
武器は不吉な道具だ。それは、片寄ったはたらきしか待たない。だから「道」を体得した聖人は武
を使わない

君子は、ふだんは左を上位とするが、武器を使うときだけは、右を上位とする。武器は不吉な道具
だから、もともと君子の使うべきものではないが、やむを得ずに使うときには、無欲でなければなら
ない。
したがって、戦に勝っても、名誉とは考えない。それを名誉と考える者は、生まれついての人殺し
である。人殺しは、何をもくろんでも、人々に受けいれられるわけがない。祝いの席では左を上位と
し、葬儀の席では右を上位とする。それが世間の資質だ。ところが軍隊では、副将軍が左に坐り、大
将軍は右に坐る。つまり軍隊は、つねに葬儀の作法にならっているわけだ。
人を無致に殺すがために、戦に勝っても、喪に服し、悲しみの涙を注ぐ。これが軍隊本来の姿なのだ。

〈君子〉 治者階級に屑する者のこと。老子は理想的人格を「聖人」ということばで衷わし、「君子」
はそれより一段低い意味に用いている。
〈左を上位とする〉古代において左右いずれを貴んだか、説がわかれていて一定しない。ただ、南方
の楚の国では左を貴んだらしいという
ので、老子を南方出身と見る学者もいる。
兵は不祥の器 この章は、老子の作といえるかどうか、古来、疑問視する学者が多い。武器は不吉な
道具であるということぱは、「三略」「尉綜子」など兵家の書にも見られるので、兵家言だろうとい
うのである。
「不祥之器」は「凶器」ともいう。武器をさして凶器と呼ぶのは、ここから出ている。わが国では
凶器」ということばを使うのは、犯罪に関係する場合だけであるが、中国では、武器そのものを不
吉視することが、古来の常識であった


Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”
【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代

特集|ビル・ゲイツが着目するベンチャー企業

  Sept. 26, 2018

今年8月、Quartzは「『Form Energy』と『Quidnet Energy』という2つの企業にBEV――さまざまな
慈善事業を行っているMicrosoft創業者のビル・ゲイツは、Breakthrough Energy Ventures(BEV)」という
エネルギー問題に取り組む企業に投資するファンドを設立。10億ドル(約1100億円)規模の巨大なフ
ァンドは、「地球の気候変動に対処する革新的なベンチャー企業に投資する」という方針を掲げる―
―が投資することを決定したと報じ、今回、新たに7つの企業がBEVの投資先として明らかになり、巨
大エネルギーファンド(1100億円規模)の投資先第一陣の内訳リストが公開され話題となっている。
尚、BEVはビル・ゲイツの他にインドの実業家であるムケシュ・アンバニ、Amazon創業者のジェフ・
ベゾス、元ニューヨーク市長であるマイケル・ブルームバーグ、イギリスの実業家であるリチャード・
ブランソン、アリババ創業者のジャック・マー、ソフトバンクグループ創業者の孫正義といった世界
的な億万長者の資金提供によって運営されている。

ゲイツは以前から多くの環境問題に対処するエネルギー関連のスタートアップに投資を行ってきてり
ことをこのブログでも掲載してきた(例えば、核融合発電、コンパクト原子力発電など)たが、その
過程で、エネルギー関連ベンチャー投資は、ソフトウェアベンチャーへ投資とは違う。ということに
気づく。エネルギー関連で革新を起こすには大きなブレークスルーが必要であり、長期間にわたり莫
大な投資を行い、ようやく「タフな技術」を得ることができること。また、重要な技術を持つ研究者
に支援を行うことで、研究者から起業家へと育てるという視点も必要であることに。と、これは業界
常識なことであるが。

BEVのエグゼクティヴ・ディレクターのローディ・グイデロは、我々のファンドは忍耐強く柔軟な思
想を持つ、ユニークなファンド。BEVは投資するに値するベンチャーを探すため、140もの学術機
関や大企業、そして科学者や技術者とのネットワークを築き、重要技術に関する膨大な専門知識を収
集している。BEV から投資を受ける企業は、科学的に可能であると考えられる技術をBEVに開示、少
なくとも>1年間に5億トンの地球温暖化ガス削減できることを示さなければならないと話する。

ベンチャー投資金額は開発の段階やニーズに応じて変化し、1企業あたりおよそ20万ドル(約2200
円)から2000万ドル(約22億円)
BEV は各企業にどの程度投資を行ったかは秘密にだが、これまでの
総額は1億ドル(約110億円)程度で10億ドルというファンド全体の規模からすればまだまだとい
ったところ。ベンチャーが必要な全ての金額をBEVの投資ではないが、BEV投資を受けたと報道され
ることでベンチャーへのさらなる投資を促すとだろうと期待を寄せる。



● QuantumScape

電気自動車で現在主流になっているリチウムイオン電池以上の出力特性を持ち、電気自動車の進化に
欠か
せないと多くの研究者が考える「全固体電池」の開発を行うスタートアップ。ここは、リチウム
だけでなく、カリウムや空気-金属電池を含め、30年前では考えられないような熾烈な開発の展開
が続いている。あたかも全固体電池を制す者は世界を制すである。
 

関連特許

 Commonwealth Fusion Systems

高温超伝導を利用した核融合炉の研究を行うスタートアップ

関連特許

 ● QuantumScape 

従来の窒素肥料に代わる微生物肥料を開発し、窒素流出量とオゾン層を破壊する作用を持つ亜酸化窒
素の排
出量を抑えるバイオテクノロジー企業。

関連特許

要約 非マメ科植物における窒素固定を増加させる方法が本明細書中に開示される。この方法は、植
物を複数の細菌に曝露することを含むことができる。 複数の各メンバーは、外来性窒素の存在下で
細菌が大気中の窒素を固定することができるように、細菌の窒素固定または同化遺伝子調節ネットワ
ークの1つまたは複数の遺伝子または非コード化ポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺
伝的変異を含む。 細菌は属間の微生物ではない。 さらに、プラナの細菌は、植物中の固定窒素の1
%以上を産生する。

  

 CarbonCure

コンクリートに二酸化炭素を注入して、従来のコンクリートよりも強度の高いコンクリートを作る企業。

関連特許

 ❏ US9738562 Methods and compositions for concrete productio 

要約

本発明は、混合中のセメント混合物の炭酸化に関する組成物および方法を提供する。 炭酸化は、固定ミキサ
ーまたはレディーミックストラックのドラムのような運搬可能なミキサー内にあってもよい。

 ● Fervo Energy

コンピューターモデルと水平掘削技術を駆使し、地熱発電のコスト削減に取り組むスタートアップ。

● DMC Biotechnologies

微生物からバイオ燃料などの、高付加価値を持つ化学物質を作り出す企業。

関連特許

 Zero Mass Water

太陽光とバッテリーの力を利用し、空気中から水を取り出すパネルを販売する企業。

 ● Form Energy

数週間もしくは数カ月もの長期間にわたり、エネルギーを貯蔵できる2種類のバッテリーの開発を行
うスタートアップ。
フォーム・エネルギーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授や元テスラ
のエンジニアが率いるスタートアップ。大容量のエネルギーを長期間蓄電できる、超高効率バッテリ
ーを開発している。 バッテリーのコストは一般的に、1キロワット時(kWh)のエネルギーを蓄電す
るコストで測られる。クォーツによると、フォーム・エネルギーは、1kWhあたり10ドルしかかか
らないバッテリーの開発を目指している。現在、最も低コストのバッテリーでも1kWhあたり約200
ドルかかる。

関連技術論文

New battery could store wind and solar electricity affordably and at room temperature ScienceDaily July 19, 2018

 

 Quidnet Energy

地下からくみ上げた水を利用して水力発電を行う技術を開発し、水力発電の革新を目指す企業。

関連特許及び情報

 

 Aug. 25, 2016

以上、「いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代」のビル・ゲイツ版である。後は個別実行ということである。
よくぞ、10年間頑張ってきたと、腑に落とすこととなった。 



 ● 今夜の一枚

台風24号を目前にし、町内のゴミ集積場が過去の台風で倒れたために、事前に雨の降る中、赤い目
印をけ
て予め倒しておく作業をに行う。これをして全国各地を推して知るべしであろう。これは『引
き寄せられる混沌の嵐(=環境リスク本位制)時代』の序章に過ぎずであろう。

  

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庭に出でたり白菊の花

2018年09月27日 | 時事書評

  



                                             

第28章 「大制は割かず」
「雄」の本質を把握し記うえで「雌」の立場に身を置くならば、万物の源泉となることができよう。
そうなれば、「道」にたがうことなく、無心にしてあらゆるものを受けいれる赤子の状態に返るのだ。
「白」の本質を把握したうえで「黒」の立場に身を飯くならば、万物の規準となることができよう。
そうなれば、「道」と一体になって、限りなく広い原初の状態に返るのだ。
「尊貴」の本質を把握したうえで「卑賤」の立場に身を置くならば、万物を包摂することができよう。
そうなれば、「道」の全きはたらきを得て、自然そのままの境地に返るのだ。
手を加えない原木は、すべて道具のもとである。「道」を体した聖人は、すべての人を統率する。
真によく作るとは、手を加えないことである。

第29章 取ろうとすれば失う
天下を取ろうとして策を弄する者に、天下が取れたためしはない。天下とは、まことに役いにくいも
のである。まとめようとすれば、バラバラになり、追いかければ、逃げる。思うままに動かそうと作
為しても、勣かせるものではない。
「先」があれば、「後」がある。「縫」があれば、「急」がある。「強」があれば、「弱」がある。
「上」があれば、「下」がある。およそ物事には、必ず対立する二面があって、一方に片寄れば必ず
他方に転化する。だからこそ、聖人は、物事の一面に執着せず、作為を排してただ自然に従うのだ。

第30章 強いものは、必ず衰える

「道」にのっとって君主を助ける者は、武力に頼って覇者となる策を取らない。むしろ兵を引いて、
国と争うまいとする。軍の行くところ、土地は荒れていばらが生える。大戦争のあとには、必ず飢饉
が来る。だから真の戦上手は、戦いの目的を果たせばただちに矛を収めて、むやみに勇名を馳せよう
とはしない。目的を果たして、自負せず、功を誇らず、心馴らない。戦いはやりをえず戦うのみ、勝
っても強いと考えない。
強いものは、必ず衰える。この道辺を知らず、強さに執着するのは、「道」
にはずれた行為である。「道」にはずれた行為は、長続きせぬものだ。

不道は早く已む 戦争に関しては、このほか30、46、69の各章がある。作4を否定する老子は、
当然、最大の作為である戦争を否定する。力と力の対決による支配ではなく、エネルギーのコントロ
ールによる自然の勝利を説く飽ヂ」の兵法は、この道家思想と根底を一にしている。



【樹木×下の句トレッキング:ヒサカキ×庭に出でたり白菊の花】


   寂しさに 秋成が書 読みさして 庭に出でたり白菊の花  北原白秋 

※雨月物語の「菊花の契」:丈部左門という 武士が、道中病気で困っていた赤穴宗右衛門を助け、
それより兄弟の契を結ぶ。宗右衛門が去るにあたって、菊花かおる重陽の日には必ず訪ねてくると再
会を約束して去ったがまもなく捕らわれの身となる。逃れられないので自殺して亡霊となり、約束の
日の夜更けようやく左門の所へ訪ねて来る。

ヒサカキ(柃 U+67C3、Eurya japonica)は、ヒサカキ属の常緑小高木。普通は樹高が4~7メートル程度
に成長。葉はやや倒卵状楕円形で、丸い鋸歯がある。葉は厚みがある革質で、表面は艶が強い。葉の
先端は、ほんの少しくぼみがあり、枝は横向きに出て、葉が左右交互にで、平面を作る。
花期は3月
から4月、枝の下側に短くぶら下がるように多数咲く。花は白っぽいクリーム色で壺状で、強い芳香
を放つ。果期は10~12月。
本州、四国、九州、沖縄に分布し、数が多く照葉樹林ではどこの森に
も生える。低木層にでるが、直射光にも強く、伐採時などにも耐え、栽培されることも多い。
この植
物の性的システムはよくわかっていないといわれる。雌雄異株と図鑑に記されることがあるが、実際
には雄花と雌花の他に両性花があり、個々の株では見分けがつき難い。現象そのものが把握できず、
仕組みなどは未詳明。尚
ビシャコ、ビシャ、ヘンダラ、ササキなど別名があり、墓・仏壇へのお供え
(仏さん柴)や玉串(「榊」が手に入らない関東地方以北)などとして、宗教的な利用が多い。これ
は、本来はサカキを使っていたものの代替であるといわれ、名前も榊でないから非榊であるとか、一
回り小さいので姫榊がなまったとかの諸説あり。
 

※ ヒサカキ属(Eurya:モッコク科に属す):常緑の小高木または低木、葉は茎に互生し、短い葉柄
があり、縁に鋸歯がある。花はふつう単性で雌雄異株であるが、両性花をつける株もある。世界に約
100種が知られ、主に東アジアからヒマラヤ、東南アジアに分布する。オセアニア、中央アメリカ、
南アメリカにも少数種が知られる。

 

【ワンポイント英熟語#OnePoint #Eng'idiomatic】 

in advance  
~あらかじめ、前もって(=beforehand )
"Look up words in advance, before you attend a class."
(「授業にでる前に、あらかじめ単語を調べなさい」)

     

【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅹ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
第6節 負の所得税の概念図
ここで負の所得税について概念図を用いて説明しておこう。図2‐1で横軸は所得、縦軸は課税後の
所得を表す。すると、所得がゼロの人でもベーシック・インカム10が与えられるので、課税後の所
得は10となる。課税と言っても給付を得ているので、負の所得税(マイナスの税だから給付となる)
と言っているわけである。この人が働いて所得を得ると、新たに得た所得に30%の課税をされるが(
ここでは税率30%の課税とした)、BIの給付があるので、33・3の所得を得るまで、課税額は
マイナス、すなわち給付金を得る。所得が33・3を超えると正の所得税を払うことになる。ここで
廣軸の所得ごとに同じ数の人がいるとすると、課税額のマイナスとプラスの合計がゼロになるのは、
所得が0から66・6の人までの正負の課税額を合計したときである。もちろん、所得は平等に分布
されているわけではなく、真ん中の50あたりの所得の人が多いわけだが(不平等な国では右に偏っ
たベル型になる)、BIによる税収の低下は大きなものであると予想できるだろう。


ただし、そうなるのは、BIの水準を大きくしたからである。ここで横軸の所得ごとに同じ数の人がいるとすると、
あるいは、所得五〇を中心にきれいなベル型の分布をしているとすると、所得の平均は50となる。フリードマ
ンが想定しているように、BIを平均所得の10分のIとすれば(そう考えることができる理由は後述)、それは5
となる。
この場合を図示したのが、図2‐2である。BIの水準を5とすれば、所得が16・6以上の人から
正の税金を支払い、課税額のマイナスとプラスの合計がゼロになるのは所得が33・2
のところであ
る。BIによる税収減がわずかでしかないと直感的に理解されるだろう。

ただし、そうなるのはBIの水準を低くしたからである。BIの水準を高くしたままで税収を確保す
るためには、当たり前であるが、税率を高くすればよい。BIの水準を10のままに
して税率を50
%にすると図2‐3のようになる。

こうすれば、所得が20以上の人から正の税金を支払い、課税額のマイナスとブラスの合計がゼロに
なるのは所得が40のところである。税率を土げれば、より高いBIと税収の確保が
両立するわけで
ある。

以上述べたことは当たり前のことにすぎない。より高いBIの給付を行うには、より高い課悦が必要
になるということである。
 負の所得税論者は、所得の低い人には給付するが、所得の高い人にはあ
たかも給付があるか
のように計算して課税すると考えていたのであって(その計算式は、例えば、「
税額=0・3×
所得-5000ドル」、「課税後の所得=0・7×所得+5000ドル」である)、
実際にすべて
の人にBIを給付することを考えていたわけではない。したがって、負の所得税とBI
は同じ
ものではないという批判かおるかもしれない。しかし、現実に配ってから課税することにコス
トがかからなければ、両者を区別する必要はない。そして、単に各人の口座にBIを振り込むだけで
あるから、配ってから課税することにコストはほとんどかからない。さらに、そうする
ことに追加的
な利益があることを第3章の「BIの付随的利点」の項で説明する。

第7節 自由な社会と負の所得税
なぜ、フリードマンは「負の所得税」という形での社会保障制度を考えたのだろうか。それはフリー
ドマンが、自
由な社会では、国家は人々にあれをしろ、これをしてはいけないと指示するべきではな
い、国家はその成員が
貧しいからといって、あれをしろ、これをしろと言うべきではない、と考えて
いるからである。すなわちBIは、福
祉制度につきものの、国家の家父長主義的(ターナリスティッ
)な干渉を避けることができるゆえに望ましい
のである。さらに、経済効率のうえでも望ましい。
しかし、所得再分配は自由の侵害になると警告を発している。

フリードマンはこう書いている。

 自由な社会が他の社会より多くの物質的平等をもたらすのはよろこばしいことではあるが、自由
 主義者にとってそれはあくまで自由社会の副産物であって、自由主義を正当化す
るものではない。
 ……貧困をなくすための政府の事業も、多くの市民にとっての共通目標
を達成する効率的な手段
 として、自由主義者は是認するだろう……

 ここまでは、平等主義者も同じであろう。だが、平等主義者はさらに一歩を踏み出そうとする。
 彼らが「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」ことを認めるのは、目標を達成
するための効率
 的な手段だからではなく、「正義」だからなのだ。この点に立ち至ったと
き、平等は自由と真っ
 向から対立する。ここでは平等か自由のどちらかしか選べない。こ
の意味で、平等主義者である
 と 同時に自由主義者であることはできないのである。(フリ
ードマン前掲書、353~354
 頁)

フリードマンの理解によれば、日本の福祉官僚は明らかに平等主義者であって自由主義者ではない(
フリードマンによれば、一人当たりのBIは年300ドルである。これは、『資本主義と自由』の出
版年である1962年の金額である(ただし、これはフリードマンが読者にイメージを与えるために
挙げた数字であって、慎重に検討したものではない)。1962年のアメリカの一人当たりGDPは、
名目で3244ドルであるから、BIはその9・2%ということになる。現在の感覚で考えるために、
2013年の一人当たりGDP、5万3176ドルの9・2%とすると4892ドルになる。要する
に、約5000ドル、日本円にして約50万円ということになる。これは一人当たりGDPの約10
分の1がBIとして相応しいと考えているということになる。

 NDC分類 330.4

なお、その後、フリードマンは、1979年にBIを4人家族で3600ドルとしている(ミルトン・
フリードマン、ローズ・フリードマン『選択の自由-自立社会への挑戦』第4章、西山千明訳、19
80年、日本経済新聞社、原著1979年)。これを大人は子どもの倍と考えて計算すると、成人一
人当たり1200ドルである(大人1200×2+子ども600×2=3600)。1979年の一
人当たりのGDPは、名目で1万1695ドル、2013年は5万3176ドルと4156ドルにな
っている。したがって、1200ドルは現在の感覚では5456ドルとなる。フリードマンは、19
62年でもじ9年でもほぼ同じような金額をイメージしていたことになる。

               原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』


   Milton Friedman

IB原理については、また後日考察掲載するとして、久しぶりのM・フリードマン。親ポストケイジ
アン×マネタリスト×コンヴィヴィアンなわたしには、一線を画す想いが懐かしい。

ところで、日本のバブル景気について、1980年代に日銀の顧問も務めたフリードマンは「日本は、円
通貨の供給を増やしてドルを買い支えた結果、通貨供給量の急増を招いた。私はこの通貨供給量の急
激な伸びが『バブル経済』を引き起こしたと見ている。日本銀行は長期間にわたってこのような金融
緩和路線をとり続け、納税者に莫大な損害を与えた。最後には日銀もブレーキをかけたが、今度は急
ブレーキをかけすぎた。金利を引き上げ、通貨供給量の伸びを急激に抑え、深刻な景気後退を引き起
こしてしまった。これはどんなによい意図から出たものであれ、不適切な金融政策は悲惨な結果をも
たらし得るという最たる例だ。日銀は誤りを正すのが遅くて、そのためにリセッションを長引かせ、
深刻なものにしてしまったように思われる」と指摘している(ミルトン・フリードマン「世界の機会
拡大について語ろう」 ダイヤモンド・オンライン 1994.01.01
)。ミクロ的には銀行業務のの証券化
の弊害(法規違反)も含まれるが、マクロ政策はバブルの反動制御の遅れにあった。いまでも「北新
地に並ぶタクシー行列の夜景」がよみがえるほど、流行病(はやりやまい)に犯されその後遺症は長
く続くことになる。
                                      この項つづく 



【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代

 
● 太陽電池駆動の皮膚貼付け型心電計測デバイス開発

 Sep. 27, 2018

9月27日、理研らの研究グループ(専任研究員、染谷隆夫チームリーダー)は、「超薄型有機太陽
電池」で駆動し、心電波形を計測する「皮膚貼付け型心電計測デバイス」の開発に成功したことを公
表。この
研究成果は、生体情報の常時モニタリングなど、次世代の自立駆動型センサーデバイスの実
現につながると期待されている。それによると
、フレキシブルな超薄型有機太陽電池の開発に取り組
み、作製した太陽電池のエネルギー変換効率は10.5%に達し、これまでのフレキシブル有機太陽
電池の世界最高効率を更新。また同時に、光入射角度依存性を低減することにも成功。これらは「ナ
ノグレーティング構造」を超薄型太陽電池上に形成する技術の確立による。次に、この太陽電池を皮
膚貼付け型センサーと集積化することで、心電計測デバイスを外部電源なしに駆動させ、精度良く信
号を取得することに成功する。これにより電力の消費や人体への装着時の負荷を気にせずに、連続的
に生体情報取得の要素技術を実現させた。
 

"Self-powered ultra-flexible electronics using organic photovoltaics with nanoscale grating patterning",
Nature, 10.1038/s41586-018-0536-x

 

【ソーラータイリング事業篇:風景写真を描写したシースルー太陽電池】

9月6日、テントなど膜状構造物メーカーの太陽工業は、光を透過する薄膜太陽電池(シースルー太
陽電池)に写真画像を描写する特殊加工技術を用いた「モニュメント」を神奈川県新庁舎に設置した
ことを公表。シースルー太陽電池パネルは、光を透過しない太陽電池にレーザー光を照射し、薄膜太
陽電池を部分的に除去することで透明性を得る。加工時に照射するレーザー光をコントロールするこ
とでパネル内にデザイン描写が可能になる。これまではイラスト風の描画加工の実績が中心だった。
今回設置したモニュメントでは、複雑な濃淡を含む写真をもとにリアルな描写加工を行った。東西南
北の4面に4枚ずつシースルー太陽電池パネル(1200×998mm)を合計16枚設置し、神奈川県庁を中心
に東西南北の各方面にある名所の風景をモノクロ写真風に再現。

 Sep. 27, 2018

鉄骨造でサイズは縦横5×5.1m、高さ3.76m。太陽電池の最大出力は約1.36kW。設置場所は新庁舎エネ
ルギーセンター棟3階。設計は神奈川県総務局財産経営部施設整備課、施工はティエスイー。3月末
に竣工。太陽工業は、1996年にシースルー太陽電池パネルの販売を開始。これまで公共施設や大型商
業施設を中心に約200 件の導入実績がある。図柄や写真などの描写機能を加えたことで、今後デザイ
ン性を生かした情報発信用途への採用拡大が期待されている。



※参考特許:特開2018-030967 フッ素樹脂膜材、及びその製造方法 太陽工業株式会社

  

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蟻酸の経済原理

2018年09月26日 | 環境学・環境思想

  



                                             

第27章 自然な生き方
自然な動きは、動きのあとを留めない。自然なことばに、失言はない。自然な計算に、算盤はいら
ない。自然に閉じた門は、カンヌキなしで閉じたのだから、開きようがない。自然に結ばれた繩は、
結び目がないから、解きようがない。
聖人は、あらゆる人を自然な生きかたにみちびく。したがって、聖人のもとでは、捨てられる人は
ない。また、あらゆる物を自然なありかたにみちびく。したがって、聖人のもとでは、捨てられる
物はない。これが、明であって明を忘れた無為自然の境坤である。
だから、「道」を知る者は、「道」を知らぬ者を救い、「道」を知らぬ者は、「道」を知る者に救
われる。しかもたがいに救ったことに気づかず、救われたことに気づかない。
智者の作為をもってしては知り得ぬ境地、これが「道」の至妙な極意である。



 Sept. 23, 2018
【人為的温暖化制御事業篇Ⅱ:最新ギ酸燃料電池技術】
●大気中の二酸化炭素回収と炭化水素合成と燃料電池
前日のつづき。アウディが開発した合成ディーゼル燃料は、水を蒸気を形成するように800℃以
上に加熱し、高温電気分解により水素と酸素に分解➲高温で圧力をかけ、二酸化炭素と反応させ
Blue Crude」(フィッシャー・トロプシュ法)で長鎖炭化水素化合物(液体)を精製➲これをさ
らに改質良し、硫黄および芳香族炭化水素を含まず、高い発火性を備えた化石燃料に近い「eディー
ゼル(
生成全工程のエネルギー変換効率は70%)を作りだす。また、ガソリンなどと混合して使
用することも可能。15年4月20日に開催されたセレモニー(下写真)で、アウディA8に5リッ
トルの「eディーゼル」を給油している。つまり、米国、英国、仏蘭西、伊太利などの植民地主義
の石油争奪の後塵をきした独逸の世界大戦前の技術が再生可能エネルギーをベースに再登場する。
ここで2つの疑問が生じる。1つはコスト、2つめはBlue Crude」の大元の二酸化炭素と水素で
生成されるギ酸の直接燃料化である。


 May 12, 2015

前者は、量産効果でリッター当たりのコストがどの程度まで逓減するのかというもので、後者はギ
酸燃料電
池による内燃機関(レシプロエンジン)代替化であり、燃料化工程の革新(太陽光の直接
変換技術の導入)
によるギ酸の製造コスト逓減である。これをもう少し技術事例を参考に考えてみ
る。その前に、クラムワーク
ス社は大気中へ排出される全二酸化炭素の1%の回収を目標にしてい
ることであるが、日本などの世界各国が連携すれば残りの99%も簡単に実現できるのではないか
と考える。

● 二酸化炭素のメタン変換事例
❏ 特開2018-126090 プロセスガスの改質方法およびプロセスガスの改質装置

まず製鉄工程で発生する二酸化炭素回収技術をクローズアップ。製鉄工程で発生する複数種類のプ
ロセスガスに含まれる二酸化炭素と水素を、微生物反応によってメタンに変換するプロセスガスの
改質方法に関し、特に、嫌気性微生物である水素資化性化学独立栄養性メタン生成菌を利用した改
質方法の特許事例。

この事例は、プロセスガスの改質方法を実施するためのプロセスガスの改質装置に関する特許であ
り、製鉄所などで行われる製鉄工程、例えば、高炉ガス(Blast Furnace Gas、BFG)、コークス炉ガ
ス(Coke Oven Gas、COG)、および転炉ガス(Linz-Donawitz converter Gas、LDG)といった、様々
なプロセスガス(副生ガスともいう)が発生し、それらのプロセスガスには二酸化炭素が含まれる。
また、それらのプロセスガス、特にコークス炉ガスには、メタンや一酸化炭素などの可燃性成分も
含まれ、製鉄所における焼結炉や熱風炉などの各種工程における燃料としても利用されている。

プロセスガスを燃料として用いた際に排出されるガス(
プロセスガスを燃焼させたガス:燃焼排ガ
ス)には、より高濃度の二酸化炭素が含有される。このように、製鉄所では、二酸化炭素を含有す
るガスを多量排出されるため、地球温暖化防止から、二酸化炭素排出量抑制技術、なかでも、二酸
化炭素を大気に放出せずに回収して有効活用する技術が求められ、二酸化炭素回収し活用する技術
の一つに、二酸化炭素を、有価物であるメタンへ変換する方法がある。メタンは、二酸化炭素と水
素を反応物質として、下記反応式(1)で表されるメタン化反応により得られる。
   CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O …(1)
上記二酸化炭素と水素のメタンの変換は、化学的方法や生物学的方法により進行することが知られ
ている。例えば、特開2015-124217号公報では、ガス中の二酸化炭素と水素を、触媒を使って化学的
にメタンに変換する方法が提案されていが、メタネーション反応器で副生した一酸化炭素をシフト
反応で二酸化炭素へ変換し、さらに、シフト反応器の後段にメタネーション反応器を設置しシフト
反応生成した二酸化炭素を反応物質としてメタン生成する特徴をもつ。また、特開平6-169783号公
報では、太陽エネルギーを利用して水を電気分解し水素を発生させ、水素を水素資化性メタン生成
菌に供給し、生物学的に二酸化炭素をメタンに変換する方法が提案され、特開2013-192547号公報で
は、共培養した光合成細菌と水素資化性メタン生成菌により、生物学的に二酸化炭素をメタンに変
換する方法が提案され、この方法では、光合成細菌である紅色非硫黄細菌が二酸化炭素と水から水
素を生成し、発生した水素をメタン生成菌が利用して二酸化炭素をメタンに変換。この様に二種類
の微生物を同一溶液中で同時培養する。

また、特開2005-168368号公報では、嫌気的微生物を使い生物学的に二酸化炭素をメタンに変換する
方法が提案されて、バイオマスを栄養として培養した嫌気性微生物の培養物に二酸化炭素含有ガス
を導入して、微生物反応で二酸化炭素をメタンに変換することを特徴とする。

しかし、特開2015-124217号公報に記載されているような化学的メタン化方法では、化学的に安定な
物質である二酸化炭素を反応させてメタン化反応進行に、触媒を用いる必要があり、高価なプロセ
スとなり、原料として供給される二酸化炭素と水素の組成比が化学量論比から外れると著しく反応
効率が低下するため、反応効率を維持するためには、二酸化炭素と水素の比率を厳密に制御する必
要がある。さらに、メタン化反応進行に必要なエネルギーが大きく、製造するメタン以上のエネル
ギーをメタン化反応で消費する問題
がある。一方、微生物学的メタン化方法は、触媒反応と異なり
常温・常圧下で進行し、低エネルギーかつ低コストなプロセスとなり得るが、水素資化性メタン生
成菌に供給する水素の製造方法、すなわち、水素資化性メタン生成菌は、水素ガスを唯一の電子供
与体、二酸化炭素を唯一の炭素源として生育する化学独立栄養細菌であるため、二酸化炭素のメタ
ン化には水素の安定的な供給が必須
である

しかし、特開平6-169783号公報の水電気分解水素を用いる場合には、微生物反応を行わせるリアク
タだけでなく電気分解装置を設置し、維持管理する必要があり高価なプロセス
となる。
また、特開
2013-192547号公報のように光合成細菌の水素製造に太陽光をエネルギー利用には、太陽光を受ける
ための面積を大きくとる必要があり装置が大型化、高価なプロセスとなる。
特開2005-168368号公報
のバイオマス利用する場合は、水素供給量のコントロールや反応効率の最適化が困難で、バイオマ
ス処理設備が必要なことと、バイオマスが発生しない製鉄所でのプロセスガスの改質に利用するに
は適さない。


このように下図のごとく、製鉄工程で発生するプロセスガスに含まれる二酸化炭素と水素を微生物
反応でメタンに変換するプロセスガスの改質方法であって、第1のプロセスガスに、このプロセス
ガスとは異なる組成を有する第2のプロセスガスを成分調整用ガスとして添加し、組成が制御され
た混合ガスを調製し、混合ガスを、水素資化性化学独立栄養性メタン生成菌を含むリアクタへ、制
御された流量で供給。プロセスガスの改質方法で、製鉄工程で発生するプロセスガス中の二酸化炭
素と水素を高効率でメタンに変換できる、簡便で、低エネルギーかつ低コストであるプロセスガス
の改質方法、前記プロセスガスの改質方法を実施するための改質装置である。

尚、生成されたメタンは直燃し再利用できるだけでなく、メタン水蒸気改質反応させ燃料電池で発
電させることも可能。

【図1】本発明の一実施形態におけるプロセスガスの改質方法を示す模式図
【図2】本発明の他の実施形態におけるプロセスガスの改質方法を示す模式図

 

● 合成ディーゼル油用燃料電池事例
❏ 特表2016-505200 炭化水素で動作可能な燃料電池システム

ところで、下図のとおりディーゼル等の炭化水素で動作可能な乗物で用いるためのエネルギー生成
ユニット(1)で、燃料電池(2)と、空気及び炭化水素を供給し、電気エネルギーを産出する接
続部(3、4、5)とで構成されたエネルギー生成ユニット(1)の特許技術を紹介する。この事
例ではと、エネルギー生成ユニットには、3つの実質的に隔離分離した機能ユニット(7、8、9)
を有し、第1の機能ユニット(7)は、媒体供給用で、かつ、主に燃料及び空気の供給装置を有し、
第2の機能ユニット(8)は、改質用に、かつ、主に炭化水素をプロセスガス変換装置を有し、第
3の機能ユニット(9)は、電気エネルギー生成用に、かつ、主に燃料電池(2)を有し、第3の
機能ユニット(9)には、第2の機能ユニット(8)内で生成されたプロセスガスが供給されるて
機能する、ちうものである。

 【符号の説明】
1 エネルギー生成ユニット 2 燃料電池 3 空気接続部 4 炭化水素接続部 5 電気接続部
6 支持構造 7 第1の機能ユニット 8 第2の機能ユニット 9 第3の機能ユニット 10 第1の
フレームプレート 11 第2のフレームプレート 12 第3のフレームプレート 13 第2の固定
プレート 14 第3の固定プレート 14a 上側プレート 14b 下側プレート 15 ハウジング
15a、15b、15c ハウジング部分 16 絶縁体 16a、16b、16c 絶縁領域 17 空
気送風機 18 再循環送風機 19 始動燃焼器空気弁 20 再循環弁 21a、21b 炭化水素ポ
ンプ 22 固定用留め具 23 第1の固定プレート 24 始動燃焼器 25 気化装置 26 排ガスチ
ャンバ 27 再熱器 28 改質装置 29 始動燃焼器の炎管 30 熱交換器 31 排ガス接続部
32 燃焼室 33 カソード空気弁 34 改質装置空気弁 35 再熱器アノード排ガス弁 36 分配
プレート 37 改質装置触媒コンバータ 38 再熱器触媒コンバータ

 Mar.19, 2012
● 蟻酸燃料の経済原理

二酸化炭素を利用した水素貯蔵技術
燃料としてギ酸を使用する複数の形式があり、改質器で改質して水素を抽出して従来の燃料電池で
使用する形式と蟻酸と酸素の反応で発電する直接形燃料電池(DFAFC)の形式がある。蟻酸を改質せず
に直接利用する場合では同種の構造を有する直接メタノール燃料電池(DMFC)と比較して燃料の蟻酸
はメタノールよりも分子が小さく、接触改質が不要で、直接メタノール燃料電池では問題となるプ
ロトン交換膜を透過して空気極に達するクロスオーバー現象が無いので電圧が降下しにくい特徴を
有する。長年、蟻酸は従来の燃料電池で使用される白金触媒では活性化に余分なエネルギーが消費
されるため、直接変換型燃料電池の燃料として実用化には不適だとされていたが、近年、白金の代
わりにパラジウムを触媒
として使用したところ、良好な結果が得られたことから、実用化に向けて
前進した経緯がある。実用化へ向けて開発が進められている。

❏ 特開2018-141220 導電性ダイヤモンド電極を用いたギ酸製造方法及び装置
従来の方法として、スズ(Sn)、鉛(Pb)あるいは水銀(Hg)といった金属電極をカソード電極として構
成し、二酸化炭素を含有する電解液からギ酸を生成する方法が開示されているが、電解効率が時間
とともに減少していき、電極の耐久性が乏しいといった問題があった。また、電解液には、メタノ
ールなどの有機溶媒が利用され、電解条件も加圧条件とされるなど、電解反応装置として設備が複
雑になる、といった問題点があった。図2のごとく、カソードに導電性ダイヤモンド電極を使用し、
カソード用の第一電解質溶液が、ルビジウムイオン、セシウムイオン又はカリウムイオンを含み、
かつ、二酸化炭素を含み、導電性ダイヤモンド電極を用いて第一電解質溶液に電圧を印加して、二
酸化炭素を電解還元することによりギ酸を製造することで、高濃度の炭酸カリウム溶液や、高圧条
件を必要とせず、環境負担が比較的少なく、効率的なギ酸の製造方法及び装置が、また、ファラデ
ー効率が低下しにくい、耐久性のある電解反応装置の提供である。


【符号の説明】1 カソード電極 2 カソード槽 3 固体電解質膜 4 アノード槽 5 アノード
電極 6 外部電源機構 7 二酸化炭素の気泡

● 二酸化炭素を削減しながら太陽光で発電するバイオ燃料電池
❏ 特開2018-118877 水素供給システムおよび水素供給方法
ギ酸(HCOOH)は、常温で液体であり、水素(H2)/二酸化炭素(CO2)と相互変換が可能でエ
ネルギー密度も高いため、水素貯蔵材料として最近注目されている。 ギ酸は、常温常圧での水素貯
蔵量が4.4%あり、二酸化炭素との相互変換に伴うエネルギー変化が小さいことから、温和な条件
で使用でき、効率のよい水素貯蔵用水素化物として期待されている。太陽光により、国際公開2013/
187485
号公報に記載された方法で燃料源としてのギ酸を作るためには、光増感剤、電子伝達体、触
媒を必要とする。しかしながら、太陽光と水をそれぞれエネルギー源、電子源とする事で、天然の
葉は二酸化炭素から有機物と酸素へ、常温、常圧、酸素大気下で、当たり前の様に物質変換してい
るが、物質変換反応を常温、常圧の酸素大気下で、人工的に行おうとすると、酸素により反応が阻
害されてしまうという問題がある。

一般的に、この反応は酸素により阻害されるため、酸素を除く必要がある。しかしながら、酸素除
去のコストが人工光合成を実現するための一つの大きな問題となる。また、上述の通り、触媒を用
いてギ酸を分解する場合、汎用性を考慮するとその反応系の構築は簡易なものであることが好まし
い。また、ギ酸を効率的に水素に変換するためには、ギ酸から水と二酸化炭素が発生する副反応が
生じないことが望ましい。

下図1のごとく、ギ酸生成装置50により大気中あるいは排気二酸化炭素から人工光合成によりギ
酸を生成して貯蔵し、常温・常圧の脱酸素環境下でギ酸を触媒反応により水素と二酸化炭素に分解
するギ酸分解装置60により、上記ギ酸生成装置50から供給されるギ酸を分解して得られる二酸
化炭素を上記ギ酸生成装置60に供給して二酸化炭素を循環させるとともに、ギ酸を分解して得ら
れる水素を外部装置に供給する、太陽光エネルギーを有効に利用して、ギ酸を生成して貯蔵し、貯
蔵したギ酸を水素に変換してエネルギー源として安全且つ効率よく供給する。


【符号の説明】
10 ギ酸生成デバイス、11 基板、12 酸化アルミニウム微粒子、13 色素、14 メチルビオ
ローゲン、15 ギ酸脱水素酵素、20 水素イオン発生手段、22 高分子ビーズ、30 ギ酸生成
手段、40 流路、50 ギ酸生成装置、55 ギ酸貯蔵タンク、60,70 ギ酸分解装置、61 貯
蔵部、62 反応部、63 分離部、64 制御部、100 水素供給システム、110 一般住宅、
120 住宅用水素発電設備、130 貯湯タンク、140 太陽電池パネル、151 トップライト、
152 バイオリアクタ、1000 エネルギー供給システム

 Apr. 25, 2018

このように、炭化水素を合成させるより、直接水素発生させ、二酸化炭素を削減する究極の水素燃
料電池システムも開発されている。バイオ燃用戦地は電極のライフサイクルが課題がのこるものの
日本や世界の先進諸国の連携でそう遠くない近い将来(わたしが存命中に?)実現することも見え
てきた。オゾンホールの制御の成功もあり、"人為的温暖化禍"もコントロールできる時代に突入し
ていようにみえる。つまり、"エネルギーフリー社会"もまたしかりである。これが今夜の『蟻酸の
経済原理』である。



【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅸ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
第4節 現実の所得分配状況と再分配政策
私には、所得再分配に関するいずれの議論も、真実を突いているように思える。功利主義の、過度
な所得再分配はそもそも再分配すべき所得を削減し、社会全体の幸福を損なうという議論は分別の
あるものである。ロールズの、自分が最下層に生まれる可能性を考えれば、その人々の福祉につい
ても考えておきたいと思うはずだという主張も説得力がある。ただし、最下層の人々に再分配した
結果、それより上の人々よりも豊かになるのは再分配のしすぎである(ロールズはこのことには配
慮している)。リバタリアンの、所得を得る過程が正しいものであれば、結果として得られた所得
は正しいという考えにも魅力があるが、現実の所得と資産は、本当に正しい過程の結果なのだろう
か。多くの所得や資産が、偶然、強欲、詐取によって得られたという可能性も否定できない。ただ
し、それは後述するように、危険な考え方でもある。

 NDC分類 321.1

これは、既存の富の分布状況が正しいと思われていない国で民主主義を実現するのが困難である理
由も明らかにする。例えば、中国やロシアの少なからぬ富は、不当に得られたものと国民に認識さ
れている。中国共産党は、それ以前の地主と内外の資本家の富を接収して共産国家を成立させた。
そのシステムが経済的に機能しないと認識し、資産を内外の資本家に払い下げ、それと同時に、共
産党幹部がその一部をくすねた結果が、現在の富の試存状況である。もちろん、中国でも、多くの
資本家の富は、彼らの企業的能力によって得られたものであるが、そうでないものも大きいだろう。
どの国の富もそんなものだと言えるかもしれないが、ほとんどの国では、富の淵源は遥かな過去に
あり、人々の記憶には残っていない。それに対して、中国やロシアでは、富の淵源の記憶は新しい。
民主化された中国で、その淵源を問題として煽動する政治家が登場することは避けられないだろう。
ロシアでは、そのような富、あるいは、企業家的能力によって得られた富がプーチン政権によって
没収された場合もある。

韓国では、「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」が2005年に成立している。目
的は、「日杢布国主義の殖民統治に協力し、わが民族を弾圧した反民族行為者が、その当時、蓄財
した財産を国家の所有とすることで、正義を具現し、民族精気を打ち立てることを目的とする」(
第一条、目的)であるという。実際に、日韓併白条約を締結した李完用(1858~1926)の
子孫から土地を没収し、他にも77人の土地を没収しているという(「「親日派」子孫の財産、土
地4億8千万円を没収植民地統治協力で」、『読売新聞』2007年5月2日夕刊。「李充用ら親
日派9人の財産、国への帰属を決定」、『聯合ニュース』2007年5月2日。「親日反民族行為
者財産調査委、財産帰属対象を追加」、『聯合ニュース』2009年7月1日)。

中国において富を得た人々は、自分たちの富を守るために、民主主義に敵対するしかないと考える
かもしれない。しかし、習近平政権で行われている不当利得の没収が、権力闘争であり、恣意的な
ものであるのに対し、民主主義国家である韓国では、一応は、不当利得が明確に定義され、その範
囲が認識でき、その法はすべての人に等しく適用されているようである。すると、中国の富裕層も
比較すれば、民主主義のほうがマシだと考える可能性もある。

BIを給付するためには、当然に富の再分配をともなうが、その程度は、既存の富の分布がどれだ
け正当と思われているかどうかにも依存する。多くの人が不当と考えているのであれぼ、より大き
な再分配が支持されることになるだろう。ただし、BI自体、現状より大きな再分配を行うべきで
あるという主張と結びついているわけではない。給付額に応じて、さまざまなタイプのBIの思想
がありうる。一つ共通しているのは、現状の福祉政策は、それが本当に必要にしている人には届か
ず官僚的な無駄を生んでいるという批判である。



第4節 BIの発想
すべての人々に暮らせるだけの所得を何らかの形で与えれば、貧困問題は解決できるという発想は
古くからある。
ジョンースチュアートーミル(1806~73)は、そのような試みを紹介している(ミル『経済
学原理』第2篇第12章3・4、岩波文庫、1960〇年、原著1848年)。その一つは、17
94年または1804年から34年までに教会教区の長官に農業労働者への家族手当として行われ
たものである。しかし、ミルによれば、家族手当は、マルサス的なメカニズムによって貧困を減少
させることにはならなかったという。マルサス的なメカニズムとは、貧困が軽減されれば人口が増
大し、食糧への需要が増えて、食糧価格が上昇し、その結果、結局、貧しい人は豊かになれないと
いうメカニズムである(トマスーロバートーマルサス『人口論』中央公論社、1973年、原著1
798八年、改訂版1803年)。



ミルは、これと同様のものとして配賦地制度についても説明している。配賦地制度とは、労働者に、
自家用のじやがいもや野菜、または販売用の農作物を作らせるために一定の土地を貸し出すという
制度である。しかし、ミルは、これもマルサス的なメカニズムによって人口を増やすだけだと否定し
ている。
ただし、マルサスの人口論の思想が広がる以前、むしろ18世紀には国家が救貧に対して責任を持
っていたというジェフリー・ウィリアムソン(1935生)の指摘がある。ウィリアムソンによれ
ば、1801年のエリザベス救貧法は、高齢者、身体障碍者、未亡人、孤児、大家を国家の責任で
支援することをはっきりと確認していたという(ジェフリー・G・ウィリアムソン『不平等、貧困
と歴史』127~128頁、安場保吉・水原正亨訳、ミネルヅア書房、2003年)。また、19
世紀前半の老齢年金の成人労働者所得に対する比率は7~8割であったという)。ただし、この時
代には、高齢者はそもそも少なく、現在のようには長生きをせず、また、貧しい人が医者にかかる
ことはできなかったことも認識しておく必要がある。

マルサスの人口論は、19世紀の初期に生まれた新思想であって、その思想は、人口論が否定され
つつあった現実のなかで力を持ち、19世紀の終わりになって、一人当たりの所得がこれまでにな
いほど高まっているという圧倒的な事実によって、先進国では力を失った思想であると考えたほう
がよいかもしれない。

直接的な所得の補助が、単なる人口増加と、食糧供給不足によって、新たな貧困をもたらすだけだ
という認識を否定するには、産業革命によって人類がマルサスの限界を打ち妓らなければならなか
った。もっとも、ミルはイギリスが産業革命を経験し(1760年代から1830年代に起きたと
されている)、人類がマルサスの限界を打ち破って、とてつもなく豊かになる時代の初期に生きて
いたのだが、それに気が付かなかったということである。BIについて議論するためには、すべて
の人々が、人類はマルサスの罠から逃れたのだと認識した後である必要がある。

第5節 BI思想の活性化
BIの発想に、新たに息を吹き込んだのは、新自由主義の総帥ミルトンーフリードマン(1912
~2006)であると言ってよいだろう。彼は、1960年代から「負の所得税」という形でBI
の発想を述べている(『資本主義と自由』第12章、村井章子訳、日経BP社、2008
年、原著1
962年)。なお、左派のBI論者(何か左派であるかは、本章後出の「権利としての
BI」の項
で述べる)であるトニー・フィッツパトリック(1966生)は、フリードマ
ンのこの発想をジュ
リエット・リズ・ウィリアムズが提唱した「新しい社会計画」の影響を受
けたものだとしている
(トニー・フィッツパトリックー『自由と保障-ベーシック・インカム
論争』50頁、武川正答・
菊地英明訳、勁草書房、2005年)。



負の所得税」とは、所得の低い人には、政府が負の税金を与える、すなわち所得を給付するとい
う制度である。所得がゼロであっても、給付金かおるわけで、これはBIである。フリ
ードマンは、
さまざまな社会福祉プログラムを負の所得税に置き換えれば、現行の社会保障予
算の半分ですむと
書いている(フリードマン前掲書、350頁)。すなわち、BIは、より小さ
な所得再分配政策と
両立しうるのである。これはもちろん、同じ福祉の効果をもたらすため
に、より小さな政府支出で
すむのなら、それは経済効率のうえでも望ましいということだが、
哲学的な問題でもある。

              原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

                                     この項つづく
 

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宇宙の彼岸探索

2018年09月24日 | 環境工学システム論

  


                                            

第26章 "静"は "動″を支配する
重いものは根となって、軽いものを支える。静謐は、絶えざる勁きを支配する。聖人は、旅がいか
に長びこうとも、輸送車を庖れて先走りはしない。重いものこそ根本であることを心得ているから
だ。はなやかな眺めに接しても、悠然として心を勁かさない。静謐こそ治者の抑であることを心得
ているからだ。
君主たる者は、天下の政治に心を哲われて、自己を忘れてしまってはならない。自己を軽視すれば
君主の資格を失い、みだりに励けば君主の職分を踏みはずすことになる。

軽ければ本を失う 回申は為政者の徊として、自己を滅却することの昌典性を、緑り返し力説する。
その一方において、本草のごとくまた十三草のごとく、自己を言祝することを説く。この両者は、
一見矛盾するようであるが、実はそうでない。前者の自己は、作為せんとする自己であった。役者
の自己は、「道」を認識する主体としての自己である。為政者紀るもの、主体性を失ってはならな
い。



 Sept. 23, 2018
【人為的温暖化制御事業篇:最新大気中二酸化炭素回収技術】

● 大気中から直接集めた二酸化炭素で、栽培促進や燃料製造
二酸化炭素削減に「ダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)」と呼ばれる大気中の二酸化炭素を回収
する方法が有効だと関心が集まり始めている。DACに取り組む企業がまだ少ない中、17年5月末、
スイス・チューリヒのスタートアップ「クライムワークス」が、世界で初めて商用化する。キャプチャ
ー技術自体は、日本でも二酸化炭素発生源での研究開発が進んでおり、アミン系複合吸着剤(機能
層)で除去後、百℃前後の水蒸気加熱などで吸着剤から分離回収させる濃縮二酸化炭素を地下貯蔵
し、メタン菌などでメタンガスなどの炭化水素化合物を合成する、あるいは植物栽培や産業の臨界
液化二酸化炭素による分解洗浄や冷媒などとして再利用した後再回収として実用研究段階にあるが、
クライムワークス アーゲー社のように直接大気中より除去する実用化事例は世界初であるが、こ
のブログでも掲載したようにこれがコミ二ティ、自治体、国家単位でまとまることで地球の温暖を
自在に制御することが可能となる。



● フィルターはどこでも設置可能
日本でも二酸化炭素排出を削減工夫が実施されているが、パリ協定に基づいて世界が掲げる二酸化
炭素削減の目標と、平均気温上昇を2℃より低く保つために実際に必要な削減量との間には、ギガ
トン(10億トン)単位での膨大な差がある。このギャップを少しでも縮めるため、すでに大気中の
過剰二酸化炭素を除去が大きな課題となる。

DACの普及を目指すスタートアッブ、クライムワークス(2009年設立)はチューリヒ市内にある。ス
イス政府の資金援助を得て作ったDACのプラント(装置18個)は、チューリヒ中央駅から電車で約
1時間のゴミ処理施設KEZOの屋上に設置。1辺が約2メートルの立方体のこの装置は、1日1.
35キログラム、1年で約60トンの二酸化炭素(18個で約9900トン)を回収。
片側からボッ
クス内に大気が入ると、フィルタに二酸化炭素が化学付着。フィルターを抜けて反対側から二酸化
炭素ない大気が排出される。数時間でフィルタ二酸化炭素が飽和する。
DACシモジュールサイズは、
1辺が約2メートルボックス、百℃に加熱し二酸化炭素をフィルタから放出し、濃縮二酸化炭素と
して貯蔵する。フィルタは数千回のサイクルに耐える。装置を勤かすエネルギーは、KEZOのゴミ
焼却廃熱を使い自動制御している。

 Nov. 5, 2017

濃縮二酸化炭素は、太いパイプで、近くのゲブルューダー・マイヤー菜園の3万7,632平方メートル
のグリーンハウスで使用することで、キュウリやトマトが大きく育ち、収穫量を高め促成栽培でき
る。
同社の装置は、稼働エネルギーさえあれば設置場所は遊ばない。アイスランド最大の地熱発電
所ヘトリスヘイジ発電所に1個設置し、発電所のエネルギーで賄い、二酸化炭素を水に溶かして地
下700メートルに埋める(2年以内に化石になる)実証実件を続ける。将来は装置の個数を増や
せ、フィルターサイズもカスタマイズ可能。


● 最終目標は濃縮二酸化炭素システム低コスト化
クライムワークスの回収二酸化炭素は、現在1トンにつき600フラン(約6万7千円)で売られて
いる。ゲブルューダー・マイヤー菜園は、以前は遠く離れた北ドイツから二酸化炭素を購入。鉄道
でスイスに輸送、トラックでグリーンハウスに搬送された二酸化炭素はクライムワークス社より安
い。それでも同社の購入継続する理由は、自前で大気から二酸化炭素を回収することにある。北ド
ィッからの輸送過程での二酸化炭素排出も削減できる(モーダルシフト)。1トン600フランは
高くない(競合比較でも廉価)。同社は、3~4年以内に確実に1/3の200フラン(2万2千
円)になると言う。その後は長期的に、1トン100フランまで下げる。
いまはヨーロッパを中心
だが引き合い相談も多い。 

 Nov. 7, 2017

● 試作燃料として使用 
回収二酸化炭素は、環境負荷が 少ない燃料原料に適し、自動車メーカのアウディは、数年前から
廃二酸化炭素由来燃料の研究開発、クライムワークスは13年に共同開発をスタート。水と二酸化
炭素原料にアウディeディーゼル(水素燃料) が試作が作る。クライムワークスは、大規模なプロ
ジェクトにもかかわっている。Power toGas ( パワ-・トゥー・ガス:PtoG)方式のデモプランドを
2年間で稼働させる「ストア&ゴー」へ参画する。プロジェクトには、ヨーロッパ6か国から27
のパートナーが参加(総予算35億円超)。デモプラントはドイツ、スイス、イタリアに1か所ず
つ計3つ製作、今秋から、イタリア・トローイアのプラントで、同社の装置3
個が1日410キロ
グラムの二酸化炭素の回収を始める。この3か所で作られたエネルギーは市民に供給される。

● DAC普及は2100年?
グライムワークスは、25年までに、世界の二酸化炭素排出量の1%にあたる二酸化炭量を回収す
ることを中間目標にしている。アイスランドに設置したDAC装置では、企業がクライムワークスに
料金を払い、その企業が排出した二酸化炭素量と同量の二酸化炭素を大気中から回収してもらう、
つまり、DAC装置でカーボン・オフセットをするという新しいマーケティング方法も考案し、すで
に米国NGO団体を含めた複数顧客と契約を結び、同時に装置の販売促進しないといけない。
KEZO
屋上の小型プラントは数億円?というが、DACプラント普及は一体どれくらいかかるだろうか。


最近、この点を指摘した記事が発表された。それによると、世界初の商用化が始まった17年(ク
ライムワークス上の小型ブラント)をDAC普及の起点とすると、装置の価格が下がって安価になる
のは77年、各地で広く建設されるようになるのは2100年になる。この予測は、大躍進した太
陽光発電と同じように発展した場合でもある。もしDAC太陽光発電を上回る飛躍をとげれば、安
価になるのは2040年、普及は60年になると試算。この記事では、早期普及の実現に向けて、いま
動き出さないといけないと主張。太陽光発電と同じペースだとして、DACが普及するまで80
年以
上も待つとなると遅過ぎる。8月末、クライムワークスは、チューリヒ州立銀行を含めた投資家だ
ちから新たに34億5千万円を超す援助を受けることになったと発表。一朝一タで発展するのは難
しいが、着実な一歩を踏み出した同社の今後に、世界が期待をかけている。


 May 31, 2018 The Washington Post

※ 関連特許 1件

❑ 特表2017-528318 二酸化炭素回収のための水蒸気アシスト真空脱着プロセス
【概要】
本発明は、循環式吸着-脱着プロセスの高い循環収率と脱着ガスの高純度を達成できる、吸着によ
るガス分離で使用される材料の再生のためのプロセスと装置に関するものである。基本原理は、非
常に高純度脱着ガスを生産することが知られている温度真空スイング吸着-脱着サイクルと、脱着
プロセスをサポートし、短いプロセス時間で高い循環収率を達成することが知られている水蒸気を
パージガスとして組み合わせることである。

下図のごとく、ガス状二酸化炭素を及び二酸化炭素と異なるガスを含むガス混合物から、ガス状二
酸化炭素を吸着する吸着剤を用いた循環式吸着/脱着により分離する方法でり、吸着剤を伴う吸着
構造体(6)を含むユニット(1)を使用し、以下の順序及びこの順序に繰り返す工程からなることを特
徴とし、(a) ガス混合物を吸着剤に接触させ、少なくとも前記ガス状二酸化炭素を吸着工程の
周囲
大気圧条件と周囲温度条件のもとで吸着剤上に吸着させ、(b)ユニット(1)を20-400mbarabsの範囲の
圧力に排気し、脱着工程においてユニット(1)中の吸着剤を80-130℃の範囲の温度に加熱し、(c) 周
囲大気条件にユニットを再加圧し、吸着剤を工程 (b)のそれの圧力で周囲大気温度以上の温度に強
制的に冷却し、工程(b)で蒸気をユニット(1)に注入し、貫流させ、前記ユニット(1)の圧力レベルに
おいて、飽和蒸気又は過熱蒸気条件のもとで吸着剤に接触させ、全工程(b)中に注入する。


【符号の説明】
1 ユニット 1-1,-2,-3 逐次配置のユニット 2 吸着構造体熱交換器 3 吸着弁 4 入口蒸気  
4-1,-2,-3 さまざまなユニットへの蒸気流 5 蒸気発生熱交換器 6 吸着構造体 7 脱着ガス(ガス
状二酸化炭素) 7-1,-2,-3 さまざまなユニットの脱着ガス(ガス状二酸化炭素)と蒸気流 8 凝
縮熱交換器 9 吸着構造体を通る蒸気流 10 ヒートポンプ 11 高温熱源 12 低温熱源 13 連結
型凝縮/蒸気発生熱交換器 14 再圧縮機 15 ケトル型リボイラー 16 高純度二酸化炭素 17 液
体水 18 真空圧力(mbarabs) 19 酸素分圧(mbarabs) 20 蒸気流量(kg/h) 21 吸着剤温度
(°C) 22 累積脱着容量 (mmol/g) Q 一般の熱流 S1-S7 プロセス工程 P1,P2,P3 さまざま
な真空圧力レベル T1,T2,T3 さまざまな温度レベル

 

    

最新有機EL表示装置製造技術】

❑ 特開2018-141848  表示装置及びその製造方法
【概要】
近年、表示装置の小型化又は表示領域の拡大のために、表示領域の周辺にある、いわゆる額縁領域
を狭くすること(狭額縁化)が求められている。特に、スマートフォン等のモバイル機器において、
狭額縁化の要請が大きくなってきている。狭額縁化を図る一例として、特開2016-31499では、可撓
性を有する樹脂フィルムを基材として用いた屈曲可能な表示パネルにおいて、表示領域の外側の領
域を裏面側に屈曲することで狭額縁化を図ることが開示されている。

ところで、表示パネルを屈曲する場合、屈曲部位に働く応力によって配線等が破損するおそれがあ
ることから、表示パネルの屈曲をガイドするスペーサを設けて、過度の屈曲を抑制することが検討
されている。しかしながら、スペーサを設けても、表示パネルの屈曲の始点となる箇所には応力が
集中しやすいことから、その箇所では依然として配線等が破損するおそれがある。

下図2のごとく、表示装置は、表示領域と、端子が設けられた端子領域と、表示領域と端子領域と
の間に位置する屈曲可能な屈曲領域とを含む表示パネルと、表示パネルの表示面とは反対の裏面に
貼り付けられる裏面フィルムであって、表示領域の裏面に貼り付けられる第1フィルム部と、端子
領域の裏面に貼り付けられる第2フィルム部とを含む裏面フィルムと、スペーサであって、屈曲領
域が屈曲して表示領域及び第1フィルム部の裏面側に端子領域及び第2フィルム部が位置し、スペ
ーサは第1フィルム部と第2フィルム部とに挟まれるとともに屈曲領域の裏面に接触する、スペー
サと、を備え、第1フィルム部と第2フィルム部との少なくとも一方の屈曲領域と向かい合う端面
が、裏面に近づくに従って外側に突出するように勾配を有する。

また、本発明の表示装置の製造方法は、表示領域と、端子が設けられた端子領域と、前記表示領域
と前記端子領域との間に位置する屈曲可能な屈曲領域とを含む表示パネルを用意する工程と、前記
表示パネルの表示面とは反対の裏面に裏面フィルムを貼り付ける工程であって、前記表示領域の裏
面に第1フィルム部を貼り付け、前記端子領域の裏面に第2フィルム部を貼り付ける工程と、前記
屈曲領域を屈曲させ、前記表示領域及び前記第1フィルム部の裏面側に前記端子領域及び前記第2
フィルム部を位置させて、スペーサを前記第1フィルム部と前記第2フィルム部とで挟むとともに
前記屈曲領域の裏面に接触させる工程と、を備え、前記第1フィルム部と前記第2フィルム部との
少なくとも一方の前記屈曲領域と向かい合う端面が、前記裏面に近づくに従って外側に突出するよ
うに勾配を有する、表示パネルを屈曲しても配線等の破損を抑制することが可能な表示装置を提供
する。


❑ 特開2018-147977 浮上量算出装置、塗布装置および塗布方法
【概要】

半導体装置や液晶表示装置などの電子部品等の製造工程では、基板の上面に塗布液を吐出して基板
の上面に塗布する塗布装置が用いられている。例えば特許第5346643号に記載の塗布装置は、基板の
下面に気体を吹き付けて基板をステージから浮上させた状態で当該基板を搬送しながらポンプによ
って塗布液をスリットノズルに送液してスリットノズルの吐出口から基板の表面に吐出して基板の
ほぼ全体に塗布液を塗布する。

この特許に記載の装置では、スリットノズルに対して基板の浮上量を非接触で検知するための光学
式センサが設置されている。そして、この光学式センサによる検出結果に基づいてスリットノズル
の鉛直方向における位置(以下「鉛直方向位置」という)を調整している。ここで、基板が透明材
料で構成されている場合には、センサによって3種類の鉛直方向位置(浮上した基板の上面の鉛直
方向位置、当該基板の下面の鉛直方向位置、およびステージの上面の鉛直方向位置)を検出するこ
とが可能であり、これらの鉛直方向位置に基づいて基板の板厚およびステージからの浮上量を算出
することが可能である。

しかしながら、遮光性材料を含む基板、例えばメタル蒸着された基板等では、基板の下面の鉛直方
向位置を検出することは困難である。そのため、上記装置では、基板の下面に対する気体の吹付状
況、例えば気体流量に対応する浮上量で基板が浮上しているという前提で塗布処理を行っている。
したがって、例えば気体流量の変動により浮上量が少なく、あるいはゼロになってしまうと、基板
搬送を良好に行うことができず、その結果、塗布処理の精度が低下してしまうことがある。このよ
うに浮上量は高精度な塗布処理を良好に行う上で重要な物理量であるにもかかわらず、上記したよ
うに固定値を用いることがある。そこで、従来より、基板を浮上させながら塗布処理を行う塗布技
術において、基板の種類を問わず、浮上量を正確に求める技術が要望されている。

下図6のごとく、吸着部材のうち基板の下面を吸着する吸着面の鉛直方向位置と、基板のうち吸着
部材によって吸着された被吸着部位の上面領域の鉛直方向位置とを検出する板厚測定用センサと、
ステージの上面の鉛直方向位置と、ステージの上方に搬送された基板の上面の鉛直方向位置とを検
出する浮上測定用センサと、板厚測定用センサにより検出された吸着面の鉛直方向位置および被吸
着部位の上面領域の鉛直方向位置に基づいて基板の板厚を算出する板厚算出部と、浮上測定用セン
サにより検出されたステージの上面の鉛直方向位置および基板の上面の鉛直方向位置と、板厚算出
部により算出された板厚とに基づいて基板の浮上量を算出する浮上量算出部とを備えることで、基
板をステージから浮上させつつ搬送しながら基板に塗布液を塗布する塗布装置において、基板の種
類を問わず、ステージからの浮上量を高精度に求めるおとができる。



【符号の説明】
1…塗布装置 32…塗布ステージ(ステージ) 51…チャック機構(搬送部) 61…板厚測定用
のセンサ 62…板厚測定用のセンサ 71…ノズル 92…演算手段 321…ステージ上面 513
…吸着部材 513a…(吸着部材の)吸着面 921…板厚算出部 922…浮上量算出部 W…基
板 Wf…(基板の)上面 Wb…(基板の)下面 Wc…(基板の)被吸着部位

❑ 特開2018-147813 表示装置の製造方法及び表示装置
【概要】

発光素子の一種として、有機エレクトロルミネセンス材料(以下、「有機EL材料」ともいう。)
を用いた有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)が知られている。
有機EL素子は、第1電極(陽極)、有機層、第2電極(陰極)が積層された構造を有する。画素
に有機EL素子が配置された表示装置は、画素から出射される光の方向によってボトムエミッショ
ン型とトップエミッション型に分類される。トップエミッション型の表示装置は、有機層の上面に
設けられる電極、例えば第2電極(陰極)が酸化インジウムスズ等の透明導電膜で作製される。

機EL素子において、有機層の上部に設けられる第2電極(陰極)を光の出射面とする場合、第2
電極(陰極)は単に透光性が高いこののみでなく、透明導電膜の形成時に下地面に当たる有機層に
ダメージが及ばないことが求められる。酸化インジウムスズ等の透明導電膜はスパッタリング法に
よって作製される。有機EL素子の電極をスパッタリング法で作製するに際しては、プラズマによ
って生成されるイオンや高エネルギー電子により有機層にダメージが及ばないように、成膜条件に
工夫がされている(例えば、特開2007-95338号公報、特許特開2012-012633号公報参照)。

このように、有機EL素子で画素が形成される表示装置は、有機EL素子が水分等により劣化しな
いように、画素が配列する領域に封止層が設けられている。封止層にピンホール、亀裂、あるいは
膜の欠損による欠陥があると、当該欠陥部分から水分が浸入して有機層が劣化する。封止層に欠陥
が形成される原因は様々である。例えば、下地面に製造工程で付着した塵が付着していると、封止
層に欠陥が生成する原因となる。表示装置においては、有機EL素子を形成する段階、特にスパッ
タリング法で電極となる導電膜を形成する段階の発塵対策は重要となる。

かくして、下図9のごとく、基板上に設けられたトランジスタを埋設する絶縁層を形成し、絶縁層
上にトランジスタと電気的に接続される第1電極を形成し、第1電極の周縁部を覆い第1電極の内
側領域を露出させる開口部を有する隔壁層を形成し、第1電極上に有機エレクトロルミネセンス材
料を含む有機層を形成し、隔壁層及び有機層上に第2電極を形成し、第2電極上に封止層を形成す
る、工程を含む。第2電極の形成は、第2電極の目標膜厚より薄い膜厚の電極層を成膜段階と、電
極層の形成段階の終了後の待機段階とを含み、成膜段階と待機段階とを目標膜厚に達するまで繰り
返し行われることで、導電膜等を形成するときに発生する塵の問題を解決する。


特開2018-147883 有機ELデバイスの製造方法および成膜装置 堺ディスプレイプロダクト株式会社



※ 脚注及び関連項目 





● 母の愛した月下美人に添えし白粉花

晴天で、仏教では西の果てに彼岸があり白道という仏の示す道を信じて進めば極楽往生するという
浄土信仰が盛んになり、彼岸の先祖供養につながる彼岸。宗安寺と長純痔に参り、この間台風で痛
んだ城の周辺を見て帰り、夜は満月の中秋(雲がかかっていたが)を愛でる。そういえば、前日に
は、小惑星探査機「はやぶさ2」から搭載ローバのMINERVA-II1を分離し、小惑星Ryugu(リュウ
グウ)に着陸成功していることを彼女から聞いていたが、23日には、国際宇宙ステーション補給
機「こうのとり」7号機の打ち上げにも成功(27日(木)20時25分から、把持(キャプチャ)の模
様を中継)している。地味に着実に実績を積み重ねているが、これは理想形ですね。

  ● 今夜の一曲

Metallica  " St. anger "

● 今夜の寸評:格差デフレ下で消費税値上げってか?
失われし30年で学んだはずなのに。社会保障は所得税が本筋、政府は人材不足か?それから、石
油値
上げに、イランを準戦争制裁しガソリンが高騰。ロングドライブを愛する下流年金生活者には
こたえる。世界の政府は人材不足!? なぜか、石油欲しさに戦争に
突入した東条内閣を起想する。

コメント
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資源循環社会ビジネス

2018年09月21日 | WE商品開発

  Sept. 21, 2018 



                                            
第25章 人間の偉大さ
天地が生ずる以前に、すでにある物が存在した。その物は、混沌として形容しがたく、感覚で捉え
ることはできない。他に依存せぬ独立の存在で、そのはたらきは時間空間を超越して止むことがな
い。これが天地の母である。この物は、限定できないから、名づけられない。かりに名づけて「道」
とよぷ。だが、ひとつのことばではいいつくせない。それが偉大であるゆえに、強いて名づけて「
大なるもの」といおう。この大なるものは、どこまでも行きわたって止まらないから、「逝くもの」
といおう。この逝くものは、無限の過去から無限の未来へわたるから、「遠いもの」といおう。こ
の辿いものは、常に反対の状態  へと移行することによって無限の動きを保つから、「沢るもの」
といおう。

「道」は大なるものである。そして、この「道」の現われであ・る「天」も大である。「地」も大
である。「道」を認識する「人」も大である。宇宙閥の四大において、「人」はその一を占めてい
るのである。「人」は大なるものであるからには、その大の根元である「地」と一体化し、「天」
と一体化し、「道」と一体化し、「辺」に内在する「自然」の妙理と一体化することができるので
ある。

人もまた大なり 自然の法則は偉大である。だがその偉大さは、認識の主体たる人間を介すること
によって、はじめて意味を与えられる。人間は万物の尺度であった。

【ワンポイント英熟語#OnePoint #Eng'idiomatic】 
It doesn't matter(Eithe (one) is fine) ~どちら(どれ/何で)でもいい
Do you really need whiskey today ?  ね、あなた今日どうしてもウィスキーいる?
It doesn't matter.
どうでもいいよ。 
こんなやりとりを毎日のように、スマートフォーンで彼女と交わしている。

【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅷ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
はじめに
国家が人々の所得を直接保障すべきだという考え方、国家がベーシック・インカム(BI、基礎的
所得)を給付すべきだという発想は、それなりの歴史を持っている。しかし、これを実現するため
には、ある人々の所得に課税して、他の人々にそれを分配する必要がある。
すると、そもそも、所得再分配が必要だという議論の根拠はどこにあるのかを考える必要がある。
所得再分配については三つの考え方かおる。功利主義、リベラリズム、リバタリアンの考えである。

ただし、所得再分配の思想と、BIの思想とは別のものである。BIは基礎的所得を保障するもの
だが、その財源として、より所得の高い人からより多く取る必要はない。すべての人々の所得に一
律に例えばI〇%の課税を行って、それをBIの財源に充てることも考えられる。BIがその人に
課せられる課税額よりも大きければ、その人は他人の所得が自分の所得に再分配されている。また、
BIが、その人に課せられている課税額よりも小さければ、その人の所得は他人に移転されている。
だから、所得は再分配されていることにはなるが、再分配の程度は大きなものではない。一方、
る水準以上の所得の人にのみ例えば90%の課税を行って、それをBIの財源にすれば、非常に大
きな所得再分配を行うことになる



本章では、所得再分配に関する三つの思想を紹介した後に、BIの思想について説明する。

第1節 功利主義の再分配理論
功利主義は、国民全体の幸福を最大化するべきである、あるいは、政府はそうする権限を持ってい
ると考える。この考えはジェレミ・ベンサム(1748~1832)から始まるものであるが、お
そらく、もっともわかりやすく表現したのはヘンリー・シジウィック(1838~1900)だと
思われる。シジウィックによれば、「社会に帰属するすべての個人の満足を総計した正味残高が最
大となるよう、主要な制度が編成されている場合に、当該の社会は正しく秩序だっており、したが
って正義にかなっている」という(ジョン・ロールズ『正義論 改訂版』32頁、川本隆史・福間
聡・神島裕子訳、紀伊図星書店、2010年、より引用。原著『経済政策』1987年など)。

 NDC分類 321.1

国民全体の幸福は個々人の幸福の総和であり、個々人の幸福は、彼が得ている物質的、精神的な財
サービス、所得、家族の愛情などに依存する。精神的な財・サービスについてはともかく、物質的
な財・サービスをより多く持っている人ほど幸福度(これを効用と呼ぶ)が高まるだろうが、2倍
特っている人の効用が2倍高まるということはなく、2倍未満しか高まらないと考える。2000
万円の所得のある人は、1000万円の所得の人より高い効用水準にあるが、2倍高い効用水準に
あるわけではないというのである。これを限界効用逓減の法則と呼ぶ。同じ1000万円の差でも、
所得が上がるにつれてその価値が減少するからである。この考えは、個々の人々の効用を足すこと
ができるのかなど、疑問はあるが、大ざっぱには説得的であると思われる。

この考えを認めれば、より高い所得の人にはより高い税率で課税することが公平だとなる。これは
累進課税を正当化することになる。本来、累進課税は、課税の公平という観点から考えられたもの
である。特に、戦時における課税について、累進課税を正当化する考えである。まず、より多く所
得や資産のある人は、国土防衛によって得られる利益が大きい。この利益は、所得や資産に比例的
であるだろうから、すべての所得や資産に対して均一の税率で課税することが公平であるとなる。
さらに、貧しい人は、そもそも負担できないのだから、一定額の所得と資産を差し引いてから、均
一の税率で課税すべきであるとなる。

さらに、豊かな人の税金の負担は、それが同じ額であっても、貧しい人の負担感、すなわち、効用
の削減度より小さいのだから、効用の削減度が同じになるように、より多く負担すべきであるとな
る。必要な税金の徴収額が与えられたとき、豊かな人により高い税率で課税すれば、比例的に課税
するよりも、すべての人の効用の和の減少を最小にすることができるはずであるとなる。

この考えをさらに拡張すれば、貧しい人に所得を再分配すれば、豊かな人にとっては小さな効用の
所得を、より大きな効用に変えることができるのだから、社会全体の効用の総和を大きくすること
ができることになる。
ただし、功利主義の再分配理論は、あくまでも社会全体の効用を最大化することを目的としている。
累進課税の程度があまりに高ければ、高い所得の人々は労働やリスクを取った投資を削減し、結果
として所得が削減され、社会全体の効用の総和を減少させてしまうだろう。また、所得の少ない人
に大きな所得が分配されれば、彼らは働かなくなり、所得も減少してしまうかもしれない。したが
って、功利主義から導かれる所得再分配の程度は、それほど大きなものにはならない,

 NDC分類 913.6

第2節 リベラリズムの所得再分配理論
リベラリズムは、社会の制度は公正であるべきだという前提から議論を始める。しかし、公正とは
どのような状況のことだろうか。豊かな人は累進課税に反対するかもしれないし、貧しい人は賛同
するかもしれない。たまたま才能や運に恵まれ、あるいは豊かな家族に生まれた人々とそうでない
人々とは、当然に公正についての考え方が異なるだろう。そこで、人々がこの世に生を得て生まれ
てくる前に集まって、どのような社会が公正であるかを議論するとする。

ここでは、人々は、自分がどのような立場で生まれてくるかを知らない。出生後の世界は、「無知
のヴェール」に包まれているのである。ハーバード大学の哲学者ジョン・ロールズは、このような
思考実験によって以下のように説く(ロールズ前掲書、原善1971年)。
このような原初状態では、人々は自分が最下層に属する可能性について考える。そう考えれば、最
下層の人々の効用を高めることに関心を持つはずである。したがって、公共政策は、社会のなかで
最下層の人々の効用を高めることを目的とすべきであるという。

これは、社会全体の効用を最大化する功利主義とは異なって、最下層の人々の効用を最大化するこ
とを主張している。ロールズの主張は、最小(ミニマム)を最大化(マックス)するという意味で、
マクシミン原則」と呼ばれる。

最下層の人々の効用を最大化するためには、豊かな人々に課税する必要がある。しかし、その課税
があまりにも高いものであれば、再分配できる所得も減少してしまうので、最下層の人々の効用を
最大化することもできなくなる。ロールズ自身、ミニマムの大幅な引き上げは、課税の増大を通じ
て、貯蓄(すなわち投資)と経済効率を引き下げることによって、ミニマムの所得水準自体を長期
的には低下させてしまうことを指摘している(ロールズ前掲書、382~383頁)。しかし、こ
の考え方は、社会全体の効用を最大化するという考え方よりも、最下層の人々へのより大きな再分
配を正当化することになる。社会全体の効用ではなく、最下層の人々の効用により大きなウェイト
を与えているのであるから、当然である

ロールズの原著は1971年に出版され、すぐさま政治哲学の古典となった。アメリカでも日本で
も、大学の政治哲学のシラバス(授業計画書)を見れば、必ず『正義論』が参考文献リストにあが
っている。ロールズが高く評価されたのは、「無知のヴェール」に包まれた原初状態で人々は何を
正義と考えるかという斬新な思考実験が魅力的であったこと、また、経済学者にとって、所得再分
配を社会保
と考えることができ、所得再分配政策の意義を経済学的に分析することが容易になっ
からだろう

なお、1921年生まれ(2002年、81歳にて逝去)のロールズは、太平洋戦争に従軍し、レ
イテ島(日本軍からの観察は大岡昇平の『レイテ戦記』にある)、ルソン島で日本車と戦っている。
ルソン島中部での交戦中、戦友ディーコンとともに小川の水を飲もうと頭を下げたとたん、日本軍
の弾丸が二人の頭をかすめた。さらにその直後、ディーコンと上官は敵情視察のために出かけ、両
名とも戦死する。ロールズは、たまたま血液型が一致したため、近くの野戦病院に負傷兵のための
献血に赴き、死を免れた(ロールズ前掲書、訳者あとがき、782頁)。まさに「無知のヴェール」
に包まれた世界を経験したのかもしれない。

しかし、功利主義であれ、正義論であれ、どれだけ再分配を行うべきかという具体的な基準を示す
ことができるわけではない。すべての人々の効用を数量的に表すことができるわけではないし、最
下層の人々へどれだけ再分配するべきかを金額的に明らかにすることはできない。
自分が最下層に生まれる可能性を考えれば、当然、そのような状況でも何とか希望を持って生きて
いくことのできる状況を得たいと多くの人は考えるだろうが、それが具体的にいくらの所得なのか
はわからない。

 NDC分類 311

第3節 リバタリアンの所得分配論
功利主義にしろ、リベラルにしろ、政府は、国民全体をより幸福にするために、あるいは、社会を
より公正なものにするために、豊かな人々から所得を得て、それを貧しい人々に分配す
る権限を持
っていると考えている。それに対して、リバタリアンは、政府はそのような権限を
持っていない
いう。リバタリアンは、政府が所得の再分配を行う権限を持っているという考
えそのものに反対し
ているのである..


ロールズと同じハーバード大学の哲学者ロバート・ノージック(1938~2002)は、
所得を
得るのは個人であって、社会ではないのだから、社会は、そもそも所得の再分配をする
権限がない
し、正義にかなう再分配の理論を見出すことはできないという。人々が現在所有し
ているものが、
過去の略奪によって得られたものであれ、人々が交換して得られた結果は、お
おむね理屈にかなっ
ているという。ノージックは言う。

  資本主義社会では、人々は多くの場会、他人がどれほど自分に利益を与えてくれると考えるか
  に応じ
てその他人に保有物を譲渡するから、個々の取引と譲渡によって出来上る(分配の――
 筆者)織物は、概ね
理屈に合っており理解可能である。(愛する者への贈与、子供への遺贈、
 援助を必要とする者へ
の施し、等もまた、この織物の理由なしとはいえない構成要素なのであ
 る。)
 (右の一節の註)我々が金を払って手に入れたいと思う物を供給することで我々にいかにして
 仕えるか、を思案するのに他の人々が多くの時間と労力を費やすようにさせる大きな経済的刺
 戟があることが、我々の利益になるのは明らかである。(ロバート・ノージック『アナーキー・
 国家・ユートピア――国家の正当性とその限界』269頁、嶋津格訳、木鐸社、1992年、
 原著1974年)

ここでは、分配の正義ではなく、交換する個人の正義が強調されている。
所得を得る過程が正しいものであれば、結果として得られた所得は正しいのであって、結果として
成立した所得分配状況がいくら不平等であっても、それは正しいというのである。
ただし、ノージックも、個々人の交換と譲渡が始まる前の所得分配を正当化していろわけではない。
過去の不正義が大きいのであれば、それを匡正(きょうせい)することは許されるとしている(ノ
ージック前掲書381頁)。ただし、匡正を実際に行うべきだとも、具体的にどのような状況でど
の程度、それを行うべきかについて詳細に論じているわけでもないので、匡正の実施を抑制的に考
えていたとは判断できるだろう

              原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

個人的に90年半ば、リバタリアンはグローバリズムや新自由主義(=格差拡大経済主義)の延長
で興味を惹かれたが、
度な分業社会(=社会主義)時代にそぐわない思考で、「絶対的な自由」
を希求していることと裏腹に
”不自由な”政治政策に関与しようとするのか矛盾が奇妙でならなか
った。さて、しばらく政治経済思想のお温習いが続く。
                                     この項つづく

  No. 19
● 京都大学 世界で初めて卵原細胞作製に成功

9月20日、京都大の研究グループは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、卵子のもと
になる「卵原細胞」を作ることに世界で初めて成功しとことを公表。ヒトの生殖細胞の発生の仕組
みには不明な点も多く、今回の技術が将来的に不妊症の原因解明や生殖医療の発展に役立つ可能性
がある。成果は21日、米科学誌「サイエンス」電子版に掲載。それによると、
これまで、ヒトi
PS細胞から、精子・卵子のもとになる「始原生殖細胞」に非常によく似た細胞の作製に成功して
いたが、その後の分化は再現できず、生殖系の細胞だと確認できていなかった。
 

今回の実験で、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞に似た細胞を作り、生殖細胞を取り除いたマウス
の胎児の卵巣の体細胞と混ぜて約4カ月間培養。その経過の観察で、卵原細胞になると発現する遺
伝子が77日目で活性化し、卵原細胞特有の形態が認められ、染色体も卵原細胞とよく似た状態だ
った。卵原細胞ではDNA上の目印が初期化されるが、作製した細胞でも初期化が見られ、卵原細
胞に分化させる技術の開発に成功。同
グループは今後、卵原細胞から卵子へ分化させる技術の開発
を目指し、ES細胞(胚性幹細胞)を用いた同様の研究も進める方針。

尚、国の指針ではヒトのiPS細胞やES細胞からできた卵子と精子で受精卵を作製することは認
められていない。

Science  20 Sep 2018:


【資源循環型社会で生れる新ビジネス】
● 
RPF1トンで重油ドラム缶3本半(700L)のカロリーを実現
   
石炭と比較して33%の二酸化炭素を削減

2017年7月18日、中国は世界貿易機関(WTO)に対し、プラスチックや紙など一般廃棄物の輸
入停止を通告。日本ては、行き場を失なった廃ブラスチソク類を処理すべく、RPF 化によるサ
ーマルリサイクルに注目か集まっている。廃プラスチクの処理において注目されている Refuse
derived paper and plastlcs densified Fuel   の略.主に所業系廃棄物のうちマテリアルサイクル
困難な古紙および廃プラスティク類を主原料とした葛品位の固形燃料。再生紙として利用困
難な祇くずや木くずなどのバイ才マス由来のものと、従来、焼却や埋め立て処分されていた廃
プラを徹底的な選別などの工程を経て、適切に破砕・混合・成形。石炭や燃料の代替としても
需要か拡大しつつある。中国の輸入規制は、これまで廃プラスチックを有価で取出事業者に
とりては切実な問題。
                                                                                   この項つづく

【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

● カリウムイオン電池用酸化物正極材料を開発
   資源が豊富なカリウムを用いた新しい“低コスト”蓄電池
9月20日、産業技術総合研究所の研究グループは、 カリウムイオン電池は、資源的に豊富で低コ
ストが期待されるカリウムを用いるという利点から、リチウムイオン電池に続く次世代蓄電池技術
として研究開発されている。現在までカリウムイオン電池用正極材料の作動電位は、プルシアンブ
ルー系で4 V(vs. K+/K)が達成されているが、熱安定性に優れ、より信頼性の高い酸化物材料では
3 V程度にとどまり、高い作動電位を示す新しい酸化物材料が求められていた。今回、結晶構造解
析と理論計算によって候補化合物を選定して、リチウムイオン電池用正極材料の層状酸化物系材料
と同様の4 V程度の作動電位を示す複合酸化物群を開発したことを公表。開発した酸化物群は、結
晶中にハニカム型の層状構造を持ち、この層がカリウムイオンを高速かつ二次元に拡散させる経
路となっている。カリウムイオン電池はまだ基礎研究段階で実用化には時間がかかるが、今回開発
した材料は大きな進歩につながる。

Sep. 20, 2018

尚、これまでに発見してきたカリウム含有複合酸化物について、精密な結晶構造解析によって結晶
構造を決定し、その構造からカリウムイオンの拡散障壁のエネルギーを計算した。さらに拡散障壁
が低い化合物群について理論計算によって作動電位を見積もって、正極材料として有望な酸化物を
選定した。これらの候補酸化物の作動電位を実測して、層状型構造を持ちK2M2TeO6(K2/3M2/3Te
1/3O2
Kはカリウム、Teはテルル、Oは酸素、Mは2価の陽イオンになる金属元素)という組成で
表される4 V程度の作動電位の化合物群を発見。作動電位の実測値は計算結果と良い相関を示す。

発見した化合物群は、比容量は理論値で130~140 mA h g–1、平均作動電位は3.6~4.3 V(vs. K+/K)、
正極材料ベースでのエネルギー密度は470~600 W h kg–1に達し、これまでの酸化物材料を大きく超
える可能性がある。現行の実用リチウムイオン電池用正極材料のエネルギー密度が600 W h kg–1
度なので、同等の性能が期待される。金属元素Mにニッケル(Ni)を用いたK2/3Ni2/3Te1/3O2の場合、
比容量の理論値130 mA h g–1に対して実測値は70 mA h g–1でありまだ改善の余地はあるが、平均作
動電位3.6 V(vs. K+/K)が可能である。さらに、このNiの一部をコバルト(Co)やマグネシウム(Mg
など他の金属元素に置き換えることで、4.3 V(vs. K+/K)まで作動電位の向上が可能である(下図1)。
今回の開発は、理論計算による事前の候補化合物の選択が成功した例であり、新しい材料開発の道
筋といえると結んでいる。


【関連特許事例】

❏ 特開2018-106911 カリウムイオン電池用正極活物質、カリウムイオン電池用正極、
   及び、カリウムイオン電池

【概要】
式(1)で表される化合物を含むカリウムイオン電池用正極活物質。式(1)中、mは0.5以上
2以下の数を表し、xは0.5以上1.5以下の数を表し、yは0.5以上1.5以下の数を表し、
zは0又は正数を表すされるエネルギー密度が高いカリウムイオン電池が得られるカリウムイオン
電池
用正極活物質、及び、前記リウムイオン電池用正極活物質を含むカリウムイオン電用正極、
又は、前記カリウムイオン電池用正極を備えたカリウムイオン電池を提供する。

      KFeMn(CN)・zHO      (1)

【選択図】図1

【符号の説明】10:カリウムイオン電池、12:電池ケース(負極側)、14:ガスケット
16:負極、18:セパレータ、20:正極、22:スペーサー、24:板ばね、26:電池ケー
ス(正極側) 

  Sept. 21, 2018           

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功を誇る者は功を失う

2018年09月20日 | デジタル革命渦論

  Sep. 20, 2018 



                                            
第24章 功を誇る者は功を失う
高くなろうとして爪先で立てば、かえって足もとが定まらぬ。遠くへ行こうとして大股で歩けば、
かえって足がはかどらぬ。不自然な作為は、長続きせぬものだ。自己を知者とみなす者は、知者で
はない。自己を是とする者は、是ではない。自己の功を誇る者は、功を失う。自己を有能とみなす
者は、有能ではない。
自然を離れて作為する者は、物の法則の一面しか捉えていない。これらはみな、「道」から見れば
役立たずである。「道」を体得した者は、そういう一面的な立場を取らない。

 No. 18

 Sept. 18, 2018
図2】2色同時1分子イメージングと阻害実験により、Gタンパク質と相互作用中の mGluR3
速く動くものが多く、クラスリンと相互作用中の mGluR3は静止したものが多いことが明らかにな
った。薬をかけた際に生じる mGluR3の動きの変化は、これらの機能状態の割合が変化することが
反映したものと考えられる。

【細胞膜の受容体1分子の動きから薬効を評価】
● 活性化した
GPCR分子の動きは遅くなる
9月19日、理化学研究所は、細胞の膜にある「Gタンパク質共役型受容体GPCR」が薬を受
けて活性化されると、動きが遅くなることを発見。この成果は、1分子レベルで薬の作用機序を理
解する1分子薬理学の発展や、1分子イメージングを用いたGPCR標的化合物の薬効評価という新
たなドラッグスクリーニング手法の開発につながる。この研究グループは、全反射蛍光顕微鏡を用
いて、生きた培養細胞中で蛍光標識した9種類のGPCRの動画を撮影し、個々の受容体分子の動きを
追跡し、薬による受容体分子の振る舞いの変化を解析。その結果、9種のGPCRは、いずれも活性
化すると動きが遅くなること発見。また、代謝型グルタミン酸受容体(mGluRについて、受容体
の動きと機能の関係を2色同時1分子イメージングなどにより詳しく解析。その結果、Gタンパク
]
と相互作用中の受容体は動きが速いものが多いのに対し、クラスリンと相互作用中の受容体は
動きが止まったものが多いことを解明。受容体の動きと機能の関係は多くのGPCRに共通し、動き
を見ることで新規化合物がGPCRにどのような作用を及ぼすか推定できると考えている。


【概説】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR:G protein-coupled receptor)」は、光・匂い・味・神経伝達物
質・ホルモンなど細胞外のさまざまな刺激を受けGタンパク質を活性化することで、細胞内へと情報
を伝える膜タンパク質の総称。GPCRは薬の標的分子として主要な位置を占め、米国食品医薬品局(
FDA)承認薬の約34%がGPCRを標的にする。現状、薬の標的として利用されているGPCRは、ヒ
トが持つ約800種のうち100種程度であり、まだ高い潜在性を持っている。このため、生きた
細胞においてGPCRの活性を定量する手法の開発は、薬理学・創薬にとって基盤的な課題になる。

  Video
ここで従来は、細胞中のGPCRの活性を評価する場合、GPCR自体を見るのではなく、GPCRが薬を
受けたときに引き起こすカルシウムイオン(Ca2+)や環状アデノシン一リン酸(cAMP)の増減
どの細胞応答を計測することが一般的。しかし、GPCRにより活性化されるGタンパク質の種類によ
り、GPCRが引き起こす細胞応答は異なるため、全てのGPCRの活性を一つの手法で定量することは
困難である。また、細胞には活性化されたGPCRを不活性化する機構が備わっており、不活性化の
過程を定量することも薬効を評価する上で重要となる。GPCRが薬を受けると、Gタンパク質共役受
容体キナーゼ(GRK)によりGPCRC末端部位がリン酸化される。このリン酸化部位を認識しアレ
スチンが結合することで、GPCRGタンパク質と結合できなくなる。GPCRと結合したアレスチン
はさまざまなタンパク質と相互作用することが知られている代表的な分子がクラスリン。クラスリ
ンが細胞膜上で重合して形成されるクラスリン被覆ピット(直径100-200nmのくぼみ)は、GPCR
細胞内へと輸送し、リサイクル・分解する機構を担う。
このようにGPCRは細胞膜上のさまざまな分子と相互作用するが、一連の過程を単一細胞で同時に
定量でききない
。そこで、同研究グループは、GPCRが引き起こす特定の細胞応答を測るのではな
、薬が結合することでGPCR分子自体に生じる振る舞いの変化から薬効を評価することができない
か、生細胞内1分子蛍光イメージングを用いて検証する。

● 研究手法と成果


同研究グループは、まず、モデルケースとしてクラスCGPCRの一つである代謝型グルタミン酸受
容体(mGluR3)を用いた検証を行う。ヒト胎児腎細胞由来のHEK293細胞の、mGluR3を蛍光色素で
標識して全反射蛍光顕微鏡で観察(上図1a)。撮影した動画の各mGluR3の輝点を追跡し軌跡を解析
し、受容体が細胞膜中を動く速さ(拡散係数)を定量する(図1b)。さまざまな薬剤条件下で1分
子イメージングを行い、拡散係数の平均値を比較したところ、mGluR3が活性すると動きが遅くなる
ことが明らかになりました。
さらに、統計解析を行い、拡散係数に基づいてmGluR3の状態で分類し
たところ、速さの異なる四つの拡散状態に分類できました(図1c)。mGluR3を不活性化する薬をか
けると動きの速い分子の割合が増え、遅い分子の割合が減る(図1d左)。一方、mGluR3を活性化す
る薬をかけると動きの速い分子の割合が減り、遅い分子の割合が増える(図1d右)。

だが、mGluR3の動きだけを見ていても、どのような下流分子との相互作用がどの拡散状態と関連す
るのかは分かない。そこで、Gタンパク質と相互作用中のmGluR3の拡散状態の観察に、Gタンパク
質をmGluR3と異なる色の蛍光分子で染色し、2色同時1分子イメージングする。2色の輝点が重な
った領域を抽出し、mGluR3の拡散状態の定量結果、Gタンパク質と相互作用中のmGluR3は速く動
いていることが解明された。さらに、百日咳毒素を用いてGタンパク質とmGluR3の相互作用を阻害
した際に、Gタンパク質と相互作用するmGluR3分子の割合が減少し、速く動くmGluR3分子の割合
が減ることも明らかとなる。

一方、クラスリンとmGluR3についても、同様の2色同時1分子イメージング解析を行うと、クラスリ
ンと相互作用中のmGluR3は静止しているものが多いことが明らかになる。また、mGluR3を活性化
する薬剤の添加とともに、クラスリンと相互作用する受容体の割合が増え、相互作用時間も延びる
ことが分かり、mGluR3分子の動きが薬による刺激依存的に変化した理由の一端が明確になる(図2)。
Gタンパク質やクラスリンとの相互作用はmGluR3だけではなく、多くのGPCRに共通して細胞膜上
で生じる反応。活性化に伴い細胞膜中での動きが遅くなるという現象は、他のGPCRに共通している
のではないかと推測できる。実際に、mGluR3とはアミノ酸配列の相同性がほとんどなく、活性化す
Gタンパク質の種類も様々な8種のGPCRについて同様の1分子イメージングを行ったところ、リガ
ンド刺激依存的に拡散が遅くなることが共通確認されている(上図3)。

 Aug. 20, 2002

今回の研究の手法を化合物スクリーニングは、1分子イメージングの計測効率を大幅に向上させこ
とで、細胞内1分子イメージング自動解析システム(AiSIS)が世界的に普及する。これは愉快だ。

 Jun. 25, 2015

 Aug. 3, 2018
 

 Aug. 3, 2018

【生体適合性3Dプリント材料の世界市場予測】

9月14日、株式会社グローバルインフォメーションは、市場調査レポート「生体適合性3Dプリン
ト材料の世界市場予測 2023年:インプラント & プロテーゼ、プロトタイピング & サージカルガイ
ド、再生医療、補聴器」(MarketsandMarkets発行) の販売開始。それによると、「生体適合性3D印
刷材料市場」は、2018年から2023年の間に、価値の面で22.0
%の年平均成長率(CAGR)と予測
されている――2018年に308.1百万米ドル、2023年には、832.7百万米ドルに達する。三次元印刷は、
使用される技術に応じて、さまざまな方法でレイヤーごとにマテリアルを追加し、直接製造が可能
なプロセス。また、
ポリマータイプ市場は、全体的な生体適合性3D印刷材料市場を占有されと予測
され、
ポリマー材料は、整形外科および歯科用インプラント、補聴器、薬物送達、プロテーゼ、組
織工学足場、および他の医療用途がある。これらの材料は、金属およびバイオ材料と比較し、成形
が容易で、生体適合性高く、生分解性可能であるとともに廉価が特徴――生体適合性3D印刷ポリマ
ー市場で、予測期間中に高い成長が見込まれる。
なかでも、組織工学向け生体適合性3D印刷材料市
場の伸長は最高予測され、
細胞培養、骨再生、薬物放出、軟組織作製、組織構築などの用途に細分
課される。年齢、疾病、事故、および先天性障害による組織/臓器不全の増加症例は、世界的な医
学課題の生体適合性材料を用いる3D印刷は、ドナー/組織適合性を高めることで問題解できる。ま
た、
身体部位のバイオ製作と器官印刷の研究投資増加と相まって急成長分野と位置づけられている。
形成外科用の
生体適合性3D印刷材料市場は、粉末、液体などに分類され。主要な粉体系には、イン
プラント/人工器官、バイオ製作/外科用器具などの市場がある。

  Sep. 18, 2018

【環境ビジネスフォーラム:環境戦略と事業戦略の一体化が重要】
●大きく変わる世界の流れ

8月24日、東京・日本橋で、日本ビジネス出版社主催の「環境ビジネスフォーラム」が開催。各
後援者からは「潮目の変化を感じている」との共通認識が示され、「気候変動は社会安定への脅威
なっている」とし、RE100などの仕組みを経営にどう活かすかについて講演がなされた。
『気候変
動イニシアティ
ブ』に多数の企業・自治体が参加する等、潮目の変化を感じるとの共通認識を同じ
くする。これは、SCOPE3への取り組みからもわかるようにサプライヤー全体の話で、日本全体で
RE100
対応しなければ、サプライチェーンから外されるという危機感がある一方で、これはチャ
ンスととらえる側面もある。具体的には、❶「好循環形成の起点となる目標を、まず宣言する。❷
『環境戦略』と『事業戦略』を一体化して進めること ❸そして、最も重要なのが「共創」という
考え方で、多様なステークホルダーがともに手を取り、得意分野を活かしあい、取り組むことが必

要。脱炭素は新たな企業価値を作り上げ、それは一企業体の話にとどまらず、これら取り組みは政
策上の優先順位が上がってきている。政策の優先順位が上がれば、マーケットが動く。この動きは、
社会全体の好循環
を生み出すチャンスと提案されている(上図参照)。


                

 

 

  ● 今夜のアラカルト

酢納豆が身体によいというので夜食や夕食にかならず口にしているが、ネット上では常識みたいで
掲載記事が満載。でも部屋中がくさくなる(彼女のクレーム)こと、口内に残るねばねば巻と口臭
と朝の排便(べんぴ予防)でオリーブオイルをかけてにおいや違和感やお通じを抑制/改善に成功
しているが、オリーブオイルを加える記事も掲載されているのでブログ掲載を避けようと考えたが
お通じの記事は見あたらないので予定通りアップする。

 ● 今夜の一曲

David Guetta feat Anne-Marie ”Don't Leave Me Alone ”

 

  Sep. 20, 2018 

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秋日和の湖岸を疾走

2018年09月18日 | 日々草々

  Sep. 20, 2018 



                                            
第23章 あるがままに
ことあげするのは自然ではない。自然は黙々としている。疾試験雨も、長くは続かない。風雨を起
こすものは、いったい誰か。天地である。天地でさえ、この不自然を長く続けることはできないの
だ。まして人間の作為など、長続きするわけがあろうか。
「道」にのっとる者は、つねに自然である。だから「道」を体得した者は、「道」は道として認め、
「徳」は徳として認め、「失」は失として認め、「道」「徳」「失」の間に、絶対的な差別を設け
ない。道」をあるがままに受けいれ、「徳」をあるがままに受けいれ、「失」をあるがままに受け
いれる。すべてをあるがままに受けいれれば、自然と合体して、無限の自由を獲得できるのである。

道は道に同じくし、徳は徳に同じくし、失は失に同じくす 老子は「道」さえも絶対化しない
絶対化するとは、とらわれることにほかならない。絶対化された道は、すでに「道」ではなくなっ
ているのである。

※ 相対性の絶対化 ➲ 唯識論?

  Sept. 17, 2018

【世界初 ドイツでアルストム燃料電池列車が商業運行】

9月16日、水素を燃料とする燃料電池旅客列車が運行を開始する。発売前にドイツでメディアに
公表された。それによると、ニーダーザクセン州の北西部の鉄道会社は、この列車を月曜日に12
4キロメートルの線に沿って商業運転に移す。列車には空気の酸素と反応して電気を発生させる水
素タンクが装備されてる(下図参照)。フルタンクでは、列車は千キロメートル走行できる。水素
次世代のクリーンエネルギー源として注目されている。列車を開発したフランスのメーカー、アル
ストム(Alstom)は、世界で初めて商用サービスに参入する水素機関車。列車は二酸化炭素を排出
しないが、水素製造工程では排出される(将来は、再生可能エネルギーで水素を製造することで二
酸化炭素排出ゼロにがき、また、水素の取り扱い(改質装置を使用することで、メタン、アンモニ
アなどを原料と使用できる)。

この列車の特徴は、❶温暖化ガス排出ゼロ、❷排気ガス汚染ゼロ、❸静粛である、❹無高架線(デ
ィーゼル機関車と同じ)、❺また、舗装されていれば無軌道化も可能で、事故、テロによる爆発リ
スクを場外すれば未来の公共移動体として魅力的である。

 Sept. 16, 2018

  Jan. 17, 2017

 Decn. 26, 2017


【関連特許事例2件】

US8216732B2

US8117969B1



【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】



● 革新的な太陽光パラソル(Solar Umbrella)日本進出

9月11日、世界最大の薄膜パワーソリューション企業であるHanergy Thin Film Power Groupは、販
売、流通および研究開発に卓越した能力を持つ日本の著名なアウトドア製品販売会社である株式会
Acalie(Acalie EC)と契約を締結したことを公表。今回の動きは革新的な太陽光パラソルの販売で
日本市場へ進出しようとするHanergyの取り組みを堅固なものにする。HumbrellaはHanergyによる太
陽光傘製品で、同社の先駆的な薄膜発電技術およびパネルを利用。Humbrellaは、Hanergyのモバイ
ルエネルギー・ソリューションの成長し続ける製品リストのうち最新のものである。世界最高の転
換効率を有する薄膜太陽光パネルとごく普通の傘を組み合わせたHumbrellaは、オフグリッド時の電
力供給、蓄電、夜間照明およびターミナル充電を含む4つの機能を統合する。Humbrellaは直径2.7
メートルで、軽量かつフレキシブルな薄膜太陽光パネルのおかげで重さはわずか6.8kg同社は太陽
光を転換し最大4万mAhを蓄電し、夜間10時間の高品質な読書時間、または3000mAhのスマー
トフォン10台以上の充電を保証する。照明に加え、4つのUBSポートを備え、ランプ、小型扇風機お
よび電気虫除け器などの接続が可能。



● 欧州7月のソーラー発電量 過去最高の6.17テラワット時を記録

今夏は、夏の気温が暴落したため、ヨーロッパで新たな太陽光発電量を見せた。英国では6月21
日から28日にかけて太陽光が毎週記録、533ギガワット時のエネルギーを生産。発電
量の急上昇
により、ソーラーが世界最大のエネルギー源の天延ガスを追い落とすと予想されている。7
月には、
ソーラー生産量が6.17テラワット時と過去最高を記録。
さらに北部では、デンマークが5月に
361時間の日照記録。
これは太陽光発電の33%の増加をもたらし過去の記録を破る。オランダで
は、晴れた7月に昨年同月よりも75%多い発電量を記録。
今年の熱波の影響の1つに、太陽光発
電の記録的な発電量である。
2018年の欧州の熱波が火力発電所を停止のため、従来型の発電用に大規
模な太陽光を蓄えた。
フランスやドイツでは、発電所の冷却に必要な大量の水をもはや使用できな
くなり、断続的な供給が行われ、石炭や原子力発電所の電源停止しなければならなかったが、これ
ソーラーが補い、
ヨーロッパの電力網を安定させている。今年の夏のヨーロッパでの太陽光の記
録的なパフォーマンスの功績の大半は、地球温暖化と関連している暑く乾燥した天気に恵まれたが、
ヨーロッパではこれまで以上に多くの太陽電池供給に余力を蓄えている。



SolarPower Europeの数字によると、17年には欧州のソーラー市場が28.4%成長。これにより、
地域の総設備容量は107ギガワットに達した。猛暑は
はソーラー性能劣化させ 7月の熱波で、
北極圏の一部で温度が30℃以上に上昇。
今年の太陽記録は国によって異なるが、オランダでは、
晴天と合わせて能力増強が、新しい太陽光記録につながっている
原因が何であれ、来年の夏には
ヨーロッパ全体で太陽記録を書き換えると予測されており、昨年12
月にドイツの最新の太陽光発
電でメガワット時に€43.30(50.35ドル)の常最低価格を記録。
ヨーロッパはここ2、3年で過渡期に入
っており、
欧州連合が太陽光発電拡大促進する立法案に合意により、次の成長段階に入いる。ドイツだけ
で2ギガワット以上の容量追加できると見込まれている。
フランスの設備も今年ギガワットと予想されている。
これにより、SolarPower Europeの中規模の成長シナリオでは、欧州全体の太陽電池容量は116ギ
ガワット、19年には129ギガワットまで上昇する可能性があると予測。
今年はドイツが445
ギガワットを上回り、来年はイタリアとフランスがそれぞれ20ギガワットと10ギガワットと予
測する

 Sept. 13, 2013

DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.10.034015

【量子ドット工学講座
No.56:スピン情報を増幅する半導体ナノ構造】


9月10日、
北海道大学らの研究グループは、電子情報を光情報に変換する半導体光デバイスで、
電子のスピン情報を増幅・時間的にも一定に維持できる新しいナノ構造を開発したことを公表。

子には,磁石の性質をもたらすスピンと呼ばれる状態がある。電子のスピン状態の偏りを表すスピ
ン分極率は,鉄やコバルトなど金属の強磁性体では一定の高い値を保つ。しかし金属では,電子情
報を光情報に変換する発光ダイオードやレーザーなどの光デバイスが作製できないい。
一方,光デ
バイスに用いられる半導体では,逆に,電子のスピン分極率が刻一刻と低下するスピンの緩和現象
が避けられないため,スピンの情報が失われる。
そこで研究グループは,大きさが数十ナノメート
ル以下で電子の個数を厳密に制御できる半導体のナノ構造である量子ドットを利用して,スピンが
反転し緩和した電子を選択的に除去することを考えた。これによりスピン分極率を高めたり時間的
に一定に保つことが可能になる。

スピンの選択的除去を効率よく行なうためには,極めて小さな量子ドットの間で,スピンが分極し
た電子を量子力学的に結合させる(トンネル効果)必要がある。そこで,薄膜状の量子井戸という
別のナノ構造を量子ドットにトンネル結合させた新しいナノ構造を作製したところ,発光中のスピ
ン分極率を最大80%まで高めるとともに,発光が生じている時間中に一定の値に保つことができた。

この研究では,量子ドット間の電子の波動関数の結合であるトンネル効果の強さを,量子井戸の膜
厚という簡単に制御できる構造パラメーターのみで精度よくコントロールすることを可能にした

 

 

 



敬老の日は、大阪の甥の結婚披露パーティーに出席(参加者百名)、今日は、二人とも疲れた身体
にも関わらず、久しぶりの秋日和とあり、近江八幡のシャーレとラ・コリーナに出かける。平時に
も関わらず大勢の客が遠くから車で集まっていた。稲刈りの最中で束の間の貴腐ワインのような贅
沢なひとときを体験し帰宅。新郎・新婦家族とその友人たちに幸多かれ!

  今日はお休みでした。



 



 ● 今夜の一曲

  Sep. 20, 2018

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防災独立型サニテーションシステム

2018年09月16日 | WE商品開発

 

  Sep. 13, 2018

 



                                            
第21章 不滅のエネルギー
普巡存在としての「道」は、かすかでおぼろである。捉えどころのないその底に、物象が潜んでい
る。奥深く探りがたいその底に、エネルギーが潜んでいる。そのエネルギーは、不滅である。そこ
に確固たる法則がある。
太古より今日に至るまで、「道」は絶えることなく存在し、万物を統括している。わたしは、何に
基づいて万物を理解するのか。それは、万物の根元である「道」に基づいてである。

普遍存在としての道〉 原文は「道の物たる」。「物」とは、知覚される個々の物質ではなく、
その根元をなす質料因をさす。

 

第22章 うつろだから満ちる
欠けているから、完全になる。まがっているから、まっすぐになる。うつろだから、満ちる。古い
から、新しくなる。少なければ得、多ければ失う。これが自然の法則である。この法則を体得した
聖人は、自己を主張せずに「道」にのっとることによって、おのずと天下の規範となる。

自己を知者とみなさぬから、かえって人から知者とされる。自己を是とせぬから、かえって人から
是とされる。自己の功を跡らぬから、かえって功を認められる。自己を有能と考えぬから、かえっ
て能力を讃えられる。

自己を否定して人と争わぬ特に、争いをしかける者はけっしていない
「欠けているから完全になる」という古人の言に、何のいつわりがあろうか。自己主張を捨てて
「道」にのっとったときにのみ、徳は万全の力を発揮するのだ。

※アリストテレスの説いた四原因の一。事物が生成するための素材となるもの。 質料因(羅: causa
materialis
)意外に、形相因(羅: causa formalis):そのものが「何であるか」 を規定するもの 作用
因(羅: causa efficiens):そのものの運動変化の原因、目的因(羅: causa finalis):そのものが存在し、
運動変化する目的 からなる。
 

  Four causes of Aristotle


 

【特集:胆振(いぶり)地方中東部地震】
月6目、北海道胆振地方中東部を震源とすM6、7、最大震度7の地震が発生。広範囲にわたって
土砂崩壊が起き、約40名の犠牲者が出
た。この度の地震でお亡くなりになられた方々のご冥福を
お祈り
するとともに、ご家族の皆さまにお悔やみを申し上げます。また、怪我をされた方々、被害
に遭われた方々に心よ
りお見舞を申し上げます。まだ多くの余震も発生しています。引き続きご注
意くださ
い。

さて、このエリアである「北海道道南・青森県」は、「MEGA地震予測」では「要注意」のエリア
でした。8
月22目号掲載のAI地震予測ではレベル4のエリアに該当。また、えりものPv観測点に
前兆と思われる異常が現れている。MEGA地震予測」では胆振地方が約3ヵ月前から隆起から沈降
に変化していることに留意していた。7月25日号で初めて「胆振(いぶり)地方は沈降をしてい
ます」とコメントを出すが、その後胆振地方の東側の沈降は収まり、苫小牧から札幌付近までの沈
降が目立つようになったため、表現を苫小牧から札幌のエリアに改める。

・長期的傾向を見ると、上図1に示すように、6か月前は緑色の隆起エリアでしたが、3か月前に
 は青色の沈降が目立ち始める。
・地震直前の9月5日号で掲載した隆起・沈降図では苫小牧から札幌に向けてはっきりと青色の沈
 降帯が現れていた(上図2参照)。経験則から沈降は隆起よりも地震発生に強く影響を及ぼす要
 因であるので警戒しなくてはいけない現象である。
・上図3は苫小牧から札幌にかけて現れた沈降帯と震度5以上の揺れた市町村を示しる。震度分布
 を見ると沈降帯の東側の境目で大きく揺れていることが分かる。
・以上を要約すると、今回の胆振地方中東部地震のキーワードは、「沈降が進行し、隆起に転じた
 現象」であり、これが地震を誘発したと解釈
・地震直前に超低気圧の大型台風が通過して、吸い上げられた地盤が急激に沈下したことも誘因の
 一つと考えられます。雨で緩んだ地盤が激しく揺られたことが大規模な地すべりを起こし、被害
 を大きくした原因であると考えている



【防災独立型サニテーションシステム】


● 独立防災型生活用水の確保

井戸から飲料用水をポンプを使用して取水し、浄化装置、滅菌器及び除鉄槽等の沈澱槽を介して飲
料用水供給装置があるが、大震災等の災害が発生した場合、従来の取水装置では取水管の破損等に
より災害時に使用不能になったり、防火用水は防火壁の破損により、消火はもちろん生活用水とし
ても利用不能の場合があり、破損を免れても水の腐敗等により生活用水として使用できない、ある
いは停電で作動させられない等の問題が生ずる可能性がある。このように、大震災時においても取
水可能で安価な、耐震型飲料水用井戸装置が提案されているが(上下図参照)、例えば、下図の実
用新案は、井戸の開口部材(2)に井戸のケーシング(1)を地震から保護する手段(3、4)を
設け、ケーシング(1)の下端に水中ポンプ(30)を設け、取水した水を浄化、滅菌するととも
に、内燃機関で駆動する非常用電源(26)――ここで、符合19は流し台、符合31はフェンス
を示し、したがって、大地震等の災害時においても、井戸のケーシング1の上端部は開口部材2と
の間で破損することがなく、水中ポンプ30と貯水タンク10とを接続する樹脂製のチューブ5は
ケーシング1の内側に保護され、耐圧性フレキシブル管を介して接続されているので、破損により
取水不能となることがない――を備え、大震災時においても取水可能な耐震型飲料水用井戸装置
安価に提供できるとしているが、地震による井戸そのものが破損や水脈涸れは想定されておらず、
また、耐震・耐浸水パッケージ化などの詳細も不詳である。


【符号の説明】
1 ケーシング 2 開口部材 3 緩衝部材 4 保持部材 5 チューブ 6 耐圧フレキシ
ブル管 10 貯水タンク 11 活性炭ろ過機 12 滅菌器 13、14、17 水回路
16 沈澱槽 20 滅菌液タンク 26 非常用電源 30 水中ポンプ

また、下図の株式会社ホクコンの可搬式緊急総帥ユニット(ETU型)の手押しポンプタイプであれ
ば電源喪失の場合でも既存の井戸に異常なければ取水接続口と接続すれば揚水供給可能だが、前述
と同様、水脈涸れ、井戸の破損に対応できない。従って、鑿井(さくせい)時の耐震対策の有無が
前提となる。また、揚水ポンプが水中ポンプ方式か地上置きポンプ(渦巻き式/容積式)が問題と
なり、前者なら地震応力で機能不全となる可能性が高くなるが、後者なら取水配管材料/構造を配
慮しておれば、水脈涸れがなければ揚水できる。さらに、後者の場合手押しポンプではなく、容積
式ポンプの電動軸に回転式手動衝動伝動ユニットを付加しておけば自動/手動兼用が可能である。
 

 

また、この項の表題図の株式会社ホクコンの独立型太陽光発電システム「エコソーラーユニット」
ESU型)をのように蓄電池とセットにすれば、原理的には、電源は担保されるから、後は耐震構
造型埋設貯水槽に火災鎮火用水として、あるいは、通常のサニタリー(sanitary)用水として使用で
きる。下図、特許事例は、ソーラーパネルを熱や降雪、汚れなどからまもる散水装置ものだが、水
源を井戸、降雨――集中豪雨による浸水・洪水等の自然災害を抑制するシステムや、夏場に代表さ
れる水不足・温暖化対策なども視野にいれた、自然資源の雨水の利用――貯槽(+上水/下水)と
しソーラー(+系統電力)+着電池を動力現にすることで防災独立型として参考できるの掲載。


  特開2016-089491

● シャワーの水、浄化し9割再利用 WOTA  May 9, 2018

WOTAは14年、独自のろ過フィルタ開発でない市販のフィルタとセンサを組み合わせ、自社開
発のソフトウエアを活用。センサから集めたデータで水の流量や汚れ具合、温度などを測定すると、
水質の状態やフィルタの汚れ具合を予測。事業化の際にはフィルタの汚れ具合から利用料金をはじ
き出し最適設計を行う。目標は、シャワーや洗面台に装置とシステムを接続し、複雑な工事を不要
にし、家電を置くような感覚で、1日で水道のインフラを整備する。太陽光発電や蓄電システムな
どで電源さえ確保できれば、孤島や砂漠、山岳地帯のような場所でも水が使える。水源や上下水道
に依存する必要がなく、人間の生活エリアが未開や宇宙開発につながる(上図参照)。

16年4月に起きた熊本地震では、トラックの荷台にシャワーブースをくくり付け、東京から被災
地に駆けつける。「プライベートな空間で浴びるシャワーと公衆浴場では、疲れの取れ方が全く違
う」。被災した人からの声に、事業化の意義を感じる。
実用化にはまだ課題もある。現在は1台数
十万円かかる。実用化の段階では量産効果でコストダウンを図る。
さらに、現時点では再利用でき
る水の種類が限られる。今の技術レベルでは台所やトイレの排水などは浄化できない。フィルタで
除去するだけでなく、微生物を使って分解して浄化する技術が必要になる。生活で使う全ての水を
まかなうには、もう一段のブレイクスルーが必要。
水が貴重な中東や国土が広い米国から強い関心
が寄せられているが、日本も決して人ごとではないはずと語る。高度経済成長期に整備が進んだ上
下水道は老朽化に直面し、近い将来、莫大な更新コストが必要になり、人口減少が進めば、限界集
落のようなインフラそのものの維持が難しいエリも広がると予測している(日経産業新聞 2018.
05.02)。このように、WOTAの水縦貫システムは、精密濾過膜技術(精密・限外濾過・逆浸透)
とセンサ(電気伝導度)をAI(人工知能)制御システムをパッケージ化を特徴とする。

● 生活排水の完全循環システムの考察

 Jul. 27, 2007

ここで、生活排水のなかで屎(し)尿処理の高品位化が架台となる。大きくは生物処理(好気性+
嫌気性:下図参照)と
非生物処理(マイクロバブル/オゾン/水中プラズマなど)に分けられ、さ
らに、前者は単独型と合併型)とに分けられ、さらには、嫌気性生物型にはメタン発酵からのメタ
ンガスの燃料電池発電化も考えられる。参考に上下図に生物処理型技術課題と事例技術を掲載(参
照)。

  Nov. 7, 2017

● 排水ゼロの循環式水洗トイレ 
高知市の建設会社「ダイドウ」が販売する循環式水洗トイレ「リサイくるん」が熊本地震被災地で
注目を集めた。排水ゼロ、年数回のくみ取りで使用でき、衛生面の不安も少ない。震度7を2度観
測し、大きな被害をで受けた熊本県益城町にも5月に設置され、災害時のトイレとしても期待され
る。
復興拠点「益城町災害ボランティアセンター」には、全国からボランティアが集まる。駐車場
そばの仮設トイレは、同社が無償で貸し出した(排水ゼロの循環式水洗トイレが注目 熊本地震被
災地にも設置、 産経WEST 2016.06.18)。

 Jun. 18, 2016

特徴は、微生物を利用した活性汚泥処理や、ろ過を独自に組み合わせて汚水を浄化し再利用するシ
ステム。無臭・透明な洗浄水が循環し、排出されない。日約200回の使用で、汚泥のくみ取り
は数カ月に1回程度
。従来の循環式トイレは1日約100回が限度。組み立ては不要、バッテリー
で稼働し災害太陽可能。
5年前の東日本大震災で、被災地の不衛生なトイレを目の当たりにして、
同社が培った水道・土木工事のノウハウを生かせないかと考え、開発をスタートさせた。高知高専
などと共同で開発し、処理能力向上につなげる。
外部からの水も電気も必要としない「自己完結ト
イレが理想」で。水洗などの電力に太陽光発電を利用することも検討中している。

ところで、下図の二シム電子工業のような完全自己処理型トイレ(詳細不詳――山岳用の自己処理
型トイレ
に動力としてソーラー/バッテリーを付加したものではないか?)なども商品も提案され
ているが、ここでは、道機産業株式会社のマイクロバブルを使った処理装置を掲載する。

❑ 特開2011-069111 循環式生分解処理トイレ 道機産業株式会社

【概要】
従来、トイレの汚水を生分解処理し、洗浄水として再利用する循環式の糞尿処理技術が提案されて
いる。例えば、水洗用便器と、水と形のある排泄物やゴミとを分離するための分離貯留槽と、微生
物培養素材を内蔵した曝気槽と、オゾンを内部に導入するオゾン槽と、浄化水収納槽とを有し、水
洗用便器と分離貯留槽と曝気槽とオゾン槽と浄化水収納槽との順を経て再び水洗用便器に至る順に、
自然落下とオーバーフローとポンプによる上昇移動とによって水を循環させる循環式水洗トイレが
あるが、水を循環させるためのポンプの他に、別途、曝気用空気を導入するためのブロワーを各曝
気槽に設置しなければならず、イニシャルコストが高くなることはもとより、常時運転させると消
費電力量が大きくなり、ランニングコストが膨大になる。また利用人数が多い場合には、頻繁に汲
み取りしなければならず、メンテナンスコストが膨大になるという問題がある。また、人里離れた
僻地等のように交通の便が悪い場所に設置した場合には、わざわざそこまでバキューム車で赴かな
ければならないという問題がある。

本件は、便器を洗浄水で洗浄した後の糞尿を含む汚水を、隣接配置された複数の処理槽に順次移送
させながら生分解処理と脱色処理を行って再び洗浄水として再利用する循環式生分解処理トイレ
あって、所定の処理を終えた後の処理槽内に揚水ポンプの吸入口を配置するとともに、その所定の
処理を終える前の他の処理槽に前記揚水ポンプに連結されており前記汚水にマイクロバブルを混入
させて噴射可能な噴射ノズルを配置し、前記所定の処理を終えた後の汚水を前記処理前の他の処理
槽に戻して循環させながら浄化する。下図のごとく、便器2を洗浄水で洗浄した後の糞尿を含む汚
水を、隣接配置された複数の処理槽に順次移送させながら生分解処理と脱色処理を行って再び洗浄
水として再利用する循環式生分解処理トイレ1であって、所定の処理を終えた後の処理槽内に揚水
ポンプ7の吸入口を配置するとともに、その所定の処理を終える前の他の処理槽に揚水ポンプ7に
連結されており汚水にマイクロバブルを混入させて噴射可能な噴射ノズル8を配置し、所定の処理
を終えた後の汚水を処理前の他の処理槽に戻して循環させながら浄化することで、1つのポンプを
共用して汚水の循環と生分解処理のために必要な空気の供給を行うとともに、糞尿を効果的に破砕
し、消費電力量を抑制することができる環式生分解処理トイレを提供する。
 特開2011-069111
【符号の説明】
 1  循環式生分解処理トイレ   2  便器   3  投入処理槽   4  濾過処理槽   5  脱色槽   6  貯水槽 7,7a,
7b,7c  揚水ポンプ   8  噴射ノズル   8a  糞尿破砕用ノズル   8b,8c  空気供給用ノズル   9a,9b,9c  ス
トレーナ   21  ロータンク   31  移送開口部   32  接触材   41  濾過材   42  鋸歯状仕切板   42a  鋸
歯部   43  パンチングメタル板   44  上端開口板   45  下端開口板   51  脱色材   71  吸入管   72 
吐出管   73  給水管   81  本管   81a  通水路   82  吸気管   83  入水口   84  噴射口

【関連特許技術】
・特開2016-011524 災害用循環式水洗トイレシステム 株式会社ダイドウ
特開2017-119280 汚水処理装置 株式会社栃木日化サービス
・特開2017-217571 可搬式浄化槽 JFEエンジニアリング株
・特開2015-217136 仮設トイレ収容型地下貯蔵槽 株式会社CNT 他
特開2015-073979 有機性廃水処理方法及び装置並びに化成肥料の製造方法及び装置 水ing株式会社
・特開2013-194474 退避施設 株式会社ホクコン 他

● 防災独立型サニテーションシステム

さて、わたし(たち)が想定する「防災独立型サニーステーションシステム」は、地震、洪水、火
災を回避(避避)地(学校/公園/集会場などの公共施設)に1日500人以上利用できる、給水
(飲料/生活用水:トイレ、洗面、シャワー、入浴)が可能な完全独立、つまり、循環使用できる
設備で、動力はソーラー&サーマル(+ピエゾ)/蓄電池/メタン&水素燃料電池を備えたシステ
ムであり、バリアフリー/百パーセント再生可能エネルギーを前提に設計仕様決定される。このた
め上下水水の接続は選択肢を前提としている。循環処理設備及び付属タンク類は基本地下埋設とし
て設備は耐震/耐浸水/耐熱・保温(凍結防止)仕様である。尚、水処理方式には電気分解、各種
精密濾過、オゾン、水中プラズマ、紫外線、マイクロバブルなど、さらに、飲料水は魚縮水も選択
肢に入る、以上、足早にみ考案してみた。これで海外展開できる事業の素地は完成したことになる。

 ● 今夜の一枚

  Sep. 13, 2018 

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秋バテの相思鳥

2018年09月13日 | デジタル革命渦論

  Sep. 13, 2018



                                            
第20章 愚者の心
知識を万能視する考えを断ち切れば、悩みはなくなる。礼に適うといい、適わぬといっても、どれ
だけの違いがあろうか。善といい、悪といっても、どれだけの差があろうか。ひとがするから自分
もそうする。これではドウドウめぐりで、悩みはいつまでも尽きない。人々は浮き浮きと楽しげだ。
あたかも酒宴の麿にあるかのよう、花見に興じているかのように。だが、わたしの心は、静まりか
えって勁かない。まだ笑いも知らぬ赤子のよう。何をしようという気も起こらぬ。

人々はみな意欲に満ち溢れている。
だがわたしだけはボンヤリと、すべてを忘れはてている。
わたしの心は愚者の心だ。何ひとつ分別がつかぬ。
人々はみな明敏だが、わたしだけは暗愚だ。
人々は決断力に富むが、わたしには伺ひとつ分明なものはない。
定めなくたゆたう海、あてどなく吹く風、それがわたしの姿である。
人々はみな有能だが、わたしだけは木偶に等しい。
わたしだけが人々から離れて、母なる自然のふところに抱かれようとする。

礼に適うといい……〉 原文「唯と阿とは」。「唯」はハイというていねいな返事、「阿」は
アア、ウンといった粗野な返事、いずれも擬声語である。
母に食(やしな)わるるを貴ぶ 大衆社会状況のもとにおいて、人間はどう生きるべきか。キエル
ケゴールは、個性を失った平均人からの「例外者」として、ただひとり絶対者の前に誠実であろう
とした。

  Søren Aabye Kierkegaard Wikipedia

   

● 今夜の一品:iPhone XS/XS Maxでわかっていることすべて
9月12日、アップルは、カリフォルニア州クパチーノの本社にある「スティーブ・ジョブズシア
ター」でiPhoneの新製品を発表。
初代モデルの発売から10周年にあたる去年、発表されたX」
の後継機種として画面が5.8インチの「iPhone XS」と、画面がこれまででもっとも大きい
6.5インチの「iPhoneXS Max」を披露。
いずれもディスプレーには鮮やかな色彩が表現
できる有機ELパネルが使われ、カメラ機能を向上させている。このうち最高機種の「iPhon
eXS Max」は価格が12万4800円からで今月14日から予約の受け付けを始め、21日に発売
する。顧客層を広げるために価格を抑えたという機種もあわせて披露した。
アップルのティム・ク
ックCEOは発表会で、「iPhoneを新たなレベルに持って行く。最先端の端末となる」と語
る。銅社
は高価格帯のiPhoneの売り上げの増加に支えられて好調な決算が続いており、先月、
会社の規模をみる指標の時価総額がアメリカ企業として初めて1兆ドルを突破。
新製品の売れ行き
はアップルに部品を供給する日本のメーカーの業績にも大きく影響するだけに消費者の受け止めが
注目されている。

 



【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

● マイクログリッドはやり方次第 高い電力自給率を実現

 Aug. 31, 2018
 Aug. 29, 2018

8月29日、「持続可能性」の課題に取り組むベンチャー企業・Metabolic社は、「SIDEシステム」
と呼ばれるシステムが再生可能エネルギーへの移行にどのように貢献しうるかを調査し、常生活の
中で使う電力は、火力・水力・原子力・風力などは
、生活の場から離れたところに建設された発電
所で集中的に生み出され、送電線を経由して供給されるが、これに対し、小規模発電施設を生活の
場の近くに作り電力需要する「マイクログリッド(小規模発電網)で、地域の電力需要のほとんどを
自給自足できることを公表している。それによると、4
つの地域に対して、それぞれ複数のSIDE
ステム(Smart Integrated Decentralised Energy:スマート統合分散型エネルギー)導入シミュレーショ
ンのパターンが示されている(上の2つの図参照)。

例えば、オランダ東部にあるAardehuizenでは、3つのシナリオが示され、23軒の集合住宅からな
る地区で、電力会社の送電網に頼らないオフグリッド住宅「アースシップ」で、2015年に完成
している。また、
シナリオは、❶:ローテクとハイテクの出会い、❷:よりスマートなグリッド、
❸:根本的なリデザインの3ケース。

まず、シナリオ❶の場合、地域全体にソーラーパネルが275枚、太陽熱発電パネルが20枚、ヒートポ
ンプが3基、薪ストーブが22基、電気ボイラーが22基設置。
地域内のエネルギーの動きを示し
た下図は、左側が供給元、右側が供給先を示している。完全な自給自足ではなく、送電網から73
2メガワット時の供給を受け、地域内では太陽光発電で76.4メガワット時を発電している。この
うち、82.4メガワット時が最低限維持されるベースロードで、一方で41.7メガワット時は売
電される。


 
下図は経年コストを比較したグラフ。斜めに引かれたグレーの直線が従来のシステム、緑色のライ
ンがシナリオ1で、縦軸は1目盛りが100万ユーロ(約1億3000万円)、横軸は年数を示し、シナリオ1
の場合、11.6年で元が取れる(従来のシステムのコストに並ぶ)見込み。
シナリオ2では、スマー
トメーターを設置して、もっと積極的なモニタリングを実施するなどの変更が加えられている。


また、必要電力量は107.9メガワット時、生産する電力量は76.4メガワット時。自給率は32.2%。


エネルギーの流れも変化。ソーラーパネルを増やしたことで、太陽光発電の発電量が136.8メガ
ワット時に増加。これに合わせ、19.5メガワット時を蓄える蓄電池を設置。



シナリオ2の場合、初期投資がかなり大きくなるため、その後の省エネ効果があっても、投資の回
収には16.5年ほどかかる見込み。

シナリオ3は、できるだけ自給率を高めることを目指したもので、小型のコジェネレーションシス
テムも導入することで、発電をカバー。コジェネレーションシステムは熱電併給とも訳されるよう
に、発電時の廃熱を冷暖房に生かしてエネルギー効率を高めている。




オランダ政府はパリ合意のもと、2050年までに二酸化炭素の排出量を80%~95%削減する
と約束しており、その実現には相当な努力が必要となるが、エネルギーを自給自足するマイクログ
リッドを適切に導入することで、インフラ整備にかかる支出を抑えることが可能となると期待して
いる。
いや、欧州の動きははやい。工夫次第では
2050年ではなく2030年のRE100は,実現可能だとも思える
がいかに。

  ● 米国の話題の本

● 今夜の寸評:"無用の用ビジネス"社会

ボブ・ウッドワード氏が手掛けたトランプ米政権の内幕に迫った新著『FEAR:Trump in the White
House
(原題)』)の発行部数が発売前に100万部に達したという。尚、トランプ氏に米連
邦捜査局
(FBI)の長官職を解かれたジェームズ・コミー氏の『より高き忠誠 A Higher Loyalty 真実と嘘と
リーダーシップ』が5位に、マイケル・ウォルフ氏の『炎と怒り トランプ政権の内幕』が1位に
入っている。吉本隆明が嘗て高度消費資本主義社会と言った前社会主義社会、言い換えれば”勝手
気まま(=恣意的自由)拡大社会は、連載中の老子が言った”無用の用”である"フェイクビジネス"
を生み、既存ビジネスを巻き込み拡大膨張しているかのようだが、刻一刻近づくスーパセル・ハリ
ケーン”フローレンス”のような”反動リスク”に苛まれるのではと危惧する。

   ● 今夜の一曲

交響曲第8番 アントニン・ドヴォルザーク



今年の夏の異常さ、地震と豪雨に猛暑と、二人とも秋バテで体調を崩し、落ち込み弱音の連続。

   Sep. 13, 2018

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幻想即興曲 Sep. 11, 2018

2018年09月11日 | 時事書評

  Sep. 11, 2018



                                            
第18章 「大道廃れて仁義あり」無理のない政治
仁義仁義と人が騒ぎたてるのは、無為自然の大道が無視され、作為が世を支配するようになってか
らだ。大きな虚偽が生まれたのは、知の限界が忘れられ、人間のさかしらがのさばりだしてからだ。
孝や慈という徳目が説かれだしたのは、自然の情愛が失われてからだ。忠臣なるものが現われたの
は、無為の政治がうち捨てられて、国家が乱れはじめてからだ。

第19章 作為を捨てよ
才能などというものを重視しさえしなければ、競争はなくなり、人民は安らかに生きられる。道徳

などというものを強制しさえしなければ、心を偽る必要がなくなり、人民は自然の情愛に立ち返る。
商工業などというものを廃しさえすれば、欲望をそそるものがなくなり、人民は盗みをしなくなる。
才能、道徳、商工業の三者は、いずれも作為であって自然に反する。すべて取るに足らない。治世
の根本は、
人民の本性を回復するにある。すなわち、無心にさせ、私欲をなくさせることである。

才能などというものを・・・〉 原文「絶聖棄智」。ここでの「聖」とは、傑出した智のことで、
聖人の意味ではない。
絶聖楽智 いっさいの作為をすてる、それは、「絶つ」(原文)ということばで表現されるきわ
て意志的な行為であった。この意志的な行為の主体となるのは、有道者、エリートに限られる。

般人民は、その結果「私が少なく欲が寡く」(原文)なり、自然に本性を回復するというので
ある。

【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅶ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代 

ベーシック・インカムの提案
単純に考えてみよう。貧ハしいことはお金のないことである。であるなら、政府が貧しい人に直接
補助をすればよいのではないだろうか。政府が、ある一定の額の基本所得、ベーシック・
インカム
(以下、BIと記す)をすべての人々に渡せばよいのではないだろうか。これがもっ
とも確実に貧
困を解消する方策である。

そんなことをすれば誰も働かなくなってしまうという反論があるだろう。また、ただでさえ財政赤
字が大度なのに、そんなことをすれば日本の財政は本当に破綻してしまう。あるいは、
働くことが
自尊心と規律を生むのであって、そんなことをすれば社会を成り立たせている仕組
みを破壊してし
まうことになるという反論もあるだろう,あるいは、貧しいことは社会から疎
外されているという
問題なのだ。人々を社会に組み込み、助けることが必要なのだという反論
があるだろう。これらは、
当然、予想できる反論である。実際に、貧困で苦しんでいる人を牧うためには、生活保護という制
度かおる。生活保護を受けているのに貧困で苦しんでいるという人はほとんどいない。しい人に
とって問題なのは、生活保護にアクセスできないことである。

 NDC分類 369.2

2005年ごろから、福岡県北九州市において、生活保護申請を拒否された人々が死亡するという
事件が立て続けに起きた。もっとも衝撃的に取り土げられたのが、2007年、日記に「おにぎり
食べたい」と書き残して死後一か月後に発見された男性(当時五十二歳)の事例だ。一方、生活保
護を受ければ生活は安定する。「生活保護を受けたら、離婚前、夫の給料でやりくりしていたとき
よりも、ぜんぜんリッチなんです。ぜいたくな暮らしができる水準ではありませんが」という母子
家庭の母親の証言もある(本田良一『ルポ生活保護』91~93頁、49頁、中公新書、2010
年)。

 NDC分類 311.1

大事なのは、保護の水準を維持することよりも、すべての人がそこにアクセスできることではない
だろうか。それは、BIということになる。

コミュニタリアン
のピル・ジョーダンは、「力が乏しく、受動的で、経済的排除等の経験を持つ人
びとにとってB・Iは保障を得る方法であり、生活を制御することを可能にするものであり、短期
的に経済活動への参加のアクセスを得るものであり、また多くの人びとが抱く、長期的な善き生活
にチャレンジすることを可能にするものである」と述べている(妻鹿ふみ子「第8章福祉」161
頁、小林正弥・菊池理夫編著『コミュニタリアニズムのフロンティア』勁草書房、2012年、よ
り引用)。すなわち、彼は、BIを社会的排除に立ち向かう重要な第一歩と捉えているのである。

本書のBIの提案は、生活保護に支出されているレベルを下げて、それをすべての人にアクセスで
きるようにしようということである。もちろん、そのレベルを下げないで、あるいは上げたうえで
アクセスできるようにしようという提案もある。その哲学的背景については第2章で、それが財政
的に可能であるかどうかについては第3章で論じることにする。



ここでは、高いレベルのBIを求める人々は、三つのことを正当化しなければならないということ
だけを指摘しておく。❶第一は、高い保護水準を正当化することである。❷第二は、そのための高
い課税水準を正当化することである。❸第三は、高い課税水準が、長期的にはそうでない場合より
も所得水準を引き下げ、BIの水準自体を引き下げる可能性がないことを示さなければならない。
または、将来BIの水準が低下するとしても、現在、高い水準のBIを維持することを正当化しな
ければならない。

 川原湯温泉 王湯

あるいは、政府の仕事は所得を単に給付することではなくて、社会にとって有益な支出をすること
だという反論があるかもしれない。しかし、抽象的に議論するよりも、現在、政府が実際に行って
いることを考えてみよう。これまで公共事業で無理やり地域の雇用を護ってきた。だが、さまざま
な公共事業、例えば、利根川の支流である群馬県の吾妻川で建設されているハッ場ダムを見れば誰
しもが思うだろうが、総額1000億円にもなるだろう工事で、どれだけの雇用を作ったのだろう
か。ほとんどが鉄とコンクリートに消えてしまったのではないだろうか。あのような大規模な工事
では、地元の建設業者にできることは知れている。それよりもむしろ直接、人々に配ってしまった
ほうがマシではないだろうか。再び、それでは誰も働かなくなってしまうという反論かおるだろう。
しかし、必要のないダムを必要だとして予算を要求し、設計し、難しい工事をしていた人々は働い
ていたことになるのだろうか。その上うな仕事は、能力のある人にしかできないことだ。その能力
を、もっと必要なことに使えなかったのだろうか。能力のある人が無駄に働くことのコストは、働
かないことのコストよりも大きいのではないだろうか.

 NDC分類 517.7

あるいは、1960~70年代の文化大革命中の中国について考えてみよう。いつ反革命分子と言
われて粛
清されるかわからない。また、革命側について出世しようという大もいる。粛清されない
でいることも、粛清
する側に立って出世することも、大変な能力が必要だ。しかし、そんなことは
まったく社会全体の富を増大
させることにはならない。それは、文化天華命中の中国が貧しく、文
化大革命が終わってから中国が豊か
になったことで、明らかだ。無駄に働くことは、何もしないよ
りも罪が大きい.


私の議論に対して、極端な例を持ち出して、一般的な説得を試みているのだと反論する方もおられ
るかもし
れない。しかし、日本全国の公共事業を見れば、私の主張が極端な例を挙げているのでは
ないと信じてく
れる方も多いと私は思う(この問題は、第3章の後半で再度、具体的に説明する)。
BIの提案に対しての、労働意欲を阻害する、財政的に不可能などとする、当然予想できる実際的
な反論については第3章で回答し、次の第2章では、BIを支える思想とその対立軸を
説明するこ
とにする.

              原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』
                                     

ここでは、コメントを避け、次章『ベーシックインカムの思想と対立軸』に移る。
                                          この項つづく 
                                        


 【ワンポイント英熟語#OnePoint #Eng'idiomatic】 
figure out(make out, understand) ~がわかる,理解する
It’s not easy to figure out the cost.
費用がいくらかを算出するのは容易でない。

 Aug. 21, 2018
【「こころの個性」に関わる遺伝子の特定】

8月21日、東北大学の研究グループは、精神疾患の関連遺伝子に着目し、哺乳類15種のゲノム配
を用い、人類の進化過程で加速的に進化した遺伝子を検出に成功したことを公表。また、約2500
人分の現代人の遺伝的多型データを用い、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試
みている。

それによると、多様な「こころの個性」(=精神的個性)は時として精神疾患にもつながり、一方で、
こうしたヒトの精神的多様性がどのように進化し、維持されているのかについて、その進化機構は
不明であった。そこで、
精神疾患関連遺伝子の中で、人類の進化過程で自然選択によって有利に進
化してきた、こころの個性に関わる遺伝子(不安傾向や神経質傾向の違いに影響するSLC18A1遺伝
)を検出
ヒトの集団内で、この遺伝子は遺伝的多様性をもち、自然選択によって異なる遺伝子
型が集団中に積極的に維持されていることを示していることを突き止める。

この研究成果は、ヒトのこころの多様性が進化的に積極的に保たれている可能性を進化遺伝学的手
法により初めて示したことにあり、個性や精神・神経疾患の生物学的意義や治療の方向性の存在を
示唆する。これは、
現代人の5人に1人は、一生の間に何らかの精神疾患を発症するとされ、その
原因解明および治療は、精神医学や神経科学における中心的課題の一つ。また、精神疾患は遺伝率
が高く、しばしば生物学的な適応度(生存や繁殖)に大きな影響を与える可能性があるにも関わら
ず、ヒトの集団中に頻繁に見られることから進化的なパラドクス」と捉えられることもあり、そ
の進化機構の解明は進化学的にも重要な研究課題となり、統合失調症や自閉症などの精神疾患は、
社会行動や認知機能など、ヒトを特徴づけるような高次脳機能の障害を示すことから、人類の高次
脳機能の進化の副産物として精神・神経疾患が生まれたのではないかという仮説があり、精神疾患
関連遺伝子は人類の脳の進化において重要な役割を果たしたと考えられる。

尚、本研究では、精神疾患の関連遺伝子に着目し、哺乳類15種のゲノム配列を用いて、人類の進化
過程で加速的に進化した遺伝子を検出。また、約2500人分の現代人の遺伝的多型データを用い
て、集団中で積極的に維持されている遺伝的変異の特定を試みている。「唯遺伝子論」ではないが
ここまでもわかるのか?と驚嘆する。面白い。


【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】



● ペロブスカイト太陽電池、スズ系で変換効率7%以上に

9月6日、京都大学らの研究グループは、均一性が高く高品質なスズ系ペロブスカイト半導体膜を
得ることができる独自の成膜法を開発したことを公表。それによると、まず、環境負荷の少ないス
ズ系ペロブスカイト太陽電池――材料中のスズイオン(Sn2+)が酸化しやすい、光電変換効率は最
大でも9%以下で再現性にも乏しかった――を、溶液を塗って乾燥させて半導体膜が生成する過程
で均一な膜を作製するために重要なメカニズムは、次の2つに着目。

❶貧溶媒(溶解度の小さい溶媒)の滴下の際に、基板上で2つの溶媒がより激しく混ざりあうこと
 で、より多くのペロブスカイト材料の結晶核が一気に析出するのではないか

❷加熱 (アニール)して残った溶媒を飛ばす際に、結晶をできるだけゆっくりと成長させてより
 大きい結晶を作製するためには、一定時間ペトリ皿などで蓋をしながらガラス基板を加熱し、溶
 媒の蒸気圧を制御すべきではないか



そこで、滴下する貧溶媒として温めたクロロベンゼンを用い (ホット ・アンチソルベント ・ト
リートメント法/HAT法)。そしてこの貧溶媒の温度を従来の室温から上げていくと、膜の均一性
が顕著に向上し、65℃が最適であることを見出し、
また、最初の10秒~30秒間だけ蓋をし加
熱することで(ソルベント・ベイパー・アニーリング法/SVA法)、より大きな結晶性の塊(グレ
イン)をもつ均一な半導体膜が作製できることを見出す。
つまり、「温かい貧溶媒を用いるだけ」
HAT法と、「蓋をして加熱するだけ」で溶媒蒸気を制御するSVA法という、2つの簡便な独自の
手法を開発し、これらを組み合わせることにより、均一性が高く高品質なスズ系ペロブスカイト半
導体膜の作成法の確立――再現性よく7%を超える光電変換効率を示す太陽電池デバイスを作製に
成功。今後、この技術をもとに、スズ系ペロブスカイト材料開発、デバイス構造の改良・開発研究
が大きく進み、環境負荷の少ないペロブスカイト太陽電池の実用化促進すると期待している。


 ● 今夜の一曲

Frédéric Chopin's Fantaisie-Impromptu in C♯ minor Op. posth. 66 
ショパンの作品のなかでもっともよく知られる作品のひとつ。即興曲第4番 嬰ハ短調 遺作 作品6
6は、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンが作曲したピアノ曲。ショパンの4曲の即興曲
のうち最初に作曲され、ショパンの死後1855年、友人のユリアン・フォンタナの手により『幻想即
興曲』(Fantasie-Impromptu)と題して出版された。

  ● 今夜の一品 

  Sep. 11, 2018 

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無理のない政治

2018年09月10日 | 時事書評

  Sep. 9, 2018



                                            
第17章 無理のない政治
もっともすぐれた君主のもとでは、人民は君主(※リーダ)が存在することさえ、忘れている。次
の段階のよき君主のもとでは、人民は君主を慕い、君主を宗える。さらに下の段階の、悪しき君主
のもとでは、人民は君主を恐れもっとも悪しき君主のもとでは、人民は君主を軽蔑する。人民を生
きるがままに放置する。それが君主たるの要諦である。すぐれた君主というものは、万事を人民に
まかせっきりで、政令などもめったに出さない。しかも政治は成功するが、人民の眼には、それが
君主のはたらきによるものだとは映らない。人民はただ、なるようになっただけだと考えるのであ
る。

人民を生きるがままに……〉 原文は「信足らざれば、不信あり」。直訳すれば「君主が人民を
信ずる気持が足りないと、人民の側でも君主を信ずる気持が起きない」となる。

われ自ら然り 帝売の世に、ある老人が泰平を楽しんで歌ったという「撃壌の歌」が伝えられてい
る(帝王世紀)。いわく、「日出でて作し、日入りて息う。井を堅ちて飲み、田を耕して食らう。
帝力なんぞわれにあらんや(朝が来りゃ超きて働く、夜になりゃ帰って寝る。水が欲しけりゃ井戸
を糾る、食いたいものは田畑で作る。天子のおかげが要るものか)」

※ 無理のない政治と言うは易し、リーダの見識、教養、知力、胆力などの人格が問われる。

● 今夜の一品

百名山踏破記用に衝動買いしました。



● 大坂なおみ US Open 2018 優勝おめでとう!
https://www.youtube.com/watch?v=KZiLGUy2zAU
どのようなスポーツ競技も「礼にはじまり、礼に終わる」が私たちのマナーですね。

 Aug. 31, 2018

     
【音響印刷で超絶粘性液体を3D印刷】

人間の耳には聞こえない超音波(周波数20Hz以上)を使ってロータを移動させる超音波モータ
通常のモータは永久磁石やコイルを用いてロータを回転させるが、超音波モータでは超音波の発生
に圧電素子を使用。圧電素子は2つの端子に電位差を与えると、電位の向きにより膨張、または収
縮する。この膨張・収縮により超音波が発生する。超音波モータはモータ自体の形に自由度があり
従来よりもはるかに薄いモータや、まっすぐなモータなどを作ることができる。例えば、一眼レフ
やミラーレス・カメラの交換レンズが挙げられる。焦点合わせに、レンズが回転しながら前後に動
かせ、レンズの回転運動させるためにリング状の超音波モータなどに使われている。

この技術を使いハーバード大学の研究グループは、超絶粘性の高い液体をも極小サイズで出力する
「音響印刷」技術を開発。現在、
液滴を作り出す技術は、インクジェットプリンターからドラッグ
デリバリー用のマイクロカプセルの製造に至るまで、幅広い分野で応用されているが、
バイオポリ
マーの中には水の2万5千倍の粘度を持つ液体があり、粘性の高い液体をごく少量だけ出力するこ
とが困難だった。また、粘性の高い液体は温度によって粘度が変化することも、一定量を出力する
ことを難しくしていた。同グループ
は、音波を使って液体の粘性や外気温に依存せずに滴下量をコ
ントロールする技術「Acoustophoretic Printing」を開発。
高周波の音響(振動)で、無重力状態に存
在しているかのように液滴を浮かせ、音波で物理的な力を加えることができる。



Acoustophoretic Printingでは、ノズル内で音波の振幅を変化させることで、粘性の極めて高い液体で
あっても、ノズル先端から切り離して出力することを実現。
音波の振幅が大きいほど、液滴のサイ
ズを小さくすることが可能。振幅を制御することで、液滴のサイズを高精度にコントロールできる。

例えば、細胞を含んだ液体を出力でき、これは音波が液体内部を通過しないために実現、Acousto-
phoretic Printing
は生体細胞やたんぱく質などの繊細な物質でも安全に利用できる。
さらに、この音
響印刷技術は温度に依存せずに液体の出力を調整できるため、金属材料を精細に3D印刷すること
ができる(
特許取得済み)。今後は、インクジェットプリンターだけでなく、医薬品を中心とする
バイオテクノロジー分野や光学分野、食品など幅広い分野の応用が考えられる。

 Aug. 31, 2018



● 風力・太陽光発電所がサハラ砂漠に降雨をもたらす?! 

9月6日、イリノイ大学の研究グループは、再生可能エネルギーとして将来の応用がされているて
る「風力発電」や「太陽光発電」は、発電施設がある地域の気候に局所的な影響を及ぼすと考えら
れているが、フリカ北部に広がる世界最大の砂漠・サハラ砂
漠で大規模な風力発電と太陽光発電
を展開した場合をシミュレートすると、降水量が増
加して緑化が進むという研究結果を公表。



世界最大の砂漠であるサハラ砂漠に注目。風力発電と太陽光発電の両方について、それぞれ900
万平方キロメートル以上をカバーして合計で平均80テラワット以上を発電できるような施設をサハ
ラ砂漠で稼働させた場合に、どのような影響が引き起こされるのかをシミュレートしました。この
シミュレーションによって、風力発電が地表面の気温の上昇を引き起こし、サハラ砂漠での最低気
温が最高気温よりも大きく変化するようになることが判明。同グループによると、風力タービンが
暖かい空気を上から吹き飛ばすことができるため、夜間の温暖化がより顕著になるとのこと。その
結果、風力発電所を設置した地域では降水量が平均して1日あたり0.25mm増加。さらに、太陽
光発電のパネルを置くことで日影を作り、地表面の温度が下がるため、気温の上昇も抑えられるこ
とも判明。以下の図は風力発電(AとB)と太陽光発電所(CとD)、さらにその両者(EとF)による平均気
温と降水量の変化を表した下図。地図上の灰色の点が発電所の設置を想定したポイントで、色が濃
い部分は平均気温(赤)と降水量(青)の変化が大きく現れた場所。この降水量の増加は、植生の増加
に繋がり、緑化を促してくれる。太陽光発電と風力発電がクリーンな電気を生む副産物として、降
水量と植生の増加が促されることがわかる。この事実はサハラ砂漠や中東などの農業・経済発展・
社会福祉に役立つ可能性があと話す。

 Sep 7, 2018:

ワンポイント英熟語
#OnePoint #Eng'idiomatic】 
get over(=recover from, overcom)   を克服する
I took me three weeks to get over the flu.
風邪を治すのに3週間かかった。

 ● 今夜の一曲

『グノシエンヌ』(Gnossiennes)は、エリック・サティ――
フランスの作曲家。音楽界の異端児、音楽界の変
わり者などと称される。西洋音楽に大きな影響を与えた
――が1889年から1891年と1897年に作曲したピアノ曲。
サティが24歳の時に作曲した第1番から第2番の2曲は「2つのグノシエンヌ」として有名。『グノシエン
ヌ』とは「知る」というギリシア語の動詞(Γνωρίστε:発音は "Gnoríste" グノリステ)の語幹をもとにし
て作ったサティの造語。語源はまた、古代クレタ島にあった古都「グノーソス宮」とも神秘教会グノーシ
ス派とも言われている。古代ギリシャの詩の脚韻を踏んだリズムが伴奏部に使われている。

  Sep. 9, 2018

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根元に返る

2018年09月09日 | 時事書評

 

  Sep. 9, 2018



                                            
第16章 根元に返る
自意識を捨て去って、「静」そのものになりきることが大切である。
「静」とは何か。
万物はひとしく生々発展しているが、その運動は循環して、もとの現象以前の状態に返る。草木は
茂り栄えるが、やがてはみなその根に返る。
この根元に返った状態を「静」という。
根元に返ることは自然必然の動きであるから、これを「令に復する」という。それは、宇宙を貫く
「法則」である。
この法則を知ることが、「明知」である。この法則を知らなければ、私意の導くままに妄勤し、よ
からぬ結果を招くのだ。
さて、この「法則」は普遍性を持つから、すべてを「包容」する。すべてを包容するものは、「公
平無私」である。公平無私は、「王者」の徳だ。したがって、王者の徳は、「天」と万作である。
天と一体であれば、「遠」に合致する。「道」は永遠の存在であるから、「道」を体得した者は、
生涯、無事でいられる。



 STROKE Cargo Trike 電動三輪カーゴバイク(日本発カーゴトライク)

 Sep. 7, 2018

This Japanese tilting electric cargo tricycle is as cute as it is functional




【いつでもどこでも1キロワットアワー1円時代 】

● 最新全固体型電子デバイス技術

 WO2009122885A1

❑ 特開2018-139262 有機EL表示素子、有機EL表示パネル...株式会社 JOLED
➲ 光取り出し効率向上=省エネ×長寿命化
【概要】
有機EL素子は、自己発光を行うため視認性が高く、さらに完全固体素子であるため耐衝撃性に優
れるな
どの特徴を有し、近年、表示装置に有機EL素子を利用したものが普及しつつある。有機E
L素子は、一対の電極(陽極および陰極)間に、少なくとも発光層が挟まれた構成を有している。
そして、有機EL素子は、多くの場合、発光層の他に、発光層に電子を供給するための機能層(電
子輸送層、電子注入層)や、正孔注入層、正孔輸送層等が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構
成を有すが、
消費電力の低減や長寿命化から、各色発光素子から光取り出し効率を向上が望まれて
おり、この光取り出し効率を向上に、共振器構造技術がある。

 しかし、共振器構造の1次光干渉を利用し光を取り出す場合、発光層内の発光中心と透光性電極と
の距離は、取り出す光の波長に対応した所定範囲内であることが必要。このため、発光層や機能層
の膜厚を最適化すると、発光層内の発光中心と透光性電極との距離が近いため所定の範囲を外れ
光取り出し効率が十分向上しないことがある。一方で、発光層の膜厚を大きくすると駆動電圧の上
昇を招き、有機EL素子の消費電力が増加する。また、透光性電極が陰極である場合、電子輸送層、
電子注入層の膜厚を大きくすると、電子注入性を向上させる金属の光吸収により光取り出し効率
低下が引き起こされる。下図1のごとく、発光層17、機能層19、陰極20、低屈折率層21が
互いに接して、かつ、この順に陽極13の上方に積層されてなる有機EL発光素子1であって、機
能層19の膜厚は15nm以上35nm以下であり、発光層17の陽極13側の面と、陰極20と
低屈折率層21との界面とは、110nm以上離間させることで、共振器構造を有する有機EL素
子において、共振器構造による光取り出し効率を向上させるとともに、消費電力を低下させる。

 Sep.6, 2018

【図1】実施の形態に係る有機EL素子1の構成を模式的に示す断面図
【図2】有機EL素子に形成された光共振器構造における光の干渉について説明する図
【図3】有機EL素子から取り出される光の輝度値/Yの値と、発光層の陽極側の面~対向電極と
低屈折率層との界面までの膜厚との関係を示すグラフ
【図8】実施の形態に係る有機EL素子の製造過程を示すフローチャート

【符号の説明】11  基板 12  層間絶縁層    13  画素電極(陽極)   14  隔壁層
14a  開口部    15  正孔注入層    16  正孔輸送層    17  発光層    18  中間層
19  電子注入輸送層(機能層)    20  対向電極(陰極)    21  低屈折率層
22  封止層  100  有機EL表示パネル1000  有機EL表示装置

❑ 特開2018-133131 全固体リチウムイオン二次電池...製造方法 トヨタ自動車株式会社
➲ 負極電極のサイクル特性向上
【概要】
Siを含有する合金系活物質(Si合金系活物質)は、炭素系の負極活物質と比較して体積当たり
の理論容量が大きいことから、Si合金系活物質を負極に用いたリチウムイオン電池――
負極活物
質粉末として、平均粒径が10μm以下であるケイ素単体を使用した二次電池用負極合材及び負
極活物質粉末を含む負極層を含む全固体リチウムイオン電池は、充放電サイクルを繰り返した場
合容量維持率が低い。下図1のように、ヘリウムガスが内包される閉気孔を有することで、サイク
ル特性を向上させる。


 JP 2018-133131 A
【図1】実施例1で成膜されたSi単体膜断面のSEM画像
【図2】実施例1で成膜されたSi単体膜断面の選択箇所におけるEELSスペクトル
【図3】実施例1で成膜されたSi単体膜断面におけるHeガス分布を示す図
【図4】実施例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフ
【図5】実施例2のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフ
【図6】実施例3のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフ
【図7】実施例4のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフ
【図8】比較例1のサイクル特性評価用セルにおけるサイクル数と容量の関係を示したグラフ

❑ 特開2018-133200  全固体電池...全固体電池のリユース方法 パナソニック株式会社
➲ 劣化した部分のみ交換できる全固体蓄電池
【概要】
パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の情報通信関連機器、電気自動車、電力貯蔵用の電源等とし
て、リチ
ウムイオン電池等の電池の需要が増大している。しかしながら、このような電池の多くは、
電解質として可燃性の有機溶媒を含む電解液を用いているため、液漏れ、短絡、過充電等を想定し
た厳重な安全対策が必須となっており、特に、高容量かつ高エネルギー密度の電池については高い
安全性の確保が求められる。一方、全固体電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されてい
ないため、安全性が高いことが知られている。全固体電池では、電解質として酸化物系や硫化物系
の固体電解質を用いているため、電解液系の電池等に比べて発熱や熱暴走により発火、火災等に至
る危険が少なく、高エネルギー密度化、長寿命化が可能であり、また、全固体電池は単一セルに電
極を何層も積層することができるため、多様な電圧への対応や小型化が容易であるといった利点も
兼ね備える。そのため、全固体電池は将来的に大きな需要が見込まれており、様々な分野で研究開
発が進められているが、
充放電に伴う活物質の膨張又は収縮により、正極負極間に隙間(空洞)が
発生し、充放電サイクル時の容量劣化や抵抗上昇を引き起こすという問題がある。

このような問題を解決する全固体電池として、1つには、正極層および負極層を、固体電解質層を
介して積層した単電池を直列接続し、複数積層した構造の全固電池であって、正極層および負極
層と、集電体との間に弾性体を有する電池が開示されている。該全固体電池は、このような構造を
有することにより、充放電に伴う膨張および収縮により生じる全固体電池の内部の空隙による容量
低下や抵抗上昇を抑制することができる。また、一部の電池に不良が発生した場合にも、容易に解
体でき、リサイクルやリユースを行うことができる構造としたものがある。


次に、全固体電池の中央部と外周部とでは放熱性が異なっており、中央部は外周部よりも放熱性が
低い。そのため、電池の中央部は外周部よりも温度が高く、温度の高い中央部においてのみ電池の
劣化が進む。このため正極、固体電解質層、および負極を含む電池素子が拘束板の間に挟持され、
積層面に対して垂直な方向に印加されることにより、全固体電池の中央部に印加する圧力を外周部
よりも高くする構成がある。このような構成を有することにより、中央部の発熱量を外周部よりも
小さくすることができる。

しかし、前者では、上述した構成を有することにより、全固電池の膨張および収縮を吸収するこ
とができ、全固体電池の充放電に伴う劣化を遅らせることができ、さらに、全固体電池を容易に解
体することができ、電池のリサイクルやリユースを行うことができるものの、中央部のみ劣化が進
んだ場合に、全固体電池を構成する単電池の劣化部分のみを交換することはできず、劣化部分を含
む単電池そのものを交換する必要があった。
また、後者の全固体電池では、上述した構成を有することにより、全固体電池の中央部の発熱量を
外周部よりも小さくでき、電池の中央部の劣化を抑制することができるものの、リサイクルおよび
リユースを行う概念が存在しない。

このため、下図2Bのように、全固体電池100aは、積層された正極導電体1、正極層2、固体
電解質層3、負極層4、および負極導電体5を有し、側面が絶縁体6で覆われている蓄電モジュー
ル10を積層の方向と直行する面方向に複数配置した蓄電モジュール集合体20と、複数の蓄電モ
ジュール10の正極導電体を1電気的に接続する正極集電体21と、複数の蓄電モジュール10の
負極導電体5を電気的に接続する負極集電体22と、を備えることで、リユース時に中央部や外部
端子接続部など劣化した部分のみ交換できるようにした。

JP 2018-133200 A Aug. 23, 2018

【図1A】実施の形態における蓄電モジュールの分解斜視図
【図1B】実施の形態における蓄電モジュールの斜視図
【図1C】図1BのIc-Ic線における実施の形態における蓄電モジュールの断面図
【図2A】実施の形態の第1態様に係る全固体電池の一例を示す分解斜視図
【図2B】実施の形態の第1態様に係る全固体電池の一例を示す斜視図

【符号の説明】1  正極導電体  2  正極層  3  固体電解質層  4  負極層  5  負極導電体
6  絶縁体  10、10a、10b、10c  蓄電モジュール  20  蓄電モジュール集合体
21  正極集電体  22  負極集電体  23  空洞  24  貫通孔  25  伝熱体  100、100a、
100b、100c、100d、100e  全固体電池  101  外装ケース  102  リード
103  取り出し電極  200  蓄電装置

● エネルギータイル事業篇:ビスマス系の高性能光応答素子 
9月6日、大阪大学らの研究グループは、価格・低毒性・安定性に優れた硫化ビスマス(Bi2S3
の成膜プロセスを開発し、高性能光応答素子の作製に成功したと発表した。次世代太陽電池材料
の開発につながる成果としている(下図参照)。2
段階の熱処理を施すことで光電気特性と膜平
坦性を両立し、従来プロセスと比べて光応答性能が6~100倍向上した。
粉末でも簡便に光電気
特性を評価できるマイクロ波分光法を用いて200種類以上の材料を評価し、硫化ビスマス粉末
が高い光電気特性を示すことを見出した。硫化ビスマスは溶媒に溶けにくい粉末材料であること
から、前駆体を溶かした溶液から薄膜を作製し、続いて硫化する新たな熱処理プロセスを開発。

今回開発したプロセスでは、多結晶形成に関わる核生成と結晶成長を独立したプロセスに切り分
けることで、それぞれの最適化に成功した。作製した素子は、大気中・室内で3カ月放置した後も
性能を維持しており、高性能に加えて長期安定性にも優れる。
硫化ビスマス薄膜は、ペロブスカ
イト太陽電池における鉛を使わないペロブスカイト材料や、フォトレジスタにおける有毒なカド
ミウムの代替素材などに期待される。また、今回開発したプロセスは他の硫化物にも適用可能。
硫化モリブデン(MoS2)や硫化タングステン(WS2)などが優れた電気特性を持つ層状化合物とし
て注目されている。

Sep. 6, 2018

 

  ● 今夜の一曲

2つのアラベスク 
Deux Arabesques Claude Achille Debussy

1888年に作曲され、1891年に改訂されたとされるドビュッシーの2手用のピアノ曲。ロシア時代の
《ボヘミア風舞曲 Danse bohémienne 》(1880年)以来の楽曲。2
曲で構成は、いずれもロマン派
音楽に典型的な三部形式による小品で、和声法にグリーグやフォーレ、マスネの影響があり、抒情
性と軽やかなリズムの共存はシューマンの着想に似ている。第1番は、分散和音の多用と、右手と
左手のポリリズムの組み合わせが特徴である。

  Sep. 9, 2018

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運動生理科学と肉体革命

2018年09月08日 | デジタル革命渦論

  Sep. 9, 2018

                                             
第15章 大 人 物
昔の真にすぐれた人物は、微妙深遠で、副り知れない器量をそなえていた。だから説明のしよう
もないのだが、強いて形容するなら、こんな按配になる。
まず、万事に情宜である。あたかも冬のさなかに川を渡るがごとくである。
次に、消極的である。あたかも強国に囲まれて孤立した弱国のごとくである。
しかも、星座である。あたかも招かれた賓客のごとくである。
物事に執着せぬこと、氷の溶け行くさまにも似る。
飾り気のないことは、手を加えぬ原木さながらである。
無心なことは、広々とした谷そのものである。 
そして、捉え所のないことは、濁った水を見る感がある。

これは実に底知れぬ深さを待つ人物である。濁りを濁りのままに受容して、濁りそのものの静止
を待ち、しだいに清く澄ませて行く。これをなしうる者が、いったいどこにあろう。休止を休止
のままに受容して、休止みずからの動きを待ち、しだいに生々発展へと導く。これをなしうる者
が、いったいどこにあろう。
このように、「道」を体得した人は、完全になろうと努めずに、おのずと完全になる。みすぼら
しさに甘んじて、立派になろうと努めないのは、そのためである。

真にすぐれた人物〉原文「善く士たる者」。「士」とは、君主を補佐する政治家、知識階級。
微妙玄通 理想の政治家像。自然の理法を体得した人間は、意欲的な明快さはどことして見当た
らず、一見デクノポウ然たる姿である。
 

  




【身体競技科学と肉体革命:最新機能的電気刺激技術】

紀元前,頭痛や痛風などの治療に用いられた電気刺激装置は,シビレエイなど自然界のものであ
った.17866年,Galvani の電気刺激による筋収縮の発見,1793年、Voltaによる電池の発
明などで,人工的な電気刺激装置が開発され,1831年には,Faradayによる誘導電流発生装置
の発明で麻痺筋の電気療法が行われるようになる.20世紀半ばに、真空管やトランジスタの発
明により、電流の強さや波形を自由に設定が可能となる。最近では,エレクトロニクス,コンピ
ュータ技術の進歩により,多チャンネルで複雑な刺激の出力(ポリリズムなど)が可能になると
共に,素子のチップ化で装置の小型化・軽量化が進み,体内に埋め込める刺激装置も開発され、
また電気刺激の周波数や波形、パルス幅などと痛みや筋収縮のの研究が進み,苦痛の少ない電気
刺激が可能となる。
リハビリテーション医療現場ても電気刺激の応用範囲は広く、❶ 治療的電気刺激Therapeutic
Electrical Stimulation;TES
),❷機能的電気刺激Functional Electrical Stimulation;FES),❸筋力
増強
Electrical Muscle Stimulation;EMS),❹疼痛の抑制Transcutaneous Electrical Nerve Stimulat-
ion;TENS
)などに応用,対象疾患も,脳卒中や脊髄損傷,術後の安静時の筋力維持,除痛などが
あり,多岐にわたる.
特にEMSは,最近,小型で操作性の良い電気刺激装置が開発され,医療分
野のみならず一般家庭においても,健康機器,あるいは在宅用リハビリテーション機器として急
速に普及.「電気刺激による筋力増強」をうたったEMSベルトは,2001年秋頃よりテレビシ
ョッピングや通販など各方面で宣伝され,人気商品になる。しかし、流行に伴い出現した類似商
品のなかには,熱傷や強い痛みなどの症状を生じさせるものもあり,国内あるいは中国産などの
発展途上国
の医学的裏付けのない商品の危険性が指摘されている。







【関連特許事例
特開2017-205488 筋肉電気刺激プロコルを確立するためのプロセス...
 JP 2017-205488 A 2017.11.24

【概要】電気刺激の使用は、医療およびスポーツの実践における身体調整の有用な治療源および
補助源として定着している。異なる刺激パラメータは、異なる病因による痛覚過敏、正常筋およ
び除神経筋の筋肥大、筋抵抗および筋力の増加、筋緩和および筋弛緩の制御など、
異なる生物学
的効果を生む。
身体活動の能力について、関与する筋肉組織は、運動の強度および持続時間に直
接比例
するようなやり方で、徐々にその機能を失う。従って、筋肉のエネルギー貯蔵の枯渇、乳
酸の蓄積および収縮が起こる。7-10Hzの電気刺激の印加は、筋肉の毛細血管拡張を促進し、
潰瘍の血流を増加す
る。より低い周波数は、緩和効果を有し、エンドルフィンの放出を促進する。
特別食と関
連する電気刺激は、エネルギー収入を増加して、筋肉のグリコーゲン保存の復位を加
速す
る。神経系によるアクティブな筋肉回復の概念は、高強度の運動能力の期間に続く軽い運
から成る。
電気刺激は、血流の増加および筋群の回復を示している。電気刺激はまた、持続した
管拡張と筋収縮自体の両方によるグルコースの捕獲が増加することも証明されている。大まか
に言えば、電気刺激機器は、2つの大きなグループに分けられる:1つは、電気
回路網で電力供
給される、ベンチ型機器であり、もう1つは、電池で電力供給される、携
帯型機器である。ベン
チ型機器を使用する場合、ユーザが電気機器を使用できる場所まで
移動する必要がある。反対に、
携帯型機器の場合、装置を治療の適用場所まで移動させる
ことができ、従って、野外の刺激、例
えば、スポーツ練習場での刺激が可能になる。

--------------------------------------------------------------------------------------

このように、室内ウォーキングもそこそこ起動に乗りつつ、筋肉強化を考え出したわけで、手軽
に室内で
できるのであればと下調べm購買準備をすすめる。

 

● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.13

  

第3章
「今日、村人が一人、息を切らして、肩に怪我をして帰ってきたんですって。なんとか落ち着
せて事情を聞き出したところ、その人は兄さんと十二歳の甥と三人で釣りに行っていた人
で、川
沿いのいつもの場所で釣りをしていたら、二匹の鬼が襲ってきたんですって。しかも普
通の鬼じ
ゃなかったみたい。大きくて、動きが速くて、これまでに見たどんな鬼よりずる賢か
ったそうで
すよ。だから、村の人たちは、それはただの鬼じゃなくて、『悪鬼』だろうって言っています。
で、二匹の悪鬼はその場でこの人の兄さんを殺して、じたばたもがく甥の少年をさらっていった
そうですよ。怪我をしたご本人も川沿いの道を長いこと追いかけられたらしくて、うなり声がす
ぐ後ろまで迫ってきて、くさい息が首筋にかかるほどだったんですって。でも、まあ、危なくは
あったけど、なんとか逃げおおせてね……ほら、アクセル、あそこにいるあの人じやないかしら。
腕に添え本をして、遠国から来た男と話している人。で、自分は怪我をした身だけど甥のためな
らって、この村の選りすぐりの力自慢十二人を、襲われた場所まで案内して行ったんですって。
すると、土手の近くに焚き火の煙が見えたから、男たちが武器を携えてそっと忍び寄ってみると、
いきなり濯本の茂みが二つに分かれて……そう、その二匹の悪鬼が待ち伏せしていたんですって
。薬師が言うには、逃げようと思う間もなく三人が殺されたそうですよ。あとの男たちはなんと
か無傷で逃げ帰ったということだけど、いまベッドの中でうんうんうなって震えているらしいわ。
これから出撃するあの人たちに幸運を祈ることもできないほど、まいってしまっているみたい。
それにしても、これから暗くなるし、霧も濃くなっていくのに、昼日中に十二人の男でできなか
ったことを、あれだけの人数でできるのかしら......


「その十二歳の子はまだ生きているんだろうか」

「わからない。でも、とにかく探しに川まで行くそうですよ。じつはね、最初の捜索隊がほうほ
うの体で逃げ戻ったあと、長老たちがいくら説得しても、二回目の捜索隊に志願する男は一
人も
いなかったみたい。でも、運というものなのかしら。突然、遠くの国から見知らぬ男が来て、馬
が脚を痛めたので一晩の宿をお願いしたいと言ったんですって。さらわれた少年やその家族とは
赤の他人なのに、村の助けになるのならぜひ、って名乗りをあげてくれたそうよ。少年の叔父さ
ん二人が同行するらしいけど、でも、見て、アクセル。あの様子だと、戦士の助けになるより足
手まといになるんじやないかしら。二人とも怖くて震えあがっているじやありませんか」

「確かにな。それでも勇敢な二人ではあるよ、お姫様。みながこんなに怖気づいてるなかで行く
んだから。どうも、歓待してもらうには悪い夜を選んでしまったな。いまもどこかですすり泣き
が聞こえるし、夜が明けるまでにはもっと大量に聞こえるかもしれないぞ」

アクセルの言葉がなんとなくわかったようで、薬師がまたサクソン語で何か言い、ベアトリスが
通訳した。「すぐに長屋に行きなさいって。朝まで姿を見せないほうがいいって言っていますよ。
こんな夜だから、村の中をぶらついていたら、どんな扱いを受けるかわからないからって」
 「わたしも同じ考えだよ、お姫様。この親切な方の言うとおりにしよう。ただ、お姫様は遠を
覚えているかな」

突然、群衆がどっと沸き立った。声はしだいに歓声に変わり、人だかりがぎくしやくと形を変え
て、やがて一本の行列になった。進む行列の中心に、戦士とその同行者がいる。声援が起こり、
名前の連呼が始まり、薬師ら、物陰にいた見物人もその連呼に加わった。行列はアクセルらのい
る方向に進んでくる。簿火の明かりからは遠ざかったが、数本の松明が行列とともに移動してい
て、歩く人々の顔をときどき浮かび上がらせる。恐怖にひきつった顔があり、興奮した顔がある。
だが、そのなかで戦士の顔だけは、いつ松明に照らされても静かな表情を保ち、周りから投げか
けられる激励の言葉に応えて、右にうなずき、左に笑いかけていた。手はまた剣の柄の上にある。
行列はアクセルとベアトリスの前を過ぎ、小屋の並びの間に消えていった。それからもしばらく、
くぐもった名前の連呼が響きつづけた。

アクセルとベアトリスはしばらく勣かずにいた。その場の雰囲気に呑まれていたのかもしれない。
やがてベアトリスが、長屋までの道順を薬師に尋ねはじめたが、アクセルには、二人の女の話し
合いがどこかとんでもない目的地に飛んでいっているように思えてしかたがなかった。二人は、
村の向こうにある丘の方角を身振りや手振りで指し示しながら話していた。

 Old English

ようやく今晩泊まる場所に向かって歩きはじめたのは、村中がすっかり静まってからだ。暗闇の
なかで道を見つけるのは、ますます難しくなっていた。曲がり角に松明が置かれていることもあ
ったが、その光は二人の影を踊らせるばかりで、道探しをよけいに混乱させた。二人は、いま、
行列が去った方向とは逆に進んでいる。通り過ぎる家々は暗く、人のいる気配すらなかった。
「ゆっくりだ、お姫様」とアクセルがそっと言った。「この道でひどく転んでも、誰も助けにき
てくれそうにないからな」
「アクセル、また道に迷ったみたい。最後の曲がり角まで戻りましょう。今度は大丈夫だと思う
から」

やがて道はまっすぐになり、気がつくと、ニ人は丘の中腹から見たあの柵「-村を囲んでいる柵」
に沿って歩いていた。頭上高く柵が突き立ち、その尖った先端が夜空より一段と黒く見える。進
んでいくにつれ、どこか上のほうからつぶやきに似た声が聞こえてきた。どうやら、ここには自
分たち二人以外にも誰かがいる、とアクセルは思った。そういう目で探ると、衝の上のほうに一
定間隔で黒い影がとりついているのが見えた。あれはきっと見張りだ。衝の上から外を警戒して
いるのだろう。ベアトリスにも教えようとしたが、その暇もなく、背後から足音が近づいてきた。

二人は少し足を速めた。だが、もう松明が近くまで来ていて、さらに前方でも人影が揺れている。
たまたま反対方向から来る村人たちと出会ったのかもしれないとも思ったが、どうやらそうでは
ない。アクセルとベアトリスは完全に取り囲まれていた。年齢も体格もさまざまなサクソン人が
朧を持ち、鍬や鎌を持って、二人の周りにひしめいていた

しかも人数はどんどん増えつづけている。いくつかの方向から同時に声がかかり、二人に向けて
松明が突き出された。顔に炎の熱を感じ、アクセルはベアトリスをかばいながら、どれがリ-ダ
ーだろうと目をこらしたが、それらしい人物は見当たらなかった。むしろどの顔もひきつってい
て、パニック状態を思わせた。ここで不用意な動きをしたら、ほんとうに危ない…… 一人、と
りわけ剣呑な目つきをし、震える手でナイフを振り上げている若者がいた。アクセルはベアトリ
スをその若者から遠ざけ、何か言葉をかけようとした。相手にわかるサクソン語がいいだろう。
必死で適切な言葉を探したが、何も思いつかず、しかたなく、興奮した馬を鎖めるときのかけ声
で相手をなだめようとした。

「やめて、アクセル。子守唄を歌ってあげても感謝はされませんよ」とベアトリスがささやいた。

そして、自分からサクソン語で男たちに話しかけたが、状況は少しもよくならない。あちこちで
怒鳴り合いが始まり、一匹の犬が紐を引きちぎらんばかりにして男たちの足元を抜け二人に吠え
かかった。
だが、突然、男たちの体から力みが抜けていくように見えた。高ぶった声も静まり、残るは、少
し離れたところから聞こえてくる怒りの声一つだけになった。その声がしだいに近づいてくる。
男たちが二つに分かれ、その間を通って、ずんぐりした一人の老人が現れた。体に歪みがある。
太い杖に頼りながら、光で照らされた場に進み出てきた。

かなりの高齢者だ。背中はさほど曲がっていないが、首と頭が肩から異常な角度で突き出してい
。だが
、その権威のほどは疑いようがなく、その場の全員がしゅんとした。犬さえも吠えるの
をやめて、影の中に
こそこそと消えていった。老人は何を怒っているのだろう………村人が来客
を乱暴に扱ったことも理由の
一つには違いない。だが、それがごく小さな一つにすぎないことは、
限られたサクソン語しか知らないアク
セルにもわかる。老人の怒りは、男たちが見張りの役目を
改り出したことに向けられていた。松明の先に
照らし出された顔はどれも恐れ入っていた。だが、
同時に混乱し、釈然としないふうでもあった。老人の怒
りがさらに募り、声が一段と激しくなっ
たとき、男たちはようやく何かを思い出したようで、一人また一人と
夜の聞の中に戻っていった。
最後の一人が去り、梯子をよじ登る足音が聞こえてきても、体の歪んだ老人
は男たちの背中に向
かって叱責の言葉を投げつづけていた。


ようやく、老人がアクセルとベアトリスに向き直った。すぐに二人の言葉に切り替えて、しやべ
りはじめた。
誼りはない。

「まったく、なぜ忘れられるのか。自分たちに勇気がなくてできないことを、戦士と仲間二人が
やってくれようと出ていったばかりだというのに。こうも簡単に忘れるのは恥ずかしいからか、
ただ怖いか
らなのか」

「とても怖いんですよ、アイバー」とベアトリスが言った。「蜘蛛が一匹落ちてきただけで、つ
かみ合いを始めるほどに怖いんでしょう。ありかたい一団を出迎えによこしてくださったこと」
「謝るよ、ベアトリスさん。あなたにもだ、ご主人。いつもはあんな歓迎のしかたをしないん
が、ご覧のとおり、今夜はみんな怖がっている。お二人は生憎な夜にお抱えになった」

「長屋へ向かう途中に迷ってしまって一とベアトリスが言った。「方向を教えてくださいな、
イバー。恩に着ます。あの出迎えのあとで、夫もわたしも早く屋内で休みたいですから」
「長屋ではちゃんと歓迎されることを約束したいところだがな、お二人さん。だが、今晩だけは
わが隣人たちがどんな振舞いをするか、わしにもわからん。だから、あんたとご主人はわしの家
に来てくださらんか。わしと同じ屋根の下に泊まってもらえれば安心できる。邪魔されずに休め
ることは保証するよ」
「ご親切、感謝します、長老」とアクセルが割って入った。「妻にもわたしにも休息が必要なの
で」
「では、ついてきなさい。わしのすぐ後につづき、着くまではなるべく声を静かにな」
二人はアイバーの後ろから暗闇の中を行き、一軒の家にたどり着いた。造りはほかの家と同様だ
が、大きくて、一戸だけ離れて立っている。低いアーチから中に入ると、木を燃やした煙が濃く
漂っていて、一瞬、胸が締めつけられるような感じがしたが、同時に心地よさと緩かさも感じら
れた。部屋の中央で火がくすぶっていて、その周りに絨風や勤物の毛皮が敷かれ、オークやトネ
リコで作った家具も並んでいる。アクセルは二人の荷物から毛布を引っ張り出しにかかり、ベア
トリスは感謝と安堵の表情で揺り椅子に腰をおろした。だが、アイバーは戸口のわきに立ったま
ま、何かをじっと考え込んでいた。

さきほどのお二人への村人の態度は、思い出すだけで恥ずかしい。この身が震える」と言った。

「いや、もうお考えにならずに、長老」とアクセルが言った。「長老には、十分すぎるほど親切
にしていただきました。それに、今夜は、じつに勇敢な男たちが危険な任務に赴くところも拝見
できました。この村を覆う恐怖は、わたしたちにもよく理解できます普段と違う行動をとる者
が出てきても不思議ではありません

「外から来たあなた方でさえ今回の難儀を覚えているというのに、あのばかどもがもう忘れてい
るというのはなぜなのか。何かあっても持ち場を離れるな。村全体の安全がかかっているんだぞ。
そう噛んで含めるように言い聞かせておいたんだ。さらに、わが村の英雄たちが悪鬼どもに追わ
れて門まで逃げ帰ったときは、すぐに助けに出られるように、とも言っておいた。なのに、どう
だ。見かけない人間が二人、目の下を通り過ぎた。とたんに命令を忘れ、その理由も忘れて、狂
った簑のように二人に襲いかかる。そんな奇妙な物忘れがここではしょっちゅう起こる。これほ
ど頻繁でなかったら、わしの感覚のほうがおかしいのか疑うところだ」

「わたしたちの住んでいるところでも同じですよ、長老」とアクセルが言った。「わたしと妻も、
村人の間にそんな物忘れが起こるのを何度も見ています」
「ほう、それはおもしろいことを間いた、ご主人。わしはまた、その種の病はこのあたりだけの
ことかと思っておった。それに、こんな疑問もある。周りのみなが忘れても、わしだけが覚えて
いることがあるのはなぜだろうか。わしが老いているからか。それともサクソン人の中で暮らす
唯一のブリトン人だからか」

「わたしのところでも同じですよ、長老。わたしたちはこの奇妙な物忘れを一霧』と呼んでいま
す。わたしたちニ人も霧の影響を免れませんが、それでも若い者たちよりはずいぶんましなよう
です、その理由は何だとお思いですか、長老」
「いろんな説明を耳にしたが、ほとんどはサクソンの迷信だ。だが、この前の冬に一人の旅人が
通りかかって、その問題について一つの説を披露していった。あれ以来、その説についてよく考
える。考えれば考えるほど、正しいようにも思えてくる。おや、これはどうしたことだ……」杖
を手に、戸口に立ったままだったアイバーが、体の歪みにもかかわらず敏捷な動きで振り返った。

「話の途中だが、お許し願いたい、お二人さん。勇敢な三人がもう戻ってきたのかもしれない。
お二人は当面ここにいて、顔を出さないほうがよかろう」

アイバーが出ていった。アクセルとベアトリスはしばらく黙ったまま、それぞれの椅子の中で目
を閉じ、休める幸運に感謝した。やがてベアトリスがそっと言った。

「アイバーは何を言おうとしたのだと思います、あなた」
「何のことかな、お姫様」
「霧とその発生原因のことを話していたでしょう?」
「聞いたという噂話の一つだ。もちろん、もっと詳しく話してもらおう。なかなか敬服すべき老
人だ。ずっとサクソン人の間で暮らしてきたのかい?」
「奥さんがサクソン人だったんですって。ずっと昔のことで、その奥さんがどうなったかは間い
ていませんけど。ね、アクセル、霧の原因がわかったらすばらしいと思わない?」
「もちろんだよ。ただ、わかってどうなる、とも思う」
「なぜそんな言い方をするの、アクセル。よくそんな心ないことが言えますね」
「どうした、お姫様」アクセルは椅子に起き直り、妻を見やった。「わたしはただ、霧の原因が
わかっても、霧が消えてくれるわけではないと言っただけだよ。この村でも、わたしたちの村で
もな」
「霧を解明できるかもしれないのよ、アクセル。大きな変化が起こるかもしれないのに、そんな
大切なことをつまらないことみたいに……」
「ごめんよ、お姫様。そんなつもりじゃなかった。ただ、ほかのことで頭がいっぱいで……」

                         カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

                                     この項つづく



【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅵ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代
 

昔の日本は平等だったのか
日本人は、日本社会は近年になって格差が拡大したと感じていたが、それでもOECDのなかで
はぞ等なほうの国だと信じていた。ところが、前述のOECDのレポートは、日本は国際
的に見
て格差が大きい国だと指摘したので、大きな反響を呼んだわけである。

このレポートは相対的貧困率という指標で格差を日九たわけだが、ジニ係数で昆た格差につい
は1970年からのデータがある。ジニ係数とは、所得格差.の度合いを示す係数で、所得が完
全に平等に分配されていればゼロ、完全に一人の人に分配されていれば一となる係数である。ジ
ニ係数では、相対的貧困率とは異なって、豊かな人が多くても、貧しい人が多くても格差は大き
くなる。

データを整理すると、下表I‐2のようになる。まず晨近年のジニ係数を見ると日本は22か国
中7番目(平等なほうからは16番目)に格差の大きい国となる.格差の大きい国は、もっとも
不平等なアメリカを筆頭に、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、ニュージーランド、イギリス、
日本の順となる。


ここで、日本の格差が拡大したのは、厚生労働省「国民生活基礎調査」を用いたからだという指
摘もある。この調査は、福祉事務所を通じて行われるので、所得の低いサンプルがより集
まりや
すい。そのことが、不平等度を拡大するのだというのである。

データの出所である論文(MichaeI F6rster and MarcoMira d'Ercole/‘lncome Distribution and Poverty in
OECD  Ciuntries in the Second Half of the 1990s,” OECD) Social,
Employment and Migration Working
PaPer 22, March 2005
)によると、他の国は通常の家
計調査を用いているので、日本も総務省「家
計調査」または同「全国消費実態調査」を用いるべきだと思われる。

実際、「国民生活基礎調査」は2005年に初めて国際比較に使用され、その前には「全国消
実態調査」が使われていた。2000年代(2000~09年)の中ごろでは、全国消費実
態調
査を用いるとジニ係数は0・314ではなくて0・273となり、22か国中平等なほう
から数
えて、16位ではなくて11位になる。

その前の時代を見ると、日本のジニ係数は、1970年代央0・276で8か国中5位(平等な
ほうから数えて)、80年代央は0・278で19か国中11位、90年代央は0295
で19
か国中の11位となる。すなわち、過去に遡って見ても、日本は先進国のなかで格差
の小さい国
とはならず、平均的な格差のある国にしかならない。日本は先進国のなかで格差の
小さい国であ
ったことはなく、昔から、先進国のなかでは中位の格差の国だったのである。



戦前の格差はどうだったのか
さらに過去に遡ると何か言えるだろうか。戦前の格差がどのような状況であったのかを調べこと
は容易ではないが、南亮進『日本の経済発展と所得分布』(岩波書店、1996年)、ジェフリ
ー・G・ウィリアムソン『不平等、貧困と歴史』(安場保吉・水原正亨訳、ミネルヅァ書房、2
003年)によると、図1‐4のようになっている。これによれば、日本のジニ係数は0・5前
後とイギリスなみであり、しかも格差が継続的に拡大していたことがわかる。階級社会ではない
アメリカの格差が、イギリスよりも大きかったこともわかる。南北戦争1861~65年)直後
の1870年であれば解放されたばかりの奴隷が貧しく、それゆえ格差が大きいと解釈できるが、
自由人成年男子だけで比べても格差が大きかったのである。アメリカを除くと、戦前の先進国の
ジニ係数は0・5前後で、それが戦後低下し、現在、格差が拡大して、戦前期の状況に戻ってい
るということかもしれない。


このメッセージは、トマ・ピケティ『21世紀の資本』(山形浩生・守岡桜・森本正史訳、みすず
書房、2014年)と同じである。ピケティは、上位一%富裕層の全所得に占める比率の上昇で
格差の拡大を示している。アメリカ、イギリス、カナダの格差は戦前に戻るような勢いとなって
いるが、欧州大陸のフランス、ドイツ、スウェーデンでは、その程度はずっと小さい(ピケティ
前掲書、図9‐2、図9‐3)。
日本は格差の小さい国だ(あるいは、国だった)という日本人の思い込みは、戦前の格差の大き
い社会から格差の少ない国に変化したこと、アメリカという格差の大きな国との接触が多いこと
から生まれた神話なのかもしれない。

          原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

                                    この項つづく
 

  ● 今夜の一挙

組曲「惑星」より木星  ホルスト

  Aug. 28, 2018

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ガウイン卿と緑の騎士

2018年09月07日 | 時事書評

  Aug. 28, 2018

                                             
第14章 「道」のはたらきべ
「道」は、見ても見えないから、「色がない」といおう。聞いても聞こえないから、「音がない」
といおう。探っても触れないから、「形がない」といおう。こうした感覚ではつきとめられぬもの、
個別化を経ぬ一般性、それが「道」だ。上と下との区別もなく、無限にひろがっているもの、その
はたらきは絶えることなく続いているが、そのものが何であるかは明瞭でない。つまり「無」とい
うよりほかに表現のしようがない。状態の判らぬ状態であり、姿の知れぬ姿である。または「おぼ
ろ」とでもいおう。先と後との区別もなく、時を超えて万物を統括する。
「道」の法則性は古今か二貝している。この法則を見きわめることによって、根元としての「道」
が認識できるのである。

道紀 老子の哲学を直観の所産と見る説がある。だがその直観は、恣意的な空想の領域にとどまる
ものではなかった。「道」は、あるいは直観によって得られた認識であるかも知れない。し
かしそ
の直観の当否を、かれは緻密な自然観察によって検証しようとするのである。

 
ガウェイン卿と緑の騎士
The Tale of Sir Gawain and the Green Knight

● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.12

  

第3章
 
「今夜のこの村はどこか変」歩きながら、ベアトリスがささやいた。「いつもなら、みんな家の前
にすわっているか、どこかで輪になって笑ったりしゃべったりしているのに。子供たちなんて訪問
者の後を追いかけて質問攻めにして、答えしだいで悪態をついたり、逆に親切にしてくれたりする
んだけど……いまは気味が悪いほど静か。それが不安よ」

「道に迷っていないかい、お姫様?泊めてもらう場所に向かってちゃんと進んでいるのかな」
「先に薬のことで例の人に会っておこうと思っていたんだけど、でも、村の様子がこんなだと、と
にかく長屋にまっすぐ行ったほうがいいかもしれませんね。危ないことがあるといやだから」
「その薬師の家はまだ遠いのかい」
「前と同じなら、もうすぐそこのはずなんですけど」
「じゃ、いるかどうか訪ねてみよう。おまえの痛みがたいしたことないのはわかっているが、さっ
さと取り除けるものなら、残しておくことに意味はないからな」

「朝まで待っても平気なのよ、アクセル。言われなければ気づきもしないくらいですもの」
「それでもだ、お姫様、もうここまで来ているんだから、ついでに寄っていこう」
「あなたがそこまで言うなら、そうしましょうか、アクセル。わたしは明日の朝でも、また今度こ
こを通るときでもかまわないんですけど」


そんな話をしながら角を曲がると、村の広場のようなところに出た。中央に大きな韓火が燃え、大
勢の村人がそれを取り巻いている。幕大の明かりに浮かび上がっているサクソン人の顔には、親に
抱かれた幼子から老人まで、あらゆる年代がそろっていた。最初は、異教の儀式の場に迷い込んで
しまったかと思ったが、立ち止まって眼前の光景を見ているうち、全員がとくに何かしようとして
集まっているのではないらしい、とわかった。ただ、誰の表情も重苦しい。怖がっているとさえ言
えたかもしれない。個々に話し合う声は低く、合わさって心配げなささやきとなり、空気中を伝わ
ってくる。アクセルとベアトリスに向かって吠えかかる大がいたが、すぐにいくつかの人影に追い
払われた。訪問着の存在に気づく村人もいたが、二人の方向をただぼんやりと見るだけで、すぐに
視線を戻した。

「いったい何事かしらね、アクセル」とベアトリスが言った。
「薬師の家がこの近くでなかったら、さっさと立ち去るところですけど。さて、行き方をまだ思い
出せるかしら」

右手に小屋の並びがあって、二人はそちらに向かって歩いた。途中、物陰にたたずんで、篝火の群
衆を黙然と見ている人々がいるのに気づいた。ベアトリスが立ち止まり、そのなかの一人、ある家
の戸口に立っていた女に話しかけた。しばらくその様子を見ていて、これが目的の薬師なのだろう
な、とアクセルは思った。ほとんど闇夜と言っていい暗さだからよくは見えないが、背すじのしや
んと伸びた背の高い女であることがわかった。もう中年と言っていいかもしれない。両手にショー
ルをにぎり、それで両肩と両腕を覆っていた。薬師とベアトリスは、ときどき群衆のほうを見たり
アクセルを見たりしながら、低い声で話しつづけた。やがて、女は自分の家に入るよう二人を身振
りで誘ったが、ベアトリスがアクセルのところまで来て、そっと言った。

「あの人と二人きりで話させて、アクセル。荷物を下ろすのを手伝ってくださいな。そして、ここ
で待っていてね」
「一緒に行ってはだめかい、お姫様。まあ、サクソン人の言葉はほとんどわからないんだが」
「あのね、女だけの問題なの。だから二人きりで話させて。この老いた体をいろいろと診てくれる
そうだから」
「ごめんよ、お姫様。考え足らずだった。さ、その荷物を預かろう。いつまでも待っているから、
ゆっくり診てもらってくるといい」

女二人が家に入っていったあと、アクセルはひどい疲れを覚えた。とくに肩と脚に疲れがあった。
背中の荷物を下ろし、後ろに立つ草塀に寄りかかって、幕火に集まっている人々をながめた。なん
だか群衆のいらいらが高じてきているような気がした。周囲の暗闇からいきなり人が現れては、人
だかりに加わっていく。逆に、笥火の周りから急ぎ足で立ち去る人もいるが、やはり何か心残りが
あるらしく、すぐにまた戻ってくる。炎は揺らめき、取り巻く人々の顔をくっきり照らし出しては、
また暗い影で覆う。しばらく見ているうち、結局この人々は待っているのだ、と気づいた。籍火の
左手にある木の建物から誰かが-あるいは何かが-出てくるのを、不安な思いで待っている。あの
建物は、たぶんサクソン人の集会所か何かだろう。集会所の内部でも火が燃えているらしく、窓が
ちらちらと明るくなったり暗くなったりしていた。

ベアトリスと薬師のくぐもった声をどこか後方に聞きながら、アクセルは塀に寄りかかったままう
とうとしかけていた。突然、人だかりから低いうなりが発し、人の波が膨らんで揺らいだ。見ると
木の建物から数人の男が現れ、蒋火に向かって歩いてくるところだった。群衆は二つに割れてその
男たちを迎え入れ、何かの発表を期待するように静まり返った。だが、なんの発表もなさそうだと
知ると、肩透かしをくったような思いで、また騒がしくなりはじめた。アクセルの見るところ、集
会所から最後に出て来た男が注目の的だ。ほとんどの人がその男を見つめている。せいぜい三十歳
くらいか。漂う威厳は生来のものだろう。その辺の農夫と変わらない質素な服装ながら、明らかに
村人とは違う。どこがどう違うのかを一言で言うのは難しいが、たとえばマントをつかみ、一方
の肩に投げ上げる所作が違っている。もちろん、それによって腰のベルトとそこに吊るされた剣の
柄が剥き出しになることも、違うという印象と無関係ではあるまい。さらに、どの村人よりも髪が
長い。肩まで届くほど長く、一部を革紐で結んで前に垂れないようにしている。それを見たとき、
アクセルの心をごく自然に一つの思いがよぎった。それは、髪を結んでいるのは戦いのとき目に入
らないようにするためだ、ということだ。ごく自然に湧いてきた考えだったが、直後に、そこに含
まれる意味を意識して驚いた。しかも、その考えにはかつて自身がいつも身近に感じていたことの
ような手触りがあって、それも意外だった。その男は人だかりの真ん中に歩み入ると、当然のよう
に手を剣の柄に置いた。

その動作がもたらす安心と興奮と恐怖の入り混じった感情が、まるでわがことのようにアクセルに
もわかった。この不思議な感覚はなんだろうと思った。あとでゆっくり考えよう………アクセルは
そう自分に言い聞かせ、それをいったん心から追い出して、いま目の前で繰り広げられている光景
をじっと見つめた。

物腰が、その立ち居振舞いが、この男を周囲から際立たせている。いくら普通のサクソン人で通そ
うとしても、この男は戦士だ、とアクセルは思った。たぶん、その気になれば、すさまじい破壊を
もたらしうる戦士だ、と。

集会所から一緒に出てきた男たちのなかに、そわそわと戦士の後ろに付いて回る男が二人いた。戦
士が人混みのなかに入っていくと、二人もなんとか離れまいと後を追う。まるで、親に取り残され
そうで必死になっている子供のように見えた。どちらも若く、やはり剣を下げている。手には槍も
にぎっている。だが、どちらもそんな武器に不慣れであることは一目でわかる。恐怖で体を強張ら
せ、仲間の村人たちから投げかけられる励ましの言葉にも応えられない。背中を叩き、肩に手を置く
元気づけにも、視線をうろうろと泳がせるぽかりで、まさしくパニック状態にあった。

「あの髪の長い男は、わたしたちよりI、二時間まえに来た人だそうですよ」とベアトリスの声が耳元で言った。
「サクソン人ですけど、遠い国の人。自分では束の沼沢地から来たと言っているみたい。向こうで、海からの
侵入者と戦ったばかりですって」

少しまえから、二人の女の声がずいぶんはっきりしてきたことには気づいていた。振り向くと、ベアトリスと薬
師はもう家から出て、アクセルのすぐ後ろ、戸口の前に立っていた。薬師が低い声でサクソン語をしばらくし
ゃべりつづけ、そのあと、ベアトリスがアクセルの耳元でこう言った。

                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 
 ガウイン卿

この小説は愛と死の探究がテーマだとネット上で書評されていたことを思いだす(アドレスは忘れ
た)。その記憶をたどると、この小説は、410年頃に古代ローマ支配が終焉した5世紀後
半の中
英――イギリス人とサクソン人間の不安定な時代を舞台に、アクセルとベアトリスが離れて
暮らす
息子を訪ねることから始まる。不思議で深い霧に包まれた集落と交差しながら彼らの旅は霧の源を
見つけるものとして。これの背後にある著者のひらめきの多くは、日本の民話から導出さたものと
日本で生まれ、少年時代に英国に移住した幻想的で民俗的なものを融合させた物語とし生み出され
たと語っている。時には、アーサー王の伝説的な戦士の一人、ガウイン卿のような――サム・ペキ
ンパ(Sam Peckinpah)の映画作品に登場する犯罪者などに触発された――奇妙な騎士を登場させて
いるという。さて、先を急ごう。
                                     この項つづく




● 回生制御型電気自動車のエネルギー効率77~82

 Sep. 3, 2018
For Combined City/Highway Driving

9月3日、米国エネルギー省は 回生制御電気自動車のエネルギー効率77~82%と試算公表(上図参照)。
従来の内燃式車両とは異なり、電気自動車は、充電中約16%のエネルギー損失するものの、電気
自動車の場合、エネルギー効率は60~65%と高い。これに加え、回生制御によるエネルギー利
得を加算すると、米環境保護局(EPA)――市内/高速雲底サイクル混合走行燃費推定法で、80
%以上になると試算。

 
For City Driving


For Hayway Driving

※ Data Sources: Estimates based on analysis of a 2012 Nissan Leaf.

・Lohse-Busch, H., et al. 2013. Ambient Temperature (20°F, 72°F and 95°F) Impact on Fuel and Energy Consu-
mption for Several Conventional Vehicles, Hybrid and Plug-In Hybrid Electric Vehicles and Battery Electric
Vehicle.
SAE 2013-01-1462.
・Lohse-Busch, H., et al. 2012. Advanced Powertrain Research Facility AVTA Nissan Leaf testing and analysis.
・Thomas, J. 2014. Drive Cycle Powertrain Efficiencies and Trends Derived from EPA Vehicle Dynamometer
Results.
SAE 2014-01-2562.
・Carlson, R., J. Wishart and K. Stutenberg, K. 2016. On-Road and Dynamometer Evaluation of Vehicle Auxi-
liary Loads.
SAE Int. J. Fuels Lubr. 9(1):2016, doi:10.4271/2016-01-0901.
・Rhodes, K., D. Kok, P. Sohoni, E. Perry, et al. 2017. Estimation of the Effects of Auxiliary Electrical Loads
on Hybrid Electric Vehicle Fuel Economy.
SAE Technical Paper 2017-01-1155, doi:10.4271/2017-01-1155.

● 米工場の屋根上に814kWの自家消費太陽光

8月29日、積水化学工業は、米SEKISUI S-LEC AMERICAの本社工場に出力814kWの太陽光発電設備
を導入したことを公表。
SEKISUI S-LEC AMERICAは、積水化学の連結子会社で、米国ケンタッキ
ー州ウィンチェスター市にある本社工場で合わせガラス用中間膜を製造販売しているが
 新設した
太陽光発電設備で発電した電力は自家消費する。年間発電量は1044MWhを見込み、本社工場の年間
使用電力量の約1割に相当。これは、年間579トン二酸化炭素の温室効果ガス(GHG)排出抑制
効果になる。

● 今夜の寸評:北海道でもブラックアウト(含電源喪失)

原因は北海道電力・苫東厚真火力発電所(厚真町)の――苫東厚真は石炭火力発電所で、3機合計
で定格出力が165万kWと道内最大規模。地震発生時、道内需要310万kWの約半分を苫東厚真が
賄っていた一極集中にある。
電気は貯めることができない。常に需要(電力の使用量)と供給(発電量)を
一致させておく必要がある。今回のように、需要は変わらないのに供給が減ると、過負荷の状態となり、周
波数が低下、周波数の低下は、停電発生を意味する(上/下図参照)。

その対策も技術的(一部の開発中のもののぞき)には、『環境リスク本位制』に政策を集中させれ
ば、日本の財政力と技術力をもってして解決可能である。
 


要調査事項が山積する中、時間を割きこれをブログ掲載する余裕はもうない(慢性眼精疲労)。
しかし、現実は「空白」がここにきて一挙に露出している。恐ろしい。



※ 震度2で電源喪失寸前だった北海道・泊原発「経産省と北電の災害対策はお粗末」地震学者 
  AERA dot. 2018.09.06
※  資源エネルギー庁 3つの発電施設同時停止は想定外  NHKニュース 2018.09.06


  Aug. 28, 2018

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改めて環境リスク本位制宣言

2018年09月05日 | 政策論

  Aug. 28, 2018

                                             
第13章  わが身を貴べ
人々は、栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせる。栄辱を人生最大の関心事とか得
ること、あたかも自分自身と取り違えているかの観がある。
なぜ栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせるのか。栄誉をよしとし、恥辱を悪しと
する一面的な考えにとらわれているからである。だからこれを得ても胸を騒がせ、失っても胸を騒
がせ、不安のおさまるときがない。

なぜ栄辱を自分自身と取り違えるのか。栄辱に関心を抱くのも、自身が存在すればこそである。自
身が存在しなければ、そもそも栄辱がどんな意味を持つであろう。自身あっての栄辱なら、自身を
大切にすることこそ本筋ではないか。
自身を大切にする人は、物事の本末をわきまえた人である。政治に熱心なあまりに、自身を忘れて
しまう人、このような人物にはまだまだ天下の政治はまかせられない



天下より身を貴ぶ 自身を大切にする、それは利己的にふるまえということではなく、わが身に備
わった「道」を貴ぶことである。天下は、これに比べるなら、二義的なものにすぎない。賢人とし
て知られた許由は、帝亮から天下を診るといわれたのを耳の汚れだとして、頴川(えいせん)に耳
を洗ったという。

【下の句×樹木トレッキング:ておもへば紳も仏なりけり×サカキ】 

榊葉に心をかけて木綿四手(ゆうしで)ておもへば紳も仏なりけり  西行『山家集』

榊葉に木綿四手を掛けて、心をこめて祈願しょう。伊勢の神は 国家の神であるが、見方によって
はその本地は大日如来とも いわれていて、私の信仰する仏と同じなのだから。

※木綿四手は木綿で作った四手。
※伊勢神宮はもともと古代日本の天照大神、実は天照大神は大日如来が権現し、神と仏が一体にな
ったものなのという。神宮の神域は曼荼羅がそのまま展開したものであり、外宮は金剛界を、内宮
は胎蔵界をあらわす神仏習合思想を顕す。西行はたびたび伊勢神宮に参拝し、最初のものは出家後
間もない頃だったされ、山家集でその折の気持を歌ったものという。

 

このように、日本では古くから神事に用いられる植物であり、「榊」という国字もそこから生まれ
る。
古来から植物には神が宿り、特に先端がとがった枝先は神が降りるヨリシロとして若松やオガ
タマノキなど様々な常緑植物が用いられたが、近年はもっとも身近な植物で枝先が尖っり、神のヨ
リシロにふさわしいサカキヒサカキが定着している。
家庭の神棚にも捧げられ、月に2度1日と
15日(江戸時代までは旧暦の1日と15日)に取り替える習わしになっている。神棚では榊立を
用いる。
田舎などでは庭先に植えている家庭が多い。また、常緑樹でもあることから庭木としても
使われていることがある。

 Cleyera japonica

サカキ(榊、Cleyera japonica)は、モッコク科サカキ属の常緑小高木。神棚や祭壇に供えるなど、
神道の神事にも用いられる植物。学名は、植物学者で出島オランダ商館長を務め、サカキをヨーロ
ッパに紹介したアンドレアス・クレイエルにちなむ。常緑性の小高木。低木を見ることが多いが、
高さ12メートル、胸高直径は30センチメートルになる。若枝は緑だが、幹の樹皮は灰淡褐色に
なる。枝先の芽は裸で、若葉が巻いて鎌状になる。
葉は二列生の互生で、厚みのある革質、のっぺ
りとした表面で、鋸歯は全くなく、きれいな楕円形である。裏面はやや色薄く、両面ともに無毛。
月ごろ側枝の基部の側の葉腋から白い小さな花を咲かせる。花は1~4個が束状に出て、いずれ
も葉の下に出て、下向きに咲く。11月ごろには黒くて小さな液果を付ける。 



【スマートカーペンター事業:小型木材用CNCマシン】

4月21~26日、Human Computer Interactionの世界的な国際会議「CHI2018」で優秀作品賞を受
賞した、この小型木材用数値制御マシン『MatchSticks』はカリフォルニア大学バークレー校のラ
ンドン・ティアンらの研究グループが開発したもので、その特徴は、木材をつなぎ合わせるジョイ
ント部分の複雑な形状でも寸分たがわず加工できるため、木工初心者でも高い精度で作品を完成で
き、木工技術をデジタルネットワークで共有きることにある。



Title :MatchSticks: Woodworking through Improvisational Digital Fabrication



わたし(たち)は、主に天然/加工/改変木質加工材料やの動態的物性を組み込み精密制御した加
工物を様々な大きさに組み立て積層
物――日用品、玩具、家具、建材、架台、電化製品、工業製品
の代用/機能硬化品への応用展開業を考えるが、今夜のところでは具体的なものが思いつかないの
で残件扱いに。

● 再エネの主力電源化は世界的な流れ

 Sep. 5, 2018
※ 出典:「再エネの主力電源化は世界的な流れ」、経産省・新エネルギー課の山崎課長に聞く(前半)
   日経 xTECH(クロステック)

● 米国 系統接続蓄電容量前年度68%増

 Sep. 4, 2018

米国のいくつかの州では、ソーラ/蓄電の設置などで急速にエネルギー貯蔵容量が増加。 数時間放
電可能で、より長時間エネルギー貯蔵でき広範囲のバランスが可能となった。
スマート・エレクト
リック・パワー・ア
ライアンス(SEPA)の調査によると、米国の電力会社は2017年末までに貯蔵
エネルギー容量が68ギガワット時まで増加。小規模蓄電の増加はわずか31%だが、昨年度は蓄
電池の長寿命化で、大幅増加。
数時間の放置が可能な、より長時間、蓄電池の使用で、カリフォル
ニアとハワイのような広域エネルギー貯蔵と、ハワイやフロリダのソーラー/エネルギー貯蔵共同
設備でとのバランス制御が可能になった。

カリフォルニア州の電力会社は、再エネ支援エネルギー貯蔵政策に対応、エネルギー容量が大幅に
増加。同州では、2017年の貯蔵エネルギー容量を75%追加、累積エネルギー容量のほぼ60%を
占めた。
SEPAの調査は、カウアイ島ユーティリティ協同組合の最初の太陽光/貯蔵施設の日別プロ
フィール(太陽光発電の微妙な変動に適応する「ディスパッチ可能な」太陽光+ KIUC)をハワイに
送電(下図21)。このシステムは、13MWの太陽光と13MW / 52MWhの蓄電設備を備え、日中は電力を
貯蔵し、午前、夕方、曇りの時間帯に電力送電している。

July 22, 2018

SEPAは、KIUCが年末時点で顧客1人当たり2,036ワット時間貯蔵していたことを計算。サンディエ
ゴガス&エレクトリック(San Diego Gas and Electric KIUCは、太陽光+貯蔵を増やし続けており、
電力会社は再生可能エネルギー依存を高めている。
Florida Power&Light、Arizona Public Service、Pho-
enix
地区のソルトリバープロジェクト、テキサス州のVistra Energyの4つのユーティリティ(既存太
陽光発電所での貯蔵)計画・稼働。
SEPAは、KIUCが年末の時点で顧客1人当たり2,036ワットアワー
の蓄電していると推計。


【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅴ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代

保険原理の欠陥
企業にとって、あらゆる規制は雇用を削減するように働く。むしろ、企業を生活保障の責務から解
放したほうがよい企業を使って、人々の安心を確保しようとしたのはドイツの鉄血宰
相ビスマル
クだ。ビスマルクが、皇帝ヴィルヘルムー世(1797~1888)の下でドイツ
統一を果たした
のは1871年のことだ。当時は、社会主義運動が盛んで、労働者はビスマル
クの政府と敵対して
いた。ビスマルクは一方で社会主義者を弾圧したが、同時に、労働者を籠絡
するために、災害保険・
健康保険・老齢年金などの社会保障制度を整備
した。それはピスマ
ルクなき後も続いた。それが戦
前、内務省、厚生省によって取り込まれていったのが日本の社
会保険制度だ。

ビスマルクの目的は、労働者を箭絡することで、すべての労働者がドイツ帝国の体制に満足するこ
とを望んでなどいなかった。もちろん、すべての労働者が満足することは望ましい。し
かし、それ
にはコストがかかる。多くの支持者がいれば少数の反対派は弾圧すればよい。多く
の反対派を弾圧
するのはコストもかかる。したがって、多くの労働者が満足すればよいわけ
で、すべての労働者を
保護しようなどとは考えていなかった。だから、社会保険から漏れる人
がいても何の問題もなかっ
たのだ。企業にいる人々は組織され、団結し、政治的な力も強い。

 飴と鞭

企業から漏れた人々は孤立し、無力で、帝国政府に敵対する力などないとビスマルクは見切ってい
た。何しろ、ビスマルクは、平均寿命が六十歳のときに、六十歳からの年金制度を作っ
て、これで
ドイツ国民は安心だと説いた政治的天才だ。

しかし、今日の福祉国家に、ビスマルクのようなことはできない。国家は、年金保険料を払わなか
った、あるいは、払うことができなかった高齢者が飢えて死ぬのを放置することはでき
ない。親が
医療保険を支払わなかったからといって、子どもに治療を受けさせないなどということもできない。
国家は、本当の意昧での国民皆保険を保障しなければならない。それは、保険制度ではなくて、税
で賄う保障になるしかない

当時、党勢を拡大しつつあったドイツ社会民主党(SPD)は、社会主義の力を弱めようというビ
スマルクの意図を認識していたが、それに反対することはできなかった。社会民主党は、結局、社
会保険を中道左派に欠かせない原理として採用するようになったという。 イギリスの社会保障制
度も保険主義によって支えられている。イギリスでは、社会保険は、一部には、すでにある制度を
継続するという理由から、また、国庫の枯渇を回避するとの理由から導入されたという。そもそも、
福祉国家建設の設計図である『社会保険および関連サービス』(通称『ベヴァリッジ報告』194
2年)や『自由社会における完全雇用』(1944年)が発表されたときには、すでに保険原理が
定着していた。それは、「人々は年金や給付への権利をただ与えられたとは思っていない。彼ら彼
女らは保険料を支払うことによって獲得したいと思っている」からだろう(この二つの段落は、ト
ニー・フィッツパトリック『自由と保障-ベーシック・インカム論争』126頁~127頁、武川
正吾・菊地英明訳、勁草書房、2005年、による)。



しかし、その保険は、実際には勘定があっていない。より少ない年金保険料を集めて、より多くの
年金を支払う制度になっている。保険料は現在の高齢者に支払ってしまい、将来の高齢者はさらに
将来の若者に保険料を払ってもらう仕組みだ。したがって、日本のように将来の若者が減少してい
く社会では、将来の若者一人当たりの保険料がとめどもなく上昇していき、その負担が不可能にな
れば、破綻するしかない仕組みだ。これは、ビスマルクも気が付かなかった保険主義の欠陥だ。

国民年金の保険料を払わなくても、払わない人には年金を払わなくてよいのだから、国民年金が崩
壊することはないという議論がある。形式的には正しいが、福祉国家の実体としてはまったくの誤
りである。生活できない老人には生活保護費を支給することになるのだから、国民年金会計が崩壊
しなくとも生活保護会計は破綻する。

かつては、政府が個人と直接対応することが実務的に難しいという問題があったかもしれない。し
かし、今日、政府が個人の名前と住所と年齢を把握することに何の問題もない。2007年に明ら
かになった「消えた年金」問題は、コンピュータの能力が十分になってもそうしていなかったとい
社会保険庁(当時)の組織的な失態で、政府の能力の限界とは関係がない。

雇用重視の財政金融政策の重要性
なお、ウィリアム・ベヴァリッジ(1879~1963)の報告書名の「完全雇用」にもあるとお
り、彼は、ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)やその周辺の経済学者と協力し、
雇用の維持拡大が重要と認識していた。これは現在の日本の福祉専門家にはない優れた視点である。
仕事がなければ、年金保険料が集まらず、失業手当も増大して年金会計が厳しくなるからだ。

この視点を現在の日本の状況に適用すれば、まず財政金融政策によって雇用状況を改善しておくこ
とが重要だということである。2012年12月以降、アベノミクスの第一の矢、大胆な金融緩和
(リフレ政策)で雇用情勢が好転している。好転しているのは非正規雇用だけだという批判はある
が、ともかく雇用は伸びている。ついには人手不足で大変だという議論も現れてきた。このままで
は人手が足りないので成長が止まってしまう、深夜営業ができなくて大都市間の国際競争に勝てな
い、福島原発事故収束、震災復興、東京オリンピックのための工事もできないなどという議論があ
る。

もっとも、人手不足は急に言われ出したことで、賃金高騰の程度もまだまだわずかである。しかし、
人手不足になって賃金がわずかでも高くなったのは、今まで不本意ながら、他に働くところがなく、
安い賃金で働いていた人が、より高い賃金を提示してくれる企業が現れたので、そこに移ったから
だ。より高い賃金を提示できる企業は生産性の高い企業、低い賃金しか出せない企業は生産性の低
い企業である。労働者が、生産性の低い企業から生産性の高い企業に移れば、経済全体の平均の生
産性は上昇する。

また、賃金が上がるので、今まで働いていなかった人々も働き出す。すなわち、より多くの人が働
くことでGDPが増大する。さらに、一般に、人手不足は労働条件の悪いところで起きている。そ
この賃金が上がるのは、今まで賃金の低かった人たちの賃金が上がるということである。これは所
得分配を平等にする。

すなわち、生産性が上がるか、働く人が増えて生産物が増えるか、所得分配がより平等になるか、
いずれか、あるいはすべてが同時に起きている。いずれにしろ、よいことである。
人手不足のおかげて、これまで安い人件費で猛烈に人を使っていた、いわゆる「ブラック企業」も
考え直さざるをえない状況になっている。ブラック企業とは、賃金が安く、とてつもなく働かされ、
ご褒美があるかもしれないと思わせるが、実はないという会社である。

すると、なぜそこで働いてしまうのかという疑問が生じる。理由は、長い不況で、最低賃金に近い
仕事が増え、そこに滞留することを人々が恐れるようになったからだ。若いうちに正社員にならな
ければ、いつ仕事を失うかわからず、一生生活が不安だと、多くの人々が思っている。ブラック企
業は、正社員で採用するということで、不安な若者を取り込むことができる。

正社員で雇っても、自発的退職に追い込むノウハウを持っているので、解雇の容易な非正規を雇う
必要もない。社会保険料は、労働時間にかかわらず一律だから、長時間労働させれば時間単価を切
り詰めることができる。時間当たりにすれば最低賃金なのだが、若者は、それでもここで働いたほ
うがマシと思わされてしまう。

リフレ政策で景気をよくすることが雇用環境を改善するために効果的だというのが、2012年1
2月以降の経験からわかったことである。1990年の初めまで、日本の失業率は2%台たった。
それが上昇することによってブラック企業が現れてきた。安倍音三総理が大胆な金融緩和を唱え、
それを実現に移してから、失業率は低下した。失業率がさらに低下していく過程で、ブラック企業
は人を取ることができなくなっていく。

一方、アベノミクスの第二の矢と位置づけられる財政政策はあまりうまくいっていない。財政策で
雇用を改善するとは、政府が公共事業を発注して建設会社に人を雇ってもらうことである。財政政
策には、減税によって税引き後の所得を高め、消費支出を増やして結果として雇用を増やすという
方法もあるのだが、日本では公共事業が一般に用いられてきた。ところが、それがうまくいってい
ない。日本全体で建設工事をする能力には限りがあり、東日本大震災からの復興、福島原発事故の
処理、東京オリンピックの準備という、必ずしなければならない建設工事があるなかで公共事業を
増やせば、民間の建設工事ができなくなってしまう。建設単価が上がって、実質の工事量が減って
しまうのである。実際、2014年になってからの実質公共投資は伸びていない

政府支出で雇用をつくるなら、できる限り特定の支出に偏らないほうが望ましい。特定の支出に傾
けば、供給のボトルネックが生まれて価格が上昇し、雇用拡大効果を阻害する。消費税増税で景気
が悪化しているが、増税で景気が悪化するなら、減税で景気が好転するのも道理である。雇用拡大
には、減税も考えるべきである。減税しても、人々が何に使うかわからないのだから、減税は、特
定の支出に偏らない財政面からの雇用拡大政策である。

財政赤字が問題だというなら、金融緩和だけして、財政政策を使わなければよかっただけだ。金融
緩和で雇用が増えれば、必ず税収が増加し、その分だけは財政赤字が縮小するからだ(雇用重視の
金融政策について詳しくは、原田奉『日本を枚ったリフレ派経済学』日経プレミアシリーズ、20
14年、を参照されたい)。



企業を生活保障から解放しよう
個人を老後や疾病や失業から保護するのは、企業ではなくて政府の直接の仕事とすべきである。2
016年から国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度が導入されるが、2002年に運
用が開始された住民票ナンバー、1997年に導入された基礎年金番号についてプライバシー侵害
との批判があったように、マイナンバーにも同様の批判がある。だが、政府が個人の名前と住所と
年齢を知ることがプライバシーの侵害だというなら、そもそも福祉国家は成り立たない。個人を保
護するためであるから、政府がその個人の名前と住所を把握することに異議はないだろう。

年金、医療保険、失業保険の維持には費用がかかる。その費用は、個々人から保険料として取り立
てるのではなくて、税を充てる。ただし、悦による年金は基礎年金分だけで、老後も豊かな暮らし
を楽しみたい人は、自ら貯蓄するか、基礎年金以外の年金に加入する。これは、現在二階建て部分
と言われている厚生年金や三階建て部分と言われている企業年金のことである。二階建て以上の部
分については、これまでと同じで、新たに費用が発生するわけではない。ただし、これらの年金は、
完全に年金数理的に公正な年金、加入年によって損得の生じない積み立て型の年金にするべきであ
る。基礎年金、医療保険、失業保険には、これまで入っていない人が入るという意味では、新たな
費用が発生する。しかし、現実問題として、政府は、年金や保険に入っていない人が路頭に迷うの
を放置できないのだから、実質的に新たな負担を作るわけではない。

負担について見れば、所得の多い人ほど負担することになる。年金保険料は月62万円の給与、年
額で150万円のボーナスという上限があるので、年収で894万円(=62×12か月+150
万円)以上の所得では増えずに定額となる(厚生労働省社会保険審議会年金部会では、この上限額
を引き上げようという議論がたびたびなされている)。一方、税は基本的には所得の高い人ほど負
担する額が大きくなるわけだから、税による負担は、これまでよりも累進的になる。税による安心
の制度の利点は、そこから漏れる人がいなくなることだ。悦によってこそ本当の国民皆保険制度が
実現できる。

これに対する反論は、これまで保険料を納めてきた人と納めていなかった人との不公平があるとい
うものだ。反論は正しいが、医療保険、雇用保険は、基本的には掛け捨ての保険であるから、1~
2年の移行期間を設ければ問題はない。問題は年金だ。ただし、基礎年金の部分だけを税で賄う
けだから、それほど大きな問題ではない。移行期間は20年を要するが、国民すべてを保障するた
めに必要なことなのだから早くしたほうがよい。

日本の特徴はワーキングツアーが多いこと
何よりも問題なのは、現在の日本の政策が、現実に貧困を減らしていないことである。
貧困の理由は、仕窄のないこと、失業または疾病などにより働けないこと、働いても給与の低いこ
とである。日本の貧困率は、すでに広く指摘されているように先進国のなかでアメリカ
についで高
い。この指摘は、OECDのレボート(Economic Survery of jgan 2006)による
ものである。これに
よれば、日本は相対的貧困率で見ると先進14
か国中2番目に不平等だというのである。相対的貧
困率とは、所得が高い人から低い人を並べてちょうど真ん中にある人
の所得(中位所得)の半分以
下の所得しかない人の比率である。相対的貧困率は、貧しい人が
多いか少ないかの指標である。こ
れまでの日本での議論では、平等社会だった日本が不平等に
なっているという時系列での変化を問
題にしていたのだが、このレポートは、日本が国際的に
見ても不平等であるというのだ。

OECDのレポートによると、図1‐3の上図に見るように、日本はこの貧困率が税引き・社会保
障給付後の可処分所得で、2000年で、図中の14か国中アメリカに次いで二番目に
高い。下図
には1990年代央のデータもあるが、これで見ても、日本はアメリカ、イタリア
に次いで三番目
に相対的貧困率が高い。日本の格差の本質は、とてつもなく豊かな人が多いの
ではなくて、貧しい
人が多いということになる。

相対的貧困率とは、真ん中の所得の人に比べて所得の低い人がたくさんいるということである。こ
れにも、日本は平等社会であると考えている人からは反論がある。反論は、年功賃金の
傾向のある
国では不平等になるというものだ。確かに、若いときに所得が低いが年齢を重ねる
とともに所得が
上がる国では、一生涯を通じての不平等は少なくても、ある一時点の所得分布
を見れば不平等度は
高くなる。しかし、この反論は1990年ごろまでは説得力があったかも
しれないが、現在では説
得力がない。一九九〇年代になって正社員になれない若者が増大し、
その上うな若者が将来、年功
に従って高い賃金を得られるとは考えられないからだ。相対的貧
困率が高い理由について説得力が
あるのは、OECDレポートが指摘している、個人への所得
再分配が少ないことだろう。

図1‐3に見る上うに、市場所得(悦・社会保険料控除前かつ社会保障給付前の所得)での相対的
貧困率では、日本は2000年(上図)で、一四か国中六番目で、北欧、オランダ、カ
ナダに次い
で平等な国である。1990年代史(下図)では、一四か国中一番目で、もっとも
平等な国である。
しかし、最終的な可処分所得で不平等になるのは、児童手当、失業給付、生
活保護などの支給額
が少ないからである。例えば、前項で述べた上うに、日本の生活保護制度
は、支給額は高いが限ら
れた人にしか配らないという奇妙な制度となっている。また、失業給
付制度も、職を失うことの少
ない正社員には厚いが、職を失うことの多い非正規社員はその制
度に入っていないという、これも
奇妙な制度になっている。この上うな制度の下では、可処分
所得で見た相対的貧困率が高くなるの
は当然である。


これまでの日本の社会安定機能は、組織を通じて生活の安定を図るという方法だった。公共
事業を
増大するのは、建設会社にお金を渡して人々を雇ってもらうという方法だった。雇われた人々が、
社会にとって必要なインフラストラクチャー(インフラ)を建設しているのなら一石二鳥でよいこ
とに違いない。しかし、それが無駄な公共事業だったら、高いコストに見合わない。日本の制度も、
西欧諸国のように、個人に直接分配する社会安定制度に置き換える必要があるのではないか

一方、日本の失業率は、2008年9月のリーマンショック後の不況、世界金融危機の不況で上昇
していたときでも、他の先進国が10%以上になったことに比べれば、五%あまりと低かった(2
012年6月以降、アベノミクスの効果によりほぼ三%台となっている)。ということは、日本人
は働いているが貧しい人、つまりワーキングブアーが多いことになる。ワーキングブアーは先進資
本主義国にとって、あってはならないことだった。なぜなら、働きたい人には仕事が与えられ、そ
れによってきちんと暮らせることが、資本生殺が社会主義よりも優れている証拠とされてきたから
だ。貧ハしいのは、本人が怠けているか、疾病などによるものであり、前者は自己責任であり、後
者は別途手当すればよく、資本主義は機能しているというのが基本的なアイデアだったからだ。

           原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

今夜は社会保障政策史のお復習い。
                                      この項つづく

  Sep. 4, 2018
 Shohei Ohtani takes a left handed pitcher deep for first time in his career
大谷翔平、左投手から初ホームラン

● 今夜の寸評:彦根で風速毎秒46.2メートルを観測

台風21号が多くの被害を残し足早に過ぎ去った。彦根城は連日のように多発する豪雨や強風で石
垣や白壁が剥離し修復が追いつかない。関西国際空港は高潮で復旧の目途が立たないでいる。無電
柱化・空港の浮体(メガフロート)化を急ぐべきであったことを思い返す。あらためて『環境リス
ク本位制』を宣言する。

   Aug. 28, 2018

コメント
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