極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

抗癌最終戦観戦記Ⅰ

2013年01月30日 | 医療健康術

 

 

  Zuppa di cipolle gratinata

 

【イタリア版食いしん坊万歳 オニオン・グラタン】

材 料:タマネギ 1.5kg、バター 120g、フォンティーナチーズ 100g、パン,パルメザンか
    パダノのおろしチーズ、塩、コショウ、ブイヨン、(グリュイエルチーズ,卵黄)




作り方:これはイタリア北部ロンバルディア地方特有の調理法で、まずバターの半分をフライ
    パンで熱し、薄く刻んだタマネギを加える。色
づかないように弱火で、タマネギがと
    ろとろに煮くずれするまで炒
め、水分がなくなってきたら、沸騰させたブイヨンをレ
    ードル1杯
分加え、最終的には全部を注ぎ込み、塩、コショウで調味する。スープが
    濃くなるように30分ほど煮込み、全体を裏ごしする。煮
込んでいる間に、パンの薄切
    りを12枚作り、バターで炒めて狐色に
し、それらの上に薄切りにしたフオンティーナ
    チーズをのせる。バ
ターを塗った天仮にそれらをのせて、オーブンの中に入れ,チー
    ズ
が柔らかくなるまで焼く。そうしたら、6枚の薄切りを浅鍋の底に敷くが、浅鍋は
    なるべく
陶器のものがいい。そこにスープを層になるように注ぎ込み、その上にあと
    の6枚の薄切りをのせ、さらに残りのスープを注ぎ、
上にパルメザンかパダノのおろ
    しチーズをたっぶりとかける。後
はグラタンを作るようにオーブンに入れる。


 

 

【史上最強のタックル】 

緑茶カテキンが一般医療品ではなく、健康食品として、高騰する医療薬剤費抑制に有効で、米国の
オバマ大統領も注目していることなどブログ掲載してきたが、体内脂肪燃焼効果があるとして花王
の「ヘルシア」が売り上げを続伸し、他の製薬、飲料水、化粧品メーカなども追随し市場も安定し
てきている。現在では、カテキンの生理作用として、抗酸化作用、抗ガン作用、抗アレルギー作用、
血圧上昇抑制作用、動脈硬化抑制作用、脂質代謝改善作用などが報告されており、お茶による生活
慣病の予防効果に期待が寄せられている。このうちの抗ガン作用について漠然として効果があり
そうだという程度で疫学的レベルで認識されてきたが、その作用機構については定かでなかった。



ところが、このほど緑茶に含まれるカテキンの一種と男性機能不全(ED)治療薬を併用投与するこ
とで、正常な細胞を傷つけずにがん細胞のみを殺し、高い抗がん作用を発揮することを、九州大大
学院農学研究院の立花宏文教授の研究チームが突き止めたのだ。わかりやすく言うと、ヘルシアと
バイアグラの最強タックルでガンから身を守れるのではという福音が届いたのだ。さて、研究成果
は25日、米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版に掲載された。

立花教授によると、これまで抗がん剤が効かなかったケースでも、高い効果が期待できるという。
早ければ年内にも米国で臨床実験を実施する。同教授のチームは2004年、「エピガロカテキンガレ
ート(EGCG)」と呼ばれるカテキンの一種ががん細胞の細胞膜表面にあるたんぱく質と結合するこ
とで、がん細胞を特定して殺す仕組みを解明。今回の研究では、EGCGの抗がん作用を阻害する酵素
に着目し、この酵素の働きを抑える化合物を含むED治療薬を投与したところ、抗がん作用を高める
ことに成功した。
マウスにヒトの乳がん細胞を移植した実験では、2日に1回、EGCGED治療薬を投
与した結果、16日間でがん細胞が死滅した。多発性骨髄腫や胃がん、膵臓
がん、前立腺がんでも同様
の効果が得られたという。

立花宏文教授らは、カテキン類の保健作用がその高い抗酸化活性と関連させたものがほとんどの中
緑茶カテキンがガン細胞の増殖を抑制し、その抑制効果がカテキンの種類によって著しく異なるこ
と、さらに抑制効果のあるEGCGはガン細胞の表面に結合することができるが、抑制効果のないカ
テキンには結合性がないことに気づく。緑茶カテキンを受け取ってその生理作用を仲介する分子が
細胞表面上に存在するのではないと考えた。しかし、そのような分子の存在はこれまでに報告され
ていず、そのため、テキンの細胞表面上の標的分子を遺伝子工学的手法で明確にした(ここで、凄
いことだ!と感心するが、ここからが専門用語のオン・パレードで難解となる)。

茶カテキンを体内に取り込むために(下図参照)、67kDaラミニンレセプター(67LR)という、基
底膜の主要な構成成分のラミニンに結合する細胞膜タンパク質で、悪性度の高いガン細胞では大量
増殖(高発現)する、その増殖、浸潤、転移などに関わり、この67LRがプリオンタンパク質の受容
体と機能する。最近では病原性プリオンタンパク質(別称「発狂するタンパク質」)の増殖に関係
している分子だ。遺伝子学的手法による検討の結果、この67LRが緑茶カテキンの受容体とし働く可
能性を見出し実験を行った。
これまでEGCGの抗ガン作用の研究の多くは、10~100μMという高濃
度で行われていたが、数杯のお茶を摂取しても、EGCGは血中に約1μM程度しか認められていず、
67LRをより多く発現させたガン細胞を用いて生理的な濃度(1μM)でのEGCGの作用を調べたとこ
ろ、顕著にその増殖が抑えられ、
一方、67LRに対する抗体でその細胞の表面に発現する67LRを塞ぐ
と、EGCGの結合が低下し、細胞増殖抑制作用も阻害することを突き止める。つまり、67LRは生理
的な濃度でEGCGの作用を仲介する分子だと。

 

ところで、バイアグラ(シルデナフィル)は、生体内で環状グアノシン一リン酸 (cGMP)の分解
を行っている型ホスホジエステラーゼ (PDE-5) の酵素活性を阻害する。これが陰茎周辺部のNO
(一酸化窒素)
作動性神経に作用して血管を拡張させ、血流量が増えることで機能すると考えられて
いるが、立花教授のチームは2004年に前述したカテキンの「エピガロカテキンガレート(EGCG)」
の一種ががん細胞の細胞膜表面にあるたんぱく質と結合し、がん細胞を特定して殺す仕組みの知見
をベースに、EGCGの抗がん作用を阻害する酵素に着目、この酵素の働きを抑える化合物としてバ
イアグラを含む勃起不全治療薬を投与したところ、抗がん作用を高めることに成功したというわけ
だ。これでこそ‘セレンディピティー’の至福の具現ということだろうが、バイアグラの服用に要
注意ということで今夜はこの辺で!

※ アポトーシス (apoptosis) とは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体を
より良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログ
ラムされた細胞死(狭義にはその中の、カスパーゼに依存する型)のこと。これに対し、血行不良、
外傷などによる細胞内外の環境の悪化によって起こる細胞死は、ネクローシス (ギリシャ語の「ν
έκρωσις、necrosis」) または壊死(えし)と呼ばれ、これと区別される。Apoptosis の語源
はギリシャ語の「απόπτωσις 、apoptosisアポプト-シス」:「apo-(離れて)」と「ptosis
(下降)」に由来し、「(枯れ葉などが木から)落ちる」という意味。



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2つの昆虫食と1の経済命題

2013年01月29日 | EMF安全保障

 

 

 

【養魚の昆虫食】

疑問だった養殖用昆虫について調べてみた。ところで、水産養殖は食料供給の手段としは勿論、
日本が誇るべき産業の1つだ。2008年の日本の水産養殖の生産量は約120万トン、生産額は約
千億円におよぶ。世界的には(1)漁獲低減・人口増加による食料の安定供給の必要性(2)
健康志向に基づく魚食の普及(3)BSE・鳥インフルエンザなどの疾病の流行による畜産の
限界などを理由に水産養殖の意義が注目されているというのだが、日本の水産養殖は衰退の危
機にあり、世界的にはこの30年で養殖生産は8倍近くに激増し、ノルウェーやチリ、中国・ベ
トナムなどのアジア諸国を中心に増加あいているのとは対照的に、日本の養殖生産高は1990年
代をピークに減少傾向しているのだ(上図)。日本の水産養殖業が直面する課題の1つに「飼
料価格の高騰」があり、養殖用飼料に必須の動物性たんぱく質は、カタクチイワシやアジなど
の小魚を粉末化した魚粉など賄われ、そのほとんどを輸入に頼っており、近年の水産資源の減
少や燃料費の高騰、さらに他国での需要の急増を背景に、魚粉価格は2倍以上に跳ね上がって
いる。その対策として大豆かすなどの植物性たんぱく質を利用し飼料中の魚粉含有量を低減す
る試みが行われ、愛媛大学 南予水産研究センターの三浦猛教授らは、魚粉の低減化や飼料価
の安定化の目的に研究開発を行ってきた。

 

そこで、ハエなどの昆虫はほかの生物に比べて生活環が非常に短く、人工的な安定生産が可能
なこ
とに注目し、ハエのサナギを養殖魚の餌に混ぜて、効果を検証した結果、ハエのサナギを
含有する飼
料(下図)で、(1)イエバエサナギを少量含有させ、魚粉含有量の大幅に低減、
また、マダ
イの海面養殖での実証試験では、魚粉30%+サナギ2.5%を含有する飼料に、体色・
成長性や酸化ストレスの面で、魚粉40%を含有する飼料を上回る結果が得られ、サナギ2.5%
により、魚粉10%の代替が可能と判断。
(2)イエバエサナギには、養殖魚の摂餌性を高め、
誘引する効果(摂餌促進)が認められ、ハマチ稚魚やウナギ稚魚での実験で、嗜好性が格段に
高いことを確認。
(3)さらに、イエバエサナギを含有する飼料を摂取した養殖魚は免疫が活
性化し、魚類の病原細菌に対する耐病性が得られことを確認(免疫活性化)、他種のハエサナ
ギには、イエバエよりも顕著に高い免疫活性化能を持つことが分かったという。



このような研究開発の究極的なイメージは、昆虫類の必須アミノ酸+アルファの効果の解明に
より薬学的、栄養衛生学的、工学・工業的な複合的な側面からの深耕により世界の水産業のト
ップランナーとして世界貢献していることであろう。そのことは同時に、家畜の食餌や人間を
対象としたの昆虫食科学の進行とあいまって持続可能な社会の実現に結びついていくだろう。


 


【シルクパワー全開】

滋賀県 近江町特産フルフルらーめん(特定非営利活動法人いきいきおうみ)が日本テレビ『
シューイチ』の
番組放送(2013.1.27)で第三位に選ばれた。道の駅『近江母の郷』で販売さ
れていた『フルフルらーめん』だが、
「フルフル」とはフランス語で衣ずれの音を意味し、め
んにシルクパウダーが練り込まれている。「めんは、生めんに近い食感。スープは肉のうまみ
が出た本格的な醤
油味で、昔ながらの中華そばの感じ」。シルクパウダーに含まれるアミノ酸
が体にいいと紹介されている。ところで、
シルクパウダーは、蚕の繭をそのまま粉末にしたも
ので、その成分であるセリシンは繭の繊維から抽出された18種類のアミノ酸を含む天然タンパ
ク質です。パウダー状に分解してあるので、小腸での吸収もよく、他の食品の5倍以上とも言
われている。 人間の身体は主に20種類のアミノ酸からできており、筋肉・骨・脳・内蔵・中
枢神経・血液・皮膚・髪の毛など人体を構成するものは、すべてアミノ酸からつくられている
化合物です。つまり、アミノ酸は生命活動そのものをを支える重要な物質です。シルクパウダ
ーを食べることにより、上質アミノ酸が体内に効率よく摂取できて肌本来の自然治癒で、失わ
れたコラーゲンを再生し、うるおいのある美肌を保ちます。シルクの食用の歴史は以外に古く、
漢方生薬としても使われている。

 

蚕由来のシルク(絹)タンパク質は、フィブロインとセリシンという2種類のタンパク質から
構成されている。その中で、セリシンは、保湿、抗酸化、紫外線吸収作用等の特徴が注目され、
化粧品等に幅広く利用されている。その際、効率よくセリシンを抽出するために、シルクパウ
ダーの状態で処理することも多い。また、シルクフィブロインは製糸、製織工程において大量
に排出されている。従来、シルクタンパク質からセリシンを抽出した後のフィブロインは、十
分な利用法が見い出されていなかった
。近年、その廃棄物としてのフィブロインを有効利用
する方法が求められている。例えば、シルクフィブロインを粉末化したものは、化粧品、食品、
医薬品等に用いることができる。ここで、シルクフィブロインは、特定の中性塩水溶液に溶解
させることが可能であり、塩を除去後に凍結乾燥で脱水することにより、フィブロイン粉末が
得られ、水分とともに加熱圧縮することにより、板状の材料となる。また、シルクフィブロイ
ンをハロゲン化アルカリ金属塩/低級アルコール/水の3成分を特定の比率で混合した溶媒に
溶解することで高粘度の紡糸原液とし、該紡糸原液を乾湿式紡糸した後、次いで溶媒抽出と延
伸および洗浄することにより、シルクフィブロインからなる材料を得ることができる。



一方、繊維強化プラスチック材料の分野において、環境負荷の低減や廃棄処分のしやすさを目
的としたグリーンコンポジットの研究開発が進められている。生物由来の繊維や樹脂は、石油
由来の繊維や樹脂とは異なり、再生可能な資源である。また、生物由来の繊維や樹脂は、ガラ
ス強化繊維を用いた材料と比べて、燃焼、分解等が容易である。これに対して、ガラス繊維強
化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等は、高い強度を示すものであるが、廃棄時に粉
砕および焼却し難い。従来、マトリクス材料に強化繊維材料を加えて強度の向上を図った繊維
強化複合材料の技術が存在している。例えば、マトリクス材料として生分解性樹脂を用いて廃
棄時の環境負荷を少なくする技術、強化繊維材料としてセルロース繊維材料を用いた技術、強
化繊維材料としてシルク繊維材料を用いた技術等が開発されている(例、熱可塑性樹脂とシル
ク繊維材料(絹織物)とからなる繊維強化複合材料が示されている。

しかし近年、シルクの主成分であるフィブロインが10数種類のアミノ酸で構成されているタン
パク質であることから、その特性を活かして非衣料分野での応用が増え、
食べるシルクが顕著
となっている。パウダー状のものから錠剤まで、さまざまなフィブロインの栄養補助食品が開
発され。フィブロインの成分で最も多いグリシンは、コラーゲンや天然保湿因子の原料になる
他、神経を静める作用、目覚めがよくなる作用、あるいはコレステロール値の抑制や免疫力の
向上などの働きがあることが知られている。また、アラニンは、グリシン同様、コラーゲンや
天然保湿因子の原料になる他、体内でエネルギーに変わるとともに、疲れにくく、肝機能をサ
ポートする働き、体脂肪を分解する働きも認められている。さらに、セリンは表皮や爪、髪を
つくるシステインの基でもある。こうしたフィブロインに含まれるアミノ酸に着目し、美容と
健康のサポートを目的とした栄養補助食品の実用化が進んでいる。
食品化については、かねて
からフィブロインの分子量が大きいことから消化吸収に課題があるといわれてきたが、酵素分
解法など、より安全にアミノ酸やオリゴペプチドという低分子化することが可能な技術も確立
され、消化吸収という課題も克服されている。
さらに、生体に馴染みやすく、細胞が再生しや
すいことから、生体適合性に優れたフィブロイン膜を使った人工皮膚なども研究されており、
実用化も近いといわれている。 2010年4月には、岩手大学との共同研究により、「カイコシル
クパウダーペプチドにおけるLC-MS/MSならびにアンチエイジング機能の解析」という論文が
発表(上写真)されており、フィブロインにおける今後の可能性が広がっている。

 

そうか、シルクラーメンか、昆虫も奥が深いんだ!いま嫌われているスズメバチも強精剤として抽出液
やサプリメントとして販売されるかもしれないし、ロイヤルゼリーは貴重な体質改善剤として販売される
日もちかい。蚕は、衣料品と見直され、医療品として、あるいは幼虫は食餌として百パーセント役立つ
てくれるかもしれない。そう考えると未来は明るいじゃないかと腑に落ちた。

 

【現代金融政策論】 


日銀は29日、平成14年7~12月に開いた金融政策決定会合の議事録を公表した。当時は不良債
権処理が懸案だったが、デフレ克服も課題となっており、日銀は金融緩和策の一環として物価
目標をめぐり議論。同年12月17日の決定会合で、当時の速水優総裁が物価目標について「経済
を無謀な賭けにさらすということ。政策として適当でない」と導入に否定的な見解を述べてい
たことがわかったと報じられた。それによると、この決定会合で、速水総裁は「インフレ予想
ではなくて、成長予想を高めることが重要で、それこそが経済再生に向けた政策の王道」と強
調。他の出席者からも「なかなかインフレにならないところから無理矢理やっていくので、か
なりの確率で(目標幅を)オーバーシュート(上振れ)してしまう」(当時の植田和男審議委
員)などと、物価目標の導入には慎重な意見が相次いでいた。それから約10年後、日銀は今月
22日の決定会合で安倍晋三首相の要請を受け入れる形で2%の物価目標の導入を決断。金融政
策のあり方は大きく転換した。当時はゼロ金利状態で利下げ余地はなく、日銀は当座預金残高
を目標とする量的金融緩和政策を実施していた。日銀は、開催から10年がたった決定会合の議
事録を半年ごとに公開していという。




このニュースの前、麻生太郎財務相は28日、臨時閣議後の記者会見で、日本政府の経済政策は
「円
安誘導が目的」との批判が海外から出ていることに対し「ドルやユーロを下げても、俺た
ちは文句を言
わなかった。(円相場が)10円か15円戻したら(欧米が)文句を言うのは筋
としておかしい」と反論した。
最近の円安傾向は「日本はデフレ不況からの脱却が優先順位の
一番。円が結果として安くなるのは付
随的に起きている話だ」と指摘し、また財務相は2013年
度の実質成長率を2・5%とする経済見通し
に関して「世界経済は下振れリスクの懸念が前よ
り薄らいでいる。株価も上がっている」と話し、見通し
を達成する可能性は高いとの見方を示
した。ただ「生活で感じるほどの景気の良さはもう少し先になら
ないと出てこない」とも指摘
したことが報道されている。

さて、10年前と言えば、半導体と液晶パネルの活況は最高潮に達していて、職場の後輩たちに
このような経験は二度とないよと話してあげたた記憶がある。この時分に既に日銀と政府との
デフレ対策で激し議論されていたことはある意味、少し安堵させるものではあるが、輸出競合
国の追い上げは、自国通貨切り下げ”強かに組み込まれていたこと(該当政府は否定するだろ
うが)を、あるいはその可能性を自覚していたのか疑問だ。さて、『抗癌最終観戦記』の続き
を。


  また日銀のなかには、「良いデフレ」と「悪いデフレ」を分けて考える者もいるという。
 良いデフレとは、物価の下落が景気の悪化をともなわないもの。悪いデフレとは、物価下
 落が景気の悪化をともなうものだ。「物価の下落」と「景気の停滞」を分けて考えるよう
 になったが、今度はそれを「良い」「悪い」というモノサシで測るようになったのである。
 良いデフレの例とされるのが、パソコンである。パソコンは現在、数年前では考えられな
 いほどに安価になっている。家電量販店に行けば、五万円以下で手に入る場合もあるほど
 だ。かつては10万円以上が当たり前、その前ならさらに高かったのだが、飛躍的に購入し
 やすくなっている。だが、それは景気とは関係のないこと。需要収縮が価格低下の原因で
 はない。パソコンが安くなった理由、それはまず第一に、技術革新と生産性の向上である
 日銀の「良いデフレ」「悪いデフレ」論は、一つひとつのものの価格と、経済全体の価格
 とを、混同している。パソコンの値段が下がったからといって、それが物価全体の下落に
 つながるというわけではない。デフレとは、物価全体が継続的に下がる状態のことをいう
 からだ。日本には、このようにデフレを容認する者が数多くいる。日銀にも、政治の世界
 にも。 他の国では、後述するリフレ政策までしてデフレを止めても無駄だという学者が、
 10人のうち一人か二人はいるだろう。だが、デフレが良いものだという議論は間いたこと
  がない。一方、日本では、ほとんどの学者は日銀の政策を擁護することが多く、10人のう
  ち一人か二人だけが「デフレは困る、デフレを止めて緩やかなインフレ気味に経済を導け」
  と正しいことをいっている状態。金融政策は効かないものだと信じている人間が数年前ま
  で多勢を占めていた。



                浜田宏一著『アメリカは日本経済の復活を知っている』

 

同上著書の「第一章 経済学二〇〇年の常識を無視する国」からの抜粋部分(背景カラーはわたし
が加筆)は、浜田宏一と見解を異にする箇所である。勿論、日銀のデフレ善悪論とは無関係では
あるが、『デフレギャップとギリシャ国債』で記載した“ソロー残差”を取り上げたが、「技術
と経済成長」の話。米国の経済学者のロバート・ソローは、古典派経済学の成長モデルの研究と
ソローモデルでよく知られているが、ソロー残差とは、生産力をあげるには、労働やその他材料
を増やすか、投入する資本 (機械) を増やすか、あるいは技術革新によって効率をあげるかだ。
このうち技術革新は直接は計測できないけれど、ほかのものの増分を生産量の増分から差し引け
ば、残ったのが技術革新の分だとするロバート・ソローのアイデアで、この考え方をもとに、
後アメリカの産業力はほとんど (87.5%) が、技術革新によるものだと主張したのだが、「2006年
第一四半期において、PCのプロセッサは90nmで製造されており、65nmのチップはIntel(Pentium D
およびIntel Core)からのみ出荷されていた。10年前では、チップは500nmで製造されていた。各
企業は45nmや30nm、さらにそれ以下の細かさのチップを製造するために起こる複雑な技術的課題
を解決するため、ナノテクノロジーを用いて開発を行っている。これらのプロセス技術は半導体
産業が直面するムーアの法則の限界を延命させる方向にある。
最近のコンピュータ業界の技術ロ
ードマップ(2001年)は、ムーアの法則はチップ数世代にわたって継続するであろう、と予測し
ている。この技術ロードマップでの計算によると、この10年間でチップ上のトランジスタ数は2
の100乗個にまで増加するだろう。半導体産業の技術ロードマップではマイクロプロセッサのトラ
ンジスタ数は3年で2倍になるとしているので、それに従うと10年で2の9乗個になる」(「個人
史としてのデジタル革命」-「5.コンピュータと半導体
」)と喩えられる『デジタル革命』の
基本法則がすさまじ勢いで貫徹波及していく時代であり、そのことの影響がどの程度寄与してい
るのかの計量経済学の新しい命題を強く意識させるが故、無視できないと考えている。そして、
ソロー・モデルは長期モデルで、rが均衡点から乖離した場合に均衡点r*に収束しても、収束に10
年やさらに半世紀もかかれば現実に意味しないとの弱点があり、技術進歩と貯蓄率の
外生性を改
善するためにラムゼイ・カス・クープマンズモデル(単一部門の成長モデル)、フォン・ノイマ
ンの多部門成長モデル、内生的成長モデル(経済現象を外生的要因によってではなく、体系内の
内生変数によって説明する考え方。内生的成長論では、外生的に与えられた技術進歩ではなく、
広義の資本ストックの充実といった内生的要因を経済成長の源泉とみなす)を派生→内生的成長
論は、ポール・マイケル・ローマーはR&Dなどで生み出される知識やアイディアが最終財の生産
に投入される中間財の種類を増加させ、その増加が最終財の生産性を向上させる過程-アイディ
アが非競合財であり規模に対して収穫逓増する特性を持ち、
例えばアイディアの投入を2倍にす
れば産出量は2倍以上になる。すなわち、
アイディアを生産するには最初に固定費用がかかるも
のの限界費用がゼ
ロであるという点で、アイディア(知識)を生み出す際にはコストがかかるが、
一度生み出されたア
イディアをコピーしてもう1単位つくるにはコストはほとんどかからない(
1→N型生産)であり、このような
性質を持つ財は完全競争市場では最適に供給されず、最終財
市場で完全競争の仮定を維持する一
方、アイディアを投入要素とする中間財市場を独占的競争市
場としてモデル化するという特性を帯びているという現在的な意味付けとその計量評価が-ノー
ベル経済賞級課題が残されているというわけだ(これは少し難しかったかな?)。それが彼とわ
たしの差だと考えている。


とはいえ、「量的緩和政策―2001年から2006年にかけての日本の経験に基づく実証分析―、財務
省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成22年第1号(通巻第99号)2010年2月

下図)のように‘インパルス法統関数’などの高等数学、線形(または非線形)はもとより離散
系数理手法を多用しこの複雑な経済現象の解明をエネルギッシュになされていることもまた現実
なのだ。


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ゾンビバスターとオールソーラシステム

2013年01月28日 | デジタル革命渦論

 

 

 




 

 

 


      「鴨のスープ」が出てくる。それでおしまい。しかしこの肉汁を
      飲み込むのはまったくもって至難のわざである。ろくに
      洗ってもいない野生の鴨の肉片と内臓が
      愛想なく浮かんだ、ねとねとの液体……
      美味には程遠いしろもの。




               ア
ントン・チェーホフ 『お昼に』(「シベリヤの旅」より) 
                 
    レイモンド・カーヴァー 『滝への新し小径』                                                      
                                 村上春樹 訳 “ At noon

             

 



      お昼に雨が降った。それは雪を流し去ってしまった。
      そして夕暮れどきに、私が河岸に立って、ボートが流れに
      抗しながらこちらに近づいてくるのを眺めているときに、
      雪まじりの雨が降りだした。……私たちは紫色の
      丈の低い柳の茂みにくっつくようにして下流に向かった。オールを
      持つ男たちが我々に話してくれた。つい十分ほど前に荷馬車に東った
      一人の少年が、柳の枝をつかんでなんとか溺れることをまぬがれた
      という話を。馬車の方は流されてしまった。……
      葉を落どした柳の低木がさわさわという音をたてながら水の方に
      身をかがめていた。川の色がとつぜん暗くなった。……もし
      嵐がきたなら我々は柳のあいだに入って夜を過ごさざるを得なく
      なるし、結局は溺れてしまうだろう。進むしかないではないか?
      我々はそれについて採決をとり、そのまま漕ぎ進むことになった。



                 アントン・チェーホフ『下流に』(「シベリヤの旅」より)
                                   レイモンド・カーヴァー 『滝への新し小径』
                                         村上春樹 訳 “ Downstream

 

 




【オールソーラシステムプロジェクト始動】

 

アラブ首長国連邦のアブダビで開催された再生可能エネルギーに関する国際会議「世界未来エ
ネルギーサミット(World Future Energy Summit 2013)」に合わせて発表された最新レポート「
太陽光発電図表:自然と調和する太陽光発電(Solar PV Atlas: solar power in harmony with nature
」によると、すべての電力を再生可能エネルギー源から生成すると仮定し、それを太陽光発電
のみで行う場合、必要とされる土地面積は一般的に考えられているよりもはるかに少ないこと
が分かった報告している。
同レポートでは、7つの事例(6か国と1地域)が紹介されており、
電力を太陽光発電のみから生成する場合、2050年までに予想される電力需要を100%満たすため
に必要な土地面積は全大陸の1%に満たないことが明らかになったとしている。
WWF(世界自
然保護基金)はファーストソーラーをはじめ、3TIER、Fresh Generationの協力のもと、レポート
作成。レポートではインドネシア、マダガスカル、メキシコ、モロッコ、南アフリカ、トル
コ、
およびインド中央部のマディヤ・プラデーシュ州の事例を紹介。これらの地域はそれぞれ
地形や
人口動態、自然環境、経済状況、政治構造が異なる。各地域の日射量の平均レベルも異
なる、い
えどこれで十分だと考えており、いずれも商用化され、信頼性の高い技術として確立
されている
太陽光発電の大規模な発展の可能性を秘めているとしている。

 

 

オランダに本拠をおくエネルギー·気候政策の大手コンサルティング会社「Ecofys」のシナリオ
によると
2050年までにすべて再生可能エネルギーに置き換えるシナリオを作成している(上図)
特に「ソーラ発電」はおよそ40%でまかなえるとし、さらに百%「ソーラ」でまかなうとして
全大陸の1%あれば満足できるとはじき出している。勿論、変換効率が前提条件の倍になれば
0.5%となるわけだが、これにはわたし(たち)が考えている量子ドットソーラセルの採用や海
洋発電システムを採用すれば「Ecofys」のシナリオを迅速に超えるシナリオが実現できる。その
ための初期投資規模が5億円程度あれば3年以内に極めて確度の高い計画書を作成提出できる
と考えている(「オール・ソーラ・システム(ASS)計画」)。





【ゾンビバスター】

アベノミクスでご機嫌の自民党政権がスタートして、福祉軽視ゾンビ、軍事オタクゾンビ、新
不自由主義ゾンビ、役人天国ゾンビ、土建フェチゾンビと、いろいろな面でゾンビがまたぞろ
顕れてきているようにみえる。夏の国政選挙に向けてわたし(たち)はゾンビバスターを忙し
い時間を割いて、警戒し怠らないようにしよう。
 

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抗癌最終観戦記

2013年01月25日 | 新弥生時代

 

 

 

【イタリア版食いしん坊万歳:ピーマンの詰物】

材  料:ピーマン×6個、ペコリーノおろしチーズ×120g、パン粉×120g、,ニンニク×3片、
    
塩漬けアンチョビーのフィレ×6枚、ケッパー、パセリ、オリーブ油、(トマト、干し
    ブドウ、松の実)

つくり方:

詰物の材料は、ペコリーノおろしチーズ、刻んだニンニク(お好みで)、刻んだパセリ、ケッパ
ー、ひとつかみ
アンチョビーの開いたもの(あらかじめ塩抜きして,細かく刻んだもの)、そし
て十分に柔らかいペーストを作るために必要な分量のオリ
ーブ油等である。ピーマンの頭冠とも
いえる葉柄の部分を切り取って、中を洗い、
そこにペーストを入れ、ピーマンに詰め込んだら、
さきほど切り取
った頭冠を蓋をするようにもとにもどす。これをかなり熱くなったたっぶりの油
の中で揚げる。

この料理にはたくさんのバリエーションがある。あらかじめゆでて皮をむき,薄く切ったトマト
を詰物に加えてもよいし、ピーマ
ンを油で揚げるのではなく、オーブンで焼いてもよい。さらに
あら
かじめぬるま湯でもどしておいた干しブドウと松の実少々を、詰物に加えるという古風な作
り方もある。

また、次のような作り方もある。ピーマンをまるごと焼いて、濡れた指先で静かに皮をむき、縦
長に二つに切る。船の形をしたピー
マンができたら、そこに上に述べたようにして作ったペース
トを詰
め、油を塗ったオーブン皿にのせて、もう一度上から油をかけ、オーブンに入れて焼く。

 

 

 

【日本経済の復活】

今朝は、浜田宏一近著の『アメリカは日本経済復活を知っている』を近くの書店で買い、早速目
を通してみたが、専門書ではなく一般書のため、著者もそのことを自覚して書き下ろしたと言っ
ている通り少し喰いたらない思いが残るが、「日銀は日露戦争の陸軍か」が印象的だったので掲
載しておく。

 現行の金融政策、その無策ぶりを思うとき、頭に浮かぶのは日露戦争のことだ。司馬遼太郎
 の名著『坂の上の雲』(文蔡春秋)に詳しいが、乃本希典将軍率いる満州軍第三軍は、旅順
 要塞を正面から攻略しようとして人海作戦に終始し、将軍の子息を含む多くの人命を失った。
 要塞を見渡す攻撃の起点になる二〇三高地を攻めよという海軍その他の意見があったが、当
 地の降車の指揮権を乃木大将が握っていたため、日本海海戦間際になるまで、無益な人海戦
 術が続いていた。児玉源太郎満州軍総参謀長が現地を訪れて陸軍を説得するまで、二〇三高
 地を攻撃する作戦が取られなかったという。

 本書の大きなメッセージは、金融政策をうまく使えば、いま日本経済が苦しむデフレ、円高、
 不況、空洞化といった問題が解決できるのに、日本銀行が金融政策を独占しており、にもか
 かわらず金融政策を使うのを拒んでいるということだ。岩田規久男氏や、自民党などの経済
 原則の分かる議員がいくらそれを叫んでも、1998年に施行された新日銀法のもとでは、日本
 銀行に金融政策の権限が集中しているので、日銀総裁が決断しない限り、金融緩和政策は採
 用されない。日銀総裁は、司馬遼太郎の描く日露戦争での乃木将軍のようだ。ちなみに、日
 露戦争では、兵十の間で脚気が大流行した。そのために、たくさんの兵士たちが命を落とし
 たという。脚気の原囚はビタミンB1の欠乏であることが、いまは分かっている。海軍の高
 木兼寛軍医は麦飯を食べると脚気にならないことを発見し、それ以降、海軍では脚気にかか
 る兵士が少なくなっていった。しかし陸軍では、軍医総監だった森鴎外が、脚気は細菌の感
 染によるものだと信じていた。そこで兵士に麦飯を与えるのに反対したそうだ。そのために
 日露戦争では、最終的に2万7,000人以上の陸軍兵士が脚気で亡くなっているという(もちろ
 んこれは、鴎外の文学者としての功績をなんら損なうものではない)。

 このように、直面している問題に正しい解決策があるにもかかわらず、国や組織のリーダー
 がそれを知らず、あるいは知っていても無視する態度をとると、取り返しのつかない惨状を
 引き起こすことになる。現在の不況も、病気や戦争と似たところがある。デフレから不況が
 深まり、倒産や失業で自殺する人も増える。世を儚んで電車に飛び込む人は、ある種の戦病
 死者だといえるのではないか。そしてそれはリーダーの責任によって少なくできるものだ。
 いまの私には、悲しさと無力感がある。石頭の日銀と論争して負けたくないといった一学者
 のプライドの問題はどうでもいい。しかし、無知な政治家や中央銀行幹部のために、企業収
 益が落ち込み、倒産が増え、多くの人が職を失っているのは間違いないのだ。現在の経済学

 には、そのつらい帰結の全部ではないにしても、その大部分を救う知恵が詰まっている。日
 本経済に対する損失を少なくするため、正しい経済学を、政治家、官僚、そしてときに間違
 った経済学を流しているエコノミストやマスコミにも知ってもらいたいのだ。そうでなけれ
 ば、苦労して二百年余の伝統ある経済学を真剣に学び、研究した甲斐がなくなる。


                            「日銀は日露戦争の陸軍か」
             (浜田宏一著『アメリカは日本経済の復活を知っている』より)



民主党政権の官僚達の経済政策の批判は、このブログで掲載してきたので(そこのところは著書
の中でそこそこのことが実名で挙がっているので購読していただければ分かる)、問題は、日銀、
及び旧大蔵、現在の財務省の官僚、族議員たちの無知・無策ぶりで、これを日露戦争時の「日本
陸軍」の戦犯?に喩えていることろの「不作為」「誤謬」の温床の無責任体制への批判である。
まぁこれはこれくらいにしておいて、「日本経済が取り残された理由」をピックアップして本の
紹介を今日のところは一旦終わろう。

実は、リーマン・ショック以降の不況は、世界中で最も痛手を受けた国が日本だったというのだ。
国際比較した鉱工業生産の落ち込みで見る限り、日本である(上図表5)。リーマン・ショック
の震源地である米国、英国の損害よりも日本経済の損傷のほうが大きく、きわめて甚大だったと。
その原因は円高を日本銀行が傍観不作為にあると。当時の与謝野馨財務大臣は「蚊に剌されたよ
うなもの」発言していたようにいまだに変わらないという。下図表6は、日本銀行の金融緊縮ぶ
りを表したもの。同じく下図表7は、中国をのぞいて、日本だけが通貨高と戦っていることを表
したもの(これらの図は、早稲田大学の原田泰教授、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの
片岡剛士氏らの著作・協力で作成)。また、IMF(国際通貨基金)が発表したGDPギャップ
を見ても、リーマン・ショック以降は日本が最も大きいのだ指摘。この不況の震源地でもなく、
輸出依存率もそれほど高くない日本のGDPギャップが大きい原因は、日本銀行が金融をほとん
ど緩和せずに、名目為替レートを高騰させ、産業に過大なハンディを負わせたためで、その責任
は、日銀、政治家、官僚、評論家、学者、マスコミに帰すと指弾する。

 

 

その生産力を精一杯使って生産できる完全雇用に対応したGDPの水準からどれだけ現実の生産
が下回ってい
るかを示すGDPギャップは下図表8で表している。これによるとGDPの推移は
日本が生産できる潜在GDPから見劣る。これは毎年生産可
能な財とサービスを、20兆円ほどド
ブに捨てたようなもので、
潜在成長経路に近づくには、潜在成長経路の自然な増加率よりも、現
実の経済成長率は大
きくなる必要と指摘しているが、ケインズ主義の正統派を含めたデジタル・
ケイジアンなわたし(たち)はマクロ経済の観点から批判指摘してきたものだ。やはり強力な同
志?大兄であったことを本日確認できたので「たまにはじっくりと本を読もう!」ということで
ブログで適宜取り上げていく。
 

※ 潜在供給力の試算や時経列推移の計算なども何れ明らかにしたい。

 

 

【抗腫瘍剤による治療】 

がんを作り出すと考えられている細胞「がん幹細胞」を直接攻撃し、がんによる死亡の大きな原
因となっている「再発」を防ぐ新薬が実用化される。日本住友製薬が近く臨床試験の申請を行う。
新薬が誕生すれば、がん幹細胞をターゲットにした世界初の薬になる。「がん幹細胞」は、この
十数年ほどの間に大腸がんのほか、乳がんや肝臓がん、胃がんなどで次々と報告されていて、抗
がん剤や放射線治療が効きにくいなどの特徴から再発を引き起こし、がんによる死亡の大きな原
因になっているが、がん細胞に「がん幹細胞」が存在することは、1997年カナダにおいて初めて
白血病で発見され、2003年に乳がんでも報告された。2005年暮れには、大阪大学大学院医学系研
究科の森正樹教授のグループが大腸がん、続いて肝臓がんで報告された。



今回の新薬は、がん幹細胞に特有のタンパク質の働きを止め、細胞を死滅させる効果があるとい
う。申請企業の大日本住友製薬は、北米で行った臨床試験では、重い副作用がないことやがん細
胞の増殖を抑える効果が確認できた。順調にいけば、アメリカとカナダでは2015年に、日本では
翌年に販売が開始できるようにしたいとのこと。大阪大学の森正樹教授は、今のがん治療は、抗
がん剤で一時的によくなることはあるが、がん幹細胞が残るため、いずれは再発してしまい、が
ん幹細胞を標的にした新薬の開発が世界中で行われているがまだ実用化されていない。患者の中
には、再発におびえながら生活する人も多く、がん幹細胞をたたく薬が出来れば、安心して過ご
せるようになる」と話す。「"がんの幹細胞はそもそもどこから生まれるのか"という疑問があり、
最近、それがオランダからの報告で明らかになった。それは、正常の臓器にある幹細胞のAPCと
いう遺伝子は、正常な場合は何も悪い働きをしないが、それがおかしい働きをすると"がんがで
きる"。しかし、幹細胞でない細胞のAPCがおかしくなっても何も起こらない。だから、"がんと
いうのは正常の幹細胞がおかしくなったときにがん化し、最初のステップはがん幹細胞だ"と証
明した」(森正樹教授)。ところが、がん幹細胞は、抗がん剤の排出能力が通常のがん細胞より
大きい上に、ダメージを受けてもそれを修復する能力がすごく高い、さらに、活性酸素を抑制す
る機能をもち自らを傷つける‘自家中毒’に陥らないという特徴をもつ。


特開2012-100629

今回の発明品は、TMEM(トランスメンブランたんぱく質、膜貫通蛋白質)176Bの発現または機能
を抑制する物質、具体的には、TMEM176Bをコードする遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核
酸、リボザイム核酸もしくはRNAi活性を有する核酸または、TMEM176Bと結合する抗体等を有効成
分として含有する、抗腫瘍剤、詳しくは血管新生阻害剤で、TMEM176Bをコードする遺伝子または
TMEM176Bの発現量を低下させる化合物を選択することを特徴とする。このような抗がん幹細胞阻
害剤?による治療法はまだまだ多くの課題が残件するものの、他の治療法、(1)局所治療:手術
(早期がん)・放射線療法(早期がん、局所進行がん)、(2)全身治療:薬物療法(科学療法、
抗がん剤による治療、進行がん、術前/術後がん)と比べ、患者の心理負担を緩和させ、根本治療
に繋がるため大きな期待が寄せられている。因みに、
抗がん剤市場は、分子標的薬など新薬の相
次ぐ発売と併用処方が進み2019年の閣内市場は2010年比73%増の1兆1,771億円(冨士経済
調べ
)と見込まれている(世界市場はこれの6~7倍程度)。さて、デジタル革命をコアとした技
術革新による‘がん根絶’のその日は以外と早く訪れるかも知れない。

※ 血管新生阻害剤

 


ちょっと、このブログも休止しなければいま抱えている残件が処理できそうもない。うぅ~~~ん、つらい。
間引き記載も選択の1つかもしれないが。

                                                         
 

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ペペロナータと金次郎

2013年01月24日 | 創作料理

 

 



 

     愛しきやし翁の歌におほほしき九児らや感まけて居らむ        巻十六・三七九四

    

 

 

        その日は祭日だったので、彼らは居酒屋でにしんを買って
     にしんの頭のスープを作った。お昼に彼らは席について
     お茶を飲みはじめ、それこそだらだらと汗が出てくるまでそれを
     飲みつづけた。もうお茶だけでおなかががぶがぶになったみたいに
     見えたのだが、でもそれから彼らはスープにとりかかった。めいめいで鍋から
     自分のぶんをよそって。にしんそのものはばあさんがどこかに隠してしまった。
     日が暮れるど陶工が崖の上で陶器を焼いた。下の
     草原では娘たちが輪になって踊り、
     歌を歌った……遠くから聞こえてくる歌声はいかにも柔らかく
     その旋律は美しく響いた。居酒屋の内や外で、百姓たちは浮かれ
     騒いでいた。彼らは酔っぱらった声で調子外れの歌を歌い、
     互いにののしりあっていた……娘たちや子供たちは眉ひとつ動かさず
     そんな汚い言葉に耳を傾けていた。この世に生まれ落ちて以来
     そんな言葉にはもうすっかり價れっこというところだ。




                As it was a holiday, they bought a herring at the tavern and made
                a soup of the herring's head. At midday they all sat down to drink
                tea, and went on drinking it for a long time, till they were all per-
               spiring; they looked positively swollen from the tea-drinking, and
               after it began sipping the broth from the herring's head, all helping
               themselves out of one bowl. But the herring itself Granny had hidden.
 

               In the evening a potter began firing pots on the ravine. In the meadow
               below the girls got up a choral dance and sang songs. They played
               the concertina. And on the other side of the river a kiln for baking
               pots was lighted, too, and the girls sang songs, and in the distance
               the singing sounded soft and musical.

               The peasants were noisy in and about the tavern. They were singing
               with drunken voices, each on his own account, and swearing at one
               another, so that Olga could only shudder and say:

  
               She was amazed that the abuse was incessant, and those who were
               loudest and most persistent in this foul language were the old men
               who were so near their end. And the girls and children heard the 
               swearing, and were not in the least disturbed by it, and it was evident
               that they were used to it from their cradles.

  

             アントン・チェーホフ 『遠くの歌』(「百姓たち」より」)
                                     レイモンド・カーヴァー 『滝への新し小径』

                                            村上春樹 訳 “Songs in the distance

 

 

 ※ PEASANTS by Anton Chekhov


 

  Peperonata


【イタリア版食いしん坊万歳:ペペロナータ】

 

材  料:肉厚のピーマン(さまざまな色のもの)×6個、スーゴ用トマト600g、タマネギ
     ×6個、グリーンオリーブの実100g、オリーブ油、酢、塩




つくり方:ペペロナータにはたくさんのヴァリエーションがある。ここでは古典的な作り
     方に従うが、好みや場所によって材料の配分がそれぞれさまざまである。まず、
     ピーマンを切り開き、ヘ夕の部分を取り、中の芯や種を取り、せん切りあるい
     はみじんに切る。大さじ6杯のオリーブ油を鍋で熱して、薄切りにしたタマネ
     ギを炒めるが、中火で、タマネギが色づかないように炒め、しんなりしたら小
     さく切ったトマトを入れる。何度かかき混ぜ,そこにピーマンを加えて、再び
     かき混ぜる。ピーマンが十分に柔らかくなるまで煮続けたら、カップ半分の酢
     を加えてかき混ぜる。酢が煮詰まったら塩を加え、そこに種を取って細かく切
     ったオリーブの実を入れる。全体が香り高くなり、ペペロナータがかなり柔ら
     かくとろりとしてくるまで、さらに数分間煮る。この料理は熱いままでも、あ
     るいは冷たいままでも食卓に供することができる。またゆでた肉にも,焼いた
     肉のつけ合わせとしても食卓に供することができる。

バイオレーション:2品

 Peperonata (Paprika) al Piemontese

  Peperonata Frittata

 

【走る二宮金次郎】 




各地の小学校などに多く建てられた、薪を背負いながら本を読んで歩く江戸時代の農政家・
思想家である二宮金治郎の姿(「振薪読書図」と呼ばれる)は、1881年発行の『報徳記』が
初出といわれ、そこには「大学の書を懐にして、途中歩みなから是を誦し、少も怠らず」と
ある。
『報徳記』を基にした幸田露伴著の『二宮尊徳翁』(1891年)の挿絵(小林永興画)
で、はじめて「振薪読書図」の挿絵が使われたといわれるが、金次郎の肖像画のルーツは中

国の「朱買臣図」にあり、これが狩野派に伝統的な画題として代々伝わり、その末裔の永興
もこれを参考にしたと考えられている。「経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るので
なく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元される」との報徳思想は、初期のマックス・ウェ
ーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」にあった禁欲的労働(世俗
内禁欲)に励むことで社会に貢献し、この世に神の栄光をあらわすことで自分が救われてい
るという確信を持つことができるとするキリスト教的教えと通じるところがあり、これらの
考えは現代にあっも‘幸せの方程式’の1つの有効な解となりうるが、いかんせん農本主義
社会でのことであって、ジョギングの出で立ちで情報端末をのぞきながらひとつの目標に向
かって走り込んでいる、高度消費・情報新本主義社会の「軽走情報端末操作図」というのが
二宮金次郎図ではなかろうかと、余りの忙しいのにかまけて、自己正当化するために、ひと
から粗雑だと思われてもいたしかたないと思った次第。世の中そんなに甘くないってか?
そんな批判が聞こえてくる仮想空間を、吾が掌に載せ飲み込んで、“This is my way.”と感
まけて居らむ、今日この頃。
 
                       

 

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走る二宮金次郎

2013年01月23日 | 日々草々

 


 




五香粉を買ってきてインスタントラーメンでランチする回数が増えてきた。具材は様々だが、余
りもので十分だ。やはり、手前味噌だが、日清食品の『ラーメン屋さんのラーメン』がいまのと
ころ一番かなぁ。材料が揃って入れば調理時間は10分以内。正午のニュースを見ながら、チン!
で、ラップや上蓋を取り除き、五香粉、お酢(ハーブ、米、バルサミコなど)、オリーブのバー
ジンオイルなどふりかけ(味付け海苔、胡麻、黒胡椒も可)頂く。いけないと思ってもスープを
飲み干してしまうほど旨くてポカポカと身体が温まるから、暖房は切ってしまうね。ところで、
五香粉は、山椒、クローブと、スターアニスかフェンネルか陳皮のうちの2種、シナモン(また
はカシア)の5種類のスパイスの粉末をほぼ同量ずつ混合した、中国を代表するスパイス。揚げ
もの料理の下味に、また鶏のから揚げなどに食塩とともに少量まぶしながら使われるほか、豚肉
料理、あんかけ料理、肉や魚の下ごしらえなどにも利用される。独特の中華風の香りに特徴があ
り、中国、ベトナム、日本などでよく用いられているが、臭み消しの機能性をここで強調してお
こう



 

 【インフレターゲットの行方】

日銀が2%のインフレ目標に合意した(合意したといっても具体的な行動はこれからだ、まさか
空手形というわけではないだろうが)。これを英断した安部総理の名前は歴史に刻まれることが
確定した。2%設定といえば国民総生産(GDP)が480兆円程度だから年間10兆円、長期5年とし
50兆円規模の景気刺激が恒常的に準備される体制に入ったと理解すればわかり良い。デジタル・
ケイジアンのわ
たしには、関心は具体的な政策実行の趨勢に焦点を合わせ、出生率の上昇率、電
線の地下埋設化の進捗度、自殺率の低下などの政策とその格付け評価といったところに移ってい
る。たまたま日曜のNHKの政治討論会で浜田宏一イェール大学名誉教授をテレビではじめてみ
たのだが、日本人で最もノーベル経済学賞に近い学者だと紹介されていたので、なんだ、わたし
が一番近いのじゃないのか、ライバルがいたのかょ?!と少々落胆 ^^;。

知っていうようが知らないでいようがそんなことは、だんないこと。そんなことより、心強い同志になるかもし
れないということで、翻訳の作業でへろへろだが、できる限りネットで下調べしておこうと奮起。 

 

〔主な著書〕

・『経済成長と国際資本移動――資本自由化の経済学』(東洋経済新報社, 1967年)
・『損害賠償の経済分析』(東京大学出版会, 1977年)
・『国際金融の政治経済学』(創文社, 1982年)
・『為替レートの決定要因(経済研究所シリーズ)』 (経済同友会経済研究所, 1983年)
・ The Political Economy of International Monetary Interdependence, trans. by Charles Yuji Horioka and
   Chi-Hung Kwan, (MIT Press, 1985).

・『エール大学の書斎から――経済学者の日米体験比較』(NTT出版, 1993年)
・『モダン・エコノミックス(15)国際金融』(岩波書店, 1996年)
 Strategic approaches to the international economy : selected essays of Koichi Hamada , (Edward Elgar,
  1996).

・『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社, 2012年) 



知らんわ、こんな本のタイトル見たこともあらへんわ ^^;。それじゃネット上で彼の思想という
か、理論とか見識を調べてみることに。 

 
 新日本銀行法が1998年に施行されてこのかた、日本経済は世界各国の中でほとんど最悪とい
 っていいマクロ経済のパフォーマンスを続けてきた。この主たる原因は日本銀行の金融政策
 が過去15年余りにおいてデフレ、超円高をもたらすような緊縮的な政策をとってきたことに
 よる。さすがに、最近の円高、不況に対する国民、政治からの批判に耐え切れなかったので
 あろう。また米国連邦準備制度理事会 (FRB) がインフレ目標(ないしゴール)に踏み切った
 こともあり、2月14日に日本銀行は1%のインフレを「目途」とする政策に踏み切った。FRBの
 インフレ・ゴール設定を受けて日本銀行によって採られた政策は、英訳版を見れば分かると
 おり、インフレ「ゴール」の設定に他ならない(「目途」はゴールや目的と違うといった詭
 弁的な議論は日銀の得意とするところであるが、巻き込まれないでよい)。目標値が2%でな
 くて1%だという中途半端な点は残るが、「金融政策だけではデフレも円高も阻めない」とい
 う世界孤高の日銀理論から、経済学が200年以上の歴史で営々と築いてきた正しい金融理論に
 基づく政策を採ったことは素直に喜びたい。

 国民生活に今多大の辛苦をもたらしているのは、デフレと円高である。デフレは円という通
 貨の財に対する相対価格、円高は外国通貨に対する相対価格であり、すぐれて貨幣的な問題
 である。したがって、それはもっぱら金融政策で解消できるものであり、また金融政策で対
 処するのが日本銀行の責務である。私は白川方明総裁に、総裁自身が以前論文に書いていた
 正しい経済学にかえってくれと、つまり「正しい歌を歌ってくれ」と懇願した(『伝説の教
 授に学べ!本当の経済学がわかる本』(浜田宏一、若田部昌澄、勝間和代共著、東洋経済新
 報社)参照)。今回のバレンタイン・デーの政策変更に至るまでそれは聞き入れられなかった。

 日本経済にも詳しいハーバード大のデール・ジョルゲンソン教授は、日本銀行が新たな政策
 を発表するたびに、「コーイチ、今度の政策でお前は合格点を与えるか?」と問いただして
 くる。今までは、「ノー、少なすぎる、遅すぎる」と答えるしかなかった。しかし今回は、
 日銀理論を捨てかねるという総裁の海外講演等に疑念は残るが、とにかく標準的な経済学の
 地平に日本銀行が歩みだしたことを積極的に評価したい。「1%という」小声で、しかもため
 らいながらではあっても、日銀はバレンタイン・デーには正しい歌を歌ったのである。国民
 をデフレの淵まで連れて行こうとしていた日銀が、ともかく自らの行動で、方向転換の兆し
 を示したことはうれしいことである。

 「論より証拠」、正しい歌の効果は直ちに現れた。日銀の新政策で日経ダウ指数は一時的に
 せよ1万円を上回った。円安も1ドル80円を超えて進んだ。明らかに、日銀自身が主張し、そ
 して多くのエコノミストや学者の主張していた、金融政策は効かないという見解が明白に反
 証されたのである。

 強調すれば、さまざまな経済要因の中で、過去数年間に、日本銀行の(中途半端ではあって
 も)今回のインフレ・ゴールの宣言以外、かくも株価や為替レートに影響を受けたものがあ
 っただろうか? 日銀の度重なる否定にもかかわらず、インフレ・ゴールと買いオペに対す
 る積極的姿勢の表明が、株価、為替レートに対して明白に効くこと(国際金融論の最初の一
 時間目に学部生に対して教えること)が市場によって如実に示されたのである(日本銀行の
 ある高官は、貨幣供給の増加の予想が株高をもたらすという資産選択論の基本をも理解しな
 いか、理解しようともしなかった)。

 長期成長経路を改善するには、たしかに人口成長率や生産性上昇率を高めることも有要であ
 るし、政府の構造改革も必要であろう。しかしそのような変化は、一朝一夕には達成できな
 い。現在我々に必要なのは、成長の潜在経路からはるかに下のところで日本経済が運営され
 ているのをすぐ止めることである。このためには、2月14日(バレンタイ・デー)に示した
 ような勇気ある金融政策が即効性を持つ。2月14日の政策変更がなぜこれだけ効いたかとい
 うと、経済に対する量の変化だけでなく、それが予想に直ちに働きかけたからである。

 天岩戸神話にたとえれば、今の状況は岩戸がかすかに(1%だけ)開かれたところである。世
 間は初めて金融政策が株価にも、円高にも利く薬だということがわかった。下界の人々は日
 の光を喜んでいる。これは、打ち出の小槌のように何度使ってもよい政策である。インフレ
 になる前に止めさえすればいいのである。ところが日本銀行総裁の談話は「太陽のわらわが
 顔を出しても世の中は明るくならない」といっているに等しい。

 この政策の組み合わせは、期待に対して働きかけ、インフレ率、円レートを通じて成長力以
 下の経済 運営の指標である失業、倒産に直接働きかけることができる。いまや、日銀はと
 もかく行動としては正しい方向に舵を切ったといえるが、かつて間違った方向に進んでいた
 日銀のいわば護送船団を引き受けていた政治家、学者、そしてエコノミストはこれからどこ
 に行くのだろうか? いまや学者とメディアは日銀より立ち遅れている。無知のためか、記
 者クラブに操作されたためか分からないが、日銀に盲従していった、彼らのはしごがはずさ
 れるときが来ないだろうか?

 今後の不安要因は、白川総裁の意識の中にある。内外の講演、談話では、新しい政策は政治
 的配慮によるものではないと言いながら、金融政策はデフレ解消に効くとは限らないという
 世界孤高の日銀理論が袖の下にちらつく。理論的にも実証的にも根拠のない人口が(成長の
 要因であるのは当たり前だが)デフレの要因であるというのは、経済の治療に当たる医者の
 議論ではない。床屋談義に過ぎない。リーマン危機以後の英米の大胆な金融拡大が世界大不
 況から人々を救った公算が大であるというのが経済学の現状である。そこで、低金利は企業
 を脆弱にするという議論は井上準之助時代の「精算主義」の再来を思わせる。

 エルピーダの破綻は欧州景気や経営の誤算によるとマスコミは強調するが、基本的な要因は
 円高に他ならない。リーマン危機以後、円はドルに対して30%も円高になったが、韓国ウォン
 はドルに対して30%もウォン"安"となった。エルピーダは韓国製品と競争する際、60%円高の
 ハードルを負わされていた。政府得意の「産業政策」や、生産性向上努力では60%のハードル
 は克服できないのはもちろんである。エルピーダは基本的に円高で破綻したのである。いつ
 でも日本銀行がより拡張的な金融政策で円高を避けることができた。だから、エルピーダの
 経営破綻は政策で円高防止を怠ってきた日本銀行に責任がある。山本幸三衆院議員(自民党)
 が言うように「自民党は日銀に潰された」のだとすれば、「エルピーダも日銀に潰された」ので
 ある。


 毎日のように通勤電車を止める飛込み自殺の一部は経済的要因で説明できるが、日銀政策委
  員会を傍聴した人によれば、日本銀行には金融政策がたとえば失業者、倒産、そして自殺者
  を増やすという形で庶民の生活に密着しているという意識がないらしい。

  円高政策は弱い企業いじめの政策である。それが、経済の空洞化を推し進める政策であるの
  はもちろん、同時に地方切捨ての政策である。超円高に、東京は耐えられても、地方はそう
  は行かない。「大阪維新の会」の支持者が多いのも理由があるのである。これらのメカニズ
  ムに気付かない、あるいは気付いても黙っている学者、報道しないマスコミも同罪である。
  20世紀初頭にかけて足尾鉱害と戦った田中正造が議会で質問したように、「亡國に至るを知
  らざれば之れすなわち亡國の儀」なのである。(1900年2月17日)

  藤原正彦氏は『週刊新潮』の「管見妄語」(2012・2・26)で次のように以上の議論を巧み
  に要約する。経済学の専門家でない藤原氏に分かることが、どうしてエコノミスト、学者、
  政治家、マスコミに分からないのであろうか?

  「しかし今最も責められるべきは、財務省や財界や政府というより日銀であろう。デフレ不
  況を十数年も放置してきた責任の大半は日銀にある。リーマン危機以来、アメリカはその貨
  幣供給量を3倍増やすなど米英中韓その他の主要国の中央銀行は猛然と紙幣を刷り景気を刺
 激 した。日銀は微増させただけで静観を決め込んでいる。この3年間で円がドル、ユーロ、
 ウォンなどに対して3割から4割も高くなったのは主にこのせいだ。今すべきことは政府が
 数十兆 円の札を刷り国債を買い、政府がその金で震災復興などを大々的に行い名目成長率
 を上げることだ。札が増えるから円安にもなる。工場の海外移転にも歯止めがかかる。ここ
 14年間、 経済的困窮による自殺者が毎年1万人も出ている。日銀は動かない。」


                    浜田宏一『日本銀行を後戻りさせてはならない』
                       独立行政法人 経済産業研究所、2012.6


これを読んでびっくり(過去にもよく似た経験をしたことがあるが、それは数えるほどしか記憶
にない)。わたしの思いとほぼ同じだ!^^;。おまけに「亡國に至るを知らざれば之れすなわち亡
國の儀」の足尾鉱毒事件でお馴染みの田中豊一、いや失礼、田中正造の有名な言葉まで引用されて
いるわけで‘ロスト・スコア’失なわれし二十年というわけだ。因みに、浜田宏一教授の経歴は、
専門は、国際金融論、ゲーム理論。東京大学名誉教授、イェール大学名誉教授、Econometric Society
終身フェロー。国際金融論、ゲーム理論の分野で国際的な研究業績を持ち、理論・計量経済学会
(現日本経済学会)会長、法と経済学会初代会長、Econometric Society理事、世界貿易機関事務局
長助言グループのメンバーを歴任。バブル崩壊後の失われた10年においては金融政策の失策がその
大きな要因とみなし、特に岩田規久男の主張を評価している。日本銀行の金融政策を批判し、リフ
レーション政策の支持者の一人とされる(出典:Wikipedia)。

 


ひとことで、この状態を表現するとすればと考えて思いついたのが、「走る二宮金次郎」という言葉。これに
ついてはまた書くが、へろへろ状態のため今夜はこの辺で。
 

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ビブリア古書堂の事件手帖

2013年01月22日 | 日々草々

 

 

【激しく遷ろう現在のサスペンス・オアシス】

先週は作業しながらテレビをみていたが、勿論、夕食後だからアルコールは入っているが、初回放送
とあって手をとめることはなかったのだが、セピアトーンの画面が気にいってしまう。また、チャラ
チャラしたキャラクターの登場(ラメを塗りたくった剛力彩芽を想像するだけで北鎌倉のイメージは
壊れてしまう?)がなかったのが幸いしたのか気に入ってしまうが手と手をとめることはなかった。
昨夜は、その期待から手作業をとめ、ドラマの後半からソファーに移り鑑賞することに。

 小説家の僕は、いつも一人で過ごしている。ときどきは一日中言葉を話さないこともある。ああ、
 これはよくない。誰とでもいい、ふたこと、みことでもいいのだ。お天気の話をするだけでもい
 い。その人のためになにかの役に立つということを抜きにして、僕達がお互いに必要とし合う間
 柄になれたなら、ど
んなにいいことだろう。
                            
                               小山清著 『落ち穂拾い』

と、高橋克美扮するせどり屋志田肇が本の一節を語るシーンに思わず哀愁(pathos)の調べに落ちな
がら久しく感じることのなかった登場人物のこころの襞を現実のように見えてくるようなで不思議な
安堵感を覚える。舞台は、北鎌倉駅のホーム隣の路地の向かいで営業している古本屋(勿論、フィク
ョン)。古い木造の建屋で、何十年も前から営業している老舗で人文科学系の専門書を主に扱うが、
マンガや文庫本の棚もあり、ネット上にある古本の検索サイトに参加しもし、売り上げの多くはネッ
ト通販でまかなわれ、店のカウンターの奥は店主が住んでいる母屋へ通じているという家屋をコアと
してドラマが展開する。

 


「僕はいま武蔵野市の片隅に住んでいる。僕の一日なんておよそ所在ないものである。本を読んだり
散歩をし
たりしているうちに、日が暮れてしまう。それでも散歩の途中で、野菊の咲いているのを見
かけたりすると、ほっとして重荷の下りたような気持になる。その可憐な風情が僕に、「お前も生き
て行け」と囁いてくれるのである。僕は外出から帰ってくると、門口の郵便箱をあけて見る。留守の
間になにかいい便りが届いていはしまいかと思うのである。箱の中はいつも空しい。それでも僕はあ
けて見ずにはいられないのだ。僕はいまの人が忘れて顧みないような本をくりかえし読むのが好きだ
。」(同上『落ち穂拾い』より)。小山の母つたはキリスト教徒であったこともあり、「私の家では、

毎日、朝御飯を食べる前に、また、夜寝る前に、家族の者が集って、讃美歌をうたひ、聖書を読み、
そしてお祈りをした」(『クラ爺や』」より)という小山にとってキリスト教は幼い頃より身近なも
のであった。1923年(大正12)関東大震災により家は全焼、弟が行方不明になるなど、小学六年生の
小山は、人生に懊悩した日々を過ごす。そんな中救援事業のため状況していたキリスト教伝道者・社
会運動家の賀川豊彦と出会い、キリスト教に接近する。25年(大正14)には高倉徳太郎の説教に感銘
を受け聖書を耽読、28年(昭和3)17歳のとき高倉により受洗するも、母の逝去を契機に数年で教会を
脱会する小山だが、彼が残した諸作品には「よきサマリア人」「聖家族」「グラ爺や」など聖書やキ
リスト教をテーマにしたものが多くあり「落穂拾ひ」「遁走」のように、一部聖書の警句を引用した
ものや、聖書がアイテムとして出てくる作品がある


「聖家族」のヨセフが繰り返し読んだといわれる「汝らの地の穀物を獲ときには汝等その田野の隅々

までを尽くべからず 亦汝の穀物の遺穂を拾うべからず また汝の菓樹園の菓を取尽くすべからずた汝
の菓樹園に落たる菓を斂むべからず 貧しき者と旅客のためにこれを遺しおくべし」には、小山にとっ
て重要な箴言であったという。また、彼の作品には「隣」という言葉が目立ち、「日々の麵麭」には
「隣人」「隣のかみさん」「隣にすんでいる」、この『落穂拾い』には「隣家の庭」「『秋深き隣は
何をする人ぞ』」「隣同士」などとの引用が多く、身近な人々の貧しくつつましい生活を送っている
ひととのと触れ合いが淡々と描かれる。幼いころよりキリスト教の「隣人愛」の思想を肌身で感じて
いた著者は、僕は一日中誰とも言葉を交さずにしまうことがある」「僕にはつい遊びに出かけるよう
な処もない」「誰かに贈物をするような心で書けたらなあ」と希求していた「僕」は、最後に貧しい
本屋を営むはたちまえの少女から、十月四日の誕生日に、耳かきと爪きりというささやかな贈物
を貰
う。その後少女が広げて見せた少女雑誌の付録に、同じ十月四日生まれの農民画家ミレーの名前
を見
つけるという結末設定で、貧しき者のために残しておく落ち穂と、それを拾う貧しき農婦。
隣人に贈
る物と、隣人から贈られる物という、素朴な「隣人愛」の思想に触れることができる。

※小山 清(1911年(明治44年)10月4日 - 1965年(昭和40年)3月6日)は東京府出身の小説家。東京
市浅草区新吉原の廓内に生まれる。生家は兼東楼という貸座敷業を営んでいたが、盲目の父は家業に
関係せず義太夫を謡っていた。明治学院中等部卒業。18歳のとき人生への煩悶から洗礼を受けるも、
数年で脱会。母の死後、一家離散の憂き目を見る。下谷竜泉寺町界隈で新聞配達をしていたが、1940
年(昭和15年)に太宰治の門人となる。第二次世界大戦後まもなくは炭坑夫として、夕張の炭坑で働
き2年足らずを過ごす。この時期に太宰が死去。同じ頃から太宰に預けていた原稿が売れるようになり、
作家となる。1952年(昭和27年)に『文學界』に発表した「小さな町」や『新潮』発表の「落穂拾ひ」
など、一連の清純な私小説で作家としての地位を確立。1951年(昭和26年)に「安い頭」が第26回芥
川賞候補に、1952年に「小さな町」が第27回芥川賞候補に、1953年(昭和28年)「をぢさんの話」が
第30回芥川賞候補にあげられ、1952年、亀井勝一郎夫妻を仲人にして、18歳下の関房子と結婚。1953
年に長女美穂、1955年に長男穂太郎(現在東京藝術大学絵画科教授)が誕生。1958年(昭和33年)、
心臓障害による脳血栓から失語症となる。以後は妻の稼ぎに依存し生活保護を受けて暮らすが、1962
年4月13日、妻が9歳の長女と7歳の長男を残して練馬区の雑木林で睡眠薬自殺。1965年(昭和40年)、
急性心不全で死去。享年55。
 

ところで、このドラマの原作『ビブリア古書堂の事件手帖』は三上延による日本のライトミステリ小
説シリーズということだ。イラストは越島はぐ(放電映像という日本のイラストレーターの主にライ
トノベルのイラストを手がける水彩画風のタッチが特徴という作家集団)?というがよくわからない
が、メディアワークス文庫(アスキー・メディアワークス)より刊行されているというが、正式タイ
トルは『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち 』。また、三上延(みかみえん、
1971年-)は、日本の小説家。神奈川県横浜市出身、藤沢市育ち。武蔵大学人文学部社会学科卒業、大
学時代は文芸部に所属していたという。そんな彼は自らのブログで「古書店を舞台にしたミステリっ
ぽい
小説です。イラストは越島はぐさん。表紙が素晴らしいのは言うまでもないですが、各話ごとの
扉絵もとてもいいです。」
「美人で人見知りなお姉さんが古書店で働いていたらどんなにいいだろう」
という高校時代の俺の白日夢がベースになってます。後になって古書店でバイトしてみると、きれい
な女性は働いていましたが、ものすごく有能な原価率管理の鬼でした。」と作品モチーフをこのよう
に表現している。

 

 

古書に関して並外れた知識を持つが、極度の人見知りである古本屋の店主・栞子(しおりこ)が、客
が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく。作中で扱っている古書は実在のものである。2012年1月、
発行部数がシリーズ累計103万部となり、メディアワークス文庫で初のミリオンセラー作品となった
とか。累計発行部数は2012年4月時点で200万部、第3巻が発売された同年6月時点で300万部を突破し
ているという-鎌倉の片隅で営業している古本屋「ビブリア古書堂」。店主の篠川栞子は古本屋のイ
メージに合わない若い綺麗な女性である。人見知りであり接客業を営む者として心配になるが、古書
知識は並大抵のものではない。彼女は古書にまつわる謎を解き明かしていくという展開。主なキャス
トは、小学生の頃の些細ないたずらが原因で、活字を見ると体調が悪くなる「活字恐怖症」とでもい
うべき症状があり、読書とは縁遠い人生を送ってきた。しかし本人は、本に対して憧れに近い感情を
抱いている。内定していた会社が倒産し、大学卒業後無職の状態が続いていた。祖母が遺した『漱石
全集』を査定してもらうために「ビブリア古書堂」を訪れ、そこで栞子に祖母の秘密を解いてもらっ
た縁で、アルバイトとして就職する五浦大輔二十三歳♂。北鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」の女店
主。黒髪の長髪に透き通るような肌をした美人。近眼で、普段は眼鏡を着用している。小柄で身体は
細いが、服の上からでも分かる巨乳。本の話以外では他人と目を合わせることもできない、内向的な
性格。しかし、古書の知識は並大抵のものではない。普段はたどたどしい喋り方をするが、本が絡む
話になると別人のようにキビキビとした喋り方になり、相手に構わずその知識を語り続ける篠川栞子
年齢?♀。ビブリア古書堂の常連客の男で、せどり屋。ホームレスで、鵠沼の橋の下に住んでいる。
ある事件で小菅と親しくなる。その後本に対する感想を言い合う関係となり、彼女から「先生」と慕
われるようになる志田□□年齢?♂。

さて、第一話の「偽のサインと古書に秘められた謎」 では、「ビブリア古書堂」の店主・篠川栞子
剛力彩芽)のもとに、古書の査定のため五浦大輔(AKIRA)がやってきて、大輔が持ち込んだ亡く
なっ
た祖母の蔵書『夏目漱石全集』で、その『第八巻それから』に「夏目漱石」と署名があったため、サ
インが本物なら高く売れるのでは、と期待した母・恵理(松坂慶子)から頼まれたものだった。
本を
手にじっと考え込んだ栞子は、やがてサインは偽物だと言う。大輔は礼を言い立ち去ろうとするが、
栞子はサインを書いたのは祖母自身としか考えられないと話す。唐突な話に、証拠はあるのかと尋ね
る大輔に、栞子は祖母にまつわる驚くべき推論を展開していく
後日、「ビブリア古書堂」を訪ねた
大輔は、恵理に確認した結果、栞子の推論が事実だったと話す。本を見ただけでなぜそこまでわかる
のかと興奮気味の大輔に、栞子は困惑し言葉を濁すが、
その数日後、栞子と再会した大輔は再び「ビ
ブリア古書堂」へやってきて、自分は本を読むと気分が悪くなる体質だと明かすが、栞子は大輔にこ
の店で働いてみないかともちかける。古書店の人間に必要なのは、本の内容ではなく市場価値の知識
だと説く栞子。迷いながらもその申し出を受ける大輔。
翌日、彼が「ビブリア古書堂」にいると、志
田肇(高橋克実)がやって、志田は荷物をカウンターに置くと、栞子に小山清の『落ち穂拾ひ』が盗
まれたと言った。それを聞いた栞子は推論を展開するという予兆でドラマはおわる。

小説『それから』は、夏目漱石の小説。1909年6月27日より10月4日まで、東京朝日新聞・大阪朝日新
聞に連載。翌年1月に春陽堂より刊行され『三四郎』(1908年)・『それから』(1909年)・『門』(1910
年)によって前期三部作を構成するといわれている。いずれも読書した記憶はあるが内容の記憶は断片
的と
なっている。ましてや、前期三部作?といわれても「はぁ~っ」というしかない。そのストーリ
というのは、定職に就かず、毎月1回、本家にもらいに行く金で裕福な生活を送る、ニート族の長井代
助が、友人平岡常次郎の妻の三千代とともに生きる決意をするまでを描いている。1909年を背景に、
東京高等商業紛争、『それから』の連載に先立つ『煤煙』の連載、日糖事件などの作品外の事象への
言及があるとか。代助の父は実業家で、次男の代助は学生時代から裕福な生活を送り、卒業後も一戸
を構えるが就職せず、実家にもらいに行く金で、自由気ままな生活を続ける。親友である平岡は卒業
後、銀行に就職し、京阪の支店に勤務し、一年後に代助と平岡との共通の友人である菅沼の妹である
三千代と結婚。三年後、平岡は、部下の公金500円ほどの使い込みが支店長に及ぶのを避けるために辞
職させられ東京に戻っくる。代助が三千代を愛していることに気づき愛を告白し、佐川の娘との縁談
を父に断り、平岡に三千代を譲ってくれるよう懇願するが父から感動されてしまう。自然の児になろ
うか、または意志の人になろうかと代助は迷うが、人妻を奪還し親族や親友(=社会)と闘い、彼は、
やっと凡てと闘う決意と覚悟もつという件で小説は終わるというものだ。
 

 

因みに『門』は、夏目漱石の長編小説。1910年に「朝日新聞」に連載され、翌年1月に春陽堂より刊行
され、『三四郎』『それから』に続く、前期三部作最後の作品。親友であった安井を裏切って、その
妻である御米と結婚した宗助が、罪悪感から救いを求める様を描く。宗助は、かつての親友である安
井の妻である御米を得たが、その罪ゆえに、ひっそりと暮らさざるをえなかった。そのため弟小六に
関する父の遺産についてもあまり関心を示さず、小六を引き取り共に暮らすことになる。しかし気苦
労の多い弟との同居のためなどで、御米は寝込んでしまう。
宗助は救いを求める鎌倉へ向かい参禅し
たが、結局悟れず帰宅。すでに安井は満州に戻り、小六は坂井(大家)の書生になることが決まって
いた。御米は春が来たことを喜ぶが、宗助はじきに冬になると答える。『三四郎』『それから』とと
もにいわゆる前期三部作をなす作品で、その最後にあたり、この作品は『それから』で友人の妻を奪
い、高等遊民を脱して職を探しに出た主人公長井代助の「それから」で、社会から逃れるように暮ら
す夫婦の苦悩や悲哀を描写したとされるが、
宗助が唐突に鎌倉に参拝し、最も緊張感がある場面設定
となるべきところ、満州に戻ったことで『それから』のような大きなクライマックスが持てず結末す
るのは、夏目漱石の病状の悪化が原因とされるが、この作品の連載終了後、漱石は胃潰瘍のため入院
し、修善寺の大患の経験しその作風に影を落としものと推測されている。
 

今夜は、『ビブリア古書堂の事件手帖』の絶賛となった。

ところで、

鎌倉は狭すぎるという印象をもって帰ってきた経験がある。それなりに、総合的な基本的な見直しは
必要やね
ぇ~というのが彼女と二人の感想。あれと、これと、それをこう持ってきてと、叡智、想像
力を働かしてできあがった北
鎌倉イメージは歴史的でしっとりとチャーミングで住みやすい日本屈指
の田園都市だと思っている。

※電信柱や電線など高架線がごちゃごちゃしていますね。これを埋設にすれば、まずはスッキリする。
 江ノ電と交通インフラ(プラットフォーム)を再整備(交通事故、渋滞、パークランドの有無、EV
 車導入などハード面、ソフト面)するなど仕事は多いですね。

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武闘依存症の行方

2013年01月21日 | 世界歴史回廊

 


 

 

アルジェリア南部イナメナス近郊の天然ガス関連施設でプラント大手「日揮」の従業員らがイ
スラム武装勢力に拘束された事件で、アルジェリア内務省は19日、掃討作戦で武装勢力32人を
殺害し、人質ら23人の死亡を確認したと発表。サイード情報相は20日、死者数がさらに増える
との見通しを示した。犠牲者に日本人が含まれるか未確認だが、「9人死亡」の目撃証言もあ
る。城内実外務政務官は20日午後(日本時間同日夜)、イナメナスに到着。邦人の安否を確認
するため病院を訪問したという衝撃的なニュースが飛び込む。人質の解放交渉なしでテロリス
トを問答無用とばかり殺戮する(?)アルジェア政府を欧米各国は温度差があるものの一応に
支持するあたりは、血に彩られた植民地支配の欧米の武闘信仰が今も色濃く生きている証であ
る。日本はこの事件を契機として、湾岸戦争以降、踏み込んだ欧米の軍事的支援を続けてきた
ことへの総括を踏まえ、今後の邦人救出プログラムの早期策定を余儀なくされた。


【武闘依存症の行方】

このような異常な体験を目の当たりにして、なぜか茂木健一郎の『幸福になる「脳の使い方」』
の前書きと交差する。

  幸福とは技術の積み重ねです。どこかに落ちているものでも、天から降ってくるもので
 もありません。生まれた時から幸運に恵まれている人もいなければ、生まれつき不幸な人
 というのも、私はいないと思っています。なぜなら人は思考法を変えることによって、自
 ら幸福にもなるし、不幸になることもできるからです。
  なぜそこまではっきり断言できるのか、不思議に思われる方もいるでしょう。その理由
 は簡単です。私白身が、かつては原因不明の体調不良やストレスに悩まされてきたにもか
 かわらず、ある時期からそれが完全に収まったからです。
  人は悲しみながらスキップをすることができないように、体調不良やストレスに悩まさ
 れながら幸福感に浸ることはできません。逆のことをいえば、幸福感を抱いている時には、
 精神的なストレスからも解放され、安心感に満ちているものです。
 現在、私は常に上機嫌で毎日を過ごしています。幸福であるといっていいでしょう。
  でもそれは宝くじが当たったとか、特別にラッキーなことが私の身に降りかかったから
 ではありません。自分の精神や体調を、自らコントロールできるコツを身につけたからで
 す。
  実はそこに至るまでの道のりは、簡単なものではありませんでした。私のストレスや体
 調不良は幼い頃からのもので、極度の人見知りで潔癖症、自家中毒や多動症(注意欠陥多
 動性障害=ADHD)など、いろいろなトラブルを抱えてきました。普段は元気に走り回
 っていても、何かの拍子で急に具合が悪くなったり、吐いてしまったりということが、子
 ども時代にはよくありました。かつてはそれも特別なことだとは考えていませんでしたが、
 今から振り返ると子どもながらのストレスがそこには関係していたのだと思います。
  中学生や高校生時代の思春期にも、ストレスはありました。友だちと遊んだり喋ったり
 していても、どこか自分ではない別人を演じている、そんな感じが常にあり、素の自分を
 出すと、周りが引いてしまうのではないか、他の人に合わせなくてはいけないのではない
 か、そんな不安感がいつも私を取り巻いていました。
  そんな私ですが、いつの頃からか、自分の不安感をコントロールする術を身につけ、健
 康になることができました。いったい何か影響していたのか、長らく自分でも理解するこ
 とができませんでした。あまり深く考えてこなかった、という方が正しいかもしれません。
 「健康にな
ったんだから、いいじやないか」と片づけてきたのです。
                    -中略-
 
  私の場合、体調不良を引き起こしていたのは、他の人とどう距離をとったらいいのか分
 からない、学校や社会というシステムに順応するのが難しい、というようなストレスが原
 因だったと今では考えています。それらの問題を自分なりに解決できるようになって以来、
 明らかに私の中のストレスは消え、肉体的にもすこぶる健康になったからです。ストレス
 から解放されることは、体調をよくし、毎日を上機嫌で幸せな気分で過ごすことを可能に
 します。

                    茂木健一郎の『幸福になる「脳の使い方」』


つまり、自家中毒の原因が背景色が黄色の部分、すなわち「他の人とどう距離をとったらいい

のか分からない、学校や社会というシステムに順応するのが難しい」ということに気づいたと
いう件。勿論、「個人と小さな社会あるいは組織」と「個人と人種・民族・国家という大きい
社会あるいは組織」とではその背景となる歴史的スケールの大きさと複雑という点で大きく異
なるのだが、重要なのは双方に共通するストレスからの解放というテーマに肝があると直感す
る。ストレスとは、生物学的には何らかの刺激によって生体に生じた歪みの状態を意味し、こ
れがある一定の限界を超えてしまうと身体や心に摩耗(アロスタティック負荷)が生じるとい
うわけだが、心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細
胞が破壊され、海馬が萎縮する心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥る。特に鬱病の患者にそ
の萎縮が確認されている。

そのなかでも、戦一般に戦闘によってもたらされる心理的な反応のである戦闘ストレス反応は
極度の緊張から攻撃行動の衝動、アルコール依存、不安、無感動、疲労感、飲食障害、集中力
低下、記憶障害、鬱、嘔吐、自己嫌悪、言語障害、現実逃避などの症例特徴が挙げられ、その
ストレッサーとなる要因として、環境的要因、生理的要因、精神的要因、軍事的要因、人格的
要因に分けられいるが、常態的に、日常的にそのような緊張化に晒された、人種、民族、国家、
組織の構成員にそのストレス性障害が遺伝的に受け継がれていけば、最悪の場合を想定すれば、
敵対する集団は永遠にそのストレス性障害から逃れることが出来ないだけでなく周囲を巻き込
んでの底なし沼化するだろうし(その閾値がどこにあるのかいまのところデータとして持って
ない?それゆえに長期的なオーバーシュートが恐ろしい?)、米国での銃規制の停滞も関係
してくる。欧米と比較し、日本では、大が
かりな海外出兵は豊臣秀吉の朝鮮出兵、明治、昭和
の三度と数少ない上に、北アメリカ豪州
あるいは中国のチベットといった直接入植した歴史は
ない(大和朝廷が朝鮮半島からの移民の
による影響が大きいことが遺伝子解析の根拠とされて
いる-それがどのような形態でなされた
のかまではわからない-「縄文・弥生混血説を裏付け
日本人の遺伝子解析」、2012.11.1 中
国新聞)。



ここで言いたいことは、欧米の“武闘信仰”の歴史的背景が複雑にからみ「テロとの戦い」を
正当化し、そのためには手段を選ばないという非人道的解釈が生まれる、遺伝子的病理分析な
しに根本治療できないのではということだ。現時進行形で進む“欧米化”の陥窮を見せつけて
いるという肝を外したいかなるコメントも、わたし(たち)には無効だとそう考えると同時に
「武闘依存症」の行方に憂慮する。


※ 京都大学 矢野浩之教授

【羽ばたくナノセルロース】

ところで、「デジタル革命」「新弥生時代」「ネオコンバーテック」などなど、独自に銘々し
た分野での日本の躍進が、独走がめだってきている。再三の手前味噌で申し訳ないが、オイル
ショック下の反インフレ闘争を吉本隆明の原則的な忠告下で組織してきたわたし(たち)は、
「地下化石燃料本位制」を乗り越えていく戦略基軸として「先端技術本位制」→「環境リスク
本位制」(順逆不二)を想定してきたが、その成果が現在進行形で結びつつある。そのなかで
今夜は「新弥生時代」から、ナノセルロース(セルロースナノファイバー、セルロースナノク
リスタル)について俯瞰、記載してみる。この分野の技術が世界で今注目されている植物資源
由来のナノ材料だ(ブログでも掲載)

 

それでは現在考えられている用途を列記すると、医薬用コーティング剤、酢酸セルロース分離
膜、セルロース発熱シート 、偏光板保護(TAC)フィルム、視野角拡大(WV)フィルム、反射防止
フィルム、セルロース系プラスチック、自動車用エンジン用フィルター、スピーカー用振動板
などがある、特に軽くて強靱という特性を生かした、従来の自動車ボディーや鉄鋼構造、住宅
合板、包装材など大量に使用されていく可能性があり、その市場予測例として、矢野経済研究
所の調査では、2015年頃にはナノ/バイオベースファイバー市場が本格的に立ち上がると予測。
2015年度の高機能ファイバー市場規模を、2011年度比20.5%増の1574億3000万円と予測。そ
の後も、ナノ/バイオベースファイバーの事業拡大と新規参入が進行し、2011年度から2020年
度までの年平均成長率は5.6%で推移、2020年度の同市場は2,140億300万円へ成長するとみてい
る。

 

 

 
 

 


 

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隣人愛 vs 兼愛

2013年01月20日 | 日々草々

 

 

 

 

【兼愛は果して夢想か】

墨子の兼愛は、キリスト教の隣人愛(アガペーに由来する人間同士の愛)に似ている。身分や立場
に関わらず、今この時に目の前にいる人を大切にする思想で、行動指針であることは多くの識者か
ら指摘いるところでもある。また、墨子が目指すのは、人間が平等になることで完成する平和な社
会で、キリスト教の目指すのは、神によるこの世界の支配とし、前者は人間の幸福追求、後者は神
の慈悲に縋るものとして考えられている。ここでキリスト教の愛は、隣人愛によって成立する人類
という大きな家族像を示唆し、キリストが十字架にかけられ、全人類の(過去と現在と未来永劫の)
罪を贖ったことで実現される愛であり、人類は神の創造物、神の姿を模った特別な「神の子供達」
として、平等という前提で、自然や組織による差別を超越して、同胞的愛を地上に実現しようとさ
れ、限りなく寛大で慈愛あふれる庇護者として支え合い、譲り合い許し合い和解すべきと啓示され
る。これに対し、兼愛は、経験主義的、歴史学的、唯物論的でいて現実的な共産主義的な側面をみ
せ、また、仏教をめぐる自力本願と他力本願というふうな対照的な側面をみせる(解釈により様々
であり、プロテスタントとカトリックと同様な解釈議論がある)。もっとも、神は自ら助くるもの
を助くというサミュエル・スマイルズの『自助論』や『自灯明』の特定の個人などに帰依するので
はなく、この世で自らを灯明とし、自らをよりどころとして、他人をよりどころとせず、自分の人
生は自分が主役であって自らを頼りにし自ら責任をもって切り開く他に道はないとの釈尊の教えが
あるように、現実に迫った問題を解決するのか、それとも、保守・保身に徹するのかという行動に
おける、あるいは実践における選択と、その意志力の強弱として顕れるほかない。さて、「兼愛は
果たして夢想か」を墨子の説話に温ねてみよう。


               然而天下之士、非兼者之言也、猶。               
              未止也。日、兼即仁矣義矣。黙然壹  
              可為裁。吾替兼之不可為也、猶撃泰            
              山以超江河也。故兼者直願之也、夫
              貴可為之物故。子墨子日、夫翠泰山
              以超江河、自古及今、生貝而来、未
              官有也。今若夫兼相愛文相利、此自
              先聖四王者親行之。何知先聖四王之
              親行之也。子墨子日、吾非与之並世
              同時、親閲其声、見茜色也。以其所
              書於竹帛、銕於金石、琢於槃孟、伝
              遺後世子孫者知之。

               泰誓目、文王昔日若月、作照光子
              四方子西土。即此言文王之兼愛天下
              之博大也、讐之日月兼照天下之無有
              私也。即此文王兼也。雖子墨子之所
              謂兼者、於文王取法焉。且不唯泰誓
              為然、雖禹誓即亦猶是也。両日、済
              済有衆、咸聴朕言、非惟小子敢行称
              乱、廳茲有苗、用天之荊。若予既率
              爾群封諸君、以征有菌。高之征有苗
              也、非以求以重富貴干福禄楽耳目也。
              以求興天下之利、除天下之害。即此
              両兼也。難子墨子之所謂兼者、於瓜
              求焉。且不唯禹誓為然。難局説即亦
              猶是也。局日、帷子小子履、敢川玄
              牡、告於上天后土。日、今天大旱、
              即当朕身履、未知得罪子上下。有善
              不敏蔽、有罪不敢赦、簡在帝心。万
              方有罪、即当朕身。朕身有罪、無及
              万方。即此言賜貴為天子、富有天下。
              然且不仰以身為犠牲、以祠説子上帝
              鬼神。即此賜兼也。雖子墨子之所謂
              兼者、於賜暇法焉。

               且不惟禹誓与湯説為然、周詩即亦
              猶是也。周詩日、王道蕩蕩、不偏不
              党。王道平平、不党不偏。其直若矢、
              其易若砥。君子之所覆、小人之所視
              若吾言非語道之謂他。古者文武為政
              均分、賞賢荊暴。勿有親戚弟兄之所
              阿。即此文武兼也。雖子墨子之所謂
              兼若、於文武取法治。不識天下之人、
              所以皆聞兼而非之者、其故何也。

          

 然り而して天下の士の兼を非とする者の言、なおいまだ止まず。曰く、「兼はすなわち仁なり義
なり。然りといえどもあになすべけん。われ兼のなすべからざるを暫うるに、泰山を撃げてもって
江河
を超ゆるがごとし。故に兼はただこれを願うのみ、それあになすべき物ならん」。子墨子曰く、
「それ泰山を撃げてもって江河を超ゆる
は、古より今に及ぶまで、生民ありてよりこのかた、いま
だかつて
あらず。今かの兼ねて相愛しこもごも相利するがごどきは、ごれ先聖四王より親しくこれ
を行なえり」。なんぞ先聖四王の親しくこれ
を行なえるを知るや。子墨子曰く、「われこれと世を
並べ時を同じ
くして、親しくその声を聞き、その色を見たるにあらず。その竹帛(ちくはく)に書
し、金石に錦め、槃孟に琢り、後世子孫に伝遺するところのも
のをもってこれを知る」。

 泰誓に曰く、「文王は日のごとく月のごとく、昭光を四方に西土
になす」。すなわち、これ文王
の天下を兼愛するの博大なるを言い
て、これを日月の天下を兼照するの私あることなきに譬う。
すな
わちこれ文王の兼なり。子墨子のいわゆる兼なるものといえども、文王において法を取る。か
つただ泰誓のみ然りとなすのみならず、泰
誓といえどもすなわちまたかくのごとし。禹曰く、「済
済たる有
衆、みなわが言を聴け、これ小子あえて乱を称るを行なうにあらず、蠢(うごめき)たる
この有苗、天の荊を用う。ここにわれ、なんじ群封の諸君を
率いて、もって有苗を征す」。禹の有
苗を征するや、もって富貴を重ね
、福禄を干め、耳目を楽ましむることを求むるにあらず。もっ
天下の利を興し、天下の害を除かんことを求むるなり。すなわち
これ禹の兼なり。子墨子のいわゆ
る兼なるものといえども、禹にお
いて求む。かつただ禹誓のみ然りとなすのみならず。高説といえ
もすなわちまたかくのごとし。湯曰く、「これわれ小子履、あえて玄牡を用い、上天后土に告ぐ。
曰く、いま天大いに旱す、すなわち、
わが身履に当つるも、いまだ罪を上下に得るを知らず。善あ
ればあ
えて蔽わず、罪あればあえて赦さず、簡ぶこと帝の心に在り。万方罪あらば、わが身に当た
る。わが身罪あるも、万方に及ぼすことな
かれ」。すなわちこれ湯、貴きこと天子たり、富天下を
有つ。然れ
どもかつ身をもって犠牲となし、もって上帝鬼神に釧説するを憚らざるを言う。すなわ
ちこれ湯の兼なり。子墨子のいわゆる兼なるも
のといえども、湯において法を取る。

 かつただ禹誓と湯説と然りとなすのみにあらず、周詩もすなわち
またかくのごとし。周詩に曰く、
「王道蕩蕩たり、偏せず党せず。
王道平平たり、党せず似せず。その直きこと矢のごとく、その易
なること砥のごとし。君子の覆ところ、小人の視るところ」。この吾言は道を語るの謂にあらず
や。古は文武政をなし分を均しくし、
賢を賞し暴を罰す。親戚弟兄の阿るところあることなし。す
なわちこ
れ文武の兼なり。子墨子のいわゆる兼なるものといえども、文武において法を取る。識ら
ず、天下の人、みな兼を聞きてこれを非と
するゆえんは、その故何ぞや。

【解説】

しかもなお、兼愛に反対する意見はあとを絶たない。かれらはこうも主張する。「兼愛は、たしか
に仁と義に合致している。だが現実的ではない。まるで泰山を小脇にかかえて揚子江や黄河を越え
るようなものだ。夢想するのはいいとしても、到底実行できるものではない。なるほど、人類の歴
史はじまって以来、泰山をかかえて揚子江や黄河を越えたなどという話は、あったためしがない。
しかし、人類が分けへだてせず、お互いの利益のために尽くし合った事実は、これまでにいくつか
存在する。それは聖王たちがすでに実行していることなのだ。
 むろん、わたし自身が聖王の時代に生きて、自分の耳や目で確かめたわけではない。竹帛に書か
れたものや金石に彫られたもの、あるいはうつわに刻みこまれたもの、つまり後代の人々に伝え残
されたものを通じて、確認できるのである。『書経』の秦誓には、こう記録されている。
「文王は、日のごとく、月のごとく、遍く四方を照らし、西方の蛮土にまで光りを及ぼした」これ
は、文王の兼愛がいかに広くゆき及んだか、そのありさまを、太陽や月が世界全体を公平然払に照
らす事実にたとえたことばである。これが文王の兼愛であり、わたしの主張する兼愛も、この文王
を模範としているのだ。

 泰誓ばかりではない。禹誓にも、こう記録されている。「諸侯よ、よく集まってくれた。軍を起
こし世間を騒がすのは、わたしの本意ではない。しかし、不遜な有苗に対しては、天罰を加えねば
ならぬ。それ故、敢えてここに、なんじら諸侯を率いて、討伐におもむくのだ」
 すなわち、馬王が有苗を討ったのは、富貴福禄のためでもなければ、欲望を満たすためでもなか
った。「天下の害」を除いて。「天下の利」を追究するためであった。これが禹王の兼愛であり、
わたし主張する兼愛もこの禹王を模範としているのだ。
 さらに、湯王の祈祷文にもこう記録されている。
「わたしは天の子としてこの黒牛のいけにを捧げ、敢えて天帝に申し上げる。いま、天はわが国に
ひでりというわざわいを下し給うた。この天罰は、ほかならぬわたし自身に下されたものである。
しかし、その天罰が、わたしだけではなしに人民にまで及んでいる理由が、納得しかねる。人民に
善行があれば必ず表彰し、罪を犯せば必ず処罰しよう。そして、その当否は、天帝の心におまかせ
しよう。たとい天下万民に罪があったとしても、それはわたし自身の罪である。どうか、わたしを
罰して天下万民を巻き添えにしないで頂きたい」
 これは湯王が天子という最高の位と、天下という最大の富とを身につけた人でありながら、わが
身を犠牲にして、人民にわざわいを下さぬよう上帝鬼神に祈ったことばである。これが湯王の兼愛
であ
り、わたしの兼愛も、この湯王を模範としているのだ。
 また、周の詩にもこううたわれている。

「王道は坦々として私心なし   
 王道は広くして偏倚なし
 矢のごとく直く
 砥のごとく平らか
 君子は行ない小人は仰ぐ」

 これはまさしく道についていったことばである。文王も武王も国を治めるに当たって、公平を旨
とし、賢者ならだれでも登用し、悪人ならだれでも罰して、親類縁者にも勝手なまねはさせなかっ
た。これが文王および武士の兼愛である。わたしの主張する兼愛も、この文王、武王を模範として
いるのだ。天下の士が兼愛というとすぐ反対するのは、すじの通らぬ話である。出王の兼愛であり、
わたし矢のごとく直く砥のごとく平らか君子は行ない小人は仰ぐ」これはまさしく道についていっ
たことばである。文王も武王も国を治めるに当たって、公平を旨とし、賢者ならだれでも登用し、
悪人ならだれでも罰して、親類縁者にも勝手なまねはさせなかった。これが文王および武王の兼愛
である。わたしの主張する兼愛も、この文王、武王を模範としているのだ。天下の士が兼愛という
とすぐ反対するのは、すじの通らぬ話である。

※禹誓 未詳。現在の『書経』にはこの編名はない。夏の禹王が三蹟を征討したとき、師に誓った
文であるとされている。

※湯王の祈祈禱文 現在の『書経』にはこの絹名はない。『論語』の亮日編に、これと似た話が載
っている。『論語』では、殷の湯王が夏の梁王を械ぼした時に誓ったことばとされている。

※周の詩 前半は現在の『書経』洪範にあり、後半が『詩経』小雅に載っている。

 

 

 Trippa alla milanese

【イタリア版食いしん坊万歳 トリッパ料理、ミラノ風】

材  料: 

牛の胃 1.2 kg、バター60g、タマネギ1個、ニンジン1本、セロリの茎1本、セージの葉数枚、ス
ーゴ用トマト 500g、
ブイヨン、塩、コショウ、パルメザンかパダノのおろしチーズ、インゲンマ
メ400g 



つくり方:

ミラノ人達はトリッパ(牛の胃)料理の中でも、ミラノ風トリッ
パが一番であることを誇りにして
いて、彼等はこれに親しみをこめ
てブゼッカ(busecca)ともいっている(さらにここからブゼッコ
ニというニックネームもある)。作り方だが、まず最初にトリッパはよく洗い、不要なものは取
除いて、十分柔らかくなるまでかなり長い時間煮る(普通市販されているものは、すでに洗って
ゆでられているが、もう一度ゆで直し
たほうがよい)。下ごしらえがすんだら、バターを熟しセー
ジの葉数
枚と細かく刻んだタマネギ、ニンジン、セロリを入れ、炒める。これらが色づいてきたら、
トマトの身を細かくしたものを加え、かき
混ぜて塩,コショウで味付け、さらに煮続ける。
 必要ならばブイヨンを加えて,数回かき混ぜる。料理はこれでできあがりである。しかし、習慣
としてトリッパにはマメを添えるのが普通である。
確かに煮汁と混ざったマメの柔らかい風味は、
トリッパの風味にと
てもよく合う。そこでマメを料理しよう。イングンマメ400 g を前の晩から水
に漬けておき,トリッパを調理
している間に別の鍋でゆでて、水気を切っておく。トリッパができ
あがる10分前に同じ鍋の中に入れ,かき混ぜる。別にパルメザンかパダノのおろしチーズを添えて、
食卓に供する。

 

昨夜の続きになるが、幸せの方程式に前提があるを書き忘れてしまった。それは、それはというと、
つまり、現実逃避しないという大前提は欠くことはできない。自己満足、自慰行為、自己愛、自惚
れ、迂回、湾曲ということはあっても。

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幸せの方程式

2013年01月19日 | 医療健康術

 

 

 

朝起きていつものように作業をはじめると、これまたいつものように、若山牧水の「白玉の歯
にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」の白玉は白玉団子なの?と「しが彦根新
聞」をもって彼女が部屋にきてそれを見せる。それは水、水滴、飛沫、あるいは露なんだろう
から酒の直喩としてストレートに解釈したら?!秋→中秋の名月→白玉団子の連想は何とも食
い気旺盛のきみらしいねと笑い飛ばすが、名水「十王の水」を使った酒の記事に目がとまる。

環境省の全国名水百選に選ばれている彦根市西今町の湧き水「十王村の水」を使った日本酒造
りを、豊郷町の岡村本家が9年ぶりに復活させる。岡村博之社長(43)は「彦根産の水と米を
使った地酒を楽しみにしてほしい」 と来年1月上旬の販売を目指す。十王村の水は1985年に
名水百選に指定されたが、88年ごろから大規模工場建設の影響などで水が枯渇。94年に地元住
民が十王村の水を復活させるため保存会を立ち上げ、地下70メートルの水をポンプで引き上げ
る方法で 復元した。現在は会員二百人が周辺河川の清掃や、池の美化に取り組んでいる。岡
村本家は九八年、名水PRの一助となればと仕込み水として利用を開始。6年後に水の衛生面
での問題が浮上して一時 取水を中断していたが、保存会からの依頼で再び使用を決めた。こ
のほど水取りがあり、保存会員が見守る中、岡村社長が地下から勢いよく吸い上げた水をくり
返しバケツにくみ、六百リットルを持ち帰った。早速仕込みに取り掛かり、地元のかつての村
名「福満」の名で販売する。中村正明保存会長(66)は「酒をきっかけ に名水の名が広まり、
たくさんの観光客に来てもらいたい」と期待を寄せる。十王村の水は湖東三名水の一つでもあ
る。この水を飲むと母乳がよく出るという伝承があり、石の柵で囲まれた池の中に 浮島のよ
うに六角形のお堂が建てられていて、母乳の地蔵尊が祭られているという。

 

岡村酒造の「金亀」は清酒工程で使われる濾過袋だろうと思われる、あるいは醸造容器(木質)
とおもわれる非水溶性の香り成分が僅かに溶け込んでいるのか辛口で独特の風味が気に入り飲
んでいた(現在は頑張ろう東北ということで二本松は大七「生もと」)。いまは化学物質分析
技術の進歩で成分解析は容易になっているから、加算法で同じものを醸造酒をつくることも可
能だ(わたしはそう考えている)。しかし、それを商業ベースに移すかどうかは別の問題で、
半導体のように僅かな異質な成分を付け足すことで劇的に付加価値を高めることができるが、
そこは人文科学あるいは文化芸術に渡る感性品質学的要素もあり、一筋縄ではいかない。「母
乳がよく出るという伝承」を付加できるのはまさに地域の文化力ということになりうる。来年
が楽しみだ。

 

 


【脳を磨く生活術】


「脳を磨く生活術-高齢化社会に向けて」をテーマに三年ぶりに開催されることとなった市民
講座をキャナリィ・ロウで昼食を済ませ、そこから対面にある彦根文化プラザで開催予定の茂
木健一郎の講演へ向かう。
 


  人は本来、一人ひとり違う個性や考え方を持っているものです。これまでは規定の方程

 式に合わせて生きることこそ幸せになるための第一歩だと信じられてきたので、それに従
 って生きる人も多かったはずです。しかしそのような画一的な人生、あるいはソリューシ
 ョンがひとつしかない人生のみが正解とされる世界は、それとは違う人生を歩みたい人に
 とっては生きづらいものです。「自分の幸せはこれじゃない」と言いたくても、周囲がそ
 れを許さない。「こうでなければ幸せにはなれないよ」と、自分のものではない価値観を
 押しつけられることに、息苦しさを感じる人も多いはずです。
  これからの時代はそうではありません。「こうすれば幸せになれる」という価値観は崩
 れ、「幸せの方程式」は自分でつくれる時代になったのです。
 どこの大学を出ていようが、それ以前に大学なんか出ていなくても、実力さえあれば自分
 かやりたいことが自由にできる時代です。女性が活躍できる場も増え、結婚だけを重視す
 る考えは古くなりました。
  自
分の人生をオーダーメイドできるようになったのです。自分にとって何か本当に大切
 なの
か、それを見つけながら人生を楽しめるようになったのですから、よい時代になった
 のだ
 と私は思っています。 
 

                                   茂木健一郎 『幸福になる「脳の使い方」』 

本書では、脳科学の最新知見を元に、幸福になるための脳の使い方を著す。内容例を挙げると
①幸せはお金で買えるのか②不安を人生のスパイスにする③口癖をコントロールする④「気分
転換」を味方につける⑤脳は年齢を重ねるほど自由になる⑥「幸せの方程式」は自分でつくれ
る等々 我々は、金銭的に裕福になれば「幸福感」が増すと一般的に考える。しかし、GDP(
国民総生産)が増加しても、幸福度は増えなかったという研究成果が発表されている。お金を
もっても幸せになれないのであれば、我々はどうすれば幸福になれるのだろうか。脳はどのよ
うなときに充足感を得るのであろうか-これらの問題に平易に解説するこの本の内容のエッセ
ンスは、きょうの「脳を磨く生活術-高齢化社会に向けて」で網羅、講演されていた。
 

私たちが日常何かをするときには、意識するしないに関わらず必ず何らかの動機がその行動の
背後にあり、ものを食べたり、ゲームをしたり、勉強をしたり、スポーツをしたり、朝起きて
顔を洗うといった習慣などにも煎じ詰めれば何らかの動機がある。ドーパミンニューロンはそ
行動の動機付けに関連して活動を増すことがわかってきた。さまざまな出来事がいいことであ
れ、いやなことであれ、とにかく自分にとって意味があって、何らかの行動を引き起こすよう
な場合には必ずドーパミンニューロンが活動する。つまり、周囲の環境にに適応し、学習しな
がら、生活するすべを会得し、人生は学習の連続としてドーパミンは学習の強化因子として働
らく。だから、逆説的には動機の正否を不問にし、ドーパントを増やす行為を行えばよい。と
いう戦略が成立する(そう仮定する)。勿論、半導体と同様にドーパントが過剰なら機能不全
(学習強化機能子)を起こす。それらを踏まえ「幸せの方程式」を解けばよいのだと
そんな
ことを現代的な教養とし、散文的に平易に茂木健一郎が話してくれた。しかしねぇ~、気が多
い性格のわたしはストレスによる免疫低下を心配した方が良いみたいだ。

 

※昨日、名城大学の鍋島俊隆特任教授らは、思春期に受けたストレスが成熟後の精神疾患につ
ながる仕組みの一端をマウスを使った実験で解明-精神疾患の遺伝要因を持つマウスを成長期
に隔離してストレスを与えながら育てたところ、意思決定や注意力に関係する脳の神経回路に
異常が起き、集団で飼育した場合はマウスの行動に異常はなかったという。発症したマウスは
血液中のストレスホルモンの量が増えていた。注意力や意思決定に関係する神経回路で、神経
伝達物質のドーパミンが減り、働きが鈍っていることがわかった。一方、幻覚や妄想にかかわ
るとされる脳の部分では、刺激を受けるとドーパミンが増えたと報告している。

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セルテレメトリーのダッチロール

2013年01月18日 | 時事書評

 

 




【トラブル続出のドリームライナー】






複合材を主素材とした初の民間機で、同サイズの航空機と比較すると、乗客1人当たりの燃費消費を約20%
削減、排ガスも減少し、離発着時の騒音も逓減できるエコ・プレーンとして開発されたボーイング787は
準国産機と言っても良いほどの日本のメーカ技術が搭載された旅客機だが、そのドリームライナーにトラブ
ルが続出している。まず、米東部ボストンのローガン国際空港で7日午前10時半(日本時間8日午前0時半)
ごろ、日本から到着し駐機中だった日本航空の新型旅客機、ボーイング787内でぼやがあり、同機は7日
午前10時過ぎに成田空港から到着。乗客172人が降りた後、機内後方の電気室内にある補助用動力装置から出
火しているのが見つかる。約1時間後、同空港の消防隊が火を消し止めた。これを受け米運輸安全委員会(N
TSB)と連邦航空局(FAA)が出火原因を調べているが、ユナイテッド航空の同型機でも先月、電気関連の故
障が発生していたという。米連邦航空局(FAA)は11日、燃料漏れなどトラブルが相次ぐボーイング787型旅
客機「ドリームライナー」の製造過程について全面調査を開始し、その一方で最近の一連の技術的問題にか
かわらず同機の飛行は安全であると改めて述べていた。航空各社はドリームライナーの運航を続けており、
FAAの調査開始で飛行の差し止めや緊急検査、修理が必要となったドリームライナー機は現段階で出ていない
とのことだった。FAAは調査開始にあたり「ボーイング787機の主要システムに対する包括的な安全調査」を
計画しており、電気及び他の部品の「設計や製造、組み立て」なども調べることを表明した。運航中の機内
での発煙による緊急着陸などトラブルが相次いでいるボーイング787について、国土交通省は17日、国内
航空各社に対し、リチウムイオンバッテリーの安全性が確認できるまで運航停止を指示する「耐空性改善通
報」を出す。一方、高松空港に緊急着陸したB787について国交省航空局の調査で、機体の吸排気口に煙
が出た事故を調査を開始、バッテリーの電解液の漏れも確認したという。






いろいろ原因が考えられるものバッテリー系統のトラブルが重大欠陥ではないかと思わせる事故だ。なので、
ボーイング社の新規考案「特開2012-118054|セルテレメトリーのためのサンプルホールドアン
プ」に目を通
してみた。セルテレメトリーとはバッテリーの遠隔制御あるいは遠隔操作という意味で
、サンプルホールド
アンプとは刻々と変化する信号を、ある瞬間のレベルを外部トリガータイミングに
合わせ保持する電子回路
ことを意味する。近年、電気自動車の急速な普及により搭載しているリチウムイオンバ
ッテリー(蓄電池)
の各セルの充電状態や出力を自動的に計測しトラブルの検出や最適化を遠隔制御するシ
ステム技術の研究開
発が急速に進んだ(クリック参考@上図表)。そして、ボーイング社からも「電圧
クランプ機構を使用し、
ボルト秒を平衡化させ、サンプリング変圧器の平均磁化電流を約ゼロアン
ペアにし。パルス駆動スイッチ及
び同期サンプリングスイッチを起動させ、ほぼ同時に電圧クランプ機構の
動作を停止させて、リチウムイオ
ンバッテリー(セル)の、過充電や充電不足に起因する過電圧又は電
圧不足の状態に陥いり機能不良を防止
制御する新規考案」が提案されているという背景がある。
 


さて、ここでもう少し詳しく表現すると「一つのバッテリーの寿命範囲内で、バッテリーセルは他のバッ
リーセルに対して高いか、低いと内部漏洩抵抗を生じ、徐々に、この漏れ電流の不整合により
複数のバッテ
リーセルが過充電又は充電不足の状態になり。バッテリーセルの過充電の結果、
セル温度の上昇に起因する
非最適状態に陥る。バッテリーセルが、貯蔵エ
ネルギーをゼロボルトまたは、ゼロアンペア時まで放電する
と、バッテリーセルが作動不能を防止制御できる。
セルテレメトリーシステムとその方法」「サンプリング
変圧器の平均磁化電流は、電圧クランプ機構を
使用し、ボルト秒を平衡化させ、約ゼロアンペアとし、パル
ス駆動スイッチ及び同期サンプリングスイッチ
を起動し、ほぼ同時に電圧クランプ機構の動作を停止し、パ
ルス駆動スイッチと同期サンプリングスイッチ
の動作を停止するとともに、ほぼ同時に電圧クランプ機構を
起動することで、それぞれの回路がクロック
に従って交代させ、高電圧源に浮動する小さい電圧を正確に測
定する」となる。後はその機能・機構の詳細説
明となるが、そこは読者諸氏におまかせするとして、要する
にこのシステムになんらかの異常があれば、こ
んかいのような発火事故の原因となる。いわば「セルテレメ
トリーのダッチロール」と喩えられるような事
態が世界初として発生することを意味する。

 


【伊達と阿部】

15日大島渚が他界した。彼の作品が好きか嫌いかと聞かれれば、好みではないねという感想になるが、映画
『愛のコリーダ』は印象深く残っている。昭和史に残る「阿部定事件」を題材に、男女の愛欲の極限を描い
たこの作品内容は神代辰巳監督の 『四畳半襖の裏張り』 (1973年)に大きな影響を受けているといわれる
が、大島自身も制作に当たり一番参考にしことを認めている。吉蔵が定の性器に卵を入れる描写があるが、
愛するあまり性器を切断するというショッキングな事件をわたし理解の域を超えていた。もっとエロスの解
放いうテーマは、やがて漫画やアニメが文化的タブーを解体させたように、いまではアダルトビデオが普及
常態化したポスト・エロス時代を向かえたがその意味で彼はその先駆者だった。そういえば、かれの夫人の
小山明子で思い出したが、曾根崎小学校四年の同級の色白の可愛らしい女の子が従姉妹とかで、その年に東
京へ転校していった。六十年安保前の梅田はまだ活気がったがこの時分を境として、空洞化と東京一極集中
化がはじまったことを記憶している。

 

テニスの全豪オープン第5日の18日、女子ダブルス2回戦で、クルム伊達公子(エステティックTBS)、ア
ランチャ・パラサントンハ(スペイン)組が、第2シードのアンドレア・フラバーチコバ、ルーシー・ハ
ラデツカ(チェコ)組を7―5、3―6、6―3で破り3回戦に進んだ。また、前日には今大会1回戦で、
第12シードのN・ペテロワにストレートで勝利する大金星をあげて三回戦にに進出を決めている。42歳のク
ルム伊達は全豪オープンの女子シングルスでは最年長勝利となり三回戦進出は18年ぶりという快挙だ。彼
女が京都市出身で、義妹がコーチ時代ではひとり黙々と東山テニススクールで練習していたことを聞かさ
れていた。それにしても、撫子ジャパン、恐るべし女子力!勝てないね女性には、いや、はじめっから勝
つつもりはないが。

 

 

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スパイクとカメムシ

2013年01月17日 | 環境工学システム論

 

 

 NSスパイク工法


【ねじり平鋼杭状補強材 地盤補強工法】

 

これまで建築物や工作物を設置するには地盤を掘削し、コンクリートで基礎を作るのが一般的だ。この
コンクリート基礎を使わず、より環境に配慮しながらかつコストを抑えられる工法が話題となっている。
その名称は「NSスパイクエ法」という。土木工事で使われていたらせん状の杭を建築工事に利用する。逆
回転すると抜き取れる特徴を活かし太陽光発電の架台などの建築物や、工事現場における仮設工作物の
設置に効果を発揮する。地盤強度により数値は変わるが、軟弱地盤の場合コンクリート基礎と較べ工事
費、養生費、撤去費など数10%逓減できる。11年10月、NSスパイクエ法推進連携体として試験施工を行
い日本建築総合試験所の性能証明を取得。
NSスパイクは螺旋形状のため鉛直方向から力が加わっても上
下両方向に支持力が増す。一度しめた木ネジを引き抜いたり、押し込んだりできないのと太陽光パネル
の架台として、コンクリートで基礒工事をするよりもトータルでコストを抑えることができる。

 

施工は専用のアタッチメントを取り付け、打撃または回転圧入により地盤に挿入する。使用する機材は
小型杭打機やバックホーでもよく小径なら人力でも可能。これまで道路標識を設置するには周囲を広く
深く掘削し、そこに基礎となるコンクリートを打設して標識の柱を取り付けていた。発生する残土は産
廃として処分しなければならず、コンクリートがNSスパイクとコンクリート基礎の比較図太陽光発電架
台(θ=30°)NSスパイク及びコンクリート基礎比較図、風力発電、太陽光発電などの設置に適してい
る。遊休地を借りて太陽光発電などを設置する場合はコンクリートで基礎工事をするよりもトータルで
コストを抑えることができる。太陽光発電の架台だけでなく、パネルゲートや仮設ハウスの基礎などに
も有効利用できる。これまで仮設の構造物も一様にコンクリートを打設して基礎をつくっていたが、さ
まざまな分野で適用できそうだ。測量から設置まで2週間 同工法で農地に隣接する遊休地にソーラー
パネルの架台を設置した場合、従来のコンクリート基礎による工事は田んぼに石灰が流れる恐れがあり、
施工も1~2ヵ月かかる。しかしNSスパイクだと土壌汚染の心配がない。


残土も発生せず、撤去するとき杭を逆回転させて抜き取れる。杭のリユース・リサイクルが可能で、
盤軟弱だとより効果を増す。従来は基礎を安定させるためにコンクリートを多く使用したが、コンクリ
ートの自重でさらに不等沈下を引き起こすこともある。NSスパイクは軽量であり、押し込み・引き抜き
に対し同等の効果を発揮する。またガス管や水道管など地下に埋設物があるときは偏心させて打ち込む
こともでき施工場所をほとんど選ばない。太陽電池パネルの
架台設置はボーリング調査で杭の長さを決
め地盤が強固なら60cm、軟弱なら1.5m程度だが、約990の広さの土地に太陽光パネルの架台を設置した
場合、費用は10万円程度に抑えられる。


特開2012-132146
杭の回転打ち抜き方法及び杭回転打ち抜き装置

施工をフゴーチャートでみると、油圧オーガを利用する場合は準備のための土工事をしたあとに台座プ
レートまたはズレ止め防止金具を設置し、NSスパイクを打設、NSスパイクと台座プレートまたは上部構
造物に接合して完了する。杭経100㎜以下、長さ1.5m以下なら小型杭打ち機や人力での打設可能だという
。このような形状の杭は元来存在していたが強度などの安全性を疑問視する声もあり、建築分野では普
及していなかった。しかし、性能証明取得で、公的に性能が認められたことで工法として採用しやくなり
様々な分野で応用展開できそうだ。

 

【害虫の腸内共生細菌の謎】

様々な農薬が開発され、農業現場を中心に広く使われてきた。世界的な食糧難が問題にされ、残留農薬
のリスクがあるものの害虫防除のニーズは減ることはない。農薬はマラリアを媒介するハマダラカなど
血性害虫の防除はその好例だろう。一方で、単一の農薬を連続使用すると農薬抵抗性の害虫が出現す
ることが問題になっており、
500種類の農業害虫、衛生害虫、家屋害虫用農薬への抵抗性発達が世界的
な問題となっている。そして、抵抗性のメカニ
ズムとして、クチクラ層の肥大による農薬浸透性の低下
農薬の解毒・排出能力の向上、受容体等の農薬
標的タンパク質の構造変化など様々な事例が知られてい
る。
しかし、最近、産業技術総合研究所の菊池義智らは、体内に共生する細菌が宿主害虫の農薬抵抗性
に大きく寄与
する事例を発見作物害虫や衛生害虫の多くはその体内に共生細菌をもち、昆虫体内で消
化管に発達した特殊な器官や
細胞内に局在し、餌に不足する栄養素を供給するなど宿主昆虫の栄養代謝
に重要な役割
を果たしている。ダイズの害虫として知られるホソヘリカメムシは消化管に盲嚢(もうのう
)と呼ばれる袋状の組織を多数発達させ
Burkholderia共生細菌をぎっしりと共生させている。環境土壌
中に生息するこの
細菌を口から取り込む

ホソヘリカメムシの共生細菌は土壌細菌の一種で、農耕地にも普通に見られる。農耕地土壌中の細菌の
遺伝的多様性を調査したところ、単離された共生細菌系統の中に有機リン系殺虫剤であるフェニトロチ
オンを分解するものがいくつか含まれていたという。分離培養したフェニトロチオン分解性Burkholderia
sp(フェニトロチオン分解菌)とフェニトロチオンを分館できない非分解菌をそれぞれホソヘリカメム
シに感染させ、カメムシヘの影響を比
較。その結果、フェニトロチオン分解菌に感染したホソヘリカメ
ムシと非分解菌に感染したホソヘリカ
メムシの間で、共生細菌の定着率や、宿主の生存率、成長速度、
体のサイズなどに有意差は見られず、
フェニトロチオン分解菌に感染したホソヘリカメムシでは、非分
解菌に感染したホソヘリカメ
ムシに比べてフェニトロチオンヘの抵抗性が大幅増した。この結果は、農
薬分解菌の感染により
害虫が農薬抵抗性を獲得していることを示している。分解菌によりフェニトロチ
オンは昆虫にとり、
ほぼ無毒の3-メチルー4-ニトロフェノールに分解され、その後、複数のステップを
経て炭素源として利用され、
分解菌はフェニトロチオンをエサとして食べて増殖する。これにより農耕
地に
おけるフェニトロチオンの散布が土壌中のフェニトロチオン分解菌の増殖を促し、これにより共生
細菌を
介したカメムシ類の農薬抵抗性が促進される可能性を強い。

 

つまり、共生細菌によるカメムシ類の農薬抵抗性獲得は次のような過程を経て成立するものと考えられ
る(上図)。
一般的に、農薬抵抗性は昆虫自身の遺伝子に生じた突然変異に起因するものであり昆虫集
中に現れた抵抗性個体が農薬の使用により選択を
受け、次第に集団中の個体数を増加させて顕在化する
と考えられ、共生細菌による農薬抵抗性獲得機構の発見は、これまで知られていなかった新しい農薬抵
抗性の発達機構を提示する
害虫が土壌中の農薬分解菌を取り込んで農薬抵抗性になるという現象は現
行の害虫防除法においてまった
く考慮されていない盲点とも言え、今後その現状把握と対応策の検討が
必要になると指摘している。




昆虫食については『トップランナーを狙う』でも掲載したことがあるが、本格的に養殖魚の食餌として
普及しつつあるという。これについては改めて考察してみたい。スパイク工法も面白い問題提起をして
いる。それにしても疲れた。
 

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蜜柑の皮の世界

2013年01月16日 | 日々草々

 

 


【ミカンの皮パワー】

彼女は絶賛する。ミカンの皮をグリルの受け皿入れることで焼き魚を消臭でき、油汚れも水洗いで
簡単に取り除けて大変便利だと喜んでいる。へぇ~そうなんだ。それじゃ洗剤もいらず一石三鳥じ
ゃないかと情報源を聞くと、お友達情報だという(これは個人情報で秘密?!)。みかんの皮に含
まれる天然の油に、上図の成分が、掃除に役立つのだが、今注目されているのはなぜだろう疑問に
思いこれまた早速ネット検索。みかんの酸味の元のクエン酸は、
水垢、石鹸汚れやトイレの尿など
のアルカリ性の汚れを落とす効果があり、有機酸のため除菌、消臭効果がある。また、リモネンは
みかんの外皮に多く含まれ油を分解する作用があり、ガスレンジなどの油汚れを落とすのに効果が
ある。また、ペプチンはミカンの白いすじなどに含まれ、コーティング作用があり、シンクやフロ
ーリングの表面にツヤを出し、ピカピカにする効果がある。従って、ミカンの皮で家庭でも簡単に
マイクリーナーをつくることができる。ネット情報のコピペすると、①水400ccに対し、みかんの
皮4個分をちぎって鍋に入れ、火にかけ→②煮立ったら弱火にし、15分くらい煮る→③冷めたら、
ザルでこして出来上がるという。





成分としては、これ以外に漢方の陳皮の原料だから、医薬品成分のヘスペリジン、ルチンなどフラ
ボン配糖体が含まれて、血圧降下作用もあり、漢方では芳香性健胃、鎮咳薬として、食欲不振、嘔
吐、疼痛などに対して用いられ、外皮を陰干しして乾燥させ、1年以上たったものが生薬として利
用されてきた。つまり捨てるところがないのだ、ミカンは!そこで、もう少しミカンの皮の世界を
覗いてみることとしよう。まず、生薬効能のポリメトキシフラボン類。つまり、脂肪細胞に対する
作用(分化誘導促進やアディポネクチン増加など)、脂質代謝改善、血糖値上昇抑制、血圧上昇抑
制について。とくに、内臓脂肪の蓄積は肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症といったメタボリックシ

ンドロームの要因になる脂肪組織の肥大した脂肪細胞はメタボリックシンドロームを進行させるが、
小型の脂肪細胞は逆にそれを防ぐ物質が分泌される。したがって、肥満を解消するには脂肪の分解
を促すか、分化を促進して小型の脂肪細胞を増やすが重要とされ、脂肪分解の促進といった脂肪細
胞機能を調節するミカン由来成分の効能が確認されている(「かんきつ成分ノビレチンは脂肪細胞
の分化と脂肪細胞中の脂肪分解を促進する」、農研機構)。 
 
 



さて、その、ポリメトキシフラボン類はどのような手段で抽出した方が良いのだろうか?従来から
下記一般式の構造式で表されるポリメトキシフラボン類は、みかん属植物、すなわち柑橘類の果
に多く含まれている。
特にノビレチン(上記式(I)でR1、R2、R3、R4、及びR5の全てがメトキ
シ基)に関しては、発ガン抑制作用等の生理活性が明らかにされている物質だが、食品の分野でも、
呈味改善剤や、香味劣化抑制剤など様々な有用な効果が見出されている。また、
油にはポリメト
キシフラボン類以外に、多種多様な数多くの成分が含まれ、例えば、テルペン類等の炭化水素化合物、ア
ルデヒド、エステル等のカルボニル化合物、アルコール類等の揮発性成分および通常の条件では揮発しな
いワックス類、カロテノイド色素等の不揮発性成分が含まれ、簡便な方法で分離することは困難とされてい
た。
 
特開2010-037317
 
つまり、従来はメタノール、エタノールやクロロホルム等の有機溶剤を用いて加熱抽出する方法や
超臨界流体溶媒を用いて抽出する方法などあるが原料由来のリモネン、リナロール、ゲラニオール、
ネロール、α-タピネオール、シトラール等の炭化水素化合物類、カルボニル化合物類、エステル
類、アルコール類、香気成分、カロチノイド等の色素成分は効率よく回収できなかった(アルコー
ル溶液から溶媒を留去した場合、メトキシフラボン類組成物は飴状に固化してしまう)。「特開20
10-037317 ポリメトキシフラボン類の製造方法」では、原材料のみかん属植物のスイートオレン
ジ(Citrus sinensis)、サワーオレンジ(Citrus aurantium)、タンジェリン(Citrus reticlata Blanco var.
tangerine
)、マンダリン(Citrus reticlata Blanco var. mandarin)、シイクワシャー(Citrus depressa H-
ayata
)として、第一の揮発性成分の蒸留による除去工程が圧力1~百Paかつ温度120~220℃の条件
であり、第二の薄膜減圧蒸留装置での蒸留工程が圧力0.4~2Paかつ温度190~260℃の条件下の
製造方法が提案されている。尤も、こんなものは家庭でつくることは現実的でない。つくれと言え
ばつくれなくはないが無駄だろ。地産地消型のプラントならわたしたちの仲間内で実現できなくは
ないが、要はモチベーションとインセンティブ次第だ。


このほかに効能で言えば、抗アレルギー剤(副作用が生じず、安全なIL-12又はIL-2産生
促進剤及びIL-4産生抑制剤)、目尻、額、口元などの膚の形成を抑制する伸展刺激介在メラ
ニン生成抑制剤、繊維芽細胞増殖促進効果などの膚外用剤、膚化粧料、保湿剤、管内増殖因
子産生促進剤、毛乳頭細胞増殖促進剤、膚の角層剥離の促進剤など広範にわたる。

 

 

世界では陸上風力から洋上風カヘの展開が進んでいる。ほぼ全てが着床型と呼ばれる海底に杭打ち
するなど、固定式の風力発電だ。一方、日本では洋上風力は緒についたばかりである。震災後突如
として、浮体式洋上風力発電という海に風車を浮かべる方式が脚光を集めだしている。世界的には
珍しい方法だが日本に導入定着するのかどうか懸念されている。着床式洋上風力は、水深が浅くな
いと建設コストが高くなってしまう。故に日本では遠浅の海が少なく、すぐ水深が深くなることか
ら着床式ができるエリアは限定される。そこで注目されるのが、風車を海に浮かべる浮体式洋上風
力だ(なお、浮体式といっても海底ケーブルでの接続もあるので、移動できないように繋留される)。
この技術で実際に商用機を用いて実験しているのはノルウェーStatoil社が2009年に設置したSiemens
2.3MW
商用機によるスパー式浮体構造のHywind、ポルトガルPED社らが2011年に設置したvestas 2M
W
商用機によるセミサブ型浮体式の2例。順調に稼働しているが問題はコスト高。日本の洋上風力
のポテンシャルを見れば、水深の深いエリアに適地が多いことから浮体式の役割は大きい。洋上風
力は世界的にコストが高く、ドイツなどは洋上風力の買取価格を高くしているものの、メガソーラー

を含む太陽光の買取価格が急落し、洋上風力への風当たりは強くなり発電コストが問題を抱えてい
が、もとものと、着床式より浮体式は設置コストが割高だ。福島沖の浮体式洋上風力発電の実証
実験は、将来の福島復興の名目で、実証研究の後にさらに100kWの設置検討に入っている。ところ
が 平均風速 7.4 m/s
程度と風速としては世界的に相当低い。浮体式洋上風力の成功は、日本の風力
関係者の総力と本気度が試されているという(参考@「環境ビジネス」2013.spring)。このような状
況では、よほどしっかりとした試用実行計画を立てなければならないだろう(選択と集中)。
 
     

 
 
今夜は2つのことを考えていた。1つは、量子ドット太陽電池の製造方法で表面プラズモン共鳴す
る波長の光が照射されると局在表面プラズモン共鳴により、微粒子の周囲に増強された強い電界(
近接場光)が発生するが、13年前にこの近接場光に着目し大津元一現東大教授の著書(上図)を購
読したことを思い出していた。つまりナノスケールの製造技術には近接場光は欠かせない。いまで
はナノフォト
ニクスという言葉がすっかり定着したが、その当時は目新しいものであった。その大
津教授が3つの
U (Universal=普遍、Unique=独自、Ultimate=究極)に当てはまる研究テーマを絶
えず追求してこ
られたいう(近接場光の発生と応用、すなわちナノ・フォトニクスの先駆的な研究
を始めたのはこ
の追求の成果だと)。ところで、昨夜に偶然に、たまたま「牛の目玉」で賢兄石井
智幸とのエピソードを掲載したが、今日がその命日の三回忌であることをすっかり忘れていたのだ。
偶然とはいえ鳥肌が立つような感覚に身廻われる。そう、運命とか、宿命とかというもの感じた。
そんなことを考えていたが、彼は企業内労働組合の書記長、支部長、委員長を長く勤め後、定年ま
で高齢者の社内事業会社の社長を勤める。十数年前のその当時、近況報告の思い出が蘇った。つま
り、未来の仕事を考え発展させるに、有機EL、燃料電池などの新規事業立ち上げ調査中のわたし
と、今ある高齢組合員の仕事づくりの彼との相互理解という点で、妙なズレを生じたという二度目
の経験をした。というのもそれほどまで、交わす言葉は、さながら二人で宙を自在に飛び交うよう
なもので徒手空拳なわたしへの励しというものとは違った。違ったと言えど、そのことは想定内で
あり問題ないのだが、寧ろ、怪我の後遺症の影響かと気遣かわせるものとして心に残っている。近
接場光ナノフォトニクスの仕事が本格化しつつあり、これからひとりで頑張らなければならないな
らないのだ。「ほら、石やん言ってた通りなったやろ」「そうやなぁ、大ちゃん」と、元気であれ
ば、また二人で宙を自在に飛び交うかのような会話ができたものを、已んぬる哉。

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ゲノム工学の行方

2013年01月15日 | 新弥生時代

 

 

 

 

       禿の小柄な老人、ジューコフ将軍の料理人(例の火事で帽子を焼かれた
       男だ)が入ってきた。彼はそこに座り、話に
       耳を傾ける。やがて彼もまた思い出話を始めた。
       暖炉の上に腰を下ろして、脚をぶらぶらさせながら、ニコライは
       その昔はどんな料理を旦那がたに出していたかというような
       話を聞き、それについていろいろ質問をした。
       彼らは骨つき肉やらカツレツやら様々なスープやらソースやらについて語り、
       やたら物覚えの良いその料理人は、もう今では作られるこどのない
       料理について語った。たとえばこういうのがあった-牡牛の目玉で
       作られた料理で、その名も
       「朝の目覚め」


          The little bald old man, General Zhukov's cook, the one whose cap had been burnt,
                         walked in. He sat down and listened, then he, too, began telling stories of all sorts.
                         Nikolay, sitting on the stove with his legs hanging down, listened and asked questions
                       about the dishes that were prepared in the old days for the gentry. They talked of 
          issoles, cutlets, various soups and sauces, and the cook, who remembered everything                                                                  
          very well, mentioned dishes that are no longer served. There was one, for instance
          -- a dish made of bulls' eyes, which was called "waking up in the morning."
                               
  

          


                  アントン・チェーホフ『火事のあとで』(「百姓たち」より)
                       レイモンド・カーヴァー 『滝への新し小径』
                               村上春樹 訳“After the fire
                                    

※  PEASANTS by Anton Chekhov

  

牛の目玉というと、他界した賢兄の石井智幸と京都駅前にあったホルモン焼き屋台で立ち食いして
いたころ
。と、言っても彼が話すなかでのことで口にした経験はないのだが、彼によると食べるの
ではなく
て飲み込むのだというので、味もへったくれもないのだがそんな思い出話を肴に、新聞紙
でくるんだ焼き肉を
頬張りながら夢を語り合った蒼い時(あのころ)が懐かしい思い出だ。

【ハイブリッド木質路面材】 

 

輸入木材の増加で日本の森林蓄積量は過去40年で約2.5倍に膨れ上がり、国産材の消費量が増えな
れば林業の衰退だけでなく森林を荒廃させることにもなりかねない状況だという。京都の「NP
O木
の町づくり協議会」は森林の健全化を建設業の視点から解決できないかと間伐材を路面材にし
た「優
ブリック」を開発し事業展開している。試験施工した小中学校では好評木質路面材は基材とな
る道水性のイ
ンターロッキングと木質板を特殊な加工法で一体化したもの。コンクリートなどで舗
装された歩道と比べて足への衝
撃が柔いので歩きやすく、転んでも怪我をしにくい。また木は熱に
対して蓄熱性
が低く冷めやすい。夏はコンクリートやアスファルトのようには熱を溜めずヒートア
イランド抑制効果がある
。優ブリックの工事費は従来のブリック路面工事と基本的に同じ、資材費
は石材の中上級グレードと同価格帯に設定。従来の透水性インターロッキングの約2倍。「現在180
00円~20,000円/㎡で販売。木質系の路面材はおおむね15,000円~18,000円/㎡(将来は10,000円/㎡
を目標)。これは岐阜大学と「高圧水蒸気圧縮成形法」を共同開発だが、木材の特殊な圧縮技術を応
用したもの、杉などの柔らかい材質の木材を、高硬度で収縮変形の少ない材質に変性する。標準品は
杉などの間伐材と基材の透水性インターロッキングを接着なしで一体化、表面は防腐処理を施し筋
状の溝を掘ることで滑り止めとし、基材は透水性なので木材を適度な乾燥状態でせ耐久性を維持。
製造原価は原材料費、製材費、防腐費、ハイブリット化(一体成型化)で、その5割以上をハイブリ
ッド化がに費やす。事業拡大にはコスト縮減が不可欠で、原材料費の間伐材と加工の製材費を低減
させ、ハイブリット化の効率を高め、コストダウンすることが課題となる。市場は都市公園、公共
施設を対象として、全国展開で、約12万ヘクタール×5%=6千ヘクタール(=6千万㎡)と予想
している。



この木質路面材は都市公園と公共施設(学校関係)を対象としているが、ハイブブリッド材の範疇
や機能範疇を広げると市場は広がると楽観的なことを過去に記載してきたが、機能・機構(軽量×
強度)×意匠性でいえば登山道の路面補強材とか海洋浮体材などに応用展開できるはずだと考える。

【ゲノム工学の行方】 

iPs細胞の数々の臨床例は衝撃を与え続けている。再生医療分野だけではなくゲノム工学を包括する
生物工学の著しい成果に誰もが目を見張る思いだが、従来用いられてきた育種技術は、突然変異、性
的接合、細胞融合、組換えDNAの
技術応用開発は、多大な時間と労力がかかり、ごく少数の遺伝子
の操作は限定で、複合
的なストレスに耐え得る生産菌の育種に有効でない指摘されてきた。しかし、
2010年に米国のJ.Craig venter教授らの、マイコプラズマゲノムの化学合成の衝撃は、今後の微生物
育種の技術方向は2つあり、その1つは、有用物質の生産に応じ、ベストゲノムの「化学合成」(
DNA合成のコスト、知識蓄積の未熟が残件)と2つめは、既存のゲノム(微生物)から、短時
で細胞を創り出し、そこから目的物質生産にベストな細
胞を選び出してくる多様性創出ゲノムエ学
の方向が考えられている。近年、ゲノムシャ
フリングエ学、ゲノム再編成工学、グローバル転写因
子工学、人工転写因子工学、翻訳装置
工学など、多様なアイデアに基づく、新しい技術が次々と報告
されているが、と同時に
「科学技術のデュアルユース問題」(=科学技術の応用における二面性)
が浮上してくる。



ゲノム科学、ゲノムエ学、情報科学の進展によって、コンピューターに配列を与えれば、それが、
どのような大きさの、どのような形の生物で、どのようなものを食べて、どのようなものを生産す
る生物(細胞)かということがディスプレー上に表示される、これまで想像できなかったことができ
るような時代が来るだろう。科学技術デュアルユース問題は、国際的な枠組みの中で慎重な対応が
必要とされるわけだ。工学のエッセンスとは、「自然界にない人工物を創ることである」。ベストゲ
ノムの化学合成は、本格的な工学あるいは工業時代を迎えた。 iPS細胞の例を出すまでもなく、生
物工学には夢のある未来が広がる。

※  Synthetic biology(合成生命)

叶わぬ夢、叶わぬ恋、そして、叶わぬからこそ、何かを捨て、チャレンジできると。文体を裏返すこともできる。
そんなことを思い、瞬く間に今日という日が過ぎ去っていく。

                                                           

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進化と環境ストレス

2013年01月14日 | 新弥生時代

 

 

 



    If by "inflation targeter" you mean a central bank that puts top priority
    on inflation and other goals like employment as subsidiary goals, the
    answer is no. We are a dual-mandate bank.

                           Benjamin Shalom “Ben” Bernanke 

 

 

 

【トマトの環境ストレス応答】


家庭菜園をやりはじめ、セカンドライフで改めて生命のエネルギーの凄さを実感した。殆ど移動
できない植物は、常に環境のストレスを受けている。それは低温、乾燥、塩による被害が上げら
れていて、これらのストレスにより全収量の約5割が損害を被っているという。イネ、トマト、
キユウリなどの熱帯・亜熱帯出来の植物は10℃付近よりも温度が下がると、葉が枯死し、果実表
面に傷がつく低温障害を示すというが、人間だったらこの冬の夜に寝ていろといわれたらひとた
まりもなく凍死だろうが、氷雨降る中でも植物はじっと耐えているから偉い!そうはわないか?
さて、ハウス栽培のトマトは朝夕の急激な冷え込みで障害が現れることが多いという。低温障害
が発生する主な原因として、光合成で作られたエネルギーが炭素固定によって消費しきれないの
だ(炭素固定は酵素反応)。これは、酸素に電子が移動し活性酸素が発生するが、植物が低温に
さらされると様々な抗酸化物質を蓄積する。単離したトマトの転写因子(ICE1)が低温耐性に関
わる、また転写因子(ICE1)が過剰に発現したトマトは抗酸化物質の蓄積が促進され、抗酸化力の
増進し低温環境に順化する。具体的には、タンパク質の凝集を防いだり、細胞膜の可塑性を高め
脂肪酸不飽和化に関わる遺伝子が含まれているためだ。さらに、活性酸素の発生で植物は酸化
スト
レスにさらされた場合、カタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼを発現させるが、こ
れらの遺伝子(DREB1)の
AP2型転写因子により調節される。この調節を担うのがMYC型転写因
子(ICE1)だ。
そこで、筑波大学の三浦謙治準教授らのグループは、低温耐性(10℃以下で良好な
生育が可能)の
トマトのSlICE1を単離するも、そのアミノ酸配列が植物間に保存され若い葉、花、
果実で高い発現を
示す。また、野生株に比べ低温耐性を示したという(上図)。



植物が低温にさらされると、様々な代謝産物の蓄積量の変化が見られる。例えば、スクロースやラ

フィノースといった糖、プロリンなどのアミノ酸の蓄積が顕著となり、活性酸素の蓄積が起きて、
ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質の蓄積増加するが、ホウレンソウ栽培などの寒締め
呼ばれるが、トマトやキュウリなどの熱帯・亜熱帯由来の植物は、低温ストレスにより枯死する。
トマト果実におけるメタボローム解析を行った結果、グルコース6リン酸、フルクトース6リ
酸、フルクトース1,6リン酸といった糖やプロリン
等のアミノ酸を蓄積促進。SlICE1過剰発現によ
り低温耐性能を増強
させ、抗酸化物質の蓄積を促進できたという。活性酸素は植物でも障害を引
き起こすが、ヒトでも様々な症状を誘因する物質。活性酸素の増加は生活習慣病やメタボリック
シンドロームの原因と考えられているが、抗酸化物質を多く含む高機能食品は予防効用があると
考えられている。トマトSIICE1でもセリン(S436)およびその近傍配列が高度保存され、アラニン
置換体SIICE1(S436A)を導入で、より強い低温耐性能を持ち、より多くの抗酸化物質を蓄積するト
マトの作出につながり、トマトの点変異を誘発し、436番目のセリンを他のアミノ酸に置換したト
マトを作出で、形質転換技術によらず、低温耐性・抗酸化物質蓄積トマトを作出できると期待さ
れる。トマトは茄子の子供?だとは今では当たり前になっているが、これほど人類を虜にさせた
果実はまれで、凄まじい勢いで、品種改良と料理レシピの開発なされている。この先停滞して行
くのか、それとも進化が続くのか今夜のわたしではイメージできないので、日を改めて考えるこ
とにする。

メタボローム解析

 

 

【それからの高性能太陽電池】 


余りの忙しいさに、量子ドット中間型太陽電池の研究作業が滞っているので慌てて特許情報を調
べの作業に入る。ところで、光電変換デバイスは、近年、製造コストの低コスト化が進められ、
その結果、光電変換層の薄型化、薄膜化が進んでいるが、光電変換層が薄くなると、照射された
光の一部が透過し、光の吸収が不十分となり、光電変換層の薄型化等が行われた光電変換デバイ
スは、光のエネルギー変換効率が低下してしまう。このような背景から、光電変換デバイスの表
面に構造体を形成し光電変換層における光の吸収を増加させたり、波長変換フィルムを付与する
ことで、紫外線領域の短波長エネルギーを取り込むなどの対策が取られている。後者は農作物の
光合成の効率アップのため既に普及している。前者では
、太陽電池本体の表面側に、誘電体で形
成された無数のロッドアンテナを設ける太陽電池が知られている(ロッドアンテナで、太陽から
照射される電磁波、すなわち太陽光をより効率よく受信し、太陽電池本体にそのエネルギーを供
給する)。



また、光電変換層(例えば、量子井戸構造)の上面に微粒子が分散され、この微粒子が誘電体コ
アとその外周面を覆う金属シェル部との複合構造であり、光が照射されると2波長の光で局在表
面プラズモン共鳴する光電デバイスが知られている。局在表面プラズモン共鳴する波長の光が、
この光電デバイスに照射されると、局在表面プラズモン共鳴により、前記微粒子の周囲に増強さ
れた強い電界(近接場光)が発生し、光電変換層に光が吸収される確率が増大し、光電デバイス
の変換効率が向上させるというものだが、従来のロッドアンテナを設ける太陽電池は、太陽光を
太陽電池内に再放射して供給するので、ロッドアンテナに太陽光を局在させることができないの
で変換層が薄いと十分吸収されず透過する上、製造にコストがかかる。また、後者は、
局在表面
プラズモン共鳴の共鳴波長以外の波長では電界の増強が進まず、光を遮光し影を作り、局在表面
プラズモン共鳴は、共鳴波長の幅が狭く、電界の増強がその一部に限られ、複数の共鳴波長を発
生させる場合でも、個々の微粒子は1つの共鳴波長しか持たないので、他の波長では影を作って
しまうことになり効率向上に十分に寄与できないことが懸念される上、貴金属使用のためコスト
高となる

これらに替わる方法として、光電変換層40と、誘電体により形成された複数の構造体50と、
光電変換層と構造体との間又は各構造体間の少なくともいずれか一方に光を伝達する媒質層とを
備え、ndie>nmed、D×nmed/λmax<0.3である光電変換デバイスは高い変換効率を有する
光電変換デバイス構造を構築することで、構造体の周囲に生じる近接場光を強くすることができ
る。構造体の高さが高すぎると、近接場光が発生しないことがあるが、近接場光を発生させ、光
電変換デバイスの変換効率を高めることができるというものである。要点をまとめたらそのよう
になるがコスト的側面の評価は未知数だし、これだけでは分かってもらえそうもないなぁ~~~。


波長変換フィルタ方式についての説明には時間がないので、上図をクリックされたし。とりあえ
ず、この
作業はやっとこさ終えることができた。
 

コメント (1)
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