極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギーと環境 64

2024年11月28日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

湖東三山  西明寺 に対する画像結果 西明寺

【季語と短歌:11月29日】 

        払暁の星吾照らす冬日かな    

                  高山 宇 (赤鬼)

 

百済寺は1400年以上前の推古14年、聖徳太子より創建された近江国最古級
の寺院。像高2.6mの十一面観音を本尊とし御堂は百済の「龍雲寺」を模し
て創建され、開闘法要には高句麗僧恵慈を呪願とし、百済僧道欽や暦を伝
えた観勤も永く住した 名だたる人物の歴史舞台として、また天台別院と称
され、その後、鎌倉時代からは「天台別院」と称され、1300人が居住す
る巨大寺院となるが、惜しくも天正元年4月11日に信長の焼討ちに遭うが、
「坊跡遺構」や「千年菩提樹」をはじめ樹齢数百年の巨杉、山桜、椿群か
ら偲ぶことができ、近江の人々の信仰を集めてきた。


❤️ 酢玉ねぎの12大パワー



老友会のご婦人に「酢玉ねぎ12大パワー」のメモをご丁寧に頂きました
(有難う御座いました😊)。という訳で内容を再編集掲載し、実践させ
ていただきます。

(1)血液をサラサラにする:タマネギに含まれる硫化アリルには、血管
内で血液が固まるのを防ぐ、血液サラサラ効果があります。
加えて、酢に
も血液がネバネバになるのを防ぐ効果があるので、
血液の循環をよくする
最強の組み合わせといえます。

(2)血液を正常化する:玉ねぎの硫化アリルと酢の血液サラサラ効果に
より、
動脈硬化が改善して、血管壁の弾力性が回復します。血管が広がり、
血流がよくなるので、血圧を下げる効果が期待できます。
(3)血糖値をコントロールする:タマネギに含まれる硫化アリルやケル
セチンには、血液中の余分な糖質や脂質を減らす働きがあります。さらに
タマネギの食物繊維が、食後の血糖値の上昇を抑制してくれるので、血糖
値のコントロールに役立ちます。
(4)
コレステロールや中性脂肪を減らすタマネギと酢には、どちらも
内の余分な脂質(コレステロール、中性脂肪など)を減らす働き
があります。
(5)新陳代謝・スタミナアップ:酢に含まれるクエン酸の作用で、新陳
代謝が活発
になります。加えて、タマネギの硫化アリルは、特に筋肉細胞
において、糖がエネルギーに変わるときに必要なビタミンB1の吸収を高
め、その働きをよくします。ビタミンB1が豊富な食材(豚肉など)と一
緒に取ることで、体細胞の新陳代謝がより活発になり、スタミナもアップ
します。
(6)腸内環境をよくする:タマネギに豊富に含まれるオリゴ糖が、腸内
の善玉菌であるビフィズス菌を増やし、腸内環境を改善します。腸管ホル
モン『インクレチン』の増加
が期待できます。(「糖尿病・高血圧・耳鳴
りに…!やっぱりすごい『酢
玉ねぎの12大パワー
!』)😊
(おまけ!)
ナッツを毎日食べることで、健康な年を延ばせる
毎日のナッツの摂取は健康寿命を延ばします
【関連論文】
Title:  Nut consumption and disability-free survival in community-
   dwelling older adults: a prospective cohort study,
Report:Age and Ageing, Volume 53, Issue 11, November 2024, afae239
,https://doi.org/10.1093/ageing/afae239




✳️ 
事例から学ぶ、ドローンの事故原因と安全対策

ここ数年で世界的に広く普及したドローン、普及するにつれてドローンに
よる事故にもますます注意が必要。周囲の人や建物に迷惑をかけず、そ
して自分の大切な機体を長く使うためにも、安全対策を押さえておくこと
はドローンの操縦者にとっては必要不可欠。
🪄ドローン事故の原因は?墜落を未然に防ぐための対策を紹介(2023.10.06)



✳️ 中国2025年 石炭火力発電のピーク?
中国のエネルギー転換は今、重要な瞬間を迎えており、課題が続く中、希
望の兆しが見え始めています。エネルギーとクリーンエア研究センター(C
REA)は、国際エネルギー移行学会(ISETS)と共同で、2024年の国の進捗状
況を評価する年次報告書本日発表した。注目すべき調査結果は、中国が
石炭消費を2025年までにピークアウトする可能性が高いという専門家のコ
ンセンサスが高まっていることで、これは脱炭素化への道のりにおける重
要な節目となる。

気候とエネルギー分野の専門家44人を対象にした調査では、現在52%が
2025年までに中国の石炭消費がピークに達すると考えている。これは2022
年のわずか15%から急増している。同様に、中国の二酸化炭素(CO2)排
出量全体がすでにピークに達している
、または2025年までにピークに達す
ると考える人の割合は、2022年の15%から2024年には44%に増加している。
この楽観的な見方の高まりは、再生可能エネルギーの驚異的な成長と、特
定のセクターにおける化石燃料への投資を削減するための的を絞った取り
組みの組み合わせを反映している。

ISETSのXunpeng Shi会長は「中国のような急速な成長経済でカーボンニュ
ートラルを達成することは容易なことではないが、同国の多大な努力が実
を結び始めている」と述べた。「クリーンエネルギー産業は、経済成長の
主要な推進力として浮上。中国が移行を続けるにつれて、そのメリットは
ますます明らかになり、クリーンエネルギーの展開拡大と進行中の産業変
革は、さらに大きな利点を約束する。この進歩は、脱炭素化を加速し、す
べての人の長期的な繁栄を確保のため、将来に対する楽観的な見方をして
いる。」

中国カーボンニュートラル2060

✳️ 
SiCパワー半導体の大幅な性能改善
Si(シリコン)を中心とした半導体は、計算機や通信機のロジックやメモ
リに代表される情報処理用途に限らず、電気自動車や電車のモーター制御、
変圧器や直流-交流変換器などいわゆる電力制御(パワーエレクトロニクス)
にも広く用いられている。ただ後者の応用では、制御回路の消費電力(電
力損失)が大きな問題となっており、低損失化を目指して、Siよりも基本
特性の優れるSiC(シリコンカーバイド)によるトランジスタ開発が近年活
発になっている。2020年7月にデビューした新幹線の最新モデルN700Sに
もSiCパワー半導体が用いられるなど、既に実用化が始まっている。

ルチル型GeO2で「世界初」半導体デバイスの動作確認
11月27日、r-GeO2(ルチル型二酸化ゲルマニウム)単結晶薄膜上にショッ
トキーバリアダイオード(SBD)を形成し、その動作を確認したと発表。
r-GeO2で実現された「世界で初めて」(同社)の半導体デバイスのこと。

(EETIMES.JAPAN)

Patentixは、二酸化ゲルマニウム(GeO2)の社会実装に向けた研究開発
を進める立命館大学発のスタートアップだ。次世代パワー半導体の材料と
して、現在バンドギャップが3.3eVと広いSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化
ガリウム)の普及が進んでいるが、GeO2は、バンドギャップが4.6eVとさ
らに広い
。また、r-GeO2と同程度のバンドギャップを持つ半導体として、
酸化ガリウム(Ga2O3)の研究の研究も進んでいるが、同社は「r-GeO2
Ga2O3では困難とされる不純物ドーピングによるP型の発現が理論的に予
測されていて、より幅広いデバイス応用が期待される」と説明。

試作したSBDの構造

今回の成果は、Patentixと物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究による
ものだ。Patentixは絶縁性TiO2(酸化チタン)基板状にN+のr-GeO2単結
晶膜を成膜し、その上に1×1017cm-3程度のドナー不純物を導入したN-
層のr-GeO2単結晶を成膜した。続いてNIMSがN-層をドライエッチング
してN+層を露出させ、電極を成膜/形成することで疑似縦型構造のSBD
を形成し、その電流電圧特性を評価した。今回の成果から、デバイスは疑
似縦型構造だが、次に縦型構造のSBDの実現を目指す。結晶膜の高品質化
や半導体デバイスの応用を広げる上で必須のP型の実現も引き続き取り組
んでいく。

    懐かしのロマン歌謡楽曲 『五輪真弓: 一葉舟 』 
                 1979年11月18日



人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
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人間の未来AIの未来』連載第10回
✳️「都合のいい」遺伝子の書き換えが可能に
たとえばiPS細胞による再生医療やゲノム編集技術によって、病気がすべ
てなくなったら、人間は不老不死が可能になるかといえば、老衰は間違い
なく起こるでしょう。今のところ、生きることができるのは、細胞の寿命
である120歳くらいと山中氏が話す。血液を作る細胞である造血幹細胞が
骨髄にあります。生まれた時は確か一万個くらいと少ないん。造血幹細胞
自体はあまり増えないが、分化する途中に前駆細胞を作り出して、その子
たちが急激に増えて赤血球や白血球、血小板になって、どんどん入れ替わ
っている。ただ、造血幹細胞も時々は分裂しなければいけない。分裂して
いると、遺伝子に傷が入ったり、寿命で死んだりしていくものもある。だ
から造血幹細胞はだんだん減っていく。百歳くらいの人を調べたら、造血
幹細胞が2個しかないその2個がすべてで、何もせずにゼロになったら、
間違いなく終わりです。それが老衰による死です。でも、そこで骨髄移植
をすれば、移植された造血幹細胞が血液をつくりだすようになります。心
臓も基本的には生まれたままの細胞がずっと残っていますから、生まれて
100年以上経てば、やがて心不全になります。ただ、これも心臓移植をす
ることができます。足が弱っても、人工関節などの技術が今は進んでいま
す。
あとは脳。脳も基本的に生まれたままで、脳細胞は滅多に増えない。
でも脳を入れ替えてしまうと、その人がいったい誰なのかわからなくなる

だから、決め手になるのは脳じゃないでしょうか。そこまでやるか、とい
う話。でも脳以外は、超大金持ちがお金にモノを言わせて臓器や細胞など
の移植を続ければ、理論的には更新できる一方で、臓器移植をするには、
拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を投与する必要がある。これには副作
用があるので、免疫抑制剤によって健康が損なわれてしまう可能性がある。
基本的に老化によって造血幹細胞がどんどん減って、脳も間違いなく衰え
てだめになるので、そう考えると、やっぱりヒトの寿命は120歳くらいが
限界なのではないか、人間にしても、よくこんな精妙なものができたなと
思と。
ゲノムを解読して、この人は将来、必ず病気になるとわかったら、ゲノム
編集によってあらかじめ治すことはできるのかと羽生氏。
これに対し、「単一遺伝子疾患」といって、それが一個の遺伝子で起こる
ものだったら、治すことは可能。ハンチントン舞踏病などがそれに当たり
複数でも2個の遺伝子ならば、まだ何とかなるかもしれないが、3つ4つ5つ、
10個と多因性疾患になってきたら、なかなか今の技術では難しいと。それ
が一個の遺伝子のせいならば、それを治すことで、女性たちの意識がまっ
たく変わってきたとも話す。

◾死ぬのが怖くなる
深刻なのは、「あなたは病気になる可能性の高い遺伝子を持っています。
でもどうすることもできません」という場合。その場合に、その事実を
本人が知ること自体が、本当にその人の人生にとってプラスなのかどうか
が問われる。家族性アルツハイマー病の原因となる遺伝子はいくつか特定
されています。でも現状では「遺伝子を検査したら、あなたはかなりの確
率でアルツハイマー病になることがわかった。ただ、現代の医療技術では
どうすることもできません」としか言えない。ただし、この場合は、本人
が事実を知ることで自分の人生を設計できるメリットがあり、50歳くらい
で発症する確率が高いなら、それまでにやりたいことをするとか、家族の
ために何か残しておくとかいろいろ考えられます。そのほうが本人の人生
にとってプラスになる可能性がある。アルツハイマー病も含めて認知症は
世界で急増。2050年には今の3倍の1億3千万人になるという予測がある。
誰にとっても切実な問題。別の見方をすると、それまで抱えてきた人生の
悩みとか怒りを全部忘れて穏やかな日々を過ごしているお年寄りもいる。 
たとえば、認知症の特効薬ができて、100歳になって体が衰えてきても、
頭だけははっきりしていると、死ぬのが怖くなって逆に大変かもしれない

認知症は、死の恐怖に対する人間の一つの防衛手段ではと。   つづく
今日の言葉:     

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ⑥

しかしながら、こうした「差別」や「差異」の問題は、何度かにわたる
アメリカでの特段の例をのぞけは、一国の民主主義システムによって乗り
切れるというほうがめずらしい。「差別」や「差異」は、むしろ小さな領
域や隣接しあう領域にこそ、発生しやすいものなのである。こうして問題
はさらに複雑な様相を呈することになる。
国家には、一人ひとりの「生存の問題」というものが先行している。生存
の権利は個人に発生し、これを王権国家も民主主義国家も、何をあとまわ
しにしても優先して守るという義務をもっている。

だから民主主義もまた、つねに個人を救えるものとなっていなければなら
ないのだが、そこに「少数者は多数決のなかでは選択に漏れる」という多
数決の原理が重なると、事情はとたんに複雑になる。いったい少数者の「
尊厳」はどこで保証されているのかということになる。

これは、今日ふうにいえばいわゆる「アイデンティティ」の問題が足元に
絡んできたということである。社会学的にいえば「所属」や「帰属」の問
題だ。

では、どうしたら「差異の多様性」と「帰属の多様性」の両方に対処でき
るような民主主義が持ち-出せるのか。そんな名案はどこにもなかったのだ
が、現実的には二つの提案がなされていったとみなすことができる。

ひとつは「分離の民主主義」である。すでに20世紀前半、ユダヤ人のシ
オニズム
、アフリカ系アメリカ人に「分離の民主主義」はあらわれてきて
いた。もうひとつは「連合民主主義」や「多極共存型民主主義」(conso-
ciatinal democrascy)といわれるもので、一言でいえば「差異の民主主義」
であり、「ネットワークする民主主義」である。この用語-はオランダの政
治学者レイプハルトが提案した。

分離するか、ネットワークするか。この選択は民主主義にとってはあまり
の難問である。仮に分離を選べば、「差異」はたちまち過激なものになる
可能性がある。イスラエルとパレスチナの関係やインドとパキスタンの関
係がそういうふうになっている。さらに分離していけば、イスラム過激
派の自爆テロがそうであるのだが、自爆者たちは“アラーの神の民主主義”
のほうを選んだことになる。

ネットワークを選べばどうなるか。そこには隠れたネットワークが生じる
可能性がある。そして、そこでも実は分離者たちが与えられた多数決民主
主義を壊していく運動が派生しかねない。つまり「少数者の見解」とは、
また「差異の民主主義」というものは、とんでもなく深いものをもってい
るわけなのだ。

こうして難問はいよいよデッドロックにさしかかる。そこにさらに加わっ
てきたのがナショナリズムとポピュリズムの問題だった。

近代の民主主義が選んだもの、それは第1には国民国家であり、第2には
共和政で、第3には議会制民主主義の確立である。ここに資本主義と社会
主義がすばやく交差して、のちにファシズムや国連主義がかぶさった。
では、これだけで民主主義の歯車が作動したり制御されていたのかといえ
ば、そんなことはない。これらの奥には、実は長期型と短期型の二つの“熱
情”がひそんでいた。長期型のものはナショナリズムである。短期型のもの
はポピュリズムだった。いわば“人気”(にんき・ひとけ)というものを、
民族の奥から感じあっていくナショナリズムと、投票などの集計で勝ちと
っていくポピュリズムだ。いずれも民主主義を装うことができた。そして、
人々に「右か左か」を問い、煽るのにも適していた。
ナショナリズムは民族や部族にひそむエトニーやエトノス(民族的なるも
の)が社会に向かって立ち上がり、多くの共感を呼びながら胎動する。そ
れをアントニー・スミスのように近代以前からの動向とみなす学者もいれ
ば、ベネディクト・アンダーソン(821夜)のように近代以降のフィク
ショナルな「想像の共同体」だとみなす学者もいるが、大筋の定義として
はエルネスト・ゲルナーによる「ナショナリズムは国家と民族の一致を要
求する思想である」という見方が通っている。

が、現代社会にとってのナショナリズムの問題は、ナショナリズムそのも
のにあるのではないとも言わなければならない。問題は、ナショナリズム
の動向が保守主義と合体したり、急進主義と重なっていったとき、そこに
民主主義の楔(くさび)を打ち込むことが難しくなっていくことにある。
ナショナリズムは右にも左にも動くのだ。小熊英二(774夜)は『民主
と愛国』で、戦前の日本のナショナリズムは戦後のある時期までむしろ左
翼が積極的にコミットしていたことを証した。

ナショナリズムにはまた、いくつかの派生特色があった。二つだけあげて
おくが、ひとつは、ナショナリズムはつねに国際主義(コスモポリタニズ
ム・インターナショナリズム)と対決し、根無しの国際主義こそ「民主」
を狂わせるものだと指摘する方向をもったことだ。もうひとつは、ナショ
ナリズムはときに人種主義(racism)にも傾いて、かつてならゴビノーの
優生学や、ナチスの反ユダヤ主義や、黄禍論(イエローペリル=黄色人種
批判)となり、それがアパルトヘイト政策にも、最近では反日ナショナリ
ズムにもなっていく方向をもったことである。

ポピュリズムとは何なのか。現在ではポピュリズムは「人気取りの政治」
に結びつけられることが多いけれど、政治的な意味でのポピュリズムは、
もともと19世紀末のアメリカで「人民党」(ポピュリスト)と名のった
政治運動に起源をもっていた。アメリカ西部や南部の農民を支援者とした
もので、二大政党に収まらない新たな政治を要求するために生まれた。
アメリカの政党史では画期的なものであったのだが、やがてこれを民主党
が吸収し、“西部のライオン”の異名をとったW・J・ブライアンらによっ
て東部エスタブリッシュメントの攻撃部隊をつくりあげた。そこには異様
な進化論批判などもまじっていて、アメリカのファンダメンタリズム(原
理主義)ともつながった。

しかしポピュリズムには、資本主義社会を勝ち抜くことを積極的に肯定し、
とくに独立自営者たちに共感を示すところがあったため、そのプロパガン
ダ性がマスメディアに乗りやすく、つながりやすく、そういうせいもあっ
て、やがてポピュリズムはそのイデオロギーの如何にかかわりなくメディ
ア政治化
し、「ポピュラー民主主義」ともいうべき大きな力を発揮した。
この勢いに80年代になって結びついたのが、新自由主義の「市場原理主
義」と「民営化」路線であり、それを最大限に活用したレーガンだった。
日本ではお粗末すぎてはいたが、小泉内閣がこれを利用した。これらがポ
ピュリズムそのものであったことは、小泉劇場政治にも顕著であろう。

かくて新自由主義的ポピュリズムはケインズ型の福祉国家のヴィジョンの
不備を突くという大きなムーブメントをつくりあげ、公的領域を狭くして
「官から民へ」を推進しさえすれば、「市場の拡大」はそのまま「自由の
拡張」になるだろうという幻想をふりまいていったのだ。これを極端に強
化していくために援用されたのがフリードマンの経済学と、そしてマネー
ゲーム
をレバレッジ型に増長させる金融工学
だったわけである。
                              つづく

🪄これが「毒饅頭」と「リーマンショック」、「福知山線脱線事故」、
「3・11福島第一原発事故」として絡んでいくと、わたしの記憶に残って
いる。数え上げれば切りがなさそうだ。

 

コメント
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エネルギーと環境 63

2024年11月28日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

 西明寺

【季語と短歌:11月28日】 

        払暁の星吾照らす冬日かな    

                  高山 宇 (赤鬼)



🪄鈴鹿山脈の西山腹に位置する金剛輪寺は、寺伝によれば聖武天皇勅願
奈良時代の僧・行基の開創とされ、創建は737年(
または741年)と伝わ
る。その後、平安時代前期の嘉承年間(848年 - 851年)に天台宗の僧・
(慈覚大師)により再興されたと伝え中興の祖とされる。1573年織田
信長
の兵火で湖東三山の1つである百済寺は全焼し、金剛輪寺も被害を受け
るが、現存の本堂、三重塔は焼失をまぬがれた。当寺の本堂をはじめとす
る中心堂宇は総門や本坊のある地点から数百メートルの石段を上ったはる
か奥にある。湖東三山は、西明寺、金剛輪寺、百済寺の三つの天台宗寺院
の総称である。次回は百済寺。


✳️ 東レが尿素の除去性能2倍の水処理膜
東レは、尿素の除去性を従来の2倍に高めた水処理膜を開発した。半導体製
造工程では不純物が限りなくゼロに近い「超純水」が大量に必要となる。
将来的な水不足に対して半導体製造工程で下廃水再生水の活用が求められ
る中、新開発の高除去・低圧逆浸透(RO)膜を用いると、除去が難しかっ
た尿素を90%近く除去でき、超純水の安定供給に貢献する。
半導体メーカー
は工場で大量の超純水を使うに当たり、工場内廃水の再利用率を高めてい
る。加えて半導体製造に用いる超純水の水源として、現状の水道水に代わ
る下廃水再生水の活用や海水の利用拡大を検討している。ただし、それら
を活用するには塩分やシリカやホウ素、尿素などを除去する必要がある。

中でも尿素は、水の中に含まれていると加水分解によってアンモニアガス
を発生させ、半導体製造において光阻害を起こして難溶で異常な層を基板
上に形成する恐れがある。そのため高いレベルでの除去が求められている
が、尿素は粒子のサイズが小さい上、電気的中性の分子で電気的相互作用
でも分離できず、除去の難度が高い。 東レはRO膜の性能向上に向けて、
穴径分布の設計に注力した。具体的には、RO膜の表面構造の詳細な観察と、
除去性能の核となる1nmよりも小さい穴の構造を可視化する分析技術を活
。分布を均一にすることで、「低い圧力での透水性と尿素の除去性能を
両立させた」。
同社は同技術を採用した「TBW-XHRシリーズ」を2024年1
1月から国内水処理エンジニアリング会社向けに販売し、2025年以降の工
場への実装を計画している。今後は他分野でも展開する考え。同
社の中期
経営計画では、RO膜の売り上げが年率5%で成長とすると予想。2025年度
にはグローバルシェア1位の実現を目標に掲げている。木村氏は「今回の
開発品が中期経営計画に与える影響は極めて限定的」としつつも、同計画
が前倒しで進んでいると明らかにした。「今後は世界的な水不足で半導体
用途に限らず需要は増えると考えている。
【関連特許技術】
1. 特開2023-149452 分離膜 東レ株式会社
【要約】下図1ごとく、本発明の分離膜は、緻密層とマクロボイド層とを有
すると共に第1および第2面を有し、緻密層およびマクロボイド層は同一の
非イオン性高分子を主成分として含有し、緻密層表面が前記第1面であり、
前記第1面において、開孔率は5%以下であり、平均孔径は0.3nm以上
3.0nm以下であり、マクロボイド層は、近似楕円の短径が15μm以
上であり、長軸が前記第1面と平行な方向との間に成す角度が80°以上
100°以下であり、長径と短径との比が4以上であるマクロボイドを有
する実用的な透水性を保持し、硬度成分、特に2価イオンの高除去性を有
すると共に、多糖等の中性分子の高除去性も有する分離膜を提供する。


【発明の効果】
本発明によると、実用的な透水性を保持し、硬度成分除去性に優れると共
に、中性分子除去性も有する  分離膜を得ることができる。
000003
【特許請求の範囲】
【請求項1】緻密層とマクロボイド層とを有する分離膜であって、
  前記緻密層およびマクロボイド層は同一の非イオン性高分子を主成分とし
て含有し、前記分離膜は第1面と第2面を有し、前記緻密層表面が前記第
1面であり、前記第1面において、開孔率は5%以下であり、平均孔径は
0.3nm以上3.0nm以下であり、前記マクロボイド層は、近似楕円
の短径が15μm以上であり、長軸が前記第1面と平行な方向との間に成す
角度が80°以上100°以下であり、長径と短径との比が4以上であるマ
クロボイドを有する分離膜。
【請求項2】前記非イオン性高分子は、ポリスルホン、ポリアクリロニト
リル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース、
ポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種の高分子である、
請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】前記第1面における開孔率が1%以上3%以下であり、孔径
が0.3nm以上、1.0nm以下である請求項1または2に記載の分離
膜。
🪄詳細省略 しかし、これは想定以内であり、だから、企業の実践である
のだが、面倒くさく、辛いもの。当事者たちの努力の高みに敬服。

⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑭

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝④
【詳細説明】(完了)


✨ 
2025年,スピントロニクス世界市場規模は5,990億円
矢野経済研究所は,スピントロニクスデバイスの世界市場を調査し,カテ
ゴリー別の開発動向,将来展望を明らかにした。スピントロニクスは,電
子が持つ電荷(電気的性質)とスピン(磁気的性質)の両方の性質を利用
する技術分野である。スピントロニクスの物質の電気的特性と磁気的特性
の双方を制御することにより得られる新しい物理現象を利用した材料やデ
バイスにより,エレクトロニクスやマグネティクス,フォトニクスといっ
た電子・情報通信産業のイノベーションの創成が期待されている。

✳️ ペロブスカイト太陽電池向正孔回収材料開発
京都大学と九州大学は,ペロブスカイト太陽電池において,ペロブスカイ
ト層から効率的に正孔を取り出すテトラポッド型正孔回収単分子膜材料(
4PATTI-C3)を開発。


ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けては,高い光電変換効率の実現と
デバイスの耐久性の向上が求められている。
これまで,主にペロブスカイ
ト層の作製法の改良により,光電変換効率が向上してきた。その一方で
ロブスカイト層で光吸収により生成した電荷を選択的に取り出す電荷回収
材料の開発がさらなる特性向上のためのボトルネック課題となっている。
従来の材料では,各層間での電荷のもれを防ぐために100–200nm程度の
アモルファス性の厚い膜として用いられてきた。しかし,この材料自体が
厚いため光を吸収してしまい,ペロブスカイト層に届く光が減少し,取り
出せる電流密度が低下してしまう。また,この厚膜のモルフォロジー(形
態が)の安定性がデバイス自体の低い熱安定性の原因となっている。
さら
に,一般的に有機半導体の厚膜材料では電気伝導度が比較的低いため,p型
のドーパントやイオン性の添加剤を必要する。しかし,これらの添加剤の
高い吸湿性と各イオンのペロブスカイト層への遊泳がペロブスカイト層や
電極などへのダメージとなり,太陽電池デバイスの耐久性を低下させて
しまうという問題があった。

そこで研究グループは,ペロブスカイト層に対して上向きに張り出した極
性官能基をもつマルチポッド型正孔回収単分子膜材料(PATTI)を開発し,
太陽電池特性への効果について明らかにした。
まずπ共役骨格として,サ
ドル型を有するシクロオクタテトラエン骨格に四つのインドール骨格が縮
環したシクロオクタテトラインドール骨格(TTI)に着目し,アンカーと
してアルキルホスホン酸基(PA)を四つ導入したテトラポッド型4PATTI
-C3を設計および合成した。



4PATTI-C3の溶液から透明電極にスピンコートすることで,従来の単分子
膜材料と違って,ペロブスカイト前駆体溶液に対して濡れ性の高い単分子
膜が得られることを明らかにした。
このテトラポッド型4PATTI-C3の単分
子層を正孔回収層に用いた逆型ペロブスカイト太陽電池のミニセルおよび
ミニモジュールでそれぞれ21.7%および21.4%の光電変換効率を達成する
とともに,100時間の連続光照射後でも97%以上の出力を保つ高い耐久性
を実現した
研究グループは,この研究成果で太陽電池の開発分野に多大
なインパクトをもたらすとともに,その実用化を大きく加速できるものと
している。
【掲載論文】
タイトル:Tetrapodal Hole-Collecting Monolayer Materials Based on
Saddle-Like Cyclooctatetraene Core for Inverted Perovskite Solar Cells
(シクロオクタテトラエン骨格を用いたテトラポッド型正孔回収単分子膜
材料の開発)
掲 載 誌:Angewandte Chemie International Edition, (2024),
      DOI: doi.org/10.1002/anie.202412939

✳️ 
北大,水と光のみを用いたナノ結晶の作製 
7日、北海道大学の研究グループは,水と光のみを用いた水中結晶光合成
という新たに開発した手法により,銅と酸素の空孔を戦略的に添加ドーピ
ングすることでタングステン酸を用いた光学的臨界相を誘導できることを
明らかにした。

光応答性ナノ粒子を均一に分散させた材料は,太陽電池,光触媒など太陽
光を念頭に置いた持続可能なエネルギー利用やフォトニクスの応用に役立
っている。
しかし,従来の方法では紫外線と可視光までを利用するだけな
ので,太陽光の約40%以上を占める赤外域の光は未利用で,全太陽光をも
れなく利用するための光電変換効率が悪いなどの制約があった。研究グル
ープは,水と光を用いて作製する低環境負荷な新たなナノ材料合成法であ
る水中光合成(SPsC)を開発した。この手法を用いて,銅と酸素の空孔を
戦略的にドーピングすることで非化学量論的タングステン酸(WO3・H2O
)から光学臨界相を誘導できるようになった。これにより,ナノ結晶の合
成過程における欠陥の調節を行ない,広い範囲の太陽光スペクトルを利用
できる。

⓵具体的には,過酸化水素に溶かしたタングステン溶液中で銅元素の濃度
を変えながらドーピングすることで,非化学量論的タングステン酸の半導
体ナノ構造を作ることに成功した。作製した材料を用いたデバイスにより,
優れた光熱変換特性,光アシスト水蒸発特性,及び光電気化学特性を実証。
⓶次に,透過型電子顕微鏡を用いて原子構造解析(HRTEM)と電子線損
失分光(EELS)による誘電率,光吸収(係数)の評価を行ない,さらに,
密度汎関数理論に基づく第一原理計算と紫外線-可視光-近赤外分光分析に
よる吸光度の実測と比較検討した。
⓷これにより,この研究でカギとなる銅添加元素と酸素空孔の欠陥形成機
構を明らかにし,当該現象の光機能発現効果を解明することができた。
【展望】
研究グループは,作製した半導体デバイスは,特に近・中赤外光
域での優れた光電流,光吸収などの光特性を示すため,今後の全太陽光利
用のための光機能半導体・エネルギーデバイス材料開発として,ソーラー
エネルギーの持続可能な利用技術としての進展への寄与が期待されるとし
ている。

 

図1. ワンポットの光誘起水中光結晶合成法
(SPsC)により合成したナノ結晶

図2. 各種の光機能特性調査 
a) 疑似太陽光で照射したCux%- WO3・H2O (x = 0 - 5.8)の光熱変換特性
調査。銅元素1%と5%添加で光学的臨界相になり強い光吸収が起こっている。 
b) ステンレスメッシュ上のWO3・H2O、Cu1%- WO3・H2O、Cu3%- WO3・
H2OのIRランプによる赤外光水蒸発試験。Cu1%- WO3・H2Oで水蒸発が
最も早い。
c) Cu1%- WO3・H2O及び純WO3・H2O粉末試料の光電気化学性能試験
(光電子変換特性調査)。Cu1%- WO3・H2Oでは下向き矢印の光電流の
増加を示した。
【掲載論文】
論文名 Defect Driven Opto-Critical Phases Tuned for All-Solar Utilization
(全太陽光利用のために調節した欠陥導入による臨界相について) 
著者名 Melbert Jeem1, Ayaka Hayano2, Hiroto Miyashita2, Mahiro Nishimura2,
Kohei Fukuroi2, Hsueh-I Lin2, Lihua Zhang1, Seiichi Watanabe1(1北海道
大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター、
2北海道大学大学院工学院材料科学専攻) 
雑誌名 Advanced Materials 
DOI 10.1002/adma.202305494 
公表日 2023年7月29日(土)(オンライン公開)
 
🪄すごいですね。太陽光を百パーセント利用できる道筋ができました。再
 生エネルギー研究・工学チームの完全優勝が見えてきましたね。

               懐かしの晩秋の楽曲 恋人よ 五輪真弓』 1986年4月21日


 

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
-------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第10回
「都合のいい」遺伝子の書き換えが可能に
ゲノム編集の技術はずいぶん前からありましたが、技術的に非常に難しく
て効率が低く、しかも正確性にも欠けていた。それが2012年に「クリスパ
ー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」という新しい技術が開発されて、そ
の精度の高さと簡易さから一気に汎用性のある技術になりました。
クリス
パー・キャスナインの技術の根底にある「クリスパー」と呼ばれる遺伝子
配列を発見したのは、九州大学の石野良純先生。この技術はDNAの狙った
場所をピンポイントで編集することができます。だからDNA解析と編集の
技術を組み合わせると、理論的には自分たちの都合のいいように遺伝子を
書き換えることが可能になる。(山中)

◾「デザイナー・ベイビー」は許されるか
そうすると、「デザイナー・ベイビー」と言われる、遺伝子操作で親が望
むような外見や知能を持つ子を生み出すこともありうる?(羽生)

『ネイチャー』に掲載された2017年の論文では、遺伝子操作によって身長
を1cmくらい変えることができそうな遺伝子が24個報告されています。「
遺伝子ドーピング」[特定の遺伝子を筋肉細胞などに注入し、運動能力に
関わるタンパク質などを作る手法]によって筋肉量を増やした牛や魚は、
すでにつくられています。牛でつくることができるということは、理論的
には人間でもできます。それはどこまで許されるのか、人間の倫理が科学
技術に追いつけるかという問題ですね。2015年に中国の研究グループが、
ゲノム編集を用いてヒトの受精卵で遺伝子改変を試みた結果を発表した。
中国の研究は遺伝子改変を行った胚を女性の子宮に移植することはして
いないが、学術誌からマスメディアまでその是非をめぐって世界で大論争
になつた。アメリカもヒト受精卵のゲノム編集を条件付きで進めていくこ
とになっている。各国ごとに文化や歴史の違いがあって、世界で統一する
のはなかなか難しいんです。今のところ、受精卵を使った基本的な研究は
やるべきだろう、ただ実際にその受精卵から新しい生命をつくることは当
面はやめよう――というのが、多くの研究者のコンセンサスだと思いる。
日本はまだ、その辺りの議論が紛糾しています。生命科学の技術を使って、
なるべく「健康な子供」が生まれてくるようにすることは、先ほどのデザ
イナー・ベイビーと言われるような「強い子供」が生まれるようにするこ
とにとても近いんです。でも、まず基礎研究はやっていかなければ技術の
見極めもできない。とは言っても、やはりルールは必要で、どんな研究を
誰が、どこで、どんな目的でやっているか、透明性を高めることが大前提
です。その上で、ほぼ確実に遺伝する遺伝子疾患の予防目的といった厳格
な条件下で、少しずつやっていかなければダメじゃないかなと思っている。
データがある世界では、AIは人間の経験値を超える結果を生み出す可能性
がある。
ただ、それが絶対かと言われると、絶対ではないわけです。そのとき、先
ほども言った「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、
そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうか
が問われる。 理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論
なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあ
る。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけ
ない、やめてはいけないと思う。(山中)

❤️「いい加減なとこはあったほうがいい」
手探りで「次はどこに行こうかな」と、その場で何とかするケースがほと
んどです。もちろん、その都度ベストな選択を目指していますが、わかり
やすい答えを求めていくアプローチではないんです。100パーセント間違
いない、絶対にこれだ、という選択肢はないですね。読み筋が考えていた
通りの展開になることも滅多にありません。だから、けっこうその場しの
ぎです。
その決断は間違っているけれど、結果としては良かったというこ
とがある。たとえば悪手を指した結果、相手のミスを呼び込んで、予想外
の勝利となってしまう。では、その悪手を指したことは本当に良かったの
かどうか、という問題はありますけれど(笑)。まったく自分が予想して
いなかった状況になったときに、どうにかする。その力は数値化できない
ものだと思います。だから若干いい加減なところがあったほうがいいのか
もしれない。今の時代は環境がすごく整っているので、真面目にやってい
れば、あるところまでは猛スピードで突っ走ることができる。でも逆に言
えば、環境が整ってない時代だったらたどりつけなかった人も、たどりつ
けているとも言えます。

全体的なレベルや力が上がっている中で、これまでの知識の集積や環境の
有利さだけを考えていたのでは、他の人たちと差を付けることは難しくな
っていきます。そうすると、これまでとはまったく違うことをやらなけれ
ばいけないんじゃないか。それは多分、これをやったら必ずプラスになる
、必ずマイナスになる、といったものではなく、はっきり数値化できない
ことが重要なんじゃないかなと思っているんです。(羽生)。

🪄頭の中がこんがらがっていますが、なんとか根気よく読んでいこう。


今日の言葉:     「ラスト九年」に拍車がかかる昨今。「整理整頓第一
         主義」と「健康管理」に肝すえる。

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ⑤

もうひとつはサミュエル・ハンチントン(1083夜)が『文明の衝突』
で、今後の世界は主要国家の動向で語られるのではなく、西洋文明・儒教
文明・日本文明・イスラム文明・ヒンドゥ文明・スラブ文明・ラテンアメ
リカ文明・アフリカ文明の、8つの文明間の衝突や連携としてとらえるべ
きだというものである。そのような見方をとるには、市場やマクドナルド
やファッションのような流動的なものでなく、フォルトライン(断層線)
によって世界を見るべきだとした。 

この見方も、ハンチントンの主旨とはべつに、だからこそ中東の勝手に対
しては強硬に戦争を仕掛けるべきだというネオコン(ネオ保守主義)の宣
伝理論に使われることになる。
ところが、フクヤマやハンチントンの見方は、これを利用しようとする者
にとっては都合がよかったかもしれないが、そのような見方だけではとう
てい世界史の歩みは説明できないということが、しだいに露呈してきたの
だった。いちばんわかりやすいことであろうが、おそらくはいちばん複雑
な問題を孕んでいるのは、民族紛争と宗教戦争の多発によって、大きな事
の変更がおこったことである。フクヤマが歴史の最終形態だと言った自
由民主主義なんて、南米にも中東にも、コソヴォにもチェチェンにもクル
ドにも、まったく関係がなかったのである。また、「文明間の対立」はま
だまだおこりそうもなく(ハンチントンは儒教文明とイスラム文明が連合
して西洋文明に対決を迫るとも予想した)、むしろ「文明内の対立」のほ
うが吹き出してきたわけだった。  

このような予期せぬ事態の進行は、民主主義の基本原理をくつがえすもの
である。民主主義は「多数決の原理」によって、多数支配の法的な根拠を
提供しつづけてきたのであるが、またそれがいかに困難であっても、その
困難を“みんな”で克服することが民主主義の良質な努力であるというもの
であったはずなのだが、これがしだいに少数者(マイノリティ)や少数民
(エスニック・グループ)にはあてはまらなくなってきたからだ。そこ
には“みんな”はいないのだ。 

それでもそこへ強引に民主主義をあてはめようとすれば、そのマイノリテ
ィやエスニック・グループに干渉し、介入的な政策をとるしかない。それ
は民主主義の原則に反するから、そこでなんとか理由をつけて、最初にそ
こに吹き出した非民主的な出来事とその管理運用主体を、先制して潰して
しまうということになる。これがアメリカが仕掛けた「ブッシュの戦争」
の大半だった。チョムスキー(738夜)やサイード(902夜)がどう
しても許しがたいと立ち上がったことだ。民主主義が「少数者の問題」に
ぶちあたったことは、こうして民主主義の原理をゆるがせていったのであ
る。
すでに最初に書いておいたように、ぼくは小学校で手をあげて意見をのべ
ても、それが結局は多数決になることに納得がいかなかったわけであるが、
では、そもそもなぜ民主主義は多数決などという多数者支配を持ち出した
のか。それは一言でいえば、民主主義が「主権」を取り入れたからだった。  

ヨーロッパでは近世になると、国王が中世的な法のくびきで縛られること
を嫌って、国王の絶対性と永続性を認めさせるべく、最初は王権神授をつ
かい、ついでは王権が民権を掌握できることをつかって、主権の位置を確
定させることをつくりあげていた。トマス・ホッブス(944夜)の「リ
ヴァイアサン」の登場はそのころの議論の象徴である。
しかしその王権が分散したり崩れたり、ピューリタン革命やフランス革命
などで覆されたりすれば、では宙に浮いた主権はどうなるかという「主権
の行方」が取り沙汰されることになる(このあたりの事情は『世界と日本
のまちがい』に縷々書いておいた)。
このとき、ルソーやモンテスキューの社会契約説や法学説が颯爽と出てき
て、主権は「在民」していったのである。けれども主権在民とはいえ、そ
の主権、すなわち「民権」は、もはや国王のような絶対者の管轄にあるも
のではないのだから、その意思を決定するしくみが新たに必要だった。そ
こでフランス革命のときには「民会」のようなものが設定され、意思の正
当性を議決するという方法がとられ、そこで多数決のルールが確定してい
ったわけである。   
                (中略)  

多数支配の問題はいろいろの矛盾をかかえている。ひとつはよく知られて
いるように、ファシズムが多数支配と民主主義をトリッキーに演出して「
全体主義」を体現したということであるが、もうひとつはそれとも深い関
係があるけれど、「差別」や「差異」の問題が浮上してきたということに
ある。たとえば黒人問題、たとえば被差別部落問題、たとえばジェンダー
問題
、たとえばアパルトヘイト問題、たとえば信仰問題、たとえば少数言
語問題
である。現代民主主義はこれらの「少数問題」「マイノリティ問題」
を一挙にかかえることになる。  

それでも、アメリカは長らく楽観していた。なぜならアメリカはそもそもが
「移民」の国で(これについても『世界と日本のまちがい』で詳しく説明し
ておいた)、それゆえに建国以来の「多様のなかの統一」という理念があっ
たからである。
したがってアメリカは危機に陥るたびにこの理念を持ち出して、混乱を乗
り切ってきた。たとえば、ルーズベルトのニューディール政策にはさまざ
まな狙いがこめられていたけれど、そのひとつにはアメリカ内部の分裂し
かねない多様な少数者の統合をはたそうとした意図があったのだし、真珠
湾攻撃をきっかけに「リメンバー・パールハーバー」によって日本叩きを
組み立てたのも、9・11でブッシュが「ブッシュの戦争」を公然と始め
たのも、必ずそこには「多様のなかの統一」の理念が大活躍したものだった。

このような理念の実践をケネディ以来は(それを大々的に復権させたのは
ケネディだったから)、民主主義思想の議論では「多数派リベラル」のロ
ジックとも言っている。けれどもそのロジックの正体は、その時期ごとの
「アメリカン・デモクラシー」の代名詞だったのである(きっとオバマ大
統領もこのたびの未曾有の金融危機をこの理念の実践で乗り切るつもりで
あろう)。🪄さぁ、話は核心に切開する....          次回へ

 

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エネルギーと環境 60

2024年11月25日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

11月に咲く紫色の花,木  白いローズマリー

【季語と短歌:11月26日】 

    寒風に咲くローズマリー愛おしや   高山 宇 (赤鬼)

 ✳️ 波長可変半導体レーザー吸収分光法を用いた水素ガス定量計測
【要約】
ガスセンサーは、さまざまな業界の安全、品質管理、環境保全に
不可欠。波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)は、その高い感度と
選択性により、ガス分析に広く使用されているが、赤外領域のTDLASを用
いて低濃度の水素ガスを定量することは、近赤外領域の他のガスに比べて
吸収が低いため、困難であることが証明されています。本研究では、異なる
圧力での吸収スペクトルの解析と高圧ガスセルの採用により、精密な水素
ガス測定のための革新的方法を紹介。これらの手法をキャリブレーション
フリーの手法に適用することで、レーザーダイオードのガス検出限界を大
きくし、波長ロックを安定させるための最適な測定条件を実現できる。そ
の結果、0.01%から100%の広い検出範囲で、水素ガス濃度とセンサ応答の
線形関係が達成されます。最適な測定条件下では、TDLASシステムの安定
性は、積分時間が1秒と30秒の場合、それぞれ0.2866%と0.0055%の最小
検出限界で実証する



図1. 式(9)から計算されたパラメータxの変化時のk2(緑線)とk2/x(青線
の関係。

図 2. HITRAN2020 データベースのデフォルトの空気広がりパラメータを
使用した、1900 ~ 3000 nm の帯域内での 2121.8 nm での H2 吸光度の
HITRAN シミュレーション (サブ図に表示)。メイン図には、2121.6 ~ 2122
nm の波長での H2、CO2、CH4、および H2S 吸光度の同じシミュレーシ
ョンをプロット。

図3. TDLAS システムを使用して低濃度の H2 検出を最適化するための実験
構成。DFB-LD: 分布帰還型レーザーダイオード、L: レンズ、BS: ビームスプ
リッター、M: ミラー、HMPC: ヘリオットマルチパスセル、HPC: 高圧セル、
PD: フォトダイオード、FG: ファンクションジェネレーター、LiA: ロックイ
ンアンプ。


【関連論文】
・Title:Optimization for hydrogen gas quantitative measurement
 using tunable diode laser absorption sectroscopy
・Paper:
Optics & Laser Technology
・Received 3 May 2024, Revised 27 June 2024, Accepted 10 July
 2024, Available online 13 August 2024, Version of Record 13
 August 2024.
https://doi.org/10.1016/j.optlastec.2024.111587

✳️ おからパウダーは大さじ2杯でレタス1個分の食物繊維

おからが世界の主食になりそうだ。(そりゃ、そうだろう)ご承知のごと
く、選別した大豆を浸漬した後、加水しながら磨砕して加熱し、これを濾
して豆乳を取った時に残ったもの(豆腐粕)をさす。江戸時代には豆腐が
庶民にも普及し、料理本におからの調理法が記され、一般的に炒り煮や蒸
し料理、汁物の材料として利用。「おから」は絞りかすの意味。茶殻の「
がら」などと同源の「から」に丁寧語の「御」をつけたもので、女房言葉
のひとつ。また、トウモロコシオーツ麦小麦大麦などの穀物
押しつぶして薄い破片(フレーク)にする、パフ状にする(膨化させる)
混ぜ合わせてシート状にしてから砕くなどの加熱調理で食べやすく加工し
長期保存に適した形状にした簡便食の
シリアル食品」への応用研究もな
されており、廃棄物でなく近年は多様な研究がなされている。(Wikipedia

おからパウダー

日本乾燥おから協会は2019年度生産量は2817トン。パン屋を営むラパンは
自社で廃棄されるパンだけでなく、ほかの食品から出る廃棄にも目を向け
る。同社は2020年、おからパウダーを原材料にした食品ブランド「OKAR
ADA」(「おから」+「体」)を立ち上げた。「おからは日本古来のスー
パーフード。おからは豆腐製造時に発生する副産物であるが、その一部は
廃棄されている」(久保副社長)という。同社では、廃棄されるおからを
乾燥させたおからパウダーを活用して、エナジーバー「ファイバーバー」
(以下、おからバー)を製造している。同社によると、おからパウダーの
栄養成分の50.1%は食物繊維、22.4%は大豆たんぱく質が占め、栄養価が
高い。また、糖質が6.2%と低いことも特徴。

❤️ 
原料を生おからに切り替えることで、CO2排出削減に貢献
おからバーの好評価に手応えを感じているものの、現状に満足しているわ
けではない。同社のおからバーは乾燥おからを原料に使用しているが、「生
おからを乾燥おからにする工程で、水分を多く蒸発させる必要があり、多
くの二酸化炭素(CO2)を排出している」(同副社長)という。日本豆腐
協会によると、生おからは80%程度が水分である。対して、乾燥おからは
水分が10%以下のものが多く、水分を抜いて乾燥させる際に熱エネルギー
を使う。おからバーの原料の生産工程で生じるCO2排出をできるだけ削減す
るため、乾燥おからではなく、生おからから直接おからバーを作れないか
1年間かけて検討を重ね、「オートミールと生おからともちむぎのエナジー
バー」を開発。2024年から販売。しかも、生おからを原料とするだけでな
く、日本のビーガン認証も取得し、グルテンフリーかつ添加物フリーの商品。


アメリカ合衆国向け 農林水産物・食品の輸出額の推移(2012~2022年)

🪄おからパウダーは豆腐や豆乳を作る時に残った大豆の外皮を粉砕したも
の、より粒子が細かくなったものが「微粉」のおからパウダー。おからパ
ウダーは、粒の大きさによって4種類に分類されます(・全粒粉、粗挽き、
微粉、超微粉)、用途は、粗挽きタイプのおからパウダーは、パン粉の代
わりに使ったり、小麦粉のかわりに天ぷらなどの揚げ物の衣に使われる。
ハンバーグなどのつなぎにも使える。一方、微粉タイプのおからパウダー
はお菓子やパン作りに向く。
🪄微粉おからパウダーを更に細かくしたものが「超微粉おからパウダー」
超微粉タイプは微粉タイプのものより更に粒子が細かく分散しやすいので、
スープやコーヒーなどの飲み物に入れたり、ヨーグルトやサラダにかけて
いただくことができる。
https://twitter.com/i/status/1788734210322362511

スパイシーな香りと、クセになる味わいが特徴の日清焼そばの粉末ソース、
通称「神の粉末」。




植物由来蛋白のパウダー化は日本の文化の豆腐。さても持続可能可能社
  会の中核となれば世界を制すことになるはず。品種改良育成技術、粉
  砕技術、乾燥技術もトップランナーである。(抹茶そばが好きですが、
  関係ないか)

 

⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑫

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝
【詳細説明】
【0098】このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(Mn
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例
えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複
合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸
化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合
酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチウ
ムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0
<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物
(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造
を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、Lix
Fe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、
硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リ
チウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2
;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0099】上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、
スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24
;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0
<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦
1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2
0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッ
ケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、
リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<
x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<
x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-z
CoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含
まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることが
できる。
【0100】正極活物質は、例えば、粒子形状であり得る。正極活物質粒
子は、一次粒子の形態であってもよく、一次粒子が凝集した二次粒子の形
態であってもよく、又は一次粒子と二次粒子が混合されていてもよい。
【0101】正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であるこ
とが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の
取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイ
オンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0102】正極結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、
正極活物質と正極集電体を結着させるために配合される。正極結着剤は、
先に説明した第1結着剤を含むことができる。正極結着剤は、第1結着剤
以外の他の結着剤を含んでもよい。正極結着剤は、先に説明した第1結着
剤のみからなってもよく、第1結着剤と他の結着剤との混合物であっても
よく、他の結着剤のみからなってもよい。他の結着剤として、前述のフッ
素系樹脂又はアクリル系樹脂を単独で用いてもよい。
【0103】他の結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polyte-
trafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene
fluoride;PVDF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化
合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、
及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを正極結着剤として用いてもよ
く、或いは、2つ以上を組み合わせて正極結着剤として用いてもよい。
【0104】導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体
との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カー
ボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラッ
クなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これら
の1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導
電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0105】正極活物質含有層において、正極活物質及び正極結着剤は、
それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%
以下の割合で配合することが好ましい。
【0106】正極結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電
極強度が得られる。また、正極結着剤は、絶縁体として機能し得る。その
ため、正極結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体
の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0107】導電剤を加える場合には、正極活物質、正極結着剤及び導電
剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量
%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好まし
い。
【0108】導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果
を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすること
により、水系電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。こ
の割合が低いと、高温保存下において、水系電解質の分解を低減すること
ができる。
【0109】正極結着剤が第1結着剤を含む場合、正極結着剤に占める第
1結着剤の割合は、1質量%以上であることが好ましい。正極結着剤中の
第1結着剤の割合は、100質量%であってもよい。なお、第1結着剤の
割合とは、正極結着剤に占めるフッ素系樹脂の割合とアクリル系樹脂の割
合の合計を指す。
【0110】正極は、被膜をさらに含むことが好ましい。被膜の形態は
、特に制限されない。被膜は、正極の表面に形成されていてもよく、正極
活物質含有層の内部に形成されてもよい。被膜は、正極表面に露出し得る。
正極表面は、正極活物質含有層の主面のうち、正極集電体と接していない
側の面を指す。被膜は、例えば、正極活物質粒子表面の少なくとも一部を
被覆する第1結着剤の外側に、形成され得る。被膜は、例えば、正極活
質粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1結着剤上に、形成され得る。
被膜は、例えば、正極活物質粒子表面のうち、正極結着剤によって被覆さ
れていない部分を被覆していてもよい。正極が第1結着剤に加えて被膜を
さらに含む場合、正極活物質と水系電解質との接触をさらに抑制できるた
め、副反応を抑制でき、好ましい。
【0111】正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、
Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含
むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0112】アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以
上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好
ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及
びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0113】また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成
されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして
働くことができる。
【0114】正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、
正極活物質、導電剤及び正極結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製す
る。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、
塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と正極集電体との積層
体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を
作製する。
【0115】  或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、
正極活物質、導電剤及び正極結着剤を混合して、混合物を得る。次いで
、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを正極
集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
【0116】正極が被膜を含む場合、被膜は、例えば、正極に被膜を直接
形成するか、又は水系電解質に被膜前駆体を添加する方法によって形成で
きる。水系電解質に被膜前駆体を添加する場合、例えば、初回充電時に正
極上で被膜前駆体を電気分解することによって被膜を形成できる。この場
合、初回充電電流は1C(時間放電率)未満が好ましく、また温度は25
℃以上が好ましい。
【0117】正極に被膜を直接形成する方法としては、例えば、被膜前駆
体を用い、溶液法、蒸着法又はスプレー法などによって被膜を形成する方
法が挙げられる。被膜前駆体の例としては、負極で説明したのと同様のも
のを挙げることができる。正極に被膜を直接形成する方法に好適な被膜前
駆体としては、シアネート類、硫酸塩類、フッ化リチウム、酸化リチウム
酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つを含む
材料が挙げられる。
【0118】溶液法、蒸着法及びスプレー法は、負極で説明したのと同様
の方法で行うことができる。
【0119】水系電解質に被膜前駆体を添加する方法については、後述する。
【0120】 

3)水系電解質
  水系電解質は、水系溶媒と電解質塩とを含む。水系溶媒としては、水を
含む溶液を用いることができる。水を含む溶液とは、純水であってもよく、
水と水以外の物質との混合溶液又は混合溶媒であってもよい。
【0121】 水系電解質は、例えば、電解質塩を水系溶媒に溶解すること
により調製される水溶液である。水系電解質は、この水溶液に高分子材料
を複合化したゲル状の水系電解質であってもよい。高分子材料としては、
例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(P
AN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0122】上記水溶液は、溶質である電解質塩1molに対し、水系溶
媒を1mol以上含むことが好ましい。電解質塩1molに対し、水系溶
媒が3.5mol以上であることがより好ましい。
【0123】水系電解質に水が含まれていることは、GC-MS(ガスク
ロマトグラフィー-質量分析;Gas Chromatography - Mass Spectrometry)
測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量の算
出は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)
発光分析などで測定することができる。水系電解質を規定量はかり取り、
含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。
また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
【0124】電解質塩の例には、例えば、LiCl、LiBr、LiOH、
Li2SO4、LiNO3、LiN(SO2CF32(LiTFSI:リチウ
ムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiN(SO2F)2
(LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、及びLi
B[(OCO)2]2(LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート)など
のリチウム塩を含まれる。使用するリチウム塩の種類は、1種類であって
もよく、2種類以上であってもよい。
【0125】水系電解質は、電解質塩として、LiCl又はLiTFSI
を含むことが好ましい。LiClは、安価であり、かつ、電気伝導率が高
いため、電池のコスト面およびレート特性の観点から好ましい。LiTF
SIは、後述するように被膜前駆体として機能することができるため、好
ましい。
【0126】水系電解質のpHは3~14であることが好ましい。この
pHは適宜変更することが可能であり、水素過電圧を高める観点から、ア
ルカリ側であることが好ましいと考えられる。pHがアルカリ側であると、
水素の発生をより抑制することができる。水溶液のpHをアルカリ側に調
整する方法としては、例えばLiOHを添加することが挙げられる。但し、
pHが12を超える場合は、正極集電体の腐食が進行するため好ましくな
い。水溶液のpHは、好ましくは3~14の範囲内にあり、より好ましく
は3~9の範囲内にある。
【0127】水系電解質は、添加剤をさらに含むことができる。
【0128】添加剤の例には、例えば、Zn、Sn及びPbからなる群よ
り選択される少なくとも一つの金属を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄
化合物が含まれる。
【0129】Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも一
つの金属を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄化合物のそれぞれは、被膜
前駆体であり得る。
【0130】Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも一
つの金属を含む塩の例には、例えば、ZnCl、SnCl及びPbCl
を挙げることができる。塩の種類は、1種又は2種以上にすることができ
る。上記の塩は、水系電解質中に溶解していてもよく、又は懸濁していて
もよい。
【0131】水系電解質がZn、Sn及びPbからなる群より選択され
少なくとも一つの金属を含む塩を含有する場合、電極に、Zn、Sn又は
Pbを含む金属、金属酸化物又は金属水酸化物が形成され得る。金属は、
例えば、水系電解質に含有される上記塩由来の金属イオンが、還元される
ことによって析出した金属の単体であり得る。金属酸化物は、例えば、析
出した金属が酸化されて生じ得る。
【0132】Zn、Sn又はPbを含む金属又は金属酸化物の例としては、
例えば、金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛が含まれ
る。すなわち、水系電解質がZn、Sn及びPbからなる群より選択され
る少なくとも一つの金属を含む塩を含有する場合、電極に被膜が形成され
得る。したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0133】アミド化合物の例としては、例えば、尿素、メチル尿素、エ
チル尿素及びアセトアミド、N-メチルアセトアミド、トリフルオロアセ
トアミドなどが挙げられる。アミド化合物の種類は、1種又は2種以上を
用いることができる。
【0134】有機硫黄化合物の例としては、例えば、ジメチルスルホンを
挙げることができる。
【0135】水系電解質がアミド化合物又は有機硫黄化合物を含む場合、
水系電解質に含まれるリチウム塩により、アミド化合物及び有機硫黄化
合物の融点降下が起こり得る。よって、アミド化合物及び有機硫黄化合物
は、水系電解質中においては、常温で液体の状態であり得る。したがって、
アミド化合物及び有機硫黄化合物からなる群より選択される少なくとも1
つを含む水系電解質は、アミド化合物及び有機硫黄化合物のいずれも含ま
ない水系電解質と比較して、水系電解質中の液体成分に占める水の割合が
少なくなり得る。したがって、活物質と水の接触を抑制できる結果、水の
電気分解を抑制できる。
【0136】また、アミド化合物及び有機硫黄化合物は、それ自体が電
池内において電気分解され得る。アミド化合物が電気分解されると、シア
ネート類が電極に形成され得る。有機硫黄化合物が電気分解されると、硫
酸塩類が電極に形成され得る。すなわち、電極に、先に説明した被膜が形
成され得る。したがって、水系電解質がアミド化合物及び有機硫黄化合物
からなる群より選択される少なくとも1つを含む場合、電極における水の
電気分解を抑制しつつ、抵抗を低く保つことができる。
【0137】硫酸塩類を含む被膜は、添加剤の添加以外にも、硫黄原子

含有する電解質塩の分解によっても形成され得る。硫黄原子を含有する電
解質塩の例としては、例えば、Li2SO4、LiN(SO2CF32(Li
TFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)及び
LiN(SO2F)2(LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)
イミド)が挙げられる。そのため、硫黄原子を含有する電解質塩は、被膜
前駆体として機能し得る。水系電解質は、硫黄原子を含有する電解質塩に
加えて、アミド化合物をさらに含むことが好ましい。上記のような構成の
水系電解質は、硫酸塩類とシアネート類の両方を含む被膜を形成しやすい。こ
のような被膜は、安定性と低抵抗を両立可能であるため、好ましい。
【0138】
【0139】水系電解質が被膜前駆体を含む場合、電極への被膜の形成は、
例えば、初回充電時に電極上で被膜前駆体を電気分解することによって行
うことができる。この場合、初回充電電流は1C(時間放電率)未満が好ま
しく、また温度は25℃以上が好ましい。

【0140】
  4)セパレータ
  セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロ
ピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリ
デン(polyvinylidene fluoride;PVDF)を含む多孔質フィルム、又は
合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又
はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい
これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断する

とが可能
なためである。

【0141】また、セパレータとして、無機固体粒子を少なくとも含む膜、
無機固体粒子の凝集体または焼結体、無機固体粒子と高分子材料とを含む
膜、例えば、無機固体粒子と高分子材料との複合膜、或いはイオン交換膜
を使用することもできる。無機固体粒子は、例えば、固体電解質の粒子で
あり得、上記膜は固体電解質膜であり得る。固体電解質膜は、例えば、固
体電解質粒子を高分子材料を用いて膜状に成形した固体電解質複合膜であ
り得る。
【0142】無機機固体粒子として、例えば、アルミナなどのセラミック
ス、無機固体電解質の粒子を挙げることができる。無機固体電解質は、Li
イオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有
するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示す
ことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又
は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、
下記のとおりである。
【0143】酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na)
Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表
されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中
のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチ
ウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)
、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字
xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0144】  NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の
具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5
であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,
Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であ
り0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3
表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表さ
れ0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiy3-y12で表され
MγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0
≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1
である化合物を挙げることができる。

【0145】また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固
体電解質の他にも、LixPOyzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y
≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合
物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLa5+xxLa3-x
Mδ212で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上
でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5
である化合物;Li3Mδ2-x212で表されMδはNb及びTaからなる群
より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;
Li7-3xAlxLa3Zr312で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+x
La3Mδ2-xZrx12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択され
る1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr2
12);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され
0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0146】無機固体粒子は、単一の種類のものを用いてもよく、複数種
類を混合して用いてもよい。
【0147】高分子材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポ
リマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又
はこれらの混合物であり得る。高分子材料は、酸素(O)、硫黄(S)、
窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選択される1以上を含む官
能基を有する炭化水素で構成されるモノマーユニットを含んでいることが
好ましい。高分子材料としては、単一の種類のものを用いてもよく、複数
種類を混合して用いてもよい。
【0148】セパレータは、無機固体粒子及び高分子材料の他に、可塑剤
や電解質塩を含んでも良い。例えば、セパレータが電解質塩を含むと、セ
パレータのイオン伝導性をより高めることができる。
【0149】 セパレータは、例えば、各々が正極と負極との間に配置され
た複数のセパレータであり得る。或いは、セパレータは、九十九折にされ
た一枚のセパレータであり得る。後者の場合、セパレータを折り返すこと
で出来る空間に正極と負極とが交互に配置される。
【0150】
  5)外装部材
  外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属
製容器を用いることができる。
【0151】  ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であ
り、好ましくは、0.2mm以下である。
【0152】ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂
層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例
えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polye-
thylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethy-
lene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、
軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好
ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、
外装部材の形状に成形され得る。
【0153】金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より
好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0154】金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金
等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素
等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、
及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下
であることが好ましい。
【0155】  外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、
例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であ
ってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択するこ
とができる。
【0156】係る二次電池は、副反応を抑制できるため、副反応によるガ
ス発生が低減できる。そのため、外装部材の形状は、密閉式、半密閉式又
は開放式であってもよい。外部からの水の侵入を防止する観点からは、外
装部材は、密閉式であることが好ましい。
                           この項つづく

  懐かしの晩秋期の楽曲
        『東京ららばい』中原理恵 1978年
                作詞:松本隆 作曲:筒美京平





人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
---------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第5回

✳️ 誰もが「外付けの知能」を持っ時代とは

誰もがスマホを持ち、意味外付けの知能を持っている。それを踏まえ、私
たち人間の「知能」とか「知性」を再定義しなければならなくなる。つま
り「高い知能を持っているのは人間だけ」との前提が崩れた。
AIのIQが、
3千とか1万になると言われている。「この分野でAIは人間以上のことがで
きる」。「では人間の持つ『高い知能』の知能は、お祓い箱なのか」と。
人間には「実現はできるんだけれど説明できない」とか、「実際に思って
いることや感じていることでも、すべてを言葉で表現することはできない」
ことが残るが、「AIという比較対象を得たことで、”知能とはこういうもの
だったのか”と人間の知能の本質にアプローチできる可能性が出てきた。」
「AIと人間が協力し合う世界では、どういう可能性が生まれるかが問われ
ている」「SF映画の『マイノリティ・リポート』を思い出し、AIが”殺人を
犯す”と予知した人間を事前に逮捕するという、ある意味とんでもない近未
来社会が描かれている。」と羽生氏は言う。

✳️ 
AIがもたらす「ブラックボックス問題」
それも荒唐無稽と笑っていらえない、現在のAIは民間企業が開発している
ので、ある時期まで基本的に開発プランは公開されず、あるとき、「こん
なものができました」と世の中に発表する状況では、AIの開発について、
社会が新しい規準や新しい倫理をつくるといっても、現実のほうに先を越
されて後手に回ってしまう。その規準や倫理を誰が、どこで、どういう形
で決めるのか、その枠組みすらできていない段階では、極めて漠然とした
話になるのではと言う。

 今日の言葉:紅葉が磯焦る彦根玄宮園・湖東三山西明寺
   紅葉見学に出かけるも紅葉は磯焦状態。ジワリと破滅の影濃くなる。

 







 

 

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エネルギーと環境 59

2024年11月24日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月25日】      

    いまさらに秋桜忘れ冬に入る   高山 宇 (赤鬼

※ そういえば去年より秋桜の印象がなかった。

✳️ 薄膜に生じたシワの大きさを1台のカメラで簡単測定
◇大型宇宙構造物で用いる薄膜の皺を、たった1台のカメラで簡単に測定
    できる方法を提案。

◇撮影した画像から、計測点の移動距離を計算することで、皺の大きさ
   を測定。


大型アンテナなど宇宙空間で使用する大型構造物は、ロケットに搭載して
打ち上げられるが、ロケットが一度に運べる荷物のサイズには限界がある。
そこで、軽量かつコンパクトに収納できる薄膜を用いた構造物の研究が進
んでいる。薄膜はラップほどの厚みしかないため、展開した際に皺などが
簡単に生じ、展開後の薄膜の形状を正確に把握できる計測技術の開発が
求められていた。

大阪公立大学大学院工学研究科の岩佐 貴史教授らの研究グループは、1台
のカメラで撮影した画像から、薄膜全体に生じた皺の大きさを測定する方
法を提案。従来は複数のカメラが必要でしたが、本研究では薄膜に印字し
た計測点がどれだけ移動したかを画像から計算することで、皺の大きさが
簡単に測定できる(図1)。本手法は、カメラの設置スペースに限りのあ
る宇宙構造物での活用が期待する。

【掲載論文】
・【発表雑誌】Measurement
・【論文名】Monitoring thin membranes for wrinkles using single-camera
  photogrammetry
・【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.measurement.2024.116123


⬛ 気候変動でハリケーンの脅威増大
      気候変動の結果、ハリケーン風速は平均29 km / h増

海水温の上昇により、2019年から2023年にかけて大西洋のハリケーンの
最大強度が84%上昇し、2024年のシーズンは100%増加ー30の大西洋のハ
リケーンが、サフィア・シンプソン・ハリケーン風スケールで約1カテゴ
リー高い強度ーに達したとのこと。
現在、2100年までに産業革命前のレ
ベルから2.5°Cから3°Cに達すると予測されているハリケーンは今後数十年
で、大西洋だけでなく世界の海全体でさらに強力で破壊的になると予想さ
れている。一部の専門家は、これらの前例のないスーパーストームの新
しい分類を提案しており、サフィア・シンプソン・スケールに「カテゴリ
ー6」を導入する可能性がある。

「気候変動がハリケーンに与える影響を定量化し、伝えることが急務」と、
インペリアル・カレッジ・ロンドンのグランサム気候変動・環境研究所の
ラルフ・トゥミ博士が話す。「この優れた論文で、Gilford、Giguere、Per-
shingは印象的な新しいフレームワークを提示する。これは、ハリケーン
の最大ポテンシャル強度で理解されいる概念を使用し、これを海面温度の
気候変動フィンガープリントと組み合わせている、ハリケーンの強度を気
候変動を迅速に回帰し提供してくれる」と言う。





⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑪

✳️ 5分で70%充電 NTO負極を用いたリチウムイオン電池
東芝は2ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いたリチウムイオン電池
開発した。リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)と同等の体積エネル
ギー密度を実現しつつ、超高速充電と長寿命化を両立させた。(11月12日
EETIMES)
東芝は、NTO負極を用いたリチウムイオン電池を2017年に試作。2018年
にはブラジルのCBMMおよび双日と共同開発契約を結び、実用化に向けて
開発を行ってきた。2024年6月より、CBMMが権益を有するブラジル・ミ
ナスジェライス州のアラシャ鉱山で、実証実験を始めている。

開発したNTO負極セルの性能

NTO負極を用いた電池は、原理的にリチウムの析出がなく、急速充電時に
電流値を制御しなくても安全に充電が行え、充放電を繰り返しても劣化が
少ないという特長がある。その上、熱安定性が高いため電池が高温になっ
ても、急速充電が可能である。

粒子間に強固な導電ネットワークを形成する電極製造技術と製造した電極

今回は、NTO負極のNTO粒子の表面にナノレベルの導電剤を均一に分散さ
せ、粒子間に強固な導電ネットワークを形成するための電極製造技術を開
発した。これにより、5分間で約70%の急速充電が可能となった。しかも、
外気温が-30~60℃という過酷な環境下でも超急速充電ができる

開発した技術を適用して容量50Ahの大型電池セルを試作。これを用い循
環バスの運行を模擬したサイクル試験を行い、7000サイクル後でも93%以
上の容量を維持できることを実証。

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝
【要約】下図1のごとく、  実施形態によれば、二次電池が提供される。
二次電池は、水系電解質と、正極と、負極とを含む。正極又は負極のうち
の少なくとも一方の電極は第1結着剤を含む。第1結着剤は、フッ素系
樹脂およびアクリル系樹脂を含むことで、サイクル寿命性能に優れた二
次電池、この二次電池を含む電池パック、並びにこの電池パックを含む
車両を提供することを目的とする。

図1. 二次電池の一例を概略的に示す断面図
【符号の説明】  1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体
、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…
正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…
正極端子、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…
負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、31…収容容器、32
…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…
車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、
44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電
池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…
電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…
電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、
301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コ
ネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a
…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端
子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、
411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…
負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入
力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、
W…駆動輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水系電解質と、正極と、負極とを含み、
前記正極又は前記負極のうちの少なくとも一方の電極は第1結着剤を含み、
前記第1結着剤は、フッ素系樹脂およびアクリル系樹脂を含む、二次電池。
【請求項2】
  前記第1結着剤は、下記(1)式を満たす、
  0.01≦A/(A+A+2A)≦0.95    (1)
  但し、前記Aは酸素原子の量であり、前記Aはフッ素原子の量であ
り、前記Aは窒素原子の量であり、A+A>0、A>0である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
  前記アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル
及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種を含む重
合体である、請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、292eV以上294
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
  前記フッ素系樹脂は、フッ化ビニリデンを含む重合体である、請求項1
記載の二次電池。
【請求項6】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、398eV以上402
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、168eV以上173
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
  前記水系電解質は、Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少な
くとも一つの元素を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄化合物からなる群
より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
  前記負極は、負極結着剤として前記第1結着剤を含み、
前記負極の表面は、シアネート類、硫酸塩類、金属亜鉛、金属スズ、金属
鉛、フッ化リチウム、酸化リチウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群
より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項10】
  前記正極は、リチウムマンガン複合酸化物、オリビン構造を有するリチ
ウムリン酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からな
る群より選択される少なくとも1つの正極活物質と、
正極結着剤として前記第1結着剤とを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項11】
  前記負極は、スピネル構造を有するチタン酸リチウム及び単斜晶型ニオ
ブチタン酸化物
からなる群より選択される少なくとも1つの負極活物質と、
負極結着剤として前記第1結着剤とを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項12】
  請求項1に記載の二次電池を含む電池パック。
【請求項13】
  通電用の外部端子と、  保護回路とを更に含む請求項12に記載の電池パック。
【請求項14】
  複数の前記二次電池を含み、  前記二次電池が、直列、並列、又は直列及
び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項12に記載の電池パック。
【請求項15】
  請求項12に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項16】
  前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求
項15に記載の車両。


【発明の効果】 
 (第1の実施形態)水系電解質を含む二次電池においては、水系電解質
中の水の電気分解が副反応として生じ得る。そのため、水系電解質の劣
化が生じ得る
【0014】 例えば、リチウムイオン二次電池において水の電気分解が
生じると、負極においてリチウムイオンの挿入と水素の発生とが競合す
るため、正極から放出されたリチウムイオンが電池反応に寄与しなくなり
得る。また、負極における水素発生時には、同時に負極からリチウムイオ
ンが脱離し得る。したがって、水の電気分解が生じると、負極及び正極の
両方からリチウムイオンが消費されるため、充放電に利用できるリチウム
イオンの量が減少し得る。その結果、充放電サイクルに伴って電池容量の
劣化が生じ得る。
【0015】また、副反応においては、例えば水系電解質の分解産物とし
て固体成分が生成し得る。これらの固体成分は、例えば電極上に堆積し
得るため、抵抗上昇の要因となり得る。
【0017】第1の実施形態によると、二次電池が提供される。二次電
池は、水系電解質と、正極と、負極とを含む。正極又は負極のうちの少な
くとも一方の電極は第1結着剤を含む。第1結着剤は、フッ素系樹脂およ
びアクリル系樹脂を含む。
【0018】アクリル系樹脂は、活物質粒子への被覆性が高い。そのため
、電極中の活物質と、水系電解質中の水との接触を抑制できる。
【0019】フッ素系樹脂は、疎水性が高い。そのため、電極中の活物質
と、水系電解質中の水との接触を抑制できるため、副反応を抑制できる。
したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0020】フッ素系樹脂は疎水性が高いため、フッ素系樹脂の分子同士
で凝集しやすい。その結果、例えば、フィブリル化しやすい。フィブリル
化したフッ素系樹脂は、粒子形状の活物質(活物質粒子)への被覆性が低
くなり得る。そのため、フッ素系樹脂単独で活物質粒子への被覆性を向
上するのは困難である
【0021】アクリル系樹脂とフッ素系樹脂は互いに相溶性を有し得る
ため、これらを混合して第1結着剤として用いることができる。
【0022】第1結着剤は、活物質粒子への被覆性が高いアクリル系樹脂
と、疎水性が高いフッ素系樹脂とを含む。したがって、第1結着剤は、非
水電解質電池と比較して水の電気分解が発生しやすい水系電解質電池にお
いても、副反応を抑制するために十分な被覆性及び疎水性を確保すること
ができる。その結果、サイクル寿命性能をさらに向上できる
【0024】係る二次電池において、正極又は負極のうちの少なくとも一
方の電極は、第1結着剤を含む。当該電極は、集電体と、集電体上に形成
された活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、活物質と、
第1結着剤とを含む。活物質は、例えば粒子形状の活物質粒子であり得
る。電極は、さらに被膜を含むことができる。被膜は、活物質含有層に
含まれ得る。
【0025】第1結着剤は、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆し
得る。よって、活物質と水系電解質との接触を抑制できるため、副反応を
抑制できる。したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0026】第1結着剤は、0.01≦A/(A+A+2A)≦
0.95を満たすことが好ましい。但し、Aは酸素原子の量であり、A
はフッ素原子の量であり、Aは窒素原子の量である。A+A>0、
>0である。
【0027】第1結着剤は、酸素原子及びフッ素原子を含み得る。酸素原
子は、例えば、第1結着剤中のアクリル系樹脂に含まれ得る。フッ素原子
は、例えば、第1結着剤中のフッ素系樹脂に含まれ得る。第1結着剤は、
窒素原子をさらに含んでもよい。窒素原子は、例えば、アクリロニトリル
等のアクリル系樹脂に含まれ得る。
【0028】第1結着剤は、第1結着剤に含まれる酸素原子の量A、フ
ッ素原子の量A及び窒素原子の量Aが、0.01≦A/(A+A
+2A)≦0.95を満たすことが好ましい。A+A>0を満たす
限り、A又はAは、0であってもよい。すなわち、第1結着剤は、酸
素原子及び窒素原子のうちいずれか一方を含んでいなくてもよい
【0029】 第1結着剤中のアクリル系樹脂の割合が多い場合、又は、
フッ素系樹脂の割合が少ない場合に、A/(A+A+2A)の値
が小さくなり得る。第1結着剤に対するアクリル系樹脂の割合が多くなる
ほど、又は、フッ素系樹脂の割合が少なくなるほど、活物質粒子への第1
結着剤の被覆率を高くできる傾向にある。そのため、A/(A+A
+2A)は0.95以下であることが好ましく、0.8以下であるこ
とが特に好ましい。
【0031】 0.01≦A/(A+A+2A)≦0.95を満た
すとき、第1結着剤に対するアクリル系樹脂の割合が5質量%以上70質
量%以下であるときの原子数比を満足し得るため、好ましい。第1結着剤
に対するアクリル系樹脂の割合が5質量%以上であると、活物質粒子への
第1結着剤の被覆率を高くできる。70質量%以下であると十分な疎水
性を担保でき、また電極の柔軟性を保つことができる。電極が柔軟であ
ると、充放電サイクルに伴う電極の膨張収縮に起因する電極の割れを抑
制できる。そのため、抵抗上昇の悪影響を抑制できる。第1結着剤に対
するアクリル系樹脂の割合は、15質量%以上45質量%以下の範囲内
であることがより好ましい。
0032】アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸
エステル及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1
種を含む重合体であり得る。アクリル酸エステル、メタアクリル酸エス
テル及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種は、
例えば、モノマーとして重合体に含まれ得る。重合体が含むモノマーの
種類は、1種又は2種以上にすることができる。重合体は、1種のモノ
マーからなるポリマーであってもよく、又は2種以上のモノマーを含む
コポリマー(共重合体)であってもよい。上記重合体の具体例には、アク
リル酸エステルポリマー、メタアクリル酸エステルポリマー及びアクリロ
ニトリルポリマー、およびこれらの共重合体を挙げることができる。アク
リル系樹脂の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0033】アクリル系樹脂は、上記のうち、特にメタアクリル酸エス
テルポリマーを含むことがフッ素系樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0034】フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定における、本実
施形態にかかる二次電池が備える電極の表面の赤外吸収スペクトルは、
1710cm-1以上1740cm-1以下の範囲内に吸収ピークを有し
得、かつ、1120cm-1以上1160cm-1の範囲内に吸収ピーク
を有し得る。
【0035】赤外吸収スペクトルにおける、1710cm-1以上174
0cm-1以下の範囲内の吸収ピークは、C=O結合に帰属される。11
20cm-1以上1160cm-1の範囲内の吸収ピークは、C-O結合
に帰属される。これらの結合は、カルボン酸エステルに帰属され得る。
カルボン酸エステルの例には、アクリル系樹脂が含まれる。アクリル系
樹脂を含む電極の表面の赤外吸収スペクトルは、上記のような吸収ピー
クを有し得る。
【0037】アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを含む重合
体を含む電極の表面の赤外吸収スペクトルは、例えば、A2900/A2000
≧2、A1725/A2000≧4及びA1145/A2000≧4を満たし得
る。ここで、Aλは、赤外吸収スペクトルにおいて、λcm-1における吸
光度(Absorbance)を指す。
【0038】本実施形態にかかる二次電池が備える電極の表面の赤外吸収
スペクトルは1800cm-1以上2500cm-1以下の範囲にわたっ
て吸光度が低くなり得るため、当該赤外吸収スペクトルにおいて、ピーク
は、例えば、以下のように定義できる。A2900/A2000≧2を満た
す赤外吸収スペクトルは、2800cm-1以上3000cm-1以下の
範囲内にピークを有するということができる。A1725/A2000
4を満たす赤外吸収スペクトルは、1710cm-1以上1740cm-1
以下の範囲内にピークを有するということができる。A1145/A2000
≧4を満たす赤外吸収スペクトルは、1120cm-1以上1160cm-1
以下の範囲内にピークを有するということができる。
【0042】第1結着剤に対するフッ素系樹脂の割合は、30質量%以
上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。30質量%以上であ
ると十分な疎水性を担保でき、また電極の柔軟性を保つことができるため、
抵抗上昇の悪影響を抑制できる。95質量%以下であると、活物質粒子へ
の第1結着剤の被覆率を高くできる。フッ素系樹脂の割合は、55質量%
以上85質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0044】本実施形態にかかる二次電池が備える電極の表面のX線光
電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy;XPS)スペクトルは、
292eV以上294eV以下の範囲内にピークを有し得る。この範囲内
に現れるピークは、C-F結合に帰属される吸収ピークである。C-F結
合は、フッ素系樹脂に帰属され得る。フッ素系樹脂を含む電極の表面の
XPSスペクトルは、上記のピークを有し得る。
【0045】  電極は、さらに被膜を含むことが好ましい。被膜の形態は
、特に制限されない。被膜は、電極の表面に形成されていてもよく、活
物質含有層の内部に形成されてもよい。これらの場合を総じて、電極が被
膜を含むという。被膜は、電極表面に露出し得る。電極表面は、活物質含
有層の主面のうち、集電体と接していない側の面を指す。被膜は、例えば、
活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1結着剤の外側に、形成さ
れ得る。被膜は、活物質粒子表面のうち、第1結着剤によって被覆されて
いない部分を被覆し得る。したがって、電極が第1結着剤に加えて被膜を
さらに含む場合、活物質と水系電解質との接触をさらに抑制できるため、
副反応を抑制できる。
0048】  シアネート類及び硫酸塩類は、水系電解質電池内において
安定に存在できる。また、リチウムイオン伝導性に優れる。そのため、副
反応抑制効果が高く、かつ、抵抗を低く保つことができる。
【0051】  金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、フッ化リチウム、酸化リチ
ウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛は、水素過電圧が高い。よって、上記のう
ち少なくとも1つの物質を含有する被膜を含む電極は、水の電気分解を抑
制できる。そのため、水素発生を抑制して負極におけるリチウムイオン
の吸蔵放出を円滑にできる。従って、二次電池のサイクル寿命性能を高
めることができる。金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、フッ化リチウム、酸
化リチウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より選択される少なく
とも1つを含む被膜は、正極及び負極のうち、負極に形成されていること
がより好ましい。
【0053】金属亜鉛を含有する被膜は、酸化亜鉛又は水酸化亜鉛を同時
に含有し得る。酸化亜鉛は、例えば、金属亜鉛の表面が酸化されることに
よって生じ得る。

  1)負極
  負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極
活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質
含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び負極結着剤とを含むことがで
きる。負極は、被膜をさらに含んでもよい。
【0068】負極活物質含有層は、先に説明した第1結着剤を負極結着剤
として含み得る。すなわち、負極は、先に説明した電極であり得る。負極
が先に説明した電極である場合、負極集電体、負極活物質含有層、負極
物質及び負極結着剤は、それぞれ、先に説明した集電体、活物質含有層、
活物質及び第1結着剤であり得る。
【0069】当該負極と組み合わせる正極が第1結着剤を含む場合、当該
負極は、第1結着剤を含まなくてもよい。
【0070】負極活物質の例には、例えば、ラムスデライト構造を有する
チタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37、0≦y≦3)、スピネル構
を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi512、0≦x≦3)
、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸
化チタン、五酸化ニオブ(Nb25)、ホランダイト型チタン複合酸化物、
直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタ
ン酸化物
が挙げられる。
【0071】上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+a
2-bTi6-cIId14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M
、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択
される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo
,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択
される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、
0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方
晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0
≦a≦6)が挙げられる
【0072】上記単斜晶型ニオブチタン酸化物の例として、LixTi1-y
M1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる
。ここで、M1は、
Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。
M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つで
ある。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<
2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン酸化物の具体例
として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる
【0073】  単斜晶型ニオブチタン酸化物の他の例として、LixTi1-y
M3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,
Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つで
ある。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<
2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0074】負極活物質は、例えば、粒子形状であり得る。負極活物質
は、一次粒子の形態であってもよく、一次粒子が凝集した二次粒子の形
態であってもよく、又は一次粒子と二次粒子が混合されていてもよい。
【0075】負極活物質粒子の平均粒子径は、5μm以下であると好ま
しい
。負極活物質粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5μm以下の範囲
内であると、より好ましい。平均粒子径が5μm以下である負極活物質
粒子を用いることで、リチウムイオンの固体内拡散抵抗を十分に下げる
ことができるため、出力性能を向上できる。負極活物質粒子の平均粒子
径が0.5μm未満であると、負極活物質粒子と水系電解質との接触によ
る副反応を抑制するために過剰量の樹脂を加える必要があり、抵抗上昇
の観点で不利である。
【0076】 導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と負極集電
体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長
カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブ
ラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカー
ボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤
として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用い
てもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、負極活物質粒子の表面に、
炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
0077】負極結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、
負極活物質と負極集電体を結着させるために配合される。
負極結着剤は、
先に説明した第1結着剤を含むことができる。負極結着剤は、第1結着
剤以外の他の結着剤を含んでもよい。負極結着剤は、先に説明した第1
結着剤のみからなってもよく、第1結着剤と他の結着剤との混合物であっ
てもよく、他の結着剤のみからなってもよい。他の結着剤として、前述
のフッ素系樹脂又はアクリル系樹脂を単独で用いてもよい。
【0079】負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び負極結着剤
配合割合は、適宜変更することができる。例えば負極活物質、導電剤
及び負極結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量
%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合す
ることが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極
活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、負極結着剤
の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体
との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導
電剤及び負極結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を
図る上で好ましい。

2)正極

 正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極
活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質
含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び正極結着剤とを含むことが
できる。正極は、被膜をさらに含んでもよい。
【0095】正極活物質含有層は、先に説明した第1結着剤を正極結着
剤として含み得る。すなわち、正極は、先に説明した電極であり得る。
正極が先に説明した電極である場合、正極集電体、正極活物質含有層、
正極活物質及び正極結着剤は、それぞれ、先に説明した集電体、活物質
含有層、活物質及び第1結着剤であり得る。
【0096】当該正極と組み合わせる負極が第1結着剤を含む場合、当該
正極は、第1結着剤を含まなくてもよい。
【0097】正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いるこ
とができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含ん
でいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよ
い。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させ
ることができる化合物を挙げることができる。
【0098】このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(Mn
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(
例えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル
複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合
酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複
合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチ
ウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦
1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合
酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリ
ビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x
≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4
0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2
5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi
1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)
が含まれる。
                          この項つづく

   懐かしい青春の音楽
       ふきのとう/小春日和 (1976年)





人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
----------------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第4回
アメリカでは「パテント・トロール」と言って、他人から特許を買い集
めて、その特許を侵害していると目をつけた相手から巨額の賠償金やラ
イセンス料を得ようとする人たちが問題になったがそれは生命科学の世
界では起こっていなのかと羽生が尋ね、あります。そういうことを得意
としている会社もあり、防衛的にパテントを出願せざるを得ないと答え
iPS細胞は基本的な技術。それをプラットフォームにして、いろいろなア
プリケーションを開発することが可能。だからiPS細胞そのものを開発し
た僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその
技術を使ってもらいたいと吐露する。実際、2017年、富士フィルムに細
胞の開発・製造の特許料を下げるよう要請している。企業は収益を上げ
る目的が優先されますから。新たに開発された薬や医療は異常に高額で、
中には患者さん1人に1億円かかるものもあり、世界的な脅威となると話
す。つまり、以前、マイクロソフトはどんどんOSを公開して、アップル
は閉鎖的でした。どちらがよかったのかはわからないが、基本的に基盤
部分はオープンにするのが世の流れになっている。生命科学の分野でも、
根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっ
ては非常に大切だと思いると。
                          この項つづく
 今日の言葉:

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

まずは1989年にベルリンの壁が崩れると、ソ連が解体して米ソ対決
型の冷戦の構図にピリオドが打たれ、「社会主義体制vs民主主義体制」
あるいは「社会主義体制vs自由主義諸国」という図式に、意味も力もな
くなってきた。それまでは共産主義・社会主義国のサイドからみれば、民
主主義体制は労働者の生活の立場を欠いた「ブルジョワ民主主義」という
もので、真の「民主集中」をはたしているのは社会主義国のほうだという
ことになっていた。
そのため米ソ対立時代では、自由主義諸国のなかですら、その民主主義
のシナリオは「反共の民主主義」というふうにも意図されていた。実際
にも、冷戦時代の民主主義陣営の多くは「反共の砦」だったのである。と
りわけケネディとフルシチョフが鎬を削ったキューバ危機のころが、その
頂点だった。ベトナム戦争の真の要因も、南ベトナムを「北」に対する「
「反共の砦」にするための無謀の戦争で、戦後日本もアメリカにとっては
「反共の砦」だったのである。

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ②
                          この項つづく

 

 

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エネルギーと環境 54

2024年11月17日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月18日】

          紅葉や小雨滴る追悼会 
                   高山 宇 (赤鬼)

※午前中、溝掃除。昨年の11月から今年10月に5名の方々が亡くなられた
 町内会の追悼会。温暖化で排出廃棄物が増えて短時間といえ重労働。




 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑨

最新電池電圧監視装置

1. 特開2023-151371 電池電圧監視装置 エイブリック株式会社
【要約】下図2のごとくm電池電圧監視装置は、クロック生成回路と、ソ
ース(以下S)とバックゲートとが接続されている第1N型トランジスタ(以
下Tr)、第2N型Tr、第1P型Tr及び第2P型Trを有し、第1N型
Tr及び第1P型Trの一方のドレイン(以下D)は他方のSと、一方のS
は信号入力部と、他方のDは信号出力部と接続され、第2N型Tr及び第
2P型Trの一方のDは他方のSと、一方のSは信号入力部と、他方のD
は信号出力部と接続されるスイッチ回路と、第1P型Trの第1制御信号
と第2P型Trの第2制御信号とを生成する第1生成回路と、第1N型Tr
の第3制御信号と、第2N型Trの第4制御信号とを生成する第2生成回
路とを備える、電池システムに内蔵できる電池電圧監視装置を提供する。


図2. 本実施形態に係る電池システムの第2ADCの一例を示す図
【符号の説明】【0083】1…電池システム、10-1、10-2…電
池セル、20…バスバー、30-1、30-2…電池電圧監視IC、32
-1、32-2…マルチプレクサ、34-1、34-2…第1ADC、36
-1、36-2…第2ADC、40-1…第1クロックブートストラップ
回路、40-2…第2クロックブートストラップ回路、40-11…第1
降圧回路、40-12…第1昇圧回路、40-21…第2降圧回路、40
-22…第2昇圧回路、41-1…第1スイッチ、41-2…第2スイッ
チ、41-11、41-21…第1MOSスイッチ、41-12、41-
22…第2MOSスイッチ、42…ノンオーバラップクロック生成回路、
42-1…クロック入力端子、42-21~42-28…クロック出力端

【背景技術】【0002】
電池システムは、電池セルを直列又は並列に接続した組電池が用いられる。
個々の電池セルの電圧は、夫々の電圧を測定する電池電圧監視IC
(Integrated  Circuit)などの電池電圧監視装置によっ
て監視されている。 また、組電池の個々の電池セルは、バスバーとバスバ
ーを接続しているネジで物理的に接続される。バスバーを接続しているネ
ジが緩んだ場合に、電圧異常や発熱といった不具合が発生することがある
ため、バスバーの両端の電圧を監視する回路を備えている
  電池システムにおいて、バスバーの両端の電圧を監視する技術が知られ
ている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、電池システムは、
バスバーの両端の電圧を監視する電圧検出ユニットを有する。電圧検出ユ
ニットの回路は、電池電圧監視ICおよび制御ICに含まれずに、ICの
外部にディスクリート部品として構成されている。

エイブリック、1セルバッテリー向け保護ICを発売
10月11日、エイブリックは、充電/放電過電流検出電圧精度が±0.5mVと
高い1セルバッテリー向け保護IC「S-82Y1Bシリーズ」の販売を始めた。
大容量化が進むバッテリーの急速充電を可能にし、応用機器の安全性も高
めることができるという(EE Times Japan)

大容量バッテリーの急速充電と安全性を両立
高機能スマートフォンなどでは、1回の充電で長時間使用を可能にするため、
大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する機種が増えてきた。また、急
速充電に対応するため充電電流を大きくしたい、という要求も高まってい
るという。
ところが、充電電流を大きくすると、電流検出抵抗の発熱が大
きくなってしまう。この対策として電流検出抵抗の抵抗値を下げる方法も
あるが、検出電流値のばらつきが大きくなって安全性の確保が難しくなる
可能性もある。これらの課題を解決するためエイブリックは、従来品(S-
82P1シリーズ)に比べ、充電/放電過電流検出電圧精度をさらに高めたS-
82Y1Bシリーズを開発した。


S-82Y1Bシリーズは、「放電過電流1」検出電圧が0.003~0.050V、充電
過電流検出電圧が-0.050~-0.003Vで、これらの精度はいずれも±0.5m
Vである。保護ICの精度を高めることで、過電流検出のばらつきを抑えな
がら、電流検出抵抗の低抵抗化を可能にした。これにより、充電電流の値
を大きくしても保護回路基板の発熱を抑えることができるという。放電過

電流保護は3段階で行える。放電過電流1の他、検出電圧が0.006~0.100V
±1.5mVの「放電過電流2」、同じく0.020~0.100V±3mVの「負荷短絡」
である。これによって、より安全な領域で異常電流を遮断することができ
る。なお、過充電検出電圧は3.50~4.80Vで、その精度も±15mVと高い。
最大定格は28V、動作時の消費電流は最大4.0μA、パワーダウン時の消費
電流は最大50nA、動作温度範囲は-40~85℃である。パッケージは、外
形寸法が1.6×1.8×0.4mmのHSNT-6または、1.57×1.8×0.5mmのSNT-6A
で供給するという。
----------------------------------------------------------------------------------


【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ④】

2. 特開2024-77350 炭素および水素の製造方法 三菱マテリアル株式
 会社他⓵
【要約】下図2のごとく、表面に炭素を付着させたマグネタイトを生成する
二酸化炭素分解工程と、炭素と、塩化鉄とを生成する炭素分離工程と、マ
グネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生成する水素製造工程と、前記
二酸化炭素分解工程で用いる前記還元剤を生成する還元剤再生工程とを有
し、前記水素製造工程は、3価の塩化鉄を電気分解によって還元して2価
の塩化鉄を生成する電解還元過程と、該電解還元過程で得られた2価の塩
化鉄と水とを反応させて、マグネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生
成する加水分解過程と、を有し、二酸化炭素と水から炭素と水素とを効率
的に生成し、還元剤を繰り返し生成、利用する。


図2. 実施形態の炭素および水素の製造方法を示すフローチャート
【符号の説明】  S1…二酸化炭素分解工程  S2…炭素分離工程
  S3…水素製造工程  S3-1…電解還元過程  S3-2…加水分解過程
  S4…還元剤再生工程
【背景技術】
【0002】 例えば、製鉄所、火力発電所、セメント工場、ゴミ焼却施設
などでは多量の二酸化炭素(CO)が排出されている。このため、地球
温暖化防止の観点から二酸化炭素を大気中に放出させずに回収することが
重要になっている。一方燃料電池自動車(FCV)や水素発電など水素需
要の増大に伴って、低コストで大量に供給が可能な水素が求められている。
【0003】  従来、二酸化炭素を分離回収する技術として、化学吸収法,
物理吸収法,膜分離法などが知られている。また、回収した二酸化炭素を
分解する技術として、半導体光触媒法、金属コロイド触媒,金属錯体,触
媒等を用いた光化学的還元法、電気化学的還元法、化学的固定変換反応、
例えば、塩基との反応,転移反応,脱水反応,付加反応などを用いる分解
方法などが知られている。しかしながら、これらの二酸化炭素の分解方法
は、何れも反応効率、コスト、消費エネルギーなどの面から実用的ではない
という課題があった。
【0004】 このため、例えば、特許文献1では、格子中に酸素欠陥部位
である空孔のあるマグネタイト、即ち酸素欠陥鉄酸化物を用いて二酸化炭
素を還元して炭素を生成し、炭素からメタンやメタノールを得る方法が開
示されている。こうした特許文献1の発明では、酸素欠陥鉄酸化物によっ
て二酸化炭素を分解(還元反応)し、酸化されて生じた鉄酸化物を水素で
還元して再び酸素欠陥鉄酸化物に戻すことによって、連続的かつ効率的に
二酸化炭素を分解可能なクローズドシステムを実現できるとされている。
【0005】 一方、高純度の水素を製造する方法として、例えば、特許文
献2では、塩化鉄と水とを410℃以上で反応させ、マグネタイト、塩化
水素、および水素を生成し、生成した水素を分離膜を用いて回収する方法
が開示されている。こうした特許文献2
(特開2001-233601)の発明では、
各種プラントから排出されるプロセス廃熱を有効利用し、水を原料として、
クリーンなエネルギー燃料である水素を、熱化学分解技術によって得るこ
とができるとされている。  しかしながら、特許文献1で開示された反応
条件では、酸素欠陥鉄酸化物の酸素欠陥度が小さく(酸素欠陥鉄酸化物を
Fe4-δで示した場合に、δは最大で0.16程度)、二酸化炭素の
分解能力が低いため、効率的に二酸化炭素を分解処理できないという課題
があった。また、特許文献1(特開平5-184912
)の方法で二酸化炭素を連続
して分解する場合、マグネタイトを酸素欠陥鉄酸化物に還元するための水
素を外部から供給する必要があり、水素供給に係るコストが大きいという
課題もあった。 更に、特許文献1では、高価なナノサイズのマグネタイト
を使用しているため、二酸化炭素の分解コストが高い。また、生成した炭
素は付加価値の高いナノ炭素ではないため(>1μm)、二酸化炭素分解
プラントの経済性が低いという課題がある。  特許文献2では、水素製造
応に関与する物質が多く(鉄化合物であるマグネタイト以外にマグネシウ
ム化合物もある)、反応機構が複雑である。また、反応に必要な温度が高
いため(~1000℃程度)、エネルギー消費量が多く、製造コストが高
くなるという課題がある。また、特許文献2では、エネルギーを多量に消
費する各種プラントから排出される排熱の有効利用だけに着目したもので
あり、こうしたプラントの多くから排熱と共に排出される二酸化炭素も有
効利用することが求められている。

【産業上の利用可能性】  本発明は、二酸化炭素および水を用いて、炭素
材料と水素とを低コストで効率的に生成することができる。例えば、製鉄
プラント、火力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設など、二酸
化炭素、および排熱を多く排出するプラント等に適用することで、二酸化
炭素の排出削減、水素の有効利用と、これに付随してナノサイズの炭素な
どの高付加価値の炭素材料の製造を行うことができる。したがって、産業
上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】二酸化炭素と還元剤とを反応させて、表面に炭素を付着させ
たマグネタイトを生成する二酸化炭素分解工程と、前記二酸化炭素分解工
程で得られた表面に炭素を付着させたマグネタイトと、塩酸、または塩化
水素ガスとを反応させて、炭素と、塩化鉄とを生成する炭素分離工程と、
前記炭素分離工程で得られた塩化鉄と、水とを反応させて、マグネタイト
と、水素と、塩化水素ガスとを生成する水素製造工程と、前記水素製造工
程で得られたマグネタイトおよび水素を互いに反応させて、前記二酸化炭
素分解工程で用いる前記還元剤を生成する還元剤再生工程と、を有し、前
記水素製造工程は、3価の塩化鉄を電気分解によって還元して2価の塩化
鉄を生成する電解還元過程と、該電解還元過程で得られた2価の塩化鉄と
水とを反応させて、マグネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生成する
加水分解過程と、を有し、前記還元剤は、マグネタイトの結晶構造を維持
したままマグネタイトを還元することで得られるFe4-δ(但し、δ
は1以上4未満)で表される酸素欠陥鉄酸化物、またはマグネタイトの結
晶構造を維持したままマグネタイトを完全に還元することで得られる酸素
完全欠陥鉄(δ=4)、またはヘマタイトや使用済みカイロを還元するこ
とで得られるマグネタイトの結晶構造を維持した酸素欠陥鉄酸化物、また
はヘマタイトや使用済みカイロを完全に還元することで得られるマグネタ
イトの結晶構造を維持した酸素完全欠陥鉄であることを特徴とする炭素お
よび水素の製造方法

【請求項2】前記電解還元過程は、3価の塩化鉄を含む陰極液を収容する

陰極槽と、電解質を含む陽極液を収容する陽極槽と、前記陰極槽および前
記陽極槽の間に形成され、イオンを透過させる隔壁と、前記陰極槽に設け
られる陰極電極と、前記陽極槽に設けられる陽極電極と、を有する電解装
置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素および水素の製造
方法

【請求項3】前記陰極液のpHを0.5以下に保つことを特徴とする請求
項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項4】前記陽極液は、希硫酸を含むことを特徴とする請求項2に記
載の炭素および水素の製造方法
【請求項5】前記陰極液は、3価の塩化鉄が溶解された塩酸水溶液を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項6】前記陰極電極は、炭素電極、または白金電極であることを特
徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項7】前記陽極電極は、炭素電極、または白金電極であることを特
徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項8】前記隔壁は、陽イオン交換膜、またはガラスフィルターであ
ることを特徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項9】前記陰極槽は、不活性ガス雰囲気中に設けられることを特徴
とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項10】前記炭素は、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素であ
ることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素および水素の製造方法
※本件案の実用・事業化のイメージを掴むにはもう少し時間が必要。次回
 も考察を継続する。


【ペロブスカイト太陽電池事業化:耐水・耐久化技術】
3. 特開2024-155818 シート体 恵和株式会社
【要約】下図1のごとく、構造物に貼付されて前記構造物の補強又は修復
に用いられるシート体であって、前記構造物に貼付される前の状態におい
て、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり且つ
引張弾性域最大試験力の100%未満の値である粘着力を有す1.


図1. 単一の粘着層と単一の耐候層を備える第2実施形態のシート体を模
式的に示す断面構成図
【符号の説明】  10    シート体  11    粘着層  12    基材層  13    耐
候層  15    補強材料  16    剥離シート  17    押付治具  18    固定部
19    試料  21    構造物  30    屋根  31    ブルーシート  32    土嚢

【発明の効果】前記各態様によれば、構造物に対する優れた粘着性を有し
つつも、施工現場におけるシート体の取扱性を改善できる。具体的には、
シート体を構造物に一旦貼付した後にこれを剥がしても、シート体が破損
することなく(粘着性や耐候性の性能を維持したまま)、再度貼り直せる。
即ち、前記各態様は、シート体を構造物に優れた粘着力で施工可能にしつ
つ、必要に応じてシート体を再度貼り直し可能にするという、ともすれば
相反する効果であって、従来には得ることが困難であった諸効果を同時に
得られるようにしたものである。従って、前記各態様のシート体によれば、
構造物の対象領域にシート体を確実に貼付できると共に、施工現場での貼
付作業の際の取扱性や作業性を改善できる。更に、一旦剥がしたシート体
を再利用できるので、廃棄物削減、ひいては環境保護の効果も奏される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】構造物に貼付されて前記構造物の補強又は修復に用いられる
シート体であって、前記構造物に貼付される前の状態において、180°ピ
ール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり且つ引張弾性域最
大試験力の100%未満の値である粘着力を有する、シート体。
【請求項2】耐候負荷試験後において、180°ピール強度の測定値が1.
5N/25mm以上の値である粘着力を更に有する、請求項1に記載のシ
ート体。
【請求項3】耐候負荷試験後の防水性試験における漏水が無い防水性を更
に有する、請求項1に記載のシート体。
【請求項4】下記項目(1)、(2)、(3)、及び(4)記載の操作を
順次行う変形試験を実施した場合に、下記(4)の計算で算出されるエネ
ルギーが2.0mJ以上の値である、請求項1記載のシート体。
(1)  短辺が50mm及び長辺が100mmの矩形状の前記シート体を
試料として準備する。
(2)  前記試料を同一面の一対の短辺同士を重ねるように湾曲させ、前
記一対の短辺の縁端から前記長辺に沿って15mm離れた位置までの前記
試料の一対の領域を固定部で把持して固定することにより、前記試料の前
記一対の領域の間に周長が70mmの湾曲部を形成する。
(3)  前記試料の前記一対の領域の表面を鉛直方向と平行に配置し且つ
前記湾曲部を上方に向けた状態で、押付面が直径100mmで厚み10m
mの円盤形状の押付治具を用い、温度23±2℃、湿度50±10%RHの
環境下で、前記湾曲部に前記押付治具を上方から接触させ、前記押付治具
を試験速度30mm/minで20mm下方に移動させる。
(4)  前記押付治具を前記移動させる際に必要なエネルギーを計算する。
【請求項5】前記構造物に貼付される粘着層と、前記粘着層の上方に配置
された少なくとも1つの耐候層と、を備える、請求項1~4のいずれか1
項に記載のシート体。
【請求項6】前記粘着層と、前記耐候層との間に配置された基材層を更に
備える、請求項5に記載のシート体。
【請求項7】前記基材層は、補強材料を含む、請求項6に記載のシート体。
【請求項8】前記粘着層及び前記耐候層の少なくともいずれかは、フィラ
ーを含む、請求項6に記載のシート体。
【請求項9】前記粘着層の前記耐候層側とは反対側の面に配置された剥離
シートを備える、請求項5に記載のシート体。
【請求項10】単一層により構成され、前記構造物とは反対側に位置する
第1面側よりも、前記構造物に貼付される貼付面である第2面側に偏在す
る粘着成分を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート体。
【請求項11】ゴムを含有し、前記第1面側と前記第2面側とで架橋度が
異なるゴムの架橋構造を有する、請求項10に記載のシート体。
【請求項12】アクリル樹脂と、エポキシ樹脂と、を含み、前記アクリル
樹脂と前記エポキシ樹脂とによる相分離構造を有する、請求項10に記載
のシート体。
【詳細説明】※関連情報部のみ記載
【0196】太陽電池ユニット33の構造は限定されず、公知のものであ
ってもよい。例えば、薄型又は軽量のものが好ましい。また太陽電池の種
類も限定されない。太陽電池の種類としては、アモルファスシリコン太陽
電池、結晶シリコン太陽電池、カドミウムテルル太陽電池、銅インジウム
ガリウムセレン太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池
ガリウムアルセニド太陽電池等を例示できる。また例えば、柔軟性を有す
るアモルファスシリコン太陽電池、カドミウムテルル太陽電池、銅インジ
ウムガリウムセレン太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電
は、本開示のシート体10との組合せとして適している。

【0197】このように図21及び図22には、構造物21に貼付されて
構造物21の補強又は修復に用いられるシート体10と、シート体10に
直接又は間接的に取り付けられた太陽電池ユニット33と、を備えるシー
ト体付太陽電池ユニット40が示されている。当該シート体付太陽電池ユ
ニット40が備えるシート体10は、構造物21に貼付される前の状態に
おいて、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり
且つ引張弾性域最大試験力が100%以下の値である粘着力を有する。本
実施形態においても、本開示のシート体10の有する諸効果が奏される。

【0198】また通常、太陽電池ユニットは、発電に適した位置や角度を
調整された状態で、屋根や架台等の構造物に対し、接着剤を用いた接着や、
締結部材を用いた締結等の様々な方法により固定される。この固定を確実
に行うため、太陽電池ユニットは、構造物に対して様々な方法で固定され
る。太陽電池ユニットの固定方法や施工現場の状況等によっては、太陽電
池ユニットの取扱性が優れず、作業者の作業負担が増大する。また、太陽
電池ユニットを取り外す必要が生じた場合、構造物から太陽電池ユニット
を容易に取り外せないため、取り外しの作業負担が増大する。また、構造
物の劣化に伴い、太陽電池ユニットの劣化も招き易くなる。

【0199】これに対して本実施形態では、例えば、太陽電池ユニット3
3を予めシート体10に取り付けておけば、シート体10を構造物に貼付
する際、シート体10と共に太陽電池ユニット33を構造物21に適切に
固定できる。また、シート体10は貼り直しが可能であるため、シート体
10と共に太陽電池ユニット33を構造物21から過度の負担なく取り外
すことができる。その結果、簡便な施工により作業者の作業負担を軽減し
つつ、太陽電池ユニット33を構造物21に確実に取り付けることができ
ると共に、太陽電池ユニット33を構造物21から取り外す際は、シート
体10と共に太陽電池ユニット33を容易に取り外すことができる。

【0200】ここで例えば、ペロブスカイト太陽電池や銅インジウムガリ
ウムセレン太陽電池は、他のものに比べて、高い耐久性が求められている
このように高い耐久性が求められる太陽電池を含む太陽電池ユニット33
に本開示のシート体10を適用すれば、シート体10により、構造物21
に太陽電池ユニット33が確実に固定される。また、構造物21の劣化に
伴う太陽電池ユニット33の劣化が生じ難くなるため、太陽電池ユニット
33の高い耐久性が得られ易くなる。また、太陽電池ユニット33におい
て、高い変換効率で安定した発電を行うことができる。

図21                     図22

【0201】また図21及び図22に示すように、シート体10が貼付さ
れる構造物21の表面の形状が、凹凸や欠陥による高低差により平坦でな
い場合でも、シート体10を当該表面に良好に追従させて貼付できる。こ
のため、シート体10を好適に適用できる。しかしながら、これに限らず、
シート体10が貼付される構造物21の表面の形状が平坦である場合でも、
シート体10を適用することにより、太陽電池ユニット33の高い耐久性
が得られ易くなると共に、太陽電池ユニット33において高い変換効率で
安定した発電を行えるため好ましい。

【0202】また本実施形態のシート体10は、構造物21に貼り付けら
れる前の状態において、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm
以上の値であり且つ引張弾性域最大試験力の100%未満の値である粘着
力を有しており、優れた耐候性を発揮できる。よって長期間にわたり、構
造物21をシート体10により保護しつつ、太陽電池ユニット33を構造
物21に固定できる。従って、構造物21の劣化に伴う太陽電池ユニット
33の劣化を抑制しつつ、安定して太陽電池ユニット33を使用できる。

【0203】また本実施形態のシート体10は、構造物21に貼り付けら
れる前の状態において、耐候負荷試験後の防水性試験における漏水が無い
防水性を有するため、長期間にわたり、構造物21を漏水による劣化から
保護しつつ、太陽電池ユニット33を構造物21に固定できる。従って、
構造物21の劣化に伴う太陽電池ユニット33の劣化を抑制しつつ、安定
して太陽電池ユニット33を使用できる。

【0204】また本実施形態のシート体10は、前記(1)、(2)、
(3)、及び(4)記載の操作を順次行う変形試験を実施した場合に、前
記(4)の計算で算出されるエネルギーが2.0mJ以上の値である。こ
のためシート体10は、適度な剛性を有する。従って、作業者が太陽電池
ユニット33を構造物21に敷設する際の取扱性を向上し易くできる

【0205】また、太陽電池ユニット33が取り付けられた複数のシート
体10が構造物21の表面に貼付される場合、シート体10の間に隙間が
生じて構造物21の表面が外部に露出しても、当該隙間に対応する構造物
21の表面に本開示のシート体10を別途貼付することで、構造物21の
表面を簡便に覆うことができる。この場合、例えば、当該隙間の形状に合
わせて例えば長尺形状(一例として短冊状)のシート体10を利用できる。

【0206】更に、シート体10は、ロール状に巻き取りが可能な程度の
柔軟性を有するため、当該シート体10に所定のフレキシブル性を有する
太陽電池ユニット33が取り付けられた場合、シート付太陽電池ユニット
40の全体においてもフレキシブル性が確保される。従って、種々の構造
物21に対し、シート付太陽電池ユニット40を簡便に施工して配置でき
る。また、シート付太陽電池ユニット40をロール状に巻回した状態で管
理することも可能となる。また例えば、シート付太陽電池ユニット40を
ロール状に巻回した状態で施工現場に搬入し、比較的広い施工対象面に対
して簡便に施工することもができる。

【0207】このように、本開示の太陽電池ユニット33が設けられたシ
ート体10は、屋外の建築の構造物21、土地の上に設けられた構造物21
とされる架台、或いは、建材と一体として設けられる構造物21とされる
窓等、様々な構造物21に好適に貼り合わせることが可能である。

【0208】(シート体の構造物への施工)
  以下、本開示のシート体の構造物21への施工について説明する。本開
示のシート体10は、優れた粘着力を有する。このため、構造物21の屋
根等の表面に貼付される際、段差のある構造物21の表面にも隙間無くシ
ート体10を貼付できる。シート体10を貼付することで、外部から構造
物21への水の侵入の防止、及び、錆びの原因となる塩水、酸素等の劣化
因子の侵入の防止を数十年単位で維持できる。このため、構造物21の劣
化を適切に抑制できる。またシート体10は、構造物21の表面に貼付す
るだけで施工が可能である。従って、作業者の技術に依らずに施工でき、
工期の短縮と労務費の削減を実現できる。

【0209】本開示のシート体を施工する場合、構造物21の表面には、
予め、硬化性樹脂材料を含有するプライマー層が形成されていてもよい。
プライマー層に求められる物性としては、例えば、貼付される構造物保護
シートに対する優れた初期接着性、長期保存が可能な長期接着性、劣化し
た構造物表面の塗膜をしっかりと固着させて再貼付時において劣化構造物
から有害物質の飛散を防止できる目止め性、短時間で硬化する硬化性、一
定時間の流動性を確保できるポットライフ、及び、作業現場での厳密な配
合作業が不要な塗料作業性等を例示
できる。

【0210】 プライマー層の材料は、前記プライマー層に求められる物性
が得られるものであれば特に限定されない。例えば、湿気硬化、熱硬化、
光硬化その他の方法で硬化して樹脂が形成される性質を有する材料であれ
ば特に制限はない。このような材料としては、アクリル、ポリエステル、
ウレタン、エポキシ、シリコーン等の樹脂を例示できる。例えば、主鎖に
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体と、エポキ
シ化合物及びアミノシラン化合物を含む原料化合物の反応生成物を含有す
るものが好ましい

【0211】プライマー層は、一般的には構造物21の下塗材として使用
される。本開示において、プライマーは、構造物21の表面に塗布すれば
よい。下塗材は、通常の方法で施工できる。例えば、構造物21の表面に、
刷毛又はローラー等により塗布したり、又は、スプレーガン等で吹き付け
たりする一般的な方法により塗料を塗布し、塗膜を形成させることで、下
塗材であるプライマー層が得られる。

【0212】 プライマー層の厚みは、特に限定されない。プライマー層の
厚みは、例えば、ウェットの状態で20g/m以上の値である。プライマ
ー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で、30g/m以上の値が好ま
しく、50g/m以上の値がより好ましく、100g/m以上の値が
更に好ましく、200g/m以上の値が特に好ましい。

【0213】  他方、プライマー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で
800g/m以下の値である。プライマー層の厚みは、例えば、ウェッ
トの状態で、700g/m以下の値が好ましく、600g/m以下の
値がより好ましく、500g/m以下の値が更に好ましい。また特に、
プライマー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で400g/m以下の
値であれば、様々な状態での構築物表面へのシート体10の粘着力を安定
化できるため好ましい。ここで言う「ウェットの状態」とは、塗工液が乾
燥する前の状態を指し、ウェットの状態について示した上記数値は、塗工
重量を指す。
※実施例は、表1~3、図21~23を転載し、他は割愛する。



 

 懐かしの歌謡音楽 
フォー・セインツ 小さな日記・希望』 

   
                                  
今日の言葉:季節は世界動乱時代に突入?!
         昨夜、ホロコーストの世界歴史を「ユーチューブ」で閲覧。
         気候変動に起因する動乱も加わる(温暖化による男性に
         よる女性の暴力が増える研究報告を前回紹介)。

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エネルギーと環境53

2024年11月16日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月16日】

         初しぐれも小蓑(こみの)をほしげ也
                    松尾芭蕉 



⬛ 中国「新エネルギー車」1000万台突破

中国でEV=電気自動車など「新エネルギー車」の年間生産台数が初めて
1000万台を突破(NHK 2024.11.14)
一方、中国製EVに対して欧米では、過剰生産によって不当に安く輸出され
ているなどとして、関税を引き上げる動きが出ている。この中で、中国政
府の幹部は「新エネルギー車の年間生産量が1000万台を突破した世界で最
初の国となった」と述べ、技術の進歩と市場規模の拡大を強調(国営の中
国中央テレビ)。

※安全で持続可能・高品質で廉価であれば大歓迎だ。日本は、「関連リサ
イクル法」を完備し、これらの輸入を促進すべき(原則)である。


近赤外光吸収と光熱変換に優れた化合物合成
がん治療法の一つである光温熱治療法では,光を吸収して熱に変換できる
物質を腫瘍内に集積させたのち,外部から光を照射することで局所的に熱
を発生させ,その熱によってがん細胞を死滅させることができる。この技
術により,低侵襲で副作用の少ないがん治療の実現が期待されている。



 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察 ⓼ 

 3.特開2024-150335 リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電
  池の製造方法 株式会社カネカ
【要約】下図2のごとく、正極及び負極10、11は、被覆活物質粒子130
を含む、活物質層が形成された集電体20、120を、活物質層付き集電体
として含み、前記被覆活物質粒子は、Liイオンを含む被膜35で、活物質
粒子30が、被覆されてなり、前記正極の前記被膜である正極被膜の前記Li
イオンの平均濃度である正極被膜Liイオン平均濃度が、前記負極の前記被
膜である負極被膜の前記Liイオンの平均濃度である負極被膜Liイオン平
均濃度と、異なる、リチウムイオン二次電池とすることで、電解媒体分解に
よるガスの発生の抑制ができ、かつ、特性に優れたリチウムイオン二次電池
及びその製造方法を提供する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【0051】  シェル膜41は、これらの中でも、マンガン(Mn)元素を含む
リン酸イオン含有リチウム化合物膜であり、前記「強固結晶少酸素放出ポリ
アニオン」との特徴具備のLMPであることがより好ましい。
【0052】  そして、シェル膜41は、「LMP高抵抗」「移動電荷トラ
ップ」及び「電荷移動ポテンシャル障壁上昇」「界面ミスマッチ」の悪影響
を抑制しつつ「強固結晶少酸素放出ポリアニオン」の効果及び「挿入破壊防
止」層としての効果を十分に発揮せしめる観点から、好ましくは、その両面
で当該金属の成分及び/又は組成が異なり、活物質粒子30の中心から外側
に向かい、LFP/LMP2層構造のシェル膜41とすることが好ましく、
より好ましくは、構成遷移金属を、FeからMnに緩やかに変化させたシェ
ル膜41とすることであり、さらに好ましくは、後述する緩衝部42を含め
「Li系ポリアニオン」の金属成分の組成及び/又は比率を変化させること
である。
【0053】シェル膜41の厚みは、リチウムイオン伝導性酸化物の粒径よ
りも薄く、5nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上15
nm以下であることがより好ましい。
【0054】この範囲であれば、シェル膜41での抵抗損失を抑制しつつ、
ガスの発生量を抑制できる。
【0055】シェル膜41は、正極活物質粒子40の表面の少なくとも一部
を覆っており、95%以上を覆っていることがより好ましく、完全に覆って
いることが好ましい。
【0056】シェル膜41は、後述する緩衝部42のSEI構造に消費され
た正極活物質粒子40のLiイオンを補充する「消費Li補充」観点から、
非晶質であることが好ましい。
(緩衝部42)緩衝部42は、リチウム元素を含み、さらに珪素元素を含む
珪素含有化合物膜である。
【0057】緩衝部42は、コアシェル粒子36と界面用電解液との間での
電気化学反応で生じる固体電解質界面(以下、SEIともいう)構造を有す
るものであり、好ましくは、珪素元素を含んだシロキサン改質被覆層である。
【0058】緩衝部42は、リチウムイオンのみを通過させ電子を通過させ
ない選択的透過膜であり、電解媒体6中でLiイオンとともに移動する分子
量の大きい有機溶媒分子等がコアシェル粒子36に、特に活物質粒子30の
Liイオン挿入脱離可能部位に、挿入され、その構造が破壊されることを防
止する「挿入破壊防止」層である。
【0059】緩衝部42は、コアシェル粒子36との界面近傍の表面、特に
浸透性細孔ネットワーク81との接触部においてSEI構造と一体不可分な
改質領域を含んでいることが好ましい。
【0060】緩衝部42は、リチウム元素と珪素元素に加えて、金属酸化物
及び/又は金属リン酸化物を含んでいてもよい。
【0061】そして、シェル膜41/緩衝部42の多層膜は、好ましくは、
その両面で当該金属の成分及び/又は組成が異なると共に、そのリン酸イオ
ンの濃度が異なることが、Li系ポリアニオン被覆による高抵抗化の悪影響
を抑制しつつ「強固結晶少酸素放出ポリアニオン」及び「消費Li補充」の
効果を十分に発揮せしめる観点から好ましく、活物質粒子30の中心から外
側に向かい、リン酸イオンの濃度を低下させ、酸化物の濃度を上昇させるこ
とが好ましく、シェル膜41がLMPを含む場合は、「移動電荷トラップ」
「電荷移動ポテンシャル障壁上昇」を抑制するために、より好ましく、「界
面ミスマッチ」を抑制するためには、徐々にこれら組成及び/又は濃度を変
化させることが好ましい。
【0062】緩衝部42は、コアシェル粒子36の表面の少なくとも一部を
覆っており、95%以上を覆っていることがより好ましく、完全に覆ってい
ることが好ましい。
バインダー70
  バインダー70は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール
(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(P
AN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイミド、及びそれらの誘導
体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0063】 バインダー70は、分散剤、増粘剤、バインダー材料に溶解す
る導電補助剤が含まれていてもよい。
【0064】バインダー70の量は、コアシェル粒子36を100重量部に
対して、1重量部以上30重量部以下であることが好ましく、活物質粒子3
0や前記コアシェル粒子130を一体の層として支持可能な強度を活物質層
2に付与でき、また、安定的に低抵抗導電ネットワーク80を構成でき、さ
らに、集電体20、120との接着強度を十分なものとすることができる。
【0065】この範囲であれば、コアシェル粒子36が十分な接着強度で接
着された正極活物質層21を形成でき、また、安定的に低抵抗な導電ネット
ワーク80を構成できる。さらに、集電体20に対しても十分な接着強度を
得ることができる。
導電ネットワーク80
  導電ネットワーク80は、導電性材料で構成されるものであり、導電性炭
素材料で構成されていることが好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭
素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、
及びファーネスブラックから選ばれる少なくとも1種であることがより好ま
しい。
【0066】導電ネットワーク80の量は、コアシェル粒子36を100重
量部に対して、1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。
【0067】この範囲であれば、正極部10の導電性を確保しつつ、バイン
ダー70との接着性が維持できる。また、集電体20との接着性を十分に得
つつ、当該集電体20との導電性を十分なものにできる。
【0068】導電ネットワーク80は、少なくとも一部がコアシェル粒子36
に接触しており、コアシェル粒子36との接触部分から外側に向かって延び
ている。
(海状部60)
  海状部60は、図2(a)の拡大図のように、被覆活物質粒子30と、バ
インダー70と、導電ネットワーク80で構成されている。
【0069】海状部60は、隣接する被覆活物質粒子30,30同士の導電
経路よりも長く、鎖のような導電ネットワーク80が主骨格となっており、
この導電ネットワーク80に複数の被覆活物質粒子30が接触している状態
を、バインダー70が支持している。
【0070】活物質層2における電位均一化は、被覆活物質粒子130同士
の導電経路よりも、主に導電助剤により構成される長い鎖の如き導電ネット
ワーク80が担っているものと推察される。
【0071】  このような導電ネットワーク80に複数の被覆活物質粒子30
が接触している状態をバインダー70が支持する構造が形成される理由は、
後述する製法で作製すると、ペースト塗布工程で形成されるスラリーにおい
て、導電性材料、バインダー、及び溶媒を含めた疎水性媒体に親水性表面の
被覆活物質粒子30が並んでいる状態から、溶媒を乾燥除去することにより、
バインダー70が支持した状態になると考えられる。
島状部61
  島状部61は、図2(a)のように、浸透性細孔ネットワーク81で構成
されている。
【0072】浸透性細孔ネットワーク81は、複数の細孔を有しており、こ
れらの細孔が互いに連通することで、電解媒体6が浸透可能となっている。
【0073】浸透性細孔ネットワーク81は、細孔の一部がコアシェル粒子
36に至って接触していることが好ましい。
【0074】浸透性細孔ネットワーク81は、少なくとも当該接触部分に、
SEI構造を有する非液体状のリチウムイオン伝導体が配されている。
【0075】当該リチウムイオン伝導体は、Mn、Fe、Al、Siから選
ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましい。
【0076】別の観点からみると、浸透性細孔ネットワーク81は、被覆活
物質粒子30と、バインダー70と、導電ネットワーク80のそれぞれの輪
郭によって構成された空洞であり、正極集電体20側(内側)から外側に向
かって三次元的に連続している。
【0077】 正極活物質粒子40又はシェル膜41の表面において、当該表
面の面積に対する細孔の面積の合計面積の比率は、0.1%以上30%以下
であることが好ましく、1%以上10%以下であることがより好ましい。
【0078】浸透性細孔ネットワーク81は、正極活物質粒子40又はシェ
ル膜41に接触しており、なくともLIB1の充放電時には、電解媒体6の
一部が浸透しており、そして、浸透性細孔ネットワーク81の当該接触部分
にはSEI構造含有非液体Liイオン伝導体が形成されていることが好まし
く、このようなSEI構造含有非液体Liイオン伝導体は、Mn、Si、Fe、
及びAlからなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましく、
より好ましくは、Mn及びSiを含む。
【0079】
  <導電材料>
 本発明に係る導電ネットワーク80を構成する導電材料としては、導電性炭
素材料が好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノ
チューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラ
ックから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】活物質層2に含まれる当該導電材料の量は、(被覆)活物質粒子
30、130、被覆活物質前躯体粒子36の100重量部に対し1重量部以
上30重量部以下であることが好ましく、正極部10、負極部11の導電性
を確保しつつ、好ましくは、本発明に係る導電ネットワーク80の導電性を
十分に確保し、バインダー70との接着性が維持され、集電体20、120
との接着性を十分に得つつ、当該集電体20、120との導電性を十分なも
のとすることができる。
<電解媒体6>
  電解媒体6は、電解液又は固体電解質であり、本実施形態では非水電解液
である。
【0081】電解媒体6は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解さ
せた非水電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を高分子に含浸さ
せたゲル電解質などを用いることができる。
【0082】電解媒体6は、特に限定されないが、非水電解液、ポリマー電
解質、又は固体電解質であり、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液、非
水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を高分子に含浸させたポリマー電解質
であることが、本発明の効果を効果的に奏さしめる観点から好ましく、より
好ましくは非水電解液である。
【0083】
  (電解媒体6
  電解媒体6は、あらかじめ正極部10及び負極部11と、そして、好ましく
は電解媒体6中に存在するセパレータ12と、に含ませてもよいし、正極部
10側と負極部11側との間にセパレータ12を配置したものを倦回、ある
いは積層した後に添加してもよい。
【0084】非水電解液は、非水溶媒に、Li塩を溶かした液体であり、必
要に応じて、後述する各種添加剤が添加され、それ以外にも、充放電サイク
ル特性の改善、高温貯蔵性、安全性の向上等の目的で、その他の添加剤を添
加できる。
【0085】ポリマー電解質用の高分子としては、PEG、PEO、PAn、
PVDF、フッ素系重合体、これに(メタ)アクリル重合体をグラフトした
高分子等があげられ、重量平均分子量としては、5000~20000とい
った値のものが用いられる。
【0086】固体電解質としては、高いイオン伝導性を有する限り利用する
ことができ、Liを含むセラミック電解質が好ましく、例えば、Li10Ge
S1、LiS1、70LiS-30P、La0.1Li
0.34TiO2.94、Li1.1Al0.7Ti1.5(PO等が挙げ
られ、好ましい導電率は、1×10-4S/cm以上であり、より好ましくは、
1×10-3S/cm以上であり、好ましい厚みは、5μm以上200μm以下
で、5μm未満では固体電解質層の機械的強度が不足し短絡し易くなり、10
μm以上100μm以下がより好ましい。
【0087】
  <非水溶媒>
  非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン
性溶媒を含むことが好ましい。
【0088】環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エ
ステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示され、高品質SEI形成
の観点からは、不飽和結合を含んだり、ハロゲン原子を含んだりする環状カ
ーボネート系化合物を用いてもよい。
【0089】 鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カ
ルボン酸エステル、鎖状エーテル、及びアセトニトリルなどの一般的に非水
電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いてもよく、高品質SEI形成の観
点からは、不飽和結合を含んだり、ハロゲン原子を含んだりする鎖状カーボ
ネート系化合物を用いてもよい。
【0090】より具体的には、非プロトン性溶媒としては、ジメチルカーボ
ネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカ
ーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピ
レンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブ
チルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プ
ロピオン酸メチルなどを用いることができる。
【0091】これら溶媒は、1種類で用いてもよいし、2種類以上混合して
用いてもよいが、後述の溶質の溶解させやすさ、Liイオンの伝導性の高さ
から、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0092】非プロトン性溶媒として2種類以上混合する場合、高温時の安
定性が高く、且つ低温時のLi伝導性が高いことから、ジメチルカーボネー
ト、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボ
ネート、及びメチルプロピルカーボネートに例示される鎖状カーボネートの
うち1種類以上と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチ
レンカーボネート、及びγ-ブチルラクトンに例示される環状化合物のうち1
種類以上との混合が好ましい。
【0093】ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジエ
チルカーボネートに例示される鎖状カーボネートのうち1種類以上と、エチ
レンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートに例示
される環状カーボネートのうち1種類以上との混合が特に好ましい。
【0094】
  <溶質>
  溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO、LiBF、LiP
、LiAsF、LiCFSO、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato)
Borate)、LiN(SOCFなどは溶媒に溶解しやすいことから好ましい。
【0095】(非水電解液6の添加剤)
  非水電解液6の添加剤としては、電極保護剤、ガス発生抑制剤、SEI形
成剤、SEI形成促進剤、SEI特性向上剤、安定剤、金属溶出抑制剤、難
燃剤等が挙げられる。
【0096】(珪素含有化合物)
前記珪素含有化合物としては、例えば、一つ以上の不飽和基を含むシロキサ
ン系化合物、シラザン系化合物、シリルアミド系化合物等があるが、好まし
い珪素含有化合物としては、2,4,6,8-テトラビニル-2,4,6,
8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(4VC4S)等のビニル基を有
する環状シロキサンを挙げることができる。
【0097】一つ以上の不飽和基を含むシロキサン系化合物は、—Si—
O—Si—結合(シロキサン結合)、及び炭素—炭素二重結合を少なくとも
一つ以上含んでおり、シロキサン結合部位はLiイオンを伝導可能と、また、
この二重結合は架橋結合によりSEI構造の形成に寄与可能と、考えられる。

セパレータ12
  セパレータ12は、図1のように、正極部10と負極部11との間に設置
され、絶縁性かつ電解媒体6を含むことができる構造となっている。
【0098】セパレータ12は、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスル
ホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、
ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらを2種
類以上複合したものの織布、不織布、微多孔膜などが挙げられる。
【0099】セパレータ12には、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤が含ま
れてもよいし、金属酸化物等が被覆されていてもよい。
【0100】
  (正極用取出部材13、負極用取出部材14
  取出部材13、14は、一又は複数の正極部10、一又は複数の負極部11
と接続され、外部負荷に対して接続可能な端子であり、外装体3の内外に亘
って設けられるものである。
【0101】
  (Liイオン二次電池1の製造方法
  続いて、本実施形態のLiイオン二次電池1の製造方法について説明する。
【0102】 (全固体LLIBの製法
  全固体LIBの製法としては、固体電解質スラリーを、用意した正極部10
および負極部11の両面にドクターブレード法を用いて塗布し、溶媒を揮発
させて固体電解質層を形成した後、該固体電解質層を介して正極部10と負
極部11とを、好ましくは交互に、積層した電極積層体5を加熱乾燥(例え
ば、大気中、150℃)した後、プレス機により圧縮成形することで全固体
LIBの基本構成が完成する。
【0103】
  (非水電解液LIB
  非水電解液LIBの製法である、本実施形態のLiイオン二次電池1の製
造方法は、主に、被覆活物質形成工程と、ペースト塗布集電体焼成工程と、
電極積層体形成工程と、電池組立体作成工程と、界面用電解液注入工程と、
電圧印加工程と、電解媒体注入工程と、エージング工程で構成されている。
被覆活物質形成工程
  被覆活物質形成工程は、被覆活物質粒子30,130を形成する工程であ
る。
【0104】被覆活物質形成工程は、主に、活物質粒子準備工程と、シェル
膜形成工程と、ペースト塗布工程で構成されている。
活物質粒子準備工程
  活物質粒子準備工程では、活物質粒子40,140を準備する工程である。
シェル膜形成工程
  シェル膜形成工程は、活物質粒子40,140の表面にリン酸イオン含有
Li化合物膜であるシェル膜41を形成する工程である。
【0105】具体的には、シェル膜形成工程は、まずボールミル等の粉砕装
置によって、リン酸イオン含有Li化合物を粉砕し、リン酸イオン含有Li
化合物粒子を形成する(粉砕工程)。
【0106】  続いて、粉砕工程で粉砕し、微粒子化したリン酸イオン含有
Li化合物粒子を分散溶媒に分散させ、微粒子流動体を形成する(微粒子流
動体形成工程)。
【0107】このときに使用される分散溶媒は、一又は複数のアルコール溶
液であることが好ましく、揮発性や安全性の点からエタノールであることが
より好ましい。
【0108】このときに形成される微粒子流動体は、透明であってゾル状態
の透明ゾルであり、流動性を有している。
【0109】続いて、せん断力、圧縮力、衝突力、及び遠心力の少なくとも
1種のエネルギーを正極活物質粒子30及び/又はシェル膜41を構成する
リン酸イオン含有Li化合物粒子に付与しつつ、活物質粒子30と微粒子流
動体内のリン酸イオン含有Li化合物粒子を機械的に接触させるメカニカル
コーティング法によって、正極活物質粒子30の表面にシェル膜41を形成
する。
【0110】本実施形態では、摩砕式ミル等の摩砕装置によって、微粒子流
動体を活物質粒子30に摩砕させ、摩砕物を形成する(摩砕物形成工程)。
【0111】このときの摩砕装置に入れるリン酸イオン含有Li化合物粒子
は、0.5wt%以上であることが好ましい。
【0112】このときの摩砕装置に入れるリン酸イオン含有Li化合物粒子
は、2.5wt%以下であることが好ましく、1.6wt%以下であること
がより好ましく、1wt%以下であることが特に好ましい。
【0113】このときの摩砕装置での処理温度は、5℃以上100℃以下で
あることが好ましく、8以上80℃以下であることがより好ましく、10℃
以上50℃以下であることがさらに好ましい。
【0114】このときの摩砕装置での処理時間は、5分以上90分以下であ
ることが好ましく、10分以上60分以下であることがより好ましい。
【0115】このときの摩砕装置での雰囲気は、不活性ガス雰囲気下又は空
気雰囲気下であることが好ましい。
【0116】続いて、摩砕物に対して熱処理を行い、摩砕物から分散溶媒を
除去し、シェル膜41を形成する(除去工程)。
【0117】このときの熱処理温度は、300℃以上であることが好ましく、
350℃以上であることがより好ましい。
【0118】熱処理温度が300℃を下回ると、活物質粒子30とシェル膜
41の密着性が不十分であるため電池の充放電時にシェル膜41が剥離し、
電池の長期信頼性の低下に繋がるおそれがある。
【0119】一方、熱処理温度が高くなりすぎると、シェル膜41の結晶構
造が変化し、Liイオン伝導度が低下して電池の充放電が正常に行われなく
なる場合があるため、熱処理温度は850℃以下であることが好ましく、好
ましい場合がある一部形成されたシェル膜41の非晶質部分の結晶化を抑制
する観点から500℃以下であることがより好ましい。
【0120】熱処理時間は、30分以上であることが好ましく、45分以上
であることがより好ましい。熱処理時間は、180分以下であることが好ま
しく、150分以下であることがより好ましい。
【0121】以上が、活物質粒子30の表面にリン酸イオン含有Li化合物
膜であるシェル膜41を形成するシェル膜形成工程の説明である 正極活物質
粒子40の表面にリン酸イオン含有Li化合物膜であるシェル膜41を形成
するシェル膜形成工程と、負極活物質粒子140の表面にリン酸イオン含有L
i化合物膜であるシェル膜41を形成するシェル膜形成工程とは、被覆する
活物質粒子30が、正極活物質粒子40であるか、負極活物質粒子140で
あるかの違いであり、基本的に同様である。
ペースト塗布工程)ペースト塗布工程は、シェル膜41が形成された活物
質粒子40,140を導電助剤とバインダーと必要に応じて珪素含有化合物
とともに混合し、溶媒に分散させてペースト状にしてスラリーを形成し、集
電体20,120にスラリーを塗布したペースト塗布集電体を形成する工程
である。
【0122】この工程に使用される溶媒は、活物質粒子40,140と導電
助剤とバインダーを溶解又は分散できるものであれば特に限定されないが、
例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及
びテトラヒドロフランなどが使用できる。これらに分散剤、増粘剤を加えて
もよい。
<ペースト塗布集電体焼成工程
  ペースト塗布集電体焼成工程は、所定の焼成時間、所定の焼成温度でペー
スト塗布集電体を焼成し、正極活物質粒子40を含む仕掛正極部と負極活物
質粒子140を含む仕掛負極部をそれぞれ形成する工程である。
【0123】焼成温度は、ペースト塗布集電体が焼成してスラリーが固化す
る温度であれば特に限定されるものではないが、例えば、80℃以上200
℃以下であることが好ましい。
<電極積層体形成工程
  電極積層体形成工程は、仕掛正極部と仕掛負極部を、セパレータ12を挟ん
で仕掛電極積層体を形成する工程である。
電池組立体作製工程
  電池組立体作製工程は、仕掛電極積層体を外装体3の内部に入れて仕掛電
池組立体を作製する工程である。
界面用電解液注入工程
  界面用電解液注入工程は、例えば、真空包装機を用いて、内部を0.1気
圧以下まで減圧しつつ、内部に仕掛電極積層体を入れた外装体3の注入口以
外を封止した後、仕掛電池組立体の外装体3内に界面用電解液を注入する工
程である。
【0124】界面用電解液は、Liイオン伝導性を有し、活物質層2を構成
する珪素含有化合物を含むものとすることができ、その場合は、上記した電
解媒体6に加えて、本発明に係る珪素化含有合物を含む。
電圧印加工程>
  電圧印加工程は、仕掛電極積層体の正極用取出部材13と負極用取出部材1
4の間に電圧を印加する工程である。
【0125】電圧印加工程によって界面用電解液中の珪素含有化合物が仕掛
電極積層体のシェル膜41上に積層され、活物質層2が形成され、正極部1
0と負極部11を備えた電極積層体5が形成される。
【0126】この工程において正極用取出部材13と負極用取出部材14の
間に印加する電圧は、界面用電解液中の珪素含有化合物がシェル膜41の表
面に析出する電圧であり、リチウム溶解析出電位に対し4.5V以上5V以
下であることが好ましい。
電解媒体注入工程
  電解媒体注入工程は、必要に応じて界面用電解液を外装体3内から排出し、
電解媒体6を電池組立体2の外装体3内に注入する工程である。
エージング工程
  エージング工程は、電池組立体2の初期の劣化を確認する工程であり、初
期充電操作工程と、養生操作工程で構成されている。
【0127】初期充電操作工程は、電極積層体5の正極用取出部材13と負
極用取出部材14の間に電圧を印加して充電する工程である。
【0128】 養生操作工程は、外装体3を養生して電極積層体5と電解媒体
6を封止する工程である。
【0129】  本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、活物質粒子40,
140を被覆する被膜41,141が、リン酸イオン含有Li化合物を含み、
好ましくは、シェル膜41がFe、Mn、Si、及びAlからなる群から選
ばれる1以上の金属を含み、より好ましくは、活物質粒子40,140をシ
ェル膜41が均一に被覆しており、さらに好ましくは、活物質層2を有する
ので、活物質粒子40,140が、非水電解液5と接する面積が小さくなり、
電解媒体6の分解によるガスの発生を抑制できる。
【0130】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、好ましくは、活
物質層2に導電ネットワーク80と浸透性細孔ネットワーク81を有するの
で、電解媒体6と活物質粒子40,140との電荷及びLiイオンの授受が
円滑となり、電極反応が起こりやすい。
【0131】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、好ましくは、浸
透性細孔ネットワーク81は、活物質粒子40,140又はシェル膜41と
の接触部分から細孔に向かってLiイオン伝導体が設けられているので、電
解媒体6と活物質粒子40,140との電荷及びLiイオンの授受がより円
滑となり、より電極反応が起こりやすい。
【0132】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、活物質層2は、
珪素元素を含む珪素含有化合物膜を有するので、より活物質層2の結着性が
良好となり、クラック等が生じにくい。
【0133】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、シェル膜41が
Li元素をもち、シェル膜41のLiが何等かの要因により消費されたLi
の補充に使用できるので、性能が低下しにくい。
【0134】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、正極活物質粒子
40のMnの電解媒体6への溶出を抑制できるので、性能が低下しにくい。
【0135】上記した実施形態では、界面用電解液注入工程において界面用
電解液を注入し、電圧印加工程において正極用取出部材13と負極用取出部
材14の間に電圧を印加することで活物質層2を形成していたが、本発明は
これに限定されるものではない。
【0136】例えば、ペースト塗布工程においてスラリーに珪素元素を含む
珪素含有化合物を添加してペースト塗布集電体焼成工程で活物質層2を形成
してもよい。
【0137】また、ペースト塗布集電体焼成工程の後に仕掛正極部と仕掛負
極部に、含珪素含有化合物を含むペーストを塗布し、加熱や紫外線等によっ
て固化することで活物質層2を形成してもよい。
【0138】電極積層体形成工程の後に、仕掛電極積層体に含珪素含有化合
物を含むペーストを塗布し、加熱や紫外線等によって固化することで活物質
層2を形成してもよい。
【0139】上記した実施形態では、緩衝部42を形成したが、本発明はこ
れに限定されるものではなく、緩衝部42を形成しなくてもよい。この場合
電池組立体作成工程、界面用電解液注入工程、及び電圧印加工程が省略され、
電池組立体作製工程の後に電解媒体注入工程が実施される。
【0140】上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各
実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
実施例】【0141】
  以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の
実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更し
て実施できる。
【0142】 (実験例1)(i)正極の作製
  まず、オリビン型の結晶構造をもつリン酸マンガンリチウム(以下、LM
Pともいう)粉末に溶剤となるエタノールを所定量混合し、直径0.5mm
のジルコニア球を用いて3時間遊星ボールミル処理を行った。処理後の混合
物からジルコニア球を篩で取り除いた後、120℃で乾燥してエタノールを
除去してLMP微粉末を得た。次に、前記LMP微粉末とエタノールを混合
し、エタノールにLMP微粉末が分散した固形分が16.4wt%のスラリ
ーを得た。
【0143】  正極の活物質として、メジアン径が5μmのスピネル型のニッ
ケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5O4、以下、LNMO
ともいう)を用いた。
【0144】LNMO30gを摩砕式ミル(ホソカワミクロン株式会社製、
製品名:ノビルタ)に投入し、クリアランス0.6mm、ローター負荷動力
1.5kW、2600rpmで回転させながら、LMP微粉末のエタノール
分散スラリーをLMP微粉末の添加量が0.6wt%となるように二回に分
けて投入した。その後、前記ローター回転数を2600rpm~3000
rpmの範囲に保って空気雰囲気下、室温で10分間処理し、LMPで表面
を被覆したLNMOを得た。得られた表面被覆LNMOを350℃で1時間
熱処理し、正極複合活物質を得た。
【0145】得られた正極複合活物質、導電性材料としてのアセチレンブラ
ック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それ
ぞれ固形分濃度で90重量部、6重量部、及び4重量部含む混合物を、N-
メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製した。なお、
前記バインダーは固形分濃度5重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NM
P)溶液に調整したものを使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにN
MPを加えて粘度調整した。
【0146】 前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、
120℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施
した後、さらに170℃で真空乾燥することによって正極を作製した。
【0147】  (ii)負極の作製
  負極活物質として、スピネル型のチタン酸リチウム(Li4Ti5O12、
以下、LTOともいう)を用いた。前記LTO、導電助材としてのアセチレ
ンブラック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、
それぞれ固形分濃度で100重量部、5重量部、及び5重量部を含む混合物
を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製し
た。なお、バインダーは固形分濃度5wt%のNMP溶液に調製したものを
使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにNMPを加えて粘度調整した。
【0148】  前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、1
20℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施し
た後、さらに170℃で真空乾燥することによって負極を作製した。
【0149】  (iii)リチウムイオン二次電池の作製
  上記(i)及び(ii)で作製した正極及び負極と、20μmのポリプロピ
レン製のセパレータを用いて、以下の手順で電池を作製した。
【0150】まず初めに、正極及び負極を80℃で12時間、減圧乾燥した。
次に、負極/セパレータ/正極の順に正極を15枚、負極を16枚使用して
積層した。最外層はどちらもセパレータとなるようにした。次に、両端の正
極及び負極にアルミニウムタブを振動溶着させた。
【0151】外装材となる二枚のアルミラミネートフィルムを準備し、プレ
スにより電池部となる窪みとガス捕集部となる窪みを形成後、前記電極積層
体を入れた。
【0152】非水電解質注液用のスペースを残した外周部を180℃×7秒
でヒートシールし、未シール箇所から、エチレンカーボネート、プロピレン
カーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、体積基準でエチレンカー
ボネート/プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=15/15
/70の割合で混合した溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなる割合で溶
解させ、非水電解質を入れた後に、減圧しながら未シール箇所を180℃×
7秒でヒートシールした。
【0153】得られた電池を0.2C相当の電流値で電池電圧が終止電圧
3.4Vに到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。その後、60
℃の環境で24時間静置した後、0.2C相当の電流値で定電流放電を行い、
電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止した。放電停止後、ガス捕集
部に溜まったガスを抜き取り、再シールを行った。以上の操作により、評価
用のリチウムイオン二次電池を作製した。

※(実験例2)~(実験例18)割愛
  
【0178】  (ガス発生量測定)
  各実験例1~18におけるサイクル特性評価前後のリチウムイオン二次電池
のガス発生量の評価は、アルキメデス法、すなわちリチウムイオン二次電池
浮力を用いて評価した。評価は下記の通りに行った。
【0179】最初に、リチウムイオン二次電池の重量を電子天秤で測定した。
次に、比重計(アルファミラージュ株式会社製、品番:MDS-3000)を
用いて水中での重量を測定し、これら重量の差をとることによって浮力を算出
した。この浮力を水の密度(1.0g/cm3)で除算することによって、
チウムイオン二次電池
の体積を算出した。エージング後の体積と、下記のサ
イクル特性評価後の体積を比較することによって、発生したガス量を算出した。

【0180】  (リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価
  各実験例1~18で作製したリチウムイオン二次電池を、充放電装置(H
J1005SD8、北斗電工株式会社製)に接続し、サイクル運転を行った。
60℃の環境下で、1.0C相当の電流値で電池電圧が終止電圧3.4Vに
到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。続いて1.0C相当の電
流値で定電流放電を行い、電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止し
た。これを1サイクルとして充放電を繰り返した。
【0181】また、サイクル特性の安定性は、1回目の放電容量を100と
したときの500回目の放電容量を、容量維持率(%)として評価した。
【0182】  (レート特性評価)
  各実験例1~18で作製したリチウムイオン二次電池に対して、25℃、
0.2Cで充放電を行い、続けて2.0Cで充放電を行うことでレート特性
の評価を行った。
【0183】このときの充電終止電圧及び放電終止電圧は、それぞれ2.5
V及び3.4Vとした。0.2Cでの放電容量に対する2.0Cでの放電容
量の割合を放電レート特性とした。
【0184】  まず、各実験例1~7の評価結果を表1に示す。
【0185】【表1】
000003
  被膜を形成した実験例1~7では、表1のように、いずれも100サイクル
後のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられていた。
【0186】このことから、被膜を形成することでガス発生を抑制する効果
(以下、ガス発生抑制効果ともいう)を奏することが示唆された。
【0187】被膜としてLMPを使用した実験例1~3では、表1のように
、被膜としてLFPを使用した実験例4,5やLATPを使用した実験例6,
7に比べて、レート特性が向上した。
【0188】被膜としてLFPを使用した実験例4,5やLATPを使用し
た実験例6,7では、添加量が大きくなるにつれて初期容量が小さくなると
ともに2Cの値も小さくなり、ガス発生量が小さくなっていた。一方、被膜
としてLMPを使用した実験例1~3では、被膜の添加量が増えるにつれて
初期容量が大きくなるとともに2Cの値がほぼ一定となり、ガス発生量が大
きくなっていた
【0189】  このことから、被膜としてLMPを使用する場合には、被膜の
添加量を少量にしても容量が維持されるとともに、ガス発生を抑制する効果
が高いことが示唆された。
【0190】  続いて、各実験例1、2、8~11の評価結果を表2に示す。
【0191】【表2】
000004
各実験例1、2、8~11では、表2のように、いずれも100サイクル後
のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられており、処理温度が高くなる
につれてクラックの発生が懸念されたが、800度で熱処理しても明確なガ
ス発生量の増加がみられなかった。
【0192】また、添加量が0.6wt%の実験例1,8,9を比較すると、
処理温度が大きくなるにつれて初期容量及び2Cの値が大きくなっていた。
【0193】同様に、添加量が0.9wt%の実験例2,10,11を比較
しても、処理温度が高くなるにつれて初期容量及び2Cの値が大きくなって
いた。
【0194】これらのことから、処理温度を高くすることで、ガス発生抑制
効果を奏しつつ、初期容量及び2Cの値が上昇することが示唆された。
【0195】続いて、各実験例1,2,12,13の評価結果を表3に示す。
【0196】【表3】
000005
  各実験例1,2,12,13では、表3のように、いずれも100サイクル
後のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられていた。
【0197】被膜の添加量が0.6wt%の実験例1,12では、処理時間の
増加に伴い、100サイクル後のガス発生量及び300サイクル後のガス発
生量がほとんど変化なかった。
【0198】被膜の添加量が0.6wt%の実験例1,12では、被膜の添
加量が0.9wt%の実験例2,13に比べて、300サイクル後のガス発
生量が少なくなった。
【0199】また、実験例1,2,12,13では、処理時間の増加に伴い、
初期容量及び2Cの値が増加した。
【0200】これらのことから、処理時間を長くすることで被覆の均一性
が向上してガス抑制効果が向上することが示唆された。また、処理時間を長
くすることで初期容量も回復し、添加量を少量にして薄く被覆することで、
被覆による効果が高くなることが示唆された。
【0201】  続いて、各実験例14~18の評価結果を表4に示す。
【0202】【表4】
000006
被膜を形成した各実験例14~17では、被膜を形成していない実験例18
に比べて、レート特性がほとんど変わらないものの、500サイクル後の
ガス発生量が35cc/Ah以下に低減され、容量維持率も向上した。
【0203】このことから、負極においても被膜を形成することでガス発
生抑制効果が得られることが示唆された。
【0204】また、実験例14,15を比較すると、処理温度が上昇する
につれてレート特性が向上した。同様に実験例16,17を比較すると、
処理温度が上昇するにつれてレート特性が向上した。
【0205】このことから、処理温度を高くすることでレート特性が向上
することが示唆された。
【0206】LMPを被覆した実験例14,15では、LFPを被覆した
実験例16,17に比べてガス発生量が低減し、レート特性が向上した。
【0207】以上のことから、活物質粒子の表面にリン酸イオン含有リチ
ウム化合物を含む被膜を被覆することで、ガス発生量を抑制できることが
わかった。
【0208】  特に、活物質粒子の表面にLMPを被覆することで、ガス
発生量を抑制でき、レート特性が向上することが分かった。
 

   今日の映画音楽 『 Ghostbusters』
                         Theme Song • Ray Parker Jr.


今日の言葉:気候変動の災害増加が女性への暴力増加と関連している?!
        気候変動災害の増加が暴力と関連するのではないかとは
        思えないことはないが、具体的な示唆されるとはね?!
        (GIGAZINE 2024.11.16
        ※掲載記事
        ・The impact of environmental shocks due to climate
         change on intimate partner violence: A structural
         equation model of data from 156 countries ( PLOS
         Climate
        ・Climate change linked to increased violence against
         women - Earth.com

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エネルギーと環境51

2024年11月14日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月14日】

       侘助や吾が一生も爆発期  
                    高山 宇 (赤鬼)

※侘助椿は、15世紀の茶人「侘助」が好んだ椿、茶席にしばしば活けら
 れ、厳冬に花を半開させる姿が、茶人たちに侘びの精神を象徴された。
 薄田泣菫がは著書「侘助椿」の中で「この花には捨てがたい侘がある」
 と評した。


⬛ 先端半導体は「2ナノ」へ TSMCの独走

2025年、先端半導体の最大のトピックは2nm世代へ移行
米Apple(アップル)が2026年に「iPhone」へ搭載するのを皮切りに、
米NVIDIA(エヌビディア)や米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイ
セズ)などが採用する見通しだ。これらAI(人工知能)銘柄の需要を総取
りする台湾積体電路製造(TSMC)の独走が続くか、競合の米Intel(イン
テル)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が一矢報いるかが注
目されている。また、
データセンターのGPU(画像処理半導体)やCPU(
中央演算処理装置)、スマートフォンのCPUなどに使われるロジック(演
算用)半導体が、現行の3nm世代から2nm世代へ移行する。生成AI向けな
どで求められる高い演算能力に応える。

米IBMは業界初の2nm世代のテストチップを2021年5月に発表した(出所:IBM)

 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑥

2. 特開2024-153730 非水電解液二次電池 株式会社GSユアサ⓶

【要約】下図いのごとく、本発明の一態様に係る非水電解液二次電池は、
正極と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極
が硫黄系活物質とメソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラス
カーボン複合体を含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ
素化溶媒が、鎖状フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステ
ル、又はこれらの組み合わせを含む、非水電解液二次電池で、充放電を繰
り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質を含む正極を備えた非水電解
液二次電池を提供する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
【0094】R及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原
子がフッ素原子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R
及びRは、Rのみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、R
みがフッ素化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化され
た炭化水素基であってもよい。
【0095】この鎖状フッ素化カーボネートとしては、例えば、2,2-
ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエ
チル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、
2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、エチル-(2,2,
2-トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオ
ロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0096】式(1)及び式(2)でのフッ素化された炭化水素基におい
て、置換するフッ素原子の数は特に限定されず、1個以上であればよい。
また、置換するフッ素原子の数が少ないと、耐酸化性が低くなり、耐還元
性が高くなり、正極で被膜を形成しやすく、負極で還元分解しにくくなる
と考えられる。このような観点から、置換するフッ素原子の数は6個以下
であるのが好ましく、5個以下であるのがより好ましく、4個以下である
のがさらに好ましく、3個以下であるのがよりさらに好ましい。フッ素原
子が結合する炭素は特に限定されず、炭化水素基の末端に位置する炭素で
あってもよく、末端以外の炭素であってもよい。
【0097】式(1)及び式(2)において、R、R、R及びR
炭化水素基は、好ましくは炭素数1~8であり、より好ましくは炭素数1
~5であり、よりさらに好ましくは炭素数1~3である。炭素数をこれら
の値とすることで、鎖状フッ素化カルボン酸エステル又は鎖状フッ素化カ
ーボネートの粘度を低くすることができる。
【0098】R、R、R及びRがフッ素化された炭化水素基でない
有機基の場合、これらの有機基はアルキル基又はアルケニル基であること
が好ましく、アルキル基であることがより好ましい。これらの有機基は直
鎖状でもよく、分岐状でもよい。
【0099】上記アルキル基としては、CH-、CHCH-、CH
CHCH-等、上記アルケニル基としては、CH=CH-、CH
CHCH-、CH=C(CH)-等が挙げられる。
【0100】非水電解液における鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖
状フッ素化カーボネートの合計含有割合の下限は、20体積%以上である
と好ましく、30体積%以上であるとより好ましく、40体積%以上であ
るとさらに好ましく、50体積%以上であるとよりさらに好ましい。上限
は、100体積%以下であり、90体積%以下であってもよく、80体積
%以下であってもよく、70体積%以下であってもよい。これにより、充
放電を繰り返した際の容量保持率を高める本発明の効果を、より確実に発
揮することができる。
【0101】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
非水電解液に含まれる鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖状フッ素化
カーボネートは、正極で酸化分解し、硫黄系正極活物質の表面に被膜を形
成すると考えられる。この被膜によって、硫黄系活物質と非水電解液とが
直接接触する面積が減少し、リチウムポリスルフィドの非水電解液への溶
出が抑制されると考えられる。ところが、硫黄系活物質は充放電に伴う体
積変化が大きいため、充放電を繰り返すと被膜に割れが生じ、リチウムポ
リスルフィドが非水電解液に溶出する虞がある。ここで、非水電解液にお
ける鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖状フッ素化カーボネートの合
計含有量が20体積%以上であると、被膜に割れが生じても新たな被膜が
形成されやすい。これにより、リチウムポリスルフィドの溶出を確実に抑
制できるため、充放電を繰り返した際の容量保持率をとができると考えら
れる。
※漏洩・地下浸透の環境汚染の心配が残件するが、どうだろう?
【0102】フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの含有割合の下
限は0体積%であり、0体積%超であると好ましく、5体積%であるとよ
り好ましく、7体積%であるとさらに好ましい。フッ素化溶媒における鎖
状フッ素化エーテルの含有割合の上限は20体積%以下であり、18体積
%以下であると好ましく、15体積%以下であるとより好ましく、10体
積%であるとさらに好ましい。フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテ
ルの含有割合を上記の値とすることで、充放電を繰り返した際の容量保持
率を高めることと、充放電サイクルの初期における放電容量を高めること
とを両立することができる。
【0103】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
鎖状フッ素化エーテルは、鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルと比べて、耐酸化性が高く、耐還元性が低い。このため、
非水電解液が鎖状フッ素化エーテルを上記含有割合となるよう含むことで、
非水電解液の耐還元性を大きく損なうことなく、正極におけるフッ素化溶
媒の反応性を適度に下げ、フッ素化溶媒の酸化分解を抑制することができ
ると考えられる。このようなメカニズムにより、充放電を繰り返した際の
容量保持率を高めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高める
ことができると考えられる
【0104】フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルは、例えば、式
(3)で示される鎖状フッ素化エーテルを含んでもよい。式(3)  R
O-R【0105】式(3)中、R及びRはそれぞれ独立で1価の有
機基である。R及びRで示される有機基としては、R及びRで例示
したものと同様の有機基等が挙げられる。
【0106】R及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原
子がフッ素原子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R
及びRは、Rのみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、R
のみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化さ
れた炭化水素基であってもよい。
【0107】この鎖状フッ素化エーテルとしては、例えば、CF3CF2
CH2OCH3、HCF2CF2OCH2CF2CF2H、HCF2CF
2CH2OCF2CHFCF3、CF3CF2CH2OCF2CHFCF
3、CF3CF2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2OC2H5、
HCF2CF2OC3H7、HCF2CF2OC4H9、CF3CHFC 
 F2OC2H5、CF3CH2OCH2CH2OCH3等が挙げられる。
【0108】式(3)のフッ素化された炭化水素基において、置換するフ
ッ素原子の数は1個以上であればよい。上限は特に限定されないが、例え
ば11個以下であってもよい。フッ素原子が結合する炭素は特に限定され
ず、炭化水素基の末端に位置する炭素であってもよく、末端以外の炭素で
あってもよい。
【0109】式(3)において、R及びRの炭化水素基は、好ましく
は炭素数1~8であり、より好ましくは炭素数1~5であり、よりさらに
好ましくは炭素数1~4である。炭素数をこれらの値とすることで、鎖状
フッ素化エーテルの粘度を低くすることができる。
【0110】R及びRがフッ素化された炭化水素基でない有機基の場
合、これらの有機基はアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、
アルキル基であることがより好ましい。これらの有機基は直鎖状でもよく、
分岐状でもよい。
【0111】非水電解液は鎖状溶媒と環状溶媒とを含むことが好ましい。
非水電解液における鎖状溶媒と環状溶媒との混合割合は、体積比で、30
:70から70:30の範囲とすることが好ましい。これにより、非水電
解液の粘度を下げることと、非水電解液のイオン伝導度を高めることと
を両立することができる。
【0112】非水電解液に含まれるフッ素化溶媒の含有量の下限は、非水
電解液の全体積に対して、60体積%であってもよく、63体積%である
と好ましく、65体積%であるとより好ましく、68体積%であるとさら
に好ましく、70体積%であるとよりさらに好ましい。非水電解液に含ま
れるフッ素化溶媒の含有量の上限は、非水電解液の全体積に対して100
体積%であり、99体積%であってもよく、98体積%であってもよく、
97体積%であってもよく、95体積%であってもよい。これにより、充
放電を繰り返した際の容量保持率を高くすることができる。
【0113】フッ素化溶媒は鎖状フッ素化溶媒と環状フッ素化溶媒とを含
むことが好ましい。フッ素化溶媒における鎖状フッ素化溶媒と環状フッ素
化溶媒との混合割合は、体積比で、30:70から70:30の範囲とす
ることが好ましい。これにより、非水電解液の粘度を下げることと、非水
解液のイオン伝導度を高めることとを両立することができる
【0114】非水電解液に含まれる環状溶媒における、環状フッ素化溶媒
の含有割合は、50体積%以上100体積%以下であると好ましい。これ
により、充放電を繰り返した際の容量保持率を高めることができる。
【0115】フッ素化溶媒は、環状フッ素化カーボネートを含むことが好
ましい。これにより、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導
度を高めることができる。
【0116】環状フッ素化カーボネートとしては、フルオロエチレンカー
ボネート(FEC)、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5
-ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネー
ト(4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート)、4-フルオ
ロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレ
ンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート等が挙
げられる。これらの中でも、フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジ
フルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネ
ートが好ましく、フルオロエチレンカーボネートがより好ましい。
【0117】非水電解液は、非フッ素化溶媒を含むことが好ましい。非水
電解液が非フッ素化溶媒を含むことで、充放電を繰り返した際の容量保持
率をさらに高めることができる。この理由は定かでは無いが、例えば、非
フッ素化溶媒がリチウムポリスルフィドと反応しやすく、硫黄系活物質の
表面に被膜を形成しやすいことが、充放電を繰り返した際の放電容量の保
持率を高くできる理由として推測される。
【0118】非フッ素化溶媒は特に限定されないが、分子構造中にC=O
二重結合を含む化合物を含むことが好ましい。このような非フッ素化溶媒
としては、カーボネート、エステル、アルデヒド、ケトン等が挙げられる。
このような非フッ素化溶媒を用いることで、充放電を繰り返した際の放電
容量の保持率を高くすることができる。
【0119】非フッ素化溶媒における、分子構造中にC=O二重結合を含
む化合物の含有割合は、50体積%以上100%以下であると好ましく、
60体積%以上100%以下であるとより好ましく、70体積%以上10
0%以下であるとさらに好ましく、80体積%以上100%以下であると
よりさらに好ましい。これにより、より確実に充放電を繰り返した際の放
電容量の保持率を高くすることができる。
【0120】非フッ素化溶媒として用いることができるカーボネートは、
環状カーボネートでもよく、鎖状カーボネートでもよい。環状カーボネー
トとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボ
ネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート
(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカー
ボネート、カテコールカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、
1,2-ジフェニルビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、1-
フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネー
ト等が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネートとプロピレン
カーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートが
より好ましい。鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネー
ト、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロ
ピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチ
ルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチル
カーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボ
ネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネ
ート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等
が挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロ
ピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n
-プロピルカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカ
ーボネート、エチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0121】非フッ素化溶媒として用いることができるエステルとしては、
例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エス
テル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(M
P)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0122】非水電解液に含まれる非フッ素化溶媒の含有量の下限は、非
水電解液の全体積に対して、1体積%としてもよく、2体積%が好ましく、
3体積%がより好ましく、5体積%がさらに好ましい。非水電解液に含ま
れる非フッ素化溶媒の含有量の上限は、40体積%としてもよく、35体
積%が好ましく、32体積%がより好ましく、30体積%がさらに好まし
い。これにより、充放電を繰り返した際の容量保持率を高くすることがで
きる。
【0123】非水電解液は、上述したもののほかに公知の非水溶媒を含ん
でもよい。非水溶媒としてはカルボン酸エステル、リン酸エステル、スル
ホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒
として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換され
たものを用いてもよい。
【0124】電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電
解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウ
ム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0125】リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiB
、LiClO、LiN(SOF)、LiAsF、リチウムジフ
ルオロオキサレートボレート(LiFOB)等の無機リチウム塩、LiS
CF、LiN(SOCF、LiN(SO、Li
N(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、Li
C(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が
挙げられる。これらの中から選択される少なくとも一種を用いてもよく、
二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、電気伝導度の観
点からLiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SO
が好ましく、さらにカチオン解離度の観点からLiN(SOF)
、LiN(SOCFがより好ましい。
【0126】非水電解液における電解質塩の含有量の下限としては、
0.1Mが好ましく、0.3Mがより好ましく、0.5Mがさらに好まし
く、0.7Mが特に好ましい。電解質塩の含有量の上限としては、例えば、
2.5Mが好ましく、2Mがより好ましく、1.5Mがさらに好ましい。
【0127】非水電解液は、添加剤を含んでもよい。なお本明細書におい
ては、添加剤とは非水電解液における含有量が20質量%よりも小さいも
のを意味する。添加剤としては、例えば、リチウムビス(オキサレート)
ボレート(LiBOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホス
フェート(LiFOP)等のシュウ酸エステル基を有する塩;ビフェニル、
アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シク
ロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェ
ニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニ
ル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロ
ベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロ
アニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソ
ール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;
メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク
酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコ
ン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチ
レン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペン
スルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、ト
ルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジ
メチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルス
ルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,
4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、4-メチ
ルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチ
オラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジス
ルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン
酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノ
フルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で
用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0128】非水電解液全体に対するこれらの添加剤の含有割合の下限と
しては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.2
質量%がさらに好ましい。添加剤の含有割合の上限としては、10質量%
が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%がより好ましく、3質量
%がさらに好ましい。添加剤の含有割合を上記範囲とすることで、高温保
存後の容量保持性能又は充放電サイクル性能を高めることや、安全性を高
めることができる。
【0129】当該非水電解液二次電池は、固体電解質を備えてもよい。
【0130】固体電解質としては、チウム、ナトリウム、カルシウム等の
イオン伝導性を有し、常温(例えば15℃~25℃)において固体である
任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電
解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質
等が挙げられる。
【0131】硫化物固体電解質としては、リチウム二次電池の場合、例え
ば、LiS-P系等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例
えば、LiS-P、LiI-LiS-P、Li10Ge-
12、等が挙げられる。
【0132】当該非水電解液二次電池の形状は特に限定されるものではな
く、例えば、円筒型電池、パウチ型電池、角型電池、扁平型電池、コイン
型電池、ボタン型電池等を挙げることができる。図1に角型電池の一例を
示す。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角
型のケース3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と
電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電
気的に接続されている。

【0133】<蓄電装置の構成>
当該非水電解液二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(
HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、
パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用
電源等に、複数の非水電解液二次電池1を集合して構成した蓄電ユニット
(バッテリーモジュール)を、さらに集合した蓄電装置として搭載するこ
とができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの非水電解液
二次電池
に対して、本発明の技術が適用されていればよい。図2に、電気
的に接続された二以上の非水電解液二次電池1が集合した蓄電ユニット20
をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の
非水電解液二次電池1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の
蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)を備えていても
よい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の非水電解液二次電
の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。

【0134】<非水電解液二次電池の製造方法>
当該非水電解液二次電池蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択
できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備する工程と、非水電解液
を準備する工程と、電極体及び非水電解液を容器に収容する工程と、を備
える。電極体を準備する工程は、正極及び負極を準備する工程と、正極及
び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより電極体を形成
する工程と、を備える。
【0135】非水電解液を容器に収容する工程は、公知の方法から適宜選
択できる。例えば、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、
注入口を封止すればよい。

【0136】<その他の実施形態>
尚、本発明の非水電解液二次電池は、上記実施形態に限定されるものでは
なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置
き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除するこ
とができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加すること
ができる。
【0137】上記実施形態では、非水電解液二次電池がリチウム二次電池
として用いられる場合について説明したが、非水電解液二次電池の種類、
形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、リチウム二次電池以外の種
々の非水電解液二次電池にも適用できる。

【実施例】【0138】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の
実施例に限定されない。【0139】
[実施例1](硫黄-メソポーラスカーボン複合体の作製)
硫黄と、メソポーラスカーボン(CNovel(クノーベル))(東洋炭
素株式会社製)とを質量比77:23で混合した。メソポーラスカーボン
の物性は、平均細孔径5nm、ミクロ細孔容積0.34ccg-1、メソ
細孔容積1.02ccg-1、全細孔容積1.7ccg-1、比表面積15
00m-1であった。この混合物を、密封式の電気炉に入れた。1時間
のアルゴンフローを行った後、昇温速度5℃/分で150℃まで昇温し、
5時間保持した後、硫黄が固化する温度である80℃まで放冷し、その後、
再び5℃/分で300℃まで昇温し、2時間保持する熱処理を行った。以
上の手順により、実施例1の硫黄-メソポーラスカーボン複合体を得た。

【0140】(非水電解液二次電池の作製)
硫黄-メソポーラスカーボン複合体、導電助剤としてのアセチレンブラッ
ク、及びバインダとしてのCMC/SBRを80:10:10の質量比で
混合し、水を分散媒とするスラリーを調整した。CMCとSBRとは質量
比で1.2:2.1となるよう混合した。調整したスラリーを集電体に塗
布し、乾燥して電極を作製した。作製した電極を正極とし、金属Liを負
極とし、酢酸2,2,2-トリフルオロエチル(TFEA)とフルオロエ
チレンカーボネート(FEC)との混合溶媒に、1Mのリチウムビス(ト
リフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を溶解させた非水
電解液を備える電池を作製した。TFEAとFECとの混合比は、体積比
で50:50とした。上記電池は、アルミラミネートフィルムで覆い、パ
ウチ型セルとした。

【0141】[実施例2]
溶媒として2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFE
MC)とFECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電
池を作製した。
【0142】[実施例3]
溶媒としてビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(FD
EC)とFECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電
池を作製した。
【0143】[実施例4]
溶媒として3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とF
ECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0144】[比較例1]
溶媒として1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テ
トラフルオロプロピルエーテル(TFETFPE)とFECとの混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0145】[実施例5]
溶媒としてTFEAとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0146】[実施例6]
溶媒としてTFEMCとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0147】
[実施例7]
溶媒としてFDECとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒を
使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0148】[実施例8]
溶媒としてFMPとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒を使
用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0149】[比較例2]
溶媒としてTFETFPEとFECとを体積比70:30で混合した混合
溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0150】[実施例9乃至実施例18]
溶媒として、表2に示す組成の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1
と同様の電池を作製した。なお、表中のEMCはエチルメチルカーボネー
トのことを指す。
【0151】[実施例19及び実施例20]
溶媒として、表3に示す組成の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1
と同様の電池を作成した。
【0152】[比較例3]
実施例1のメソポーラスカーボンに代えて、ミクロポーラスカーボン(C
NovelMH、東洋炭素株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1
と同様の手順により、硫黄-ミクロポーラスカーボン複合体を作製した。
ミクロポーラスカーボンの物性は、平均細孔径5nm、ミクロ細孔容積0.
40ccg-1、メソ細孔容積0.25ccg-1、比表面積1800m
-1であった。実施例1の硫黄-メソポーラスカーボン複合体に代えて
硫黄-ミクロポーラスカーボン複合体を使用したこと、及び溶媒としてT
FEMCとFECとを体積比50:50で混合した混合溶媒を使用したこ
と以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0153】式(4)から式(8)にTFEA、TFEMC、TFDEC、
FMP、TFETFPEの構造をそれぞれ示す。

000005000006

000007000008

000009


【0154】<試験例1>(10サイクル目容量保持率)
実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の各電池について、以下の
条件にて充放電サイクル試験を行った。25℃で1Vまで0.1Cの定電
流放電を行った。放電後に25℃で3Vまで0.2Cの定電流充電を行っ
た。これら放電及び充電の工程を1サイクルとして、このサイクルを12
サイクル繰り返した。なお、放電後及び充電後には25℃にて10分間の
休止を設けた。放電、充電及び休止ともに25℃の恒温槽内で行った。充
放電サイクル試験が終了した電池について、3サイクル目の放電容量に対
する12サイクル目の放電容量の比率を「10サイクル目容量保持率」と
した。以下の表1に、実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の結
果を示す。
【0155】【表1】

000010
【0156】
表1から、鎖状フッ素化カルボン酸エステルであるTFEA
又はFMPを含む実施例1、4、5、及び8の電池では、鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含まない比較例1及び比較例2の電池に比べて高い容
量保持率を示すことが分かる。

【0157】また、鎖状フッ素化カーボネートであるTFEMC又はFD
ECを含む実施例2、3、6、及び7の電池では、鎖状フッ素化カルボン
酸エステルを含む実施例1、4、5、及び8の電池と同様に、高い容量保
持率を示すことが分かる。

【0158】FDECを用いた実施例3及び7に比べ、TFEA、TFE
MC、又はFMPを用いた実施例は高い容量保持率を示した。TFEA、
TFEMC、又はFMPは、FDECに比べて結合したフッ素原子の数
が少ないことから、耐還元性が高く、より高い容量保持率を示したと考え
られる。

【0159】実施例1乃至4と、実施例5乃至8とを対比すると、非水電
解液における鎖状フッ素化カルボン酸エステル又は鎖状フッ素化カーボネ
ートの含有量を変えた場合であっても、高い容量保持率を示すことが分かる。

【0160】非水電解液に鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含まず、鎖状フッ素化エーテルであるTFETFPE
を50体積%以上含む比較例1及び比較例2は容量保持率が低かった。こ
れは、鎖状フッ素化エーテルの耐還元性が、鎖状フッ素化カーボネート及
び鎖状フッ素化カルボン酸エステルよりも低く、負極で還元分解されるた
めと考えられる。

【0161】以上の結果から、硫黄-メソポーラスカーボン複合体を含む
正極を備えた非水電解液二次電池においては、鎖状フッ素化カーボネート、
鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの組み合わせを含む非水電
解液を備えることにより、高い容量保持率を得ることができるといえる。


【0162】
<試験例2>(100サイクル目容量保持率)
実施例9乃至実施例18の各電池について、充放電サイクル数を12サイ
クルから102サイクルに変えたこと以外は、上述した充放電サイクル試
験と同様の試験を行った。充放電サイクル試験が終了した電池について、
3サイクル目の放電容量に対する102サイクル目の放電容量の比率を「
100サイクル目容量保持率」とした。表2に、実施例9乃至実施例18
の結果を示す。

【0163】【表2】
000011

【0164】表2から明らかなように、非水電解液に、鎖状フッ素化カー
ボネート又は鎖状フッ素化カルボン酸エステルと、非フッ素化溶媒である
EMC又はECとを含む実施例11乃至実施例18は、100サイクル目
容量保持率が100%となり、充放電を繰り返した後の容量保持率に特に
優れた非水電解液二次電池を実現し得ることが確認された。
【0165】<試験例3>
(サイクル初期放電容量、10サイクル目容量保持率)
実施例2、実施例19及び実施例20の各電池について、以下の条件にて
充放電試験を行った。25℃で1Vまで0.1Cの定電流放電を行った。
放電後に25℃で3Vまで0.1Cの定電流充電を行った。これら放電及
び充電の工程を1サイクルとして、このサイクルを12サイクル繰り返し
た。放電後及び充電後には25℃にて10分間の休止を設けた。放電、
充電及び休止ともに25℃の恒温槽内で行った。充放電サイクル試験が終
了した電池について、3サイクル目の放電容量を「サイクル初期放電容量」
とした。3サイクル目の放電容量に対する12サイクル目の放電容量の比
率を「10サイクル目容量保持率」とした。表3に、実施例2、実施例
19及び実施例20の結果を示す。
【0166】【表3】

000012
【0167】表3から明らかなように、実施例2、実施例19及び実施例
20の電池は、いずれも容量保持率が優れていた。中でも実施例19の電
池は、容量保持率が高いだけでなく、初期放電容量も高いことが確認され
た。
                           この項つづく
 今日の楽曲  映画音楽 『キンムダム』
            キングダム 運命の炎 
            宇多田ヒカル「Gold ~また逢う日まで~」

 今日の言葉:

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エネルギーと環境㊿

2024年11月14日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-



【季語と短歌:11月14日】

       侘助や吾が一生も爆発期  
                    高山 宇 (赤鬼)

※かんむり座T星が爆発すると騒がれている。それも愛でたいと。




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11月14日、産総研は希少金属インジウムを含まないCIS型薄膜太陽電池の
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2. 特開2024-153730 非水電解液二次電池 株式会社GSユアサ
【要約】下図いのごとく、本発明の一態様に係る非水電解液二次電池は、
正極と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極
が硫黄系活物質とメソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラス
カーボン複合体を含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ
素化溶媒が、鎖状フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステ
ル、又はこれらの組み合わせを含む、非水電解液二次電池で、充放電を繰
り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質を含む正極を備えた非水電解
液二次電池を提供する。

図1.非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図
【符号の説明】1    非水電解液二次電池 2    電極体 3    ケース
4    正極端子 41  正極リード 5    負極端子 51  負極リード
20  蓄電ユニット 30  蓄電装置
【概要】リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高
エネルギー密度、高出力密度を有することから、パーソナルコンピュータ、
通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。リチウムイオン二次
電池の正極材料として、LiCoO、LiNiO、LiMn
LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のリチウム遷移金属複合酸化物が
実用化されているが、これらの材料は質量あたりの容量が限られている。
そこで、より高いエネルギー密度を有する非水電解液二次電池を実現する
ために、リチウム遷移金属複合酸化物に代わる正極材料として硫黄が検討
されている。硫黄は、質量あたりの理論容量が1675mAhg-1であ
り、従来の正極材料の理論容量の6倍以上のエネルギー密度を有する。
【0004】しかし、正極活物質として硫黄を用いた非水電解液二次電池
においては、充放電時に生成する中間生成物である一部の組成のリチウム
ポリスルフィドLi(4≦x≦8)が非水電解液に可溶であるため、
充放電を繰り返すと、硫黄がリチウムポリスルフィドとして非水電解液に
溶出し、容量が低下する問題があった。これに対し、非水電解液の成分調
整により、容量低下を改善する技術が提案されており、国際公開番号WO
2018/163778には、正極活物質として硫黄を含むリチウムイオ
ン二次電池において、非水電解液に1moldm-3LiTFSI(Lit
hiumbis(trifluoromethanesulfonyl)
imide)/FEC(fluoroethylenecarbonate)
:D2(1,1,2,2-tetrafluoroethyl-2,2,
3,3-tetrafluoropropyl ether)を用いること
が開示されている。上記特許文献1には、細孔体積比(ミクロ孔/メソ孔)
が2.1である炭素材料と硫黄とを含む炭素複合材料を含む正極と、非水
電解液にHFCCFCHOCFCFHとFECとを60:40の
組成になるように混合し、これにLiTFSIを1.0モル/リットルの
濃度となるよう添加して得た非水電解液と、を用いた非水電解液二次電池
が開示されている。
【先行技術文献】【非特許文献】【非特許文献1】第58回電池討論会要
旨集、1E16(2017)
【特許文献】【特許文献1】国際公開番号WO2018/163778

本発明の目的は、充放電を繰り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質
を含む正極を備えた非水電解液二次電池を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様は、正極と、非水電解
液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が硫黄系活物質と
メソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体を
含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ素化溶媒が、鎖状
フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの
組み合わせを含む、非水電解液二次電池である。
【発明の効果】【0013】
本発明によれば、充放電を繰り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質
を含む正極を備えた非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、非水電解液二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置
の一実施形態を示す概略図である。

図2.非水電解液二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態
を示す概要図
【発明を実施するための形態】【0015】
始めに、本明細書によって開示される非水電解液二次電池の概要について
説明する。本発明の一態様に係る非水電解液電池は、正極と、非水電解液
と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が硫黄系活物質とメ
ソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体を含
み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ素化溶媒が、鎖状フ
ッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの組
み合わせを含む、非水電解液二次電池である。この構成によれば、充放電
を繰り返した際の容量保持率を高めることができる。【0018】
この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。鎖状フッ素
化カーボネート及び鎖状フッ素化カルボン酸エステルは、フッ素化エーテ
ル等と比べて還元分解しにくい。このため、当該非水電解液二次電池では、
負極におけるフッ素化溶媒の分解を抑制できると考えられる。また、鎖状
フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カルボン酸エステルは、フッ素化
エーテル等と比べて酸化分解しやすい。このため、硫黄系活物質と非水電
解液との界面に被膜が形成されやすく、リチウムポリスルフィドの溶出を
抑制できると考えられる。さらに、メソポーラスカーボンはミクロポーラ
スカーボンよりも細孔径が大きい。このため、硫黄系活物質の表面に形成
された被膜と非水電解液との接触面積が大きくなり、被膜中のキャリアイ
オンの輸送がスムーズになると考えられる。このような現象によって相乗
効果がもたらされ、充放電を繰り返した際の容量保持率を高めることがで
きると考えられる.
【0031】ここで、上記フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの
含有割合は、0体積%以上15体積%以下であってもよい。
【0032】これにより、充放電を繰り返した際の容量保持率を高める効
果を確実に発揮することができる。
【0033】ここで、上記フッ素化溶媒が鎖状フッ素化エーテルを含み、
上記フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの含有割合が5体積%以
上15体積%以下であってもよい。
【0034】この構成によれば、充放電を繰り返した際の容量保持率を高
めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高めることができる。
【0035】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
鎖状フッ素化エーテルは、鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルと比べて耐酸化性が高く、耐還元性が低い。このため
非水電解液が鎖状フッ素化エーテルを5体積%以上15体積%以下含むこ
とで、耐還元性を大きく損なうことなく、正極におけるフッ素化溶媒の反
応性を適度に下げ、フッ素化溶媒の酸化分解を抑制することができると考
えられる。このようなメカニズムにより、充放電を繰り返した際の容量保
持率を高めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高めることが
できると考えられる。【0036】以下、本発明の一実施形態に係る非水
電解液二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)の構成及び製造方法に
ついて、リチウム二次電池(以下、単に「リチウム電池」ともいう。)を
例に詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成要素の名称は、背景
技術に用いられる各構成要素の名称と異なる場合がある。

【0037】<非水電解液二次電池>
本発明の一実施形態に係る電池は、正極と、負極と、非水電解液とを備える。
【0038】(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正
極合剤層とを有する。
【0039】正極基材は、導電性を有する。正極基材の材質としては、ア
ルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金
が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの
観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材として
は、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがっ
て、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。
アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2
014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0040】正極基材の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10
μmがより好ましい。正極基材の平均厚さの上限としては、50μmが好ま
しく、40μmがより好ましい。正極基材の平均厚さが上記下限以上であ
ることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さが
上記上限以下であることで、電池の体積当たりのエネルギー密度を高める
ことができる。「平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平
均値をいう。他の部材等に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定
義される。【0041】
中間層は、正極基材と正極合剤層との間に配される層である。中間層は、
炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極合剤層との
接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バイ
ンダ及び導電性を有する粒子を含む。「導電性」を有するとは、JIS-
H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω
・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が
10Ω・cm超であることを意味する。
【0042】正極合剤層は、正極活物質を含む。正極合剤層は、必要に応
じて、導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0043】本発明の正極には、硫黄系活物質とメソポーラスカーボンと
を複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体が含まれる。なお、ここで
いう複合とは、導電性材料から硫黄系活物質が離脱しない程度に、導電性
材料の表面に硫黄系活物質を固定化することをいう。
【0044】硫黄系活物質としては、単体硫黄、金属硫化物、及び有機硫
黄化合物等を挙げることができる。金属硫化物としては、Li(1
≦x≦8)、MS(M=Ni,Co,Cu,Fe,Mo,Ti、1≦x≦4)
等を挙げることができる。有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化
合物等を挙げることができる。
【0045】本明細書において、メソポーラスカーボンとは、メソ細孔容
積がミクロ細孔容積よりも大きい多孔性カーボンを意味する。メソ細孔容
積及びミクロ細孔容積はガス吸着法により算出される。具体的には以下の
とおりである。多孔性カーボンの試料を120℃で一晩乾燥する。その後、
この試料の77Kにおける窒素ガスの吸脱着等温線を測定する。測定した
吸脱着等温線の脱着側等温線から、BJH法及びMP法により細孔分布を
計算する。BJH法による計算結果から得られる、直径2nm以上50nm
以下の細孔に由来する細孔容積をメソ細孔容積とする。MP法による計算
結果から得られる、直径2nm未満の細孔に由来する細孔容積をミクロ細
孔容積とする。

なお、多孔性カーボンの試料を、非水電解液二次電池を解体して取り出し
た正極から回収する場合には、次の手順により準備する。まず、非水電解
液二次電池を0.05Cの電流で定電流充電する。定電流充電は、正極の
電位が3V(vs.Li/Li)となる電圧まで行う。次に、電流値が
0.02Cに減少するまで定電圧充電する。その後、非水電解液二次電池
を解体し、正極を取り出す。取り出した正極をDMC(ジメチルカーボネ
ート)で洗浄し、室温にて一昼夜の乾燥後、正極合剤を回収する。この正
極合剤を水で洗浄することで、硫黄-多孔性カーボン複合体を取り出す。
この硫黄-多孔性カーボンを200℃で加熱処理することで、測定に供す
る多孔性カーボンの試料を得る。
【0046】硫黄-メソポーラスカーボン複合体における硫黄系活物質の
含有割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。これ
により、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を高めつつ
、電子伝導性を高めることができる。
【0047】メソポーラスカーボンの単位質量あたりの全細孔容積は、硫
黄系活物質の放電状態における体積密度の1倍以上2倍以下であることが
好ましい。例えば、硫黄系活物質として充電時における体積密度が0.9
cm-1である単体硫黄を使用し、硫黄-メソポーラスカーボン複合
体における単体硫黄の含有割合を50質量%とする場合、単位質量あたり
の全細孔容積は0.9cm-1以上1.8cm-1以下とすること
が好ましい。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギ
ー密度を高めつつ、硫黄を細孔内に十分に保持することができる。
【0048】メソポーラスカーボンの単位質量あたりのメソ細孔容積は、
0.50cm-1以上2.0cm-1以下であると好ましく、
0.60cm-1以上1.8cm-1以下であるとより好ましく、
0.70cm-1以上1.5cm-1以下であるとさらに好ましい。
これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を高め
つつ、正極合剤のかさ密度の低下を抑制することができる。
【0049】メソポーラスカーボンの単位質量あたりのミクロ細孔容積は、
0.18cm-1以上0.50cm-1以下であると好ましく、
0.24cm-1以上0.44cm-1以下であるとより好ましく、
0.30cm-1以上0.38cm-1以下であるとさらに好まし
い。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を
高めつつ、正極合剤のかさ密度の低下を抑制することができる。
【0050】メソポーラスカーボンのミクロ細孔容積に対するメソ細孔容
積の比は、下限が1.0以上であればよく、1.5以上であるとより好ま
しく、2.0以上であるとさらに好ましい。これにより、硫黄-メソポー
ラスカーボン複合体における、硫黄系活物質の表面に形成された被膜と、
非水電解液との接触面積を大きくすることができる。ミクロ細孔容積に対
するメソ細孔容積の比の上限は特に限定されないが、例えば10以下であ
ってもよい。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体における硫
黄系活物質の電子伝導性を高めることができる。
【0051】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布において、
1.0nmから6.0nmの範囲にピークを有することが好ましい。これ
により、細孔内への電解液の浸透性を高めつつ、細孔内に担持される硫黄
系活物質粒子の大きさを小さくすることができる。
【0052】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布における
ピークが単一であることが好ましい。これにより、これにより、硫黄-メ
ソポーラスカーボン複合体中の硫黄系活物質粒子の粒子径が均一となり、
硫黄系活物質の利用率を高めることができる。
【0053】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布における
ピークの半値幅が、1.0nm以上2.5nm以下であると好ましい。こ
れにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体中の硫黄系活物質粒子の粒
子径が均一となり、硫黄系活物質の利用率を高めることができる。
【0054】メソポーラスカーボンの平均細孔径は、0.5nm以上15
nm以下であると好ましく、0.7nm以上10nm以下であるとより好
ましく、1.0nm以上6.0nm以下であるとさらに好ましい。なお、
ここでいう平均細孔径とは、BJH法により算出した全細孔容積をBET
比表面積で除した値を意味する。平均細孔径をこれらの下限以上とするこ
とで、硫黄-メソポーラスカーボン複合体に含まれる硫黄系活物質粒子の
大きさが小さくなり、イオン伝導性及び電子伝導性を高めることができる。
平均細孔径をこれらの上限以下とすることで、硫黄-メソポーラスカーボ
ン複合体の細孔内への非水電解液の浸透性を高めることができる。
【0055】メソポーラスカーボンのBET比表面積は、1000m
-1以上4000m-1以下であると好ましく、1500m-1
上3500m-1以下であるとより好ましく、2000m-1以上
3000m-1以下であるとさらに好ましい。これにより、硫黄系活
物質とメソポーラスカーボンとの接触面積を大きくすることができる。ま
た、硫黄-メソポーラスカーボン複合体に含まれる硫黄系活物質と非水電
解液との接触面積を大きくすることができる。
【0056】メソポーラスカーボンは、メソ細孔容積がミクロ細孔容積よ
りも大きい多孔性カーボンであればよく、形状及び大きさは特に限定され
ない。【0057】なお、本発明の一実施形態における正極は、硫黄系活
物質に加えて、硫黄系活物質以外の活物質を備えていてもよい。このよう
な活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。具体的に
は、リチウム遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物
等を挙げることができる。
【0058】
(任意成分)
正極合剤層は導電剤を含んでもよい。導電剤を含むことで、正極合剤層の
電子伝導性を高めることができる。導電剤は、導電性を有する材料であれ
ば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、黒鉛;ファー
ネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;金属;導電性
セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が
挙げられる。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレ
ンブラックが好ましい。
【0059】正極合剤層における導電剤の含有量の下限としては、1質量
%が好ましく、3質量%がより好ましい。導電剤の含有量の上限としては、
15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。導電剤の含有量を上
記範囲とすることで、電池の電気容量を高めることができる。
【0060】硫黄-多孔質カーボン複合体を用いる場合、多孔質カーボン
は導電剤としても機能する。このため、硫黄-多孔質カーボン複合体を用
いることで、正極合剤層に上述した導電剤を含まない場合であっても、良
好な電子伝導性を発揮できることが期待される。なお、硫黄-多孔質カー
ボン複合体と導電剤とは併用してもよい。
【0061】多孔質カーボンと導電剤とを併用する場合、正極合剤層にお
ける多孔質カーボン及び導電剤の合計の含有量の上限としては、40質量
%が好ましく、30質量%がより好ましい。
【0062】正極合剤層におけるバインダとしては、正極活物質等を固定
でき、かつ使用範囲で電気化学的に安定であるものが通常用いられる。バ
インダとしては、水系バインダを用いてもよいし、非水系バインダを用い
てもよい。
【0063】水系バインダは、水に分散又は溶解するバインダである。中
でも、20℃において、水100質量部に対して1質量部以上溶解するバ
インダが水系バインダとして好ましい。水系バインダとしては、例えば、
ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオ
キサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリア
クリル酸、ポリメタクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピ
レン(PP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ニトリル—ブタジエンゴ
ム、セルロース等が挙げられる。
【0064】非水系バインダは、N-メチルピロリドン(NMP)等の非
水溶媒に分散又は溶解するバインダである。中でも、20℃において、N
MP100質量部に対して1質量部以上溶解するバインダが非水系バイン
ダとして好ましい。非水系バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリ
デン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共
重合体(PVDF—HFP)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、
ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビ
ニル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボ
ネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースとキト
サンピロリドンカルボン酸塩との架橋重合体、キチン又はキトサンの誘導
体等が挙げられる。
【0065】バインダを用いる場合、バインダが水系であれば水を分散媒
とするペーストを形成し、バインダが非水系であれば非水溶媒を分散媒と
するペーストを形成する。形成したペーストは、正極基材に塗布・乾燥し、
正極合剤層を形成する。ここで、硫黄の昇華する温度は180℃程度であ
ることから、ペーストの分散媒には沸点が180℃よりも低い溶媒を用い
ることが好ましい。沸点が180℃よりも低い溶媒としては、融点が低く、
扱いが容易な水を用いるのが特に好ましい。このような事情から、バイン
ダには水系バインダを用いるのが好ましい。
【0066】正極合剤層におけるバインダの含有量の下限としては、1質
量%が好ましく、3質量%がより好ましい。バインダの含有量の上限とし
ては、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。バインダの含
有量を上記範囲とすることで、活物質を安定して固定することができる。
【0067】増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(C
MC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチ
ウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基
を失活させてもよい。
【0068】フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオラ
イト、ガラス、アルミナシリケイト等が挙げられる。
【0069】正極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非
金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典
型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo
、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増
粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0070】
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負
極合剤層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で
例示した構成から選択することができる。
【0071】負極基材は、導電性をする。負極基材の材質としては、銅、
ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又は
これらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負
極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好まし
い。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の
例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0072】負極基材の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5
μmがより好ましい。負極基材の平均厚さの上限としては、30μmが好ま
しく、20μmがより好ましい。負極基材の平均厚さが上記下限以上とす
ることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さが
上記上限以下とすることで、電池の体積当たりのエネルギー密度を高める
ことができる。
【0073】負極合剤層は、負極活物質を含む。負極合剤層は、必要に応
じて導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示し
た材料から選択できる。
【0074】負極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非
金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典
型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo
、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、
バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0075】負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択き
る。リチウム二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを
吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、
例えば、金属Li;Si、Sn、Sb等の金属又は半金属;Si酸化物、
Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化
合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭
素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。
【0076】これらの材料の中でも、作動電位が低い材料が好ましい。特
に金属Liを用いるのが好ましい。また本実施形態において、負極活物質
として黒鉛等のLiを含まない材料を用いる場合、正極及び負極いずれか
にリチウムイオンを挿入する工程が必要となる。これに対し、負極活物質
として金属Liを用いれば、上記リチウムイオンを挿入する工程を省ける
ことからも、金属Liが好ましい。負極合剤層においては、これら材料の
1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】なお、「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線
回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.
33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒
鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点
で、人造黒鉛が好ましい。
【0078】「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線
回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.
34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素の結晶子
サイズLcは、通常、0.80~2.0nmである。非黒鉛質炭素として
は、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素とし
ては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチ由来の材料、アルコール由来
の材料等が挙げられる。
【0079】ここで、「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含
む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において
、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li
対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池にお
ける開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電
位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7
V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵
放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
【0080】「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上
0.42nm以下の炭素材料をいう。難黒鉛化性炭素は、通常、非黒鉛質
炭素の中でも、3次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成し難い性質を
有する。
【0081】「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上
0.36nm未満の炭素材料をいう。易黒鉛化性炭素は、通常、非黒鉛質
炭素の中でも、3次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成し易い性質を
有する。【0082】
負極合剤層における負極活物質の含有量の下限としては、60質量%が好
ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。負極
活物質の含有量を上記下限以上とすることで、電池の電気容量を高めるこ
とができる。負極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく
98質量%がより好ましい。負極活物質粒子の含有量を上記上限以下とす
ることで、負極の製造が容易になる。
【0083】
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータと
して、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双
方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を
使用することができる。セパレータの基材層の材質としては、例えば、織
布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、
強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観
点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャット
ダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレ
フィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド
等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料
を用いてもよい。
【0084】耐熱層に含まれる耐熱粒子は、大気下で500℃にて重量減
少が5%以下であるものが好ましく、大気下で800℃にて重量減少が5
%以下であるものがさらに好ましい。重量減少が所定以下である材料とし
て無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケ
イ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニ
ウム、酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物等の酸化物;窒化アルミ
ニウム、窒化ケイ素等の窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫
酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結
合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタ
イト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナ
イト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、
2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、酸化ケ
イ素、酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物
が好ましい。【0085】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電
性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体
積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。【0086】
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを
用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエ
チレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、
ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等
が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、電池の漏液を抑制する効果があ
る。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等
とポリマーゲルを併用してもよい。
【0087】
(非水電解液)
非水電解液は、フッ素化溶媒を含む非水溶媒と、この非水溶媒に溶解され
ている電解質塩とを含む。非水電解液は、フッ素化溶媒として鎖状フッ素
化カルボン酸エステル、鎖状フッ素化カーボネート、又はこれらの組み合
わせを含む。
【0088】非水電解液は、例えば、式(1)で示される鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含む。
【化1】
000003
【0089】式(1)中、Rは水素又は1価の有機基であり、Rは1価
の有機基である。R及びRで示される有機基としては、例えば、炭素
数が1~10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール
基等の炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原
子(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素原子等)、オキシアルキレン基、スルホ
基、チオール基、アルデヒド基、シアノ基、アミド基等の官能基で置換さ
れた炭化水素基、これら炭化水素基において、-O-、-NH-、-N(
CH)-、-SO-、-CO-、-COO-等が介在した基等を挙げ
ることができる。
【0090】
及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原子がフッ素原
子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R及びRは、
のみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、Rのみがフッ素
化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化された炭化水素
基であってもよい。

【0091】この鎖状フッ素化カルボン酸エステルとしては、例えば、2,
2-ジフルオロ酢酸メチル、2,2,2-トリフルオロ酢酸メチル、2,
2,2-トリフルオロ酢酸エチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン
酸メチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸エチル、酢酸トリフル
オロメチル、酢酸2,2-ジフルオロエチル、酢酸2,2,2-トリフル
オロエチル、プロピオン酸トリフルオロメチル、プロピオン酸2,2,
2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸2,2
,2-トリフルオロエチル等が挙げられる。
【0092】非水電解液は、
例えば、式(2)で示される鎖状フッ素化カーボネートを含む。

【化2】
000004
【0093】
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立で1価の有機基である。R
びRで示される有機基としては、R及びRで例示したものと同様の
有機基等が挙げられる

                     この項つづく
【脚注】
1. 
メソポーラス材料: mesoporous material) は、細孔の直径が 2nm
ら50nmの多孔質材料である。多孔質材料は細孔の大きさに応じていくつ
かの種類に分類される。IUPACの表記によると、細孔の直径が 2 nm 未満
のものはミクロポーラス材料 (microporous material) 、50 nm より大き
いものはマクロポーラス材料 (macroporous material) とされ、メソポー
ラス材料はその中間にあたる。メソポーラス材料の代表例として、同じよ
うな大きさの微細なメソ細孔を持つ二酸化ケイ素メソポーラスシリカ
酸化アルミニウムが挙げられる。メソポーラスな、ニオブタンタル
チタンジルコニウムセリウムスズの各酸化物も報告されている。
IUPACによると、メソポーラス材料には、秩序立ったメソ構造を持つもの
もあれば、無秩序なメソ構造を持つものもある。イオン結晶の物質では、
メソポーラスな構造は単位格子の数を著しく制限するため、固体の化学的
性質を大きく変化させる。例えば、電気活性物質にメソポーラス材料を使
った電池の性能は、そうでないものと比べ、大きく異なっている


窒素含有規則性メソポーラスカーボン (nitrogen-containing ordered
mesoporous carbon, N-OMC) の電子顕微鏡画像。 (a) はチャネル細孔に
沿った方向から、 (b) は、チャネル細孔と垂直な方向から見たもの。
2.  特許6,182,901 カーボン硫黄複合体の製造方法 東レ株式会社
 
 今日の楽曲  映画音楽 『キンムダム』
          『
ONE OK ROCK - Delusion:All
 

 今日の言葉:

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エネルギーと環境㊽

2024年11月12日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:11月13日】

        冬北斗気鬱と言えど心は昴 
                    高山 宇 (赤鬼)

※11月に台風が三つとは記録にないと報じる。
 やんぬるかな むべなり。
 





 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖⓷

リチウム二次電池の安全工学的考察⓷

1. 特開2024-159862 正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 
 エコプロ  ビーエム  カンパニー  リミテッド※
※掲載文字数が大きく、詳細に渡り考察したいので、分割掲載する

【要約】図1のごとく、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
関し、より具体的に、所定の条件で充放電を行ったとき、3サイクル目の
電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、Y軸を、前記電
池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラフにおいて、
所定のピーク強度比および電圧比を示す正極活物質とこれを含むリチウム
二次電池
に関する。


【背景技術】リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカ
レーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質と
して使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を
充填させて製造する。リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム
複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn
、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】  前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放
電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用される
コバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるとい
う短所を有している。
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全
に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪
いという問題点がある。また、
LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、
Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation  mixing)
問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大
きな問題点がある。【0007】また、このようなカチオンミキシングの
深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi
副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、
正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充
放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルの
スウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリ
ーが膨らむ原因となる。【0007】  また、このようなカチオンミキシン
グの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらの
Li副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるの
で、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後
に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セ
ルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッ
テリーが膨らむ原因となる。【0008】このような短所を補完するため
に、二次電池の正極活物質としてNi含量が50%以上のHigh-Ni
正極活物質の需要が増加し始めた。しかしながら、このようなHigh-
Ni正極活物質は、高容量特性を示すが、正極活物質中のNi含量が増加
するにつれて、Li/Ni  cation  mixingによる構造的不安
定性をもたらす問題点がある。このような正極活物質の構造的不安定性に
よって高温だけでなく常温でもリチウム二次電池が急激に劣化することが
ある。 したがって、このようなHigh-Ni正極活物質の問題点を補完
するための正極活物質の開発が必要である。

【発明の概要】【0014】特に、本出願人は、正極活物質中、Ni含量
が50%以上、好ましくは、80%以上のHigh-Ni正極活物質にお
いて、前記正極活物質を所定の条件で充放電を行ったとき、3サイクル目
の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、Y軸を前記電
池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラフにおいて前
記正極活物質が所定のピーク強度比および電圧比を満たす場合、前記正極
活物質の電気化学的特性および安定性がさらに向上することができること
を知見するに至った。【0015】これによって、本発明は、所定の条件
で充放電を行ったとき、3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、
X軸を前記電圧Vとし、Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値
dQ/dVで示したグラフにおいて、後述する所定のピーク強度比および
電圧比を示す正極活物質を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】【0018】本発明の一態様によれば、リ
チウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能なリチウ
ム複合酸化物を含む正極活物質が提供される。前記正極活物質に含まれた
前記リチウム複合酸化物は、少なくともNiとCoを含むことができる。
また、前記リチウム複合酸化物は、NiおよびCoに加えて、Mnおよび
/またはAlをさらに含むことができる。一実施例において、前記正極活
物質は、前記正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とするリチウ
ム二次電池
において下記の充放電条件で充放電を行ったとき、

 [充放電条件]
  1サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  2サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  3サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.4V
  -充電:1C(CCCV)/放電:1C(CC)
【0022】サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電
圧Vとし、Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで
示したグラフにおいて、下記の式1によって定義されたピーク強度比(A)
を満たすことができる。  
[式1]
  I1/I2≧1.4
 (式1で、I1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間に現れるピークの
y軸値dQ/dVであり、I2は、充電領域で3.8V~4.1Vの間に
現れるピークのy軸値dQ/dVである)
また、前記正極活物質は、下記の化学式1で表されるリチウム複合酸化物
を含むことができる。
  [化学式1]
  LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
【0027】
 (ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
 M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、
Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、
M1~M3は、互いに異なり  0.90≦a≦1.05、0≦b≦0.10、
0≦c≦0.10、0≦d≦0.025、0≦e≦0.025、1.0≦f≦
2.0である)
また、本発明の他の態様によれば、本願に定義された正極活物質を含む正
極が提供される。しかも、本発明のさらに他の態様によれば、本願に定義
された正極を使用するリチウム二次電池が提供される。

【発明の効果】【0030】 本発明による正極活物質は、所定の条件で充
放電を行ったとき、3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸
を前記電圧Vとし、Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ
/dVで示したグラフにおいて、所定のピーク強度比および電圧比を示し、
この場合、Ni含量が50%以上、好ましくは、80%以上のHigh-
Ni正極活物質の高容量特性を維持すると同時に、High-Ni正極活
物質の短所として指摘された構造的不安定性を改善することができる。
 また、本発明による正極活物質は、平均粒径が互いに異なる小粒子の第1
リチウム複合酸化物および大粒子である第2リチウム複合酸化物を含むバ
イモーダル(bimodal)形態の正極活物質であり、大粒子間の空隙
を相対的に平均粒径が小さい小粒子で充填することができるようになるこ
とによって、単位体積内リチウム複合酸化物の集積密度が向上して、単位
体積当たりのエネルギー密度を高めることができる
【0032】しかも、本発明による正極活物質は、前記正極活物質を構成
するリチウム複合酸化物の結晶粒界の密度を低くして、前記リチウム複合
酸化物の表面積および粒界面を減少させることができ、これを通じて、前
記正極活物質と電解液間の副反応の可能性を減らして、前記正極活物質の
高温安定性だけでなく、貯蔵安定性を向上させることができる。

【発明を実施するための形態】
【0034】本発明をさらに容易に理解するために便宜上特定の用語を本
願に定義する。本願において別途定義しない限り、本発明に使用される科
学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者に
より一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に別途指定しな
い限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態
の用語は、それの単数形態も含むものと理解すべきである。
以下、本発明による正極活物質および前記正極活物質を含むリチウム二次
電池についてより詳細に説明する。
【0036】  正極活物質
  本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーション/デインタ
ーカレーションが可能なリチウム複合酸化物を含む正極活物質が提供され
る。
【0037】前記正極活物質に含まれた前記リチウム複合酸化物は、少な
くともNiとCoを含むことができる。また、前記リチウム複合酸化物は、
NiおよびCoに加えて、Mnおよび/またはAlをさらに含むことがで
きる。
【0038】一実施例において、前記正極活物質は、小粒子の第1リチウ
ム複合酸化物と、大粒子の第2リチウム複合酸化物とを含むバイモーダル
(bimodal)形態の正極活物質でありうる。
【0039】この場合、大粒子間の空隙を相対的に平均粒径が小さい小粒
子で充填することができるようになることによって、単位体積内リチウム
複合酸化物の集積密度が向上して、単位体積当たりのエネルギー密度を高
めることができる。
【0040】本願において小粒子および大粒子の平均粒径D50の範囲は、
特に制限されものではないが、任意のリチウム複合酸化物が小粒子または
大粒子であるかを区分するために、下記のような小粒子および大粒子の平
均粒径D50の基準範囲が決定され得る。
【0041】小粒子は、平均粒径D50が8μm以下のリチウム複合酸化物
を意味し、大粒子は、平均粒径D50が8.5μm以上のリチウム複合酸化
物を意味する。前記大粒子の平均粒径D50の上限は制限がないが、例え
ば、前記大粒子は、8.5~23.0μmの平均粒径を有することができる。

【0042】本発明の多様な実施例によるバイモーダル形態の正極活物質
は、上記に定義された平均粒径D50を示す前記第1リチウム複合酸化物
および前記第2リチウム複合酸化物が5:95~50:50の重量比で混
合された状態で存在することができる。この際、前記第1リチウム複合酸
化物は、前記第2リチウム複合酸化物間の空隙内充填された形態で存在し
たり、前記第2リチウム複合酸化物の表面に付着したり、前記第1リチウ
ム複合酸化物どうし凝集した形態で存在することもできる。なお、前記正
極活物質中、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸
化物は、5:95~50:50の重量比で存在することが好ましい
前記正極活物質中、前記第2リチウム複合酸化物に比べて前記第1リチウ
ム複合酸化物の割合が過度に多かったり過度に少ない場合、かえって前記
正極活物質のプレス密度が減少するにつれて、前記正極活物質の単位体積
当たりのエネルギー密度の向上効果が微小になり得る。なお、前記正極活
物質に含まれた前記リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表され得る。
もし前記正極活物質が、小粒子の第1リチウム複合酸化物および大粒子の
第2リチウム複合酸化物を含む場合、前記第1リチウム複合酸化物および
前記第2リチウム複合酸化物も、下記の化学式1で表され得る。
【0047】
  [化学式1]LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
 (ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
  M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、
Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから
選ばれ、  M1~M3は、互いに異なり、0.90≦a≦1.05、0≦b
≦0.10、0≦c≦0.10、0≦d≦0.025、0≦e≦0.025、
1.0≦f≦2.0である)
また、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合酸化物は、上
記化学式1で表され、同じ組成を有するリチウム複合酸化物でありうるが、
必ずこれに制限されるものではない。例えば、前記第1リチウム複合酸化
物と前記第2リチウム複合酸化物は、同じ組成を有し、かつ、平均粒径が
異なる前駆体の焼成により合成され得、または、前記第1リチウム複合酸
化物と前記第2リチウム複合酸化物は、異なる組成を有し、平均粒径が異
なる前駆体の焼成により合成
され得る。
【0050】なお、上記化学式1で表されるリチウム複合酸化物は、Ni
の含量(モル比)が80%以上のHigh-Niタイプのリチウム複合酸
化物でありうる。この際、前記リチウム複合酸化物中Niの含量は、下記
のように、下記の化学式1中、b+c+d+eの値によって決定され得る。
  Ni(mol%)/(Ni+Co+M1+M2+M3)(mol%)≧80
本発明による正極活物質は、所定の条件で充放電を行ったとき、3サイク
ル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、Y軸を前
記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラフにおい
て、所定のピーク強度比および電圧比を示し、この場合、Ni含量が50
%以上、好ましくは、80%以上のHigh-Ni正極活物質の高容量特
性を維持すると同時に、High-Ni正極活物質の短所として指摘され
た構造的不安定性を改善することができる。

 具体的に、前記正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とするリチ
ウム二次電池において下記の充放電条件で充放電を行ったとき、
【0054】【充放電条件]
  1サイクル:
 -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  2サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  3サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.4V
  -充電:1C(CCCV)/放電:1C(CC)
【0055】3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記
電圧Vとし、Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで
示したグラフ(図1参照)において、前記正極活物質は、下記の式1によ
って定義されたピーク強度比(A)を満たすことができる。に説明するこ
ととする。
【0056】[式1] I1/I2≧1.4
【0057】  (式1で、I1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間に
現れるピークのy軸値dQ/dVであり、I2は、充電領域で3.8V~
4.1Vの間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
【0058】前記正極活物質は、充電時に結晶構造の変化(相変態;phase 
 transformation)が発生し得、I1は、H1(hexagonal  1)
からM(monoclinic)への相変態領域(H→M)に現れるピー
クのy軸値dQ/dVであり、I2は、M(monoclinic)から
H2(hexagonal  2)への相変態領域(M→H2)に現れるピー
クのy軸値dQ/dVである。
【0059】  この際、H1→M相変態領域に比べてM→H2相変態領域に
おいて結晶構造の変化によって前記正極活物質に加えられるダメージが相
対的にもっと大きいことがあり得、これによって、前記正極活物質の結晶
構造の崩壊が引き起こされ得る。したがって、I1/I2が1.4以上、
好ましくは1.4以上1.92以下の値を有する場合、前記正極活物質の
安定性を向上させるのに有利であり得る。
【0060】また、前記正極活物質は、下記の式2によって定義されたピ
ーク強度比(B)を満たすことができる。
【0061】  [式2]
  I1/I3≧0.7
【0062】(式2で、I1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間に現
れるピークのy軸値dQ/dVであり、I3は、充電領域で4.1V~
4.4Vの間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
【0063】 同様に、I3は、H2(hexagonal  2)からH3
(hexagonal  3)への相変態領域(H2→H3)に現れるピーク
のy軸値dQ/dVであり、式1と同様に、H1→M相変態領域に比べて
H2→H3相変態領域において結晶構造の変化によって前記正極活物質に
加えられるダメージが相対的にもっと大きいことがあり得る。 したがって、
I1/I3が0.7以上、好ましくは0.7以上1.41以下の値を有す
る場合、前記正極活物質の安定性を向上させるのに有利であり得る。
【0064】また、前記正極活物質は、下記の式3によって定義されたピ
ーク強度比(C)を満たすことができる。
【0065】 [式3]  I2/I3≧0.5
【0066】  (式3で、I2は、充電領域で3.8V~4.1Vの間に
現れるピークのy軸値dQ/dVであり、I3は、充電領域で4.1V~
4.4Vの間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
この際、M→H2相変態領域に比べてH2→H3相変態領域において結晶
構造の変化によって前記正極活物質に加えられるダメージが相対的にもっ
と大きいことがあり得る。したがって、前記I2に比べて前記I3が相対
的に小さいことによって、I2/I3が0.5以上の値を有する場合、前
記正極活物質の安定性の向上に寄与することができる。
また、前記正極活物質は、下記の式4によって定義されたピーク強度比
(D)を満たすことができる。
【0069】  [式4]  DI1/DI2≧1.25
(式4で、DI1は、放電領域で3.0V~3.8Vの間に現れるピーク
のy軸値dQ/dVであり、DI2は、放電領域で3.8V~4.1Vの
間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
前記正極活物質は、放電時にも、充電反応と同様に、結晶構造の変化が発
生し得、結晶構造の変化は、充電反応と逆順に起こり得る。
【0072】具体的に、DI1は、M(monoclinic)からH1
(hexagonal  1)への相変態領域(M→H1)に現れるピークの
y軸値dQ/dVであり、DI2は、H2(hexagonal  2)から
M(monoclinic)への相変態領域(H2→M)に現れるピーク
のy軸値dQ/dVである。
【0073】この際、M→H1相変態領域に比べてH2→M相変態領域に
おいて結晶構造の変化によって前記正極活物質に加えられるダメージが相
対的にもっと大きいことがあり得、これによって、前記正極活物質の結晶
構造の崩壊が引き起こされ得る。 したがって、DI1/DI2が1.25
以上、好ましくは1.25以上1.46以下の値を有する場合、前記正極
活物質の安定性を向上させるのに有利であり得る。
【0074】  また、前記正極活物質は、下記の式5によって定義されたピ
ーク強度比(E)を満たすことができる。
【0075】  [式5]  DI1/DI3≧0.41
【0076】  (式5で、DI1は、放電領域で3.0V~3.8Vの間
に現れるピークのy軸値dQ/dVであり、DI3は、放電領域で4.1
V~4.4Vの間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
【0077】同様に、DI3は、H3(hexagonal  3)からH2
(hexagonal  2)への相変態領域(H3→H2)に現れるピーク
のy軸値dQ/dVであり、式4と同様に、H2→M相変態領域に比べて
H3→H2相変態領域において結晶構造の変化によって前記正極活物質に
加えられるダメージが相対的にもっと大きいことがあり得るので、前記D
I3のピーク強度が前記DI1に比べて小さい値を有することによって
、DI1/DI3が0.41以上の値を有する場合、前記正極活物質の安
定性の観点から好ましい。
【0078】また、前記正極活物質は、下記の式6によって定義されたピ
ーク強度比(F)を満たすことができる。
【0079】  [式6]  DI2/DI3≧0.34
【0080】(式6で、DI2は、放電領域で3.8V~4.1Vの間に
現れるピークのy軸値dQ/dVであり、DI3は、放電領域で4.1V
~4.4Vの間に現れるピークのy軸値dQ/dVである)
【0081】この際、H2→M相変態領域に比べてH3→H2相変態領域
において結晶構造の変化によって前記正極活物質に加えられるダメージが
相対的にもっと大きいことがあり得る。 したがって、DI2/DI3が
0.34以上、好ましくは0.34以上0.58以下の値を有する場合、
前記正極活物質の安定性を向上させるのに有利であり得る。
【0082】しかも、前記正極活物質は、下記の式7によって定義された
電圧比(G)を満たすことができる。
【0083】[式7] |ΔV1=(V1-DV1)|≦0.05
 (式7で、V1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間に現れるピークの
x軸値Vであり、DV1は、放電領域で3.0V~3.8Vの間に現れる
ピークのx軸値Vである)
V1は、充電時にI1ピークの電圧値であり、DV1は、放電時にDI1
ピークに対応する電圧値であり、理想的にI1ピークの電圧値とDI1ピ
ークの電圧値が同一でなければならないが、抵抗または速度論的問題によ
ってI1ピークの電圧値とDI1ピークの電圧値に差異が発生するしかな
い。ただし、少なくとも式1~式6を満たす正極活物質の場合、優れた抵
抗特性を示すことによって、式7で示すΔV1は、0.05以下、好まし
くは0.022以下 の値を有することが可能である。

【0086】 Niを含むリチウム複合酸化物の場合、LiとNiのカチオ
ンミキシングによって前記リチウム複合酸化物の表面に残留リチウム、す
なわちLiOHおよびLiCOのようなLi不純物が形成され得る。
このようなLi不純物は、前記Li不純物は、正極を製造するためのペー
ストの製造時にゲル(gel)化したり、セルのスウェリング現象を引き
起こす原因として作用することができる。
【0087】このようなLi不純物は、High-Niタイプの正極活物
質においてさらに多量で形成され得るが、後述するように、本発明による
正極活物質は、前記リチウム複合物の表面のうち少なくとも一部をカバー
し、金属酸化物を含むコーティング層を形成する過程で前記リチウム複合
酸化物の表面に存在するLi不純物を除去することができるというメリッ
トがある。
【0088】より具体的に、前記正極活物質は、前記リチウム複合酸化物
の表面のうち少なくとも一部をカバーし、金属酸化物を含むコーティング
層を含むことができる。また、前記コーティング層に含まれた前記金属酸
化物は、下記の化学式2で表され得る。この際、前記コーティング層は、
前記リチウム複合酸化物の表面のうち下記の化学式2で  表される金属酸
化物が存在する領域と定義され得る。
【0090】  [化学式2]  LiM4
  (ここで、M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、
Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、
Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、Gdおよび
Ndから選ばれる少なくとも1つであり、0≦x≦10、0≦y≦8、2
≦z≦13である)
また、前記コーティング層は、1層内異種の金属酸化物が同時に存在した
り、上記の化学式2で表される異種の金属酸化物がそれぞれ別個の層に存
在する形態でありうる。
上記の化学式2で表される金属酸化物は、上記の化学式1で表される1次
粒子と物理的および/または化学的に結合した状態でありうる。また、前
記金属酸化物は、上記の化学式1で表される1次粒子と固溶体を形成した
状態で存在することもできる。
【0094】 本実施例による正極活物質は、前記第1リチウム複合酸化物
および前記第2リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバー
するコーティング層を含むことによって、構造的な安定性が高くなりえる。
また、このような正極活物質をリチウム二次電池に使用する場合、正極活
物質の高温貯蔵安定性および寿命特性が向上することができる。また、前
記金属酸化物は、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複
合酸化物の表面のうち残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオ
ンの移動経路(pathway)として作用することによって、リチウム
二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。

【0095】また、前記金属酸化物は、リチウムとAで表される元素が複
合化した酸化物であるか、Aの酸化物であり、前記金属酸化物は、例えば、
Li、LiZr、LiTi、LiNi
Li、LiCo、LiAl、Co、Al
、W、Zr、TiまたはB等でありうるが、
上述した例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願に
定義された前記金属酸化物は上述した例に制限されない。

【0096】他の実施例において、前記金属酸化物は、リチウムとAで表
される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物であるか、リチウムとA
で表される少なくとも2種の元素が複合化した金属酸化物をさらに含むこ
とができる。リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した
金属酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)
、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/B)
ありうるが、必ずこれらに制限されるものではない。
ここで、前記金属酸化物は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中
心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これによって、前
記金属酸化物の濃度は、前記2次粒子の最表面から前記2次粒子の中心部
に向かって減少することができる。

【0098】上述したように、前記金属酸化物が前記2次粒子の表面部か
ら前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、
前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを効果的に減少させて、未
反応の残留リチウムによる副反応をあらかじめ防止することができる。ま
た、前記金属酸化物によって前記正極活物質の表面の内側領域での結晶性
が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中に前記金属
酸化物によって正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止すること
ができる。
しかも、前記コーティング層は、上記の化学式2で表される少なくとも1
つの金属酸化物を含む第1酸化物層と、上記の化学式2で表される少なく
とも1つの金属酸化物とを含み、かつ、前記第1酸化物層に含まれた金属
酸化物と異なる金属酸化物を含む第2酸化物層を含むことができる。

【0100】例えば、前記第1酸化物層は、前記2次粒子の最外郭に存在
する前記1次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするよう
に存在することができ、前記第2酸化物層は、前記第1酸化物層によって
カバーされていない前記1次粒子の露出した表面および前記第1酸化物層
の表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在することができる。
なお、前記第1リチウム複合酸化物および前記第2リチウム複合酸化物が
少なくとも1つの1次粒子を含む複合粒子であると定義するとき、前記コ
ーティング層は、前記複合粒子の表面(例えば、2次粒子)のうち少なく
とも一部をカバーするだけでなく、前記複合粒子を構成する複数の1次粒
子の間の界面にも存在することができる。
また、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前記2次粒子
の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在すること
ができる。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、前記コーティ
ング層は、アイランド(island)形態で存在することができる。他
の場合において、前記コーティング層は、前記1次粒子および/または前
記1次粒子が凝集して形成された前記2次粒子と境界を形成しない固溶体
の形態で存在することもできる。

【0103】  なお、前記コーティング層は、前記リチウム複合酸化物の
前駆体と上記化学式2で表される金属酸化物の原料物質を混合した後に1
次焼成したり、前記リチウム複合酸化物の前駆体を1次焼成した後に、上
記化学式2で表される金属酸化物の原料物質を混合した後、2次焼成する
ことによって得られる。
【0104】また、リチウムのインターカレーション/デインターカレー
ションが可能な前記リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの1次粒子を
含む複合粒子でありうる。もし、前記リチウム複合酸化物が複数の1次粒
子を含む場合、前記複数の1次粒子は、互いに凝集した凝集体である2次
粒子として存在することができる。
【0105】前記1次粒子は、1つの結晶粒(grain  or  crystal
lite)を意味し、2次粒子は、複数の1次粒子が凝集して形成された
凝集体を意味する。前記2次粒子を構成する前記1次粒子の間には、空隙
および/または結晶粒界(grain  boundary)が存在するこ
とができる。
【0106】特に、本発明によれば、リチウム複合酸化物の結晶粒界の密
度を低くして、前記リチウム複合酸化物の表面積および粒界面を減少させ
ることができ、これを通じて、前記正極活物質と電解液間の副反応の可能
性を減らして、前記正極活物質の高温安定性だけでなく、貯蔵安定性を向
上させることができる。
【0107】具体的に、前記リチウム複合酸化物は、断面SEMイメージ
で前記リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想直線L上に配置された1次
粒子Pに対して下記の式8で計算される結晶粒界の密度が0.90以下で
ありうる。
【0108】[式8]  結晶粒界の密度=(前記仮想の直線L上に配置さ
れた1次粒子間の境界面Bの数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子
Pの数)
  図2および図3は、本願に定義された結晶粒界の密度を算出するリチウ
ム複合酸化物の断面を概略的に示す図である。図2および図3を参照して
計算されたリチウム複合酸化物の結晶粒界の密度は、下記の表1に示した。

 

図2 本願に定義された結晶粒界の密度算 図3.本願に定義された結晶粒界の密度算
出するリチウム複合酸化物の断面概略図  出リチウム複合酸化物の断面の概略図

000003
【0111】この際、前記リチウム複合酸化物は、図2に示されたように、
仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界面(結晶粒界)の数が1個で
あり、前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数が2個であることによ
って、結晶粒界の密度が0.5の構造を有することができる。また、別途
図示してはいないが、前記リチウム複合酸化物は、単一の1次粒子で構成
された単結晶構造のリチウム複合酸化物でありうる。
【0112】前記式8で表される前記結晶粒界の密度が0.90以下の値
を有することによって、前記リチウム複合酸化物の表面積および粒界面を
減少させることができ、これを通じて、前記正極活物質と電解液間の副反
応の可能性を減らして、前記正極活物質の高温安定性だけでなく、貯蔵安
定性を向上させることができる。
【0113】また、前記正極活物質が、小粒子の第1リチウム複合酸化物
および大粒子の第2リチウム複合酸化物を含むバイモーダル(bimodal)
形態の正極活物質である場合、前記第1リチウム複合酸化物および前記第
2リチウム複合酸化物の結晶粒界の密度は、いずれも、0.90以下、好
ましくは、0.75以下でありうる。

【0114】  リチウム二次電池
 本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形
成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活
物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。
したがって、正極活物質は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、
具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説
明することとする。【0125】前記リチウム二次電池は、前記正極、前
記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池
容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。【0126】
  前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層と
を含むことができる。【0127】前記負極集電体は、電池に化学的変化
を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限される
ものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケ
ル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、
チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使
用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを
有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、
負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シー
ト、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用さ
れ得る。【0128】  前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導
電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を
前記負極集電体に塗布して製造され得る。【0129】
 前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよ
びデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例と
しては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材
料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si
合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物
;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジ
ウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;
またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物
と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまた
は二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リ
チウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素
および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟
化炭素(soft  carbon)および硬化炭素(hard  carbon)
が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状
または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish  
graphite)、熱分解炭素(pyrolytic  carbon)
、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase  pitch  based  
carbon  fiber)、炭素微小球体(meso-carbon
  microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase  pitches)
および石油と石炭系コークス(petroleum  or  coal  
tarpitch  derived  cokes)等の高温焼成炭素が代表
的である。【0130】
  前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt
%で含まれ得る。
【0131】  前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に
助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として
0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、
ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カル
ボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセル
ロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレ
ン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリ
マー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、
ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙
げられる。【0132】 前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上
させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10w
t%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、
当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、
特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;ア
セチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブ
ラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素
繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケ
ル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;
酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材
等が使用され得る。【0133】
 一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、お
よび選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製
造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、
または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持
体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションするこ
とによって製造され得る。
【0134】なお、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正
極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、
リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な
制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であ
りかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性
高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エ
チレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/
メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多
孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。
また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテ
レフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐
熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が
含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層また
は多層構造で使用され得る。【0135】また、本発明において使用され
る電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電
解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体
無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるもので
はない。【0136】具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム
塩を含むことができる。
                           この項つづく

 今日の楽曲 映画 『白雪姫(Snow White and the Seven Dwarfs)』
         予告編 trailer 1937年





※梅田は曽根崎小学校とあって、ウォルトディズニー映画とともに成長した。
 今日はできる限り楽しんでみた。
今日の言葉:NEXT NINE YEARS  さぁ、楽しもう!

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生命と非生命のあいだ ⑥

2024年11月09日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

 

【季語と短歌:11月9日】

         突然の打ち上げ花火秋深む 

                高山 宇 (赤鬼)        

 

⬛ デブリ、初の取り出し成分分析し廃炉工程検討・福島第一
7日、東京電力は福島第一原発2号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)
の試験的な取り出しを完了したと公表。燃料デブリを取り出したのは、
2011年の原発事故後初めて。成分や構造を分析し、今後の取り出しや
保管方法の検討に生かすという。
東電はこの日、原子炉格納容器の外側に
設けた「隔離箱」から、燃料デブリが入った容器を出した。現場で、この
容器をさらにバケツ型の専用容器に収め、取り出し作業が完了。
採取した
燃料デブリの大きさは5ミリ以下。5日の測定では、20センチの距離で放射
線量
は毎時約0.2ミリシーベルトだった。今後、茨城県大洗町にある日本
原子力研究開発機構
の施設に運び、成分などを分析する。(朝日新聞)
福島第一原発2号機では、事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざ
り合った核燃料デブリの試験的な取り出し作業がことし9月から行われた。
福島第一原発の1号機から3号機の格納容器の内部にはあわせておよそ880
トンの核燃料デブリがあると推定されていて、その取り出しは「廃炉最大
の難関」とされ、東京電力は、今後の分析で得られるデータは本格的な取
り出し工法の検討に欠かせないとしていて、廃炉を新たな段階に進めるこ
とができるか注目されている。(NHK)




⬛ 立民 独自経済対策 総額7兆4,000円規模
7日、政府・与党が新たな経済対策を検討する中、立憲民主党は独自の対
案として、能登半島の復旧・復興支援や、社会保険料の負担に関わる「年
収130万円の壁」の見直しなどを盛り込んだ、総額7兆4000億円規模の経
済対策をまとめた。衆議院選挙で議席を大幅に増やした立憲民主党は、政
権担当能力を示すためにも政策の実現性を高めていく必要があるとして、
独自の経済対策をまとめた。(NHK)

この中では、能登半島の復旧・復興を加速するため最大300万円が支給さ
れる「被災者生活再建支援金」を増額するとともに、公費解体の対象とな
る建物を、全壊や半壊だけでなく、準半壊や一部損壊にも拡大するなどと
している。

また、厚生年金が適用されていない企業などで働く人が、年収130万円を
超えると扶養を外れて国民年金などの保険料負担が生じる「130万円の壁」
を見直し、年収200万円までの人を対象に、保険料負担を穴埋めする給付
を行うとしています。さらに、公立小中学校の給食費の無償化なども盛り
込んでいて、対策の規模は総額で7兆4000億円程度になるとしている。
卵が先か鶏が先か?|pyama@KBI48

「卵が先かニワトリが先か」問題の答えが判明?!
古来から哲学的な問いとして、原因と結果が循環してしまうような状況を
「卵が先かニワトリが先か」と呼ばれ、これはあくまでも例えなのだが、
生物学の世界では実際にどっちが先なのかについて昔から議論が重ねられ
ている。そんな中、ジュネーブ大学の研究チームが「卵が先である可能性
が高い」と主張する論文が提出された。「卵が先かニワトリが先か」問題
は2000年以上にわたる人類を悩ませてきた難問、2024年にはこの問題の
議論で白熱し、殺人事件が発生するほど。古くは紀元前4世紀頃に哲学者
のアリストテレスが「この問題は無限の連続である」と論じ、1世紀頃に
ギリシアの哲学者プルタルコスが哲学的な問いとして自著に記し、「世界
には始まりがあったかどうかという重大な問題である」という。

ジュネーブ大学の研究チームは、2017年にハワイ周辺の海底堆積物から発
見された単細胞生物のChromosphaera perkinsiiを研究。この生物は10億
年以上前に動物の進化系統から分岐し、単細胞生物から多細胞生物に移行
した謎の答えが眠っているのではと考えられていた。
研究チームは、Chromosphaera perkinsiiの細胞が最大サイズに達すると、
それ以上成長せず分裂し、動物の初期胚発生段階に類似した多細胞コロニ
ーを形成するとした。このコロニーはライフサイクルの約3分の1にわたっ
て持続し、少なくとも2つの異なる細胞タイプを含むという特徴を示した。
以下はChromosphaera perkinsiiが多細胞コロニーを形成し。赤い部分が
細胞膜で、青い部分はDNAを含む核に当たる。

Chromosphaera perkinsiiは単細胞生物ですが、この特徴は地球上に最初
の動物が出現するずっと前から多細胞の調整と分化のプロセスがすでに存
在することを示すとジュネーブ大学のオマヤ・ドゥディン准教授が話し、
さらに遺伝子活性の分析により、これらのコロニーは動物の胚で観察され
るものと興味深い類似性を持っていることが明らかなった。結果、胚発生
の原理が動物の出現以前から存在していたか、あるいはChromosphaera
perkinsiiが独立し多細胞発生のメカニズムを進化させた可能性を示唆、研
究チームは「複雑な多細胞発生を制御する遺伝的プログラムがすでに10億
年前から存在していたかもしれない」と話し、今回の結果にしたがうと、
自然は『ニワトリを発明する』よりはるか前に『卵を作る遺伝的ツールを
持っていた』ことになり、「卵が先」である可能性が高いという。
【掲載誌】
1.The egg or the chicken? An ancient unicellular says egg! - Medias - UNIGE
https://www.unige.ch/medias/en/2024/loeuf-ou-la-poule-un-unicellulaire
-ancestral-dit-loeuf

2.A multicellular developmental program in a close animal relative | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08115-3 (via Gigazine

 

新方式の量子コンピュータを実現
~世界に先駆けて汎用型光量子計算プラットフォームが始動~
11月8日、理化学研究所らの研究グループは、新方式の量子コンピュータ
の開発に成功した。これは世界に先駆けた汎用型光量子計算のためのプラ
ットフォームとなる。
量子コンピュータは量子力学の原理を計算に利用す
ることで、さまざまな問題が超高速で解けると期待され、世界中で激し
い開発競争が行われています。理研量子コンピュータ研究センタでも2023
年に超伝導方式の量子コンピュータを公開。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


日本発、世界初となる驚異の量子コンピューターの実現が、秒読み段階に
入った。光を使った独自の方式により、量子コンピューター開発のトップ
を走る著者が、その仕組みと理論を徹底解説。スーパーコンピューターを
はるかに凌ぐ高速計算と低消費電力を両立させる量子コンピューターの実
現へ向けて、現在、さまざまな方式が模索されている。世界中で競争が激
化する中、圧倒的な勢いを見せるのが、光を使った量子コンピューターの
研究だ。革新的な光量子コンピューターが完成する日は、もう間近に迫っ
ている。

目次
第1章 量子の不可思議な現象
第2章 量子コンピューターは実現不可能か
第3章 光の可能性と優位性
第4章 量子テレポーテーションを制する
第5章 難題打開への布石
第6章 実現へのカウントダウン

著者等紹介
古澤明[フルサワアキラ]物理学者。1961年、埼玉県生まれ。1984
年、東京大学工学部物理工学科卒業。1986年、同大学大学院工学系研
究科物理工学専攻修士課程修了、株式会社ニコン入社。東京大学先端科学
技術研究センター研究員、カリフォルニア工科大学客員研究員、東京大学
大学院工学系研究科助教授を経て、2007年から東京大学大学院工学系
研究科教授



量子コンピュータが本当にわかる!
第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性
Googleが「量子超越性」の実証を発表するなど、量子コンピュータ周辺の
ニュースが世間を騒がせるようになってきた。一方で、華々しい話を強調
しすぎるあまり、量子コンピュータに得体のしれないひみつ道具のような
イメージが広がり、実体をきちんと知りたい人にとって必要な情報はあま
り提供されていません。
本書は現場を知り尽くした開発者が、詳しく知りたい読者に向けて、量子
コンピュータもあくまで現代のコンピュータの考え方をベースに発展させ
たコンピュータの一種であることや、どこにどう量子の性質が使われてど
ういう場合に計算が速くなるのかなどを、かみくだいて解説。また、現在
実際に開発が進められている量子コンピュータについて、その種類や長所・
短所、将来の展望などを述べます。量子コンピュータに興味を持たれた方
の、最初の1冊としておすすめ。

目次
第1章 量子コンピュータとは?
第2章 量子力学の最も美しい実験から探る量子コンピュータの正体
第3章 量子コンピュータの計算の仕組み
第4章 量子コンピュータはなぜ計算が速いか?
第5章 量子コンピュータの実現方法
第6章 光量子コンピュータ開発現場の最前線

著者概歴:武田 俊太郎
1987年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科准教授。専門は量子
光学・量子情報科学。日本における数少ない量子コンピュータの開発者。
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、分子科学研究所での職を経
て、2019年より現職
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回、共同研究グループは、光方式による新型量子コンピューを開発。光
方式では、従来の量子コンピュータと比べて高速かつ大規模な量子計算が
可能になると期待、これまで困難であった計算課題の解決など、量子コン
ピュータ研究を新たなステージに進める。
今回開発した光量子コンピュー
タは、インターネットを介したクラウドシステムから利用可能となってい
る。当面は共同研究契約を通じた利用となるが、今後、国内の量子計算プ
ラットフォームの利用拡大、量子コンピュータのユースケース(活用法)
の創出、国内量子産業の発展と国際競争力の向上に寄与すると期待される。

量子コンピュータの実現方式には、超伝導、中性原子、イオン、シリコン、
光など、多様な候補があり熾烈(しれつ)な競争が行われています。この
中で、光方式の量子コンピュータは、以下のことから非常に有望な候補の
一つと考えられています。
(1) 計算のクロック周波数(動作周波数)を数百テラヘルツ(THz、1THz
  は1兆ヘルツ)という光の周波数まで原理的には高められる
(2)他方式と違いほぼ室温動作が可能
(3)光多重化技術[4]によりコンパクトなセットアップで大規模計算が可能
(4)光通信と親和性が高く量子コンピュータネットワークの構築が容易と考
    えられる
✳️特に光通信で培われた超高速光技術が、光量子コンピュータにとって非
   常に有用なアセット(資源)であり大きなアドバンテージになる

【方法と成果】
今回整備された光量子コンピュータは、時間分割多重化手
法を用いた測定誘起型[5]のアナログタイプの量子コンピュータ。ここで
アナログタイプの量子コンピュータとは、ビットではなく連続的な量で
表される量子を基にした連続量(アナログ)量子コンピュータ[6]を指しま
す。具体的には光波の振幅値[7]が情報のキャリア(搬送媒体)となる。
これに時間分割多重と測定誘起型の手法を組み合わせることにより、大規
模かつ効率的な量子コンピュータが実現します。
測定誘起型量子コンピュ
ータでは、量子テレポーテーションの繰り返しによって計算が実行される。
これは2013年に古澤チームリーダーらのグループにより明らかにされる。
量子テレポーテーションは、量子の情報を量子もつれと呼ばれる量子的な
相関を介し遠隔地に転送する手法であり、1998年に古澤チームリーダーら
によって世界で初めて条件なしで実験的に実証。

この量子テレポーテーションの概念図が図1です。量子テレポーテーション
は、量子操作として考えると一つの量子状態を入力しそのまま出力される
恒等操作でしかありませんが、測定の部分に変更を加える(測定基底の変
[8]
を行う)ことで、恒等操作ではないさまざまな量子操作を実現するこ
とができる。測定誘起型の手法では、まず大規模な量子もつれを生成し、
それに対して測定を介して量子テレポーテーションを繰り返し実行し、マ
ルチステップの量子操作を実現する。

量子テレポーテーションの図

図1  量子テレポーテーション
量子テレポーテーションは、入力の量子が持つ情報を、量子もつれを介し
出力へと伝送する手法。入力と量子もつれは50:50(50%反射、50%透過)
のビームスプリッター(青の長方形)で重ね合わされ、その後測定される
測定値は電気信号として出力側に伝送され、量子操作D^が実行されること
で、量子テレポーテーションが完了する。ここで、測定基底(θ1およびθ2
の変更を行うことで、入力に対して多様な量子操作を実現できる。測定誘
起型量子コンピュータでは、量子もつれを大規模に生成して、その測定を
介して量子テレポーテーションを繰り返し実行する。

測定誘起型量子コンピュータでは、大規模な量子もつれの生成が重要。
光の進行波としての性質と時間分割多重化手法を活用する。図2は光量子
コンピュータ実機の光学装置の概略図。この構成は2016年のAlexander
とMenicucciによる提案に基づく。
まず四つの量子リソースデバイスA~D
がある。これは光パラメトリック増幅器と呼ばれるデバイスで、量子的性
質を持つ光、スクイーズド光[9]を生成する。スクイーズド光とは、光の持
つ量子揺らぎが圧搾(スクイーズ)された光で、量子もつれを生成するた
めに必要。このスクイーズド光が連続的に進行波として生成されますが、
これを時間的に区切って光パルスとして扱う。

二つのスクイーズド光パルスが50%反射ビームスプリッター[10]で重ね合
わされることによって、A-B間およびC-D間にそれぞれ2者間量子もつれが
連続的に生成されます。次に、B、Dの光路にそれぞれ光パルス一つ分、
光パルスN個分の遅延を与えます。これにより、2者間量子もつれが異な
る時間に分配されます。同時刻に存在する四つの光パルスをワンセットと
してマクロノードと呼ぶ。


図2 光量子コンピュータ光学装置概略図

A、B、C、Dは光パラメトリック増幅器を表す。このデバイスから、量子
揺らぎが圧搾された光(スクイーズド光)が出射される。これを時間Δt
で区切り、光パルスとして扱う。二つの光パルスが50%反射ビームスプリ
ッター(青の長方形)で重ね合わされると、A-B間、C-D間にそれぞれ2者
間量子もつれが次々と生成される。その後、Bの光路では光パルス一つ分
(Δt)、Dの光路では光パルスN個分(NΔt)をそれぞれ遅延させる。そ
の結果、2者間量子もつれが異なる時間に分配される。これを複数の50%
反射ビームスプリッターで重ね合わせてから測定することで、テレポーテ
ーションベースの量子操作が実行される。量子操作に応じて、光パルスご
と(kはパルスの番号)に測定基底(θakbkckdk)を変更する。光遅
延がパルスN個分であることからマクロノードが周期Nの構造を持つ。

並べ替えを行うと図3(a)のように量子もつれが時間的に格子上の広がり
を持つ構造であることが分かる。この格子状に広がった量子もつれが光量
子コンピュータの計算リソースとなる。特に、この量子もつれのサイズは、
光遅延路で決まるNと経過時間で決まるため、時間をかけることでいくら
でも大きな量子リソースが利用できる。


図3 時間領域で多重化された量子もつれとそれを用いた量子計算

  • (a)マクロノードを並び替えると、量子もつれが時間的に格子状に広
    がっている(多重化されている)ことが分かる。これが量子コンピ
    ュータの計算のリソースになる。量子もつれのサイズ、すなわち計
    算のリソースは、時間をかければかけるほど大きくなる。
  • 各マクロノードに対してテレポーテーションベースの量子操作を行
    うことで、多入力に対して多段階の量子操作を実行する

図4左は基幹部であるNTT先端集積デバイス研究所作製の光パラメトリッ
ク増幅器です。周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路であり、極めて広い
帯域(約6THz)と、高いスクイージングレベル(最大8デシベル(dB)程
度)を両立しています。光のパルス幅は時間的には10ナノ秒(1ナノ秒は
10億分の1秒)、空間的には3m相当に設定され、これは100メガヘルツ(
MHz、1MHzは100万ヘルツ)のクロック周波数に対応します。このパル
ス幅は、現状の光測定器とそれにつながる電子機器の帯域で決定される。


図4 光パラメトリック増幅器とプログラマブルロジックデバイス

  • (左)NTT先端集積デバイス研究所作製の光パラメトリック増幅器。
  • (右)光測定器のコントロールと測定値のデータ収集を行うプログラ
    マブルロジックデバイス。

図4右は光測定器のコントロールと測定値のデータ収集を行うプログラマ
ブルロジックデバイス[11]
です。このデバイスは100MHzの周期で電気パ
ルスを生成し光の測定基底を高速で操作します。これにより所定の量子操
作を各マクロノードに行うことになる。

図5. クラウドシステムの構成

ユーザーは量子回路をデザインしクラウドへ送信する。クラウド上で量子
回路は実機パラメータへ変換され、光量子コンピュータ実機へと送られ、
量子操作を実行する。ユーザーは実行結果をクラウド経由で受け取る。本
光量子コンピュータでは、連続変数の線形変換が可能であることにより連
続量の最適化問題などへの応用や、非線形変換の機能を導入すとでニ
ューラルネットワークなどへの応用も期待されます。
【展望】
今回、光量子コンピュータとそのクラウドシステムを実現しました。これ
により、光量子コンピュータの開発と、金融・医療・材料科学・機械学習・
最適化問題などのユースケース探索が大きく進展することが期待されてい
る。
今後、光量子コンピュータを真に実用的なものとするため、⓵多入力
化、②超高速化、⓷非線形操作の導入、④アプリケーションの探索、とい
った課題を解決する予定とか、将来的には誤り耐性のある大規模汎用量子
計算機の実現を探求である。
【脚注】
1. 量子コンピュータ:量子力学の原理を利用した、現在の(古典)コンピ
ュータとは異なる方式で動くコンピュータ。古典コンピュータとは動作原
理が異なるため、特定の問題を超高速で解けることが知られている。例え
ば、量子系の効率的なシミュレーションや素因数分解などの問題が高速に
解けると期待されている。
2.光方式:従来の古典コンピュータでは、電気信号によって表される情報
が半導体プロセッサによって処理される。光方式では、光が情報の担い手
となる。光の光子数、偏光、振幅などさまざまな光の物理量を用いる方式
がある。
3.量子もつれ、量子重ね合わせ:量子力学の特徴的な現象の中でも、特
に量子コンピュータで重要になるもの。量子もつれとは、量子の間に存在
得る非局所的な相関であり、量子重ね合わせとは、量子が、異なる状態
同時に取ることを指す。どちらも日常感覚とは相いれない量子の世界特
有の現象である。
4.光多重化技術:複数の光信号を一つの伝送路で同時に送信する技術。
異なる波長の光に異なるデータを割り当てる波長分割多重、時間を分割し
て異なる時間に異なるデータを割り当てる時間分割多重などがある。
5. 測定誘起型:測定誘起型の量子コンピュータは2001年にRaussendorf
らによって提案され、2006年にMenicucciらによってアナログ量子コンピ
ュータ
へ拡張された。2013年には、古澤チームリーダーらのグループが、
測定誘起型量子コンピュータに向けた大規模量子もつれの生成に成功し、
さらに2019年に汎用性を持つ大規模量子もつれの生成、2021年に簡単な
量子計算のデモンストレーションにそれぞれ成功。今回の光量子コンピュ
ータはそれらの成果に基づいたものであり、より汎用的かつ大規模な量子
計算が可能となっている。(今日はこのぐらいで切り上げ) 
                          この項つづく

 今日の楽曲 『
Autumn Leave with Breeze

              violin,cello ,piano&jazz drum

  今日の言葉:国土開発は慎重に!⓵ 先ず、議論の枠組みが大切
   大阪のギャンブル都市計画、千葉の「みんなで大家さん」など
   「金を集めることが一番」でないことは米国大統領選挙が記憶に
   新しい。


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生命と非生命のあいだ ④

2024年11月07日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:11月7日】

          秋深し天霧小雨木枯らしか 
                 高山 宇 (赤鬼)

 

【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ⓷】

⬛ 高性能を維持できる光触媒のシート
11月5日、産総研は,グリーン水素を安価に製造できる可能性を秘めた光触
媒-電解ハイブリッドシステムの流通型装置を開発し,水分解の理論電解電
圧(1.23V)よりも小さい0.9V以下の電解電圧で水素と酸素を分離製造でき
ることを実証。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーから製造されるグリーン水素は,
脱炭素化への大きな貢献が期待されているが,主に電解で製造されるグリ
ーン水素は他の手法より製造コストが高くなる。

概要図
✳️光触媒―電解ハイブリッドシステムによる水分解反応の概要出所:産総研

【要点】
・高性能を維持できる光触媒のシート化手法を開発
・本手法に用いた可視光応答性光触媒が10000時間以上の疑似太陽光照射
 でも劣化しないことを確認
光触媒と電解を組み合わせた、水素と酸素を分離製造可能な水分解用小
 型流通型装置の屋外実証に成功

【概要】産総研は、グリーン水素の製造コストを削減するための候補技術
として、“光触媒-電解ハイブリッドシステムによる水分解法”を研究。こ
の手法では、水を酸素へ酸化しながらFe3+イオンをFe2+イオンへ還元する
光触媒反応と、Fe2+イオンをFe3+イオンへ酸化しながら水を水素へ還元電
解反応とを組み合わせることで、全体反応として水素と酸素を別々に製造
できる水分解が進行。前段の光触媒反応では、光エネルギーが鉄塩水溶液
中に化学エネルギーとして貯蔵される。後段の電解では、その貯蔵された
化学エネルギーを水素製造のためのエネルギーとして利用でき、必要電
電圧
が、通常の水分解で必要となる値(1.23 V)と比較して小さくなる。
結果、水素製造に必要な電力消費量を削減できるのが特徴。

産総研は以前に、可視光応答性のWO3光触媒の反応速度を向上できる表面
処理手法を開発、前段の光触媒反応の効率を10倍以上に向上させている(
2010年3月11日 産総研プレス発表)。しかし、光触媒反応は光触媒粉末
を懸濁させた反応溶液へ光照射評価し、実際に後段の電解と組み合わせ、
光触媒で製造したFe2+イオンを効率よく消費しながら水素を低電圧で製造
する全体システムのイメージ
がなかった。

図1
図1 光触媒シート(25 cm2)を内包した反応槽の(A)外観写真および詳
細構成、(B)PEMセルと組み合わせた流通型反応装置、および(C)0.9 V
印加した条件での水素生成由来の電流値の試験結果。

次に、先ほどの光触媒シートを13倍程度に大型化(25 cm2 ⇒ 330 cm2)し、
水素および酸素ガスを水上置換で捕集しました。ここではまず、光触媒シ
ートに光照射のみを行い、光触媒反応の速度をFe2+イオンの生成速度で評
価。その結果、図2左側に示されたグラフの通りFe2+イオンが効率よく生
成し、それに対応する化学量論量の酸素ガスが発生した。

この時の光エネルギーの化学エネルギーへの変換効率は0.31%と従来の懸
濁状態での評価に匹敵する効率が得られました。続いて光照射を停止し、
200 mAの定電流モードで電解反応を実施した結果、0.9 Vよりも低い印加
電圧で電流が流れ始め(図2右側)、消費された電気量に対応して化学量論
量の水素が捕集できました。このように、光触媒反応と電解反応を別々に
駆動させた場合であっても、高い光触媒性能が保たれ、かつ電力消費量を
削減して水素を製造できました。光触媒反応で鉄塩水溶液中に貯蔵された
化学エネルギーは2カ月程度大気下で放置しても減少しないことが確認され
ている。そのため、需要に合わせた水素発生のタイムシフトにも対応でき
る。

図2
図2 光触媒シート(330 cm2)を内包した反応槽を用いた実証実験の評価
結果。(原論文の図を引用・改変したものを使用)。

図3には、光触媒の長期耐久性試験の結果について示します。図3(A)のよ
うに、ウォーターバスを用いて液温を35℃に制御した環境下で、10000 µmol
のFe3+イオンが含まれる鉄塩水溶液中に沈降させた光触媒へ疑似太陽光を
照射した。その結果、240時間の光照射後に、Fe3+イオンの約8割が光触媒
反応によりFe2+イオンへ変換された。このFe2+イオンの生成量を基準とし
触媒を再利用、再度同様の光触媒反応を評価し続けた。42サイクル繰り返
した際のFe2+イオンの生成量を比較した結果が図3(B)の、計10080時間
の光照射実験の間、Fe2+イオン生成量が保たれていた(劣化確認できず)。
この総照射光量は日本の屋外太陽光照射の約7年分に相当する。


図4は、実際の太陽光を利用した野外実験の評価結果を示す。今回の野外試
験では、電解と光触媒反応を同時駆動させた。その結果、試験当日の日射量
の推移(図4(A))に応じて水素生成の電流値が観測されました(図4(B)
)。生成した水素量は、通電量から見積もられる理論量と良い相関が確認
され(図4(C))、投入電力はほぼ全て水素生成のために利用されている。
このように光量が変動する実際の太陽光を利用した場合にも、照射された
光量に応じて理論量の水素が生成することを確認できる。

図4
図4. 光触媒―電解ハイブリッドシステムによる水分解の野外実証試験。
(A)日射量の推移、(B)水素生成電流の推移、(C)水素生成量の推移。
※原論文の図を引用・改変したものを使用している。
【掲載論文】
掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces
論文タイトル:Demonstration of Scalable Water Splitting into H2 and O2 by a Flow-Type Photocatalysis-Electrolysis Hybrid System Using a Highly Stable Photocatalyst
DOI:https://doi.org/10.1021/acsami.4c12781


最新二酸化炭素処理装置・二酸化炭素処理方法
1.  特開2024-144824  二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法 本田技研
    工業株式会社
【要約】図1のごとく、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消費量を低減
するとともに、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効率を向上する
ことを目的とする。
【解決手段】二酸化炭素を吸収する吸収装置2と、吸収装置2で吸収された
二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置3と、吸収装置
2で吸収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する電解セル
41を有する電気化学反応部4と、電気化学反応部4に電力を供給する太
陽光発電装置5と、を備える、二酸化炭素処理装置100。

図1 本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置を示す模式図

【符号の説明】1  CO回収設備 2  吸収装置 3  除去装置 4  電気
化学反応部 5  太陽光発電装置 6  気液分離部 7  酸素分離部 5  第
2気液分離部 21  CO吸収部 31  負圧チャンバー 32  減圧装置
41  電解セル 100  二酸化炭素処理装置

【発明の効果】本発明によれば、二酸化炭素を回収する際のエネルギー消
費量を低減するとともに、二酸化炭素を電気化学的に還元する際の反応効
率を向上することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 二酸化炭素を吸収する吸収装置と、前記吸収装置で吸収され
二酸化炭素を含む電解液から空気成分を除去する除去装置と、前記吸収
装置で吸収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する電解セル
を有する電気化学反応部と、前記電気化学反応部に電力を供給する太陽光
発電装置と、を備える、二酸化炭素処理装置。
【請求項2】前記吸収装置は、二酸化炭素を強アルカリの電解液に溶解さ
せて吸収する二酸化炭素吸収部を備え、前記電気化学反応部には、前記
酸化炭素
吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給される、請求項1
に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項3】前記電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと
前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して
設けられ、二酸化炭素が溶解した電解液が流れるカソード側液流路と、前
記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を
備える、請求項1に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項4】二酸化炭素を電気化学的に還元する二酸化炭素処理方法であっ
て、夜間電力も含めた発電所から送電される電力を用いて常時、二酸化炭素
を回収する第1工程と、前記第1工程で回収された二酸化炭素を強アルカ
リ水溶液からなる電解液に接触させ、二酸化炭素を電解液に溶解させて吸
収させる第2工程と、前記第2工程で吸収された二酸化炭素を含む電解液
に含まれる空気成分を除去する第3工程と、昼間電力および太陽光発電装
置で発生した電力を用いて、電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一
酸化炭素に還元する第4工程と、を含む、二酸化炭素処理方法。

2. 特開2024-144805 一酸化炭素の除去方法及び除去装置 国立研究開
 発法人産業技術総合研究所 他
【要約】前記方法は、一酸化炭素を含有する被処理気体と、オゾンとを触
媒部で接触させることによる、一酸化炭素の除去方法であって、前記触媒部
が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀およびOMS-2型マン
ガン酸化物を担持させているものであることを特徴とする。前記装置は、オ
ゾン発生部、及び一酸化炭素を含有する被処理気体と、前記オゾン発生部で
発生させたオゾンとを触媒で処理する触媒部を含む、一酸化炭素の除去装置
であって、前記触媒部が、少なくともゼオライトを含む担体に対して、銀
およびOMS-2型マンガン酸化物を担持させているものであることを特
徴とする。

3. 特開2024-138056 エタノール 積水化学工業株式会社
【概要】現在、日本国内で廃棄されている可燃性ごみは約6,000万トン
/年にも及ぶ。そのエネルギー量は約200兆キロカロリーに相当し、日
本国内のプラスチック原料用ナフサの持つエネルギー量を大きく上回って
おり、これらのゴミも重量な資源であるといえる。これらごみ資源を石油
化学製品に転換できれば、石油資源に依らない究極の資源循環社会を実現
することが可能となる。上記観点から、特許文献1および2等には、廃棄
物から合成ガス(CO及びHを主成分とするガス)を製造し、その合成
ガスから発酵法によりエタノールを製造する技術が開示されている。

特許文献3においても指摘されているように、廃棄物から製造した合成ガ
ス中には、解明されていない多種多様な不純物が含まれており、そのなか
には微生物にとって毒性をもつものも存在するため、合成ガスから微生物
発酵によりアルコールを生産する上でその生産性が大きな課題となってい
た。また、合成ガスを微生物発酵して得られたアルコールにも、合成ガス
中の不純物に起因した種々の成分が含まれており、これらの成分は蒸留等
の精製処理によっても完全には除去できない。そのため、合成ガスの微生
物発酵により得られたアルコールからの誘導品開発が大きな技術課題であ
った。

 
図 
200㎜対応ウエハー洗浄装置    図 基板向けAI検査計測ソリューション

◾SCREENホールディングスは  今年1月29日に半導体ウエハーやプリント
基板向けの最新AI検査計測ソリューションを,新ブランド「SCRAIS」とし
て立ち上げ,2024年6月から販売を開始(右図)しているが、11月06日、
200mm対応ウエハー洗浄装置の発売を公表。
近年,EV・自動運転関連の
車載デバイスや電力制御用機器を中心に,次世代のパワーデバイスへの需
要が急速に高まっている。また,半導体製造装置メーカーにおい
ては,デ
バイスの製造プロセスにおける省エネルギー化をはじめ,環境負荷の低減
が責務となっている。
このような動向を背景に同社は,200mmウエハーに
対応したスピンスクラバ「SS-3200 for 200mm」を開発した。この装置は,
スピンスクラバのデファクトスタンダード「SS-3200」で評価の高いウエ
ハー洗浄技術,チャンバー設計,搬送システム,プラットフォームなどを,
200mm対応装置として継承し,最適化したとのこと。

 今日の楽曲『アリス 心にしみるベスト二曲』

     ❤️  「遠くで汽笛を聞きながら」
     ❤️  「秋止符」




今日の言葉肩関節唇断裂
肩関節は、上腕骨の上部先端にある上腕骨頭(じょうわんこっとう)とい
うボール状の部分と、肩甲骨の関節窩(かんせつか)と呼ばれるくぼみで
構成されている。小さな皿に大きなボールが載っているイメージだ。他の
関節と比べると不安定なため、前後や上下に動かないよう支えて安定させ
る役目を、筋肉や靱帯(じんたい)、さらに軟骨状組織の「関節唇」が担
っている。肩関節唇の役割は、この前後上下に肩がずれないように止めて
おく車止めのような役割で、肩の受け皿に当たる肩甲骨関節窩の輪郭を覆
う繊維状の組織。野球選手の投手に多い怪我。
        

 


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生命と非生命のあいだ ⓷

2024年11月06日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:11月6日】



       秋深し異常気象だね 
                  高山 宇 (赤鬼) 

気温・気象は「あらゆる生命の基本」。30℃越えの夜はホルモン異常分泌・
脳内神経が狂わせたであろう。このような体験は初めて、今朝は清々しい
朝となり、お気に入りのオーデコロンを振りかける。



◾渦巻銀河「M74(Messier 74)」

【今日の短歌研究:それぞれの民主主義】

不快だが面白いねえアメリカは運命はモシトラ次第
不快だが面白いねえアメリカは有刺鉄線の投票場
接戦七州鍵ぞペンシルベニアが天王山(下馬評)
わが国は団体政治献金が政権維持を担保する国
三回目日本シリーズ優勝の歓喜小さきはDeNA(御免なさい)

産総研ペロブスカイト太陽電池成果報告会2024
開催日時 2024年11月19日(火)13:00-18:00
会場 東京ミッドタウン日比谷6F BASE Q HALL

東京都千代田区有楽町1-1-2開催方式対面定員200名参加費無料(要・参加
登録)
主催 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)

   エネルギー・環境領域ゼロエミッション国際共同研究センター (GZR)
   再生可能エネルギー研究センター (RENRC)

参加登録フォーム
登録締切:2024年11月12日 (火)

⬛ 国内初 超高層ビル屋上でサボニウス式風車による風力発電の実証実験
10月23日、愛誠建設と三井不動産株式会社とチャレナジーは、、2025年4
月より超高層ビル屋上においては国内初となる、垂直軸型サボニウス式風
車以下「サボニウス式風車」、写真1参照)による、風力発電の実証実験
に着手する。実証実験で用いるサボニウス式風車は、市街地に適した特長
を有しており、本実証実験では、風量や発電量などの取得データを更なる
技術発展に活かすとともに、設置時における課題・要件を明確化すること
を目的としています。大成建設、チャレナジー、三井不動産の 3 社は、新
たな創エネルギー技術としてサボニウス式風車の技術開発を通じて、市街
地での建物のZEB化、災害時のBCP対応などに貢献。

■ サボニウス式風車の特長
(1)装置の設置に必要な面積が小さく、軽量、設置場所の選定や組立が容易
(2)全方位からの風を受けて24時間連続で悪天候時でも発電が可能。
(3)低騒音・低振動で、バードストライクを回避可能
※太陽光発電ではパネル設置のため広い屋上、外壁面積が必要となる。ま
た、従来のプロペラ式風車では翼の回転半径が大きく、人や動物などへの
接触を避けるため広い設置面積が必要となる。 

Longi Green Energyは、ソーラーモジュール効率25.4%で世界記録

10月28日、ドイツのFraunhofer Institute for Solar Energy Systems(フラ
ウンホーファーISE)の認証報告書によると、中国のLongi Green Energyは、
独自に開発したハイブリッドパッシベーションバックコンタクト(HPBC)2.0
モジュールで結晶シリコンソーラーモジュールの効率で世界新記録を樹立、
25.4%の変換効率を達成した。(中国に完敗?!ですね)



◾ 電流を流して金属を「ひずませる」 新たな振動センサーへの応用も
フレキソエレクトリック効果を観測

大阪大学の研究グループは名古屋大学と共同で、電気伝導性材料の「トポ
ロジカル半金属」において、「フレキソエレクトリック効果」を観測した。
新しい振動発電や振動センサーの材料として期待される。

大きな応答は特殊なバンド構造に由来するベリー位相が関与
大阪大学・名古屋大学の共同で、電気伝導性材料の「トポロジカル半金属
」において、「フレキソエレクトリック効果」を観測したと発表した。新
しい振動発電や振動センサーの材料として期待されている。特定物質に機
械的圧力を加えると正電荷と負電荷が発生する圧電効果は、一般的に空間
反転対称性の破れた絶縁体で観測される。これと似た現象のフレキソエレ
クトリック効果は、結晶の振動を電気的に制御したり、結晶をひずませる
ことで電圧を発生させたりすることができる。しかも空間反転対称性の有
無に関係なく観測されるという。ただ、こうした電気機械応答は、絶縁体
材料を用いた場合で、電気伝導性を持つ材料の場合には電子の遮蔽効果に
より、観測するのは極めて難しかった。

今回は、2次元層状化合物(Ti、V、Mo)Te2を用い、電流印加によるひず
み応答を計測した。実験では板状結晶の上下に、電極を非対称に取り付け
た。そこに交流電流を流し、局所的なひずみ振動をレーザードップラー振
動計で計測し、逆フレキソエレクトリック効果を観測した。この結果、普
通の半金属であるTiTe2だと、印加した電流周波数に対し2倍の周波数で振
動するジュール発熱効果がみられた。これに対し、トポロジカル半金属で
あるMoTe2やVTe2では、印加した電流周波数と同じ周波数で振動する逆フ
レキソエレクトリック効果が観測できた。
【掲載論文】
タイトル:“Observation of converse flexoelectric effect in topological semimetal”
DOI:https://doi.org/10.1038/s43246-024-00677-z


⬛ 
プレンティ・リッチモンド農場
世界初の屋内垂直型農園が、農業に革命をもたらす可能性のあるAI技術を使
って、一年中イチゴを栽培する計画を立てている。バージニア州で9月24日
にオープンした「プレンティ・リッチモンド農場」では高さ9.1メートルの
栽培タワーを使い、AIが1,000万以上のデータポイントを分析し成長を最適
化することで、1エーカー(約4,047平方メートル)未満の土地で年間2,000
トン以上のイチゴを生産する予定(異常気象対応の未来志向農法?!)


Inside a New Vertical Farm Full of Robots

 今日の楽曲『心にしみる日本の歌謡曲』



今日の言葉:共に願い共に生きる
        Let us support each other for a better and happier life.

 

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エネルギーと環境 ㊹

2024年10月29日 | ネオコンバ-テック


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。


2023年,3Dプリンタ材料の世界市場規模は24.9%増
矢野経済研究所は,3Dプリンタ材料の世界市場を調査し,方式別動向,参
入企業動向,将来展望を公表。⓵23年の3Dプリンタ材料の世界市場規模(
エンドユーザー購入金額ベース)は4,607億2,000万円(前年比124.9%)と
推計。②方式別にみると、MEX(材料押出)法はコンシューマー向けが安
定成長期に移行しつつあるが、工業向けでは新たに製品製造に直接的に関
係のない副資材であるMRO(Maintenance, Repair, Operations)パーツ向
けの需要が立ち上がった。PBF(粉末床溶融結合)法向けの金属粉末では
航空や宇宙、防衛、医療分野向けの需要が旺盛であり、樹脂粉末は実用部
品へと適用範囲が拡大している。VPP(液槽光重合)法では歯科技工物や
補聴器シェルなど医療分野が牽引役となり、光硬化樹脂の需要は堅調に推
移した。MJT(材料噴射)法はプロトタイプ(試作品)向けが中心となる
が、海外を中心に光硬化樹脂の需要が底堅い。


【展望】3Dプリンタの高性能化に加え,機械的特性や耐熱性を高めた3D
プリンタ材料の開発などが進み,海外を中心にプロトタイプや治工具,少
量~中量生産の実用部品用として3Dプリンタの導入が進む見通しだとい
う。そのため,2023年から2028年までの年平均成長率(CAGR)は17.3%
となり,2028年の3Dプリンタ材料世界市場規模は1兆円超の規模を形成。

⬛ ペロブスカイトPV材料の性能が低い原因解明
23日、筑波大学の研究グループは,高効率な太陽電池として注目されてい
るペロブスカイト太陽電池に使われる低コスト材料の内部状態を電子スピ
ン共鳴でミクロな視点から調べ,局所的な電荷移動度は高いのにデバイス
性能が低くなる理由を解明。次世代太陽電池として注目されている。しか
し,代表的な正孔輸送材料であるspiro-OMeTADは,合成が複雑でコスト
が高いなどの難点。


【概要】これらの欠点を克服するため,合成が容易で低コストな正孔輸送
材料HND-2NOMeが開発された。しかし,電流が減少するような性能の低
下がみられる弱点があり,その原因はまだ解明されていなかった。⓵HND-
2NOMeは準平面構造を持つため,局所的な電荷移動度が高いことが,実
験的に分かった。そして,ペロブスカイトとHND-2NOMeの界面における
正孔拡散は,暗条件下で明らかに実証された。この結果により,ペロブス
カイトとHND-2NOMeとの界面に正孔障壁が形成され,性能低下につなが
ることが示された。②このような障壁が形成されるものの,HND-2NOMe
を用いた太陽電池では,太陽光照射下での正孔の蓄積数の変化は少ない。
また,ペロブスカイトとHND-2NOMeの界面で観測された正孔拡散は,暗
条件下でペロブスカイトからspiro-OMeTADへの電子拡散が起こるspiro-
OMeTADを用いた場合とは対照的な結果。⓷
HND-2NOMeでは,特に短絡
条件下で,光エネルギーから電気エネルギーへの変換効率は低いが安定で
あることの原因に関するこれらの知見は,微視的な視点からデバイス性能
を向上させるための作製指針を示唆する上で重要であると考えられ、
ペロ
ブスカイト太陽電池の安定した性能を達成する提案につながる可能性があ
る。
【掲載論文】file:///C:/Users/ariya/Desktop/p20241024180000.pdf

 ペロブスカイト太陽電池試作用 インクジェット塗布装置
                 『「PerovsJet®」販売開始

マイクロジェットは,ペロブスカイト太陽電池試作において,インクジェ
ットによる1μm以下の薄膜形成を可能にした「PerovsJet」を販売開始。
この製品は,DMFやNMPなどアタック性が高い液にも対応可能なガラス製
シングルノズルヘッドを搭載し,ペロブスカイト層の塗布から乾燥プロセ
ス評価までの基礎実験を1台で実現できる。ペロブスカイト太陽電池の試作,
有機半導体の試作,センサーなどの微細デバイス試作,ナノ金属インクに
よる回路パターニング,インクジェット液材料の開発・評価がある。

⬛ ブリヂス、トン非化石燃料系合成ゴムの開発に米(DOE)の醸成金

ブリヂストンの米国グループ会社であるBridgestone Americas(ブリヂス
トンアメリカス)は、プロジェクトに対し、米エネルギー省(DOE)産業
効率・脱炭素化局(IEDO)から助成金を受けたことを公表。このプロジェ
クトでは、持続可能かつ費用対効果の高い方法で、エタノールからブタジ
エンを生成する試験工場を設計、構築、運営し、経済的および商業的な実
現可能性や、炭素排出量を評価する。

(画像:Bridgestone Americas)

⬛ テスラの家庭用蓄電池「Powerwall(パワーウォール)」の販売
24日、テスラの家庭用蓄電池「Powerwall」が全国のヤマダデンキ店舗で販
売される。全国規模の家電量販店での取扱開始は、今回が初となる。日本
国内においてテスラのPowerwallは、同社がパートナーとして認定した認定
販売施工会社を中心に販売が販売と施工を行ってきた。全国規模の家電量
販店での取扱開始は今回が初となる。

⬛ 100度×73度の広画角化の赤外線センサ
24日、三菱電機はサーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR(メルダー
)」の新製品として、100度×73度の広画角化によって既存製品の2倍以上
広い検知面積を実現した「MIR8060C1」を発表し、記者説明会を開催した。
一般的な天井高(約2.4m)の家屋では、12畳の部屋の隅に設置して床面全
体を検知できるほどの画角だ。見守り/防犯や空調機器制御などへの活用
を見込む。2025年1月6日に出荷開始予定。
三菱電機のサーマルダイオード赤外線センサー新製品「MIR8060C1」

 【特版:ウイルス解体新書】

⬛ トイレ水洗時の飛沫の見える化と飛散ウイルスの定量測定に成功
28日、産総研らの研究グル-プは、水洗トイレから発生する飛沫の挙動を、
湿度制御下における粒径分布・空間分布といったさまざまな観点から捉え、
可視化に成功。また、ウイルス粒子を含む飛沫の飛散を分析し、汚染リス
クの評価ができたことを公表。
【要点】
⓵便器のふたの開閉による違いなどを考慮し、水洗トイレ洗浄時に発生す
 るエアロゾルの空間分布を測定
②トイレを使用した後の水洗で、どの程度ウイルスが飛散するかを推定
⓷水洗トイレ使用時の衛生管理に重要な科学的根拠に基づく知見が明らかに





【展望】提案・実用化されているさまざまな水洗方式についても検討を行
い、それらの間の違いなどに関しても知見を蓄積していくことで、洗浄効
率や節水性能だけではなく、衛生管理・感染防止の面でも優れた便器の開
発に向けた情報を蓄積することができるでしょう。世界をリードしている
日本のトイレをさらに進化させるため、共に研究を推進するパートナー企
業を募り、“衛生度”という新たな付加価値を備えた便器の開発と社会実装
を進めていきたい。
※掲載記事:
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241028/pr20241028.html

⬛ 中国がレアメタルの支配力を強化
29日、ニュ-ヨークタイムズは中国はアメリカやその同盟国との政治的・
経済的対立を深める中で、さまざまな産業にとって重要なレアメタル(希
少金属)
の支配力を強化しています。日刊紙のニューヨーク・タイムズが、
中国によるレアメタルの支配力強化について報じた。via gigazine

それによると、中国は、20それに24年10月1日から「レアアース管理条例
」という条例を施行た。これはレアメタルのうちネオジムジスプロシウ
など合計17元素を指すレアアースについて、中国の輸出業者に対し「欧
米のサプライチェーンでどのように流通するのかを追跡し、当局に報告す
る義務を負わせる」という。これにより、中国政府はどの海外企業が中国
産のレアアースを入手するのかを把握することが可能。また、9月15日か
は中国商務部が合金や半導体、太陽電池、軍用爆発物などで用いられる
ンチモン
輸出制限を始めました。2023年には半導体に必要なガリウム
ゲルマニウムの輸出にも規制が課されており、アメリカが主導する半導体
の輸出規制
に対し、中国はレアメタルの輸出規制で対抗していいるという。

 カバー曲集 『徳永英明シングル・アゲイン など』

今日の寸評:ブラックストーンにコメントしようと思ったが翔平に釘付
       けになる。

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エネルギ-と環境 ㊴

2024年10月21日 | ネオコンバ-テック


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:10月21日】

      秋晴れや金木犀
を朝選定 
                  高山 宇 (赤鬼)

【今日の短歌研究】

                         角川短歌10月号
                         くずしのマホウ
                                                                                                ファブリ
                                 何をして渋沢栄一くずそうかぴかぴかだった八月の朝
                  言葉なき君のためならいくらまで大丈夫だろう猫のかくれんぼ
                                何をして渋沢栄一くずそうかぴかぴかだった八月の朝
         9人の野口英世に分かれてく渋沢栄一くずしのマホウ
      夕やけがスタートとなるおもいでをスマホに預けた花火大会  
  あ~猫だ!! チーズケーキの形までこだわっている夜のファミマは
      イタリアの赤いパスポート穏やかな渋沢さんがふたりも必要
        パスポート更新せねば絶対に行けない夏のふるさとの海
      やさしさが命令として返されたらあなたに夏の夕を待たせる
        くずされた元渋沢は野口として寝息を立てて長い財布に
    まあいいかコーヒーゼリー昧わっておこう真夏が終わりかけてる

※komeSpiga Fabrio Danele -ファリと呼ばれる。1994年、イタリア、
サルデーニャ島生まれ。2015年、来日2017年末に未来短歌会に
会。2023年第一歌巣『リモーネ、リモーネ』を出版

 ⬛ スペースデブリへのランデブ技術の研究

デブリの量増加!!
7月19日、欧州宇宙局の「2024年宇宙環境報告書」によれば、軌道
上のスペースデブリの量は急速に増加し続けており、現在、約35,000の物
体が宇宙監視ネットワーク追跡結果によると、約9,100個は軌道にあり、残
りの26,000個は10cm超の破片が存在する。
しかし、実際に発生するスペー
スデブリは、今後被害をもたらすほどの大きさである1cm以上で、100万個
以上存在。

ESA 宇宙環境 2024
図4:一般的な衛星がさまざまな姿勢で1年間に期待できるイベントの数

【傾向と対策】
・地球の軌跡環境は有限の資源

・2023年には、これまでの3年よりも多くの衛星が打ち上げられた。
・十分な数の衛星が、寿命の終わりにこれらの非常に順調な道のりを終了
することはない。
・ミッションの終了時に運用歩道に残っている衛星は、破片が危険な破片
 の雲に分裂、長年にわたり軌道上に滞留するリスクがある。
・活動中の衛星は、他の衛星やスペースデブリの破片の邪魔にならないよ
うに、多くの衝突回避操作を行う必要がある。
・スペースデブリ対策は徐々に進んでいるが、スペースデブリの増加に歯
をかけるのにはまだ至っていない。
・これ以上の変化がなければ、宇宙開発を行う企業(民間企業や国家機関)
の集団的な行動は、長期的には持続可能である。


図 ESA Space Environment 2024 図7:地球軌道における壊滅的な衝突の将来数
【展望】
1. 瓦礫の純増とともに増大:緩和策の改善にもかかわらず、コンプライ
 アンスと修復の欠如により、2023年もスペースデブリの個体数は純増。
 以前と同様に、壊滅的な衝突の数は大幅に増加する可能性があり、「ケ
 スラー症候群」につながる可能性があり、破片が衝突して断片化し続け
 時間の経過とともに特定の軌道が安全でなくなり、使用できなくなる可
 能性がある。

2.  危機に瀕している有人宇宙飛行:夢は、月とその向こうに向かっており
 有人宇宙探検家が地球低軌道を安全に通過できるようにするだけでなく、
 シスルナー宇宙(地球と月の間の領域)をクリーンに保つことは、ますま
 す重要性を増している分野であり、強い重力と厚い大気がなければ、軌
 道から徐々にデブリを取り除くは、学んだ教訓を応用し、月の軌道に
 書庫段階よりデブリがないようにすることが重要。 
3.より厳格な瓦礫削減ガイドラインが必要:宇宙活動を存続には、より
 厳格なスペースデブリ軽減策を世界的に実施する必要がある(⓵コミュ
 ニティ基準の設定。②ゼロデブリの開発)。

 

⬛ 機械機械学習モデルを用いて新たな有機半導体を合成
10月04日、大阪効率大学の研究グループは,機械学習を用いて7種類の新
しい有機半導体分子を設計、合成しその評価を行った。この結果、分子間
相互作用が強い分子は、比較的高い正孔移動度を示し、有機半導体特性が
向上することを発見した。
より強固な分子間相互作用で、有機半導体特性が向上
を行ない,実際に数種類の半導体の分岐的合成と物性評価をした。 まず,
文献調査により321種類の有機半導体分子の構造情報と正孔移動度のデー
タを収集し,80%を学習データ,20%をテストデータに分割した上で,機
械学習により相関データを作成。

機械学習を用いたシミュレーション-合成-評価のフロー図
出所:大阪公立大学

321種の有機半導体分子における正孔移動度の予測値μpredと実際値μexp
相関  出所:大阪公立大学

有機半導体1a-1gの合成ルート  出所:大阪公立大学

⬛ 酸化ガリウムウエハーの低コスト量産に向け、東北大が新会社を起業
10月17日、東北大学の研究グル+プは、β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)ウ
エハーの低コスト量産化を目指す同大発のスタートアップFOXを起業した
と発表。同大と同大発スタートアップであるC&Aが共同開発した貴金属フ
リーの単結晶育成技術を用いシリコンに匹敵する低欠陥のβ-Ga2O3/基板
を、SiC(炭化ケイ素)より安価に製造する技術の実用化を目指す
という。
OCCC法は、東北大学金属材料研究所の吉川彰教授と同大学未来科学技術
共同研究センターの鎌田圭准教授及びC&Aの研究グループが開発した技術
で、2022年4月、同技術の開発および、β-Ga2O3バルク単結晶の作製成功を
発表している。


図1:OCCC 法の概要図

山梨県に設置された、稼働から30年を経過した太陽光発電のリパワリング
が完了。必要最小限の設備更新により、設置から50年以上の稼働を目指す
という。

加速する再エネの大量導入、将来の電力系統の運用容量に与える影響と課題

  Only Yesterday 『奥飛騨慕情』



竜さんは奈良県出身で、幼いころ高山市に移り住んだ。中学生の時に失明
し、マッサージ師や繁華街での流しをする中、作詞作曲した一九八〇年の
デビュー曲「奥飛騨慕情」が三百七十万枚の大ヒット。八二年には作曲を
手がけた美空ひばりさんの「裏町酒場」もヒットした(薄幸の叔母は桐井
花子さんの愛唱曲だった)。

めっきり、秋らしくなったのはよいが、上布団も厚くしないと寒い。内風
呂は、入浴剤はアース製
薬の「スロマン スキンケア シアバター&ヒアル

ロン酸」を投入。効能は疲労回復、冷え症、荒れ性、あせも、しっしん、
にきび、ひび、しもやけ、あかぎれ、肩のこり、腰痛、神経痛、リウマチ、
痔、うちみ、くじき、産前産後の冷え症。まるで、夫婦そろっての奥飛騨
の白骨温泉の宿を思い出し疲れを癒す。
※ シアバターって何だ。アフリカ原産地?!なら、日本で人工栽培した
 ら良いんじゃないかと、悪い癖で横を突く。


 今夜の寸評:憲法九条と民主主義 ⑤


■「今ある社会資本」を守り、育てていくことが重要
経済学の泰斗であった宇沢弘文・東京大学名誉教授によれば、彼が言う社
会的共通資本とは、自然環境、社会的インフラ、そして制度資本の3つと
される。  ただ、自然環境と社会インフラはこれまでの経済学やそのほか
のところでも十分議論されているし、3つ目の制度資本の議論は重要だが、
宇沢氏が例として挙げる医療制度や教育制度は、それぞれの社会の価値観
に基づき、工夫して試行錯誤して作っていくしかない、と私は思うから、
この三類型以外の社会資本が重要だと考える。

■「「株式会社の利益最大化」とは矛盾しないのか
もう一度上記の車いすの例をみてみよう。まず、①の車いすの入手は経済
力と解釈しよう。②の介助は、親族関係あるいは経済力あるいはコミュニ
ティの善意の助け合い、あるいは社会主義的な政府サービス(福祉とか社
会民主主義的と言ってもいいが)ということで、選択肢があり、代替が可
能である。だから、社会主義か資本主義か、前近代的家族制度か現代か、
という問題ではない。どんな制度をとるにしても、社会資本の提供は可能
なのである。制度ではなく、その奥にある何かが必要なのだ。
また、③の周囲の自発的な手伝い、は社会の力であり、これが社会学でい
うsocial capitalのど真ん中にあるものだろうと小幡績氏は説明する。

ここで強調したいのは④の「ニーズに気づき、システマチ宇ックに解決し
ようとすること」だ。これこそが社会の力である。そして、どこから来る
かよくわからない。どういう社会で④が豊かに生み出され、生まれない社
会ではどこに生まれない理由があるのか。
さらにクライマックスは、⑤の
組織的対応、⑥の現場の具体的な仕組み作り、⑦の担当者レベルの献身を
含む対応
だ。日本の場合は、一体的に地下鉄の運営会社によって実現され
ている。これができる民間企業(しかもまもなく上場する)とは、なんと
素晴らしいが、
これは株式会社の利益最大化となぜ矛盾しないのか。説明
の仕方はいくつかある。経済学の授業的には、顧客満足度、世間評判シス
テム、レピュテーション(評判)効果
で、そのようなことをする地下鉄運
営会社は顧客に支持されて、売り上げが増える、働いてみたいと思う人が
増え、いい人材が採れる、もしかしたら寄付が集まるかもしれない、とい
った具合に説明され長期的には合理的だと(時間軸)。

⬛ 「形式的な経済合理性を追求しすぎない価値観」を共有
つまり、株式会社の利益最大化とは矛盾し、経済合理的な行動ではない。
それにもかかわらず、この駅員はやりたいと思うし、この会社も、それは
ぜひやれと言う。これこそが社会資本があるということだ。
そして、これ
は、株式会社の形式的な経済合理性を徹底的に追求しすぎない、多少の精
神的余裕が駅員にも経営者にも、そして組織にもある、ということから生
まれていると(※社会的フリンジの取り扱いとボランティア精神の醸成文
化)。
こういう株式会社のほうがいいんだ、ということが、社会構成員全
員(もちろん株主も含んだ)の価値観として共有されていることにより、
生み出されているのだ。この価値観が社会で共有されることが重要なのだ。
それは、感性あるいは最近の日本語で言えば、人間力から来ていると思う。
最後に、⑧の車いすで生じた時間的なロスなどを組織でカバーする力、こ
れがいちばん偉大なことだ。さまざまな要素の集合体、蓄積というよりも
堆積の結果だ。社会の歴史そのものと言ってもいい。たとえば、日本社会
の時間厳守という慣習(?)も大きく影響している。誰もが「時間どおり」
が重要だと思っているため、自然にこれを実現するために、無意識に社会
構成員全体が協力する。無意識に全員が協力するというのも社会の歴史の
堆積の結果だ。これこそ社会の力であり、この類の金にならない力に日本
はあふれていると説明する。

これら、私が述べた④から⑧は、政治制度に左右されない。政治制度成立
以前に存在する社会の力であり、トップダウン的な明治時代も、民主主義
が進んだ戦後以降も、日本では同じく成立している。
しかし、民主主義は
維持されてはいるにもかかわらず、昨今、社会への無関心、他人への無関
心、袖振り合うも他生の縁、という言葉とは正反対の行動をとることが多
数派の価値観(利己主義或るいは利己主義化?)になりつつある社会、こ
れが急速に進み、日本の社会資本は減少しつつある。したがって、政治制
度よりも、その奥にある社会資本、もっと根本から社会に堆積している大
事な土壌の維持、豊饒化が重要だと私は考える。

■ 社会資本を蓄積する政策こそ、経済発展をもたらす
そのための政策、社会資本を蓄積するような政策こそが、社会を立て直し、
経済発展をもたらす、と考える。それが21世紀に特に急激に必要となって
きたのは、金融資本主義が発達しすぎて、金融資本の膨張が社会資本をク
ラウドアウトし(押しのけて)、従来、社会の基盤となっていた社会資本
の減耗、棄損、破壊を放置してきたからである(価値交換主義」の行動
原理は「富の維持及び富の最大化」でわたしの経済主義概論」(金融資
本主義の内実(※例えば、”ビック・モータ事県”などの<虚構性>)で呼
んでいたものと交差する。そして、この社会資本は一朝一夕には蓄積でき
ない、難しい。そして、すべての現代社会で不足しているから、今後は、この社
会資本を蓄積できた社会は、相対的に発展する、そして経済膨張主義が行
き詰った後は、前述のような社会資本が充実した社会こそ、豊かな社会で
あり、世界の中で成功した社会と呼ばれることは必然であると結んでいる。
※参考:「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」    この項了

※「経済の社会の埋め込み政策」の有無が問われているのだと私なら
即答
 するだろう。   


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エネルギ-と環境 ㊳

2024年10月20日 | ネオコンバ-テック


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-。

【季語と短歌:10月20日】

     身にしみて体温異常低血圧 

                  高山 宇 (赤鬼)

【今日の短歌研究】

                 

⬛ リサイクル可能で強靭な高分子材料の構造を放射光により解明  
   ~微粒子接触面で絡み合うナノレベルの構造に着目~

図1 研究概要:強靭な微粒子フィルムのナノ構造を解明

10月18日、弘前大学らの研究グループは強靭でありながらリサイクル可能
な高分子微粒子材料の構造を評価し、強靭化メカニズムを解明した。この
強靭な微粒子材料は機能性材料として何度も再利用できるため、幅広い用
途で使用されている高分子材料への適用が期待される一方、どのように強
靭性が形成されるのかはわかっていなかった。本研究では、放射光X線を
微粒子フィルムに照射し、散乱したX線を読み取ることで、微粒子接触面
が厚さ数ナノメートル(100万分の1ミリ)単位で絡まり合い、強くて壊れ
にくいフィルムのナノ構造に重要な役割を果たしていることを解明した
(図1)。
【成果】微粒子フィルム内に存在する微粒子同士の界面(微粒子間の接着
面)が強靭性を解明するうえで重要な要素ではないかと考え、非常に明る
い光を物質に照射し、散乱してくる光から物質の構造を解析できる放射光
X線散乱法を微粒子フィルムに適用した(注3)。測定対象は、メチルアクリ
レートから成る高分子微粒子フィルムで、粒子内部の高分子鎖を橋かけ(
架橋)し、架橋の度合を段階的に変えることで高分子鎖の動きを制御した。
架橋が多く施された微粒子フィルムは、微粒子同士の接触面で高分子の鎖
が絡まり合いにくいため、すぐに破断し、脆くなります。一方で、架橋度
合いが少ない微粒子フィルムは、高強度かつ壊れにくいことがわかった。
放射光散乱による解析により、この強靭な微粒子フィルムは水溶媒乾燥時
に微粒子同士が強く融着し、数ナノメートルの深さで高分子の鎖が絡まり
合っていることがわかった。さらに、高速原子間力顕微鏡法(注4)や分子
動力学シミュレーション(注5)などの最新の評価技術を駆使し、フィルム
内の微粒子の変形性や運動のしやすさが架橋度で変化していることがわか
つた。また、微粒子フィルムを伸ばした状態で、放射光を照射するその場
測定も行い、微粒子が変形する様子を観測することで材料が破断するまで
のナノ構造を解析することにも成功した(図2)。微粒子接触面で高分子鎖
が深く絡まり合っていることで材料がよく伸び、高い強度を示すことがわ
かり、数ナノメートルレベルの構造の重要性を明らかにした。

図2. 放射光施設にて伸ばした微粒子フィルムの構造評価の様子(左)。フ
ィルムから散乱した放射光X線強度のパターンが伸長前は等方的な円状で
あるが(右上)、伸長後に異方的に変形し、微粒子の構造変化を観測(右
下)。
論文情報
雑誌名:Langmuir
題名:Nanoscale Structures of Tough Microparticle-based Films investigated
by Synchrotron X-ray Scattering and All Atom Molecular Dynamics Simulation
DOI:10.1021/acs.langmuir.4c02361
◾この技術が実用化されれば「新錬金術時代」の幕開けに繋がる。「鋼の
プラスチック」も夢でないだろう。

 ⬛ 最新ペロブスカイトペロブスカイト太陽電池製造方法
1. 特開2024-11974 】ペロブスカイト太陽電池およびその製造方法 国立
   研究開発法人物質・材料研究機構 ④

【詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
(実施の形態1
2.光電変換特性評価
 上記作製方法によって作製したペロブスカイト太陽電池101のJ-V特
性を、AM1.5Gスペクトルフィルターを使用して1-SUN規格の条
件で測定した。
ここで、光は広バンドギャップペロブスカイト層15が配
置されている第1のペロブスカイト太陽電池セル32側からペロブスカイ
ト太陽電池101に照射した。したがって、第2のペロブスカイト太陽電
池セル33は、実使用時と同じように、第1のペロブスカイト太陽電池セ
ル32および透明基板31を通ってきた光での光電変換評価である。その
結果を表1に示す。表1および表2には、第1のペロブスカイト太陽電池
セル32と第2のペロブスカイト太陽電池セル33の各々に対して下記項
目の評価結果、および第1と第2のペロブスカイト太陽電池セルが4端子
タンデム配置されているペロブスカイト太陽電池101としての変換効率
(Total  η)の評価結果が示されている。その項目は、短絡電流(Jsc
開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、直列抵抗(R)、並列抵抗(
sh)および変換効率(η)である。なお、表1と表2の差は、試料の作
製時期であり、表2の方が作製時期が遅い。作製プロセス自体は変えてい
ないが、表2の時期の方がプロセス安定性が増し、作製途中の放置時間も
少なくなっている。


  なお、製造ばらつきを評価するために、表1では、#1から#3の同一仕
様の3枚の基板を用い、同一プロセス条件で試料を作製した。各基板には
4つのチップが搭載されているので、計12チップを評価した。表2では、
#4から#6の同一仕様の3枚の基板を用い、同一プロセス条件で試料を
作製した。各基板には4つのチップが搭載されているので、計12チップ
を評価した。
 また、参考までに、#2基板を用いた第1チップにおける
J-V特性曲線と光電変換効率ηの時間変化について測定した結果を、入射
光側(Top側)の第1ペロブスカイト太陽電池セル32の場合図11、
奥側(Bottom側)の第2ペロブスカイト太陽電池セル33の場合図
12に示す。

 ここで、両図の(a)はJ-V特性曲線、(b)は光電変換効率ηの時間
変化を示している。図(a)中のCyc1は1回目(0秒経過)、Cyc5
は5回目(80秒経過)のI-Vカーブ測定結果を表す。図(b)中のGo
は印加電圧増加方向へのI-Vスキャン、Retは印加電圧減少方向への
I-Vスキャン、そしてAveはGoとRetの平均値を示している。


 その結果、ペロブスカイト太陽電池101として、15.2~18.4%、
平均17.1%という高い変換効率ηが得られた。
このような高い光電変換
効率ηが得られたのは、光が広バンドギャップペロブスカイト層15側から
狭バンドギャップペロブスカイト層22側へと入り、その光吸収の関係か
らフォトンの収率が高いことと、広バンドギャップペロブスカイト層15
側を最初に作り、その後、耐熱的な安定性が広バンドギャップペロブスカ
イト層15より劣る狭バンドギャップペロブスカイト層22を作製したこ
とによる。なお、参考までに、実施例1の熱処理条件一覧を表3に示す。

表1



表2

表3
.

【0088】
(実施例2)
  実施例2では、実施例1に準拠させた構造の4端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池101に対して、そのプロセス温度依存性を調べた。具体
的には、第2のホール輸送層21であるPEDOT:PSS(工程S20
、S20a)の熱処理条件を120℃10分として、その他は実施例1と
同様にして評価した。そのJ-V特性曲線と光電変換効率ηの時間変化につ
いて測定した結果を、実施例1と同様に、入射光側(Top側)の第1ペ
ロブスカイト太陽電池セル32の場合図13、奥側(Bottom側)の
第2ペロブスカイト太陽電池セル33の場合図14に示す。ここで、両図
の(a)はJ-V特性曲線、(b)は光電変換効率ηの時間変化を示している。

その結果、第2のペロブスカイト太陽電池セル33の熱処理の影響も受け
る第1ペロブスカイト太陽電池セル32のJ-V特性曲線は、サイクル1
と5で有意な差が見られ、また、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の
光電変換効率ηは100℃5分の熱処理のときの12.4%より大幅に低い
8.5%に留まった。この結果、第1ペロブスカイト太陽電池セル32と
第2ペロブスカイト太陽電池セル33の各部を合わせた4端子タンデム型
ペロブスカイト太陽電池101の変換効率は、120℃10分熱処理によ
り100℃5分の熱処理のときの18.2%より低い14.0%であった。
なお、第2ペロブスカイト太陽電池セル33のJ-V特性曲線は、サイク
ル1と5で大きな差は認められず、第2ペロブスカイト太陽電池セル33
の光電変換効率ηは100℃5分の熱処理のときの5.8%に近い5.5%
であった。

 次に、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度を100
℃から85℃に変えたときの第1のペロブスカイト太陽電池セル32の光
電変換特性に与える影響を第1のペロブスカイト太陽電池セル32作製段
階で評価した。評価方法と評価項目は実施例1と同様である。その結果を
表4に示す。表4から明らかなように、85℃の熱処理では十分なアニー
ル効果が得られず、基板毎に特性が大きく変化する不安定な結果となった。
したがって、熱処理温度としては、85℃を超える熱処理が好ましいこと
が確認された
表4

 次に、第1ペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度を100℃
に固定して、その処理時間を3分、5分および10分の3水準に変えたと
きの第1のペロブスカイト太陽電池セル32の光電変換特性に与える影響
を第1のペロブスカイト太陽電池32作製段階で評価した。評価方法と評
価項目は実施例1と同様である。その結果を表5に示す。その結果、最初
に作製する第1のペロブスカイト太陽電池セル32の各部の熱処理温度は
100℃とすることにより、安定して高い光電変換効率ηが得られることが
わかった。

表5

【0094】
(実施例3)
 実施例3では、最初に、狭バンドギャップペロブスカイト層22を有する
第2のペロブスカイト太陽電池セル33を透明基板31上に作製し、その
後、広バンドギャップペロブスカイト層15を有する第1のペロブスカイ
ト太陽電池セル32を作製したペロブスカイト太陽電池102について、
その光電変換特性を実施例1と同様にして調べた。その作製プロセスの詳
細を図15に示す。

図15  実施例3における4端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池102
     の製造工程を断面構造図を用いて示した工程図

その結果、後で作製した第1のペロブスカイト太陽電池セル32側の光電
変換効率ηは14%と実施例1の場合と大差はなかったが、後続の熱処理の
影響を受ける第2のペロブスカイト太陽電池セル33側の光電変換効率ηは
1%と低いものとなり、第1ペロブスカイト太陽電池セル32と第2ペロ
ブスカイト太陽電池セル33の各部を合わせた4端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池101の変換効率は15%であった。
15%という光電変換効率も高い値であるが、実施例3の構造より実施例
1、すなわち、広バンドギャップペロブスカイト層15を有する第1のペ
ロブスカイト太陽電池セル32から作製する作製方法は、高い光電変換効
率ηを得る観点から、特に好ましいことが示された。

(比較例)
比較例では、2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103を試作して
その光電変換特性を調べた。比較例で試作した2端子タンデム型ペロブス
カイト太陽電池103は、図16に示すように、1枚のガラス基板51上
に広バンドギャップペロブスカイト層55を有する第3のペロブスカイト
太陽電池セル42が形成され、さらにITO膜58を挟んで狭バンドギャ
ップペロブスカイト層60を有する第4のペロブスカイト太陽電池セル4
3が積層された太陽電池である。

図16. 比較例における2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103
   の構造を示す構造図
2端子タンデム型ペロブスカイト太陽電池103は下記の工程により作製
した。最初に、第1の主表面上に第3のITO膜52が形成されたガラス
基板51を準備し、ITO膜52上に第3のホール輸送層53として、実
施例1と同様に、スパッタリング法によって堆積されたNiO膜を形成
し、さらにそのNiO膜上にMeO-2PACsによる表面補償帯54
を形成した。
その後、第3の広バンドギャップペロブスカイト層55を塗布法により形
成した。ここで、広バンドギャップペロブスカイト層55の組成は
FA0.84Cs0.12Rb0.04PbI0.77Br0.23とした。
しかる後、広バンドギャップペロブスカイト層55の表面を実施例1と同
様にPZDIで表面処理した。その後、第3の電子輸送層56としてC60
MC12、第3のホールブロッキング層58としてAZO、そして第4の
ITO膜58を順次積層して第3のペロブスカイト太陽電池セル42を形
成した。

 次に、第4のITO膜58上に第4のホール輸送層59として実施例1と
同様にしてPEDOT:PSSをスピンコートした。その後、第4のペロ
ブスカイト層60として、組成がFA0.8MA0.1Cs0.05Pb0.
Sn0.5Iからなる狭バンドギャップペロブスカイト層を塗布法により
形成した。しかる後、実施例1と同様にして、エチレンジアミンで第4の
ペロブスカイト層60の表面を表面処理し、第4の電子輸送層61として
C60を蒸着した。さらに、実施例1と同様にして、第4のホールブロッ
キング層62としてBCPを蒸着し、熱蒸着法により銀からなる裏面電極
63を形成した。
以上の工程により、第4のITO膜58上に第4のペロ
ブスカイト太陽電池セル43を積層して、2端子タンデム型ペロブスカイ
ト太陽電池103を作製した。作製した2端子タンデム型ペロブスカイト
太陽電池103の特性を実施例1と同様にして評価した結果を表6に示す。
光電変換効率ηは3.07~5.26%であり、実施例1の1/3以下
に留まった。
表6


【産業上の利用可能性】
  本発明により、低コストで変換効率および出力が高くかつコンパクトな
ペロブスカイト太陽電池およびそのペロブスカイト太陽電池の製造方法
が提供されるので、産業の発展に大いに寄与することが期待される。
                             この項了

◾コンパクトでフレキシブル、高変化率で軽量、透明で意匠性も高く、計
測デバイスなどの電源とし導入すれば、情報法通信機器に使用すれば、ワ
イヤレスで分散電源となる。深水の限界はあるが、海水中で使用しても発
電でき、保安ブイの電源などに使用できる。原発のような放射能汚染の
心配はなくなる。ポスト・シャドウマスク事業の事業開発がここに実現す
る。関係者の努力に感謝・深謝したい。

  Only Yesterday 『昴』



昴 -すばる-』は、1980年4月1日発売された谷村新司のシングル。「昴」
というのは「プレアデス星団」の和名。ソロ歌手としては自身最高となる
60万枚の大ヒット曲となった。自著『谷村新司の不思議すぎる話』による
と、この歌詞は引っ越しのため、引っ越し会社の社員と一緒に荷作りをし
ていた谷村が床に寝そべりながらダンボール箱に思い付いたことを書いて
出来たもの(2014年1月30日刊、マガジンハウス)。歌詞は谷村自身の手
によるものであり、最初にできたのは、結びの「さらば昴よ」というフレ
ーズであった。via Wikipadia



 今夜の寸評:憲法九条と民主主義 ④
10月19日、小幡 績 :慶応義塾大学大学院教授が『国家はなぜ衰退するのか』
を批判し、
「ノーベル経済学賞」のアセモグル教授らに反論、「国の経済
展をもたらすのは『政治制度』はない」(東洋経済オンライン)の記事
に目に留る。著者はまず、政治制度は表面的なもので、手段であり結果で
もあり、その奥に真の理由がある。よい社会は手段として良い民主主義を
確立し、機能させることができる。そして、その真の理由こそが「社会資
本」だ(これは1990年代のSocial Capitalの議論と同じだ)。よい政治を機
能させ、経済をよい形で発展させる基盤は社会、社会資本であり、もし国
家が社会を導くのであれば、国家の政策として重要なのは、社会資本を蓄
積することである。これは前回も主張したところだ。」切り込み、「社会
資本」を、具体的な一例を挙げて説明。

 先日、いつものように地下鉄に乗った。そして、よく見かける光景だ
 が、車いすの高齢者が介助者と一緒に乗っていて、駅に着くと、駅員
 が車いす乗降用の板を持ってきて、降車を補助した。周りの人はこれ
 に手を貸すか、スペースを空けて協力した。このようなことがあって
 も、地下鉄は20秒と遅れず発車し、順調に運行が続き、私は目的地に
 スマホサイトの示す時間どおりに着き、約束の場所に向かった。

■「社会資本がきちんと存在している状態」とは?

続けて、社会資本がきちんと存在している社会であれば、まず、①車いす
が入手可能である。②介助する人がいる。次に、③車いすの人を見かけた
ら、知り合いでなくとも、その場にいる周りの人々が助けてくれる。
④そ
のニーズに気づいて、これをシステマチックに解決しようとする。⑤
地下
鉄の運営組織がこれに対応して、あらかじめ板などを用意する。⑥どこの
車両に助けを必要とする人がいるか、その人がどこで乗降車するか、これ
らを認知する仕組みを作る。次に、
⑦これを実施する担当者(ここでは地
下鉄駅員)が、自分の活動をいったん脇に置いて、これを実施する。⑧こ
の補助が、全体の地下鉄運営に悪影響を与えないようにする。あるいはあ
る程度のロスがあっても、カバーして、持続可能なものとする。 ①から
⑧までを1つひとつみていく。

①が成り立なりたつには、車いすという発明、生産する技術が必要 ➡社
会資本の成立には、一定水準の経済発展が必要。1人当たり国民所得の相
関で示めす。②は、雇える経済力でもいいし、家族というものでもいいし
ボランティアというものもある。徴兵制のように、ボランティアの強制も
ありうるが、それは社会主義的だ。共産主義なら担当の公務員を作る。
これは社会のスタイルによるが、✨持論だが、「傭兵制」で、国民動員時
は「公務員制」「義勇兵制」というのもありうるだろう。

③は、その社会の優しさであり、同時に平和で、他人を不必要に警戒しな
くて済む社会である。いつひったくりや暴行にあうかわからないような社
会では、周りを見渡す余裕はないし、隙を見せたら、別の人にやられてし
まうかもしれない。



ここで、そもそも車いすで外出しようとすること自体が本人にとって危険
かもしれない。一方、乗客全員がスマホだけを見ていれば、車いすの人が
降りようとしていることに気づかない、いや乗っていたことすら認識して
いないだろう。これは別の意味で、社会資本が失われている社会。他人に
対する完全な無関心であると例示する。また、重要なのは④の「ニーズに
気づいて、これをシステマチックに解決しようとする」だ。これを実現で
きる社会はそんなにない。日本の場合は、欧州ではこういうのがある、と
誰かがプレッシャーをかけたか、駅員がそう思って、社内で上に提案した
か、どういうきっかけかわからないが、いずれにせよ、そういう発議が起
こる社会はよい社会。さらに、⑤のように、これに対応できる余裕が、こ
の組織(企業にせよ政府系にせよ)にあることが重要である。それは、ボス
の度量かもしれないし、その組織の文化かもしれないし、その組織の仕組
みによるかもしれない。また、はアメイジングだ。全社で対応しなけれ
ばいけないし、駅間のチームワークも重要だ。DX(デジタルトランスフォ
ーメーション)で、情報だけは飛ばせるかもしれないが、その見込み時間ど
おりに地下鉄が着かないと、駅員は待ちぼうけを食うことになるし、電車
がついてから対応を始めれば、この地下鉄は発車が遅れる。

⑦は個人の性質にもよるが、社会、コミュニティの雰囲気による。ラッシ
ュが続く新宿区では難しいかもしれないが、それほど混んでない郊外の地
下鉄なら簡単かもしれない。さらに、その組織がどこまで時間の余裕を駅
員に持たせているかも重要だ。東京メトロが10月23日に上場したら、株主
が「1分でも金にならない時間は使うな!」と株主総会では表立って言え
ないが、内内に訪問して圧力をかけるかもしれない。⑧は、まさにチーム
ワーク、組織文化、そして社会の総力戦である。

⬛ 「今ある社会資本」を守り、育てていくことが重要

これでわかるのは以下の4つである。第1に、社会資本にはいろいろな種類
がある。第2に、それは意図的に作り出すのは難しそうで、市場メカニズ
ムからは生まれにくいと見込まれる。
第3に、それは社会毎に異なる、さ
らに同じ国でも部分により異なり、階級ごとあるいは所得階層ごとに異な
るコミュニティが成立していれば、そのコミュニティごとに異なり、また
同じ国でも時代により異なり、数十年いや10年でも、急速に失われる場合
がある。そして第4に、その一方で、ゼロから作るのは難しく、また失わ
れたものを取り戻すのも難しく、今あるものを大事に守っていく、育てて
いくしかない、ということだ。
         
                      この項つづく

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