極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

南海・東南海要警戒

2018年07月29日 | 時事書評

 


                                 

『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろ
の成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかってい
る部分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳
出する。



【一村 奄美で大華絢爛】

 

 
第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第2節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村

本質的な問題は、なぜ今これほど多くの移民がいるのか、ということです。三年前にわたしがラン
ペドゥーザ島に行ったとき、この現象はすで始まっていました。そもそもの始まりは、中東とアフ
リカでの戦争と、アフリカ大陸の開発途上国における飢餓でした。戦争が起こるのは、武器を製造
する人々がいるからです。でもこれには、防衛のためという意味もあるのでしょう。一番よくない
のは、武器を密売する人々がいることです。これほど失業者が多いのは、労働を生みだす投資が不
足しているからです。とくにアフリカにおいてその不足は顕著です。そのことは、世界の経済シス
テムが拝金主義に陥ったことを示しています。世界の富の80パーセント以上を、わずか16パー
セントほどが独占しています。完全な自由市場というのは機能しないのです。

                                ローマ教皇フランシスコ
                    「移民を受け入れなくてはならない」ラークロワ紙
                                2016六年5月16日

第5節
トマト市場の周辺に一般消費者向けの市場が立ち、女たちが屋台で食品を売っているが、ここには
トマトはほとんど出ていない。人気があるのはむしろよその国から輸入されたマトペースト缶だ.
トマト生産者のクワシ・フオスといっしょに、市場を歩いて回る。フオスはトマトペー缶の屋台の
前で足を止め、わたしにこう言った。

「しかたがないさ、おれたちが作ってるトマトに比べて、トマトペースト缶のほうが日持ちるから


なかなか鋭い。おそらくフォスは口にすることで、自分にそう言い聞かせているのだ。わたしはこ
の機会を利用して、フオスにある質問をした、答えを知っているのに、あえて知らないふりをして。

「これらのトマトペースト缶はどこから輸入されたの?」

フぉスは、ガーナでもっともよく売れているブランドのひとつ、インドの大手流通グループ、ワタ
ンマルの「ポモ」の原産国を販売員の女性に尋ねた。ブランド名の「ポモ」とはもちろんイタリア
の「ポモドーロ(トマト)」の略称だ。 

「これはイタリア産ですよ」

販売員は自信たっぷりにそう言い、味や食感のよさを絶賛した。その姿を見ていると、商品の正体
を暴露することにためらいを感じる。だがわたしは、フォスにその缶詰のラベルを
読んでみるよう
それとなく促した。

「中国産!?」

フォスはラベルの原産国名を読んだ途端、ロをあんぐり開けてあっけにとられた。販売員の女性も
同様だった。

「中国!?‥ 中国だと!?」

フォスは理解に苦しむというように、何度も繰りかえした。

「どうしてあんな遠くからこんなところに輸出してるんだ?」

わたしたちは、市場に出ているトマトペースト缶をかたっぱしから調査することにした。即席のジ
ャーナリストとなったクワシ・フォスは、次々と缶詰の原産国を調べあげた。ボモ、ジー
ノ、テイ
スティ・トム、ラ・ヴオンス、タム・タム………ガーナで人気が高いトマトペースト
缶はすべて中
国産だった。20
人以上の女たちが、中国産トマトペースト缶を屋台で売っていた。先ほどの販売
員は
「てっきりイタリア産だと思っていたのに」としきりに繰りかえしながら、ガーナでこの商品
を扱う
扱う流通業者や販売量まで詳細に教えてくれた。400グラム入り缶詰が24個入った箱が
売りきりになる
までは三日ほどかかるが、70グラム入りミニパックは一日平均50袋も売れると
いう。

 ここ数年、ガーナでは、缶詰より使いきりのミニパックのほうが人気が高い。だが、メーカーにと
ってこのパッケージは、缶詰よりコストは安くてすむがコンテナ輸送には向いていなから
い………
つまり、いまや缶詰メーカーは、中国で生産した商品をアフリカに輸出するの.
現地の工場でドラ
ム缶入り中国産濃縮トマトを加工・パッケージングするようになったのだ。

「こんなことが続いたら、おれの子どもたちはガーナを出てヨーロッパに行かなければならなくな
る!」と、クワシ・フォスは嘆いた。
「こんなに安く売られている中国産のトマトペーストを相手に、おれたちが作ってるトマトがどう
やって太刀打ちできるっていうんだ?無理に決まってる!」
そのとき、トマト市場のほうに数台のトラックがやってきて、幹線道路の路肩に停車した。
にわかに周辺があわただしくなる。床の上にうず高く積まれたトマトの木箱が、トラックの荷台に
次々と積みこまれる。「女王」たちは、あちこちに指示を出し、箱を何度も数えなおし、紙幣のや
りとりをしている。日が暮れかかっていた。とうとうすべての商品が片づいて、長い一日が終わり
を告げた。

わたしは偶然、リビアから帰ってきたあの青年を見かけた。オレンジ色のTシャツのおかげで、遠
くからでも見分けられたのだ。わたしは彼のところに近づき、ヨーロッパヘ渡った若者が村にいる
かと尋ねた。
「ええ、もちろんいますよ。たくさんいます.トマトやほかの作物の栽培に失敗して、財産を失っ
た若者たちです。先週もひとりヨーロッパに向かったばかりです」

第16章 アフリカを席巻した中国産トマト
第1節
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2015年、アフリカと中近東から100万
人以上の不法移民が地中海経由でョーロッパに渡ったという。だが2018年には、その数は3分
の1に減少している。理由のひとつに、2016年3月に締結された「EU・トルコ声明」がある。
シリアからの難民がギリシャに流入するのを防ぐためにとられた措置だ。これによって、2016
年6月までの間、ギリシャに不正入国したシリア入難民をトルコに送還する代わりに、EUからト
ルコに60億ユーロを支払うという契約が結ばれた

その一方で、アフリカからイタリアにやってくる不法移民の数はあまり変わっていない。2016
年は年間15万人と、前年に比べてほぼ横ばいだった。リビアからイタリアに向かういわゆる地中
海中央ルートは、アフリカからョーロッパヘの主要経路となっているが、横断するには多大な危険
が伴う。2015年には3771人、2016年には五000人以上が、海を渡る途中で命を落と
している。

ここ数年、海で遭難した難民を撮ったショッキングな映像が世界中に広まった。命からがら救助さ
れた生存者や、白い布をかぶせられた遺体が映され、世界の映画監督、カメラマン、アーティスト、
小説家などに大いに着想を与えた。そのむごたらしさは、ボランティア、NGO、政治家、聖職者
たちの心を動かし、ヨーロッパ中で論争が巻き起こった。
だがこの件で、グローバル経済の影響について言及する者はほとんどいない。しかしこの現象の根
本的な原因が、資本主義に特有の経済戦争が世界に広まったことにあるのは明らかだ。
2015年から2016年までにイタリアにやってきた30万人のアフリカ人移民の多くは、故郷
で農業に従事していた。ところがそれでは生活できなくなったため、ヨーロッパに働きに出ようと
考えたのだ。

2016年3月、南イタリアのブッリャ州のナルドからレッチエヘ向かう列車で、アフリカ人移民
の男性に出会った。セネガル北部出身で、年齢は40歳。かつてセネガルは濃縮トマトの原材料を
すべて国内生産していた。男性も故郷でトマトの収穫をしていたが、暮らしていけなくなってイタ
リアに来たという。奇遇にもそのときわたしは、プッリャ州でトマトの収穫をするアフリカ人移民
の労働条件について取材をしている最中だった。わたしは男性の話に耳を傾けた。イタリアでの仕
事は不法労働で、報酬は出来高制。さんさんと照りつける太陽の下で丸一日働いて、20ユーロか
ら25ユーロくらいしかもらえないという。シチリア島南方のランドウーサ島にボートでたどり着
いたときのこと、プッリャ州で厳しい生活を強いられていることについても話してくれた。そして、
なつかしむような口調でこう言った。

「セルガルでのトマト収穫も決して楽ではなかったよ。もうけも少なかったし。でもやっぱりセネ
ガルで仕事をしていたころがなつかしい。少なくとも、奴隷のように扱われることはなかったから
ね」そのことばは、自由貿易が人間にもたらした結末を簡潔に言い表していた。

第2節
1960年8月20日、フランスから独立した直後のセネガルで、あるトマトペースト缶ブランド
が誕生した。その名は、ディエ・ブ≒ディア。セネガルの共通語であるウォロフ語で「ひっばりだ
こ」という意味だ。サントナック‘グループ傘下のトマト加エメーカー、ソカスの商品で、今も生
産されている。サントナック・グループは、1902年からセネガルに在住するフランス人、ジャ
ンーサントナックが設立した食品会社だ。植民地時代、ジャンの父親はピーナッツを扱う商社で働
いていたという。

ディエ・プ・ディアのバッケージには、トマトが入ったカゴを頭上にのせているアフリカ人女性が
描かれている。1960年代、セネガルに加エトマト産業を広めたのは、イブライマ・フェディオ
ールとドナルドーバロンのふたりだった。フェディオールはセネガル人のトマト生産者で、加工ト
マト業界の重要人物だ。セネガル全国農業協同協議会の会長にも就任している。バロンはフランス
人企業家で、今は現役を退いているが、長年セネガルでもっとも影響力のある実業家のひとりだっ
た。独立直後、セネガルに移住した当時のドナルド・バロンは、サントナック・グループの子会社
で働く農業技術者にすぎなかった。だが、1969年にグルーブ子会社のソカスを立ち上げたのち
にグループ代表に就任。セネガル政府にコネクションを持ち、セネガル全国経営者評議会の副会長
も務めている。世界貿易機関(WTO)閣僚会議に参加したときは、セネガル企業の保護を世界中
に訴えた。

ソカスの歴史は、セネガルの加工トマト産業の歴史でもある。1965年にトマト栽培の実験を行
ない、1969年に最初の試験的なパイロットプラントを立ちあげた。そして1972年、セネガ
ル北部のサヴオワヌに初のトマトペーストエ場を設立する。工場の一日当たりの生産量は200ト
ン。数千トンのトマトを収穫できる農地も開拓した。
サヴオワヌは、北大西洋沿岸の大都市、サン・ルイから30キロメートルのところにある小さな村
だ。だが、セネガルの歴史を語るのに避けることのできない場所でもある。セネガル初代大統領、
レオポール・セダール・サンゴールによって、農業開発のための実験農場に指定されたのだ。19
64四年、サヴオワヌにフィールドスクールが開設され、軍に所属する20歳未満の独身男性たち
が農業研修を行なった。参加したのは志願者数百人ほどで、彼らは「独立のパイオニア」と呼ばれ
た[1]。一定期間、農業、軍事、社会生活などの研修を受け、課程修了後に小さな土地をもらうこと
ができた。こうして軍隊管理下にあった数年間で、サヴオワヌは見事な農業地帯に生まれ変わった。
堤防、橋などの泥流設備も整備された。

独立後1960年から1986年までのセネガルの農業・商業政策は、輸入を減らして国内生産を
増やすことに主軸が置かれた。いわゆる保護主義政策だ。1972年以降、フランス資本の会社で
あるソカスは、現地の生産者に無償で技術支援を行ない、生産されたトマトをすべて買いとると約
束した。ソカスがトマトペーストの国内需要に応えて、トマト生産者を保護するのと引き煥えに、
国内市場でのソガスの地位が確保されるという契約をセネガル政府と交わしたのだ。ソカスはその
ために回一〇匝CFAフラン以上を投資し、主にサン・ルイ地方で業績を伸ばした。独立後から1
986年までのセネガルは、外国製品の輸入を禁止または制限し、一部の優遇された企業だけが市
場をほぼ独占できるようはからっていた。そしてこの時代、ソカスのトマトペースト缶、ディエー
ブーディアは、セネガル市場を完全に独占し、西アフリカにおけるトマト加工品のパイオニア的存
在になった。

こうしてソカスはみるみる発展し、成功した事業例としてあちこちで引き合いに出されるようにな
った。1976年には、セネガル郵便局が「加エトマト産業」と題した切手を発行している。トラ
クターを運転する生産者の右下に、赤く熟れた美しいトマトがふたつ並んだデザインだ。そのころ、
ディエ・ブ・ディアは、セネガル国内のトマトベースト需要を十分に満たしていた。ソカスの経営
者はフランス入ではあったが、少なくともセネガルは独立当時の目標を達成していた。つまり、自
分たちが食べるものを自分たちで作れるようになったのだ。

1986年、セネガルのトマト畑が砂嵐の被害に遭ったため、外国からトマトベースト缶が輸入さ
れた。輸入量はごくわずかで、国内生産量を大きく下回った。だがこの災害を教訓として、農学者
でトマト生産者、トマト関連産業委員会の元会長だったイブライマ・フェディオールによって対策
が講じられた。砂嵐による被害を食いとめるため、50ヘクタールの農地のまわりに5000本の
樹木が植えられたのだ。砂漠の周辺に設置される防砂林をヒントにしたもので、この方法はその後
の災害対策の規範とされた。[2]

同年三月、セネガルは独立以来続けてきた保護主義政策を終了し、代わりに「新産業政策」
をスタ
ートさせた[3]。市場を全面的に間放し、国際競争の仲間入りをしたのだ。また、西ア
フリカ経済
通貨同盟に加盟する8
カ国(セネガルを含む)は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の支援を受
けて一構造調整計画」を進めることになり、貿易の自由化が促進された。

さらに数年後、ショック療法が行なわれた。1994年1月11日、アフリカのCFAフラン圏2
カ国(セネガルを含む)とコモロ・イスラム連邦共和国(現コモロ連白)において、
構造調整計画
の一環で通貨切り下げが行なわれたのだ。目的は、国内企業の国際競争力の向
上、貿易収支と経済
成長の回復、貿易赤字の削減にあった。セネガル政府は国有企業の多くを
民営化し、多くの商品の
専売制を廃止した。

そのころ、中国はまだ濃縮トマト業界でそれほど大きな存在ではなかったが、イタリアからの技術
移転のおかげで頭角を現しつつあった。一方、1990年代初め、セネガルのトマト生
産量とトマ
ト加工品生産量は記録的な数字を打ちたてていた。6万トン近いトマトが加工され
ており、これは
サブサハラ地域では群を抜いていた。ところがそれに続く数年間で、トマト生
産量は急激に落ちこ
み、2000年には2万トン以下に減少した中国製品がとうとう世界市
場に進出してきたからだ
しかもありえないほどの激安価格で。

セネガル経済は自由化され、市場は完全にオーブンになった。外国産トマトペースト缶の輸入量も
過去に例がないほど急増した。400トンから6000トンヘと15倍に増えたのだ。
それに反比
例して、セネガル国内の生産量は2分の1に減少した[4]。6000
トンのトマトペーストは、ト
マトに換算すると7倍の4万2000トン分になる。つまりセネガルは、2000
年代初め、中国
から4万2000トンのトマトを輸入に頼っていた計算になる。それは実
際、セネガルで一年間に
生産・加工できる量にほぼ匹敵した。その分か輸入に回ったのだ。

ソカスはそれでも生産を続けたが、さらに大きな問題が立ちはだかった。国内に強力な競合会社が
立て続けに登場したのだ。2004年にはレバノン入が経営するアグロライン、そして、2011
年にはタカムールが事業をスタートさせた。セネガル市場に進出した当時の同社は、当然セネガル
産トマトを使用して製品を作ると期待されていた。ところが実際は、同社とも再
加工工場をトマト
畑ではなく港に近いところに建設した。中国産のドラム缶入り3倍濃縮トマ
トを希釈して2倍濃縮
にし、缶に詰めなおして売るためだ。南イタリアのトマト加エメーカ
ーとまったく同じやりかただ
った。

セネガルの加工トマト産業は、うまく組織立って活動していたにもかかわらず、みるみる弱体化し
ていった。ソカスも競争力を失った。それもそうだろう。2009年、中国産濃縮トマ
ト1キロの
輸入コストは、関税を含めても、ソカスの濃縮トマト1キロの生産コストの2分の1
にすぎなかっ
たのだから。ディエ・ブ・ディアは、実績・技術力・信頼のある会社によっ
て、セネガル産トマト
を使って作られた、品質がよくておいしいトマトペーストだ。だが、
格競争の前には無力だった。
セネガルにも資本主義の風が吹いたのだ。関税障壁が撤廃され、
中国は自らの法をセネガルの市場
に持ちこんだ。


そして、悲劇は2013年に起きた。サンールイ州ダガナ県にある、ソカスのトマト加工工
場ふた
つのうちのひとつが閉鎖されたのだ。84人の従業員が解雇され、数百人のトマト生産
者が貴重な
買い手を失った。建物は解体されることなく放置され、今も廃墟のまま残されている。

 

工場が閉鎖されたとき、セネガルの野党勢力は、ソカス代表のドナルド・バロンを「ならず者社長」
と批判した[5]。工場閉鎖に反対する野党議員にとって、政府与党に近いフランス人経営者は格好
のターゲットだった。バロンは一植民地主義を復活させた人間」と呼ばれ、インターネット上
でも
あちこちの記事でそう書かれた。

実際、ソカスエ場の閉鎖は、ひとつの時代の終焉を意味していた。20世紀後半の、フランス企業
とセネガル政府との密接な関係によって生まれた一新植民地主義」が、こうして幕を閉じたのだ。
ソカスが工場をひとつ失ったのは、アフリカの新たな資本主義勢力図で、アフリカに進出してきた
中国、「チャイナフリカーに対抗して負けたからだ。トマトペースト缶の生産工場の消滅はその表
れのひとつにすぎない。

2012年から2015年まで、ソカスでは赤字決算が続いた[6]。中国産濃縮トマトの価格はや
や上がったが、それでもディエ≒フ・ディアの価格は、中国産濃縮トマトを希釈したライバル会社
の商品より三〇パーセントほど高かった。セネガルの加工トマト産業は、西アフリカのほかの国々
とは違ってインフラが整備され、現地で栽培された生トマトを使う生産ノウハウも持っていた。国
内需要に応える生産力を持ち、近隣諸国に輸出できるほどだった。だが、中国産濃縮トマトとの競
争のせいで、セネガルの貿易収支は落ちこんだ。セネガルの濃縮トマト輸入量は、2013
年は1
000万ドル、2014年は829ドルだった。そのほとんどが中国産だ。

今日、アフリカが輸入する濃縮トマトの70パーセントが中国産だ。西アフリカだけ見れば、その
割白け90パーセントに達する。ディエ・ブ・ディアは、セネガルのテレビでユーモラスなCMシ
リーズを流して、商品が国産であることをアビールしている。怪しげな商人がセネガル人女性に香
水やハンドバッグなどの輸入品を無理やり売りつけようとする。そこに空から巨大なディエ・ブ・
ディアの缶詰が降ってきて、商人を押しつぶす。最後に200パーセントセネガル産ディエ≒フ・
ディア」というナレーションが流れる。CMのなかで勝つのはIセネガル産」のトマトベースト缶
だが、はたして現実ではどうだろうか?

                    ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                     この項つづく

    ● 今夜の一曲

Come For A Dream  Dusty Springfield

 

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朴葉の水をきみは差し出す 

2018年07月27日 | 時事書評

 


                                 

『三 略』(さんりゃく)
略は「機略」「戦略」の意味。『六韜』(ろくとう)と並んで『韜略』といわれる。六世紀ごろ
の成立。『三略』は神秘的な成立伝説にいろどられており、今日の目でみると、時代がかってい
る部分が多い。上略・中略・下略の三笥から成るが、その中から現代にも通ずる部分を選んで訳
出する。

柔 と 剛
『軍識』にはこう記されている。「柔は剛を抑え、弱は強に勝つ」と。柔とは他者を包み育む徳
にほかならず、剛とは他者を傷つけ損う悪にほかならない。弱者は誰からも擁護されるが、強者
は誰からも狙われる。

とはいえ、ただ柔のみを後生大事に守り、ただ弱のみを金科玉条としているのでは、何の意味も
ない。柔と削、弱と強の四者を兼備したうえで、時宜に応じ硬軟自在に対処することこそ肝要で
ある。

変転自在の働きをすると、その真意が何であるかは、外部からは察知できない。たとえてみれば
天地である。人智を超えたその霊妙さは、日々万物とともに推移し変化するところにある。用兵
もこの天地のごとく、固定した形をみせず流勤し、情勢に応じて千変万化しなければならない。
つまりこちらから進んで戦を仕掛けることなく、軟の出方を待ち敵情に応じて働くのである。

こうしてこそ、軍の働きは無限の自在さを獲得できる。自然の法則と一体化し、おのずと戦局を
有利に聯くことができる。天下の秩序を回復し、蛮夷の地を平定することができる。王者たる者
の軍とは、このような軍を指すのである。

だが人々はこの道理に気づかない。古人もいっているではないか。「人々はただ強のみを追い求
め、自然の法則を顧みない」と。自然の法則に従いさえすれば、身は終始安泰である。
だから、聖人は自然の法則を体得して、時機に応じて勁くのである。自然の法則は、拡大すれば
全世界をも包摂することができるが、縮小する時は林の中にも隠すことができろ。格納するため
の貪もいらず、守るための城もいらない。ただひとりの胸に秘めておくだけで、敵国はおのずと
服従するに至るのである。
『軍識』にはこうも述べられている。「柔剛両者を兼備すれば国威はますます傾き、弱強両者を
兼備すれば国運はますます盛んとなる。だが、柔弱一方ならば国は衰微し、剛強コカならば国は
滅亡する」と。(上略)

〈『卓識』〉古代の兵法書の名であるというが、現存せず、定かでない。仮託であるともいう。

 夏 帯


【下の句×樹木トレッキング:朴葉の水をきみは差し出す×ホオノキ】 

 

ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。大き
くなる木で、樹高30メートル、直径1メートル以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが
細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20センチメートル以上、時に40センチメート
ルにもなり、葉の大きさではトチノキ並ぶ。葉柄は3~4センチメートルと短い。葉の形は倒卵
状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状
に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かっ
て開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん
状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴
を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0~2個の種子が入って
いる。


ひとの業引き受け登るゴルゴダに 朴葉の水をきみは差し出す    高山 宙


※「ゴルゴダに」は「で」でなく「に」の選択は「神話」(信仰)から「現在」へ導出させ「差
し出すきみ」でなく敢えて「きみが差し出す」とし日々の慈しみとして表出する。


  May 28, 2009


  ● 今夜の5枚
ディズニーもプラスチックストロー使用禁止
 


夕日を彦根市石寺湖岸のベンチで

 Jul.. 27, 2018
タイ洞窟の救助班、ダム決壊のラオスで救出活動
 

 Jul. 23, 2018
チョウが研究者たちの必死の努力により復活


夏の顔、ヒマワリ16万本満開

 
死せるホーキング博士の提唱:多元的宇宙の縮小理論

5月7日、英国の宇宙物理学者、故スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking博士の死後に発表され
た新たな論文によって、天文学者らを大きく二分してきた問いについての議論が再燃している。
それは、
私たちが今いるこの宇宙は拡張し続ける無限の「多元的宇宙」のうちの一つにすぎない
のではないかと
いう問題AFP, 2018.05.07)。

それによると、論文はベルギーのルーベンカトリック大学(KU Leuven university)のトマス・
ヘルトーク(Thomas Hertog)と共同執筆、博士が亡くなった3月14日以前に提出された。今週
Journal of High Energy Physics」に掲載。(
ある学派の)宇宙はビッグバン(Big Bang)の後、爆
発的に拡張し始めたとするこの拡張あるいは「膨張」は大部分で永遠に続いていくが、この動き
が停止する所もいくつか存在する。私たち人類が今いるような宇宙はこうした場所につくられて
いる――とする。

これに対し、多元的宇宙論の懐疑派のホーキング博士は昨年行われたインタビューで、多元的宇
宙のファンであったことは一度もないと語たが、最後の論文では、この理論反論するのでははな
く、大幅に縮小した理論を提唱。
博士が在籍していた英ケンブリッジ大学(Cambridge University
は、単一宇宙にまで縮小したわけではないが、同グループの研究結果は、多元的宇宙の著しい縮
小、すなわち、存在するかもしれない宇宙の数は(無数ではなく、それより)はるかに小規模で
あることを示しているとする立場であることを表明している。前出の
ヘルトークはAFPの取材に
対し、新たな仮説は「ひも理論、弦理論」の理論物理学の一つの考えに基づいたものであるとし、
宇宙には多くの宇宙があるとしても、その数は「明らかに有限」だと結論付けている。

これに対し、わたし(たち)は到底考え及ばない<世界>だが思索のに労に率直に敬意を表したい。

                                        合掌

 



【国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟】

7月20日、富士通は事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際
的なイニシアチブ
「RE100」に、国内で初めてゴールドメンバーとしてこのほど加盟した。国内外
の富士通
グループ拠点で消費する電力を50年までに100
再エネ由来とすることを目指し、再
エネの利用拡大を推進す
る。加えて、エネルギーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に
も取り組み、社会全体の再エネの普及拡大に貢献する方針であることを公表。
RE100は国際的に活
動するNGO団体であるThe Climate GroupCDPとのパートナーシップのもとで、運営するイニシア
チブ。使用電力を100%再エネ由来とすることを目指す企業で構成されている。

富士通グループは、17年5月に策定した中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision
で、富士通グループ拠点における再エネ由来の電力利用を50年までに100%(中間目標30年ま
でに40%)を目標に掲げるなど自らのCO2ゼロエミッションを目指す。
この目標の達成には、省
エネルギーに徹底して取り組むとともに、再エネの利用拡大が不可欠となる。そのため、グロー
バル規模で再エネの大幅な普及拡大を目指すRE100に参加し、富士通グループ全体で再エネの利
用拡大に向けた取り組みをさらに強化。
具体的には、海外のデータセンターをはじめ国内外の拠
点で、各地域に応じた最適な手段を検討し、再エネ由来の電力調達を拡大する。また、エネルギ
ーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に取り組み、社会全体の再エネの普及拡大に
貢献することを目指す。


【世界初グレートバリアリーフと氷床変動の解明】

7月26日、東京大学らの研究グループは、IODPの第325次航海にて、グレートバリアリーフ
で科学掘削を実施、熱帯域のサンゴ化石試料を採取に成功。それにより、極域氷床と気候の急激
な変化について新しい知見――現在までに全くデータのなかった時代の南極やグリーンランドな
どの氷床融解に伴う海面上昇などの
海水準変動を復元―――❶氷期から現在にかけての氷床変動
を解明、❷ゆっくりとしたものと考えられていた氷床の変化が、想定されていたよりも数倍のス
ピードで変化、❸人工衛星で得られる南極氷床変化の定量的な解釈を含め、現在進行中の地球温
暖化が引き起こす――海水面上昇の予測に反映できることを公表。




Title:Response of the Great Barrier Reef to sea-level and environmental changes over the past 30,000 years


【地球温暖化:50年までに米国とメキシコで何千の自殺者を生む】

7月23日、スタンフォード大学のマーシャル・パークらの研究グループは、気候と精神的健康
との関連付け化されてはいるが、定量化は不十分にある。特に世界的に主要な死因である自殺率
が、気候条件により影響を受けるかどうかは不明であるもの、米国とメキシコの両方で数十年間
の包括的なデータから、月平均気温が1℃上昇した場合、自殺率は米国郡で0.7%、メキシコ地
方で2.1%増加するいう分析結果を得ている。この結果は、より暑い地域と寒い地域とで近似し
歴史的適応が限定されており、時間とともに減少せず。うつ病の研究分析k結果から、暖かい時期
に悪化することを示唆。気候変動(RCP8.5)の増加は、50年までに米国とメキシコで9,40,000
件の自殺を引き起こすと予測する。
にわかに信じられないものの、このような側面からの「社会的損失」も考慮kしておくべきだとの
警告として受け止めた。


 
第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第2節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村
ざっと畑を同心回したところ、50人ほどの日雇い労働者が働いている。収穫されたトマトは、
加工されるのではなく市場へ売られていく。じつはここにいる労働者のほとんどが、自分
でもト
マトを生産している。ただし土地を持っていないので、自宅の近くの狭い土地を地主か
ら借りて
耕している。借りている土地の広さは、だいたいIエーカー(0・4ヘクタール)
で、広くても
ニエーカーから三エーカーだ。年間賃料は、平均してIエーカー当たり100ユ
ーロ。こうした
小作農は、収穫時など労働力を必要とするときに、今日のようにほかの小作農
を雇っている。そ
して、トマトを収穫して市場に出荷し、販売し終えた後、つまり収穫当日の
夜に報酬を支払う。
農業従事者たちは、自分の収穫日をずらして他の者の収穫を手伝うなどし
て互いに協力しあって
いる。


ここでは、FI種子を購入する者は誰もいない。FI種子とは、異なる性質の種を交配させ
た雑
種の一代目のことで、生育がよくて病気になりにくいので先進国ではたいていこのタイプ
の種子
が使われる。栽培しやすいが価格は高い。だがここでは毎年、前年実ったトマトから種
を自家採
取して使っている。そうして種子のコストを節約しているのに、トマト生産者たちは
借金をして
まで農薬を買う。だが彼らは、それがどういうものか、何か入っているかは知らな
い。政府調査
によると、トマト生産者の識字率は60パーセントだという。しかも、防護服や
メガネといった
保護具をいっさい身につけずに散布している。


「おれは強くて丈夫だから、病気になんかならないさ。防護服なんて必要ない」と、ひとりの

働者は入った。

「農薬を売ってくれろ人が、そういう化学物質に詳しいんだ。もし何かトラブルが起きてもその
人に相談すればどうにかしてくれろ。いい薬を見つけてくれる。店にずっといて畑には来
ないの
に、どうしたら問題が解決するかすぐにわかるんだ。おれたちの先生なんだ。もし毛虫
が出たら、
ちゃんと毛虫がいなくなる薬を出してくれる」

畑のまわりに並べられた木箱の下には、その「先生」が売ってくれたという農薬の容器が散乱し
ていた。キラキラ光るパッケージには「中国産」と記されている。殺虫剤や殺菌剤などの
農薬に
は、クロルピリホスエチルという化学物質が使われていることが多い。数々の科学研究
によって、
この物質が胎児の脳の発達に影響を及ぼすことが明らかにされている。

「おれたちの仕事で一番金がかかるのが農薬だよ。だって畑の賃料より高いんだから」
だが、そう口をそろえる日雇い労働昔たちも、それがどのくらいの金額になるかは答えられなか
った。

「正直言って、よくわからないんだ。トマトなんて博打のようなものだから」と、目の前の畑
借主であるクワシ・フオスが言う。

「おれたちはみんなトマトで生活してるんだ。もうかる年もあれば、損する年もある。だいた
とんとんの年もある。でもここ数年は損してばかりだ。だから最近はトマトにあまり金をつ
ぎこ
まないようにしてるんだ」

博打?金をつぎこむ? よく意味がわからなかったので、わたしはさらに話を聞いてみた。

「トマト栽培にはふたつの運だめしがつきものだ。ひとつは収穫。天候が悪かったり、トマト
病気にかかったりして、収穫量が激減する年がある。でも収穫直前までどうなるかわからな
い。
もうひとつは市場だ。たとえたくさん収穫できても、市場でちっとも高く売れない年があ
る。今
日は一箱当たり200セディ(45ユーロ)だった。でも去年はそのわずか4分の1だ
ったんだ。
大赤字さ。だから今年はあまり広い土地を借りなかった。でも今年はなかなかいい
値段で売れて
るから、赤字にはならないんじゃないかな。まあ、もう少し様子を見ないとわか
らないけどね。
ただ、ひとつ言えるのは、このあたりじゃ、みんなどんどんトマトをやめてい
ってるよ。全然も
うからないからね。すでに多くがトマトの栽培をやめてるし、数年でもっと
増えるだろうね」

クワシーフォスは、タオボダム村では金持ちで通っている。粗末な小屋で飲み屋を営業し、中国
製バイク
を持っているからだ。エンジンがついた乗りものは、この村ではステータスシンボルだ。
「飲み屋のほうもさっぱりだよ。少しはもうけられると思ってはじめたんだけどね。このあたり
のやつらは
貧乏すぎて、飲む金さえないんだ。トマトじゃ嫁げないからね」
クワシ・フォスの畑で収穫を手伝った日雇労働者たちは、飲み屋もバイクも持っていない。ある
のは自分
の腕だけだ。借金をするのも難しいので、あまり農薬も買えない。だがそんな彼らも、
フォスと同じように「トマトは博打だ」と口をそろえる。それほどリスクが大きいの
だ。とくに、土
地を持たない小作農は近年ますます慎重になっており、借りる畑の面積をどん
どん減らしている。

畑で働いていたひとりの青年が、トマトにまつわる自らの不運について語った。

「数年前、ぼくはIエーカーの土地を借りて、大量のトマトを収穫しました。翌年、がんばっ
もっといっぱいトマトを作ろうと、たくさん借金をして前の年より広い上地を借りました。

でも、その年の収穫期が終わったとき、ぼくはすべてを失いました。全然収穫できなかったん
す。借金を返せなくなり、お金を貸してくれる人もいなくなりました。この村では、土地を
持っ
ていない人間が破産すれば、誰かのために働くしかありません。何の展望もなく、ただ借金を返
すためだけに働きつづけるのです。それでリビアに渡ったんです。本当はそこからすぐにヨーロ
ッパヘ行こうと思っていたんですが、たまたまリビアに仕事が見つかりました。ぼくは節約して
お金を貯めることにしました。船で地中海を渡ってヨーロッパに行くためです。でも結局、船に
乗るのはやめました。海を渡るのがこわくなったんです。船が沈没して溺れてしまう気がして。

そんな危険はおかしたくない。でもどうにかお金を貯めることはできた。だから村へ戻ってきたん
です。椋いだお金で借金を返すことができました。そういうわけで、今ここにいるんです」
青年は、トマトが満杯に詰まった木箱に蓋をし、釘を打っている最中だった。「リビアを解放し
よう」と書かれた、オレンジ色のTシャツを看ている。わたしは、カダフィ大佐が失脚したのを
喜んでいるのかと尋ねた。青年は、ハンマーを二度振りおろす間にこう笞えた。
「まさか。ここではみんなカダフィ大佐を好きですよ。でもぼくがリビアにいたころ、あちこち
で反政府デモをやってて、このTシャツをただで配ってたんです。たまたまそれをもらっただけ
です」

第3節
トマトが詰められた木箱が、次々と三輪トラックに積みこまれる。ひとりの男が木箱をひも
で荷
台に固定し、自分も荷台に乗りこむと、車はようやく出発した。これが今日最初の出荷
だ。荷台
には、トマトの箱といっしょにふたりの男が乗っている。高く積まれた木箱を手でしっかり押さ
えておくのが男たちの仕事だ。でこぼこ道で車体がぐらぐらと瑶れたり、舗装道路の小さなくぼ
みにはまったりしても、ひとつもトマトを落とさずに市場まで運ばなくてはならない。

幹線道路沿いに、コンクリートブロックを製造中の人々がいた。働いているのは女性たちだ。小
さな作業場で手作りしている。炎の燃えさかる窯に薪をくべたり、セメントに砂利と水を混ぜた
り、生コンクリートを型に入れたりしている。みんな、保護服も手袋もつけずに素手のままだ。
焼かれた原材料から悪臭のする煙が上っているのに、マスクもつけていない。この建築材料で金
を椋ぐために、一日中胸がむかつく煙を扱いつづけているのだ。そこから少し離れたところに川
があり、母親と子どもたちがからだを況っていた。その上流では、ひとりの男性がプラスティッ
クタンクに水を汲み、農薬の原液を希釈していた。

ガーナでは、いまだに上下水道の整備が造んでいない。構造調整計画や経済回復計画の一環で、
1993年からおよそ20年にわたって上下水道の改革が行なわれてきた。政府だけでなく、民
間の業者にも委託して取り組んできた。だが、少しも状況は改善されていない。おそらく予算が
大幅に足りないのだろう、高い水道料金を徴収しないかがり、水質が劣化したり、水の供給が止
まったりするのはどうにもならない。

そのため、この国では水ビジネスが成り立っている。小さなビニール袋に水を詰め、トラックで
巡回して売っているのだ。水ビジネスに関して、ガーナではもはややりたい放題だ。ビニール袋
に水を充堀する機械さえ手に入れれば、誰でもどこでも始められる。あとはどこかで水を汲んで
くるだけだ。だが、それがどんな水であろうが気にするひとはほとんどいない。飲用に適さない
水が平気で売られているのが現状だ。しかし、決まった販売ルートがあるわけでは
ないので摘発
するのが難しい。こうして、金もうけに目がくらんだ人間のせいで、飲用にふさわしくない水が売られ、とき
に大きな健康被害をもたらしている。小さなビニール袋から水を飲んでいる人の姿は、ガーナのあちこち
で見かける。一袋20セントから50セントくらいの価格で、全国で年間45億ユーロ相当の売上があるとい
う。

郊外の村では、衛生的なトイレが見つかることはほとんどない。だからガーナの人たちはよく道端で排尿
する。世界保健機関(WHO)によると、匪界人口の3分の1近くが自宅に適切なトイレを備えておらず、ガ
ーナはそうした家が多い国のワースト10カ国に入るという。ガーナ人の実に85パ-セントが衛生的なト
イレを使用できず、コレラなどの伝染病の大流行が危惧されている。

第4節
トマト市場は国道10号線沿いにある。大都市のクマシから隣国ブルキナ・ファソまで北に延び
る、主要幹線道路のひとつだ。三輪トラックはこの道路を通って、トマト畑と市場の間を日に何
度も往復する。
三輪トラックが市場に到着すると、荷台に立っていたふたりの男とドライバーが、トマトの荷下
ろしに取りかかる。すべての積荷を下ろしたら、次のトマトを運んでくるためにまた畑に戻る。
木箱を積んでは下ろし、積んでは下ろし……それが一日中何度も続く。そして17時ごろ、市場
に別のトラックがやってきて、運びこまれたトマトをクマシやアクラなど別の町の市場に運んで
いく。

男たちが荷下ろしをしているそばで、女たちが数量を確認し、袖に日よけをかぶせていた。太い
フェルトペンで、それぞれの箱に印をつける。「イエス」「神」といった誰でも知っている
単語、
お祈りで使われる賛辞のことば、あるいは適当な記号を書いて、ひとつひとつの箱の区
別がつく
ようにするのだ。女たちはここでは「女王」と呼ばれる。ガーナのトマト流通になく
てはならな
い存在だ。傷みやすいトマトがなるべく素早く流通されるようはからい、燭台によ
っては卸売業
者のように遠くの村までトマトを買いつけに行くこともある。市場から遠く隨れ
た村のトマト生
産者は、「女王」が買いつけに来るのをじっと待っている。「女王」が来ないと
トマトの収穫す
らしない者もいる。一女王」は自腹でトマトの代金を生産者に支払い、物流の手
配もする。畑に
トラックを呼び、箱に詰めたトマトを荷台に載せて市場まで運ばせるのだ。

「女王」はトマト生産者だけでなく、大都市の商社のツテも持っている。取引はすべて相互合
だ。トマト生産者にとって、取引の相手は商社ではなく「女王」なので、買値が低すぎると
「女
王」に対して文句を言う。確かに「女王」のなかには、生産者の立場が弱いのを利用して、
トマ
トを安く買いたたこうとする者もいる。だが基本的に、「女王」は自分勝手にトマトの値段
を決
めることはできない。トマトの品質や市場のニーズから判断しているのだ。うまく立ち回
って社
会的に成功する「女王」もいる。流通ネットワークにおいて高い地位を占め、業界に対
して大き
な影響力を持つ者もいる。だが通常、「女王」が市場を独占しようと謀ったり、財産を
蓄えたり
することはない。むしろ、生産者のために物流を手配し、売れるかどうか確証のない
トマトを自
腹で購入することで、大きなリスクを負っている。


                    ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 
                                 
                                     この項つづく

● 台風12号 焼岳へGO!延期

台風12号では延期することに。30日以降となる。今夜から明日にかけての被災拡大が心配だ。

 ● 今夜の一曲     

            

 

 

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痛む全身労り眠る

2018年07月26日 | 時事書評

 


                                  

 『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

人の内心を見破る法
外から見ただけでは人の本心はわからない。それを見破るには、八つの徴候をとらえることだ。
一、質問してみて、どの程度理解しているかを観察する。
二、追及してみて、とっさの反応を観察する。
三、問者をさしかけて内通を誘い、その誠実さを観察する。
四、秘密を打ち明けて、その人徳を観察する。
五、財政を扱わせて、正直かどうかを観察する。
六、女を近づけてみて、人物の堅さを観察する。
七、困難な仕事を与えてみて、勇気があるかどうかを観察する。
八、酒に酔わせてみて、その態度を観察する。

以上、八つの徴候を端察してみれば、有能な人材をふるいわけることができる。(竜韜)

全軍を奮起させるには
「全軍の兵士が、攻城にさいしては先を争ってよじ登り、野戦にさいしては先を争って進み、退
却を
令ぜられれば憤激し、進撃を兪ぜられれば勇みたつ。このように戦わせたいものだが、どう
すればそ
うなるだろうか」低圧の問に太公はこたえた。「将が勝利をもたらす条件は三つありま
す」

「というのは?」
「将が、礼を心得ること、骨おしみしないこと、欲望をおさえることであります。
礼を心得た将とは、冬は暖かいかわごろもなど着ずに兵士と寒さを共にし、夏は扇を使わずに兵
と暑さをともにし、雨が降れば兵士と共に濡れるような人物です。このように自らを規制しな
ければ、
部下のおかれている現送を知ることができません。

骨おしみしない将とは、けわしい地形や泥道を行軍するとき、軍からおりて歩くような人物です。

骨おしみするようでは、部下の労苦を知ることができません。
欲望をおさえる将とは、全軍の宿舎が決まったあとで宿舎に入り、全員の食事が用意されたのち
食事し、火が使えぬため部下が火の通ったものを食べられないときは、自分も口にしない。こ
ういう
人物のことです。将が欲望をおさえなければ、部下の腹具合を知ることができません。
将たる者が部下の士卒と、暑さ寒さを共にし、労苦をともにし、腹をへらすも高股するも一緒と
ことになってこそ、全軍が、進撃の合図をきけば喜び勇み、退却の合図をきけば憤激するので
す。
城が高く帽が深く、矢や石が雨のように降ってこようとも先を争ってよじ登り、収り合いに
なれば先
を争ってかかってゆくのです。
士は何も好きで死ぬのではありません。喜んで負傷するのではありません。将たる昔が、部下の
態をつぶさに知り、その労苦を十分に体得しているからこそ、そうさせることができるのです」
(竜
脳)

 土用しじみは腹ぐすり

【下の句トレッキング:痛む全身労り眠る】


壊れたる翅をべッドに整えて痛む全身労り眠る

雨上がりの朝には翼も掻もなし背に確かなる空飛ぶ記憶


相沢光恵『空飛ぶ記憶』(歌壇、2018年07月号より)


【次世代太陽電池市場篇:30年3433億円】

7月24日、富士経済は、17年の既存太陽電池(単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコ
ン、CIG、CIS、CdTe)の世界市場は5兆7830億円だったのに対し、新型・次世代太陽電池(フレキ
シブル結晶シリコン、フレキシブルGaAs、ペロブスカイト、色素増感、有機薄膜)市場は3億円
だと公表。18
年の新型・次世代太陽電池市場は15億円の見込み。30年には17年比811
倍の2433億円に拡大すると予測。今後、既存太陽電池の置き換えが実現すれば、巨大市場を
形成する可能性があり、既に商用化されている色素増感太陽電池(DSC)と有機薄膜太陽電池
OPV)では、室内光利用といった新たな用途開拓も進んでいる。
その一方で、既存太陽電池の
販売価格は数10円/ワット台と新型・次世代と比べて大幅に安価であり、現状の価格競争力では
新型・次世代が早急に主流になる可能性は低く、まずは既存太陽電池と競合しない IoT機器・無
線センサーの電源や、ZEB/ZEH実現に寄与するBIPV(建材一体型太陽電池)といった用途から市
場形成が進むと予測している。



【ソーラータイル事業篇:自己蓄電型薄膜太陽電池技術事例】

昨年7月14日、華中大学らの研究グループは、東京大学らの研究グループが色素増感型蓄電融合太
陽電池の開発に続く、ペロブスカイト型を試作したと公表している(下図参考)。



グリーン電力需要の増加とエレクトロニクス産業における小型化と多機能化の傾向により、光起
電部品とエネルギー貯蔵部品の両方を統合したパワーパックは、科学的かつ技術的にされてきた
が、
ペロブスカイト型太陽電池とパワーパック用固体スーパーキャパシタの新規な集積を実証。
光電変換とエネルギー貯蔵をハイブリッド化――炭素電極をベースにしたスーパーキャパシタ―
と一体化。
パワーパックは、スーパーキャパシタが0.071平方センチメートルの活性領域を有するAM
1.5G白色光照射下でペロブスカイト太陽電池で充電され、76%のエネルギー貯蔵割合と5.26%の
全体的変換効率に達すると0.84Vの電圧出力。 スーパーキャパシタを1.0Vでプリチャージし、ペ
ロブスカイト型太陽電池とスーパーキャパシタの直列接続で22.9%の瞬間総合出力効率を達成、

今年4月25日、カルフォルニア大学らの研究グループは、ナノワイヤシリコン・有機ハイブリ
ッド系自己充電型太陽電池を試作実証したことを公表(下図参考)。



それによると、シリコンナノワイヤーアレイ/導電性ポリマーハイブリッド太陽電池とレーザース
クライブグラ
フェンスーパーキャパシターのモノリシック集積化自己充電パワーパック――シリ
コンナノワイヤーアレイ/ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート
PEDOT:PSS)ハイブリッド太陽電池とレーザースクライブグラフェン(LSG)スーパーキャパシ
ターからなる新しい自己充電パワーパックを作製。 Siナノワイヤアレイ/ PEDOT:PSSハイブリッド
陽電池構造は、12.37%の高い電力変換効率(PCE)を示し、LSGは、活性炭や導電性ポリマーな
どの他のスーパーキャパシタの電極と比較して、高い電流密度、エネルギー密度と周期的安定性
を保持、優れたエネルギー貯蔵能力――パワーユニットの総合効率が2.92%を実証に成功する。


 

  
第14章 トマト31パーセントに添加物69パーセントのトマト缶
第6節 フランス、ヴィルバント。国際食品見本市

ウルグアイで商社を経営し、加工トマト業界に詳しいファン・ホセ・ァメザガは、こう言った。
「アフリカでは、大豆食物繊維、ニンジンパウダー、デンブン、デキストロース、着色料、その
池わけのわからない添加物が入ったトマトペースト缶が、何百万個も販売されている.そういう
商品を取りあつかっている商社やスーバーチェーンといった流通業者は、不正行為の犠牲者では
なく共犯者だ。むしろ流通業者のほうから中国の缶詰メーカーに頼んで、品質と価格が折り合う
商品が作られている」

中国の缶詰メーカーは、異なるクライアントにまったく同じ商品を供給することもあるという。
どの流通業者もできるだけ安い商品を欲しがるため、必然的にそうなってしまうのだ。
つまり、流れとしてはこうだ。中国の缶詰メーカーは、クライアントである流通業者に、安く供
給できるために添加物を加えることを提案する。流通業者は、メーカーが提示する価格に応じて
どのくらい添加物を入れるかを決める。添加物の割合を増やすほど価格は低くなる。希望に応じ
て、メーカーがさまざまな添加物と完成品の試食サンプルを提供することもあるだろう。メーカ
ーはちょっとした和学者のようなものだ。むしろ麻薬ディーラーに近いだろうか。
契約が成立すると、流通業者は缶詰のパッケージデザインをメールでメーカーに送付する。メー
カーはパッケージ印刷込みで生産を請け負っているのだ。メーカーは、スチール缶とパッケージ
印刷、プラスティック製蓋、梱包用ダンボール箱を、地元の下請業者に発注する。

完成したパッケージには、フランス語、英語、イタリア語、アラビア語などの言語で、たいてい
は嘘八百が並べたててある。スベルミスかおる燭台も多い。「中国産」という文字はどこにも見
当たらない。原皇国をごまかすために、トマトらしい赤い色を用いたり、トリコローレで彩った
りしている。「ハラル」「ナチュラル」「フレッシュ」「グリーン」といったイメージのよい単
語を多用したり、商標権を侵害するようなロゴマークを使ったり、アフリカ入女性や肉厚のトマ
トが描かれていたりする。だが、缶詰メーカーにとってはどんなデザインであろうがかまわない
メーカーにとって重要なのは、それがクライアントに指示されたとおりのデザインであるかどう
かだけだ。そして、その缶のなかには、二倍濃縮トマトによく似た何かが詰めこまれるのだ。

第7節 イタリア、エミリアuロマーニャ州パルマ
であるかどうかだけだ。そして、その缶のなかには、2倍濃縮トマトによく似た何かが詰めこま
れるのだ。
「最初にアフリカ向け缶詰メーカーを天津に設立したのは、カルキスのリウ・イ将官でした。
カルキスグループ傘下のチャルトン・トマト・ブログクツです。その直後、中糧屯河も続いて設
立しました」
パルマにある濃縮トマトの世界最大の商社、ガンドルフィ社の3代目代表アルマンドーガンドル
フィは、2016年7月26日の取材時にそう言った。
「ただ、カルキスも中糧屯河も、市場のニーズに対して生産力が大きすぎました。2社は激しい
価格戦争を繰り広げました。その後、大手二社の後を追うようにして続々と中小の缶詰メーカー
がアフリカ市場に進出しました。最初は、こうした中小のメーカーが市場での生き残りをかけて
、トマトペーストに混ぜものをするようになったのです。大豆食物繊維、デンプン、砂糖、着色
料などの添加物を入れて、安く売りはじめました。現在、アフリカで売られているトマトベース
ト缶には、本物の濃縮トマトが50パーセント以上含まれているものはほとんどありません。

実際の需要に対する生産力が大きすぎたために始まった戦争です。武器になるのは価格だけでし
た。ほかには何もないからです。ブランドカもなければ、高い品質もない。アフリカのトマトベ
ースト缶市場での競争は、価格がすべてでした。いかにも中国らしいやりかたです。そして彼ら
は自滅しました。中糧屯河もガルキスも、グループ会社の缶詰メーカーは倒産してしまいました
。システムが破綻したんです。中国にはまだアフリカ向けの缶詰メーカーがあることはあります
が、わたしが思うに、遅かれ早かれそうした会社もみなつぶれるでしょう。

ええ、理論的に考えても当然です。価格競争を逸脱し、ルールを少しも守ろうとせず、ただ安く
作ることだけを考えて、商品の付加価値を生もうともしない……そんなやりかたでは、必ずいず
れは破綻します。ある会社が濃縮トマトの割合を50
パーセントに下げたら、別の会社は48八
パーセントにし、また別の会社は46パーセントにせざるをえないでしょう。それがどどん続け
ば、最終的に残るのは、元に戻せないほど腐った市場だけです。そのうえ、消費者の健康にも被
害を及ぼします………これが、アフリカのトマトペースト缶市場の現状です。

中国の国家政策には優先順位があります。一番大事なのは、経済成長と雇用剔出です。そのため
ならほかのことには目をつぶります。缶詰メーカーがたくさん商品を輸出し、多くの雇用を創出
してくれさえすれば、好きなようにさせておくということです。これはトマトに限ったことでは
ありません。他の多くの商品についても同じことが行なわれているのです」とガンドルフィは締
めくくった.

第15章 農薬入りのトマトか、添加物入りのトマト缶か
第1節 ガーナ共和国、ブロングuアハフォ州テチマン地区タオポダム村
下から差しだされた手を、上にいる者たちが次々と引っぱりあげる。さあ、これで全員荷台に乗
りこんだ。日雇い労働者たちはみんな立ったまま、金属製の手すりにつかまったり、隣の
人にし
がみついたりしている。三輪トラックがアクセルを踏んだ途端、大きなエンジン音とと
もに、重
さで車体がうしろに大きく傾いた。車がひっくり返らないよう、全員があわてて荷台
の前のほう
へ移動する。誰かがわたしの足を踏みつけ、わたしは誰かの顔をつかみ、わたしの
脇腹に誰かの
肘がぶつかった。大丈夫、どうってことはない。荷台にすし詰めになったわたし
たちは、もみく
ちやになりつつも、どうにか重心を立てなおすことができた。そして三輪トラ
ックは、うなるよ
うな低い音を左ててよろよろと前進を始めた。

三輪トラックはガーナでは「モーターキング」と呼ぼれる。中国の自動車メーカーのプランド名
だ。この中国製三輪トラックは西アフリカで広く普及しており、とくにガーナの農民たち
に愛用
されている。125CCバイクにトレーラーを結合させたもので、まさに農村のケンタ
ウルスと
いった趣だ。この三輪トラックが大量に流通したことで、アフリカでモータリゼ
ーション革命が
起きたのだ。


車はがたがたと揺れながらでこぼこ道を行く。両脇に並ぶ低木がどんどんうしろへ流れてい
く。
少しずつ景色が変わり、やがてあたりが徴蒼としてきた。まるで緑のトンネルを進んでい
るよう
だ。広く張りだした木の枝にぶつからないよう、みんなが頭を低くする。上り坂に差し
かかり
三輪トラックはよろよろと苦しそうに上っていく。てっぺんまで上ったら、次は下り
坂だ。重さ
のせいで加速し、あまりブレーキが効かないのか、転がり落ちそうな勢いで下りて
いく。この恐
怖から逃れるには、車体に貼られたお守り代わりのステッカーに祈りを捧げるし
かない。そこに
は、イエス・キリストとカダフィ大佐の姿が掲げられていた。


ようやく畑に到着する。じめじめと重苦しい暑さのなか、日雇い労働者たちはしやがみこん
でト
マトの収穫を始めた。摘みとったトマトを次々と木箱のなかに入れる。箱がいっぱいにな
ると、
先ほど乗ってきた三輪トラックの荷台に積みこまれる。労働者の代わりに商品を乗せ
て、三輪ト
ラックは来た道をまた戻っていくのだ。

いまやトマトは世界中で栽培されている。トマトの起源はアステカにある。現在のメキシコ中央
部だ。この地がスペインによって植民地化される前、8紀ごろから栽培されていた。16世紀

スペイン人がヨーロッパに持ち帰ったときは、食用ではなく観賞用とされ、18世紀
になっても
ほとんど食べられていなかった。状況が大きく変わったのは、蒸気機関車が発明され、鉄道網が
発達した19世紀だ。ヨーロッパの地中海沿岸で好んで食べられるようになり、19世紀末には
イタリアで加エトマト産業が誕生した。その後、ヨーロッパによってアフリカが植民地化され、
世界で缶詰産業が発達する過程で、アフリカにもトマトが伝わった。こうして、加工トマト産業
の一大叙事詩はこの地に引き継がれたのだ。ガーナの首都アクラから車で八時間、緑が億蒼とし
た小道の先に広がるこの畑のなかへ。

トマト畑は2ヘクタールほどの広さだった。ガーナ北部のテチマン地区郊外にある、トマトを名
産とする農業地帯だ。ガーナでは、9万人ほどの小規模生産者によって、年間50万トン以上の
トマトが生産されている。だが、そのうちおよそ30パーセントは、主に雨季を原因とする過剰
生産のために廃棄される。2014年、公式に発表されたトマト生産量は36万6772トンだ
った。

ガーナのトマト生産業界では、畑仕事を行なう生産者のほかに、販売や流通に携わる30万人ほ
どの労働者がいる。そのほとんどが女性だ。ガーナでは主に女性がトマトを仕入れ、運搬し市場
で販売するトマト1個が栽培されてから消費者の食卓に届くまで、約25人の労働力が必要とさ
れるという[1] 。ガーナの人口は2800万人で、アフリカで13番目だ。ガーナの大衆料理の
ほとんどにトマトが使われており、国民の野菜消費量の38パーセントをトマトが占めている。

[1] Mohammed lssah, Right to food of tomato and Poultry farmeres, Send Foundation et Union europ6enne,
novembre 2007.



1957年3月6日、イギリスから独立したガーナは、アフリカの解放を訴えるパン・アフリカ
主義のリーダー的存在になった。初代大統領のクワメ・ンクルマの下で国家主導型の経済政策が
進められ、教育、医療、インフラ整備などに多額の投資がされた。アフリカ社会主義を掲げるン
クルマは、「反帝国主義」に基づいた工業化を推進した。その一環で、ヨーロッパやアメリカな
ど大国による経済支配を防ぐため、外国企業の投資や輸入は大幅に制限された。そして1960
年代初め、過剰生産されるトマトを無駄にしないよう、政府によってトマト加工工場がふたつ建
設された。

1966年2月24日、アメリカの中央情報局(CIA)が支援する軍事クーデターによってン
クルマが失脚し、ガーナは政治・経済的に不安定な状態に陥った。1979九年にはジェリー・
ローリングス空軍大尉による軍事クーデターが起こる。国家元首に就任したローリングスは、1
983年より国際通貨基金(IMF)と世界銀行の支援を受けた「構造調整計画」によって経済
を立て直し、国情を安定化させることに成功した。ガーナはアフリカにおけるネオリベラリズム
政策の規範となったのだ。

1960年代に建てられたふたつのトマト加工工場は、最初のクーデターで閉鎖されたのちに一
時再開され、構造調整計画によって1980年代に再び閉鎖された。その後も再開と閉鎖を繰り
かえし、現在は廃墟となった建物だけが残っている。ふたつの工場のうちの一方、プワルグエ場
は、壁がはがれ落ち、看板が腐食し、雑草に覆われているが、看板と壁に書かれた「ノーザン・
スター・トマト・ファクトリー」という文字をかろうじて読みとることができる。

周辺の住民の多くは、この工場がかつて多くの雇用を生み、地域の富の象徴だったことを今も記
憶している。ガーナは、経済誌などでよく「西アフリカ第二の経済国」と称される。1980年
代以降、IMFと世界銀行による構造調整計画に積極的に取り組んできたことから、IMFの「
秘蔵っ子「フンョーウィンドウ」とも呼ばれた。だがユニセフによると、2016年には360
万人の子どもが貧困生活を送り、うちこ10万人は家庭で十分な食事を与えられていない。また
世界銀行
によると、国民2800万人のうち25パーセントが、国際貧困ライン(一日1・9ド
ル未満)以下の生活を余
儀なくされているという。上下水道や電力などのインフラもいまだ整っ
ていない。

 Aug. 23, 2007

経済に関しては、イギリス植民地時代とほぼ変わらず、農産物や天然資源などの一次産品の
輸出
に全面的に依存している。とくに、金(アフリカ第2位の産出量)、カカオ(世界第2位の
生産
量)、原油だけで輸出額の70パーセント以上を占めており、ダイヤモンド、ボーキサイ
ト、マ
ンガンも豊富に採掘される。ここ数年間は不況が続いたので、2015五年、公的支出削
減によ
る緊縮財政を実施することを条件に、新たにIMFから10億ドルの融資を受けること
になった。
独立から60年、ガーナの農業は今も輸入農産物との厳しい競争にさらされている。
 

ガーナでは過去20年間にわたって、濃縮トマトの輸入量が増加しつづけている。国際遥か食糧
農業機関(FAO)の統計によると、1996年に1225トンだったのが、2003年
に2万
4000トン、2013年には10万9500トンに達している。20年間でなんと9000

ーセント増加している計算になる。
マサチューセッツエ科大学(MIT)の経済複雑性観測所に
よると、2014年、ガーナは1
億1300万ドル相当の濃縮トマトを輸入しているがうち8
5パーセントが中国からだ。
西アフリカにおいて、ガーナは中国産濃縮トマトの主要窓口のひと
つになっており、2014
年には中国の年間生産量の11パーセントを輸入している。なお、中
国にとって最大の濃縮ト
マト輸出先はナイジェリアで、2014年、中国の年間生産量の14パ
ーセントを輸入している。だが、これらの数字の信頼性はあまり高くない。その理由としてまず、
ナイジェリアやガーナが輸入する中国産トマトペースト缶には濃縮トマト以外のものが多く含ま
れていること、そして、ガーナが輸入した中国産濃縮トマトの一部に本来より低い関税率がかけ
られていることがある。関税率については税関のミスではなく、腐敗・汚職が公務員に蔓延して
いるせいだという。

 Apr. 27, 2016
Africa–China economic relations


ガーナでは、農業従事者が就業人口の45パーセントを占めている。それなのに、濃縮トマトを
これほど大量に輸入する必要があるのだろうか?農業があまり盛んではないほかの西アフリカ諸
国ならまだしも?国内でもたくさんトマトが生産されているというのに? このことはガーナに
どういう影響を与えているのか?そして、かつてあったふたつのトマト加工工場はなぜ閉鎖され
てしまったのか?現在の加エトマト産業のグローバル化して複雑になった構造を理解するのに、
アフリカは格好の対象と言える。この産業の進化はめまぐるしく、価格競争はますます熾烈にな
っている。複数の情報通によると、アフリカはここ数年のうちに、アメリカとヨーロッパを抜い
てトマト加工品の世界最大の市場になると考えられている。

                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                    この項つづく

  No. 17

【予防医療篇:肥満でがん増殖 仕組みを解明】

   Jul. 7, 2018

7月10日、肥満はがん細胞の増殖を早めることが知られている、大阪大学らの研究グループは、
肥満になるとがん細胞の増殖を促す特殊なたんぱく質が増えることをマウスを使った実験でで解
明。同グループでは、食生活の改善が治療効果を高める可能性があるとする。
それによると、大
阪大学大学の藤田和利のグループは、
前立腺がんを発症させたマウスを使って、脂肪分の多いエ
サを与えて肥満にしたマウス/通常のマウスで、がん細胞の増殖に違いがあるかを調査。
その結
果、およそ5か月後、肥満のマウスでは、通常のマウスと比べてがんの大きさはおよそ3倍にな
り、がんの周辺で「インターロイキン6」という、免疫を抑えるたんぱく質が数倍に増えた。

満のマウスにこのたんぱく質の働きを抑える薬を投与したところ、がん細胞が増える通常のマウ
スと同程度になったことから、肥満のマウスで増えていたこのたんぱく質が、がんの増殖を促し
ていることを突き止める。
今後、食生活の改善といった身近な部分から新たな治療方法が見つか
る可能性があり、医療費の抑制、健康寿命普及の促進に効果が期待される。



High-fat diet-induced inflammation accelerates tumor proliferation of prostate cancer via IL6

【膝軟骨の再生医療製品化治験へ】

7月24日、青森県弘前市の再生医療ベンチャー「ひろさきLIなどは、スポーツや事故などで損
傷した膝軟骨の再生治療に用いる再生医療製品「IK-01の製造販売に向け、国の承認を得るため
要な検証治験を今秋から開始することを公表。弘前大学医学部付属病院や弘前記念病院など全国
6施設で
の治験を経て、22年にも承認を申請予定。同社は再生医療の中核都市ひろさきを目指す。

  今夜の一曲

 

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建材一体型太陽光発電革命

2018年07月24日 | 環境工学システム論

 


                                     
『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

武力によらず敵を撃つ法
武力によらず敵を征服する十二の方法。

一、相手の欲心を買うことにつとめ、さからったりしないこと。こうすれば、敵は慢心し、必ず
  失
策を犯すであろう。それに銀ずれば、相手を滅亡に追いやることができる。
二、敵国の君主の信頼する臣下に近づいて、君主と対立させること。臣下が子oを抱くようにな
  れば敵国は衰える。忠臣がいなければ国家は危機におちいるものだ。
三、買収工作によって敵国の側近を掌握すること。側近とは名ばかりで心はすでに離反している。
 こうなれば、敵国には、きっと混乱が生ずる。
四、敵の君主を遊興にふけらせること。宝物や美女を贈った上で、こちらが下手に出れば、戦う
  までもなく、敵はゆきつくところにゆくだろう。
五、敵の忠臣を君主から引き離すこと。まず、この臣下と君主の双方に贈りものをする。この場
  合臣下の方に高価なものを贈ることだ。そして、もしこの臣下が使者としてきたときは、わざ
  と交渉を長びかせて、交代の使者をさしむけるようにさせる。交代の使者がきたら、友好的態
  度をとって交渉を成立させる。敵の君主は、前の使者よりもこの使者の方を信頼するようにな
  るだろう。こうして、敵国を謀賠にかけることができる。
六、敵国の臣下を懐柔して利用すること。有能な臣下が外国に協力し、内乱がおきるようになれ
  ば、ほとんどの国は滅亡するであろう。
七、敵の君主をツンボ桟敷に置くこと。ワイロを贈って側近の心を収批し、農業生産を低下させ、
  穀物の貯えをからにするのである。
八、相手を信頼させること。まず贈りものをして、相談をもちかけ、その結果が相手の利益にな
  るようにする。そうなれば相手はきっと信頼する。この友好関係かつみ重なれば、いつかは利
 用できる。一国の君主でありながら、他国に利用されるような相手は、かならず国を失うであ
 ろう。
九、おせじをいっておだてること。相手を強いといってこわがってみせれば相手はその気になる
 だろう。こうしておいて、相手の君主に、あなたは聖人だとほのめかせば、きっと増長して政
 治をおろそかにするだろう。
十、誠意をもって相手に仕えること。相手の気にいるようにして、何から伺まで相手のいうまま
 になり、To同体と思わせる。こうして、十分信頼を得たならば、ひそかに準備をすすめる。
 好機を持って攻撃をかければ相手はいともたやすく滅びるであろう。
十ベ敵の君主を孤立させること。それには敵国内に徒党をつくらせることだ。すなわち、臣下と
 いうものは、富貴を願い、失敗をおそれる。これを利用し、高位を約束し高価な贈り物をして
 有能な臣下を懐柔する。また、わが方は、国内に十分物資を貯えながら、相手には貧乏国と思
 わせる。そして、敵国内に策士、勇士をおくりこみ、内部からこちらを軽視する気持をおこさ
 せる。たらいをつけた敵臣の富貴への欲求がみたされ、ふところもあたたかいとなれば、徒党
 づくりは成功である。君主がこの孤立状態の中で、国を持続でふるはずがない。
十二、あらゆる方法で敵の君主を惑わすこと。敵臣が君主にそむくようしかけるのもよい。美女
 や軽薄な音楽をすすめるのもよい。名犬や良馬を贈って狩猟に熱中させるのもよい。こうして
、機会があれば情勢有利とみせかけて挑発し、天の時を副察して孤立化においこむ。

以上の十二ヵ条を用意したのちに、はじめて武力にうったえる。すなわち、天の時、地の利を見
極め、敵が滅亡する徴候が現われたのちに、はじめて攻聯するのである。(武韜)

 



【ソーラータイル事業篇:建材一体型太陽電池でエネルギー革命を】

7月25日、建材一体型太陽光発電(BIPV:Building-integrated photovoltaics)分野をリーするヘリ
オス新能源科技有限公司(Helios New Energy Technology:ヘリオス・ニュー・エネルギー・テク
ノロジー)に同社の戦略などを日経BP総研のクリーンテックラボがインタービューを行った。ブ
ログでもいち早く「オールソーラーシステム」「エネルギータイリング事業」として独自の視点
から事業構想を展開していることもありその展望と課題について考察する。



● 建材一体型太陽光発電事業展望 


18年5月、米カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)は、全会一致で新しい建築物に太陽
光発電の設置を義務化する規制を全米初で採択。この基準では、同州の戸建て住宅やアパートな
どの新築住宅には、太陽光パネルの設置を義務するもので20年に実施予定にある。このような
い流れは
、各国に広がっていき、建築物の構造体から最大限にエネルギーを獲得し、電力系統へ
の依存を最小化するBIPVは、スマートな建物の主流となり、エネルギー革命を担う可能性がある。
従来の大規模集中型の系統システムと統合されつつ、やがて主役になるとヘリオス新能源科技社
は見ている。
尚、ヘリオス・ニュー・エネルギーは、上海本社を持つエンジニアリング会社・中建凱徳(China
Construction
KIDE)の系列企業で、3年前からBIPV研究開発に取組開始。米シリコンバレーの研
究チームなどが製品化し販売開始、昨年の約500メガワット製造能力を今年中に2倍の1ギガ
ワットに増産。16年10月に米Tesla Solar Cityが、屋根瓦を模したBIPVの新製品を公表、世界的
に注目されました。その後、カリフォルニア州で、新築建物への太陽光の搭載が義務化されたこ
ともあり、追い風になる。



● 屋根上太陽光が伸び悩んだ理由

太陽電池モジュールを建物に設置する場合、部分的に影のかかるケースが多いことや、間近に日
常的に人が活動していること、限られたスペースでの施工になることなど、野立て設置の太陽光
とは異なった設置環境への対応が必要となる。また、
従来の太陽電池モジュール構造は、日影な
どで「ホットスポット」が生じて焼損を引き起こす可能性や、PID(potential-induced degradation
による出力低下、高電圧によるアーク(火花)が火災の原因になる可能性がある。
これらの不具
合リスクが高まる背景に、セルを直列接続して構成するモジュール設計と、さらにモジュールを
10枚以上に直列接続したストリング回路構成がある。数百Vや1000V、1500Vという直流高電圧が
人間の生活空間に近い場所にあることは、安全上の脅威となる。アークによる火災に加え、ホッ
トスポットやPIDのリスクを高める。
現在の太陽電池モジュール製品は、裏面カバーは有機材料の
バックシートで、建材条件の難燃性をクリアできないし、一定レベルの耐風圧の強度確保しているが、パ
ネルの上に人が乗って作業することまで想定されていない。有機材料のバックシート採用モジュールは、
屋根上の高温高湿環境の下では、野立て太陽光に比べ劣化が早くなる問題がある。つまり、BAPVとし
て建物に設置しても、不具合や火災リスクを高め、建材としての採用されるBIPVの場合、安全性
や耐久性に関し、建材としての基準のクリアが前提となる。

 Wikipedia

● パネル上に載って作業/ワット単価約49円を実現

セルとモジュールの回路構成は、並列接続を多用することで、直流側の電圧は48Vという相対的
に低電圧。その結果、安全性が増し、ホットスポットやPIDのリスク低減。パワーエレクロクス
は、自動車グレードを採用し、高水準の信頼性と耐久性を確保。直流電圧48Vで運用モジュール
基板材料は、従来の有機材料やガラスでなく、耐候性の高いアルミニウム材か亜鉛めっき鋼板を
使用、
鋼材基板とし、結晶シリコンセルをネット(網)構造の配線技術で直列・並列につなぎ、
薄型の高強度ガラスでカバーし、特殊な封止・包装技術でパッケージング。これにより、従来の
有機材料やEVAに比べ耐熱性・耐水性を大幅改善し、長寿命化と高耐荷重性を実現(70kg/m2の
荷重に耐えられる)。同社は、このよう
安全性が高く、低コストのBIPVが建築物や施設で当たり
前に普及していけば、電力系統への依存は大きく低下、新たなエネルギーシステムに移行すると
想定している。



 

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津
第6節

日没後、会社代表のチャンと工場長のマーが、わたしたちを食事に招いてくれた。工場に併設さ
れたその建物のファサードには「研究開発部」と金文字で記されていた。だが「研究室」
も「開
発案」もあるはずはなく、看板は無意味に見えた。この工場では、濃縮トマトを希釈
し、添加物
を加え、小さな缶に詰めかえているだけなのだから。
そうして完成した缶詰は、いずれも高々と
積み上げられ、コンテナに無理やり詰めこまれ、
船に乗せられて数週間の長い旅に出る。なかに
は、乱暴に取りあつかわれてつぶれた缶詰もあ
るだろう。缶の蓋に傷がつき、隙間から空気が入
ったかもしれない。コンテナの高温、長期の
船旅、港からの輸送などのせいで、膨張したり破裂
したりするものもあるだろう。

大きなホールに入ると、ふたりの女性がテーブルセッティングと給仕をしていた。ふたりとも顔
色が悪くて、疲れきっているように見える。ホールと厨房を何度も往復し、次々と料理を
運んで
いた。チャンが「食事前にどうぞ」と、ドイツビールの大聯を運んできた。きっとドイ
ツのクラ
イアントから贈られたものだろう。工場で作られたという缶入りトマトジュースも勧
められた。
缶の七に一国境はない」という文字が書かれている。わたしはジュースをグラスに
注ぎ、色と濃
さを確かめた。茶色くてだまができており、表面に透明の水の層が浮いたひどい
代物だった。ま
だ一口も飲んでいないが、この「ジュース」と言われるものが3倍濃縮トマト
希釈していること
は一目瞭然だった。

本来のトマトジュースは、水分と固形分の比率が生のトマトと同じであるはずだ。飲み物にする
ために生のトマトを圧搾しただけで、濃縮もされず、何も添加されない。3倍濃縮トマト
からト
マトジュースを作るなんて考えられない
 
それに、品質のよい濃縮トマトはこんなにくすんだ色はしていない。もっと澄んだ赤色をしてい
る。おそらくこの「ジュース」に使われた濃縮トマトは、新疆ウイグル自治区の生産工場で「焼
けて」しまったのだろう。濃縮加工する際に加熱しすぎてトマトが焦げると、茶色く変色し、新
鮮さを失ってしまう。だからこれもこんなふうに黒っぽい色をしているのだ。もっとも、加工時
に「焼けて一いなくても、数年前に作られて消費期限切れになった濃縮トマトもこんなふうに黒
ずんでしまうものだが………その可能性もゼロとは言えない。

わたしたちは、加エトマト産業のために乾杯をした。思ったとおり、ひどい味だ。
「弊社のトマトジュースのお味はいかがですか?」と、チャンが尋ねる。わたしは飲みこむ決心
がなかなかつかなかった。しばらく口のなかに含んでいたが、やがて観念して飲みほした。
「すばらしいです」と、わたしは親指を立てるジェスチャーをしながら言った。
「そうですか、お気に召してうれしいです。もうすぐトマトジュースの輸出も始める予定なんで
すよ」



第14章 トマト31パーセントに添加物69パーセントのトマト缶
第1節 フランス、ヴィルバント。国際食品見本市
この見本市のスローガンは「世界中の人々が出会う場所」だ。本年度はとくに「フードビジネス
に活気を与えよう」というテーマが掲げられている。
2016年10月、世界のアグリビジネスの祭典、国際食品目`本市のシアル・パリにやって
た。近代的に整備された街並みを通りぬけ、ヴィルパント国際展示場へ向かう。人口には長
蛇の
列ができている。スーツを着た男性の姿が多い。聞こえてくる言語はさまざまだ。15万500
0人の来場者のうち、70パーセントは外国人だという。194の国々からこのパリ郊外の町に
集まってきたのだ。

入場証を受けとって会場に入る。大きな建物のなかに、7000に及ぶブースがずらりと並んで
いる。まるで巨大な蜂の巣のようだ。シアルは世界最大の食品産業展示会だ。出展しているメー
カーの40パーセントは一中間加工品」を取りあつかっている。中間加工品とは、加工途中の未
完成のまま販売される商品で、いわゆる一半製品」のことだ。近年、中間加工品分野は急速に成
長しつつある。カット済み肉、小麦粉、香料、着色料、保存料、そして濃縮トマトなどが代衣帯
だ。食品業界では、消費者の知らないところで、さ束ざまな中間加工品が生産され取引されてい
る。その名称は、最終製品のパッケージにちっぽけな文字で記される。現在、世界の中間加工品
の売上高はおよそ1兆ドルで、これは食品業界全体の25パーセントに相当する。

隔年で開催されるシアルには、毎回、世界中からアグリビジネス業界のあらゆる分野の人たちが
やってくる。出展者には、南イタリアをはじめとする、ヨーロッパの大手缶詰メーカーもいる。
濃縮トマトを取りあつかう大手商社、ドラム缶入り濃縮トマトを生産している新疆ウイグル自治
区のメーカー、そうした濃縮トマトを原材料にしている中国のトマト缶メーカーも、新たな販路
を開拓するために出展している。
シアルは、アフリカで食品ビジネスを展開する足がかりとしてもよく知られている。中国のトマ
ト缶メーカーにとっては、販売額を拡大できるまたとないチャンスだ。そしてわたしにとっては
中国のトマト缶メーカーの販売戦略を知るまたとないチャンスになった。

 Apr. 4, 2016

第2節
わたしは天津金土地食品で、安価な添加物を濃縮トマトに混入させる現場を発見した。業界通に
よると、中国でこんなことはふつうに行なわれているという。だがわたしは、こうした行為がど
の程度広まっているのか、自分の目で確かめてみたかった。シァルは絶好の機会だ。あ
らゆる中
国の大手缶詰メーカーがここにブースを出している。ウルグアイ入の商社代表、ファ
ン・ホセ・
ァメザガはこう言う。

「中国人はみんなシアルに集まるよ。アフリカのスーバーチェーンや商社といった流通業者は
たいていこのイベントにやってくるからね。アフリカのァグリビジネス市場を狙うなら、シア
は必ず出展すべきところなんだ」

ここでのわたしの目的はごくシンブルだ。中国の缶詰メーカーのブースヘ行き、アフリカ市場に
対してどういう販売戦略を行なっているかを調べる。だがそのためには、ブースにいる営
業担当
者に話を間かなくてはならない。しかし、ジャーナリストに対して会社の秘密を正直に
打ち明け
る従業員などいないだろう[]。アフリカに輸出するトマト缶に濃縮トマト以外のも
のを混ぜ
ていると率直に告白する者や、法律や規則を違反していると白状する者がいるとは考
えられない。
ということは、正体を偽ってアブローチするしかない。

そこでわたしは、中国の缶詰メーカーのブースをひとつずつ訪れ、丸二日間練習したセリフをそ
れぞれに投げかけることにした。目当てのブースは、会場マップにあらかじめ○印をつけ
ておき
、話が聞ければ×印をつけた。作戦は成功し、結果はすぐに現れた。マップはどんどん×印で埋
め尽くされ、パンフレットとサンブルが手元にみるみる増えていった。

]Emma Slawinski,Exporters denoullce  substandard Chinese canned tomated paste, FoodNews, 6 juillet 2012,


第3節
「こちらではトマトペースト缶が専門なのですね。じつはわたしの一族は祖父の代からガボン共
和国で会社を経営してましてね。いろいろなことをしていますが、缶詰の輸出入がメインなんで
す。今後はぜひトマトペースト缶も扱いたいと思ってるんですよ。シアルに来たのは、トマトペ
ースト缶の取引について詳しく知りたかったのと、できればいい取引相手が見つからないかと思
って。こちらは中国のどこにある会社ですか?どういう商品があるのですか?」
とりあえずこう言っておけば、あとは勝手にしやべってくれるので、こちらはそれをふむふむと
間いていればよかった。

「弊社では、お客さまのニーズに合わせてさまざまなクオリティの商品をご提供していますI
たいていの会社は、最初にこう切りだした。中国の缶詰メーカーの価格表は、いずれも商品のク
オリティによってABC順にランク分けされている。だが、話を少し間いただけで、その「クオ
リティコの意味がちょっと特殊であることがわかった。缶詰に詰められている濃縮トマトの「品
質」ではなく、缶詰に詰められる濃縮トマトの「割§」を指しているのだ。Aランクとは濃縮ト
マトをもっとも多く含む缶詰のことだ。だがそれがどの程度の「割合」かは、会社によって違う
ようだ。そして、B、Cと下がるにつれて、その「割合」は低くなっていく。

今回、15の会社から話を聞くことができた。いずれも、アフリカに多くのトマトベースト缶を
輸出している缶詰メーカーばかりだ。だが、添加物をいっさい加えていない、100パーセント
濃縮トマトだけを詰めた缶詰を輸出している会社は皆無だった。ラベルに添加物の記載がなけれ
ばこれは不正行為に当たる。少なくとも、わたしがシアルの会場でもらったサンプルには、いず
れも記載がなかった。中国の主要缶詰メーカーではどうやらこれが通例になっているようだ。

各ブースの営業担当者の態度はまちまちだった。自分たちがしていることを正直に話してくれた
担当者もいた.わたしが新規のクライアントになってくれると期待したのだろう、その手口のコ
ツを詳しく教えてくれさえもした。またある者は、恐ろしいほどの校揖さでわたしをだまそうと
した。何も知らないふりをして近づいていったので、暴利をむさぼれると思ったのだ
ろう
だがわたしは、逆にそういう態度を利用することで相手を質問攻めにして困らせた。最終的には
営業担当者が商品をアピールするとき、濃縮トマトの割かのランクによって勧めかたが異なるこ
とを見破った。

Dランク――「この缶詰にはイタリアの国旗が描かれているんです。イタリアはトマトの国です
からね」
Cランク――「これはアフリカ市場で流通している商品のなかで、もっとも良質なもののひとつ
です。味見をされますか?」
Bランク――「(缶詰を開けながら)ごらんください、きれいな邑のトマトペーストでしょう?
(実際はくすんだ色) アフリカですごく人気のある商品なんですよ」
Aランク――デンブンと大豆食物繊維だけで、違法な添加物は何も入ってません。確かに ラベ
ルには何も書いていませんね。たいしたことじやありませんよ。みんなやってることですから」

Dランクはパッケージ、Cランクは昧、Bランクは色がそれぞれセールスポイントにされていた
。どういうわけか、Aランクを勧める営業担当者がいちばん正直だった。

「デンプンを入れてほしいという要望もあれば、大豆食物繊維やニンジンパウダーのほうが好き
だという燭台もありますよ。弊社では、アフリカの消費者の好みに台わせた商品をご提供できま
す」

取引の進めかたについてあらかじめ念を押す者もいた。
「新規契約者には、Aランクの商品しかご提供しません。まずはそれで取引がうまくいきそうか
どうかを判断します。仮に、もしコンテナ数台分しか注文していただけないなら、それより条件
のよい商品のご提供はできかねます。逆に、たくさん注文していただけて、互いに信頼関係を築
くことができたら、もっと安く提供できるようこちらも努力します。たとえば、デンプンを混ぜ
たりして」かと思えば、もっと現実的な営業担当者もいた。

「Aランクのサンプルが欲しいだって?ガボン共和国にはダメだ。あげても無駄だからね。ほら
こっちを持っていきな」(と、カウンターの上に缶詰を放り投げる)。そうだよ、一番安いやつ
だ。ガボン共和国ならこっちじゃないと」
わたしはそれでも、Aランクのサンプルが欲しいと何度も頼んだのだが、「いや、ガボン共和国
にはダメだ」と、最後まで突っぱねられた。

第4節
Aランクのトマトペースト缶の「クオリティ」がもっとも高いというのは本当らしいが、いっさ
い添加物を加えていないと言う営業担当者はひとりもいなかった。
「広州港は、天津や上海より税関審査が厳しいんですよ」と、広州近郊の会社の営業担当者が言
った。
そのため、この会社のトマトペースト缶には、デンプンが58パ-セントしか含まれていないと
いう。本当だろうか?それとも単なる営業トーク?本人は優秀な営業員を自称していたが。もら
ったパンフレットには、中国語、英語、アラビア語、そして間違いだらけのフランス語で、商品
説明が書かれていた。年間30億個以上のトマト缶が生産され、原材料のトマトは汚染されてい
ない農園で栽培されているという。

「弊社は、原材料を選ぶところから完成品ができあがるまで、一貫して厳しい管理体制の下で生
産をしている、中国南部唯一の缶詰メーカーです」
この文章は読んだことがある。天津からほど近い河北省にある缶詰メーカーのバンフレットにそ
っくりだ。真似をしていると思うのは考えすぎだろうか?だが、あちらの文章のほうがもっとず
っと詩的だった。
「弊社の商品には、新疆ウイグル自治区の美しく豊かな自然で育ったトマトが使用されています。
土壌はまったく汚染されておらず、大地には雪解け水が流れ、一日の終わりには素晴らしい夕日
が見られます」。このメーカーの缶詰の原材料表記には「トマト、塩」しか書かれていない。だ
が、営業担当者は嘘がつけないタイプなのだろう、その缶詰を差しだしながらこう言った。

「うちの缶詰はりーズナブルですよ。濃縮トマトが45パーセントしか入ってませんからね。ア
フリカの市場ではごく平均的な割合です」

第5節
濃縮トマトが45パーセントで、添加物が55パーセント………ガーナでリウ将官から話を間い
た缶詰は濃縮トマトが31パーセントで、添加物が69パーセントだったが、それについては後
述する。いずれにしても、何百万個という中国産トマトペースト缶には、原材料表記に一トマト、
塩」しか書かれていないが、実際はトマトは半分以下しか含まれていないのだ。
各ブースでサンプルをもらって立ち去るたび、缶詰のひんやりした固さを手のひらに感じながら、
わたしはとまどいと後味の悪さのようなものをかみしめていた。これほどまでに広まってしまっ
たなら、これはもはやトマトペーストの「偽造品」というより、「本物」のトマトペーストとい
うことになるのではないか?

たった数年間でこうした不正行為が、アフリカ大陸に、いや少なくともアフリカ南部のサブサハ
ラ地域に広まったのは、いったいどうしてか

中国の各メーカーのパンフレットには世界地図が掲載され、自社製品が流通している国に赤いマ
ークが記されている。それを見ても、アフリカ諸国はずぼぬけて多い。
濃縮トマトの一連の取材において、わたしはまずは中国へ行って工場を目`てまわり、それから
フランスの食品見本市、シアル・パリで商社の人間を装って中国のさまざまな缶詰メーカ-に話
を聞いた。その結果、トマトペースト缶に関する不正行為がとてつもなく大規模である
ことがわかった。しかも、過去に一度も捜査のメスが入っていないのだ。現在、アフリカの何億
人もが、真実を知らないままこうした缶詰を消費している。

複数の業界通によると、中国当局もこの不正を知ってはいるか、自国の缶詰メーカーの「競争力」
を守るために目をつぶっているという。だが、これではまるで19世紀のようではないか?当時
はまだ世界中どこでも食品衛生法が確立していなかったので、缶詰で食中毒にかかる人も少なく
なかった。シアルで会った中国の缶詰メーカーの営業拒当者たちは、缶詰に入れられているもの
に毒性はないと主張していた。だが、ナイジェリアの不正行為取締局の調査によると、ここ数年
アフリカで流通しているトマトペースト缶から有毒物質が検出されている

 
                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

さて、検出された有毒物とは何か?ならば、アフリカでなどの関連国での中国産トマト缶ボイコ
ットの動きはどうなっているのか? 次回以降へ疑問は持ち越される。

                                    この項つづく

 

 Jul. 25, 2018 6:00 am
● Greece wildfires
At least 74 dead as blazes rage in holiday resorts near Athens

嘘が世界を半周したころ、真実はまだズボンを履こうとしている。
A lie gets halfway around the world before the truth has a chance to get its pants on.

                                                                         Winston Churchill (ウィンストン・チャーチル)

【再挑戦:五坐踏破計画 2018】

 ● 焼岳へGO!





7月28、29日のどちらか天気次第で実行。

● 今夜の一曲

Al Di La - Ray Charles Singers & Connie Francis (恋愛専科 / Rome Adventure)

 

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最新全固体型電池技術等々

2018年07月23日 | 時事書評

 

      
                                              
『六  韜』(ろくとう)
{虎の巻」ということばは、本書の「虎韜」が出典。太公望に仮託した後世の書。
『六韜』は、周建国の功労者・太公望呂尚が説いたという形になっており、まず、文王と彼との
出会いのエピソードから始まる。六篇から城るが、後半は無意味なものが多く、ここには三篇か
ら訳出する。

 Wikipedia

文王と太公望
ある日、文王は猟に出かけようと思い、史官の絹に占いをたてさせた。絹は占いの結果を報告し
て、「泗水の北岸に、大きな指物があります。この獲物は竜でも彲(ち:葳竜の一種)でもなく、
虎でも羆(ひ:熊の一種)でもありません。やがては大諸侯となる人物です。天がその人をあな
たの師としてつかわしたのです。かれはあなたを補佐して、三代にわたって仕えることになりま
しょう」「それほどの吉兆が出たのか」「かつて舜帝の御代に、わたくしの祖先にあたる疇(ち
ゅう)という史官が、占いを立てたことがあります。そのとき、舜帝は毀人皐陶を見出したので
す。このたびの占いにはそれにおとらぬ吉兆があらわれてい
ます」
そこで文王は出発を延期し、三日間潔斎したのち、猫車をととのえ、泗水の此岸に出かけた。は
たして、文王はそこで太公と出会った。太公は茅の茂みの中で釣糸をたれていた。「釣を楽しん
でおられますな」
文王がことばをかけると、大公はいった。
「君子の楽しみは理想の実現にあり、小人の楽しみは目先の仕事をなしとげることにある、とか
申しますが、わたしの釣は、君子の楽しみに近いといえましょう」
「ほう、どこが似ているのかな」
「釣には三つの秘訣があります。これは人材を得る方法と通じあいます。待遇をよくして人材を
招くのは、餌で魚を釣るのとおなじです。登用された臣下が生命を賭して穏くのは、釣りあげら
れた魚が死ぬのとおなじ道理です。能力に応じて人材を用いるのは、魚の大小によって扱い方が
あるのとおなじです。釣は、魚をとるのが目的ですが、その原理は深遠であり、より大きなこと
に活用できましょう」
「その原理というのを敢えてもらえまいか」
「水源が深ければ水は豊かに流れ、したがって魚も多く集まります。根が深く張れば本は大きく
成長し、したがって実もたくさん成ります。君子が心を一つにすれば力は何倍にもなり、したが
って大きな功績をあげることができます。あまりずけずけいってはお気にさわりましょうか。こ
とばやふるまいは人の心の現われ、自分の心をいつわらずに口にすることが大切だと思いますの
で」

「いや、仁者は直言をにくまぬというではないか。かまわぬからつづけてほしい」
「釣の場合、糸が細く、餌がはっきりみえれば、小魚がくいつきます。糸が中細で、餌のかおり
がよ
ければ中くらいの魚がくいつきます。糸が大く、餌が大きければ、大魚がくいつきます。く
いつかせ
れば、糸でひきあげることができます。同様に人間も、俸禄という餌で従わせることが
できるのです。
つまり、魚は餌で、そして人材は待遇によって集めることができるというわけで
す。大夫なみの待遇
で国中に人材を求めれば、国を手に入れることができます。諸俣なみの待遇
で天下に人材を求めれば、
天下を手にいれることができます。

それなのに、いかに人がむらがっていようとも、むなしくそれを去らせてしまう暗愚な君主もあ
ます。その一方、いかに暗愚であるかのように見えても、じつはその恩恵を遠くまで及ぼして
いる君
主もあるのです。聖人の徳は知らず知らずのうちにあらわれるものです。聖人が政治を執
れば、いと
もたやすく人を掌握し、天下全体を支配することでしょう」

どうすれば、天下を従えることができるのだろうか

天下は君主だけのものではありません。天下万民のものです。万民とともに天下の利を分かち
あう
者は天下を従え、天下の利を独りじめにする者は天下を失うのです。天には四季があり、地
には万物
を生みだす力があります。その恵みを万民と分かちあう者こそ仁といえます。仁のある
ところに、天
下は従いましょう。人民をすべての困窮から救うのは、であります。徳のあると
ころに、天下は従いましょう。人民とともに憂え、ともに楽しみ、愛憎を同じくすることは、
であります。義のあるところに、天下は従いましょう。人間は生を欲し、利益を求めるものです。
人民を生かし、これに利益を与えるのは、道であります。道のあるところに、天下は従いましょ
う」文王は太公に頭をさげていった。「あなたは真理を敢えてくれた。わたしは天の命令を率じ
て、あなたをむかえたいと思う」
そこで太公を車にのせて、いっしょに国都に帰り、師と仰いだのである。

文王〉紀元前十二世紀、殷を破って周を建国した武王の父。文王はおくり名で、姓は姫、名は
    昌。西方の有力な氏族をひきい、わが子の代に至って天下を得る基礎をきずいた。
太公〉元来は、父、または父の尊称。ここでいう「太公」は呂尚のこと。

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【最新全固体型蓄電池技術:米国特許篇】

今回は最新の米国特許開示例の4件をピックアップ。うち2件は、コーニング(Corning)社とク
ゥアンタムスケイプ(QuantumScape)社。残りは日本電気硝子とトヨタ自動車の日本企業。前者
2社は以下の通り(参考図は開示特許が入手できず、同社の既存開示特許のもの)で、

US 10,026,990 Lithium-ion conductive garnet and method of making membranes thereof(リチウムイオ
ン伝導性ガーネットおよびその膜の製造方法):式:Li 7-3yLa 3 Zr 2 Ga y O 12(式中、y0.4~2.0
であり、本明細書で定義される)のガリウムドープガーネット組成物。 また、本明細書で定義
されるような2つの代替低温経路のうちの1つを含む高密度Liイオン伝導性立方ガーネット膜の
製造方法(下図参考)。


US 10,008,742 Garnet materials for Li secondary batteries and methods of making and using garnet materi-
als
Li二次電池のためのガーネット材料およびガーネット材料を製造および使用する方法:固体
電池用途における電解質および陰極としての使用に適した、ガーネット材料組成物、例えば、リ
チウム詰めガーネットおよびアルミナでドープされたリチウム詰めガーネット。また、内部に微
粒子を有するリチウムを詰めたガーネット薄膜も、すべての固体リチウム二次電池用の陰極液、
電解質および/または陽極液としてのリチウム充填ガーネットの製造と使用の新規発明の方法。
さらに、これらのガーネット陰極液、電解質および/またはアノードを組み込んだ新規な電気化
学デバイス、また、電気化学的装置の陰極液、電解液、および/または陽極液として使用するイ
オン導電性材料の高密度薄(<50μm)自立膜を含む新規な構造の調製方法、正または負の電極材
料)、または完全な固体状態の電気化学的エネルギー蓄積デバイスでも。さらには、記載方法は、
固体状態のエネルギー貯蔵装置とその構成要素の、例えば加熱および/または電界支援(FAST
焼結の新規な焼結技術(下図参考)。

後者2社は以下の通り(参考図は開示特許が入手できず、同社の既存開示特許のもの)で、

US 10,020,508 Composite material as electrode for sodium ion batteries, production method therefor, and
all-solid-state sodium battery
:ナトリウムイオン電池用電極としての複合材料、その製造方法、全
固体ナトリウム電池:ナトリウムイオン二次電池用電極としての複合材料は、活物質結晶と、ナ
トリウムイオン伝導性結晶と、非晶質相とを含む。 活物質結晶はNa、M(MCr、Fe、Mn、Co、Ni
から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素)、P、Oを含む。

JP 2018-18578

US 10,008,735 Method of producing a sulfide solid electrolyte material, sulfide solid electrolyte material,
and lithium battery:
硫化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料およびリチウム電池の製造方法
:硫化物固体電解質材料の製造方法は、第1のガラス化工程において、Li 2 Sと硫化物とを混合し
て得られる原料組成物をガラス化して、架橋硫黄を含有するが、Li 2 Sを含まない中間体を形成
する工程 第14族または第15族の元素の硫化物との合計に対するLi 2 Sの割合が、Li 2 Sの割合よ
りも少ない硫化物固体電解質材料がオルト組成物を得るために必要とされる。架橋硫黄の結合を
切断する結合切断化合物を中間体と混合により得られる中間含有組成物を第2のガラス化プロセ
スでガラス化することによって架橋硫黄を除去することを含む(下図参考)。

 2018.7.5

以上の4件を俯瞰し、リチウム系全固体型蓄電池の研究開発の進捗から、また、国内の物質材料
研究機構、産業総合研究機構、民間企業の研究開発は着実に進捗している。このことを踏まえて
ここ数年内には日本をトップランナーとした「高品位蓄電池事業化」が実現、エネルギーフリー
社会と持続可能社会の実現に大きく貢献していくものとと考えられる。

【エネルギー投資篇:電力、2年連続で化石燃料のエネルギー投資上回る】




 No. 16

【3次元プリンティング技術応用篇:人工歯(入れ歯)】

7月19日、産業技術総合研究所は、アイディエスと共同で、3Dプリンティング用コバルトクロ
ム合金粉末の薬事承認を取得し、破損しにくく患者に適した人工歯(入れ歯)を、3Dプリンティ
ングにより短時間で製造する手法を実用化したことを公表。


この技術は、まず口腔内のデータを取得し、歯科医師の指示に基づき患者に最適な形状の人工歯
を設計。そのデータに基づき、医療機器として厚生労働省に登録された3Dプリンターを用いて積
層造形し、表面仕上げの後、臨床使用する。積層造形材としてコバルトクロム(Co-Cr-Mo-W)合
金粉末を利用する。この素材の臨床使用のためには、歯科材料の医療機器として厚生労働大臣の
承認が必要であったため、薬事製造販売承認申請をアイディエスが担当し、産総研も協力、2018
年4月27日クラスⅡの医療機器として製造販売承認されていが、
積層造形法では、従来の鋳造法
と比べ、ワックスなどの消耗品が不要で、材料の無駄も少ない。夜間に造形すれば次の日には仕
上げ加工でき、製造期間は3分の1以下に短縮できるという。また、今回のコバルトクロム合金粉
末を用いた積層造形材の金属組織は、透過電子顕微鏡を用いて観察すると、粒状のかなり微細な
組織となり、鍛造(鍛錬)材に見られる微細な鍛造組織と類似。

引張り試験を行った結果、積層造形方向を変えても影響は小さく、また歯科鋳造材と比べ、高い
強度と高い破断伸び(延性)を持つ。疲労試験の結果も、歯科鋳造材の200MPaに比べ、500MPa
と2倍以上高い。
今後、この積層造形技術の保険適用を目指す。また、新たな材料であるコバル
トクロム(Co-28%Cr-6%Mo)合金の国産粉末での認可を目指し、敏感なアレルギー患者向けに、
チタン材料での人工歯の開発も目指す。以上、3次元プリンター技術の医療(再生医療)進歩へ
の貢献度は日々高まっている。これは面白い。




【次世代がん治療篇:組織表面に貼る発光デバイス】

7月17日、早稲田大学らの研究グループは、光がん治療において、患者への負担が少なく、高
い治療効果が得られる無線給電式発光デバイスを開発したことを公表。それによると、
光でがん
を治療する光線力学療法PDT:Photodynamic
Therapy)は、生体に投与した光増感剤が集まった病巣
へ光を照射し、光化学反応によって発生する活性酸素で、がんの細胞死を誘導する方法。特に、出力が
従来の1000分の1といった極めて弱い光源を用いたメトロノミックPDTmPDT)法は、肝臓など体内深部
の臓器にできた腫瘍直下に発光デバイスを貼り付け、LEDを点灯させることでがん治療ができ、次世代
の治療法として期待されているが、腫瘍と光源の位置ずれなどが生じると、十分な治療効果が得られな
いという課題があった。



このため、長期間安定して固定できる体内埋め込み型発光デバイスを開発。mPDAへの応用を目
的としており、シールのように臓器や組織表面に貼り付けるだけで位置ずれを防ぐことができる。
開発発光デバイスは、膜厚が約600nmのシリコンゴム薄膜表面に、生体模倣型接着分子であるポ
リドーパミン(PDA:Polydopamine)をコーティングした。これにより、生体組織への接着性を
従来の約25倍に向上させた。発光デバイスを縫合しなくても、最低2週間は生体組織上に固定
させることが可能となる。発光デバイスは、NFC(Near Field Communication)方式の近距離無線
通信に対応するLEDチップ(赤色と緑色)が組み込まれており、接着性を向上させたことで腫瘍
部と光源のずれを防ぐことができた。

今回の実験では、担がんモデルマウスの皮下に無線発光デバイスを貼り付けて固定した。マウス
に光増感剤「フォトフリン」を注射した後、マウス飼育箱の下に設置された無線給電用アンテナ
から、マウスに組み込まれたLEDに給電して10日間連続的に点灯させた。この結果、光照射によ
る治療によって腫瘍が明らかに縮退した。また、従来のPDTでは近赤外光を用いるが、今回の
mPDTでは緑色の光で完全に腫瘍を消失させることに成功する。

 ● 今夜のアラカルト

『鴨だしせいろ蕎麦』

この暑さもあり、作業はますます掃けず、ランチ抜きがつづくが、ふと、そのことに気づき、イ
ンスタント「鴨だし蕎麦」を蒸籠蕎麦にて食べてみようとチャレンジ。いける。これに鴨ロース
トがあれば写真のようになるのだから、恐るべし日本の即席製麺技術。これ専用の鴨ローストを
開発すればいける(千成の通販でもいいか?!)

● 今夜の寸評:相撲も百分の一秒時代

おめでとう!御嶽海。それにしても豪栄道戦は見事だった。両者互角の記録的なゲームとなって
いる。心技一体の百分の一秒(桁)の反応(超意識下)が明暗をわけたと思っている。これを総
合スポーツ科学で分析すれば「相撲革命」となるだろう。

 

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まつろはす夏のゆふべの炎

2018年07月22日 | デジタル革命渦論

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

8.武 議(ぶぎ)
「兵談篇」で述べた一般論を、「戦争は悪」という観点から補足展開した章。悪であろうともな
お戦わなければならぬのが戦争であるからこそ、慎重さと非情さの両面が要求されるのである。

良馬もよき騎手を得てこそ
太公望は七十歳に及んでも志を得ず、朝歌(ちょうか)では牛殺しを渡世とし、盟津(もうしん)
では一膳飯屋を営んで生活をたてていた。こうして七十歳を過ぎてもまだ用いようとする君まも
なく、人々から狂人扱いされたものであるだが、ひとたび文王にめぐりあうや、三万の軍勢を
率い、一挙に天下を平定した。太公望が軍事に通暁していた賜物といわないで何といおう。「良
馬もよき騎手を得てこそ遠路を走り、毀士もしかるべき君主を得てこそ才能を発揮する」といわ
れているではないか。

〈太公望〉本名は呂尚。周の文王・武王の宰相として、殷を倒し、周王朝の基礎を固めた。   
〈朝 政〉殷の郡。今の河南谷にあった。
〈盟 津〉地名。今の河尚古にあり、黄河に臨む地。

人事を尽くすのみ
武王が紂王放伐の兵を挙げ、盟肆を渡った時には、座下の決死の士といえばわずか三百、率いる
軍も総数三万に過ぎなかった。これに対する村王の軍はその多きこと数知れず、飛廉、悪果の雨
勇将は挺身して部下を激励し、その軍陣は百里にわたって展開する壮大さであった。しかし威圧
は、自国の兵士、人民を疲弊させることなく、敵兵を多数殺傷することもなく、商を撃破して紂
王を滅ぼしたのである。だからといって、肩車に瑞祥吉兆があったわけではない。これひとえに、
人事を尽くしたか否かによるのである。

ところが現今、世の凡将たちは、相も変わらず方位をトし、星を占い、亀甲を焼いたり気象の変
化をうかがったりして吉凶を判断し、それに基づいて勝利を収め功を立てようと期待している。
何とも話にならない仕儀ではないか。

戦争の本質を知れ
将帥とは、つねに主体性を保って天文気象に支配されず、地勢の不利にも動揺せず、他人の意見
に盲従せず、縦横に独歩すべき者である。だからこそ、勝敗の帰趨を握ることができるのだ。 
そもそも、武器は不吉な道具であり、争いは望ましからぬ行為であり、軍人は人を殺すのが使命
である。したがって、武力に訴えるのは、万やかを得ぬ場合の手段でなければならない。だが、
ひとたび戦端が聞かれたなら、天をも恐れず、地をも則心にせず、君命がどうあろうと、敵勢が
どうあろうと、全軍一体となってさながら猛獣のごとく、風雨のごとく、雷宛のごとく、渕り知
れぬ猛威をふるい、その威武によって天下を震動させるようでなければならない。
勇猛なる軍隊は、水にたとえることができる。水はきわめて柔く弱いが、しかも行く手に当たる
丘陵をかならず崩し流し去る力を持つ。それはほかでもない。水の性質が終始一員して変わらず、
その運動法則も不変の理に基づいているからである。

以上のごとき戦争の本質を体得した将帥が、鋭利な武器と堅牢な甲胃とを具備した大軍を変通自
在の采配を揮ったなら、これに対抗し得る者は天下にあるまい。
だからこそ、次のようにいわれているのである。「有能な看を抜擢して用いれば時日の吉凶にか
かわらず成果があがる。法令を明確詳細に規定して実行すれば占わずとも結果は吉となる。人民
の功労をねぎらいいたわれ神に頼らずとも福がもたらされる」と。
また、こうもいわれている。「天の好機よりも地の利、地の利よりも人の和が大切である」と。
昔の聖人が言祝したのは、ただ人事を尽くすことのみであった。

〈不吉な道具〉原文は「凶器」。棺桶や副部品など、葬儀の道具の意である。



【下の句×樹木トレッキング:まつろはす夏のゆふべの炎×バッコヤナギ】

バッコヤナギ(Salix caprea)はヤナギ科の落葉小高木または高木。別名ヤマネコヤナギ。北海
道南半部から本州,四国に分布し山地から丘陵地のやや開けた明るい場所に生じる。葉は楕円形
または長楕円形で長さ 10cm,幅 4cmほど。先は鋭くとがり,基部は円形。辺縁に不規則な波状
の鋸歯がある。上面は無毛でやや光沢がある深緑色,下面は白色の縮毛が密生し粉白色。花は葉
の展開に先立って3~4月に咲く。雌雄異株。雄花穂は長楕円形で長さ3~5cm,径 3cm。雌花穂
も長楕円形で長さ2~4cm,径 1.5cmめしべの柱頭は2裂する。
 

 月見草

感覚が若いてシャープで親近感を覚え読み終え、時間があれば歌集を取り寄せてみようと思いつく
(が、眼精疲労がこの猛暑でさらに増しているのでそれはもっと後になる)。


旅へ この世界の外ヘ ー生どいふ砂ざけい反転きせて

あやふやな輪郭をみせ溶けてゆく氷床、わたし、未来。極夜の

北極星に問ひまた問ひて啓きゆく未知みづからの狂ひをみどめ

鈍(にび)いろの硝子でできたランタンにまつろはす夏のゆふべの炎

松本典子『極夜』より四首(歌壇、2018年07月号)

※ますろはす(服ふ・順ふ・纏らふ):ハ行四段活用の動詞「順ふ」「服ふ」の未然形である
「順は」「服は」に、使役の助動詞「す」が付いた形。合わす。添う。沿う。纏い付く。収(治)
まる。従う。仕えるなどの意。



 松本 典子(1970年2月6日 - )は、歌人。千葉県鴨川市出身。千葉県立安房高等学校、早稲
田大学教育学部国語国文学科卒業後、国立能楽堂を経て国立劇場に勤務する。1997年に短歌をは
じめ、同年短歌結社「かりん」入会、馬場あき子に師事。2000年、第20回かりん賞、第46回角川
短歌賞受賞。2003年、第一歌集『いびつな果実』で第4回現代短歌新人賞受賞。現代歌人協会会
員。


 

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津

第2節
生産ラインは二本あった。一本では、小型の缶詰が生産されている。直径55ミリ、高さ37
リのじ○グラム入りだ。もう一本では、それより大きな400ラム入りだった。床は水
びたしで、
ぬるぬるして滑りやすい。ラインのスタート地点で、トマトペーストが飛び散って
水たまりが赤
く染まっていた。

ベルトコンベアのすぐそばで、ひとりの作業員が缶詰の重さを測っていた。充崩後の缶詰の列か
らランダムに選びだしているようだ。使っているデジタルスケールはかなり使い古してい
る。あ
れで正しく測れるのだろうか?中身だけを測るために、容器の重さはあらかじめ差し
引かれてい
るらしい。それにしても、表示画面に現れる数字はあまりにもまちまちで、まるで
宝くじの抽選
会でも見ているようだ。トマトペーストの充場機が故障しているのか?それと
も壊れているのは
このスケールのほうか?もしかしたら両方とも? いや、そんなことはど
うでもいいのだろう。
作業員はまだ焼けるように熱い缶を指先でつまみ上げ、重さを測り、再
びラインに戻している、

するとそのとき、目の前のコンベアがいきなり停止した。それと同時に、騒音もビタリと止まる
。チェーンが一本切れたらしい。缶詰の重さを測っていた作業員がすぐに手を止め、両腕
を振り
あげながら同原に向かって何かを叫ぶ。それから生ぬるい水たまりのなかにしゃがみこ
み、破損
箇所を調べはじめた。コンベアのベルトはたわんで無残な姿になっている。だが、す
ぐに修理担
当者が交換部品を持って駆けつけた。接合部をハンマーで叩き、モンキースパナで
締めなおすと
、数分後にはまたラインが動きだした。その瞬間、再び騒音が響きわたる。コン
ベアの上流に溜
まっていた何百という缶詰が、まるで怒り狂ったようにすごい勢いで押し寄せ
てくる。コンベア
の先のほうでは、缶詰に自動で蓋をする巻き締め機が、巨大なコマのように
回りはしめた。缶が
ひとつずつ密封されていく。こうした作業がここでは延々と続くのだ。

コンペアの終点で、女性作業員がひとりでダンボール箱を組み立てていた。折りたたまれた板状
のダンボールを両手でつかみ、力をこめて折ったり開いたりしている。大量のダンボールがどん
どん箱の形になっていく。その素早さ、正確さは実に見事だった。しかもリズミカルで流れるよ
うな手さばきだ。だが、その顔はまったくの無表情だ。何も考えず、ただ目の前の仕事をこなし
ているだけ。ダンボール箱と同じ、空っぼのまなざしだ。これまで何千という箱を組み立ててき
たのだろう。何カ月も、いや何年も前から同じ動作を繰りかえし、同じ箱を作ってきたのだろう
。週じ日間一日も休まず、休暇も取らずに働いてきたのだろう。この女性も、ここにいるほかの
作業員たちと同じように、身も心もすり減らしながら、賃金のために労働力を提供しているのだ。

この工場は、一日34時間体みなく稼働している。仕事は八時間ずつの三交代制だ。週七日の計
五六時間、くたくたになるまで働かされる。それで受けとる月給は、ユーロ換算で500ユーロ
くらいだという。信じがたいことだ。給料についてどう思うか、通訳を介して従業員に質問して
みたが、誰も笞えてくれなかった。
確かに、民工の時代はもう終わったのだろう。2000年代初め、農村から都市に出稼ぎに出た
「民工」と呼ぼれる農民は、わずか200ユーロに満たない月給で工場に労働力を提供していた。
そのころに比べれば賃金は上がった。だが、労働時間は変わらない。労働者の仕事に対する意識
も変わっていない。工場の作業員は、男女とも同じTシャツを身につけていた。白地で、背中に
中国語が書かれている。肩まで抽をまくりあげている男たちがいる。そのうちのひとりは、がっ
しりしたからだつきで、いかつい顔をしていた。毛沢東時代のプロパガンダ用ポスターに描かれ
た、理想的な労働者の姿そのままだ。男らしく、たくましく、決然とした表情をしている。いや、
そんなふうに思うのは時代遅れだろう。この男はトマト帝国の兵士だ。中国の国家資本主義のた
めに戦っているのだ。

天津金土地食品代表のチャン・チュンクワンによると、この工場の規模は天津で第二位だという。
チャンは元軍人だ。特殊部隊用ミリタリーベルト、たくさんのスマートフォンと新車の黒い4W
Dを持っているのが自慢らしい。4WDが停められている駐車場の向かいに、巨大な石碑が立っ
ている。その上には一進歩のために戦おう」という社是が刻まれていた。
 原材料の濃縮トマトは、中国晨西部の新疆ウイグル自治区から、東部の天津まではるばる運ば
れてくる。三二〇〇キロメートルの行程を、北部を経由しながら、貨物列車に揺られて大陸を横
断する。そして工場に到着したら、水を加えられ、個別の小さな缶に詰めかえられ、あっという
間に暗に乗せられて、世界中へ輸送されるのだ。

第3節
天津金土地食品は、140人の従業員を雇用し、年間五万トンのトマトペースト缶を輸出してい
る。コンテナおよそ2000台分だ。行き先は幅広い。工場内の倉庫にはさまざまなブランドの
缶詰が並べられていた。とくに、アフリカ、中近東、ヨーロッパで販売されるものが多いようだ。

「この間は、ドイツとスウェーデンに向けて出荷しましたよ」と、チャンは言った。
工場の最後の工程では、400グラム入りのトマト缶が機械で箱詰めされていた。その機械の向
かい側で、箱の隙間にプラスティック製の蓋を入れている作業員がいた。西アフリカ向けの商品
だという。西アフリカでは、貧しくて70グラム缶さえ買えない人たちのために、市場でトマト
ペーストをスプーン売りしている。スブーンー杯当たり数ユーロセントという値段で、紙に包ん
で販売される。プラスティック製の蓋は、400グラム缶がスプーン売りされるとき、劣化しな
いよう開封後の缶にかぶせておくためのものだ。スプーンー杯分けわずかな金額でも、トマトペ
ーストの需要が多い西アフリカでは積もり積もって莫大な売上になる。トマトペースト缶市場は
世界でもっとも貧しい国でも形成されている。たったスプーンー杯からでも市場は生まれるのだ。

第4節
「この部屋には入れません」
マーはそう言いはなつと、半透明の分厚いプラスティック製カーテンの向こうへ行こうとするわ
たしを引きとめた。わたしは少しだけ驚いたふりをしてから、「ああそうですか、わかりました」
と、興味のないふりを装った。だが、頭のなかではさまざまな思いがフル回転していた。人って
はいけない理由が何かあるはずだ。
たった今まで、わたしはこの工場の生産ラインをあちこち見学し、あらゆる工程を見てまわった。
濃縮トマトを再加工しているところも、トマトペーストを缶に充填しているところも、巻き締め
機で蓋をしているところも、重さを測ったり、不良品の検査をしたり、缶詰を箱詰めしていると
ころも、すべて見せてもらった。だが奇妙なことに、新疆ウイグル自治区からやってきたはずの、
三倍濃縮トマトが入ったあの青いドラム缶はどこにも見当たらなかった。通常は、生産ラインの
スタート地点に、ドラム缶から原材料がポンプで汲み上げられてラインに供給される工程がある
はずだ。ここにはなぜかそれがなかった。

工場の一番奥に、原材料に水を加えて混ぜるための巨大な機械が並んでいた。初めてトマト加工
工場を見たひとは、そこが生産ラインの始まりだと思うだろう。機械には、丸みを帯びた巨大な
タンクがついていた。人工衛星スプートニクのようなそのタンクには小窓がついており、原材料
の濃縮トマトがなめらかなベースト状になっていく様子が覗けるようになっている。これこそが、
あのIプール(球体)」と呼ばれる機械だ。パルマのトマト博物館で見た、19世紀の蒸発濃縮
装置の現代版だ。そしてここにある今の「プール」も、技術的にはむかしのものとほとんど変わ
らない。

わたしは先ほど見た光景を思いだした。確か、あの「プール」の奥には高いブロック塀が立ちは
だかっていた。そうだ、間違いない。あのブロック塀の向こう側に青いドラム缶があるはずだ。
方向的に考えて、プラスティック製カーテンの奥の部屋にちょうど位置している。
そこでは本当に、ドラム缶から濃縮トマトをポンプで汲み上げてIプール」に供給する作業をし
ていろのだろうか?本来ならそうであるはずだ。だが、もしかしたら別のことをしているのでは
ないか?だから、ブロック塀とカーテンで外から見えないようにしているのではないか? つい
先ほど、原材料を保管する倉庫を見学したとき、青いドラム缶の横に白い大きな袋が積まれてい
るのに気づいていた。「塩」と記されたものもあったが、何も書かれていない袋もあった。

これまで、中国のトマト加エメーカーについてのよくない噂を、あちこちで聞いていた。だから
こそ、マーにあの部屋へ入るなと言われたことで、疑惑がますます深まったのだ。なんとしても
あの部屋を見なくてはならない。どんな工程が隠されているのか、この目で確かめなくては,だ
が、いったいどうすればよいのだろう?
一時間後、同行したカメラマンのグザヴィエ・ドゥルーが、マーのポートレート動画を倉庫で撮
影することになった。わたしと共同で制作しているドキュメンタリー映画のためだ。マーはドゥ
ルーの指示にしたがって、並んだドラム缶の前を何度も行ったり来たりしている。わたしはその
様子を静かに見守っていた。そして、描のように様子をじっとうかがいながら、隙をみてこっそ
り抜けだそうと考えていた。

よし、今だ!わたしは倉庫をそっと抜けだした。梱包用のダンボール箱の前を通りすぎ、濡れた
床で滑らないよう気をつけながら、生産ラインの終点から始めまでダッシュで走りぬける。そし
て二分後、あのプラスティック製カーテンの前に到着した。カーテンの奥を覗きこむ。大きなタ
ンクとプラットホームが見える。視線を上げると、ブラットホームの左手に男の背中があった。
山積みにされた袋の奥で、タンクのほうを向いて立ち、白い粉がもうもうと舞い散るなかで何か
をしている。男が袋を取ろうとうしろを振りかえったときに目が合った。男はマスクをつけてい
た,
「ニイハオ!」

わたしは片手を上げ、中国語でそう挨拶をした。どういう反応をするだろう?すると相手は笑顔
で挨拶を返してくれた。よし、これなら大丈夫。わたしは階段でブラットホームに上り、男の隣
に立った。そしてもう一度挨拶をした。男はわたしが隣にやってきたのを喜んでいるように見え
た。目の前のタンクを覗きこむ。なるほど、これは撹拝機だ。袋のなかの白い粉をこの攬拝機に
入れるのが男の仕事なのだ。ここで原材料の濃縮トマトに何かが混ぜこまれ、水分が加えられ、
缶に詰められるのだろう。だが、缶のパッケージには「原材料-トマト塩」としか記載されない
のだ。   
                        
この白い粉はいったい何なのか?ブラットホームには三種類の袋が置かれていた。大豆食物繊維、
デンプン、デキストロース。デキストロースは、ダルコースやブドウ鯨とも呼ばれる糖類だ。白
い粉末状の結晶で、無臭で甘みがある。粒子が細かいので、食品に加えるととろみがついてなめ
らかになる。水に溶けやすいので、たとえば濃縮トマトに別のものを混ぜるときにつなぎとして
便うと便利だろう。

続けて、どこかから延びているチューブを通して、赤い液体がタンクに注ぎこまれた。希釈され
た濃縮トマトだ。わたしは携帯電話を取りだして、その様子を証拠として撮影した。攬桂機が動
きだし、白い粉が赤い液体と混ざりあって薄紅色のペースト状になっていく。

プラットホームから降りて撹件機のまわりを歩くと、今度は四人の作業員に出会った。分厚い千
ブロン、マスク、そしてゴム手袋を身につけている。彼らは何をしているのだろう?その背後に
は、二五リットルから30リットルくらいのタンクが20個ほど並べられていた。いずれも不透
明な液体が満杯に入っていて、不快な匂いを放っている。作業員たちはふたりがかりでそのタン
クを運んでいき、攬栓機につながっている機械のなかに中身を空けた。液体はニンジンのような
オレンジ色をしていた。間違いない、着色料だ。

倉庫へ戻ると、マーは拒変わらずカメラに向かって、ドラム缶の前を行ったり来たりしていた。
まるでランウェイを歩くフアッションモデルのようだ。よかった、どうやらわたしが姿を消した
ことには気づいていないらしい。

第5節
一時間後、わたしはマーのオフィスでインタビューを行なった。トマト缶の品質について質問を
すると、会社が授かったという表彰状や証明書を見せてくれた。「これは、IS022000認
証、食品安全了不ジメントシステム国際規格の認定証明書です。商品を輸出する会社は取得が義
務付けられています。そしてこちらは、IS09001認証、品質了萍ジメントシステム国際規
格の認定証明書です。これかおるから国内市場で販売ができるのです。どちらも食品を生産・販
売するには必要不可欠です。弊社ではそうした認証をすべて取得しています。また、天津におけ
る食品関連トッブ企業のひとつとして政府から顕彰もされています。中国税関の検験検疫局から
は信頼性が高い企業〃と格付けされています。過去10年間の弊社の成長の過程で、少しずつこ
うした評価をいただけるようになりました。大変誇りに思っています」


                   ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                    この項つづく


  March 26, 2015

【史上最強吸引力コードレスクリーナ:パナソニック】

● 電気自動車技術開発の特徴がクリーナにも集約

いまや、4割以上の家庭で2台以上を所有すると言われる「掃除機」は、まさに成熟市場である。
実際、国内掃除機市場の年間出荷台数も、年々減少傾向にある。
調査によると、2015年度には、
年間864万台だった国内の掃除機市場は、17年度実績で821万台に縮小。18年度も804万台に縮小
することが想定されている。
だが、その中身を見ると、単に市場が縮小しているわけではないこ
とが分かる。これまで主流となっていたキャニスター掃除機が出荷台数を大幅に減少させる一方
で、ロボット掃除機やコードレススティック掃除機が出荷台数を伸ばす。15年度には150万台だ
ったスティック掃除機の出荷台数は、17年度には220万台に拡大。18年度は260万台に拡大予想。

 Jul. 20, 2018

こうした中、パナソニックが8月から発売する「POWER CORDLESS(パワーコードレス)。パ
ワーコードレスでは、「キャニスター掃除機と同等の約200Wの吸引力を実現。パンチコ玉を入れ
た7kgのペットボトルも吸い上げることができる。
この高い吸引力を実現したのが、新開発のモ
ータ。
業務用ロボット掃除機に採用した大口径モーターをベースに、日本電産との協業によって
開発、最大2万Pa(パスカル)の真空度と、業界最大風量となる1.3立方メートル/分を実現。
パナソニックのコードレスクリーナー史上、最高の吸引力を実現
搭載した大型高速ファンによ
り、最大風速約750km/時を実現。モーターに採用している❶マグネットの長さを従来比2倍
し、❷3層構造を採用で、損失を抑えトルクモーターを向上。❸ストレート排気構造の採用によ
りモーター内部の風損ロスを低減したという。
一方で、運転時間の長時間化も図り、スティック
掃除機としては❹最大となる、8本のリチウムイオン電池を直列配置で搭載。これにより、高電
圧パワーを実現。電池への負担を抑え、最長で65分間の長時間運転を実現。❺
だが、高い吸引
力と長時間運転を両立する上で、マイナス要素となったのが新開発のモーターと、リチウムイオ
ン電池の重量増だ。モータは、従来モデルに比べて約80gの重量増となり、リチウムイオン電
池は2本増やしたことで、約110gの重量増となっている。軽量化が重要な要素であるスティ
ックス掃除機にとってはマイナス。
そこで、パナソニックは、本体部に、➏植物由来の素材であ
セルロース・ファイバー樹脂を採用。ABS樹脂と比べても、同じ強度ながらも10%の軽量化
を実現。❼さらにノズル部には、耐衝撃性を保ちながら、樹脂使用量を抑え、軽量できる中空ガ
ラス配合軽量プラスチックを採用。加えて、本体裏側部分には、正六角形柱を隙間なく並べたハ
ニカム構造を採用して、強度を維持しながら軽量化を実現。本体重量を2.5kgに抑えた。

 


【変換効率30%超時代:論文公開で最高効率ペロブスカイト 23.3%】

● 情報源:中国科学院(
下図参照)

  Jul. 9, 2018
  


 ● 今夜の一曲

ナオト・インティライミ『ハイビスカス/しおり』
作詞/作曲:ナオト・インティライミ、福島カツシゲ

明日 明日 この世界が 
終わるって わかってたとして 
なかなか 咲かないね  待ちぼうけ
oh-we-wo 冬が長かったから
まだまだ 足りないね 愛をくれ
oh-we-wo はぐらかしてばかり 
他力本願で  実に アンバランス
自力で咲こうとも 思わないまま
時計は進む 時はめぐるよ・・・・・・

ナオト・インティライミ(1979年08月15日 - )は、日本の男性シンガーソングライター、俳優。
本名は中村 直人(なかむら なおと)。所属芸能事務所は株式会社エンジン。所属レコード会社
はユニバーサルミュージックで、レーベルはユニバーサルシグマ。身長は172cm。血液型はA型。
公式ファンクラブは「FCインティライミ」。 7/10(火)の「ナオトの日」に20枚目の両A面シングル
「ハイビスカス/しおり」が発売。今作は両A面で、映画&ドラマ「覚悟はいいかそこの女子。」主題歌
「ハイビスカス」と、テレビ東京系 金曜8時のドラマ「執事 西園寺の名推理」主題歌「しおり」の豪
華タイアップ楽曲2曲を含む全6曲(インスト音源を含む)を収録。

 Jul. 21, 2018

● 今夜の寸評:村上春樹氏小説香港で「18禁止図書」指定

香港の司法当局は、村上春樹著の「騎士団長殺し」を18歳未満の青少年への販売を禁止。司法
局が内容を審査したところ、暴力や堕落、不快な表現など、公序良俗に反する出版物だと判断。
小説のどの部分が条例に抵触したのか、具体的には明らかにしていないが、ハード・スターリン
主義(=毛沢東義/アジア赤色専制主義)回帰か。法整備の近代化か。
 

   ● 今夜の一枚                                                  

 

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音明るきは夏来るしるし

2018年07月19日 | 環境工学システム論

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

8.武 議(ぶぎ)
「兵談篇」で述べた一般論を、「戦争は悪」という観点から補足展開した章。悪であろうともな
お戦わなければならぬのが戦争であるからこそ、慎重さと非情さの両面が要求されるのである。

戦争は悪である
戦争はやむを得ず行なうものである。敵対せぬ国を攻撃してはならず、対岸の人民を殺してはな
ぬ。ひとの親たる者を殺し、ひとの財物を奪い、ひとの子女をドレイにするのは、どれをとっ
ても、
盗賊の所行ではないか。戦争とは、暴逆な者を罰し、不正を抑止するための、万やむを得
ぬ手段にす
ぎないのだ。
指導者がこのことをわきまえていれば、どこを占領しようと、平時と変わらぬ秩序が保たれる。農民は農
事にいそしみ、商人は店舗を閉ざさず、官吏も役所を離れようとしない。このような指導者を戴く国は、あ
えて武力に訴えずとも、おのずから天下の民心を集めることができるのである。

国家規模に対応した計画を持て
戦争に対する心構えは、国の規模に応じて異なる。万乗の大国ともなれば、為政者は生産の振興と軍備
の充実との両面にわたって意を用いなければならぬ。千乗程度の中規模の国の為政者は、まず防衛体
制の整備に全力を注ぐべきである。そして百果そこそこの小国にあっては、何よりも民生の安定を第一義
とする政策を実施することだ。

生産がふるい軍備が充実した大国には、権威は求めずとも備わるだろう。防衛体制の整った国は
少な
くとも侵略される恐れはない。そして小国といえども民生が安定していさえすれば、独立独
歩の気風はお
のずと養われ、愛国心は高揚する道理である。もしも国家財政が乏しくて、軍事費
を充分に支出すること
が困難な場合には、商業を振興して財政人の増加をはかるべきである。高
菜こそ、収入を増加させるもっ
とも有効な手段なのである。万乗の国は、千栄の援助を得られぬ
ことを気に病む感要はない。むしろ商
業の振興を通じて、百果に相当する収入増をはかる方が、
より望ましいのである。


罰は大物に、賞は下っ端に
軍紀違反者に対する処罰は、将たる者の武威を発揚するための感荷手段である。したがって、た
だ一人を処刑することによって全軍が震騏し軍紀が緊張するとみれば、ためらうことなく処刑す
べきだ。わずか一人を処刑することによって全員が心服するとみれば、ただちに処刑すべきだ。
処刑される人間は大物であればあるほど効果があがり、表彰される人間は小物であればあるほど
響は大きい。処刑に値する人間はいかに大物であろうとかならず処刑するのは、高位高官とい
えども例外なく軍紀の統制を受けることの証明である。表彰が牧童や馬丁にまで及ぶのは、いか
に卑賤であろうとも表彰規定が一律に適用されることの証明である。高位高官も軍紀の統制に服
し、卑賤な者も表彰規定の適用を受ける。つまり法の眠格公正な運用こそ、将たる者の武威では
ないか。武威なき将帥は、君主からも信頼されるわけがない。

将帥たる人材
将帥たる者の任務は、指揮権を付与されて国難に当たり、戦争の勝敗を決し、命をまとに争うと
ろにある。指揮が適切であれば功績を認められ栄誉を獲得するが、指揮が適切を欠けば一命を
失い国
家をも破滅に導く。一国の興亡安危はひとえに指揮のいかんにかかっているのだ。どうし
て将帥たる者の人材を斜視できようか。
軍を指導して戦闘に当たり、武力によって大業を成就する。これは君主にとって、さほどの難事
ではない。思うに、それは将帥に人材を得るか否かにかかっているのだ。
古人もいったではないか。「素手で敵を攻撃し、まるはだかの状態で侵略に対処するのは、軍隊
として落第だ」と。将帥こそ最良の武器であり、防塞なのである。(中略)有能な将帥の武威は、
戦場生活が長期にわたり、甲冑にしらみがわいてもなお士卒の戦意を衰えさせない。それはなぜ
だろうか。たとえてみれば、鷲に襲われた雀が、日頃は恐れ避けている人間の懐めがけて飛びか
かり、人間の住居にまで侵入するようなものだ。死を願ってのことではなく、ただ背後にある者
への恐れからこのような行動に出るのである。

オノエヤナギ:Salix udensis(ヤナギ科ヤナギ属)】
落菜高木で,本州山地の河岸や四目の山地にも分布している。若菜には相当毛があるが,のち
にはほとんど無毛となり,
下面はやや白っぽい。 カラフトヤナギ,ナガバヤナギなどの別名
ある。
北海道、本州、四国 の山地の湿地や日当たりのよい谷間などに自生する落葉高木。雌雄
異株。1本立ちで、高さ5~15mになる。枝は小枝の分岐点で折れにくく、数年枝の裸材に隆起
線はない。



②分類:広葉樹(直立性)-単葉-不分裂葉-互生-きょ歯あり-きょ歯は単きょ歯-側脈は葉縁に達
しないか不明瞭-きょ歯は全縁にある-落葉性。③葉は互生する。葉身は、長さ 10~16cm、幅
1~2cmの披針形~狭披針形で最大幅は基部寄り。葉柄は0.5~1cm。葉の先端は細長く尖り、
基部は狭い楔形。縁には不整で低い波状のきょ歯が全縁にあり、先端部を除き裏側に巻くことが
多い。新葉は外反する。葉脈は表面で凹み裏面に浮き出し、表面では皺が目立つ。④葉の表面は
暗緑色で光沢があり無毛。裏面は淡緑色または青白緑色で葉裏全体に短毛があるが、ないものも
ある。若い枝は黄褐色で毛はあるものとないものがある。



【下の句×樹木トレッキング:音明るきは夏来るしるし×尾上柳】

Crape myrtle 

朝あさを落ち葉掻き寄せ掃き寄せて仰げ尊し楠の大樹は

暁を雨降り出でて木々を打つ音明るきは夏来るしるし


大下一真 『そののち憤怒』より二首(歌壇、2018年07月号)

 Sep. 18, 2008

 

Nov. 11. 2010
【低炭素型コンクリート篇:最新低炭素型コンクリート技術】

  Mar. 24, 2018

大量の化石燃料の消費に伴い、地球温暖化の問題が深刻化してきている。この地球温暖化を抑制
するために、二酸化炭素の排出抑制が各産業に求められている。建設業界においても、コンクリ
ート材料として広く使用されるセメント(ポルトランドセメント)は、その製造過程において膨
大な量の化石燃料を使用し、大量の二酸化炭素を排出する。また、その製造過程において石灰石
の脱炭酸反応が生じ、二酸化炭素を排出する。このため、コンクリート中のセメント使用量をい
かに削減するか、あるいは低炭素型セメントへの切り替え、さらには、木材使用による非コンク
リー型建設部材化への経理換えが大きな架台となっている。集中豪雨などの大規模気候変動に曝
される日本列島への防災・減災用施設建設及び部材に関わる二酸化炭素排出量の削減は喫緊の課
題である。

昨年3月24日、戸田建設は、地球温暖化対策の一つとして、同社の筑波市にある環境技術実証
棟の一部で、低炭素型コンクリート「スラグリート®」を適用し、建設時の二酸化炭素(CO2)排
出量を削減したことを公表。「スラグリート®」は、同社と西松建設、国立研究開発法人土木研究
所との共同研究によって開発、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメントの代替として
積極的に活用したコンクリートです。コンクリート製造時に、CO2の主たる排出源となるセメント
使用量を大幅に低減することで、一般的なコンクリートに比べて――「スラグリート®」は、高炉
スラグ微粉末をセメント質量の70~90%置換で高含有した、セメント使用量の極めて少ない
コンクリートであり、高炉スラグ高含有コンクリート用の化学混和剤を用いることで、下記の特
徴を有す、CO2排出量を最大70%削減できる環境にやさしいコンクリートである(下記に特徴を
敬作)。

✪一般的なコンクリートと比較して、コンクリート製造時のCO2排出量を約70%※2削減。
✪適切な材料選定と配合設計を実施することで、ポンプ圧送性や打込み、締固め作業等の施工性
 能が一般的なコンクリートと同程度となる。
✪圧縮強度や耐久性能も一般的なコンクリートと同程度。

※2.
「スラグリート®」と同じ呼び強度27N/mm2の普通コンクリートと比較した場合。下記に関
連特許技術を掲載。

❑ 特開2014-114176 コンクリート材料

【概要】
このコンクリート材料は、少なくとも70質量%の混和材料を含有する混合セメントと骨材と水
と混和剤とを混合することにより製造されるコンクリート材料である。このコンクリート材料の
配合は、セメントのみを使用してコンクリート材料を製造する場合に必要とされる所定の水セメ
ント比、単位水量、細骨材率および混和剤の添加量とされるが、その混和剤として、一定量の増
粘剤を含有した混和剤が使用することで、セメントのみを使用する場合とほぼ同等の単位水量お
よび混和剤の使用量を確保しつつ、練り上がりからの経過時間によるスランプの低下を小さくで
きるコンクリート材料を提供する(下図詳細参照)。




❑ 特開2018-104266 セメント組成物及びその製造方法、並びにモルタル又はコンク
リートの製造方法  宇部興産株式会社


【概要】
高炉セメントは高炉スラグを混合材とするセメントである。近年、セメント製造時の二酸化炭素
排出量への関心が高まっていることから利用が推進されている。一方で、高炉セメントはセメン
トの水和反応によって発生する水酸化カルシウムを刺激剤として徐々に硬化するというスラグの
潜在水硬性を利用しているため、普通ポルトランドセメントと比較して凝結が遅延することや硬
化して十分な強度が得られるまでに長い時間を要することが従来からの課題となっている。
高炉
セメントの初期強度や凝結遅延の改善に関する既往の報告では、水酸化カルシウム及び石膏の添
加、硫酸アルカリの添加、及び石膏や高炉スラグの粉末度を高めるといった技術が提案されてい
る。



しかしながら、水酸化カルシウムや硫酸アルカリ等の添加剤の調達や、石膏や高炉スラグの高粉
末度化には生産コストが増大するという問題がり。高炉スラグの含有量が60質量%を超えるよ
うな場合や、特定の成分を有する混和剤を使用した場合には、凝結の遅延が著しく、更なる対策
が求められていた。セメント組成物は、セメントと高炉スラグとを含む。セメント中のCA(式
中、CはCaOを表し、AはAlを表す。)含有量が9質量%超20質量%以下である。高
炉スラグの含有量が30質量%超95質量%以下である。高炉スラグのAl含有量が11質
量%以上18質量%以下であることが好適である。セメント中のフリーライム含有量が0.5質
量%以上3.0質量%以下であることも好適である。更に、セメントと高炉スラグとの合計10
0質量部に対して0.01質量部以上1質量部の硫酸アルカリを含むことも好適で、生産コスト
の増大を抑えながら硬化遅延が抑制されたセメント組成物を提供する。


【低炭素型コンクリート事業篇:野菜でより強固な建物や橋脚に貢献】

  Jun. 15, 2018

8月15日、 英国はランカスター大学の研究グループは、機械的特性および微細構造的特性の点で
現在のセメント製品より優れ、セメント使用量削減――セメント製造に伴うエネルギー消費と二
酸化炭素排出量が大幅に削減できる――人参や甜菜繊維から抽出したナノプレートを混成するこ

とで実現きたことを公表。



これらの植物複合コンクリートは、グラフェンやカーボンナノチューブなどの市販のセメント添
加物をはるかに低コストで生産でき、
根菜のナノプレートレットは、コンクリートの性能を制御
する主要物質であるケイ酸カルシウム水和物の量を増やし、コンクリートに生じる亀裂を抑制―
コンクリートの物性を高め、二酸化炭素排出量の削減を可能となる。コンクリートの主要成分の
1つのポルトランドセメント代替させることで全世界の二酸化炭素2排出量の8%を削減。今後、
30
年間で需要は2倍になると予測されている。

根菜のの
ナノ繊維の添加で、コンクリート1立方メートル当り普通のポルトランドセメント40
キログラム削減=二酸化炭素排出量40キログラム削減。
根菜植物混成物の強度が大きいほど、
既存のコンクリートより微細な加工物が作製できることを意味する。
植物ベースのセメント質複
合材料はまた、腐食を防止、長寿命化など、より高密度微細構造に適している。日本でも、すで
に、グラフェン混成やナノセルロース繊維混成による軽量化、強度、靱性強化の開発が先行して
いるが、食糧作物の「ゼロ・ウエスト」につながる今回の研究報告に注目したが、大量消費を実
現するには木質バイオマス由来との兼ね合いが課題となろう。




【海洋温度差発電篇:OTEC沖縄 ホーム 温度差発電実】

もう1つ、自然/再生可能エネルギー利用技術の1つである海洋温度差発電(OTEC:Ocean The-
rmal Energy Conversion
) は海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用して発電を行う仕組み―
―について今夜は注目する。原理的には、海洋が受ける総日射量 = (5.457 × 1018 MJ/yr) × 0.7
= 1.9 × 1018 MJ/yr. (taking an average clearness index of 0.5
) このエネルギーの15%が吸収される。
光強度は水深yに伴って 指数関数的に減衰するので、熱の吸収は上層に集中して起こる。熱帯で
は通常、水深1キロメートル以上で水温10℃である一方、表面温度は25℃を上回る。上部に
より温かい、すなわち軽い水が存在するため、対流が生じない。熱勾配が小さいために熱伝導に
よる熱移動は少なく、この温度差を解消するには至らない。従って、海洋は事実上、高温熱浴と
低温熱浴であるとみなすことができる。この温度差は緯度、季節に伴って変化し熱帯、亜熱帯、
赤道で最大になる。この温度差を利用し下図のように発電、(エネルギー)、海水淡水化、成分
利用、冷熱利用など4事業に展開できる。



しかし、海洋は絶えず太陽によって熱せられ、地球の70%近くを覆っているのに対し、深層の水
は比較的低温(10℃以下)であり、この温度の違いは人間が使うために開発される可能性を秘め
た膨大な量の太陽エネルギーを含み、もしもこの抽出を大規模に経済的に行えば、人口がも
たら
すエネルギー問題を解決できる可能性があり、水力などの他の海洋エネルギーの選択肢と比べて1~2
桁多くの総エネルギーを利用できるが、温度差が小さいとエネルギーの抽出は困難で高価になり、典型
的なOTECシステムの全体的効率は1~3%しかないといった課題があるが、海洋資源/観光開発の中
核設備として展開でき夢のある事業であろう(残件扱い)。 

  

第13章 天津のトマト缶工場の秘密
中国、天津
第1節
乳白色の空の下、缶詰工場に向かってアスファルトの道路が延びる。片道三車線で、車線ごとに
通る車両の種類が違う。左は一般車用だ。セダン、クーペ、4WD、新型モデルなど、さまざま
な種類の乗用車が通る。真ん中の車線は貨物トラック専用だ。まるで港のコンテナターミナルの
ように、工場に向かってトラックが長い列を作っている。もっともゆっくり流れているのは右の
車線だ。自転車、原付スクーター、オート三輪などが走っている。あちこち補修されたボロボロ
の自転車や、走っているのが不思議なくらいに古い車もある。ヘルメットもかぶらずに原付バイ
クに乗る工場従業員もいる。金持ちから貧乏人まで、三つの車線に広がって、みんながこの道を
進んでいく。沿道には、同じような形の高層住宅がずらりと立ち並ぶ。
未完成のまま放置され、錆びた鉄筋がむきだしになっている建物もある。石造りのアーチが目の
前に現れた。大きな金文字で一天津金土地食品有限公司」と書かれた看板が見える。同社はドラ
ム缶入り濃縮トマトからトマトペースト缶を作る大手缶詰メーカーのひとつだ。だが、ここは会
社の正面玄関ではない。この大きくて派手な門は、公式行事の式典や、写真撮影にしか使われな
い。営業用の会社案内パンフレットには、この門を背景にした写真が掲載されている。

工場の敷地内に入るには、別のゲートを通らなくてはならない。通勤する従業員たちのオートバ
イが並んで走る脇を、車で追いぬいていく。ゲートが上がると、警備室のすぐ横から発送場が広
がっていた。この発送場では毎日、昼も夜もなく、男たちが汗だくになって働いている。トマト
ペースト缶が詰まったダンボール箱をコンテナに積みこむ作業だ。ものすごく暑い。上半身裸で、
プラスティックのサンダルをひっかけただけで、フオークリフトを操っている者もいる。コンテ
ナの高さはニメートル60センチだ。ダンボール箱を高く積みあげていき、背が届かなくなると
積荷を踏み台代わりにする。長さ六メートルのコンテナがダンボール箱でほぼいっばいになると、
地面にパレットを積み上げて脚立代わりにし、天井ギリギリまで無理やり箱を押しこむ。海運業
者や港湾当局に文句を言われようが知ったことではない。ほんのわずかな隙間も残さないよう工
場幹部から指示されているのだ。

男たちは、短パン姿で、脚をむきだしにして働いている。パレットをじ枚重ねた上に男がふたり
乗っている。今のところうまくバランスを取っているが、もしどちらかひとりが体勢を崩したら、
パレットは崩れ落ちてしまいそうだ。2015年だけで、中国では28万1576件の労働災害
が発生している。うち6万6182件が死亡事故だった。
無理やり箱を詰めこんだせいで、コンテナの扉が閉まらなくなった。さあ、ここでフオークリフ
トの登場だ。ツメを高く上げたま圭扉に向かって突進し、強引に扉を閉じる。二本のツメが金属
製の扉にすごい勢いでぶつかり、ドーンと激しい衝撃音が響きわたった。通し番号がついた金属
製ボルトシールで扉が封印される。よし、これで準備完了。匹に界の港へ向けて出発だ。



第2節
トマトペースト缶が積まれたコンテナは、工場から天津港に輸送されるためにトレーラーに載せ
られる。作業員がクレーンを遠隔操作してコンテナを持ち上げている。巨大な金属の塊な
のに、
まるで宙に浮いているようだ。ふわふわとトレーラーのほうへ近づいて、荷台の上にゆ
っくりと
降りていく。コンテナを定位置に設置するため、四人の作業員がコンテナ下部の四隅
をそれぞれ
両手で支えている。荷台から数センチの高さまできたところで、クレーンがコンテ
ナを離した。
コンテナの重みで、トレ士フーがドンという大きな音を立て、荷台が激しく揺れる。

金土地食品の工場は、天津港のコンテナターミナルから数キロメートルのところにある。天津港
の取扱貨物量は世界第10位だ。あらゆる貨物が陸揚げされ、積みこまれている。2015
年の
コンテナ取扱量は一匹〇〇万個だった。長さ20フィート(約6メートル)のコンテナ1
台を1
個とした数量だ。業界ではTEU(20フィートコンテナ煥量)という単位も使われ
る。
現在、天津は経済の重要な拠点として、直轄一巾の名のもとに中央政府の管理下に置かれている。
人口は1500万人で、中国第4の都市だ。南運河と北運河という溺海に注ぐ二つの大河
の合流
地点に位置し、太古より河川交通の最終地点、および港町として重要視されてきた。7
世紀には、
隋の時代に建設された京杭大運河のおかげて国の北部や東部とも結ばれた。そして
近年、とくに
ここ数十年は、鉄道、高速道路、海運など、大運河以外の流通ルートも網の目の
ように広がり、
天津の経済活動はますます活発になっている。

 Aug. 12, 2015

2015年、天津の港湾地区で大規模な事故が起きた。有毒化学物質を数千トン保管していた倉
庫が爆発したのだ。人体に有害なシアン化ナトリウムが700トン流出し、消防士99人
をはじ
めとする173人の死者、800名近くの負傷者が出た。皮肉なことにこの大災害によ
って、天
津が産業と貿易において非常に重要な位置にあることを、世界中に知らしめることに
なった。
トマトペースト缶を大量に生産している金土地食品の工場に、立ち入ることを許されたジャーナ
リストは決して多くない。会社側は、繁栄ぶりをぜひとも見せたいという欲求と、その裏
に隠さ
れた秘密は隠さなければという不安の間で揺れながらも、わたしに門戸を開いてくれた
のだ。

従業員用更衣室には、スチールロッカーが並んでいた。会社代表の右腕であり、工場長でもある
マー・チェンヨンが、紙製のシューズカバー、白い上着、帽子、マスクを手渡す。すべて身につ
けると、マーが先に立って案内してくれた。狭くて薄暗い小部屋が続く、迷路のようなところを
歩いていく。鉄製のターングートを通り、青いライトがストライプ模様を描いている廊下を進む。
100歩ほど進んだだろうか、重そうな扉にぶつかった。マーが扉を開けると、たちまち騒音に
包まれた。じめじめした熱い突風に襲われる。
目の前に、生産ラインの現場が広がっていた。黄色っぼいネオン照明の下で、たくさんのトマト
缶が、機械から機械へと滝のように流れている。室内には蒸気がもくもくと立ち上り、ひどく蒸
し暑い。サウナのような濃密な空気のなかを、中身を充腸されたばかりの缶詰が湯気を上げなが
ら進んでいく。

生産ラインに沿って並ぶ作業員たちは、みなひっきりなしに手を動かしていた。ある者たちは散
水用ホースを曲げたり伸ばしたり、水を噴射させたりしている。ラインから缶詰を抜きだしたり、
あるいはラインに缶詰を役人したり、向きを調整・点検したりする者たちもいる。機械を修繕し
たり、重そうなものを移動させたり、ダンボール箱を持ち上げたり、道具を運んだり、商品の検
査や箱詰めをする作業員もいる。小さな白い帽子をかぶっている者もいれば、髪も耳も酋もすべ
て覆いつくす薄手の帽子をかぶっている者もいる。耳のところがメッシユ素材になっているので、
騒音防止の耳栓をしていないのが見てとれる。鼓膜は大丈夫なのだろうか。機械がうなるような
轟音を上げ、ぶつかり合う金属製の缶が機関銃のような音を立てているというのに。丸くて赤い
缶がレールに沿って次々と進み、ギーギーときしみ音を立てる機械に吸いこまれていく。

                  ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』 

                                                       この項つづく

 

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環境リスク本位制宣言

2018年07月18日 | 環境工学システム論

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

7.十 二 陵(じょうにりょう)
「陵」は「凌」に同じで、しのぐ意味。敵をしのぎ、敵からしのがれる十二項をあげ、上者の注
意を喚起しようとする。

敵に打ち勝つための十二の心得
一、指揮官の威厳は、命令や態度を軽々しく変更せぬことによって保たれる。

二、恩恵は、時宜を失わずに施してこそ、所期の効果をあげ得る。
三、機略とは、事態の変化にすかさず対応することである。
四、戦争とは、士気の争奪戦である。
五、攻撃とは、敵の意表を衝くことである。
六、守備とは、味方の内情を敵に秘匿することである。
七、失策を犯さぬための根底は、数量に関する精密な把握である。
ハ、苦境におちいらぬための要件は、兵員・武器・軍需物資におけるゆとりである。
九、情誼さとは、どんな些細なことにも注意を怠らぬことである。
十、知謀とは、根本的な問題について思心にを働かすことである。
十一、弱点を取り除くには、果断でなければならぬ。
十二、民心を政績するには、謙虚でなければならぬ。

敵から乗ぜられやすい十二の欠陥
一、確信に基づかぬ行動。後悔のたねである。
二、能率の民衆を殺戮すること。妖異が超こるもとである。
三、上官のえこひいき。部下の不平の原因となる。
四、指揮官が自分の失策を認めまいとすること。不祥事の原因となる。
五、人民を収奪しつくすこと。不測の事態の原因となる。
六、歌詞の離間工作に乗せられること。指導者の明察が失われる。
七、命令を安易に下すこと。部下は無責任な行動をとる。
ハ、賢人を退けて用いないこと。指導者は固削におちいる。
九、利欲に目がくらむこと。災厄のもとである。
十、小人を重用すること。害毒を流すもとである。
十一、防衛態勢を怠ること。国家は滅亡する。
十二、指揮官の命令がないこと。軍は混乱におちいる。
 

  

第12章 消費者に見えない「原産国」
題2節 イタリア、カン八二ア州ノチェーラ・スペリオーレ
さらにワタンマルは、ジーノ・セレブレイト・ライフ基金という社会福祉基金を利用することで
も、消費者の購買欲を刺激している。たとえば、ジーノがナイジェリア市場に参入したのは10
年ほど前だが、ジーノ商品を購入すれば国民の生活水準が改善されるというイメージが定着し、
国産品を抑えて市場を独占する勢いでシェアを伸ばしている。この基金は白内障の手術に助成を
行なっているのだ。

基金のCMでは、白内障の手術に成功した男性が喜びの声を上げる。
「ンーノ、ありがとう!おかげでこれからは家族を養っていけるよ!」
すると別の男性が「ジーノに神の祝福を!」と応じる。画面の隅では、イタリア国旗の三色をバ
ックにブランドキャラクターが笑っている。



現在、アフリカの濃縮トマト市場では、ワタンマル以外の会社も、中国産の商品を武器にシェア
争いに乗りだしている,チー社のプライベートブランド、「ぺッペ・テッラ」もそのひとつ
だ。
チー社は、トロピカル・ジェンッラル・インヴェストメント(TGI)というダブリンを拠
点に
した食品卸売・小売グループ傘下のナイジェリアの会社だ。ノクリンク・ベンチャーズ社
は「タ
イマ」「トマヴィータ」「ファン・トマト」という三つのブランドを販売している。ナイ
ジェリ
アから鉱石を輸出する一方、中国製の携帯電話、オートバイ、自動車部品、ハンドバッ
グなどさ
まざまな商品を輸入しており、中国産濃縮トマトもそのひとつだ。

だが、ジーノの晨大のライバルは、なんといっても「テイスティ・トム」だろう。シンガポール
のオーラム・インターナショナルーグルーブのプライベートブランドで、アフリカの多く
の市場
に進出している。オーラムは食品の仲買・卸売をする世界的な企業で、主にアフリカ市
場で活動
しながら、年間110億ドルを売り上げている。パーム油、木材、製粉の分野に強
く、パスタ、
マヨネーズ、ビスケット、コメ、粉ミルク、食用油、そしてトマトペースト缶と
いった製品を取
りあつかう。70カ国から5万6000人を雇用して大規模に事業を行なう、
アフリカ食品流通
晨大手のひとつだ。オーラムの「
テイスティ・トム」にも、やはり激安の中国産濃縮トマトが使
われているのだ。

第3節
「ジーノはワタンマルのアイデアだった」と、アントニオ・ペッティは言った。
「あのパッケージデザインは、ワタンマルがカリフォルニアのグラフィックデザイナーに頼んで
作ってもらったんだ。1960年代のイタリアの缶詰デザインをイメージして、緑・白・赤のト
リコローレをバックにしたキャラクターを考えたらしい。ワタンマルから連絡をもらって、この
ブランドのためにトマトペーストを生産してほしいと頼まれたんだ。10年くらいうちでやって
いたよ。ジーノの缶詰を初めて輸出したときのことは、今でもよく覚えている。コンテナ3つ分
だった。だが、それからみるみる大口の顧客に成長していった。しまいには、年間3500台の
コンテナを輸出するようになった」

1990年代終わりごろ、アフリカの輸入濃縮トマト市場は、ナポリの食品メーカー数社が独占
していた。当時は、中国でトマト加工工場の建設が始まったばかりだった。ナポリのメーカーは、
中国からドラム缶入り濃縮トマトを輸入し、再加工して缶に詰めなおして、アフリカをはじめと
する世界各国に再輸出していた。いかにもイタリアらしいパッケージのジーノの商品は、確かに
イタリアで缶詰にされていたのだ。ペッティとワタンマルはそのイメージを利用して、アフリカ
で大量に中国産濃縮トマトを売りさばいた。

1997年、アフリカが輸入した濃縮トマト11万4549トンのうち、9万トンがナポリから
輸出されたものだった。この年、中国から直接アフリカに輸出された濃縮トマトはわずか140
0トンだった。そして5年後の2002年、ナポリのメーカーは22万2751トンの濃縮トマ
トをアフリカに輸出した。そのほとんどが中国産濃縮トマトを再加工したものだった。こうして
中国の二大濃縮トマトメーカー、カルキス(中基)と中糧屯河(コフコートンハー)は、ナポリ
のメーカーに商品を供給しつづけた。しかし、中国のメーカーは次第に貪欲になっていった……
最初に気づいたのは、カルキスを創業したリウ将官だった。

「ふと、気づいたんだ。中国の濃縮トマトは、イタリアに無駄な寄り道をしてからアフリカに運
ばれているとね。そこで思った。だったら、われわれが自分たちで濃縮トマトを缶詰にして、直
接アフリカに輸出すればいいじやないか、とね」それが、ナポリのメーカーにとって運命の分か
れ道だった。2004年、カルキスは天津に新たに缶詰メーカー、チャルトン・トマト・プロダ
クツ(天津中辰番茄制品有限公司)を設立し、巨大な生産工場を建設した。チャルトンの工場で
は、年間10万トンのトマトペースト缶を生産できたという。
 
「リウ将官がわたしに会いにノチェーラに来たのはそのころだ」と、アントニオ・ペッティが
言う。
「わたしには何も言わなかったが、そのときはすでに心に決めていたんだろう、うちを出しぬい
てジーノの商品を作ってやろうとね。ここに来だのは情報を収集するためだったんだ。その後、
ワタンマルヘ行って、うちより安くジーノを生産すると提案したらしい。正直言って、ジーノを
うちに引きとめておくための手はずを整えておかなかったのは、わたしのキャリアにおける最大
のミスだ。こうして、大事なパートナーだったはずのリウ将官が、ある日突然、最大のライバル
になってしまったんだ」

2000年代の終わりには、リウ将官のもくろみどおり、チャルトンは天津最大の缶詰メーカー
に成長した。トマト戦争に挑む兵団企業、カルキスにとっての最新兵器だ。こうして中国の濃縮
トマト大手が、アフリカに商品を直接輸出できるようになったのだ。
当時、チャルトンで作られていたのはジーノだけではなかった。世界中の多くのブランドのOE
M生産を手がけていた。モロッコの「シュヴアル・ドール」と「デリシア」もそうだ。このふた
つは、資本が異なる競合二社のブランドで、モロッコ国内市場のシェアを激しく争っていた。だ
が実際はどちらの会社も、カルキスのチャルトンに生産を委託していたのだ。

1950年代から2000年代まで、アフリカの市場はずっとイタリアのメーカーの独壇場だっ
た。われわれが完全に独占していたんだ」と、アントニオ・ペッティは言う。
「その後、中国が世毀市場に現れた。承知のとおり、最初は半製品しか作っていなかった。それ
をわれわれがイタリアに輸入し、再加工してから再輸出していた。だが、中国人は気づいたんだ、
われわれが中国の半製品を再加工してひともうけしていることに。中国人には勝算があった。労
働コストも光熱費もイタリアよりずっと安いからね。だからアフリカ市場でわれわれに戦いを挑
んだんだ」

結果はすぐに現れた。2013年、アフリカは、濃縮トマトを7億4800万ドル分輸入した。
そのうち、ナポリのメーカーが輸出したのはわずか4分の1の14万1669トンだった。ほと
んどが輸入品を再加工して再輸出したものだ。そして中国は、全体の4分の3に当たる44万7
540トンを輸出した。そのとき、アフリカの濃縮トマト市場において、中国はすでに70パー
セント以上のシェアを握
っていた

 Adolf Ferdinand Wenceslaus

第4節
ペッティのノチェーラエ場で、併設する研究所を見学した。案内役の技術部長の指示を受けて、
研究員の女性がブリックス値検査のデモンストレーションを見せてくれる。ブリックス値とは果
汁に含まれる糖類の量を示す値のことで、いわゆる糖度だ。糖用屈折計という測定器で計測され
る。ちなみにブリックスという名は、発案者であるドイツ人エンジニアで数学者、アドルフ・フ
ェルディナント・ヴェンツェスラス・ブリックス(1798
年~1870年)に由来している。
次に見たのは、比色分析だ。色調の変化から溶液の濃度を測定する分析で、これによって濃縮ト
マトの色合いを調整しているという,

「同じヨーロッパでも、国によって好みがちがいますからね」
国によって?むしろ、ペッティのクライアントである「大手スーバーチェーンによって」だろう。
「濃い色を好む国もあれば、赤みが強い色、透明感のある色を好む国もあります。たとえばフラ
ンスは、濃すぎも薄すぎもしない中間の色を好みます。わたしたちは、クライアントのニーズに
合うよう、さまざまな濃縮トマトをブレンドしているんです」

なるほど、よくできた説明だ。技術部長によると、濃縮トマトブレンドするのは、ヨーロッパ
の消費者の「色の好み」に合わせるためだという。だが実際は、色というより、品質が異なる濃
縮トマトがブレンドされているのだ。品質のよい製品によくない製品を混ぜることで、生産コス
トを安く抑えることができる。そのため、スーパーで激安価格で売られているトマトペースト缶
には、中国産、スペイン産、カリフォルニア産など、さまざまな産地の製品が混ぜられているこ
とが多い。こうすることで、スーパーチェーンからプライベートブランドのOEM生産を委託さ
れたメーカーは、安く製品を供給することができるのだ。研究所のキヤビネットには、書類ファ
イルが並んでいた。

「これらのファイルには、工場で加工される原材料の流通履歴が収められています。こうして
トレーサビリティを管理しているのです」

技術部長が、キャビネットから近年のものらしいファイルを一冊取りだし、ページを繰る。手元
を覗きこむと、原材料の仕入先が列記されていた。あるページで技術部長の手が止まった。そこ
に書かれているのは、すべてカリフォルニア産濃縮トマトの履歴だった。だがわたしがそのファ
イルを借りてページを繰ってみると、多くのページに「中国新疆」の文字が並んでいた。
カリフォルニア産濃縮トマトのトレーサビリティを管理するのは、それほど難しいことではない
。カリフォルニアのトマト畑は広大で、きちんと区画が整理されている。生産者の数も少なく、
生産工程はすべてコンピュータ管理されている。カリフォルニアのメーカーにメールでロット番
号を送れば、数時間後には必要な情報をすべて敦えてもらえる。

だが、中国産濃縮トマトの場合はそうはいかない。新疆ウイグル自港区には小さな畑が無数にあ
り、区画もはっきりしていない。猫の額ほどの土地でこぢんまりとトマトを作っている生産者も
あちこちにいる。すぐそばてヒマワリや綿花を育てていることも多く、そちらに散布している農
薬がトマトにもたっぷり使われていたりする。だから、世界の加エトマト業界の人間は誰でも、
中国産濃縮トマトのトレーサビリティを管理するのは難しいと知っている。
わたしたちは研究所を出て、生産ラインのスタート地点に戻った。作業員たちが、輸入した3倍
濃縮トマトのドラム缶を定位置にセットしている。ドラム缶から濃縮トマトがポンプで汲み上げ
られ、ラインに供給される。この後、タンク内で水が加えられて2倍濃縮トマトが生産されるの
だ。

パスクワーレ・ペッティのトスカーナエ場とは大違いだ。このノチェーラエ場では、イタリア産
トマトはいっさい使用されない。遠いところからやってくる濃縮トマトを再加工している
だけ
どこの産地のものが使われるかは、世界市場での価格変動と為替レートによって決められる。

倉庫も見せてもらった。トマトペースト缶が出と積まれている。さまざまなブランドの缶詰があ
った。誰もがよく知っている、ヨーロッパの大手スーパーチェーンのプライベートブラン
ドもあ
る。缶詰に書かれている言語も、パッケージデザインもさまざまたが、中身はすべて同
じものだ。
現在のグローバル経済の市場原埋から、こういう結果が生まれたのだ。大手スーパ
ーチェーンは、
独自のブランド商品を謁げて互いに競合している。ところが、別の店で売られ
るそれぞれ個性的
に見える商品は、いずれもこの巨大工場で生産されるまったく同じものなの
だ。

ヨーロッバ各国の「ニーズ」に合わせて作られた、さまざまなトマトペースト缶……』の倉
庫の
光景は、資本主義のパラドックスを体現している。あまりおおっびらには言えないが、現
在のヨ
ーロッパではトマトペースト缶に関して消費者に選択の自由はまったくない。確か
に、競合各社
は一自由」で公正な競争を行ない、市場では商品が「自由」に流一通されてはいる
のだが。
唯一、消費者が選べるとすれば、各社のマーケティング部門で考案された個性的なパ
ッケージデ
ザインだけだ。だがいずれのパッケージにも原材料の原産地はほとんど記されてい
ない。消費者
の「選択の自由」はいったいどこにいったのだろう?

トマトペースト缶はまさに資本主義の象徴だ。この業界ではほんの一握りの会社が市場を独占し
ている。この20年間、トマトペースト缶は利益の追求のためだけに生産され、安く大量
に作る
ことだけを目標にされてきた。ペッティをはじめとするトマト加エメーカーは巨大企業
に成長し、
強大な権力を握った。そして大量生産が進んだあげく、巨大工場でたった一種類の
商品が生産さ
れ、パッケージだけを変えて出荷されている。


世界中で消費されているのは、同じ容器に入った同じ中身だ。パッケージが違うので、消費
者は
自由に選んでいると勘違いしているだけだ。それが資本主義だ。一見、「多様性」と「競合
」と
「自由」を消費者に提供しているようで、実際は一部の人間にしか利益をもたらしてい
ない。い
ったいわたしたちはいつまで、こうした素性のわからない商品を消費しなくてはなら
ないのか?
トマト加工メーカーが権力を握ったのなら、民主的な反権力によってきちんと監
されるべきで
はないだろうか?
                  ジャン=バティスト・マレ著 『トマト缶の黒い真実』

最後の箇所はなんとなく、このブログわたしが掲載したフレーズ(思想)とよく似ているねと思
いつつ、加工食品のトレーサビリティの困難さを考えつつ、その測定方法/検査システムをを開
発/事業化に興味を惹いた。さて、次回は「第13章 天津ののトマト缶工場の秘密」へ(後6
章、先をいそごう)。

                                                                        
この項つづく

 



【ソーラータイリング事業篇:進化する立ち上げ試運転―迅速化とコスト削減】

7月17日、グリーンテックメディア社の「太陽光発電の立ち上げの未来――より速く、安く、
簡単に目標達成できる」と題する下記のコメント(キャサリン・ツイード)を掲載。

ファーストソーラー社だけでなく、迅速かつ効率的な事業立ち上げの重要性を理解する太陽光発
電事業社は皆無に近い。
全世界総計17ギガワットの事業導入している同社は、その立ち上げの
実積があり、重要な
経済性に関わる企業技術確立している。スムーズな実行による早期立ち上げ
――労働者の賃金が比較的高いカリフォルニア州では、労働コスト削減を実現可能な
試運転――
は、発電収益の早期達成可能だという。

迅速な立ち上げにより事業主は事業試運転期間の発電容量から収益が得られ、より迅速な立ち上
、工場がCOD (商業運転日)に早期に達でき、したがってプロジェクトから予想よりも早
く収入が得られる。尚、最近では、
モジュール、インバータなどの改良により立ち上げんが迅速
化し効率的になっている。このように、
過去10年間に技術進化により試運転率が向上し、これ
まで以上に太陽発電事業、技術進歩、他社との競合により低利益率が、価格下落のためコスト削
減を必要とする。このように立ち上げ(コミッション)
は、設備投資の一部であり、初期設備投
資のかなりの部分を占めるため、労力と資材の節約には効果的である。業界
最大手のインバータ
メーカーのHuawei社は、将来的により早期に立ち上げるために注力している。同社は
すでに集中
型比較して分散型(ストリング)インバータを利用し試運転をスピードアップしている。

 SUN2000 String Inverter

EPCは長年にわたり大型の集中型インバータを使用、その容積/重量は、軽量化の妨げ、インバ
ータメーカの追加費用を膨張させていた。同社の
ストリングインバータの使用で、事業を3~4
メガワットのセクショ分割のブロック設計が導入し、クラスタ・ラックと統合トランスの使用に
より迅速にかつ安全に施工できる。このように、
DCコンバイナー・ボックスを扱う場合、ユニ
ット・コンバイナ・ボッのクスはアーク・フラッシュ・ショックの危険性がありインバータキャ
ビネット下にDCコネクタを内蔵し、設置中に接合配置を閉じたまま放置。 DCストリングをキャ
ビネットに接続時の感電いよる危険性はなくなる。
ストリングインバーター技術の実際の進化は
試運転のスピードと効率を改善できる。同類規格(
ォームファクタ)から多くのが得られる。例
えば、45KTLと同じフォームファクタの100KTLインバータを発売。これにより電力密度の2倍以
となことで、AC結合の労力の大幅削減と設備投資節約につながる。
ファーストソーラー社は文
字列インバータの試運転企業技術は少ないものの、インバータの1つが動作しなくても、トラブ
ルとはならない。
別のインバータをリッピングし交換するだけで、試運転プロセスを継続できる。
また、機能不全のインバータを最終的にはトラブルシューティングのOEMに返送するだけですむ。

将来、プラグ・アンド・プレイ機器コンポーネントの使用増加で、より迅速な立ち上げが可能と
なるだろう。グリッド・エミュレーションは、今後の改善の重要な要素となり、コンポーネント
が工場でら予備構成させれば作業がいっそう迅速化されという。

 Jul. 12, 2018

【ソーラータイル事業:日本の太陽光、2025年にピーク時原発102基分達成】 


7月17日、日本経済新聞は、日本の太陽光、25年にピーク時原発102基分に達する?と報道。
富士経済社の最新調査によると、太陽光の年間当たり導入量と予測――2018年度 780万kW、20
18年度以降 600~700万kW、7年後にはさらに約4550万kWも増加――している。これを原子力
発電1基百万キロワット換算すると、2012年 662万kW(ピーク時原発6基分)、2018年 4800万
kW(ピーク時原発48基分)2025年 10200万kW(ピーク時原発102基分)に相当。世界各
国に比べ、日本だけは、再エネの導入量も増加量も、圧倒的に少なが、現在は、九州、四国、中
国エリアでは、太陽光が接続可能量に達しつつあり、太陽光だけで総電力需要の最大8割を賄う
までになっており、現在すでに太陽光の出力抑制(原発の電気を優先して太陽光の電気を捨てる
)が始まっている。

そこで疑問となるのが、7年後に太陽光がさらに現在の倍に増加し、風力もそれなりに増加した
ら、日本政府は――本当は高くて危険で汚い原発を守るために、国民が高い賦課金を払って導入
した太陽光や風力のクリーンな電気のほとんどを捨てるのだろうか――どうするのだろうかとい
うもの。考えられることは、❶出力調整のできない原発が一気に消えて行く(巨大な廃炉事業、
つまり、使用済みの核廃棄物処理事業の誕生-税金による公共事業)、❷出力調整が苦手でCO2
排出量が多い石炭火力が一気に消えて行く(これは世界的に動く-トランプのような反動政権は
消滅)。❸出力調整の容易なLNG火力が、太陽光が発電しなくなる夕方の需要ピークに向けて、
重要視され――などのが想定されている。



※尚、7年後でも出力調整用の蓄電池をkんが得るとまだコストが高いと予測されているが、政
府の取り組みいかんによれば10分の1はおろか百分の1まで原単位は下落するものと考えてい
る。尚、具体的な方法、技術に関しては後日、このブログでも提案掲載していく。

●『今年度・国内太陽光市場は7.8GW・5460億円、富士経済予測』2018/7/17  
世界市場は2014年以降、中国、米国、日本の3カ国がけん引してきたが、モジュール価格の下落
によって太陽光発電の導入ハードルが低くなり、需要地は新興国を含め世界各地に広がっている。
2017年は、中国が突出した導入量を達成したこともあり、出力ベースで初めて100GW(10万MW
を突破した。参入企業の多くは、中国の需要が落ち着くことを予想しつつも、設備増強の計画を
進めている。今後金額ベースでは縮小が予想されるが、出力ベースでは低価格化が需要を喚起し、
さらなる拡大を予想。

国内市場は、2018年度の市場規模は出力ベースで7800MW(7.8GW)、金額ベースで5460億円を見込
み、2017年度に施行された改正FIT法に伴う認定の遅れや施工・販売側で法改正の対応に追われる
などの混乱が生じ、工期の短い住宅用や事業用低圧案件がその影響を受けて市場が縮小。
2018年度
以降は出力6000~7000MW(6~7GW)の規模で推移すると見ており、固定価格買取制度(FIT)の終
了に向けて自家消費を促進する動きが、今後の市場動向を左右すると分析。2030年度は、出力ベー
スで6400MW(6.4GW)、金額ベースで3840億円になると予測。

注目市場としては、「PPA(Power Purchase Agreement)モデル」が挙げられるという。PPA事業者が
資金調達し、建物の屋根上に太陽光発電システムを設置して、発電電力を建物所有者に供給する
形になる。契約期間満了または売電が一定ラインに達した後、太陽光設備を建物所有者に無償で
譲渡する仕組み。

PPAモデルは、FIT制度のない米国で普及した事業モデルのため、FIT価格に左右されにくい側面を
持つとされ、今後の普及が期待される。市場規模は、2018年度に2017年度比6.0倍の12億円、2030
年度には同411.5倍の823億円まで拡大すると予測。ま
た、O&M(運営・保守)サービスは、改正
FIT法に太陽光発電所の適切な運用・保守を求める項目が盛り込まれたこともあり、今後は高圧連
系の中規模案件や事業用低圧連系案件における需要が増える見通し。市場規模は、2018年度に2017
年度比18.1%増の567億円、2030年度は同2.6倍の1225億円と予測する。
 



RE100事業篇:IEA報告:昨年のクリーンエネルギー消費は気候目標達成に警告】

7月17日、国際エネルギー機関(IEA)によると、2017年には再生可能エネルギーの投資が7
減(約2980億ドル)した一方で、2014年以来のエネルギー供給資金の化石燃料のシェアは初めて
増加したことを公表(上/下図参照)。尚、IEAによると、新興国における太陽光発電プロジェク
トの平均規模は3倍以上に増加し、陸上風力発電の2013年から2017年の間の半分の増加となって
いる。

 
Jul. 17, 2018

 

 【ゲームトライアスロン日記】





囲碁、将棋、チェスを同時に行うことはめったにない。今回も2日わたり最強レベルで黒後手で対戦。結果
は人の勝ちとなっているが、「急いては事をし損じる」に徹したことが勝因である(と、反省するならサルでも
できるってか?!)。

● 今夜の寸評:今夜環境リスク本位制宣言!もう後戻りはできない。

※ 動機はブログで掲載済み。

 ● 今夜の一曲



 

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無骨な枝ぶり惚れ惚れと見つ

2018年07月16日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

6.守  権(しゅけん)
一をもって十に対抗する守備の要諦は何か。人間心理に対する深い洞察に基づいて、守備の常道
と機賠とを論ずるのが本篇である。

守勢一方は不可
城を守るに当たって、外城も設定せず、周辺に障害物を構築せず、ただ本城にのみ頼って防戦す
るのは、得策ではない。勇武の将兵を擁し、優秀な兵器を揃えながら城外で戦おうとせず、こと
ごとく城内に撤収し、民間の食禄も引き上げ、家屋を破壊して城内に立て籠もるという消極一方
の守勢を取るならば、進攻する敵軍は士気ますますふるい、これに対して自軍の戦意はほとんど
阻喪するに至るであろう。したがって、いったん敵が攻勢を取る時は、味方の損害は甚大なもの
に達する。にもかかわらず世の凡将は、この道理に気づかないのだ。

一をもって十に当たる
地の利を失ってはならない、これは防禦における基本原則である。
城を守るには、城壁一丈につ
いて兵十人を所要人員とする。技術者や炊事要員はこの中に加えない。
また、兵についても、出
撃を任務とする者と、守備を任務とする者とを区分し、その責任を開催にし
ておかねばならぬ。

このように、攻撃と守備両面の態勢を整え、珀の利を失わず戦うならば、一兵は敵の十兵に拮抗
し、十兵は百兵に拮抗し、百兵は千兵に、千兵は万兵にそれぞれ拮抗する。人民に租税や労役の
負担をかけ、土石を高く積み上げる、それが築城だと解してはならない。一をもって十に当たる
守備能力を発揮させるための拠り所、それが城なのである。

城壁千丈の城を守るには、一万人の
兵を応変とする。深く広い帽、堅固で厚い城壁、気力旺盛な
兵士や人民、蓄積された食禄、質量
ともに十分な兵器、といった根本条件が満たされていること、
これが守りの常道であって、この
場合、攻撃する側は少なくとも十万を下らぬ大軍を必要とする
のである。

一丈〉春秋戦同時代の一丈は、約2・25メートル。  

援軍の必要
城を完全に守りとおすためには、外部からの救援部隊が必要不可欠の条件である。援軍のない城
は、いつかはおちいる迎合にある。城の守りが万全で、その上に援軍の来援確実とわかっていれ
ば、無知蒙昧な人民といえども私財を揃石、斟百分賠して城を守ろうとし、城は難攻不落の防禦
態勢を諮るに至ろう。それは、守る側の精神的ゆとりが、攻める側を上回っているからである。

これに対して、守りがいかに固くとも、援軍米長の可能性がない場合には、人民は城のひめがき
に身を寄せ、心紬さに涙するのである。これは人情の常であって、事態がここに至っては、どれ
ほど手厚い得週も、どれほど雄弁な説得も、無力である。いたずらに時を過ごさず、豪勇の士を
奮起させ、精兵利器を前衛とし、力告る者を後衛とし、全員一丸となって出撃する以外に方法は
ないのだ。

守備の要諦
大軍に包囲されても、守備軍が善戦して、敵をくいとめていれば、援軍はかならず来る。守備軍
は、時を移さず出撃してとりでを確保し、後方に注意して糧道を断たれぬよう城中との連絡を密
にし、城の内外相応じた攻撃を展開する。援軍の来援は事実だが、戦う主体はあくまで守備軍で
ある。となれば、敵には味方の実情がつかめず、疑惑の念に捉われるだろう。こうして敵に焦り
を生ぜしめ、その混乱を待つのである。敵に乱れが生ずれば、守備軍は強兵を後衛にまわし、弱
兵を前衛に立てて、決死の一戦を挑むのである。こうなれば、敵は後退するばかり、味方の兵は
城中に止まろうとする者もなく、士気盛んに敵を撃破するだろう。守備における機略とはこれで
ある。

 

【下の句×樹木トレッキング:無骨な枝ぶり惚れ惚れと見つ 】

すっきりと剪定したる山桃の無骨な枝ぶり惚れ惚れと見つ  田中内子

ヤマモモ(山桃、学名: Morella rubra)は、ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹。和名由来は、山に生
えモモのような果実をつけることから。漢名は楊梅(ようばい、ヤンメイ、(拼音: yángméi)別
名として山桜桃、火実など。古代から和歌などにも詠まれる。ベトナムでも漢名をそのまま用い
て「dương mai」ズオンマイと呼ぶ。高木で、成木は20メートルになる。幹は太くなると灰白色
の樹皮に覆われ、多数の楕円形の皮目を持つ。古くなると縦の裂け目が出ることが多い。葉は革
質つやのない深緑で、10cm前後の長楕円形か、やや倒卵形。密に互生し、多くは枝先に束生する。
成木は葉は滑らかな縁(全縁)、若木では不規則な鋸歯が出ることが多い。葉柄は5〜10mm程度と
短い。雌雄異株で、花期は3~4月、数珠つなぎに小さな桃色の花弁4枚の目立たない花をつけ
る。6月ごろに黒赤色の果実を結ぶ。果実はほぼ球形で暗赤色、表面に粒状突起を密生する。こ
の突起はつやがあり、外見的には小粒の赤いビーズを一面に並べたように見える。

 Wikipedia

中国大陸や日本を原産、暖地に生育し、暑さには強い。日本では関東以南の低地や山地に自生す
る。
本州南部以南では、海岸や低山の乾燥した尾根など、痩せ地で森林を構成する重要樹種。中
国では江蘇省、浙江省が有名な産地で、とりわけ寧波市に属する余姚市や慈渓市、あるいは温州
市甌海区は古くから知られた産地であり、千年に及ぶとされる古木も多く残る。他に福建省、広
東省、広西チワン族自治区、台湾など。殖やし方は接木のほか取り木がある。雌雄異株のため結
実には雄株が必要であるが、都市部では街路樹として植栽されている雄株が随所にあるため、雌
株の結実性は比較的高い。ヤマモモの果実は鳥などに食べられ、消化された後に発芽する性質が
ある。

高知県の県の花、徳島県の県の木、知多市、西都市、下松市の市の木に指定されている。花言葉
は「教訓」「ただひとりを愛する」。高知県ではシイラ漬漁業に使うシイラ漬の下に葉が付いた

ヤマモモの枝を垂らし、隠れようとする小魚を誘き寄せ、小魚を目当てに集まってくるシイラを
巻き網で捕る漁法に使われる。緑化を目的とする植樹に用いられ、古くはヤマモモがよく利用さ
れたと。現在では街路樹として公園や街路にも植る。果実は甘酸っぱく生で食べられる。野生種
以外に大粒で酸味の強い瑞光や大玉で酸味の弱い森口や秀光(秀峰、平井1号)などの栽培品種
あり、農作物として栽培されている。中国では浙江省の「丁岙梅」や広東省の「烏酥楊梅」と
う品種が良質。また、ジャム、缶詰、砂糖漬け、リキュール等に加工される。伊豆高地区が実
のなる最北端と言われているため、伊豆急行線の各駅では自動販売機で「やまももドリンク」と
いうヤマモモの清涼飲料水が売られている。中国では白酒に砂糖を加え、ヤマモモの果実を漬け
込んだリキュール
の「楊梅酒」がある。樹皮は楊梅皮(ようばいひ)という生薬で、タンニンに
富むので止瀉作用がある。消炎作用もあるので筋肉痛や腰痛用の膏薬に配合される。

 

 

第11章 加エトマト業界トップ企業、驚異の生産力
題6節 カリフォルニア大学デーピス校トマト遺伝子研究センター
たくさんの棚の上に、まるで展示品のようにプラスティック容器や小さな袋がずらりと並べられ
ている。広さ十平方メートルほどの、狭くて寒々しい部屋だ。美術館の華やかさにはほど
遠い、
ごくシンブルな内装だ。だがここは世界で唯一無二の場所なのだ。値段がつけられない
ほど高価
な宝がたくさん眠っている。

 May 30, 2012

わたしは今、世界晨大のトマトの種子バンクにいる。ひとつずつ丁寧にラベルを貼られ、きちん
と分類されたトマトの種子が、3600種類以上ここに保存されている。南米で発見され
た原腫
のトマト、人間によってもっとも多く栽培されている品種、放射線を照射して人為的に
突然変異
させた品種など、さまざまな種子がそろっている。

カリフォルニア大学デービス校は、世界でもっとも重要な農学専門学校のひとつだ。すぐそばの
ナパーヅアレーがカリフォルニアワインの名産地ということもあり、同校ではワイン用の
ブドウ
の研究も熱心に行なわれている。デービス校は農業関連産業の未来を担っていろのだ。


デービス校のトマト遺伝子研究センターは、加エトマト産業において非常に重要な役割を担
って
いる。同センターは、かつての名物教授の名から、チャールズ・マドラ・リック研究セン
ターと
も呼ばれる。チャールズ・リック(1915~2002
)は、トマト研究における 世界の権威だった。
白く短いあごひげをはやし、いつもお気に入りのバケットハットをかぶっ
ていた。さながらトマ
ト界のインディ・ジョーンズといったその風貌は、国立科学アカデミ
ーの年鑑に掲載されている
写真でも変わらない。リックは、1948年から1992年にかけ
て人生の大半を南米で暮らし、
そこで多くのトマトの原種を発見していた。

  Dr. Charles M. Rick

チャールズ・リックは「トマトの設計者」だった[2]。もし彼がいなければ、わたしたちが
段口にしているケチャップ、トマトピューレ、トマトソースは、今とはまったく別のものに
なっ
ていただろう。こうした製品に使われる加工用トマトは、リックが南アメリカから持ち帰
った原
種のトマトの遺伝子をもとに作られた。南アメリカ北西部のアンデス山脈の沿岸部、つ
まり現在
のコロンビア、エクアドル、ベルー、チリ北部付近が、加工用トマトのふるさとだ。



だが、ここでアステカ族が良べていたトマトや、ほかのさまざまな原種のトマトは、ハインツ
キャンベル・スープのCMで見る丸くて赤いトマトとは似ても似つかない。南アメリカのト
マト
は小さく、たいていは緑色で、種類によっては紫がかっていたり、黄色やオレンジ色だっ
たりす
る。苦みがあり、有毒で食べられないものもある。標高3000メー
トルの高地で、水も肥料も
あげずにすくすく育つT]。チャールズ・リックは、旧ソ連の著名な遺伝学者、ニコ
ライ・ヴァ
ヴィロフ[4]に次いで史上二番目に多く南アメリカで科学調査を行ない、多くのト
マトの品種
を発見した。その10年後には、原種のトマトの分類目録を作成している。

1935年に自然科学者のダーウィンが調査を行なったガラパゴス諸島で、チャールズ・リック
はあるトマトを発見したリコベルシコン・チーズマニーという野生のガラパゴス固有種
だ。実は、
そこから発見されたj・2という遺伝子が、今の加工用トマトのもとになってい
る。

 Nikolai Ivanovich Vavilov[4]

一九回二年の第二次世界大戦中、安く使える労働者がカリフォルニア州から急に姿を消すと、農
業の機械化のための研究プログラムが急ピッチで進められた。そんななかで、カリフォ
ルニア大
学農業工学部の技師、A・M・ジョングニールは、トマト専門の遺伝学者、G・C・
ハンナ教授
に出会う。ジョングニールは、トマトの収穫を機械化するうえでの技術的な難しさ
をハンナに訴
えた。何度か試作を重ねて開発された収穫機は、どうにかトマトの苗を根元から
カットできるよ
うにはなった。が、その先がうまくいかない。トマトが土にまみれて汚ならし
くなるうえ、機械
につぶされてぐちやぐちやになってしまう。まるで戦車に押しつぶされたよ
うに、収穫したトマ
トがすべて台なしになる。そこでジョングェールは、機械収穫に適したト
マトを遺伝学的に開発
できないかとハンナに尋ねた。機械に合うトマトを作るほうが、トマト
に台う機械を作るよりう
まくいくように思われたのだ。こうしてトマトの遺伝子研究がスタ
ートした。

ハンナは翌年の1943年、デービス校でトマトの研究に取りかかり、一九四九年に最初の研究
結果を発表した。10年後の1959年、新種トマト用に設計された収穫機の試作品が完
成し、
実際の畑でテストが行なわれた。新種トマト開発の決め手となったのは、リコペルシコ
ン・チー
ズマニーから発見された遺伝子だった。この遺伝子のおかげで、トマト収穫の機械化
が可能にな
ったのだ。現在、新疆ウイグル自治区、南イタリア、トルコ、カリフォルニアなど
で栽培される
すべての加工用トマトは、この遺伝子を持っている。

「ガラパゴス諸島でこの遺伝子を発見したのはチャールズ・リックなんだ」と、トマト遺伝子
究センターのセンター長、ロジャー・チェトラが言う。

「リックは、現地でオレンジ色のトマトを採取したとき、実がつるから簡犀に分離することに
がついた。そこでこのトマトの種子をカリフオルニアに持ち帰って、土にまいてみた。だ
が、ど
うもうまくいかない。どういうわけか芽が出ないんだ。条件をいろいろ変えて試してみ
たが、や
っぱりだめだった。種子をいったん動物に消化させてみてはどうか、と思いつき、さ
っそく鳥で
試してみた。だがそれでもうまくいかない。そしてとうとう、ガラパゴス諸島だけ
に生息する
ラパゴスリクガメに消化させるというアチデアを思いついた。しかしここはカリ
フオルニアだ。
いったいどうすればいい?するとリックは、バークリーにいる科学者の友人
が研究用にガラパゴ
スリクガメを二頭飼っていることを思いだした。そこで友人にトマトの種
子を送り、カメに食べ
させてくれるよう頼んだ。その後しばらくして、リックはカメのフンが
入った郵便小包を受けと
った………でたらめに聞こえるかもしれないけど、本当にこれでうま
くいったんだ。カメに食べ
させ、消化させ、二週間後にフンといっしょに排出されることで、
種子はようやく発芽した。こ
うして無事にトマトの実がなり、j‐2遺伝子が発見され、加工
用トマトに革命が訪れたんだ」

カリフォルニア大学デービス校は、最初のトマト収穫機を公的資金で開発した。そして1960
年9月1日、トマト生産者、加エメーカー社員、銀行家など総勢200人が、初のトマト収穫機「
ブラックウェルダー」の公開デモンストレーションを見にやってきた。翌年の1961
年、加工
用トマトが初めて実際の畑で機械収穫された。この年、計二五台の収穫機が販売
され、カリフォ
ルニア州の全トマト収穫量の0・5パーセントが機械で収穫された。また同じ
年、遺伝学者のハ
ンナ教授は、機械収穫のために開発された新しい品種、VF‐145を発表
した。



1963年に移民政策のブラセロ計画が終了すると、トマト収穫の機械化の研究がよりいっそう
促進され、急速な進化を遂げるようになった。1965年には、全収穫量の20パーセン
トが機
械化された[5]。1966年、その割合は急増し、全体の0.5パーセントが機械収穫さ
れた。
1967年は80パーセント、68年は92パ-セント、69年は98パ-セントと右
肩上がり
に増え、1970年にはとうとうカリフォルニア州の加工用トマトのすべてが機械収
穫された。
わずかヒ年間で、トマト生産者たちは、何万人という賃金労働者を使わずに収穫が
できるように
なったのだ。

ただし、人間の手による仕事がなくなったわけではない。今も収穫機一台につき10人ほどの労
働者(主にメキシコ人)が、機械の運転、トマトの選別などのために働いている。だが、
それ以
外の仕事はすべて消えた。技術革新によって、トマトを生産するための資金は労働者に
対しては
使われなくなったのだ。

第12章 消費者に見えない「原産国」
第1節 イタリア、カン八二ア州ノチェーラ・スペリオーレ
その世界地図は壁一面を覆う大きなものだった。一世紀ほど前のものらしく、紙が劣化し、もは
や何か描かれているかよくわからない。大洋と大陸は、茶色とクリーム色とミントグリ
ーンのぼ
やけた染みにしか見えない。オーストラリア連邦はオランダ東インドにまで広がり、
南米のスペ
イン植民地とベルギー領コンゴは、フランス植民地帝国といっしょくたになってい
る。だが、各
地の港と港が、弧を描いた線で結ばれているのははっきりとわかった。石炭販売
所、ガソリンス
タンド、広告代理店に大きな印がつけられ、イギリス領事館に黒い旗、アメリ
カ領事館に白い旗
が描かれている。


ここは、アントニオ・ペッティのオフィスだ。人口に掲げられた色あせた世界地図に示され
てい
るのは、1920年以降、ペッティー族が構築してきたトマト加工品の流通ルートだ。
わたしは
アントニオ・ペッティと握手を交わした。2016年8月2日、ヨーロッパでもっ
とも多く濃縮
トマトを輸入している会社の代表に、念願かなってようやく会うことができたの
だ。
部屋には、聖母マリアと聖ピオ神父の小さな像が置かれていた。聖ピオ神父は2002年に列聖
されたカプチン会の神父で、ここカンパニア州の出身だ。ペッティ社のトマト加工品生産
の功績
を讃えたトロフィーや、たくさんの写真も飾られている。2001年に中国で撮られた
ものらし
いリウ将官といっしょの写真もあった。

キャビネットの上にトマト缶がずらりと並べられていた。そのうちのひとつに目が釘付けになる。
ジーノの缶詰だ。ウルムチ郊外のカルキス(中基)の旧工場で見たのと同じものだ。ア
フリカで
一番よく売れているブランドだ。

「うちの会社はむかしから商品を国外へ輸出してきた」

アントニオ・ベッティのイタリア語は完全なナポリなまりだった。
「二〇世紀初め、最初はアメリカとイギリスに向けて輸出をスタートした。それからほかの国
も販路を広げていった。わたしの時代になってからはアフリカにも進出した。現在、イタリ
アに
入ってくる外国産濃縮トマトの60パ-セントをうちの会社が輸入している。そして、濃
縮トマ
トの世界生産量の4パーセントに相当する量を輸出している。輸入量も輸出量も多いん
だ。濃縮
トマトを世界でもっとも多く購入しているのはハインツだが、うちはそれに続く第二
位だ。年同
一五万トン購入し、再加工して170カ国に向けて輸出している」

「トマト王」の異名をとったアントニーノ・ルッソはすでに死去し、ルッソが創立した会社は
他社に売却された。だが、ライバルのペッティ社はいまも健在だ。濃縮トマトの世界貿易を語
うえで、避けて通れない存在でありつづけている。

「サダム・フセイン時代のイラク政府のナンバーツー、ターリクーアジーズ副首相はよく知っ
いたよ。その妹もね。国民のための必需品を購入する国有企業の代表だったんだ。リビアで
もカ
ダフィー族と取引をしていた。チュニジアでもそうだった。ああいう国の政府と契約を交
わす
のはなかなか大変でね。でもいったん契約が成立すれば、大量の濃縮トマトを輸出でき
る。たと
えばリビアでは、ドイツよりずっとたくさんの濃縮トマトが消費されるんだ。ドイツ
の人口は8
000万人で、リビアはたったの600万人しかいないのに」



第2節
そのトマトペースト缶には、緑・白・赤の「トリコローレ」をバックに、サングラスを額に持ち
上げて笑うトマトのキャラクターが描かれている。アフリカ中に出回っており、その名は
一ジー
ノ」。いかにもイタリアらしいネーミングだ。

ジーノブランドの商品ラインナッブは、70グラムから2.2キロまでさまざまな容量がそろう。
わずかI〇年の間に、アフリカでもっとも売れるトマトペースト缶に成長した。マリ
ガボン、
リベリア、南アフリカなど、この商品を人手できるのは現在およそ20カ国だ。アフ
リカだけで
はない。ハイチ、日本、韓国、ヨルダン、ニュージーランドなど、いまや匪界中に
販売網を広げ
ている。数億人もの人たちがジーノのトマトペーストを食べているのだ。

いかにもイタリアらしいパッケージだが、よく見るとどこにも原材料の原産地が書かれていない
。缶詰の容器にも、ウェブサイトにも記されていない。唯一、ウェブサイト上にあいまい
な説明
文が掲載されているだけだ。「
ジーノの二倍濃縮トマトは、世界各地からやってきた最良の原材
料を厳選し、独自の製法で
ブレンドして作られています。濃縮トマトの伝統的な品質を守りつつ
、最先端の技術で、世界
有数の大規模加工工場で生産されています。ジーノの濃縮トマトは料理
の味を引き立て、いつ
もの食事を.パーティーのように華やかにします」

パーティーにはサプライズがつきものだ。ジーノの原材料の原産地はいったいどこなのか、この
説明文ではまったく分からない。いや少なくとも、「世界各地からやってきた」原材料を
一ブレ
ンドして」作られていることだけは確かだろう。なんといっても、中国の新疆ウイグル自
治区と
内モンゴル自治区の両方から輸入されたのだから。
ジーノにはもうひとつサプライズがある。こ
のブランドの国籍はいったいどこか? マーケ
ティング戦略上、いかにもイタリアのブランドの
ように装っているが、実際はインドのブラン
ドだ。ワタンマルというインドの大手流通グループ
が、プライベートブランドとして販売して
いる。ワタンマルは、香港とインドのチェンナイ(旧
マドラス)のタラマニ地区に拠点を持
ち、世界中に3億3000万人の顧客を持っている。

ワタンマルは、食品販売で年間6億5000万ドル近くを売り上げている。その大半がジ
ーノブ
ランドのトマトペーストの売上だ。そして、ジーノ以外に「ホモ」という別の濃縮トマ
トのブラ
ンドも持っている。だが、ポモもジーノも、実際は同じ中国産の原材料を使って、同
じ工場で生
産されている。
ワタンマルは、アフリカでジーノブランドを宣伝するために、さまざまな販売促
進を展開し
ている。テレビやラジオでCMを頻繁に流したり、雑誌に次々と広告を掲載したり、
あちこち
に壁面広告を出したりしている。いたるところにパネル広告があるので、市場の周辺を
歩けば
ジーノの広告に必ずぶつかるほどだ。とくにガーナとナイジェリアで大々的な宣伝を行な
って
いる。ガーナに暮らしていたら、ジーノの巨大なパネル広告を見ずにすむ日は一日もないだ
う。わたしがガーナの首都、アクラを訪れたときも、空港に着いて10メートルも歩かないう
ちにジーノの巨大広告にぶつかった。そしてその後も同じ広告に何度も出会うはめになったのだ。

                                    この項つづく
 

  ● 今夜の一曲

 

 

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何の禊ぎぞ真備が爪痕

2018年07月15日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

5.攻  権(こうけん)
「攻横」とは、攻撃に際しての縦横の機略のこと。この機略も、平素の準備がなければ生まれな
い。平素の準備とは、民心の掌握・戦意の高揚・指揮系統の確立・作戦計画の四者である。

指揮系統の確立
全軍を一
糸乱れぬ統率下におくためには、兵を分かって隊に帽成し、それぞれに長をおくことで
ある。すなわち、五人を伍として伍長をおき、十人を什として什長を置き、百人を卒として卒長
をおく。さらに千人には率を、万人には将をおき、周到にして水も洩らさぬ指揮系統を作りあげ
るのである。そして、これらの幹部がもし倒れることがあれば、ただちに他の者が代わって指揮
を取り得るよう訓練を徹底させることだ。

攻撃の”権変”
挙兵するについては、あらかじめ敵情を十分に把握し、敵将の能力に仔細な検討を加えてねかな
ければならぬ。このように準備万端怠りない時は、事態が急迫し、勁貝合が下されれば、千里の
遠方にある部隊も旬日を経ずして国境に集結し、百里以内の部隊は一日を出ずして国境に展開を
完了するであろう。迅速に集結した全軍は、司令官の着任を待ってただちに敵地深く侵攻し、交
通路を遮断し、散人を城市に孤立させる。この孤立した城市を攻撃し、重圧を加えれば、城中の
敵は収拾のつかね混乱状態におちいる。こうして敵軍を分断しておいて、ひとつまたひとつと要
害の地を抜き、とりでをおとす。一城を占領すればそれを拠点としてさらに幾多の交通路を遮断
する。攻撃がこのように進行すれば、敵将はだかいに不信の念を抱き、敵兵はだかいに反目し、
軍律も効力を失うに至る。この混乱につけこめば、勝利を博するのは易々たるもの、敵は救援部
隊を派遣する暇もなく、一城また一城とわが手中に陣るであろう。

敵は、渡河点も碩保できず、とりでを修復する余裕もなく、城の防備も整わず、陣地を構築する
暇さえない。つまり、城があってもなきにひとしい。
また、分遣隊は本隊と合流できず、遠征軍は本国へ帰れない。つまり、兵力はあってもなきにひ
としい。さらに、家畜を集める余裕も、穀類を収納する余裕も、軍需物資を蓄積する余裕もない。
つまり、物資はあってもこれまたなきにひとしい。
このように、敵国の武備も、兵力も、物資も皆無に等しい状態にさせるのは、ひとえに敵の虚を
衝いて攻撃すればこそである。
「無人の野を行くがごとく、あえて敵する者もない」という兵法の言は、このことを指している
のだ。

【下の句トレッキング:何の禊ぎぞ真備が爪痕】 

記録なき猛暑を渡る生活は何の禊ぎぞ真備が爪痕 / 高山 宙

「怖いぐらいの」を朝から連発する彼女と罹災地のボランティアの映像のインパクトから珍しく
上首を詠む
ことになる。「いまは何もできないが、何のこれしき」の反骨がもたげ、「神よ!試
練を与えたまえ」の祈りがこれに続くことになる。

 

 

 

第11章 加エトマト業界トップ企業、驚異の生産力
第3節 アメリカ、カリフォルニア州コルサ郡ウィリアムズ

科学は自然の法則を発見し、産業はその法則を人間の幸せ、調和、繁栄のために応用する
これは、モーニング・スターのウィリアムズエ場に貼られているポスターのコピーだ。この工場
での生産は、ある原則にのっとって行なわれている。それは「生産量を増やしながら商品
一個当
たりのコストをできるかぎり削減し、スケールメリットを実践する」というものだ。
現在、モー
ニング・スターは、小規模にトマトソースやトマトスープを作っている会社には
絶対に不可能な
超低価格で、大手食品メーカーに濃縮トマトを供給している。ウィリアムズ工
場だけで、年間
100日間、毎日二四時間休みなく、一時間当たり1350トンのトマトを加
している。

ウィリアムズエ場は、まるでSFに出てくる未来都市のようだ。巨大な建物内にパイプ、タ
ンク
ケーブルなどが迷路のように入り組み、計器、ハンドル、ピストン、コック、監視カメ
ラ、コン
ピュータのモニターなどありとあらゆる機械が並んでいる。さぞかし多くの従業員が
働いている
だろうと思われるが、人の姿はほとんど見当たらない。工場内を歩いていても、従
業員にはめっ
たに出会わない。作業員や管理者の仕事は、ほとんどコンピュータに取って代わ
られている。世
界晨大のトマト加工工場は、たったの70人の従業員によって切り回されているのだ。
 「わたしは無政府主義者だ。だから、モーニング・スターには管理職がない。ここでは自主管
理が行なわれているんだ」と、クリス‘ルーファーは言う。

自主管理(セルフマネジメント)」とは、従業員が会社の資本を管理することを意味するので
はない.自分で自分の仕事を管理するという意味だ。だからこの工場にはマネジャーがいない。
ルーファーは、工場のすべての作業を最大限に白理化させた。従業員は、機械にはできないと判
断された人間向けの仕事を、自分でどうすべきか考えながらやり遂げなくてはならない。

コントロールルームと呼ばれる、モニターに囲まれた広い部屋で、ふたりの若い女性がモニター
上の数字とにらめっこをしていた。「見たかい? このエ場全体を管理してるのは、あの短期契
約の女性社員だちなんだ。問題が起きたら古参社員のジミーを呼ぶように言ってあるが、彼女た
ちがこの工場のリーダーと言っていいだろう」

この究極のオートメーション化は、クリス・ルーファー自身が推し進めたものだ。彼の世界観、
理想、政治思想がここに表れている。ルーファーはリバタリアン、つまり完全自由主義者だ。地
球上のすべての国家が消滅し、ユートピアが実現するのを願っている。資本主義、生産手段の私
的所有、自由貿易、利学の進歩、集約農場などのおかげで、人間の代わりに機械が働いてくれる
社会を求めているのだ.
モーニング・スターの3つの工場の屋上には、13つの星が描かれた星条旗が掲げられている。
だが、星の数は州の数を表しているので、現行の星条旗には50の星が描かれているはずだ。

「いや、おかしくはない、これはれっきとした合衆国旗だ。これは革命旗なんだ」

ルーファーは熱を帯びた口調で言う。この旗には原点がある、と彼は言う。これはアメリカ合衆
国が独立したときの旗なのだ。当時のこの国のエリートといえば、商人、海運業者、プランテー
ション経営者だった。独立宣言が提出されたわずか一年後、まさに独立戦争のさなかの1777
年に使われはじめた。13個の星は、イギリスによる支配から自由になった13の植民地を表し
ているている。

「工場でこの旗を掲げるのは、この国に当時のよさを取亙戻してほしいからだ。政府の権力や多
数決制度によって、わたしたちの自由が侵害されたり、財産が強奪されたりしていなかった時代
のね。そう、わたしはリバタリアンだ。だから、みんなに自由の素晴らしさを訴えたくてこの旗
を掲げるんだ.、これを見土げることで原点に帰ることができる」

 Sep. 4, 2015

You Know That Newfangled Self-Management Idea At Zappos? A Tomato Processor Has Nailed It For Years


クリス・ルーファーは、アメリカ国内でリバタリアニズムを代表する人物と目されている。
モーニング・スターという社名は、19世紀のアメリカ人作家、ヘンリー・デイヅィッド・ソロ
ーの代表作『ウオールデンー森の生活』の一節に由来する。ソローの個人主義的思想に感銘を受
けたからだ。リバタリアニズム(完全自由主義)とは、リベラリズム(自由主義)から派生した
政治思想だ
。その基本理念は、いかなる規制もされない完全な自由市場、土地と生産手段の自己
所有権、そして個人の自由の保護だ。国家をはじめとするどんな組織も、個人が望んで着手する
こと、行動することを制限してはならないとされる。
リバタリアニズムは、経済、社会、軍事など、あらゆる分野における国家の介入を否定する。
税制、労働権、環境基準などすべての規制は、個人の権利と自己所有権を侵害すると考えられて
いる。とくに自己所有権は、リバタリアニズムで晨重要視されており、決して侵害されたり制限
されたりしてはならない。



リーズンーファンデーションは、アメリカでよく知られているリバタリアンのシンクタンクだが
、そのスローガンは「自由な精神、自由市場」だ。「民営化年間報告書」を発行し、自由競争か
ら免れている一部の公共サービスを「早く民営化させるべきだ一と糾弾している。あらゆる経済
単位はすべて民営化されるべきなのだ。たとえば、軍隊、瞥一察、消防隊、森林監世局は、すべ
て民兵に取って代わられなければならない。そうすれば、誰もが必要に応じて自由にこうしたサ
ービスに関わることができるからだ。

リバタリアニズムは、保守派の共和党の主張と多くの点で類似しているが、だからといって保守
主義ではない。リバタリアンは産業主義者であると同時に個人主義者だ。個人の自由は絶対的で
、決して制限されたり束縛されたりしてはならない。銃器を所有・使用したり、麻薬を売買・使
用したりしようが、自分の身体を使って金もうけをしたり、売春をしたりしようが、労働者を解
雇したり、自分が所有する土地で鉱物の採掘をして環境を汚染したりしようが、すべての行為は
決して制限されてはならない。リバタリアンにとって一個人の自由」は侵すべからざる原則であ
り、「自己所有権」も当然そこに含まれる。国家管理主義の真逆にあるこの思想は、資本主義を
無条件に擁護することで成り立っている。リバタリアンが敬愛する小説家・思想家のアイン・ラ
ンドによる教え「エゴイズムは美徳だ」を、忠実に守っているのだ。

 Atlas Shrugged
 
クリス・ルーファーは、リバタリアニズムを奉じる政党、リバタリアン党の有力寄付者のひとり
だ。2016
年には、大統領候補に指名された同党所属ゲーリー・ジョンソンの選挙運動 に10
0万ドルを寄付している。ジョンソン候補は、一般投票で450万票(得票率3・29パーセン
ト)と、同党の歴代候補で最多の票数を獲得した。

ウィリアムズエ場を訪問した日、わたしはクリスールーファーと共にグランゼーラズという地元
のレストランで昼食をとった。熊やコブラの剥製が飾られているカウボーイ向けの店内に
は、読
支特派の宣伝ポスターと、「アメリカを再び偉大にしよう」というドナルド・トランプの
選挙ス
ローガンが書かれた帽子が売られていた。ルーファーは、経済学者でシカゴ学派のリ
ーダー、ミ
ルトン・フリードマンを尊敬していると言った。フリードマンは新自由主義を代表
する学者で、
規制のない自由主義経済を理想としていた。
「本人にも何度か会ったことがあるよ。妻同士が仲がよくてね。素晴らしい人たった。あれほ
深みのある人間にはなかなかお目にかかれないね」

 Milton Friedman

第4節 カリフォルニア州サンホアキン・バレー、マーセド郡ロスバノス
カリフォ濃緑の葉をつけた低木の林が、地平線の向こうまで広がっている。なんという広大なト
マト畑だろう。トマトはすでに熟して真っ赤に色づいていた。耳をつんざくような轟音がどんど
ん近づいてくる。巨大な収穫機がものすごい音を立てながら、トマトを次々と苗ごと飲みこみな
がらやってきた。収穫機は大型のコンバインくらいの大きさで、先端についている1メートル幅
の切断部によって刈りとりをしている。トマトの苗は地面ぎりぎりのところでカットされ、つる
や葉といっしょに機械に吸いこまれていく。土塊、石、本片、昆虫、カエルなど、苗以外のもの
がくっついてくることもある。世界でもっとも広いトマト畑があるこのカリフォルニア州では、
加工用トマトはこうしてすべて機械で収穫され、近隣に点在するI〇ほどの巨大加工工場へ運ば
れていく。

刈りとられたトマトの苗は、収穫機に付属する金属製コンベアで、機械の後方へ運ばれていく。
その過程で苗が激しく揺さぶられてつるから実が離れ、再び別のコンペアに乗ってさらに後方へ
運ばれる。コンベアの脇に何人かの作業員が立っていて、手作業でトマトの実を選りわけている。
かなり過酷な仕事だ。かんかんに照りつける真夏の太陽の下で、暑さと、振動と、騒音と、土埃
に耐えながら、ずっと収穫機の上に立っていなければならない。だがもしかしたら、この仕事も
そろそろ姿を消してしまうかもしれない。近年、光学式自動トマト選別機の性能が大幅に向上し
ており、人間の手が不要になりつつあるからだ。

選別されたトマトの実はそのまま機械の後方へ運ばれていき、また別のコンペアで高く持ち上げ
られ、後方側面へ吐きだされる。そのまま真横を走っているトラクターのトレーラーのなかに落
ちるしくみだ。トラクターは、収穫機から数メートル離れたところを、同じスピードで並走して
いる。トマトは休む間もなく次々と排出される。そのうしろでは、土塊、茎、つる不良トマトな
どの廃棄物が地面に落とされていく。排気ガスもすごい量だ。この収穫機は燃料を大量に消費す
るのだ。

こうして観察していると、収穫機のしくみはごく単純そうに見える。だがここまでくるには、加
エトマト産業の長い歴史と、遺伝子工学研究の多大な苦労があった。そう、こうして収穫機のな
かでトマトの実がつるから簡単に離れるようになったのは、機械収穫に適した品種を作るために
研究者たちが幾度も試行錯誤を重ねてきたおかげなのだ。



第5節
現在のカリフォルニア州の農業スタイルのルーツは、ゴールドラッシュでこの地方に多くの人が
移住した
ことにさかのぼる。1848年、一握千金を夢見てアメリカ東部の人々がこの地に押し
よせ、カリフォルニ
ア州の人口は一気に増加した。人口が増えれば、多くの食料が必要になる。
東部からの移住者たちは上地を手に入れ、大規模農場を次々と設立した。そうなる
と、今度は人
手が必要になる。まずはアメリカ先住民が、次に中国人移民が駆りだされた。

国人移民は、はじめは大陸横断鉄道の敷設工事と鉱山での発掘に雇われていた。そして1860年代
終わりごろ、鉄道が完成して鉱山の資源が枯渇してきたため、今度は農場で働きはじめた。こう
してアメリ
カ東部からの移住者が土地を手に入れ、先住民や中国人をただ同然で働かせたことか
ら、カリフォルニアに世界初の大規模農業が生まれたのだ。

  Jean Jacques Rousseau

このときから、大規模農場の労働者の苦しみが始まった。その一世紀前、フランスの思想家ジャ
ン=ジャックールソーはすでにこう警鐘を鳴らしていたのだが。
「もしも、”この地主はペテン
師だ! こいつの言うことを信じるな。果実はみんなのもので、
土地は誰のものでもない。それ
を忘れたら、きみたちは終わりだぞ!”と、杭を引っこ抜いた
り溝を埋めたりしながら、仲間に
叫んだ者がいれば、人類はどれほど多くの犯罪、戦争、殺人、貧困、残虐な事件を免れられたこ
とだろう」(『人間不平等起源論』1755年)

一九世紀終わりごろ、カリフォルニア州に住みついた中国人移民(うち95パーセントは男性)
は、農場で賃金労働者として働いた。雇用主に強いられる過酷な労働に耐え、がむしやらに働い
て生き延びた。彼らはこの「自由の国」の市民権を持つことすら許されなかった。白人女性との
婚姻も禁じられた。いつも祖国の民族服を着て、常髪にして長い三つ編みを垂らしていた。そし
て最下層の人間としてアメリカ人にさげすまれた。いつも一番過酷な仕事をさせられ、ときには
鉱山などでスト破りをするよう命じられた。大量虐殺事件も起きた。やがて、中国人差別がピー
クに達したころ、1882年に中国人労働者の移住を禁止する「中国人排斥法」が制定された。

すると中国人の代わりに、今度は日本人がカリフォルニアの農場で働きはじめた。日本人もアメ
リカ人による差別の対象になった。やがて、初の農業機械であるトラクターが誕生すると、農場
での労働者の位置付けが大きく変わった。カリフォルニアの農場での仕事は、収穫時だけ駆りだ
される季節労働になった。
1924年に移民法が制定されると、日本人の移住も禁止された。そして第一次世界大戦中、と
くに1917年以降、徴兵によって若い成人男子がいなくなると、今度はフィリピン人が、続い
てメキシコ人も農場で働かされた。1929年に経済恐慌が起こると、アメリカ国内で大規模な
人口移動が始まった。失業した

東部の農民たちは、仕事を求めてカリフォルニア州へ移住した。カリフォルニアの農場経営者は、
ありあまるほどの人手が集まったことを喜び、それにつけこんで彼らを日雇いで安く使った。当
時のことは、ノーベル文学賃作家、ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』に詳しく書か
れている。著者の生まれ故郷であるカリフォルニアの社会問題をテーマにした長篇で、農場で働
く賃金労働者たちのすさまじい貧困が描かれている。外国人移民労働者に続いて、今度はアメリ
カの白人労働者が社会の最下層に転落し、さげすまれ、差別されるようになったのだ。



1941年、アメリカで戦争が勃発すると、あれほどたくさんいた賃金労働者たちがほとんど誰
もいなくなった。第二次世界大戦中、人手不足に困ったカリフォルニアの農場経営者たちは、ホ
ワイトハウスにその旨を陳情する。1942年、フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、メ
キシコのマヌエル・アビラ・カマチョ大統領と会談し、両国の政府間協定によって「ブラセロ計
」が開始された。「ブラセロ」とは「手を使って働く人」を意味するスペイン語だ。こうして、
メキシコ人が合法的にアメリカで働ける大規模な移民政策がスタートし、ピーク時には年間45
万人が季節労働者としてカリフォルニアの農場で働いた。この政策によってもっとも恩恵を受け
たなかに、トマト生産者がいた。1950年代、トマト収穫期にブラセロ計画を通じて労働者を
集めるのは、ごく当たり前のことになっていた。

1935年に制定された全米労働関係法、通称ワグナー法によって、民間部門において労働者が
労働組合を結成できるようになった。だが、農場労働者は対象外とされた。1950年代になっ
ても、農場労働者には労働紺色を作る権利は与えられなかった。カリフォルニアの農場労働者た
ちが結束を強め、ストライキを起こして自分たちの権利を主張すると、経営者たちはブラセロ計
画で雇ったメキシコ人にスト破りをさせた。

1948年、カリフォルニア州で綿花の収穫をしていた若い農場労働者、セザール・チャベスも、
初めて参加したストライキでメキシコ人労働者たちにスト破りをされた。移民政策のブラセロ計
画は、次第に労働紺色から激しく非難されるようになった。確かに、メキシコ人移民が合法的に
カリフオルニアで働けるようになったのはよいことだ。問題は、労働力が公正に取引されないこ
とにあった。報酬があまりにも安すぎたのだ。利益を受けるのは経営者で、メキシコ人労働者は
搾取されるだけだった。

農場経営者は、政治的信念を持たないたくさんのメキシコ人労働者にスト破りをさせ、ストライ
キを次々と失敗させた。やがて、アメリカの世論、そしてカリフオルニアの農場労働者に共感し
た民主的な政治家たちも、ブラセロ計画で得をしているのは資産家、土地所有者、大手食品メー
カーだけだと気づきはじめた。

 Cesar Chavez

セザール・チャベスは、アリゾナ州生まれのメキシコ系アメリカ人だ。ヒスパニック系アメリカ
人のなかで、もっとも有名な公民権運動家として知られている。1962年、チャベスは、非暴
力・非武装不服従の労働組合、農場労働者協会(UFW)を仲間といっしょに設立した。UFW
は平和主義的な運動を行なっていたが、1960年代から1970年代にかけて厳しく取り締ま
られ、ストライキやデモのときに仲間の活動家が殺害された。

チャベスは、カリフオルニアの農場で起きている労働問題は、仕事を求めてやってくるメキシコ
人には責任がないと考えていた。問題は、ブラセロ計画のせいで労働者の報酬が低く抑えられる
ことにあるのだ。UFWが設立された直後の1963年、ジョン・F・ケネディ大続領のもとで、
激しい議論の末にブラセロ計画は中断され、下院は計画の継続を否決した。土地所有者と大企業
は計画継続のためにあらゆる手を尽くしたが、とうとうわずか一年しか延長されなかった。当時、
ハインツは株主に対する年間報告書で、この決定を激しく非難している。加エトマト産業におい
て、農場労働者に高い賃金を支払うなど論外だった。別の解決策を早急に考えなければならない。
その結論は、「収穫を機械化する」ことだった。



「安くつくり高く、沢山売る」は万国共通の資本主義精神だが、それが、高度消費新本主義社会
段階に突入し行き詰り、資本主義の終焉を向かえたと。有り体に言えばそうなる。つまり、賢い
納税者の賢い消費行動が日常化している社会である。次節「カリフォルニア大学デービス校トマ
ト遺伝子研究センタ」に移る。

                                     この項つづく

 

【量子ドット工学講座 No.55:最高変換効率の液体白色量子ドットLEDを開発】

7月12日、トルコの大学らの研究グループは、ワットあたり105ルーメンの記録発光効率を示す
ナノ材料ベースの白色発光ダイオード(LED)を実証したことを公表。尚、
光効率ろは、光源が
光を生成するためにパワーを効率よく利用できるかの尺度。今後、さらに
はワットあたり200
ルーメン以上の効率を実現することで、家庭、オフィス、テレビなどのエネルギー効率の高い照
明源に提供できる。担当責任者(トルコ、Koç大学のSedat Nizamoglu)によると、
効果的なLEDは、
省エネに貢献でき、
従来の照明源をLEDで百%の効率で世界中の照明電力を半分以上逓減(=
型的な500メガワットの230基の石炭発電所の発電量と同等)でデ、温室効果ガスの排出量
を2億トン削減相当。
こまた、のデバイスの量子ドットと新しいLEDを合成方法は、簡単で、安価
で、量産化できる。


Caption: The new LEDs use commercially available blue LEDs combined with flexible lenses, like the one
shown here, filled with a solution of quantum dots.(
Image Credit: Sedat Nizamoglu, Koç University)

量子ドットの利点
今日のLEDで白色光を生成するために、青色LEDに黄色の蛍光体ベースのコーティングを加えるこ
で、青色光と黄色光が結合。蛍光体は青色から赤色まで広い発光範囲を有し、生成された白色光
の特性を敏感に調整は困難。
蛍光体とは異なり、量子ドットはスペクトルの狭い部分でのみ発光
するので純粋な色を発色でき、
この狭い発光は、異なる色を生成する量子ドットと青色LEDとを
組み合わせることで、正確な色温度および光学特性を有する高品質の白色光を発光できる。
量子
ドットはまた、半導体粒子のサイズ変更することで、発光色を変えることができる。
さらに、量
子ドットは、組み込まれた量子ドットの濃度を変化nさせることによって、白熱電球のような温
白色光源または典型的な蛍光ランプのような冷白色光源生成に有効好である。
フィルムに埋め込
まれた量子ドットは、現在、LEDテレビで使用されているが、この照明手法は、一般照明用途で
の普及には適さず、今回。液体中で量子ドットを移動させることで、ナノマテリアルが固体ポリ
マーに埋め込み時の効率低下を克服できまる

 
また、効率的な白色LEDを作るには、青色光を効率的に赤色または緑色に変換する量子ドットを
必要とし、
反応温度/時間などの最適条件を特定するために3百以上の合成反応を行い、最適な
効率な発光量子ドットを作製を実現。
白色光の作成には、適切な量の量子ドットを統合する必要
があり、それが達成されたとしても、青、緑、赤の組み合わせが無数にあり、白につながる可能
性がある。
最近報告された理論的アプローチに基づいてシミュレーションを開発、効率的な白色
光生できるの量子ドットカラーの適切な量と最良の組み合わせを決定。

新しいLED製造に際し研究者らは、高温でカドミウム、セレン、亜鉛および硫黄を混合すること
で合成した量子ドットの溶液で、ポリマーレンズとLEDチップとの間の空間を充填。
その弾力性
により、溶液が漏れることなくレンズへの溶液注入、材料の透明性が必要な光透過を実現する。
内、レンズはシリコーンを使用。この
液状の白色LEDは、固体薄膜に量子ドットを組み込んだLED
の2倍の効率を実現。
また、7インチのディスプレイ用照明として実装した。



 Quantum dot white LEDs with high luminous efficiency doi.org/10.1364/OPTICA.5.000793

   ● 今日の朝食



【DIY日誌:トイレ用ファン】 

  

余りの暑さでトイレ用のファンを買ってきたので取り付けてと彼女。なるほど暑い。時給2万円
だけれど無料で工事してやるよと軽いじょうだんを言いつつ、家にあるものだけで取り付け完了、
1時間。日給(5時間実働)なら10万円の値打ちはあるのね。さすがねとしおらしい。

                                       
 

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孤独を忘る蛇の孤独を

2018年07月13日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

5.攻  権(こうけん)
「攻横」とは、攻撃に際しての縦横の機略のこと。この機略も、平素の準備がなければ生まれな
い。平素の準備とは、民心の掌握・戦意の高揚・指揮系統の確立・作戦計画の四者である。

平素の準備こそ
指揮官たる者は、敵と戦うに当たっても、絶対に勝ち得る成算がないうちは、軽々しく「戦うぞ」
と口にしてはならない。城を攻めるに当たっても、かならず攻略し得る成算がないうちは、軽々
しく「攻めるぞ」と口にしてはならない。成算も立たぬうちに口外するようなことでは、部下の
信頼を失い、したがって賞罰も効力を失うからである。

部下の信頼を獲得するか否かは、平素の言動によって決定される。作戦計画は、非常事態の発生
以前に完成されていなければならぬ。部下の信頼か二身に集め、作戦計画を怠らぬ指揮官があれ
ばこそ、いったん動貝合が下される時はただちに精強な軍隊が編成され、出勤すればかならず戦
果をあげて帰ることが可能となるのだ。

あくまで敵を求めてやまず、敵を撃仁ずばやまぬ軍隊とは、このような軍をいうのである。ただ
要害の地にのみ頼る軍は戦意がなく、いたずらに戦のための戦をしかける軍は勝利への確信を欠
き、血気にはやって猛進する軍はかならず敗れる。なぜならば、これらの軍には、平素の準備が
欠けているからである。

先手がよい場合、後手がよい場合
正義のための戦ならば、率先して兵を起こし、敵の機先を制して正義の戦いであることを天下に
明らかにしたほうがよろしい。
だが、たがいの利害に基づく敵対関係であったならば、万やむを得ず応戦するという態度を崩して
はならない。たとい戦うべしと判断される場合でも、敵から戦を仕掛けてくるのを待つがよい。
つまり、後手を取ることによって大義名分をがち得るのである。とはいえ、平素から戦備を十分
に固めておくことの必要性は、いうまでもない。

怪我勝ちは勝利ではない
戦争には、いろいろな勝ち方がある。すなわち、作戦段階においてすでに敵を圧倒し、戦わずし
て屈服させる勝ち方がある。次に、野戦において敵を破り、戦意を失わせる勝ち方がある。さら
にまた、敵国の首都に侵攻し、降伏を強要する勝ち方がある。

いずれにせよ勝利は、戦おうとする意欲あってこそ得られるのである。十分な戦意がなくて勝利
をつかか場合があったとしても、それは予期せぬ事件のために敵がみすがら混乱におちいった結
果で、いわば怪我勝ちなのである。怪我勝ちは、もちろん、完全な勝利ではない。完全な勝利で
なければ、勝者の栄誉は得られないのである。

明君は、戦闘開始に当たって、全軍の太鼓をいっせいに打ち、全軍のラッパをいっせいに吹き鳴
らして整然と進退し、その軍容によっておのずと勝つ。あえて武備を示さずとも、あえて威風を
諮らずとも勝つことができるのは、平素から法制が整っているためであり、平素から兵器が完備
しているためである。したがって、敵の出方に応じて千変万化の態勢を取ることができ、全軍を
T糸乱れぬ続率下におくことができるのである。

【下の句トレッキング:孤独を忘る蛇の孤独を】

シチリアにサルトリアありてシチリアの男が男を飾る服縫ふ

サルトども呼ぶシチリアの仕立屋の着るシャツこどごどく麗し

色褪せて粉々のプラスチック踏めばはるか明るむサルトリア・イタリアーナ

紫陽花の小玉はまなこ幾重にもたたみて夜の億の紫

手の力萎えたる母に読ませんと本を四つに裂きてのち恐る

性器のごどく木香薔薇は枝を伸ばし私はそれを鋏に摘みぬ
The banksia rose stretches its branches like genitals, so I pick it up with scissors.

おろそかに齢重ねて私の孤独を忘る蛇の孤独を


大石直考 / 『億の紫』(歌壇 2018年7月号)

※  salto:跳躍、滝、Sartoria Italiana:イタリアの仕立屋
※ 木香薔薇:モッコウバラ

この七連歌束の最初の三首でイタリア――1861年、ジュゼッペ・ガリバルディがブルボン朝を打
ち破り手にシたシチリアや南イタリアの領土を、サルディーニャ王のヴィットーリオ・エマヌエ
ーレ2世に無償寄進し、統一国家が出来上がリ、1950年に、後にイタリア王国初代国王のヴィッ
トーリオ・エマヌエーレ2世の領土、サルディーニャ島でフランスの影響を受けた、ピエモンテ
仕立てとも呼ぶことのできる独自の仕立ての「サルトリア・カスタンジア」が誕生――のクラシッ
ク(王道)を引き継ぐサルトリアの賛美、ここでは「色褪せて粉々のプラスチック踏めばはるか
」を余韻をもって四首目の「億の紫」の返歌で、「性器のごどく木香薔薇」のリアリティを詠い、
そして、錨のように深淵――「孤独を忘る蛇の孤独を」(第七首)――へと垂らし収束させ、構
成力/仮構力、あるいは、クリエイティブで豊饒なクオリティな
譬喩/韻律の心象の展開は見事
と言うほかない。



 Wikipedia

 No. 15

【世界初、iPS細胞で血小板効率よく作製】

7月13日、京都大学らの研究グループは、体のさまざまな組織になるiPS細胞を使ってかき
混ぜながら培養することで、血液の成分の1つ「血小板」を効率よく作製する技術を京都大学な
どのグループが開発し、今後、医療への応用につながると期待されている(
研究を行ったのは、
京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授らのグループ)。
「血小板」は白血病の治療や手術の
際などに必要となるが、これまで献血に頼るしかなく、供給が追いつかなくなることが懸念され
ている。これは、
ヒトのiPS細胞から血小板の元となる「巨核球」と呼ばれる細胞を作り出し
この細胞を、培養液を不規則にかき混ぜることができる特殊な装置に入れて培養される。
その結
果、5日間の培養で1回の輸血に必要とされる量とほぼ同じおよそ1000億個の血小板を作製
することに成功。
さらに、この血小板をマウスやウサギに輸血したところ、通常の血小板と同じよ
うに出血を止める効果を確認されている。
従来の方法で作製するのに比べて4倍から5倍効率よ
く大量の血小板が作製でき、より高い品質がえられることが特徴。
江藤教授は「PS細胞から医
療用の血小板を作製する準備が整い、培養装置をさらに大きくして、臨床応用に向けた手続きを
進めていきたいとのこと。

 Jul. 13, 2018

Jul. 5, 2018

【ゲノム編集篇:ゲノム編集の鶏卵で有用な組換えタンパク質を大量生産】

7月9日、産総研の研究グループは、卵白に有用組換えタンパク質を大量に含む卵を産む遺伝子改
変ニワトリを作製する技術を開発した。この技術は、次世代の遺伝子操作技術としてさまざまな
動植物で研究がなされているゲノム編集技術のクリスパー・キャス9(ナイン)法をニワトリに
適用し、卵白の主要なタンパク質のオボアルブミンの遺伝子座に有用タンパク質のモデルとして
ヒトインターフェロンβの遺伝子を挿入(遺伝子ノックイン)する技術である。また、遺伝子を
挿入した雌のニワトリ(ノックインニワトリ)が産む卵は、卵白にヒトインターフェロンβタン
パク質を大量に含むこと、また、雄のノックインニワトリを利用して繁殖できることを確認。今
後、さまざまなノックインニワトリを作製することで、ヒトインターフェロンβに留まらず、バ
イオ医薬品や酵素タンパク質など高価な有用組換えタンパク質を極めて安価に大量生産する技
に繋がるものと期待している。


Title: Efficient production of human interferon beta in the white of eggs from ovalbumin gene–targeted hens

 

第11章 加エトマト業界トップ企業、驚異の生産力
第1節 アメリカ、カリフォルニア州コルサ郡ウィリアムズ
中国に加エトマト産業が誕生したころは、新疆ウイグル自治区でのトマトの収穫はすべて手作業

その工場は線路沿いに建っていた。鉄道輸送に便利なロケーションだ。車で近づいていって最初
に目に入ったのは、無数の木箱が積み上げられてできた巨大な壁だ。箱は1メートル四方
の立方
体で、1ショートトン(907・18キロ)のアセブティック(無菌)パック入り濃縮
トマトが
詰まっている、工場へ向かう道路の上から眺めると、木箱の壁はけるかかなたまで続
き、数キロ
メートルはあるようだった。

ゲートをくぐると、トマトを積んだ二輌連結の巨大トレーラーが縦横に走りまわっていた。

圧巻の光景だ。トラクターがトレーラーを切り離したり連結したりしている。ドドドと低いう
り声を上げているのは、北米産の超大型トラックだ。

経営者のクリス・ルーファーの運転する車が、トレーラーやトラックの列を横ぎり、従業員用駐
車場へ向かう。駐車場にはピックアップトラックが数台停まっていた。ルーファーは背が高く、
愛想がなくて、いつも何かを計算しているような深い青色の目をしている。くたびれた黒いブー
ツを見るかぎりでは、彼が資産家とはとても想像できない。だが、まぎれもなく加工トマト業界
における最高権力者なのだ。

ルーファーが経営するモーニングースター・カンパニーは、加エトマト業界の世界トッブ企業で、
世界の濃縮トマトの12パーセントを生産している。たった一社で、濃縮トマトとカットトマト
のアメリカ国内需要の四〇パーセントをまかなっている。年間売上高は七度ドルに上るが、従業
員はわずか400人で、工場も3ヵ所しかない。だがこれらの工場は世界最高の生産力を誇り、
3ヵ所合わせると1時間当たり2500トン以上のトマトを加工している。

3つのうちふたつの工場は、カリフォルニア州マーセド郡、ロスバノスとサンタネラの間のサン
ホアキンーバレーにある。セントラルーバレーの南側で、巨界でもっとも集約農業化か著しい農
業地帯のひとつだ。そして3つめが、世界最大のトマト加工工場、わたしが今いるこのコルサ郡
ウィリアムズだ。サクラメント・バレーにほど近く、セントラル・バレーの北側にある。201
6年8月27日、わたしはこの工場を訪れ、ルーファーに取材することができた。

工場の規則に従って白い上着を羽織り、ヘルメットをかぶると、ルーファーが先に立って案内を
してくれる。銀色のタンクがずらりと並ぶ通路を通りぬけ、工場のなかをしばらく歩くと、大き
な鉄骨階段が現れた。階段を上りきったところでドアを開けると、目の前に青空が広がっていた。
モーニング・スターのウィリアムズエ場はとてつもなく広い。生産ラインはこの建物の屋上から
スタートする。まずはここで積み荷のトマトを下ろすのだ。もし遠くから双眼鏡でこの場所を眺
めたら、きっとミニチュアのように見えるだろう。子どもが大好きなおもちやのパーキングタワ
ーにそっくりだ。一階ずつミニカーを手で上へ運んでいき、最上階に着いたら螺旋状のスロープ
をすべり落とすミニチュア立体駐車場だ。

2両編成のトレーラーにトマトを積んだトラクターは、建物の屋上まで一方通行のスロープを上
っていき、荷下ろし場に入る。トラクターが停止すると、ケーブルで吊るされた可動式の四角い
給水パイプが荷台の真上に降りてくる。作業員がトレーラー側面後方のハッチを開ける。ブラッ
トホームに立っている別の作業員が問題がないことを確認してから、自動給水システムのスイッ
チを入れる。
この工場では、イタリアや中国の工場とちがって、荷下ろしはすべて自動で行なわれる。作業員
がホースを手にしてトマトを溝に追いこむ必要はなく、ただスイッチを入れるだけでよい。これ
は、「トマト業界のヘンリー・フオード」の異名を取るクリス・ルーファーが発明したシステム
だ。

「ホースで放水しながらトマトを下ろすだって?古くさいやりかただ。時間がかかってしかたが
ないじやないか」と、ルーファーは言う。ハミガキ粉のCMに出てきそうな笑顔だ。「このシス
テムはわたしが考えたんだ」

この業界で世界一になるために、ルーファーは徹底的なコスト削減を行ない、なるべく多くの作
業を自動化した。あらゆる方法を駆使して工場の生産性を上げようとした。そして、なるべく多
くの「不要な作業」をなくし、雇用を削減した。

「この工場では、可動式のパイプを使って、トラックが荷下ろし場の定位置に到着する前から給
水を始める。これで15秒の時間短縮が可能になった」

ルーファーはそう言うと、すぐに計算を始めた。トラックー台当たり15秒節約することで、1
時間当たり7分、1シーズン当たり丸一日分か節約できるという。給水システムに限らず、この
工場ではさまざまな節約が行なわれている。ルーファーは、トマト加工のためのあらゆる作業、
人材、動きを入念に研究した。さすがはフオーディズムの生みの親、ヘンリー・フォードの21
世紀版と言われるだけある。現在、モーニング・スターの工場は世界でもっとも高い生産力を持
つとされる。だが、ルーファーはそれでもまだ満足していない。

「もっとよくならないかって、いつも考えているんだ。観察すればするほど、よくないところが
見えてくる。変えるべきところはたくさんある。改善の余地はいくらでもある。うちなんかまだ
まださ、もっとよくなるはずなんだ」

目の前のトレーラーの荷台にどんどん水が溜まっていく。水圧に押されてトマトが転がり落ち、
山が崩れて凹みができた。開いたハッチから大量の水とトマトが滝のように落ちて、溝のなかで
川になって流れていく。キラキラ光るたくさんのトマトがぶつかり合い、跳ねまわりながら、轟
音を立てる機械に吸いこまれる。

「モーニング・スター一社だけで、中国やイタリアの一国の生産量に相当する濃縮トマトを作っ
ているんだ」と、フアンーホセーアメザガは以前の取材でそう語った。ウルグアイ人で、世界の
加エトマト業界で重要な商社の代表だ。がってはモーニング・スターの濃縮トマトのヨーロッパ
での販売を手がけていたという。
「モーニング・スターは公的な助成金をいっさい受けとっていない。それでも世界でもっとも競
争力が高い企業に成長した。中国やヨーロッパのトマト加工メーカーとは違って、完璧にス
 ケー
ルメリットの原則にのっとった生産が行なわれている。つまり、生産規模を拡大すること
でコス
トを下げ、効率を上げているんだ。これはさまざまな貿易面の市場競争において非常に
大きな武
器になる。だからこそ、中国とヨーロッパもこの会社のシステムを学ぼうとしている
んだ」

つまりそれは、クリスールーファーに学ぼうとしているということだ。それがもっとも進化した
やりかただからだ。中糧屯河(コフコ・トンハー)のトマト加工部門の最高責任者、
ユこアィア
ンチーも同じことを言っていた。

「中国は今、カリフオルニアの生産方式を学んでいるところだ。生産性と競争力がもっとも高
やりかただからね」

トレーラーが空っぽになると、トラクターはものすごいスビードで一方一通行のスロープを降
ていき、あっという間に外の道路を走り去っていった。再びトマト畑へ向かったのだ。荷下
ろし
場には、トラクターがひっきりなしにやってくる。これが昼夜を問わず24時間続くの
だ。シー
ズン中の年間100日間、一日も体まずに稼働している。トラックの列は果てしなく
続く。ウィ
リアムズエ場には大量のトマトが供給され、次々と生産ラインヘ投入されていく。
 ここでも、
トマトは皮をむかれ、種子を取りのぞかれ、加熱され、圧搾され、水分を蒸発さ
れる。廃棄物は
トラックに積みこまれ、家畜のエサにするために運びだされる。完成した濃縮
トマトは、アセブ
ティックパックに詰められてから、コンテナ輸送に適した頑丈な容器に入れ
られる。ここで使わ
れるのは、石油の容器にそっくりの、あの四分のIトン入りの青いドラム
ではない。1メートル
四方の立方体の木箱だ。容器は違えど、生産の手順とパック詰め作業
はまったく同じだ。この木
箱入り濃縮トマトのおかげで、アメリカ人はハインツのケチャッケールメリットの原則にのっと
った生産が行なわれている。つまり、生産規模を拡大することでコストを下げ、効率を上げてい
るんだ。これはさまざまな貿易面の市場競争において非常に大きな武器になる。だからこそ、中
国とヨーロッパもこの会社のシステムを学ぼうとしているんだ」

つまりそれは、クリスールーファーに学ぼうとしているということだ。それがもっとも進化した
やりかただからだ。中糧屯河(コフコ・トンハー)のトマト加工部門の最高責任者、ユこアィア
ンチーも同じことを言っていた。

「中国は今、カリフオルニアの生産方式を学んでいるところだ。生産性と競争力がもっとも高い
やりかただからね」。

トレーラーが空っぽになると、トラクターはものすごいスビードで一方通行のスロープを降りて
いき、あっという間に外の道路を走り去っていった。再びトマト畑へ向かったのだ。荷下ろし場
には、トラクターがひっきりなしにやってくる。これが昼夜を問わず24時間続くのだ。シーズ
ン中の年間100日間、一日も体まずに稼働している。トラックの列は果てしなく続く。ウィリ
アムズエ場は大量のトマトが供給され、次々と生産ラインヘ投入されていく。

ここでも、トマトは皮をむかれ、種子を取りのぞかれ、加熱され、圧搾され、水分を蒸発される。
廃棄物はトラックに積みこまれ、家畜のエサにするために運びだされる。完成した濃縮トマトは、
アセプティックパックに詰められてから、コンテナ輸送に適した頑丈な容器に入れられる。ここ
で使われるのは、石油の容器にそっくりの、あの四分のIトン入りの青いドラム缶ではない。1
メートル四方の立方体の木箱だ。容器は違えど、生産の手順とパック詰め作業はまったく同じだ。
この木箱入り濃縮トマトのおかげで、アメリカ人はハインツのケチャッブ、キャンベル・スーブ、
ドミノーピザを味わうことができるのだ。

第2節
1950年代初め、ハインツは、数十年にわたって粘り強く研究を続けた結果、濃縮トマトに適
したアセプティック充填包装の開発に成功した。このおかげて、無菌状態を維持したまま、ほと
んど劣化することなく商品を運搬できるようになった。こうして濃縮トマトは、トマト加エメー
カーにとって本物の「原材料」になったのだ。そして、商人にとっては「ドラム缶」になった。
アセブティック包装とドラム缶のおかげで、濃縮トマトのグローバル化はますます進み、世界中
の港から港へと流通されるようになった。この包装はすぐに普及し、重くて扱いにくいうえに不
良品も多かった大型缶詰は、次第に敬遠されるようになった。

この「アセプティック革命」前まで、カナダのオンタリオ州にあるハインツのレミントン工場で
は、夏の間に濃縮トマトを大量に生産し、巨大なタンクに貯蔵しておいて、一年中ケチャップを
作れるようにしていた。
そして1950年、同工場のカナダ人従業員があるアイデアを思いついた。[1]

濃縮トマトを運搬するのに、液状の医薬品の包装技術を利用できないだろうか?」

従業員はそう書いて、工場の改善提案ポストに投函した。彼のアイデアを読んだある技術者は、
専門家を集めて検討を始めた。翌年の1951年、濃縮トマトを充填したり抜いたりできる機械
と、初の無菌パックが試作された。この試作品では、1分間で2ガロン(7・56リットル)の
濃縮トマトを無菌充填することができた。30年後、その速度は100倍になった。

[1]Eleanor Foa Dienstag, IN Good Comany : 125 Years at the Heinz Table, op. cit.

In Good Company : 125 Years at the Heinz Table: Dienstag, Eleanor Foa 

1968年は、ハインツが、フアストフード店用のケチャップ個別パックを発明した年だ。
この年、同社のケチャッブ生産量の50パーセントが、取れたての生トマトではなく、無菌パッ
ク入りのタンクやドラム缶に貯蔵された濃縮トマトから作られるようになった。
この発明品のおかげで、トマト加エメーカーは商品の生産がぐんとやりやすくなった。どんなに
遠いところで生産されたトマトでも、原材料として使えるようになったからだ。トマト栽培に適
した土地で大量に収穫し、近くの工場で加工してから、無菌パックに詰めて頑丈な容器に入れて
輸送すればいい。1970年代、ハインツはケチャップやトマトソースを作るために、濃縮トマ
トのみに頼るようになった。そして世界有数の大手食品メーカーに成長し、トマトベーストの生
産でも知られるようになった。

1980年、カリフォルニア州にあるハインツのストックトンエ場は、ドラム缶入り濃縮トマト
専用工場に改築された。伝統的な生産ラインを持たない世界初のトマト加工工場だ。ここでは常
に同じものが生産され、同じ容器に梱包される。かつてハインツやキャンベルースープなどの大
手トマト加エメーカーでは、夏の間だけ、生トマトを使ってケチャップ、トマトソース、トマト
スープが作られていた。それが濃縮トマトのおかげて、一年中商品を生産できるようになった。
そして無菌パックの発明によって、濃縮トマトの長距離輸送が可能になった。だったらわざわざ
自社で作らなくてもよいのではないかヮーやがて、ハインツやキャンベル・スープは、モーニン
グ・スター、インゴマー、ロスガトスといったカリフォルニアのコ次加工会社」から、安価に濃
縮トマトを仕入れるようになった。だからこそモーニングースターは現在、数多くの大企業と取
引を行なっているのだ。
アセブティック包装のおかげて原材料の調達手段が広がり、加工トマト産業は、グローバル社会
におけるネオリベラルな勢力図に適応することができたのだ。

                                     この項つづく

 Jul. 13, 2018

 Sonnen hits almost €10 million in PV storage sales in June

 

  Jul. 7, 2018
    
【黒の革命篇:ビーカーを使って炭素の輪から作る二次元カーボンナノシート】

7月6日、物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、高い触媒機能を持ち、新奇の電子材
料として期待されるカーボンナノシートを、簡易に合成する手法を開発したことを公表。この研
究成果は、
❶ビーカーに水を注ぎ、攪拌した水面に輪状の炭素分子であるカーボンナノリングを展開し
基板に転写し焼成するだけでカーボンナノシートを合成できるので、高価な装置や高度な技術が不要で、
高い導電性などを活かした太陽電池やタッチパネル、燃料電池の触媒膜などへの応用が期待される。 

    
❷グラフェンに代表される、二次元状の炭素材料であるカーボンナノシートは、高い導電性や触
媒機能も持つことから、新奇な電子材料や触媒膜として期待される。高品質なカーボンナノシー
トを合成するには、炭素を多く含む分子を、ナノスケールで構造を制御しながら組み上げること
が求められるが、高度な手法や高価な装置が必要であり、しかも最終段階において高温で焼成し
炭素化する際にナノ構造が崩れてしまうという問題があっが、この手法により、触媒活性を示す
と予想される窒素を含有したカーボンナノシートの合成にも成功し、高価な白金を用いない触媒
として燃料電池への応用できることが大きい特徴である。

 ● 今夜の一曲

「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」は映画『空飛ぶタイヤ』の主題歌――サザン史上初の全
編アニメーションでのミュージックビデオ制作が行なわれた。楽曲同様、現代社会のサラリーマ
ンの日常と組織における生存競争、その表と裏がテーマとして書き下ろされたサザンオールスタ
ーズの新曲―――が6月15日に、映画公開とともにサザン史上初の配信限定シングルとしてリ
リースされると、映画共々大ヒットを記録して現在も大きな話題となっている。
早速、YouTubeで視聴することに。

 

コメント
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スマフォを見つつ子は我に告ぐ

2018年07月12日 | 環境工学システム論

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

5.攻  権(こうけん)
「攻横」とは、攻撃に際しての縦横の機略のこと。この機略も、平素の準備がなければ生まれな
い。平素の準備とは、民心の掌握・戦意の高揚・指揮系統の確立・作戦計画の四者である。

軍隊は一身同体でなければならぬ
軍隊は、秩序整然としてT糸乱れぬ軍容を獲得してこそ敵軍に勝ち、国家は、上下協力して一身
体の体制を築いてこそ敵国に勝つことができる。力が分散すれば弱体化するのは当惑であり、
信頼に
よって結ばれていなければ内部から崩壊するのは必至である。力が分散すれば行動にも迫
力を伴わない。したがって、敵軍の進退は自由自在、その行動を制圧す
ることなど思いもよらな
い。また、指揮官も兵士もI体でなければならぬはずの軍隊において、信頼
感が欠除していたな
らどうなるか。上部の方針が決定しても下部は動かず、下部が勝手に動いても上
部はこれを抑え
られず、流言は至るところに拡がり、指揮官は落ち着かず、兵士は任務を守ろうとせ
ず、行動を
起こせば敗北を招くこと必至の状態におちいるだろう。これがにわかづくりの軍隊というもので、
実戦の役には立だないのである。

軍隊を身体にたとえるなら、指揮官は心であり、部下は手足である。心が確信をもって命令すれ
ば手足は忠実に働くが、心に確信が欠けていれば手足は自由にならぬ道理だ。したがって、たま
たま、指揮官が思いどおりに兵士を働かせず、兵士が命令どおりに勁かないのに、勝利を膜める
ことがあったとしても、それは単なる僥倖にすぎず、戦略戦術を用いたものとは認められないの
である。




【下の句トレッキング:スマフォを見つつ子は我に告ぐ】

 

新卒の配属先は「東京」どスマフォを見つつ子は我に告ぐ

微笑みの顔で眠らう五百三十二キロメートル先へ「おやすみ」

武蔵野は荒き地形ど思ふなり引越し手伝ふ大和の我は


加藤ひろみ / 『若葉光』(歌壇2018年7月号)
 

人為的温暖禍の二酸化炭素排出量削減の下、近未来に「エネルギーフリー社会」が実現すると、
このブ
ログでで掲載――そのツールとして「オールソーラーシステム」と「高品位蓄電池」の2
の技術開発が重要(電気料金と蓄電池を現行の百分の1まで引き下げる――してきたところ
であるが、今夜は下記の2つのニュースに注目する。

【蓄電池事業篇:欧州で830万台充電ステーション導入へ】

7月6日、欧州自動車工業会(ACEA)は欧州委員会は、30年までに欧州の二酸化炭素排出量
を50%削減するという提案は現実的ではないと警告。年間70万台以上の新しい電気自動車
充電ポイントを設置する必要―――燃焼エンジン技術のさらなる改善の余地が限られ、将来の二
酸化炭素削減は代替電気自動車を搭載した車両の巨大な増加に強く依存――があると指摘。さら
に、同工業会の調査によると、現在、欧州連合(EU)には約110万の充電ポイントがあるが、
気候行動委員会のミゲル・アリアス・カネテ(Miguel AriasCañete)は、50%削減するには今か
ら年間70万の新たな充電ポイントが必要だと指摘する。

巨大な増強、根本的な行動

今後12年間で合計840万の新しい充電ポイント、つまり今日よりも84倍の充電ポイントを
意味し、「加盟国の急進的な行動がなければ、これは実現できない」と同事務総長のエリック・
ジョナート言及する。
この十分な充電インフラの欠如と、現在の流通における大きな不均衡は、
消費者の電気自動車の購入を妨げており、オランダ(28%)、ドイツ(22%)、フランス(14%)
、英国(12%)の4カ国に、欧州の全充電ポイントの4分の3以上が所在。
キプロス(36)、ギ
リシャ(38)、ラトビア(73)、ブルガリア(94)、マルタ(97)の5つの加盟国はそれぞれ百
ポイント以下であり、
将来の二酸化炭素の削減はより大きな電気自動車依存し、それらは充電イ
ンフラの密集したネットワークに依存。したがって、二酸化炭素排出規制はこれら2つの要素を
結びつけなければならない」と同氏は結論づけている。

 Tsutomu Miyasaka

【ソーラタイル事業:加速する高品位薄膜タンデム型ソーラーシートの実用化】 

 
12年にペロブスカイト太陽電池技術にTsutomu. Miyasakaraの論文が発表されて以来、この技
術の開発と商業化に焦点を当てた組織数が爆発的に増加し、特許出願の爆発を引き起こす。過去
2年間で1,400件以上の特許が発行、前年度の成長は急速に進んだ。今年2月13日 ペロブスカ
イト太陽電池技術成長は、変換効率を10.9%以上に改善できるとともに同時に低コストの製
造プロセス開発も促進させる。変換効率で22%を達成。オックスフォード太陽光発電株式会社
Oxford Photovoltaics Inlimited)の商業化も急速に進んだ。 過去1年間で同社はドイツにもパイ
ロット製造工業を設立。オーストラリアには、Greatcell Solar社、ポーランドにはSaule社がある。
また、6月12日には、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とスイス・エレクトロニクス
&マイクロテクノロジーセンター(CSEM)の研究チームは、シリコンとペロブスカイトを積層し
たタンデム型太陽電池で記録更新となる変換効率25.2%に達成。
また製造方法が単純であり
既存の太陽電池の量産ラインに組み込むことも可能であると公表。変換効率については、最終
的に30%超まで高めるとすることを公表している(下図参照、ブログ『かへすは天と地の人形
』.201807.06)。





さらに、6月25日には、オックスフォードPVTM   は世界最高の変化効率で27.3%――フラ
ウンホーファー研究所の太陽エネルギーシステムISEで1平方セ
ンチメートルの認定評でこれま
での単結合シリコン系の最高値26.7%を上回る――を達成した
ことを公表。同社は、シリコ
ンベース型ペロブスカイト太陽電池の性能のさらなる向上――太陽
光発電の成長維持に欠かせな
い――に30%の効率を上回るロードマップで進化し続けており、
20年までに30%の達成さ
せだろうとも言及している(下図参照、ブログ『変換効率30%超時代』.2018.06.30)。

 Jun. 26, 2018

さて、同社は下記の特許を先月21日に米国特許庁から公開されているので参考掲載する。

【特許事例研究】

❏ 
US 2018/0175112 A1 Multijunction photovoltaic device多接合光起電力装置

【要約】

第2のサブセル(120)の上に配置された第1のサブセル(110)と、第2のサブセル(120)上に
配置された第2のサブセル、第1のサブセルはペロブスカイト材料の層を含む光活性領域を含み、
第2のサブセルはシリコンヘテロ接合(SHJ)を含む。


【特許請求範囲】

  1. 第2のサブセルの上に配置された第1のサブセルと第1のサブセルは、少なくとも1つのn型
    層を含むn型領域と、少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、開放気孔率を有するペロブ
    スカイト材料の層を含む光活性領域とを含むn型領域とp型領域との間に配置され、n型領
    域およびp型領域の一方または両方と平面的にヘテロ接合を形成し、ペロブスカイト材料
    が一般式(IA)のものである。

              A_.A'1-xB(XX''1-y) 3            (IA-1)
    Aはホルムアミジニウムカチオン(FA)であり、A 'はセシウムカチオン(CS +)であり、
    BはPb 2+であり、Xはヨウ化物であり、X'臭化物であり、0<x?1および 0<y? 1であ
    る。第2のサブセルはシリコンヘテロジャンクション(SHJ)。
  2. 前記ペロブスカイト材料の層は、前記第2のサブセルの隣接する表面に一致する表面上に
    実質的に連続し且つ共形の層として配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多
    接合光起電力装置。
  3. 前記第1のサブセルと前記第2のサブセルとの間に配置され、前記第1のサブセルと前記第
    2のサブセルとの間に配置された中間領域をさらに備える、請求項1に記載の多接合光起
    電力装置。
  4. 中間領域は、1つ以上の相互接続層を含む。前記1つ以上の相互接続層の各々は、透明な導
    体材料を含む、請求項3に記載の多接合光起電力デバイス。
  5.  5.請求項3に記載の多接合光電変換装置であって、前記1以上の相互接続層の各々は、
    近赤外線及び赤外光の少なくとも90%の平均透過率を有し、シート抵抗(Rs) 200オーム
    /平方(Q / sq)。
  6. 前記中間領域は、インジウムスズ酸化物(ITO)からなる相互接続層を含み、前記ITO層は
    10nmから60nmの厚さを有する、請求項3に記載の多接合光起電力デバイス。
  7. 前記n型領域は、無機n型材料を含むn型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電力デバイス。
  8. 前記無機n型材料は、下記のものから選択されることを特徴とする請求項7に記載の多接合
    光起電力装置。インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウム、または前記
    金属の2種以上の混合物の酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、
    カドミウム、スズ、銅、亜鉛またはこれらの2種以上の混合物の硫化物の硫化物;カドミウ
    ム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物または前記金属の2種以上の混合物のセレ
    ン化物; そしてカドミウム、亜鉛、カドミウムまたはスズのテルル化物、または前記金属
    の2種以上の混合物のテルル化物である。
  9. 前記n型領域は、TiO 2を含むn型層を含み、次いで、n型層は、TiO 2のコンパクト層であ
    る、請求項7に記載の多接合光起電力デバイス。
  10. 前記n型領域は、TiO 2を含むn型層を含み、次いで、n型層は、TiO 2のコンパクト層であ
    る、請求項7に記載の多接合光起電力デバイス。
  11. 前記有機n型材料が、フラーレンまたはフラーレン誘導体、ペリレンまたはその誘導体、ま
    たはポリ{[N、NO-ビス(2-オクチルドデシル) ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシ
    イミド)-2,6-ジイル] - アト-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI20D-T2))。
  12. 前記n型領域は、20nm~40nmの厚さを有するn型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電力
    デバイス。
  13. 前記p型領域は、無機p型材料を含むp型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電力デバイス。
  14. 前記無機p型材料は、以下のいずれかから選択されることを特徴とする請求項13に記載の
    多接合光起電力装置。ニッケル、バナジウム、銅またはモリブデンの酸化物; Cul、CuBr、
    CuSCN、Cu20、CuOまたはCISである。
  15. 前記p型領域は、有機p型材料を含むp型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電力デバイス。
  16. 有機p型材料が、スピロ-MeOTAD、P3HT、PCPDTBT、PVK、PEDOT-TMA、PEDOT:PSSのいずれ
    かから選択される、請求項15に記載の多接合光起電力デバイス。
  17. 前記p型領域は、200nm~300nmの厚さを有するp型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電力
    デバイス。
  18. 前記p型領域は、200nm?300nmの厚さを有するp型層を含む、請求項1に記載の多接合光起電装置。
  19. 請求項1に記載の多接合型光電変換装置において、第1の電極および第2の電極と、 そして
    前記第1サブセル及び前記第2サブセルは、前記第1電極と前記第1電極との間に配置され、
    前記第1サブセルは、前記第1電極と接触する。
  20. 前記第1電極は、前記第1サブセルの前記p型領域に接していることを特徴とする請求項19
    に記載の多接合光電変換装置。
  21. 前記第1の電極は、透明または半透明の導電性材料を含む、請求項19に記載の多接合光起
    電力デバイス。
  22. 前記第1の電極は、シート抵抗(Rs)が50オーム/平方(Q / sq)以下であり、可視光線と
    赤外線の平均透過率が等しい材料からなることを特徴とする請求項19に記載の多接合光起
    電力装置。 90%を超える光。
  23. 前記第1の電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)の層からなり、前記ITOの層は、100nm~
    200nmの厚さを有する、請求項18に記載の多接合光起電力デバイス
  24. 前記第1の電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)の層からなり、前記ITOの層は、100nm~
    200nmの厚さを有する、請求項18に記載の多接合光起電力デバイス。
  25. 前記ペロブスカイト材料が、FA1_xCsPbl3-yBrであることを特徴とする請求項24に記載の多
    接合光起電力装置。
  26. 前記第2のサブセルは二面サブセルを含み、前記第2のサブセルの下に配置された第3のサ
    ブセルをさらに備え、前記第3のサブセルは、ペロブスカイト材料の層を含む光活性領域とを含む。
  27. 前記第3のサブセルの光活性領域は、前記第1のサブセルの前記光励起領域の前記ペロブス
    カイト材料と同じかまたは異なるペロブスカイト材料の層を含む、請求項26に記載の多接
    合光起電力デバイス。
  28. 前記第1サブセルは規則的な構造を有し、前記第3サブセルは逆の構造を有することを特徴
    とする請求項26に記載のマルチジャンクション型光電変換装置。
  29. 前記第3のサブセルと前記第2のサブセルとの間に配置され、前記第3のサブセルと前記第2
    のサブセルとを接続するさらなる中間領域をさらに備え、前記さらなる中間領域は、1つ
    または複数のさらなる相互接続層を含む、請求項26に記載の多接合光起電力デバイス。
  30. 前記1つ以上の更なる相互接続層の各々は、透明な導体材料からなる、請求項29に記載の
    多接合光起電力デバイス
  31. 前記1つ以上の更なる相互接続層の各々は、少なくとも90%の近赤外及び赤外光の平均透
    過率及びシート抵抗(Rs)を有する、請求項29に記載の多接合光起電力デバイス200オー
    ム/平方(Q / sq)以下である。
  32. インジウムスズ酸化物(ITO)からなるさらなる相互接続層による多接合光起電力デバイス
    であって、ITOの層は、10nmから60nmの厚さを有する。
  33. 前記第1の電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)の層からなり、前記ITOの前記層は、100
    nm~200nmの厚さを有する、請求項19に記載の多接合光起電力デバイス。


 

 
Savory = Chubritsa (Чубрица) 木立薄荷
Oregano = Rigan (риган)
Marjoram = Rigan (риган)
Parsley = Magdanoz (магданоз)
Basil = Bosilek (босилек)
Rosemary = Rozmarin (розмарин)
Thyme = Mashterka (мащерка)
Tarragon = Estragon (естрагон)
Sage = Salviya (салвия билка)
Dill = Kopŭr (копър)               ”ブルガリアの10のハーブ

【ヘルシークックトレッキング:タラト-ル=冷製胡瓜スープ】
 

タラトール(Tarator)は、ブルガリアをはじめとする東ヨーロッパの各地で食されているスープ。
特にブルガリア名物として知られる。冷製ヨーグルトスープ。前菜。トルコや東部地中海沿岸地
方ではソースとして、魚料理などと共に供される。
ヨーグルト、クルミ、ニンニク、キュウリ、
ディルやパセリなどのハーブ、ビネガーまたはレモン果汁、塩、オリーブオイルやひまわりオイ
ル、水などが材料。
夏になると暑くて乾燥するバルカン諸国一帯では人気の冷たいスープで、ヨ
ーグルトにキュウリ、ニンニク、クルミ、ディル、オリーブオイル、および水または氷を入れて
冷やして供される。地域により、様々なレシピがあり、パンが入る地域やレタスやニンジンが入
る地域もある。
また、その見た目からスノーホワイトサラダ(Snowwhite salad、ブルガリア語で
салата Снежанка- “salata Snezhanka” or “Snejanka”)、またはドライ・タラトールとも呼ばれる、
水きりしたヨーグルトで作られるレシピもあり、こちらは前菜としてのほか、メインディッシュ
の副菜としても供される。

 



きゅうりの原産地は西北インドのヒマラヤ山地といわれ、民族移動に伴い古代ギリシャに伝わり、
その後ヨ
ーロッパに広がり、中国へは580年ごろに「胡瓜」の記録があり、シルクロードを経て
「胡の国」から伝わり普及したとされる。このように、
華北型と華南型の品種ができて、日本へ
も伝わり「倭名類聚抄」(923~930年)に記録。
この時の品種は華南型で、体を冷やすとされ
敬遠されていたが、明治期以降に華北型品種が導入されると土着。
その後、品種を基に多くの品
種が開発、現在の日本は世界で最もきゅうりを食べる国民食となった。また、下図のように「

た」は最も苦味を感じる部分だが、きぅ
うりの苦味は蟻酸以外もククルビタシンなど複数の成分
によって構成され、
特にククルビタシンは抗がん作用があるともされているので、糠漬けなどと
して食している日本人の元気の源となっているのかも。



Cucurbitacin D exhibits potent anti-cancer activity in cervical cancer、 Scientific Reports, Nov. 08, 2016

  今夜の一枚

I'm a Biwa Sufer

  

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若葉の風で若葉が揺れる

2018年07月09日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

4.戦  威(せんい)
戦闘力を左右するものは、兵の戦意である。死を恐れずに戦い抜く精神力は、どこから生まれる
のか。命令の効果を諭し、政治を論じ、要は「人の和」であると断言する。尉組子の面目躍如た
る一章。

士卒と労苦をともにせよ
指揮官が率先して労苦に当たる軍隊は、かならず士気旺盛である。
炎天のもとでも自分のための日除けは張らせず、酷寒に処しても自分だけ暖衣しようとはしない。
険路を越えるにも車馬を用いず士卒と共に歩み、渇しても自分だけでは水を飲まず、空腹でも自
分だ
けでは食事をとらない。陣地が完成しなければけっして休息せず、労苦も慰安もかならず士
卒ととも
にする。このような指揮官のもとにおいてこそ、士卒は長期の戦闘に耐え、士気衰える
ことなく戦い披くの
である。

管理者と労働 「長」というものは管理することが任務であり、部下と同一条件で働くことは無
        意味であるとする考え方がある。「する」のではなく「させる」のが管理者の
        仕事だというのが、
近代経営学の説である。これに対し、中国の古代思想は、
        本節のように「将必ず己れを先にす」
を強調する。現代中国で、指導者の労働
        を義務づけているのは、社会主語的理念からだけでなく、
伝統的なストイシズ
        ムでもあるといえよう。

上厚下薄は滅亡のきざし
人民大衆を富ます国は、天下を帰服させることがでなる。軍人を富ます国は、武力によって天下
を割判することができる。しかし、高級官僚を富ます国は、辛うじて存立を保てるだけである。
そして、君主が富を独占する国には、ただ滅亡が待つのみだ。
上座下薄という表現がそっくり当てはまるような国は、救う術もないのである。
「有能な者を抜擢して用いれば、時日の吉凶にかかわらず成果があがり、法令を明確詳細に規定
すれば、占わずとも結果は吉であり、人民の功労をねぎらいいたわれば、神宮に頼らずとも福が
もたらされる」といわれている。
また、「天の好機よりも地の利、珀の利よりも人の和が大切である」ともいわれている。
聖人が宗祖したのは、ただ人事を尽くすことのみであ

〈天の好機より・・・人の和が大切〉 「天の時は珀の和にしかず。地の和は人の和にしかず」。
                 『孟子』中の有名な章句である。

 


『下の句トレッキング:若葉の風で若葉が揺れる』

つくづくど一本の木は木のかたち若葉の風で若葉が揺れる  斉藤 梢 / 『林檎を探す』


妙な一首に目がとまり、そのまま意味を了解できず思わず立ちつくしてしまう。こんなこともあ
るものだと苦笑。部位同士のコミュニケーションなのか?生命力のシンクロがなす技なのか?

 

 No. 14

【最近細胞ハンドリング装置技術】

7月6日、ヤマハ発動機株式会社は、ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLERTM
SLAS EUROPE 2018※において、"New Product Award"を受賞。New Product Awardは、医薬品開
発におけるラボオートメーションの課題解決に貢献する革新的かつ独創的な製品に贈られる賞で、
CELL HANDLERが国際的な賞を受賞するのは初めてとなる。創薬や再生医療を目的とした研究・
実験で、自動化/省力化/デジタル化のニーズが世界的に拡大する中、CELL HANDLERは創薬の
現場で従来は膨大な時間と手作業を要していた細胞(塊)の取扱いやデータ取得を、高速・高精
度に行え、治療薬の開発がより早く低コストでできるようになることで、新規治療薬の開発や医
療費の抑制に貢献が来される。

※ Society for Laboratory Automation and Screening 2018



❏ WO2016/020989 対象物の保持装置 ヤマハ発動機株式会社

【概説】

再生医療分野での細胞などの対象物――液体貯留する容器中の保持する装置が必要とされる場合
(=細胞凝集塊)、細胞凝集塊の選別、観察、培養などの多数の細胞保持部を備えたプレートを
貯留細胞培養液中に配置し、保持部に細胞凝集塊――を保持させることがある。この場合、細胞
凝集塊保持部の複数の貫通孔を形成したプレートに、細胞や生体試験用ビーズを保持できる保持
装置が開示されている。
保持部に細胞凝集塊を保持する際、細胞培養液を貯留する容器内に、多数の細胞凝集塊を含む
懸濁液を分注チップから吐出させる。凝集塊のプレート上の保持部への収容は、専ら吐出
後の自然沈降に依存し、細胞凝集塊が急速に沈降して変形したり、逆に沈降速度が遅すぎて保持
部に凝集塊を保持させるのに時間が掛かりすぎたりする不具合の生じることがある。

このように、容器に投入した対象物を容器中の液体に浸漬し、プレートにて保持する際、対象物
がプレートに保持されるまでの速度を調整することができる保持装置を提供することにある。下
図1のように、対象物の保持装置は、液体を貯留する容器、投入部材、プレート及び液流調整な
どの機構でこうされており、容器は、上部開口と底壁とを備え。投入部材は、対象物を、上部開
口を通し容器内部へ投入。プレートは、上面と下面とを有し、下面が容器の底壁に対して間隔を
置いた状態で液体中に浸漬され、上面側に配置され前記対象物を担持する保持部と、保持部の配
置位置に形成し、上面から下面に貫通する貫通孔とを備え。液流調整機構は、前記対象物の投入
後に、上面の側から下面の側に向けて制御された流速で貫通孔を通過する液流を発生させ、対象
物が投入から保持部で担持されるまでの速度を調整できるようにするものである。

 
【実施形態】
図1は、本発明の第1実施形態に係る対象物の保持装置Dを概略的に示す側断面図。保持装置D
は、液体Lを貯留する容器1と、対象物(細胞凝集塊C)を液体L中において保持するプレート
2と、細胞凝集塊Cが容器1へ投入された後、プレート2に担持されるまでの速度を調整する流
量調整機構3と、細胞凝集塊Cを容器内へ投入する投入部材4と、流量調整機構3及び投入部材
4の動作を制御する制御部5とを備えている。図2は、容器1の斜視図、図3は、プレート2の
上面図、図4は、図3のIV-IV線断面図である。図5は、分注チップ41から吐出された
凝集塊がプレート2に担持される状況を説明するための模式図である。ここでの細胞凝集塊の
担持作業は、種々の細胞凝集塊や夾雑物の中から所望の細胞凝集塊を選別する作業でもある。こ
細胞選別動作が行われる際、予め細胞凝集塊を含まない液体L(細胞培養液)が容器1内に注
液される。上述の通り、液体Lの液面LTの高さは、プレート2が液体L中に完全に浸漬される
高さとされる。その後、容器1の上部開口1Hを通してプレート2上の液面LTに向けて、選別
対象となる細胞凝集塊Cと不可避的に混在する夾雑物Cxとを含む細胞懸濁液が分注チップ41
から注入される。


図6は、図1の状態から、分注チップ41内に保持されていた細胞凝集塊Cが、細胞懸濁液と共
に開口41Tから上部開口1Hへ投入された後の状態を示している。この投入の際、制御部5は
流量調整機構3を制御して、エア配管311が閉止された状態、つまり圧力口である配管アダプ
タ15を「閉」の状態にしている。このため、閉鎖空間Aの空気は逃げ場が無い状態である。

従って、細胞凝集塊Cを含む細胞懸濁液が投入された分だけ、容器1中における内周壁13の内
側であってプレート2の上方の液体層(以下、上部液体層LSという)の液面LTは、上位レベ
ルLT1に上昇する。細胞凝集塊Cは、上部液体層LS内において浮遊している。これに対し、
閉鎖空間Aが面している液体Lの液面LTは不動である。これは、上部液体層LSと囲繞領域C
A内の液体Lとは貫通孔22を通して連通しているものの、閉鎖空間Aから空気が逃げることが
できないからである。

図7は、細胞凝集塊Cの沈降が完了し、プレート2(保持部21)に細胞凝集塊Cが担持されて
いる状態を示している。上部液体層LSの液面と囲繞領域CA内の液体Lの液面とは、同じ高さ
になっている。但し、細胞凝集塊Cを含む細胞懸濁液が投入された分、液体Lの液面は事前の液
面LTよりも高い増加レベルLT2に至っている。
ところで、上記のような細胞凝集塊Cの投入動作において、1つの保持部21に複数個の細胞
集塊Cが収容されてしまう場合がある。一般に、一つの保持部21には一つの凝集塊Cが保
持されることが、細胞凝集塊Cの画像観察や前記シリンダチップによる個別吸引が容易であると
いう観点から望ましい。しかし、分注チップ41から細胞凝集塊Cを吐出させ、液流LCのアシ
ストで沈降させるだけでは、細胞凝集塊Cが概ね均等にプレート2上にばら撒かれた状態を形成
することができない場合が生じ得る。

図8は、プレート2上の細胞凝集塊Cが、逆方向の液流LCRにより上部液体層LSに分散され
ている状態を示す図である。



図9は、本発明の第2実施形態に係る対象物の保持装置D1を概略的に示すブロック図である。
第2実施形態の保持装置D1は、細胞凝集塊Cを分注チップ41により吸引させ、これを第1実
施形態と同様な容器1に吐出させるまでの構成を備えた装置の具体例である。保持装置D1は、
容器1、プレート2、流量調整機構3、チューブ10、投入部材4A、制御部51、ヘッドユニ
ット61及びボールねじ装置6Mを備えている。


容器1、プレート2及び流量調整機構3は、先に第1実施形態で説明したものと同様であるため、
ここでは説明を省略する。チューブ10は、細胞凝集塊Cを含む細胞懸濁液Lxを収容する、上
面開口の容器である。チューブ10に貯留されている細胞懸濁液Lxは、投入部材4Aによりそ
の一部が吸引され、その後に容器1へ吐出される。

投入部材4Aは、ヘッドユニット61に搭載され、下端に開口41Tを備えた分注チップ41(
チップ部材)と、分注チップ41が下端に取り付けられるヘッド42Aとを含む。第1実施形態
と異なる点は、開口41Tに吸引力及び吐出力を発生させる機構として、ピストンヘッド43及
びピストンロッド44と、その駆動部45とが備えられている点である。


ヘッド42Aは、上下方向に延びる筒状の部材である。ピストンヘッド43は、ヘッド42Aの
内部に、上下方向に移動自在に配置されている。ピストンヘッド43の外周面にはシール部材(
図示せず)が取り付けられ、気密性が確保されている。ピストンロッド44もヘッド42Aの内
部に収容され、その下端にピストンヘッド43が取り付けられている。駆動部45は、ヘッドユ
ニット61内に組み付けられ、駆動モータ及び駆動伝達機構を含み、ピストンヘッド43を上下
方向に移動させる。さらに駆動部45は、ヘッド42A自体をヘッドユニット61に対して上下
方向に移動するように駆動する。



先ず制御部51は、1回当たりの吸引動作で分注チップ41に吸引させる細胞懸濁液Lxの容量
の指定を、ユーザーから受け付ける(ステップS1)。この容量指定に基づいて、制御部51は、
駆動部45によりピストンロッド44(ピストンヘッド43)を上昇させる長さを決定する。ピ
ストンロッド44の上昇量が多いほど、分注チップ41が吸引する細胞懸濁液Lxの量は増加す
る。

次に制御部51は、ボールねじモータ62を動作させて、ヘッドユニット61(ヘッド42A)

をチューブ10の上空へ移動させる(ステップS2)。チューブ10の上面開口部に、ヘッド
42Aの下端に装着された分注チップ41が対向している。ヘッド42Aは上昇位置にあり、ピ
ストンロッド44は、上下方向の可動範囲の最下位置まで下降している。図9は、このような
態を示している。

続いて制御部51は、駆動部45を動作させ、ヘッド42Aを下降させ、分注チップ41の開口
41Tを含む下方部分を、チューブ10内の細胞懸濁液Lxに浸漬させる。そして制御部51は、
駆動部45によりピストンロッド44をステップS1の指定に応じた長さだけ上昇させ、開口
41Tに吸引力を発生させる。かかる動作により、チューブ10に貯留された細胞凝集塊Cを含
細胞懸濁液Lxの一部が、分注チップ41内に吸引される(ステップS3)。その後、図11
に示すように、制御部51は駆動部45を動作させ、ヘッド42Aを上昇させる。これにより、
細胞凝集塊Cを保持した分注チップ41もチューブ10の上に移動する。

続いて、図12に示すように、ヘッドユニット61が容器1の上空に移動される。すなわち、制
御部51はボールねじモータ62を動作させ、ヘッドユニット61をねじ軸63に沿って右方へ
移動させる。ヘッドユニット61は、容器1の上空で停止される。分注チップ41は、容器1の
上部開口1H(プレート2)と対向している(ステップS4)。
制御部51は、分注チップ41に吸引された細胞懸濁液Lxの吐出速度、つまり単位時間当たり
の吐出量V1を指定する(ステップS5)。この吐出量V1は、ユーザーから予め設定されたも
のである。指定された吐出量V1は、ピストンロッド44の下降速度の調整によって実現される。
容器1には、細胞培養液からなる液体Lが予め所定の液量(プレート2が液体L中に浸漬される
液面高さ)で注液されている。容器1内には上述の閉鎖空間Aが形成されている。この図12の
状態では、制御部51は流量調整機構3を制御して、圧力口である配管アダプタ15が「閉」の
状態、つまりエア配管311を閉じて閉鎖空間Aから空気が抜け出さない状態としている(ステ
ップS6)。

次に、分注チップ41から容器1へ細胞凝集塊Cを含む細胞懸濁液Lxが吐出される(ステップ
S7)。制御部51は駆動部45を制御し、図13に示すように、ヘッド42Aを下降位置に移
動させる。この状態では、分注チップ41が上部開口1Hに入り込み、プレート2に接近してい
る。分注チップ41の下降位置は、開口41Tが液体L中に入り込む位置でも、液体Lの液面よ
りもやや上方の位置であっても良い。

しかる後、制御部51は駆動部45を制御し、ピストンロッド44を下降させる。このときの下
降速度は、ステップS5で指定された吐出量V1(吐出速度)に対応するものである。これによ
り、分注チップ41に保持されている細胞懸濁液Lxは、上部開口1Hを通して容器1内に吐出
される。図14は、前記吐出が行われた後の状態を示している。吐出された細胞懸濁液Lxに含
まれていた細胞凝集塊Cは、プレート2上の液体L中において浮遊している。ここでも、配管ア
ダプタ15は「閉」の状態に維持されている。この後、図示は省略しているが、ヘッド42Aは
上昇位置に移動される。

次に制御部51は、容器1の閉鎖空間Aからの空気抜き速度、つまり単位時間当たりの空気抜き
出し流量V2を指定する(ステップS8)。この抜き出し流量V2は、ユーザーによって予め設
定されたものである。指定された抜き出し流量V2は、流量調整機構3によるエア配管311の
開度の調整によって実現される(ステップS9)。

ここで制御部51は、抜き出し流量V2を、分注チップ41から吐出させる細胞懸濁液Lxの単
位時間当たり吐出量V1よりも少なくなるように設定する(V1>V2)。V1>V2の関係で
閉鎖空間Aからの空気抜きを実行させることで、細胞凝集塊Cをゆっくりとプレート2上に沈降
させることができる。従って、細胞凝集塊Cへのダメージを抑制することができる。V1とV2
の比は、例えば、吐出量V1を1とするとき、抜き出し流量V2は3/4~1/4程度とするこ
とが望ましく、1/2程度とすることが特に望ましい。

細胞懸濁液Lxの吐出が完了した後、制御部51は、流量調整機構3を動作させてステップS9
で指定された流量V2で閉鎖空間Aの空気抜きが行われるよう、圧力口である配管アダプタ15
を「開」の状態とする(ステップS10)。図15は、配管アダプタ15が「開」とされた直後
の状態を示している。細胞懸濁液Lxが投入された分だけ、プレート2の上方の上部液体層LS
の液面LTは、上位レベルLT1に上昇している。しかし、配管アダプタ15が「開」とされる
ことで、閉鎖空間Aの空気がエア配管311を通して抜け出し始めると、先に図6に基づき詳述
した通り、プレート2の貫通孔22には、その上面側から下面側に流れる液流LCが発生する。
液流LCの発生によって、上部液体層LSの液面は上位レベルLT1から徐々に低下し、また
凝集塊Cはプレート2上へ沈降してゆく。これに呼応して、閉鎖空間Aが対向する液面LTは
矢印a1で示すように上昇する。

制御部51は、配管アダプタ15が「開」とされた後、閉鎖空間Aからの空気抜き量が、ステ
ップS1で指定した細胞懸濁液Lxの吸引量、すなわちステップS7における分注チップ41
からの細胞懸濁液Lxの吐出量と同量になるか否かを確認する(ステップS11)。この確認は、
単位時間当たりの抜き出し流量V2と時間との積と、ステップS1での細胞懸濁液Lxの吸引量
とを比較することによる。


【特許請求の範囲】

【請求項1】液体を貯留する容器であって、貯留した液体中に対象物を投入させるための上部開
口と、底壁とを備える容器と、
対象物を保持すると共に、保持している前記対象物を、上部開口
を通して容器内へ投入する投入部材と、
上面と下面とを有し、上面が前記上部開口に対向し、下
面が前記容器の前記底壁に対して間隔を置いた状態で前記液体中に浸漬され、上面側に配置され
前記対象物を担持する1又は複数の保持部と、保持部の配置位置に形成され上面から下面に貫通
する貫通孔とを備えるプレートと、
投入部材による対象物の投入後に、上面の側から下面の側に
向けて制御された流速で貫通孔を通過する液流を発生させることで、対象物が投入から保持部に
担持されるまでの速度を調整する液流調整機構と、
を備える対象物の保持装置。
【請求項2】請求項1に記載の対象物の保持装置において、保持部は、上部が開口した凹部であ
貫通孔の上面の側の開口は、前記凹部の底面に配置する、対象物の保持装置。
【請求項3】請求項1又は2に記載の対象物の保持装置において、投入部材が、対象物が混合さ
れた懸濁液を保持すると共に、前記懸濁液の吐出口を備えたチップ部材であり、
チップ部材は、
懸濁液を、上部開口を通して前記容器内へ吐出する、対象物の保持装置。

【請求項4】請求項3に記載の対象物の保持装置において、容器は、液体を所定の液面高さで貯
留する容器であり、
上部開口を画定する上端部と、プレートの周縁を保持する下端部とを備える
筒状の内周壁と、
内周壁に連設される上縁部と、底壁に連設される下縁部とを備える筒状の外周
壁と、を備え
容器内には、内周壁、外周壁、底壁及びプレートによって囲繞領域が形成され、液
体の液面がプレートよりも上方に位置するように容器が液体を貯留した状態においては、囲繞領
域内の液面上に閉鎖空間が形成され、
液流調整機構は、懸濁液の吐出の後に、閉鎖空間の空気を
制御流量で抜くことで、液流を発生させる、対象物の保持装置。

【請求項5】請求項4に記載の対象物の保持装置において、チップ部材が、懸濁液を単位時間当
たり吐出量V1で容器内へ吐出する場合に、
液流調整機構は、単位時間当たりの流量がV1より
も少ない流量V2で、前記閉鎖空間の空気を抜く、対象物の保持装置。

【請求項6】請求項4又は5に記載の対象物の保持装置において容器は、閉鎖空間に連通する作
業孔を備え、
作業孔に一端が接続され、他端が大気に開放された空気抜き用の配管をさらに備え、
  調整機構は、前記配管に組み付けられた流量規制部を備える、対象物の保持装置。
【請求項7】請求項6に記載の対象物の保持装置において、作業孔と流量規制部との間において
配管に分岐接続され、配管内に空気を吐出することが可能なポンプをさらに備える、対象物の保
持装置。

【請求項8】請求項1~7のいずれか1項に記載の対象物の保持装置において、対象物が、生体
由来の細胞である、対象物の保持装置。




 Jul. 4, 2018

エネルギータイリング事業:世界初、プロトン導電性セラミック燃料電池】

7月4日、産業技術総合研究所(産総研)は、開発した拡散焼結技術を用い、80mm角サイズのプ
ロトン導電性セラミック燃料電池セル(PCFC:Protonic Ceramic Fuel Cell)を作製することに成功。
PCFCは理論的に燃料を100%利用することができ、発電効率として75%を実現できる可能性があ
るというセラミックス材料で構成される固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に
比べ、発電効率は20%以上も高くなり二酸化炭素削減効果が期待でき、低温域でも十分なイオ
ン導電率が得られるため、SOFCに比べて発電作動温度を下げることが可能。このため、耐熱材料
などのコストを節減できるメリットがある。ただ、プロトン導電性セラミックスは焼結に1700
以上の高温焼成が必要となる。焼結温度を下げるために添加助剤を用いることもあるが、この添
加助剤がプロトン導電性セラミックスの粒界に偏析をし、絶縁性が低下するなど課題もあるため、
これまでは直径が30mm程度のPCFCしか作製できなかったという。



研究グループは今回、バリウム(Ba)系ペロブスカイト材料の中でCO2との反応性が極めて低い
BaZrO3系組成を電解質材料として用いた。また、実用サイズの燃料電池セルを実現するために、
拡散焼結技術を新たに開発した。開発した技術を用いることで、焼結助剤を含む燃料極支持体と
薄層電解質を共焼成し、その過程で遷移金属を優先的に電解質中に完全固溶させることが可能と
なった。これによ、遷移金属が粒界偏析しなくなる。

【ソーラータイル事業:最新高性能ペロブスカイト系太陽電池技術】

● 有機・無機金属ハライドペロブスカイト結晶におけるBi 3+の6価ドーピングの影響

本質的な有機 - 無機金属ハライドペロブスカイト(OIHP)ベースの半導体は光電子デバイスに
幅広く応用されている。 電子ドーピングを誘発し、半導体中の電荷キャリア密度を増加させる
試みにおいて、ペロブスカイトにヘテロ金属(例えば、Bi3 +イオンを組み込むいくつかの試
みがなされている。 Bi 3+を含有すると、材料のバンドギャップがかなり減少することが報告さ
れている。 しかし、以前の結論とは対照的に、目で観察された結晶の外観の明らかな変化にも
かかわらず、ここでは、MAPbBr3結晶のバンドギャップが成長溶液中のBi3 +の存在により変化し
ないことを示す。 バンドギャップにおける状態密度の増加および透過測定のための非常に厚い
サンプルの使用は、誤ってバンドギャップシフトの印象を与える。 これらのサブバンドギャッ
プ状態は、結晶中の非放射性再結合中心としても作用する。



図1.(a)ドープされた及びドープされていないMAPbBr3単結晶の写真。 (i)純粋なMAPbBr3(ii)1%Bi 3+
(iii)5%Bi でドープされたMAPbBr3および(iv)10%Bi 3+でドープされたMAPbBr 3 でドープされたMAPbBr 3+
スケールバー:2 mm。(b)結晶の正規化吸光度スペクトル。 Eabs * =吸収開始



図4.a)undopedおよびBiドープMAPbBr3結晶のPb207 NMRスペクトル。 (b)MAPbBr3とBiドープMAPbBr3の定
常PLスペクトル。

 

 ● 今夜の一曲

’I Love It ’ Songwriters; Charlotte Aitchison ·  Patrik Berger ·  Linus Eklöw

I got this feeling on the summer day when you were gone
I crashed my car into the . I watched, I let it burn
I threw your shit into a bag and pushed it down the stairs
I crashed my car into the

I don't care, I love it

I got this feeling on the summer day when you were gone
I crashed my car into the . I watched, I let it burn
I threw your shit into a bag and pushed it down the stairs
I crashed my car into the

I don't care, I love it. I don't care

You're on a different road, I'm in the milky way
You want me down on earth, but I am up in space
You're so damn hard to please, we gotta kill this switch
You're from the 70's, but I'm a 90's bitch

 

● 今夜の寸評:豪雨死者110人超

このようなことは想定されていたこと。さっさと予算化しておけばリスクは最小限におさえるこ
とはできた。行政の責任は重い。このことは「人命は地球より重し」を核としてブログ掲載済み。


 

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在りて華やぐこの世おもしろ

2018年07月08日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

4.戦  威(せんい)
戦闘力を左右するものは、兵の戦意である。死を恐れずに戦い抜く精神力は、どこから生まれる
のか。命令の効果を諭し、政治を論じ、要は「人の和」であると断言する。尉組子の面目躍如た
る一章。

部下を発奮させるには
次に、士卒を発奮させることについて論じよう。そのためにはまず、民生を豊かにしなくてはな
らない。また、階級間の秩序、親族関係における礼の別は、社会生活の根本であるから、明確に
しておかねばならない。これらを定めるについては、あくまでも社会生活の実態に即し、慣行に
従って明確に規定することが大切である。土地や俸禄の制度は公正に、民衆の生活に対する思い
やりを忘れず、相互扶助の観念を振興させれば、人民の精神はかならず高揚する。これが、士卒
を発奮させるための根本である。
政者がこの配慮を忘れなければ、什伍は親戚のように睦みあい、卒伯は友人のように親しみあう
であろう。止まれば鉄壁の布陣を固め、進めば風雨のごとく迅速果敢、兵車は絶対に後退せず、
士卒はけっして退却せぬ勇猛無比の軍隊は、ここから生まれるのである。

什伍、卒伯〉各級の部隊の呼称。兵士五人の一隊が「伍」、十人が「什」、「卒」は五十人と
              も百人ともいわれる。「伯」は「卒」の倍だが、字義からいえば百人である。

五大要件
土地は、人民を養うためのものである。城は、土地を守るためのものである。そして戦争は、城
を守るた
めの行為である。
土地の耕作に力を尽くせば、人民は飢えない。城の防備を厳にすれば、土地は奪われない。そし
て戦力
の増強を怠らなければ、城は危機に顔することはない。
土地と城と戦力との三者は、先王が治国の根本として重視したものである。ところで、三者の中
でも何か
もっとも困難かといえば、それは戦力の増強である。それゆえ、先王は、次の五大要件
を満たすために
全力を傾注した。 

一、食指を蓄積すること。食糧が欠乏すれば、軍は進もうにも進めない。

二、論功行賞を十分に行なうこと。賞が十分でなければ、士卒は発音しない。
三、有能な人材を抜擢すること。人材を適所に用いなければ、軍は強くならない。
四、兵器を整備すること。武器が整っていなければ、戦闘力は弱まる。
五、賞罰が厳正適切であること。賞罰が適正を欠けば、士卒は上官に服従しない。

上の五大要件が満たされればどうなるか。軍が静止する時はその守りは万全、行動する時はかな
らず所期の戦果を収めることが可能となる。しかも防禦から攻撃に移行する時には、重厚で堅固
な全軍が一挙に、勇猛果敢に突進するようになる。



『下の句トレッキング:在りて華やぐこの世おもしろ』

少年の視線の先のくたびれた歩行靴わが普段覗き  

バス停で片足立ちに靴裏を見する機敏さなくて棒立ち  

執すれば靴の底さへ少年に未知の扉どなるかなるべし  

長靴のゴム底の跡入り混じる雪の庭ありき陽に融くるまでを  

つど子鹿われを去りゆき小顛なる出し惜しみせる残生ならす  

靴の底意匠なるほど様々に在りて華やぐこの世おもしろ
I find designs of various shoe soles and I think interesting this era fun.

 
寺尾登志子 / 『靴の底』

 

第9章 中国の加エトマト産業の暴走――始まりと発展、強制労働
第8節
中国に加エトマト産業が誕生したころは、新疆ウイグル自治区でのトマトの収穫はすべて手作業
で行なわれていた。労働者に支払う賃金は、現在の六分の一から十分の一程度だった。

日当2、3ユーロで、東方からの出稼ぎ労働者やウイグル人を働かせていたのだ。今なら20
ーロくらいが相場だろう。

労改の収容者も働かされた。中国には2013年まで、反革命犯や政治犯を「改造」するために
労働をさせる一労働改造」という制度があった。旧ソ連の強制収容所、グラーグの中国版
だ。そ
の一労働改造所=労政」の収容者たちが、新疆でのトマト収穫作業を強いられていたの
だ。



欧米のメディアでしぼしぼ「ウイグル人のダライ・ラマ」と紹介される、ラビア・カーディ

いう女性がいる。1970年代に新疆ウイグル自治区の実業家として成功し、1990年
代には
中国でもっとも富裕な女性のひとりになった。当時はその高い社会的地位から、さまざ
まな政治
団体のメンバーになっていた。ところが1999年、ウイグル人の人権の改善を訴
え、中国政府
によるウイグル人抑圧を非難したために逮捕され、政治犯として収監されてしま
う。労働改造所
に収容され、縫製作業の懲役を科せられた後、2005年にようやく釈放され
た。現在はアメリ
カで暮らしつつ、世界ウイグル会議の議長として、ウイグル人の人権擁護を
訴える活動を行なっ
ている。

2016年7月20日、わたしはラビア・カーディルに取材することができた。カーディルは、

中国の政治犯が新疆ウイグル自治区で加工用トマトの収穫作業を強いられていること、そして政
治犯以外の受刑者も農作業を強制されていることを教えてくれた。

「中国でもっとも多くの労改収容者が働かされているのが、新疆ウイグル自治区です。労改の所
長は、まるで会社の経営者です。収容者を無理やり働かせて、輸出向けの商品を生産してい
ます,
とくに農地や工場で働かされています」


反中国政府のプロパガンダのための嘘ではない。新疆ウイグル自治区で、わたしはカーディ
ルの
証言の裏付けを取ることができた。加エトマト産業に関わる役人は誰ひとりとして、労改
収容者
にトマト収穫をさせたことを認めなかった。だが、漢民族のトマト生産者が、かつて収
容者にト
マトの収穫をさせたことかあると証言したのだ。強制労働によって収穫されたトマト
は、工場で
加工され、濃縮トマトになって大手食品メーカーの手に渡っている。

かつて、ソ連時代の強制収容所のグラーグは、世界中の知識人から非難の的になっていた。
現在でも、テレビ番組で共産主義の是非が論じられるとき、もし誰かがグラーグのことに言及す
れば、その点に関してはすべての人の意見が一致する。なのに、どうして中国の強制労働は許さ
れてい
るのか? 「労働改造」の制度自体は2003年に廃止されたが、強制労働は今も中国で
続いている。だが、
誰もそれを非難しようとしない。いつの間にか、強制労働は国際的に容認さ
れてしまったのだろうか?

確かに、中国版グラーグは、グローバル化された今の資本主義社会にすっかり組みこまれている
労働コ
スト削減のためなら手段を選ばない大手食品メーカーにとって、原材料の下請会社でただ
で使える労働力
かおるのは、実に都邑がよいことなのだ。この件について、中国政府は公式な数
字をいっさい公表していない。だが複数のNGOは、およそ400万人の人たちが
今も強制労働
をさせられていると発表している

ドイツ公共放送ARDテレビで長年アジア特派員を務めたジャーナリスト、ハルトムート・アイ
ツクは、中国の強制労働に関するドキュメンタリー番組を制作した。この作品は、独仏共同出資
テレビ局アルテで放映されている。

2015年9月1日、わたしの取材に対し、アイツクはこう言った。
「中国の強制労働は、国の経済発展に大きく貢献しています。金額にしてざっと数十億ユーロに
なるでしょう。ヨーロッパの企業が視察に訪れるのは、いつも近代的な工場です。現地ですぐに
商品を発注する企業もあります。でも、工場の裏手に収容所があって、商品は本当はそこで作ら
れています。ヨーロッパの人たちにはそれがわかりません。クリスマス飾り、プラスティックケ
ース、衣類、ぬいぐるみ、機械のパーツなど、わたしたちが暮らす町で安く売られている中国製
品の多くは、こうした強制労働によって作られているのです」

ヨーロッパの経済は、いまや中国からの輸入に大きく依存している。そのせいか、中国で強制労
働が行なわれている実態は、メディアでほとんど取りあげられない。だが、こうした強制労働に
よって農業労働力が提供され、そのおかげで中国が世界中に食品や原材料を輸出しているのは確
かな事実だ。そういう卑劣な行為によって作られた商品が、欧米のスーパーの店頭に並び、わた
したちの食卓に並べられるのだ。

[2] United States Department of Agriculture Foreign Agricultural Service 2002b, p.4.



第9節
中国の加エトマト産業が暴走したのは、さまざまな要因が積み重なったためだった。ただ同然の
労働力、激安価格で競争力が高い濃縮トマトの世界市場進出、少しでも安い濃縮トマトを求める
ナポリの食品メーカー、新疆ウイグル自港区の産業化と領土の有効利用と賄賂を求める中国の権
力者たち、年間三パーセントずつ増加する加工用トマトの世界需要、なるべく多くの設備を売ろ
うとする食品機械メーカー………こうして中国の加エトマト産業はうなぎのぼりで成長し、やが
て生産過剰に陥り、増えすぎて使われない工場があちこちに現れるようになった。
のだ。

  Tony O'Reilly

第10章 ハインツの経営合理化とその影響
第1節
1983年6月30日、アメリカ元国務長官のヘンリー・キッシンジャーはインツ社のジェット
機に乗って初めてアイルランドを訪れた。わずか数日間の滞在で、7月1日には現地を発ったと
いう。アイルランドのメディアはプライベートな旅行と報じ、目的は明らかにしなかった。とこ
ろが、その訪問の目的がなんと30年後に明かされた。
2013年に公開された国家機密文書によると、アイルランドの当時の首相、ガレット・フィッ
ツジェラルドは、キッシンジャーの突然の訪問に大変困惑したという。だが、ともあれ首相はキ
ッシンジャーをダブリンでの晩餐会に招待した。そしてそこには、トニー・オライリーという人
物も同席した[1]。

トニー・オライリーは、ラグビーのアイルランド代表の元選手で、引退後は実業家として知られ
るようになった。アイルランドの大手新聞社のCEOであり、億万長者、そしてハインツの五代
目社長だった。この数年後の1987年には、創業者ヘンリー・ジョン・ハインツの孫-・オラ
イリーは、キッシンジャーのその交渉力に頼りたかったのだ。


そのころ、オライリーが社長を務めるハインツの商品は、世界人口のわずか15パーセントにし
か流通されていなかった。つまり、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパの市場にしか出回っ
ていなかったのだ。もっと販路を広げたい、進出が難しいとされる中国のような国で、同業他社
に先駆けて商品を販売したい……オライリーはかねてからそう願っていた。当時の中国の最高指
導者、邨小平が進める対外開放政策に乗じてどうにか中国に進出できないか。その相談で、キッ
シンジャーをアイルランドに呼び寄せたのだ。

アメリカに戻ったキッシンジャーは、さっそくハインツのために動きだし、あっという間に中国
市場参入の話をまとめあげた。そして翌年の1984年、ハインツは広東省のメーカーと、ベビ
ーフードの生産における白弁会社を設立した。契約締結までわずか7ヵ月というスピードだった。
中国の生産工場は1986年6月に完成し、落成式は中国共産党の役人やハインツの経営陣を迎
えて盛大に行なわれた。当日の写真を見ると、ハインツ創案者の孫であり3代目社長たったヘン
リー・ジョンージャックーハインツニ世と、五代目社長のトニー・オライリーが、中国の子ども
たちに囲まれている。子どもたちはハインツのロゴが印刷された風船を手にしている。その場に
集まった地元の人たちは、人民服を着て、「ハインツ」と書かれた帽子をかぶっていた。

その2年後、工場は3倍の規模に拡張された。中国のテレビで初めてCMを流した外国企業もハ
インツなら、資本主義国のブランド食品を中国で初めて販売したのもハインツだった。天安門事
から一年も経たない1990年には、ハインツはすでに中国の国土の半分で自社商品を販売し
ていた。ハインツは再び資本主義の歴史の最先端に立ったのだ。

第2節
1980年代のネオリベラリズムの流行によって、政府が市場に極力介入しない市場原理主義が
世界中に広まった。その影響で、多くの先進国で規制緩和や金融自由化が行なわれ、自由競争が
促進された。経済における金融の役割が大きくなり、いわゆる経済の金融化か進んだことで、国
内外における生産システムと金融システムが根底からくつがえされた。1962年、アメリカの
国民総生産(GNP)に占める金融業の割§はおよそ16パーセントで、製造業は49パーセン
トだった。ところがその40年後の2002年、金融業は43パーセント、製造業は8パーセン
トと完全に逆転してしまった。

ハインツの社長、トニー・オライリーはネオリベラリズム信奉者で、経営にもすぐにこの思想を
取り入れた。そういう意味で、オライリーは1980年代を象徴する経営者だったと言えるだろ
う。ネオリベラリズムとグローバリズムに合わせようとしたというより、積極的に椎し進めてい
ったのだ。
[3]  Andrew  F. Smith,  Pure Ketchup: A  History of  America's National Condiment, Colu mbia, University
of South Carolina Press, 2011.



トニー・オライリーは、当時の大統領、ロナルド・レーガンの公私にわたる友人だった。その人
脈を利用して、1981年、オライリーはアメリカのネオリベラリズムをケチャッブ色に染めよ
うと試みたようだ[3]。

1982年度の連邦予算が決定したとき、社会保障費が270億ドル削減され、それに伴って学
校給食費も10億ドルほど削られた。そこで当時のアメリカ農務省は、1981年9月3日にケ
チャップを「調味料」ではなく「野菜」と分類することを提案した。そうすれば生野菜や調理野
菜の量を減らしても、ケチャップを使うことで一食当たりの野菜摂取量を満たすことができるう
え、大幅なコスト削減が可能になる。しかし、当然のことながら反対の声は大きく、この提案は
却下された。だが現在、大さじ二杯以上ならトマトペーストが「野菜」と認められていることか
ら、ビザはアメリカの給食で「野菜」に分類されている。

「トニーは50歳と、まだまだ子どもだ。だがわたしが思うに、数年後には政界進出できるくら
いに成熟するだろう」
1986六年、アイルランド系アメリカ人経営者クラブに向けて、同じくアイルランド系のレー
ガン大統領は、ホワイトハウスからビデオメッセージを送っている。実際、レーガンニ期目の共
和党政権では、トニー・オライリーを閣僚に迎え、商務長官に任命しようとする動きもあったの
だ。大統領はビデオメッセージでこうも言っている。
「トニーは偉大なアイルランド系アメリカ人だ。イギリスとアイルランドの両方でその功績が認
められている。世界的なラグビーブレイヤーとして、複数のメディアのトッブとして、国際的な
実業家として、さまざまな分野で素晴らしい仕事を成し遂げている。われわれは彼に感謝してい
るのだ」

ハインツ創業者のひ孫、ヘンリー・ジョンーハインツ三世にもまた、共和党大統領の秘蔵っ子議
員のひとりだった。1971年から1977年まで下院議員を務め、1977年からは上院議員
に選出されている。1991年に飛行機事故で死去したときは、ジョージ・H・W・ブッシュ大
統領自らがハインツ記念チャペルでの葬儀に駆けつけ、故人の冥福を祈った。ハインツ記念チャ
ペルは、ハインツ社によってピッツバーグ中心街に建てられたゴシック様式の教会だ。今、ハイ
ンツ三世は、ハインツ創業者で曽祖父のヘンリー・ジョン・ハインツ、二代目社長で祖父のハワ
ード・ハインツ、三代目社長で父のヘンリー‘ジョン・ジャック・ハインツニ世らとともに一族
の霊廟で眠っている。なお、ハインツ三世の未亡人、テレサ・ハインツは、1995年、アメリ
カ第68代目国務長官ジョンーケリーと再婚している。

第3節
1980
年代、国際コンサルティング会社のキッシンジャー・アソシエーツがハインツのために
何をしてきたか、その一部はいまだ謎に包まれている。だが1986年、トニー・オライリー社
長は《ニューヨーク・タイムズ》紙に対し、キッシンジャーがコートジボワールとハインツの契
約の仲介をしたことを明らかにしている。フェリックス・ウフェーボワニ大統領とオライリーが
一対一で会えるよう、間に立って交渉をしたのだという。そのわずか一年前、ハインツはジンサ
ブエでも合弁会社を設立している一玉・ロバート・ムガベ首相とオライリーとの間で契約が交わ
されたのだ.これもキッシンジャーの交渉の成緊だったのだろう。

「ハインツは重要なパートナーです。ほかの外国企業もぜひ後に続いてほしいと思っています。
ハインツがジンバブエに進出し、この国の発展を支援してくれることを、心から喜んでいます。
ハインツのおかげで、多くの国民の生活レベルが向上するでしょう」

[4] Heinz Goes It Alone in Zim babwe , New York Times, 27 fevrier 1989.


ムガベ首相は熱を帯びた声でそう語った。トニー・オライリーのほうもまったく同じ気持ちだっ
たらしい。

「ジンバブエヘの進出は大成功でした。この投資をして本当によかったと思います。ジンバブエ
政府による積極的で協力的な姿勢にも感謝しています」

1992年、ハインツの年間売上高のエリア別内訳は、アメリカ六四パーセント、ヨーロッパ
28パーセント、その池8パーセントだった。キッシンジャーの交渉のおかげで、商品の販売エ
リアの拡大に成功したのだ。
1990年代初め、アフリカ、ロシア、中国、タイヘの進出に伴って、ハインツ栄養学協会の主
宰による大規模な一利学的」セミナーが開催された万Tセミナーには、科学者や政府保健福祉省
の代表らが参加した。目的は、科学的に信頼できるというイメージをハインツの商品に与えるこ
とだった。さらに、ハインツ財団特別レクチャーと題して国際講演会を開催することで、このイ
メージ戦略はいっそう強化された。講師には著名な政治家が集まった。報酬をもらえるうえに、
自分のキャリアに箔がつくとあり、みんな嬉々としてやってきたのだ。当時アフリカ民族会(A
NC)の議長に就任したばかりの、ネルソンーマンデラもそのひとりだった。

現在、ハインツ中国法人のウェブサイトには、同社の輝かしい歴史を伝える年表が、かわいいキ
リンのイラストとともに紹介されている。だがその歴史からは、ハインツにとって都合の悪い多
くの出来事が巧妙に省かれている。たとえば、2006年、国際環境NGO《グリーンピース》
が、ドイツの研究機関に委託してハインツの製品を検査したところ、ベビーフードに違法な遺伝
子組み換えコメが含まれていることが発見された。ハインツ中国法人の広州工場で生産されたも
のだった。
《グリーンピース》によると、ベビーフードから遺伝子組み換え作物が見つかったのは世界初だ
という[6]。ハインツはすぐに声明を発表した。一読当の製品はしかるべき検査を受けており、
遺伝子組み換え作物が含まれていないことは確認済みだ」と反論し、「問題のコメがどうして混
入したかはわからない」と述べている。

[6] Green peace, Illegal genetically  engineered rice  found in  Heinz baby food in China , 14 mars 2006.



その2年後の2008年、中国のあるメーカーの粉ミルクを飲んだ乳児が次々に体調をくずし、
そのうち牧人が死亡するという事件が起きた。化学物質のメラミンが混入されていたのだ。この
騒ぎで、当該メーカーだけでなく、国内の食品メーカーの製品が次々と当局の捜査を受けた。す
るとその一環で、ハインツ中国法人のベビーフードにも、基準を超えるメラミンが含まれている
のが発見された[7]。アメリカのハインツ本社は、メラミンが含まれているおそれのあるベビー
フードのロットをすべて回収し、中国産粉ミルクを今後は一切使用しないと宣言した。ロイター
通信によると、食品に混入されたメラミンによる中毒者は、総勢およそ9
万4000人に上った
という。一方、中国政府は徹底的に報道を規制し、中国の食品業界の実態を象徴するこの出来事
周到にもみ消そうとした

だが2012年、またしても事件が起きた。ハインツのベビーフードが水銀に汚染されていると
してヽ中国当局が製品の回収を命じたのだ[8]。事件はさらに続く。今度は2014年、別のベビ
ーフードに基準量を超える鉛が含まれていることが衛生当局の検査で発覚し、やはり市場からの
回収に追いこまれている[9]。食の安全に関する「科学的」セミナーとはいったい何だったのだろ
うか。

[7] L. Bollack, Contaminated milk: Heinz decides to stop sourcing Chinese milk, Les Echos, September 30,
2008; Open Melamine in Baby Care Heinz, 7sur7.be, 27 September 2008.

 Sep. 18, 2008


第4節
1970年代半ば、ハインツは海外市場を拡大するのと並行して、アメリカ、イギリス、オース
トラリアの生産拠点を次々と閉鎖した。1975年から1980年の間に工場の数は半減し、何
千人もの従業員が解雇された。最終的に、従業員の5人にひとりが辞めさせられた[10]。
ハインツは最低限のコストで生産することを目指し、そのためには大規模解雇も厭わなかった。
コスト削減のため、あちこちの工場で少しずつ生産するのではなく、巨大工場で大量に生産する
ようになった。それは、創業当時からの経営方針、パターナリズム(家父長制度)との完全な決
別だった。

1982年、3万6600人の従業員で売上は37億だったが、10年後の1992年には3万
5500人の従業員で66度ドルとなった。労働コストを削減しつつ売上高を上げることに成功
したのだ
1991年から1992年にかけて、ハインツはもうひとつ大きな企業再構築を行なっている。
原材料を自社で生産するのを辞めたのだ。コーンスターチ、グルコース、イングルコースなどを
生産していた工場を手放し、代わりに世界中から安く原材料を調達するネットワークを築きあげ
。安い原材料を購入すれば、自社で生産するよりコストを下げることができる[11]。濃縮ト
マトそのひとつたった

ハインツ本社には、原材料調達に関する情報収集と取引交渉を行なう特別部署が設けられ、原材
料の仕人れはすべて一任されるようになった。
こうして全社を通じて大規模なコスト削減が行なわれる一方で、広告宣伝費は爆発的に増えた
1982年には2億ドルだった予算が、1992年には12億ドル、売上高の18パーセントに
ふくれあがっている。ハインツでは、これまでもマーケティングに多額の予算が投じられていた
が、1992年にはそれがピークに達したのだ。

[10] Rapport Heinz Company, Centre for Research on Multinational Corporations (SO MO), 1993.

トニー・オライリー社長は、現在のハインツについてこう語っている。
「われわれは、ハインツを素晴らしい国際企業に育てあげた。弊社はグローバルな戦略で事業を
展開している。これからは、世界中のすべての人がハインツを二番に選んでくれるよう、さらな
る努力を続けなければならない。この地球のあらゆる場所で、現在も、そしてこれから何世代に
もわたって、常にトップでいられるように」
1983年から1993年にかけて、ハインツ株の配当金を再投資した場合、年利回りは20・
6パーセントだった[12]。10
年間だと551・5パーセントになる。アメリカ元国務長官の
ヘンリー・キッシンジャーはこう述べている。

「ハインツの歴史は、われわれに刺激を与え、いろいろなことを教えてくれる。トニー・オライ
リー社長のリーダーシップは、よい経営とはこういうものだという手本を示してくれる。世界市
場には新しい世代の消費者が増えつつあるが、ハインツはこれからも理想的な企業でありつづけヽ
輝かしい業績を作っていくだろう[13]」

[13]Eleanor Foa Dienstag, In Good Company; 25 Years at the Heinz Table, op. cit.



   太陽は明けの明星(モーニングスター)にすぎない。

                        ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
                     『ウォールデン――森の生活』(1854年)
                     カリフォルニア州コルサ郡ウィリアムズにある
                 モーニングスター社の工場の看板に書かれたスローガン



「戦争とは関係国の支配者が関係国の国民の命と生活を蹂躙する行為であると」いう言葉通り、
平時においても行われている――開発独裁国・中國の飢餓輸出政策と英米流金融資本主義国(=
グローバリズム=破壊的格差政策)アメリカ――ことを見事に炙りだしているように見える。思
うに、国民生産の2/3以上が第3次産業で成りたち立つ高度消費資本主義社会にあって、先進
性とは高度な消費政策がスムーズに運営されているかに象徴される。その意味で、米忠両國とも
貧相な大国である。

                                                                         この項つづく

● 今夜の寸評:これで
やっと、ひと息付ける

                           

                                  

 

 

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かへすは天と地の人形

2018年07月06日 | 時事書評

 

      
                                              
『尉繚子』
紀元前三世紀、秦の始皇帝に仕えた兵法家・尉繚の説を収録したものといわれる。

4.戦  威(せんい)
戦闘力を左右するものは、兵の戦意である。死を恐れずに戦い抜く精神力は、どこから生まれる
のか。命令の効果を諭し、政治を論じ、要は「人の和」であると断言する。尉組子の面目躍如た
る一章。

命令はやたらに変更するな
命令とは、全軍の心を一つに結集するための手段である。部下の心理を言言しない指揮官は、平
気で度々命令を変更する。命令が度々変更されれば、部下はまた変更されるだろうと考え、命今
に従わなくなる。
したがっていったん命令を下したなら、大筋に誤りのないかぎり変更せず、多少の疑念くらいは
押し切る強さがなければならぬ。指揮官が確信を持って命令を下せば、部下は疑念を抱かない。
指揮官が断固として指令すれば、部下は迷わずそれに従う。信じられない指揮官のために、全力
を尽くそうとする者はいないし、全力を尽くす気もないのに、死を階して戦う者がいるはずはな
い。

したがってこうもいえる。国内における上下の関係が礼節と俗談と親近と情愛とによって固く結
ばれているなら、命全一下、人民はたとい飢えであろうと甘受するだろう。国内に、孝悌と仁慈
と清直と廉恥の気風が確立しているなら、命合一下、人民はたとい死であろうと避けずに進むだ
ろう。古代の明君はどのように国を治めたか。かれらは何よりもまずわが身の徳を修めて人民を
感化することに心を用い、爵禄・刑罰・法律等の手段に訴えることは二の次としたのである。
このように、上に立つ者が率先して身を但し、士卒を発奮させること、それが戦闘指揮の第一条
件である。それでこそ、士卒は手足のように命今に従うのである。いかに節義のためであろうと
も、指揮官に敬服し、発奮するのでなければ、士卒は生命を投げ出す気にはならない。生命を投
げ出す覚悟がなくては、戦えるものではない。



【下の句トレッキング:かへすは天と地の人形】

世の中の厄をのがれて元のままかへすは天(あめ)と地の人形(ひとがた)  滝沢馬琴

馬琴82年の生涯は苦労の連続だったらしい,辞世の歌は、「生きることは厄災を受け続けるこ
とであり、今やっと寿命が尽きて厄災から解放され、元の人形となって自分を天地の間にお返し
する」と江戸深川生まれの馬琴が粋な辞世の句を詠める、今日は青葡萄。

 Mar. 16, 2003

 

 

 

第9章 中国の加エトマト産業の暴走――始まりと発展、強制労働
第6節 
中国、疆橋ウイグル自治区ウルムチ

ウルムチのさびれた古いホテルのロビーで、ある男性と待ち白わせをした。中国の加エトマト業
界における重要人物のひとりだ。イタリアの商社の人間は、彼のことをファーストネームで呼ぶ。
だが、ここにその名前を書くことはできない。
その男性と会ってことばを交わしたとき、おもしろいことに気がついた。語す英語がイタリア語
なまりなのだ。そのことは、中国の加エトマト産業の歴史を象徴していろようにわたしには思わ
れた。
1990年代、中国に仕入れルートを確立するため、イタリア人が初めて新疆ウイグル自治区に
やってきた。そのころ、ウルムチにはあまりパッとしないホテルが一軒あるだけだった。イタリ
アからやってきたIマルコ・ボーロ」たちは中国語がわからない。すぐにでも通訳が必要だった。
白羽の矢が立ったのがこの男性だった。男性は若く、流暢な英語を話した。数年にわたって通訳
として雇われつづけ、パルマの機械メーカーや商社の人間たちといっしょに新疆の各地や北京を
訪れた。イタリア人の信用を得て、多くの商談を通訳した。高度に技術的な会話や、重要な交渉
にも立ち会った。そして次第に、この業界の技術や経営に関する知識を深めていった。

通訳として業界の有力者たちといっしょにいたおかげて、男性はこの業界について何もかも知り
尽くすようになっていた。現在は中国企業に勤めているという。濃縮トマトの二大メーカー中糧
屯河(コフコ・トンパー)とカルキス(中基)の内情にも通じている。
「中国の加工トマト産業は、3つの段階を経て成長しました。第1段階は1990年から199
3年まで。中国の加工トマト産業の黎明期です。当時、年間およそ40万トンの加工用トマトが
栽培されていました。イタリア人も中国人も、新疆ウイグル自治区の気候がトマトの栽培に向い
ているとわかると、工場をどんどん増やしました。第2段階は1999年から2003年まで。
加エトマト産業は急成長し、年間500万トンもの加工用トマトが栽培されました。

これらのトマトを加工することで、60万トン以上の濃縮トマトが生産されました。そして第3
段階は2009年から二2010年まで。この時期、トマトの生産量は年間1000万トンの大
台に乗りました。すべてが加工用、そしてほぼすべてが輸出用です。
ところがその後、中糧屯河とカルキスのシェア争いが激化しました。同社とも次から次へと工場
を建設し、膨大な量の濃縮トマトを生産しました。明らかに生産過剰です。でも、同社とも世界
第一位の座が欲しかった。それはもう苛烈な争いでした。イタリアは黙ってその様子を見ている
だけでした。二社が激しく競争するほど、イタリアは安く濃縮トマトを仕人れられますからね。
2014年になって、見るに見かねたわたしかとうとう和解の場を設けました。同社はようやく
市場がないのにたくさん作っても価格が下がるばかりだと気づき、生産を縮小しはじめました。
実際、バーター貿易協定の時期が終わると、中国銀行の資金はどんどん海外へ流出していったの
です。

新疆から濃縮トマトを買っている会社の名前を全部あげるのはちょっと難しいですね。あまりに
たくさんの食品メーカーがありますから。そういう食品メーカーは、大量に濃縮トマトを買って
います。とくに、ユニリーバ、ハインツ、ネスレの三社は、年間数万トン単位です。クラフトフ
ーズも多く買ってます。ヨーロッパでの主な販先先は、イタリア、イギリス、ポーランド、ドイ
ツ、オランダ。こうした国々でトマトソースやケチャップを作るのに使われます。ロシアにも大
量に輸出されます。アフリカの場合、いったんイタリアに輸出して、再加工されてからアフリカ
に再輸出されることもあります」

2015五年、中国国内でトップ、匪界で第2位だった中糧屯河は、3倍濃縮トマトを25万ト
ン以上生産した。国内第二位のカルキスは18万トンだった。さらに、国内第3位の見漢集団、
第四位の冠農果茸は、それぞれ八万トンと4万5000トンだった。これら上位4社だけで、中
国国内の濃縮トマト全生産量(73万7000トン)の4分の3を生産している計算だ。
現在、中国は世界観大の濃縮トマト輸出国だ。アメリカやイタリアより多いのを意外に感じるか
もしれない。だが、ほかの生産国は国内に大きな市場があるので、まずはそちらに供給しなくて
はならない。カリフォルニアの生産量の大半は、アメリカ国内で消費されている。イタリアも同
様で、まずはイタリア国内市場、次にEU圏内の国々に供給し、残りをEU圏外に輸出している。
ところが中国の場合、世界第2位の生産国でありながら、その生産量のほとんどすべてを輸出し
ている。これは濃縮トマト主要生産国では例外的なケースだ。

《トマト・ニュース》によると、2018年、加工用トマトの生産量は世界全体で3800万ト
ンだった。うち、アメリカ(ほとんどがカリフォルニア州)は1150万トン以上、中国は51
0万トン、イタリアも510万トン、スペインは290万トン、トルコは210万トンだった。
2015年は金額ベースで見ると、濃縮トマトの世界の総輸出額は六五億ドル近くに達し、19
97年の3倍以上になった。だが、濃縮トマトに関して貿易収支が黒字になったのは、世界中で
わずか13カ国だけだった。

第7節
取材で出会った複数の関係者によると、2000年代初め、中国が加工トマト業界で台頭しはじ
めた時期、中国人経営者に賄賂が渡っていたという。もちろん、取材に応じた人は誰ひと
りとし
て、自分が関わったとは認めていない。ポルトガルのトマト加工品商社代表、パウロ・
クーニャ・
リベイロは、中国人の要求があまりにしつこかったからやむをえずそうしたのでは
ないか、と言
った。そう言うりペイロ自身も、自分はやったことはないと主張している。ま
た、工場の建設や
食品機械の購入に関する契約書には、数字が水増しされたものがあったという。

水増し請求を使ってどのように賄賂がやりとりされるのか、リベイロがわかりやすく説明してく
れた。

「まず、機械メーカーが中国の会社に機械を売り、水増し請求書を作る。会社は中国政府の銀

から融資を受けて、請求された金額をメーカーに支払う。取引が終了すると、経営者本人の
名義、
または別名義の外国の銀行口座に、メーカーから水増し分のy手数料が振り込まれる
んだ」

                                                                         この項つづく
 

 No. 13

【抗加齢医療市場2022年856億ドルへ】
抗加齢(アンチエイジング)医療は、テクノロジーの進化に伴い、現在大きなパラダイムシフト
を迎えています。抗加齢医療は、寿命に基づいた観点からの対処から、健康寿命に基づいて予防
から症状の管理と治療を行うサイクルへ移行しつつあります。この様なヘルスケアのコンセプト
の変化は、抗加齢医療で新たな市場機会を生むことが期待されます。中でも、臨床医療、栄養補
助サプリメント、美容療法の領域で、デジタルテクノロジーを統合したヘルスケアソリューショ
ンが有望な市場となるという。 



フロスト&サリバンはA4M.com社と共同で行った新たなリサーチ「抗加齢療法・サービス:2022
年に向けた市場トレンドおよび成長機会」を発行し、抗加齢医療の市場動向を公表。これによる
と、抗加齢医療のグローバル市場は、2017年から2022年に向けて年平均成長率(CAGR)6.5%で成
長し、同市場規模は2022年に856億米ドルに成長する予測です。今回のリサーチにおける抗加齢
医療市場には、加齢に伴う発病への対処と病気の予防を目的とする臨床医療・栄養補助サプリメン
ト・美容療法の3つのセグメントを対象とする。

 

連載が終了した『エネルギー革命元年』を最新事業開発の考察を継続しながら、新しい事業開発
の考察として『再生医療』の事業開発を掲載していくことにする。ところで、再生医療こと、再
生医学( Regenerative medicine)とは、人体の組織が欠損した場合に体が持っている自己修復力を
上手く引き出しその機能回復を行う医学分野である。

 

【風力発電篇:オランダで730メガワットの洋上風力】 
6月29日、三菱商事株式会社はDiamond Generating Europe社(同社英国100%子会社)を通じて
参画する蘭Borssele(ボルセレ)Ⅲ/Ⅳ洋上風力発電事業建設を開始したことを公表。同事業は、
Eneco社、Royal Dutch Shell社、Van Oord社 と共に 4社で開発を進めてきたが、今後はPartners Gro-
up
を加えた5社で事業推進。総発電容量は約730万メガワット、19年中に洋上据付工事に着
手し、21年の運転開始見込む。
欧州では30年までに5万メガワットに上る洋上風力発電の導
入が見込まれており、
ESG投資の気運が高まるなか、リスクが低減された段階で再生可能エネル
ギー事業への参画を図る事業者・機関投資家が多数。今回の譲渡は、建設前のリスクが下がった
段階で参画を希望するPartners Groupと、資産入替えにより発電事業のポートフォリオの最適化を
図る同社の戦略が合致する。

 Mar.26, 2018

同社は、DGEを通じて欧州にて本事業を含め計4件の洋上風力発電事業(総発電容量3千メガワ
ット超:概要下表)に参画。これらを通じて蓄積した事業運営の経験を活かし、経済価値・社会
価値・環境価値の三価値同時実現に資する案件に取り組み続けることで、30年までに発電量の
20%超を再生可能エネルギー由来とする目標の早期達成を目指す

Jun. 29, 2017

● ボルセレⅢ/Ⅳ プロジェクト概要
場所:オランダ沖合約22㎞の北海海域/総発電容量:約730メガワット(約82.5万世帯
の電力を賄う規模)/
総事業費:約1,800億円

 

 

【エネルギータイリング事業:ソーラータイル篇】
ペロブスカイト積層型ソーラー技術開発 欧米でヒートアップ


● シリコン-ペロブスカイト積層型太陽電池で変換効率25.2% EPFL
6月12日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とスイス・エレクトロニクス&マイクロテ
クノロジーセンター(CSEM)の研究チームは、シリコンとペロブスカイトを積層したタンデム型
太陽電池で記録更新となる変換効率25.2%に達成。
また製造方法が単純であり、既存の太陽
電池の量産ラインに組み込むことも可能であると公表。変換効率については、最終的に30%超
まで高めるとする(上図参照)。これは、ブログ掲載(「変換効率30%超時代」2018.06.30)
した6月25日の
オックスフォードPVTM   の世界最高の変化効率で27.3%を下回る。また、3
月22日の欧州のソーラーリサーチ機関であるSollianceとオランダのエネルギー研究センター(E
CN
)が結晶シリコン太陽電池と組み合わせた透明ペロブスカイト太陽電池の効率を26.3%達成を
(下図)下回るものであるが、いかに精力的に研究開発されているかがうかがえる。

  Mar. 22, 2018

さらに、米国でも盛んに開発成果として関連特許公開が(米国)が続いている(下図)。

【特許事例研究:最新ペロブスカイト積層電子デバイス技術】
❑ 
US 10003037B2
溶液処理可能な金属酸化物バッファ層を含むオプトエレクトロニクス
デバイス

【概要】
有機発光ダイオード(OLED)、有機光電池(OPVセル)またはペロブスカイト型太陽電池などの
有機エレクトロニクスにバッファ層を使用して、デバイス効率および寿命を増加させることが知
られている。そのようなバッファ層は、亜鉛ドープ、チタンドープ、タングステンドープ、ニッ
ケルドープ、ニオブ酸化物またはAlドープZnO(「AZO」)またはCuドープNiOのようなドープ金
属酸化物などの金属酸化物を含む。一般に、粒子状のこのような金属酸化物は公知である。典型
的には、上記の酸化物バッファ層は、高真空下での熱蒸発または高温アニーリング工程を必要と
する湿式化学(前駆体に基づく)方法によって製造される。低コストで大面積の製造プロセスの
点で不利である。有機太陽電池(OPV)は、10%を超える認証された効率で、低コストで柔軟な
光起電力技術のための有望なアプローチを提供することも知られている。広範囲に商品化する前
に、大面積生産と安定性の問題を解決しなければならない。高歩留まりおよび低シャントでの信
頼性の高い大面積生産のためには、厚く安定した丈夫で印刷可能なバッファ層が前提条件である。
一般に、粒子状のこのような金属酸化物は公知である。上述したように、このような酸化物層は、
高真空下での熱蒸発により製造。低コストで大面積の製造プロセスの点で不利である。このよう
なプロセスは、比較的高い温度を使用する。アニール工程を含むことにより、バッファ層に先行
する層が温度に敏感な場合には不利である。従って、本発明者らは、温度感受性層/材料に適合
するバッファ層、特に金属酸化物バッファ層の製造プロセスを提供する必要があることを確認し
ている(後略)。
下図のように、有機エレクトロニクスのような電子デバイスの分野に関し、前記デバイスは基板
および多数の層を含む、少なくとも1つはバッファ層(
金属塩)で、電子デバイスの製造に適し
た中間品および材料、特定の製造方法および特定の用途を提供する。



❑ US 9,911,935 Transparent conducting oxide as top-electrode in perovskite solar cell by
non-sputtering process:非スパッタリング法によるペロブスカイト型太陽電池
の上部
電極としての透明導電性酸化物

【概要】
低温プロセスを用いて透明導電性酸化物(TCO)上部コンタクトを形成する技術が提供される。
本発明の一態様では、基板上にTCOを形成する方法が提供される。この方法は、電子ビーム蒸着
を用いてTCOの原料ガスを生成するステップと、 RFプラズマを用いて原子状酸素を発生させる。
基材上にTCOを形成するのに十分な条件下で基材をTCO原料ガスおよび原子状酸素と接触させるこ
とを含む。ボトムセルを含む光起電力装置も提供される。 およびケステライトベースのボトム
セル上のペロブスカイトベースの上部セルを含む。 ペロブスカイトベースの上部セルは、TCO
から形成された上部電極を含む。


ということで今夜は2件のみ掲載。




【五坐踏破計画 2017】

  ● 焼岳へGO!

日本列島を異常降雨で混乱の内にあり計画変更は必定。そこにきて、作業量の多さのため「宅ト
レ」も2
日間さぼっている。これではいけないとリックを背負い30分間最大毎時4キロ、最大
斜度10%で模擬登
山トレッキングを行う。結構な負荷だと実感する。話はそれるが、携帯電話
で、知人や親戚に入れ罹災の海
を確認する(通話料金が心配だ)。大阪で宅配をしている知人は
淀川水位が危険だ
いう連絡があり、ダムの放流許容量が問題があるねというと、ラジオ状況放送
されているという返事。それからし
ばらくして京都の日吉ダムの放水量を上げたことをテレビ放
送されていた。「人為的温暖禍」(地球の金星化)であることはすでに想定済み。大量の雨で地
中内部での浸食/地質形状による流出差により、密度が急速に低下しスカスカ状態が進行してい
るはず。「嵐(動乱)の時代」であり「混沌」が引き寄せているのだが、何が/
誰が?!

  ● あの日の一曲
Santana ” Europa

米国のラテン・ロック・バンド、サンタナの曲。アルバム「アミーゴ」(1976年)に収録。日本独
のシングルとして発売されヒットした。原題《Europa (Earth's Cry Heaven's Smile)》。


 

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