如月に芽吹くほどの日差しなき 庵のきみと待つ猫柳
百年に一度の津波(大不況)だが、定年前の半導体・電子精密機器製
造装置メーカの職場経験でいえば00~06年間の活況は前例がない。
同僚や後輩または協力企業の仲間には「二度と経験出来ない活況」だ
といっていたほどだから、この米国発金融危機がなかったとしても景気
後退局面。住宅資本主義・金融弛緩合併型バブルが弾けることが予見
出来ていただけに事態は深刻だ(成長産業の不況というパラドックスを
理解できるエコノミストは皆無)。
米国の投資家ジム・ロジャーズは1月21日「もう英ポンドは終わりだ。
ポンド建て資産は、すぐに全て売った方が良い。ポンドを支えてきた北
海油田とロンドンの金融界だったが、今やそれすらも枯渇し、もはや
英国は売るものが何もない」と言うほどで、EU、中国、中近東等の情
勢も楽観が許されないほどの「恐慌前夜」を呈している。彼はまた、昨
年10月に「米国長期国債が‘最後のバブル’になり、金融市場は将来
を先見し、市場は為替の混乱や高インフレ、高金利、恐らく貿易戦争
を予想しているのだろう。こうした予想に基づいて市場は下降している
のである。そのほかの理由で下落しているのではない」 とも発言して
いる。
■
断念ながら、この手合いの世界経済の臨床外科医の見識(国内で言
うと長谷川慶太郎ら)は皮相的であり得ても、実体的で本質的な切開
とは関わりがない。1%の富裕層がGDP20%の富を独占する時に
1929年に恐慌が起きた様に、所得格差(富の偏在)を源泉として情
報と金融の歪みが、バブルとモラルハザードを伴い当該或いは関係
地域諸国乃至は世界的に政治経済を不安定化させ、すさまじいデフ
レーションや信用収縮という政治経済活動のCPA(cardio pulmonary
arrest)、即ち、心肺停止状態期に入ったとするのがわかりのいい見
識であろう。それでは、その応急処置や処方箋となると当該政府(国
家共同体)により異なるが、週刊エコノミストの今年度2月3日号『日
本経済処方箋-ケインズ政策は有効か』からアプローチしてみる。
寒中に淡い日差しを受けて光り 冬枯れの野に立つねこやなぎ
■
①さらば新自由主義⇒先ず、君子豹変した中谷巌は、「霞ヶ関」
の中央官庁を一気に3分の1程度に縮小し、生活関連行政サービ
スはすべて地方に任せるようにすることと「貧困大国」化した日
本社会を立て直すために「還付金付き消費税増税」を含む税制改
革と所得再配分。②構造改革継続⇒小泉純一郎の懐刀の竹中平蔵
は埋蔵金の活用を含め緊縮財政から増税転換で「日本の成長力」
を高める経済政策。③脱米国依存⇒原田泰(ゆたか)は中古住宅
売買できる環境整備で内需型経済への脱皮を。④財政支出の是正
⇒伊藤隆敏は農業・環境・医療・環境の成長分野に限定した財政
出動を提案。⑤企業の流動性不安解消⇒田中直樹は中央銀行の資
金注入と「民間」への成長支援(例、COW:coalition of the willing )
と財政再建の組み合わせを。⑥借金拒絶症の克服⇒リチャード・
クーは金融政策は効果がなく政府による資金支出。⑦将来不安の
解消⇒神野直彦は失業者を再生訓練して産業構造の転換に結びつ
ける新しい能力開発型社会保障(workfare)を。⑧5つの提案⇒
橘木俊詔は同一労働・同一賃金の条件でワークシェアリングの導入
(柔軟な運営には横断的な労働者同士の意志決定⇒政治介入排除
の原則)。⑨最後に、ほどほどに稼ぐ社会⇒森永卓郎は新しいパ
ラダイムを江戸時代に求めて新鎖国政策を提案している。
【O/L】ワークウェアとはなにか
※比嘉宗平『ワークフェア政策の射程』
※小林勇人『初期ワークフェア構想の帰結』
※神野直彦『日本経済新聞教室 自然災害と日本 下』
大地の上を歩く人間の生活は本来、分散的に散在する。ところ
が、「ケインズ的福祉国家」のもとで、生産機能が中枢管理機
能を頂点にしてピラミッド状に空間配置されてしまうと、生産機
能が生活機能の「磁場」となり、生活機能もピラミッド状に集中
する。市場経済のグローバル化とともに「ケインズ的福祉国家」
が行き詰まると、新自由主義を背景にした集権的地方主義(
Central localism)の立場から、集権的な意思決定に基づく、多
極分散型の国土づくりが叫ばれる。だが、こうした集権的地方
主義は、公的意思決定の多極分散化なしには「ケインズ的福
祉国家」を克服できず、安全面でももろいことを見忘れている。
一方、情報・知識産業を軸とする産業構造への転換を前提とし
た「シュンペーター的ワークフェア国家」では、情報や知識を発
信できる人間を集めることが重要となる。教育・研究などの人
的投資とともに、生活の安全や高次の快適性を満たす生活機
能支援サービスが、供給サイドの生産機能支援サービスにも
なる。そうした公共サービスを、地方政府が主体的に供給する
ことになる。(↓)
朝に来てテーブルに見るねこやなぎ 何を思おてつぼみ膨らむ
(→)つまり、「ケインズ的福祉国家」では、集中化する生産機能
が生活機能の「磁場」になったのに対して、「シュンペーター的ワ
ークフェア国家」では、安全面も考慮して多極分散する生活機能
が、生産機能の「磁場」となる。こうした「シュンペーター的ワーク
フェア国家」は公的な意思決定の多極分散なしには実現しえな
い。多極分散は、地域経済の多極分散的な発展を可能にするだ
けではないのである。「危機」の「危」は「あやうい」を意味し、「機」
とは「変化の可能性」を意味する。天災など予知しがたい「危機」
の可能性に対応するためにも、公的意思決定の多極分散が、
今こそ必要になっている。
神野直彦『日本経済新聞教室 自然災害と日本 下』
【解答】概ね、この九つの提言に集約可能と判断。個別に加筆する
と①の第一課題は中央官僚との戦いとなるので現政府では不可。寧
ろ第二の消費税は、‘底抜け状態’から‘未来志向’に脱するため
の大前提。増額幅の多寡は二義的で『三年後実施』を明確化。②は
①の第一課題の実施計画とするが、成長力を高めるための社会保障
制度の充実(ナショナル・ミニマムの拡大・引き上げ)と併行に法
人・事業税の引下げ(ナショナル・マキシマムとして20%以下に
引下げ)。③は住宅を未来共有社会型住宅整備(要ナショナル・ミ
ディアムの定義)とする。④は②と重複するので要調整。⑤は成長
産業育成実行計画とする、⑥単独政策として発効させないこと。⑦
新しい創造的社会保障の調査研究後、即実行課題とする。⑧は現行
組織で実行部隊を編成。⑨は①と重複調整し、対外的には贈与経済
を充実し、敵対的貿易を抑制することとする。ざっと、整理すると
この様になるが、要は(1)成長戦略と(2)安定戦略の包括推進が前提。
どちらかを欠いた片翼政策は認められないということに尽きる。
逢えぬまま 想いふくらむ ねこやなぎ 耐えて芽をふく 如月の頃. 三太夫
ネコヤナギ(猫柳、学名:Salix gracilistyla)はヤナギ科ヤナギ属の落
葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、
ヤナギの一種である。学名の語源は、水辺に多いのでケルト語のsal
(近い)+lis(水)や、成長が早いのでラテン語の salire(跳ぶ)に
由来など多数の説がある。別名: かわやなぎ(川柳)、えのころ
やなぎ(狗尾柳)英名:Willow、原産地:北東アジア、花期:3~
4月、花言葉は「自由」「親切」。早春に川辺で穂の出る姿は美し
いものである。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせるこ
とから、春の訪れを告げる植物とみなされる。他のヤナギ類よりも
水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根本からも枝を出
し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。葉は細い楕
円形でつやがない。初夏には綿毛につつまれた種子を飛ばす。「ネ
コヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。花穂は
生け花にもよく用いられる。ネコヤナギの樹液もカブトムシやクワ
ガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。老々介護に派遣切
り、大不況の波は我が家も例外でない。もうすぐ2月だというのに
家の中は暗い。せめて猫柳の芽吹く瞬間を持ち望む気持ちを歌に託
した。
【付録】驚くべき柳の薬理作用
日本でお茶として飲まれているヤナギは、キヌヤナ ギ(桃山時代に
朝鮮から伝来・京都に特に多い)とネコヤナギ。若葉を茶として使
用。風邪の予防にヤナギのお茶が飲まれます。和歌山県の有田地方
では、カワヤナギの新芽をお茶にしています。岡山県赤磐市山陽町
でも、同一の慣習が伝承されてる。風邪をひいたときに柳の皮を煎
じて飲むと即効きます。柳のお茶を始終飲んでいると風邪をひかな
い。市販されているヤナギのお茶は1種類のみ。「糖尿病茶」として
販売、㈱神茶園(広島県福山市、電話0849-45-8245)の「青銭神茶」
は、「中国揚子江流域の人々が飲む青銭柳を主原料」。パンフには、
「中国揚子江流域の人々が飲む青銭柳を主原料」と書かれている。
青銭柳の葉の形状はアカメヤナギに似ている。青銭柳の原産地は中
国一の長寿村。青銭柳茶の主原料「青銭柳」は中国の江西省、修水
県一帯で収穫されている。中国でもこの地の揚子江流域の山岳部し
か見られない。この青銭柳は柳の一種。落葉樹で、成長すると高さ
は、25m以上になる。葉は、長さ4cm~12cm、幅は2cm~5cm。形
状が昔の中国の細長い銅銭に似ていることからこのような名前がつ
いたといわれる。6月から7月にかけて村人たちによってこの木の若
葉が収穫される。この地域一帯では、古くからこの葉を煎じてお茶
として飲用。近年このお茶が世界の注目を浴びるようになった。
1990年江西省、修水県(人口73万人)の平均寿命が73歳と中国国内平
均よりかなり高く、しかも90歳以上の人口比率も中国国内で最も高
いことなどが注目された。平均寿命は日本と比較すると低いが、乳
幼児の死亡率が日本より高いので、成人の健康だけを比較すると特
筆すべき点がいくつもある。しかも糖尿病の発生率も中国全土で最
も低く、10万人分の6人で、日本の発生率、10万人分の570人と比較
しても100分の1の発生率。合わせて、高血圧、肥満の人はほとんど
みられず、村人たちのほとんどの方がスリム。近年になり中国は国
家をあげて、この医学的解明に取り組み始め、その主な原因を青銭
柳にあると認めた。青銭柳茶の効果の原因はその主成分である青銭
柳の表皮、葉に含まれているアスピリンの成分であるサリシンによ
るもので、サリシンは柳の葉から抽出して作られた薬だ。
MW = 286.281 g/mol = C13H18O7
※サリシン (Salicin) は、D-グルコースを含むアルコール性
のβ-グリコシドである。サリチルアルコールをアグリコンとする。サリ
シンはすべてのヤナギの樹皮で産生する非炎症性のグリコシドであ
る。サリシンは、アスピリンと化学的に大きな関係を持っており、人体
においては鎮痛剤としてとてもよく似た効果を与える。服用するとサリ
チル酸に分解されるが、服用時にはキニーネのような苦味を感じる。