極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギーと環境 64

2024年11月28日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

湖東三山  西明寺 に対する画像結果 西明寺

【季語と短歌:11月29日】 

        払暁の星吾照らす冬日かな    

                  高山 宇 (赤鬼)

 

百済寺は1400年以上前の推古14年、聖徳太子より創建された近江国最古級
の寺院。像高2.6mの十一面観音を本尊とし御堂は百済の「龍雲寺」を模し
て創建され、開闘法要には高句麗僧恵慈を呪願とし、百済僧道欽や暦を伝
えた観勤も永く住した 名だたる人物の歴史舞台として、また天台別院と称
され、その後、鎌倉時代からは「天台別院」と称され、1300人が居住す
る巨大寺院となるが、惜しくも天正元年4月11日に信長の焼討ちに遭うが、
「坊跡遺構」や「千年菩提樹」をはじめ樹齢数百年の巨杉、山桜、椿群か
ら偲ぶことができ、近江の人々の信仰を集めてきた。


❤️ 酢玉ねぎの12大パワー



老友会のご婦人に「酢玉ねぎ12大パワー」のメモをご丁寧に頂きました
(有難う御座いました😊)。という訳で内容を再編集掲載し、実践させ
ていただきます。

(1)血液をサラサラにする:タマネギに含まれる硫化アリルには、血管
内で血液が固まるのを防ぐ、血液サラサラ効果があります。
加えて、酢に
も血液がネバネバになるのを防ぐ効果があるので、
血液の循環をよくする
最強の組み合わせといえます。

(2)血液を正常化する:玉ねぎの硫化アリルと酢の血液サラサラ効果に
より、
動脈硬化が改善して、血管壁の弾力性が回復します。血管が広がり、
血流がよくなるので、血圧を下げる効果が期待できます。
(3)血糖値をコントロールする:タマネギに含まれる硫化アリルやケル
セチンには、血液中の余分な糖質や脂質を減らす働きがあります。さらに
タマネギの食物繊維が、食後の血糖値の上昇を抑制してくれるので、血糖
値のコントロールに役立ちます。
(4)
コレステロールや中性脂肪を減らすタマネギと酢には、どちらも
内の余分な脂質(コレステロール、中性脂肪など)を減らす働き
があります。
(5)新陳代謝・スタミナアップ:酢に含まれるクエン酸の作用で、新陳
代謝が活発
になります。加えて、タマネギの硫化アリルは、特に筋肉細胞
において、糖がエネルギーに変わるときに必要なビタミンB1の吸収を高
め、その働きをよくします。ビタミンB1が豊富な食材(豚肉など)と一
緒に取ることで、体細胞の新陳代謝がより活発になり、スタミナもアップ
します。
(6)腸内環境をよくする:タマネギに豊富に含まれるオリゴ糖が、腸内
の善玉菌であるビフィズス菌を増やし、腸内環境を改善します。腸管ホル
モン『インクレチン』の増加
が期待できます。(「糖尿病・高血圧・耳鳴
りに…!やっぱりすごい『酢
玉ねぎの12大パワー
!』)😊
(おまけ!)
ナッツを毎日食べることで、健康な年を延ばせる
毎日のナッツの摂取は健康寿命を延ばします
【関連論文】
Title:  Nut consumption and disability-free survival in community-
   dwelling older adults: a prospective cohort study,
Report:Age and Ageing, Volume 53, Issue 11, November 2024, afae239
,https://doi.org/10.1093/ageing/afae239




✳️ 
事例から学ぶ、ドローンの事故原因と安全対策

ここ数年で世界的に広く普及したドローン、普及するにつれてドローンに
よる事故にもますます注意が必要。周囲の人や建物に迷惑をかけず、そ
して自分の大切な機体を長く使うためにも、安全対策を押さえておくこと
はドローンの操縦者にとっては必要不可欠。
🪄ドローン事故の原因は?墜落を未然に防ぐための対策を紹介(2023.10.06)



✳️ 中国2025年 石炭火力発電のピーク?
中国のエネルギー転換は今、重要な瞬間を迎えており、課題が続く中、希
望の兆しが見え始めています。エネルギーとクリーンエア研究センター(C
REA)は、国際エネルギー移行学会(ISETS)と共同で、2024年の国の進捗状
況を評価する年次報告書本日発表した。注目すべき調査結果は、中国が
石炭消費を2025年までにピークアウトする可能性が高いという専門家のコ
ンセンサスが高まっていることで、これは脱炭素化への道のりにおける重
要な節目となる。

気候とエネルギー分野の専門家44人を対象にした調査では、現在52%が
2025年までに中国の石炭消費がピークに達すると考えている。これは2022
年のわずか15%から急増している。同様に、中国の二酸化炭素(CO2)排
出量全体がすでにピークに達している
、または2025年までにピークに達す
ると考える人の割合は、2022年の15%から2024年には44%に増加している。
この楽観的な見方の高まりは、再生可能エネルギーの驚異的な成長と、特
定のセクターにおける化石燃料への投資を削減するための的を絞った取り
組みの組み合わせを反映している。

ISETSのXunpeng Shi会長は「中国のような急速な成長経済でカーボンニュ
ートラルを達成することは容易なことではないが、同国の多大な努力が実
を結び始めている」と述べた。「クリーンエネルギー産業は、経済成長の
主要な推進力として浮上。中国が移行を続けるにつれて、そのメリットは
ますます明らかになり、クリーンエネルギーの展開拡大と進行中の産業変
革は、さらに大きな利点を約束する。この進歩は、脱炭素化を加速し、す
べての人の長期的な繁栄を確保のため、将来に対する楽観的な見方をして
いる。」

中国カーボンニュートラル2060

✳️ 
SiCパワー半導体の大幅な性能改善
Si(シリコン)を中心とした半導体は、計算機や通信機のロジックやメモ
リに代表される情報処理用途に限らず、電気自動車や電車のモーター制御、
変圧器や直流-交流変換器などいわゆる電力制御(パワーエレクトロニクス)
にも広く用いられている。ただ後者の応用では、制御回路の消費電力(電
力損失)が大きな問題となっており、低損失化を目指して、Siよりも基本
特性の優れるSiC(シリコンカーバイド)によるトランジスタ開発が近年活
発になっている。2020年7月にデビューした新幹線の最新モデルN700Sに
もSiCパワー半導体が用いられるなど、既に実用化が始まっている。

ルチル型GeO2で「世界初」半導体デバイスの動作確認
11月27日、r-GeO2(ルチル型二酸化ゲルマニウム)単結晶薄膜上にショッ
トキーバリアダイオード(SBD)を形成し、その動作を確認したと発表。
r-GeO2で実現された「世界で初めて」(同社)の半導体デバイスのこと。

(EETIMES.JAPAN)

Patentixは、二酸化ゲルマニウム(GeO2)の社会実装に向けた研究開発
を進める立命館大学発のスタートアップだ。次世代パワー半導体の材料と
して、現在バンドギャップが3.3eVと広いSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化
ガリウム)の普及が進んでいるが、GeO2は、バンドギャップが4.6eVとさ
らに広い
。また、r-GeO2と同程度のバンドギャップを持つ半導体として、
酸化ガリウム(Ga2O3)の研究の研究も進んでいるが、同社は「r-GeO2
Ga2O3では困難とされる不純物ドーピングによるP型の発現が理論的に予
測されていて、より幅広いデバイス応用が期待される」と説明。

試作したSBDの構造

今回の成果は、Patentixと物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究による
ものだ。Patentixは絶縁性TiO2(酸化チタン)基板状にN+のr-GeO2単結
晶膜を成膜し、その上に1×1017cm-3程度のドナー不純物を導入したN-
層のr-GeO2単結晶を成膜した。続いてNIMSがN-層をドライエッチング
してN+層を露出させ、電極を成膜/形成することで疑似縦型構造のSBD
を形成し、その電流電圧特性を評価した。今回の成果から、デバイスは疑
似縦型構造だが、次に縦型構造のSBDの実現を目指す。結晶膜の高品質化
や半導体デバイスの応用を広げる上で必須のP型の実現も引き続き取り組
んでいく。

    懐かしのロマン歌謡楽曲 『五輪真弓: 一葉舟 』 
                 1979年11月18日



人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
---------------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第10回
✳️「都合のいい」遺伝子の書き換えが可能に
たとえばiPS細胞による再生医療やゲノム編集技術によって、病気がすべ
てなくなったら、人間は不老不死が可能になるかといえば、老衰は間違い
なく起こるでしょう。今のところ、生きることができるのは、細胞の寿命
である120歳くらいと山中氏が話す。血液を作る細胞である造血幹細胞が
骨髄にあります。生まれた時は確か一万個くらいと少ないん。造血幹細胞
自体はあまり増えないが、分化する途中に前駆細胞を作り出して、その子
たちが急激に増えて赤血球や白血球、血小板になって、どんどん入れ替わ
っている。ただ、造血幹細胞も時々は分裂しなければいけない。分裂して
いると、遺伝子に傷が入ったり、寿命で死んだりしていくものもある。だ
から造血幹細胞はだんだん減っていく。百歳くらいの人を調べたら、造血
幹細胞が2個しかないその2個がすべてで、何もせずにゼロになったら、
間違いなく終わりです。それが老衰による死です。でも、そこで骨髄移植
をすれば、移植された造血幹細胞が血液をつくりだすようになります。心
臓も基本的には生まれたままの細胞がずっと残っていますから、生まれて
100年以上経てば、やがて心不全になります。ただ、これも心臓移植をす
ることができます。足が弱っても、人工関節などの技術が今は進んでいま
す。
あとは脳。脳も基本的に生まれたままで、脳細胞は滅多に増えない。
でも脳を入れ替えてしまうと、その人がいったい誰なのかわからなくなる

だから、決め手になるのは脳じゃないでしょうか。そこまでやるか、とい
う話。でも脳以外は、超大金持ちがお金にモノを言わせて臓器や細胞など
の移植を続ければ、理論的には更新できる一方で、臓器移植をするには、
拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を投与する必要がある。これには副作
用があるので、免疫抑制剤によって健康が損なわれてしまう可能性がある。
基本的に老化によって造血幹細胞がどんどん減って、脳も間違いなく衰え
てだめになるので、そう考えると、やっぱりヒトの寿命は120歳くらいが
限界なのではないか、人間にしても、よくこんな精妙なものができたなと
思と。
ゲノムを解読して、この人は将来、必ず病気になるとわかったら、ゲノム
編集によってあらかじめ治すことはできるのかと羽生氏。
これに対し、「単一遺伝子疾患」といって、それが一個の遺伝子で起こる
ものだったら、治すことは可能。ハンチントン舞踏病などがそれに当たり
複数でも2個の遺伝子ならば、まだ何とかなるかもしれないが、3つ4つ5つ、
10個と多因性疾患になってきたら、なかなか今の技術では難しいと。それ
が一個の遺伝子のせいならば、それを治すことで、女性たちの意識がまっ
たく変わってきたとも話す。

◾死ぬのが怖くなる
深刻なのは、「あなたは病気になる可能性の高い遺伝子を持っています。
でもどうすることもできません」という場合。その場合に、その事実を
本人が知ること自体が、本当にその人の人生にとってプラスなのかどうか
が問われる。家族性アルツハイマー病の原因となる遺伝子はいくつか特定
されています。でも現状では「遺伝子を検査したら、あなたはかなりの確
率でアルツハイマー病になることがわかった。ただ、現代の医療技術では
どうすることもできません」としか言えない。ただし、この場合は、本人
が事実を知ることで自分の人生を設計できるメリットがあり、50歳くらい
で発症する確率が高いなら、それまでにやりたいことをするとか、家族の
ために何か残しておくとかいろいろ考えられます。そのほうが本人の人生
にとってプラスになる可能性がある。アルツハイマー病も含めて認知症は
世界で急増。2050年には今の3倍の1億3千万人になるという予測がある。
誰にとっても切実な問題。別の見方をすると、それまで抱えてきた人生の
悩みとか怒りを全部忘れて穏やかな日々を過ごしているお年寄りもいる。 
たとえば、認知症の特効薬ができて、100歳になって体が衰えてきても、
頭だけははっきりしていると、死ぬのが怖くなって逆に大変かもしれない

認知症は、死の恐怖に対する人間の一つの防衛手段ではと。   つづく
今日の言葉:     

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ⑥

しかしながら、こうした「差別」や「差異」の問題は、何度かにわたる
アメリカでの特段の例をのぞけは、一国の民主主義システムによって乗り
切れるというほうがめずらしい。「差別」や「差異」は、むしろ小さな領
域や隣接しあう領域にこそ、発生しやすいものなのである。こうして問題
はさらに複雑な様相を呈することになる。
国家には、一人ひとりの「生存の問題」というものが先行している。生存
の権利は個人に発生し、これを王権国家も民主主義国家も、何をあとまわ
しにしても優先して守るという義務をもっている。

だから民主主義もまた、つねに個人を救えるものとなっていなければなら
ないのだが、そこに「少数者は多数決のなかでは選択に漏れる」という多
数決の原理が重なると、事情はとたんに複雑になる。いったい少数者の「
尊厳」はどこで保証されているのかということになる。

これは、今日ふうにいえばいわゆる「アイデンティティ」の問題が足元に
絡んできたということである。社会学的にいえば「所属」や「帰属」の問
題だ。

では、どうしたら「差異の多様性」と「帰属の多様性」の両方に対処でき
るような民主主義が持ち-出せるのか。そんな名案はどこにもなかったのだ
が、現実的には二つの提案がなされていったとみなすことができる。

ひとつは「分離の民主主義」である。すでに20世紀前半、ユダヤ人のシ
オニズム
、アフリカ系アメリカ人に「分離の民主主義」はあらわれてきて
いた。もうひとつは「連合民主主義」や「多極共存型民主主義」(conso-
ciatinal democrascy)といわれるもので、一言でいえば「差異の民主主義」
であり、「ネットワークする民主主義」である。この用語-はオランダの政
治学者レイプハルトが提案した。

分離するか、ネットワークするか。この選択は民主主義にとってはあまり
の難問である。仮に分離を選べば、「差異」はたちまち過激なものになる
可能性がある。イスラエルとパレスチナの関係やインドとパキスタンの関
係がそういうふうになっている。さらに分離していけば、イスラム過激
派の自爆テロがそうであるのだが、自爆者たちは“アラーの神の民主主義”
のほうを選んだことになる。

ネットワークを選べばどうなるか。そこには隠れたネットワークが生じる
可能性がある。そして、そこでも実は分離者たちが与えられた多数決民主
主義を壊していく運動が派生しかねない。つまり「少数者の見解」とは、
また「差異の民主主義」というものは、とんでもなく深いものをもってい
るわけなのだ。

こうして難問はいよいよデッドロックにさしかかる。そこにさらに加わっ
てきたのがナショナリズムとポピュリズムの問題だった。

近代の民主主義が選んだもの、それは第1には国民国家であり、第2には
共和政で、第3には議会制民主主義の確立である。ここに資本主義と社会
主義がすばやく交差して、のちにファシズムや国連主義がかぶさった。
では、これだけで民主主義の歯車が作動したり制御されていたのかといえ
ば、そんなことはない。これらの奥には、実は長期型と短期型の二つの“熱
情”がひそんでいた。長期型のものはナショナリズムである。短期型のもの
はポピュリズムだった。いわば“人気”(にんき・ひとけ)というものを、
民族の奥から感じあっていくナショナリズムと、投票などの集計で勝ちと
っていくポピュリズムだ。いずれも民主主義を装うことができた。そして、
人々に「右か左か」を問い、煽るのにも適していた。
ナショナリズムは民族や部族にひそむエトニーやエトノス(民族的なるも
の)が社会に向かって立ち上がり、多くの共感を呼びながら胎動する。そ
れをアントニー・スミスのように近代以前からの動向とみなす学者もいれ
ば、ベネディクト・アンダーソン(821夜)のように近代以降のフィク
ショナルな「想像の共同体」だとみなす学者もいるが、大筋の定義として
はエルネスト・ゲルナーによる「ナショナリズムは国家と民族の一致を要
求する思想である」という見方が通っている。

が、現代社会にとってのナショナリズムの問題は、ナショナリズムそのも
のにあるのではないとも言わなければならない。問題は、ナショナリズム
の動向が保守主義と合体したり、急進主義と重なっていったとき、そこに
民主主義の楔(くさび)を打ち込むことが難しくなっていくことにある。
ナショナリズムは右にも左にも動くのだ。小熊英二(774夜)は『民主
と愛国』で、戦前の日本のナショナリズムは戦後のある時期までむしろ左
翼が積極的にコミットしていたことを証した。

ナショナリズムにはまた、いくつかの派生特色があった。二つだけあげて
おくが、ひとつは、ナショナリズムはつねに国際主義(コスモポリタニズ
ム・インターナショナリズム)と対決し、根無しの国際主義こそ「民主」
を狂わせるものだと指摘する方向をもったことだ。もうひとつは、ナショ
ナリズムはときに人種主義(racism)にも傾いて、かつてならゴビノーの
優生学や、ナチスの反ユダヤ主義や、黄禍論(イエローペリル=黄色人種
批判)となり、それがアパルトヘイト政策にも、最近では反日ナショナリ
ズムにもなっていく方向をもったことである。

ポピュリズムとは何なのか。現在ではポピュリズムは「人気取りの政治」
に結びつけられることが多いけれど、政治的な意味でのポピュリズムは、
もともと19世紀末のアメリカで「人民党」(ポピュリスト)と名のった
政治運動に起源をもっていた。アメリカ西部や南部の農民を支援者とした
もので、二大政党に収まらない新たな政治を要求するために生まれた。
アメリカの政党史では画期的なものであったのだが、やがてこれを民主党
が吸収し、“西部のライオン”の異名をとったW・J・ブライアンらによっ
て東部エスタブリッシュメントの攻撃部隊をつくりあげた。そこには異様
な進化論批判などもまじっていて、アメリカのファンダメンタリズム(原
理主義)ともつながった。

しかしポピュリズムには、資本主義社会を勝ち抜くことを積極的に肯定し、
とくに独立自営者たちに共感を示すところがあったため、そのプロパガン
ダ性がマスメディアに乗りやすく、つながりやすく、そういうせいもあっ
て、やがてポピュリズムはそのイデオロギーの如何にかかわりなくメディ
ア政治化
し、「ポピュラー民主主義」ともいうべき大きな力を発揮した。
この勢いに80年代になって結びついたのが、新自由主義の「市場原理主
義」と「民営化」路線であり、それを最大限に活用したレーガンだった。
日本ではお粗末すぎてはいたが、小泉内閣がこれを利用した。これらがポ
ピュリズムそのものであったことは、小泉劇場政治にも顕著であろう。

かくて新自由主義的ポピュリズムはケインズ型の福祉国家のヴィジョンの
不備を突くという大きなムーブメントをつくりあげ、公的領域を狭くして
「官から民へ」を推進しさえすれば、「市場の拡大」はそのまま「自由の
拡張」になるだろうという幻想をふりまいていったのだ。これを極端に強
化していくために援用されたのがフリードマンの経済学と、そしてマネー
ゲーム
をレバレッジ型に増長させる金融工学
だったわけである。
                              つづく

🪄これが「毒饅頭」と「リーマンショック」、「福知山線脱線事故」、
「3・11福島第一原発事故」として絡んでいくと、わたしの記憶に残って
いる。数え上げれば切りがなさそうだ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 63

2024年11月28日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

 西明寺

【季語と短歌:11月28日】 

        払暁の星吾照らす冬日かな    

                  高山 宇 (赤鬼)



🪄鈴鹿山脈の西山腹に位置する金剛輪寺は、寺伝によれば聖武天皇勅願
奈良時代の僧・行基の開創とされ、創建は737年(
または741年)と伝わ
る。その後、平安時代前期の嘉承年間(848年 - 851年)に天台宗の僧・
(慈覚大師)により再興されたと伝え中興の祖とされる。1573年織田
信長
の兵火で湖東三山の1つである百済寺は全焼し、金剛輪寺も被害を受け
るが、現存の本堂、三重塔は焼失をまぬがれた。当寺の本堂をはじめとす
る中心堂宇は総門や本坊のある地点から数百メートルの石段を上ったはる
か奥にある。湖東三山は、西明寺、金剛輪寺、百済寺の三つの天台宗寺院
の総称である。次回は百済寺。


✳️ 東レが尿素の除去性能2倍の水処理膜
東レは、尿素の除去性を従来の2倍に高めた水処理膜を開発した。半導体製
造工程では不純物が限りなくゼロに近い「超純水」が大量に必要となる。
将来的な水不足に対して半導体製造工程で下廃水再生水の活用が求められ
る中、新開発の高除去・低圧逆浸透(RO)膜を用いると、除去が難しかっ
た尿素を90%近く除去でき、超純水の安定供給に貢献する。
半導体メーカー
は工場で大量の超純水を使うに当たり、工場内廃水の再利用率を高めてい
る。加えて半導体製造に用いる超純水の水源として、現状の水道水に代わ
る下廃水再生水の活用や海水の利用拡大を検討している。ただし、それら
を活用するには塩分やシリカやホウ素、尿素などを除去する必要がある。

中でも尿素は、水の中に含まれていると加水分解によってアンモニアガス
を発生させ、半導体製造において光阻害を起こして難溶で異常な層を基板
上に形成する恐れがある。そのため高いレベルでの除去が求められている
が、尿素は粒子のサイズが小さい上、電気的中性の分子で電気的相互作用
でも分離できず、除去の難度が高い。 東レはRO膜の性能向上に向けて、
穴径分布の設計に注力した。具体的には、RO膜の表面構造の詳細な観察と、
除去性能の核となる1nmよりも小さい穴の構造を可視化する分析技術を活
。分布を均一にすることで、「低い圧力での透水性と尿素の除去性能を
両立させた」。
同社は同技術を採用した「TBW-XHRシリーズ」を2024年1
1月から国内水処理エンジニアリング会社向けに販売し、2025年以降の工
場への実装を計画している。今後は他分野でも展開する考え。同
社の中期
経営計画では、RO膜の売り上げが年率5%で成長とすると予想。2025年度
にはグローバルシェア1位の実現を目標に掲げている。木村氏は「今回の
開発品が中期経営計画に与える影響は極めて限定的」としつつも、同計画
が前倒しで進んでいると明らかにした。「今後は世界的な水不足で半導体
用途に限らず需要は増えると考えている。
【関連特許技術】
1. 特開2023-149452 分離膜 東レ株式会社
【要約】下図1ごとく、本発明の分離膜は、緻密層とマクロボイド層とを有
すると共に第1および第2面を有し、緻密層およびマクロボイド層は同一の
非イオン性高分子を主成分として含有し、緻密層表面が前記第1面であり、
前記第1面において、開孔率は5%以下であり、平均孔径は0.3nm以上
3.0nm以下であり、マクロボイド層は、近似楕円の短径が15μm以
上であり、長軸が前記第1面と平行な方向との間に成す角度が80°以上
100°以下であり、長径と短径との比が4以上であるマクロボイドを有
する実用的な透水性を保持し、硬度成分、特に2価イオンの高除去性を有
すると共に、多糖等の中性分子の高除去性も有する分離膜を提供する。


【発明の効果】
本発明によると、実用的な透水性を保持し、硬度成分除去性に優れると共
に、中性分子除去性も有する  分離膜を得ることができる。
000003
【特許請求の範囲】
【請求項1】緻密層とマクロボイド層とを有する分離膜であって、
  前記緻密層およびマクロボイド層は同一の非イオン性高分子を主成分とし
て含有し、前記分離膜は第1面と第2面を有し、前記緻密層表面が前記第
1面であり、前記第1面において、開孔率は5%以下であり、平均孔径は
0.3nm以上3.0nm以下であり、前記マクロボイド層は、近似楕円
の短径が15μm以上であり、長軸が前記第1面と平行な方向との間に成す
角度が80°以上100°以下であり、長径と短径との比が4以上であるマ
クロボイドを有する分離膜。
【請求項2】前記非イオン性高分子は、ポリスルホン、ポリアクリロニト
リル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース、
ポリ塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種の高分子である、
請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】前記第1面における開孔率が1%以上3%以下であり、孔径
が0.3nm以上、1.0nm以下である請求項1または2に記載の分離
膜。
🪄詳細省略 しかし、これは想定以内であり、だから、企業の実践である
のだが、面倒くさく、辛いもの。当事者たちの努力の高みに敬服。

⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑭

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝④
【詳細説明】(完了)


✨ 
2025年,スピントロニクス世界市場規模は5,990億円
矢野経済研究所は,スピントロニクスデバイスの世界市場を調査し,カテ
ゴリー別の開発動向,将来展望を明らかにした。スピントロニクスは,電
子が持つ電荷(電気的性質)とスピン(磁気的性質)の両方の性質を利用
する技術分野である。スピントロニクスの物質の電気的特性と磁気的特性
の双方を制御することにより得られる新しい物理現象を利用した材料やデ
バイスにより,エレクトロニクスやマグネティクス,フォトニクスといっ
た電子・情報通信産業のイノベーションの創成が期待されている。

✳️ ペロブスカイト太陽電池向正孔回収材料開発
京都大学と九州大学は,ペロブスカイト太陽電池において,ペロブスカイ
ト層から効率的に正孔を取り出すテトラポッド型正孔回収単分子膜材料(
4PATTI-C3)を開発。


ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けては,高い光電変換効率の実現と
デバイスの耐久性の向上が求められている。
これまで,主にペロブスカイ
ト層の作製法の改良により,光電変換効率が向上してきた。その一方で
ロブスカイト層で光吸収により生成した電荷を選択的に取り出す電荷回収
材料の開発がさらなる特性向上のためのボトルネック課題となっている。
従来の材料では,各層間での電荷のもれを防ぐために100–200nm程度の
アモルファス性の厚い膜として用いられてきた。しかし,この材料自体が
厚いため光を吸収してしまい,ペロブスカイト層に届く光が減少し,取り
出せる電流密度が低下してしまう。また,この厚膜のモルフォロジー(形
態が)の安定性がデバイス自体の低い熱安定性の原因となっている。
さら
に,一般的に有機半導体の厚膜材料では電気伝導度が比較的低いため,p型
のドーパントやイオン性の添加剤を必要する。しかし,これらの添加剤の
高い吸湿性と各イオンのペロブスカイト層への遊泳がペロブスカイト層や
電極などへのダメージとなり,太陽電池デバイスの耐久性を低下させて
しまうという問題があった。

そこで研究グループは,ペロブスカイト層に対して上向きに張り出した極
性官能基をもつマルチポッド型正孔回収単分子膜材料(PATTI)を開発し,
太陽電池特性への効果について明らかにした。
まずπ共役骨格として,サ
ドル型を有するシクロオクタテトラエン骨格に四つのインドール骨格が縮
環したシクロオクタテトラインドール骨格(TTI)に着目し,アンカーと
してアルキルホスホン酸基(PA)を四つ導入したテトラポッド型4PATTI
-C3を設計および合成した。



4PATTI-C3の溶液から透明電極にスピンコートすることで,従来の単分子
膜材料と違って,ペロブスカイト前駆体溶液に対して濡れ性の高い単分子
膜が得られることを明らかにした。
このテトラポッド型4PATTI-C3の単分
子層を正孔回収層に用いた逆型ペロブスカイト太陽電池のミニセルおよび
ミニモジュールでそれぞれ21.7%および21.4%の光電変換効率を達成する
とともに,100時間の連続光照射後でも97%以上の出力を保つ高い耐久性
を実現した
研究グループは,この研究成果で太陽電池の開発分野に多大
なインパクトをもたらすとともに,その実用化を大きく加速できるものと
している。
【掲載論文】
タイトル:Tetrapodal Hole-Collecting Monolayer Materials Based on
Saddle-Like Cyclooctatetraene Core for Inverted Perovskite Solar Cells
(シクロオクタテトラエン骨格を用いたテトラポッド型正孔回収単分子膜
材料の開発)
掲 載 誌:Angewandte Chemie International Edition, (2024),
      DOI: doi.org/10.1002/anie.202412939

✳️ 
北大,水と光のみを用いたナノ結晶の作製 
7日、北海道大学の研究グループは,水と光のみを用いた水中結晶光合成
という新たに開発した手法により,銅と酸素の空孔を戦略的に添加ドーピ
ングすることでタングステン酸を用いた光学的臨界相を誘導できることを
明らかにした。

光応答性ナノ粒子を均一に分散させた材料は,太陽電池,光触媒など太陽
光を念頭に置いた持続可能なエネルギー利用やフォトニクスの応用に役立
っている。
しかし,従来の方法では紫外線と可視光までを利用するだけな
ので,太陽光の約40%以上を占める赤外域の光は未利用で,全太陽光をも
れなく利用するための光電変換効率が悪いなどの制約があった。研究グル
ープは,水と光を用いて作製する低環境負荷な新たなナノ材料合成法であ
る水中光合成(SPsC)を開発した。この手法を用いて,銅と酸素の空孔を
戦略的にドーピングすることで非化学量論的タングステン酸(WO3・H2O
)から光学臨界相を誘導できるようになった。これにより,ナノ結晶の合
成過程における欠陥の調節を行ない,広い範囲の太陽光スペクトルを利用
できる。

⓵具体的には,過酸化水素に溶かしたタングステン溶液中で銅元素の濃度
を変えながらドーピングすることで,非化学量論的タングステン酸の半導
体ナノ構造を作ることに成功した。作製した材料を用いたデバイスにより,
優れた光熱変換特性,光アシスト水蒸発特性,及び光電気化学特性を実証。
⓶次に,透過型電子顕微鏡を用いて原子構造解析(HRTEM)と電子線損
失分光(EELS)による誘電率,光吸収(係数)の評価を行ない,さらに,
密度汎関数理論に基づく第一原理計算と紫外線-可視光-近赤外分光分析に
よる吸光度の実測と比較検討した。
⓷これにより,この研究でカギとなる銅添加元素と酸素空孔の欠陥形成機
構を明らかにし,当該現象の光機能発現効果を解明することができた。
【展望】
研究グループは,作製した半導体デバイスは,特に近・中赤外光
域での優れた光電流,光吸収などの光特性を示すため,今後の全太陽光利
用のための光機能半導体・エネルギーデバイス材料開発として,ソーラー
エネルギーの持続可能な利用技術としての進展への寄与が期待されるとし
ている。

 

図1. ワンポットの光誘起水中光結晶合成法
(SPsC)により合成したナノ結晶

図2. 各種の光機能特性調査 
a) 疑似太陽光で照射したCux%- WO3・H2O (x = 0 - 5.8)の光熱変換特性
調査。銅元素1%と5%添加で光学的臨界相になり強い光吸収が起こっている。 
b) ステンレスメッシュ上のWO3・H2O、Cu1%- WO3・H2O、Cu3%- WO3・
H2OのIRランプによる赤外光水蒸発試験。Cu1%- WO3・H2Oで水蒸発が
最も早い。
c) Cu1%- WO3・H2O及び純WO3・H2O粉末試料の光電気化学性能試験
(光電子変換特性調査)。Cu1%- WO3・H2Oでは下向き矢印の光電流の
増加を示した。
【掲載論文】
論文名 Defect Driven Opto-Critical Phases Tuned for All-Solar Utilization
(全太陽光利用のために調節した欠陥導入による臨界相について) 
著者名 Melbert Jeem1, Ayaka Hayano2, Hiroto Miyashita2, Mahiro Nishimura2,
Kohei Fukuroi2, Hsueh-I Lin2, Lihua Zhang1, Seiichi Watanabe1(1北海道
大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター、
2北海道大学大学院工学院材料科学専攻) 
雑誌名 Advanced Materials 
DOI 10.1002/adma.202305494 
公表日 2023年7月29日(土)(オンライン公開)
 
🪄すごいですね。太陽光を百パーセント利用できる道筋ができました。再
 生エネルギー研究・工学チームの完全優勝が見えてきましたね。

               懐かしの晩秋の楽曲 恋人よ 五輪真弓』 1986年4月21日


 

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
-------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第10回
「都合のいい」遺伝子の書き換えが可能に
ゲノム編集の技術はずいぶん前からありましたが、技術的に非常に難しく
て効率が低く、しかも正確性にも欠けていた。それが2012年に「クリスパ
ー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」という新しい技術が開発されて、そ
の精度の高さと簡易さから一気に汎用性のある技術になりました。
クリス
パー・キャスナインの技術の根底にある「クリスパー」と呼ばれる遺伝子
配列を発見したのは、九州大学の石野良純先生。この技術はDNAの狙った
場所をピンポイントで編集することができます。だからDNA解析と編集の
技術を組み合わせると、理論的には自分たちの都合のいいように遺伝子を
書き換えることが可能になる。(山中)

◾「デザイナー・ベイビー」は許されるか
そうすると、「デザイナー・ベイビー」と言われる、遺伝子操作で親が望
むような外見や知能を持つ子を生み出すこともありうる?(羽生)

『ネイチャー』に掲載された2017年の論文では、遺伝子操作によって身長
を1cmくらい変えることができそうな遺伝子が24個報告されています。「
遺伝子ドーピング」[特定の遺伝子を筋肉細胞などに注入し、運動能力に
関わるタンパク質などを作る手法]によって筋肉量を増やした牛や魚は、
すでにつくられています。牛でつくることができるということは、理論的
には人間でもできます。それはどこまで許されるのか、人間の倫理が科学
技術に追いつけるかという問題ですね。2015年に中国の研究グループが、
ゲノム編集を用いてヒトの受精卵で遺伝子改変を試みた結果を発表した。
中国の研究は遺伝子改変を行った胚を女性の子宮に移植することはして
いないが、学術誌からマスメディアまでその是非をめぐって世界で大論争
になつた。アメリカもヒト受精卵のゲノム編集を条件付きで進めていくこ
とになっている。各国ごとに文化や歴史の違いがあって、世界で統一する
のはなかなか難しいんです。今のところ、受精卵を使った基本的な研究は
やるべきだろう、ただ実際にその受精卵から新しい生命をつくることは当
面はやめよう――というのが、多くの研究者のコンセンサスだと思いる。
日本はまだ、その辺りの議論が紛糾しています。生命科学の技術を使って、
なるべく「健康な子供」が生まれてくるようにすることは、先ほどのデザ
イナー・ベイビーと言われるような「強い子供」が生まれるようにするこ
とにとても近いんです。でも、まず基礎研究はやっていかなければ技術の
見極めもできない。とは言っても、やはりルールは必要で、どんな研究を
誰が、どこで、どんな目的でやっているか、透明性を高めることが大前提
です。その上で、ほぼ確実に遺伝する遺伝子疾患の予防目的といった厳格
な条件下で、少しずつやっていかなければダメじゃないかなと思っている。
データがある世界では、AIは人間の経験値を超える結果を生み出す可能性
がある。
ただ、それが絶対かと言われると、絶対ではないわけです。そのとき、先
ほども言った「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、
そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうか
が問われる。 理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論
なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあ
る。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけ
ない、やめてはいけないと思う。(山中)

❤️「いい加減なとこはあったほうがいい」
手探りで「次はどこに行こうかな」と、その場で何とかするケースがほと
んどです。もちろん、その都度ベストな選択を目指していますが、わかり
やすい答えを求めていくアプローチではないんです。100パーセント間違
いない、絶対にこれだ、という選択肢はないですね。読み筋が考えていた
通りの展開になることも滅多にありません。だから、けっこうその場しの
ぎです。
その決断は間違っているけれど、結果としては良かったというこ
とがある。たとえば悪手を指した結果、相手のミスを呼び込んで、予想外
の勝利となってしまう。では、その悪手を指したことは本当に良かったの
かどうか、という問題はありますけれど(笑)。まったく自分が予想して
いなかった状況になったときに、どうにかする。その力は数値化できない
ものだと思います。だから若干いい加減なところがあったほうがいいのか
もしれない。今の時代は環境がすごく整っているので、真面目にやってい
れば、あるところまでは猛スピードで突っ走ることができる。でも逆に言
えば、環境が整ってない時代だったらたどりつけなかった人も、たどりつ
けているとも言えます。

全体的なレベルや力が上がっている中で、これまでの知識の集積や環境の
有利さだけを考えていたのでは、他の人たちと差を付けることは難しくな
っていきます。そうすると、これまでとはまったく違うことをやらなけれ
ばいけないんじゃないか。それは多分、これをやったら必ずプラスになる
、必ずマイナスになる、といったものではなく、はっきり数値化できない
ことが重要なんじゃないかなと思っているんです。(羽生)。

🪄頭の中がこんがらがっていますが、なんとか根気よく読んでいこう。


今日の言葉:     「ラスト九年」に拍車がかかる昨今。「整理整頓第一
         主義」と「健康管理」に肝すえる。

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ⑤

もうひとつはサミュエル・ハンチントン(1083夜)が『文明の衝突』
で、今後の世界は主要国家の動向で語られるのではなく、西洋文明・儒教
文明・日本文明・イスラム文明・ヒンドゥ文明・スラブ文明・ラテンアメ
リカ文明・アフリカ文明の、8つの文明間の衝突や連携としてとらえるべ
きだというものである。そのような見方をとるには、市場やマクドナルド
やファッションのような流動的なものでなく、フォルトライン(断層線)
によって世界を見るべきだとした。 

この見方も、ハンチントンの主旨とはべつに、だからこそ中東の勝手に対
しては強硬に戦争を仕掛けるべきだというネオコン(ネオ保守主義)の宣
伝理論に使われることになる。
ところが、フクヤマやハンチントンの見方は、これを利用しようとする者
にとっては都合がよかったかもしれないが、そのような見方だけではとう
てい世界史の歩みは説明できないということが、しだいに露呈してきたの
だった。いちばんわかりやすいことであろうが、おそらくはいちばん複雑
な問題を孕んでいるのは、民族紛争と宗教戦争の多発によって、大きな事
の変更がおこったことである。フクヤマが歴史の最終形態だと言った自
由民主主義なんて、南米にも中東にも、コソヴォにもチェチェンにもクル
ドにも、まったく関係がなかったのである。また、「文明間の対立」はま
だまだおこりそうもなく(ハンチントンは儒教文明とイスラム文明が連合
して西洋文明に対決を迫るとも予想した)、むしろ「文明内の対立」のほ
うが吹き出してきたわけだった。  

このような予期せぬ事態の進行は、民主主義の基本原理をくつがえすもの
である。民主主義は「多数決の原理」によって、多数支配の法的な根拠を
提供しつづけてきたのであるが、またそれがいかに困難であっても、その
困難を“みんな”で克服することが民主主義の良質な努力であるというもの
であったはずなのだが、これがしだいに少数者(マイノリティ)や少数民
(エスニック・グループ)にはあてはまらなくなってきたからだ。そこ
には“みんな”はいないのだ。 

それでもそこへ強引に民主主義をあてはめようとすれば、そのマイノリテ
ィやエスニック・グループに干渉し、介入的な政策をとるしかない。それ
は民主主義の原則に反するから、そこでなんとか理由をつけて、最初にそ
こに吹き出した非民主的な出来事とその管理運用主体を、先制して潰して
しまうということになる。これがアメリカが仕掛けた「ブッシュの戦争」
の大半だった。チョムスキー(738夜)やサイード(902夜)がどう
しても許しがたいと立ち上がったことだ。民主主義が「少数者の問題」に
ぶちあたったことは、こうして民主主義の原理をゆるがせていったのであ
る。
すでに最初に書いておいたように、ぼくは小学校で手をあげて意見をのべ
ても、それが結局は多数決になることに納得がいかなかったわけであるが、
では、そもそもなぜ民主主義は多数決などという多数者支配を持ち出した
のか。それは一言でいえば、民主主義が「主権」を取り入れたからだった。  

ヨーロッパでは近世になると、国王が中世的な法のくびきで縛られること
を嫌って、国王の絶対性と永続性を認めさせるべく、最初は王権神授をつ
かい、ついでは王権が民権を掌握できることをつかって、主権の位置を確
定させることをつくりあげていた。トマス・ホッブス(944夜)の「リ
ヴァイアサン」の登場はそのころの議論の象徴である。
しかしその王権が分散したり崩れたり、ピューリタン革命やフランス革命
などで覆されたりすれば、では宙に浮いた主権はどうなるかという「主権
の行方」が取り沙汰されることになる(このあたりの事情は『世界と日本
のまちがい』に縷々書いておいた)。
このとき、ルソーやモンテスキューの社会契約説や法学説が颯爽と出てき
て、主権は「在民」していったのである。けれども主権在民とはいえ、そ
の主権、すなわち「民権」は、もはや国王のような絶対者の管轄にあるも
のではないのだから、その意思を決定するしくみが新たに必要だった。そ
こでフランス革命のときには「民会」のようなものが設定され、意思の正
当性を議決するという方法がとられ、そこで多数決のルールが確定してい
ったわけである。   
                (中略)  

多数支配の問題はいろいろの矛盾をかかえている。ひとつはよく知られて
いるように、ファシズムが多数支配と民主主義をトリッキーに演出して「
全体主義」を体現したということであるが、もうひとつはそれとも深い関
係があるけれど、「差別」や「差異」の問題が浮上してきたということに
ある。たとえば黒人問題、たとえば被差別部落問題、たとえばジェンダー
問題
、たとえばアパルトヘイト問題、たとえば信仰問題、たとえば少数言
語問題
である。現代民主主義はこれらの「少数問題」「マイノリティ問題」
を一挙にかかえることになる。  

それでも、アメリカは長らく楽観していた。なぜならアメリカはそもそもが
「移民」の国で(これについても『世界と日本のまちがい』で詳しく説明し
ておいた)、それゆえに建国以来の「多様のなかの統一」という理念があっ
たからである。
したがってアメリカは危機に陥るたびにこの理念を持ち出して、混乱を乗
り切ってきた。たとえば、ルーズベルトのニューディール政策にはさまざ
まな狙いがこめられていたけれど、そのひとつにはアメリカ内部の分裂し
かねない多様な少数者の統合をはたそうとした意図があったのだし、真珠
湾攻撃をきっかけに「リメンバー・パールハーバー」によって日本叩きを
組み立てたのも、9・11でブッシュが「ブッシュの戦争」を公然と始め
たのも、必ずそこには「多様のなかの統一」の理念が大活躍したものだった。

このような理念の実践をケネディ以来は(それを大々的に復権させたのは
ケネディだったから)、民主主義思想の議論では「多数派リベラル」のロ
ジックとも言っている。けれどもそのロジックの正体は、その時期ごとの
「アメリカン・デモクラシー」の代名詞だったのである(きっとオバマ大
統領もこのたびの未曾有の金融危機をこの理念の実践で乗り切るつもりで
あろう)。🪄さぁ、話は核心に切開する....          次回へ

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 61

2024年11月26日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

 

【季語と短歌:11月27日】 

        朝早く落ち葉時雨れる八高道    

                  高山 宇 (赤鬼)

✳️  ペロブスカイト太陽電池、40年に20GW導入目標
26日,経済産業省は軽くて曲げられる次世代の「ペロブスカイト太陽電池」
について、2040年に約20ギガワットを導入する目標を策定した。一般家
庭550万世帯分の電力供給力に相当する。年内に素案をまとめる新しいエ
ネルギー基本計画にも反映する。ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術。
建物の屋根や壁面のほか、窓ガラスのかわりに設置できると期待されてい
る。現行の太陽電池は、原料のシリコンを輸入に頼っているが、ペロブス
カイトの原料となるヨウ素は国内で産出できるため、経産省は海外への輸
出も視野に普及をめざす。  ペロブスカイトの開発をめぐっては、中国や
欧州でも競争が激化している。経産省は量産技術の確立や生産体制の整備
について、官民で連携して進める。


出所:次世代型太陽電池戦略(案)2024.11 次世代型太陽電池の導入
拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会


 

⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑬

 

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝⓷
【詳細説明】【0175】
  <測定方法>
  係る二次電池についての分析は、以下のようにして行うことができる。
【0176】
  (電極の取り出し)
  二次電池に含まれる電極について分析する場合には、二次電池を分解し
て電極を取り出す。電極をジメチルカーボネートで洗浄後、乾燥させるこ
とで測定用電極を得る。
【0177】  (第1結着剤量の測定)
  電極が含む第1結着剤の量は、以下のようにして測定できる。
【0178】 先に説明した洗浄及び乾燥を行うことにより得られた測定用
電極から活物質含有層を剥離し、予め質量を測定する。活物質含有層を、
N-メチルピロリドン(NMP)などの溶媒に分散し、第1結着剤を溶媒
中に溶解させる。沈殿した活物質及び導電剤等の不溶成分を濾別して回収
し、質量を測定する。活物質の質量と沈殿物の質量の差を、第1結着剤量
として測定できる。
【0179】  (FT-IR分析)
  電極の表面のフーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析は、以下のよう
にして行うことができる。
【0180】測定用電極を、ATR(Attenuated Total Reflection)法に
よるFT-IR分析に供する。FT-IR装置の例としては、BRUKE
R社製VERTEX70v/HYPERION3000またはこれと等価
な機能を有す
る装置を挙げることができる。分解能は4cm-1、積算回数は128回と
する。以上のようにして、電極表面の赤外吸収スペクトルを得られる。得
られた赤外吸収スペクトルから、電極がアクリル系樹脂を含むこと、及び
、電極が含むアクリル系樹脂の種類を特定できる。
【0181】
  例えば、得られた赤外吸収スペクトルが、先に説明したアクリル系樹脂を
含む電極表面の赤外吸収スペクトルが有する吸収ピークを有していれば、
電極がアクリル系樹脂を含むことを特定できる。
【0182】
  他の例としては、得られた赤外吸収スペクトルが、先に説明したアクリ
ル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを含む重合体を含む電極表面の
赤外吸収スペクトルと同様の特徴を有していれば、電極がアクリル酸エス
テル又はメタアクリル酸エステルを含む重合体を含むことを特定できる。
同様にして、電極が、アクリロニトリルを含む重合体を含むことを特定で
きる。
【0183】  (電極の表面のXPS分析)
  電極の表面のXPS分析は、以下のようにして行うことができる。
【0184】XPS装置としては、アルバック・ファイ社製Quantera  
SXM、又はこれと同等な機能を有する装置を用いることができる。励起
X線源には、単結晶分光Al-Kα線(1486.6eV)を用いる。X線
出力は4kW(13kV×310mA)とし、光電子検出角度は45°とし、
分析領域は約4mm×0.2mmとする。スキャンは、0.10eV/
stepで行う。
【0185】測定用電極のXPS分析により得られたスペクトルデータに
対して、スムージング及び横軸補正のデータ処理を行う。スムージングと
しては9-point  smoothingを行い、横軸補正としては、
Nb5/2ピークが207.1eV(Nb3+)に現れているとみなして補
正を行う。これにより、電極表面についてのXPSスペクトルを得ること
ができる。
【0186】得られたXPSスペクトルが、先に説明したフッ素系樹脂を
含む電極表面のXPSスペクトルが有するピークを有していれば、電極が
フッ素系樹脂を含むことを特定できる。
【0187】得られたXPSスペクトルから、電極が被膜を含むこと、及
び、被膜が含む物質の種類を特定できる。例えば、得られたXPSスペク
トルが、先に説明したシアネート類を含有する被膜を含む電極表面のXP
Sスペクトルと同様の特徴を有していれば、電極がシアネート類を含有す
る被膜を含むことを特定できる。同様にして、電極が、硫酸塩類を含有す
る被膜を含むことを特定できる。電極が、金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、
フッ化リチウム、酸化リチウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より
選択される少なくとも1つを含む被膜を含むことも、同様にして特定できる。
【0188】  (第1結着剤のXPS分析)
  第1結着剤のXPS分析は、以下のようにして行うことができる。
【0189】  測定用電極から活物質含有層を剥離し、N-メチルピロリ
ドンなどの溶媒に分散し、第1結着剤を溶媒中に溶解させる。これを濾別
して液体画分を得る。得られた液体画分を乾燥して溶媒を除去することに
より、フィルム状の第1結着剤(バインダフィルム)を得る。得られたバ
インダフィルムをXPS分析に供する。
【0190】XPS装置としては、アルバック・ファイ社製Quante-
ra  SXM、又はこれと同等な機能を有する装置を用いることができる。
励起X線源には、単結晶分光Al-Kα線(1486.6eV)を用いる。
X線出力は4kW(13kV×310mA)とし、光電子検出角度は45°
とし、分析領域は約4mm×0.2mmとする。スキャンは、0.10e
V/stepで行う。
【0191】 バインダフィルムのXPS分析により得られたスペクトルに
おいて、680eV以上691eV以下の範囲内に現れるピークが、F1
sピークである。F1sピークの積分強度から、フッ素原子の原子量比(
mol/mol)を、測定装置の内部検量線によって算出することができ
る。フッ素原子の原子量比が、フッ素原子の量Aである。
【0192】528eV以上538eV以下の範囲内に現れるピークが、
O1sピークである。上記と同様にして、O1sピークの積分強度から、
酸素原子の量Aを算出できる。392eV以上408eV以下の範囲内
に現れるピークが、N1sピークである。上記と同様にして、N1sピー
クの積分強度から、窒素原子の量Aを算出できる。
【0193】第1結着剤中のアクリル系樹脂の割合が5%以上70%以下
であるとき、A、A及びAが、0.01≦A/(A+A+2A
≦0.95を満たし得る。
【0194】  (ラマン分光)
  水系電解質にアミド化合物及び有機硫黄化合物からなる群より選択され
る少なくとも1つが含まれていることは、水系電解質をラマン分光に供す
ることにより確認できる。
【0195】水系電解質が電池に含まれている場合は、電池を分解後、電
極を取り出し、電極を洗浄せずにサンプルとしてラマン分光に供すること
ができる。このようにすると、電極に付着している水系電解質について測
定できる。又は、水系電解質を抽出して、サンプルとしてラマン分光に供
してもよい。
【0196】ラマン分光装置としては、日本分光社製NRS-7500、
又はこれと同等な機能を有する装置を用いることができる。上述のサンプ
ルをガラス製チューブ等のサンプル容器に密閉し、サンプル容器越しに測
定することができる。測定は、例えば、波長532nmのレーザー光を用
いて行うことができる。
【0197】第1の実施形態に係る二次電池は、水系電解質と、正極と、
負極とを含む。正極又は負極のうちの少なくとも一方の電極は第1結着剤
を含む。第1結着剤は、フッ素系樹脂およびアクリル系樹脂を含む。その
ため、係る二次電池は、サイクル寿命性能に優れる。
【0198】 (第2の実施形態)
  第2の実施形態によると、組電池が提供される。係る組電池は、第1の実
施形態に係る二次電池を複数個含む。
【0199】係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並
列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて
配置してもよい。
【0200】次に、実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照し
ながら説明する。


図5. 組電池の一例を概略的に示す斜視図
【0201】図5は、組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図5
に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバス
バー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを含む。5つの単
電池100a~100eのそれぞれは、第1の実施形態に係る二次電池で
ある。
【0202】バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子
6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。この
ようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接
続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。
例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組
電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとと
もに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電
池が電気的に接続され得る。
【0203】5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電
池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されて
いる。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池
の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0204】第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次
電池を含む。したがって、優れたサイクル寿命性能を達成できる。
【0205】
  (第3の実施形態)
  第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、
第2の実施形態に係る組電池を含む。この電池パックは、第2の実施形態
に係る組電池の代わりに、単一の第1の実施形態に係る二次電池を含んで
もよい。
【0206】係る電池パックは、保護回路を更に含むことができる。保護
回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パック
を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回
路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0207】また、係る電池パックは、通電用の外部端子を更に含むこと
もできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するた
め、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。
言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部
端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電
流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通
して電池パックに供給される。
【0208】次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を
参照しながら説明する。

図6は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図
【0209】  図6は、電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0210】図6及び図7に示す電池パック300は、収容容器31と、
蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、
配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。


図7. 図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図
【0211】図6に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型
容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリ
ント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、
矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記
組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していな
いが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられて
いる。
【0212】組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22
と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0213】 複数の単電池100の少なくとも1つは、第1の実施形態に
係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図7に示すように電
気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接
続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてい
てもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比
較して、電池容量が増大する。
【0214】粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘
着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固
定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置
し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単
電池100を結束させる。
【0215】正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。
正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続
されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。
負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続
されている。
【0216】プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一
方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正
極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、
保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350
と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)
348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池
200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200
との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0217】正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが
電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の
他端23aが電気的に接続されている。
【0218】サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に
固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出
し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0219】通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の
主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の
外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350
は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0220】保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固
定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端
子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348b
を介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配
線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保
護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に
接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と
配線35を介して電気的に接続されている。
【0221】保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面
と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内
側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムから
なる。
【0222】保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。
また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又
は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に
基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側
端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0223】サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、
単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げる
ことができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される
検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を
検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電
等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を
検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の
単電池100に挿入する。
【0224】なお、保護回路346としては、電池パック300を電源と
して使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用い
てもよい。
【0225】また、この電池パック300は、上述したように通電用の外
部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電
用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力
するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することがで
きる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組
電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供
給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充
電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給され
る。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器から
の充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0226】なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えてい
てもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、
並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続され
てもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。
この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子
350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0227】このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときに
サイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池
パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両
の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカ
メラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に
好適に用いられる。
【0228】第3の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る二
次電池又は第2の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、優れ
たサイクル寿命性能を達成できる。
【0229】

  懐かしの晩秋期の楽曲 『落葉時雨』





人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
----------------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第7回
◾大事なのは「ブレイクスルーが起こったかどうか」
30年前、「がんの撲滅」となると、僕が医学生だったころ、多くの研究者
は「人類は2000年には完全にがんを克服しているだろう」と予想していた
が、治療技術ははるかに進んでいたが、やっぱりまだまだがんに負ける場
合も多い。また、ゲノム技術20年前には今のような事態をほとん予想して
いなかった
と山中氏は話す。月に人類を送り込む「アポロ計画」に成功し
たアメリカが次に挑んだプロジェクトが、1990年に「ヒトゲノム・プロジ
ェクト」。アメリカを中心にイギリス、世界各国の研究者が力を合わせて、
一人で30億塩基対あるヒトのゲノムを全部解読しようとする壮大な計画。
日本も少し貢献して、ヒト一人の全ゲノム暗号を10年以上の歳月と何千億
円という資金をかけて、やっと解読し2003年に完了。


✳️  ゲノム解析技術の「未来」
ゲノム計画で10年かかったことが、今は1日でできる。費用もどんどん下が
り、2年ほど前までは10日くらいで何千万円もかかっていたけれども、今は
100万円を切っています。この劇的な変化を2000年の段階で予想した人は、
ほとんどいなかった。                この項つづく

 今日の言葉:「ラスト九年」に拍車がかかる昨今。「整理整頓第一
         主義」を肝にすえる。(照れるなぁ?!)

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ⓷

ところが、ゴルバチョフのペレストロイカの促進で、社会主義体制があっ
けなく解体した。それでどうなったかというと、東欧やバルト諸国は「民
主化」された。だしその「民主化」は意外にも、それまで従来の大半の自
由主義諸国がとってきた政府主導の「代議制議会民主主義」への単純な回
帰ではなかったのである。ポーランドの「連帯」がそうであったのだが、
フォーラム型の民主主義をめざした。これは、市民参加型の下から積み上
げる分権的な組織形態をもったもので、ポーランドのばあいは労働者が組
合を維持しつつ、かつ教会などの生活世界との関係をもった。そのため「
コミュニケーション民主主義」が重視されるとともに、「自分自身を制限
する民主主義」(自己限定型民主主義などともいう)になっていった。

そういう“変貌”があったのだ。そうなると東欧の民主主義政治は、従来の政
党と代議制民主主義によるものではなくて、市民社会が活動する民主主義の
必要性が説かれるようになり、ここから世界中にNGO・NPO・ボランテ
ィア
などによる「市民活動民主主義」が台頭することになったわけである。
こうした「フォーラム型民主主義」や「市民活動民主主義」は一挙に広ま
った。いまではここに、割箸排斥やエコバッグ運動を主張する「エコロジ
カル民主主義」や「環境民主主義」が加わっている。誰もそうとは自覚し
ていないようだけれど、これらは冷戦崩壊後の民主主義の“変貌”の継承だ
ったのである。(※さぁ、ここから佳境に向かう)

他方、冷戦終結はアメリカに一極集中をもたらした。アメリカは地球上唯
一の「帝国」(empire)になった。アントニオ・ネグリ(1029夜)ら
が夙に指摘したところだ。そ
れで何がおこったかといえば、基軸通貨のド
ルが圧倒力をもち、アメリカの世界軍事戦略の独占がおこり、新自由市場
主義経済のモデルがデファクト・スタンダードとして世界中にふりまかれた。


このすべてがグローバリズムの無敵の進軍となったのだが、なかでも市場原
理主義ともいうべきグローバル・キャピタリズムが強大な力を発揮した。ア
メリカはこの軍事と経済にまたがる尊大な力を見せつけつつ、中東に、極
東に、南米に、徹底して政治と経済の「民主化」を迫ったものだった。日本
には日米経済協議などを通して、イラクにはミサイルを落として。
これら
世界にどんな傷痕を残したかは、いまや言うまでもない。アフガニスタ
ンもイラクもいまだに「民主化」はおこっていないのだし、グローバル・キ
ャピタリズムの進軍とともに生み落とされた「小さな政府」と「規制緩和」
を旗印にしたサッチャリズムとレーガノミクスと、そして小泉純一郎の構造
改革に代表される行き過ぎた「民営民主主義」の後遺症も、いまなお治癒し
ていない。
冷戦終結後という“最近の事情”をとっても、ざっとこのくらい
の民主主義の分化と変質がおこっている。“変貌”はあきらかなのである。

これでは、もはやいちいち民主主義と言わなくてもいいじゃないかという
気がするが、そんなふうに見えてしまうのは、そもそも民主主義という概
念が「多様と統合」のあいだで、「民主主義と自由主義」のあいだで、「
自由主義と資本主義」のあいだで、さらには「民族と個人」や「国家と組織
や「企業と社会」のあいだで、あるいは「ナショナリズムとポピュリズム
のあいだで、「大きな政府」と「小さな政府」のあいだで、歴史的にもひ
どく揺れてきたからだった。
なかで、最も歴史的に古い「揺れ」は、民主
主義と自由主義の、仲がよさそうで、なかなかそうはいかない関係にあら
われている。

そもそも民主主義(democracy)とは、いくつもの政治体制のなかの、ひ
とつの統治形態をあらわす用語であった。デモクラシーは、正確に翻訳す
るなら「民主政」である。民主政は古代ギリシアでは「民衆の権力」
(demokratia)の意味で、王政と貴族政と並ぶポリスの統治形態のことだ
った。
そうした民主ポリス(中世の自治都市なども)は自己領域をかたく
なに守って、しばしばハリネズミのように武装した。アテネもスパルタも
そのように武装した。民主政はその理念に反して当初から排他的だったの
である。


それでも統治(ガバナンス)の主体が「民」であるなら、それは民主主義
ということになるのだが、ところが歴史上、これが必ずしも政治上の統治
形態を表明してはこなかった。たとえばイギリスの統治形態は今日も「君
主政」であるけれど、イギリスは同時に民主主義国家なのである。天皇を
象徴にいただく
戦後日本もそうだとみなされている。
ということは、民主
主義を統治の原理とみなせば、政治の限界が民主主義の限界となり、民主
主義を民衆の原理とみなせば、統治の原理は民主主義を逸脱してしまう。
民主主義の使い方をめぐっての、いちばん難しいところが、すでにここに
あったわけである。
そこが難しくこじれていれば、いつの時代にあっても、
何をもってしても、旧体制の低迷を打破しようとするときに強力に「民主
主義!」を標榜しさえすれば、「民」はその旗に靡きやすいということに
なる。わかりやすい例でいえば、これを利用したのがヒトラーのナチス政
だった。ナチスの大勝利は「民」の待望による「民主の代表」が選ばれ
たもので、しかしその実、その代表は個人としての「総統」だったのであ
る。それゆえヒトラーらはその「個」の奥に、アーリアの血という「類」
を想定することになる。(※補足すると「敗戦虚無主義」を背景として)
   
                           この項つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 60

2024年11月25日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

11月に咲く紫色の花,木  白いローズマリー

【季語と短歌:11月26日】 

    寒風に咲くローズマリー愛おしや   高山 宇 (赤鬼)

 ✳️ 波長可変半導体レーザー吸収分光法を用いた水素ガス定量計測
【要約】
ガスセンサーは、さまざまな業界の安全、品質管理、環境保全に
不可欠。波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)は、その高い感度と
選択性により、ガス分析に広く使用されているが、赤外領域のTDLASを用
いて低濃度の水素ガスを定量することは、近赤外領域の他のガスに比べて
吸収が低いため、困難であることが証明されています。本研究では、異なる
圧力での吸収スペクトルの解析と高圧ガスセルの採用により、精密な水素
ガス測定のための革新的方法を紹介。これらの手法をキャリブレーション
フリーの手法に適用することで、レーザーダイオードのガス検出限界を大
きくし、波長ロックを安定させるための最適な測定条件を実現できる。そ
の結果、0.01%から100%の広い検出範囲で、水素ガス濃度とセンサ応答の
線形関係が達成されます。最適な測定条件下では、TDLASシステムの安定
性は、積分時間が1秒と30秒の場合、それぞれ0.2866%と0.0055%の最小
検出限界で実証する



図1. 式(9)から計算されたパラメータxの変化時のk2(緑線)とk2/x(青線
の関係。

図 2. HITRAN2020 データベースのデフォルトの空気広がりパラメータを
使用した、1900 ~ 3000 nm の帯域内での 2121.8 nm での H2 吸光度の
HITRAN シミュレーション (サブ図に表示)。メイン図には、2121.6 ~ 2122
nm の波長での H2、CO2、CH4、および H2S 吸光度の同じシミュレーシ
ョンをプロット。

図3. TDLAS システムを使用して低濃度の H2 検出を最適化するための実験
構成。DFB-LD: 分布帰還型レーザーダイオード、L: レンズ、BS: ビームスプ
リッター、M: ミラー、HMPC: ヘリオットマルチパスセル、HPC: 高圧セル、
PD: フォトダイオード、FG: ファンクションジェネレーター、LiA: ロックイ
ンアンプ。


【関連論文】
・Title:Optimization for hydrogen gas quantitative measurement
 using tunable diode laser absorption sectroscopy
・Paper:
Optics & Laser Technology
・Received 3 May 2024, Revised 27 June 2024, Accepted 10 July
 2024, Available online 13 August 2024, Version of Record 13
 August 2024.
https://doi.org/10.1016/j.optlastec.2024.111587

✳️ おからパウダーは大さじ2杯でレタス1個分の食物繊維

おからが世界の主食になりそうだ。(そりゃ、そうだろう)ご承知のごと
く、選別した大豆を浸漬した後、加水しながら磨砕して加熱し、これを濾
して豆乳を取った時に残ったもの(豆腐粕)をさす。江戸時代には豆腐が
庶民にも普及し、料理本におからの調理法が記され、一般的に炒り煮や蒸
し料理、汁物の材料として利用。「おから」は絞りかすの意味。茶殻の「
がら」などと同源の「から」に丁寧語の「御」をつけたもので、女房言葉
のひとつ。また、トウモロコシオーツ麦小麦大麦などの穀物
押しつぶして薄い破片(フレーク)にする、パフ状にする(膨化させる)
混ぜ合わせてシート状にしてから砕くなどの加熱調理で食べやすく加工し
長期保存に適した形状にした簡便食の
シリアル食品」への応用研究もな
されており、廃棄物でなく近年は多様な研究がなされている。(Wikipedia

おからパウダー

日本乾燥おから協会は2019年度生産量は2817トン。パン屋を営むラパンは
自社で廃棄されるパンだけでなく、ほかの食品から出る廃棄にも目を向け
る。同社は2020年、おからパウダーを原材料にした食品ブランド「OKAR
ADA」(「おから」+「体」)を立ち上げた。「おからは日本古来のスー
パーフード。おからは豆腐製造時に発生する副産物であるが、その一部は
廃棄されている」(久保副社長)という。同社では、廃棄されるおからを
乾燥させたおからパウダーを活用して、エナジーバー「ファイバーバー」
(以下、おからバー)を製造している。同社によると、おからパウダーの
栄養成分の50.1%は食物繊維、22.4%は大豆たんぱく質が占め、栄養価が
高い。また、糖質が6.2%と低いことも特徴。

❤️ 
原料を生おからに切り替えることで、CO2排出削減に貢献
おからバーの好評価に手応えを感じているものの、現状に満足しているわ
けではない。同社のおからバーは乾燥おからを原料に使用しているが、「生
おからを乾燥おからにする工程で、水分を多く蒸発させる必要があり、多
くの二酸化炭素(CO2)を排出している」(同副社長)という。日本豆腐
協会によると、生おからは80%程度が水分である。対して、乾燥おからは
水分が10%以下のものが多く、水分を抜いて乾燥させる際に熱エネルギー
を使う。おからバーの原料の生産工程で生じるCO2排出をできるだけ削減す
るため、乾燥おからではなく、生おからから直接おからバーを作れないか
1年間かけて検討を重ね、「オートミールと生おからともちむぎのエナジー
バー」を開発。2024年から販売。しかも、生おからを原料とするだけでな
く、日本のビーガン認証も取得し、グルテンフリーかつ添加物フリーの商品。


アメリカ合衆国向け 農林水産物・食品の輸出額の推移(2012~2022年)

🪄おからパウダーは豆腐や豆乳を作る時に残った大豆の外皮を粉砕したも
の、より粒子が細かくなったものが「微粉」のおからパウダー。おからパ
ウダーは、粒の大きさによって4種類に分類されます(・全粒粉、粗挽き、
微粉、超微粉)、用途は、粗挽きタイプのおからパウダーは、パン粉の代
わりに使ったり、小麦粉のかわりに天ぷらなどの揚げ物の衣に使われる。
ハンバーグなどのつなぎにも使える。一方、微粉タイプのおからパウダー
はお菓子やパン作りに向く。
🪄微粉おからパウダーを更に細かくしたものが「超微粉おからパウダー」
超微粉タイプは微粉タイプのものより更に粒子が細かく分散しやすいので、
スープやコーヒーなどの飲み物に入れたり、ヨーグルトやサラダにかけて
いただくことができる。
https://twitter.com/i/status/1788734210322362511

スパイシーな香りと、クセになる味わいが特徴の日清焼そばの粉末ソース、
通称「神の粉末」。




植物由来蛋白のパウダー化は日本の文化の豆腐。さても持続可能可能社
  会の中核となれば世界を制すことになるはず。品種改良育成技術、粉
  砕技術、乾燥技術もトップランナーである。(抹茶そばが好きですが、
  関係ないか)

 

⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑫

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝
【詳細説明】
【0098】このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(Mn
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例
えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複
合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸
化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合
酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチウ
ムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦1、0
<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物
(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造
を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、Lix
Fe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、
硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リ
チウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnz2
;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0099】上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、
スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24
;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0
<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦
1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2
0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッ
ケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、
リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<
x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<
x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-z
CoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含
まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることが
できる。
【0100】正極活物質は、例えば、粒子形状であり得る。正極活物質粒
子は、一次粒子の形態であってもよく、一次粒子が凝集した二次粒子の形
態であってもよく、又は一次粒子と二次粒子が混合されていてもよい。
【0101】正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であるこ
とが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の
取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイ
オンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0102】正極結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、
正極活物質と正極集電体を結着させるために配合される。正極結着剤は、
先に説明した第1結着剤を含むことができる。正極結着剤は、第1結着剤
以外の他の結着剤を含んでもよい。正極結着剤は、先に説明した第1結着
剤のみからなってもよく、第1結着剤と他の結着剤との混合物であっても
よく、他の結着剤のみからなってもよい。他の結着剤として、前述のフッ
素系樹脂又はアクリル系樹脂を単独で用いてもよい。
【0103】他の結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polyte-
trafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene
fluoride;PVDF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化
合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、
及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを正極結着剤として用いてもよ
く、或いは、2つ以上を組み合わせて正極結着剤として用いてもよい。
【0104】導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体
との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カー
ボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラッ
クなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これら
の1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導
電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0105】正極活物質含有層において、正極活物質及び正極結着剤は、
それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%
以下の割合で配合することが好ましい。
【0106】正極結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電
極強度が得られる。また、正極結着剤は、絶縁体として機能し得る。その
ため、正極結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体
の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0107】導電剤を加える場合には、正極活物質、正極結着剤及び導電
剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量
%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好まし
い。
【0108】導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果
を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすること
により、水系電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。こ
の割合が低いと、高温保存下において、水系電解質の分解を低減すること
ができる。
【0109】正極結着剤が第1結着剤を含む場合、正極結着剤に占める第
1結着剤の割合は、1質量%以上であることが好ましい。正極結着剤中の
第1結着剤の割合は、100質量%であってもよい。なお、第1結着剤の
割合とは、正極結着剤に占めるフッ素系樹脂の割合とアクリル系樹脂の割
合の合計を指す。
【0110】正極は、被膜をさらに含むことが好ましい。被膜の形態は
、特に制限されない。被膜は、正極の表面に形成されていてもよく、正極
活物質含有層の内部に形成されてもよい。被膜は、正極表面に露出し得る。
正極表面は、正極活物質含有層の主面のうち、正極集電体と接していない
側の面を指す。被膜は、例えば、正極活物質粒子表面の少なくとも一部を
被覆する第1結着剤の外側に、形成され得る。被膜は、例えば、正極活
質粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1結着剤上に、形成され得る。
被膜は、例えば、正極活物質粒子表面のうち、正極結着剤によって被覆さ
れていない部分を被覆していてもよい。正極が第1結着剤に加えて被膜を
さらに含む場合、正極活物質と水系電解質との接触をさらに抑制できるた
め、副反応を抑制でき、好ましい。
【0111】正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、
Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含
むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0112】アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以
上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好
ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及
びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0113】また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成
されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして
働くことができる。
【0114】正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、
正極活物質、導電剤及び正極結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製す
る。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、
塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と正極集電体との積層
体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、正極を
作製する。
【0115】  或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、
正極活物質、導電剤及び正極結着剤を混合して、混合物を得る。次いで
、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを正極
集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
【0116】正極が被膜を含む場合、被膜は、例えば、正極に被膜を直接
形成するか、又は水系電解質に被膜前駆体を添加する方法によって形成で
きる。水系電解質に被膜前駆体を添加する場合、例えば、初回充電時に正
極上で被膜前駆体を電気分解することによって被膜を形成できる。この場
合、初回充電電流は1C(時間放電率)未満が好ましく、また温度は25
℃以上が好ましい。
【0117】正極に被膜を直接形成する方法としては、例えば、被膜前駆
体を用い、溶液法、蒸着法又はスプレー法などによって被膜を形成する方
法が挙げられる。被膜前駆体の例としては、負極で説明したのと同様のも
のを挙げることができる。正極に被膜を直接形成する方法に好適な被膜前
駆体としては、シアネート類、硫酸塩類、フッ化リチウム、酸化リチウム
酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つを含む
材料が挙げられる。
【0118】溶液法、蒸着法及びスプレー法は、負極で説明したのと同様
の方法で行うことができる。
【0119】水系電解質に被膜前駆体を添加する方法については、後述する。
【0120】 

3)水系電解質
  水系電解質は、水系溶媒と電解質塩とを含む。水系溶媒としては、水を
含む溶液を用いることができる。水を含む溶液とは、純水であってもよく、
水と水以外の物質との混合溶液又は混合溶媒であってもよい。
【0121】 水系電解質は、例えば、電解質塩を水系溶媒に溶解すること
により調製される水溶液である。水系電解質は、この水溶液に高分子材料
を複合化したゲル状の水系電解質であってもよい。高分子材料としては、
例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(P
AN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0122】上記水溶液は、溶質である電解質塩1molに対し、水系溶
媒を1mol以上含むことが好ましい。電解質塩1molに対し、水系溶
媒が3.5mol以上であることがより好ましい。
【0123】水系電解質に水が含まれていることは、GC-MS(ガスク
ロマトグラフィー-質量分析;Gas Chromatography - Mass Spectrometry)
測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量の算
出は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)
発光分析などで測定することができる。水系電解質を規定量はかり取り、
含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。
また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
【0124】電解質塩の例には、例えば、LiCl、LiBr、LiOH、
Li2SO4、LiNO3、LiN(SO2CF32(LiTFSI:リチウ
ムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiN(SO2F)2
(LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、及びLi
B[(OCO)2]2(LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート)など
のリチウム塩を含まれる。使用するリチウム塩の種類は、1種類であって
もよく、2種類以上であってもよい。
【0125】水系電解質は、電解質塩として、LiCl又はLiTFSI
を含むことが好ましい。LiClは、安価であり、かつ、電気伝導率が高
いため、電池のコスト面およびレート特性の観点から好ましい。LiTF
SIは、後述するように被膜前駆体として機能することができるため、好
ましい。
【0126】水系電解質のpHは3~14であることが好ましい。この
pHは適宜変更することが可能であり、水素過電圧を高める観点から、ア
ルカリ側であることが好ましいと考えられる。pHがアルカリ側であると、
水素の発生をより抑制することができる。水溶液のpHをアルカリ側に調
整する方法としては、例えばLiOHを添加することが挙げられる。但し、
pHが12を超える場合は、正極集電体の腐食が進行するため好ましくな
い。水溶液のpHは、好ましくは3~14の範囲内にあり、より好ましく
は3~9の範囲内にある。
【0127】水系電解質は、添加剤をさらに含むことができる。
【0128】添加剤の例には、例えば、Zn、Sn及びPbからなる群よ
り選択される少なくとも一つの金属を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄
化合物が含まれる。
【0129】Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも一
つの金属を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄化合物のそれぞれは、被膜
前駆体であり得る。
【0130】Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少なくとも一
つの金属を含む塩の例には、例えば、ZnCl、SnCl及びPbCl
を挙げることができる。塩の種類は、1種又は2種以上にすることができ
る。上記の塩は、水系電解質中に溶解していてもよく、又は懸濁していて
もよい。
【0131】水系電解質がZn、Sn及びPbからなる群より選択され
少なくとも一つの金属を含む塩を含有する場合、電極に、Zn、Sn又は
Pbを含む金属、金属酸化物又は金属水酸化物が形成され得る。金属は、
例えば、水系電解質に含有される上記塩由来の金属イオンが、還元される
ことによって析出した金属の単体であり得る。金属酸化物は、例えば、析
出した金属が酸化されて生じ得る。
【0132】Zn、Sn又はPbを含む金属又は金属酸化物の例としては、
例えば、金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛が含まれ
る。すなわち、水系電解質がZn、Sn及びPbからなる群より選択され
る少なくとも一つの金属を含む塩を含有する場合、電極に被膜が形成され
得る。したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0133】アミド化合物の例としては、例えば、尿素、メチル尿素、エ
チル尿素及びアセトアミド、N-メチルアセトアミド、トリフルオロアセ
トアミドなどが挙げられる。アミド化合物の種類は、1種又は2種以上を
用いることができる。
【0134】有機硫黄化合物の例としては、例えば、ジメチルスルホンを
挙げることができる。
【0135】水系電解質がアミド化合物又は有機硫黄化合物を含む場合、
水系電解質に含まれるリチウム塩により、アミド化合物及び有機硫黄化
合物の融点降下が起こり得る。よって、アミド化合物及び有機硫黄化合物
は、水系電解質中においては、常温で液体の状態であり得る。したがって、
アミド化合物及び有機硫黄化合物からなる群より選択される少なくとも1
つを含む水系電解質は、アミド化合物及び有機硫黄化合物のいずれも含ま
ない水系電解質と比較して、水系電解質中の液体成分に占める水の割合が
少なくなり得る。したがって、活物質と水の接触を抑制できる結果、水の
電気分解を抑制できる。
【0136】また、アミド化合物及び有機硫黄化合物は、それ自体が電
池内において電気分解され得る。アミド化合物が電気分解されると、シア
ネート類が電極に形成され得る。有機硫黄化合物が電気分解されると、硫
酸塩類が電極に形成され得る。すなわち、電極に、先に説明した被膜が形
成され得る。したがって、水系電解質がアミド化合物及び有機硫黄化合物
からなる群より選択される少なくとも1つを含む場合、電極における水の
電気分解を抑制しつつ、抵抗を低く保つことができる。
【0137】硫酸塩類を含む被膜は、添加剤の添加以外にも、硫黄原子

含有する電解質塩の分解によっても形成され得る。硫黄原子を含有する電
解質塩の例としては、例えば、Li2SO4、LiN(SO2CF32(Li
TFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)及び
LiN(SO2F)2(LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)
イミド)が挙げられる。そのため、硫黄原子を含有する電解質塩は、被膜
前駆体として機能し得る。水系電解質は、硫黄原子を含有する電解質塩に
加えて、アミド化合物をさらに含むことが好ましい。上記のような構成の
水系電解質は、硫酸塩類とシアネート類の両方を含む被膜を形成しやすい。こ
のような被膜は、安定性と低抵抗を両立可能であるため、好ましい。
【0138】
【0139】水系電解質が被膜前駆体を含む場合、電極への被膜の形成は、
例えば、初回充電時に電極上で被膜前駆体を電気分解することによって行
うことができる。この場合、初回充電電流は1C(時間放電率)未満が好ま
しく、また温度は25℃以上が好ましい。

【0140】
  4)セパレータ
  セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロ
ピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリ
デン(polyvinylidene fluoride;PVDF)を含む多孔質フィルム、又は
合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又
はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい
これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断する

とが可能
なためである。

【0141】また、セパレータとして、無機固体粒子を少なくとも含む膜、
無機固体粒子の凝集体または焼結体、無機固体粒子と高分子材料とを含む
膜、例えば、無機固体粒子と高分子材料との複合膜、或いはイオン交換膜
を使用することもできる。無機固体粒子は、例えば、固体電解質の粒子で
あり得、上記膜は固体電解質膜であり得る。固体電解質膜は、例えば、固
体電解質粒子を高分子材料を用いて膜状に成形した固体電解質複合膜であ
り得る。
【0142】無機機固体粒子として、例えば、アルミナなどのセラミック
ス、無機固体電解質の粒子を挙げることができる。無機固体電解質は、Li
イオン伝導性を有する固体物質である。ここでいうLiイオン伝導性を有
するとは、25℃で1×10-6 S/cm以上のリチウムイオン伝導度を示す
ことを指す。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又
は硫化物系固体電解質を挙げることができる。無機固体電解質の具体例は、
下記のとおりである。
【0143】酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na)
Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式Li1+xMα2(PO4)3で表
されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中
のMαは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチ
ウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)
、及びカルシウム(Ca)からなる群より選択される1以上である。添字
xは、0≦x≦2の範囲内にある。
【0144】  NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の
具体例としては、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3で表され0.1≦x≦0.5
であるLATP化合物;Li1+xAlyMβ2-y(PO4)3で表されMβはTi,
Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であ
り0≦x≦1及び0≦y≦1である化合物;Li1+xAlxGe2-x(PO4)3
表され0≦x≦2である化合物;及び、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3で表さ
れ0≦x≦2である化合物;Li1+x+yAlxMγ2-xSiy3-y12で表され
MγはTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<x≦2、0
≦y<3である化合物;Li1+2xZr1-xCax(PO4)3で表され0≦x<1
である化合物を挙げることができる。

【0145】また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固
体電解質の他にも、LixPOyzで表され2.6≦x≦3.5、1.9≦y
≦3.8、及び0.1≦z≦1.3であるアモルファス状のLIPON化合
物(例えば、Li2.9PO3.30.46);ガーネット型構造のLa5+xxLa3-x
Mδ212で表されAはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される1以上
でMδはNb及びTaからなる群より選択される1以上であり0≦x≦0.5
である化合物;Li3Mδ2-x212で表されMδはNb及びTaからなる群
より選択される1以上でありLはZrを含み得0≦x≦0.5である化合物;
Li7-3xAlxLa3Zr312で表され0≦x≦0.5である化合物;Li5+x
La3Mδ2-xZrx12で表されMδはNb及びTaから成る群より選択され
る1以上であり0≦x≦2であるLLZ化合物(例えば、Li7La3Zr2
12);及びペロブスカイト型構造を有しLa2/3-xLixTiO3で表され
0.3≦x≦0.7である化合物が挙げられる。
【0146】無機固体粒子は、単一の種類のものを用いてもよく、複数種
類を混合して用いてもよい。
【0147】高分子材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポ
リマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又
はこれらの混合物であり得る。高分子材料は、酸素(O)、硫黄(S)、
窒素(N)、及びフッ素(F)からなる群より選択される1以上を含む官
能基を有する炭化水素で構成されるモノマーユニットを含んでいることが
好ましい。高分子材料としては、単一の種類のものを用いてもよく、複数
種類を混合して用いてもよい。
【0148】セパレータは、無機固体粒子及び高分子材料の他に、可塑剤
や電解質塩を含んでも良い。例えば、セパレータが電解質塩を含むと、セ
パレータのイオン伝導性をより高めることができる。
【0149】 セパレータは、例えば、各々が正極と負極との間に配置され
た複数のセパレータであり得る。或いは、セパレータは、九十九折にされ
た一枚のセパレータであり得る。後者の場合、セパレータを折り返すこと
で出来る空間に正極と負極とが交互に配置される。
【0150】
  5)外装部材
  外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属
製容器を用いることができる。
【0151】  ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であ
り、好ましくは、0.2mm以下である。
【0152】ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂
層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例
えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polye-
thylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethy-
lene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、
軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好
ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、
外装部材の形状に成形され得る。
【0153】金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より
好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0154】金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金
等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素
等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、
及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下
であることが好ましい。
【0155】  外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、
例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であ
ってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択するこ
とができる。
【0156】係る二次電池は、副反応を抑制できるため、副反応によるガ
ス発生が低減できる。そのため、外装部材の形状は、密閉式、半密閉式又
は開放式であってもよい。外部からの水の侵入を防止する観点からは、外
装部材は、密閉式であることが好ましい。
                           この項つづく

  懐かしの晩秋期の楽曲
        『東京ららばい』中原理恵 1978年
                作詞:松本隆 作曲:筒美京平





人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
---------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第5回

✳️ 誰もが「外付けの知能」を持っ時代とは

誰もがスマホを持ち、意味外付けの知能を持っている。それを踏まえ、私
たち人間の「知能」とか「知性」を再定義しなければならなくなる。つま
り「高い知能を持っているのは人間だけ」との前提が崩れた。
AIのIQが、
3千とか1万になると言われている。「この分野でAIは人間以上のことがで
きる」。「では人間の持つ『高い知能』の知能は、お祓い箱なのか」と。
人間には「実現はできるんだけれど説明できない」とか、「実際に思って
いることや感じていることでも、すべてを言葉で表現することはできない」
ことが残るが、「AIという比較対象を得たことで、”知能とはこういうもの
だったのか”と人間の知能の本質にアプローチできる可能性が出てきた。」
「AIと人間が協力し合う世界では、どういう可能性が生まれるかが問われ
ている」「SF映画の『マイノリティ・リポート』を思い出し、AIが”殺人を
犯す”と予知した人間を事前に逮捕するという、ある意味とんでもない近未
来社会が描かれている。」と羽生氏は言う。

✳️ 
AIがもたらす「ブラックボックス問題」
それも荒唐無稽と笑っていらえない、現在のAIは民間企業が開発している
ので、ある時期まで基本的に開発プランは公開されず、あるとき、「こん
なものができました」と世の中に発表する状況では、AIの開発について、
社会が新しい規準や新しい倫理をつくるといっても、現実のほうに先を越
されて後手に回ってしまう。その規準や倫理を誰が、どこで、どういう形
で決めるのか、その枠組みすらできていない段階では、極めて漠然とした
話になるのではと言う。

 今日の言葉:紅葉が磯焦る彦根玄宮園・湖東三山西明寺
   紅葉見学に出かけるも紅葉は磯焦状態。ジワリと破滅の影濃くなる。

 







 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 59

2024年11月24日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月25日】      

    いまさらに秋桜忘れ冬に入る   高山 宇 (赤鬼

※ そういえば去年より秋桜の印象がなかった。

✳️ 薄膜に生じたシワの大きさを1台のカメラで簡単測定
◇大型宇宙構造物で用いる薄膜の皺を、たった1台のカメラで簡単に測定
    できる方法を提案。

◇撮影した画像から、計測点の移動距離を計算することで、皺の大きさ
   を測定。


大型アンテナなど宇宙空間で使用する大型構造物は、ロケットに搭載して
打ち上げられるが、ロケットが一度に運べる荷物のサイズには限界がある。
そこで、軽量かつコンパクトに収納できる薄膜を用いた構造物の研究が進
んでいる。薄膜はラップほどの厚みしかないため、展開した際に皺などが
簡単に生じ、展開後の薄膜の形状を正確に把握できる計測技術の開発が
求められていた。

大阪公立大学大学院工学研究科の岩佐 貴史教授らの研究グループは、1台
のカメラで撮影した画像から、薄膜全体に生じた皺の大きさを測定する方
法を提案。従来は複数のカメラが必要でしたが、本研究では薄膜に印字し
た計測点がどれだけ移動したかを画像から計算することで、皺の大きさが
簡単に測定できる(図1)。本手法は、カメラの設置スペースに限りのあ
る宇宙構造物での活用が期待する。

【掲載論文】
・【発表雑誌】Measurement
・【論文名】Monitoring thin membranes for wrinkles using single-camera
  photogrammetry
・【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.measurement.2024.116123


⬛ 気候変動でハリケーンの脅威増大
      気候変動の結果、ハリケーン風速は平均29 km / h増

海水温の上昇により、2019年から2023年にかけて大西洋のハリケーンの
最大強度が84%上昇し、2024年のシーズンは100%増加ー30の大西洋のハ
リケーンが、サフィア・シンプソン・ハリケーン風スケールで約1カテゴ
リー高い強度ーに達したとのこと。
現在、2100年までに産業革命前のレ
ベルから2.5°Cから3°Cに達すると予測されているハリケーンは今後数十年
で、大西洋だけでなく世界の海全体でさらに強力で破壊的になると予想さ
れている。一部の専門家は、これらの前例のないスーパーストームの新
しい分類を提案しており、サフィア・シンプソン・スケールに「カテゴリ
ー6」を導入する可能性がある。

「気候変動がハリケーンに与える影響を定量化し、伝えることが急務」と、
インペリアル・カレッジ・ロンドンのグランサム気候変動・環境研究所の
ラルフ・トゥミ博士が話す。「この優れた論文で、Gilford、Giguere、Per-
shingは印象的な新しいフレームワークを提示する。これは、ハリケーン
の最大ポテンシャル強度で理解されいる概念を使用し、これを海面温度の
気候変動フィンガープリントと組み合わせている、ハリケーンの強度を気
候変動を迅速に回帰し提供してくれる」と言う。





⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑪

✳️ 5分で70%充電 NTO負極を用いたリチウムイオン電池
東芝は2ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いたリチウムイオン電池
開発した。リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)と同等の体積エネル
ギー密度を実現しつつ、超高速充電と長寿命化を両立させた。(11月12日
EETIMES)
東芝は、NTO負極を用いたリチウムイオン電池を2017年に試作。2018年
にはブラジルのCBMMおよび双日と共同開発契約を結び、実用化に向けて
開発を行ってきた。2024年6月より、CBMMが権益を有するブラジル・ミ
ナスジェライス州のアラシャ鉱山で、実証実験を始めている。

開発したNTO負極セルの性能

NTO負極を用いた電池は、原理的にリチウムの析出がなく、急速充電時に
電流値を制御しなくても安全に充電が行え、充放電を繰り返しても劣化が
少ないという特長がある。その上、熱安定性が高いため電池が高温になっ
ても、急速充電が可能である。

粒子間に強固な導電ネットワークを形成する電極製造技術と製造した電極

今回は、NTO負極のNTO粒子の表面にナノレベルの導電剤を均一に分散さ
せ、粒子間に強固な導電ネットワークを形成するための電極製造技術を開
発した。これにより、5分間で約70%の急速充電が可能となった。しかも、
外気温が-30~60℃という過酷な環境下でも超急速充電ができる

開発した技術を適用して容量50Ahの大型電池セルを試作。これを用い循
環バスの運行を模擬したサイクル試験を行い、7000サイクル後でも93%以
上の容量を維持できることを実証。

【関連特許技術】
1. 特開2024-135832 二次電池、電池パック及び車両 株式会社東芝
【要約】下図1のごとく、  実施形態によれば、二次電池が提供される。
二次電池は、水系電解質と、正極と、負極とを含む。正極又は負極のうち
の少なくとも一方の電極は第1結着剤を含む。第1結着剤は、フッ素系
樹脂およびアクリル系樹脂を含むことで、サイクル寿命性能に優れた二
次電池、この二次電池を含む電池パック、並びにこの電池パックを含む
車両を提供することを目的とする。

図1. 二次電池の一例を概略的に示す断面図
【符号の説明】  1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体
、3b…負極活物質含有層、3c…負極集電タブ、4…セパレータ、5…
正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、6…負極端子、7…
正極端子、21…バスバー、22…正極側リード、22a…他端、23…
負極側リード、23a…他端、24…粘着テープ、31…収容容器、32
…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…
車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、
44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電
池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…
電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…
電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、
301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コ
ネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a
…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端
子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、
411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…
負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入
力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、
W…駆動輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水系電解質と、正極と、負極とを含み、
前記正極又は前記負極のうちの少なくとも一方の電極は第1結着剤を含み、
前記第1結着剤は、フッ素系樹脂およびアクリル系樹脂を含む、二次電池。
【請求項2】
  前記第1結着剤は、下記(1)式を満たす、
  0.01≦A/(A+A+2A)≦0.95    (1)
  但し、前記Aは酸素原子の量であり、前記Aはフッ素原子の量であ
り、前記Aは窒素原子の量であり、A+A>0、A>0である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
  前記アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル
及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種を含む重
合体である、請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、292eV以上294
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
  前記フッ素系樹脂は、フッ化ビニリデンを含む重合体である、請求項1
記載の二次電池。
【請求項6】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、398eV以上402
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項7】
  前記電極の表面のX線光電子分光スペクトルは、168eV以上173
eV以下の範囲内にピークを有する、請求項1記載の二次電池。
【請求項8】
  前記水系電解質は、Zn、Sn及びPbからなる群より選択される少な
くとも一つの元素を含む塩、アミド化合物及び有機硫黄化合物からなる群
より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項9】
  前記負極は、負極結着剤として前記第1結着剤を含み、
前記負極の表面は、シアネート類、硫酸塩類、金属亜鉛、金属スズ、金属
鉛、フッ化リチウム、酸化リチウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群
より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項10】
  前記正極は、リチウムマンガン複合酸化物、オリビン構造を有するリチ
ウムリン酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からな
る群より選択される少なくとも1つの正極活物質と、
正極結着剤として前記第1結着剤とを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項11】
  前記負極は、スピネル構造を有するチタン酸リチウム及び単斜晶型ニオ
ブチタン酸化物
からなる群より選択される少なくとも1つの負極活物質と、
負極結着剤として前記第1結着剤とを含む、請求項1記載の二次電池。
【請求項12】
  請求項1に記載の二次電池を含む電池パック。
【請求項13】
  通電用の外部端子と、  保護回路とを更に含む請求項12に記載の電池パック。
【請求項14】
  複数の前記二次電池を含み、  前記二次電池が、直列、並列、又は直列及
び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項12に記載の電池パック。
【請求項15】
  請求項12に記載の電池パックを搭載した車両。
【請求項16】
  前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求
項15に記載の車両。


【発明の効果】 
 (第1の実施形態)水系電解質を含む二次電池においては、水系電解質
中の水の電気分解が副反応として生じ得る。そのため、水系電解質の劣
化が生じ得る
【0014】 例えば、リチウムイオン二次電池において水の電気分解が
生じると、負極においてリチウムイオンの挿入と水素の発生とが競合す
るため、正極から放出されたリチウムイオンが電池反応に寄与しなくなり
得る。また、負極における水素発生時には、同時に負極からリチウムイオ
ンが脱離し得る。したがって、水の電気分解が生じると、負極及び正極の
両方からリチウムイオンが消費されるため、充放電に利用できるリチウム
イオンの量が減少し得る。その結果、充放電サイクルに伴って電池容量の
劣化が生じ得る。
【0015】また、副反応においては、例えば水系電解質の分解産物とし
て固体成分が生成し得る。これらの固体成分は、例えば電極上に堆積し
得るため、抵抗上昇の要因となり得る。
【0017】第1の実施形態によると、二次電池が提供される。二次電
池は、水系電解質と、正極と、負極とを含む。正極又は負極のうちの少な
くとも一方の電極は第1結着剤を含む。第1結着剤は、フッ素系樹脂およ
びアクリル系樹脂を含む。
【0018】アクリル系樹脂は、活物質粒子への被覆性が高い。そのため
、電極中の活物質と、水系電解質中の水との接触を抑制できる。
【0019】フッ素系樹脂は、疎水性が高い。そのため、電極中の活物質
と、水系電解質中の水との接触を抑制できるため、副反応を抑制できる。
したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0020】フッ素系樹脂は疎水性が高いため、フッ素系樹脂の分子同士
で凝集しやすい。その結果、例えば、フィブリル化しやすい。フィブリル
化したフッ素系樹脂は、粒子形状の活物質(活物質粒子)への被覆性が低
くなり得る。そのため、フッ素系樹脂単独で活物質粒子への被覆性を向
上するのは困難である
【0021】アクリル系樹脂とフッ素系樹脂は互いに相溶性を有し得る
ため、これらを混合して第1結着剤として用いることができる。
【0022】第1結着剤は、活物質粒子への被覆性が高いアクリル系樹脂
と、疎水性が高いフッ素系樹脂とを含む。したがって、第1結着剤は、非
水電解質電池と比較して水の電気分解が発生しやすい水系電解質電池にお
いても、副反応を抑制するために十分な被覆性及び疎水性を確保すること
ができる。その結果、サイクル寿命性能をさらに向上できる
【0024】係る二次電池において、正極又は負極のうちの少なくとも一
方の電極は、第1結着剤を含む。当該電極は、集電体と、集電体上に形成
された活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、活物質と、
第1結着剤とを含む。活物質は、例えば粒子形状の活物質粒子であり得
る。電極は、さらに被膜を含むことができる。被膜は、活物質含有層に
含まれ得る。
【0025】第1結着剤は、活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆し
得る。よって、活物質と水系電解質との接触を抑制できるため、副反応を
抑制できる。したがって、サイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0026】第1結着剤は、0.01≦A/(A+A+2A)≦
0.95を満たすことが好ましい。但し、Aは酸素原子の量であり、A
はフッ素原子の量であり、Aは窒素原子の量である。A+A>0、
>0である。
【0027】第1結着剤は、酸素原子及びフッ素原子を含み得る。酸素原
子は、例えば、第1結着剤中のアクリル系樹脂に含まれ得る。フッ素原子
は、例えば、第1結着剤中のフッ素系樹脂に含まれ得る。第1結着剤は、
窒素原子をさらに含んでもよい。窒素原子は、例えば、アクリロニトリル
等のアクリル系樹脂に含まれ得る。
【0028】第1結着剤は、第1結着剤に含まれる酸素原子の量A、フ
ッ素原子の量A及び窒素原子の量Aが、0.01≦A/(A+A
+2A)≦0.95を満たすことが好ましい。A+A>0を満たす
限り、A又はAは、0であってもよい。すなわち、第1結着剤は、酸
素原子及び窒素原子のうちいずれか一方を含んでいなくてもよい
【0029】 第1結着剤中のアクリル系樹脂の割合が多い場合、又は、
フッ素系樹脂の割合が少ない場合に、A/(A+A+2A)の値
が小さくなり得る。第1結着剤に対するアクリル系樹脂の割合が多くなる
ほど、又は、フッ素系樹脂の割合が少なくなるほど、活物質粒子への第1
結着剤の被覆率を高くできる傾向にある。そのため、A/(A+A
+2A)は0.95以下であることが好ましく、0.8以下であるこ
とが特に好ましい。
【0031】 0.01≦A/(A+A+2A)≦0.95を満た
すとき、第1結着剤に対するアクリル系樹脂の割合が5質量%以上70質
量%以下であるときの原子数比を満足し得るため、好ましい。第1結着剤
に対するアクリル系樹脂の割合が5質量%以上であると、活物質粒子への
第1結着剤の被覆率を高くできる。70質量%以下であると十分な疎水
性を担保でき、また電極の柔軟性を保つことができる。電極が柔軟であ
ると、充放電サイクルに伴う電極の膨張収縮に起因する電極の割れを抑
制できる。そのため、抵抗上昇の悪影響を抑制できる。第1結着剤に対
するアクリル系樹脂の割合は、15質量%以上45質量%以下の範囲内
であることがより好ましい。
0032】アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸
エステル及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1
種を含む重合体であり得る。アクリル酸エステル、メタアクリル酸エス
テル及びアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種は、
例えば、モノマーとして重合体に含まれ得る。重合体が含むモノマーの
種類は、1種又は2種以上にすることができる。重合体は、1種のモノ
マーからなるポリマーであってもよく、又は2種以上のモノマーを含む
コポリマー(共重合体)であってもよい。上記重合体の具体例には、アク
リル酸エステルポリマー、メタアクリル酸エステルポリマー及びアクリロ
ニトリルポリマー、およびこれらの共重合体を挙げることができる。アク
リル系樹脂の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0033】アクリル系樹脂は、上記のうち、特にメタアクリル酸エス
テルポリマーを含むことがフッ素系樹脂との相溶性の観点から好ましい。
【0034】フーリエ変換赤外分光(FT-IR)測定における、本実
施形態にかかる二次電池が備える電極の表面の赤外吸収スペクトルは、
1710cm-1以上1740cm-1以下の範囲内に吸収ピークを有し
得、かつ、1120cm-1以上1160cm-1の範囲内に吸収ピーク
を有し得る。
【0035】赤外吸収スペクトルにおける、1710cm-1以上174
0cm-1以下の範囲内の吸収ピークは、C=O結合に帰属される。11
20cm-1以上1160cm-1の範囲内の吸収ピークは、C-O結合
に帰属される。これらの結合は、カルボン酸エステルに帰属され得る。
カルボン酸エステルの例には、アクリル系樹脂が含まれる。アクリル系
樹脂を含む電極の表面の赤外吸収スペクトルは、上記のような吸収ピー
クを有し得る。
【0037】アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを含む重合
体を含む電極の表面の赤外吸収スペクトルは、例えば、A2900/A2000
≧2、A1725/A2000≧4及びA1145/A2000≧4を満たし得
る。ここで、Aλは、赤外吸収スペクトルにおいて、λcm-1における吸
光度(Absorbance)を指す。
【0038】本実施形態にかかる二次電池が備える電極の表面の赤外吸収
スペクトルは1800cm-1以上2500cm-1以下の範囲にわたっ
て吸光度が低くなり得るため、当該赤外吸収スペクトルにおいて、ピーク
は、例えば、以下のように定義できる。A2900/A2000≧2を満た
す赤外吸収スペクトルは、2800cm-1以上3000cm-1以下の
範囲内にピークを有するということができる。A1725/A2000
4を満たす赤外吸収スペクトルは、1710cm-1以上1740cm-1
以下の範囲内にピークを有するということができる。A1145/A2000
≧4を満たす赤外吸収スペクトルは、1120cm-1以上1160cm-1
以下の範囲内にピークを有するということができる。
【0042】第1結着剤に対するフッ素系樹脂の割合は、30質量%以
上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。30質量%以上であ
ると十分な疎水性を担保でき、また電極の柔軟性を保つことができるため、
抵抗上昇の悪影響を抑制できる。95質量%以下であると、活物質粒子へ
の第1結着剤の被覆率を高くできる。フッ素系樹脂の割合は、55質量%
以上85質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0044】本実施形態にかかる二次電池が備える電極の表面のX線光
電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy;XPS)スペクトルは、
292eV以上294eV以下の範囲内にピークを有し得る。この範囲内
に現れるピークは、C-F結合に帰属される吸収ピークである。C-F結
合は、フッ素系樹脂に帰属され得る。フッ素系樹脂を含む電極の表面の
XPSスペクトルは、上記のピークを有し得る。
【0045】  電極は、さらに被膜を含むことが好ましい。被膜の形態は
、特に制限されない。被膜は、電極の表面に形成されていてもよく、活
物質含有層の内部に形成されてもよい。これらの場合を総じて、電極が被
膜を含むという。被膜は、電極表面に露出し得る。電極表面は、活物質含
有層の主面のうち、集電体と接していない側の面を指す。被膜は、例えば、
活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1結着剤の外側に、形成さ
れ得る。被膜は、活物質粒子表面のうち、第1結着剤によって被覆されて
いない部分を被覆し得る。したがって、電極が第1結着剤に加えて被膜を
さらに含む場合、活物質と水系電解質との接触をさらに抑制できるため、
副反応を抑制できる。
0048】  シアネート類及び硫酸塩類は、水系電解質電池内において
安定に存在できる。また、リチウムイオン伝導性に優れる。そのため、副
反応抑制効果が高く、かつ、抵抗を低く保つことができる。
【0051】  金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、フッ化リチウム、酸化リチ
ウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛は、水素過電圧が高い。よって、上記のう
ち少なくとも1つの物質を含有する被膜を含む電極は、水の電気分解を抑
制できる。そのため、水素発生を抑制して負極におけるリチウムイオン
の吸蔵放出を円滑にできる。従って、二次電池のサイクル寿命性能を高
めることができる。金属亜鉛、金属スズ、金属鉛、フッ化リチウム、酸
化リチウム、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛からなる群より選択される少なく
とも1つを含む被膜は、正極及び負極のうち、負極に形成されていること
がより好ましい。
【0053】金属亜鉛を含有する被膜は、酸化亜鉛又は水酸化亜鉛を同時
に含有し得る。酸化亜鉛は、例えば、金属亜鉛の表面が酸化されることに
よって生じ得る。

  1)負極
  負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極
活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質
含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び負極結着剤とを含むことがで
きる。負極は、被膜をさらに含んでもよい。
【0068】負極活物質含有層は、先に説明した第1結着剤を負極結着剤
として含み得る。すなわち、負極は、先に説明した電極であり得る。負極
が先に説明した電極である場合、負極集電体、負極活物質含有層、負極
物質及び負極結着剤は、それぞれ、先に説明した集電体、活物質含有層、
活物質及び第1結着剤であり得る。
【0069】当該負極と組み合わせる正極が第1結着剤を含む場合、当該
負極は、第1結着剤を含まなくてもよい。
【0070】負極活物質の例には、例えば、ラムスデライト構造を有する
チタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37、0≦y≦3)、スピネル構
を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi512、0≦x≦3)
、二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸
化チタン、五酸化ニオブ(Nb25)、ホランダイト型チタン複合酸化物、
直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタ
ン酸化物
が挙げられる。
【0071】上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+a
2-bTi6-cIId14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M
、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択
される少なくとも1つである。MIIはZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo
,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択
される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、
0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方
晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti614(0
≦a≦6)が挙げられる
【0072】上記単斜晶型ニオブチタン酸化物の例として、LixTi1-y
M1yNb2-zM2z7+δで表される化合物が挙げられる
。ここで、M1は、
Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。
M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つで
ある。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<
2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン酸化物の具体例
として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる
【0073】  単斜晶型ニオブチタン酸化物の他の例として、LixTi1-y
M3y+zNb2-z7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,
Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つで
ある。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<
2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0074】負極活物質は、例えば、粒子形状であり得る。負極活物質
は、一次粒子の形態であってもよく、一次粒子が凝集した二次粒子の形
態であってもよく、又は一次粒子と二次粒子が混合されていてもよい。
【0075】負極活物質粒子の平均粒子径は、5μm以下であると好ま
しい
。負極活物質粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5μm以下の範囲
内であると、より好ましい。平均粒子径が5μm以下である負極活物質
粒子を用いることで、リチウムイオンの固体内拡散抵抗を十分に下げる
ことができるため、出力性能を向上できる。負極活物質粒子の平均粒子
径が0.5μm未満であると、負極活物質粒子と水系電解質との接触によ
る副反応を抑制するために過剰量の樹脂を加える必要があり、抵抗上昇
の観点で不利である。
【0076】 導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と負極集電
体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長
カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブ
ラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカー
ボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤
として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用い
てもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、負極活物質粒子の表面に、
炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
0077】負極結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、
負極活物質と負極集電体を結着させるために配合される。
負極結着剤は、
先に説明した第1結着剤を含むことができる。負極結着剤は、第1結着
剤以外の他の結着剤を含んでもよい。負極結着剤は、先に説明した第1
結着剤のみからなってもよく、第1結着剤と他の結着剤との混合物であっ
てもよく、他の結着剤のみからなってもよい。他の結着剤として、前述
のフッ素系樹脂又はアクリル系樹脂を単独で用いてもよい。
【0079】負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び負極結着剤
配合割合は、適宜変更することができる。例えば負極活物質、導電剤
及び負極結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量
%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合す
ることが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極
活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、負極結着剤
の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体
との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導
電剤及び負極結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を
図る上で好ましい。

2)正極

 正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極
活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質
含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び正極結着剤とを含むことが
できる。正極は、被膜をさらに含んでもよい。
【0095】正極活物質含有層は、先に説明した第1結着剤を正極結着
剤として含み得る。すなわち、正極は、先に説明した電極であり得る。
正極が先に説明した電極である場合、正極集電体、正極活物質含有層、
正極活物質及び正極結着剤は、それぞれ、先に説明した集電体、活物質
含有層、活物質及び第1結着剤であり得る。
【0096】当該正極と組み合わせる負極が第1結着剤を含む場合、当該
正極は、第1結着剤を含まなくてもよい。
【0097】正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いるこ
とができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含ん
でいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよ
い。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させ
ることができる化合物を挙げることができる。
【0098】このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(Mn
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(
例えばLixMn24又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル
複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合
酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複
合酸化物(例えばLixNi1-yCoy2;0<x≦1、0<y<1)、リチ
ウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2;0<x≦
1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合
酸化物(例えばLixMn2-yNiy4;0<x≦1、0<y<2)、オリ
ビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x
≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4
0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2
5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi
1-y-zCoyMnz2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)
が含まれる。
                          この項つづく

   懐かしい青春の音楽
       ふきのとう/小春日和 (1976年)





人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
----------------------------------------------------------------------------------
人間の未来AIの未来』連載第4回
アメリカでは「パテント・トロール」と言って、他人から特許を買い集
めて、その特許を侵害していると目をつけた相手から巨額の賠償金やラ
イセンス料を得ようとする人たちが問題になったがそれは生命科学の世
界では起こっていなのかと羽生が尋ね、あります。そういうことを得意
としている会社もあり、防衛的にパテントを出願せざるを得ないと答え
iPS細胞は基本的な技術。それをプラットフォームにして、いろいろなア
プリケーションを開発することが可能。だからiPS細胞そのものを開発し
た僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその
技術を使ってもらいたいと吐露する。実際、2017年、富士フィルムに細
胞の開発・製造の特許料を下げるよう要請している。企業は収益を上げ
る目的が優先されますから。新たに開発された薬や医療は異常に高額で、
中には患者さん1人に1億円かかるものもあり、世界的な脅威となると話
す。つまり、以前、マイクロソフトはどんどんOSを公開して、アップル
は閉鎖的でした。どちらがよかったのかはわからないが、基本的に基盤
部分はオープンにするのが世の流れになっている。生命科学の分野でも、
根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっ
ては非常に大切だと思いると。
                          この項つづく
 今日の言葉:

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

まずは1989年にベルリンの壁が崩れると、ソ連が解体して米ソ対決
型の冷戦の構図にピリオドが打たれ、「社会主義体制vs民主主義体制」
あるいは「社会主義体制vs自由主義諸国」という図式に、意味も力もな
くなってきた。それまでは共産主義・社会主義国のサイドからみれば、民
主主義体制は労働者の生活の立場を欠いた「ブルジョワ民主主義」という
もので、真の「民主集中」をはたしているのは社会主義国のほうだという
ことになっていた。
そのため米ソ対立時代では、自由主義諸国のなかですら、その民主主義
のシナリオは「反共の民主主義」というふうにも意図されていた。実際
にも、冷戦時代の民主主義陣営の多くは「反共の砦」だったのである。と
りわけケネディとフルシチョフが鎬を削ったキューバ危機のころが、その
頂点だった。ベトナム戦争の真の要因も、南ベトナムを「北」に対する「
「反共の砦」にするための無謀の戦争で、戦後日本もアメリカにとっては
「反共の砦」だったのである。

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日 ②
                          この項つづく

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 58

2024年11月23日 | リスクインパクトマネイジメント概論

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月23日】      

           風呂に入り勤労感謝、回復す 
                  高山 宇 (赤鬼)

日曜の奉仕の痛み、日々の眼精疲労、荒天候に経験の無い悪不調。ならば
入浴に回復を細かく気を配れば、「正解!」。明日は十一月場所千秋楽。

✳️ 日本の水素技術に熱視線、石炭依存のポーランドが脱炭素で大転換

発電や産業、運輸、暖房など様々な分野で化石燃料への依存度が高いポー
ランドでは今、カーボンニュートラルの実現に向けてエネルギーの大転換
期を迎えている。エネルギー転換への鍵として、同国が普及に力を入れる
次世代エネルギーが水素だ。多額の投資が集まる中、これまで同国になじ
みがなかった日本企業にとっても、技術を売り込む千載一遇の好機が到来
しつつあるという。
(2024.11.22  日経クロステック)

図1 PESAの水素機関車「SM42-6Dn」

図1 PESAの水素機関車「SM42-6Dn」
動力を持たない車両の入れ替え作業や機器の運搬を行うための機関車、旅
客用ではない。最高速度は90km。最高出力180kWのトラクションモータ
ーを4つ搭載。

水素機関車は、水素を燃料として発電する燃料電池と、発電した電気をた
めるリチウムイオン2次電池(LIB)を搭載し、電動モーターで駆動する(
上図)。走行時に排出されるのは水のみ。二酸化炭素(CO2)を一切排出
しないため、鉄道部門における脱炭素化の切り札になると見て、ポーラン
ドでは既存のディーゼル機関車からの置き換えを進めようとしている。ポ
ーランドにおける鉄道の電化率は約55%。非電化の路線の多くは利用者数
が少ないため、架線建設に必要な投資に対して消費エネルギーやCO2の削
減効果が見合わない。水素機関車は、こうした運行本数の少ない路線への
導入が期待されている。


図2. SM42-6Dnの内部構造
カナダBallard Power Systems製の出力85kWの燃料電池を2基搭載する。
電池容量は167kWhで、東芝製のLIB「SCiB」を採用した。充填圧力350M
Paで175kgの水素を貯蔵できるタンクを備え、約500kmの航続距離を確保
した。約20時間の連続作業が可能。

✳️ 
ガラスアンテナと太陽光発電で景観と環境に配慮した5G基地局

「景観配慮型サステナブル基地局」と呼ぶ基地局システムだ。太陽光発電
に対応するBIPV(Building-Integrated PhotoVoltaics、建材一体型太陽光
発電ガラス)と蓄電池、RU(Radio Unit)、ガラスアンテナから成る。
BIPVとガラスアンテナを窓ガラスの内側に設置し、屋外に通信エリアを形
成する実証実験
にNECとAGCが入る。(2024.11.22 日経クロステック)

NECとAGCが有効性を実証した「景観配慮型サステナブル基地局」の外観

NECとAGCが有効性を実証した「景観配慮型サステナブル基地局」の外観


⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
  リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑩



試作した「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」と、HAPSへの応用イメージ
 出所:ADEKA

◾重量エネルギー密度は最大552Wh/kg、釘を刺しても発火せず
  ADEKA、軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセルを開発
ADEKAとうるたまは、次世代二次電池向け正極材「SPAN」と樹脂箔で構
成される正極を用いた二次電池「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」の試
作に成功。軽量で安全性や実用性を兼ね備えた二次電池を実現できるため、
ドローンやHAPS、eVTOLなどへの応用が期待される。(202411.12 EETIMES)

次世代二次電池向け正極材「SPAN」と樹脂箔で構成される正極を用いた
二次電池「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」の試作に成功したと発表。
軽量で安全性や実用性を兼ね備えた二次電池を実現できるため、ドローン
やHAPS(成層圏通信プラットフォーム)、eVTOL(電動垂直離着陸機)
などへの応用が期待できる。



左は試作した9Ah級パウチセルの外観、右は典型的なリチウム-硫黄(Li-S)
二次電池と今回開発した新型Li-SPAN二次電池の構造模式図 出所:ADEKA

ADEKAは、産業技術総合研究所(産総研)や豊田自動織機が開発した製
造方法をもとに、硫黄系活物質の1つである「SPAN(硫化ポリアクリロニ
トリル)」を、「アデカアメランサ SAMシリーズ」という名称で量産化
する計画である。さらに、うるたまやソフトバンク、KISCO、産総研など
と連携し、次世代二次電池の技術開発と市場開拓にも取り組んでいる。

今回試作した軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル「LiLiSPRing-model ADET
AMA」は、電池容量が9Ahで、大きさは名刺サイズである。正極活物質に
はアデカアメランサ SAMシリーズを用いた。SPAN正極の集電体には、
KISCOとソフトバンクが共同で開発している樹脂箔を採用した。セルの構
成を検討したのはADEKAで、設計はADEKAとうるたまが共同で行った。
また、樹脂箔へのタブ溶接はKISCOとソフトバンクが、セル作製はうるた
まが、それぞれ担当した。


SPANの外観と部分推定構造(充放電前)および、試作した9 Ah級パウチ
セルの充放電特性  出所:ADEKA

研究グループは、試作したセルの充放電試験をソフトバンクの次世代電池
Lab.で行った。重さが25.2gという試作セルを用い、25℃、0.05Cという条
件で放電した時の容量(9.27Ah)と電圧(1.50V)のデータから、重量エ
ネルギー密度は最大552Wh/kgと算出した。鉄くぎを刺す安全性試験でも、
発煙や発火が起こらないことを確認した。

ADEKAは現在、相馬工場(福島県相馬市)においてアデカアメランサ SA
Mシリーズの量産化を進めている。既に年間100kg以上の合成に成功して
いるが、2026年度にはこれを年間数トン規模まで引き上げていく計画。


⬛ リチウムイオン電池向けマンガン系正極材料
三井金属は2024年11月、レアメタル新溶液材料「iconos(イコノス)」
を活用し、リチウムイオン電池に向けたニッケルマンガン酸リチウム正極
材料(LiNi0.5Mn1.5O4/LiMn2O4)を開発。

◾レアメタル新溶液材料「iconos(イコノス)」を活用
ニッケルマンガン酸リチウム(LNMO)は、高出力で高いエネルギー密度
を実現できる正極材料である。しかし高電位領域における電解液との副
反応によって、⓵正極成分からマンガンが溶出したり、②ガスが発生した
りす
る可能性がある。これらが、実用化に向けて課題となっていた。

三井金属はこれまで、iconosを活用しニッケルマンガン酸リチウム正極材
料への応用を検討してきた。そして今回、P-Taで正極材料を被覆すれば、
高電位領域における従来の課題を解決できることを突き止めた。この技術
を用いると、LiNi0.5Mn1.5O4の他、LiMn2O4正極材料においても、その
効果が得られることを確認した。
【脚注】
1. P-Ta水溶液を被覆したLiNi0.5Mn1.5O4正極の電池特性

iconosを活用し被覆処理を施したニッケルマンガン酸リチウム正極材料の外観[クリックで拡大] 出所:三井金属

   心豊かになるクラシック音楽
       『弦楽のためのアダージョ /  Adagio for Strings Op.11』 
                    作曲:サミュエル・バーバー


人間の未来 AIの未来

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
----------------------------------------------------------------------------------
『人間の未来AIの未来』連載第3回

✳️ なぜ研究者は「隠したがる」のか
将棋の世界は、オープンソースを土台にみんなでアイデアを出し合うとい
う、インターネット社会のメリットを最大限に生かしてソフトを進化させ
てきたわけですね。しかし、僕がいる生命科学の世界は、研究の競争が激
しくて、みんな隠匿し、論文発表で初めて世に出すという感じだと山中氏。

論文を発表するプロセスは、まず『ネイチャー』とか『サイエンス』とい
うジャーナル編集部に自分の論文を送ります。そこから「ピアレビュー」
(査読)と言って、同じような研究をしている研究者数人が、ほとんどの
場合匿名でそれを評価する。「ここは変えたほうがいい」という彼らの指
摘に従って、やり直す。そう、いちばんひどいときは「この研究は箸にも
棒にもかからない」と拒否されるケース。これがけっこう多い。いちばん
いいときは「この研究は素晴らしいから、すぐ載せます」と1ヵ月後に掲
載される。そういうことも稀にはありますが、滅多にないと話す。

つまり、修正に1年、2年かかることもあり、生命科学の分野では、今取り
組んでいる研究が世に出るまで早くても2、3年かかってる。リアルタイ
ムに世に出す仕組みが必要ではないかと考える人が少しずつ増えてはいる
が、なかなか進まない。過去百年以上、僕たちはそうやって論文発表を目
標に研究してきたから。でも今の生命科学の発表の仕方では、そういう情
報はほとんど世に出ない。結果、無駄な研究をすることになっている。

✳️ 「伝統」を変えられるか
そもそも論文やジャーナルは、研究の発展を推進するためのはずが、逆に
ブレーキになってしまっているところがあり、そこからパテント(特許権)
も発生するので、守るところは守らないとだめなんですけれども。

 

 今日の言葉:

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 57

2024年11月21日 | 第4次産業革命

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと

伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月21日】      

        律の風メタセコイアの並木道 
                  高山 宇 (赤鬼)

 OPV変換効率を向上するπ電子系骨格開発

11月18日、広島大学と京都大学は,ポリマー半導体に用いる新しいπ電系
骨格を開発し,有機トランジスタ(OFET)の電荷移動度と有機薄膜太陽
電池(OPV)のエネルギー変換効率を大きく向上させた。
【要点】
・ポリマー半導体の剛直性と分子間相互作用を高めることができる新しい
 縮合多環π電子系骨格の開発に成功
・新しいπ電子系骨格を用いたポリマー半導体は従来型より電荷移動度が
 高まり、有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率が約1.3倍向上。
【概要】
ポリマー半導体は,印刷プロセスで簡便に薄膜化できる半導体であり,
OFETやOPVなどの次世代の電子デバイスへの応用が期待されている。こ
れらデバイスの高性能化において,高い電荷移動度を示すポリマー半導
体の開発は重要課題の一つとなっている。ポリマー半導体の電荷輸送性を
高めるためには,ポリマー主鎖の共平面性や剛直性を高めることが重要と
なる。これによって,ポリマー主鎖に沿って電荷が流れやすくなるととも
に,ポリマー主鎖同士が近づきやすくなるため,主鎖間でも電荷が流れや
すくなる。そのためには,ポリマーの主鎖を構成するビルディングユニッ
トとして縮合多環(縮環)系π電子系骨格を導入することが有効。特に,
チオフェンを構造末端に縮環してπ電子系骨格を拡張することで,隣接す
るユニットとの立体障害が軽減され,ポリマー主鎖の共平面性と剛直性が
向上する。したがって、チオフェン縮環π電子系骨格の開発は,高性能な
ポリマー半導体を開発する上で重要な課題となっていた。


図1.. (a)ポリマー半導体の模式図。ビルディングユニット(π電子系骨格)の
構造拡張により、ポリマー主鎖の剛直性や相互作用が向上する。(b)構造末
端にチオフェンを縮環することによる効果。例えば、6員環であるベンゼン
を縮環したときに比べると、5員環であるチオフェンを縮環することで、立
体障害が軽減され、ポリマー主鎖の共平面性が向上し、より剛直性や相互
作用2.2.以前に開発したNTzを有するポリマー半導体(PNTz4TおよびPNTz
1-F)と今回新たに開発したTNTを有するポリマー半導体(PTNT2TとPTNT1-F)。



図2. 以前に開発したNTzを有するポリマー半導体(PNTz4TおよびPNTz1-
F)と今回新たに開発したTNTを有するポリマー半導体(PTNT2TとPTNT1-F)。


図3.
 PNTz1-FとPTNT1-Fのデバイス性能の比較。(a)OFETの電流–電圧特性。
PTNT1-FではPNTz1-Fに比べて大幅に電流値を増大し、電荷移動度が向上
した。(b)OPVセルの電流-電圧特性。PTNT1-FではPNTz1-Fに比べて短絡
電流密度、開放電圧、曲線因子の全ての光電変換パラメータが増大し、エ
ネルギー変換効率が向上した。

本研究では、広島大学の研究グループが以前に開発したπ電子系骨格であ
る「ナフトビスチアジアゾール(NTz)」に、更にチオフェンを縮環して構
造を拡張した「ジチエノナフトビスチアジアゾール(TNT)」を新たに開発。
TNTを用いて合成したポリマー半導体(TNT系ポリマー)では、ポリマー鎖
が剛直性を持つためねじれにくくなり、分子間相互作用が高まるため、ポ
リマー主鎖内と主鎖間でπ電子系が広がり、効率的に電荷を輸送できるよ
うになった。その結果、OFETでは、TNT系ポリマーの電荷移動度は、NTz
系ポリマーに比べて大幅に向上し、アモルファスシリコンと同等の移動度
である1.0 cm2 V−1 s−1を超える高い値を示しました。さらに、OPVでは、
TNT系ポリマーのエネルギー変換効率は、NTz系ポリマーに比べて1.3倍向
上し、世界最高水準に近い17.4%という高い値を示しました。本研究で開
発したTNTを用いてさらにポリマー半導体を開発することで、さらに高い
デバイス性能が期待されます。これにより、IoT社会や低炭素化社会の実
現に貢献することが期待されている。
【展望】
TNT系ポリマーを活性層とするOPVは、世界最高水準に匹敵する17.4%の
エネルギー変換効率を示しました。今後、TNT系ポリマーの化学構造や成
膜条件、OPVのセル構造を最適化することで、エネルギー変換効率20%の
達成が期待できる。また、今回開発したTNTを用いて新たな有機半導体材
料を合成するとともに、さまざまな有機デバイスなどへ応用展開すること
も検討。これにより、ポリマー半導体の高性能化、ひいてはIoT社会や低炭
素化社会の実現に貢献することができる。
【脚注】[1] ポリマー半導体、[2] 電荷移動度、[3] 有機薄膜太陽電池(OPV)、
[4] チオフェン縮環反応

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【掲載論文】

  • 論文のタイトル:“Dithienonaphthobisthiadiazole Synthesized By
    Thienannulation on Electron-Deficient Ring As Building Unit for High-
    Performance π-Conjugated Polymers ”
  • 著者:Tsubasa Mikie, Tomokazu Morioku, Shota Suruga, Momoka
    Hada, Yuki Sato, Hideo Ohkita, and Itaru Osaka
  • 掲載雑誌:Chemical Science
  • DOI:10.1039/d4sc05793g
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

中国で相次ぐ無差別殺傷は“社会への報復”?


「三低」というのは、所得、社会的地位、社会的人望が低い。 「三少」と
いうのが、人との付き合い、社会と触れ合う機会、不満を口にできる機会
が少ないということ。
つまり、「三低」(所得、社会的地位、社会的人望
が低い)と 「三少」(人との付き合い、社会と触れ合う機会、不満を口に
できる機会が少ない)の逃げ場のない現代中国人は、「凶悪犯罪に手を染
め」しかないのか?

難民172万人 受け入れ国ウガンダで今

戦争、迫害、災害、貧困などを理由に故郷を追われる人々は世界中で絶え
ない。アフリカ最大の難民受け入れ国でありながら、ウクライナや中東の
紛争のはざまで光の当たらないウガンダから、難民のいまを報告する。



米半導体大手エヌビディアが20日発表した2024年8~10月期決算
は、売上高が前年同期の1・9倍となる350億8200万ドル(約5・
4兆円)、最終利益は2・1倍の193億900万ドル(約3兆円)だっ
た。生成AI(人工知能)向け半導体が引き続き好調で、売上高、最終利
益とも四半期として過去最高となった。

【特版:ウイルス解体新書】

エムポックス 緊急リストに 日本の製薬会社開発のワクチン

かつて「サル痘」と呼ばれアフリカを中心に世界で感染が広がる「エムポ
ックス」。多くの子どもの命が失われている感染の中心地を訪ねてみると、
日本のワクチンへの期待の声が聞かれた。

fig1


トランプ次期大統領は19日、テキサス州のロケット発射場を訪れ、宇宙企
業「スペースX」の創業者で、大統領選終了後、行動を共にしているイー
ロン・マスク氏から、今回打ち上げる宇宙船「スターシップ」について説
明を受けました。



世界のエリートが学んでいる 教養書必読100冊を1冊にまとめてみた

ビジネス、TOEIC…どんな問題も簡単に解けてしまう理由とは?
  不朽の名著に学ぶ「数学的思考で問題解決」の鉄則

  数学者G.ポリアが『いかにして問題をとくか』⓵
  で提唱する4つのステップ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大企業の経営幹部たちが学び始め、ビジネスパーソンの間で注目が高まる
リベラルアーツ(教養)。グローバル化やデジタル化が進み、変化のスピ
ードと複雑性が増す世界で起こるさまざまな事柄に対処するために、歴史
や哲学なども踏まえた本質的な判断がリーダーに必要とされている。

人間の未来 AIの未来

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
---------------------------------------------------------
⬛ AIの判断能力の可能性

でも、もしかしたらAI君はその辺りも各種データをもとに「理論的に考え
るとこうなりますが、この患者の性格と経済力を考慮に入れると、別の選
択肢があり得ます」と指示するくらい賢くなってしまうかもしれないど山
中氏が問うと。

それには恐らく2つのアプローチがある。一つは何百万人分というビッグデ
ータをもとに「確率的にはこういうふうな選択肢があります」と答えを出
すやり方。もう一つは、その人が生きてきた過去のデータを蓄積しておい
て、それをもとに「彼はこういう答えを望んでいるはずだ」と答えを出す
との反応があるかもと羽生氏に、確かに頼みもしないのに、アマゾンから
「あなたにおすすめの本」とか言ってきますから。時々カチンと来ますね
(笑)。でも相当賢い部下であるのは間違いないと山中氏。

  心に残る日本のポップス 『粉雪 - レミオロメン
                   作詞/作曲:藤巻亮太

   粉雪舞う季節はいつもすれ違い
   人混みに紛れても同じ空見てるのに
   風に吹かれて 似たように凍えるのに
   僕は君の全てなど知ってはいないだろう
   それでも一億人から君を見つけたよ
   根拠はないけど本気で思ってるんだ
   些細な言い合いもなくて同じ時間を生きてなどいけない
   素直になれないなら 喜びも悲しみも虚しいだけ
   粉雪 ねえ 心まで白く染められたなら
   二人の孤独を分け合う事が出来たのかい

 今日の言葉:

「オレの一票」で社会を変えるのが、民主主義なのだ。実際に日本でも、
与党がふがいない時は民意を反映して政権が何回も変わっている。それを
確信し、経済政策に難がある「反自民・立憲民主党」に投票した。そして、
「脈があった」(生きている。)、しかし、世界を見渡せば、「いまトラ」
「三低・三少」「ガザの宗教戦争」「核恫喝のプーチン+ヨシフ三兄弟」
そして、「地球温暖化禍」と「絶望未来」が控え、「危うし民主主義」で
ある。そこで「古典的名著」を改め認めていこう。

1277夜 『変貌する民主主義』 森政稔 − 松岡正剛の千夜千冊

いまさらだが、金融資本主義がおかしくなっている。

世の中、やっとそのことに気がついた。
では、それだけかといえば、そんなことはない。
民主主義もかなり変質しているはずだ。
いや、それだけではない。
自由主義もおかしくなっている。
いやいや、むしろ資本主義と民主主義と自由主義とが
互いに境界を失って溶け出しているというべきだ。
いったい、何がおこっていて、
それをどのようにみればいいのか。
本書には、そのヒントが丹念に語られていた。

 『変貌する民主主義』 森政稔 - 千夜千冊
1277夜 世走篇 2008年12月29日

ぼくには(著者)、人前でのタバコの喫いすぎから生活能力の欠如まで、
自慢できるほどいっぱいの欠陥があるのだが、それを仮に“思想方面”に絞
っても(そういうことが仮りに可能だとして)、まだまだいろいろの欠陥
がある。誰かがぼくを詰(なじ)ろうとすれば、その点をこそ問題にして
批判したくなるような欠陥だ。ある領域、ある概念、ある傾向に対して、
いちじるしい浅慮、脱落、歪曲、無知、逸脱があると。そのひとつに「民
主主義」に対する度しがたい欠陥がある。ぼくは、この言葉、この概念、
この意味、この体制が、どうにも苦手であり、民主主義に対する基本的理
解力が低い。例えば、「多数決の原理」と「民主主義」が結託しているの
理由がわからない(「入口の民主主義」は「出口の絶対主義」なのか)。
こんなことだから、どんな仕事にも参入障壁をなくせばそれですむと思っ
ている市場主義者がいる。一方、これはぼくの子供時代に親戚のおじさん
が京都の選挙に出て大勝利を収めたとき以来の不信だが、どんな人気とり
をしても、どんなに資金をつぎこんでも、選挙の結果で勝ちさえすれば、
それで民主的な評価を受けましたというのも、これは今度は「出口の民主
主義」ばかりが強調されているとしか思えない。

もうひとつ、民主主義によく似た言葉あるいは概念として「自由主義」が
あって、ぼくは(著者)これがまた大いに苦手と吐露し、だから「自由民
主主義」などと二つの言葉が重なると、ちょっと身震いがするが、これに
ついての感想や考え方を自由主義者たちの議論にぶつけても、早々には辞
去しないですむと思っているとが、民主主義という言葉は困る。「民主主
義」も「民主」も、これまで一度もろくすっぽ考えてこなかった。だから
アレクシス・ド・トクヴィルの『アメリカの民主主義』も、C・B・マク
ファーソンの『自由民主主義は生き残れるか』も、ロバート・パットナム
の『哲学する民主主義』も、目は通したけれどもろくに読みこんではこな
かった。「戦後民主主義」という言い方も、まだ一度たりとも納得も得心
もできない。もっと大嫌いなのは、どんな事件についてもどんな犯罪につ
いてもどんな見解についても、相手次第で「それは民主主義的ではない」
という批判で逃げる連中や、右にも左にも中道にもマスコミにもあてはま
るのだが、最後は「民意」を持ち出せばすむと思っている連中だと激白す
る。
                           この項つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 56

2024年11月20日 | 第4次産業(マルチメディア)革命

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月20日】
       
         神無月方時雨ては寒暖差 
                高山 宇 (赤鬼)




 2024年中国がグリーン水素製造機器を支配?!
10月3日、国際エネルーギー機関(IEA)は、過去1年間でのグリーン水素
製造機器の40%を財政支援で占有したと報じている。米国は再生可能な電
力を水電解装置の製造拡大し、世界のデバイス価格削減され、再生可能エ
ネルギーや原子力発電による水素製造には欠かせない。それによると、昨
年承認された6.5ギガワット(GW)の電解槽容量のうち、中国は40%超を占
有。同年のヨーロッパは2GW超(占有率32%)、インドは1.3GW。年間
25GWを達成。同
報告書によると、中国の大手ソーラーパネルメーカー数
社が電解槽の製造を開始、これらを合わせると、この分野での中国生産能
力の約3分の1を占める。
財政支援を受けた電解槽の総容量は全世界で20G
Wに達し、2030年までに低排出水素の年間世界生産量を5倍に増やせる。
IEAによると、低排出水素製造に世界中の政府が設定した目標は、2030年
までに4,300万トンに達する(予想)。需要の1,100万トンをわずかに下回
わる。

Source:https://www.scmp.com/business/article/3280748/china-leads-world-
green-hydrogen-projects-dominates-equipment-manufacturing-iea-says





【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ⑥】

2. 特開2024-77350 炭素および水素の製造方法 三菱マテリアル株式
 会社他 ⓷

【0061】(電解還元過程S3-1)
【0062】陰極槽11は、例えば、ガラスなどの誘電体材料から形成さ
れた液槽であり、内部に3価の塩化鉄を含む陰極液、本実施形態では、前
工程である炭素分離工程S2で得られた塩化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の
混合物)の塩酸溶液(陰極液)を収容する。こうした塩化鉄の塩酸溶液(
陰極液)は、例えばpHが0.5以下になるように、塩酸濃度が調整される。

【0063】陽極槽12は、例えば、ガラスなどの誘電体材料から形成さ
れた液槽であり、内部に電解質を含む陽極液、本実施形態では希硫酸水溶
液(陽極液)を収容する。こうした希硫酸水溶液(陽極液)は、硫酸濃度
が例えば0.1モル/L以上、5.0モル/L以下の範囲にされればよい。

【0064】隔壁13は、陰極槽11および陽極槽12にそれぞれ形成さ
れた開口どうしの間に配される膜状の部材である。隔壁13は、一方の面
が陰極液に接し、他方の面が陽極液に接する。こうした隔壁13は、例え
ば水素イオンが透過可能な材料であればよく、例えば、陽イオン交換膜や
ガラスフィルターなどを用いることができる。本実施形態では、Nafi
on(登録商標)膜(陽イオン交換膜)を用いている。

【0065】陰極槽11に配される陰極電極(作用極)21は、電源装置
14の負極に接続される。こうした陰極電極21は、導電体、例えば、炭
素電極や白金電極などであればよい。本実施形態では、陰極電極21とし
て炭素棒を用いた。

陰極槽11に配される参照電極(基準電極)22は、酸化還元電位を測定
するものであり、本実施形態では、銀/塩化銀電極(電極電位+0.199 V
(vs. SHE、25℃))を用いた。

【0066】陽極槽12に配される陽極電極(対極)23は、電源装置14
の正極に接続される。こうした陽極電極23は、導電体、例えば、炭素電
極や白金電極などであればよい。本実施形態では、陽極電極23として白
金線を用いた。

【0067】電解還元過程S3-1では、上述したような電解装置10を
用いて、炭素分離工程S2で得られた塩化鉄(III)の電解還元を行い、下記
の式(10)の通り、塩化鉄(II)に還元する。

  FeCl+e+H→FeCl+HCl  ・・・(10)
  具体的には、例えば、電解装置10の陰極槽11に、炭素分離工程S2で
得られた塩化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の混合物)の塩酸溶液(陰極液)
を収容する。この陰極液は、pHが0.5以下、例えばpHが0.1にな
るように、塩酸濃度を調整しておく。

【0068】また、陽極槽12に、電解質として希硫酸水溶液(陽極液)
を収容する。この陽極液は、硫酸濃度が0.1モル/L以上、5.0モル
/L以下の範囲、例えば硫酸濃度が0.2モル/Lの希硫酸水溶液であれ
ばよい。0.1モル/L未満だとFeClからFeClへの電解還元に
伴って陽極槽12から供給されるHが不足する懸念がある。一方、5.0
モル/Lより大きいと陰極槽11と陽極槽12の間に生じる浸透圧が大き
くなりすぎて、隔壁13の破壊や液漏れが生じる可能性がある。

【0069】なお、電解装置10は、空気中に載置してもよいが、より好
ましくは内部を不活性ガス、例えばアルゴンガスもしくは窒素ガスで置換
したチャンバー内に設置すればよい。


図4. 塩化鉄(III)の電解還元における電位-pHグラフ

【0070】次に、電源装置14によって陰極電極21と陽極電極23と
の間に電圧を印加して、陰極槽11内で塩化鉄(III)の電解還元を行い、2
価の塩化鉄である塩化鉄(II)を生成する。
こうした塩化鉄(III)の電解還元は、
図4に示す電位-pHグラフに基づいて、pH0.5以下の条件でFe(II)
/Fe(III)酸化還元反応が以下の式(11)に従い、標準水素電極(SHE)
に対して+0.70Vの酸化還元電位(E)で生じる。

  FeCl+e→Fe2++2Cl  E=0.70Vvs.SHE  ・・・(11)
  なお、図4の電位-pHグラフは、熱力学データベース(NIST Critically
Selected Stability Constants of Metal Complexes; NIST Standard Reference
Database 46, version 8.0)から抽出したFe2+、Fe3+、Clおよび
に関する各種安定度定数に基づくものである(総Fe濃度:0.1M、
総Cl濃度:3モル/L、イオン強度:3モル/L、温度:25℃)。
【0071】式(11)の酸化還元電位(E)は、水の電位窓(図4の
グラフの上下2本の破線に挟まれた領域)に収まっていることから、標準
水素電極(SHE)に対して+0.7Vから0.0Vの領域における定電
位電解では水が電解されることなく式(11)を支配的に進行させること
が可能である。

【0072】また、定電流電解の場合でも陰極液中におけるFe(III)の陰
極電極(作用極)21への供給が十分であるうちは水が電解されることな
く式(11)を支配的に進行させることが可能である。一方、陰極液のpH
が0.5を超えるとFe(III)の加水分解反応の進行によって陰極液中にFe
(III)を保持することができなくなるため、陰極液のpHは0.5以下に保つ
必要がある。

【0073】上述した式(11)で示すFe(III)の電解還元反応が陰極電極
(作用極)21で進行すると、陽極槽12内の陽極電極(対極)23にお
いても、何らかの酸化反応を進ませる必要がある。反応系を清浄に保つた
めには、この酸化反応として式(12)に示す水の電解が最も適している。

【0074】
  HO→2H+2e+1/2O(g)・・・(12)
  上述した式(11)および式(12)を組み合わせることにより、陰極
槽11内で生じる正味の反応は式(13)で表される。

【0075】2FeCl+HO→2Fe2++2H+4Cl
 1/2O(g)・・・(13)

  そして、式(13)の進行に伴い、陽極槽12から陰極槽11に向けて、
隔壁13を介してHが移動する。こうしたHの移動をスムーズに進行さ
せるため、陽極液は酸性であることが好ましい。しかしながら、陰極液と
同様の塩酸水溶液を陽極液として用いると、Clの酸化によりClの生
成(式(14))、およびそれに付随して次亜塩素酸が生成(式(15))
するおそれがある。

  2Cl→Cl+2e・・・(14)
  Cl+HO=HCl+HClO・・・(15)
【0076】このような式(14)、式(15)に示す副生成物の生成は、
反応系を清浄に保つ上で望ましくない。よって、陽極電極(対極)23で
の酸化反応に耐性のある酸性物質を含む陽極液を用いる必要がある。硫酸
はこの目的にかなう酸性物質であることから、本実施形態では陽極液とし
て希硫酸を用いている。但し、陰極液への硫酸もしくは硫酸イオンの混入
を防ぐことも反応系を清浄に保つ上で重要であるため、陰極槽11と陽極
槽12との間に陽イオン交換膜を隔壁13として用いている。

【0077】なお、反応完了後の陰極液は、減圧乾固によって塩化鉄(II)を
回収することができる。例えば、ロータリーエバポレータを用いて反応完
了後の陰極液を減圧乾固することで、塩化鉄(II)を回収することができる。

【0078】以上のような電解還元過程S3-1によって、炭素分離工程
S2で得られた塩化鉄(III)を塩化鉄(II)にして、次の加水分解過程S3-2
行う。
【0079】(加水分解過程S3-2:水素、マグネタイト製造反応)
  加水分解過程S3-2では、上述した電解還元過程S3-1において、塩
化鉄(III)の電解還元反応で生じた塩化鉄(II)と水とを反応させる水素、マグ
ネタイト製造反応を行う。この水素、マグネタイト製造反応における反応
温度は、300℃以上、800℃以下、好ましくは400℃以上、600
℃以下の範囲であればよい。水素製造工程S3では、こうした反応温度範
囲に昇温させるために、例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を
有効利用することも好ましい。

【0080】水素製造工程S3での塩化鉄(II)と水との反応では、以下の式
(16)の反応が生じる。

  3FeCl+4HO→Fe+6HCl+H・・・(16)
 こうした反応によって得られる水素は、例えば、純度が99%以上といっ
た高純度水素であり、燃料電池自動車(FCV)用の水素ステーション、
水素発電、各種工業用水素源として用いることができる。

【0081】なお、水素製造工程S3で生じた水素は、次の還元剤再生工
程S4でもその一部が用いられるが、外部に取り出す水素量を増やすには、
炭素分離工程S2でマグネタイト(炭素付着の無いマグネタイト)を追加
投入したり、或いは水素製造工程S3で塩化鉄(FeCl)を追加投入
したりして、還元剤再生工程S4で必要な水素よりも水素を多く生成する
ことができ、高純度で低コストな水素源として利用することができる。

【0082】ただし、追加投入された鉄化合物(マグネタイト、塩化鉄)
から水素製造工程S3で生じるマグネタイトを還元剤再生工程S4に供給
すると、マグネタイトが過剰となって還元剤再生工程S4の工程負荷が増
大する。そのため、水素製造工程S3で生成したマグネタイトから、追加
投入した鉄化合物に由来する量は抜き出して、炭素付着の無い状態で炭素
分離工程S2に投入することがよい。すなわち、二酸化炭素分解工程S1
に必要な量のマグネタイトのみを還元剤再生工程S4に供給し、残りは炭
素分離工程S2と水素製造工程S3を循環させることで、二酸化炭素分解
工程S1と還元剤再生工程S4に影響を与えることなく、水素製造工程S3
で生成する水素の量を増やすことができる。

 例えば、本実施形態では、水素製造工程S3で生じたマグネタイトのうち、
25質量%を還元剤再生工程S4に供給し、残りの75質量%を炭素分離
工程S2に供給している。

【0083】(還元剤再生工程S4)
  還元剤再生工程S4は、水素製造工程S3で生成させた水素とマグネタイ
トとを反応させることで、マグネタイトに含まれる酸素イオンを離脱(脱
酸素(還元)反応)させて、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結
晶格子構造を保った状態で、マグネタイトの酸素原子の任意の位置が空孔
となった酸素欠陥鉄酸化物(Fe4-δ(但し、δは1以上4未満))
、または酸素完全欠陥鉄を生成する。

【0084】なお、還元剤再生工程S4に導入されるマグネタイトは、水
素製造工程S3で得られたマグネタイトを用いるが、各工程の開始初期段
階、および各工程の実施中に減量したマグネタイトの補充は、純粋なマグ
ネタイトに限らず、他の物質を含むものでもよい。

【0085】外部からマグネタイトを導入する場合のマグネタイトの原料
(マグネタイト材)としては、例えば、天然鉱物である砂鉄、製鉄所など
で用いられる鉄鉱石に含まれる砂鉄を用いることができる。これらの砂鉄
をマグネタイトとして用いることによって、マグネタイトを安価で容易に
入手することができる。

  また、マグネタイト材としては、ヘマタイト(赤鉄鉱:Fe)、鉄
酸化方式の使用済みカイロ(主成分は水酸化鉄)などを用いることもできる。

【0086】本実施形態のマグネタイトは、BET法による比表面積が0.1
/g以上、10m/g以下の範囲、好ましくは0.3m/g以上、
8m/g以下の範囲、より好ましくは1m/g以上、6m/g以下の
範囲である。

【0087】マグネタイトの比表面積が0.1m/g以上であれば、固
気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必
要な反応速度が得られる。また、マグネタイトの比表面積が10m/g
以下であれば、速い反応速度を確保できると共に、二酸化炭素を分解する
時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上させることが
できる。

【0088】なお、本実施形態の還元剤再生工程S4によってマグネタイ
トを還元して得られる還元剤は、還元前のマグネタイトよりも比表面積が
大きい。還元剤の比表面積は、0.1m/g以上、30m/g以下、
好ましくは0.3m/g以上、25m/g以下、より好ましくは1m
/g以上、18m/g以下である。また、還元剤の比表面積は、マグネ
タイトの比表面積の1倍以上、3倍以下、好ましくは1倍以上、2.5倍
以下、より好ましくは1倍以上、2.0倍以下である。

【0089】また、本実施形態のマグネタイトは、平均粒子径が1μm以上、
1000μm以下の範囲、好ましくは1μm以上、20μm未満の範囲、また
は50μm超え、200μm以下の範囲である。

【0090】マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であれば、二酸化炭素
を分解する時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上さ
せることができる。更に、平均粒子径が1μmよりも大きいものにすること
で、粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性、ハンドリング性が良くな
るため、反応器壁面への固着現象やクリンカーの形成などのトラブルが回
避でき、ロータリーキルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能
となる。
また、マグネタイトの平均粒子径が1000μm以下であれば、固
気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必
要な反応速度を得ることができる。

【0091】また、本実施形態のマグネタイトは、かさ密度が0.3g/
cm以上、3g/cm以下の範囲、好ましくは0.4g/cm以上、
2g/cm以下の範囲、より好ましくは0.5g/cm以上、1g/
cm以下の範囲である。

【0092】マグネタイトのかさ密度が0.3g/cm以上であれば、
粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性が良くなるため、ロータリーキ
ルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能となる。また、マグネ
タイトのかさ密度が3g/cm以下であれば、粒子間、粒子内の空隙率
が確保でき、反応気体が粒子内へ拡散し易くなり、実用プロセスとして必
要な反応速度が得られる。

【0093】還元剤再生工程S4では、例えば、ロータリーキルンや流動
層などの固気反応装置を用いて、粉末状のマグネタイトを攪拌しつつ、
素製造工程S3で生成させた水素に接触させることによって、マグネタイ
トを構成する酸素原子が離脱して水素と反応して水(水蒸気)が生じる。
また、酸素原子が離脱したマグネタイトは、マグネタイトの結晶構造、即
ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、離脱した酸素原子の位置が空
孔となった酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄となる。

【0094】還元剤再生工程S4において、マグネタイト材がヘマタイト
を含む場合、ヘマタイトは還元されてマグネタイトとなり、さらに還元さ
れて酸素欠陥鉄酸化物または酸素完全欠陥鉄となる。

【0095】還元剤再生工程S4の反応温度は、300℃以上、450℃
以下、好ましくは350℃以上、400℃以下の範囲であればよい。

反応温度が300℃以上であれば、実用プロセスとして必要な反応速度が
得られる。また、反応温度が450℃以下であれば、反応する時に還元剤
の結晶構造が壊れることなく、高い反応性が維持でき、還元剤が繰り返し
使用することができる。かつ反応する時の消費エネルギーを抑えることが
できる。
還元剤再生工程S4では、こうした反応温度範囲に昇温させるた
めに、例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を有効利用すること
も好ましい。

【0096】還元剤再生工程S4の反応圧力は、0.1MPa以上、5M
Pa以下、好ましくは0.1MPa以上、1MPa以下の範囲であればよ
い。
反応圧力が0.1MPa以上であれば、実用プロセスとして必要な反
応速度を得ることができ、反応装置のサイズをコンパクトにすることがで
きる。また、反応圧力が5MPa以下であれば、装置の製作コストを抑え
ることができる。
【0097】還元剤再生工程S4で用いる水素ガスの濃度は、5体積%以
上100体積%以下の範囲、好ましくは10体積%以上、90体積%以下
の範囲であればよい。水素ガスの濃度が例えば90体積%程度であっても、
実質的に濃度100体積%の水素ガスと還元能力に大きな差は無い。よっ
て、濃度が100体積%の水素ガスよりもコストが低い濃度が90体積%
程度の水素ガスを用いれば、マグネタイトから低コストに還元剤を生成す
ることができる。

【0098】還元剤再生工程S4でのマグネタイトの水素による還元では、
以下の式(17)、(18)のように還元剤が生成される。

  Fe+δH→Fe4-δ+δHO(但し、δ=1以上4未満)・・・(17)
  Fe+4H→3Fe+4HO・・・(18)
【0099】ここで、得られた還元剤の活性を維持するため、還元剤再生
工程S4から二酸化炭素分解工程S1までのあいだは、還元剤への空気混
入等による酸化を防止することが好ましい。例えば、還元剤再生工程S4
から二酸化炭素分解工程S1に向けて還元剤を移送する際に、密閉状態と
して空気混入を防ぎつつ、還元剤を移送可能な構成とすれば、還元剤再生
工程S4で得られた還元剤を酸化させることなく二酸化炭素分解工程S1
に供給することができる。

【0100】なお、炭素分離工程S2で生成される炭素の生成効率を高め
るために、二酸化炭素分解工程S1と還元剤再生工程S4とを2回以上繰
り返し行い、二酸化炭素分解工程S1で生成される炭素付着マグネタイト
の炭素濃度を高めてから、炭素分離工程S2および水素製造工程S3を行
うこともできる。これにより、より低コストにナノサイズの炭素を製造す
ることができる

【0101】 以上のような本実施形態の炭素材料および水素の製造方法に
よれば、マグネタイトの結晶構造が維持され、かつ酸素原子の離脱による
原子空孔の多い酸素欠陥鉄酸化物(Fe4-δ(但し、δ=1以上4未満
))、またはマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠
陥鉄(δ=4)を還元剤として用いて、二酸化炭素を還元することにより、
低コストで効率的に二酸化炭素から炭素材料を製造することができる。

【0102】また、水素製造工程S3を構成する電解還元過程S3-1で
塩化鉄(III)を電解還元によって塩化鉄(II)にすることにより、炭素分離工程
S2で得られた塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の混合物を、高温に加熱して還元す
るなどコストの掛かる方法によらず、常温で反応させることができる簡易
で低コストな方法で、水との反応によって容易に水素を生成させることが
できる塩化鉄(II)の割合を高めることができる。

【0103】そして、電解還元過程S3-1で得られた塩化鉄(II)と水とを
反応させることによって、低コストで効率的に水を分解して、高純度な水
素を製造することができる。こうした水素製造では、マグネタイトの循環
量を増やすだけで、容易に水素の生成量を増加させることができ、例えば、
次世代製鉄所の水素還元製鉄プロセス、製油所の水素化精製プロセス、二
酸化炭素回収・再利用(CCU)技術、水素燃料電池用の水素源、水素発
電用の水素源などに幅広く用いることができる。

【0104】そして、水素製造工程S3で生成したマグネタイトを還元剤
再生工程に供給して、水素製造工程で生成させた水素を用いて還元剤を再
生することによって、外部からの供給は二酸化炭素と水だけで、二酸化炭
素を分解して炭素材料を製造し、また、水を分解して水素を製造するクロ
ーズドシステムを構築することができる。

【0105】こうした各工程の途上で発生する水素と酸素は、それぞれ生
成する工程が異なっており、互いに1つの工程内で接触することが無い。
例えば、水素は水素製造工程S3で生成され、酸素は炭素分離工程S2で
生成され、これらが互いに同一の反応槽などで混在することが無い。これ
により、酸素と水素とが接触して爆発的に反応するといった懸念もなく、
安定的に各工程の反応を行うことができる。

【0106】こうした炭素材料および水素の製造方法に用いるマグネタイ
トは、処理の過程で還元されて還元剤となるなど、その物質形態を変えな
がら循環利用されるので、ロス分以外外部からマグネタイトを供給しなく
ても、低コストに炭素および水素の製造を行うことができる。

【0107】また、炭素分離工程S2において、表面に炭素が付着したマ
グネタイトを塩酸(塩化水素の水溶液)で溶解して塩酸に不溶性の炭素を
分離させることで、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素材料を得ること
ができる。

【0108】また、二酸化炭素分解工程S1、炭素分離工程S2、水素製
造工程S3、還元剤再生工程S4において、例えば、製鉄所、火力発電所、
セメント工場、ゴミ焼却施設などの稼働に伴って発生した熱(排熱)を、
反応時の熱源として有効利用することで、排熱の大気中への放出量を抑制
でき、温暖化防止に寄与するまた、再生可能エネルギー由来の電気・蓄
熱、及び高温の熱を取り出せる原子炉である高温ガス炉の熱エネルギーを
有効利用することで、COの発生を抑制でき、カーボンニュートラルや
脱炭素社会の実現に寄与
する。

【0109】以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、
例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していな
い。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能で
あり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行
うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含ま
れると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含ま
れるものである。

【0110】例えば、上述した実施形態では、マグネタイトの一般的な組
成をFeとしているが、こうしたマグネタイトは、他の物質、例えば、
チタン(Ti)などが含まれている砂鉄であってもよい。こうした他の物
質、例えば、チタンは、触媒として二酸化炭素の還元に寄与している可能
性がある。

【実施例】【0111】
  以下、本発明の炭素および水素の製造方法のうち、電解還元過程S3-1
の効果を検証した。
検証にあたって、図4に示す構成の電解装置を用意し
た。
 条件は以下の通りである。
(1)温度:25℃。
(2)圧力:大気圧(1気圧)。
(3)陰極液:アルゴン雰囲気下において濃度2モル/Lの塩酸水溶液60
  mL中に、Fe3+の濃度20.7モル/Lとなるようにマグネタイト
  を溶解したものを用いた。pHは0.4以下になるように保った。

(4)陽極液:濃度1モル/Lの希硫酸水溶液を用いた。
(5)陰極電極(作用極):炭素棒(φ6mm:有効電極面積9.7cm
  を用いた。

(6)陽極電極(対極):白金線を用いた。
(7)参照電極:銀/塩化銀電極(Ag/AgCl, SHEに対して+0.199 V)を用いた。
(8)隔壁:ナフィオン(登録商標)膜を用いた。
(9)陰極槽の雰囲気:アルゴンガス雰囲気とした。
(10)陰極電極への印加電位:標準水素電極(SHE)に対して+0.7
  V~0.0Vの範囲(参照電極に対して+0.5V~-0.2Vの範
  囲)とした。

 
図5 検証例の結果を示すグラフ

【0112】
上述した条件で、0秒~54000秒経過までの電流値およ
び電気量の変化を測定した。この結果を図5に示す。本検証例で用いたFe
(III)の物質量は1.242mmolであることから、上記の式(1)の反応
完了に必要となる理論電気量は119.85Cである。これに対し、図5
に示す電解終了時までに消費された電気量は119.66Cであることか
ら、式(1)の電解還元反応が99.8%完了したと考えられる。反応完
了後の陰極液を、ロータリーエバポレータを用いて減圧乾固したところ、
0.1833gの淡緑色粉末が得られた。


図6. 検証例の結果を示すXRDのピークパターン図

【0113次に、この淡緑色粉末をX線回折装置(XRD)を用いて解
析した。この結果を図6に示す。なお、図6の上側の線が今回の測定結果、
下側の線がFeCl・2HOの文献値である。図6に示す結果によれば、
得られた淡緑色粉末のピークパターンは、FeCl・2HOの既知のピ
ークパターンと近似したピークを有している。よって、式(1)に示した
電解還元反応が支配的かつ定量的に進行することを確認できた。

【産業上の利用可能性】
【0114】 本発明は、二酸化炭素および水を用いて、炭素材料と水素と
を低コストで効率的に生成することができる。例えば、製鉄プラント、火
力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設など、二酸化炭素、およ
び排熱を多く排出するプラント等に適用することで、二酸化炭素の排出削
減、水素の有効利用と、これに付随してナノサイズの炭素などの高付加価
値の炭素材料の製造を行うことができる。したがって、産業上の利用可能
性を有する。
※ ”フォトファブ”専門の半導体製造事業を牽引してきたわたし(たち)
  にとって、興味深い企業化課題であり、死別した方を除いても両手で
  は足りない知人の名前を挙げることができるほど。短歌の仲間で三名
  を数える(偶然ですが)。大変興味深い事業である。

人間の未来 AIの未来

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
----------------------------------------------------------------------------------

   
          『水平線 back number』 

          出来るだけ嘘は無いように
          どんな時も優しくあれるように
          人が痛みを感じた時には
          自分の事のように思えるように

          ※この楽曲はインターハイの出場を目指していた
           高校生に向けて書き下ろされたという。コロナ禍 
           の人の心に大きな「空虚さ」を残しました。



 今日の言葉:絶望から立ち上がる知恵を!

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 55

2024年11月18日 | 第4次産業(マルチメディア)革命

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-


【季語と短歌:11月19日】
       
         神無月比良に冠雪冬に入る 
                高山 宇 (赤鬼)


⬛ 世界最高の蓄熱密度 低温蓄熱ゲル開発
拝跪されて廃棄されていた低温排熱の回収・再利用を推進し、カーボンニ
ュートラル
社会の実現に貢献
11 月14日、三菱電機株式会社と国立大学法人東京科学大学は、水を主成

分とする感温性※2の高分子ゲル※3を利用して、30℃~60℃の低温の熱
を世界最高※4の蓄熱密度※5(562kJ/L)で蓄えることのできる蓄熱材

開発した。


開発した蓄熱材は、これまで工場、自動車、オフィスや住宅環境等から大
気中に廃棄されてい
た低温排熱の回収・再利用に有効で、化石燃料の消費
量を削減し、省エネルギー化や脱炭素化に
よるカーボンニュートラル社会
の実現に貢献。 

地球規模での温暖化やエネルギー危機が拡大する中、政府が2020年に発表
した「2050年カー
ボンニュートラル」宣言、および2021年に発表した「
2030年度の温室効果ガスの排出量46%削
減(2013 年度比)」の実現に向
け、省エネルギー化の推進が求められています。中でも、新たな
省エネル
ギー技術の開発と導入普及が重要課題となっており、経済産業省は「用途
に応じた開発
と蓄熱密度の向上、使用材料の削減、低コスト材料の採用等
による蓄熱運用の低コスト化が必要」
。排熱の有効活用を図るためには、
特に80℃以下の低温排熱を高密度(333kJ/L
以上※7)に蓄えられる安価
な材料を用いた蓄熱材が求められていますが、一般的に蓄熱温度が低
くな
るほど蓄熱密度が低くなるため、これまでほとんど開発されていなかった。
研究グループは今回、安価な水を主成分とし、人などの生体の細胞質にみ
られる高分子が混み合った環
境(高分子混雑環境)を模倣することで、低
温でも高密度に蓄熱できる新しい感温性高分子ゲル
を利用した蓄熱材を開
発した。温めると高分子が膨らんだ構造から縮んだ構造へと変化し、
高分
子混雑環境を形成。高分子混雑環境下にある水分子は配列構造が乱れて高
エネルギー
化し、熱を貯める容量が大きくなるため、低温の熱を高密度に
蓄えられるようになることを世界
で初めて実証。これは、三菱電機が保有
する分子シミュレーション技術や蓄熱材構造
の解析・評価技術とScience
Tokyo が保有する階層構造ポリマー合成技術、蓄熱材の合成技術に
より実
現したもの。
【要点】
・ 低温の熱でも高密度に蓄えられる蓄熱材料として、水を主成分とした新
 しい感温性高分子ゲルを開発 
・ 60℃以下の蓄熱温度において世界最高の蓄熱密度を実現、均質化によ
 る大量合成試作に成功
【概要】
1. 低温の熱でも高密度に蓄えられる蓄熱材料として、水を主成分とした新
 しい感温性高分子ゲルを開発
人などの生体の細胞質には高分子が高濃度で存在し、「高分子混雑環境」
が形成されている。高分子混雑環境下にある水分子は高分子間の狭い空間
に閉じ込められ、配列構造が乱れることがこれまでにも知られていた。水
分子は配列性が低くなるほど、エネルギーが高くなる性質を持つため、高
分子混雑環境の有無を制御することができれば、水分子のエネルギーの高
低も制御が可能になり、そのエネルギーの差分だけ蓄熱密度を高くできる
のではないかという仮説を立てた。 高分子混雑環境の有無を制御するため
に、温度によって親水性と疎水性に変化する感温性高分子を利用すること
に着目しましたが、従来の感温性高分子は高分子混雑環境を形成すること
ができなかった。そこで、三菱電機が独自に開発してきた分子シミュレー
ション技術を駆使して、感温性高分子の組成と構造を検討した結果、高分
子濃度が高い組成により、高分子混雑環境の温度制御が可能な、水を主成
分とするこれまでにない感温性の高分子ゲルの設計・開発に成功した。 
開発した感温性高分子ゲルは放熱時(低温時)に親水性であるため、感温
性高分子ゲルと水は分離せずに混ざりあい、多くの水分子は感温性高分子
ゲル内に高配列で存在。
感温性高分子ゲルが温められると疎水性への構造相転移反応が起こり、高
分子鎖が縮む。高分子鎖が縮んで高分子混雑環境になると、高分子から離
れた網目構造の中心付近にい
た水分子は高分子の狭い網目構造に束縛され
ないため
、すり抜けて感温性高分子ゲルの外側に飛び出し、感温性高分子
ゲルと水は分離する。一方、高分子の近くにいた水分子は高分子の狭い網
目構造に束縛され閉じ込められることで水素結合反応が弱くなり、水分子
の配列構造が乱れて高エネルギー化する。このように、感温性高分子ゲル
の構造相転移反応と、水分子間の水素結合反応からなる連成反応による水
分子の高エネルギー化を利用し、高密度に蓄熱できることを世界で初めて
実証した。 また、この感温性高分子ゲルは、化学物質管理促進法の指定物
質を使わず、安全で安価な水(構成比6割~9割)と無毒で不燃性の感温性
高分子で構成されており、入手しやすく安心して使える素材。 


2. 60℃以下の蓄熱温度において世界最高の蓄熱密度を実現、均質化による
 大量合成に成功 

三菱電機とScience Tokyo(旧 東京工業大学)は2016年から共同研究を行
ってきた。高い階層構造ポリマー合成技術を保有するScience Tokyoにお
いて、感温性高分子ゲルの合成法を検討し、合成原料の選定と合成反応経
路の設計を実施しました。三菱電機では、感温性高分子ゲルをラボレベル
で合成、評価し、60℃以下の低い蓄熱温度で世界最高※4の蓄熱密度(562
kJ/L)を実現しました。また、Science Tokyoが開発した合成反応制御技
術により、感温性高分子ゲルの均質化を実現し、大量合成試作でもラボレ
ベルと同等の蓄熱密度を確認した。 
蓄熱温度が30℃~60℃(温度差30℃)における蓄熱材ごとの蓄熱密度を
比較したところ、温水で125kJ/L、市販品である脂肪酸で225kJ/L、パラ
フィンで260kJ/Lであるのに対し、今回開発した感温性高分子ゲルは562
kJ/Lと2倍以上の圧倒的な蓄熱密度を有す。

【関連特許】
1. 特許第6704553号 蓄熱装置 三菱電機株式会社
【要約】  図1のごとく、蓄熱装置は、水、有機溶媒、及び水又は有機溶媒
の化合物からなる群から選択される溶媒と、感温性高分子とからなる感温
性高分子ゲル
を有する蓄熱材が封入された容器と、容器に収容され、加熱
冷却用流体と熱交換して蓄熱材を加熱又は冷却して蓄熱材に温熱又は冷熱
を蓄えると共に、熱利用流体と熱交換して蓄熱材から吸熱して蓄熱材から
放熱させる熱交換器と、を備え、蓄熱材は、下限臨界溶液温度を境界とし
て親水性と疎水性とが可逆的に変化するものであり、親水性と疎水性との
変化の過程において感温性高分子ゲルに含まれる溶媒が液体状態を維持す
るものである。


図1. 蓄熱システムを示す回路図

図2 蓄熱装置を示す断面図      図3 蓄熱装置を示す斜視図

 1  蓄熱装置、2  蓄熱システム、3  熱源、10  容器、11  熱交換器、
12  フィン、13  加熱冷却配管、14  熱利用配管、15  継手、20  
戻り配管、21  往き配管、22  循環ポンプ、23  放熱端末、31  熱源
回路、32  利用回路、50  入口配管、51  出口配管、52  加熱冷却ポ
ンプ、60  蓄熱材、61  感温性高分子、62  水。
【発明の効果】
本発明によれば、蓄熱材は、下限臨界溶液温度を境界として親水性と疎水
性とが可逆的に変化するものであり、親水性と疎水性との変化の過程にお
いて感温性高分子ゲルに含まれる溶媒が液体状態を維持する。このため、
大型化が抑制される。また、蓄熱装置は、蓄熱材に冷熱を蓄えることがで
きる。このように、蓄熱装置は、冷却機器に適用され且つ大型化が抑制さ
れる。

【特許請求の範囲】【請求項1】
  水、有機溶媒、及び水又は有機溶媒の化合物からなる群から選択される
溶媒と、感温性高分子とからなる感温性高分子ゲルを有する蓄熱材が封入
された容器と、前記容器に収容され、加熱冷却用流体と熱交換して前記蓄
熱材を加熱又は冷却して前記蓄熱材に温熱又は冷熱を蓄えると共に、熱利
用流体と熱交換して前記蓄熱材から吸熱して前記蓄熱材から放熱させる熱
交換器と、を備え、前記蓄熱材は、下限臨界溶液温度を境界として親水性
と疎水性とが可逆的に変化するものであり、親水性と疎水性との変化の過
程において前記感温性高分子ゲルに含まれる前記溶媒が液体状態を維持す
るものであり、  前記感温性高分子は、架橋構造を有すると共に、ヒドロ
キシ基、スルホン酸基、オキシスルホン酸基、リン酸基及びオキシリン酸
基からなる群から選択される一種以上の官能基を分子末端に有し、
  前記感
温性高分子を構成する繰り返し単位と、前記官能基と、前記架橋構造の単
位とのモル比が、99:0.5:0.5~70:20:10である
  蓄熱装
置。
【請求項2】  前記熱交換器は、  前記加熱冷却用流体が流れる加熱冷却配
管と、前記熱利用流体が流れる熱利用配管と、を有する請求項1記載の蓄
熱装置。
【請求項3】  前記感温性高分子ゲルは、  下記一般式(1)【化1】

 

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、N-3-イソプロ
ポキシプロピル基又はN-1-メトキシメチルプロピル基を表し、Xは、
共有結合手を表すか又はヒドロキシ基、スルホン酸基、オキシスルホン酸
基、リン酸基及びオキシリン酸基からなる群から選択される一種以上の官
能基を表し、*は、共有結合手を表す)又は
  上記一般式(2【化2】(
式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、N-3-イソプロ
ポキシプロピル基又はN-1-メトキシメチルプロピル基を表し、Xは、
共有結合手を表すか又はヒドロキシ基、スルホン酸基、オキシスルホン酸
基、リン酸基及びオキシリン酸基からなる群から選択される一種以上の官
能基を表し、*は、共有結合手を表す)で表される構成単位と、



(式中、*は、共有結合手を表し、qは、1~3の整数を表す)で表され
る構成単位と、を含み、前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表され
る構成単位の共有結合手と前記一般式(3)で表される構成単位の共有結
合手とが結合した架橋構造を有し、前記一般式(1)又は前記一般式(2)
で表される構成単位と、前記官能基であるXと、前記一般式(3)で表さ
れる構成単位とのモル比が、99:0.5:0.5~70:23:7であ
  請求項1又は2記載の蓄熱装置

※ 事業化に当たって、コンパクトがダウンサイジング化できるか想定し
 応用展開できるかのビジョン化と用途戦略の是非が大切なり、環境エネ
 ルギーへのインパクトを見積(経済的貢献)喧伝する段階にある発明で
 ある考えられる。大変面白い実用課題である。




【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ⑤】

2. 特開2024-77350 炭素および水素の製造方法 三菱マテリアル株式
 会社他 ②
【発明を実施するための形態】【0023】
まず最初に、本実施形態の炭素および水素の製造方法で用いる還元剤につ
いて説明する。
 還元剤は、後述する二酸化炭素分解工程S1において、二酸化炭素と反応
させることによって、二酸化炭素を還元して炭素と酸素に分解する材料で
ある。本実施形態で用いる還元剤は、Fe4-δ(但し、δは1以上4未
満)
で表されるマグネタイト(四酸化三鉄)の酸素欠陥鉄酸化物、ヘマタ
イトや使用済みカイロ(主成分は水酸化鉄)の酸素欠陥鉄酸化物、または
酸素完全欠陥鉄を用いる。


 図1は、マグネタイトの1/4単位格子の結晶構造を示す模式図である。
  マグネタイトは、結晶学的に、スピネル型結晶格子構造を有し、酸素イオ
ン(O2-)が立方最密充填配置にされ、その隙間(Asite、Bsit
e)に、+3価の鉄(Fe+3)、+2価の鉄(Fe2+)が2:1の割合
で配置されている。マグネタイトは、一般式としてFeで表される。
【0025】本実施形態で用いる還元剤は、このようなマグネタイトの結
晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、図1に示す任意の位
置の酸素イオンを離脱させることで得られる酸素欠陥鉄酸化物(1≦δ<
4未満)、またはマグネタイトを完全に還元することで得られるスピネル
型結晶格子構造を保った酸素完全欠陥鉄(δ=4)、またはヘマタイトや使
用済みカイロを還元することで得られるスピネル型結晶格子構造を保った
酸素欠陥鉄酸化物、またはヘマタイトや使用済みカイロを完全に還元する
ことで得られるスピネル型結晶格子構造を保った酸素完全欠陥鉄である。
こうした還元剤は、後述する還元剤再生工程S4において生成される。
【0026】マグネタイトを還元することで得られるスピネル型結晶格子
構造を保った酸素欠陥鉄酸化物は、Fe4-δで表され、マグネタイト
から離脱させた酸素イオン(O2-)の離脱割合によって、δが1以上4未
満の範囲にされる。また、マグネタイトから酸素イオンを全て離脱させた
(即ち、δ=4)ものが、上述した酸素完全欠陥鉄となる。
【0027】  δは酸素欠陥度とされ、マグネタイトの結晶構造、即ちスピ
ネル型結晶格子構造を保った状態の酸素欠陥鉄酸化物のマグネタイトに対
する酸素の欠陥割合である。こうした酸素欠陥度δは、還元剤再生工程S4
においてマグネタイトが水素と反応する前の質量と、反応後の質量との差
分を計測し、質量の減少量(差分)がマグネタイトから離脱した酸素量(
この離脱した酸素の格子中の配置位置が原子空孔、即ち欠陥となる)と等
しいことから、この質量の減少量から酸素欠陥度δ(δ=1~4)を算出す
ることができる。
【0028】そして、マグネタイトから酸素イオンが離脱した部位は、ス
ピネル型結晶格子構造を保った状態で原子空孔となり、離脱分だけカチオ
ンが結晶格子内に多く閉じ込められ、格子間隔が拡がった状態になる。
のような酸素離脱による原子空孔が、還元剤として二酸化炭素の脱酸素反
応(還元反応)を生じさせる。
【0029】本実施形態の還元剤(酸素欠陥鉄酸化物、酸素完全欠陥鉄
は、平均粒子径が、例えば1μmよりも大きければよく、1μm以上20μm
未満であることが好ましく、また、50μmを超え200μm未満であるこ
とも好ましい。
【0030】還元剤の平均粒子径が1μmよりも小さいものにした場合は、
実験結果によれば、二酸化炭素を分解する際に一酸化炭素の生成割合が高
くなり、炭素の回収率が低くなる可能性がある。平均粒子径が1μm以上の
還元剤を用いることで、高い炭素回収率が維持できると同時に、還元剤粒
子の凝集性が低くなるため、反応器の壁面への固着現象などのトラブルが
回避でき、ロータリーキルンなどの工業用反応装置への適用が可能となる。
【0031】更に、還元剤の平均粒子径を20μm未満にすることで、高い
反応速度を維持することができる。また、還元剤の平均粒子径を50μmを
超え200μm以下にする場合、粒子の飛散性が下がり、流動化性能が良く
なるため、流動層などの工業用の反応装置への適用が可能となる。この場
合、ロータリーキルン式の反応装置と比べて、固-気接触性や伝熱性が良
く、設備費が低く、反応装置のサイズをコンパクトにすることができる。

図2は、本発明の一実施形態に係る炭素および水素の製造方法を段階的に
示したフローチャートである。
本実施形態の炭素および水素の製造方法は、
表面に炭素を付着させたマグネタイトを生成する二酸化炭素分解工程S1
と、炭素と、塩化鉄とを生成する炭素分離工程S2と、マグネタイトと、
水素と、塩化水素ガスとを生成する水素製造工程S3と、還元剤を生成す
る還元剤再生工程S4と、を有する。こうした各工程で、マグネタイトや
これを還元させた還元剤を循環利用して、外部から供給される二酸化炭素
及び水から、炭素および水素を製造する。

【0033】<二酸化炭素分解工程S1>
  二酸化炭素分解工程S1は、ロータリーキルンや気泡流動層などの反応装
置(二酸化炭素分解炉)を用いて、例えば、平均粒子径が1μm~500μ
m程度の粉末状の還元剤を攪拌しつつガス状の二酸化炭素に接触させるこ
とによって、二酸化炭素を分解(還元)する。そして、表面に炭素を付着
させたマグネタイトを生成する。

【0034】二酸化炭素分解工程S1に用いる反応装置としては、循環流
動層を用いることもできるが、気泡流動層と比較して、反応器全体の高さ
が高い、設備費が高い、粒子再循環ループの設計と操作が複雑、粒子の滞
留時間が短い(反応装置内での滞留時間は秒のオーダー)、使用できる還
元剤の粒子径が限られる、粒子の摩耗を促進される、高いガス流速の維持
や粉体の循環に必要なエネルギーコストが大きい、などのデメリットがあ
る。

【0035】この二酸化炭素分解工程S1に用いる二酸化炭素の供給源と
しては、例えば、二酸化炭素を多量に排出する施設、例えば製鉄所、火力
発電所、セメント工場、ゴミ焼却施設、バイオガス生成施設、天然ガス井
戸などから排出される二酸化炭素を用いればよい。また、還元剤は、後述
する還元剤再生工程S4から供給される。

【0036】二酸化炭素分解工程S1における反応温度は、300℃以上、
450℃以下、好ましくは350℃以上、400℃以下の範囲であればよ
い。
このように、反応温度を300℃以上、450℃以下といった温度範
囲にすることで、還元剤がスピネル型結晶格子構造を維持することができ
る。反応温度が例えば500℃以上といった高温であると、マグネタイト
の繰り返し利用により、還元剤がスピネル型結晶格子構造を維持できなく
なる懸念がある。かつ反応する時の消費エネルギーが増える懸念がある。

【0037】二酸化炭素分解工程S1では、こうした反応温度範囲に昇温
させるために、二酸化炭素供給源である製鉄所、火力発電所、セメント工
場、ゴミ焼却施設などの稼働に伴って発生した熱(排熱)、再生可能エネ
ルギー、及び高温の熱を取り出せる原子炉である高温ガス炉の熱エネルギ
ーを熱源として有効利用することも好ましい。

【0038】二酸化炭素分解工程S1における反応圧力は、0.01MPa
以上、5MPa以下、好ましくは0.1MPa以上、1MPa以下の範囲
であればよい。
反応圧力が0.01MPa以上であれば、実用プロセスと
して必要な反応速度を得ることができ、更に、0.1MPa以上であれば、
二酸化炭素濃度が低い実際の排気ガスへの直接対応も可能となる。また、
反応圧力が5MPa以下であれば、装置の製作コストを抑えることができ
る。

【0039】二酸化炭素分解工程S1では、反応温度、反応圧力を高める
ことによって、二酸化炭素の分解速度が高まり、二酸化炭素の処理効率を
高めることができる。一方、反応温度が高すぎると、還元剤のスピネル構
造が破壊されるおそれがある。

【0040】二酸化炭素分解工程S1での二酸化炭素の分解には、以下の
式(1)、(2)の2段階と式(3)の1段階の反応が生じる。

  CO+2e→CO(中間生成物)+O2-・・・(1)
  CO+2e→C+O2-・・・(2)
  CO+2e→C+2O2-・・・(3)
  そして、上述した式(1)、(2)、(3)で生じた酸素は、以下の式
(4)、(5)で酸素欠陥鉄酸化物(式(4))や酸素完全欠陥鉄(式(
5))の原子空孔に挿入される。

  Fe4-δ+δO2-→Fe+2δe(但し、δ=1以上4未満)
・・・(4)

  3Fe+4O2-→Fe+8e・・・(5)
【0041】上記の式(1)によって得られた一酸化炭素(CO)は、水
素添加によって、メタン、メタノールなどの炭化水素や各種樹脂などの有
用な化成品を得るための原料として用いることができる。
【0042】二酸化炭素分解工程S1での上述した反応で、すべての二酸
化炭素を式(2)まで、または式(3)で反応させた場合には、最終的な
生成物としてガスの発生を伴わない。即ち、二酸化炭素中の酸素は、酸素
欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄に全て取り込まれると考えられる。
これを考慮して二酸化炭素と酸素欠陥鉄酸化物の反応は、式(6)、二酸
化炭素と酸素完全欠陥鉄の反応は、式(7)で表される。
2Fe4-δ+δCO→2Fe・δC(炭素付着マグネタイト。
但し、δ=1以上4未満)・・(6)
3Fe+2CO→Fe・2C(炭素付着マグネタイト)・・・(7)
【0043】二酸化炭素分解工程S1で還元剤として用いる酸素欠陥鉄酸
化物や酸素完全欠陥鉄が、二酸化炭素を炭素まで分解できるのは、これら
の還元剤が非平衡状態で形成される準安定な結晶構造であるスピネル型結
晶格子構造を有しており、室温においても酸素と徐々に反応し、酸素イオ
ンを取り組み、より安定なFeに変化しようとするためである。即ち、
格子中に原子空孔を有する不安定なスピネル型結晶格子構造がより安定な
原子空孔のないスピネル型結晶格子構造に変化しようとすることから生じ
るものと考えられる。
【0044】こうした酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄の安定化(マグ
ネタイト化)の過程で、酸素イオンが結晶中に取り込まれると結晶は電気
的に中性を維持しようとするために、電子を結晶表面から放出しようとす
る。酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄では+2価のFe(Fe2+)が
電子を放出し得る原子として存在するが、酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠
陥鉄の結晶の不安定性のために、通常と異なる還元ポテンシャルを生じて
いるものと考えられる。
【0045】二酸化炭素分解工程S1では、還元剤として用いる酸素欠陥
鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄による二酸化炭素の分解能力を最大限にするた
め、反応環境における酸素濃度を5体積%以下に保つようにすることが好
ましい。
【0046】二酸化炭素分解工程S1における反応環境で酸素濃度が5体
積%よりも高いと、二酸化炭素を構成する酸素が還元剤(酸素欠陥鉄酸化
物、または酸素完全欠陥鉄)に取り込まれる前に、この還元剤の酸素欠陥
部位に、反応雰囲気中の酸素が取り込まれて、還元剤の二酸化炭素分解能
力が低下する懸念がある。
【0047】
二酸化炭素分解工程S1で二酸化炭素の分解によって生じた
炭素は、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素として生成される。二酸
化炭素分解工程S1において、同一温度条件では、上述した式(1)の反
応速度は、式(2)の反応速度よりも遅いが、式(1)の反応速度を高め
ることによって式(2)の反応が迅速に進行するようになり、微細なナノ
サイズの炭素粒子を生成できる。式(1)と式(2)の反応速度は、酸素
欠陥度δを大きくすることと、反応温度、反応圧力を高くすることにより、
高めることができる。
【0048】こうしたナノサイズの炭素は、酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全
欠陥鉄が酸化されて生じたマグネタイトの表面に付着する、あるいは表面
を覆うように生成される。こうした表面に炭素を付着させたマグネタイト
は、次の炭素分離工程S2に送られる。
【0049】一方、本実施形態では、二酸化炭素分解工程S1で二酸化炭
素の分解によって、還元剤はマグネタイト(Fe)になる。本実施形
態では、炭素は、マグネタイトの表面に比較的強固に付着した状態で生じる。
【0050】<炭素分離工程S2
  炭素分離工程S2は、マグネタイトの塩化反応(マグネタイトから塩化鉄
(III)(FeCl)と塩化鉄(II)(FeCl)への転換)と炭素回収操作よ
り構成される。マグネタイトの塩化反応は、塩酸溶解による湿式塩化法と
塩化水素ガスによる乾式塩化法がある。
【0051】湿式塩化
  マグネタイトの塩化反応を湿式塩化で行う場合、二酸化炭素分解工程S1
で得られた表面に炭素を付着させたマグネタイトと、塩酸(塩化水素の水
溶液)とを反応させることにより、マグネタイトを塩酸に溶解させ、塩酸
に不溶な炭素をマグネタイトから分離する。塩酸に溶解したマグネタイト
は、塩化水素との反応によって塩化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II))と水とを
生成する。

【0052】 塩酸に溶解させたマグネタイトと炭素の分離は、例えば、濾
過などの固液分離によって行えばよい。また、生成した塩化鉄(塩化鉄(III)
と塩化鉄(II)の混合物)は、次の水素製造工程S3に送られる。こうした湿
式塩化の場合、生成する酸化鉄が全て溶解されて炭素を分離することがで
きる。
【0053】  炭素分離工程S2(湿式塩化)で用いる塩酸は、塩化水素濃
度が例えば5質量%~37質量%の範囲のものを用いればよい。塩酸の塩
化水素濃度が5質量%未満では反応が遅くなる懸念がある。また、37質
量%を超える濃塩酸は塩化水素の揮発が速く取り扱いが難しい。炭素分離
工程S2(湿式塩化)における反応温度は、10℃以上、150℃以下、
好ましくは50℃以上、100℃以下の範囲であればよい。10℃未満で
は反応速度が遅く、また冷却設備が必要となる。150℃を超えると消費
エネルギーが多く、かつ溶液の蒸発が起きてしまって効率が悪い。炭素分
離工程S2(湿式塩化)では、こうした反応温度範囲に昇温させるために、
例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を有効利用することも好ま
しい。
【0054】炭素分離工程S2(湿式塩化)でのマグネタイトの塩化反応
は、以下の式(8)~(9)で表される。
  2Fe・δC+16HCl→4FeCl+2FeCl+8HO+
δC(湿式塩化:10~150℃)(但し、δ=1~4)・・・(8)
  2Fe+16HCl→4FeCl+2FeCl+8HO(湿
式塩化:10℃~150℃)・・・(9)
【0055】(乾式塩化
 マグネタイトの塩化反応を乾式塩化で行う場合、二酸化炭素分解工程S1
で得られた表面に炭素を付着させたマグネタイト、または水素製造工程S3
で得られたマグネタイトと、塩化水素ガスとを反応させることによって塩
化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II))と水とを生成する。
【0056】
  炭素分離工程S2(乾式塩化)で用いる塩化水素ガスは、塩化水素濃度
が例えば50質量%~100質量%の範囲のものを用いればよい。塩化水
素の濃度が50質量%未満では反応が遅くなる懸念がある。炭素分離工程
S2(乾式塩化)における反応温度は、50℃以上、300℃以下、好ま
しくは80℃以上、200℃以下の範囲であればよい。50℃未満では反
応速度が遅く、また300℃を超えると消費エネルギーが多く効率が悪く
なると同時に、塩化反応が発熱反応であるため高温では反応の進行に不利
となる。炭素分離工程S2(乾式塩化)では、こうした反応温度範囲に昇
温させるために、例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を有効利
用することも好ましい。
【0057】炭素分離工程S2(乾式塩化)でのマグネタイトの塩化反応
は、以下の式(8)~(9)で表される。
  2Fe・δC+16HCl→4FeCl+2FeCl+8H
+δC(乾式塩化:50~300℃)(但し、δ=1~4)・・・(8)
  2Fe+16HCl→4FeCl+2FeCl+8HO(乾
式塩化:50℃~300℃)・・・(9)

【0058】  消費エネルギーを低減するため、炭素が付着されていない
マグネタイト(水素製造工程S3で得られた単なる水素製造のために循環
されているマグネタイト)は、こうした塩化水素ガスによる乾式塩化を用
いることが好ましい。乾式塩化の場合、炭素付着マグネタイトを塩化水素
ガスによって塩化鉄に転換した後、生成物を水に溶解させることによって、
不溶成分として炭素を分離することができる。
【0059】炭素分離工程S2でマグネタイトから分離された炭素(炭素
材料)は、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素であり、粒子径が1μm
を超えるものは殆ど生成しない。こうしたナノサイズの炭素粉末は、純度
が例えば99%以上の高純度の炭素であり、カーボンブラック、活性炭と
して、ゴム補強用添加剤、電池材料、トナー、着色剤、導電材料、触媒、
吸着剤などの機能性の炭素材料に、または還元剤として、製鉄用コークス
代替などに直接用いることができる。また、人造黒鉛、カーボンファイバ
ー、カーボンナノチューブ等の炭素材料の製造原料として用いることがで
きる。
【0060】
水素製造工程S3
  水素製造工程S3は、電解装置を用いて、炭素分離工程S2で得られた
塩化鉄(III)の還元反応(塩化鉄(III)から塩化鉄(II)への還元)を行う電解還
元過程S3-1と、この電解還元過程S3-1で得られた2価の塩化鉄と
水とを反応させて、マグネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生成する
加水分解過程S3-2と、を有している。この水素製造工程S3で生じた
マグネタイトは、次の還元剤再生工程S4に送られる。また、塩化水素は
、炭素分離工程S2で用いる塩酸の製造原料として用いることができる。
  なお、塩化鉄(II)溶液の濃縮、乾燥、造粒等の操作は膜分離装置、蒸発装
置、晶析装置、スプレードライヤー等の装置を用いて、所定の粒子径を持
った塩化鉄(II)粒子にした後、水素、マグネタイト製造反応に送ることも
ある。
【0061】(電解還元過程S3-1)
  図3は、水素製造工程S3を構成する電解還元過程S3-1で用いる電
解装置の一例を示す模式図である。本実施形態の電解装置10は、陰極槽
11と、陽極槽12と、陰極槽11および陽極槽12の間に形成される隔
壁13と、を有している。また、陰極槽11には、陰極電極(作用極)
21、および参照電極22が設けられ、また陽極槽12には、陽極電極
(対極)23が設けられている。更に、陰極電極21と陽極電極23との
間に電圧を印加する電源装置14が設けられている。


図3 水素製造工程S3を構成する電解還元過程S3-1で用いる電解装
 置の一例を示す模式図
                          この項つづく                               
 
人間の未来 AIの未来

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)
サイズ B6判/ページ数 226p/高さ 19cm
商品コード 9784062209724NDC分類 304C
コード C0095

出版社内容情報
世界と日本の未来を、二人の最高の知性が語り合う。「ひらめき」の正体、
で通用する人材をつくるには、人間は不老不死になれるか10年後、100年
後の世界と日本の未来を、ノーベル賞学者と国民栄誉賞棋士、最高の知性
を持つ二人がとことん語り合う!
iPS細胞、将棋界とAIといった二人の
専門分野に加えて、「ひらめき」「勘」の正体、世界で通用する人材をつ
くるにはどうするか、人間は不老不死になれるかといった、人類の普遍的
なテーマについても熱く討論する

まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人間の未来AIの未来 ⓵
遺伝子を「シュレッダーで破壊」!?
人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学
者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』
(現代ビジネスオンライン版 2024.11.14)
意味づけするのは人間の仕事
AIって抜群に優秀な部下の一人なんですよ。膨大な知識を持っていて、い
つも冷静沈着。感情を交えずに「山中先生、これを選択した場合、このよ
うになる可能性が13パーセント高くなります」(笑)。とても貴重な情報
ではあるけれど、あくまでセカンドオピニオンというか、彼は部下の一人
であって意思決定者ではないと話す山中氏。それは医療の世界では決定的
に重要なこと。治療方針を最終的にどうするかは、患者さんと医師が決定
する。たとえば、末期がんの患者さんに対して、AI君は「このがんは、い
かなる治療をしても99・99パーセント効果がありません。だから治療は
中止して、ターミナルケア(終末期医療)に移行しましょう」と論理的に
言ってくるかもしない。と話す。
                  この項つづく
   
混声合唱曲 日本大学合唱団
         『二十億光年の孤独』 
     曲:木下牧子/詩:谷川俊太郎


 今日の言葉:

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境 54

2024年11月17日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月18日】

          紅葉や小雨滴る追悼会 
                   高山 宇 (赤鬼)

※午前中、溝掃除。昨年の11月から今年10月に5名の方々が亡くなられた
 町内会の追悼会。温暖化で排出廃棄物が増えて短時間といえ重労働。




 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖     
リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑨

最新電池電圧監視装置

1. 特開2023-151371 電池電圧監視装置 エイブリック株式会社
【要約】下図2のごとくm電池電圧監視装置は、クロック生成回路と、ソ
ース(以下S)とバックゲートとが接続されている第1N型トランジスタ(以
下Tr)、第2N型Tr、第1P型Tr及び第2P型Trを有し、第1N型
Tr及び第1P型Trの一方のドレイン(以下D)は他方のSと、一方のS
は信号入力部と、他方のDは信号出力部と接続され、第2N型Tr及び第
2P型Trの一方のDは他方のSと、一方のSは信号入力部と、他方のD
は信号出力部と接続されるスイッチ回路と、第1P型Trの第1制御信号
と第2P型Trの第2制御信号とを生成する第1生成回路と、第1N型Tr
の第3制御信号と、第2N型Trの第4制御信号とを生成する第2生成回
路とを備える、電池システムに内蔵できる電池電圧監視装置を提供する。


図2. 本実施形態に係る電池システムの第2ADCの一例を示す図
【符号の説明】【0083】1…電池システム、10-1、10-2…電
池セル、20…バスバー、30-1、30-2…電池電圧監視IC、32
-1、32-2…マルチプレクサ、34-1、34-2…第1ADC、36
-1、36-2…第2ADC、40-1…第1クロックブートストラップ
回路、40-2…第2クロックブートストラップ回路、40-11…第1
降圧回路、40-12…第1昇圧回路、40-21…第2降圧回路、40
-22…第2昇圧回路、41-1…第1スイッチ、41-2…第2スイッ
チ、41-11、41-21…第1MOSスイッチ、41-12、41-
22…第2MOSスイッチ、42…ノンオーバラップクロック生成回路、
42-1…クロック入力端子、42-21~42-28…クロック出力端

【背景技術】【0002】
電池システムは、電池セルを直列又は並列に接続した組電池が用いられる。
個々の電池セルの電圧は、夫々の電圧を測定する電池電圧監視IC
(Integrated  Circuit)などの電池電圧監視装置によっ
て監視されている。 また、組電池の個々の電池セルは、バスバーとバスバ
ーを接続しているネジで物理的に接続される。バスバーを接続しているネ
ジが緩んだ場合に、電圧異常や発熱といった不具合が発生することがある
ため、バスバーの両端の電圧を監視する回路を備えている
  電池システムにおいて、バスバーの両端の電圧を監視する技術が知られ
ている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、電池システムは、
バスバーの両端の電圧を監視する電圧検出ユニットを有する。電圧検出ユ
ニットの回路は、電池電圧監視ICおよび制御ICに含まれずに、ICの
外部にディスクリート部品として構成されている。

エイブリック、1セルバッテリー向け保護ICを発売
10月11日、エイブリックは、充電/放電過電流検出電圧精度が±0.5mVと
高い1セルバッテリー向け保護IC「S-82Y1Bシリーズ」の販売を始めた。
大容量化が進むバッテリーの急速充電を可能にし、応用機器の安全性も高
めることができるという(EE Times Japan)

大容量バッテリーの急速充電と安全性を両立
高機能スマートフォンなどでは、1回の充電で長時間使用を可能にするため、
大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する機種が増えてきた。また、急
速充電に対応するため充電電流を大きくしたい、という要求も高まってい
るという。
ところが、充電電流を大きくすると、電流検出抵抗の発熱が大
きくなってしまう。この対策として電流検出抵抗の抵抗値を下げる方法も
あるが、検出電流値のばらつきが大きくなって安全性の確保が難しくなる
可能性もある。これらの課題を解決するためエイブリックは、従来品(S-
82P1シリーズ)に比べ、充電/放電過電流検出電圧精度をさらに高めたS-
82Y1Bシリーズを開発した。


S-82Y1Bシリーズは、「放電過電流1」検出電圧が0.003~0.050V、充電
過電流検出電圧が-0.050~-0.003Vで、これらの精度はいずれも±0.5m
Vである。保護ICの精度を高めることで、過電流検出のばらつきを抑えな
がら、電流検出抵抗の低抵抗化を可能にした。これにより、充電電流の値
を大きくしても保護回路基板の発熱を抑えることができるという。放電過

電流保護は3段階で行える。放電過電流1の他、検出電圧が0.006~0.100V
±1.5mVの「放電過電流2」、同じく0.020~0.100V±3mVの「負荷短絡」
である。これによって、より安全な領域で異常電流を遮断することができ
る。なお、過充電検出電圧は3.50~4.80Vで、その精度も±15mVと高い。
最大定格は28V、動作時の消費電流は最大4.0μA、パワーダウン時の消費
電流は最大50nA、動作温度範囲は-40~85℃である。パッケージは、外
形寸法が1.6×1.8×0.4mmのHSNT-6または、1.57×1.8×0.5mmのSNT-6A
で供給するという。
----------------------------------------------------------------------------------


【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ④】

2. 特開2024-77350 炭素および水素の製造方法 三菱マテリアル株式
 会社他⓵
【要約】下図2のごとく、表面に炭素を付着させたマグネタイトを生成する
二酸化炭素分解工程と、炭素と、塩化鉄とを生成する炭素分離工程と、マ
グネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生成する水素製造工程と、前記
二酸化炭素分解工程で用いる前記還元剤を生成する還元剤再生工程とを有
し、前記水素製造工程は、3価の塩化鉄を電気分解によって還元して2価
の塩化鉄を生成する電解還元過程と、該電解還元過程で得られた2価の塩
化鉄と水とを反応させて、マグネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生
成する加水分解過程と、を有し、二酸化炭素と水から炭素と水素とを効率
的に生成し、還元剤を繰り返し生成、利用する。


図2. 実施形態の炭素および水素の製造方法を示すフローチャート
【符号の説明】  S1…二酸化炭素分解工程  S2…炭素分離工程
  S3…水素製造工程  S3-1…電解還元過程  S3-2…加水分解過程
  S4…還元剤再生工程
【背景技術】
【0002】 例えば、製鉄所、火力発電所、セメント工場、ゴミ焼却施設
などでは多量の二酸化炭素(CO)が排出されている。このため、地球
温暖化防止の観点から二酸化炭素を大気中に放出させずに回収することが
重要になっている。一方燃料電池自動車(FCV)や水素発電など水素需
要の増大に伴って、低コストで大量に供給が可能な水素が求められている。
【0003】  従来、二酸化炭素を分離回収する技術として、化学吸収法,
物理吸収法,膜分離法などが知られている。また、回収した二酸化炭素を
分解する技術として、半導体光触媒法、金属コロイド触媒,金属錯体,触
媒等を用いた光化学的還元法、電気化学的還元法、化学的固定変換反応、
例えば、塩基との反応,転移反応,脱水反応,付加反応などを用いる分解
方法などが知られている。しかしながら、これらの二酸化炭素の分解方法
は、何れも反応効率、コスト、消費エネルギーなどの面から実用的ではない
という課題があった。
【0004】 このため、例えば、特許文献1では、格子中に酸素欠陥部位
である空孔のあるマグネタイト、即ち酸素欠陥鉄酸化物を用いて二酸化炭
素を還元して炭素を生成し、炭素からメタンやメタノールを得る方法が開
示されている。こうした特許文献1の発明では、酸素欠陥鉄酸化物によっ
て二酸化炭素を分解(還元反応)し、酸化されて生じた鉄酸化物を水素で
還元して再び酸素欠陥鉄酸化物に戻すことによって、連続的かつ効率的に
二酸化炭素を分解可能なクローズドシステムを実現できるとされている。
【0005】 一方、高純度の水素を製造する方法として、例えば、特許文
献2では、塩化鉄と水とを410℃以上で反応させ、マグネタイト、塩化
水素、および水素を生成し、生成した水素を分離膜を用いて回収する方法
が開示されている。こうした特許文献2
(特開2001-233601)の発明では、
各種プラントから排出されるプロセス廃熱を有効利用し、水を原料として、
クリーンなエネルギー燃料である水素を、熱化学分解技術によって得るこ
とができるとされている。  しかしながら、特許文献1で開示された反応
条件では、酸素欠陥鉄酸化物の酸素欠陥度が小さく(酸素欠陥鉄酸化物を
Fe4-δで示した場合に、δは最大で0.16程度)、二酸化炭素の
分解能力が低いため、効率的に二酸化炭素を分解処理できないという課題
があった。また、特許文献1(特開平5-184912
)の方法で二酸化炭素を連続
して分解する場合、マグネタイトを酸素欠陥鉄酸化物に還元するための水
素を外部から供給する必要があり、水素供給に係るコストが大きいという
課題もあった。 更に、特許文献1では、高価なナノサイズのマグネタイト
を使用しているため、二酸化炭素の分解コストが高い。また、生成した炭
素は付加価値の高いナノ炭素ではないため(>1μm)、二酸化炭素分解
プラントの経済性が低いという課題がある。  特許文献2では、水素製造
応に関与する物質が多く(鉄化合物であるマグネタイト以外にマグネシウ
ム化合物もある)、反応機構が複雑である。また、反応に必要な温度が高
いため(~1000℃程度)、エネルギー消費量が多く、製造コストが高
くなるという課題がある。また、特許文献2では、エネルギーを多量に消
費する各種プラントから排出される排熱の有効利用だけに着目したもので
あり、こうしたプラントの多くから排熱と共に排出される二酸化炭素も有
効利用することが求められている。

【産業上の利用可能性】  本発明は、二酸化炭素および水を用いて、炭素
材料と水素とを低コストで効率的に生成することができる。例えば、製鉄
プラント、火力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設など、二酸
化炭素、および排熱を多く排出するプラント等に適用することで、二酸化
炭素の排出削減、水素の有効利用と、これに付随してナノサイズの炭素な
どの高付加価値の炭素材料の製造を行うことができる。したがって、産業
上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】二酸化炭素と還元剤とを反応させて、表面に炭素を付着させ
たマグネタイトを生成する二酸化炭素分解工程と、前記二酸化炭素分解工
程で得られた表面に炭素を付着させたマグネタイトと、塩酸、または塩化
水素ガスとを反応させて、炭素と、塩化鉄とを生成する炭素分離工程と、
前記炭素分離工程で得られた塩化鉄と、水とを反応させて、マグネタイト
と、水素と、塩化水素ガスとを生成する水素製造工程と、前記水素製造工
程で得られたマグネタイトおよび水素を互いに反応させて、前記二酸化炭
素分解工程で用いる前記還元剤を生成する還元剤再生工程と、を有し、前
記水素製造工程は、3価の塩化鉄を電気分解によって還元して2価の塩化
鉄を生成する電解還元過程と、該電解還元過程で得られた2価の塩化鉄と
水とを反応させて、マグネタイトと、水素と、塩化水素ガスとを生成する
加水分解過程と、を有し、前記還元剤は、マグネタイトの結晶構造を維持
したままマグネタイトを還元することで得られるFe4-δ(但し、δ
は1以上4未満)で表される酸素欠陥鉄酸化物、またはマグネタイトの結
晶構造を維持したままマグネタイトを完全に還元することで得られる酸素
完全欠陥鉄(δ=4)、またはヘマタイトや使用済みカイロを還元するこ
とで得られるマグネタイトの結晶構造を維持した酸素欠陥鉄酸化物、また
はヘマタイトや使用済みカイロを完全に還元することで得られるマグネタ
イトの結晶構造を維持した酸素完全欠陥鉄であることを特徴とする炭素お
よび水素の製造方法

【請求項2】前記電解還元過程は、3価の塩化鉄を含む陰極液を収容する

陰極槽と、電解質を含む陽極液を収容する陽極槽と、前記陰極槽および前
記陽極槽の間に形成され、イオンを透過させる隔壁と、前記陰極槽に設け
られる陰極電極と、前記陽極槽に設けられる陽極電極と、を有する電解装
置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素および水素の製造
方法

【請求項3】前記陰極液のpHを0.5以下に保つことを特徴とする請求
項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項4】前記陽極液は、希硫酸を含むことを特徴とする請求項2に記
載の炭素および水素の製造方法
【請求項5】前記陰極液は、3価の塩化鉄が溶解された塩酸水溶液を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項6】前記陰極電極は、炭素電極、または白金電極であることを特
徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項7】前記陽極電極は、炭素電極、または白金電極であることを特
徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項8】前記隔壁は、陽イオン交換膜、またはガラスフィルターであ
ることを特徴とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項9】前記陰極槽は、不活性ガス雰囲気中に設けられることを特徴
とする請求項2に記載の炭素および水素の製造方法
【請求項10】前記炭素は、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素であ
ることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素および水素の製造方法
※本件案の実用・事業化のイメージを掴むにはもう少し時間が必要。次回
 も考察を継続する。


【ペロブスカイト太陽電池事業化:耐水・耐久化技術】
3. 特開2024-155818 シート体 恵和株式会社
【要約】下図1のごとく、構造物に貼付されて前記構造物の補強又は修復
に用いられるシート体であって、前記構造物に貼付される前の状態におい
て、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり且つ
引張弾性域最大試験力の100%未満の値である粘着力を有す1.


図1. 単一の粘着層と単一の耐候層を備える第2実施形態のシート体を模
式的に示す断面構成図
【符号の説明】  10    シート体  11    粘着層  12    基材層  13    耐
候層  15    補強材料  16    剥離シート  17    押付治具  18    固定部
19    試料  21    構造物  30    屋根  31    ブルーシート  32    土嚢

【発明の効果】前記各態様によれば、構造物に対する優れた粘着性を有し
つつも、施工現場におけるシート体の取扱性を改善できる。具体的には、
シート体を構造物に一旦貼付した後にこれを剥がしても、シート体が破損
することなく(粘着性や耐候性の性能を維持したまま)、再度貼り直せる。
即ち、前記各態様は、シート体を構造物に優れた粘着力で施工可能にしつ
つ、必要に応じてシート体を再度貼り直し可能にするという、ともすれば
相反する効果であって、従来には得ることが困難であった諸効果を同時に
得られるようにしたものである。従って、前記各態様のシート体によれば、
構造物の対象領域にシート体を確実に貼付できると共に、施工現場での貼
付作業の際の取扱性や作業性を改善できる。更に、一旦剥がしたシート体
を再利用できるので、廃棄物削減、ひいては環境保護の効果も奏される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】構造物に貼付されて前記構造物の補強又は修復に用いられる
シート体であって、前記構造物に貼付される前の状態において、180°ピ
ール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり且つ引張弾性域最
大試験力の100%未満の値である粘着力を有する、シート体。
【請求項2】耐候負荷試験後において、180°ピール強度の測定値が1.
5N/25mm以上の値である粘着力を更に有する、請求項1に記載のシ
ート体。
【請求項3】耐候負荷試験後の防水性試験における漏水が無い防水性を更
に有する、請求項1に記載のシート体。
【請求項4】下記項目(1)、(2)、(3)、及び(4)記載の操作を
順次行う変形試験を実施した場合に、下記(4)の計算で算出されるエネ
ルギーが2.0mJ以上の値である、請求項1記載のシート体。
(1)  短辺が50mm及び長辺が100mmの矩形状の前記シート体を
試料として準備する。
(2)  前記試料を同一面の一対の短辺同士を重ねるように湾曲させ、前
記一対の短辺の縁端から前記長辺に沿って15mm離れた位置までの前記
試料の一対の領域を固定部で把持して固定することにより、前記試料の前
記一対の領域の間に周長が70mmの湾曲部を形成する。
(3)  前記試料の前記一対の領域の表面を鉛直方向と平行に配置し且つ
前記湾曲部を上方に向けた状態で、押付面が直径100mmで厚み10m
mの円盤形状の押付治具を用い、温度23±2℃、湿度50±10%RHの
環境下で、前記湾曲部に前記押付治具を上方から接触させ、前記押付治具
を試験速度30mm/minで20mm下方に移動させる。
(4)  前記押付治具を前記移動させる際に必要なエネルギーを計算する。
【請求項5】前記構造物に貼付される粘着層と、前記粘着層の上方に配置
された少なくとも1つの耐候層と、を備える、請求項1~4のいずれか1
項に記載のシート体。
【請求項6】前記粘着層と、前記耐候層との間に配置された基材層を更に
備える、請求項5に記載のシート体。
【請求項7】前記基材層は、補強材料を含む、請求項6に記載のシート体。
【請求項8】前記粘着層及び前記耐候層の少なくともいずれかは、フィラ
ーを含む、請求項6に記載のシート体。
【請求項9】前記粘着層の前記耐候層側とは反対側の面に配置された剥離
シートを備える、請求項5に記載のシート体。
【請求項10】単一層により構成され、前記構造物とは反対側に位置する
第1面側よりも、前記構造物に貼付される貼付面である第2面側に偏在す
る粘着成分を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート体。
【請求項11】ゴムを含有し、前記第1面側と前記第2面側とで架橋度が
異なるゴムの架橋構造を有する、請求項10に記載のシート体。
【請求項12】アクリル樹脂と、エポキシ樹脂と、を含み、前記アクリル
樹脂と前記エポキシ樹脂とによる相分離構造を有する、請求項10に記載
のシート体。
【詳細説明】※関連情報部のみ記載
【0196】太陽電池ユニット33の構造は限定されず、公知のものであ
ってもよい。例えば、薄型又は軽量のものが好ましい。また太陽電池の種
類も限定されない。太陽電池の種類としては、アモルファスシリコン太陽
電池、結晶シリコン太陽電池、カドミウムテルル太陽電池、銅インジウム
ガリウムセレン太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池
ガリウムアルセニド太陽電池等を例示できる。また例えば、柔軟性を有す
るアモルファスシリコン太陽電池、カドミウムテルル太陽電池、銅インジ
ウムガリウムセレン太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電
は、本開示のシート体10との組合せとして適している。

【0197】このように図21及び図22には、構造物21に貼付されて
構造物21の補強又は修復に用いられるシート体10と、シート体10に
直接又は間接的に取り付けられた太陽電池ユニット33と、を備えるシー
ト体付太陽電池ユニット40が示されている。当該シート体付太陽電池ユ
ニット40が備えるシート体10は、構造物21に貼付される前の状態に
おいて、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm以上の値であり
且つ引張弾性域最大試験力が100%以下の値である粘着力を有する。本
実施形態においても、本開示のシート体10の有する諸効果が奏される。

【0198】また通常、太陽電池ユニットは、発電に適した位置や角度を
調整された状態で、屋根や架台等の構造物に対し、接着剤を用いた接着や、
締結部材を用いた締結等の様々な方法により固定される。この固定を確実
に行うため、太陽電池ユニットは、構造物に対して様々な方法で固定され
る。太陽電池ユニットの固定方法や施工現場の状況等によっては、太陽電
池ユニットの取扱性が優れず、作業者の作業負担が増大する。また、太陽
電池ユニットを取り外す必要が生じた場合、構造物から太陽電池ユニット
を容易に取り外せないため、取り外しの作業負担が増大する。また、構造
物の劣化に伴い、太陽電池ユニットの劣化も招き易くなる。

【0199】これに対して本実施形態では、例えば、太陽電池ユニット3
3を予めシート体10に取り付けておけば、シート体10を構造物に貼付
する際、シート体10と共に太陽電池ユニット33を構造物21に適切に
固定できる。また、シート体10は貼り直しが可能であるため、シート体
10と共に太陽電池ユニット33を構造物21から過度の負担なく取り外
すことができる。その結果、簡便な施工により作業者の作業負担を軽減し
つつ、太陽電池ユニット33を構造物21に確実に取り付けることができ
ると共に、太陽電池ユニット33を構造物21から取り外す際は、シート
体10と共に太陽電池ユニット33を容易に取り外すことができる。

【0200】ここで例えば、ペロブスカイト太陽電池や銅インジウムガリ
ウムセレン太陽電池は、他のものに比べて、高い耐久性が求められている
このように高い耐久性が求められる太陽電池を含む太陽電池ユニット33
に本開示のシート体10を適用すれば、シート体10により、構造物21
に太陽電池ユニット33が確実に固定される。また、構造物21の劣化に
伴う太陽電池ユニット33の劣化が生じ難くなるため、太陽電池ユニット
33の高い耐久性が得られ易くなる。また、太陽電池ユニット33におい
て、高い変換効率で安定した発電を行うことができる。

図21                     図22

【0201】また図21及び図22に示すように、シート体10が貼付さ
れる構造物21の表面の形状が、凹凸や欠陥による高低差により平坦でな
い場合でも、シート体10を当該表面に良好に追従させて貼付できる。こ
のため、シート体10を好適に適用できる。しかしながら、これに限らず、
シート体10が貼付される構造物21の表面の形状が平坦である場合でも、
シート体10を適用することにより、太陽電池ユニット33の高い耐久性
が得られ易くなると共に、太陽電池ユニット33において高い変換効率で
安定した発電を行えるため好ましい。

【0202】また本実施形態のシート体10は、構造物21に貼り付けら
れる前の状態において、180°ピール試験の測定値が1.5N/25mm
以上の値であり且つ引張弾性域最大試験力の100%未満の値である粘着
力を有しており、優れた耐候性を発揮できる。よって長期間にわたり、構
造物21をシート体10により保護しつつ、太陽電池ユニット33を構造
物21に固定できる。従って、構造物21の劣化に伴う太陽電池ユニット
33の劣化を抑制しつつ、安定して太陽電池ユニット33を使用できる。

【0203】また本実施形態のシート体10は、構造物21に貼り付けら
れる前の状態において、耐候負荷試験後の防水性試験における漏水が無い
防水性を有するため、長期間にわたり、構造物21を漏水による劣化から
保護しつつ、太陽電池ユニット33を構造物21に固定できる。従って、
構造物21の劣化に伴う太陽電池ユニット33の劣化を抑制しつつ、安定
して太陽電池ユニット33を使用できる。

【0204】また本実施形態のシート体10は、前記(1)、(2)、
(3)、及び(4)記載の操作を順次行う変形試験を実施した場合に、前
記(4)の計算で算出されるエネルギーが2.0mJ以上の値である。こ
のためシート体10は、適度な剛性を有する。従って、作業者が太陽電池
ユニット33を構造物21に敷設する際の取扱性を向上し易くできる

【0205】また、太陽電池ユニット33が取り付けられた複数のシート
体10が構造物21の表面に貼付される場合、シート体10の間に隙間が
生じて構造物21の表面が外部に露出しても、当該隙間に対応する構造物
21の表面に本開示のシート体10を別途貼付することで、構造物21の
表面を簡便に覆うことができる。この場合、例えば、当該隙間の形状に合
わせて例えば長尺形状(一例として短冊状)のシート体10を利用できる。

【0206】更に、シート体10は、ロール状に巻き取りが可能な程度の
柔軟性を有するため、当該シート体10に所定のフレキシブル性を有する
太陽電池ユニット33が取り付けられた場合、シート付太陽電池ユニット
40の全体においてもフレキシブル性が確保される。従って、種々の構造
物21に対し、シート付太陽電池ユニット40を簡便に施工して配置でき
る。また、シート付太陽電池ユニット40をロール状に巻回した状態で管
理することも可能となる。また例えば、シート付太陽電池ユニット40を
ロール状に巻回した状態で施工現場に搬入し、比較的広い施工対象面に対
して簡便に施工することもができる。

【0207】このように、本開示の太陽電池ユニット33が設けられたシ
ート体10は、屋外の建築の構造物21、土地の上に設けられた構造物21
とされる架台、或いは、建材と一体として設けられる構造物21とされる
窓等、様々な構造物21に好適に貼り合わせることが可能である。

【0208】(シート体の構造物への施工)
  以下、本開示のシート体の構造物21への施工について説明する。本開
示のシート体10は、優れた粘着力を有する。このため、構造物21の屋
根等の表面に貼付される際、段差のある構造物21の表面にも隙間無くシ
ート体10を貼付できる。シート体10を貼付することで、外部から構造
物21への水の侵入の防止、及び、錆びの原因となる塩水、酸素等の劣化
因子の侵入の防止を数十年単位で維持できる。このため、構造物21の劣
化を適切に抑制できる。またシート体10は、構造物21の表面に貼付す
るだけで施工が可能である。従って、作業者の技術に依らずに施工でき、
工期の短縮と労務費の削減を実現できる。

【0209】本開示のシート体を施工する場合、構造物21の表面には、
予め、硬化性樹脂材料を含有するプライマー層が形成されていてもよい。
プライマー層に求められる物性としては、例えば、貼付される構造物保護
シートに対する優れた初期接着性、長期保存が可能な長期接着性、劣化し
た構造物表面の塗膜をしっかりと固着させて再貼付時において劣化構造物
から有害物質の飛散を防止できる目止め性、短時間で硬化する硬化性、一
定時間の流動性を確保できるポットライフ、及び、作業現場での厳密な配
合作業が不要な塗料作業性等を例示
できる。

【0210】 プライマー層の材料は、前記プライマー層に求められる物性
が得られるものであれば特に限定されない。例えば、湿気硬化、熱硬化、
光硬化その他の方法で硬化して樹脂が形成される性質を有する材料であれ
ば特に制限はない。このような材料としては、アクリル、ポリエステル、
ウレタン、エポキシ、シリコーン等の樹脂を例示できる。例えば、主鎖に
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体と、エポキ
シ化合物及びアミノシラン化合物を含む原料化合物の反応生成物を含有す
るものが好ましい

【0211】プライマー層は、一般的には構造物21の下塗材として使用
される。本開示において、プライマーは、構造物21の表面に塗布すれば
よい。下塗材は、通常の方法で施工できる。例えば、構造物21の表面に、
刷毛又はローラー等により塗布したり、又は、スプレーガン等で吹き付け
たりする一般的な方法により塗料を塗布し、塗膜を形成させることで、下
塗材であるプライマー層が得られる。

【0212】 プライマー層の厚みは、特に限定されない。プライマー層の
厚みは、例えば、ウェットの状態で20g/m以上の値である。プライマ
ー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で、30g/m以上の値が好ま
しく、50g/m以上の値がより好ましく、100g/m以上の値が
更に好ましく、200g/m以上の値が特に好ましい。

【0213】  他方、プライマー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で
800g/m以下の値である。プライマー層の厚みは、例えば、ウェッ
トの状態で、700g/m以下の値が好ましく、600g/m以下の
値がより好ましく、500g/m以下の値が更に好ましい。また特に、
プライマー層の厚みは、例えば、ウェットの状態で400g/m以下の
値であれば、様々な状態での構築物表面へのシート体10の粘着力を安定
化できるため好ましい。ここで言う「ウェットの状態」とは、塗工液が乾
燥する前の状態を指し、ウェットの状態について示した上記数値は、塗工
重量を指す。
※実施例は、表1~3、図21~23を転載し、他は割愛する。



 

 懐かしの歌謡音楽 
フォー・セインツ 小さな日記・希望』 

   
                                  
今日の言葉:季節は世界動乱時代に突入?!
         昨夜、ホロコーストの世界歴史を「ユーチューブ」で閲覧。
         気候変動に起因する動乱も加わる(温暖化による男性に
         よる女性の暴力が増える研究報告を前回紹介)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境53

2024年11月16日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月16日】

         初しぐれも小蓑(こみの)をほしげ也
                    松尾芭蕉 



⬛ 中国「新エネルギー車」1000万台突破

中国でEV=電気自動車など「新エネルギー車」の年間生産台数が初めて
1000万台を突破(NHK 2024.11.14)
一方、中国製EVに対して欧米では、過剰生産によって不当に安く輸出され
ているなどとして、関税を引き上げる動きが出ている。この中で、中国政
府の幹部は「新エネルギー車の年間生産量が1000万台を突破した世界で最
初の国となった」と述べ、技術の進歩と市場規模の拡大を強調(国営の中
国中央テレビ)。

※安全で持続可能・高品質で廉価であれば大歓迎だ。日本は、「関連リサ
イクル法」を完備し、これらの輸入を促進すべき(原則)である。


近赤外光吸収と光熱変換に優れた化合物合成
がん治療法の一つである光温熱治療法では,光を吸収して熱に変換できる
物質を腫瘍内に集積させたのち,外部から光を照射することで局所的に熱
を発生させ,その熱によってがん細胞を死滅させることができる。この技
術により,低侵襲で副作用の少ないがん治療の実現が期待されている。



 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察 ⓼ 

 3.特開2024-150335 リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電
  池の製造方法 株式会社カネカ
【要約】下図2のごとく、正極及び負極10、11は、被覆活物質粒子130
を含む、活物質層が形成された集電体20、120を、活物質層付き集電体
として含み、前記被覆活物質粒子は、Liイオンを含む被膜35で、活物質
粒子30が、被覆されてなり、前記正極の前記被膜である正極被膜の前記Li
イオンの平均濃度である正極被膜Liイオン平均濃度が、前記負極の前記被
膜である負極被膜の前記Liイオンの平均濃度である負極被膜Liイオン平
均濃度と、異なる、リチウムイオン二次電池とすることで、電解媒体分解に
よるガスの発生の抑制ができ、かつ、特性に優れたリチウムイオン二次電池
及びその製造方法を提供する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【0051】  シェル膜41は、これらの中でも、マンガン(Mn)元素を含む
リン酸イオン含有リチウム化合物膜であり、前記「強固結晶少酸素放出ポリ
アニオン」との特徴具備のLMPであることがより好ましい。
【0052】  そして、シェル膜41は、「LMP高抵抗」「移動電荷トラ
ップ」及び「電荷移動ポテンシャル障壁上昇」「界面ミスマッチ」の悪影響
を抑制しつつ「強固結晶少酸素放出ポリアニオン」の効果及び「挿入破壊防
止」層としての効果を十分に発揮せしめる観点から、好ましくは、その両面
で当該金属の成分及び/又は組成が異なり、活物質粒子30の中心から外側
に向かい、LFP/LMP2層構造のシェル膜41とすることが好ましく、
より好ましくは、構成遷移金属を、FeからMnに緩やかに変化させたシェ
ル膜41とすることであり、さらに好ましくは、後述する緩衝部42を含め
「Li系ポリアニオン」の金属成分の組成及び/又は比率を変化させること
である。
【0053】シェル膜41の厚みは、リチウムイオン伝導性酸化物の粒径よ
りも薄く、5nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上15
nm以下であることがより好ましい。
【0054】この範囲であれば、シェル膜41での抵抗損失を抑制しつつ、
ガスの発生量を抑制できる。
【0055】シェル膜41は、正極活物質粒子40の表面の少なくとも一部
を覆っており、95%以上を覆っていることがより好ましく、完全に覆って
いることが好ましい。
【0056】シェル膜41は、後述する緩衝部42のSEI構造に消費され
た正極活物質粒子40のLiイオンを補充する「消費Li補充」観点から、
非晶質であることが好ましい。
(緩衝部42)緩衝部42は、リチウム元素を含み、さらに珪素元素を含む
珪素含有化合物膜である。
【0057】緩衝部42は、コアシェル粒子36と界面用電解液との間での
電気化学反応で生じる固体電解質界面(以下、SEIともいう)構造を有す
るものであり、好ましくは、珪素元素を含んだシロキサン改質被覆層である。
【0058】緩衝部42は、リチウムイオンのみを通過させ電子を通過させ
ない選択的透過膜であり、電解媒体6中でLiイオンとともに移動する分子
量の大きい有機溶媒分子等がコアシェル粒子36に、特に活物質粒子30の
Liイオン挿入脱離可能部位に、挿入され、その構造が破壊されることを防
止する「挿入破壊防止」層である。
【0059】緩衝部42は、コアシェル粒子36との界面近傍の表面、特に
浸透性細孔ネットワーク81との接触部においてSEI構造と一体不可分な
改質領域を含んでいることが好ましい。
【0060】緩衝部42は、リチウム元素と珪素元素に加えて、金属酸化物
及び/又は金属リン酸化物を含んでいてもよい。
【0061】そして、シェル膜41/緩衝部42の多層膜は、好ましくは、
その両面で当該金属の成分及び/又は組成が異なると共に、そのリン酸イオ
ンの濃度が異なることが、Li系ポリアニオン被覆による高抵抗化の悪影響
を抑制しつつ「強固結晶少酸素放出ポリアニオン」及び「消費Li補充」の
効果を十分に発揮せしめる観点から好ましく、活物質粒子30の中心から外
側に向かい、リン酸イオンの濃度を低下させ、酸化物の濃度を上昇させるこ
とが好ましく、シェル膜41がLMPを含む場合は、「移動電荷トラップ」
「電荷移動ポテンシャル障壁上昇」を抑制するために、より好ましく、「界
面ミスマッチ」を抑制するためには、徐々にこれら組成及び/又は濃度を変
化させることが好ましい。
【0062】緩衝部42は、コアシェル粒子36の表面の少なくとも一部を
覆っており、95%以上を覆っていることがより好ましく、完全に覆ってい
ることが好ましい。
バインダー70
  バインダー70は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール
(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(P
AN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイミド、及びそれらの誘導
体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0063】 バインダー70は、分散剤、増粘剤、バインダー材料に溶解す
る導電補助剤が含まれていてもよい。
【0064】バインダー70の量は、コアシェル粒子36を100重量部に
対して、1重量部以上30重量部以下であることが好ましく、活物質粒子3
0や前記コアシェル粒子130を一体の層として支持可能な強度を活物質層
2に付与でき、また、安定的に低抵抗導電ネットワーク80を構成でき、さ
らに、集電体20、120との接着強度を十分なものとすることができる。
【0065】この範囲であれば、コアシェル粒子36が十分な接着強度で接
着された正極活物質層21を形成でき、また、安定的に低抵抗な導電ネット
ワーク80を構成できる。さらに、集電体20に対しても十分な接着強度を
得ることができる。
導電ネットワーク80
  導電ネットワーク80は、導電性材料で構成されるものであり、導電性炭
素材料で構成されていることが好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭
素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、
及びファーネスブラックから選ばれる少なくとも1種であることがより好ま
しい。
【0066】導電ネットワーク80の量は、コアシェル粒子36を100重
量部に対して、1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。
【0067】この範囲であれば、正極部10の導電性を確保しつつ、バイン
ダー70との接着性が維持できる。また、集電体20との接着性を十分に得
つつ、当該集電体20との導電性を十分なものにできる。
【0068】導電ネットワーク80は、少なくとも一部がコアシェル粒子36
に接触しており、コアシェル粒子36との接触部分から外側に向かって延び
ている。
(海状部60)
  海状部60は、図2(a)の拡大図のように、被覆活物質粒子30と、バ
インダー70と、導電ネットワーク80で構成されている。
【0069】海状部60は、隣接する被覆活物質粒子30,30同士の導電
経路よりも長く、鎖のような導電ネットワーク80が主骨格となっており、
この導電ネットワーク80に複数の被覆活物質粒子30が接触している状態
を、バインダー70が支持している。
【0070】活物質層2における電位均一化は、被覆活物質粒子130同士
の導電経路よりも、主に導電助剤により構成される長い鎖の如き導電ネット
ワーク80が担っているものと推察される。
【0071】  このような導電ネットワーク80に複数の被覆活物質粒子30
が接触している状態をバインダー70が支持する構造が形成される理由は、
後述する製法で作製すると、ペースト塗布工程で形成されるスラリーにおい
て、導電性材料、バインダー、及び溶媒を含めた疎水性媒体に親水性表面の
被覆活物質粒子30が並んでいる状態から、溶媒を乾燥除去することにより、
バインダー70が支持した状態になると考えられる。
島状部61
  島状部61は、図2(a)のように、浸透性細孔ネットワーク81で構成
されている。
【0072】浸透性細孔ネットワーク81は、複数の細孔を有しており、こ
れらの細孔が互いに連通することで、電解媒体6が浸透可能となっている。
【0073】浸透性細孔ネットワーク81は、細孔の一部がコアシェル粒子
36に至って接触していることが好ましい。
【0074】浸透性細孔ネットワーク81は、少なくとも当該接触部分に、
SEI構造を有する非液体状のリチウムイオン伝導体が配されている。
【0075】当該リチウムイオン伝導体は、Mn、Fe、Al、Siから選
ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましい。
【0076】別の観点からみると、浸透性細孔ネットワーク81は、被覆活
物質粒子30と、バインダー70と、導電ネットワーク80のそれぞれの輪
郭によって構成された空洞であり、正極集電体20側(内側)から外側に向
かって三次元的に連続している。
【0077】 正極活物質粒子40又はシェル膜41の表面において、当該表
面の面積に対する細孔の面積の合計面積の比率は、0.1%以上30%以下
であることが好ましく、1%以上10%以下であることがより好ましい。
【0078】浸透性細孔ネットワーク81は、正極活物質粒子40又はシェ
ル膜41に接触しており、なくともLIB1の充放電時には、電解媒体6の
一部が浸透しており、そして、浸透性細孔ネットワーク81の当該接触部分
にはSEI構造含有非液体Liイオン伝導体が形成されていることが好まし
く、このようなSEI構造含有非液体Liイオン伝導体は、Mn、Si、Fe、
及びAlからなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましく、
より好ましくは、Mn及びSiを含む。
【0079】
  <導電材料>
 本発明に係る導電ネットワーク80を構成する導電材料としては、導電性炭
素材料が好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノ
チューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラ
ックから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】活物質層2に含まれる当該導電材料の量は、(被覆)活物質粒子
30、130、被覆活物質前躯体粒子36の100重量部に対し1重量部以
上30重量部以下であることが好ましく、正極部10、負極部11の導電性
を確保しつつ、好ましくは、本発明に係る導電ネットワーク80の導電性を
十分に確保し、バインダー70との接着性が維持され、集電体20、120
との接着性を十分に得つつ、当該集電体20、120との導電性を十分なも
のとすることができる。
<電解媒体6>
  電解媒体6は、電解液又は固体電解質であり、本実施形態では非水電解液
である。
【0081】電解媒体6は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解さ
せた非水電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を高分子に含浸さ
せたゲル電解質などを用いることができる。
【0082】電解媒体6は、特に限定されないが、非水電解液、ポリマー電
解質、又は固体電解質であり、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液、非
水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を高分子に含浸させたポリマー電解質
であることが、本発明の効果を効果的に奏さしめる観点から好ましく、より
好ましくは非水電解液である。
【0083】
  (電解媒体6
  電解媒体6は、あらかじめ正極部10及び負極部11と、そして、好ましく
は電解媒体6中に存在するセパレータ12と、に含ませてもよいし、正極部
10側と負極部11側との間にセパレータ12を配置したものを倦回、ある
いは積層した後に添加してもよい。
【0084】非水電解液は、非水溶媒に、Li塩を溶かした液体であり、必
要に応じて、後述する各種添加剤が添加され、それ以外にも、充放電サイク
ル特性の改善、高温貯蔵性、安全性の向上等の目的で、その他の添加剤を添
加できる。
【0085】ポリマー電解質用の高分子としては、PEG、PEO、PAn、
PVDF、フッ素系重合体、これに(メタ)アクリル重合体をグラフトした
高分子等があげられ、重量平均分子量としては、5000~20000とい
った値のものが用いられる。
【0086】固体電解質としては、高いイオン伝導性を有する限り利用する
ことができ、Liを含むセラミック電解質が好ましく、例えば、Li10Ge
S1、LiS1、70LiS-30P、La0.1Li
0.34TiO2.94、Li1.1Al0.7Ti1.5(PO等が挙げ
られ、好ましい導電率は、1×10-4S/cm以上であり、より好ましくは、
1×10-3S/cm以上であり、好ましい厚みは、5μm以上200μm以下
で、5μm未満では固体電解質層の機械的強度が不足し短絡し易くなり、10
μm以上100μm以下がより好ましい。
【0087】
  <非水溶媒>
  非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン
性溶媒を含むことが好ましい。
【0088】環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エ
ステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示され、高品質SEI形成
の観点からは、不飽和結合を含んだり、ハロゲン原子を含んだりする環状カ
ーボネート系化合物を用いてもよい。
【0089】 鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カ
ルボン酸エステル、鎖状エーテル、及びアセトニトリルなどの一般的に非水
電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いてもよく、高品質SEI形成の観
点からは、不飽和結合を含んだり、ハロゲン原子を含んだりする鎖状カーボ
ネート系化合物を用いてもよい。
【0090】より具体的には、非プロトン性溶媒としては、ジメチルカーボ
ネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカ
ーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピ
レンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブ
チルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プ
ロピオン酸メチルなどを用いることができる。
【0091】これら溶媒は、1種類で用いてもよいし、2種類以上混合して
用いてもよいが、後述の溶質の溶解させやすさ、Liイオンの伝導性の高さ
から、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0092】非プロトン性溶媒として2種類以上混合する場合、高温時の安
定性が高く、且つ低温時のLi伝導性が高いことから、ジメチルカーボネー
ト、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボ
ネート、及びメチルプロピルカーボネートに例示される鎖状カーボネートの
うち1種類以上と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチ
レンカーボネート、及びγ-ブチルラクトンに例示される環状化合物のうち1
種類以上との混合が好ましい。
【0093】ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジエ
チルカーボネートに例示される鎖状カーボネートのうち1種類以上と、エチ
レンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートに例示
される環状カーボネートのうち1種類以上との混合が特に好ましい。
【0094】
  <溶質>
  溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO、LiBF、LiP
、LiAsF、LiCFSO、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato)
Borate)、LiN(SOCFなどは溶媒に溶解しやすいことから好ましい。
【0095】(非水電解液6の添加剤)
  非水電解液6の添加剤としては、電極保護剤、ガス発生抑制剤、SEI形
成剤、SEI形成促進剤、SEI特性向上剤、安定剤、金属溶出抑制剤、難
燃剤等が挙げられる。
【0096】(珪素含有化合物)
前記珪素含有化合物としては、例えば、一つ以上の不飽和基を含むシロキサ
ン系化合物、シラザン系化合物、シリルアミド系化合物等があるが、好まし
い珪素含有化合物としては、2,4,6,8-テトラビニル-2,4,6,
8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(4VC4S)等のビニル基を有
する環状シロキサンを挙げることができる。
【0097】一つ以上の不飽和基を含むシロキサン系化合物は、—Si—
O—Si—結合(シロキサン結合)、及び炭素—炭素二重結合を少なくとも
一つ以上含んでおり、シロキサン結合部位はLiイオンを伝導可能と、また、
この二重結合は架橋結合によりSEI構造の形成に寄与可能と、考えられる。

セパレータ12
  セパレータ12は、図1のように、正極部10と負極部11との間に設置
され、絶縁性かつ電解媒体6を含むことができる構造となっている。
【0098】セパレータ12は、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスル
ホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、
ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらを2種
類以上複合したものの織布、不織布、微多孔膜などが挙げられる。
【0099】セパレータ12には、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤が含ま
れてもよいし、金属酸化物等が被覆されていてもよい。
【0100】
  (正極用取出部材13、負極用取出部材14
  取出部材13、14は、一又は複数の正極部10、一又は複数の負極部11
と接続され、外部負荷に対して接続可能な端子であり、外装体3の内外に亘
って設けられるものである。
【0101】
  (Liイオン二次電池1の製造方法
  続いて、本実施形態のLiイオン二次電池1の製造方法について説明する。
【0102】 (全固体LLIBの製法
  全固体LIBの製法としては、固体電解質スラリーを、用意した正極部10
および負極部11の両面にドクターブレード法を用いて塗布し、溶媒を揮発
させて固体電解質層を形成した後、該固体電解質層を介して正極部10と負
極部11とを、好ましくは交互に、積層した電極積層体5を加熱乾燥(例え
ば、大気中、150℃)した後、プレス機により圧縮成形することで全固体
LIBの基本構成が完成する。
【0103】
  (非水電解液LIB
  非水電解液LIBの製法である、本実施形態のLiイオン二次電池1の製
造方法は、主に、被覆活物質形成工程と、ペースト塗布集電体焼成工程と、
電極積層体形成工程と、電池組立体作成工程と、界面用電解液注入工程と、
電圧印加工程と、電解媒体注入工程と、エージング工程で構成されている。
被覆活物質形成工程
  被覆活物質形成工程は、被覆活物質粒子30,130を形成する工程であ
る。
【0104】被覆活物質形成工程は、主に、活物質粒子準備工程と、シェル
膜形成工程と、ペースト塗布工程で構成されている。
活物質粒子準備工程
  活物質粒子準備工程では、活物質粒子40,140を準備する工程である。
シェル膜形成工程
  シェル膜形成工程は、活物質粒子40,140の表面にリン酸イオン含有
Li化合物膜であるシェル膜41を形成する工程である。
【0105】具体的には、シェル膜形成工程は、まずボールミル等の粉砕装
置によって、リン酸イオン含有Li化合物を粉砕し、リン酸イオン含有Li
化合物粒子を形成する(粉砕工程)。
【0106】  続いて、粉砕工程で粉砕し、微粒子化したリン酸イオン含有
Li化合物粒子を分散溶媒に分散させ、微粒子流動体を形成する(微粒子流
動体形成工程)。
【0107】このときに使用される分散溶媒は、一又は複数のアルコール溶
液であることが好ましく、揮発性や安全性の点からエタノールであることが
より好ましい。
【0108】このときに形成される微粒子流動体は、透明であってゾル状態
の透明ゾルであり、流動性を有している。
【0109】続いて、せん断力、圧縮力、衝突力、及び遠心力の少なくとも
1種のエネルギーを正極活物質粒子30及び/又はシェル膜41を構成する
リン酸イオン含有Li化合物粒子に付与しつつ、活物質粒子30と微粒子流
動体内のリン酸イオン含有Li化合物粒子を機械的に接触させるメカニカル
コーティング法によって、正極活物質粒子30の表面にシェル膜41を形成
する。
【0110】本実施形態では、摩砕式ミル等の摩砕装置によって、微粒子流
動体を活物質粒子30に摩砕させ、摩砕物を形成する(摩砕物形成工程)。
【0111】このときの摩砕装置に入れるリン酸イオン含有Li化合物粒子
は、0.5wt%以上であることが好ましい。
【0112】このときの摩砕装置に入れるリン酸イオン含有Li化合物粒子
は、2.5wt%以下であることが好ましく、1.6wt%以下であること
がより好ましく、1wt%以下であることが特に好ましい。
【0113】このときの摩砕装置での処理温度は、5℃以上100℃以下で
あることが好ましく、8以上80℃以下であることがより好ましく、10℃
以上50℃以下であることがさらに好ましい。
【0114】このときの摩砕装置での処理時間は、5分以上90分以下であ
ることが好ましく、10分以上60分以下であることがより好ましい。
【0115】このときの摩砕装置での雰囲気は、不活性ガス雰囲気下又は空
気雰囲気下であることが好ましい。
【0116】続いて、摩砕物に対して熱処理を行い、摩砕物から分散溶媒を
除去し、シェル膜41を形成する(除去工程)。
【0117】このときの熱処理温度は、300℃以上であることが好ましく、
350℃以上であることがより好ましい。
【0118】熱処理温度が300℃を下回ると、活物質粒子30とシェル膜
41の密着性が不十分であるため電池の充放電時にシェル膜41が剥離し、
電池の長期信頼性の低下に繋がるおそれがある。
【0119】一方、熱処理温度が高くなりすぎると、シェル膜41の結晶構
造が変化し、Liイオン伝導度が低下して電池の充放電が正常に行われなく
なる場合があるため、熱処理温度は850℃以下であることが好ましく、好
ましい場合がある一部形成されたシェル膜41の非晶質部分の結晶化を抑制
する観点から500℃以下であることがより好ましい。
【0120】熱処理時間は、30分以上であることが好ましく、45分以上
であることがより好ましい。熱処理時間は、180分以下であることが好ま
しく、150分以下であることがより好ましい。
【0121】以上が、活物質粒子30の表面にリン酸イオン含有Li化合物
膜であるシェル膜41を形成するシェル膜形成工程の説明である 正極活物質
粒子40の表面にリン酸イオン含有Li化合物膜であるシェル膜41を形成
するシェル膜形成工程と、負極活物質粒子140の表面にリン酸イオン含有L
i化合物膜であるシェル膜41を形成するシェル膜形成工程とは、被覆する
活物質粒子30が、正極活物質粒子40であるか、負極活物質粒子140で
あるかの違いであり、基本的に同様である。
ペースト塗布工程)ペースト塗布工程は、シェル膜41が形成された活物
質粒子40,140を導電助剤とバインダーと必要に応じて珪素含有化合物
とともに混合し、溶媒に分散させてペースト状にしてスラリーを形成し、集
電体20,120にスラリーを塗布したペースト塗布集電体を形成する工程
である。
【0122】この工程に使用される溶媒は、活物質粒子40,140と導電
助剤とバインダーを溶解又は分散できるものであれば特に限定されないが、
例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及
びテトラヒドロフランなどが使用できる。これらに分散剤、増粘剤を加えて
もよい。
<ペースト塗布集電体焼成工程
  ペースト塗布集電体焼成工程は、所定の焼成時間、所定の焼成温度でペー
スト塗布集電体を焼成し、正極活物質粒子40を含む仕掛正極部と負極活物
質粒子140を含む仕掛負極部をそれぞれ形成する工程である。
【0123】焼成温度は、ペースト塗布集電体が焼成してスラリーが固化す
る温度であれば特に限定されるものではないが、例えば、80℃以上200
℃以下であることが好ましい。
<電極積層体形成工程
  電極積層体形成工程は、仕掛正極部と仕掛負極部を、セパレータ12を挟ん
で仕掛電極積層体を形成する工程である。
電池組立体作製工程
  電池組立体作製工程は、仕掛電極積層体を外装体3の内部に入れて仕掛電
池組立体を作製する工程である。
界面用電解液注入工程
  界面用電解液注入工程は、例えば、真空包装機を用いて、内部を0.1気
圧以下まで減圧しつつ、内部に仕掛電極積層体を入れた外装体3の注入口以
外を封止した後、仕掛電池組立体の外装体3内に界面用電解液を注入する工
程である。
【0124】界面用電解液は、Liイオン伝導性を有し、活物質層2を構成
する珪素含有化合物を含むものとすることができ、その場合は、上記した電
解媒体6に加えて、本発明に係る珪素化含有合物を含む。
電圧印加工程>
  電圧印加工程は、仕掛電極積層体の正極用取出部材13と負極用取出部材1
4の間に電圧を印加する工程である。
【0125】電圧印加工程によって界面用電解液中の珪素含有化合物が仕掛
電極積層体のシェル膜41上に積層され、活物質層2が形成され、正極部1
0と負極部11を備えた電極積層体5が形成される。
【0126】この工程において正極用取出部材13と負極用取出部材14の
間に印加する電圧は、界面用電解液中の珪素含有化合物がシェル膜41の表
面に析出する電圧であり、リチウム溶解析出電位に対し4.5V以上5V以
下であることが好ましい。
電解媒体注入工程
  電解媒体注入工程は、必要に応じて界面用電解液を外装体3内から排出し、
電解媒体6を電池組立体2の外装体3内に注入する工程である。
エージング工程
  エージング工程は、電池組立体2の初期の劣化を確認する工程であり、初
期充電操作工程と、養生操作工程で構成されている。
【0127】初期充電操作工程は、電極積層体5の正極用取出部材13と負
極用取出部材14の間に電圧を印加して充電する工程である。
【0128】 養生操作工程は、外装体3を養生して電極積層体5と電解媒体
6を封止する工程である。
【0129】  本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、活物質粒子40,
140を被覆する被膜41,141が、リン酸イオン含有Li化合物を含み、
好ましくは、シェル膜41がFe、Mn、Si、及びAlからなる群から選
ばれる1以上の金属を含み、より好ましくは、活物質粒子40,140をシ
ェル膜41が均一に被覆しており、さらに好ましくは、活物質層2を有する
ので、活物質粒子40,140が、非水電解液5と接する面積が小さくなり、
電解媒体6の分解によるガスの発生を抑制できる。
【0130】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、好ましくは、活
物質層2に導電ネットワーク80と浸透性細孔ネットワーク81を有するの
で、電解媒体6と活物質粒子40,140との電荷及びLiイオンの授受が
円滑となり、電極反応が起こりやすい。
【0131】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、好ましくは、浸
透性細孔ネットワーク81は、活物質粒子40,140又はシェル膜41と
の接触部分から細孔に向かってLiイオン伝導体が設けられているので、電
解媒体6と活物質粒子40,140との電荷及びLiイオンの授受がより円
滑となり、より電極反応が起こりやすい。
【0132】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、活物質層2は、
珪素元素を含む珪素含有化合物膜を有するので、より活物質層2の結着性が
良好となり、クラック等が生じにくい。
【0133】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、シェル膜41が
Li元素をもち、シェル膜41のLiが何等かの要因により消費されたLi
の補充に使用できるので、性能が低下しにくい。
【0134】本実施形態のLiイオン二次電池1によれば、正極活物質粒子
40のMnの電解媒体6への溶出を抑制できるので、性能が低下しにくい。
【0135】上記した実施形態では、界面用電解液注入工程において界面用
電解液を注入し、電圧印加工程において正極用取出部材13と負極用取出部
材14の間に電圧を印加することで活物質層2を形成していたが、本発明は
これに限定されるものではない。
【0136】例えば、ペースト塗布工程においてスラリーに珪素元素を含む
珪素含有化合物を添加してペースト塗布集電体焼成工程で活物質層2を形成
してもよい。
【0137】また、ペースト塗布集電体焼成工程の後に仕掛正極部と仕掛負
極部に、含珪素含有化合物を含むペーストを塗布し、加熱や紫外線等によっ
て固化することで活物質層2を形成してもよい。
【0138】電極積層体形成工程の後に、仕掛電極積層体に含珪素含有化合
物を含むペーストを塗布し、加熱や紫外線等によって固化することで活物質
層2を形成してもよい。
【0139】上記した実施形態では、緩衝部42を形成したが、本発明はこ
れに限定されるものではなく、緩衝部42を形成しなくてもよい。この場合
電池組立体作成工程、界面用電解液注入工程、及び電圧印加工程が省略され、
電池組立体作製工程の後に電解媒体注入工程が実施される。
【0140】上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各
実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
実施例】【0141】
  以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の
実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更し
て実施できる。
【0142】 (実験例1)(i)正極の作製
  まず、オリビン型の結晶構造をもつリン酸マンガンリチウム(以下、LM
Pともいう)粉末に溶剤となるエタノールを所定量混合し、直径0.5mm
のジルコニア球を用いて3時間遊星ボールミル処理を行った。処理後の混合
物からジルコニア球を篩で取り除いた後、120℃で乾燥してエタノールを
除去してLMP微粉末を得た。次に、前記LMP微粉末とエタノールを混合
し、エタノールにLMP微粉末が分散した固形分が16.4wt%のスラリ
ーを得た。
【0143】  正極の活物質として、メジアン径が5μmのスピネル型のニッ
ケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5O4、以下、LNMO
ともいう)を用いた。
【0144】LNMO30gを摩砕式ミル(ホソカワミクロン株式会社製、
製品名:ノビルタ)に投入し、クリアランス0.6mm、ローター負荷動力
1.5kW、2600rpmで回転させながら、LMP微粉末のエタノール
分散スラリーをLMP微粉末の添加量が0.6wt%となるように二回に分
けて投入した。その後、前記ローター回転数を2600rpm~3000
rpmの範囲に保って空気雰囲気下、室温で10分間処理し、LMPで表面
を被覆したLNMOを得た。得られた表面被覆LNMOを350℃で1時間
熱処理し、正極複合活物質を得た。
【0145】得られた正極複合活物質、導電性材料としてのアセチレンブラ
ック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、それ
ぞれ固形分濃度で90重量部、6重量部、及び4重量部含む混合物を、N-
メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製した。なお、
前記バインダーは固形分濃度5重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NM
P)溶液に調整したものを使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにN
MPを加えて粘度調整した。
【0146】 前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、
120℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施
した後、さらに170℃で真空乾燥することによって正極を作製した。
【0147】  (ii)負極の作製
  負極活物質として、スピネル型のチタン酸リチウム(Li4Ti5O12、
以下、LTOともいう)を用いた。前記LTO、導電助材としてのアセチレ
ンブラック、及びバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、
それぞれ固形分濃度で100重量部、5重量部、及び5重量部を含む混合物
を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを作製し
た。なお、バインダーは固形分濃度5wt%のNMP溶液に調製したものを
使用し、後述の塗工をしやすいように、さらにNMPを加えて粘度調整した。
【0148】  前記スラリーを20μmのアルミニウム箔に塗工した後に、1
20℃のオーブンで乾燥させた。この操作をアルミ箔の両面に対して実施し
た後、さらに170℃で真空乾燥することによって負極を作製した。
【0149】  (iii)リチウムイオン二次電池の作製
  上記(i)及び(ii)で作製した正極及び負極と、20μmのポリプロピ
レン製のセパレータを用いて、以下の手順で電池を作製した。
【0150】まず初めに、正極及び負極を80℃で12時間、減圧乾燥した。
次に、負極/セパレータ/正極の順に正極を15枚、負極を16枚使用して
積層した。最外層はどちらもセパレータとなるようにした。次に、両端の正
極及び負極にアルミニウムタブを振動溶着させた。
【0151】外装材となる二枚のアルミラミネートフィルムを準備し、プレ
スにより電池部となる窪みとガス捕集部となる窪みを形成後、前記電極積層
体を入れた。
【0152】非水電解質注液用のスペースを残した外周部を180℃×7秒
でヒートシールし、未シール箇所から、エチレンカーボネート、プロピレン
カーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、体積基準でエチレンカー
ボネート/プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=15/15
/70の割合で混合した溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなる割合で溶
解させ、非水電解質を入れた後に、減圧しながら未シール箇所を180℃×
7秒でヒートシールした。
【0153】得られた電池を0.2C相当の電流値で電池電圧が終止電圧
3.4Vに到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。その後、60
℃の環境で24時間静置した後、0.2C相当の電流値で定電流放電を行い、
電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止した。放電停止後、ガス捕集
部に溜まったガスを抜き取り、再シールを行った。以上の操作により、評価
用のリチウムイオン二次電池を作製した。

※(実験例2)~(実験例18)割愛
  
【0178】  (ガス発生量測定)
  各実験例1~18におけるサイクル特性評価前後のリチウムイオン二次電池
のガス発生量の評価は、アルキメデス法、すなわちリチウムイオン二次電池
浮力を用いて評価した。評価は下記の通りに行った。
【0179】最初に、リチウムイオン二次電池の重量を電子天秤で測定した。
次に、比重計(アルファミラージュ株式会社製、品番:MDS-3000)を
用いて水中での重量を測定し、これら重量の差をとることによって浮力を算出
した。この浮力を水の密度(1.0g/cm3)で除算することによって、
チウムイオン二次電池
の体積を算出した。エージング後の体積と、下記のサ
イクル特性評価後の体積を比較することによって、発生したガス量を算出した。

【0180】  (リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価
  各実験例1~18で作製したリチウムイオン二次電池を、充放電装置(H
J1005SD8、北斗電工株式会社製)に接続し、サイクル運転を行った。
60℃の環境下で、1.0C相当の電流値で電池電圧が終止電圧3.4Vに
到達するまで定電流充電を行い、充電を停止した。続いて1.0C相当の電
流値で定電流放電を行い、電池電圧が2.5Vに達した時点で放電を停止し
た。これを1サイクルとして充放電を繰り返した。
【0181】また、サイクル特性の安定性は、1回目の放電容量を100と
したときの500回目の放電容量を、容量維持率(%)として評価した。
【0182】  (レート特性評価)
  各実験例1~18で作製したリチウムイオン二次電池に対して、25℃、
0.2Cで充放電を行い、続けて2.0Cで充放電を行うことでレート特性
の評価を行った。
【0183】このときの充電終止電圧及び放電終止電圧は、それぞれ2.5
V及び3.4Vとした。0.2Cでの放電容量に対する2.0Cでの放電容
量の割合を放電レート特性とした。
【0184】  まず、各実験例1~7の評価結果を表1に示す。
【0185】【表1】
000003
  被膜を形成した実験例1~7では、表1のように、いずれも100サイクル
後のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられていた。
【0186】このことから、被膜を形成することでガス発生を抑制する効果
(以下、ガス発生抑制効果ともいう)を奏することが示唆された。
【0187】被膜としてLMPを使用した実験例1~3では、表1のように
、被膜としてLFPを使用した実験例4,5やLATPを使用した実験例6,
7に比べて、レート特性が向上した。
【0188】被膜としてLFPを使用した実験例4,5やLATPを使用し
た実験例6,7では、添加量が大きくなるにつれて初期容量が小さくなると
ともに2Cの値も小さくなり、ガス発生量が小さくなっていた。一方、被膜
としてLMPを使用した実験例1~3では、被膜の添加量が増えるにつれて
初期容量が大きくなるとともに2Cの値がほぼ一定となり、ガス発生量が大
きくなっていた
【0189】  このことから、被膜としてLMPを使用する場合には、被膜の
添加量を少量にしても容量が維持されるとともに、ガス発生を抑制する効果
が高いことが示唆された。
【0190】  続いて、各実験例1、2、8~11の評価結果を表2に示す。
【0191】【表2】
000004
各実験例1、2、8~11では、表2のように、いずれも100サイクル後
のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられており、処理温度が高くなる
につれてクラックの発生が懸念されたが、800度で熱処理しても明確なガ
ス発生量の増加がみられなかった。
【0192】また、添加量が0.6wt%の実験例1,8,9を比較すると、
処理温度が大きくなるにつれて初期容量及び2Cの値が大きくなっていた。
【0193】同様に、添加量が0.9wt%の実験例2,10,11を比較
しても、処理温度が高くなるにつれて初期容量及び2Cの値が大きくなって
いた。
【0194】これらのことから、処理温度を高くすることで、ガス発生抑制
効果を奏しつつ、初期容量及び2Cの値が上昇することが示唆された。
【0195】続いて、各実験例1,2,12,13の評価結果を表3に示す。
【0196】【表3】
000005
  各実験例1,2,12,13では、表3のように、いずれも100サイクル
後のガス発生量が10cc/Ah以下に抑えられていた。
【0197】被膜の添加量が0.6wt%の実験例1,12では、処理時間の
増加に伴い、100サイクル後のガス発生量及び300サイクル後のガス発
生量がほとんど変化なかった。
【0198】被膜の添加量が0.6wt%の実験例1,12では、被膜の添
加量が0.9wt%の実験例2,13に比べて、300サイクル後のガス発
生量が少なくなった。
【0199】また、実験例1,2,12,13では、処理時間の増加に伴い、
初期容量及び2Cの値が増加した。
【0200】これらのことから、処理時間を長くすることで被覆の均一性
が向上してガス抑制効果が向上することが示唆された。また、処理時間を長
くすることで初期容量も回復し、添加量を少量にして薄く被覆することで、
被覆による効果が高くなることが示唆された。
【0201】  続いて、各実験例14~18の評価結果を表4に示す。
【0202】【表4】
000006
被膜を形成した各実験例14~17では、被膜を形成していない実験例18
に比べて、レート特性がほとんど変わらないものの、500サイクル後の
ガス発生量が35cc/Ah以下に低減され、容量維持率も向上した。
【0203】このことから、負極においても被膜を形成することでガス発
生抑制効果が得られることが示唆された。
【0204】また、実験例14,15を比較すると、処理温度が上昇する
につれてレート特性が向上した。同様に実験例16,17を比較すると、
処理温度が上昇するにつれてレート特性が向上した。
【0205】このことから、処理温度を高くすることでレート特性が向上
することが示唆された。
【0206】LMPを被覆した実験例14,15では、LFPを被覆した
実験例16,17に比べてガス発生量が低減し、レート特性が向上した。
【0207】以上のことから、活物質粒子の表面にリン酸イオン含有リチ
ウム化合物を含む被膜を被覆することで、ガス発生量を抑制できることが
わかった。
【0208】  特に、活物質粒子の表面にLMPを被覆することで、ガス
発生量を抑制でき、レート特性が向上することが分かった。
 

   今日の映画音楽 『 Ghostbusters』
                         Theme Song • Ray Parker Jr.


今日の言葉:気候変動の災害増加が女性への暴力増加と関連している?!
        気候変動災害の増加が暴力と関連するのではないかとは
        思えないことはないが、具体的な示唆されるとはね?!
        (GIGAZINE 2024.11.16
        ※掲載記事
        ・The impact of environmental shocks due to climate
         change on intimate partner violence: A structural
         equation model of data from 156 countries ( PLOS
         Climate
        ・Climate change linked to increased violence against
         women - Earth.com

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境52

2024年11月15日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-



【季語と短歌:11月15日】

        秋愁い忽然と愛し面影 
                高山 宇 (赤鬼) 

※暑い🏹寒いの端境季は、ホルモン分泌も狂い、愛しき日々の友垣の面
 影が釣り綸を引くよう顕れ嗚咽・感謝・懐かしむこと多し。

 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察 ⓻                    

3.特開2024-150335 リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電
  池の製造方法 株式会社カネカ
【要約】下図2のごとく、正極及び負極10、11は、被覆活物質粒子130
を含む、活物質層が形成された集電体20、120を、活物質層付き集電体
として含み、前記被覆活物質粒子は、Liイオンを含む被膜35で、活物質
粒子30が、被覆されてなり、前記正極の前記被膜である正極被膜の前記Li
イオンの平均濃度である正極被膜Liイオン平均濃度が、前記負極の前記被
膜である負極被膜の前記Liイオンの平均濃度である負極被膜Liイオン平
均濃度と、異なる、リチウムイオン二次電池とすることで、電解媒体分解に
よるガスの発生の抑制ができ、かつ、特性に優れたリチウムイオン二次電池
及びその製造方法を提供する。


【符号の説明】【0209】
1  Liイオン二次電池    2  活物質層    21  正極活物質層    3  外装体
5  電極積層体    6  電解媒体(電解液)  10  正極部  11  負極部  12
セパレータ  13  正極用取出部材  14  負極用取出部材  20  正極用集電
体120  負極用集電体  30  活物質粒子130  被覆活物質粒子(Liイ
オン二次電池用被覆活物質粒子)  35  被膜  36  コアシェル粒子  40  
正極活物質粒子140  負極活物質粒子  41  シェル膜  42  緩衝部  60  
海状部  61  島状部  70  バインダー  80  導電ネットワーク  81  浸透
性細孔ネットワーク

【発明の詳細な説明】【0006】
  全固体LIBについては、固体電解質が活物質、特に、正極活物質と直接
接触した状態での充放電繰り返しで酸化劣化し易い「固体電解質酸化劣化」
が知られており、長寿命化(例えば、サイクル特性向上)の観点から、固
体電解質の劣化防止のための工夫が必要であり、バルク型と薄膜型とに大
別でき、大容量化観点から活物質絶対量を多くできるバルク型が有利である。
 バルク型全固体LIBの電極材料として、これらのことから、小伝導率第
一イオン伝導層(1×10-6 S/cm以上)にて、大伝導率活物質(1×10-4 S/cm
以上)の二次粒子を被覆すると共に二次粒子を構成する一次粒子間間隙を
充填することで、全一次粒子を充放電に直接寄与せしめ、また、第一イオ
ン伝導層で被覆された二次粒子を、第一イオン伝導層と異なる物質である
中伝導率第二イオン伝導層(1×10-5 S/cm以上)で積層被覆することで充
放電の繰り返しによる二次粒子の破砕「活物質二次粒子破砕」抑制を図っ
た材料が提案されている。
【0009】
 LNMOは、作動電圧がLi金属の析出電位基準で4.7Vであり、正極
活物質材料として使用されている従来のLiインサーション材料(例えば
、コバルト酸リチウムは4V)に比べて高く、高エネルギー密度化に向け
て期待されている。
【0010】
  ところで、LIBでは、Liイオン挿入脱離時に活物質の結晶構造が変化
し歪みが発生することで不安定化「構造変化歪み不安定化」する場合があ
り、その結果、正極活物質では結晶構造の構成遷移金属イオンの溶出「遷
移金属溶出」を伴って、  正極近傍では、当該遷移金属との結合が切れた
「酸素脱離」が生じて、酸素ガスとして発生したり、電解媒体と反応して
二酸化炭素ガスが発生したりする「ガス発生」の問題が、また、負極近傍
でも、電解媒体が還元され水素ガス等が発生する「還元水素ガス発生」の
問題があり、これら「ガス発生の抑制」が求められている
【0011】
  例えば、非水電解液を電解媒体として用い、正極活物質を後述するLNM
OとしたLNMO正極非水電解液LIBでは、作動電圧が高く正極近傍は
酸化雰囲気下で反応が進行するため、「ガス発生」が顕著になるという問
題がある。
【0012】
 ここで、「酸素脱離」抑制の観点からは、LiFePO(LFP)に代
表されるポリアニオン材料で正極活物質を被覆することが考えられ、当該
材料構成の遷移金属と酸素との結合を強化する「ポリアニオン遷移金属酸
素結合強化」の結果として、「酸素脱離」は抑制されるが、ポリアニオン
の低導電性に由来して生じる抵抗の増大「ポリアニオン高抵抗」という問
題が新たに発生じてしまう。
【0013】
  また、高ニッケル濃度のリチウム遷移金属複合酸化物の正極活物質の使用
により、高エネルギー密度LIBとなるが、充放電サイクル等起因の「酸
素脱離」により生成する不活性NiOのLiイオン伝導阻害「不活性NiO
伝導阻害」起因の出力低下が報告されている。
【先行技術文献】【特許文献】【0014】
【特許文献1】 特開2021-051987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
  「不活性NiO伝導阻害」起因の出力低下については、活物質表面を表面
炭素担持Li系ポリアニオンで被覆した正極材料にて電解液との直接接触
面積低減し、不活性NiOの生成抑制した場合、特に、Li系ポリアニオ
ンとしてLMPを用いた場合に、Mn3+POのMn3+でのヤーンテラ
ー効果に基づき生じるポーラロンホールによる「移動電荷トラップ」、及
び、MnPO/LMP「界面ミスマッチ」による電荷移動ポテンシャル障
壁が上昇「電荷移動ポテンシャル障壁上昇」が発生し、これらによる界面
高抵抗化が過電圧印加に繋がり、結果、劣化を早めることとなる不具合が
報告されている。対策として、Ni含有Li遷移金属複合酸化物の第1正
極活物質表面を、表面炭素担持のオリビン型の第2正極活物質、及びCN
Tを含む被覆層にて被覆した複合体が報告されているが、カーボンコート
したLi系ポリアニオンは、第1の正極活物質からのLiイオンの電解媒
体への流通経路としてはそのイオン伝導度が不十分と考えられる。
【0016】
  ところで、ポリアニオン材料は、上述した「ポリアニオン遷移金属酸素
結合強化」作用を有するだけでなく、強固な結晶構造にて高温高電圧時に
も酸素を放出しにくい正極活物質として、ポリアニオン系正極材料は「強
固結晶少酸素放出ポリアニオン」作用を有し、例えば、オリビン型Fe(
LFP)や類似結晶構造のオリビン型Mn(LMP)等が検討されている
が、LFPは低作動電圧にて低エネルギー密度で、LiMnPOは作動
電圧が4.1V、理論容量が160mAh/gで、現状一般的に使用され
ているLIB正極のLiCoOよりも高いエネルギー密度が期待される
が、材料自身が高抵抗「LMP高抵抗」に起因し低出力密度であるとの報
告がある。
【0017】
  そこで、本発明は、電解媒体分解によるガスの発生の抑制ができ、かつ、
特性に優れた、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】【0018】
 上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、外装体内に、電解
媒体を挟んで互いに対向する正極及び負極を有した電極積層体が封入され
た、リチウムイオン二次電池であって、前記正極及び前記負極は、被覆活
物質粒子を含む、活物質層が形成された集電体を、活物質層付き集電体と
して含み、前記被覆活物質粒子は、Liイオンを含む被膜で、前記活物質
粒子が、被覆されてなり、前記正極の前記被膜である正極被膜の前記Li
イオンの平均濃度である正極被膜Liイオン平均濃度が、前記負極の前記
被膜である負極被膜の前記Liイオンの平均濃度である負極被膜Liイオ
ン平均濃度と、異なる、リチウムイオン二次電池リチウムイオン二次電池
である。
【0019】本様相によれば、電解媒体分解によるガスの発生の抑制がで
き、かつ、特性に優れた、リチウムイオン二次電池となる。
【0020】 好ましくは、前記被膜が、前記活物質粒子側から、前記活物
質粒子がコアを構成し、連続するシェル膜がシェルを構成する、コアシェ
ル構造を有するコアシェル粒子の前記シェル膜、及び前記コアシェル粒子
の外表面である前記シェル膜の外側面の全面に亘り形成された緩衝部であ
って、前記全面の全領域において、非形成領域を含んでもよく、形成領域
に形成された、緩衝部からなり、記正極の前記シェル膜である正極シェル
膜の前記Liイオンの平均濃度である正極シェル膜Liイオン平均濃度が、
 前記負極の前記シェル膜である負極シェル膜の前記Liイオンの平均濃度
である負極シェル膜Liイオン平均濃度と、異なる。

【0021】好ましくは、前記正極の前記緩衝部である正極緩衝部の前記
Liイオンの平均濃度である正極緩衝部Liイオン平均濃度が、前記負極
の前記緩衝部である負極緩衝部の前記Liイオンの平均濃度である負極緩
衝部Liイオン平均濃度と、異なる。
【0022】好ましくは、前記非形成領域/前記全領域の比率の前記活物
質粒子の個数平均が、0.001以上、0.3以下である。
【0023】好ましくは、前記シェル膜が、Fe、Mn、Si、及びAl
からなる群から選ばれる1以上の金属を含んだリン酸イオン含有リチウム
化合物である。
【0024】好ましくは、前記負極の前記活物質粒子は、チタン酸リチウ
ムを含み、高安全性LIBとなる。
【0025】好ましくは、前記正極の前記活物質粒子は、リチウムニッケ
ルマンガン酸化物を含み、より高出力のLIBとなる。
【0026】上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、上述
のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、順に、前記集電体上に、
正極活物質粒子を含む正極活物質層を形成して正極活物質層付き集電体A、
及び負極活物質粒子を含む負極活物質層を形成して負極活物質層付き集電
体Aを製造する活物質層付き集電体A製造工程、少なくとも1組の前記正
極集電体A、及び前記負極集電体Aを対向させ、電極積層体Aを製造する
電極積層体A製造工程、前記電極積層体Aを、電解液B中に浸漬し、条件
Bで、前記緩衝部の一部である緩衝部Bとして、正極緩衝部Bを含む正極
活物質層付き集電体B、及び負極緩衝部Bを含む負極活物質層付き集電体
Bを形成して、緩衝部Bを含む電極積層体Bを製造する電極積層体B製造
工程、前記電極積層体Bを、電解液C中に浸漬し、条件Cで、前記緩衝部
の一部である緩衝部Cとして、正極緩衝部Cを含む正極活物質層付き集電
体C、及び 負極緩衝部Cを含む負極活物質層付き集電体Cを形成して、緩
衝部Cを含む電極積層体Cを製造する電極積層体C製造工程を含み、前記
正極、前記負極の各々の前記緩衝部である、正極緩衝部、負極緩衝部につ
いて、前記正極緩衝部における前記正極緩衝部Bの厚さ:前記負極緩衝部
における前記負極緩衝部Bの厚さ、及び前記正極緩衝部における前記正極
緩衝部Cの厚さ:前記負極緩衝部における前記負極緩衝部Cの厚さ、で表
される、前記正極及び前記負極についての前記緩衝部の各々の条件で形成
される厚さが、条件間で、各々、前記正極、前記負極の、一方に厚く、他
方に薄く、偏って形成されることで、10:5未満、又は、5未満:10
である、リチウムイオン二次電池用電極積層体の製造方法である。
【0027】本様相によれば、電極積層体B製造工程、電極積層体C製造
工程の内、一方は正極緩衝部を、他方は負極緩衝部を、主に形成する製造
方法となるので、各々に適した緩衝部が形成できるので、電解媒体分解に
よるガスの発生の抑制ができ、かつ、特性に優れた、リチウムイオン二次
電池が製造できる。
【発明の効果】
  本発明のリチウムイオン二次電池は、電解媒体分解によるガスの発生が
抑制され、かつ、特性に優れる。
【0029】本発明のリチウムイオン二次電池の製造法によれは、電解媒
体分解によるガスの発生が抑制され、かつ、特性に優れたリチウムイオン
二次電池ができる。
【図面の簡単な説明】【0021】
  好ましくは、前記正極の前記緩衝部である正極緩衝部の前記Liイオンの
平均濃度である正極緩衝部Liイオン平均濃度が、前記負極の前記緩衝部
である負極緩衝部の前記Liイオンの平均濃度である負極緩衝部Liイオ
ン平均濃度と、異なる。
【0022】好ましくは、前記非形成領域/前記全領域の比率の前記活物
質粒子の個数平均が、0.001以上、0.3以下である。
【0030】【図1】本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池を
概念的に示した説明図であり、(a)はリチウムイオン二次電池の斜視図
であり、(b)は(a)のA-A断面図であり、(c)は(a)のB-B
断面図である。【図2】図1の正極部及び負極部の電極部の説明図であり、
(a)は電極部の断面図であり、(b)は被覆活物質粒子の断面図である。
【発明を実施するための形態】【0031】
  以下、本発明の実施形について詳細に説明する。
【0032】  (リチウムイオン二次電池(LIB)1)
  本発明の第1実施形態のリチウムイオン二次電池(単にLIBともいう)
1は、図1のように、外装体3内に電極積層体5が収容された電池組立体
2を有し、電池組立体2の外装体3内に電解媒体6を満たして封止したも
のである。
【0033】リチウムイオン二次電池1は、電解媒体6が非水電解液の非
水電解液LIBであってもよいし、電解媒体6が固体電解質の全固体LI
Bであってもよいし、電解媒体6がポリマー電解質のポリマーLIBであ
ってもよく、非水電解液LIBであることが好ましい。
【0034】以下の説明では、リチウムイオン二次電池1が非水電解液
LIBである場合について説明する。

<外装体3>
  外装体3は、電解媒体(電解液)6に対し化学的に安定、特に非水電解
液6に対し安定かつ十分な水蒸気バリア性のものであれば適宜選択でき、
最終的に電極積層体5が電解媒体6を収容した密閉内部空間を形成し得る
ものである。
【0035】外装体3に用いる材料、形態としては、アルミニウムや、鉄、
ステンレスを、主材とした缶、ラミネート樹脂を含むラミネートフィルム
等が挙げられ、ラミネート樹脂を用いた外装体3については、非水電解液
二次電池
の場合、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレ

ン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることもできるが、汎用
性やコスト等の観点から、アルミニウムラミネートフィルムを用いること
が好ましく、好ましい外装体3としては、2枚の金属製のラミネートフィ
ルムの接着接着することで形成されることが好ましい。

<電極積層体5>
  電極積層体5は、図1のように、正極部10と、負極部11と、セパレ
ータ12と、正極用取出部材13と、負極用取出部材14を有している。
(正極部10、負極部11)
  正極部10、負極部11は、図1(b)のように、正極集電体20、負
極集電体120の少なくとも一方の主面上に正極活物質層21、負極活
物質層121が積層されたものであり、Liイオンが挿入・脱離が可能
なインターカレーション電極である。
【0036】 本実施形態の正極部10、負極部11は、図2(a)のよ
うに、正極集電体20、負極集電体120の両主面上に正極活物質層21、
負極活物質層121が積層されている。
(正極集電体20、負極集電体120)
正極集電体20、負極集電体120は、導電性を有する板状体又は状体で
あり、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、
アルミニウムやアルミニウム合金が使用できるが、正極反応雰囲気下及び
負極反応雰囲気下で安定であることから、アルミニウム又はアルミニウム
合金であることが好ましく、JIS規格1030、1050、1085、
1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムであることがより
好ましく、金属の表面に正極の電位で反応しない金属を被覆した被覆体が
使用できる。
(活物質層2(正極活物質層21、負極活物質層121))
  活物質層2(正極活物質層21、負極活物質層121)は、Liイオン
伝導性活物質の粒子30を含んで構成されており、他に、バインダー70、
導電ネットワーク80、及び浸透性細孔ネットワーク81から構成され、
集電体20、120上に形成され、好ましくはSEI構造を含み、好まし
くは図2(a)の拡大図のように、海島構造を有した海島構成膜であり、
断面形状が海状部60と島状部61を備えている、所謂バルクの膜である。

【0037】正極活物質層2は、重量比率では被覆活物質粒子30が多
く占めるが、体積比率ではバインダー70と導電ネットワーク80が電
子顕微鏡でも確認できる程度を占める。
(被覆活物質粒子30)
  被覆活物質粒子30は、図2(b)のように、活物質粒子40、負極活
物質層121をコアとし、シェル膜41をシェルとするコアシェル構造を
有するコアシェル粒子36を備えている。すなわち、コアシェル粒子36
は、正極活物質粒子40の外面をシェル膜41が覆っている。
【0038】また、本実施形態の被覆活物質粒子30は、シェル膜41の
外表面の一部又は全部に緩衝部42をさらに備えている。すなわち、本実
施形態の被覆活物質粒子30は、正極活物質粒子40の表面に被膜35が
覆っており、被膜35は、シェル膜41と緩衝部42の多層膜となって
いる。
【0039】そして、より高性能のLIBとする観点から、正極活物質粒
子130のシェル膜41に含まれるLiイオンの濃度である正極シェル膜
Liイオン濃度は、負極活物質粒子130のシェル膜41に含まれるLi
イオンの濃度である負極シェル膜Liイオン濃度と、異なっていることが
好ましく、より好ましくは、高速充電が要求されるLIBと、高速放電が
要求されるLIBとで、区別して設計製造することであり、これらの濃度
は、膜中の平均濃度であり、また、前述のシェル膜41/緩衝部42の多
層膜においては、緩衝部42緩衝部42は、Liイオンを含まない酸化物
及び/又は有機物を含み、全体としてLiイオンを含んで構成されること
から、正極多層膜Liイオン濃度と負極多層膜Liイオン濃度とが異なる
LIBとすることで、より高性能とLIBとすることができ、好ましく、
より好ましくは、高速充電が要求されるLIBと、高速放電が要求される
LIBとで、区別して設計製造することである。
(活物質粒子40、140)
  活物質粒子40、140は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子であり、
リチウムイオンを挿入及び脱離が可能となっている。
【0040】  その粒径は、特に限定されないが、メジアン径d50が5
μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、
20μm以上であることがさらに好ましく、100μm以下であることが好
ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であるこ
とがさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。

【0041】  <正極活物質粒子40>
  正極活物質粒子40は、Liの脱離及び挿入の平均電位がLi金属の析
出電位に対して(vs.Li/Liとも示す)、4.5V以上5.0V
以下であることが好ましい。すなわち、正極活物質粒子40は、単体での
Li金属基準での作動電位が4.5V以上5.0V以下であることが好ま
しい。

【0042】 Liイオン挿入・脱離反応の電位(以下、電圧ともいう)(
vs.Li/Li)は、例えば、正極活物質粒子40を用いた動作極、
Li金属を対極とした半電池の充放電特性を測定し、プラトー開始時、
及び終了時の電圧値を読み取ることによって求めることができる。プラ
トーが2箇所以上あった場合は、もっとも低い電圧値のプラトーが4.5
V(vs.Li/Li)以上であればよく、もっとも高い電圧値のプラ
トーが5.0V(vs.Li/Li)以下であればよい。
【0043】正極活物質粒子40は、特に限定されないが、下記式(1)
で表されるスピネル型のリチウムマンガン系酸化物が好ましい。
【0044】
  Li1+xMn2-x-y・・・(1)
  前記式(1)中、x、yはそれぞれ0≦x≦0.2、0<y≦0.8を
満たし、MはAl、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Ti、Cu、及び
Crよりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、後述する「アセト
ニトリル溶出金属イオン負極析出SEI損傷還元分解促進影響」にも注
意を払うべきである。
【0045】
  上記式(1)の中でも、MがNiであるリチウムニッケルマンガン酸化
物(LNMO)が好ましいが、上述の「酸素脱離不活性NiO拡散阻害」
への対策が必要となる。
(負極活物質粒子140)
  負極活物質粒子140は、リチウム析出が起きにくく安全性が向上する観
点からチタン酸リチウムを使用することが好ましい。
【0046】
  負極活物質粒子140は、チタン酸リチウムの中でも、リチウムイオン
の挿入・脱離の反応における活物質の膨張収縮が小さい点から、スピネル
構造のチタン酸リチウムが特に好ましい。
【0047】
  チタン酸リチウムには、例えば、Nbなどのリチウム、チタン以外の元
素が微量含まれていてもよい。
(シェル膜41)
  シェル膜41は、活物質粒子30の表面形状を緻密に覆った連続した層
構造を有する膜であり、元素としてリンを含有したLiイオン伝導性化合
物を含んで構成された被膜であり、単独で正極活物質として機能するイン
ターカレーション材料で構成されていることが好ましい。
【0048】
  シェル膜41は、リン酸イオンを含み、さらにFe、Mn、Si、及び
Alからなる群から選ばれる1種以上の金属を含むリン酸イオン含有Li
化合物を有している。
【0049】
  このようなリン酸イオン含有Li化合物としては、オリビン型の結晶構
造をもつリン酸マンガンリチウム(以下、LMPともいう)やリン酸鉄Li
(以下、LFPともいう)、NASICON型の結晶構造をもつリン酸チ
タンアルミリチウム(以下、LATPともいう)、リン酸リチウム(以下、
LPともいう)などのリチウムリン酸化合物であることが好ましく、LM
P、LFP、LATPなどのリチウム遷移金属リン酸塩が好ましい。
【0050】
  LPとしては、LiPO4-a-b(Xは、N、S、B、及びSi
からなる群より選ばれる1種、Yはハロゲン原子の何れかである。)で示
されるLi含有化合物であってもよく、LIB内に存在するLiの消費を
抑制しつつ、高容量低抵抗LIBとなり、酸素原子の一部がX、Yで置換
された構造を有し、X導入によりLi導電性は向上するが電気的絶縁性が
低下するので、Yを適量導入することで電気的絶縁性を確保したものであ
ると報告されてる。
【0051】

              
                           この項つづく

 今日の楽曲  昭和歌謡曲 『 いつでも夢を』
             吉永小百合/橋幸雄

              ※ 歌謡曲のよさは、日本語の詩歌が明確でしたね。


 今日の言葉:2024年は史上最も暑い年になる見通し
欧州の気象当局はこのほど、猛烈な熱波や多くの犠牲者につながった嵐が
世界各地を襲った2024年が、統計開始以来で最も気温の高い年となること
が「ほぼ確実」となったとの見通しを発表。( 2024年11月8日 BBC



国連 “世界の平均気温 今世紀末までに最大3.1度上昇”(NHK 24.10.25



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境51

2024年11月14日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月14日】

       侘助や吾が一生も爆発期  
                    高山 宇 (赤鬼)

※侘助椿は、15世紀の茶人「侘助」が好んだ椿、茶席にしばしば活けら
 れ、厳冬に花を半開させる姿が、茶人たちに侘びの精神を象徴された。
 薄田泣菫がは著書「侘助椿」の中で「この花には捨てがたい侘がある」
 と評した。


⬛ 先端半導体は「2ナノ」へ TSMCの独走

2025年、先端半導体の最大のトピックは2nm世代へ移行
米Apple(アップル)が2026年に「iPhone」へ搭載するのを皮切りに、
米NVIDIA(エヌビディア)や米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイ
セズ)などが採用する見通しだ。これらAI(人工知能)銘柄の需要を総取
りする台湾積体電路製造(TSMC)の独走が続くか、競合の米Intel(イン
テル)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が一矢報いるかが注
目されている。また、
データセンターのGPU(画像処理半導体)やCPU(
中央演算処理装置)、スマートフォンのCPUなどに使われるロジック(演
算用)半導体が、現行の3nm世代から2nm世代へ移行する。生成AI向けな
どで求められる高い演算能力に応える。

米IBMは業界初の2nm世代のテストチップを2021年5月に発表した(出所:IBM)

 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察 ⑥

2. 特開2024-153730 非水電解液二次電池 株式会社GSユアサ⓶

【要約】下図いのごとく、本発明の一態様に係る非水電解液二次電池は、
正極と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極
が硫黄系活物質とメソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラス
カーボン複合体を含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ
素化溶媒が、鎖状フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステ
ル、又はこれらの組み合わせを含む、非水電解液二次電池で、充放電を繰
り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質を含む正極を備えた非水電解
液二次電池を提供する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
【0094】R及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原
子がフッ素原子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R
及びRは、Rのみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、R
みがフッ素化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化され
た炭化水素基であってもよい。
【0095】この鎖状フッ素化カーボネートとしては、例えば、2,2-
ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエ
チル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、
2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、エチル-(2,2,
2-トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオ
ロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0096】式(1)及び式(2)でのフッ素化された炭化水素基におい
て、置換するフッ素原子の数は特に限定されず、1個以上であればよい。
また、置換するフッ素原子の数が少ないと、耐酸化性が低くなり、耐還元
性が高くなり、正極で被膜を形成しやすく、負極で還元分解しにくくなる
と考えられる。このような観点から、置換するフッ素原子の数は6個以下
であるのが好ましく、5個以下であるのがより好ましく、4個以下である
のがさらに好ましく、3個以下であるのがよりさらに好ましい。フッ素原
子が結合する炭素は特に限定されず、炭化水素基の末端に位置する炭素で
あってもよく、末端以外の炭素であってもよい。
【0097】式(1)及び式(2)において、R、R、R及びR
炭化水素基は、好ましくは炭素数1~8であり、より好ましくは炭素数1
~5であり、よりさらに好ましくは炭素数1~3である。炭素数をこれら
の値とすることで、鎖状フッ素化カルボン酸エステル又は鎖状フッ素化カ
ーボネートの粘度を低くすることができる。
【0098】R、R、R及びRがフッ素化された炭化水素基でない
有機基の場合、これらの有機基はアルキル基又はアルケニル基であること
が好ましく、アルキル基であることがより好ましい。これらの有機基は直
鎖状でもよく、分岐状でもよい。
【0099】上記アルキル基としては、CH-、CHCH-、CH
CHCH-等、上記アルケニル基としては、CH=CH-、CH
CHCH-、CH=C(CH)-等が挙げられる。
【0100】非水電解液における鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖
状フッ素化カーボネートの合計含有割合の下限は、20体積%以上である
と好ましく、30体積%以上であるとより好ましく、40体積%以上であ
るとさらに好ましく、50体積%以上であるとよりさらに好ましい。上限
は、100体積%以下であり、90体積%以下であってもよく、80体積
%以下であってもよく、70体積%以下であってもよい。これにより、充
放電を繰り返した際の容量保持率を高める本発明の効果を、より確実に発
揮することができる。
【0101】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
非水電解液に含まれる鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖状フッ素化
カーボネートは、正極で酸化分解し、硫黄系正極活物質の表面に被膜を形
成すると考えられる。この被膜によって、硫黄系活物質と非水電解液とが
直接接触する面積が減少し、リチウムポリスルフィドの非水電解液への溶
出が抑制されると考えられる。ところが、硫黄系活物質は充放電に伴う体
積変化が大きいため、充放電を繰り返すと被膜に割れが生じ、リチウムポ
リスルフィドが非水電解液に溶出する虞がある。ここで、非水電解液にお
ける鎖状フッ素化カルボン酸エステル及び鎖状フッ素化カーボネートの合
計含有量が20体積%以上であると、被膜に割れが生じても新たな被膜が
形成されやすい。これにより、リチウムポリスルフィドの溶出を確実に抑
制できるため、充放電を繰り返した際の容量保持率をとができると考えら
れる。
※漏洩・地下浸透の環境汚染の心配が残件するが、どうだろう?
【0102】フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの含有割合の下
限は0体積%であり、0体積%超であると好ましく、5体積%であるとよ
り好ましく、7体積%であるとさらに好ましい。フッ素化溶媒における鎖
状フッ素化エーテルの含有割合の上限は20体積%以下であり、18体積
%以下であると好ましく、15体積%以下であるとより好ましく、10体
積%であるとさらに好ましい。フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテ
ルの含有割合を上記の値とすることで、充放電を繰り返した際の容量保持
率を高めることと、充放電サイクルの初期における放電容量を高めること
とを両立することができる。
【0103】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
鎖状フッ素化エーテルは、鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルと比べて、耐酸化性が高く、耐還元性が低い。このため、
非水電解液が鎖状フッ素化エーテルを上記含有割合となるよう含むことで、
非水電解液の耐還元性を大きく損なうことなく、正極におけるフッ素化溶
媒の反応性を適度に下げ、フッ素化溶媒の酸化分解を抑制することができ
ると考えられる。このようなメカニズムにより、充放電を繰り返した際の
容量保持率を高めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高める
ことができると考えられる
【0104】フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルは、例えば、式
(3)で示される鎖状フッ素化エーテルを含んでもよい。式(3)  R
O-R【0105】式(3)中、R及びRはそれぞれ独立で1価の有
機基である。R及びRで示される有機基としては、R及びRで例示
したものと同様の有機基等が挙げられる。
【0106】R及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原
子がフッ素原子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R
及びRは、Rのみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、R
のみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化さ
れた炭化水素基であってもよい。
【0107】この鎖状フッ素化エーテルとしては、例えば、CF3CF2
CH2OCH3、HCF2CF2OCH2CF2CF2H、HCF2CF
2CH2OCF2CHFCF3、CF3CF2CH2OCF2CHFCF
3、CF3CF2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2OC2H5、
HCF2CF2OC3H7、HCF2CF2OC4H9、CF3CHFC 
 F2OC2H5、CF3CH2OCH2CH2OCH3等が挙げられる。
【0108】式(3)のフッ素化された炭化水素基において、置換するフ
ッ素原子の数は1個以上であればよい。上限は特に限定されないが、例え
ば11個以下であってもよい。フッ素原子が結合する炭素は特に限定され
ず、炭化水素基の末端に位置する炭素であってもよく、末端以外の炭素で
あってもよい。
【0109】式(3)において、R及びRの炭化水素基は、好ましく
は炭素数1~8であり、より好ましくは炭素数1~5であり、よりさらに
好ましくは炭素数1~4である。炭素数をこれらの値とすることで、鎖状
フッ素化エーテルの粘度を低くすることができる。
【0110】R及びRがフッ素化された炭化水素基でない有機基の場
合、これらの有機基はアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、
アルキル基であることがより好ましい。これらの有機基は直鎖状でもよく、
分岐状でもよい。
【0111】非水電解液は鎖状溶媒と環状溶媒とを含むことが好ましい。
非水電解液における鎖状溶媒と環状溶媒との混合割合は、体積比で、30
:70から70:30の範囲とすることが好ましい。これにより、非水電
解液の粘度を下げることと、非水電解液のイオン伝導度を高めることと
を両立することができる。
【0112】非水電解液に含まれるフッ素化溶媒の含有量の下限は、非水
電解液の全体積に対して、60体積%であってもよく、63体積%である
と好ましく、65体積%であるとより好ましく、68体積%であるとさら
に好ましく、70体積%であるとよりさらに好ましい。非水電解液に含ま
れるフッ素化溶媒の含有量の上限は、非水電解液の全体積に対して100
体積%であり、99体積%であってもよく、98体積%であってもよく、
97体積%であってもよく、95体積%であってもよい。これにより、充
放電を繰り返した際の容量保持率を高くすることができる。
【0113】フッ素化溶媒は鎖状フッ素化溶媒と環状フッ素化溶媒とを含
むことが好ましい。フッ素化溶媒における鎖状フッ素化溶媒と環状フッ素
化溶媒との混合割合は、体積比で、30:70から70:30の範囲とす
ることが好ましい。これにより、非水電解液の粘度を下げることと、非水
解液のイオン伝導度を高めることとを両立することができる
【0114】非水電解液に含まれる環状溶媒における、環状フッ素化溶媒
の含有割合は、50体積%以上100体積%以下であると好ましい。これ
により、充放電を繰り返した際の容量保持率を高めることができる。
【0115】フッ素化溶媒は、環状フッ素化カーボネートを含むことが好
ましい。これにより、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導
度を高めることができる。
【0116】環状フッ素化カーボネートとしては、フルオロエチレンカー
ボネート(FEC)、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5
-ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネー
ト(4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート)、4-フルオ
ロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレ
ンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート等が挙
げられる。これらの中でも、フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジ
フルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネ
ートが好ましく、フルオロエチレンカーボネートがより好ましい。
【0117】非水電解液は、非フッ素化溶媒を含むことが好ましい。非水
電解液が非フッ素化溶媒を含むことで、充放電を繰り返した際の容量保持
率をさらに高めることができる。この理由は定かでは無いが、例えば、非
フッ素化溶媒がリチウムポリスルフィドと反応しやすく、硫黄系活物質の
表面に被膜を形成しやすいことが、充放電を繰り返した際の放電容量の保
持率を高くできる理由として推測される。
【0118】非フッ素化溶媒は特に限定されないが、分子構造中にC=O
二重結合を含む化合物を含むことが好ましい。このような非フッ素化溶媒
としては、カーボネート、エステル、アルデヒド、ケトン等が挙げられる。
このような非フッ素化溶媒を用いることで、充放電を繰り返した際の放電
容量の保持率を高くすることができる。
【0119】非フッ素化溶媒における、分子構造中にC=O二重結合を含
む化合物の含有割合は、50体積%以上100%以下であると好ましく、
60体積%以上100%以下であるとより好ましく、70体積%以上10
0%以下であるとさらに好ましく、80体積%以上100%以下であると
よりさらに好ましい。これにより、より確実に充放電を繰り返した際の放
電容量の保持率を高くすることができる。
【0120】非フッ素化溶媒として用いることができるカーボネートは、
環状カーボネートでもよく、鎖状カーボネートでもよい。環状カーボネー
トとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボ
ネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート
(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカー
ボネート、カテコールカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、
1,2-ジフェニルビニレンカーボネート、スチレンカーボネート、1-
フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネー
ト等が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネートとプロピレン
カーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートが
より好ましい。鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネー
ト、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロ
ピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチ
ルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチル
カーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボ
ネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネ
ート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等
が挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロ
ピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n
-プロピルカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカ
ーボネート、エチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0121】非フッ素化溶媒として用いることができるエステルとしては、
例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エス
テル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(M
P)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0122】非水電解液に含まれる非フッ素化溶媒の含有量の下限は、非
水電解液の全体積に対して、1体積%としてもよく、2体積%が好ましく、
3体積%がより好ましく、5体積%がさらに好ましい。非水電解液に含ま
れる非フッ素化溶媒の含有量の上限は、40体積%としてもよく、35体
積%が好ましく、32体積%がより好ましく、30体積%がさらに好まし
い。これにより、充放電を繰り返した際の容量保持率を高くすることがで
きる。
【0123】非水電解液は、上述したもののほかに公知の非水溶媒を含ん
でもよい。非水溶媒としてはカルボン酸エステル、リン酸エステル、スル
ホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒
として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換され
たものを用いてもよい。
【0124】電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電
解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウ
ム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0125】リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiB
、LiClO、LiN(SOF)、LiAsF、リチウムジフ
ルオロオキサレートボレート(LiFOB)等の無機リチウム塩、LiS
CF、LiN(SOCF、LiN(SO、Li
N(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、Li
C(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が
挙げられる。これらの中から選択される少なくとも一種を用いてもよく、
二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、電気伝導度の観
点からLiPF、LiBF、LiN(SOF)、LiN(SO
が好ましく、さらにカチオン解離度の観点からLiN(SOF)
、LiN(SOCFがより好ましい。
【0126】非水電解液における電解質塩の含有量の下限としては、
0.1Mが好ましく、0.3Mがより好ましく、0.5Mがさらに好まし
く、0.7Mが特に好ましい。電解質塩の含有量の上限としては、例えば、
2.5Mが好ましく、2Mがより好ましく、1.5Mがさらに好ましい。
【0127】非水電解液は、添加剤を含んでもよい。なお本明細書におい
ては、添加剤とは非水電解液における含有量が20質量%よりも小さいも
のを意味する。添加剤としては、例えば、リチウムビス(オキサレート)
ボレート(LiBOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホス
フェート(LiFOP)等のシュウ酸エステル基を有する塩;ビフェニル、
アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シク
ロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェ
ニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニ
ル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロ
ベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロ
アニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソ
ール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;
メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク
酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコ
ン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチ
レン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペン
スルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、ト
ルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジ
メチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルス
ルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,
4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、4-メチ
ルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチ
オラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジス
ルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン
酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノ
フルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で
用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0128】非水電解液全体に対するこれらの添加剤の含有割合の下限と
しては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.2
質量%がさらに好ましい。添加剤の含有割合の上限としては、10質量%
が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%がより好ましく、3質量
%がさらに好ましい。添加剤の含有割合を上記範囲とすることで、高温保
存後の容量保持性能又は充放電サイクル性能を高めることや、安全性を高
めることができる。
【0129】当該非水電解液二次電池は、固体電解質を備えてもよい。
【0130】固体電解質としては、チウム、ナトリウム、カルシウム等の
イオン伝導性を有し、常温(例えば15℃~25℃)において固体である
任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電
解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質
等が挙げられる。
【0131】硫化物固体電解質としては、リチウム二次電池の場合、例え
ば、LiS-P系等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例
えば、LiS-P、LiI-LiS-P、Li10Ge-
12、等が挙げられる。
【0132】当該非水電解液二次電池の形状は特に限定されるものではな
く、例えば、円筒型電池、パウチ型電池、角型電池、扁平型電池、コイン
型電池、ボタン型電池等を挙げることができる。図1に角型電池の一例を
示す。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角
型のケース3に収納される。正極は正極リード41を介して正極端子4と
電気的に接続されている。負極は負極リード51を介して負極端子5と電
気的に接続されている。

【0133】<蓄電装置の構成>
当該非水電解液二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(
HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、
パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用
電源等に、複数の非水電解液二次電池1を集合して構成した蓄電ユニット
(バッテリーモジュール)を、さらに集合した蓄電装置として搭載するこ
とができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの非水電解液
二次電池
に対して、本発明の技術が適用されていればよい。図2に、電気
的に接続された二以上の非水電解液二次電池1が集合した蓄電ユニット20
をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の
非水電解液二次電池1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の
蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)を備えていても
よい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の非水電解液二次電
の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。

【0134】<非水電解液二次電池の製造方法>
当該非水電解液二次電池蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択
できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備する工程と、非水電解液
を準備する工程と、電極体及び非水電解液を容器に収容する工程と、を備
える。電極体を準備する工程は、正極及び負極を準備する工程と、正極及
び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより電極体を形成
する工程と、を備える。
【0135】非水電解液を容器に収容する工程は、公知の方法から適宜選
択できる。例えば、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、
注入口を封止すればよい。

【0136】<その他の実施形態>
尚、本発明の非水電解液二次電池は、上記実施形態に限定されるものでは
なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置
き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除するこ
とができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加すること
ができる。
【0137】上記実施形態では、非水電解液二次電池がリチウム二次電池
として用いられる場合について説明したが、非水電解液二次電池の種類、
形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、リチウム二次電池以外の種
々の非水電解液二次電池にも適用できる。

【実施例】【0138】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の
実施例に限定されない。【0139】
[実施例1](硫黄-メソポーラスカーボン複合体の作製)
硫黄と、メソポーラスカーボン(CNovel(クノーベル))(東洋炭
素株式会社製)とを質量比77:23で混合した。メソポーラスカーボン
の物性は、平均細孔径5nm、ミクロ細孔容積0.34ccg-1、メソ
細孔容積1.02ccg-1、全細孔容積1.7ccg-1、比表面積15
00m-1であった。この混合物を、密封式の電気炉に入れた。1時間
のアルゴンフローを行った後、昇温速度5℃/分で150℃まで昇温し、
5時間保持した後、硫黄が固化する温度である80℃まで放冷し、その後、
再び5℃/分で300℃まで昇温し、2時間保持する熱処理を行った。以
上の手順により、実施例1の硫黄-メソポーラスカーボン複合体を得た。

【0140】(非水電解液二次電池の作製)
硫黄-メソポーラスカーボン複合体、導電助剤としてのアセチレンブラッ
ク、及びバインダとしてのCMC/SBRを80:10:10の質量比で
混合し、水を分散媒とするスラリーを調整した。CMCとSBRとは質量
比で1.2:2.1となるよう混合した。調整したスラリーを集電体に塗
布し、乾燥して電極を作製した。作製した電極を正極とし、金属Liを負
極とし、酢酸2,2,2-トリフルオロエチル(TFEA)とフルオロエ
チレンカーボネート(FEC)との混合溶媒に、1Mのリチウムビス(ト
リフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を溶解させた非水
電解液を備える電池を作製した。TFEAとFECとの混合比は、体積比
で50:50とした。上記電池は、アルミラミネートフィルムで覆い、パ
ウチ型セルとした。

【0141】[実施例2]
溶媒として2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFE
MC)とFECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電
池を作製した。
【0142】[実施例3]
溶媒としてビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート(FD
EC)とFECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電
池を作製した。
【0143】[実施例4]
溶媒として3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とF
ECとの混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0144】[比較例1]
溶媒として1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テ
トラフルオロプロピルエーテル(TFETFPE)とFECとの混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0145】[実施例5]
溶媒としてTFEAとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0146】[実施例6]
溶媒としてTFEMCとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒
を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0147】
[実施例7]
溶媒としてFDECとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒を
使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0148】[実施例8]
溶媒としてFMPとFECとを体積比70:30で混合した混合溶媒を使
用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0149】[比較例2]
溶媒としてTFETFPEとFECとを体積比70:30で混合した混合
溶媒を使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0150】[実施例9乃至実施例18]
溶媒として、表2に示す組成の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1
と同様の電池を作製した。なお、表中のEMCはエチルメチルカーボネー
トのことを指す。
【0151】[実施例19及び実施例20]
溶媒として、表3に示す組成の混合溶媒を使用したこと以外は、実施例1
と同様の電池を作成した。
【0152】[比較例3]
実施例1のメソポーラスカーボンに代えて、ミクロポーラスカーボン(C
NovelMH、東洋炭素株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1
と同様の手順により、硫黄-ミクロポーラスカーボン複合体を作製した。
ミクロポーラスカーボンの物性は、平均細孔径5nm、ミクロ細孔容積0.
40ccg-1、メソ細孔容積0.25ccg-1、比表面積1800m
-1であった。実施例1の硫黄-メソポーラスカーボン複合体に代えて
硫黄-ミクロポーラスカーボン複合体を使用したこと、及び溶媒としてT
FEMCとFECとを体積比50:50で混合した混合溶媒を使用したこ
と以外は、実施例1と同様の電池を作製した。
【0153】式(4)から式(8)にTFEA、TFEMC、TFDEC、
FMP、TFETFPEの構造をそれぞれ示す。

000005000006

000007000008

000009


【0154】<試験例1>(10サイクル目容量保持率)
実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の各電池について、以下の
条件にて充放電サイクル試験を行った。25℃で1Vまで0.1Cの定電
流放電を行った。放電後に25℃で3Vまで0.2Cの定電流充電を行っ
た。これら放電及び充電の工程を1サイクルとして、このサイクルを12
サイクル繰り返した。なお、放電後及び充電後には25℃にて10分間の
休止を設けた。放電、充電及び休止ともに25℃の恒温槽内で行った。充
放電サイクル試験が終了した電池について、3サイクル目の放電容量に対
する12サイクル目の放電容量の比率を「10サイクル目容量保持率」と
した。以下の表1に、実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の結
果を示す。
【0155】【表1】

000010
【0156】
表1から、鎖状フッ素化カルボン酸エステルであるTFEA
又はFMPを含む実施例1、4、5、及び8の電池では、鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含まない比較例1及び比較例2の電池に比べて高い容
量保持率を示すことが分かる。

【0157】また、鎖状フッ素化カーボネートであるTFEMC又はFD
ECを含む実施例2、3、6、及び7の電池では、鎖状フッ素化カルボン
酸エステルを含む実施例1、4、5、及び8の電池と同様に、高い容量保
持率を示すことが分かる。

【0158】FDECを用いた実施例3及び7に比べ、TFEA、TFE
MC、又はFMPを用いた実施例は高い容量保持率を示した。TFEA、
TFEMC、又はFMPは、FDECに比べて結合したフッ素原子の数
が少ないことから、耐還元性が高く、より高い容量保持率を示したと考え
られる。

【0159】実施例1乃至4と、実施例5乃至8とを対比すると、非水電
解液における鎖状フッ素化カルボン酸エステル又は鎖状フッ素化カーボネ
ートの含有量を変えた場合であっても、高い容量保持率を示すことが分かる。

【0160】非水電解液に鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含まず、鎖状フッ素化エーテルであるTFETFPE
を50体積%以上含む比較例1及び比較例2は容量保持率が低かった。こ
れは、鎖状フッ素化エーテルの耐還元性が、鎖状フッ素化カーボネート及
び鎖状フッ素化カルボン酸エステルよりも低く、負極で還元分解されるた
めと考えられる。

【0161】以上の結果から、硫黄-メソポーラスカーボン複合体を含む
正極を備えた非水電解液二次電池においては、鎖状フッ素化カーボネート、
鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの組み合わせを含む非水電
解液を備えることにより、高い容量保持率を得ることができるといえる。


【0162】
<試験例2>(100サイクル目容量保持率)
実施例9乃至実施例18の各電池について、充放電サイクル数を12サイ
クルから102サイクルに変えたこと以外は、上述した充放電サイクル試
験と同様の試験を行った。充放電サイクル試験が終了した電池について、
3サイクル目の放電容量に対する102サイクル目の放電容量の比率を「
100サイクル目容量保持率」とした。表2に、実施例9乃至実施例18
の結果を示す。

【0163】【表2】
000011

【0164】表2から明らかなように、非水電解液に、鎖状フッ素化カー
ボネート又は鎖状フッ素化カルボン酸エステルと、非フッ素化溶媒である
EMC又はECとを含む実施例11乃至実施例18は、100サイクル目
容量保持率が100%となり、充放電を繰り返した後の容量保持率に特に
優れた非水電解液二次電池を実現し得ることが確認された。
【0165】<試験例3>
(サイクル初期放電容量、10サイクル目容量保持率)
実施例2、実施例19及び実施例20の各電池について、以下の条件にて
充放電試験を行った。25℃で1Vまで0.1Cの定電流放電を行った。
放電後に25℃で3Vまで0.1Cの定電流充電を行った。これら放電及
び充電の工程を1サイクルとして、このサイクルを12サイクル繰り返し
た。放電後及び充電後には25℃にて10分間の休止を設けた。放電、
充電及び休止ともに25℃の恒温槽内で行った。充放電サイクル試験が終
了した電池について、3サイクル目の放電容量を「サイクル初期放電容量」
とした。3サイクル目の放電容量に対する12サイクル目の放電容量の比
率を「10サイクル目容量保持率」とした。表3に、実施例2、実施例
19及び実施例20の結果を示す。
【0166】【表3】

000012
【0167】表3から明らかなように、実施例2、実施例19及び実施例
20の電池は、いずれも容量保持率が優れていた。中でも実施例19の電
池は、容量保持率が高いだけでなく、初期放電容量も高いことが確認され
た。
                           この項つづく
 今日の楽曲  映画音楽 『キンムダム』
            キングダム 運命の炎 
            宇多田ヒカル「Gold ~また逢う日まで~」

 今日の言葉:

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境㊿

2024年11月14日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-



【季語と短歌:11月14日】

       侘助や吾が一生も爆発期  
                    高山 宇 (赤鬼)

※かんむり座T星が爆発すると騒がれている。それも愛でたいと。




⬛ CIS型薄膜太陽電池の光電変換効率向上

11月14日、産総研は希少金属インジウムを含まないCIS型薄膜太陽電池の
光電変換効率を向上させる技術を開発



今回の成果は太陽電池だけでなく,水分解水素生成用光カソードとして光
電気化学セルなどさまざまなエネルギー変換デバイスへの応用も期待でき
る。

DELTA 3 Plus + DELTA 3 専用エクストラバッテリー
+ 220W片面ソーラーパネルGen2セット



EcoFlowのX-Stream充電テクノロジーと1,500WのAC入力を使用すると、
40分で80%、56分で100%充電できます。家庭用バックアップ電源として
最適であり、停電の前に56分でバッテリーを満充電にできます。アウトド
アキャンプの場合、出発前夜または出発当日の朝にバッテリーを完全充電
可能なので、予定時間に遅れずに準備を整えられる。

UPS & Storm Guardで緊急時も電源を供給

◾緊急時のシームレスな電力バックアップのためにUPSが稼働し、家庭の
家電製品の円滑な稼働が続きます。Storm Guardを起動すると、悪天候に
対する警報発令の際にポータブル電源への充電が優先され、ポータブル電
源が最も必要な場合に備えて電力を確保。

電力消費の状況をリアルタイムにモニタリングができます。アプリを使
用すれば、いつでもどこでもバッテリー状態と電力使用量を確認でき、状
況把握を確実にする

TOUモードで毎日節約 TOU(時間帯別料金)モードで電力使用を最適
化。アプリはピーク時間とオフピーク時間に基づいてエネルギー消費を効
率的に管理し、日々の電気代を節約する。
◾指先でリモートコントロール 
電力のニーズを遠隔で管理。直感的なア
プリにより、出力のオン/オフや接続された電化製品の制御をリモートで行
え、これにより利便性、柔軟性が高まる。



3.5kWhからスタートし、EcoFlow Smart Generator 3000 (ハイブリッ
ド型)との組み合わせで、長時間の稼働を実現します。自動
のオン・オフ
機能により、電力が少なくなると自動的に充電を開始し、満充電になると
自動的に停止。操作の手間を省く。

2. 特開2024-153730 非水電解液二次電池 株式会社GSユアサ
【要約】下図いのごとく、本発明の一態様に係る非水電解液二次電池は、
正極と、非水電解液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極
が硫黄系活物質とメソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラス
カーボン複合体を含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ
素化溶媒が、鎖状フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステ
ル、又はこれらの組み合わせを含む、非水電解液二次電池で、充放電を繰
り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質を含む正極を備えた非水電解
液二次電池を提供する。

図1.非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図
【符号の説明】1    非水電解液二次電池 2    電極体 3    ケース
4    正極端子 41  正極リード 5    負極端子 51  負極リード
20  蓄電ユニット 30  蓄電装置
【概要】リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高
エネルギー密度、高出力密度を有することから、パーソナルコンピュータ、
通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。リチウムイオン二次
電池の正極材料として、LiCoO、LiNiO、LiMn
LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のリチウム遷移金属複合酸化物が
実用化されているが、これらの材料は質量あたりの容量が限られている。
そこで、より高いエネルギー密度を有する非水電解液二次電池を実現する
ために、リチウム遷移金属複合酸化物に代わる正極材料として硫黄が検討
されている。硫黄は、質量あたりの理論容量が1675mAhg-1であ
り、従来の正極材料の理論容量の6倍以上のエネルギー密度を有する。
【0004】しかし、正極活物質として硫黄を用いた非水電解液二次電池
においては、充放電時に生成する中間生成物である一部の組成のリチウム
ポリスルフィドLi(4≦x≦8)が非水電解液に可溶であるため、
充放電を繰り返すと、硫黄がリチウムポリスルフィドとして非水電解液に
溶出し、容量が低下する問題があった。これに対し、非水電解液の成分調
整により、容量低下を改善する技術が提案されており、国際公開番号WO
2018/163778には、正極活物質として硫黄を含むリチウムイオ
ン二次電池において、非水電解液に1moldm-3LiTFSI(Lit
hiumbis(trifluoromethanesulfonyl)
imide)/FEC(fluoroethylenecarbonate)
:D2(1,1,2,2-tetrafluoroethyl-2,2,
3,3-tetrafluoropropyl ether)を用いること
が開示されている。上記特許文献1には、細孔体積比(ミクロ孔/メソ孔)
が2.1である炭素材料と硫黄とを含む炭素複合材料を含む正極と、非水
電解液にHFCCFCHOCFCFHとFECとを60:40の
組成になるように混合し、これにLiTFSIを1.0モル/リットルの
濃度となるよう添加して得た非水電解液と、を用いた非水電解液二次電池
が開示されている。
【先行技術文献】【非特許文献】【非特許文献1】第58回電池討論会要
旨集、1E16(2017)
【特許文献】【特許文献1】国際公開番号WO2018/163778

本発明の目的は、充放電を繰り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質
を含む正極を備えた非水電解液二次電池を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様は、正極と、非水電解
液と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が硫黄系活物質と
メソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体を
含み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ素化溶媒が、鎖状
フッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの
組み合わせを含む、非水電解液二次電池である。
【発明の効果】【0013】
本発明によれば、充放電を繰り返した際の容量保持率が高い硫黄系活物質
を含む正極を備えた非水電解液二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、非水電解液二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置
の一実施形態を示す概略図である。

図2.非水電解液二次電池を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態
を示す概要図
【発明を実施するための形態】【0015】
始めに、本明細書によって開示される非水電解液二次電池の概要について
説明する。本発明の一態様に係る非水電解液電池は、正極と、非水電解液
と、を備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が硫黄系活物質とメ
ソポーラスカーボンとを複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体を含
み、上記非水電解液がフッ素化溶媒を含み、上記フッ素化溶媒が、鎖状フ
ッ素化カーボネート、鎖状フッ素化カルボン酸エステル、又はこれらの組
み合わせを含む、非水電解液二次電池である。この構成によれば、充放電
を繰り返した際の容量保持率を高めることができる。【0018】
この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。鎖状フッ素
化カーボネート及び鎖状フッ素化カルボン酸エステルは、フッ素化エーテ
ル等と比べて還元分解しにくい。このため、当該非水電解液二次電池では、
負極におけるフッ素化溶媒の分解を抑制できると考えられる。また、鎖状
フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カルボン酸エステルは、フッ素化
エーテル等と比べて酸化分解しやすい。このため、硫黄系活物質と非水電
解液との界面に被膜が形成されやすく、リチウムポリスルフィドの溶出を
抑制できると考えられる。さらに、メソポーラスカーボンはミクロポーラ
スカーボンよりも細孔径が大きい。このため、硫黄系活物質の表面に形成
された被膜と非水電解液との接触面積が大きくなり、被膜中のキャリアイ
オンの輸送がスムーズになると考えられる。このような現象によって相乗
効果がもたらされ、充放電を繰り返した際の容量保持率を高めることがで
きると考えられる.
【0031】ここで、上記フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの
含有割合は、0体積%以上15体積%以下であってもよい。
【0032】これにより、充放電を繰り返した際の容量保持率を高める効
果を確実に発揮することができる。
【0033】ここで、上記フッ素化溶媒が鎖状フッ素化エーテルを含み、
上記フッ素化溶媒における鎖状フッ素化エーテルの含有割合が5体積%以
上15体積%以下であってもよい。
【0034】この構成によれば、充放電を繰り返した際の容量保持率を高
めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高めることができる。
【0035】この理由は定かではないが、例えば以下のことが推測される。
鎖状フッ素化エーテルは、鎖状フッ素化カーボネート及び鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルと比べて耐酸化性が高く、耐還元性が低い。このため
非水電解液が鎖状フッ素化エーテルを5体積%以上15体積%以下含むこ
とで、耐還元性を大きく損なうことなく、正極におけるフッ素化溶媒の反
応性を適度に下げ、フッ素化溶媒の酸化分解を抑制することができると考
えられる。このようなメカニズムにより、充放電を繰り返した際の容量保
持率を高めつつ、充放電サイクルの初期における放電容量を高めることが
できると考えられる。【0036】以下、本発明の一実施形態に係る非水
電解液二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)の構成及び製造方法に
ついて、リチウム二次電池(以下、単に「リチウム電池」ともいう。)を
例に詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成要素の名称は、背景
技術に用いられる各構成要素の名称と異なる場合がある。

【0037】<非水電解液二次電池>
本発明の一実施形態に係る電池は、正極と、負極と、非水電解液とを備える。
【0038】(正極)
正極は、正極基材と、当該正極基材に直接又は中間層を介して配される正
極合剤層とを有する。
【0039】正極基材は、導電性を有する。正極基材の材質としては、ア
ルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金
が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの
観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材として
は、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがっ
て、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。
アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2
014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0040】正極基材の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10
μmがより好ましい。正極基材の平均厚さの上限としては、50μmが好ま
しく、40μmがより好ましい。正極基材の平均厚さが上記下限以上であ
ることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さが
上記上限以下であることで、電池の体積当たりのエネルギー密度を高める
ことができる。「平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平
均値をいう。他の部材等に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定
義される。【0041】
中間層は、正極基材と正極合剤層との間に配される層である。中間層は、
炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極合剤層との
接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バイ
ンダ及び導電性を有する粒子を含む。「導電性」を有するとは、JIS-
H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω
・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が
10Ω・cm超であることを意味する。
【0042】正極合剤層は、正極活物質を含む。正極合剤層は、必要に応
じて、導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0043】本発明の正極には、硫黄系活物質とメソポーラスカーボンと
を複合した硫黄-メソポーラスカーボン複合体が含まれる。なお、ここで
いう複合とは、導電性材料から硫黄系活物質が離脱しない程度に、導電性
材料の表面に硫黄系活物質を固定化することをいう。
【0044】硫黄系活物質としては、単体硫黄、金属硫化物、及び有機硫
黄化合物等を挙げることができる。金属硫化物としては、Li(1
≦x≦8)、MS(M=Ni,Co,Cu,Fe,Mo,Ti、1≦x≦4)
等を挙げることができる。有機硫黄化合物としては、有機ジスルフィド化
合物等を挙げることができる。
【0045】本明細書において、メソポーラスカーボンとは、メソ細孔容
積がミクロ細孔容積よりも大きい多孔性カーボンを意味する。メソ細孔容
積及びミクロ細孔容積はガス吸着法により算出される。具体的には以下の
とおりである。多孔性カーボンの試料を120℃で一晩乾燥する。その後、
この試料の77Kにおける窒素ガスの吸脱着等温線を測定する。測定した
吸脱着等温線の脱着側等温線から、BJH法及びMP法により細孔分布を
計算する。BJH法による計算結果から得られる、直径2nm以上50nm
以下の細孔に由来する細孔容積をメソ細孔容積とする。MP法による計算
結果から得られる、直径2nm未満の細孔に由来する細孔容積をミクロ細
孔容積とする。

なお、多孔性カーボンの試料を、非水電解液二次電池を解体して取り出し
た正極から回収する場合には、次の手順により準備する。まず、非水電解
液二次電池を0.05Cの電流で定電流充電する。定電流充電は、正極の
電位が3V(vs.Li/Li)となる電圧まで行う。次に、電流値が
0.02Cに減少するまで定電圧充電する。その後、非水電解液二次電池
を解体し、正極を取り出す。取り出した正極をDMC(ジメチルカーボネ
ート)で洗浄し、室温にて一昼夜の乾燥後、正極合剤を回収する。この正
極合剤を水で洗浄することで、硫黄-多孔性カーボン複合体を取り出す。
この硫黄-多孔性カーボンを200℃で加熱処理することで、測定に供す
る多孔性カーボンの試料を得る。
【0046】硫黄-メソポーラスカーボン複合体における硫黄系活物質の
含有割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。これ
により、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を高めつつ
、電子伝導性を高めることができる。
【0047】メソポーラスカーボンの単位質量あたりの全細孔容積は、硫
黄系活物質の放電状態における体積密度の1倍以上2倍以下であることが
好ましい。例えば、硫黄系活物質として充電時における体積密度が0.9
cm-1である単体硫黄を使用し、硫黄-メソポーラスカーボン複合
体における単体硫黄の含有割合を50質量%とする場合、単位質量あたり
の全細孔容積は0.9cm-1以上1.8cm-1以下とすること
が好ましい。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギ
ー密度を高めつつ、硫黄を細孔内に十分に保持することができる。
【0048】メソポーラスカーボンの単位質量あたりのメソ細孔容積は、
0.50cm-1以上2.0cm-1以下であると好ましく、
0.60cm-1以上1.8cm-1以下であるとより好ましく、
0.70cm-1以上1.5cm-1以下であるとさらに好ましい。
これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を高め
つつ、正極合剤のかさ密度の低下を抑制することができる。
【0049】メソポーラスカーボンの単位質量あたりのミクロ細孔容積は、
0.18cm-1以上0.50cm-1以下であると好ましく、
0.24cm-1以上0.44cm-1以下であるとより好ましく、
0.30cm-1以上0.38cm-1以下であるとさらに好まし
い。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体のエネルギー密度を
高めつつ、正極合剤のかさ密度の低下を抑制することができる。
【0050】メソポーラスカーボンのミクロ細孔容積に対するメソ細孔容
積の比は、下限が1.0以上であればよく、1.5以上であるとより好ま
しく、2.0以上であるとさらに好ましい。これにより、硫黄-メソポー
ラスカーボン複合体における、硫黄系活物質の表面に形成された被膜と、
非水電解液との接触面積を大きくすることができる。ミクロ細孔容積に対
するメソ細孔容積の比の上限は特に限定されないが、例えば10以下であ
ってもよい。これにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体における硫
黄系活物質の電子伝導性を高めることができる。
【0051】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布において、
1.0nmから6.0nmの範囲にピークを有することが好ましい。これ
により、細孔内への電解液の浸透性を高めつつ、細孔内に担持される硫黄
系活物質粒子の大きさを小さくすることができる。
【0052】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布における
ピークが単一であることが好ましい。これにより、これにより、硫黄-メ
ソポーラスカーボン複合体中の硫黄系活物質粒子の粒子径が均一となり、
硫黄系活物質の利用率を高めることができる。
【0053】メソポーラスカーボンは、log微分細孔容積分布における
ピークの半値幅が、1.0nm以上2.5nm以下であると好ましい。こ
れにより、硫黄-メソポーラスカーボン複合体中の硫黄系活物質粒子の粒
子径が均一となり、硫黄系活物質の利用率を高めることができる。
【0054】メソポーラスカーボンの平均細孔径は、0.5nm以上15
nm以下であると好ましく、0.7nm以上10nm以下であるとより好
ましく、1.0nm以上6.0nm以下であるとさらに好ましい。なお、
ここでいう平均細孔径とは、BJH法により算出した全細孔容積をBET
比表面積で除した値を意味する。平均細孔径をこれらの下限以上とするこ
とで、硫黄-メソポーラスカーボン複合体に含まれる硫黄系活物質粒子の
大きさが小さくなり、イオン伝導性及び電子伝導性を高めることができる。
平均細孔径をこれらの上限以下とすることで、硫黄-メソポーラスカーボ
ン複合体の細孔内への非水電解液の浸透性を高めることができる。
【0055】メソポーラスカーボンのBET比表面積は、1000m
-1以上4000m-1以下であると好ましく、1500m-1
上3500m-1以下であるとより好ましく、2000m-1以上
3000m-1以下であるとさらに好ましい。これにより、硫黄系活
物質とメソポーラスカーボンとの接触面積を大きくすることができる。ま
た、硫黄-メソポーラスカーボン複合体に含まれる硫黄系活物質と非水電
解液との接触面積を大きくすることができる。
【0056】メソポーラスカーボンは、メソ細孔容積がミクロ細孔容積よ
りも大きい多孔性カーボンであればよく、形状及び大きさは特に限定され
ない。【0057】なお、本発明の一実施形態における正極は、硫黄系活
物質に加えて、硫黄系活物質以外の活物質を備えていてもよい。このよう
な活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。具体的に
は、リチウム遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物
等を挙げることができる。
【0058】
(任意成分)
正極合剤層は導電剤を含んでもよい。導電剤を含むことで、正極合剤層の
電子伝導性を高めることができる。導電剤は、導電性を有する材料であれ
ば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、黒鉛;ファー
ネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;金属;導電性
セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が
挙げられる。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレ
ンブラックが好ましい。
【0059】正極合剤層における導電剤の含有量の下限としては、1質量
%が好ましく、3質量%がより好ましい。導電剤の含有量の上限としては、
15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。導電剤の含有量を上
記範囲とすることで、電池の電気容量を高めることができる。
【0060】硫黄-多孔質カーボン複合体を用いる場合、多孔質カーボン
は導電剤としても機能する。このため、硫黄-多孔質カーボン複合体を用
いることで、正極合剤層に上述した導電剤を含まない場合であっても、良
好な電子伝導性を発揮できることが期待される。なお、硫黄-多孔質カー
ボン複合体と導電剤とは併用してもよい。
【0061】多孔質カーボンと導電剤とを併用する場合、正極合剤層にお
ける多孔質カーボン及び導電剤の合計の含有量の上限としては、40質量
%が好ましく、30質量%がより好ましい。
【0062】正極合剤層におけるバインダとしては、正極活物質等を固定
でき、かつ使用範囲で電気化学的に安定であるものが通常用いられる。バ
インダとしては、水系バインダを用いてもよいし、非水系バインダを用い
てもよい。
【0063】水系バインダは、水に分散又は溶解するバインダである。中
でも、20℃において、水100質量部に対して1質量部以上溶解するバ
インダが水系バインダとして好ましい。水系バインダとしては、例えば、
ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオ
キサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリア
クリル酸、ポリメタクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピ
レン(PP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ニトリル—ブタジエンゴ
ム、セルロース等が挙げられる。
【0064】非水系バインダは、N-メチルピロリドン(NMP)等の非
水溶媒に分散又は溶解するバインダである。中でも、20℃において、N
MP100質量部に対して1質量部以上溶解するバインダが非水系バイン
ダとして好ましい。非水系バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリ
デン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共
重合体(PVDF—HFP)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、
ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビ
ニル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボ
ネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースとキト
サンピロリドンカルボン酸塩との架橋重合体、キチン又はキトサンの誘導
体等が挙げられる。
【0065】バインダを用いる場合、バインダが水系であれば水を分散媒
とするペーストを形成し、バインダが非水系であれば非水溶媒を分散媒と
するペーストを形成する。形成したペーストは、正極基材に塗布・乾燥し、
正極合剤層を形成する。ここで、硫黄の昇華する温度は180℃程度であ
ることから、ペーストの分散媒には沸点が180℃よりも低い溶媒を用い
ることが好ましい。沸点が180℃よりも低い溶媒としては、融点が低く、
扱いが容易な水を用いるのが特に好ましい。このような事情から、バイン
ダには水系バインダを用いるのが好ましい。
【0066】正極合剤層におけるバインダの含有量の下限としては、1質
量%が好ましく、3質量%がより好ましい。バインダの含有量の上限とし
ては、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。バインダの含
有量を上記範囲とすることで、活物質を安定して固定することができる。
【0067】増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(C
MC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチ
ウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基
を失活させてもよい。
【0068】フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオラ
イト、ガラス、アルミナシリケイト等が挙げられる。
【0069】正極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非
金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典
型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo
、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増
粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0070】
(負極)
負極は、負極基材と、当該負極基材に直接又は中間層を介して配される負
極合剤層とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極で
例示した構成から選択することができる。
【0071】負極基材は、導電性をする。負極基材の材質としては、銅、
ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又は
これらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負
極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好まし
い。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の
例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0072】負極基材の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、5
μmがより好ましい。負極基材の平均厚さの上限としては、30μmが好ま
しく、20μmがより好ましい。負極基材の平均厚さが上記下限以上とす
ることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さが
上記上限以下とすることで、電池の体積当たりのエネルギー密度を高める
ことができる。
【0073】負極合剤層は、負極活物質を含む。負極合剤層は、必要に応
じて導電剤、バインダ(結着剤)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示し
た材料から選択できる。
【0074】負極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非
金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典
型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo
、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、
バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0075】負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択き
る。リチウム二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを
吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、
例えば、金属Li;Si、Sn、Sb等の金属又は半金属;Si酸化物、
Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化
合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭
素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。
【0076】これらの材料の中でも、作動電位が低い材料が好ましい。特
に金属Liを用いるのが好ましい。また本実施形態において、負極活物質
として黒鉛等のLiを含まない材料を用いる場合、正極及び負極いずれか
にリチウムイオンを挿入する工程が必要となる。これに対し、負極活物質
として金属Liを用いれば、上記リチウムイオンを挿入する工程を省ける
ことからも、金属Liが好ましい。負極合剤層においては、これら材料の
1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0077】なお、「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線
回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.
33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒
鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点
で、人造黒鉛が好ましい。
【0078】「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線
回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.
34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素の結晶子
サイズLcは、通常、0.80~2.0nmである。非黒鉛質炭素として
は、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素とし
ては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチ由来の材料、アルコール由来
の材料等が挙げられる。
【0079】ここで、「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含
む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において
、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li
対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池にお
ける開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電
位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7
V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵
放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
【0080】「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上
0.42nm以下の炭素材料をいう。難黒鉛化性炭素は、通常、非黒鉛質
炭素の中でも、3次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成し難い性質を
有する。
【0081】「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上
0.36nm未満の炭素材料をいう。易黒鉛化性炭素は、通常、非黒鉛質
炭素の中でも、3次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成し易い性質を
有する。【0082】
負極合剤層における負極活物質の含有量の下限としては、60質量%が好
ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。負極
活物質の含有量を上記下限以上とすることで、電池の電気容量を高めるこ
とができる。負極活物質の含有量の上限としては、99質量%が好ましく
98質量%がより好ましい。負極活物質粒子の含有量を上記上限以下とす
ることで、負極の製造が容易になる。
【0083】
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータと
して、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双
方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を
使用することができる。セパレータの基材層の材質としては、例えば、織
布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、
強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観
点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャット
ダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレ
フィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド
等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料
を用いてもよい。
【0084】耐熱層に含まれる耐熱粒子は、大気下で500℃にて重量減
少が5%以下であるものが好ましく、大気下で800℃にて重量減少が5
%以下であるものがさらに好ましい。重量減少が所定以下である材料とし
て無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケ
イ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニ
ウム、酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物等の酸化物;窒化アルミ
ニウム、窒化ケイ素等の窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫
酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結
合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタ
イト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナ
イト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、
2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、酸化ケ
イ素、酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物
が好ましい。【0085】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電
性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体
積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。【0086】
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを
用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエ
チレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、
ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等
が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、電池の漏液を抑制する効果があ
る。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等
とポリマーゲルを併用してもよい。
【0087】
(非水電解液)
非水電解液は、フッ素化溶媒を含む非水溶媒と、この非水溶媒に溶解され
ている電解質塩とを含む。非水電解液は、フッ素化溶媒として鎖状フッ素
化カルボン酸エステル、鎖状フッ素化カーボネート、又はこれらの組み合
わせを含む。
【0088】非水電解液は、例えば、式(1)で示される鎖状フッ素化カ
ルボン酸エステルを含む。
【化1】
000003
【0089】式(1)中、Rは水素又は1価の有機基であり、Rは1価
の有機基である。R及びRで示される有機基としては、例えば、炭素
数が1~10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール
基等の炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原
子(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素原子等)、オキシアルキレン基、スルホ
基、チオール基、アルデヒド基、シアノ基、アミド基等の官能基で置換さ
れた炭化水素基、これら炭化水素基において、-O-、-NH-、-N(
CH)-、-SO-、-CO-、-COO-等が介在した基等を挙げ
ることができる。
【0090】
及びRの少なくとも一方は、少なくとも一つの水素原子がフッ素原
子に置換されているフッ素化された炭化水素基である。R及びRは、
のみがフッ素化された炭化水素基であってもよく、Rのみがフッ素
化された炭化水素基であってもよく、いずれもがフッ素化された炭化水素
基であってもよい。

【0091】この鎖状フッ素化カルボン酸エステルとしては、例えば、2,
2-ジフルオロ酢酸メチル、2,2,2-トリフルオロ酢酸メチル、2,
2,2-トリフルオロ酢酸エチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン
酸メチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸エチル、酢酸トリフル
オロメチル、酢酸2,2-ジフルオロエチル、酢酸2,2,2-トリフル
オロエチル、プロピオン酸トリフルオロメチル、プロピオン酸2,2,
2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸2,2
,2-トリフルオロエチル等が挙げられる。
【0092】非水電解液は、
例えば、式(2)で示される鎖状フッ素化カーボネートを含む。

【化2】
000004
【0093】
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立で1価の有機基である。R
びRで示される有機基としては、R及びRで例示したものと同様の
有機基等が挙げられる

                     この項つづく
【脚注】
1. 
メソポーラス材料: mesoporous material) は、細孔の直径が 2nm
ら50nmの多孔質材料である。多孔質材料は細孔の大きさに応じていくつ
かの種類に分類される。IUPACの表記によると、細孔の直径が 2 nm 未満
のものはミクロポーラス材料 (microporous material) 、50 nm より大き
いものはマクロポーラス材料 (macroporous material) とされ、メソポー
ラス材料はその中間にあたる。メソポーラス材料の代表例として、同じよ
うな大きさの微細なメソ細孔を持つ二酸化ケイ素メソポーラスシリカ
酸化アルミニウムが挙げられる。メソポーラスな、ニオブタンタル
チタンジルコニウムセリウムスズの各酸化物も報告されている。
IUPACによると、メソポーラス材料には、秩序立ったメソ構造を持つもの
もあれば、無秩序なメソ構造を持つものもある。イオン結晶の物質では、
メソポーラスな構造は単位格子の数を著しく制限するため、固体の化学的
性質を大きく変化させる。例えば、電気活性物質にメソポーラス材料を使
った電池の性能は、そうでないものと比べ、大きく異なっている


窒素含有規則性メソポーラスカーボン (nitrogen-containing ordered
mesoporous carbon, N-OMC) の電子顕微鏡画像。 (a) はチャネル細孔に
沿った方向から、 (b) は、チャネル細孔と垂直な方向から見たもの。
2.  特許6,182,901 カーボン硫黄複合体の製造方法 東レ株式会社
 
 今日の楽曲  映画音楽 『キンムダム』
          『
ONE OK ROCK - Delusion:All
 

 今日の言葉:

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エネルギーと環境㊾

2024年11月12日 | ネオコンバ-テック

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月14日】

       侘助や吾が一生も爆発期  
                    高山 宇 (赤鬼)

※かんむり座T星が爆発すると騒がれている。それも愛でたいと。




⬛ ペロブスカイト太陽電池が「大さん橋」に登場 
    苛烈な環境下で耐久性実証
「薄くて曲がる」次世代の電池として注目を集めるペロブスカイト太陽電
の実証事業が、横浜市のある「人気観光地」で始まった。宮坂力特任教
授は、「潮風に当たりながら、障害物がなくて晴れた日は一日中、日が当
たっている。 こういう厳しい状態で実証実験をするというのがまたとない
チャンスだと思う」と話す。(テレビ神奈川
将来の実用化に向け、課題とされる「耐久性」を上げるため、あえて厳し
い環境下でテストをするといい、市内の企業「マクニカ」などが共同で、
環境省の実証事業として開始するとのこと。ペロブスカイト太陽電池を大
さん橋に設置する実証事業は、来年1月末まで行われる。


図1. 蓄電池の導入量と利用目的 2018~2023年、出所:IRENA/BNE

⬛ 
世界で急増する定置型蓄電池、系統増強よりも有利
  
系統増強より蓄電池設置が加速
世界における定置型蓄電池の導入量は2010年の0.1GWhから2023年には
95.9GWhと指数関数的に増加している(図)。コストも2010年にはkWh
当たり2511ドルであったが、2023年には同273ドルと2010年から89%下
落していることが分かる。


図2. 系統用蓄電池の導入量とコストの推移(注:2010~2023年、出所
  :IRENA/BNEF)

図3●再生可能エネルギーの電源別コスト推移
図3 再生可能エネルギーの電源別コスト推移
(注:2010~2023年、出所:IRENA)

 ⬛ 失速「EV」相次ぐ火災事故で広がる不信の連鎖

リチウム二次電池の安全工学的考察④

1. 特開2024-159862 正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 
 エコプロ  ビーエム  カンパニー  リミテッド⓶
【課題を解決するための手段】
【0137】前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイ
オンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制
限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテ
ート(methyl  acetate)、エチルアセテート(ethyl
  acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、
ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;
ジブチルエーテル(dibutyl  ether)またはテトラヒドロフ
ラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘ
キサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(
benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等
の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethyl
carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethy
lcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methy
lethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート
(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカー
ボネート(ethylene  carbonate、EC)、プロピレン
カーボネート(propylene  carbonate、PC)等のカ
ーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアル
コール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または
環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含
むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;
1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane
)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、
電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率
を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピ
レンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、
エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボ
ネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状
カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、
電解液の性能が優秀に現れることができる。

【0138】前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリ
チウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得
る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF
、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCF
SO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(C
SO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLi
B(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~
2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範
囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れ
た電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動すること
ができる。

【0139】  前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿
命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的とし
て例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカ
ーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノー
ルアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、
ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン
染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレ
ングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メト
キシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含
まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して
0.1~5wt%で含まれ得る。

【0140】上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次
電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイ
ブリッド電気自動車(hybrid  electric  vehicle、
HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0141】本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がない
が、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(
coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの
電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを
含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。

【0142】本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を
単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パック
が提供され得る。
【0143】前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール
(Power  Tool);電気自動車(Electric  Vehicle、
EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自
動車(Plug-in  Hybrid  Electric  Vehicle、
PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ
以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0144】以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。た
だし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本
発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。

【0145】  製造例1.正極活物質の製造
  (1)実施例1
  硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを使用する公知の共沈
法(co-precipitation  method)を用いて小粒子
の第1リチウム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物のNi
CoMn(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Mn=91:8:1(
at%))を合成した。前記第1リチウム複合酸化物の水酸化物前駆体(
第1水酸化物前駆体)の平均粒径D50は3.0μmであり、前記第2リ
チウム複合酸化物の水酸化物前駆体(第2水酸化物前駆体)の平均粒径D
50は18.0μmであった。
【0146】次に、前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆
体を30:70の重量比で混合した後、LiOH(Li/(Ni+Co+
Mn)mol  ratio=1.05±0.05)を添加した後、焼成炉で
雰囲気を維持しつつ、780℃まで1分当たり2℃で昇温して、12
時間熱処理(1次焼成)して、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リ
チウム複合酸化物の混合物を収得した。
【0147】次に、前記第1リチウム複合酸化物と前記第2リチウム複合
酸化物の混合物に蒸留水を投入し、1時間水洗し、真空乾燥器で120℃
で12時間乾燥させた。
【0148】次に、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分
当たり2℃で昇温して、12時間熱処理(2次焼成)して、小粒子の第1
リチウム複合酸化物と大粒子の第2リチウム複合酸化物が所定の割合で混
合されたバイモーダル形態の正極活物質を収得した。
図4b実施例1による正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とす
{るリチウム二次電池において所定の充放電条件で充放電を行ったとき、
3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、
Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラ
フである。


図4 実施例1による正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とす
るリチウム二次電池において所定の充放電条件で充放電を行ったとき、3
サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、Y
軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラフ
である。

【0149】  (2)実施例2
  1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の
混合物を基準として0.5mol%のNaNOを追加混合した後、熱処
理したことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。


図5 実施例2による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0150】  (3)実施例3
  1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の
混合物を基準として0.3mol%のBa(OH)を追加混合した後、
熱処理したことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。

図6 実施例3による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0151】  (4)実施例4 
820℃まで1分当たり2℃で昇温して、12時間熱処理(1次焼成)し
たことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。

図7 実施例4による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0152】  (5)実施例5
  1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の
混合物を基準として0.5mol%のNaNOを追加混合した後、熱処
理したことを除いて、実施例4と同一に正極活物質を製造した。

図8 実施例5による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0153】  (6)実施例6
1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の混
合物を基準として0.3mol%のBa(OH)を追加混合した後、熱
処理したことを除いて、実施例4と同一に正極活物質を製造した。


図9 実施例6による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0154】  (7)実施例7
850℃まで1分当たり2℃で昇温して、12時間熱処理(1次焼成)し
たことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。

図10 実施例7による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0155】  (8)実施例8
1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の混
合物を基準として0.5mol%のNaNOを追加混合した後、熱処理
したことを除いて、実施例7と同一に正極活物質を製造した。

図11 実施例8による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0156】  (9)実施例9
1次焼成前に前記第1水酸化物前駆体および前記第2水酸化物前駆体の混
合物を基準として0.3mol%のBa(OH)を追加混合した後、熱
処理したことを除いて、実施例7と同一に正極活物質を製造した。

図12 実施例9による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0157】  (10)比較例1
 700℃まで1分当たり2℃で昇温して、8時間熱処理(1次焼成)した
ことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。


図13 比較例1による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ 

(11)比較例2
705℃まで1分当たり2℃で昇温して、8時間熱処理(1次焼成)した
ことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。

図14 比較例2による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0159】  (12)比較例3
710℃まで1分当たり2℃で昇温して、8時間熱処理(1次焼成)した
ことを除いて、実施例1と同一に、正極活物質を製造した。

図15 比較例3による正極活物質に対してX軸が電圧Vであり、Y軸が
dQ/dVであるグラフ

【0160】製造例2.リチウム二次電池の製造
  製造例1によって製造された正極活物質それぞれ92wt%、人造黒鉛
(super-P)4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル
-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した
。前記正極スラリーを厚み15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、
135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0161】前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter 
 electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 
 2300、厚み:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネートおよび
エチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPF
が1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。

【0162】  実験例1.正極活物質の構造解析
  製造例1によって製造された正極活物質に含まれた小粒子の第1リチウ
ム複合酸化物および大粒子の第2リチウム複合酸化物それぞれに対してF
E-SEM(Bruker社)を使用して断面SEMイメージを収得した
後、前記断面SEMイメージから下記の式8による結晶粒界の密度の平均
値を計算した。
【0163】  [式8]
  結晶粒界の密度=(リチウム複合酸化物の断面SEMイメージでリチウ
ム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子間の境界
面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【0164】前記結晶粒界の密度の測定結果は、下記の表2に示した。
【0165】

000004
【0166】  実験例2.正極活物質の電気化学的特性の評価
  (1)リチウム二次電池のピーク強度比および電圧比の測定結果
  製造例2によって製造されたリチウム二次電池を25℃で下記の充放電
条件で充放電を行ったとき、3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを電
気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を用いて測定し、
X軸を前記電圧Vとし、Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値
dQ/dVで示したグラフを求め、前記グラフから式1~式6によって定
義されたピーク強度比と式7によって定義された電圧比を求めた。式1~
式6によって定義されたピーク強度比と式7によって定義された電圧比は、
下記の表3~表6に示した。

【0167】  [充放電条件] 
1サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  2サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  3サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.4V
  -充電:1C(CCCV)/放電:1C(CC)
【0168】
000005

【0169】

000006

【0170】

000007

【0171】【表6】

000008

【0172】(2)リチウム二次電池の電池容量および寿命特性の評価
  製造例2によって製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo
、Toscat-3100)を用いて25℃の温度で3.0V~4.4V
の駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充放電を実施した後、初
期容量に対する50サイクル目の放電容量の比率(サイクル容量維持率;
capacity  retention)を測定した。
【0173】  前記方法によって測定されたリチウム二次電池の寿命特性の
評価結果は、下記の表7に示した。
000009

【0175】前記表7の結果を参考にすると、実施例1~実施例9による
正極活物質を使用したリチウム二次電池の場合、比較例1~比較例3によ
る正極活物質を使用したリチウム二次電池に比べて寿命特性が向上したこ
とを確認することができる。

【0176】  実験例3.正極活物質およびリチウム二次電池の安定性の評価
  (1)正極活物質の熱的安定性の評価
  製造例1によって製造された正極活物質の熱的安定性を評価する熱重量
分析装置(TA  Instruments、Q20)を使用して常圧のA
r雰囲気下25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失
を測定した。この際、それぞれの正極活物質において重量損失(熱分解)
ピークが現れる開始温度(op-set)を下記の表8に示した。

000010
【0178】前記表8の結果を参考にすると、実施例1~実施例9による
正極活物質において重量損失(熱分解)ピークが現れる開始温度(on-
set)は、比較例1~比較例3による正極活物質より高いことが確認さ
れた。すなわち、実施例1~実施例9による正極活物質の熱的安定性が、
比較例1~比較例3による正極活物質より優れていることが分かる.

[0179】(2)リチウム二次電池のガス発生量の測定
  製造例2によって製造されたリチウム二次電池を定電流0.2Cで4.25
Vまで充電した後、60℃で14日間保管して、リチウム二次電池内ガス
発生に起因するリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化の測定
結果は、下記の表9に示した。
000011
【0181】前記表9の結果を参考にすると、実施例1~実施例9による
正極活物質を使用したリチウム二次電池の体積変化量は、比較例1~比較
例3による正極活物質を使用したリチウム二次電池の体積変化量より小さ
いことを確認することができる
【0182】以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野に
おける通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思
想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等によ
り本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権
利範囲内に含まれるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】リチウムのインターカレーション/デインターカレーション
が可能なリチウム複合酸化物を含む正極活物質であり、前記正極活物質は、
小粒子である第1リチウム複合酸化物と大粒子である第2リチウム複合酸
化物とを含むバイモダル形態であり、前記第1リチウム複合酸化物及び前
記第2リチウム複合酸化物のうちリチウムを除いた全金属元素に対するNi
のモル比はそれぞれ50%以上であり、前記第1リチウム複合酸化物の断
面SEM像において前記第1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直
線上にある一次粒子について、下記式8で計算される結晶粒界密度の平均
値及び前記第2リチウム複合酸化物の断面SEM像において前記第2リチ
ウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上にある一次粒子について、下
記式8で計算される結晶粒界密度の平均値は0.90以下である、正極活
物質。
  [式8]結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子の
                間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
請求項2】前記第1リチウム複合酸化物の断面SEM像における前記第
1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上にある一次粒子につい
て、下記式8で計算される結晶粒界密度の平均値は、前記第2リチウム複
合酸化物の断面SEM像において前記第2リチウム複合酸化物の中心を横
切る仮想の直線上にある一次粒子について、下記式8で計算される結晶粒
界密度の平均値以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】前記第1リチウム複合酸化物の断面SEM像において前記第
1リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上にある一次粒子につい
て、下記式8で計算される結晶粒界密度の平均値は0.50~0.88で
ある、請求項1に記載の正極活物質。
  [式8]
  結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子の間の境界面
の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【請求項4】
前記第2リチウム複合酸化物の断面SEM像において前記第2リチウム複
合酸化物の中心を横切る仮想の直線上にある一次粒子について、下記式8
で計算される結晶粒界密度の平均値は0.67~0.90である、請求項
1に記載の正極活物質。
  [式8]
  結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子の間の境界
面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【請求項5】
  前記正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とするリチウム二次
電池において下記の充放電条件で充放電を行ったとき、
  [充放電条件]
  1サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  2サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  3サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.4V
  -充電:1C(CCCV)/放電:1C(CC)
  3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、
Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラ
フにおいて、下記の式1によって定義されたピーク強度比(A)を満たす、
請求項1に記載の正極活物質。
  [式1]
  I1/I2≧1.4
  (式1で、
  I1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間において、hexagonal
  から  monoclinic への相変態領域に現れるピークのy軸値dQ/
dVであり、I2は、充電領域で3.8V~4.1Vの間において、
monoclinic  から  hexagonalへの相変態領域に現れる
ピークのy軸値dQ/dVである)
【請求項6】
  前記式1で定義されるピーク強度比(A)は、1.4以上1.92以下
である、請求項5に記載の正極活物質。
【請求項7】
  前記リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載
の正極活物質。
  [化学式1]
  LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
  (ここで、
  M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
  M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、
Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから
選ばれ、
  M1~M3は、互いに異なり、
  0.90≦a≦1.05、0≦b≦0.10、0≦c≦0.10、0≦d≦
0.025、0≦e≦0.025、1.0≦f≦2.0である)
【請求項8】
  前記第1リチウム複合酸化物の平均粒径D50が8μm以下である、請求
項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
  前記第2リチウム複合酸化物の平均粒径D50が8.5μm以上である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
  リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能なリ
チウム複合酸化物を含む正極活物質であり、
    前記リチウム複合酸化物のうちリチウムを除いた全金属元素に対するNi
のモル比は50%以上であり、
    前記正極活物質を正極とし、リチウムホイルを負極とするリチウム二次
電池において下記の充放電条件で充放電を行ったとき、
  [充放電条件]
  1サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  2サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.3V
  -充電:0.1C(CCCV)/放電:0.1C(CC)
  3サイクル:
  -Cut  off  voltage  3.0V~4.4V
  -充電:1C(CCCV)/放電:1C(CC)
  3サイクル目の電圧Vおよび電池容量Qを有し、X軸を前記電圧Vとし、
Y軸を前記電池容量Qを前記電圧Vで微分した値dQ/dVで示したグラ
フにおいて、下記の式1によって定義されたピーク強度比(A)を満であ
り、
  [式1]
  I1/I2≧1.4
  (式1で、
  I1は、充電領域で3.0V~3.8Vの間において、hexagonal 
 から  monoclinic への相変態領域に現れるピークのy軸値dQ
/dVであり、I2は、充電領域で3.8V~4.1Vの間において、
monoclinic  から  hexagonalへの相変態領域に現れる
ピークのy軸値dQ/dVである)
  前記リチウム複合酸化物の断面SEMイメージで前記リチウム複合酸化
物の中心を横切る仮想の直線上に配置された1次粒子に対して下記の式8
で計算される結晶粒界の密度が0.90以下である、正極活物質。
  [式8]
  結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された1次粒子の間の境界
面の数/前記仮想の直線上に配置された1次粒子の数)
【請求項11】
  前記式1で定義されるピーク強度比(A)は、1.4以上1.92以下
である、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項12】
  前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーし、下記
の化学式2で  表される金属酸化物を含むコーティング層を含である、請
求項10に記載の正極活物質。
  [化学式2]
  LiM4
  (ここで、M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、
Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、
Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、Gdおよび
Ndから選ばれる少なくとも1つであり、0≦x≦10、0≦y≦8、2≦
z≦13である)                      (了)                

 今日の言葉:






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする