2012/05/26
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>ステップバイステップ日本語教師養成講座(4)検定試験問題にチャレンジ、文法・語彙篇その2
(5) 「~な」という語のうち、品詞という観点からひとつだけ文法的性質が異なるものを選びなさい。
A)元気な人 B)親切な人 C)清潔な人 D)きれいな人 E)大きな人
ヒント:「な人」を取って、「です」を加えてみる。
「元気です 親切です、きれいです 清潔です」 と、言える。しかし「大きな人」から「な人」をとって「です」を加えると「おおきです」となる。「大きな」は連体詞で、「大きい」は形容詞(イ形容詞)。「~です」に接続できるのは、イ形容詞の「大きいです」となる。「大きい」と「大きな」を日本語母語話者はなんの苦もなく使い分けていますが、学習者には区別がつかない。
学習者が「彼女は、きれい人です」と言ったとき、教師は「きれい人はダメです。きれいな人」と直さなければなりません。「きれい」は、ナ形容詞(形容動詞)だから、名詞を修飾するときは「きれいな人」となります。「うつくしい」は「うつくしい人、です。どうしてきれい人はだめですか」と理屈を求める学習者がいたら、教師は「ことばの種類がちがいます。イ形容詞とナ形容詞は、ことばの並べ方がちがいます」と理屈で説明する。
A~Dは、ナ形容詞(形容動詞)、Eは連体詞。
答え E
(6) 下の文の述語「~です」の中で、品詞の観点からひとつだけ別の種類を選びなさい。
A)彼は、長年療養中ですが、実は不治の病気です。
B)紅葉で山全体が真っ赤です。
C)寮の先輩はみんな親切です。
D)二つの洗剤を混ぜると危険です。
E)山の朝はとても静かです。
ヒント:上と逆に、「~です」の部分を「~な○○」にしてみるとよい。
真っ赤な山 親切な先輩 危険な洗剤 静かな朝 「 ~な○○」という表現が成立するが、「病気な人」とは言わない。「病気」は名詞なので、「病気の人」となる。この区別ができないために、「親切の先輩」「私の母は、元気の人です」という学習者の誤用もよくある。(注:「しずかの海」という月の地形の名前は、固有名詞として成立)。
答え A
(7) 「ない」の意味用法から、ひとつだけ他と語の文法的性質が異なっているものを選びなさい。
A) 彼にだけ知らせないのは、まずいだろう。
B) いくら頑丈でも、力いっぱい叩けば、こわせないってことはありません。
C) この釘では、大きな鉄の風鈴はつるせない。
D) 子どもにはそんな高額のこずかいをもたせないほうがいいよ。
E) 一人暮らしがやるせないと言いながら、結婚する気もありゃしません。
ヒント:肯定形をつくってみる。知らせない→知らせる
壊せない→こわせる つるせない→つるせる 持たせない→持たせる しかし、やるせない→「やるせる」という語は現代語にはない。「やるせない」で一語。他は、可能形、使役形に否定の「ない」が接続した動詞。
答え E
例題8 着脱動詞との結びつき(コロケーション)の観点から、次の語のなかで仲間はずれになるのはどれか選びなさい。
A)浴衣(ゆかた) B)肌襦袢(はだじゅばん) C)ステテコ D)キャミソール E)インナー
Cだけが「~を はく」と結びつく。あとは、「~を着る」と結びつく。日本語では下半身につける衣類の動詞は「履く」。上半身を含むときは「着る」。頭につけるときは「かぶる」。英語では全部wear。
答え C
例題9 「テ節の文の意味」という観点から、次の文のうち、他と種類が異なるものを選びなさい。
A)子供が泣いて、眠れなかった。
B)お金を使いすぎて、困った。
C)別れが悲しくて、泣いた。
D)友達がおなかを抱えて、笑った。
E)時間がなくて、仕事が終わらなかった。
ヒント:「~て」の部分を「~たから」に変えてみる。「子どもが泣いたから眠れなかった」
眠れない理由は「子どもが泣いたから」、困った理由は「お金を使いすぎたから」、泣いた原因は「悲しかったから」、仕事が終わらなかった理由は「時間がなかったから」。しかし、笑った理由は「友達がおなかを抱えたから」ではない。友達が笑ったようすを表現しているのが「お腹を抱えて」であり、これを付帯状況の「て節」と言います。他は、原因理由の「て節」です。
「付帯状況のテ節」を教師がきちんと区別して教えないと、「病院で大声を出して叱られた」と「広場で大声を出して歌った」の意味のちがいがわからずに、学習者が混乱することになります。
答え D
(10) 英語と日本語の自動詞他動詞は、文法的にことなる扱いをすべきときがある。また、中国語動詞には自他の区別がないので、自動詞他動詞の誤用は、非常に多い。
「部屋に入れないように、かぎをかかってあります」などの誤用がよく見られる。これと同じ誤用をしている文がA~Eにあるが、ひとつだけ誤用の種類がことなっている文がある。どれかひとつ選びなさい。
A)暑いのでエアコンをついてあります。
B)すぐ使えるように食器を出てあります。
C)帰ったらすぐ飲みたいので、ビールを冷えてあります。
D)おふろの水は流れてあります。すぐに入れますよ。
E)友達が来るので、机の上に花が見えてあります。
A~Dは、他動詞と自動詞の誤用。ついて→つけてあります。 出て→出してあります
冷えて→冷やしてあります 流れて→流してあります。
Eは、「花が見えます」と、「花があります」を混用した誤用。
答え E
例題11 学習者の誤用文には一定のパターンがある。同じ誤用をしている文をまとめて、どのように訂正すればよいか、答えなさい。また、ひとつだけ異なる性質の誤用文がある。それはどれか選びなさい。
私の趣味は、本を読みます。(誤) ⇒ 私の趣味は、本を読むことです(正)
A)この発表の目的は、いくつかの方言を比較します。
B)養育者の役目は、子どもの成長を見守ります。
C)遭難の原因は、山の気温が急に低下しました。
D)彼の願いは、彼女と結婚します。
E)彼の活動は、多くの人が感動されました。
ヒント:例文と同じように「こと」を加えてみる。「この発表の目的は、方言を比較することです」。
A~Dは、例文と同じように、述語動詞を辞書形(基本形・終止形)にし、「こと」を加えて名詞文にすれば適切な表現となる。Eは、「感動された」という受け身文にしたため誤文となった。「彼の活動は多くの人に感動を与えた」「彼の活動により、多くの人が感動した」等、添削するとよい。
答え E
<つづく>
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>ステップバイステップ日本語教師養成講座(4)検定試験問題にチャレンジ、文法・語彙篇その2
(5) 「~な」という語のうち、品詞という観点からひとつだけ文法的性質が異なるものを選びなさい。
A)元気な人 B)親切な人 C)清潔な人 D)きれいな人 E)大きな人
ヒント:「な人」を取って、「です」を加えてみる。
「元気です 親切です、きれいです 清潔です」 と、言える。しかし「大きな人」から「な人」をとって「です」を加えると「おおきです」となる。「大きな」は連体詞で、「大きい」は形容詞(イ形容詞)。「~です」に接続できるのは、イ形容詞の「大きいです」となる。「大きい」と「大きな」を日本語母語話者はなんの苦もなく使い分けていますが、学習者には区別がつかない。
学習者が「彼女は、きれい人です」と言ったとき、教師は「きれい人はダメです。きれいな人」と直さなければなりません。「きれい」は、ナ形容詞(形容動詞)だから、名詞を修飾するときは「きれいな人」となります。「うつくしい」は「うつくしい人、です。どうしてきれい人はだめですか」と理屈を求める学習者がいたら、教師は「ことばの種類がちがいます。イ形容詞とナ形容詞は、ことばの並べ方がちがいます」と理屈で説明する。
A~Dは、ナ形容詞(形容動詞)、Eは連体詞。
答え E
(6) 下の文の述語「~です」の中で、品詞の観点からひとつだけ別の種類を選びなさい。
A)彼は、長年療養中ですが、実は不治の病気です。
B)紅葉で山全体が真っ赤です。
C)寮の先輩はみんな親切です。
D)二つの洗剤を混ぜると危険です。
E)山の朝はとても静かです。
ヒント:上と逆に、「~です」の部分を「~な○○」にしてみるとよい。
真っ赤な山 親切な先輩 危険な洗剤 静かな朝 「 ~な○○」という表現が成立するが、「病気な人」とは言わない。「病気」は名詞なので、「病気の人」となる。この区別ができないために、「親切の先輩」「私の母は、元気の人です」という学習者の誤用もよくある。(注:「しずかの海」という月の地形の名前は、固有名詞として成立)。
答え A
(7) 「ない」の意味用法から、ひとつだけ他と語の文法的性質が異なっているものを選びなさい。
A) 彼にだけ知らせないのは、まずいだろう。
B) いくら頑丈でも、力いっぱい叩けば、こわせないってことはありません。
C) この釘では、大きな鉄の風鈴はつるせない。
D) 子どもにはそんな高額のこずかいをもたせないほうがいいよ。
E) 一人暮らしがやるせないと言いながら、結婚する気もありゃしません。
ヒント:肯定形をつくってみる。知らせない→知らせる
壊せない→こわせる つるせない→つるせる 持たせない→持たせる しかし、やるせない→「やるせる」という語は現代語にはない。「やるせない」で一語。他は、可能形、使役形に否定の「ない」が接続した動詞。
答え E
例題8 着脱動詞との結びつき(コロケーション)の観点から、次の語のなかで仲間はずれになるのはどれか選びなさい。
A)浴衣(ゆかた) B)肌襦袢(はだじゅばん) C)ステテコ D)キャミソール E)インナー
Cだけが「~を はく」と結びつく。あとは、「~を着る」と結びつく。日本語では下半身につける衣類の動詞は「履く」。上半身を含むときは「着る」。頭につけるときは「かぶる」。英語では全部wear。
答え C
例題9 「テ節の文の意味」という観点から、次の文のうち、他と種類が異なるものを選びなさい。
A)子供が泣いて、眠れなかった。
B)お金を使いすぎて、困った。
C)別れが悲しくて、泣いた。
D)友達がおなかを抱えて、笑った。
E)時間がなくて、仕事が終わらなかった。
ヒント:「~て」の部分を「~たから」に変えてみる。「子どもが泣いたから眠れなかった」
眠れない理由は「子どもが泣いたから」、困った理由は「お金を使いすぎたから」、泣いた原因は「悲しかったから」、仕事が終わらなかった理由は「時間がなかったから」。しかし、笑った理由は「友達がおなかを抱えたから」ではない。友達が笑ったようすを表現しているのが「お腹を抱えて」であり、これを付帯状況の「て節」と言います。他は、原因理由の「て節」です。
「付帯状況のテ節」を教師がきちんと区別して教えないと、「病院で大声を出して叱られた」と「広場で大声を出して歌った」の意味のちがいがわからずに、学習者が混乱することになります。
答え D
(10) 英語と日本語の自動詞他動詞は、文法的にことなる扱いをすべきときがある。また、中国語動詞には自他の区別がないので、自動詞他動詞の誤用は、非常に多い。
「部屋に入れないように、かぎをかかってあります」などの誤用がよく見られる。これと同じ誤用をしている文がA~Eにあるが、ひとつだけ誤用の種類がことなっている文がある。どれかひとつ選びなさい。
A)暑いのでエアコンをついてあります。
B)すぐ使えるように食器を出てあります。
C)帰ったらすぐ飲みたいので、ビールを冷えてあります。
D)おふろの水は流れてあります。すぐに入れますよ。
E)友達が来るので、机の上に花が見えてあります。
A~Dは、他動詞と自動詞の誤用。ついて→つけてあります。 出て→出してあります
冷えて→冷やしてあります 流れて→流してあります。
Eは、「花が見えます」と、「花があります」を混用した誤用。
答え E
例題11 学習者の誤用文には一定のパターンがある。同じ誤用をしている文をまとめて、どのように訂正すればよいか、答えなさい。また、ひとつだけ異なる性質の誤用文がある。それはどれか選びなさい。
私の趣味は、本を読みます。(誤) ⇒ 私の趣味は、本を読むことです(正)
A)この発表の目的は、いくつかの方言を比較します。
B)養育者の役目は、子どもの成長を見守ります。
C)遭難の原因は、山の気温が急に低下しました。
D)彼の願いは、彼女と結婚します。
E)彼の活動は、多くの人が感動されました。
ヒント:例文と同じように「こと」を加えてみる。「この発表の目的は、方言を比較することです」。
A~Dは、例文と同じように、述語動詞を辞書形(基本形・終止形)にし、「こと」を加えて名詞文にすれば適切な表現となる。Eは、「感動された」という受け身文にしたため誤文となった。「彼の活動は多くの人に感動を与えた」「彼の活動により、多くの人が感動した」等、添削するとよい。
答え E
<つづく>