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ぽかぽか春庭「琳派・俵屋宗達から田中一光へ in 山種美術館」

2018-06-19 00:00:01 | エッセイ、コラム

<琳派展ポスター「槙楓図」伝俵屋宗達

20180619
ぽかぽか春庭アート散歩>薫風アートめぐり(6)琳派・俵屋宗達から田中一光へ in 山種美術館

 コレクター山崎種二については、何度か言及したことがあります。株や米相場で儲けたお金を美術道楽につぎ込みました。山崎が資金面援助してくれたから、川合玉堂は戦火を逃れて多摩の山奥で静かに暮らせたのですし、横山大観は悠々大家になりました。

 山種が日本画収集をしたのは「目の前で書いてもらって買い取るのだから、画商を通じて偽物をつかまされる心配がない」という理由だったのだとか。なるほど。「偽物じゃ値上がりしない」という信念。株も米相場も日本画も、値上がりしてこそ、という種二さんのコレクター魂、値段見て観覧する私のような美術オンチとは気が合うのかも。

 株も日本画も、なにも値上がりしそうなものを持たない、無産階級春庭ですが、今回も招待券をもらって見たので、「自分で入場料払ったときは、図録買わないでがまん、招待券のときは、音声ガイドか図録にお金出してもいい」という貧乏人ルール適用。図録1000円と絵葉書6枚、計1600円を消費しました。UPの画像は、図録と絵葉書から、または借り物。

 山種美術館、目の前で書いてもらったのではない江戸琳派のコレクションも充実しています。
 今年は、酒井抱一(1761-1828)の没後190年、抱一の弟子、鈴木其一(1796-1858)の没後160年にあたるということで、江戸琳派、抱一と其一を中心とした展示と、その後継者といえる画家たちの作品が、時代の流れに沿って展示されています。

 もうひとつのテーマは、現代に受け継がれた琳派。
 琳派創始の宗達、光琳のデザイン性を引き継いだ、グラフィックデザイナー田中一光らの作品を展示する、という琳派展でした。

 田中一光は、琳派のデザイン性を現代に生かし、すぐれたグラフィック作品を世に送り出しました。
 西武デパートの青い◎の包み紙とか、新東京国際空港第二旅客ターミナルビルの壁画など、知らずに目にしている彼の作品は多々あったのですが、デザインにうといものですから、彼の名前と作品を結び付けて意識したことありませんでした。
 今回、田中を「琳派継承者」と位置付けた展示はとてもよかったと思います。

 田中一光作品によるポスター(「平家納経」願文の鹿図は、田中親美の模作)


 田中一光を「現代の宗達」と位置付けるのは、山下裕二(1958~美術史家・明治学院大学教授)。一光という名前からして、酒井抱一の「一」と尾形光琳の「光」が組み合わさっている、というのですが、これはこじつけっぽい。親がつけたのは「一光=かずあき」

 琳派創始者といえる俵屋宗達。生年も没年もはっきりしていません。年代がはっきりした記録があるのは、1602(慶長7)年に厳島神社の「平家納経」補修作業に加わったこと。このときおそらく30歳くらいであったろう、と推察されています。

 「平家納経」は現在は国宝。1164(長寛2)年に、平清盛が奉納した経巻で、願文を添えて三十三巻。法華経の経文に金銀泥で華麗な絵が描かれれいます。500年を経て保存状態が悪くなったため補修作業が福島正則らの寄進によって実施されました。この修復作業にに宗達も参加。欠損した絵の補作をまかされたのですから、1602年には、宗達の絵の技量を内外によく知られていたのでしょう。

 願文の欠損した六図の補作を、宗達は新しい構図で仕上げました。


 田中は、この宗達の鹿を引用して(山下裕二いわく、「パクった」)代表作「Japan」1986をデザインしました。()


 宗達の『波に麒麟図』と、その波模様をデザインした田中一光の『響きの海へ(武満徹コンサート)』





 田中一光は、自身でも宗達&琳派についてさまざまに語っています。ちょうど東博で「名作誕生ーつながる日本美術」を見たところだし、琳派が現代デザインにつながっている、という展示、おもしろかったです。

 館内で撮影してよい絵は1点。伝俵屋宗達「槙楓図」


 観覧者が途切れたところを大急ぎで撮ったので、撮影許可の1点、あまりきれいに取れませんでした。

 伝俵屋宗達「槙楓図」は、修復が終わったところ。修復後最初の展示ですって。「伝」がついているってことは、宗達真筆かどうかはまだ研究途上なのでしょうね。ある美術家のことばによると「何度も展覧会に出して、みんなが本物だと思うようになれば、鑑定家も真筆のお墨付きを出しやすくなり、伝の一字がとれる」ということなので、この「伝」を購入したのが種二さんかどうかは知らぬが、「伝」とれて値上がりするといいね。売る気はないだろうけれど、箔がつく。

 琳派の流れ。

 俵屋宗達「烏図」


尾形光琳「白楽天図」


 酒井抱一『月梅図』(2017年6月に山種に来たときは、撮影許可が出ていましたが、今回はダメ)


 酒井抱一『秋草鶉図』


 酒井抱一「立葵百合」団扇


鈴木其一「四季花鳥図」


酒井鶯蒲(さかいおうほ)「紅白蓮、白藤、夕もみじ図」


 琳派の影響を受けた近代現代日本画

 速水御舟「翠苔緑芝」


 今月は速水御舟「翠苔緑芝」の、右隻「ビワと黒猫」と左隻「紫陽花と白兎」を青い鳥さんに送ります。根津美術館の尾形光琳国宝「燕子花図」と東博の国宝光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」も送りますから、今月は琳派いっぱい。7月は鈴木其一「四季花鳥図」の右一隻「向日葵と鶏」を送ります。 

<つづく>
コメント (2)
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