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ぽかぽか春庭「未開の議場」

2018-07-08 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180708
ぽかぽか春庭感激観劇日記>全力劇場(1)未開の議場

3月22日木曜日、ミサイルママといっしょに演劇『未開の議場』を見ました。ジャズダンスサークルの元メンバーいくちゃんが出演するので誘われたのです。
 19:30開演 於北とぴあペガサスホール 
       脚本:北川大輔(カムヰヤッセン)演出:大石晟雄(劇団晴天)


 架空の地方都市、幸笠県萩島町の、国際交流イベントを準備するための委員会。テーブルを囲んだ13人の市民が会議を続けていくうちに、国際交流の裏も表もどんどんひっくりかえされていきます。
 芝居の世界では「会議室物」とか「法廷もの」などと呼ばれている、テーブルのまわりに集まった人々が会議をし、人の表裏が出たり丁々発止の激論やら主張の豹変やらで進んでいく演劇です。映画にもなった『12人の怒れる男』や三谷幸喜の『12人の優しい日本人』などはよく知られています。(私はどちらも映画で見ただけで、劇場では見ていません)

 今回「会議」に顔をそろえる役者は13人。プロの役者と、アマチュア役者(北区民)が共演します。1年前にオーディションを受けた区民と役者が、2017年6月から週1回日曜日に稽古を続けてきました。

 ペガサスホールに「区民割引2250円」を払って入場すると、ホールの真ん中にテーブル。入場口わきには、本棚、ソファなど。テーブルの上には鍋。
 客席は会議テーブルをはさんで両側に雛段が作られています。私とミサイルママは一番前に座りました。

 開演時間すぎると、会議に出席する人々が三々五々集まってきて、これまでの会議の反省などを口にしたり今日の議題を確認したりするので、会議は「町内の日本人と外国人居住者がいっしょに楽しむ交流イベント」を行うための準備会議だということがわかります。

 架空の国トメニアからの移民が人口の1割を占める町で、恒例の交流イベントが開かれます。(モデルになっているのは、群馬県大泉町だそう。大泉は、人口4万人のうち、外国からの出稼ぎ民が2割。うち半数はブラジル人)。

 会議物の作り方セオリーどおり、丁々発止の激論やら、くだらない足の引っ張り合いやら、人間の裏まで見えます。疑心暗鬼やら逃げ出そうとするものもいて、どたばたありのどんでん返しありの、最後にはなんとか来週の会議開催日時を決めて解散。

 出てくる役者さんたち、プロも北区民のアマチュアもすごい熱演で、役になりきっているので、お芝居というより、ほんとうに町おこしに集まった人々とが会議をしているというように見えました。2時間やすみなしの演劇でしたが、時間がたつにつれ登場した人物たちの人生の背景まで見えてきて、奥深い脚本でした。
 トメニアとの交流のお祭りのはずなのに、自分の利害のために動いているのではないかと疑い合ったり、過去のイジメや事件が影を落としていたりと、人間模様がどんどん複雑になっていきました。
 アマチュアだけれど、いくちゃんは港区の区民ミュージカルなどに出演してきて演劇歴は長いです。演技、とても上手でした。

 出演の役名はこのプロジェクトの紹介サイトに書いてあったのだけれど、どういう役回りだったのか、13人分全部は思い出せなくなっています。思い出せるところと思い出せなかった役とありました。登場人物が多いので老体の記憶が及ばなかった。以下、役名と演じている訳者と、その人の役柄があっていないかもしれません。すみません。

1森雄太(演:木村聡太)、会議が進むにつれて、自分自身がいじめの過去を持ちそのトラウマを抱えて子供の世話をしていることがあきらかに。苗山みどり、大崎龍介とは、小中学校の同窓生だったことも会議が進む中でわかってくる。演じている木村聡太は、1994年生まれ23歳。イケメン。

2苗山みどり(演:西若菜) カフェ店主。テーブルの上の鍋には、みどりの得意なトメニア料理が作られているのだけれど、料理は「あとちょっと煮込んだほうがおいしくなる」というばかりで、結局できあがらない。

3湯田清美(演:荘司まゆみ) 不動産屋 外国人居住者への不動産斡旋でもめごともあるが、会議のまとめ役として議長役をこなしている。

4升遠綾子(演:桜井由美子)スナックのママさん。おだやかに皆をまとめようとしている。

5紫門源一郎(演:氷室幸夫<京介>)トメニア人コミュニティと役所との折衝などを行う部署の事務局長的な仕事をしている。恐妻家なのに、女好き。

6葉浦充(演:シマザキタツヒコ)なにしていた人だっけ。
  
7馬場倫(演:森野郁子)大勢のトメニア人が働く工場に勤務。記憶力があり、たいていのことはしっかり細かく覚えていたが、過去に起こったトメニア人がかかわる事件のことは、しらなかった。何回かの会議に出席しているのに、みなには独身女性とイメージされてきていて、今回はじめて実はトメニア人の夫がいたことが判明。いくちゃんが演じてじょうずでした。

8(演:) ツバメ食品萩島工場勤務。5年前に萩島町に転勤になった。
調味料やレトルトカレーを製造する食品工場に勤務。トメニア人労働者の研修、管理全般を担当している。やや硬いサラリーマン。

9向井章吾(演:尾崎真一)

10神田香(演:木村雪緒)コンビニ経営。トメニア人の万引き被害に悩んでいる。

11町屋要(演:加藤巧)
 
12大崎舞子 親から引き継いだ銭湯を経営。日本人への銭湯入場お断りは、酔っぱらいのほか刺青を禁止しているので、トメニア人の中でタトゥをしている人を銭湯おことわりにしたい、と主張。

13大崎龍介 大崎舞子の夫。銭湯の仕事は妻にまかせて、学校行事などの写真撮影をひきうけている。本来は会議のメンバーではないのにオブザーバーとして出席を聴講参加を認められた。にもかかわらず、どんどん意見を出す。

 国際交流、同じ町の居住者同士、なかよくお付き合いしていきましょう、という表面だけの交流を、例年通りにこなしていけそうだったのに、深くえぐっていくと、心の中に持っていた差別感情や外国人忌避感情が表に出てきたりします。

 演劇のおもしろさをたっぷり味わうことができました。
 ただ、「未開の議場」というタイトルは、わざとそうしたのだろうと思うけれど、堅そうで、会議劇ときくとなおさらつまらないかも、という印象を受けてしまうかもしれない。無理やりキャッチ―にすることもないのだけれど、「みんなで交流・風呂場をめぐる13人の怒れる男女」なんてのだと、風呂場シーンがあるかと勘違いして見に来る客もいるかも。いないか。
 銭湯の入浴禁止についてのやりとりが、裸の人間模様を描くきっかけなので、いいタイトルだと私は思うんだけどな。

 観客の何割かは区民出演者のご家族友人たちだったのはいいとして、もっと一般客を呼べるすぐれた脚本だと思いました。

<つづく>
コメント
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