20180715
ぽかぽか庭シネマパラダイス>終活映画(2)あなたの旅立ち、綴ります(The last ward)
シャーリー・マクレーンが出ているので見ることにした終活映画。
映画冒頭には、シャーリーの人生アルバムが映されます。かわいらしい少女時代、映画女優として栄華に包まれた時代。ほぼ実年齢である、ハリエット役までのさまざまなシャーリーが出てきて、1960年の『アパートの鍵貸します』以来、シャーリー娘のサチ・パーカー出演の『西の魔女が死んだ』まで見てきた私にとっては、すてきな冒頭でした。
夫婦なかよくいっしょにすごしたエラとジョン夫妻に対して、シャーリー演じるハリエット・ローラーは、お金はあるけれど、ひとり暮らしの80代女性です。女性の社会進出がまだまだだった時代に、広告ビジネスで成功したお金持ちではあるけれど、夫とは結婚19年目に離婚。娘とは音信不通の仲。
なんでも自分の思い通りにして生きてきたハリエットは、自分の死後に新聞などに載る訃報も、自分の思い通りにしようと決め、地方新聞社の訃報記事担当記者アン・シャーマン(アマンダ・セイフライド)を雇います。
アンがまず、ハリエット・ローラーの知人にインタビューしてみると、ハリエットをよく言う人はいませんでした。
ある知人「ハリエットについて、何かよいことを言えですって。そうね、彼女が死ぬのはよいことだわ」
ハリエットは「最高の訃報記事」になるために、自分自身に課題を出します。「人生を変える影響を誰かに与えること」「やり残したてきた、やりたかったことを実行すること」など。
以下、ネタバレ紹介です。
ハリエットは、別れたままだった元夫エドワード(フィリップ・ベイカー・ホール)や、娘エリザベス(アン・ヘッシュ)にも会うことにします。
夫は、「結婚したことを後悔したことはない」と述べます。彼が離婚を望んだのは、妻が自由に仕事に没頭できるようにするためであった、と。
娘との久しぶりの邂逅は、ぎくしゃくしたものでしたが、娘エリザベスは、「医師の夫とふたりの子供に恵まれた幸福な母親」として生活していることがわかります。
娘が自分とは対照的な人生を選び、幸福な家庭を営んでいることを知り、ハリエットは大笑いします。ハリエットは、自分の思い込みが間違っていた時には大笑いする、と、アンはハリエットのモト夫から聞いていました。
娘に対して「よい母親にはなれなかった」と、悔やむ心を持ち続けてきたハリエットでしたが、それは思い込みにすぎず、エリザベスはちゃんと育っていたのです。
児童施設にいたわんぱくなアフリカ系の女の子ブレンダ(アンジュエル・リー)と、ロックミュージックをともに楽しむようになり、地方ラジオ局で「昔やってみたかったDJ」をやってみます。ハリエットは、古いレコードを大切にコレクションしてきたのです。
CDではなく、レコードの音質を世に伝えるべく、ハリエットはすてきな選曲をして朝の番組のDJをしていきます。
DJを(無給で)つとめるハリエット

アンは、ハリエットが設立した広告社が、部下の裏切りにあって会社を乗っ取られていたことを知ります。最初に受けたハリエットの印象「金持ちのわがまま婆さん」とは異なる人物だったことがしだいにアンにも見えてくると、アンは、失敗を恐れ傷つくことを恐れていた自分が変わっていくのがわかります。アンが失うことを恐れるのは、幼い時に母親が家を出ていってしまった喪失感からきているのです。
人生において、失うこと傷つくことは山ほどある。でも、同じくらい得ることも多いのです。
ハリエット、アン、ブレンダの3人は、旅をともにすごすうち、家族のような絆を感じます。3人が夜の湖でいっしょに泳ぐシーン、とてもすてきです。月明かりのなか、3人は子供に返ってはしゃぎます。
ただし、私の感想としては、惜しい気がします。このシーン、3人とも全裸だったら、もっと印象深い画面になったでしょうに。すべてを脱ぎ捨てて素に戻る意味で、全裸がよかったなあ。シャーリーが、しわしわのおしりを写されるのを拒んだのか。垂れパイでも価値ある裸と思うのだけれど。
湖で泳いだ翌朝、泊まったモーテルの前で3人の記念撮影
旅から戻り、アンは、ハリエットの真実の姿を訃報記事にまとめていきます。
アンは、ハリエットの人生を知ることによって臆病な自分をかえていき、「ほんとうはエッセイストになりたい」という人生の希望を失わずに突き進むことにします。
ブレンダも、ハリエットが残した最後のことばThe last word「道を照らす人になりなさい」に勇気づけられて生きていくでしょう。
ハリエットの「最後のことば」は、「I am who I am 私はわたし」。
配役でよかったのは、ブレンダ役の子役。生き生きしていてよかったです。
ハリエット家の庭師を演じたゲディ・ワタナベGedde Watanabe は、日系人の役者さん。キアヌ・リーブス主演の「47RONIN」には、旅芸人座長の役で出演しているそうですが、私は未見。
もともとシャーリー・マクレーンあて書きシナリオだったそうですけれど、81歳の老女役をとってもチャーミングで毅然として生き生きとして演じたシャーリー。しわはいっぱいあったけれど、とても魅力的でした。
実在のシャーリー・マクレーンが貫いてきた強烈な個性が、映画のハリエット像に反映されていることは間違いありません。(彼女のスピリチュアル傾向は、私にはピンときませんでしたが)
むろん、ハリエットがDJをやることができたのも、ハリエットの財力があってこその晩年だったのですけれど。
ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの『最高の人生の見つけ方(バケットリスト=死ぬまでにやりたいことリスト)』でも、大金持ちのニコルソンの財力があったからやりたいことやりつくせたのであって、私にはできそうにない。
お金はまったくないけれど、「私はわたし」を貫ける人生でありたいなあと、来年は古希の老女も思うのです。
<つづく>
ぽかぽか庭シネマパラダイス>終活映画(2)あなたの旅立ち、綴ります(The last ward)
シャーリー・マクレーンが出ているので見ることにした終活映画。
映画冒頭には、シャーリーの人生アルバムが映されます。かわいらしい少女時代、映画女優として栄華に包まれた時代。ほぼ実年齢である、ハリエット役までのさまざまなシャーリーが出てきて、1960年の『アパートの鍵貸します』以来、シャーリー娘のサチ・パーカー出演の『西の魔女が死んだ』まで見てきた私にとっては、すてきな冒頭でした。
夫婦なかよくいっしょにすごしたエラとジョン夫妻に対して、シャーリー演じるハリエット・ローラーは、お金はあるけれど、ひとり暮らしの80代女性です。女性の社会進出がまだまだだった時代に、広告ビジネスで成功したお金持ちではあるけれど、夫とは結婚19年目に離婚。娘とは音信不通の仲。
なんでも自分の思い通りにして生きてきたハリエットは、自分の死後に新聞などに載る訃報も、自分の思い通りにしようと決め、地方新聞社の訃報記事担当記者アン・シャーマン(アマンダ・セイフライド)を雇います。
アンがまず、ハリエット・ローラーの知人にインタビューしてみると、ハリエットをよく言う人はいませんでした。
ある知人「ハリエットについて、何かよいことを言えですって。そうね、彼女が死ぬのはよいことだわ」
ハリエットは「最高の訃報記事」になるために、自分自身に課題を出します。「人生を変える影響を誰かに与えること」「やり残したてきた、やりたかったことを実行すること」など。
以下、ネタバレ紹介です。
ハリエットは、別れたままだった元夫エドワード(フィリップ・ベイカー・ホール)や、娘エリザベス(アン・ヘッシュ)にも会うことにします。
夫は、「結婚したことを後悔したことはない」と述べます。彼が離婚を望んだのは、妻が自由に仕事に没頭できるようにするためであった、と。
娘との久しぶりの邂逅は、ぎくしゃくしたものでしたが、娘エリザベスは、「医師の夫とふたりの子供に恵まれた幸福な母親」として生活していることがわかります。
娘が自分とは対照的な人生を選び、幸福な家庭を営んでいることを知り、ハリエットは大笑いします。ハリエットは、自分の思い込みが間違っていた時には大笑いする、と、アンはハリエットのモト夫から聞いていました。
娘に対して「よい母親にはなれなかった」と、悔やむ心を持ち続けてきたハリエットでしたが、それは思い込みにすぎず、エリザベスはちゃんと育っていたのです。
児童施設にいたわんぱくなアフリカ系の女の子ブレンダ(アンジュエル・リー)と、ロックミュージックをともに楽しむようになり、地方ラジオ局で「昔やってみたかったDJ」をやってみます。ハリエットは、古いレコードを大切にコレクションしてきたのです。
CDではなく、レコードの音質を世に伝えるべく、ハリエットはすてきな選曲をして朝の番組のDJをしていきます。
DJを(無給で)つとめるハリエット

アンは、ハリエットが設立した広告社が、部下の裏切りにあって会社を乗っ取られていたことを知ります。最初に受けたハリエットの印象「金持ちのわがまま婆さん」とは異なる人物だったことがしだいにアンにも見えてくると、アンは、失敗を恐れ傷つくことを恐れていた自分が変わっていくのがわかります。アンが失うことを恐れるのは、幼い時に母親が家を出ていってしまった喪失感からきているのです。
人生において、失うこと傷つくことは山ほどある。でも、同じくらい得ることも多いのです。
ハリエット、アン、ブレンダの3人は、旅をともにすごすうち、家族のような絆を感じます。3人が夜の湖でいっしょに泳ぐシーン、とてもすてきです。月明かりのなか、3人は子供に返ってはしゃぎます。
ただし、私の感想としては、惜しい気がします。このシーン、3人とも全裸だったら、もっと印象深い画面になったでしょうに。すべてを脱ぎ捨てて素に戻る意味で、全裸がよかったなあ。シャーリーが、しわしわのおしりを写されるのを拒んだのか。垂れパイでも価値ある裸と思うのだけれど。
湖で泳いだ翌朝、泊まったモーテルの前で3人の記念撮影

旅から戻り、アンは、ハリエットの真実の姿を訃報記事にまとめていきます。
アンは、ハリエットの人生を知ることによって臆病な自分をかえていき、「ほんとうはエッセイストになりたい」という人生の希望を失わずに突き進むことにします。
ブレンダも、ハリエットが残した最後のことばThe last word「道を照らす人になりなさい」に勇気づけられて生きていくでしょう。
ハリエットの「最後のことば」は、「I am who I am 私はわたし」。
配役でよかったのは、ブレンダ役の子役。生き生きしていてよかったです。
ハリエット家の庭師を演じたゲディ・ワタナベGedde Watanabe は、日系人の役者さん。キアヌ・リーブス主演の「47RONIN」には、旅芸人座長の役で出演しているそうですが、私は未見。
もともとシャーリー・マクレーンあて書きシナリオだったそうですけれど、81歳の老女役をとってもチャーミングで毅然として生き生きとして演じたシャーリー。しわはいっぱいあったけれど、とても魅力的でした。
実在のシャーリー・マクレーンが貫いてきた強烈な個性が、映画のハリエット像に反映されていることは間違いありません。(彼女のスピリチュアル傾向は、私にはピンときませんでしたが)
むろん、ハリエットがDJをやることができたのも、ハリエットの財力があってこその晩年だったのですけれど。
ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの『最高の人生の見つけ方(バケットリスト=死ぬまでにやりたいことリスト)』でも、大金持ちのニコルソンの財力があったからやりたいことやりつくせたのであって、私にはできそうにない。
お金はまったくないけれど、「私はわたし」を貫ける人生でありたいなあと、来年は古希の老女も思うのです。
<つづく>