2006.9.21(木) 快晴
6:00 起床
9:10 黒森YH発~R103~発荷峠11:07着~休屋12:05着
12:40 休屋発~R103~奥入瀬渓流~R102~
おいらせYH(焼山)15:30着
15:40 おいらせYH発~十和田温泉~
17:30 おいらせYH着
大森YHの管理人は黒沢さんという。宿泊客は一人だったので、いろいろな話をしていたら、歴史に大変憧憬の深い方で、私の昨日の疑問に的確な答えをいただいた。ひとつは
尾去沢鉱山の公害の件であるが、やはり鉱毒、煙害は勿論のこと沈殿池(残渣を溜めるダムであり、大規模なものである)の決壊による街の被害とかあったそうである。小坂鉱山も同様の銅鉱山であるが20Kmも離れた大湯でさえ煙害の被害があったそうである。
それは彼が諏訪家というかつての大湯の大地主の文書を調査している中に、各地からの被害の訴えの手紙があり事実が認められるところである。現物を何通か見せてもらったが
大正時代のもの、戦前のものなどなまなましい記録である。荒川の松田解子さんからの手紙もあるそうだ。こういった負の遺産を後世に残すべく努力されている方がおられて安心した次第である。日本人は禊ぎの文化と言おうか、こういう歴史上の影の部分を捨て去る傾向にあるようだ。大陸における大虐殺の事件や細菌部隊の問題など戦争における事件もそうであるが公害や人権侵害、強制労働など産業における分野での事件や事実をもっと歴史上の日の当たるところに出さないと、歴史なんて学問は一体何なんだと言うことになる。
ストーンサークルのこともいろいろ教えていただき、大体私の予想と当たっていたので、
これも安心した。他の縄文遺跡でもあるように、元来は墓穴(ここの場合は甕棺)の表面に石を輪に並べたものだが、祭祀的な要素が加わり大規模なストーンサークルになったのではないかということである。
秋田県の自殺率の高さについてもお話しし、秋田県民の一途さもひとつの理由ではないかということであった。自分が失敗したり、行き詰まったらもう他に逃げようのない性格、
これが自殺に追い込まれる原因ではないかと言うことである。やはり人生、あそびがないと苦しいと言うことだ。あそびばかりでもいかんのだが。
今年の熊の出没についても言及があった。昨年山の実、果実のできが大変良く、繁殖が旺盛であった。今年は雪が遅くまであったせいか実が少ないそうである。それでこの時期
人家近くまで、あちこちで出没しているようだ。
お話をしていると出発が遅くなってしまった。峠越えもあるのでお礼を言って早々に大湯を出る。秋晴れの国道を快調に走っていると、ガードレールがゴーンと音がする。熊でも激突したかなと振り返るがなにもいない。それが何度か繰り返す。どうも朝の日に当たり、ガードレールが膨張して音を出しているようだ。
秋晴れに ガードレールも 背伸びかな うとく
R103沿いは滝の名所でいくつか看板もあるのだが、熊の話で脇道にはいるのが怖ろしくなり、道沿いの滝だけ鑑賞する。止めの滝、中の滝が有りその間も美しい滑(なめ)で楽しい街道である。
左から止めの滝、中の滝、中間の滑
ブナ林の街道も当初は感動したが、毎日走っているとどうってこと無くなってきた。美人の嫁さんのようなものか。クルミの実(本当にクルミか確かめていないのだが)はだんだん増えて、避けきれなくなってきた。やむなく踏んでみると、熟れているせいか割れてしまう。もう乗り上げてふらつくこともないのだ。
胡桃割る 19インチの たくましさ うとく
発荷峠はブナ林の続く美しい峠である。初めてブナ林を走る人なら感動ものだろう。
峠自体はなんてことはないが、その先にある十和田湖の展望は素晴らしい。絶景とはこのことをいうのだろう。
栗踏みて 十月遅れの はつにかな うとく
発荷峠と展望台からの十和田湖
今日は秋の交通安全週間の初日らしくて、パトカーや関係者の車が十台ほど幟を立てて通り過ぎてゆく。これが工事中の道路と相まって渋滞となる。一体なんのこっちゃ。
休屋(やすみや)までの下りは一気である。ここに秋田県と青森県の境がある。十日に秋田県に入って以来十一日間、秋田は美しい景色が多くあった。
休屋は十和田観光の拠点である。
秋田、青森県境の川と休屋からの十和田湖
十和田科学博物館が特別展準備中で無料なので入ってみる。十和田湖の生成、カルデラ湖の説明が主である。
お昼をとろうと思うが、各レストランとも客引き合戦で大変である。オフシーズンの哀しさか。私はこれが大嫌いで、客引きのいないレストランに行く。ところがやたら高い、しかもどこも同じような値段だ。ばかばかしいので止めにして、先を急ぐ。
第二のカルデラの部分の半島は峠となっている。湖の周回は平らという先入観があるので、結構つらい。
峠からの眺望
降りきったところに、食堂があり寄ってみる。ラーメンとご飯、ひじきと山芋短冊、漬け物が付いて五百八十円、安い、正解。
いよいよ奥入瀬渓流に入る。私はここは十和田湖に注いでいるものと思っていたので、登りになると覚悟していたのだが、逆であった。すこぶる気持ちの良い下りなのだが、明日またこの分を登り返すのかと思うと、嬉しさも半分である。さすがに天下の名勝、滝や淵の名所が限りなく続く。最初のうちは止まって写真を撮ったりしているが、きりがないので止めた。遊歩道にはウィークデイというのに意外と多くの観光客が来ている。紅葉の季節ともなればこの街道は観光バスが増え、自転車で走るのは困難になるのではないか。下ってゆくにつれ渓谷も広くなり、ただの川になってくる。
銚子の滝、双白髪の滝、
白糸の滝、渓流
おいらせYHに着くと、鍵がかかっている。電話をすると買い出しに出ているので待ってるようにとのこと。これ幸いと十和田温泉にゆく。今日もいいお湯だ。
口直しに十和田三部作川柳をどうぞ
カルデラは BCGの 地球版(年代がわかりますな)
休屋で 関西弁を 思い出し
奥入瀬も 下ってしまえば ただの川
走行51Km無し 累計 2、280Km 費用10,892円
★十和田温泉(洗心館) 2006年9月21日 単純温泉 370円 猿倉集合引泉 無色透明 源泉掛け流し 加水、加温無し サウナもあり優しい湯
★黒森YH(鹿角市大湯温泉) 2006年9月20日泊 一泊二食4,720円
源泉掛け流しのお風呂有り 歴史、政治、経済、文化管理人さんとお話しすると楽しい もう少ししっかり掃除して欲しい、立派な建物だから。
★峠列伝(15) 発荷峠 秋田県 国道103号線 2006.9.21
困難度 3 風景 5 水場 有り 歩道 無し
展望台からの眺望は一級品