2016.10.12(水)晴れ
本書は地名としての風呂について書かれたものではない。日本に於ける沐浴の歴史を明らかにしようというものである。しかし筒井氏が風呂に関心を持たれたきっかけは「風呂」の付いた地名が各地にあったことである。従って地名としての風呂が随所に登場する。そしてそこには紛れもない風呂が存在するのである。風呂地名があるところに実際に存在する石風呂をはじめとする各種の風呂やその跡地などの写真が満載なので、これは実に意外であり衝撃であった。谷川健太郎氏の本に石風呂の語句を見つけてから数多くの地名に関する本や研究誌を見てきたが風呂に関するものは登場することはなかった。誰も研究することもなく、現実の石風呂を探すこともなかったのだろうか。それはわたしが陥ったように風呂地名は現実の風呂とは無関係じゃないかという思いが原因なのかも知れない。
衝撃的なのは各地の石風呂の写真である。風呂という地名はそこに風呂があったからということはにわかに信じられなかったのだが、実際に見せつけられてはこれほどはっきりしたことはない。
ここであらためて風呂について調べてみる。すると風呂は室(むろ)からの転訛であって石や土で作った室に入って蒸気で蒸すと言うのが起源であると言うことはどこにでも書いてある。(語源大辞典、民俗地名語彙辞典、民俗学事典など)風呂というのは元々現在のように湯を張ったものではなく、八瀬の釜風呂のような蒸し風呂であったことは知っていたが、岩壁を穿った石風呂が山奥で杣人のために造られたというのはどうも納得がいかなかった。ところが石風呂が唐(中国)の起源で僧によって伝えられ、東大寺再建のため僧重源が周防国佐波川流域に良材を求めて入り、杣人のため石風呂を造ったという伝説が気にかかってくる。それが史実で無かったとしても風呂の効用を知っている僧が禁裏御料の山中で杣人のために石風呂を造ると言うことがあったとしたら、山奥に石風呂が点在する要因として考えられることである。つづく
【今日のじょん】日ハムが頑張っている。じょんの日ハム色のウェア、実はパジャマなんだが、これが実にダサイ感じなんだがそれなりに似合っているようで情けない感じがする。