『秋の甲斐路へ』⑤、初日の宿泊は西山温泉にある慶雲館へ。かなり遠いという認識はあったものの、富士吉田市にある富士山レーダー館でカーナビを入れると82km離れていて所要時間が下道で2時間(高速経由では大回りすぎて時間がかかる)ことが判明。
慌ててまだ13時というのに宿に向かう。
カーナビの指示が奮っていて『本栖みち』(国道300号線)をひたすらまっすぐと出る。国道138号線に入り、鳴沢村、鳴沢氷穴、富岳風穴、青木ヶ原を走り、本栖湖の周りへ。本栖湖が見えなくなると急にくねくね曲がり始め、ヘヤピンカーブの連続。
途中、道の駅しもべで休むがこの道の駅、がらんとしている。
下部温泉駅のそばを通過、しばらく身延線に沿って走り、富士川を渡り、左へ。この辺りは現在リニア新幹線工事の真っ只中、車が減るかと思ったがダンプカーと次々すれ違う。富士川から早川かわり、ひたすらまっすぐ行くとようやく慶雲館に到着した。到着は16時、なんと3時間弱もかかった。
慶雲館はギネスブックで世界最古の宿と認定されている。藤原鎌足の長男真人が飛鳥時代に開湯し、それから1000年以上の歴史をもつ。部屋に入ると目の前に渓流が流れていてその音が心地いい。
(1階露天風呂)
(4階露天風呂)
温泉宿にはよく泊まるが、こちらの温泉は湯量が多く、大浴場だけでなく、部屋の風呂も全て掛け流し。シャワーのお湯まで温泉である。部屋は広い(和室12畳+次の間6畳)にグレードアップ、フロントと同じ階になり、便利であった。
夕食は食堂でいただくのだが、料理は深山懐石と名付けられ、はじめに食前酒の梅酒を飲みスタート。まずはビールを飲みながら、先付のイチジク焼き味噌胡麻あん掛けを頂く。
他に前菜は柿の白和え、合鴨の塩蒸し、胡麻豆腐、いくら寿司、秋野菜の揚げ煮が並ぶ。いずれ美味いが、合鴨の塩蒸しはいい。
お吸い物はツミレのすまし仕立て、沢煮椀風。ここで地酒の七賢(山梨県)の生酒を頂く。お造りは鱒が2種、ワサビ醤油も酢味噌も旨い。湯葉はワサビで頂くが、生酒がよく合う。
面白かったのは蕪釜牛肉そぼろ射込み、思いの外カブが柔らかく、えぐみもない。
口直しのシャーベットとどんぐり麺。見た目は韓国の冷麺風だが味がやや脂っこいように感じた。面白いが、好みではない。
ヤマメは串を打ち、塩焼きで出された。個人的にはハラワタの苦さが好きだが、ちゃんと取り除き、カリカリに焼いてある。
甲州牛の溶岩焼きはA5黒毛和牛の食べ比べ。左からリブロース、肩ロース、腿、バラ、これを富士山の溶岩に乗せて焼く。甲乙つけ難いが、リブロースが最も旨い気がした。
最後は栗ご飯、赤だしにはほうとうも入っていて季節感、地元の味を上手く使っている。あまり栗は好きではないが、この栗は別物、大変美味かった。最後にデザートをいただき、満腹。旨いものを少しずつと我々シニアには有り難いメニューである。
部屋に戻り、風呂に浸かり、1日の疲れを癒した。この宿は露天風呂が2ヶ所、大浴場が2ヶ所あり、それを男女代わるがわるに入ることができる。ただ、外国人が多い時は大浴場は静かで2回入ったがいずれも広い湯船を独り占め。露天風呂では気になって空を見あげたが、徐々に雨が強くなってきた。
とにかく川の流れ以外は何も聞こえない静かな山の宿である。(以下、次回)