天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

「ミケランジェロの暗号」71

2011年11月01日 | 映画感想
「ミケランジェロの暗号」

「ヒトラーの贋札」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したスタッフが再集結して制作。
出演してる役者さんのフィルモグラフィを調べると案外自分が見ている作品にご出演されているみたいだけど
ドイツ~オーストリア系の役者さんってみんな同じ印象で顔が覚えられない。すまぬ^^;

あらすじは
1938年オーストリア。画商を営むユダヤ人のカフスマン家には、かつてヴァチカンから盗まれたと
言われている国宝級のお宝「ミケランジェロの絵」を所有しているという噂があった。
カフスマン家の息子ヴィクトルは長年家族のように接して来た使用人の息子ルディにその噂が本当である事、
そして自宅の隠し部屋の存在とそこに隠されたミケランジェロの絵の存在を教えてしまう。
ところがルディは自分の立身出世の為にナチに入党し、手土産としてミケランジェロの絵のありかを密告。
カフスマン家は絵を没収されて家族はバラバラに強制収容所送りになってしまった。
数年後、ミケランジェロの絵を使ってイタリアと有利に交渉を進めようとしていたナチスは絵が偽物である事に気付く。
本物の絵を探すが、絵を隠したカフスマン家の当主は収容所で既に他界。残された息子のヴィクトルから
絵のありかを聞き出そうとするのだが・・・

ミケランジェロの絵を巡るサスペンスミステリー
何て言うか、ハリウッド制作の映画と違って緻密で繊細で丁寧で真面目な作りだなー、という印象。
こんな書き方すると「面白味がないのか」と勘違いされそうなんだけど、案外ユーモラスな展開で遊び心もチラホラ。
でもその「遊び心」にすら真摯な印象を受けるという・・・表現するのが難しいんだけど、本当に「真面目」な印象。

映画冒頭、ナチスの輸送機がレジスタンスによって撃ち落とされて墜落するシーンから始まり、一旦シーンが切り替わって
なぜこの輸送機撃墜シーンに繋がって行くのか、という過去からの流れを見せて行く構成。
映画の展開としては過去~映画冒頭のシーンまで戻った後に大きく話が動いて行く。

ユダヤ人画商の息子ヴィクトルとその使用人の息子ルディの関係が二転三転するのが見せ場になっている。
使用人の息子とは言え家族同様に思っていた、というユダヤ人ファミリーと、家族のように扱っているという態度自体が
不遜だと思いながらも人生一発逆転を狙っていた使用人の息子、というちょっと心の歪んだ関係を丁寧に見せていて、
それが後に「ヴィクトルとルディの入れ替え」が起こる事でまた2人の関係が交錯していく様が面白い。

とは言え、映画はユダヤ人側の視点に立っているので「人情もあり才気溢れるユダヤ人の機転の良さ」が強調されていて
「自分の出世の為なら親友を裏切る事も厭わず、ひがみ根性丸出しでユダヤ人から財産も女も全て奪う事で自己満足するナチス」
という物凄い判り易い構図が出来上がっているw
もっとも、ヨーロッパ各国の制作で第二次世界大戦下のナチスドイツを題材にした映画で「ナチス△」「ナチスさんマンセー♪」な
作品を作る人は皆無だろう。仮に作っても非難轟々で公開されずに封印されてしまうかもしれない(苦笑)

もしかしたら本作のキモは「それで、真作のミケランジェロの絵は本当はどこにあるのか」という部分?なのかもしれないけど
この「絵のありか」に関しては全くサスペンスでもなんでもない。と言うか、途中で「亡き父からの伝言」というのが
登場した段階で、生まれてこの方ミステリーやサスペンス小説を一編も読んだ事ないという人ですらどこにあるのか特定出来てしまう。
だから「絵のありか」に対してのサプライズは有り得ないので、種明かしシーンがどれだけドラマティックに演出されているかが
見どころになるだろうと思うんだけど・・・ココでも制作者達の生真面目な作りがそのまま生かされてしまい、ワクドキ感は乏しい。
やはり「無駄にドラマティックな演出」というのはハリウッドの方が一枚も二枚も上手だな、と思わされる。

とは言え、誰が見ても(※ネオナチは除く)ハラハラドキドキ→最後はスッキリ晴れやかな気分になれる、という作りになっているので
「ヨーロッパの時代物の良作を見た」という満足感は得られます。作品が真面目だと感想まで真面目になってしまう罠w
コメント
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