第二部はこちら。
この小説のミステリとしてのトリックに、実はおおかたの読者が気づくことと思う。わたしも二巻目の途中でわかっちゃいました。しかしそんなのは些末なことで、“真の悪意はどこに存在したか”という、実はもっと大きなトリックで読者をうならせる。
あ然とするほど宮部みゆきの筆致は細かい。キャラは総立ち。
・担任教師は美しい女性。しかしその美しさに安住して生徒の気持ちが理解できない。
・学年主任は一見冷静に見えるが、生徒が自立し、裁判を成功させようとする動きに激高し、ために表舞台から去っていく。
・教頭は職務代理者として教育委員会の意向を優先。裁判の実施を認めたのも彼なりの保身。微妙だけどね。
……ありそうですこういう学校(笑)。宮部にはどこかにディープスロートがいたんですか。でも唯一、養護教諭だけは善なる存在として肯定されている。前校長もまた、彼なりの屈折があるためにこの裁判を応援してくれる。
・第一発見者の生徒は家庭というものの虚妄に失望し、ある行動にでる。彼にとって、裁判はひとつの救いになる。
・不良三人組の書き分けは特にすばらしい。リーダーにはリーダーの、子分には子分の屈託がある。
・告発状を出した女子生徒は壮絶なニキビに悩んでいる。悪意のかたまりのような彼女は、しかし次第に自らを見つめ、同時にニキビも消えていく。このあたりをあざとくなく描くあたりがうまい。
・そしてそして、わたしがつくづくうなったのは、ほとんど具体的に描かれることのない代わりに強い印象を残す、ある和服の女性の存在だ。セリフもないのに、彼女のこれまでの生活を瞬時に描くその手管。わたし、泣いちゃいました。
実は陰惨な事件。でも不思議なほど読後感がいいのはいつもの宮部みゆき。その集大成といっていい傑作。読むのに体力いるけれど、おひまになったら、ぜひ。
しかしまあこれだけ優秀な中学生たちって、まずいない。いないでしょう?(笑)現場からご報告いたしました。
ソロモンの偽証 第II部 決意 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2012-09-20 |