恥ずかしながら告白すると、わたし、中学のころにいちばんなりたかった職業はディスク・ジョッキーでした。うーんどうなんだろう。いまのお若い方々はDJときいて、どんなものだか把握できているのだろうか。
クラブで皿(ターンテーブル)をまわすクラブDJの方がよほどメジャーかなあ。わたしがあこがれていたのは、放送局の狭いスタジオで、調整卓を必死で操作しながら……ウルフマンジャックや糸居五郎を思い浮かべていただければ。例えが古すぎますか。
ピーター・バラカンは、いつのまにか日本の音楽シーンになくてはならない存在になっている印象。ほんとに、いつのまにか。
彼がいったいどのようにして来日し、あの独特の口調がどのようにして受け入れられるようになったのか、どうも判然としなかったのだけれど、この本で(まさか岩波新書とは)よく理解できた。
ロンドンで日本語を学んだ彼は、契約業務に英語のネイティブスピーカーがぜひとも必要だとしたシンコー・ミュージックに入社するために来日。
なんだシンコー・ミュージックってですと?「ミュージック・ライフ」を出してた会社じゃないですか!え、MLも知らない?星加ルミ子とか東郷かおる子が編集長をやっていたあのMLを知らないなんて!とか言いながらわたしは「ロッキングオン」しか読んでいなかったのでえらいことはいえない。
そんなバラカンは、さまざまな偶然を経て会社員の枠を逸脱していく。YMO(知らないとはいわせない)のマネジメントをしていた縁で矢野顕子のラジオ番組に出演。ついにマイクの前にすわることになる。
フリーになった彼は、その音楽センスもあってメディアで頭角をあらわしていく。わたしがはっきりと彼の存在を意識したのはTBSの深夜番組「ポッパーズMTV」においてだった。
きらびやかでメジャー感ありありの小林克也がDJだった「ベストヒットUSA」(テレ朝)に対抗して企画された(と思う)この番組にわたしは熱狂した。以下次号。
ラジオのこちら側で (岩波新書) 価格:¥ 798(税込) 発売日:2013-01-31 |