事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「鮫肌男と桃尻女」 (1999 東北新社)

2015-05-29 | 港座

んもう、わたしはこの映画がとにかく大好きなのである。CMやアニメで名を成した石井克人の99年の作品。

まず、キャスティングが泣かせる。組織の金を横領して逃亡する鮫肌に浅野忠信。彼を追う幹部、田抜に岸部一徳、鮫肌の先輩で、ともに郵便局に強盗に入る沢田に寺島進、会長の息子で、異様に嗅覚が鋭いミツルに鶴見辰吾、部下が高杉亘、田中要次(HEROの「あるよ」のおっさんね)、堀部圭亮、津田寛治……ここまでがやくざ側。

そんな鮫肌と巡り合ってしまう、山奥のホテルで鬱々とした日々をすごすトシコ役が小日向しえ。小向美奈子とまちがえないでね、ココリコの田中とのちに結婚することになるアイドルです。

彼女を抑圧しているのは叔父の島田洋八。このあたりから配役が狂いまくってくる。家出したトシコを、男にさらわれたと嫉妬して殺し屋を雇う狂気。その雇われた殺し屋が、奇妙な服装と声で、バイトで殺人を請け負う山田。演ずるは我修院達也。あの若人あきらがこんな奇天烈なキャラで復活するとは。そしてのちにジブリの「千と千尋」「ハウル」に声の出演をするとは!すべて、この作品の影響です。絶対。

家出娘をつれて逃げることになった鮫肌と、実は先に組の金をくすねようとしていた田抜などが入り乱れ、そこへ鮫肌に惚れてしまった山田がからんでもう何が何やら。シャープな暴力描写もいいが、子分たちがどうでもいい世間話をしながら待つシーンがひたすらおかしい。

これはもう誰が見てもタランティーノの、特に「レザボア・ドッグス」の影響なのだが、単なるパクリだと言えるレベルではない。だったら他の連中もやってみろと言いたくなるくらいの出来。マネをしてあっさり実現できるような“間(ま)”ではないのだ。

石井のセンスと、きちんとはまりまくったキャストの奇跡の融合。確かに客を選ぶ映画かもしれない。でも、ぜひお試しを。ブルーの下着姿の小日向しえがひたすらかわいいです。ラストのオチは、良質のアメリカ文学みたい。

コメント (2)
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