大阪、中之島の小さなホテルの一室で、居住していた初老の男が死んだ。死因は縊死。彼は二億を超える金額を普通預金口座に遺していた。警察は自殺と判断するが、承服できない女性がふたりいた。そのホテルの若きオーナーと、常連客の大作家。有栖川(作者と同名)は、火村とともにその死が自殺なのか確認してほしいと依頼される……
これまで、ワトソン役として一歩退いた存在だった有栖川が、今回は地道に足を使って男の過去を調べる展開。中之島という土地と、淀君に代表される『すべてを失ってきた』人物が通底音として常に鳴っている。ホテルの情報小説としても一級品だ。
わたしは死ぬまで火村シリーズを読み続けると宣言している男。今回は意外なほどに文学の香気が強い。真の意味での隠遁とはなんなのか。読み終えて粛然とした気持ちになる。“犯人”は現代日本の象徴。
なんとなんと来週から日テレでドラマ化されオンエア開始とか。火村は……おお斎藤工か。ゆるゆるネクタイが似合ってるぞ。有栖は……窪田正孝ってだれ?おお「花子とアン」の朝市じゃないか。いい感じだな。なんと下宿のばあちゃんは夏木マリときたか。ううう楽しみになってきた。
というかね、色んな出版社から出ているものだからいまひとつ(あんなに面白いのに)ブレイクしていない火村シリーズが、ここで火がついてくれると、再版ラッシュで手に入れやすくなるだろうことがうれしいです。みんな買ってね。