事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

オリエント急行殺人事件 第五夜

2016-01-25 | ミステリ

第四夜はこちら

さて、乗客を全員集めて萬斎の種明かしが始まる。名探偵の見せ場の典型。しかしちょっと待て。まだ第一夜の途中じゃないか。あと3時間はどうするの?!

ここからが実はオリジナル。三谷幸喜が「いかにして十二人が集結し、殺人を立案し、実行したか」の部分。要するに忠臣蔵です。

娘を失った元女優が冨司純子。彼女の復讐の念がすべてのスタート。最も佐藤浩市を恨んでいるにもかかわらず、しかし軽妙なのはさすが女優という設定だ。

大石内蔵助に当たるのが松嶋菜々子。冷静で頭が切れるということで殺人計画立案を依頼され、渋々うけいれる。彼女を補佐するのが沢村一樹。彼はなかなかいい味を出してました。ふたりが恋仲であることは最初から明かされている。

第一夜でほとんど活躍することのなかった二宮和也は、佐藤浩市の秘書として彼の動向を探るという、これまた赤穂浪士的な動きを任される。佐藤の寝室でちょっとしたポカをやってしまうなど、愛敬担当。

問題は、キリスト者として殺人はどうあっても神が許さないと主張する八木亜希子。ルメット版ではイングリット・バーグマンが演じて、アカデミー賞を彼女にもたらした役。まあ、賞にめぐまれなかった彼女への論功行賞的なオスカーだったのだけれど、それにしたっておいしい役なのだが……まあ、三谷幸喜のお気に入りだし、フジテレビ出身アナだから仕方ないか。

それから、絶世の美女として登場する伯爵夫人がというのもちょっとつらい。映画では、絶頂期のジャクリーン・ビセットが演じていたので説得力があったのだけれど(以下自粛)。

さて、批判も多かったこの作品。しかしわたしは楽しんだ。もっともっとこんなドラマをつくってほしいと痛切に思う。ミステリが探偵小説と呼ばれていた時代の、無邪気な謎解きを長時間かけて描くというのはテレビにしかできない芸当。文字通り老優となった田村正和をドルリー・レーン役に起用して、「Yの悲劇」はいかがですか三谷センセイ!

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