第29回「女たちの挽歌」はこちら。
前回の視聴率は11.9%と下降。そしてもう30回に達している。このままだと低調な大河との烙印を押されて終了か。よく考えたら今回は回想でしか浅丘ルリ子は登場しないので、いわゆる大河らしい大物俳優はひとりも出てこない。山本学が往時の山本薩夫作品での左翼っぽさを示しておしまい。うーん。
直虎はひたすらに反省する。自分のうった手はすべて寿桂尼に見破られていたし、今川についた方が利になるというより、つかなかったら商売自体が成り立たないという条件を前に、方久(ムロツヨシ)は離反するので(でも、彼が例の『カンカンカンカーン!』はやらないあたり、次回以降への伏線ばりばり)。
政次との囲碁架空対戦と南渓和尚のアドバイスで直虎は悟る。今川は盤石ではないと。史実がどうなのかは知らないけれど、でも井伊を一度つぶしておいて、復活に賭けるというギャンブルを直虎が企図していたというのは無理筋でしょう。どうも脚本に計算違いがあるような気がします。
タイトルはクリント・イーストウッドと李相日の「許されざる者」をいただいている。でもあのふたつの作品がすばらしかったのは、主人公自身が殺人者として許されてはならないという諦念があったことだ。そのあたりの覚悟が、悪役たるべきジーン・ハックマンと佐藤浩市にあたる今川氏真と、イーストウッドと渡辺謙にあたる直虎に見受けられなかったのが残念。視聴率はなお下降すると思います。
あ、そういえば日本版「許されざる者」にも柳楽優弥は熊みたいなルックスで出ていた。あのときは「誰も知らない」の、あの天才子役が……と絶句したっけなあ。
第31回「虎松の首」につづく。