第20回「恋の片道切符」はこちら。
ちょっと今呆然としています。すばらしい回だった。そうなんだよなあ、宮藤官九郎って、どうしても学園ドラマをテレビでやりたかったんだよね。しかもそれが大河ドラマで実現。こりゃーうれしかったろう。「ごめんね青春」のはじけっぷりこそが彼の本領だとつくづく理解できました。
アントワープオリンピックの敗退で放浪する金栗四三。遭遇するのは夫を戦争で亡くした女性たちがスポーツで
「くそったれ!」
と叫んでいる状況だった。帰国した彼は女性にもスポーツが必要だと考えるが、お嬢様学校で生徒たちから激しい拒絶にあう。
“Let’s begin!”
と日テレ系熱血教師がチョークで叩きつけたようにはもちろんうまく運ばない。まあ、当時の大河の裏番組だったわけだけど(笑)。
しかし、四三の熱情は女生徒たちに次第に伝わり……こういうお決まりの展開をちょっとひねるあたりのテクは宮藤官九郎にかなう人は絶対にいない。青春ドラマだけでなく、大好きなジャンルの定型を自分流にひねりたいわけだ。
女学校の生徒たちはこう叫んで槍を投げる。
「くそったれ!」
いま、DVDで「ゆとりですがなにか」(日テレ)を見ているんだけど、彼の凄みを、実は大河では希釈していることがよーく理解できます。それがいいとか悪いとかではなくて。
低視聴率はあまりにトリッキーな運びだからと主張する人もいて、あるいはビートたけしの滑舌の悪さに求める人もいる。違うんだと思う。それは、大河という枠に宮藤官九郎が受け入れられる素地がなかったということでしょう。で、その素地がなかったという意味で大河は朝ドラよりもよほど保守的だったというお話。
しかしシマ(杉咲花)の結婚におけるセリフのやりとりなど、そうか大河はここまで来たかと納得。わたしは「いだてん」に責任をとります。つまんないと思ったらわたしが入場料を払ってやりますとも!(受信料はかんべんして)
第22回「ヴィーナスの誕生」につづく。