「見たのか『居眠り磐音』」
「いや、まだだけど」
同僚は邦画ファン。この映画もさっそく観ている。
「娘も観たんだけどさ」
「うわ。どこまで仲いいんだ」
「違うよ。別々に観たんだよ。んでな、“あれ”に気づいたかって話をしたの」
「“あれ”?」
「うん、予想どおり気づいてなかったんだ……そうか観てないからわかんないわけだ。早く観ろよ」
そんなことを言われたら観るしかない。で、“あれ”が気になって気になって(笑)。
超がつくほどのベストセラーの映画化。成功したらドル箱シリーズになるはずだ。鶴岡まちなかキネマにはけっこうお客さんが入っているけれど、ここは時代劇が強い土地柄だからなあ。全国的には微妙な興行成績になっている。
ある事情で婚約者(芳根京子)の兄(柄本佑)を斬り、藩を離れた磐音(松坂桃李)は、江戸に出て長屋の差配(中村梅雀)がもってきた仕事で糊口をしのいでいる。差配の娘、おこん(木村文乃)は、両替商今津屋(谷原章介)の奥女中をしているが、その今津屋から磐音は用心棒の依頼を受ける……
江戸に出てからの知謀を尽くしたやりとりはなかなか見せる。でも関前藩時代はちょっとつらい。役者の演技がまだ時代劇のそれになっていない感じ。松坂桃李の居眠りぶりは好感がもてるけれど、しかしこのストーリー展開だとこいつは一生童貞を貫かなければならないんじゃないの。あ、そう来るのか。
「“あれ”って結局なんなんだよ」
「ほら、瓦版が出てきたろ?あれの花魁の名前に注目しなきゃ」
「そんなの気づくわけないだろ。おれはてっきりラストの南天の花が象徴する……」
「深読みのしすぎだっ!」