事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「熱源」 川越宗一著 文藝春秋

2020-06-02 | 本と雑誌

わたしと同世代の人なら、同じ記憶を持っている人はたくさんいると思う。もっとも、小学校時代の国語の教科書が光村だった人限定かなあ。

言語学者として高名な(そして金田一耕助の名の由来となった)金田一京助のエピソード。

樺太アイヌの言語を研究する若き金田一は、なかなか彼らが打ち解けてくれないために苦労していた。子どもたちをスケッチしていると、ひとりがやってきて好奇心をむき出しにする。そこで顔の絵を指さし「目」「鼻」などの名が判明する。

そして金田一はそのノートに意味不明なグルグルの線を書くと、いつのまにかやってきた子どもたちが

「ヘマタ」「ヘマタ」

と言い始める。「何?」という意味のアイヌ語だったのだ。以降、金田一は「ヘマタ」という一語で樺太アイヌの言語を収集していく……

どうしてこのような話をしているかと言うと、出てくるんですこの直木賞受賞作に金田一京助のヘマタが。めちゃめちゃにうれしかったなあ。

さて、この長大な物語は、和人からのいわれなき差別に憤る樺太アイヌと、圧政下のロシアで樺太に投獄されたポーランド人が、怒りに似た行動原理によって目的に(迷いながらも)まい進する姿が描かれている。

このふたりだけでなく、登場人物たちがそれぞれ陰影深く描かれ、彼らもまたその

行動原理=熱源

によって歴史をつむいでいく。経済的に困窮しながらも、ひたすら学究に打ち込む金田一京助にしたって同じ熱をもっていたのだ。

日露戦争前夜から数十年におよぶ歴史小説。誰のものでもなかったはず”の樺太が、維新や帝政などによって翻弄されていく。

南極探検隊の白瀬中尉も登場し、あの冒険に犬係としてアイヌが同行していたことも初めて知る(後援会長が大隈重信だったことも)。

ラスト、女性ふたりに彼らの熱が受け継がれていくことが暗示され、感動。石森延男の「コタンの口笛」に何事かを感じた人はぜひ。北海道人である妻に

「アイヌの人たちのことはどう感じてたんだ?」

「いたわ。確かに。でもあの人たちはそのことを言わないの」

考えさせる1冊。熱い1冊。

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投資 泣いているのは誰?

2020-06-02 | 社会・経済

Journey - Who's Crying Now (HQ with lyrics)

スマホが死んでいるときに、某銀行からめったやたらに着信があったみたい。あー退職手当がらみの話なんだな。決算が近いから大変だなあ。

若手が一生懸命なんだ、ちゃんと話を聞いてやろう。

「やはりですね、運用をするとしないとでは大違いなわけです」

「ですよね。」

そんなことはわかっている。普通預金の口座に入れていていいことはなんもない(悪いこともない)。

「この資料をご覧ください。する場合としない場合ではこれだけの差が」

「ですよね。ただ、わたしとしてはこう考えているんです。このコロナの世に投資をするのはどうなんだと

「え、あ、はあ」

「なんと株価あがってますよね。でもそれを信じてないんだなあ」

「……はい」

「大きい金をゲットしたことで、もちろんテンション高まってますけど、だからこそ今は金を動かすのはやめようと妻と語っておりまして」

嘘です。わたしだけの考えです。

「はああ。わかります。でもつなぎにですね……」

お兄ちゃんの話にはすごく説得力があった。彼にはなんの罪もない。

でも、もうひとつ別のファクターがあったの。

実は安倍晋三とトランプの世の中で投資することだけはしたくないの。してたまるもんか。投資信託するだけで、あいつらはうれしいわけでしょう?

これって頑固おやじみてーだな。いいよ頑固おやじで。

本日の1曲はジャーニーの「クライング・ナウ」

産業ロックの何が悪い!と開き直っているわけじゃなくて、あの(みんながバカにした)ジャンルのおかげで、ロックの音質は劇的に向上した。まあ、それがいいとか悪いとかはいろいろあるけどね。

最初の来日のときは郵便貯金ホールでロンドンブーツだったのに、売れてから武道館でライブをやったときはスニーカーだったとか(笑)。いいんだよ、頑固おやじもそれくらいは許容できますとも。

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