その20「攪乱す(みだす)」はこちら。
前後編の最終回スペシャル。わたしは東野圭吾のガリレオシリーズはすべて読んでいるけれども、「聖女の救済」がいちばんすばらしいと思う。あの「容疑者Xの献身」よりも。あ、よく考えたらこの二作はタイトルが連関している。
朝、リモートで会議に出ている社長(堀部圭亮)はコーヒーを飲んでいる。そして夕刻に次の一杯を飲み、絶命する。使用された毒は砒素。そのとき、社長の妻、綾音(天海祐希)は遠く離れた北海道にいて、事件には絶対に関与していないと警察はもちろん判断した。
毒はコーヒー、カップ、ケトルに残されていて、警備保障完備の自宅に侵入者がいたとしか考えられない状況。実際に、その日の午後、紫の傘の女性が訪れていたのだが……
綾音は湯川の中学時代の同級生。だから彼女は“湯川くん”と呼びかけ、岸谷刑事は絶句する。
犯人が湯川の個人的な知り合いであるという設定もまた、「容疑者Xの献身」と対を成している。湯川は北海道の中学から東京に引っ越し、そしてあの石神に出会うことになるわけだ。
この殺人のトリックはネタバレになるので明かせないけれども、よほど強靭な精神力がないと成立しない。その象徴が殺人現場にのこされたタペストリーであり、湯川がそれを引っぺがして壁面に数式を書き始めるのも象徴的。
原作でおとなしいイメージがあった綾音を、強さを感じさせる天海祐希に演じさせたのは、意外性が減じて残念でもあり、薔薇に水をやるときに一瞬だけ邪悪な表情をうかべるあたり、説得力があっておみごとでもあった。うん、やっぱり天海祐希しかない(でも原作の特集でやったように、椎名林檎はありだよね)。
ガリレオXX「内海薫最後の事件」につづく。