クモマツマキチョウ Anthocharis cardamines (Linnaeus, 1758) は、シロチョウ科(Family Pieridae)ツマキチョウ属(Genus Anthocharis)で、ユーラシア北部に広く分布するチョウ。ヨーロッパでは普通種であるが、日本では本州中部地方の特産種で、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳の高地帯の沢沿いにある草地に生息している。日本には、 次の2亜種が生息している。
- クモマツマキチョウ 北アルプス・戸隠亜種 Anthocharis cardamines isshikii Matsumura, 1925
- クモマツマキチョウ 南アルプス・八ヶ岳連峰亜種 Anthocharis cardamines hayashii Fujioka, 1970
クモマツマキチョウは、高山蝶の一種で、大陸と陸続きになっていた氷河期に渡来してきたものが、温暖化により国内の高山に逃げ延びたものと言われているが、低標高地に産する場合もある。翅裏はツマキチョウと同じく草ずり模様になっているが、前翅先端は雄は鮮やかなオレンジ色、雌ではくすんだ灰色になる。
また前翅中央に黒点があり、これが北アルプス及び戸隠亜種は丸く、南アルプス・八ヶ岳連峰亜種は三日月形をしている。
食草となるミヤマハタザオ、イワハタザオなどのハタザオ類は崖地などに生育するため、物理的環境の崩壊等で本種の絶滅も危惧されており、環境省カテゴリでは準絶滅危惧種として分類されている。長野県では「指定希少野生動植物」に、長野県及び富山県では天然記念物にも指定している。
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)は、2013年6月に富山県で撮影しているが、今回、未撮影のメスを求めて長野県の生息地へ向かった。
25日の18時に自宅を出発し、現地には21時半に到着。25日は、前記事に掲載したウスバシロチョウの完全黒化型を撮影するため前日から福島県に行っており、福島から一時帰宅した後、すぐに長野へ向かうという強行軍。しかも二日連続の車中泊である。
26日。6時から登山開始。当地は初めての訪問であり、ほとんど予備情報がない。過去の経験から生息環境と思われる場所を見つけながら、標高およそ1,500mのポイントで待機することにした。本種は、朝方に草地の地面近くを飛翔しながら吸蜜などをし、10時前後から渓流沿いなどを下方に下る習性があるが、この日はなかなか姿を確認できない。8時半頃、1頭のメスの飛翔を確認したが、止まること無く飛び去ってしまった。その後、オス1頭も確認したが、同じように飛び去ってしまった。この日は全国的に高温で、標高およそ1,500mの地点でもかなり暑いことが、行動パターンを変えているようである。
2頭を目撃したことで、本種の飛翔コースが判明。その周辺の林道を行ったり来たりしていると、どこからともなく1頭のオスが現れ、私の周りを飛翔。どうやら、服の色が良かったようである。ただし、なかなか止まってくれない。しばらく追いかけると、やっと白い花に止まって吸蜜。ただし、ほんの十数秒。その後飛び立った後を追いかけたが、藪を超えて沢の下へと飛び去ってしまった。この日は、その後1頭も確認できず、結局オスの1カットのみの成果で終了。しかしながら、久しぶりに見るオレンジに少々興奮気味にカメラを向け、楽しい時間を過ごすことができた。いずれは、
南アルプス・八ヶ岳連峰亜種も撮影したいと思う。
以下に掲載した写真は、1枚目が今回のもので、他は2013年に富山県において撮影した個体を比較として掲載した。
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クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:長野県 2019.5.26 9:20)
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:富山県 2013.6.01 8:51)
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:富山県 2013.6.01 8:48)
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:50)
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:53)
クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:56)
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いつもの強行軍ですね~(^^;)
体調も回復されているようで何よりです。
御自身でポイントをリサーチして、モノにしてしまう所、いつも凄いなぁと感心しております。自分の足で探す楽しみと、見つけたときの感動は表現できないものがありますよね。
ワタシも今年は登山してクモツキと思ったのですが、結局有名ポイントへ行ってしまいました(笑)
あのオレンジはいつ見てもドキドキしますね。
コメントありがとうございます。
お陰様で、すっかり体調も良くなり虫と戯れております。
今年は、4月に寒の戻りがあったので、色々な昆虫の発生時期がなかなかつかめず、苦労しますね。更に、クモツキでは早朝から暑くて・・・・
もうすぐゼフィルスの季節ですね。
今年は、何としてもヒサマツのオスの開翅を撮ろうと計画しております。撮れと良いのですが・・・