ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 は、ホタル科ホタル属(Genus Luciola Laporte, 1833)でゲンジボタルやヘイケボタルと同属であるが、幼虫が陸地で生活する陸生ホタルである。青森県から九州まで分布し、平地から高い山地の雑木林、竹林、ブナ林、畑、河川敷など様々な環境に生息している。体長は6mm~9mmほどで、メスは下翅がなく飛ぶことができない。そのため、分布地の移動性は小さく地域により遺伝的特性や体長の差などが著しい。発光は、黄金色のフラッシュ光の点滅が特徴で、活動時間にも地域差がある。日没30分後くらいから発光を始め、21時~22時頃まで活動するタイプと22時頃から発光を始め、深夜2時頃まで活動するタイプに分かれる。
4年ぶりに埼玉県の生息地を訪れた。この場所は2010年に発見し、その当時は、地元の方は勿論、撮影者は誰一人といなかった。しかしながら、
5年ほど前に近隣の生息地に生息を案内する看板が設置され、インターネットやSNS等の情報で当該生息地も知られるようになり、一晩に20人~30人ほどの撮影者が訪れるようになったようである。
ここのヒメボタルは、深夜型で21時を過ぎた頃から徐々に発光をはじめ、午前0時過ぎをピークに午前2時頃まで活動が続く。かなり広範囲に生息しており、地域全体では数千という単位であると思われる。また、他地域に比べ、メスの体長や前胸背板の赤斑に大きな違いが見られる。更には、オスは林の中から出てきて開けた畑の上を飛ぶという特徴がある。また、関東のヒメボタル生息地では、一番発生が早い場所である。
4日、21時半に現地に到着すると、暗がりでちらほらとヒメボタルが発光を始めていた。4年前にはなかった家が建ち、少し様変わりしていたが、全体的には当時のまま。いくつかのポイントを廻って観察すると、発生場所に若干の違いが見られたものの、一番乱舞する場所は、2010年の初訪の時と変わっていない。22時を過ぎると、かなりの数のヒメボタルが乱舞を始めた。撮影者も多く20人以上はいただろう。人の多さにヒメボタルが可哀想に思えたことと、名古屋での講演の疲れもあり、ピーク前の23時で引き上げることにした。
森の中で発光するヒメボタルの写真は、7月に東京都内でも山梨県でも撮影できる。この場所の一番の生態的特徴は、開けた畑の上を飛ぶことなので、今回もその様子を撮影した。また、ヒメボタルの発光色である黄金色が出るようにした。
フィルム時代には、ヒメボタルの飛翔風景撮影を成功させるのに6年もかかったが、今のデジタルカメラでは、初心者でも簡単に撮れる。ソフトで合成すれば、光の数は無限大に増やせる。「風景、光景としての写真」という1つの作品ではあるが、生態学的な観点から過度な表現はすべきではないとも思う。
注釈:ヒメボタルのマクロ写真(写真2~6)は、同じ生息地の個体ですが、2011年に研究用として雌雄1頭ずつを採集し自宅で撮影したものです。
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ヒメボタルの乱舞
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 5秒×50 ISO 1600(2016.06.04 22:30)
ヒメボタル
ヒメボタル
ヒメボタル
ヒメボタル(交尾)
ヒメボタル(メス)
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
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この場所は、私有地ですから
地主の方のご意向次第なのですが、
あまり有名にならない(人が大勢訪れない)ことも
保全には必要かなと思います。
SNSなどで、場所の説明はしないでいただきたいです。