ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゲンジボタル(東日本型)

2021-05-29 20:17:03 | ゲンジボタル

 ゲンジボタル(東日本型)の観察と撮影を行ってきた。場所は、毎年訪れている千葉県内の生息地で、自然発生地では関東で一番発生が早い地域である。
 ゲンジボタルは承知のように遺伝子型の違いによって西日本型と東日本型に分けられる。遺伝子型の相違だけではなく、生息環境、発光時間の長さや集団同期明滅の間隔、オスの発光飛翔のスピードも異なっているが、昨今、幼虫の人為的放流などによって、西日本型のゲンジボタルが関東でも広く定着している状況にある。幸い、千葉県内の生息地の幾つかは東日本型のみであり、長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶ独特な特徴がはっきりと分かる貴重な生息地となっている。今年も、28日(金)に訪れてきたので、記録として記しておきたい。

 28日(金)は、会社を昼で退社できる日であったため、13時に港区の会社を出発。国道357号線(湾岸道路)と京葉道路という一般道で千葉の市原まで走り、そこから館山自動車道に乗る。遅い昼食と休憩を市原SAでとろうと予め予定していた。
 何を食べるかも計画済み。かつては、ラーメンとDHA海鮮丼ぶりも頂いており、今回は「豚屋」のトンカツ定食1,250円にプラス100円でご飯大盛りを注文。ブザーが鳴って取りに行くと、ご飯が丼にてんこ盛り・・・美味しく頂いたが、一日経っても食べすぎで腹の調子がおかしい・・・。
 休憩後に移動して、現地は17時半より待機。昨年撮影をした同じ場所にカメラをセットした。天候曇り。気温21℃。時折強い風が吹く。19時15分。1頭が発光を始めた。しかしながら、後が続かない。19時半を過ぎても、5頭が発光しただけで、昨年のような飛翔は見られなかった。
 地元の方の話によれば、谷戸の最奥は一昨日から乱舞しているが、谷戸の入り口付近は、まったく飛んでいないと言う。2014年から観察を行っているが、一昨年までは、谷戸の入り口付近及びその下流部でも多くが飛翔していたが、昨年は、それら区域でも見られなかった。2015年頃までは、下流域から発生が始まり、800mほどある谷戸の奥まで徐々に発生する傾向であったが、段々と時期が一緒になり、一昨年では同時期発生であった。地元の方も見ていないとのことから、本年は谷戸の入り口付近及びその下流部、更には谷戸中部でも発生していないと言える。年々、生息場所が谷戸の深部へと狭まっているのである。(図1)周囲の環境は変化しておらず、光害もほとんどない。水田への農薬や除草剤の 散布等が影響しているのか、或いは、聞いたところでは残土問題が持ち上がってもいるとの事であるから、それも影響しているのかも知れないが、今のところ、原因は不明である。(後の6月25日に再訪し、農家の方から伺ったところ、農薬を空中散布したとのこと。おそらく、これが原因であろう。)
 ここ数年、谷戸の深部では乱舞が見られている。本年も同様な状況であったが、今年は、これまでそれほど飛翔していなかった場所でも乱舞が見られた。林縁と林道である。(写真1)林道を挟んで湿地があるが、草が生い茂り陸地化が進んでいる。小川や水路はない。メスのゲンジボタルもまったくいない場所で、オスばかりが、まるで「森のホタル」と化し、乱舞していた。林道に立っているだけで、ホタルに取り囲まれる状況であった。
 これは、今年だけの光景かも知れないが、来年も谷戸の入り口付近等で発生がなければ、この生息地全体が危機的状況にあると言える。来年も、継続して観察を行いたい。

 ゲンジボタル(東日本型)の発光飛翔写真は、西日本型のそれに比べて「絵」にならない。長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶからであり、西日本型との違いは、写真からでも明確に区別ができる。写真芸術的には絵にならなくても、生態学的には重要な1枚である。今回撮影した写真は、ホタルのデジタル写真における撮影と現像方法の主流である多重合成ではなく、フィルム写真同様の一発露光で撮影したが、東日本型ゲンジボタルの特徴表現が不十分であったため、2010年6月5日に千葉県内で撮影した写真も掲載した。
 ただし映像においては、東日本型ゲンジボタルの特徴がよく分かるので、5分半と少し長めであるが、是非、ご覧頂きたいと思う。

 2021年のホタル観察と撮影は、4月17日の「ゲンジボタルの幼虫上陸(山梨)」からスタートし、成虫はこれからが本番である。今年は、ゲンジボタルでは新潟県、ヒメボタルでは東京都内および山梨県で観察と撮影を予定している。いずれも初めて訪れる場所である。その他にも、経年通っている生息地も予定しているので、順次、掲載していきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル生息地の図

図1:千葉県の東日本型ゲンジボタル生息地における異変

ゲンジボタルの写真

写真1:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 52秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2021.5.28 20:08)

ゲンジボタルの写真

写真2:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F2.8 180秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2010.06.05 20:14)

ゲンジボタル(東日本型)/ Genji firefly that lives in eastern Japan.

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