前記事において、環境省レッドリスト2015「昆虫類」を紹介したが、本記事では、東京都レッドリスト2010「昆虫類」を紹介したい。
レッドリストは、環境省だけでなく各都道府県においても作成しており、東京都においては東京都環境局が作成している。東京都レッドリストでの評価の基準については、原則として環境省版レッドリストカテゴリーに準拠し、対象地域は本土部と島しょ部(伊豆諸島、小笠原諸島)を別々に検討している。本土部においては地域によって環境が大きく異なることから、区部、北多摩、南多摩、西多摩の4地域に区分し、それぞれの地域区分ごとに評価が行われているが、これら4地域を総合的にとらえた「本土部全体」としての評価も行われている。23区では生息していなくても、西多摩では生息が確認できる種もいるためであり、本土部全体の評価は、全体的な知見からの評価であるため、各地域のランクとは必ずしも一致してはいない。
東京都レッドリスト2010「昆虫類」に選定された昆虫の種は、前述の環境省レッドリストの種とは異なっている。選定基準等については、下記の参考資料を参照頂きたいが、選定された種は、東京都内にかつて生息しており、または現在も生息している種であるということである。タガメ(Lethocerus deyrolli)やゲンゴロウ(Cybister japonicus)も、かつては生息していたのである。失った自然環境を取り戻すことはできないし、絶滅した種を復活させることも容易ではない。と同時に、まだ多くの昆虫が生息する自然環境が残されているということも知っておかなければならない。
日本の首都東京は、絶滅や減少の原因である自然(生息)環境の破壊や悪化が著しいが、これ以上、絶滅種が増加しないよう、我々にできることは何か?を常に考え、行動しなければならないと思う。
本年も、ホタルはもとより、東京のみならず全国から姿を消してしまうおそれのある昆虫(トンボやチョウ)について、その生態や生息環境を学び、写真を撮影して紹介することで広く現状を知っていただき、今後の保全の一助になればと思う。
本記事では、平成10年に作成された「東京都の保護上重要な野生生物種(1998 年版)」のうち、本土部について平成20年度から平成21年度まで2ヵ年をかけて改定作業が実施され、その結果をとりまとめた東京都レッドリスト2010から「昆虫類」のトンボ目とチョウ目(ガ類を除く)のリストと私が撮影した写真の一部を掲載する。
東京都レッドリスト2010「昆虫類」
絶滅(EX)
絶滅してしまった種
- トンボ目
- グンバイトンボ(Platycnemis foliacea sasakii)
- コバネアオイトトンボ(Lestes japonicus)
- メガネサナエ(Stylurus oculatus)
- マダラヤンマ(Aeshna mixta soneharai)
- キイロヤマトンボ(Macromia daimoj)
- ベッコウトンボ(Libellula angelina)
- ハッチョウトンボ(Nannophya pygmaea)
- オオキトンボ(Sympetrum uniforme)
- チョウ目
- ギフチョウ(Luehdorfia japonica)
- ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis)
- ツマグロキチョウ(Eurema laeta)
- クロシジミ(Niphanda fusca)
- シルビアシジミ(Zizina otis)
- ヒメシジミ(Plebejus argus)
- アサマシジミ(Lycaeides subsolanus)
- ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomon)
- オオウラギンヒョウモン(Fabriciana nerippe)
- アサマイチモンジ(Ladoga glorifica)
- ホシチャバネセセリ(Aeromachus inachus)
- アカセセリ(Hesperia florinda)
絶滅危惧ⅠA類(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種
- トンボ目
- モートンイトトンボ(Mortonagrion selenion)
- ヒヌマイトトンボ(Mortonagrion hirosei)
- オオセスジイトトンボ(Cercion plagiosum)
- オオモノサシトンボ(Copera tokyoensis)
- キイロサナエ(Asiagomphus pryeri)
- コサナエ(Trigomphus melampus)
- ネアカヨシヤンマ(Aeschnophlebia anisoptera)
- トラフトンボ(Epitheca marginata)
- エゾトンボ(Somatochlora viridiaenea)
- チョウ目
- ジョウザンミドリシジミ(Favonius taxila)
- ウラギンスジヒョウモン(Argyronome laodice)
絶滅危惧ⅠB類(EN)
IA類ほどではないが近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種
- トンボ目
- キイトトンボ(Ceriagrion melanurum)
- オオイトトンボ(Cercion sieboldii)
- アオハダトンボ(Calopteryx japonica)
- ニホンカワトンボ(Mnais costalis)
- ムカシヤンマ(Tanypteryx pryeri)
- ヤマサナエ(Asiagomphus melaenops)
- サラサヤンマ(Oligoaeschna pryeri)
- コシボソヤンマ(Boyeria maclachlani)
- アオヤンマ(Aeschnophlebia longistigma)
- カトリヤンマ(Gynacantha japonica)
- ヨツボシトンボ(Libellula quadrimaculata asahinai)
絶滅危惧Ⅱ類(VU)
絶滅の危険が増大している種
- トンボ目
- ベニイトトンボ(Ceriagrion nipponicum)
- オツネントンボ(Sympecma paedisca)
- ホンサナエ(Gomphus postocularis)
- アオサナエ(Nihonogomphus viridis)
- マイコアカネ(Sympetrum kunckeli)
- ヒメアカネ(Sympetrum parvulum)
- チョウ目
- ウスイロオナガシジミ(Antigius butleri)
- ハヤシミドリシジミ(Favonius ultramarinus)
- キバネセセリ(Burara aquilina)
準絶滅危惧(NT)
現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- トンボ目
- アオイトトンボ(Lestes sponsa)
- ホソミオツネントンボ(Indolestes peregrinus)
- ウチワヤンマ(Sinictinogomphus clavatus)
- ルリボシヤンマ(Aeshna juncea)
- コヤマトンボ(Macromia amphigena)
- ハラビロトンボ(Lyriothemis pachygastra)
- シオヤトンボ(Orthetrum japonicum)
- チョウトンボ(Rhyothemis fuliginosa)
- チョウ目
- カラスシジミ(Fixsenia w-album)
参考:「東京都の保護上重要な野生生物種」(本土部)2010年版
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
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