ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

東京のホタル(源平合戦の危機)

2019-07-06 21:40:50 | ホタルに関する話題

ゲンジとヘイケが舞う谷戸が埋め立ての危機~東京都八王子市川町/大沢川源流部の谷戸~

 東京のホタルも、そろそろ終わりであるが、今回は、たいへん貴重な観察と撮影ができた。何とゲンジボタルとヘイケボタルが 同時に飛び交う「源平合戦」が小さな谷戸で見られたのである。場所は、東京都八王子市川町にある大沢川源流部の谷戸である。
 東京都内では、ヘイケボタルの自然発生地は極めて少ない。農薬を使わない水田がなくなり、里山の谷戸にある湿地で細々と生きているが、その湿地も里山の放棄・放置で植物が生い茂り植生遷移が進み、また土砂が少しずつ流れ込み、乾燥化・陸地化が進んでいることにより、絶滅が危惧されている。
 東京以外では、ゲンジボタルとヘイケボタルが生息している里山は多いが、ゲンジボタルの方が発生時期が早く、両種が同時に舞うことは多くはない。今回訪れた谷戸の下流域は、2週間ほど前からゲンジボタルの発生が始まっているが、上流域は遅れて発生することにより叶ったと言える。写真では、湿地の上をヘイケボタルが低く飛び、その上をゲンジボタルが飛び交っているのが分かる。
 19時15分。谷戸の最奥の杉の梢で1頭のヘイケボタルが光り始めた。次第に雑木林から湿地に続く斜面でも草むらの中で光り始め、19時半に飛び始めた。すると、向かいの雑木林の中で強い発光が。ゲンジボタルである。幼虫は、湿地と雑木林の間を流れる細流に生息している。この日の天候は曇り。気温23度で無風。ただし空一面を覆う雲に都会の灯りが反射して明るいため、条件は最良ではない。ゲンジボタル20頭、ヘイケボタルは30頭ほどであったが、20時を過ぎる頃からは、見事な「源平合戦」が見られた。

 この源平合戦が見られる貴重な谷戸は、無くなる危機にある。実は、民間の事業者が大量の建設残土で埋め立てを行い、スポーツ施設を作ろうとしているのである。谷戸は、すでに事業者が買い取り、大部分が立ち入り禁止になっている。ただし、事業者にはスポーツ施設を作り、運営するだけの資金がなく、おそらく各地の建設現場で発生する捨て場に困っている建設残土を谷戸に埋める事業だけで終わるだろうと言われている。「八王子市川町の環境を守る会」が結成され、7年前にはTBSテレビ(噂の!東京マガジン)でも紹介されたが、何の進展もなく、八王子市の開発許可のGoサインがでれば大量の建設残土が持込まれる状況にある。
 これまで、この谷戸における源平合戦の証拠となる写真がなかったこともあり、「八王子市川町の環境を守る会」に協力する形で訪れて撮影した。今後は、東京都に対しても保全に向けた運動を展開するにあたって、ホタルと環境保全の勉強会等も開催し、協力していきたい思う。また地名は「八王子市川町の環境を守る会」の要望で、あえて記載することにした。

 写真2と映像は、前記事で紹介した東京都内多摩西部の山間部の渓流に再度訪れて撮影したものである。今回は、上流方向にカメラを向けて撮影した。 発生のピークは過ぎ、前回よりも飛翔するオスの数は少なかったが、写真も映像も自己満足できる出来であった。
 ただし、今回も気になったことがある。前回はカメラマンのマナーだったが、この日は車のライトであった。渓流は深い谷の底であるから、道路の街灯や走る車のライトの影響は全くない。では、なぜ「車のライト」が気になったかと言うと、実は渓流のすぐ傍にお寺があり、そこには車が数台止められる駐車スペースがあるのである。私は、わざわざ約1km手前の大きな駐車場から歩くが、お寺の駐車場を知っている方は、そこに車を止める。川までほんの数メートル。数段の階段を降りればホタルを見ることができる。平日でも満車になる。
 問題なのは、車のヘッドライトがホタルが飛び交う川を照らすということである。暗くなってから来る。まだホタルが飛んでいる時間に帰る。狭い駐車場で何度も切り返せば、ヘッドライトが川の広い範囲を照らす。ホタルは発光を止め、暗くなってもしばらくは発光しない。観賞に来られる方の中には、脚の不自由なご老人もいらっしゃるので、その駐車場は便利ではあるが、何か対策を講じないと、いつか影響がでるだろう。

 東京のホタル。残すはヒメボタル。2009年7月11日にツキノワグマに遭遇しながら、命がけでフィルムで撮影した都内の山間部のヒメボタルを今度はデジタルで奇麗に撮影したいが、この週末は雨で気温が低く断念。降雨は問題ないが、気温が15℃では活動が鈍い。次の週末に決死の覚悟で、再挑戦したい。
 またヒメボタルは、昨年、レンズキャップを外し忘れて一枚も撮れていなかった場所においてのリベンジも予定している。この写真と映像を撮り終えたら、今年に撮影した映像を編集してまとめたい。

参照ホームページ:八王子市川町の環境を守る会

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルとヘイケボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 18分相当多重露光(撮影地:東京都八王子市川町/大沢川源流部の谷戸 2019.7.05)

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 4分相当多重露光(撮影地:東京都 2019.7.02)

ゲンジボタルの飛翔映像
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE (撮影地:東京都 2019.7.02)

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