ギャラリーもそろそろ休みに入る所が多く、本格的に回るのは今週が最後だろうか。本日は近美→資料館→コンチネンタル→市民ギャラリー→札幌市写真ライブラリー→道新→たぴお→富士フィルムフォトサロン→紀伊国屋→さっしん→ivory→フォトファン→パルコ→さいとう→趣味の郷の15箇所。
■北海道立近代美術館「イヌイト・アート&動物たち」。イヌイトアートの作品は北海道立北方民族博物館から来たものが中心になっている(一度見てみたかったんだよね)。作品は全体的に素朴さもありながら、現代美術の方法論が取り入れられているような気がする。割と最近作られたものが多いようだ。
第二室以降は日本人の現代作家の作品が並ぶ。まずは小林敬生「蘇生の時」が素晴らしい。木口木版で動植物・虫・魚・塔・ビルとあらゆる物が登場している版画だ。異なる時代に地球に登場したものを重ね合わせているようにも見えるし、審判の日に全てのものが蘇ってきたようにも見える。
大森暁生「ぬけない刺のエレファント」。巨大な象の頭部に一角獣のような角が立っている作品。進化の途中で存在しえたかもしれない姿だ。草食動物の頭部に角があるのは愚かしいことなのか、敵を追い払う効果があったのだろうか。
冨屋悦子「Untitled(10)」。花・蔦・海綿のような植物を見上げる鹿のような動物。非常に細かい銅版画で、これも私の好み。木原康行のようでもあるが、線が何となく有機的だ。
江本創「Electric Beast(電気獣)」。エレキングがトカゲ化したような空想上の生物の標本。よく寺に伝わる人魚や河童のミイラは、猫や猿と魚をつなげて作ったという話があるが、そういう意味では伝統的な手法なのかもしれない。
常設展示「エコール・ド・パリ 異邦人の夢」では、パスキンの「キューバの人達」「良きサマリア人」あたりのカラフルな作品が好きだ。南の空気が伝わってくるような作品である。
またパリを描いたものとしては「アンドレ・サルモンとモンマルトル」がいい作品だ。華やかなパリを描いているが、その後、世界恐慌でその空気は失われてしまう。一瞬の華やかさといえるだろう。
大体見ている作品が多いのだが、キャンバスの裏表に描かれたパスキン「みづくろいする女」「カフェの庭で」は初見かも知れない。
続いて、2階の「フレッシュ・アイズ-北海道美術再発見」。これは道教大岩見沢の学生が企画・展示をした展覧会である。破綻のない真面目な展示で、そこを良しとするか物足りないと見るか。
神田日勝の「室内風景」の新聞紙に囲まれた部屋が再現されているので、入ってみた。
■コンチネンタルギャラリー「油展」。
中里麻沙子「氷点下の森」:栃内忠男「窓」のような歪み感がある。
門間真貴子「だから人は、再び愛に帰ってゆく」:股下まで水につかって水牢のような所にいる男性。一見、外の世界との間に格子があるようだが、その格子の隙間を通って出られそうなのだ。はたして、どうする気だ。
高木瑛「纏う」:木々を身に纏うかのような女性。安易なメルヘン調でもなく、ちょっと面白い。
石村翼「丑の時プラシーボ」:これも妙に気になる作品だ。バローズ風で「カラス族の女王」とかタイトルを勝手に付けたくなる。
倉田紗知「肖像」:首の周りにもの凄いフリルをつけた女性の肖像画。インパクトのある顔を良く描いたと思う。
■市民ギャラリー「道展U21」。素晴らしいとは言いがたい作品も沢山あるのだが、ま、良いじゃないか。まずは入選作品で気になったもの。
小島小夜「干し柿を食べる妹」:パンチのある顔、大きな手、何とも画になる妹だ(後で喧嘩になったかも・・・)。干し柿を食べてるところもいい。
柴田深由希「不思議がれ。」:マリオネットの姿を斜め線でバッサリ消そうとした構図。何か不思議だ。
川村未紗「冬の朝」:子どもが二人布団の中から出られずにゲームをしている。写真っぽいリアル画。
宮本加那「秘密」:仮面舞踏会から帰った所か。可愛らしい女性には小さな秘密があって良いものだ。
続いて奨励賞から。
佐野友里恵「踏切」:踏切をアップで描き、鉄っぽい感じが良い。
工藤さや「You're mine」:子どもの寝顔を上からリアルに描いた作品。
川映「目立たぬ逞しさ」:空き缶や煙草の吸殻の中でも育つタンポポ。地面に近い視線が良い。
後藤快太「ひきだし蟲」:ひきだし蟲がピラミッド上に重なり、一番てっぺんの奴が「やあ!」と手を上げている。
高木瑛「街」:階段部がらせん状でもの凄く高い歩道橋。その上で男女がすれ違っている。私の今回のイチオシ作品。しかも本日2回目の登場だ。
細川真由美「要らなくなったモノ」:ひっそりと描かれた汚物入れ。
■ギャラリーたぴお「異形小空間14th」。田村佳津子の線画作品が面白い。高い所が良く見えないのが残念。阿部有未の「空」「地平線」は女性の体がモチーフの版画。最近気になる作家である。柿崎秀樹「宙の上の血線」は赤い線がビュンビュンと縦横無尽に走る。気持ちよい作品だ。
富士フィルムフォトサロン「第25回北海道報道写真展」、紀伊国屋「日本刺繍作品展」それぞれ面白い。
■ivory「北星学園大学写真部「二年生展」」。ちょうどコマーシャルフォトを昔やっていたというおじさんがいて、学生と話をしているのが面白かった。
おじさん「学生さんらしい作品だけど、焼きが甘いなあ。誰が指導しているの」
学生「いえ、誰も教えてくれる人がいなくて、試行錯誤的にやってるんです」
ふーん、そういうものなのか。
■フォトファン「なんでもありさ 倉田愛里紗 photo&art展」。マンションの一室のようなギャラリーでの作品展。「ある時間帯に虹がでます」など写真に添えられたワンフレーズをあわせて見ると面白い。
■パルコ「ラジカセ・アート」。思ったより展示数が少なかったが、懐かしいラジカセが多かった。最初の頃は録音できるというだけで驚きで、私もご多分にもれず、TVのスピーカーにラジカセを近づけて録音したものである。
その後、ラジカセの巨大化がすすみラジカセというよりデコトラというか、巨大ロボットのベースみたいになったりしたものだ。また一時、やけに曲線の入ったデザインになったこともある。アールデコとアールヌーボーというわけでもないのだろうが。
また展示台にはカセットテープが敷き詰められているのも懐かしい所だ。ノーマルテープしか普段は買えず、メタルテープやクロームテープが欲しかったりしたのだが、最近の人には何のことだかまるで分かるまい。
そういえばノイズリダクションもドルビーから発展したdbxの機種が欲しかったものであるなあ。・・・昔話であった。
■さいとうギャラリー「08-09展」。この展覧会にやって来ておみくじを引くと年末気分になるなあ。ところでおみくじは「凶」。でも私には通じないよ。