カエルアンコウ科の魚は日本からは15種が知られています。一番難儀するのは吻上の棘が細いもので、ソウシカエルアンコウや、オオモンカエルアンコウなどがこの仲間です。この個体も、同定に難儀するかと思いきや、背鰭第2棘後方の鰭膜がなく、吻上棘が長くなく、背鰭基底部に暗色斑の目立つのがあるなどの理由で同定できました。
ベニカエルアンコウAntennarius nummifer (Cuvier)です。
眼の上に吻上棘とよばれるものがあります。この先には皮弁があり、これを疑似餌、いわゆる「ルアー」として獲物をとらえるのがこの魚の食事スタイルです。
しかしこの魚の疑似餌にやってきたのはキタマクラ・・・大きな口で捕食したのはいいのですが、最後は毒でやられたのか、それとも大きすぎて呼吸できなくなったのか、お亡くなりに・・・そういうわけで漁港に浮かんでいたのですが、私が長い手網を振り回してなんとか採集することができました。カエルアンコウ科の魚はこのブログでも何回か紹介していますが、このベニカエルアンコウの採集は初めてでした。嬉しい初採集の種類となりました。採集した場所では体長30cmを超える、オオモンカエルアンコウという巨大なものもいるようです。いつかは、見てみたいものですね。
ベニカエルアンコウというのは、赤みをおびた体色に由来しているようで、インターネットや図鑑に掲載されているものも、この赤い体色のものが多いです。しかし、魚類検索では色についての言及はなく、色だけでの同定はできません。
相模湾の個体をもとに報告されたニホンイザリウオは、本種の異名とされています。本種の分布は非常に広く、南日本からニュージーランド、ペルシャ湾・紅海~ハワイ諸島、そして中部大西洋のアゾレス・マデイラ・カナリー諸島・セントヘレナに分布します。遊泳する能力も乏しそうな魚が、このような広域に分布しているのは驚きです。