みなさんご存知でしょうが、魚というのはその種類によって基本的に異なる環境に生息しています。たとえば、磯にしかすまない魚、フラットな砂泥底をこのんで住む魚、あるいは北の寒い海にすむ魚、南のサンゴ礁域にすむ魚、水面直下にすむ魚、深海底にすむ魚・・・といったように、通常はそれぞれ生息環境にあった魚が生息しています。八幡浜の沖合底曳網漁業では、基本的にはフラットな砂泥底、水深80-300m位にすむ魚介類を主な対象種としています。
しかしこのニザダイPrionurus scalprum Valenciennesは、基本的には岩礁の、ごく浅い場所に多い魚です。底曳網で漁獲されるのは、珍しいような気もします。ニザダイ科の魚は2009年の12月以来、約2年ぶりの登場です。
ニザダイは底曳網のほかには、定置網や、刺網、釣り、といった漁法でよく漁獲されています。遊漁の磯釣りではメジナやイスズミの外道としておなじみのもので、植物質の餌(ハバノリなど)、動物質の餌(オキアミ、カニなど)を問わず、よく釣れてきます。釣り人はこの魚をサンノジとよび、嫌います。
市場でも、しめたもの、もしくは活けでよく入ってきているようです。この仲間を扱うのには注意しなければならないことがあります。それが尾柄部にある大きな骨質板です。
ニザダイ属の魚はこの骨質板が数個あります。ニザダイは4個で、多いものでは6つほどあったりします。ニザダイ属は日本産は本種のみが知られます。個体によっては鋭いこともあり、気をつけないといけません。ニザダイ科の別属では、剃刀のような棘をもつものもいます。
食味については、あまりいい話を聞きませんが、いい話を聞くととことん良いものです。
皮は硬く食べられません。これを引くと、綺麗な身が現れます。ニザダイの刺身です。今回食した個体は若干、磯臭さはあるのですが、これもなれればいい味わい。ただし内臓はどうしても臭いので、早めの処理を必要とします。刺身は一晩寝かせると臭さは消えます。
旬は冬とのこと。メジナも、イスズミも、そうなのですが、磯の魚は冬が一番美味しいといえそうです。