2日連続でフエダイ科の魚。フエダイ科・キビレフエダイ属のキビレフエダイ。キビレフエダイは1属1種の魚である。実はこの個体は2年ほど前に購入したものであり、キビレフエダイについては、以前にも記事を書いたと思っていたのだが、結局書いていなかったらしい。
キビレフエダイの成魚は体が金色に輝く。成魚の体側には目立つ模様はないのだが、幼魚は体がうっすら赤みをおび、体側に暗色の横帯が入る。まれに以西・以東底曳網で漁獲され市場に出ることがある。
この個体の尾鰭の先端には黒色斑がある。ただしFishbaseで写真がアップされている、インド産の個体にはこの黒色斑はない。ただし日本産であってもあるものとないものがいるので、種による違いではないのかもしれない。
先述のようにキビレフエダイ属は1属1種である。その属学名はTangiaとされた。人名由来である。しかしながら1977年ごろにこの属学名は昆虫類のものに先取権があるとされ、属学名が変更されている。現在の学名はLipocheilus carnolabrumである。英語名はTang‘s snapperといい、こちらも旧属学名の通りで人名由来であろう。一方、キビレフエダイ、という和名にも注意点があった。この和名は1977年に東ビルマ海、アンダマン、ラッカディブなどから漁獲されたTangia carnolabrumにつけられたのだが、その後カリブ海産のLutjanus jocuというフエダイ属魚類にも同名の和名がつけられた。同じ名前が別の種に充てられているわけだが、その場合はやはりTangia carnolabrumのほうに同定される個体に充てられるべきであろう。ほかにも、「マダラフサカサゴ」や「オビウシノシタ」などのケースがあり、海外産の魚の和名を扱うときは注意しなければならない。
分布域は東シナ海、高知沿岸、長崎県、琉球列島。海外ではインドー西太平洋に生息する。水深100mを超える深場に生息しているため、なかなかお目に罹れず、水中写真でも見たことがない。基本的にはマチと呼ばれるフエダイ類の底釣りなどでまれに釣れる程度である。あまりメジャーなものではないが、市場にはたまに出ることがあり、刺身などにして美味しい。今回も刺身で美味しくいただいた。この個体は長崎県 印束商店の石田拓治さんから。いつもありがとうございます。