今年の遠征ではツマジロオコゼという魚を久しぶりに発見し、採集した。前回は2017年に採集したので、5年ぶりということになる。
ツマジロオコゼはスズキ目・ハオコゼ科の魚である。ハオコゼといえば毒魚として有名ではあるが、このツマジロオコゼも背鰭に毒があるとされ、触ってはいけない。枯れ葉、もしくは海藻・海草の切れ端に擬態するというユニークな魚なので、つい触ってみたくなるのだが、触らないように注意しなければならない。ハオコゼであれば、トゲトゲした見た目で触ると痛そう、ということで触る人も少ないと思われるが、このツマジロオコゼはあまりとげとげしておらず、触ってしまいやすいので注意が必要。
分布域は琉球列島以南に多いが、和歌山や高知、鹿児島沿岸でもたまに見ることができる。ただここ4年は見られなかったので、常にいるわけではないかもしれない(見落としていただけかもしれないが)。また鹿児島県笠沙では、本種に極めてよく似ているカササハオコゼという近縁種も知られている。世界では西太平洋と東インド洋に生息し、西インド洋に生息する種は別種とされる。ツマジロオコゼ属は5種からなり、日本産はツマジロオコゼとカササハオコゼの2種。
なお、採集した、とはいってもお持ち帰りはしなかった。というのも、ツマジロオコゼの飼育はかなり難しいのだ。スズメダイやハゼであれば配合飼料、もしくは冷凍のプランクトンフードを給餌することで長期飼育が狙えるが、ツマジロオコゼは最初のうちは生きた甲殻類や小魚、それも海産のものを与える必要があり、それが長期飼育を難しいものにしている、といえる。クリルや冷凍したハゼなどに餌付くようになれば少しは楽になるだろうか。
これは2017年に採集したツマジロオコゼの幼魚。かわいいが、餌が大変である。珍しい魚を見つけたら持ち帰りたくなるものだが、飼育できるような魚か、それを考えてから持ち帰るようにしたい。これは長年採集した魚の飼育を楽しむための「秘訣」のようなものといえる。