昨年の9月に福岡県の河川でムギツクを採集して飼育している。ムギツクはコイ科ムギツク属で、日本産のムギツク属唯一の種である。分布域は日本と朝鮮半島で、タイプ産地は北朝鮮のピョクトン郡とのことである。朝鮮半島といえばほかにもクロムギツクや「シュリ」ことヤガタムギツクなどがおり、特に後者は観賞魚として日本にも入ってきていた。このようにムギツクに近いとされる魚は朝鮮半島には何種かいるのだが、日本に生息するのはこのムギツクだけである。
ムギツクの仲間は朝鮮半島におおいせいか、異国の魚らしいルックスをしている。朝鮮半島の近縁種に近いが、日本の熱帯魚愛好家ならば「サイアミーズフライングフォックス」を思い浮かべる方も多いだろう。しかしサイアミーズフライングフォックスとムギツクとは分類学的にはやや離れているということである。ムギツクも従来はヒガイ亜科とされていたが、現在はカマツカ亜科と関係があるとされる。
飼育開始当初はアリアケギバチと飼育したため、アリアケギバチに尾鰭を少し咬まれてしまっていた。現在は治っているが、ギバチの類はほかの魚をかむ習性があるようで混泳は慎重にする必要がある。
こちらはムギツクの幼魚。6月ごろに浅い水草がある場所を掬うと多数獲れた。丈夫で飼育はしやすい。ヒガイ属(ほかの魚をつつくくせあり)と比べるとおとなしく、混泳もさせられる。分布域は西日本の各地の河川で、絶滅の危険にあるとはされていないが、九州北部では水草のある場所が少なくなっており、個体数は減少している。一方関東でも本種の姿を見るようになったが、アユの種苗に混ざって分布を広げたと考えられる。これもアユの放流の負の側面のひとつである。
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