久しぶりの軟骨魚。ガンギエイ目・ガンギエイ科・コモンカスベ属のモヨウカスベ。
ガンギエイ科の多くの種は尾部に大きく鋭い棘があるので要注意であるが、アカエイのような大きく強い毒棘はない。ガンギエイの仲間の尾部背面にある棘は雌雄にとって棘列の数が違う。雄は3列、雌は5列であることが多い。またアカエイなどと異なるところはほかにもある。ガンギエイの仲間には尾鰭があるのだが、アカエイの仲間の尾部はムチのようになっており、先端には尾鰭がない。さらにガンギエイの仲間は卵を産むのが異なる。ガンギエイの仲間は卵生なのだが、アカエイやトビエイ、シビレエイといったエイなどは仔魚の状態で見られる。
モヨウカスベの尾部。鋭い無毒の棘が数列ある。小さい背鰭と尾鰭がある。
アカエイ科魚類の尾部。ムチ状で大きな毒棘があり、尾鰭はない。
コモンカスベ属は日本からインド洋に広く分布し、約15種が知られている。日本産は6種。海外では21世紀以降も新種が次々と記載されているが、軟骨魚類では多くの種が分類学的再検討がすすめられているところである。日本産のコモンカスベ属でもすこし怪しいものがいるようで、この仲間の総数はさらに増えるに違いないだろう。ガンギエイ科の魚は深海に生息しているものも多いが、この属は比較的浅い海に多く、沿岸の水深数mの海底に生息していることが多い。刺網、小型底曳網、定置網などで漁獲される。モヨウカスベは水深数10m~150mほどの海底に生息していて、この仲間ではやや深場にいるものともいえる。
モヨウカスベの肛門付近。ロレンチニ瓶が腹鰭前葉基部の後方にも分布している。水色の矢印がロレンチニ瓶。ロレンチニ瓶というのはイタリアの学者ステファノ・ロレンチニにちなみ「ロレンチニ氏瓶」とも呼ばれる
実はこのエイはモヨウカスベか、あるいはツマリカスベなのかははっきりしないというところがある。それが腹鰭前葉部の後方にも少々ロレンチニ瓶の開口部が分布しているからである。ツマリカスベは腹鰭前葉部の後方にロレンチニ瓶が分布していないことになっているからであり、モヨウカスベとした。ただその違いが本当に微妙なのである。だからこの仲間を同定するのに、上から見た写真だけで「これはなんでしょうか」と聞かれても答えられない。若干背面の模様が違うような気もするが、これが本当に同定に使えるのかはわからない。いずれにせよ、もっと多くの標本を見ることができれば、背面の模様も同定のキーに使えるようになるのかもしれない。
ガンギエイの仲間も種類が多いのだが、あまり利用される種は多くない。ガンギエイの仲間を食べる地域は意外と限られているのかもしれない。北海道や東北などでは食うが、四国や九州においてはあまり利用されていないようだ。従来は以西底曳網でよく獲られていて、食用になっていたようだが、漁獲量の減少、もしくは減船の影響で水揚げされなくなったのかもしれない。北海道では盛んに漁獲されているが、それは大型種が多いようだ。韓国ではガンギエイの仲間は好んで捕食される。
今回は唐揚げ粉を使って素揚げにした。これが本当にうまい。実はガンギエイの仲間を食するのは初めてであったのだが、これはもっと売れてもよいと思った。骨は若干あるものの、やわらかく骨ごとバリバリ食すことができる。調理にも包丁は必要ないし、キッチン用のハサミがあれば簡単にさばける。たくじーさん、ありがとうございました!!
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