ぶろぐを3月末に抹消されましたので、4~5月のできごとも更新していきます。今日は非常に珍しい深海魚をご紹介。
ソコダラ科の非常に珍しい種。スルガネズミダラという。
スルガネズミダラはその名の通り駿河湾で採集されたものをもとに新種記載された。駿河湾だけでなく、土佐湾や沖縄トラフにも分布し、台湾からも知られる。属の学名はLionurusとされたが、のちにネズミダラ属となっていたが、近年、新しく設立されたスルガネズミダラ属Kuronezumiaに移された。
本種の学名Kuronezumia daraは属も種小名も日本語に由来するようである。Kuroは「黒」、nezumiaはネズミダラ属の学名であるがその由来も「ネズミ」からきている。daraは「~ダラ」のことのようである。スルガネズミダラ属の特徴は眼窩下隆起の縁の鱗が肥大しないことにより見分けられる。この部分にネズミダラなどであれば大きな変形鱗があるが、スルガネズミダラではこれがないようである。写真ではわかりにくいかもしれない。なおネズミダラ属の写真は持っていない。ごめん。
なお、日本産のスルガネズミダラ属は本種と、2020年に新種記載されたクロネズミダラの2種からなる。属の学名は「Kuronezumia」というが、「クロネズミダラ属」ではない点に注意が必要である。なお世界では7種が知られているよう。
腹鰭の鰭条数は10-12で、これはクロネズミダラと見分けるポイントの一つになる。ただしこの個体の場合、体の左右で腹鰭鰭条数が異なっていた。左側が9軟条、右側は12軟条であった(写真は右側)。どうもたまに体の左右で軟条が異なる個体がある程度いるらしく、ニュージーランド産のフクレネズミダラ(太平洋・大西洋に分布)についても腹鰭の鰭条数は体側の左側より右側のほうが1本多かったという報告がある。
臀鰭は前方が黒っぽく、その後方は白っぽい。胸鰭や腹鰭は一様に黒く、第1背鰭は下方が灰色っぽく、ほかは黒いという変わった色彩。
下顎枝は半分が鱗に覆われている。一方でクロネズミダラは後縁をのぞき鱗がない(無鱗域が広いといえる)。クロネズミダラでは頭部腹面に感覚孔が開くが、スルガネズミダラはそうならないため、区別できるようである。
スルガネズミダラはめったに漁獲されない。そのため食の情報は少ない。しかしそれでも唐揚げが美味しかったことだけはお伝えしたい。ソコダラは小さいのは唐揚げが一番食べやすいかもしれない。
今回は「ヘンテコ深海魚便」の青山沙織さんから、直接購入。ありがとうございます。
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