だんだんと小型底曳網の魚ネタ、ストックが尽きてきました。昨日はちょうど「蛇騒動」から1年とFacebook様からお知らせがありました。ああー。こんな記念日は嫌だ。あと、明日また面白い珍しい魚が届く予定です。ぶろぐでもまたご紹介します。
カレイ目ササウシノシタ科のトビササウシノシタ。トビササウシノシタはササウシノシタの仲間の小型種で大きくても10㎝ほどである。水深30m以深、とくに70~100mほどの海底に多く潜んでいる種である。この個体は前回のホタルジャコ同様に宇和海の水深70mほどの場所から採集されたもので、数はかなり多く見られた。
ササウシノシタの仲間では胸鰭を有する種もいるが、本種にはそのようなものはない。日本産のササウシノシタ科で胸鰭を有するのはセトウシノシタやシマウシノシタの類、南方系の大型種であるアマミウシノシタなど少数派であり、しかもその仲間の中にも胸鰭を欠くものがいるようだ。
ササウシノシタと間違えられることもあるが、トビササウシノシタの口はほとんど真っすぐなのに対し、ササウシノシタの場合は鉤状にまがるのが異なる点だ。またササウシノシタはトビササウシノシタよりも浅い海底に生息しているようであり、今回の小型底曳網漁業では採集できなかった。しかしながら三河の底曳網ではこの種を見ているので、今度紹介していきたい。
有眼側の色彩は褐色で、体には暗色斑がいくつかある。日本産のトビササウシノシタ属はトビササウシノシタとモヨウウシノシタの2種とされたが、Parachirus(オトメウシノシタ属)がAseraggodes(トビササウシノシタ属)のシノニムとなったので、オトメウシノシタ属の2種がはいってきたほか、このほか新しくトウヨウササウシノシタとムシクイササウシノシタが新種記載され、日本産のこの属の魚は4種増え6種となった。ただし水深70~100mほどの場所に生息するのはこのトビササウシノシタとモヨウウシノシタくらいのもので、あとはサンゴ礁域の砂底や岩礁に生息している。ただし、「南日本太平洋沿岸の魚類」という書籍によれば水深30~40mくらいの浅いところを曳く網や定置網でもとれるのだという。
トビササウシノシタは相模湾以南の太平洋、新潟県以南の日本海岸、九州西岸にいる。海外では台湾、韓国、中国沿岸および海南島に生息しているようだが、京都の底曳網ではいまだ見たことがない。
ウシノシタの仲間は食用になるものが多いが、ササウシノシタ科の魚はあまり食用にはなっていない。一部は干物などになるそうだが、小型種が多くあまり利用されていないのである。例外的にこの科としては大型になる熱帯性のアマミウシノシタ、ミナミシマウシノシタ、体に縞模様のあるシマウシノシタなどは食用となっている。また日本のものは大きくても40㎝ほどであるが、欧州には60㎝くらいになるものもおり、それは重要な食用種となっている。
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