一昨日日曜日は飼育している魚の撮影を行った。写真の魚はコイ目・コイ科・タナゴ亜科・バラタナゴ属のタイリクバラタナゴ。
タイリクバラタナゴは標準和名に「タイリク」とある通り、もともと中国大陸(や東アジア)に生息していたもので、現在は日本のあちこちに広まってしまっている。本州、四国、九州の広い範囲に生息し、在来のタナゴ類が生息しない北海道にもいる。
今回採集した個体は濃尾平野の河川で採集したもの。手網ひとすくいで数10匹ほど入ったが、今回はあまり持ち帰ることはできなかった。残念である。採集した場所ではタモロコ、ゼゼラ、ミナミメダカなどがたくさん見られた。
本種を含むタナゴ類の特徴として、二枚貝に産卵することがあげられる。ドブガイ、イシガイ、マツカサガイ、カタハガイ、などの出水管に産卵管を挿入し、貝のなかに産卵するのだ。うまく飼育すれば水槽内でもタナゴの仲間が貝殻に卵を産み付けることを観察することができる。タナゴの仲間の雄が婚姻色を示すと極めて美しい色彩となる。このタイリクバラタナゴもあまり色がでていないが、青や赤など派手な婚姻色を水槽でも観察できるのだ。
●タナゴ類の放流がもたらす問題
婚姻色のでたタイリクバラタナゴ
タイリクバラタナゴは、先ほども書いたようにもともとは中国大陸や東アジアに生息していた魚である。いったいそんな魚がなぜ日本に入ってきたのか。私は戦後ソウギョなどと一緒に入って広がったものとばかり思っていた。実際に1940年代のはじめにハクレンなどと一緒にはいってきたのだそうだ。そして関東で増えた後に霞ヶ浦から琵琶湖へ、イケチョウガイという二枚貝を移植する際に貝の中に卵、または仔魚がふくまれていてそれが琵琶湖に放たれたそうだ。そこからはもしかしたらアユの移植の際にアユといっしょに分布を広げたのかもしれない。
その分布を広げるということで、問題が起こる。タイリクバラタナゴの放流を行うことでいったいどのような不都合や問題がおこるのか。
亜種関係にあるニッポンバラタナゴとの間では交雑が起こっているし、産卵する対象が限られるこの亜科の魚の場合、産卵場所がほかのタナゴ類と競合してしまう。タナゴの仲間は春産卵のものと、秋産卵のものがいるが、本種は春~秋に産卵する。産卵場所が本種に奪われてしまうことも多いのだ。このほかにニッチの問題や病気の問題もあるのだが、これらについては話すと長くなるので今回はやめたい。先ほど話したイケチョウガイを経由して起こる問題もあり、タナゴ類の産卵に使った貝を河川や池に戻す行為もやめよう。さらによく知られるように貝は現在減少気味で、ネットのオークションなどで大量に販売されている。そういうのを経由して購入すれば、貝にもタナゴにさらなる負荷をかけてしまうのでやめたい。
このタイリクバラタナゴは「外来魚問題」の様々な要素を濃縮した生物といえる。日本には中国タナゴ(種不明)、トンキントゲタナゴ、タイワンタナゴ、ウエキゼニタナゴといった種が観賞魚として輸入されるなどして人気が高いものの、それは同時に野外に放逐されるリスクもあるということである。このような外国産の魅力的なタナゴを今後も飼育を続けていけるように、売る側も、買う側も、上記のことを頭に入れておくべきであろう。
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