このぶろぐではウバウオ科魚類をほとんど紹介していないことに気が付いた。ということで今日はウバウオ科・ウバウオ属のウバウオ。
ウバウオ科は47属と169種(2016年時点で現在はさらに多いはず)が知られている。日本でも東北以南の各地潮だまりで採集できるが、ハゼの仲間やカエルウオと異なり飼育がやや難しいことや、この科の仲間で皮膚毒を有するものもいることから、あまりアクアリストには人気がない。
ウバウオは海藻の生育するタイドプールでよく見られ、海藻ごと網で掬うと入っていることがある。海藻に依存するような種類であり、転石の隙間に潜んでいるものは別種とされている。腹鰭はハゼのように吸盤状であるがその構造は複雑である。死滅回遊魚と異なり、周年磯で見られるものと思われる。冬の寒い磯でも、熱中症になりそうな夏磯でも採集している。ただ海藻がなくなる時期の磯では見ていない。写真は夜の磯で採集したものであるが、残念ながらピンボケである。
ウバウオの学名はAspasma minimaとされたが、この名義種のシンタイプはヨザクラウバウオに同定されることが明らかとなった。これによりウバウオはAspasma ubauoとして新種記載がなされている。タイプ標本はこの個体同様千葉県の磯で採集されたもの。ウバウオ科の魚はほとんど食用にはされない。これはほとんどの種が小型種であるからとされるが、チリには全長30cmにまで育つSicyases sanguineusや、ナミビア~南ア沿岸にも同じくらいのサイズになるChorisochismus dentexなどが生息している。概ね2亜科に分けられるとされ、大部分の種が含まれるGobiesocinaeと、オーストラリアの特産であるAlabes属のみからなるCheilobranchinaeからなる。後者は英語でCommon shore-eelなどと呼ばれるように、ウナギの仲間にもにた細長い体が特徴であるが、体は側扁しているように見え、まるで我が国に生息するカズナギの仲間をほうふつとさせるユニークな魚である。なおウバウオ科は「日本産魚類検索 第三版」ではスズキ目の中に入れられているが、故NelsonのFishes of the world(2016年版)ではBlenniiformesの中に含まれている。この目は標準和名がなさそうだが、もしつけるならば「ギンポ目」とでもなるのだろうか。
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