久しぶりに新しい魚が我が家にやってきました。スズキ目・ハタ科・ユカタハタ属のクロハタ。
クロハタの背鰭
ユカタハタ属の魚はマハタ・アカハタ属のそれと比べて背鰭の棘条数が少ないのが特徴の一つとしてあげられる。ユカタハタ属の魚の背鰭棘はマハタ属やアカハタ属よりも少なく9棘である(マハタ属やアカハタ属では11~12ほど)。日本では15種ほどが知られているが、基本的に熱帯のサンゴ礁域に生息しており、本種も浅いサンゴ礁域に生息する。日本では和歌山県以南の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島。海外では台湾、南シナ海、インドー中央太平洋(ハワイなどにはいない)、紅海に見られる。タイプ標本はサウジアラビアで獲れたものらしい。
クロハタの横帯
クロハタは体高がユカタハタ属の中では高く、浅いサンゴ礁域では枝状サンゴの隙間にはさまって動きにくくなるので不利になるだろう。そのため大型個体はサンゴがまばらな岩礁に潜み、小型のテンジクダイなどを捕食するようだ。色彩的には派手ではないが、水中では腹部に薄い白い横帯が入っていることが多い。この個体でもしっかりこの白い横帯は入っているのだが、あまり明瞭ではない。なお、個体の状態によっては全身の色が薄くなることもある。
クロハタの口腔内
なお、クロハタはクロハタ属とされることもあるが、形態的にはユカタハタ属とほとんど差がない。英語名Redmouth grouperは口腔内が真っ赤であることにちなむ。同じ黒っぽい魚で赤い歯をもつことから「アカモンガラ」(アカハモンガラから転じて)という標準和名をもつものもいるが、本種は「アカハタ」ではない。もちろん、アカハタと呼ばれるハタ科の魚はちゃんと存在していて、このぶろぐでも紹介している。
見た目からはアザハタというハタに似ている。頭部だけ見たときはアザハタの黒っぽい体を持つ個体のように見えた。ただし本種は分子分類学的にはアザハタとは関係性が薄く、ユカタハタ属の中でもアオノメハタに近いらしい。たしかに、アオノメハタの背鰭鰭膜の先にはオレンジ色斑があるが、このクロハタの鰭膜にもあまり目立っていないが、褐色の模様が入っていた(水中で見ると濃い赤色になる)。ただし分子分類というのは100%はあてにできない。そのため上位分類の分子分類を伴った研究が行われているが、この結果を反映した新分類についてはイマイチ信用していない。
クロハタのお刺身。白身が美しい。今回は皮目のうまみを逃がさないように皮をあぶっているのだが、あぶらなくても美味しくいただけるだろう。今回のクロハタは鹿児島県産。鹿児島の田中水産 田中積さんより。いつもありがとうございます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます