今日も長崎の魚を。長崎からやってきた、初めて見るタイ科の珍しい種のご紹介。スズキ目・タイ科・チダイ属のヒレコダイ。
ヒレコダイは背鰭が非常に長く伸びているのが特徴であるが、同じ属のもう1種であるチダイも鰭がよくのびることもあり、この点だけでは見分けることが難しいようだ。体高はヒレコダイのほうがやや高く、体長は体高の2.2倍以下。一方チダイでは体長は体高の2.1倍以上という特徴がある。チダイはこのヒレコダイよりもずっとよく知られている食用魚ではあるが、残念ながら私はまだチダイの写真を持っていないのである。
「チダイ」の標準和名の由来は鰓蓋が鮮やかに赤くなることからきている。チダイは鰓膜の鮮紅色部が広く、ヒレコダイでは狭いとされている。写真のものはヒレコダイだが、チダイよりは狭く不明瞭に思える。ただしこれも確実な見分け方とは言えないように思える。
チダイの斑点は普通点状であるが、ヒレコダイの体側には細かい青い線が入っているのが特徴的である。これについても確実な見分け方とはいえないらしい。ヒレコダイにも点があるのがいるらしい。つまり「どちらに近いか」というように同定するしかないかもしれない。もっとも、それが同定というのかは難しいところではあるのだが。
静岡県などの太平洋岸にも分布しているが、主な分布域は九州西岸などの東シナ海である。このほか台湾、中国、海南島、トンキン湾にかけても見られる。チダイは北海道南部~九州までの各地沿岸、朝鮮半島に分布している。インドネシアのバリ島からも得られているようだが、当地ではチダイは極めて珍しく1個体しか得られていないらしい。沖合の底層に分布し底曳網で漁獲されることが多いのだが、この個体には大きな釣り針がついていたので、釣りで漁獲されたのだろう。実際にヒレコダイはジギングなどでも、ごくまれに釣れることがあるという。
個体数は少ないが、九州西岸、特に長崎方面ではたまに漁獲され、市場に出て食用になる。刺身はチダイよりもはるかにうまく、マダイに近いうまさのように感じた。今回のヒレコダイも前前回のヒシコバン、前回のホウセキハタと同様に長崎県 印束商店の石田拓治さんより購入したもの。いつも、珍しい魚をありがとうございます。
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